以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る光通信装置1の側面図である。図1は、Y−Z平面を表し、X軸は紙面を貫く手前向きの軸である。ここで、X軸は、後述するSOI基板23に水平であって、後述するレバー20の延伸方向と直交する向きの軸であり、Y軸及びZ軸とともに右手系の座標軸を構成する。Y軸は、後述するSOI基板23に垂直であって、SOI基板23の積層方向を正の向きとする軸である。また、Z軸は、後述するレバー20の延伸方向に平行であって、レバー20のハンドル部20aから支点への向きを正の向きとする軸である。本実施形態に係る光通信装置1は、半導体レーザ10、レバー20、第2の鏡21、第2のレンズ22、及びシリコン導波路31を含む。半導体レーザ10は、光を出力する光源である。半導体レーザ10は、光を発生させ、光の導波路となる活性層11と、活性層11の端面から出力されたレーザ光を図1の下側(−Y軸方向)に反射する第1の鏡12と、第1の鏡12で反射された光を平行光に変換する第1のレンズ13とを含む。ここで、第1の鏡12は、直角三角形状を有し、反射面がおおよそ45度傾いている。また、第1のレンズ13は、第1の鏡12で反射された光を必ずしも平行光に変換しなくてもよく、集束光や発散光に変換するものであってもよい。本実施形態では、第1の鏡12及び第1のレンズ13は、半導体レーザ10に内蔵されているが、第1の鏡12及び第1のレンズ13の両方又は一方は、半導体レーザ10と別体で形成されてもよい。また、光源として端面出射型レーザではなく、面出射型レーザ等を用いることとしてもよい。なお、本実施形態に係る光通信装置1に備えられた半導体レーザ10は、波長がおおよそ1310nmであるレーザ光を出力するものとする。もっとも、レーザ光の波長は、光通信において通常用いられる1.3μm帯、又は1.55μm帯であってもよい。
半導体レーザ10は、サブマウント14に搭載され、サブマウント14は基板15に固定される。半導体レーザ10は、基板15と一体となった状態で、スペーサ24を挟んで、光回路30等が配置されたSOI基板23の上に搭載される。
レバー20は、支点を有し、Z軸方向の長さが1mm程度である。レバー20は、SOI(Silicon On Insulator)層をエッチングすることで形成される。一般に、SOI層は、SOI基板23の最上層である。SOI基板23は、下層から順に、Si基板と、酸化シリコン層と、単結晶シリコン層であるSOI層とが積層されて形成される。
第2の鏡21は、光源である半導体レーザ10の出力したレーザ光を図1左側(+Z軸方向)に反射する。本実施形態では、第2の鏡21は、図1に示すように側面から見た場合におおよそ直角三角形状を有し、斜辺を挟む二辺はそれぞれ200μm程度の長さを有する。本実施形態において、第2の鏡21は、SOI層をエッチングすることで形成され、レバー20とともに形成される。第2の鏡21及びレバー20を形成するためのエッチングは、ドライエッチング及びウェットエッチングのいずれを用いてもよいし、その組合せであってもよい。なお、レバー20及び第2の鏡21は、それぞれ単体で形成し、光通信装置1に組み込むこととしてもよい。レバー20及び第2の鏡21を一体で形成することで、組み立て時の位置合わせが省略でき、全体として光通信装置1の製造工程が簡略化される。なお、第2の鏡21の反射面は、反射率を向上させるため、金属等が蒸着されていることが望ましい。
第2の鏡21は、SOI層に異方性ウェットエッチングを施すことにより形成してもよい。シリコンの場合、水酸化カリウムによるウェットエッチングで傾斜角が約54°の結晶面を形成することができる。この結晶面の形成を第2の鏡21の反射面とすることができる。その場合、例えば第1の鏡12の反射面を活性層11の端面側に約18°傾ければ、第2の鏡21で反射された光はSOI基板23とほぼ平行に進行することとなる。
第2のレンズ22は、第2の鏡21で反射されたレーザ光を集束させて、光回路30に含まれるシリコン導波路31に結合させる。本実施形態において、第2のレンズ22は、シリコンで形成した平凸レンズであり、レンズの曲率半径は250μm程度、焦点距離は100μm程度である。第2のレンズ22の表面には、低反射膜によるコーティングがされていることが望ましい。なお、第2のレンズ22は、ガラス等の材料で形成したレンズであってもよい。また、光通信装置1が備えるレンズの個数は2以外であってもよい。
シリコン導波路31は、第2のレンズ22により集束された光を伝送し、SOI基板23のSOI層に形成される。より具体的には、第2のレンズ22は、レーザ光をその波長程度(1.3μm程度)のスポットサイズまで集束させる。一方、シリコン導波路31のコアの断面は、0.22μm×0.5μm程度の矩形であり、シングルモード構造である。シリコン導波路31のコアの断面幅は、最大でも0.5μm程度であり、半導体レーザ10の出力するレーザ光の波長(1.3μm程度)よりも小さい。そのため、第2のレンズ22で集束されたレーザ光を直接シリコン導波路31に結合させると著しい損失が生じる。そこで、本実施形態に係る光通信装置1では、特許文献1等に開示されたスポットサイズ変換器を用いて、第2のレンズ22で集束したレーザ光をさらに集束させ、シリコン導波路31に結合する。スポットサイズ変換器の配置については、図3において説明する。また、第2のレンズ22とスポットサイズ変換器との間の距離(第2のレンズ22の主点から、スポットサイズ変換器の第2のレンズ22側の端面までの距離)は、第2のレンズ22の焦点距離とする。本実施形態では、第2のレンズ22の焦点距離は100μm程度であるから、第2のレンズ22とスポットサイズ変換器との間の距離が100μm程度となるように位置合わせする必要がある。なお、本明細書において光を光学系に結合させるとは、結合効率(光学系に入射する前の光の強度と、光学系に入射した後の光の強度との対数比)がその最高値から所定の範囲内に収まるように光学系の位置合わせを行うことをいうものとする。例えば、結合効率は、その最高値から5dB以内に収めることとすればよく、望ましくは1dB以内に収めることとする。
図2は、本発明の実施形態に係る光通信装置1の平面図である。図2は、X−Z平面を表す。図2では、レバー20等の配置を示すため、基板15、サブマウント14、及び半導体レーザ10は図示していない。
レバー20は、SOI基板23の溝の内側に形成される。レバー20は、第2のレンズ22が配置される側(図2の左側)の端部を支点とする片持梁形状である。レバー20は、ジグザグ形状部を有し、支点と反対側の端部であるハンドル部20a(図2では符号を図示せず)に外力を作用させることによって、ジグザグ形状部がバネとして働き、ハンドル部を変位させることができる。第2の鏡21は、レバー20の上に配置され、レバー20のハンドル部に外力が作用すると、ハンドル部の変位に応じて変位する。ただし、完成品としての光通信装置1では、レバー20は固定体である半田25により固定されている。本実施形態に係る光通信装置1は、出荷前の調整工程において、レバー20に外力を加えて第2の鏡21を変位させることにより、光源とシリコン導波路31との結合を調整する。その後、固定工程において、レバー20を半田25で固定する。なお、固定体は、紫外線硬化樹脂や接着剤であってもよい。
本実施形態に係る光通信装置1は、光源として10個の半導体レーザ10を備える。それぞれの半導体レーザ10から出力された光は、独立に形成された第2の鏡21で反射され、一体形成されたレンズ22に入射し、シリコン導波路31により伝送される。本実施形態において、10個の半導体レーザ10は、X軸方向に250μm間隔で配置される。ここで、10個の第2の鏡21は、それぞれ独立に形成されたレバー20を動かすことにより独立に位置を調整することができる。本実施形態に係る光通信装置1は、レバー20を独立に動かすことで、複数の光源から出力された光を複数のシリコン導波路31に結合させることができる。なお、光通信装置1に含まれる光源の数は10個以上でも未満でもよい。
図3は、本発明の実施形態に係る光回路30の平面図である。図3は、X−Z平面を表す。図3では、光回路30の内部構造を示している。光回路30は、シリコン導波路31の他、スポットサイズ変換器32と、フォトダイオード33と、光変調器34と、ファイバ結合器35とをさらに備える。本実施形態に係る光通信装置1では、第2のレンズ22で集束されたレーザ光は、はじめにスポットサイズ変換器32に入射する。スポットサイズ変換器32は、直径1.3μm程度であるレーザのスポットサイズを、直径0.5μm程度のスポットサイズまで集束させる。具体的に、スポットサイズ変換器32は、第2のレンズ22側の端面が2μm角の窒化シリコン導波路であり、シリコン導波路31側に進むにつれて窒化シリコン導波路に埋め込まれたシリコン導波路の断面積が拡大し、シリコン導波路31に連続的に接続する。窒化シリコンの屈折率は約2であり、シリコン導波路の屈折率は約3.5である。そのため、レンズ22側の端面からシリコン導波路31側へ光が進むとき、光は窒化シリコン導波路により規定される分布からシリコン導波路により規定される分布に遷移し、シリコン導波路により光の分布が規定される領域では、シリコン導波路と窒化シリコン導波路の界面で全反射が起こり、光はシリコン導波路に集束される。
シリコン導波路31により伝送される光のうち数%は分岐され、光検出器であるフォトダイオード33により光の強度が検出される。本実施形態に係る光通信装置1の製造工程では、検出される光の強度を最大化するようにレバー20を動かし、第2の鏡21の位置合わせを行う。このように、光回路30にフォトダイオード33を内蔵することにより、光回路30に光ファイバを接続せずともレーザ光とシリコン導波路31との結合を行うことができる。光検出器を光回路30の外部に配置する場合、光回路30に光ファイバを接続し、光ファイバに光検出器を接続することとなる。そのため、光源とシリコン導波路31との結合に加えて、光回路30と光ファイバとの結合を行わなければ光検出が行えないこととなる。シリコン導波路31は断面積が従来の導波路に比べて小さく、光源との結合が比較的困難であるため、光回路30と光ファイバとの結合を併せて行うことはさらに困難となる。本実施形態のように、光回路30に光検出器であるフォトダイオード33を内蔵することとすれば、光回路30と光ファイバの結合を行わなくとも、光源とシリコン導波路31との結合を行うことができる。
本実施形態では、光変調器34は、マッハツェンダ変調器である。光変調器34は、外部信号により制御され、シリコン導波路31により伝送されるレーザ光を変調し、光信号を生成する。光変調器34により生成された光信号は、ファイバ結合器35により、光回路30の外部に接続される光ファイバに伝送される。
図4は、本実施形態に係るレバー20による調整工程を示す平面図である。図4は、X−Z平面を表す。レバー20は、ハンドル部20a等の支点以外の部分が固定されていない場合には、外力により、延伸方向と直交する方向にたわむ。ここで、レバー20の延伸方向は、Z軸方向であり、延伸方向と直交する方向は、X軸方向及びY軸方向である。レバー20は、支点以外の部分が固定されていない場合には、第2のレンズ22側に位置する支点と、外力が加えられる力点であるハンドル部20aと、第2の鏡21が配置される作用点と、を有する第2種てこ(作用点を力点と支点の間に置いたてこ)である。第2種てこでは、力点と作用点の位置関係により定まる1未満の倍率により、力点の変位量が作用点の変位量に変換される。
具体的に、図4は、ハンドル部20aに対して+X軸方向に外力が加えられ、レバー20が+X軸方向にたわむ様子を示している。レバー20が+X軸方向にたわむことで、レバー20上に配置された第2の鏡21の反射面は、Y軸を回転軸として、Y軸を正から負の向きに見て時計回りにθy回転する。本明細書では、反時計回りに回転する角度を正の回転角とする。そのため、図4は、第2の鏡21が負の角度回転した場合を示している。
第2の鏡21がY軸まわりにθy回転すると、半導体レーザ10から出力された光は、回転前よりも−X軸方向にずれて反射されることとなる。本実施形態に係る光通信装置1の調整工程では、レバー20のハンドル部20aに外力を作用させ、半導体レーザ10から出力されたレーザ光がシリコン導波路31に結合するように、第2の鏡21のY軸まわりの角度を調整する。
図5は、本発明の実施形態に係る第2の鏡21の回転角θyと結合効率の関係を示すグラフである。横軸は、第2の鏡21のY軸まわりの回転角θyを度の単位で示している。縦軸は、半導体レーザ10から出力されたレーザ光の強度ILASERと、シリコン導波路31内を伝送される光の強度IGUIDEの対数比10×log10(IGUIDE/ILASER)である結合効率(coupling efficiency)を示している。ここで、シリコン導波路31内に伝送される光の強度IGUIDEは、光回路30に内蔵されるフォトダイオード33により検出される光の強度、及びシリコン導波路31とフォトダイオード33が接続される導波路との光の分岐比に基づいて算出される。
図5の曲線Vaは、第2の鏡21を変位させずとも、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の回転角θyと結合効率の関係を示す。曲線Vaの場合、レバー20に外力を加えず、第2の鏡21を回転させない場合(θy=0の場合)に結合効率が最大となる。曲線Vaの場合、レバー20をどちらの方向に変位させても結合効率が下がることとなる。
また、図5の曲線Vbは、第2の鏡21を正の向きに回転させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の回転角θyと結合効率の関係を示す。曲線Vbの場合、レバー20に−X軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を正の向きに回転させる場合(θy>0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線Vbの場合、θy≒1°で結合効率が最大となる。曲線Vbの場合、第2の鏡21を正の向きに回転させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図5の曲線Vcは、第2の鏡21を負の向きに回転させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の回転角θyと結合効率の関係を示す。曲線Vcの場合、レバー20に+X軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を負の向きに回転させる場合(θy<0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線Vcの場合、θy≒−1°で結合効率が最大となる。曲線Vcの場合、第2の鏡21を負の向きに回転させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図5の曲線Vdは、第2の鏡21を曲線Vbの場合よりも正の向きに大きく回転させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の回転角θyと結合効率の関係を示す。曲線Vdの場合、レバー20に−X軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を正の向きに回転させる場合(θy>0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線Vbの場合、θy≒2°で結合効率が最大となる。曲線Vdの場合、第2の鏡21を回転させない場合には結合効率は−10dB以下であるが、第2の鏡21を正の向きに回転させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図5の曲線Veは、第2の鏡21を曲線Vcの場合よりも負の向きに大きく回転させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の回転角θyと結合効率の関係を示す。曲線Veの場合、レバー20に+X軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を負の向きに回転させる場合(θy<0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線Veの場合、θy≒−2°で結合効率が最大となる。曲線Veの場合、第2の鏡21を回転させない場合には結合効率は−10dB以下であるが、第2の鏡21を負の向きに回転させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図6は、比較例におけるレバー20による調整工程を示す平面図である。図6は、X−Z平面を表している。比較例では、レバー20に第2のレンズ22が配置される。ここで、第2のレンズ22の焦点距離はレバー20のZ軸方向の長さより短いため、シリコン導波路31の入り口をレバー20と重畳する位置にまで第2のレンズ22側に近付けなければならない。第2のレンズ22として焦点距離が長いものを用いることも考えられるが、第2のレンズ22の屈折率を小さくすることで焦点距離を長くしようとすると、第2のレンズ22をSOI層のエッチングによりレバー20と共に形成することができなくなり、精密な位置合わせを必要とする工程が増加してしまう。また、第2のレンズ22の直径を変えずに曲率半径を大きくすることで焦点距離を長くしようとすると、F値が大きくなり十分な明るさが得られないこととなる。そのため、第2のレンズ22の材質を変えずに(屈折率を変えずに)、曲率半径を大きくすることで焦点距離を大きくする場合には、レンズの直径を大きくすることが望まれ、光通信装置が大型化してしまうという欠点がある。なお、レバー20の支点側により近付けて第2のレンズ22を配置することもできるが、その場合レバー20によるてこの倍率が小さくなりすぎて、光を導波路に結合する粗調整が困難になる。
比較例では、半導体レーザ10からのレーザ光は図6の紙面右側から第2のレンズ22に入射する。比較例におけるレバー20による調整工程では、レバー20のハンドル部20aにX軸方向の外力を加えて、第2のレンズ22の配置角度を調整して、光を導波路31に結合させる。
図7は、比較例における第2のレンズ22の移動量と結合効率の関係を示すグラフである。横軸は、第2のレンズ22のX軸方向の変位量Δxをμmの単位で示している。縦軸は、半導体レーザ10から出力された光の強度と、シリコン導波路31内を伝送される光の強度の対数比である結合効率(coupling efficiency)を示している。
図7の曲線VIIaは、第2のレンズ22を変位させずとも、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2のレンズ22の変位量Δxと結合効率の関係を示す。曲線VIIaの場合、レバー20に外力を加えず、第2のレンズ22を変位させない場合(Δx=0の場合)に結合効率が最大となる。曲線VIIaの場合、レバー20をどちらの方向に変位させても結合効率が下がることとなる。
また、図7の曲線VIIbは、第2のレンズ22を正の向きに回転させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2のレンズ22の変位量Δxと結合効率の関係を示す。曲線VIIbの場合、レバー20に+X軸方向の外力を加えて、第2のレンズ22を正の向きに変位させる場合(Δx>0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線VIIbの場合、Δx≒1μmで結合効率が最大となる。曲線VIIbの場合、第2のレンズ22を正の向きに変位させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図7の曲線VIIcは、第2のレンズ22を負の向きに変位させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2のレンズ22の変位量Δxと結合効率の関係を示す。曲線VIIcの場合、レバー20に−X軸方向の外力を加えて、第2のレンズ22を負の向きに変位させる場合(Δx<0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線VIIcの場合、Δx≒−1μmで結合効率が最大となる。曲線VIIcの場合、第2のレンズ22を負の向きに変位させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図7の曲線VIIdは、第2のレンズ22を曲線VIIbの場合よりも正の向きに大きく変位させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2のレンズ22の変位量Δxと結合効率の関係を示す。曲線VIIdの場合、レバー20に+X軸方向の外力を加えて、第2のレンズ22を正の向きに変位させる場合(Δx>0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線VIIbの場合、Δx≒2μmで結合効率が最大となる。曲線VIIdの場合、第2のレンズ22を変位させない場合には結合効率は−10dB以下であるが、第2のレンズ22を正の向きに変位させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図7の曲線VIIeは、第2のレンズ22を曲線VIIcの場合よりも負の向きに大きく変位させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2のレンズ22の変位量Δxと結合効率の関係を示す。曲線VIIeの場合、レバー20に−X軸方向の外力を加えて、第2のレンズ22を負の向きに変位させる場合(Δx<0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線VIIeの場合、Δx≒−2μmで結合効率が最大となる。曲線VIIeの場合、第2のレンズ22を回転させない場合には結合効率は−10dB以下であるが、第2のレンズ22を負の向きに変位させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図8は、本発明の実施形態に係るハンドル部20aの変位量と、第2の鏡21の回転角θyとの関係、及び比較例に係るハンドル部20aの変位量と、第2のレンズ22の変位量Δxとの関係を併せて示すグラフである。横軸は、レバー20のハンドル部20aの変位量Δxをμmの単位で示す。第1の縦軸(図8の左側に示された縦軸)は、比較例における第2のレンズ22の変位量Δxをμmの単位で示す。また、第2の縦軸(図8の右側に示された縦軸)は、本実施形態における第2の鏡21の回転角θyを度の単位で示す。比較例の場合、ハンドル部20aの変位量Δxを2μm〜10μmの範囲で変化させると、第2のレンズ22の変位量Δxは、0.5μm〜2.5μmの範囲で変化する。本実施形態の場合、ハンドル部20aの変位量Δxを18μm〜52μmの範囲で変化させると、第2の鏡21の回転角θyは、0.5°〜1.5°の範囲で変化する。
比較例の場合(図8のVIIIaで示すプロット点の場合)、ハンドル部20aを1μm変位させると、第2のレンズ22は0.25μm程度変位する。すなわち、レバー20によるてこの倍率は0.25程度である。比較例の場合、第2のレンズ22が結合効率最大となる位置から±0.4μm程度ずれると、結合効率は1dB程度低下する。そのため、結合効率について1dBの損失を許容する場合、ハンドル部20aを±1.6μm程度の精度で位置合わせしなければならない。
一方、本実施形態の場合(図8のVIIIbで示すプロット点の場合)、ハンドル部を1μm変位させると、第2の鏡21は0.03°程度回転する。本実施形態の場合、第2のレンズ22が結合効率最大となる角度から±0.4°程度ずれると、結合効率は1dB程度低下する。そのため、結合効率について1dBの損失を許容する場合、ハンドル部20aを±13μm程度の精度で位置合わせすればよいこととなり、比較例の場合よりも求められる精度が1/8程度になる。比較例と本実施形態とで、てこの倍率は変わらない。しかし、第2の鏡21からスポットサイズ変換器32までの距離をL1とし、第2の鏡21のX軸方向の変位量をΔxと表す場合、本実施形態における第2の鏡21の回転角θyは、θy≒−Δx/L1の関係にあるため、比較例の場合に比べて、第2の鏡21からシリコン導波路31までの距離L1の分だけ第2の鏡21の変位が小さくなり、第2の鏡21の微調整が容易となる。
図7に示したように、比較例の場合、第2のレンズ22をX軸方向に±2μm程度変位させて、レーザ光をシリコン導波路31に結合させる必要がある。ここで、レバー20は、半田25等の固定体により固定する際に±5μm程度変位してしまう。そのため、レバー20の位置合わせは±5μm程度の精度でしか行えない。レバー20が5μm程度変位すると、第2のレンズ22は1μm程度変位してしまうことになる。そのため、比較例の場合、調整工程で結合効率を最大に調整しても、固定工程の後に−5dB程度の損失が生じる場合がある。このように、比較例の場合、第2のレンズ22の位置合わせについて、粗調整はできるが、微調整が困難であるという欠点がある。
一方、本実施形態の場合、第2の鏡21を±2°程度回転させて、レーザ光をシリコン導波路31に結合する。本実施形態の場合、レバー20を固定する際にレバー20が±5μm程度変位したとしても、第2の鏡21は、±0.15°程度しか回転しない。そのため、本実施形態の場合、固定工程でレバー20の位置が±5μm程度変位したとしても、結合効率は調整工程で合わせた値からほとんど変化しない(図5参照)。よって、本実施形態に係る光通信装置1によれば、広範囲かつ高精度にレーザ光の光軸調整ができ、レーザ光をシリコン導波路31に結合する粗調整と微調整の両方を簡便に行える。仮に、本実施形態と同程度の精度を比較例において得ようとした場合、レバー20の長さを数cmとする必要が生じてしまい、装置の大型化やレバー20の強度低下といった弊害が生じる。
さらに、例えば特許文献4で開示されているようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)機構を用いてレバーを絶えず稼動させて最適な光結合状態を保とうとした場合、MEMSを動作させるための高電圧電源や、制御するためのフィードバック機構(状態を監視するフォトダイオードなどのモニタや、制御回路など)が必要となり、装置の大型化や消費電力の増加という弊害が生じるおそれがある。そのため、本実施形態で示したように、光軸調整後はレバーを固定し、固定時のずれを吸収できるような構造とすることは、非常に有効である。なお、MEMSあるいはアクチュエータという用語は微小な機械構造に用いられるが、本明細書中では圧電素子や電磁力などにより自発的に動作可能な構造を指すものとする。レバーもアクチュエータと称される場合があるが、レバー20は自発的に動作するのではなく外部からの機械的力によって変形する構造であるため、特許文献4で述べられているMEMSアクチュエータとは異なるものである。
図9は、本発明の実施形態に係るレバー20による調整工程を示す側面図である。図9は、Y−Z平面を表す。レバー20は、支点以外が固定されていない場合には、外力により、延伸方向に伸縮する。ここで、レバー20の延伸方向とは、Z軸方向(+Z軸方向及び−Z軸方向)である。レバー20は、Z軸方向に加えられた外力によりジグザグ形状部が変形することにより、Z軸方向に伸縮する。レバー20がZ軸方向に伸縮すると、レバー20上に配置された第2の鏡21がZ軸方向に変位する。第2の鏡21がZ軸方向に変位すると、レーザ光が第2の鏡21の反射面で反射されるY軸方向の位置が変化する。そのため、ハンドル部20aにZ軸方向の外力を加えることにより、第2のレンズ22に入射する光のY軸方向の位置を調整することができ、光がシリコン導波路31に結合するように調整することができる。
矢印IXaは、ハンドル部20aに対して+Z軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を+Z軸方向に変位させた場合におけるレーザ光の光路を示す。一方、破線で表した矢印IXbは、ハンドル部20aに対して外力を加えず、第2の鏡21を変位させない場合におけるレーザ光の光路を示す。ハンドル部20aに対して+Z軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を+Z軸方向に変位させた場合、ハンドル部20aに対して外力を加えない場合に比べて、光路は+Y軸方向に変位する。
図10は、本発明の実施形態に係る第2の鏡21の変位量と結合効率の関係を示すグラフである。横軸は、第2の鏡21のZ軸方向についての変位量Δzをμmの単位で示す。縦軸は、半導体レーザ10から出力されたレーザ光の強度ILASERと、シリコン導波路31内に伝送される光の強度IGUIDEの対数比10×log10(IGUIDE/ILASER)である結合効率(coupling efficiency)を示す。
図10の曲線Xaは、第2の鏡21を変位させずとも、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の変位量Δzと結合効率の関係を示す。曲線Xaの場合、レバー20に外力を加えず、第2の鏡21を変位させない場合(Δz=0の場合)に結合効率が最大となる。曲線Xaの場合、レバー20をZ軸に関してどちらの方向に変位させても結合効率が下がることとなる。
また、図10の曲線Xbは、第2の鏡21を+Z軸方向に変位させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の変位量Δzと結合効率の関係を示す。曲線Xbの場合、レバー20に+Z軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を正の向きに変位させる場合(Δz>0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線Xbの場合、Δz≒1μmで結合効率が最大となる。曲線Xbの場合、第2の鏡21を正の向きに変位させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図10の曲線Xcは、第2の鏡21を−Z軸方向に変位させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の変位量Δzと結合効率の関係を示す。曲線Xcの場合、レバー20に−Z軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を負の向きに変位させる場合(Δz<0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線Xcの場合、Δz≒−1μmで結合効率が最大となる。曲線Xcの場合、第2の鏡21を負の向きに変位させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図10の曲線Xdは、第2の鏡21を曲線Xbの場合よりも+Z軸方向に大きく変位させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の変位量Δzと結合効率の関係を示す。曲線Xdの場合、レバー20に+Z軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を正の向きに変位させる場合(Δz>0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線Xbの場合、Δz≒2μmで結合効率が最大となる。曲線Xdの場合、第2の鏡21を変位させない場合には結合効率は−10dB以下であるが、第2の鏡21を正の向きに変位させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
図10の曲線Xeは、第2の鏡21を曲線Xcの場合よりも−Z軸方向に大きく変位させると、レーザ光がシリコン導波路31に結合する場合における、第2の鏡21の変位量Δzと結合効率の関係を示す。曲線Xeの場合、レバー20に−Z軸方向の外力を加えて、第2の鏡21を負の向きに変位させる場合(Δz<0の場合)に結合効率が最大となる。具体的に、曲線Xeの場合、Δz≒−2μmで結合効率が最大となる。曲線Xeの場合、第2の鏡21を変位させない場合には結合効率は−10dB以下であるが、第2の鏡21を負の向きに変位させるに従って結合効率が増加し、最大値に達した後に減少に転じる。
このように、本実施形態に係る光通信装置1によれば、シリコン導波路31に入射する光の位置をY軸方向についても調整することができる。そのため、第2の鏡21をY軸まわりに回転させてシリコン導波路31に入射する光の位置をX軸方向に変化させる図4に示す調整とあわせて、光がシリコン導波路31に結合するように、シリコン導波路31に入射する光の位置を2次元的に調整することができる。一方、比較例の場合、Y軸方向に関する光の位置の調整は、半導体レーザ10自体をY軸方向に動かすことで行う必要がある。半導体レーザ10を動かす構造を追加すると装置が大型化し、コストが増加するという欠点がある。また半導体レーザ10を動かさずに、レバー20をY軸方向に上下させることにより調整も可能だが、前述したのと同様に、レバー20を半田で固定する際に生じ得る位置ずれなどの問題で微調整は困難である。
図11は、本発明の実施形態に係る光通信装置1の製造工程を示すフローチャートである。はじめに、SOI基板23の最上層であるSOI層をエッチングすることにより第2の鏡21を形成する工程が行われる(S1)。ここで、第2の鏡21を単体で形成することとしてもよい。
次に、SOI層をエッチングすることによりレバー20を形成する工程が行われる(S2)。レバー20と第2の鏡21は、共にSOI層をエッチングすることにより形成してよい。第2の鏡21及びレバー20を形成するためのエッチングは、ドライエッチング及びウェットエッチングのいずれを用いてもよいし、その組合せであってもよい。また、第2の鏡を単体で形成する場合、レバー20を形成した後、第2の鏡21をレバー20に半田等で固定する工程を行う必要がある。
その後、SOI層にシリコン導波路31を形成する工程が行われる(S3)。ここで、スポットサイズ変換器32、フォトダイオード33、及び光変調器34を含む光回路30を形成してよい。なお、シリコン導波路31(光回路30を含んでもよい)は、別体として形成し、SOI層上に配置しても構わない。
さらに、光を光回路30に向かって集束させる第2のレンズ22をSOI基板23に搭載する工程が行われる(S4)。第2のレンズ22は、光源の数と同じ数のレンズが一体成型されたものでよく、一体成型されたレンズをSOI基板23に搭載する場合には、焦点距離がスポットサイズ変換器32に合うように位置合わせを行う。なお、光源の数と同じ数のレンズを独立に形成して、それぞれSOI基板23に搭載することとしてもよい。
その後、半導体レーザ10をSOI基板23に搭載する工程が行われる(S5)。半導体レーザ10は、スペーサ24を挟んでSOI基板23に固定される。半導体レーザ10は、半導体レーザ10から出射されるレーザ光が第2の鏡21に入射するように位置合わせされる。ここで、半導体レーザ10の位置合わせは、レーザ光がシリコン導波路31に結合するように行う必要はない。
次に、レバー20に外力を加えて変位させて、第2の鏡21で反射されたレーザ光がシリコン導波路31に結合するように調整する調整工程が行われる(S6)。調整工程では、レーザ光がシリコン導波路31に結合するように、第2の鏡21のY軸まわりの角度θyと、Z軸方向の変位量Δzを調整する工程が行われる。ここで、第2の鏡21のY軸まわりの角度θyは、レバー20に外力を加えて、延伸方向と直交する方向(図4ではX軸方向)にたわませることで調整される。また、Z軸方向の変位量Δzは、レバー20に外力を加えて、延伸方向(図9ではZ軸方向)に伸縮させることで調整される。外力を加えるレバー20の位置は、レバー20のハンドル部20aである。ハンドル部20aは、第2の鏡21が配置される位置を基準として、レバー20の支点と反対側にある。
調整工程では、シリコン導波路31により伝送されるレーザ光の一部を光検出器であるフォトダイオード33で検出し、フォトダイオード33により検出される光の強度が大きくなるようにレバー20に外力を加えて変位させて、第2の鏡21で反射されたレーザ光がシリコン導波路31に結合するように調整する。これにより、光回路30に光ファイバを結合しなくても、第2の鏡21で反射されたレーザ光がシリコン導波路31に結合するように調整することができる。
調整工程による調整の後、レバー20を固定体により固定する固定工程が行われる(S7)。固定工程では、レバー20が半田等の固定体により固定される。ここで、レバー20の固定は、支点以外の一部を少なくとも固定することで行う。例えば、ハンドル部20aを固定することとしてよい。
以上により、本実施形態に係る光通信装置1の製造工程が終了する。本実施形態に係る光通信装置1の製造工程によれば、調整工程においてレバー20に配置された第2の鏡21の位置を調整することで、広範囲かつ高精度にレーザ光の光軸調整ができ、レーザ光をシリコン導波路31に簡便に結合することができる。
図12は、本発明の実施形態の変形例に係る光通信装置1の側面図である。図12は、Y−Z平面を表す。変形例に係る光通信装置1と、通常の実施形態に係る光通信装置1との違いは、第2のレンズ22と第2の鏡21との間に、光アイソレータ26を備える点である。光アイソレータ26は、光の複屈折と、直線偏光に対するファラデー効果とを利用した光学素子であり、順方向で入射する光は通過させるが、逆方向で入射する光は通過させないものである。変形例の場合、光アイソレータ26は、+Z軸方向に進む光を通過させ、−Z軸方向に進む光は通過させない。
変形例に係る光通信装置1では、光アイソレータ26により、第2のレンズ22やシリコン導波路31で反射した光が半導体レーザ10に戻ることが抑制される。そのため、半導体レーザ10の安定的なレーザ発振が保たれる。