以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板洗浄方法、基板洗浄システムおよび記憶媒体の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
<基板洗浄方法の内容>
まず、第1の実施形態に係る基板洗浄方法の内容について図1A〜図1Eを用いて説明する。図1A〜図1Eは、第1の実施形態に係る基板洗浄方法の説明図である。
図1Aに示すように、第1の実施形態に係る基板洗浄方法では、シリコンウェハや化合物半導体ウェハ等の基板(以下、「ウェハW」と記載する)のパターン形成面に対し、揮発成分を含みウェハW上に膜を形成するための処理液(以下、「成膜処理液」と記載する)を供給する。
ウェハWのパターン形成面に供給された成膜処理液は、揮発成分の揮発による体積収縮を起こしながら固化または硬化して処理膜となる。これにより、ウェハW上に形成されたパターンやパターンに付着したパーティクルPがこの処理膜に覆われた状態となる(図1B参照)。なお、ここでいう「固化」とは、固体化することを意味し、「硬化」とは、分子同士が連結して高分子化すること(たとえば架橋や重合等)を意味する。
つづいて、図1Bに示すように、ウェハW上の処理膜に対して剥離処理液が供給される。剥離処理液とは、前述の処理膜をウェハWから剥離させる処理液である。第1の実施形態に係る基板洗浄方法では、剥離処理液として常温(23〜25度程度)の純水が用いられる。
処理膜上に供給された純水は、処理膜中に浸透していきウェハWの界面に到達する。さらに、ウェハWの界面に到達した純水は、ウェハWの界面であるパターン形成面に浸透する。
このように、ウェハWと処理膜との間に剥離処理液としての純水が浸入することにより、処理膜は「膜」の状態でウェハWから剥離し、これに伴い、パターン形成面に付着したパーティクルPが処理膜とともにウェハWから剥離する(図1C参照)。
なお、成膜処理液は、揮発成分の揮発に伴う体積収縮によって生じる歪み(引っ張り力)により、パターン等に付着したパーティクルPをパターン等から引き離すことができる。
つづいて、ウェハWから剥離された処理膜に対し、処理膜を溶解させる溶解処理液が供給される。これにより、処理膜は溶解し、処理膜に取り込まれていたパーティクルPは、溶解処理液中に浮遊した状態となる(図1D参照)。その後、溶解処理液や溶解した処理膜を純水等で洗い流すことにより、パーティクルPは、ウェハW上から除去される(図1E参照)。
このように、第1の実施形態に係る基板洗浄方法では、ウェハW上に形成された処理膜をウェハWから「膜」の状態で剥離させることで、パターン等に付着したパーティクルPを処理膜とともにウェハWから除去することとした。
したがって、第1の実施形態に係る基板洗浄方法によれば、化学的作用を利用することなくパーティクル除去を行うため、エッチング作用等による下地膜の侵食を抑えることができる。
また、第1の実施形態に係る基板洗浄方法によれば、従来の物理力を利用した基板洗浄方法と比較して弱い力でパーティクルPを除去することができるため、パターン倒れを抑制することもできる。
さらに、第1の実施形態に係る基板洗浄方法によれば、従来の物理力を利用した基板洗浄方法では除去が困難であった、粒子径が小さいパーティクルPを容易に除去することが可能となる。
なお、第1の実施形態に係る基板洗浄方法において、処理膜は、ウェハWに成膜された後、パターン露光を行うことなくウェハWから全て除去される。したがって、洗浄後のウェハWは、成膜処理液を塗布する前の状態、すなわち、パターン形成面が露出した状態となる。
ここで、成膜処理液としては、たとえばトップコート液や、特開2016−36012号公報に記載の「基板洗浄用組成物」等が用いられる。しかしながら、これらの成膜処理液によって形成される処理膜は撥水性を有するため、かかる処理膜に対して剥離処理液としての純水を供給しても、処理膜の表面で純水がはじかれてしまい、処理膜中に純水を効率よく浸透させることが困難である。
そこで、第1の実施形態に係る基板洗浄方法では、剥離処理液としての純水を供給するのに先立ち(すなわち、図1Aに示す処理と図1Bに示す処理との間に)、純水よりも表面張力が小さい液体と純水とを混合した混合液を処理膜に供給することとした。
かかる混合液は、純水と比較して表面張力が小さいため、処理膜の表面ではじかれにくく、処理膜中に浸透し易い。かかる混合液を処理膜中に浸透することで、処理膜中には純水の通り道が形成される。これにより、その後、剥離処理液としての純水を処理膜に供給した際に、純水をパターン形成面に早期に到達させることができる。
このように、第1の実施形態に係る基板洗浄方法によれば、剥離処理液としての純水を処理膜に供給するのに先立ち、純水よりも表面張力が小さい液体と純水とを混合した混合液を処理膜に供給することで、純水が処理膜中に浸透し易くなる。これにより、ウェハWからの処理膜の剥離を促進させることができる。
<基板洗浄システムの構成>
次に、第1の実施形態に係る基板洗浄システムの構成について図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る基板洗浄システムの構成を示す模式図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図2に示すように、基板洗浄システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚のウェハWを水平状態で収容可能な複数の搬送容器(以下、「キャリアC」と記載する)が載置される。
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられる。搬送部12の内部には、基板搬送装置121と、受渡部122とが設けられる。
基板搬送装置121は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置121は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部122との間でウェハWの搬送を行う。
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部13と、複数の基板洗浄装置14とを備える。複数の基板洗浄装置14は、搬送部13の両側に並べて設けられる。
搬送部13は、内部に基板搬送装置131を備える。基板搬送装置131は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置131は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部122と基板洗浄装置14との間でウェハWの搬送を行う。
基板洗浄装置14は、上述した基板洗浄方法に基づく基板洗浄処理を実行する装置である。かかる基板洗浄装置14の具体的な構成については、後述する。
また、基板洗浄システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、基板洗浄システム1の動作を制御する装置である。かかる制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部15と記憶部16とを備える。記憶部16には、基板洗浄処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部15は、記憶部16に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板洗浄システム1の動作を制御する。制御部15は、たとえばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processor Unit)等であり、記憶部16は、たとえばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等である。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部16にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
上記のように構成された基板洗浄システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置121が、キャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部122に載置する。受渡部122に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置131によって受渡部122から取り出されて基板洗浄装置14へ搬入され、基板洗浄装置14によって基板洗浄処理が施される。洗浄後のウェハWは、基板搬送装置131により基板洗浄装置14から搬出されて受渡部122に載置された後、基板搬送装置121によってキャリアCに戻される。
<基板洗浄装置の構成>
次に、基板洗浄装置14の構成について図3を参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係る基板洗浄装置14の構成を示す模式図である。
図3に示すように、基板洗浄装置14は、チャンバ20と、基板保持機構30と、液供給部40と、回収カップ50とを備える。
チャンバ20は、基板保持機構30と液供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
FFU21は、バルブ22を介してダウンフローガス供給源23に接続される。FFU21は、ダウンフローガス供給源23から供給されるダウンフローガス(たとえば、ドライエア)をチャンバ20内に吐出する。
基板保持機構30は、回転保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。回転保持部31は、チャンバ20の略中央に設けられる。回転保持部31の上面には、ウェハWを側面から保持する保持部材311が設けられる。ウェハWは、かかる保持部材311によって回転保持部31の上面からわずかに離間した状態で水平保持される。
支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において回転保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。
かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された回転保持部31を回転させ、これにより、回転保持部31に保持されたウェハWを回転させる。
液供給部40は、基板保持機構30に保持されたウェハWに対して各種の処理液を供給する。かかる液供給部40は、複数(ここでは4つ)のノズル41a〜41dと、ノズル41a〜41dを水平に支持するアーム42と、アーム42を旋回および昇降させる旋回昇降機構43とを備える。
ノズル41aは、バルブ44aおよび流量調整器46aを介して薬液供給源45aに接続される。ノズル41bは、バルブ44bおよび流量調整器46bを介して成膜処理液供給源45bに接続される。ノズル41cは、バルブ44cおよび流量調整器46cを介して剥離処理液供給源45cに接続される。ノズル41dは、バルブ44dおよび流量調整器46dを介して溶解処理液供給源45dに接続される。
ノズル41aからは、薬液供給源45aから供給される薬液が吐出される。薬液としては、たとえばDHF(希フッ酸)、SC1(アンモニア/過酸化水素/水の混合液)、DSP(Diarrhetic Shellfish Poisoning)等が用いられる。
ノズル41bからは、成膜処理液供給源45bから供給される成膜処理液が吐出される。成膜処理液としては、たとえばトップコート液や、特開2016−36012号公報に記載の「基板洗浄用組成物」等が用いられる。なお、トップコート液により形成されるトップコート膜(処理膜の一例)は、レジストへの液浸液の浸み込みを防ぐためにレジストの上面に塗布される保護膜である。また、液浸液とは、たとえばリソグラフィ工程における液浸露光に用いられる液体である。
ノズル41cからは、剥離処理液供給源45cから供給される剥離処理液が吐出される。剥離処理液は、上述したようにDIWである。
ノズル41dからは、溶解処理液供給源45dから供給される溶解処理液が吐出される。溶解処理液としては、たとえばIPA(イソプロピルアルコール)、シンナー、MIBC(4−メチル−2−ペンタノール)、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類、グリコール類(プロピレングリコールモノメチルエーテル)などの有機溶剤が用いられる。
ここでは、溶解処理液として、所定の温度(たとえば、65℃)に加熱されたIPAを用いるものとする。
なお、溶解処理液としては、常温のIPAを用いても構わない。また、溶解処理液としては、有機溶剤に限らず、たとえば、アルカリ現像液や酸性現像液を用いることもできる。アルカリ現像液は、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH:Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)等の4級水酸化アンモニウム水溶液、コリン水溶液の少なくとも一つを含むものであればよい。酸性現像液としては、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等を用いることができる。
回収カップ50は、回転保持部31を取り囲むように配置され、回転保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から基板洗浄装置14の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給されるダウンフローガスを基板洗浄装置14の外部へ排出する排気口52が形成される。
<基板洗浄システムの具体的動作>
次に、基板洗浄装置14の具体的動作について図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る基板洗浄システム1が実行する基板洗浄処理の処理手順を示すフローチャートである。基板洗浄システム1が備える各装置は、制御部15の制御に従って図4に示す各処理手順を実行する。
図4に示すように、基板洗浄装置14では、まず、基板搬入処理が行われる(ステップS101)。かかる基板搬入処理では、基板搬送装置131(図2参照)によってチャンバ20内に搬入されたウェハWが基板保持機構30の保持部材311により保持される。このときウェハWは、パターン形成面が上方を向いた状態で保持部材311に保持される。その後、駆動部33によって回転保持部31が回転する。これにより、ウェハWは、回転保持部31に水平保持された状態で回転保持部31とともに回転する。ウェハWの回転数は、たとえば、1000rpmに設定される。
つづいて、基板洗浄装置14では、薬液処理が行われる(ステップS102)。薬液処理では、まず、液供給部40のノズル41aがウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44aが所定時間開放されることにより、レジストが形成されていないウェハWのパターン形成面に対してDHF等の薬液が供給される。ウェハWへ供給された薬液は、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWのパターン形成面に広がる。
つづいて、液供給部40のノズル41cがウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44cが所定時間開放されることにより、ウェハWのパターン形成面に対してDIWが供給される。ウェハWへ供給されたDIWは、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWのパターン形成面に広がる。これにより、ウェハW上に残存する薬液がDIWによって洗い流される。
つづいて、基板洗浄装置14では、プリウェット処理が行われる(ステップS103)。プリウェット処理では、液供給部40のノズル41dがウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44dが所定時間開放されることにより、ウェハWのパターン形成面に対してIPAが供給される。ウェハWへ供給されたIPAは、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWのパターン形成面に広がる。
成膜処理液としてのトップコート液や基板洗浄用組成物は撥水性が高いため、薬液処理後のウェハWに対して成膜処理液を供給しても、ウェハWの表面に残存するDIWによってはじかれてしまい、ウェハWの表面に成膜処理液の液膜を形成するのに多くの時間がかかってしまう。
そこで、第1の実施形態に係る基板洗浄システム1では、薬液処理後のウェハWに対してIPAを供給して、薬液処理後のウェハWに残存するDIWをIPAに置換することとした。このように、成膜処理液と親和性のあるIPAを事前にウェハWに塗り広げておくことで、後述する成膜処理液供給処理(ステップS104)において、成膜処理液がウェハWの上面に広がり易くなるとともに、パターンの隙間にも入り込み易くなる。したがって、成膜処理液の使用量を削減することができるとともに、パターンの隙間に入り込んだパーティクルPをより確実に除去することが可能となる。また、成膜処理液供給処理の処理時間の短縮化を図ることもできる。
なお、ここでは、プリウェット処理において、ウェハWに対してIPAを供給することとしたが、プリウェット処理に用いる処理液は、IPAに限定されない。プリウェット処理に用いる処理液としては、たとえば、エタノールやアセトンなどのIPA以外の有機溶剤を用いることができる。
つづいて、基板洗浄装置14では、成膜処理液供給処理が行われる(ステップS104)。成膜処理液供給処理では、液供給部40のノズル41bがウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44bが所定時間開放されることにより、ウェハWのパターン形成面に対して成膜処理液が供給される。
ウェハWへ供給された成膜処理液は、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの表面に広がる。これにより、ウェハWのパターン形成面に成膜処理液の液膜が形成される。液膜は、少なくともウェハW上のパターンを覆う厚さ(たとえば、45nm以上)に形成されることが好ましい。
つづいて、基板洗浄装置14では、乾燥処理が行われる(ステップS105)。かかる乾燥処理では、たとえばウェハWの回転速度を所定時間増加させることによって成膜処理液を乾燥させる。これにより、たとえば成膜処理液に含まれる有機溶媒の一部または全部が気化して成膜処理液に含まれる固形分が固化または硬化し、ウェハWのパターン形成面に処理膜が形成される。
なお、ステップS105の乾燥処理は、たとえば、図示しない減圧装置によってチャンバ20内を減圧状態にする処理であってもよいし、FFU21から供給されるダウンフローガスによってチャンバ20内の湿度を低下させる処理であってもよい。これらの処理によっても、成膜処理液を固化または硬化させることができる。
また、基板洗浄装置14は、成膜処理液が自然に固化または硬化するまでウェハWを基板洗浄装置14で待機させてもよい。また、ウェハWの回転を停止させたり、成膜処理液が振り切られてウェハWの表面が露出することがない程度の回転数でウェハWを回転させたりすることによって成膜処理液を固化または硬化させてもよい。
つづいて、基板洗浄装置14では、剥離処理が行われる(ステップS106)。かかる剥離処理では、ウェハW上に形成された処理膜がウェハWから剥離される。かかる剥離処理の具体的な内容については、後述する。
つづいて、基板洗浄装置14では、溶解処理液供給処理が行われる(ステップS107)。溶解処理液供給処理では、液供給部40のノズル41dがウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44dが所定時間開放されることにより、ウェハWから剥離された処理膜に対してIPAが供給される。ウェハWへ供給されたIPAは、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの表面に広がる。これにより、処理膜は溶解する。
第1の実施形態に係る基板洗浄システム1では、溶解処理液として所定の温度に加熱されたIPAを用いることとしたため、ウェハWから剥離された処理膜をより短時間で溶解させることができる。
つづいて、基板洗浄装置14では、リンス処理が行われる(ステップS108)。リンス処理では、液供給部40のノズル41cがウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44cが所定時間開放されることにより、ウェハWから剥離された処理膜に対してDIWが供給される。ウェハWへ供給されたDIWは、ウェハWの回転に伴う遠心力によってウェハWの表面に広がる。これにより、溶解した処理膜やIPA中に浮遊するパーティクルPがウェハWから除去される。
つづいて、基板洗浄装置14では、乾燥処理が行われる(ステップS109)。乾燥処理では、たとえばウェハWの回転速度を所定時間増加させることによって、ウェハWの表面に残存するDIWを振り切ってウェハWを乾燥させる。
なお、基板洗浄装置14では、上述したステップS108およびステップS109の処理に代えて、ステップS107の溶解処理液供給処理に引き続き、ノズル41dから回転するウェハWに対してIPAを供給した後で、ウェハWを高速で回転させてウェハWを乾燥させる処理を行ってもよい。
つづいて、基板洗浄装置14では、基板搬出処理が行われる(ステップS110)。かかる基板搬出処理では、基板搬送装置131(図2参照)によって、基板洗浄装置14のチャンバ20からウェハWが取り出される。その後、ウェハWは、受渡部122および基板搬送装置121を経由して、キャリア載置部11に載置されたキャリアCに収容される。かかる基板搬出処理が完了すると、1枚のウェハWについての基板洗浄処理が完了する。
次に、ステップS106の剥離処理の具体的な手順の一例について図5を参照して説明する。図5は、剥離処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、基板洗浄装置14では、まず、DIW液盛り処理が行われる(ステップS201)。DIW液盛り処理では、液供給部40のノズル41cがウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44cが所定時間開放されることにより、ウェハW上に形成された処理膜に対してDIWが供給される。ウェハW上の処理膜に供給されたDIWは、ウェハWの回転に伴う遠心力によって処理膜の表面に広がる。これにより、処理膜上にDIWの液膜が形成される。
なお、DIW液盛り処理は、処理膜上にDIWの液膜を形成するために行われる。このため、DIW液盛り処理におけるDIWの供給時間は、後段の混合液供給処理(ステップS202)やDIW供給処理(ステップS203)と比較して短く設定される。たとえば、DIW液盛り処理におけるDIWの供給時間は、2secである。また、DIW液盛り処理では、後段の混合液供給処理(ステップS202)やDIW供給処理(ステップS203)と比較してウェハWを低速で回転させるようにしてもよい。
つづいて、基板洗浄装置14では、混合液供給処理が行われる(ステップS202)。混合液供給処理では、たとえば液供給部40のノズル41cおよびノズル41dの中間位置をウェハWの中央上方に位置させる。その後、バルブ44cおよびバルブ44dが所定時間開放されることにより、ウェハW上の処理膜に対してDIWおよびIPAが同時に供給される。ウェハW上の処理膜に供給されたDIWおよびIPAは、ウェハWの回転に伴う遠心力によって処理膜の表面に広がりながら混合される。これにより、処理膜上にDIWとIPAとの混合液の液膜が形成される。
IPAの表面張力は、20℃で20.8mN/mであり、DIWの表面張力(72.75mN/m)よりも小さい。かかるIPAとDIWとの混合液は、DIWと比較して表面張力が小さいため、処理膜の表面ではじかれにくく、処理膜中に浸透し易い。したがって、処理膜中に純水の通り道を早期に形成することができる。
ここで、混合液は、IPAの濃度が25%未満であることが好ましい。これは、IPAの濃度が25%以上とした場合、混合液によって処理膜が溶解されて処理膜が「膜」の状態で剥離する現象が発生しなくなる結果、パーティクル除去率が低下するためである。より好ましくは、混合液のIPA濃度は7.5%以下である。
制御部15は、混合液のIPA濃度が7.5%以下となるように、流量調整器46c,46dを制御する。たとえば、制御部15は、DIWおよびIPAの流量比が1000:75となるように、流量調整器46c,46dを制御することにより、IPA濃度が7.5%の混合液を処理膜に供給する。
ここで、IPA濃度が7.5%の混合液であっても、処理膜に対して長時間供給し続けると、処理膜を溶解させてしまいパーティクル除去率が低下するおそれがある。このような観点から、IPA濃度が7.5%の混合液の供給時間は、60sec以下が好ましい。より好ましくは、混合液の供給時間は、2secである。
なお、本願発明者らは、DIWの流量を1000ml/minとし、IPAの流量を75ml/minとして得られるIPA濃度7.5%の混合液を処理膜に対して、60sec供給した場合と2sec供給した場合における剥離処理後のパーティクル除去率を実験により測定し、60sec供給した場合の除去率よりも2sec供給した場合の除去率の方が高いことを確認している。
つづいて、基板洗浄装置14では、DIW供給処理が行われる(ステップS203)。DIW供給処理では、液供給部40のノズル41cがウェハWの中央上方に位置する。その後、バルブ44cが所定時間開放されることにより、ウェハW上に形成された処理膜に対してDIWが供給される。ウェハW上の処理膜に供給されたDIWは、ウェハWの回転に伴う遠心力によって処理膜の表面に広がる。これにより、処理膜上にDIWの液膜が形成される。
DIWは、混合液供給処理によって処理膜中に形成されたDIWの通り道を通って処理膜中に浸透してウェハWの界面に到達する。そして、DIWは、ウェハWの界面であるパターン形成面に浸透して、処理膜をウェハWから剥離させる。これにより、ウェハWのパターン形成面に付着したパーティクルPが処理膜とともにウェハWから剥離される。
このように、第1の実施形態に係る基板洗浄装置14では、剥離処理液としてのDIWを処理膜に供給するのに先立ち、DIWとIPAとの混合液を処理膜に供給して処理膜中にDIWの通り道を形成することとした。これにより、DIWがパターン形成面に浸透するまでの時間が短縮されるため、処理膜がウェハWから剥離するまでの時間を短縮することができる。したがって、ウェハWからの処理膜の剥離を促進させることが可能である。
また、第1の実施形態に係る基板洗浄装置14では、所定の温度(たとえば65°)に加熱されたIPAをDIWと混合することとした。IPAを加熱することにより、IPAの表面張力がより小さくなることから、混合液の表面張力をより小さくすることができる。したがって、処理膜中に純水の通り道をより早期に形成することができる。
また、第1の実施形態に係る基板洗浄装置14では、処理膜に対してIPAとDIWとをそれぞれ供給して処理膜上でこれらを混合することにより、処理膜に対して混合液を供給することとした。これにより、所定濃度の混合液を生成するための混合部を別途設ける必要がなく、安価に装置を構成できる。
また、第1の実施形態に係る基板洗浄装置14では、処理膜に対してDIWを供給して処理膜上にDIWを液盛りした後で、処理膜に対して混合液を供給することとしたため、DIWとIPAとが混合される前に、IPAによって処理膜が溶解されることを抑制することができる。
上述してきたように、第1の実施形態に係る基板洗浄システム1は、成膜処理液供給部(液供給部40)と、剥離処理液供給部(液供給部40)と、溶解処理液供給部(液供給部40)とを備える。成膜処理液供給部は、揮発成分を含み基板上に膜を形成するための成膜処理液(たとえば、トップコート液や基板洗浄用組成物)を基板(ウェハW)へ供給する。剥離処理液供給部は、揮発成分が揮発することによって成膜処理液が基板上で固化または硬化してなる処理膜に対して処理膜を基板から剥離させる剥離処理液としての純水(DIW)を供給する。溶解処理液供給部は、処理膜に対して処理膜を溶解させる溶解処理液(たとえば、IPA)を供給する。また、剥離処理液供給部は、処理膜に対し、純水よりも表面張力が小さい液体(たとえば、IPA)と純水とを混合した混合液を供給した後で、剥離処理液としての純水を供給する。
したがって、第1の実施形態に係る基板洗浄システム1によれば、ウェハWからの処理膜の剥離を促進させることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、基板保持機構の具体的な構成例について説明する。第2の実施形態に係る基板保持機構は、独立して動作可能な2つの把持体群を備えており、これら2つの把持体群を用い、上述した溶解処理液供給処理においてウェハWの持ち替えを行う。
図6は、第2の実施形態に係る基板保持機構の模式側面図である。また、図7は、第2の実施形態に係る基板保持機構の模式平面図(その1)である。図8は、第1把持体周辺の模式拡大図(その1)である。図9は、第2把持体周辺の模式拡大図(その1)である。
また、図10は、第2の実施形態に係る基板保持機構の模式平面図(その2)である。図11は、第2把持体周辺の模式拡大図(その2)である。図12は、第1把持体周辺の模式拡大図(その2)である。
なお、図6〜図9には、後述する第1把持体330_1を用いてウェハWを把持した状態を示しており、図10〜図12は、後述する第2把持体330_2を用いてウェハWを把持した状態を示している。
図6および図7に示すように、第2の実施形態に係る基板洗浄装置14Aは、基板保持機構30Aを備える。基板保持機構30Aは、回転保持部31Aと、支柱部32と、駆動部33(図3参照)を備える。
回転保持部31Aは、第1ベース部310と、第2ベース部320とを備える。第1ベース部310は、支柱部32に接続される円板状の部材であり、第2ベース部320は、かかる第1ベース部310の上面に載置される。
第2ベース部320の下部には、鉛直方向に延在する複数(ここでは、3つ)の支柱321が設けられる。支柱321は、第1ベース部310に設けられた貫通孔312を介して第1ベース部310の下方に延在する。
支柱321の下方には、押上機構323が配置される。押上機構323は、延長方向に延在する押上部323aと、押上部323aを鉛直方向に沿って昇降させる駆動部323bとを備える。かかる押上機構323は、駆動部323bを用いて押上部323aを鉛直上方に移動させることにより、第2ベース部320の支柱321を鉛直上方に押し上げる。
このように、第2ベース部320は、押上機構323によって第1ベース部310の上面から離れて上方へ移動することができる。第2ベース部320の上部には、第2ベース部320が上方へ移動した際に、ウェハWを支持するための複数(ここでは、3つ)のピン324が設けられる。
なお、第1ベース部310の上面には係合凸部313が形成され、第2ベース部320の下面には係合凹部326が形成される。係合凸部313は、貫通孔312の周囲を取り囲むように形成され、係合凹部326は、かかる係合凸部313の周囲を取り囲むように形成される。これら係合凸部313と係合凹部326とが係合することにより、第1ベース部310と第2ベース部320とは、位置ずれを起こすことなく一体的に回転することができる。
また、図7に示すように、基板保持機構30Aは、複数(ここでは、3つ)の第1把持体330_1と、複数(ここでは、3つ)の第2把持体330_2とを備える。複数の第1把持体330_1および第2把持体330_2は、第1ベース部310の外周部に円周状に交互に並べて配置される。また、各把持体330_1,330_2は、第1ベース部310に対し、水平方向に延在する回転軸332を中心に回動可能に支持される。
複数の第1把持体330_1および第2把持体330_2は、回転軸332よりも上方においてウェハWの周縁部を把持する把持部331と、第1ベース部310の上面と第2ベース部320の下面との間に配置される押下部333とを備える。たとえば、第1把持体330_1および第2把持体330_2は、側面視略L字状に形成され、回転軸332はL字の角部に配置され、把持部331および押下部333はL字の端部にそれぞれ配置される。
複数の第1把持体330_1および第2把持体330_2の回転軸332には、図示しない付勢部材が設けられている。かかる付勢部材により、複数の第1把持体330_1および第2把持体330_2は、把持部331がウェハWから離れる方向に回転するように付勢されている。
第2ベース部320の下部には、図7に示すように、複数(ここでは、3つ)の第1凹部325_1と、複数(ここでは、3つ)の第2凹部325_2とが形成される。
たとえば図7に示すように、複数の第2凹部325_2は、複数の第2把持体330_2に対応する位置に配置され、複数の第1凹部325_1は、複数の第1把持体330_1に対応する位置から所定角度(たとえば、10°)ずれた位置に配置されている。
この場合、図8に示すように、複数の第1把持体330_1は、第2ベース部320の下面によって押下部333が押し下げられた状態となっている。押下部333が押し下げられることで、図示しない付勢部材によって把持部331がウェハWから離れる方向へ回転しようとする動きが規制される。これにより、複数の第1把持体330_1は、把持部331によりウェハWの周縁部を把持した状態となる。
これに対し、複数の第2把持体330_2は、図9に示すように、押下部333に対応する位置に第2凹部325_2が配置される。このため、第2把持体330_2の押下部333は、第1把持体330_1と異なり、第2ベース部320の下面によって押し下げられない。よって、第2把持体330_2は、図示しない付勢部材によって把持部331がウェハWから離れる方向へ回転した状態、すなわち、ウェハWを把持していない状態となる。
第2の実施形態に係る基板保持機構30Aは、第1把持体330_1によってウェハWを把持した状態から第2把持体330_2によってウェハWを把持した状態に切り替えることができる。
かかる持ち替えを行う場合には、まず、ウェハWの回転を停止させ、その後、押上機構323を用いて第2ベース部320を持ち上げる。第2ベース部320が上昇することで、第1把持体330_1によるウェハWの把持が解除され、ピン324によってウェハWが支持された状態となる。
つづいて、第2ベース部320を持ち上げた状態で、駆動部33を用いて第1ベース部310を所定角度(ここでは、10°)回転させる。これにより、図10に示すように、複数の第1凹部325_1が、複数の第1把持体330_1に対応する位置に配置され、複数の第2凹部325_2は、複数の第2把持体330_2に対応する位置から所定角度(ここでは、10°)ずれた位置に配置される。
その後、押上機構323を用いて第2ベース部320を下降させる。これにより、図11に示すように、複数の第2把持体330_2の押下部333が、第2ベース部320の下面によって押し下げられて、複数の第2把持体330_2が回転軸332を中心に回動し、複数の第2把持体330_2の把持部331がウェハWの周縁部を把持した状態となる。
一方、複数の第1把持体330_1は、図12に示すように、押下部333に対応する位置に第1凹部325_1が配置されているため、押下部333が第2ベース部320によって押し下げられた状態とならない。したがって、複数の第1把持体330_1は、ウェハWを把持していない状態となる。
これにより、第1把持体330_1によってウェハWを把持した状態から第2把持体330_2によってウェハWを把持した状態に切り替わる。
なお、図7に示すように、第1ベース部310に形成される貫通孔312は、第1ベース部310の回転が第2ベース部320の支柱321によって阻害されないように、第1ベース部310の周方向に沿って延在した形状を有している。
また、図6および図7に示すように、第1ベース部310の上面には、複数(ここでは、6つ)の係止部315が設けられ、第2ベース部320の周縁部には、複数(ここでは、6つ)の切欠部327が形成されている。係止部315は、図7に示すように、複数の第2凹部325_2が複数の第2把持体330_2に対応する位置に配置される場合には、切欠部327の回転方向における一方側の端部に当接し、図10に示すように、複数の第1凹部325_1が複数の第1把持体330_1に対応する位置に配置される場合には、切欠部327の回転方向における他方側の端部に当接するように構成されている。
このように、第2の実施形態に係る基板保持機構30Aは、複数の第1把持体330_1によりウェハWを把持した状態と、第1把持体330_1と独立して動作可能な複数の第2把持体330_2によりウェハWを把持した状態とを切り替えることができる。
第2の実施形態において、制御部15は、溶解処理液供給処理(図4のステップS107)中に、上述した第1把持体330_1と第2把持体330_2との切替処理を行う。たとえば、制御部15は、ウェハWに対して溶解処理液としてのIPAを所定時間供給した後、IPAの供給およびウェハWの回転を停止し、上記の切替処理を行って第1把持体330_1から第2把持体330_2への持ち替えを行った後、IPAの供給およびウェハWの回転を再開する。これにより、仮に、第1把持体330_1に処理膜やパーティクルPが付着していたとしても、第2把持体330_2への持ち替えを行うことにより、ウェハWの汚損や発塵等を防止することができる。
なお、図6に示すように、第2の実施形態に係る基板洗浄装置14Aは、回収カップ50Aを備える。回収カップ50Aは、外側カップ53と、外側カップ53よりも内側に配置される内側カップ54とを備える。内側カップ54は、ウェハWの下面から飛散する液体を受ける。また、内側カップ54は、外側カップ53よりも低く形成されており、外側カップ53と内側カップ54との間には、ウェハWの上面から飛散する液体を受けて排液口51へと導く排液路が形成される。このように、回収カップ50Aは、ウェハWの上面から飛散する液体と、ウェハWの下面から飛散する液体とを分離することが可能である。
上述してきた各実施形態では、1つの基板洗浄装置14,14Aが、成膜処理液供給処理、剥離処理液供給処理、溶解処理液供給処理の全てを行うこととしたが、複数の基板洗浄装置14で分担して行ってもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。