本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、積み重ねないで近接して複数配置された場合であっても、互いに干渉することを抑制して共振周波数がずれにくいものとすることで通信や給電を高効率に行えるRFタグ、RFタグを用いて通信を行うRFIDシステム、RFタグ等に適用可能なループアンテナ及びループアンテナを有する非接触型の給電装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためのRFタグは、対向する配線箇所として非平行となって所定の角度で配置されている第1配線部分と第2配線部分とを有して立体的な開口部を形成するループアンテナと、ループアンテナを介した通信制御をする電子回路部とを備える。
上記RFタグでは、例えば一のRFタグと他のRFタグとを、開口部が横並びになるように隣接して配置された場合において、一のRFタグのループアンテナの第1配線部分と他のRFタグのループアンテナの第2配線部分とを、所定の角度をなすようにすることで、RFタグ間における相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることができ、共振周波数がずれにくいものとなり、RFIDシステム等で利用するにあたってRFIDリーダーライターとの通信や給電を高効率に行うことができる。
本発明の具体的な側面によれば、ループアンテナにおいて、第1及び第2配線部分は、直線状である。この場合、直線状の第1配線部分と直線状の第2配線部分とがなす角度によって、相互インダクタンスの影響度合いの調整をし、共振周波数がずれにくいものにできる。
本発明の別の側面によれば、ループアンテナにおいて、開口部は、平面視した場合に第1配線部分と第2配線部分とを対辺とする矩形状となっている。この場合、平面視矩形状のループアンテナのうち、第1配線部分と第2配線部分とについての影響度合いを考慮することで、所望の調整ができる。
本発明のさらに別の側面によれば、ループアンテナは、平面視矩形状となって開口部を形成する配線箇所のうち、第1配線部分と第2配線部分とに相当する対辺と異なる対辺に相当する配線箇所において、非平行となって所定の角度で配置されている第3配線部分と第4配線部分とを有している。この場合、一のRFタグの第1配線部分と他のRFタグの第2配線部分とを近接させる場合のほか、一のRFタグの第3配線部分と他のRFタグの第4配線部分とを近接させる場合にも、共振周波数がずれにくいものとし、高効率に通信や給電を行わせることができる。
本発明のさらに別の側面によれば、ループアンテナの第1及び第2配線部分は、プリント基板の表面と裏面とにそれぞれ形成される。この場合、基板の表面と裏面とに、所定の角度をなす第1配線部分と第2配線部分とを形成することができる。
本発明のさらに別の側面によれば、ループアンテナは、本体部分に巻かれたワイヤーで形成されている。この場合、ワイヤーを所定の角度でRFタグの本体部分に巻きつけることで、第1配線部分と第2配線部分とを形成することができる。
本発明のさらに別の側面によれば、電子回路部に接続され、電子回路部からの通信信号に基づき制御される発光部をさらに備える。この場合、例えばRFIDリーダーライターから送信されるRF信号に重畳された制御信号等の通信信号に基づいて発光部を点灯・消灯させ報知手段として利用することができる。また、ループアンテナを介して発光等のための給電を行うことも可能である。
本発明のさらに別の側面によれば、電子回路部に接続され、電子回路部からの通信信号に基づきスキャン動作を行って周囲環境の情報を収集するセンサー部をさらに備える。この場合、例えば、RFIDリーダーライターから送信されるRF信号に重畳された制御信号等の通信信号により、センサーのスキャン開始を指示したりセンサーのスキャン結果を読み取ったりして種々の情報を収集することができる。また、ループアンテナを介してセンサー部の動作制御等のための給電を行うことも可能である。
本発明のさらに別の側面によれば、センサー部は、加速度センサー、地磁気センサー、温度センサー及び湿度センサーのうちいずれかを含む。この場合、各種センサーにより、必要な種々の情報を収集することができる。
本発明のさらに別の側面によれば、電子回路部は、ループアンテナを介して受信した信号からの起電力により駆動制御を行うための整流回路を有する。この場合、RFタグを電池非搭載式にして、軽量化、簡素化できる。また、1つのループアンテナにより通信と給電の双方を行うことができる。また、1つのRFタグにおいて複数のループアンテナを要しないものとすることで、1つのRFタグ内においてループアンテナが影響しあい共振周波数がずれるといった事態を回避できる。
本発明のさらに別の側面によれば、電子回路部に接続されて動作する外部回路をさらに備え、電子回路部は、整流回路に加え、ループアンテナを介して受信した信号からの起電力により外部回路を動作させるための電源を別途生成可能な補助整流回路を有する。この場合、例えばLED等の発光部や各種センサーで構成されるセンサー部等の外部回路を駆動させるための電源を生成する手段を別途確保することも可能になる。
上記目的を達成するため、本発明に係る第1のRFIDシステムは、上記いずれかのRFタグと、RFタグのデータを読み取るリーダーライターとを備える。
上記第1のRFIDシステムでは、例えば開口部が横並びになるように隣接して複数配置されたRFタグ間における相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることができ、共振周波数がずれにくいものとなり、高効率にリーダーライターとの間での通信や給電を行うことができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る第2のRFIDシステムは、対向する配線箇所として非平行となって所定の角度で配置されている第1配線部分と第2配線部分とを有して立体的な開口部を形成するループアンテナと、ループアンテナを介した通信制御をする電子回路部と、電子回路部に接続され電子回路部からの通信信号に基づき制御される発光部とを有するRFタグと、RFタグのデータを読み取るリーダーライターとを備え、リーダーライターは、検索対象となるRFタグの発光部を点灯させてRFタグの位置を知らせる。
上記第2のRFIDシステムでは、高効率にリーダーライターとの間での通信や給電を行うことができるとともに、検索対象となるRFタグの位置を、発光部の点灯によって利用者に示すことができる。
本発明の具体的な側面によれば、リーダーライターは、複数配置されたRFタグのデータ読取りを行い、複数のRFタグは、一のRFタグのループアンテナの第1配線部分が他のRFタグのループアンテナの第2配線部分に近接して所定の角度をなして配置されている。この場合、リーダーライターとの通信等において、隣接する一のRFタグと他のRFタグとの間における相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることができる。
上記目的を達成するため、本発明に係るループアンテナは、環状であり、対向する配線箇所として所定の角度で配置され非平行となっている第1配線部分と第2配線部分とを有して立体的な開口部を形成する。
上記ループアンテナでは、例えば一のループアンテナの第1配線部分と他のループアンテナの第2配線部分とを、所定の角度をなすようにすることで、ループアンテナ間における相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることができるので、例えばRFタグ等のループアンテナに適用した場合に共振周波数がずれにくいものとすることができ、RFタグにおける通信や給電を高効率に行うことができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る第3のRFIDシステムは、上記のループアンテナを、無線タグとのデータ通信を行うリーダーライター用のループアンテナとして複数有し、一のループアンテナの第1配線部分が他のループアンテナの第2配線部分に近接して所定の角度をなして配置されている。この場合、リーダーライター用に配置された複数のループアンテナの間での相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることで、各ループアンテナの入力インピーダンスや、共振周波数がずれにくいものとなり、アンテナの放射効率もほぼ変化しないものとなるので、無線タグとの交信距離が低下しない、安定した性能にできる。すなわち、通信や共振を利用した電力供給を高効率なものにすることができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る非接触型の給電装置は、上記のループアンテナを、非接触で給電を行うためのループアンテナとして複数有し、一のループアンテナの第1配線部分が他のループアンテナの第2配線部分に近接して所定の角度をなして配置されている。この場合、非接触で給電を行うために配置された複数のループアンテナの間での相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることで、共振周波数がずれにくいものとなり、共振を利用した電力供給を高効率なものにすることができる。
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、本発明の第1実施形態に係るRFタグについて説明する。
図1(A)及び1(B)に示すRFタグ60は、厚みのある板状(直方体)の基板SBにチップ部TPを有して形成されており、基板SBに設けられたループアンテナであるタグアンテナ61を有している。なお、ここでは、基板SBには、例えば配線が施されたプリント基板のほか、非金属製の板状部材を本体部分として当該本体部分にワイヤーを巻き付けて構成するもの等が含まれるものとする。チップ部TPには、電子回路部62と、メモリー(不揮発性メモリー)63とが組み込まれている。また、電子回路部62は、制御回路62aと、RF回路62bとを有する。RFタグ60は、タグアンテナ61を介してRFID用のリーダーライター(図示略、以下、単に「RFIDリーダーライター」又は「リーダーライター」とする。)から電磁誘導により通信信号(無線信号)とともに供給される電力によって動作するものである。ここでは、典型的な一例として、RFタグ60は、ループアンテナであるタグアンテナ61を介して受信した信号からの起電力により駆動制御を行うための整流回路RCaを例えばRF回路62bに内蔵する電池非搭載式であるものとすることで、軽量化、簡素化を図っている。すなわち、整流回路RCaにより受信したRF信号から生成した起電力でチップ部TPを構成する各種回路等を駆動させるものとなっている。また、この場合、1つのタグアンテナ61により通信と給電の双方を行うことができる。また、1つのRFタグ60において複数のアンテナを要しないので、1つのRFタグ60において複数のアンテナが影響しあい共振周波数がずれるといった事態も回避される。
なお、図1(A)等に示すように、本実施形態では、XY面に平行な面を基準面SSとし、縦長の板状であって直方体である基板SBをXY面に対して立てるようにすなわち板状の基板SBの各面のうち表面と裏面とがZ方向に延びるように設置するものとする。この基準面SSは、例えばリーダーライターの読取り書込み用のループアンテナ面となるべき面に相当し、例えばリーダーライターによる磁場MFが垂直方向(Z方向)に発生する面であるものとする。また、ここでは、図示のように、板状の基板SBの表面及び裏面がYZ面に平行になった状態でRFタグ60が置かれているものとする。
タグアンテナ61は、基板SBのうち基準面SSに対向する側面の輪郭に沿うように設けられており、リーダーライターからの無線信号(通信信号等)を含む電波を受けてRFタグ60における各種動作を行うための電力を発生する。ここで、図1(A)等に示すように、本実施形態のタグアンテナ61は、直方体の基板SBを配置する基準面SSに対して所定の角度±θだけ傾斜した配線箇所を有して、点対称な対称性を有する形状となっている。すなわち図示において、タグアンテナ61を構成するループ状の配線の外観形状は、例えばZ方向を軸に(Z軸まわりに)半回転させるとそれ自身とぴったり重なるようなものとなっている。このような形状のタグアンテナ61は、例えば基板SBの表面と裏面とで、プリント基板上に形成された配線パターンや基板SBとなるべき非金属製の板状の本体部分にエナメル線等のワイヤーを互い違いの斜め向きに巻き付けることで環状に形成されている。また、この場合、タグアンテナ61は、立体的な(3次元形状の)開口部OPを有するものとなる。すなわち、一般的な平坦な形状のループアンテナとは異なり、平坦な開口形状の一端側と他端側とを反対の回転方向に角度θひねって形成されるような立体的形状となっている。なお、タグアンテナ61は、コイルによって構成され、流れる電流によって形成される磁場にエネルギーを蓄えるインダクターと捉えることも可能である。
電子回路部62のうち、タグ制御部である制御回路62aは、ループアンテナであるタグアンテナ61を介してリーダーライターとの通信制御等を含む各種制御を行う。
電子回路部62のうち、RF回路62bは、変復調回路などを含んでおり、受信した電波からデータを復調するとともに制御回路62aから出力されたデータから無線信号を生成してタグアンテナ61に出力する。また、RF回路62bは、電源生成回路として機能するための整流回路RCaなどを含んでおり、タグアンテナ61で受けた電力を各部に供給する。
メモリー63は、記憶装置であり、例えばRFタグ60の動作を記述したプログラムを記憶する。
以上のような構成のRFタグ60は、図1(C)に例示するように、複数個を横並びに傾斜した配線箇所が隣り合うように配置して利用されるものとなっている。すなわち、複数のRFタグ60A,60B,60C…が、リーダーライターの読取り書込み用のループアンテナ面に相当する基準面SS上において互いに隣接するように設置される。
ここで、一般に、平坦な形状のループアンテナをそれぞれ有する複数のRFタグをループアンテナ面が同一面上にあるように横並びに配置した場合、隣り合うRFタグのループアンテナにおいて干渉しあう。特に、アンテナが近接する箇所で互いの誘導起電力が影響しあう、すなわち相互インダクタンスの影響によって、ループアンテナの形状等により定まるべき各RFタグに固有の自己インダクタンスの値から変化してしまう可能性がある。言い換えると、各RFタグの自己インダクタンスが、単体(1つ)だけ設置した時と複数横並びに設置した時とで変わってしまう可能性がある。通常、通信等を行う場合、各RFタグに固有の自己インダクタンスLの値を固定しこの値に基づいて、次式(1)に示す共振周波数fが初期の値となるように調整(すなわち電気容量Cの調整)がなされている。
f=1/2π√LC…(1)
f:共振周波数
L:RFタグの自己インダクタンス
C:RFタグ(チップ)の静電容量
したがって、各RFタグに固有であるはずの自己インダクタンスの値が隣接するRFタグ間での相互インダクタンスの影響によって変化してしまうと、信号通信や共振を利用した給電が高効率に行えない(通信可能距離が短くなってしまう等)、あるいは不可能となってしまうおそれがある。これに対して、本実施形態では、環状のタグアンテナ61を形成する配線について、対向する配線箇所に配置される第1配線部分LnRと第2配線部分LnLとが互いに非平行となってかつ角度をなして立体的(3次元的)な開口面OPを形成するものとなっていることで、かかる誘導起電力の影響を相殺可能にしている。言い換えると、複数配置されたRFタグ間での相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることができ、共振周波数がずれにくいものとなり、RFタグが複数隣接していても。各RFタグとリーダーライターとの通信や給電を高効率に行うことができる。
以下、図2(A)〜2(C)を参照して、RFタグ60のタグアンテナ(ループアンテナ)61の構造について、詳細に説明する。ここで、例えば、隣り合う2つのRFタグ60において、一方のタグアンテナ61Aのインダクタンスは、当該一方のタグアンテナ61Aで生成された磁束により決まる自己インダクタンスと他方のタグアンテナ61Bにより生じる鎖交磁束の影響により生じる相互インダクタンスとを加えた結果が、当該一方のタグアンテナ61A単独で生成された磁束よりも増えるか減るかで決まる。この増減が、共振周波数のずれを招くものとなる。なお、他方のタグアンテナ61Bが一方のタグアンテナ61Aにより生じる鎖交磁束の影響を受けることについても同様である。本実施形態では、このような相互インダクタンスの影響を抑制するものとなっている。
図2(A)は、RFタグ60を構成するタグアンテナ61について一例を説明するための図であり、図1(A)等に示すRFタグ60のうちタグアンテナ61の部分を概念的に抽出した図である。図示のように、また、既述のように、タグアンテナ61は、直方体状の基板SB(図1(A)等参照)に巻きつけるようにして形成されており、開口部OPは、XY面について平面視した場合に矩形状のループアンテナとなっている。すなわち、開口部OPを通過する磁束(あるいは磁束密度)が変化することで電磁誘導が起きる。ここでは、図示のように、タグアンテナ61は、主として4つの第1〜第4配線部分LnR,LnL,LnF,LnBにより矩形状の開口部OPを形成しているものと考えることができる。これら4つの第1〜第4配線部分LnR,LnL,LnF,LnBのうち、直方体状の基板SBの表面及び裏面上に沿って(すなわちYZ面に平行に)直線状に延びる第1配線部分LnRと第2配線部分LnLとは、既述のように、XY面に対してそれぞれ角度θだけ傾斜して延びている。ただし、傾斜のしかたは互いに逆向きとなっている。すなわち、一方が仰角(図示では第1配線部分LnR側を+θとしている)であるとすれば、他方がこれに対して俯角(図示では第2配線部分LnL側を−θとしている)となっている。より詳しく説明すると、この場合、図2(B)及び2(C)に示すように、隣接するRFタグ60(60A,60B)について、一のRFタグ60Aにおいて一辺を構成する第1配線部分L1Rと他のRFタグ60Bにおいて一辺を構成する第2配線部分L2Lとが最も近接し、これらが基準面SSa(図1(A)の基準面に平行すなわちXY面に平行な面)に対する仰角(+θ)と俯角(−θ)とにより形成された角度差2θをなす位置関係となっている。一方で、例えば一のRFタグ60Aにおいて第1配線部分L1Rの対辺を構成する第2配線部分L1Lと他のRFタグ60Bの第2配線部分L2Lとは、平行な関係が維持される。同様に、第1配線部分L1Rと第1配線部分L2Rとについても、平行な関係が維持される。以上において、最も近接する第1配線部分L1Rと第2配線部分L2Lとがなす角度2θを調整しておくことで、これらの間での誘導起電力の影響を抑えることができる。これは、例えば図2(C)に示すように、RFタグ60Aに電流が流れることで発生する磁束φがRFタグ60B側に及ぼす影響が、角度2θ傾斜するところでは磁束がφcos2θの分だけとなるのに対し、平行なところ(傾斜していないところ)では、磁束φそのままの値の分となることに起因する。すなわち、一般的な平面型のループ形状のアンテナの場合と異なり、上記のような形状を有するRFタグ60間での相互インダクタンスの影響を相殺させることができる。
なお、例えば図2(A)に示すように、RFタグ60のタグアンテナ61の構成において、4つの第1〜第4配線部分LnR,LnL,LnF,LnBのうち、第3及び第4配線部分LnF,LnBは、直方体状の基板SBの側面に沿って延び、また、XY面に傾斜することなく平行である。この場合、第3及び第4配線部分LnF,LnBは、第1配線部分LnRや第2配線部分LnLについての誘導起電力に関して影響しないものと考えることができる。
以下、図3(A)及び3(B)を参照して、上述のようなアンテナの形状及び構造により相互インダクタンスの影響を相殺させる原理について説明する。
図3(A)は、一のRFタグ60Aと他のRFタグ60Bとの相互作用について説明するための概念図であり、図3(B)は、図3(A)における磁界の様子を概念的に示す図である。なお、図3では、簡略化のため、本願の特徴事項の1つである角度θについては省略しており、図2等を参照することで、角度θについてさらに考察するものとする。
ここでは、タグアンテナ61Bを構成する第1及び第2配線部分L2R、L2Lがタグアンテナ61Aのうち主として第1配線部分L1Rによって発生する磁束(タグアンテナ61Aの外側であって第1配線部分L1Rに近い側)から受ける影響について説明する。なお、以下の説明は、対称性により、第1及び第2配線部分L1R、L1Lがタグアンテナ61Bのうち主として第2配線部分L2Lから受ける影響についても同様となる。
図示のように、タグアンテナ61Aとタグアンテナ61Bが近接して横並びで配置された状態において、まず、タグアンテナ61Aに流れる電流i1により生成された磁束を磁束φ11とする。図3においては、実線により磁束φ11を示している。磁束φ11のうち、タグアンテナ61Bの第2配線部分L2Lと鎖交する磁束を磁束φ21iとし、第1配線部分L2Rと鎖交する磁束を磁束φ21oとする。この場合、磁束φ21i及び磁束φ21oによりタグアンテナ61Bに誘導起電力が発生する。なお、タグアンテナ61Aにより生成された磁束φ11のうち、タグアンテナ61B側に生成される磁束φ21i,φ21oは、既述のように、主にタグアンテナ61Aの第1配線部分L1Rにより生成されたものである。
また、タグアンテナ61Bに流れる電流i2により生成された磁束を磁束φ22とする。図3においては、破線により磁束φ22を示している。なお、磁束φ22のうち、タグアンテナ61Bの外側に生成された磁束を磁束φ22oとし、タグアンテナ61Bの内側に生成された磁束を磁束φ22iとする。
ここで、タグアンテナ61Aにより生成された磁束である磁束φ11によりタグアンテナ61Bに生じる誘導起電力は、磁束φ21iの影響でタグアンテナ61Bの第2配線部分L2Lに生じる誘導起電力と、磁束φ21oの影響でタグアンテナ61Bの第1配線部分L2Rに生じる誘導起電力とを合成したものとなる。
このうち、図3(B)等に示すように、第2配線部分L2Lの右側の磁束φ22iの向きと、タグアンテナ61Aに起因しかつ第2配線部分L2Lと鎖交する磁束φ21i(磁束φ11)の向きとは、磁束の向きが逆方向となり差動的な結合関係となるため、第2配線部分L2Lに生じる誘導起電力の大きさはマイナス成分となる。
一方、第1配線部分L2Rの右側の磁束φ22oの向きと、タグアンテナ61Aに起因しかつ第1配線部分L2Rと鎖交する磁束φ21o(磁束φ11)の向きとは、磁束の向きが同方向となり能動的な結合関係となるため、第1配線部分L2Rに生じる誘導起電力の大きさはプラス成分となる。
つまり、タグアンテナ61Aから放射された磁界がタグアンテナ61Bへ及ぼす影響が、タグアンテナ61Bを構成する第1配線部分L2Rに対するものと第2配線部分L2Lに対するものとでプラスマイナス逆になる。ただし、その作用の程度は、タグアンテナ61Aにより生成された磁束φ11が第1配線部分L1Rからの距離に応じて減衰していくことから、必ずしも相殺されるとは限らない。このことが、延いては、タグアンテナ61Bの自己インダクタンスにも影響を与えるものとなる可能性がある。
ここで、図2(B)等に戻って、タグアンテナ61Bのうち第2配線部分L2Lの方が第1配線部分L2Rよりもタグアンテナ61Aまでの距離が近いため、仮に、角度θがゼロであるとしてしまうと、上記図3を参照して説明したように、第1配線部分L2Rに生じるプラス成分の誘導起電力よりも第2配線部分L2Lに生じるマイナス成分の誘導起電力の方が大きくなり、合成された誘導起電力の大きさもマイナスとなり、タグアンテナ61Aとタグアンテナ61B間の相互インダクタンスはマイナス成分となる。すなわち、タグアンテナ61Aとタグアンテナ61Bとを横並びで近接した場合の自己インダクタンスは、単体の自己インダクタンスよりも小さな値に変化してしまう(共振周波数が高くなってしまう)ことになる。かかる事態を回避すべく、本実施形態では、第1配線部分L1Rとの距離が近い第2配線部分L2Lについては角度差2θに傾けて配置させる一方、第1配線部分L1Rとの距離が遠い第1配線部分L2Rについては平行な状態が維持されている。これにより、距離が近い第2配線部分L2L側での誘導起電力の発生を弱める一方、距離が遠い第1配線部分L2R側で誘導起電力の発生が弱まらないようにすることができる。
また、上記のようなことは、対称性により、タグアンテナ61Aを構成する第1及び第2配線部分L1R、L1Lがタグアンテナ61Bのうち主として第2配線部分L2Lによって発生する磁束から受ける影響についても同様のことが成り立つ。したがって、角度θの大きさをRFタグ60(60A,60B)の自己インダクタンス等に応じて所望のものとすることにより、本実施形態のRFタグ60では、合成された誘導起電力のバランスをとって自己インダクタンスが変化することを抑制可能となる。すなわち、タグアンテナ61Aとタグアンテナ61B間の相互インダクタンスの調整を図ることができる。
〔実施例1〕
以下、本実施形態に係るRFタグ60の一実施例について説明する。ここでは、具体的一例として、以下の表1に示す形状及び構造のRFタグ60について、上述したタグアンテナ61の角度θの値について変化させた場合の相互インダクタンスのよる影響度合いの様子について説明する。表1に示すように、本実施例のRFタグ60では、例えば板状の基板SBの板厚は、3mm、タグアンテナの巻き数は5回、第1及び第2配線部分LnR,LnLの長さは約38mm等となっている。
表2は、表1に示すRFタグ60のタグアンテナ61の角度θの値を変化させた場合の結果を示すものであり、1つ(単体)のRFタグ60の場合と2つのRFタグ60の間隔を変えて近接配置させた場合(近接間隔3mm、5mm及び8mmの場合)とについて、角度θの変化に対する共振周波数の変化の様子を示している。表2に示されるように、この場合、角度θ=8°の時に略相互インダクタンスのよる影響度合いを相殺させ共振周波数があまり変化しないようにすることができていることが分かる。また、上記の場合よりも角度θが小さくなるほど周波数が高くなり、角度θが大きくなるほど周波数が低くなることが分かる。特に2つのRFタグ60の間隔が狭くなるほど周波数の変化が大きくなる。これは、RFタグ60が近づくほど相互インダクタンスによる影響が出やすいことを示している。
なお、上記は一実施例であり、共振周波数の変化を抑えるのに最適な角度θの値は、例えばRFタグ60のうち、タグアンテナ61の第1及び第2配線部分LnL、LnRの長さやターン数(巻き数)、開口部OPの面積といったRFタグ60の構成や設置環境等によって変わる。
以上のように、本実施形態に係るRFタグ60(60A、60B…)は、一のRFタグ60Aと他のRFタグ60Bとを、開口部OPが横並びになるように隣接して配置された場合において、一のRFタグ60Aのループアンテナを構成する第1配線部分L1Rと他のRFタグ60Bのループアンテナを構成する第2配線部分L2Lとを、条件に応じて特定された角度2θ(あるいはθ)をなすようにすることで、RFタグ60間における相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることができ、共振周波数がずれにくいものとなり、リーダーライターとの通信や給電を高効率に行うことができる。
〔第2実施形態〕
以下、図4等を参照して、本発明の第2実施形態に係るRFタグについて説明する。なお、第2実施形態に係るRFタグは、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
図4(A)は、本実施形態に係るRFタグの一例について説明するための斜視図であり、4(B)は、RFタグの構造の一例について説明するためのブロック図である。図4(A)等に示す一例では、RFタグ260にLEDが接続されており、RFIDリーダーライター(図示略)から送信される信号に重畳された制御信号により、LEDの点灯または消灯を制御することが可能となっている。図示のように、本実施形態のRFタグ260は、基板SBに電子回路部262等を組み込んだチップ部TPを有するとともに、ループアンテナであるタグアンテナ61を有するほか、LEDで構成される発光部ELを有する。発光部ELは、電子回路部262に接続され、電子回路部262からの通信信号に基づき制御される。より具体的に説明すると、図4(B)に示されるように、電子回路部262は、制御回路262a及びRF回路262bのほか、発光部ELを駆動させるための駆動回路262cを有している。これにより、発光部ELは、電子回路部262を構成する制御回路262aからの信号に基づいて駆動回路262cによって点灯及び消灯の動作をするものとなっている。この場合、例えばRFIDリーダーライターから送信されるRF信号に重畳された制御信号等の通信信号に基づいて発光部ELを点灯・消灯させることで、RFタグ260の設置場所を利用者に視認可能にする報知手段として利用することができる。言い換えると、RFIDリーダーライターが、検索対象となるRFタグ260の位置を、発光部ELを点灯させることによって利用者に示すものとなっている。なお、ここでは、図1(B)に示した場合と同様に、図4(B)に示すように、RF回路262bが、ループアンテナであるタグアンテナ61を介して受信した信号からの起電力により駆動制御を行うための整流回路RCaを内蔵する電池非搭載式となっているものとする。すなわち、整流回路RCaにより受信したRF信号から生成した起電力でチップ部TPを構成する各種回路の駆動や発光部ELの発光動作等のための電力を確保するものとなっている。
図5(A)は、本実施形態に係るRFタグの他の一例について説明するための斜視図であり、5(B)は、RFタグの構造の他の一例について説明するためのブロック図である。図示のように、本実施形態の一変形例のRFタグ360は、基板SBに電子回路部362等を組み込んだチップ部TPを有するとともに、ループアンテナであるタグアンテナ61を有するほか、各種情報を収集するセンサー部SPを有する。センサー部SPは、電子回路部362に接続され、電子回路部362からの通信信号に基づき制御される。より具体的に説明すると、図5(B)に示されるように、電子回路部362は、センサー部SPを構成する第1及び第2センサーSP1,SP2にそれぞれ接続され、各センサーSP1,SP2において周囲環境の情報を収集する。より具体的には、例えば電子回路部362からの通信信号に基づきセンサー部SPにおいてスキャン動作を行わせて第1及び第2センサーSP1,SP2で周囲環境の情報を収集するものとしてもよい。なお、上記の例では、センサー部SPを2つのセンサーSP1,SP2で構成するものとしているが、1つのセンサーあるいは3つ以上のセンサーでセンサー部SPを構成するものとしてもよい。また、適用するセンサーの種類についても種々の態様が考えられ、例えば加速度センサー、地磁気センサー、温度センサー及び湿度センサーのうちいずれかを含んでセンサー部SPが構成されるものとしてもよい。
図6は、RFタグの構造のさらに他の一例について説明するためのブロック図である。上記のように、本実施形態では、RFタグは、ループアンテナであるタグアンテナ61を介して受信した信号からの起電力により駆動制御を行う電池非搭載式としている。電池非搭載式の場合、例えば発光部やセンサー部等の外部回路の消費電力が大きいと、駆動電力が十分得られない場合もある。これに対して、図6に示す一例のRFタグ460は、電子回路部462として、制御回路462a及びRF回路462bのほか、発光部ELを駆動させるための駆動回路462cを有しており、さらに、RFタグ460の電子回路部462は、主たる整流回路である内蔵型の整流回路RCaに加え、外付けの補助整流回路RCbを有している。すなわち、RFタグ460は、整流回路RCaにより受信したRF信号から生成した起電力でチップ部TP等の各部を駆動させるが、タグアンテナ61に整流回路RCaとは別途に外付けで接続されタグアンテナ61を介して受信したRF信から起電力を生成する補助整流回路RCbを搭載している。これにより、例えばチップ部TPとは別個に搭載している発光部EL等の外部回路を駆動させるための電源を、整流回路RCaのみならず、補助整流回路RCbからも得ている。なお、このように2つの整流回路RCa,RCbを有した場合においても、1つのタグアンテナ61により通信と給電の双方を行うことができ、さらに、発光部EL等の外部回路を駆動させるために十分な電源を生成する手段を確保できる。また、この場合、1つのRFタグ460において複数のアンテナを要しないので、1つのRFタグ460において複数のアンテナが影響しあい共振周波数がずれるといった事態も回避される。
図7は、RFタグを含んだ装置の一応用例として、RFタグを含んだRFIDシステムの様子を示す斜視図である。なお、ここでは、RFタグの一例として図5(A)等を参照して示したLEDによる発光部ELを搭載したRFタグ260を適用するものとして説明するが、他のタイプのRFタグを適用することも可能である。
図7に示すRFIDシステム100は、RFタグ260に相当するRFタグでありLED光源である発光部ELをそれぞれ有するとともに横並びに配置される複数のRFタグ260A,260B,260C…と、各RFタグ260A,260B,260C…がそれぞれ取り付けられた管理対象50A,50B,50C…と、RFタグ260A,260B,260C…についてのデータ読取り等を行うリーダーライター装置90とを備える。
リーダーライター装置90は、信号の送受信用の単数又は複数のRFIDアンテナで構成されるアンテナ装置10と、アンテナ装置10を駆動するリーダーライター30と、アンテナ装置10を収納するとともに複数の管理対象50A,50B,50C…が載置される載置部70と、各種情報処理を行う情報処理装置80とを備える。
アンテナ装置10は、載置部70に内蔵されて例えば平面型のループ状のアンテナで構成されており、載置部70の載置面70aに開口部を対向させて、各RFタグ260A,260B,260C…との通信可能な領域RA1を形成している。
リーダーライター30は、詳細な説明を省略するが、送信信号を生成する送信回路と、受信信号を受け取って解読する受信回路と、リーダーライター30の動作を制御して例えば検出動作等の各種動作を行なわせ、載置面70aの領域RA1内に配置された各RFタグ260A,260B,260C…との各種情報交換や給電が可能となっている。
情報処理装置80は、リーダーライター30を動作させて複数の管理対象50A,50B,50C…に取り付けられた複数のRFタグ260A,260B,260C…との交信や給電を行うための各種情報処理を行う装置であり、例えばPC端末等といった各種入力装置等を備えてデータ管理処理を可能にするリーダーライター30の上位機器として動作可能な種々のものが適用できる。また、情報処理装置80には、例えば処理に基づく画像表示を行う画像表示部のような出力装置が設けられていてもよい。
ここで、各RFタグ260A,260B,260C…がそれぞれ取り付けられた管理対象50A,50B,50C…についても、種々のものが考えられるが、一典型例としては、ファイル庫や書棚に収納されるファイル書類や本、封筒といった比較的薄くて平らな形状のものを横方向に多数配置するようなものが考えられる。
RFIDシステム100では、図示のように、各RFタグ260A,260B,260C…のタグアンテナ61の開口部OPが、載置部70のうちアンテナ装置10のループアンテナ面に対応する載置面70a(図1(A)等の基準面SSに相当)に対向するように配置されていることで、各RFタグ260等とリーダーライター装置90との間での通信や給電が可能となっている。
以上のような態様の場合、例えばリーダーライター装置90を動作させて特定の管理対象(例えば管理対象50A)に取り付けられたRFタグ(RFタグ260A)の発光部ELを光らせることで、特定の管理対象の場所を利用者に報知する(検索対象の位置を知らせる)ことができる。より具体的には、例えばRFIDシステム100に組み込まれた情報処理装置80から検索対象となるRFタグ(例えばRFタグ260A)のIDをリーダーライター装置90(すなわちリーダーライター30)に送信し、そのIDを指定した制御信号をリーダーライター30から送信することで、検索対象となるRFタグ260Aに搭載された発光部ELを制御し、利用者に検索対象のRFタグ260Aの所在を通知するといったことができる。
また、リーダーライター装置90と各RFタグ260A,260B,260C…との間での通信等を行うに際して、図示のように、隣り合う各RFタグ260A,260B,260C…は、上述した角度θ傾斜した配線部分を有した構造となっている。すなわち、図中の例えば一のRFタグ260Aの第1配線部分L1Rが他のRFタグ260Bの第2配線部分L2Lに近接して角度θ(角度差2θ)をなして配置されている。これにより、各RFタグ260A,260B,260C…間での互いの干渉が抑制される。
以上のように、上記RFIDシステム100では、RFタグ260A,260B,260C…間における相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることができ、共振周波数がずれにくいものとなり、高効率にリーダーライター30との間での通信や給電を行うことができる。
図8は、RFタグを含んだ装置の他の一応用例としてのRFIDシステムの様子を示す斜視図である。図7で例示したRFIDシステム100では、本発明にかかる形状構造を有する1つのRFタグ(例えばRFタグ260)を、1つの管理対象に対して取り付けるものとしていた。これに対して、図8に例示するRFIDシステム200では、1つのRFタグ260を、複数の管理対象に対して取り付けるものとしている。なお、RFIDシステム200は、図7のRFIDシステム100の変形例であり、特に説明しない部分については、RFIDシステム100と同様であるものとする。
以下、図8に示すRFIDシステム200について説明する。まず、各RFタグ260A,260B,260Cは、複数(例えば3つ)の管理対象に対して1つが対応している。より具体的に説明すると、例えば1つのRFタグ260Aは、3つの管理対象150A,151A,152Aを収納する収納ボックス160Aに取り付けられている。同様に、RFタグ260Bは、3つの管理対象150B,151B,152Bを収納する収納ボックス160Bに取り付けられ、RFタグ260Cは、3つの管理対象150C,151C,152Cを収納する収納ボックス160Cに取り付けられる、といった具合になっている。
この場合、例えばリーダーライター装置90を動作させて特定の管理対象(例えば管理対象150A等)を収納された収納ボックスの単位で管理することができる。なお、個々の管理対象150A等については、例えばRFタグ260A等とは異なるタイプであってRFタグ260A等での通信等に影響を与えない種々のタイプのタグTGをそれぞれ取り付けておくことで別途管理可能としてもよい。なお、図8では、説明のため、厚みのあるものを管理対象として描いているが、管理対象が、例えば紙書類等の非常に薄いものである場合には、各RFタグ260A,260B,260Cは、非常に近接して設置されることになる。
〔第3実施形態〕
以下、図9を参照して、本発明の第3実施形態に係るRFタグについて説明する。なお、第3実施形態に係るRFタグは、第1実施形態等を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態等と同様であるものとする。
図9(A)は、本実施形態に係るRFタグ560の一例について説明するための斜視図であり、図9(B)は、図9(A)に示すRFタグ560の配置の一例について説明するための図であり、図9(C)は、図9(A)に示すRFタグ560の配置の他の一例について説明するための図である。
図示のように、本実施形態のRFタグ560では、タグアンテナ561を構成する4つの第1〜第4配線部分LnR,LnL,LnF,LnBのうち、第1及び第2配線部分LnR,LnLのみならず、第3及び第4配線部分LnF,LnBについても、角度θだけ傾斜して延びている。具体的には、第3配線部分LnFと第4配線部分LnBとは、直方体状の基板SBの表面及び裏面上に沿って(すなわちZX面に平行に)直線状に延び、XY面に対してそれぞれ角度θだけ傾斜して非平行となって延びている。ただし、傾斜のしかたは互いに逆向きとなっている。すなわち、一方が仰角(図示では第3配線部分LnF側を+θとしている)であるとすれば、他方がこれに対して俯角(図示では第4配線部分LnB側を−θとしている)となっている。この場合、図9(B)や図9(C)に示すように、隣接するRFタグ560について、2次元的に配置させることができる。すなわち、平面視矩形状のタグアンテナ561をそれぞれ有する複数のRFタグ560を、図9(B)に示すように格子状に並べたり、図9(C)に示すように千鳥状に並べたりすることが可能である。なお、タグアンテナ561において、第3配線部分LnFと第4配線部分LnBとがなす角度θについては、第1配線部分LnRと第2配線部分LnLとがなす角度θと同じである場合も異なる場合も生じ得る。例えば、各配線の長さが等しい場合には、同じ角度とすることが考えられ、長さが異なる場合には、角度も異なる場合があると考えられる。
〔第4実施形態〕
以下、図10を参照して、本発明の第4実施形態に係るループアンテナ及びリーダーライター用のループアンテナを有するRFIDシステムについて説明する。
本実施形態についての具体的な説明をするに先立って、上記第1〜第3実施形態に係るRFタグに適用したタグアンテナの形状や構造に関して再度考察する。例えば上記第1〜第3実施形態に係るRFタグに適用したタグアンテナ(ループアンテナ)は、既述のように、コイルによって構成され、流れる電流によって形成される磁場にエネルギーを蓄えるインダクターで構成されるものでありこのインダクターあるいはループアンテナが特徴的な形状及び構造を有している、と捉えることも可能である。すなわち、まず、インダクターあるいはループアンテナが、環状であり、対向する配線箇所として所定の角度で配置され非平行となっている第1配線部分と第2配線部分とを有して立体的な開口部を形成したものとなっている。この上で、当該インダクターあるいはループアンテナは、複数配置されてデータがそれぞれ読み取られるRFタグ用に適用されるべきものとして組み込まれている。この結果、一のタグアンテナ(ループアンテナ又はインダクター)の第1配線部分が他のタグアンテナ(ループアンテナ又はインダクター)の第2配線部分に近接して所定の角度をなして配置されるものとなっている。上記第1〜第3実施形態において、以上のように考えることができる。
これを踏まえた上で、本実施形態は、上記のようなループアンテナ(インダクター)の利用に関して、さらに別の態様で応用したものの一例を示すものであり、ここでは、図10を参照して、リーダーライター(リーダーライター装置)用のループアンテナ(インダクター)を有するRFIDシステムの一例について説明する。すなわち、無線タグ(RFタグ)とのデータ通信を行うリーダーライター装置に設けるRFIDアンテナ用として上記ループアンテナ(インダクター)を適用する。
図示のように、本実施形態に係るRFIDシステム300は、複数の管理対象にそれぞれ取り付けられた無線タグすなわちRFタグ(図示略)についてのデータ読取り等を行うリーダーライター装置として、複数のRFIDアンテナ(ループアンテナ)で構成されるアンテナ装置310と、アンテナ装置310を駆動するリーダーライター30と、各種情報処理を行う情報処理装置80とを備える。また、このほか、RFIDシステム300は、マッチング回路装置MCと、アンテナ切替器20とを備える。
アンテナ装置310は、直方体形状を有する複数のアンテナ装置ブロック311を、格子状に並べて構成されている。各アンテナ装置ブロック311には、RFIDアンテナとしてのループアンテナが設けられている。具体的には、例えばアンテナ装置ブロック311a(311)に例示するように、アンテナ装置ブロック311aにRFIDアンテナ(ループアンテナ)312aが設けられている。このRFIDアンテナ312aは、図示のように、図9(A)に示すタグアンテナ561と同様の形状及び構造を有している。すなわち、RFIDアンテナ312aは、4つの第1〜第4配線部分LnR,LnL,LnF,LnBで構成され、4つの第1〜第4配線部分LnR,LnL,LnF,LnBのうち、第1及び第2配線部分LnR,LnLについても、第3及び第4配線部分LnF,LnBについても、角度θだけ互いに逆向きとなって傾斜して延びている。これにより、複数のアンテナ装置ブロック311を格子状に配置した場合であっても、RFIDアンテナ間での相互作用による影響を抑制して、共振周波数がずれにくいものとなっている。
リーダーライター30は、詳細な説明を省略するが、送信信号を生成する送信回路と、受信信号を受け取って解読する受信回路と、リーダーライター30の動作を制御して例えば検出動作等の各種動作を行なわせ、アンテナ装置310を介して各RFタグとの各種情報交換や給電が可能となっている。
なお、アンテナ装置310は、アンテナ装置ブロック311を並べた結果、複数の管理対象が載置されるXY面に平行な載置面を形成する載置部としても機能する。
情報処理装置80は、リーダーライター30を動作させてRFタグとの通信や給電を行うための各種情報処理を行う装置であり、例えばPC端末等の各種入力装置等を備えてデータ管理処理を可能にする種々のものが適用できる。また、情報処理装置80には、例えば処理に基づく画像表示を行う画像表示部のような出力装置が設けられていてもよい。
マッチング回路装置MCは、図示のように、複数のマッチング回路MCnを備える。各マッチング回路MCnは、複数のアンテナ装置ブロック311を構成するRFIDアンテナ312a等の各RFIDアンテナにそれぞれ個別に接続されている。なお、アンテナ装置ブロック311のRFIDアンテナは、全体として2次元的な広がりを有するアンテナ面を形成している。また、マッチング回路装置MCは、RFIDアンテナとマッチング回路MCnとの間に配置されてRFIDアンテナを個別に短絡することができるスイッチ回路(図示略)をさらに有している。また、マッチング回路装置MCは、アンテナ装置310とリーダーライター30との間にアンテナ切替器20を介して配置されている。以上のような構成により、マッチング回路装置MCは、リーダーライター30とアンテナ切替器20を介して接続されたリーダーライター30からの制御信号に従って、各RFIDアンテナとの整合処理を行う。すなわち、マッチング回路装置MCは、リーダーライター30から出力する電波(キャリア信号)の周波数に合わせて、アンテナ装置310を構成する各アンテナ装置ブロック311のRFIDアンテナ312aを共振させるべくインピーダンスと共振周波数とについての調整を行う。つまり、リーダーライター30の出力インピーダンスと、アンテナの入力インピーダンスとを整合させる(例えば、特性インピーダンス50Ωに合わせる)。これにより、アンテナ入力端でキャリア信号の反射が発生せず、リーダーライター30からアンテナ側に効率よく伝えるようにしている。
アンテナ切替器20は、上記のように、リーダーライター30からの制御信号に基づいて動作しており、ここでは、複数のアンテナ装置ブロック311を構成するRFIDアンテナを循環的に選択して動作させアンテナ面全体をスキャンする。この際、アンテナ切替器20は、RFIDアンテナのうち選択されず動作させないループアンテナについては短絡させる。言い換えると、リーダーライター30は、管理対象である無線タグ(RFタグ)からのデータを読取り等を行うアンテナとして、アンテナ装置310を構成するRFIDアンテナのうちいずれかのRFIDアンテナを選択した時に、このRFIDアンテナに接続されたスイッチ回路が開放状態となることで共振アンテナとして機能させる。一方、選択していないRFIDアンテナに接続されたスイッチ回路が短絡状態となることで、当該RFIDアンテナは、共振アンテナとして機能しなくなる。以上の動作をアンテナ装置310全体において繰り返すことで、アンテナ面全体をスキャンして無線タグ(RFタグ)の位置検知等を行うことが可能となる。
以上のように、複数のRFIDアンテナを切り替えながら無線タグ(RFタグ)との交信を行うことで、各RFIDアンテナの磁界強度を強い状態に維持しつつ広いアンテナ面全体について無線タグ(RFタグ)の位置検知等を行うことができる。
ここで、一般に、RFIDシステムに関して、通信のほか電力を受けるRFタグ側に限らず、電力供給等をする側であるリーダーライター(リーダーライター装置)においても、複数のアンテナを横並びに配置したような場合には、相互インダクタンスの影響で共振周波数がずれて性能が低下したり使えなくなったりする可能性がある。具体的には、リーダーライター用の複数のループアンテナを近接して配置すると、相互インダクタンスの影響でループアンテナの自己インダクタンスの値がずれ、その結果、各ループアンテナにおける入力インピーダンスと共振周波数がずれて、アンテナ入力端でキャリア信号の一部が反射し、各ループアンテナへの入力信号レベルが下がってしまう。このため、各ループアンテナから放射される電波の効率が悪くなり、リーダーライター(リーダーライター装置)の本来の性能が発揮できなくなるおそれがある。例えば各RFIDアンテナの磁界強度が近接するRFIDアンテナの影響で弱まってしまい、交信距離が低下したり不安定になったりする等の可能性がある。
これに対して、本実施形態のRFIDシステム300においては、上記のような形状・構造を有するRFIDアンテナ(RFIDアンテナ312a)を適用することで、近接して複数配置した場合であっても、リーダーライター(リーダーライター装置)側を構成する複数のRFIDアンテナの間での相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることで、各RFIDアンテナ312aの入力インピーダンスや共振周波数がずれにくくなり、アンテナの放射効率もほぼ変化しないものとなり、リーダーライター30(リーダーライター装置)側において共振周波数がずれにくいものとなり、無線タグ(RFタグ)との交信距離が低下しない、安定した性能のRFIDシステム300を構築することが可能となる。また、本願発明の構成では、上記のようなスキャン動作をする場合において、選択しているRFIDアンテナに、他のRFIDアンテナが近接していても影響を与えないようにでき、データの読み取り等が確実に行われるものとなっているので、飛び飛びのエリアでしか検知できないためにアンテナ間でヌルポイントが発生してしまうといった事態が回避され、精度の高い無線タグ(RFタグ)の位置検知が可能になる。
なお、上記の例では、複数のRFIDアンテナ(ループアンテナ)312aが、1つのマッチング回路装置MCが複数のマッチング回路MCnを有し、マッチング回路装置MCが1つのアンテナ切替器20を経由して1つのリーダーライター30及び1台の情報処理装置80に接続されているが、これに限らず、例えば、1つのループアンテナ、1つのマッチング回路及び1つのリーダーライターを1セットとして、複数のセットが、1台の情報処理装置に接続されるものとしてもよい。なお、この場合、例えば情報処理装置がアンテナ切替えの役割も担うものとする態様が考えられる。また、本願発明の構成では、隣接するアンテナ間での影響が相殺されているため、ノイズ等も相殺され、これにより複数のリーダーライターの同時動作が可能であれば、各リーダーライターが並列的に無線タグの読取処理を行う態様とすることも考えられる。
〔第5実施形態〕
以下、図11を参照して、本発明の第5実施形態に係るループアンテナ及びループアンテナを有する非接触型の給電装置について説明する。
第4実施形態では、ループアンテナ(インダクター)を含むものの一応用例として、リーダーライター用のループアンテナを有するRFIDシステムについて説明したが、本実施形態では、他の一応用例として、複数のループアンテナを有する非接触型の給電装置の一例について説明する。すなわち、非接触型の給電装置において他の装置へ給電させるためのアンテナとして上記ループアンテナを適用する。
図11(A)及び11(B)は、本実施形態に係るループアンテナを有する非接触型の給電装置の一例について説明するための分解斜視図及び斜視図である。
図示のように、本実施形態に係る非接触型の給電装置400は、電力を供給するための複数の給電アンテナ(ループアンテナ)で構成されるアンテナ装置410と、複数配置されたアンテナ装置410を覆って収納するとともに給電対象を載置させる載置面を形成するカバー部材420とを備える。すなわち、非接触型の給電装置400は、図11(A)及び11(B)に示すように、平面的に並べて配置された複数のアンテナ装置410をカバー部材420で覆うように収納した構成となっている。なお、詳細な説明は省略するが、図10の場合と同様に、複数のアンテナ装置410を構成する各アンテナは、それぞれ個別のマッチング回路と接続している。
複数のアンテナ装置410は、直方体形状を有して、格子状に並べて構成されている。各アンテナ装置410には、給電アンテナとしてのループアンテナがそれぞれ設けられている。具体的には、例えば1つのアンテナ装置410a(410)に例示するように、アンテナ装置410aに給電アンテナ(ループアンテナ)412aが設けられている。この給電アンテナ412aは、図示のように、図9(A)に示すタグアンテナ561と同様の形状及び構造を有している。すなわち、給電アンテナ412aは、4つの第1〜第4配線部分LnR,LnL,LnF,LnBで構成され、4つの第1〜第4配線部分LnR,LnL,LnF,LnBのうち、第1及び第2配線部分LnR,LnLについても、第3及び第4配線部分LnF,LnBについても、所定の角度だけ互いに逆向きとなって傾斜して延びている。これにより、複数のアンテナ装置410を格子状に配置した場合であっても、給電アンテナ間での相互作用による影響を抑制して、共振周波数がずれにくいものとなっている。
一般に、非接触型の給電装置を構成する給電用のアンテナにおいては、複数のループコイルを平面上に並べて構成するもの(コイルアレイ型)が考えられ、給電効率を高めるために通常はLC共振させていると考えられる。
これに対して、本実施形態の非接触型の給電装置400においては、複数の給電アンテナの間での相互インダクタンスの影響が略及ばないようにすることで、非接触型の給電装置側において共振周波数がずれにくいものとなり、非接触型の給電装置による共振を利用した電力供給を高効率なものにすることができる。したがって、上記特性を有するループアンテナを給電アンテナに適用することで、隣接した給電アンテナの影響で性能が大きく変わることが無く、非接触型の給電装置の設計が容易となると考えられる。
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図1(A)等に示したタグアンテナ61では、基板SBの表面と裏面とで、配線パターンやエナメル線等のワイヤーを互い違いの斜め向きに巻き付けることで環状に形成されるものとしているが、かかるタグアンテナ等の具体的な製造方法については種々のものが考えられる。
図12(A)〜12(C)は、上記実施形態に適用可能なRFタグの製造方法について一例を説明するための図であり、ここでは、基板SBの表面と裏面とに配線パターンを形成してRFタグを製造する方法の一例について説明する。
まず、図12(A)に示すように、基板SBの表面S1と裏面S2とに、第1配線部分LnRと第2配線部分LnLとになるべき第1配線パターンP1と第2配線パターンP2とを、それぞれフィルム印刷等により形成する。これにより、プリント基板SBaが形成される。第1及び第2配線パターンP1,P2は、図示のように例えばプリント基板SBa(基板SB)のエッジEGの延びる方向に対して特定の角度差2θ(例えば角度差2θ=16°)に互いに異なる向きに傾斜して、所定の間隔及び本数(巻き数又はターン数に相当)の配線部分を有している。
次に、図12(B)に示すように、プリント基板SBa(基板SB)のうち第1及び第2配線パターンP1,P2の端部に貫通孔であるスルーホールTHが形成され、さらに、図12(C)に示すように、スルーホールTHに表面S1と裏面S2との通電のための処理を施して第3配線部分LnFと第4配線部分LnBとになるべき箇所や他の必要な箇所の配線部分を作製する。以上により、タグアンテナ61が形成される。またタグアンテナ61の形成とともに、チップ部TPとタグアンテナ61との接続を行うことで、RFタグ60が作製される。
また、上記実施形態において適用可能なアンテナの形状についても、種々のものが考えられ、例えばアンテナを構成する配線部分については、開口部についての平面視形状が矩形状であるものに限らず、六角形状のものや、円形状のもの等、種々の形状のものが適用できる。ただし、上記のように近接させた場合に相互の影響を相殺させるべく特に近接する箇所に関して所望の角度で傾斜させておく必要がある。図13(A)及び13(B)は、上記実施形態に適用可能なループアンテナの第1及び第2配線部分LnR,LnLの一変形例について概念的に説明するための図であり、図13(B)は、他の一変形例について概念的に説明するための図である。図13(A)の例では、第1及び第2配線部分LnR,LnLの形状を鋸状にして複数の傾斜部分があるものと四角傾斜部分は同じ角度θに傾き、かつ、第1配線部分LnRと第2配線部分LnLとでは逆向きに傾くようになっている。すなわち、角度差2θをなす位置関係となっている。図13(B)では、第1配線部分LnRと第2配線部分LnLとについて、一方を山型(図示では第1配線部分LnR)、他方を谷型(図示では第2配線部分LnL)とすることも考えられる。ただし、この場合、他の場合よりも対称性が低く、複数のRFタグを横並びさせるに際して、山型どうし、あるいは谷型どうしが最も近接した状態とならないように配置させる必要がある。また、このほか、例えば第1配線部分LnRと第2配線部分LnLとのうち一方のみ傾斜させて他方を経基準面SSa(図2(C)参照)に対して平行としてもよい。また、各配線部分について、直線状のものだけではなく円弧状のものとなっていてもよい。
また、上記では、RFタグを、電池非搭載式としているが、電池搭載式のRFタグにおいて、本願発明を適用するものとしてもよい。