[0006] 本発明の第1の態様によれば、入力放射ビームを受け、入力放射ビームを複数の出力放射ビームに分割するように配置されたビーム分割装置が提供される。ビーム分割装置は、放射ビームを受けるように配置され、複数の回折次数を含む回折パターン形成するように構成された複数の反射回折格子であって、反射回折格子の少なくともいくつかは、別の反射回折格子において形成された0次回折次数を受けるように配置された反射回折格子を備える。反射回折格子は、各出力放射ビームの光路が0次回折次数でない回折次数の1つだけを含むように配置される。
[0007] 回折格子において形成される0次回折次数のパワー及び/又は指向方向は、一般的に、より高い回折次数と比較して、回折格子に入射する放射の波長及び/又は指向方向の変動に関してより安定的である。したがって、各出力放射ビームの光路が0次回折次数でない1つの回折次数(例えば、+1又は−1回折次数)だけを含むビーム分割装置を提供することによって、有利には入力放射ビームの波長及び/又は指向方向の変化に関する出力放射ビームのパワー及び/又は指向方向の安定性が向上する。このような構成は、自由電子レーザの出力が、時間に関する波長及び/又は指向方向の変動を受ける可能性があるため、入力放射ビームが自由電子レーザを含む放射源から提供される実施形態において特に有利である可能性がある。
[0008] 出力放射ビームは複数のリソグラフィ装置に供給するためのものであってよい。
[0009] 回折格子は、出力放射ビームがそれぞれ実質的に同じパワーを有するように構成することができる。
[0010] ビーム分割装置は、入力放射ビームを受けるように配置され、少なくとも第1のサブビームと、第1の出力放射ビームを形成する第2のサブビームとを含むサブビームをそれぞれ形成する、複数の回折次数を含む回折パターンを形成するように構成された第1の反射回折格子と、第1の回折格子において形成される第1のサブビームを受けるように配置され、少なくとも第3のサブビームと、第2の出力放射ビームを形成する第4のサブビームとを含むサブビームをそれぞれ形成する、複数の回折次数を含む回折パターンを形成するように構成された第2の反射回折格子と、を備えてよい。
[0011] 第1及び第2の回折格子は、第1の出力放射ビーム及び第2の出力放射ビームが実質的に同じパワーを有するように構成することができる。
[0012] 第1のサブビームはゼロ次回折次数であってよい。
[0013] 第3のサブビームはゼロ次回折次数であってよい。
[0014] 第1の回折格子は、第1のサブビームのパワーが第2のサブビームのパワーよりも大きくなるように構成することができる。
[0015] 第1の回折格子は、第1のサブビームのパワーが、第1の回折格子が受ける放射ビームのパワーの50%以上となるように構成することができる。第1の回折格子は、第1のサブビームのパワーが、第1の回折格子が受ける放射ビームのパワーの70%又は80%以上となるように構成することができる。
[0016] 第2の回折格子は、第3のサブビームのパワーが第4のサブビームのパワーよりも大きくなるように構成することができる。
[0017] 第2の回折格子は、第3のサブビームのパワーが、第2の回折格子が受ける第1のサブビームのパワーの50%以上となるように構成することができる。第2の回折格子は、第3のサブビームのパワーが、第2の回折格子が受ける第1のサブビームのパワーの70%又は80%以上となるように構成することができる。
[0018] 第1の回折格子は更に、第1及び第2のサブビームに加えて、第3の出力放射ビームを形成する第5のサブビームを形成するように構成することができる。
[0019] 第1の回折格子は、第3の出力放射ビームのパワーが第1の出力放射ビームのパワーと実質的に同じになるように構成することができる。
[0020] 第2の回折格子は更に、第3及び第4のサブビームに加えて、第4の出力放射ビームを形成する第6のサブビームを形成するように構成することができる。
[0021] 第2の回折格子は、第4の出力放射ビームのパワーが第2の出力放射ビームのパワーと実質的に同じになるように構成することができる。
[0022] ビーム分割装置は、第2の回折格子において形成される第3のサブビームを受けるように配置され、少なくとも第7のサブビームと、第5の出力放射ビームを形成する第8のサブビームとを含むサブビームをそれぞれ形成する、複数の回折次数を含む回折パターンを形成するように構成された第3の回折格子を更に備えてよい。
[0023] 第1、第2及び第3の回折格子は、第1の出力放射ビーム、第2の出力放射ビーム及び第5の出力放射ビームが実質的に同じパワーを有するように構成することができる。
[0024] 第3の回折格子は、第9のサブビームを更に含む回折パターンを形成することができる。第9のサブビームは、更なる出力放射ビームを形成することができる。
[0025] 回折格子に入射しない各サブビームは出力放射ビームを形成することができる。
[0026] 各出力放射ビームは実質的に同じパワーを有してよい。
[0027] 第1及び第2の回折格子の少なくとも1つは、それぞれが傾斜部間に延びる実質的に平坦な底部を有する複数の溝であって、隣接する溝間に延びる実質的に平坦なリッジによって分離される溝が形成された反射面を備えてよい。
[0028] 回折格子は、溝が形成された基板上に配設された反射性コーティングを備えてよい。
[0029] 基板はシリコン基板を含んでよい。
[0030] 反射性コーティングはルテニウム及びモリブデンの少なくとも1つを含んでよい。
[0031] 第1の回折格子の平坦な底部の幅が、第2の回折格子の平坦な底部の幅と異なってよい。
[0032] 第1の回折格子の平坦な底部の幅は、第2の回折格子の平坦な底部の幅よりも大きくてよい。
[0033] 第1の回折格子のピッチが、第2の回折格子のピッチと実質的に同じであってよい。
[0034] ビーム分割装置は、放射が1つ以上の回折格子に入射するときのかすめ入射角及び/又は方位角を変更するように、1つ以上の回折格子の向きを変更するように動作可能な1つ以上のアクチュエータを更に備えてよい。
[0035] かすめ入射角及び/又は方位角を変更することによって、回折格子において異なる回折次数に回折される放射の量を変化させることができる。これを利用して、例えば、回折格子において形成される回折次数のパワーを制御することができる。
[0036] 本発明の第2の態様によれば、第1の態様によるビーム分割装置と、出力放射ビームを各リソグラフィ装置に誘導するように配置及び構成された誘導光学系と、を備えるビームデリバリシステムが提供される。
[0037] 本発明の第3の態様によれば、偏光入力放射ビームを受け、偏光入力放射ビームを少なくとも第1の出力放射ビーム及び第2の出力放射ビームに分割するように配置された1つ以上の光学要素と、第1の出力放射ビームを第1のリソグラフィ装置に誘導するように配置された複数の反射要素を備えた第1の誘導光学系と、第2の出力放射ビームを第2のリソグラフィ装置に誘導するように配置された複数の反射要素を備えた第2の誘導光学系と、を備え、誘導光学系は、第1の出力放射ビームの第1のリソグラフィ装置への光路に沿って第1の誘導光学系によって第1の出力放射ビームに導入される偏光の変化が、第2の出力放射ビームの第2のリソグラフィ装置への光路に沿って第2の誘導光学系によって第2の出力放射ビームに導入される偏光の変化と実質的に同じになるように配置されるビームデリバリシステムが提供される。
[0038] 所望の偏光状態をそれぞれ有する複数の出力放射ビームを提供することが望ましい可能性がある。放射ビームに実質的に同じ偏光変化をそれぞれもたらす誘導光学系を提供することによって、誘導光学系に入力される放射の偏光状態は、有利には出力放射ビームがそれぞれ所望の偏光状態を有するように選択することができる。
[0039] 第1の誘導光学系は、第1のリターダンスを第1の出力放射ビームの第1のリソグラフィ装置への光路に沿って第1の出力放射ビームに導入するように配置することができる、第2の誘導光学系は、第2のリターダンスと実質的に同じ第2のリターダンスを第2の出力放射ビームの第2のリソグラフィ装置への光路に沿って第2の出力放射ビームに導入するように配置することができる。
[0040] 第1の誘導光学系の向きは、第2の誘導光学系の向きの鏡像であってよい。
[0041] 第1の誘導光学系の複数の反射要素は、第1の出力放射ビームを受けて反射することによって、入射及び反射する放射が存在する入射面を定義するように配置された第1の反射要素と、第1の出力放射ビームを連続的に受けて反射することによって各反射要素の入射面を定義するように配置された1つ以上の更なる反射要素とを含んでよく、1つ以上の更なる反射要素は、1つ以上の更なる反射要素のそれぞれの入射面が、第1の出力放射ビームを最後に反射した反射要素の入射面に対して実質的に平行又は実質的に垂直に存在するように配向される。
[0042] 第1の誘導光学系の複数の反射要素は更に、第1の出力放射ビームの偏光状態に正味の変化を実質的にもたらさないように全体が構成された複数の反射要素を含んでよい。
[0043] 第2の誘導光学系の複数の反射要素は、第2の出力放射ビームを受けて反射することによって、入射及び反射する放射が存在する入射面を定義するように配置された第2の反射要素と、第2の出力放射ビームを連続的に受けて反射することによって各反射要素の入射面を定義するように配置された1つ以上の更なる反射要素とを含んでよく、1つ以上の更なる反射要素は、1つ以上の更なる反射要素のそれぞれの入射面が、第2の出力放射ビームを最後に反射した反射要素の入射面に対して実質的に平行又は実質的に垂直に存在するように配向される。
[0044] 第2の誘導光学系の複数の反射要素は更に、第1の出力放射ビームの偏光状態に正味の変化を実質的にもたらさないように全体が構成された複数の反射要素を含んでよい。
[0045] 1つ以上の光学要素は、偏光入力放射ビームを受けるように配置された回折格子を備えてよく、1つが第1の出力放射ビームを形成し、別のものが第2の出力放射ビームを形成する複数の回折次数を含む回折パターンを形成するように構成することができる。
[0046] 回折格子は、それぞれが傾斜部間に延びる実質的に平坦な底部を有する複数の溝であって、隣接する溝間に延びる実質的に平坦なリッジによって分離される溝が形成された反射面を備えてよい。
[0047] 回折格子は、溝が形成された基板上に配設された反射性コーティングを備えてよい。
[0048] 基板はシリコン基板を含んでよい。
[0049] 反射性コーティングは、ルテニウム及びモリブデンの少なくとも1つを含んでよい。
[0050] 1つ以上の光学要素は、入力放射ビームの第1の部分を受け、第1の部分を反射して第1の出力放射ビームを形成するように配置された第1の反射要素と、入力放射ビームの第2の部分を受け、第2の部分を反射して第2の出力放射ビームを形成するように配置された第2の反射要素とを含んでよい。
[0051] 1つ以上の光学要素は更に、入力放射ビームを第1及び第2の出力放射ビームのほかに第1のサブビームに分割するように構成することができ、ビーム分割装置は更に、第1のサブビームを受け、サブビームを少なくとも第3の出力放射ビーム及び第4の出力放射ビームに分割するように配置された1つ以上の更なる光学要素と、第3の出力放射ビームを第3のリソグラフィ装置に誘導するように配置された複数の反射要素を備えた第3の誘導光学系と、第4の出力放射ビームを第4のリソグラフィ装置に誘導するように配置された複数の反射要素を備えた第4の誘導光学系と、を備えてよく、誘導光学系は、第3のリソグラフィ装置への第3の出力放射ビームの光路を通して、誘導光学系によって第3の出力放射ビームに導入されるリターダンスが、第4のリソグラフィ装置への第4の出力放射ビームの光路を通して、誘導光学系によって第4の出力放射ビームに導入されるリターダンスと実質的に同じになるように配置及び構成される。
[0052] 第3及び/又は第4の誘導光学系は、上記の第1及び/又は第2の誘導光学系の1つ以上の特徴を有してよい。
[0053] 誘導光学系は、第1、第2、第3及び第4の誘導光学系から出力される第1の出力放射ビーム、第2の出力放射ビーム、第3の出力放射ビーム及び第4の出力放射ビームの偏光状態が実質的に同じになるように配置及び構成することができる。
[0054] 回折格子において形成される回折次数の1つは第1のサブビームを形成してよい。
[0055] ビームデリバリシステムは、回折格子に提供されるサブビームの光路に配置された1つ以上の反射要素を更に備えてよく、1つ以上の反射要素は、1つ以上の反射要素から反射されるサブビームの偏光状態が、1つ以上の光学要素に入射する入力放射ビームの偏光状態と実質的に同じになるように、1つ以上の回折格子において導入されるリターダンスと実質的に等しくかつ反対のリターダンスをサブビームに導入するように構成される。
[0056] 1つ以上の反射要素は、1つ以上の反射要素の入射面が、1つ以上の回折格子の入射面に対して実質的に垂直になるように配置することができる。
[0057] 第1のサブビームが1つ以上の反射要素のそれぞれに入射するかすめ入射角の和が、入力放射ビームが1つ以上の回折格子に入射するかすめ入射角の和と実質的に等しくてよい。
[0058] 第1及び第2の反射要素は、入力放射ビームの一部分が第1又は第2の反射要素に入射せず、1つ以上の更なる光学要素に入射し続けるように配置することができる。
[0059] 本発明の第4の態様によれば、第1又は第3の態様によるビームデリバリシステムと、ビームデリバリシステムから出力される第1の出力放射ビームを受けるように配置された第1のリソグラフィ装置と、ビームデリバリシステムから第2の出力放射ビームを受けるように配置された第2のリソグラフィ装置と、を備えるリソグラフィシステムが提供される。
[0060] リソグラフィシステムは、入力放射ビームを提供するように構成された放射源を更に備えてよい。
[0061] 放射源は自由電子レーザを含んでよい。
[0062] 本発明の第5の態様によれば、回折格子を製造する方法であって、複数の平行なリッジを含むマスクを基板上に置くことと、リッジ間に溝を形成するために、リッジが堆積置かれた領域間の基板の領域をエッチングすることと、溝が傾斜部間に延びる実質的に平坦な底部を有する時点でエッチングを停止することと、マスクを基板から除去し、隣接する溝間に延びる実質的に平坦なリッジを基板に露出することと、を含む方法が提供される。
[0063] 方法は、マスクを基板から除去した後に基板をエッチングすることを更に含んでよい。
[0064] マスクを除去した後に基板を非選択的にエッチングすることは、基板に形成された角(例えば、基板のリッジの角)を丸くする機能を果たすことができる。これによって、有利には反射性コーティングの基板への接着性が向上し、反射性コーティングに欠陥が生じる可能性が低下する。
[0065] 方法は基板上に反射性コーティングを堆積させることを更に含んでよい。
[0066] 基板はシリコンを含んでよい。
[0067] エッチングは、シリコンの(111)及び(−111)結晶面に沿って行うことができる。
[0068] エッチングは湿式化学エッチングを含んでよい。
[0069] 湿式化学エッチングは、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、及びエチレンジアミンピロカテコールの水溶液の少なくとも1つを使用して行うことができる。
[0070] 本発明の第6の態様によれば、回折格子を製造する方法であって、複数の平行なリッジを含むマスクを基板上に置くことと、リッジ間に溝を形成するために、リッジが置かれた領域間の基板の領域をエッチングすることと、マスクを基板から除去し、隣接する溝間に延びるリッジを基板に露出することと、リッジのエッジを実質的に丸くするために、マスクを除去した後に基板をエッチングすることと、を含む方法が提供される。
[0071] マスクを除去した後に基板を非選択的にエッチングすることは、基板に形成されたエッジを丸くする機能を果たすことができる。これによって、有利には反射性コーティングの基板への接着性が向上し、反射性コーティングに欠陥が生じる可能性が低下する。
[0072] 方法は、基板上に反射性コーティングを堆積させることを更に含んでよい。
[0073] 本発明の第8の態様によれば、複数の溝が形成され、隣接する溝間にエッジが実質的に丸い角を有する複数のリッジが配設された基板と、基板上に配設された反射性コーティングと、を備える回折格子が提供される。
[0074] リッジの丸いエッジは、反射性コーティングの基板への接着性を向上させ、反射性コーティングに欠陥が生じる可能性を低下させることができる。
[0075] 各溝は傾斜部間に延びる実質的に平坦な底部を有してよい。
[0076] 以上又は以下に記載の本発明の種々の態様及び特徴は、当業者には容易に明らかなように、本発明の他の種々の態様及び特徴と組み合わせることができる。
[0078] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィシステムLSを示す。リソグラフィシステムLSは、放射源SO、ビームデリバリシステムBDS及び複数のリソグラフィ装置LAa〜LAn(例えば、10個のリソグラフィ装置)を備える。放射源SOは、極端紫外(EUV)放射ビームB(メインビームと呼んでよい)を生成するように構成される。放射源SO及びビームデリバリシステムBDSは共に、1つ以上のリソグラフィ装置LAa〜LAnに放射を提供するように構成される放射システムを形成すると考えることができる。
[0079] ビームデリバリシステムBDSは、ビーム分割光学系を備え、任意選択的にビーム拡大光学系及び/又はビーム整形光学系も備えてよい。メイン放射ビームBを複数の放射ビームBa〜Bn(分岐ビームと呼んでよい)に分割し、各放射ビームは、ビームデリバリシステムBDSによりリソグラフィ装置LAa〜LAnの異なる1つに誘導される。
[0080] ある実施形態では、分岐放射ビームBa〜Bnはそれぞれ、各アテニュエータ(図1に図示せず)を介して誘導される。各アテニュエータは、分岐放射ビームBa〜Bnが対応するリソグラフィ装置LAa〜LAnに進入する前に、各分岐放射ビームBa〜Bnの強度を調整するように配置されてよい。
[0081] 放射源SO、ビームデリバリシステムBDS及びリソグラフィ装置LAa〜LAnは全て、外部環境から隔離することができるように構築及び配置することができる。EUV放射の吸収が減少するように、放射源SO、ビームデリバリシステムBDS及びリソグラフィ装置LAa〜LAnの少なくとも一部に真空を設けることができる。リソグラフィシステムLSの異なる部分に、異なる圧力の真空を設ける(すなわち、大気圧未満の異なる圧力で保持する)こともできる。
[0082] 図2を参照すると、リソグラフィ装置LAaは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えば、マスク)を支持するように構成された支持体構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTとを備える。照明システムILは、このリソグラフィ装置LAaが受ける分岐放射ビームBaがパターニングデバイスMAに入射する前に、分岐放射ビームBaを調節するように構成される。投影システムPSは、(既にパターニングデバイスMAによってパターン付与されている)放射ビームBa’を基板W上に投影するように構成される。基板Wは予め形成されたパターンを含んでよい。この場合、リソグラフィ装置は、パターン付与された放射ビームBa’を基板W上に予め形成されたパターンと位置合わせする。
[0083] リソグラフィ装置LAaが受ける分岐放射ビームBaは、ビームデリバリシステムBDSから、照明システムILの閉鎖構造における開口8を通って、照明システムILに進入する。任意選択的に、開口8において、又はその近くで中間焦点を形成するように、分岐放射ビームBaを集束させてもよい。
[0084] 照明システムILは、フィールドファセットミラー10及び瞳ファセットミラー11を含んでよい。フィールドファセットミラー10及び瞳ファセットミラー11は共に、放射ビームBaに所望の断面形状及び所望の角度分布をもたらす。放射ビームBaは、照明システムILから進み、支持体構造MTによって保持されたパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは、放射ビームを反射し、かつ放射ビームにパターンを付与して、パターン付与されたビームBa’を形成する。照明システムILは、フィールドファセットミラー10及び瞳ファセットミラー11に加えて、又はそれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含んでもよい。照明システムILは、例えば、独立可動ミラーのアレイを含んでよい。独立可動ミラーの寸法は、例えば、幅1mm未満であってよい。独立可動ミラーは、例えば、微小電気機械システム(MEMS)デバイスであってよい。
[0085] パターニングデバイスMAからの方向転換(例えば、反射)に続いて、パターン付与された放射ビームBa’は投影システムPSに入る。投影システムPSは、基板テーブルWTによって保持された基板W上に放射ビームBa’を投影するように構成された、複数のミラー13、14を備える。投影システムPSは、放射ビームに縮小係数を適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャを有するイメージを形成することができる。例えば、縮小係数4が適用されてよい。図2において投影システムPSは2つのミラーを有するが、投影システムは任意の数のミラー(例えば6つのミラー)を含んでよい。
[0086] リソグラフィ装置LAaは、放射ビームBaの断面にパターンを付与し、パターン付与された放射ビームを基板のターゲット部分上に投影し、それによって、基板のターゲット部分をパターン付与された放射で露光するように動作可能である。リソグラフィ装置LAaは、例えばスキャンモードで使用することができ、スキャンモードでは、支持体構造MT及び基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームBa’に付与されたパターンを基板W上に投影する(すなわち、動的露光)。支持体構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの縮小及び像反転特性によって決めることができる。
[0087] 再び図1を参照すると、放射源SOは、各リソグラフィ装置LAa〜LAnに供給するのに十分なパワーを有するEUV放射ビームBを生成するように構成される。上述のように、放射源SOは、自由電子レーザを備えてよい。
[0088] 図3は、入射器21、線形加速器22、バンチ圧縮器23、アンジュレータ24、電子減速器26、及びビームダンプ100を備えた自由電子レーザFELの概略図である。
[0089] 入射器21は、バンチ化電子ビームEを生成するように配置され、電子源(例えば熱電子陰極又は光電陰極)及び加速電場を備える。電子ビームE中の電子は、線形加速器22によって更に加速される。一例では、線形加速器22は、共通の軸に沿って軸方向に離間した複数の高周波空洞、及び1つ以上の高周波電源を備えてよく、この高周波電源は、各電子のバンチを加速するように、共通の軸に沿った電磁場間を電子のバンチが通過するときにそれらの電磁場を制御するように動作可能である。空洞は、超伝導高周波空洞であってよい。有利なことに、これによって、比較的大きい電磁場を高デューティサイクルで印加すること、ウェイク場に起因する損失の減少をもたらすより大きいビーム開口、及び、高周波エネルギーのうち(空洞壁を通じて放散される部分とは対照的に)ビームに伝達される部分を増大させることが可能となる。代替的に、空洞は、従来の伝導性の(すなわち、超伝導でない)ものであってもよく、例えば銅で形成することもできる。他のタイプの線形加速器、例えば、レーザウェイク場加速器又は逆自由電子レーザ加速器などを使用してもよい。
[0090] 任意選択的に、電子ビームEは、線形加速器22とアンジュレータ24の間に配設されたバンチ圧縮器23を通過する。バンチ圧縮器23は、電子ビームE中に既に存在する電子のバンチを空間的に圧縮するように構成される。1つのタイプのバンチ圧縮器23は、電子ビームEを横切るように方向づけられた放射場を備える。電子ビームE中の電子は、放射と相互作用し、近傍の他の電子と共にバンチ化する。別のタイプのバンチ圧縮器23は磁気シケインを備え、電子がシケインを通過する際にたどる経路の長さは、電子のエネルギーに依存する。このタイプのバンチ圧縮器を使用して、複数の共振空洞によって線形加速器22内で加速された電子のバンチを圧縮することができる。
[0091] 次いで、電子ビームEはアンジュレータ24を通過する。一般に、アンジュレータ24は複数のモジュール(図示せず)を備える。各モジュールは周期的磁石構造を備え、この周期的磁石構造は周期的磁場を生成するように動作可能であり、入射器21及び線形加速器22によって生成された相対論的電子ビームEを、そのモジュール内の周期的経路に沿って誘導するように配置される。各アンジュレータモジュールによって生成される周期的磁場によって、電子は振動経路の中心軸付近をたどる。結果として、各アンジュレータモジュール内で、電子は、概ねそのアンジュレータモジュールの中心軸の方向に電磁放射を放射する。
[0092] 電子がたどる経路は、正弦状かつ平面的な、電子が中心軸を周期的に横切るものであってよい。代替的に、経路は螺旋状の、電子が中心軸の周りを回転するものであってもよい。振動経路のタイプは、自由電子レーザによって放出される放射の偏光に影響を及ぼす場合がある。例えば、電子を螺旋状の形路に沿って伝播させる自由電子レーザは、楕円偏光放射を放出する場合がある。
[0093] 電子が各アンジュレータモジュールを通って移動するとき、電子は放射の電場と相互作用し、放射との間でエネルギーを交換する。一般に、電子と放射の間で交換されるエネルギーの量は高速で振動するが、条件が共振条件に近い場合を除く。共振条件下では、電子と放射との相互作用によって、アンジュレータ内で放射の波長で変調されたマイクロバンチへと電子がバンチ化され、中心軸に沿ったコヒーレントな放射の放出が誘導される。共振条件は次式によって与えることができる。
ここで、λ
emは放射の波長であり、λ
uは電子がそこを通って伝播するアンジュレータモジュールのアンジュレータ周期であり、γは電子のローレンツ因子であり、Kはアンジュレータパラメータである。Aはアンジュレータ24の幾何学的形状に依存する。すなわち、円偏光放射を生成するヘリカルアンジュレータではA=1であり、平面アンジュレータではA=2であり、(円偏光でも直線偏光でもない)楕円偏光放射を生成するヘリカルアンジュレータでは1<A<2である。実際には、各電子のバンチはエネルギーの広がりを有することとなるが、この広がりは、可能な限り(低エミッタンスの電子ビームEを生成することによって)最小化することができる。アンジュレータパラメータKは、典型的には約1であり、次式によって与えられる。
ここで、q及びmはそれぞれ電荷及び電子の質量であり、B
0は周期的磁場の振幅であり、cは光の速度である。
[0094] 共振波長λemは、各アンジュレータモジュールを通って移動する電子が自発的に放射する第1高調波波長と等しい。自由電子レーザFELは、自己増幅自発放射(SASE)モードで動作することができる。SASEモードでの動作には、電子ビームEが各アンジュレータモジュールに入る前に、電子ビームE中の電子バンチのエネルギーの広がりが小さくなっていることが必要な場合がある。代替的に、自由電子レーザFELはシード放射源を備えてもよく、シード放射源は、アンジュレータ24内の誘導放射によって増幅することができる。自由電子レーザFELは、再循環増幅器自由電子レーザ(RAFEL)として動作することができ、自由電子レーザFELによって発生した放射の一部分を用いて、更なる放射の発生がシードされる。
[0095] アンジュレータ24を通って移動する電子は、放射の振幅を増大させることができる。すなわち、自由電子レーザFELは、非ゼロの利得を有することができる。共振条件が満たされるとき、又は条件が共振に近いがわずかに外れているときに、最大利得を達成することができる。
[0096] アンジュレータ24に入るときに共振条件を満たす電子は、放射を放出(又は吸収)するときにエネルギーを失い(又は得て)、その結果、共振条件は満たされなくなる。したがって、いくつかの実施形態では、アンジュレータ24をテーパ付けしてよい。すなわち、電子のバンチがアンジュレータ24を通って誘導される際に電子のバンチを共振又は共振近傍に保つために、周期的磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuを、アンジュレータ24の長さに沿って変動させてよい。テーパ付けは、各アンジュレータモジュール内で、及び/又はモジュールごとに、周期的磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuを変化させることによって実現することができる。追加的又は代替的に、各アンジュレータモジュール内で、及び/又はモジュールごとに、アンジュレータ24のヘリシティを変化させる(パラメータAを変化させる)ことによって、テーパ付けを実現することもできる。
[0097] アンジュレータ24内で生成される放射は、放射ビームBFELとして出力される。
[0098] アンジュレータ24を離れた後、電子ビームEはダンプ100によって吸収される。ダンプ100は、電子ビームEを吸収するのに十分な量の材料を備えてよい。この材料は、放射能の誘導に関する閾値エネルギーを有してよい。閾値エネルギー未満のエネルギーでダンプ100に入る電子は、ガンマ線シャワーのみを生成する可能性があるが、有意なレベルの放射能を一切誘導しない。この材料は、電子衝撃による放射能の誘導に関して高い閾値エネルギーを有してよい。例えば、ビームダンプは、約17MeVの閾値エネルギーを有するアルミニウム(Al)を含んでよい。電子ビームE内の電子がダンプ100に入る前に、電子のエネルギーを減少させることが望ましい場合がある。そうすることで、ダンプ100から放射性廃棄物を除去及び処分する必要性が排除されるか、又は少なくとも低下する。このことは、放射性廃棄物を除去するためには自由電子レーザFELを定期的に停止させる必要があること、また放射性廃棄物の処分には費用が掛かる場合があると共に環境面での深刻な影響を伴う場合があることから有利である。
[0099] 電子ビームEを、アンジュレータ24とビームダンプ100の間に配設された減速器26を通して誘導することによって、電子ビームEがダンプ100に入る前に、電子ビームE中の電子のエネルギーを減少させることができる。
[00100] ある実施形態では、電子が入射器21により生成された電子ビームに対して180度の位相差で再び線形加速器22を通過するようにすることで、アンジュレータ24を出る電子ビームEを減速させることができる。したがって、線形加速器内のRF場は、アンジュレータ24から出力された電子を減速し、入射器21から出力された電子を加速するように機能する。電子が線形加速器22内で減速するため、電子のエネルギーの一部は線形加速器22内のRF場に伝達される。したがって、減速する電子からのエネルギーは、線形加速器22によって回収され、入射器21から出力された電子ビームEを加速するために用いることができる。そのような構成は、エネルギー回収型線形加速器(ERL)として知られている。
[00101] リソグラフィシステムLSのいくつかの実施形態では、放射源SOは単一の自由電子レーザFELを備えてよい。そのような実施形態では、放射源SOから放出されるメインビームBは、自由電子レーザFELから放出されるレーザビームBFELであってよい。他の実施形態では、リソグラフィシステムLSが複数の自由電子レーザを備えてもよい。自由電子レーザから放出される複数のレーザビームBFELを結合して、複数の自由電子レーザFELから放出される放射を含む単一のメインビームBを形成することができる。
[00102] 図4A及び図4Bは、本発明のある実施形態によるビームデリバリシステムBDSの一部分の概略図である。図4AはビームデリバリシステムBDSの上面図を示し、図4BはビームデリバリシステムBDSの側面図を示す。図4A及び図4Bでは一貫してデカルト座標を用いる。
[00103] ビームデリバリシステムBDSは、入力放射ビームBを受け、複数のリソグラフィ装置LAa〜LAjに供給するために入力放射ビームBを複数の出力放射ビームBa〜Bjに分割するように配置されたビーム分割装置40を備える。ビームデリバリシステムBDSは更に、出力放射ビームBa〜Bjをリソグラフィ装置LAa〜LAjに誘導するように配置された誘導光学系31a〜31jを備える。出力放射ビームBa〜Bjは分岐放射ビームと呼んでよい。
[00104] ビーム分割装置40は複数の反射回折格子41〜45を備える。回折格子41〜45は円錐回折格子でよい。回折格子41〜45のそれぞれは、放射ビームを受け、複数の回折次数を含む回折パターンを形成するように配置される。回折次数のそれぞれはサブビームを形成する。入力放射ビームBは最初に第1の回折格子41に入射する。第1の回折格子は、+1回折次数、0次回折次数及び−1回折次数を含む回折パターンを形成するように構成される。第1の回折格子41において形成された0次回折は第2の回折格子42に入射する。第2の回折格子42は0次回折次数を受け、+1回折次数、0次回折次数及び−1回折次数を含む回折パターンを形成するように配置される。
[00105] 第1の回折格子41において形成される+1回折次数は、ビーム分割装置40から出力される第1の分岐放射ビームBaを形成する。第2の回折格子42において形成される+1回折次数は、ビーム分割装置40から出力される第2の分岐放射ビームBbを形成する。第1の回折格子41において形成される−1回折次数は、ビーム分割装置40から出力される第3の分岐放射ビームBcを形成する。第2の回折格子42において形成される−1回折次数は、ビーム分割装置40から出力される第4の分岐放射ビームBdを形成する。
[00106] 第2の回折格子において形成される0次回折次数は、第3の回折格子43に入射し、この回折格子は、+1回折次数、0次回折次数及び−1回折次数を形成する。第3の回折格子43において形成される+1及び−1回折次数はそれぞれ、第5及び第6の分岐放射ビームBe及びBfを形成する。第3の回折格子において形成される0次回折次数は、第4の回折格子44に入射し、この回折格子は、+1回折次数、0次回折次数及び−1回折次数を形成する。第4の回折格子44において形成される+1及び−1回折次数はそれぞれ、第7及び第8の分岐放射ビームBe及びBfを形成する。第4の回折格子44において形成される0次回折次数は、第5の回折格子45に入射し、この回折格子は、+1回折次数及び−1回折次数を形成する。第5の回折格子45において形成される+1及び−1回折次数はそれぞれ、第9及び第10の分岐放射ビームBi及びBjを形成する。
[00107] 第1〜第10の分岐放射ビームBa〜Bjはそれぞれ、誘導光学系31a〜31jにより各リソグラフィ装置LAa〜LAjに誘導される。図4Aに示す構成では、リソグラフィ装置のそれぞれは、回折格子において形成される+1又は−1回折次数に対応する分岐放射ビームBa〜Bjを受ける。各回折格子41〜45は、放射源SOから直接受ける(第1の回折格子41の場合)又は前の回折格子において形成された0次回折次数に対応する(第2、第3、第4及び第5の回折格子42、43、44及び45の場合)放射ビームを受ける。すなわち、全ての+1及び−1回折次数は、リソグラフィ装置に出力される分岐放射ビームBa〜Bjを形成し、後続の回折格子への入力放射ビームを形成しない。したがって、放射源SOからリソグラフィ装置LAa〜LAjまでの各分岐放射ビームBa〜Bjの光路は、+1又は−1回折次数の1つだけを含む。以下に更に詳細に記載するように、これによって、各分岐放射ビームBa〜Bjのパワーは、入力放射ビームBの波長及び/又は指向方向の変化に関して(従来技術のビームデリバリシステムと比べて)比較的安定するため有利である。
[00108] 他の実施形態では、10個よりも多いか又は少ない分岐放射ビームをビーム分割装置により形成することもできる。いくつかの実施形態では、3つよりも多いか又は少ない回折次数を単一の回折格子において形成することができる。例えば、いくつかの回折格子において、上記の+1、−1及び0次回折次数の他に、+2及び/又は−2回折次数を形成することもできる。一般に、任意の数の分岐放射ビームを形成するために、任意の数の回折格子を使用することができる。各回折格子において、任意の数の回折次数を形成することができる。少なくともいくつかの回折格子は、別の回折格子において形成された0次回折次数を受けるように配置される。図4Aを参照して以上に記載したように、回折格子は、分岐放射ビームの光路が0次回折次数でない回折次数(例えば+1又は−1回折次数)の1つだけを含むように配置されてよい。
[00109] 図4A及び図4Bに示す実施形態に戻ると、図4Bから分かるように、放射は各回折格子にかすめ入射角αで入射する。かすめ入射角αは、回折格子で吸収される放射の量を制限するように選んでよい。一般に、反射面にかすめ入射角で入射するEUV放射の場合、吸収量はかすめ入射角が大きくなると増加する。したがって、回折格子41〜45での吸収を制限するために、比較的小さいかすめ入射角αを選ぶことができる。かすめ入射角αは5°未満、例えば約2°、又は更に小さい、例えば約1°でもよい。図4Bに示す構成では、回折格子41〜45は、放射を正及び負のy方向に交互に誘導するように配置される。これによって、回折格子41〜45をy方向の同様な位置に配置することができ、ビームデリバリシステムBDSのコンポーネントを都合よく配置することができる。
[00110] 図4Bに示す実施形態では、各回折格子におけるかすめ入射角αは実質的に同じである。しかし、いくつかの実施形態では、かすめ入射角αは回折格子ごとに異なってよい。
[00111] いくつかの実施形態では、リソグラフィ装置LAa〜LAjに実質的に同じパワーを有する分岐放射ビームBa〜Bjを提供することが望ましい。リソグラフィ装置LAa〜LAjに提供される分岐放射ビームBa〜Bjのパワーは、入力放射ビームBのパワー、及び各回折格子に入射し、回折次数のそれぞれに分割される放射ビームのパワーの割合に依存する。回折格子に入射し、異なる回折次数に分割される放射ビームのパワーの割合は回折格子の分割比と呼んでよい。例えば、入射放射の20%を+1回折次数に分割し、入射放射の60%を0次回折次数に分割し、入射放射の20%を−1回折次数に分割する回折格子は、20:60:20、すなわち1:3:1の分割比を有するものとして表すことができる。
[00112] 回折格子のそれぞれに入射する放射のパワーは、第1の回折格子41から第5の回折格子45へと減少する。すなわち、第1の回折格子41に入射する入力放射ビームBのパワーは、第2の回折格子42に入射する放射ビームのパワーよりも大きく、同様に第2の回折格子42に入射する放射ビームのパワーは、第3の回折格子43に入射する放射ビームのパワーよりも大きい。第3の回折格子43に入射する放射ビームのパワーは、第4の回折格子24に入射する放射ビームのパワーよりも大きい。第4の回折24格子に入射する放射ビームのパワーは、第5の回折格子45に入射する放射ビームのパワーよりも大きい。
[00113] リソグラフィ装置LAa〜LAjに供給される分岐放射ビームBa〜Bjが実質的に同じパワーを有するように、回折格子の分割比は互いに異なる。具体的には、+1及び−1回折次数に向けられる入射放射の割合は、第1の回折格子41から第5の回折格子45へと順次増加する。0次回折次数に向けられる入射放射のパワーは、第1の回折格子41から第5の回折格子45へと順次減少する。
[00114] 表1は、一実施形態による、各回折格子において各回折次数に分割される入射パワーの割合を示す。表1の第1の列は、対応する行が関係する回折格子を示す。表1の第2の列は、各回折格子に入射し、+1及び−1回折次数のそれぞれに分割されるパワーの割合を示す。例えば、第1の回折格子41は、入力放射ビームBのパワーの10分の1を+1回折次数に分割し、入力放射ビームBのパワーの10分の1を−1回折次数に分割する。表1の第2の列は、0次回折次数を形成する各回折格子に入射するパワーの割合を示す。例えば、第1の回折格子は、入力放射ビームBのパワーの10分の8を0次回折次数に分割する。表1の第4の列は、各回折格子において形成される分岐放射ビームに向けられる入力放射ビームBのパワーの割合を示す。例えば、第1の回折格子41は、入力放射ビームBのパワーの10分の1に相当するパワーをそれぞれ有する分岐放射ビームB
a、B
cを形成する。
[00115] 表1から、回折格子の分割比は、回折格子41〜45において形成される+1及び−1回折次数のそれぞれが入力放射ビームBのパワーの10分の1に実質的に等しいパワーを有するように設定されていることが分かる。すなわち、入力放射ビームBのパワーは、それぞれが実質的に同じパワーを有する10個の分岐放射ビームBa〜Bjに均等に分割される。
[00116] 表1にまとめられた例では、回折格子において放射が失われないこと、及び各回折格子は、入射する全ての放射を+1、0次及び−1回折次数(第1、第2、第3及び第4の回折格子41、42、43、24の場合)又は+1及び−1回折次数(第5の回折格子45の場合)に分割することが仮定されている。実際には各回折格子は、入射する放射の一部を吸収する。回折格子が放射の一部を、分岐放射ビームの形成に使用されない、より高い回折次数に回折する場合もある。したがって、放射の一部は(例えば吸収及び/又はより高い回折次数によって)各回折格子において失われることになる。各回折格子の分割比は、放射損失を解決するために、表1に示したものから調整することができる。例えば、第1の回折格子41において0次次数を形成する入射放射の割合を、後続の回折格子42〜45における放射損失を解決するために増加することができる。同様に、第2〜第4の回折格子42〜24における分割比は、放射損失を解決するために調整することができる。一般に、各回折格子の分割比は、各分岐放射ビームBa〜Bjのパワーが実質的に等しくなるように設定することができる。
[00117] 各回折格子の分割比は、更なる回折格子、及び回折格子において形成される回折次数から放射が供給されるリソグラフィ装置の数に依存してよい。一般に、第1の回折格子において0次回折次数を形成する入力放射ビームBのパワーの割合は50%よりも大きくてよい。いくつかの実施形態では、第1の回折格子において0次回折次数を形成する入力放射ビームBのパワーの割合は、60%よりも大きい、70%よりも大きい、又は80%よりも大きくてよい。
[00118] 図5Aは、第1〜第5の回折格子41〜45のいずれかを形成し得る回折格子の一部分の概略図である。回折格子は、複数の溝51を有する反射面Sを備える。溝は、隣接する溝間に延びる実質的に平坦なリッジ53によって分離される。溝51及びリッジ53は共にピッチPを有する周期構造を形成する。各溝51は、傾斜部57a及び57bの間に延びる実質的に平坦な底部55を有する。溝51の平坦な底部55は幅w1を有する。隣接する溝51間に延びるリッジ53は幅w2を有する。溝51は深さd1を有する。ピッチPに等しい長さを有する回折格子構造の1つの領域(例えば、1つのリッジ53及び1つの溝51を有する格子の1つの領域)は、格子構造の単位セルと呼んでよい。以下に更に詳細に記載するように、格子構造の単位セルの形状は、回折格子の分割比を決定することができる。
[00119] 回折格子は、基板に溝51を形成することによって形成することができる。例えば、回折格子はシリコン基板を含んでよい。溝51は、例えばエッチング、スタンピング又は電鋳法などの任意の適切なプロセスによって形成することができる。いくつかの実施形態では、溝51は、湿式化学エッチングを用いて基板に刻み込まれてよい。例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、及び/又はエチレンジアミンピロカテコール(EDP)の水溶液などのエッチング液を使用することができる。基板が結晶構造を有する(例えば、基板がシリコン基板である)実施形態では、溝は基板の結晶面に沿ったエッチングによって形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、平坦なリッジ53は(100)結晶面に沿って形成することができる。溝51の傾斜部57a、57bは、(111)及び(−111)結晶面に沿って形成することができる。傾斜部57a、57bは、リッジ53がある面に対して垂直な垂直方向とそれぞれ角θa及びθbをなす。基板がシリコン基板である実施形態では、リッジ53は(100)結晶面に沿って形成され、傾斜部57a、57bは(111)及び(−111)結晶面に沿って形成され、角θa及びθbは共に約35°でよい。他の実施形態では、リッジ53を記述する(hkl)数に従って様々な異なるレイアウトが可能である。
[00120] 溝51の平坦な底部55は、溝51を形成するのに用いられるプロセスを打ち切ることによって形成されてよい。例えば、傾斜部57a、57bが互いに接触する前にエッチングプロセスを停止することによって、傾斜部57a、57b間に延びる平坦な底部55を残すことができる。
[00121] リッジ53は、溝51をエッチングする前にエッチング耐性マスクを基板上に堆積させることによって基板に形成することができる。例えば、複数の平行なリッジを有するエッチング耐性マスクを基板上に堆積させてよい。次に、エッチング耐性マスクが存在するためにエッチング耐性マスク間の基板の領域だけをエッチングするエッチングプロセスが行われてよい。このエッチングプロセスは溝51を形成する一方、溝51間に延びるリッジ53を残す。その後エッチング耐性マスクを基板から除去し、実質的に平坦なリッジ53を露出することができる。
[00122] エッチング耐性マスクの平行なリッジは、フォトリソグラフィプロセスを用いて形成されてよい。例えば、最初に基板の全ての領域にフォトレジストを堆積させてよい。次にフォトレジストの各部分をリソグラフィ露光の一環として放射に露光することによって、露光部分の状態の変化を引き起こすことができる。次にレジストは、(使用されているレジストがポジ型かネガ型かに応じて)レジストの露光部分を除去するか、又はレジストの非露光部分を除去するかのいずれかによって現像することができる。レジストの残りの部分は、複数の平行なリッジを有するエッチング耐性マスクを形成することができる。例えば、基板に対してパターニングデバイスを移動させる又はスキャンすることによってリソグラフィ露光を行ってよい。パターニングデバイスは、基板上でスキャン又は移動可能なパターンを放射ビームに付与することができる。
[00123] 回折格子に(EUV放射に対して)より反射性が高い(より吸収性が低い)材料のコーティングを設けてよい。例えば、回折格子にルテニウム(Ru)又はモリブデン(Mo)のコーティングを設けてよい。これは例えば約50nmの厚さを有してよい。反射性コーティングを設ける場合、この反射性コーティングに更なるコーティングを塗布してもよい。例えば、存在すると考えられる条件に対する反射性コーティングの安定性及び耐性を増大させるために、酸化物、窒化物、カーバイドなどを塗布してもよい。
[00124] シリコンを含む基板を使用することは以上に記載した。シリコンを含む基板は比較的安価であり、他の材料から形成される基板と比較して有利な熱機械特性を有し得る。例えば、シリコンの膨張係数で割った熱伝導率は、有利なことに他の適切な材料の場合よりも高くなる可能性がある。しかし、いくつかの実施形態では、他の材料を使用してもよい。異方的エッチングにより格子を形成し得る他の材料の例には、ゲルマニウム(Ge)、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、リン化インジウム(InP)及びヒ化インジウム(InAs)がある。しかし一般に、任意の適切な(結晶性)材料を使用してよい。
[00125] 一般に、(本明細書に記載されているか否かを問わず)任意の適切な手順を用いて、図5Aに示す構造と類似の構造を有する回折格子を製造することができる。図5Aに示す構造を有する回折格子は、3つの可変パラメータ、すなわち、ピッチP、溝51の平坦な底部55の幅w1及びリッジ53の幅w2で特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、傾斜部57a、57bが垂直線となす角θa、θbは、可変パラメータと見なすことができる。しかし、以上に記載したように、角θa、θbは、基板を形成する材料の結晶面の向きによって決定することができる。基板の結晶面の向きは、基板材料の固有の特性である場合があるため、可変自在なパラメータでない場合がある。角θa、θbが固定と見なされる実施形態では、溝51の深さd1は、ピッチP、溝51の平坦な底部55の幅w1及びリッジ53の幅w2によって一意的に決定される。
[00126] ピッチP、溝51の平坦な底部55の幅w1及びリッジ53の幅w2は、所望の光学特性を有する回折格子を形成するために選択することができる。所与のかすめ入射角で回折格子に入射する所与の波長、及び溝51の向きに対する所与の角度(すなわち入射面及び溝51間の方位角φ)を有する放射ビームの場合、回折格子において形成される回折次数の方向は格子のピッチPに依存し、格子の単位セルの形状に依存しない。各回折次数に分割されるパワーの量(すなわち分割比)は格子の単位セルの形状に依存する。図5Aに示す構造を有する回折格子の場合、単位セルの形状は、平坦な底部24の幅w1及びリッジ53の幅w2によって一意的に決定される。したがって、回折格子の分割比は幅w1及び/又は幅w2を変えることにより変更可能である。
[00127] 0次回折次数に回折される入射パワーの割合は、リッジ53又は平坦な底部55から構成される単位セルの割合を増やすことによって増やすことができる。例えば、幅w1及び/又は幅w2は、0次回折次数に回折される入射パワーの割合を増やすために広げることができる。しかし、各回折次数に分割される入射パワーの割合は、格子のパラメータの複雑な関数である可能性がある。したがって、幅w1及び/又は幅w2を広げることが、常に0次回折次数に回折される入射パワーの割合を増やすわけではない可能性がある。
[00128] 図4Aを参照して以上に記載したように、0次回折次数に回折される入射パワーの割合は、第1の回折格子41から第5の回折格子45へと順次減少し、第5の回折格子45ではパワーは実質的に0次回折次数に回折されない。いくつかの実施形態では、回折格子の平坦な底部55の幅w1は、第1の回折格子41から第5の回折格子45へと順次狭くすることができる。すなわち、第1の回折格子41の平坦な底部55の幅w1は、第2の回折格子42の平坦な底部55の幅w1よりも広く
、続いて第2の回折格子42の平坦な底部55の幅w1は、第3の回折格子43の平坦な底部55の幅w1よりも広い。第3の回折格子43の平坦な底部55の幅w1は、第4の回折格子24の幅w1よりも広く、続いて第4の回折格子の幅w1は、第5の回折格子45の幅w2よりも広い。
[00129] いくつかの実施形態では、回折格子のリッジの幅w2は、第1の回折格子41から第5の回折格子45へと順次狭くすることができる。いくつかの実施形態では、平坦な底部55の幅w1及びリッジ53の幅w2の両方が第1の回折格子41から第5の回折格子45へと順次狭くなる。他の実施形態では、幅w1及び幅w2の一方のみが第1の回折格子41から第5の回折格子45へと順次狭くなる。
[00130] しかし、以上に記載したように、各回折次数に分割される入射パワーの割合は、一般的には格子のパラメータの複雑な関数である。いくつかの実施形態では、幅w1及び/又は幅w2は第1の回折格子41から第5の回折格子45へと順次狭くならない可能性がある。ただし、0次回折次数に分割される入射放射の割合は、引き続き第1の回折格子41から第5の回折格子45へと順次減少する可能性がある。一般に、各回折次数の入射放射の所望の割合を提供する任意の格子構成を用いることができる。
[00131] 図4Aから分かるように、第5の回折格子45は、第5の回折格子45において実質的に0次回折次数が形成されないように構成される。その代わりに、第5の回折格子に入射する放射の約50%は+1回折次数に分割され、第5の回折格子に入射する放射の約50%は−1回折次数に分割される。これは例えば、ラジアン単位のかすめ入射角αの4倍で割った入射放射の波長λに実質的に等しい溝深さd1(すなわちd1=λ/(4α))を有する回折格子を提供することによって達成することができる。平坦な底部55及びリッジ53からの鏡面反射が、溝深さd1に依存するこれらの位相差を有することになる。溝深さがd1=λ/(4α)により与えられる構成の場合、平坦な底部55からの鏡面反射はリッジ53からの鏡面反射と破壊的に干渉することになり、これによって0次回折次数の放射が抑制される。0次回折次数は、例えばリッジ53及び平坦な底部55からの鏡面反射が実質的に同じパワーを有する(したがって、互いに破壊的に干渉するときに互いを打ち消し合う)ように幅w1が幅w2と実質的に等しい場合、実質的に完全に抑制することができる。
[00132] ある実施形態では、第5の回折格子45は、例えば約13.5nmの波長を有する放射を受けるように構成することができる。放射は約17.5ミリラジアンのかすめ入射角で第5の回折格子45に入射してよい。溝51の深さd1は約192nmでよい。格子のピッチPは約1090nmでよい。平坦な底部55の幅w1は約411nmでよく、リッジ53の幅w2もまた約411nmでよい。このような実施形態では、回折格子に入射する実質的に全ての放射が+1及び−1回折次数に分割されるように0次回折次数を実質的に抑制することができる。
[00133] 以上に記載した実施形態では、+1回折次数に分割される入射放射の割合は−1回折次数に分割される入射放射の割合と実質的に同じであると仮定されていた。回折格子の溝51が入射放射の伝播方向に対して平行又は垂直に位置合わせされる実施形態では、回折格子によって形成される回折パターンのパワーは概ね対称的となる。すなわち、+1回折次数のパワーは−1回折次数のパワーと実質的に等しい。入射放射の伝播方向に対して実質的に平行な溝51についての言及は、(入射放射ビームが存在する)入射面と溝51の間の方位角φが実質的にゼロに等しいことを意味することが意図される。入射放射の伝播方向に対して実質的に垂直な溝は、方位角φが実質的に90°に等しいことを意味することが意図される。
[00134] 図4Aに示す構成では、+1回折次数及び−1回折次数の両方がリソグラフィ装置に供給される分岐放射ビームを形成するため、両次数のパワーは実質的に等しいことが有利な可能性がある。したがって、第1〜第5回折格子41〜45は、溝51が各回折格子に入射する放射ビームの伝播方向に対して実質的に平行又は垂直となるように配向されてよい。
[00135] 入射放射に対して実質的に垂直な(すなわち、φが約90°である)溝51とは対照的に、溝51が入射放射に対して実質的に平行である(すなわち、φが約0°である)ことが好ましい可能性がある。入射放射に対して実質的に平行となる(すなわち、φが約90°となる)ように溝51を配置することによって、有利には限られた数の回折次数(例えば数十個の回折次数とは対照的に2つ、3つ又は5つの回折次数)を形成する格子を設計することが可能になる。入射放射と実質的に平行な溝51についての言及は、方位角φの大きさが、放射が回折格子に入射するときのかすめ入射角α未満であることを意味するものと解釈することができる。
[00136] 他の実施形態では、回折格子により形成される回折パターンが非対称的であることが望ましい可能性がある。図6は、ビームデリバリシステムBDSの代替的な実施形態の概略図である。図6に示すビームデリバリシステムBDSは、第1〜第4の反射回折格子41〜24を含むビーム分割装置を備える。ビーム分割装置41は、入力放射ビームBを5つの分岐放射ビームBa〜Beに分割する。分岐放射ビームBa〜Beは、誘導光学系31a〜31eによって各リソグラフィ装置に誘導される。
[00137] 図6に示すビームデリバリシステムBDSは、図4A及び図4Bに示すビームデリバリシステムBDSと類似しているが、各回折格子41〜44が入力放射ビームを(図4Aに示すような−1回折次数、0次回折次数及び+1回折次数とは対照的に)0次回折次数及び+1回折次数に分割する点で異なる。図6の実施形態の回折格子41〜44のそれぞれは、+1回折次数及び0次回折次数を含む回折パターンを形成するように構成される。回折格子41〜44において形成される回折パターンは、−1回折次数を実質的に含まない。したがって、回折パターンは非対称的である。他の実施形態では、回折格子41〜44は、−1回折次数、0次回折次数を含み、−1回折次数を実質的に含まない回折パターンを形成するように構成されてもよい。
[00138] +1回折次数及び0次回折次数を含むが、−1回折次数を実質的に含まない非対称回折パターンを形成するために、回折格子の溝51が回折格子に入射する放射の伝播方向に対して垂直にも平行にもならないように回折格子を配向することができる。例えば、溝51と入射放射の間の方位角φは、放射が回折格子に入射するときのかすめ入射角αと実質的に同程度でよい。
[00139] +1又は−1回折次数のどちらかを抑制することに加えて、より高い次数の回折次数(例えば+2及び/又は−2回折次数)を抑制することが更に望ましい可能性がある。より高い次数の回折次数は、例えば、(ラジアン単位の)かすめ入射角αで割った入射放射の波長λ未満のオーダーのピッチPを提供することによって抑制することができる。
[00140] 図6に示す実施形態を形成する回折格子41〜44の構成は、図5Aを参照して以上で考察した回折格子と同様でよい。例えば、回折格子41〜44は、複数の溝51が形成された反射面を備えてよい。各溝51は、傾斜部57a、57b間に延びる実質的に平坦な底部55を有してよい。各溝51は、隣接する溝51間に延びる実質的に平坦なリッジ53により分離されてよい。溝51の平坦な底部55の幅w1及び/又はリッジ53の幅w2は、各回折格子において2つの回折次数に回折される入射放射の割合(すなわち回折格子の分割比)を選択するために選択することができる。回折格子41〜44の分割比は、リソグラフィ装置LAa〜LAeに提供される分岐放射ビームBa〜Beのパワーが互いに実質的に同じになるように選択することができる。
[00141] 図6に示す例では、ビーム分割装置は、分岐放射ビームを5つのリソグラフィ装置LAa〜LAeに提供する4つの回折格子41〜44を備える。他の実施形態では、ビーム分割装置40は、5つよりも多いか又は少ない分岐放射ビームを5つよりも多いか又は少ないリソグラフィ装置に供給する4つよりも多いか又は少ない回折格子を含んでもよい。例えばある実施形態では、ビーム分割装置40は、放射ビームを受け、0次回折次数及び+1回折次数を形成するようにそれぞれ構成された9つの回折格子を含んでよい。このビーム分割装置は、10個の分岐放射ビームを10個のリソグラフィ装置に供給することができる。
[00142] 図4A及び図4Bに示す実施形態と図6に示す実施形態の両方において、回折格子において形成される回折次数のパワー及び指向方向は、回折格子に入射する放射の波長及び/又は指向方向の変化に対して比較的感度が低いことが望ましい。いくつかの実施形態では、入力放射ビームBの波長及び/又は指向方向は経時的に変化し得る。例えば、(入力放射ビームBの全て又は一部を形成し得る)自由電子レーザFELから放出される放射ビームが、放射ビームの波長及び/又は指向方向の変化を受ける可能性がある。
[00143] 自由電子レーザFELから放出される放射の波長λemは、上記の式(1)で与えられ、アンジュレータ24中の電子のローレンツ因子γに依存する。アンジュレータ24中の電子のローレンツ因子γは、線形加速器24において電子が獲得するエネルギーに依存する。線形加速器において電子が獲得するエネルギーは、時間に関して不安定な可能性がある。例えば、線形加速器24においてRF場を生成するのに使用されるRF発生器のパワー出力は不安定性を含む可能性がある。その結果、アンジュレータ24中の電子のローレンツ因子γは経時的に変化し、自由電子レーザFELから放出される放射の波長λemの変動をもたらす可能性がある。
[00144] 自由電子レーザFELから放出される放射ビームの指向方向は、放射ビームが自由電子レーザFELから放出された後に入射する光学要素に対する、アンジュレータ24の位置の小さな変化に起因して経時的に変化する可能性がある。付加的又は代替的に、アンジュレータ24で発生する磁場の変化によって、アンジュレータを通る電子の通路に変化が生じることによって、アンジュレータ24内の放射の光路及びアンジュレータ24から放出される放射の指向方向が変わる可能性がある。
[00145] 入射する放射の波長及び/又は指向方向の変化に対する感度を低下させるように回折格子を構成することができる。例えば、回折格子構造を形成する単位セルの形状は、回折格子に入射する放射の波長及び/又は指向方向の変化に対する各回折次数の相対的パワーの感度に影響を及ぼすことができる。付加的又は代替的に、回折格子構造を形成する単位セルの形状は、回折格子に入射する放射の波長及び/又は指向方向の変化に対する各回折次数の指向方向の感度に影響を及ぼすことができる。
[00146] 図5Aに示す単位セルの一般的な形状によって、回折格子を(他の単位セル形状と比較して)回折格子に入射する放射の波長及び/又は指向方向の変化に対して比較的感度が低くなるように構成できるようになる。特に、単位セル形状に平坦な底部55及び/又はリッジ53を含むことによって、波長及び/又は指向方向感度を低下させるために調整可能な自由度が高まる。図5Aに示す一般的な単位セル形状を有する回折格子が、ピッチP、幅w1及び幅w2によって規定される。開先角度θa及びθbが、基板を形成するのに使用される材料の一定の特性によって決定される場合は、溝深さd1はピッチP、幅w1及び幅w2によって一意的に決定される。したがって、回折格子はそれ自体が3つの自由度、P,w1及びw2を有する。入射放射に対する回折格子の向きによって更なる自由度が与えられる。回折格子の向きは、入射面と溝51の間の方位角φと、かすめ入射角αとによって規定される。したがって、所与の波長の放射の場合、P、w1、w2、φ及びαの5つの自由度がある。
[00147] 自由度に対応する自由パラメータは、所望の特性を有する回折格子を提供するために選択することができる。例えば、所与の波長λを有する放射の場合、波長λ
、かすめ入射角α及び方位角φの変化に対する、各回折次数の放射の割合の感度を低下させるように自由パラメータを設定することが望ましい可能性がある。更に、入射放射の所望の割合をいくつかの回折次数に分割する回折格子を提供するように自由パラメータを設定することが望ましい可能性がある。n次回折次数を形成する入射放射の割合がR
nとして与えられる場合は、上述の基準は次の式で表すことができる:
ここでR
targetは、n次回折次数を形成する入射放射のターゲット割合である。
[00148] 回折格子において3つの回折次数(例えば、−1、0次及び+1回折次数)が形成される実施形態では、5つの自由パラメータを変化させることによって合計12個の式(各回折次数についての式(3a)〜(3d)のバージョン)を満たす必要がある。自由パラメータの適切な値は、例えば回折格子の数値モデリングによって求めることができる。この問題は、実際によくあることだが、例えば式(3a)が成立する場合に式(3b)も成立すると仮定することによって簡略化することができる。この問題は更に、例えば対称回折パターンが形成されるように方位角φをゼロに設定することによって簡略化することができる。いくつかの実施形態では、かすめ入射角αは、回折格子において起こる吸収の量を減らすように設定されてよい。したがって、かすめ入射角αはあらかじめ定められてよい、又は限られた範囲の値に限定されてよい。
[00149] いくつかの例では、0次回折次数でない回折次数について式(3b)を満たすことが困難な可能性があり、したがって、より高い回折次数の式(3b)は、自由パラメータの値を求めるときに無視される可能性がある。その代わりに、式(3a)及び(3d)を満たす自由パラメータの値を求めることに重点が置かれる可能性がある。幅w1を有する平坦な底部55及び幅w2を有するリッジ53の両方を有する回折格子を使用することによって、有利には式(3a)及び(3d)を満たすために、自由パラメータの値が求められるのに十分な自由度がもたらされる。
[00150] 図5Bは、かすめ入射角αの関数である例示的な回折格子の反射率の概略図である。図5Bの420と表示された線は、0次回折次数への反射率を表す。図5Bの421と表示された線は、+1回折次数への反射率を表す(同様の反射率曲線が−1回折次数に存在し得る)。図5Bから、1.5°に近いかすめ入射角において線420及び線421の両方の傾きがゼロに近くなることが分かる。曲線420の最小値(すなわち、dR0/dα=0の場合)は、図5Bにおいて420aと表示されている。曲線421の最大値(すなわち、dR1/dα=0の場合)は、図5Bにおいて421aと表示されている。上述のように、反射率のかすめ入射角αに対する感度が低い場合、通常、反射率は放射の波長に対しても感度が低いという結果になる。図5Bに示す例では、1.5°に近いかすめ入射角αにおいて、0次回折次数及び+1回折次数の両方への反射率は、有利にはかすめ入射角α及び波長の両方の変化に対して比較的感度が低くてよい。
[00151] 図5Aに示す一般的な単位セル形状(平坦な底部55及びリッジ53を含む)によって、有利にはビーム分割装置を形成するいくつかの回折格子の自由パラメータを、パワー及び指向方向が入力放射ビームBの波長及び/又は指向方向の変化に関して比較的安定的な分岐放射ビームBa〜Bjを回折格子が提供するように設定することができる。図5Aに示す単位セル形状はまた、平坦な底部55の幅w1及び/又はリッジ53の幅w2を変更することで回折格子の分割比を変えることができるため有利である。したがって、所望のパワーを有する分岐放射ビームBa〜Bjを提供するために、ビーム分割装置40の異なる位置において、異なる幅w1及び/又は異なる幅w2を有する回折格子を使用することができる。
[00152] 回折格子に入射する放射の変化(例えば、波長及び/又は指向方向の変化)に伴う、回折格子において形成される回折次数のパワー及び/又は指向方向の変動は、回折次数によって異なる可能性がある。一般的に、0次回折次数のパワー及び/又は指向方向は、+1又は−1回折次数よりも入力放射ビームの波長及び/又は指向方向の変化に対して感度が低い。例えば、一般的に0次回折次数の指向方向は波長変動に伴って全く変化しないが、+1及び−1回折次数の指向方向は波長の変化に対して敏感である。
[00153] 回折次数のパワーが入射放射の波長の変化に対して比較的感度が低くなる(すなわち、式(3a)を満たす)ように回折格子を構成できる可能性がある。上述のように、式(3a)を満たす場合、一般に式(3b)も満たすことになる。一般に回折次数のパワーは、(波長及びかすめ入射角αの変化と比較して)方位角φの変化に対してより敏感な可能性があるため、式(3c)を満たさない可能性がある。
[00154] 以下に更に詳細に記載するように、放射源SOから受ける入力放射ビームの方位角φの変化があまりに小さいため、結果として生じる+1及び/又は−1回折次数のパワーの変化が比較的小さい可能性がある。したがって、図4A及び図4Bに示す実施形態では、入力放射ビームの方位角φの変動から生じる分岐放射ビームBa〜Bjのパワーの変化は比較的小さい可能性がある。
[00155] 図4Aに示す実施形態及び図6に示す実施形態の両方において、各リソグラフィ装置は、回折格子において形成される+1又は−1回折次数に対応する分岐放射ビームBa〜Bjを受ける。各回折格子41〜45は、放射源SOから直接受けた(第1の回折格子の場合)、又は前の回折格子において形成された0次回折次数に対応する(第2、第3、第4及び第5の回折格子42、43、44及び45の場合)放射ビームを受ける。すなわち、全ての+1及び−1回折次数は、リソグラフィ装置に出力される分岐放射ビームBa〜Bjを形成し、後続の回折格子への入力放射ビームを形成しない。したがって、放射源SOからリソグラフィ装置LAa〜LAjへの各分岐放射ビームBa〜Bjの光路は、+1又は−1回折次数の1つだけを含む。これによって、有利には(代替的な構成と比較して)入力放射ビームBの波長及び/又は指向方向の変化に対する分岐放射ビームBa〜Bjのパワー及び/又は指向方向の感度が低くなる。
[00156] 回折格子の代替的な構成では、+1及び/又は−1回折次数は更なる回折格子に入射して、+1及び/又は−1回折次数を1つ以上の分岐放射ビームに更に分割することができる。例えば、第1の回折格子において形成された0次回折次数、+1回折次数及び−1回折次数が、3つの分岐放射ビームをそれぞれ形成する3つの更なる回折格子への入力を提供する可能性がある。以上に記載したように、入力放射ビームの波長及び/又は指向方向の変化によって、0次回折次数よりも+1及び−1回折次数のパワー及び/又は指向方向に大きな変化が生じる可能性がある。特に、入力放射ビームの波長反動によって、+1及び−1回折次数の指向方向に比較的大きな変化が生じる可能性がある。したがって、更なる回折格子に入射する放射の指向方向は、更なる回折格子が0次回折次数を受ける場合よりも、+1又は−1回折次数を受ける場合により大きな変化を受けることになる。以上で説明したように、回折格子において形成される回折次数のパワーは、回折格子に入射する放射の方位角φの変化に対して特に敏感である可能性がある。したがって、更なる回折格子への入力の(方位角φを含む)指向方向のより大きな変化が、更なる回折格子において形成される分岐放射ビームのパワーのより大きな変化に伝播する可能性がある。
[00157] したがって、+1及び/又は−1回折次数が更なる回折格子に供給される代替的な構成によって、特に、結果として生じる分岐放射ビームのパワーが、入力放射ビームの波長変化に対して敏感になる可能性がある。そのような構成と対照的に、(例えば、図4A及び図6に示すように)更なる回折格子への入力として0次回折次数のみを使用することによって、有利には入力放射ビームBの波長及び/又は指向方向の変化に関する、分岐放射ビームBa〜Bjのパワー及び/又は指向方向の安定性が増す。
[00158] 図4A及び図6に示す構成によって、有利には分岐放射ビームの供給を受けるリソグラフィ装置の数に関する柔軟性ももたらされる。例えば、リソグラフィ装置の数は、使用する回折格子の数を増減することによって容易に増減することができる。リソグラフィ装置の数の増減は、所望のパワーをそれぞれ有する異なる数の分岐放射ビームを提供するために使用される回折格子の構成(例えば、回折格子の分割比)の変更を必要とする可能性がある。本明細書で特定される構成を使用して分岐放射ビームの供給を受けるリソグラフィ装置の数を変更することは、従来技術によるリソグラフィシステムの構成と比べて簡単になる可能性がある。例えば、他のリソグラフィ装置の位置を移動させずにリソグラフィシステムに更なるリソグラフィ装置を追加することができる。これは従来技術によるリソグラフィシステムの構成を使用して可能でない可能性がある。
[00159] また、誘導光学系31a〜31jのそれぞれは、z方向に対して実質的に同じ角度で伝播する分岐放射ビームBa〜Bjの供給を受けることができる。これによって、誘導光学系31a〜31jのそれぞれが互いに類似したもの、又は実質的に同じものになる可能性がある。その結果、誘導光学系31a〜31jの設計及び製造は有利に単純化することができる。
[00160] 回折されて異なる回折次数を形成する放射のパワーが、放射の回折に使用される回折格子の単位セルの形状によって決定される実施形態を以上に記載した。異なる回折次数に回折される放射のパワーは、単位セルの形状の関数であると共に、放射が回折格子に入射するときのかすめ入射角α及び方位角φの関数でもある。いくつかの実施形態では、各回折次数のパワーがかすめ入射角α及び方位角φに依存することを、各回折次数の放射のパワーを制御するのに使用することができる。例えば、放射が回折格子に入射するときのかすめ入射角α及び/又は方位角φを変更するように回折格子の向きを変更するように動作可能な1つ以上のアクチュエータを、回折格子に設けることができる。その結果、各回折次数に回折される放射のパワーは、かすめ入射角α及び/又は方位角φを調整することによって調整することができる。これによって、分岐放射ビームのパワーを動的に制御することが可能になる。
[00161] 分岐放射ビームのパワーの動的な制御を用いて、所与の分岐放射ビームに分割されるメイン放射ビームの割合をメイン放射ビームのパワーの変化に応じて調整することができる。例えば、放射源から放出されるメイン放射ビームのパワーが増加する場合、この増加を測定することができ、ビームデリバリシステムを形成する1つ以上の回折格子の向きは、測定された増加に応じて調整することができる。例えば、1つ以上の回折格子の向きは、メイン放射ビームのパワーの増加を補償するために、所与の分岐放射ビームに分割されるメイン放射ビームの割合を減少させるように調整することができる。その結果、所与の分岐放射ビームのパワーは時間に関して実質的に安定に保つことができる。他の実施形態では、1つ以上の分岐放射ビームのパワーの動的制御は他の目的のために用いることができる。例えば、1つ以上の分岐放射ビームのパワーの動的制御を用いて、1つ以上の分岐放射ビームのパワーを調整し、リソグラフィ装置の変化する要件を満たすことができる。
[00162] いくつかの実施形態では、1つ以上の分岐放射ビームのパワーは動的に制御することができないが、ビームデリバリシステムを形成する1つ以上の回折格子の向きは、所望のパワーを有する分岐放射ビームを提供するために選択することができる。例えば、1つ以上の回折格子の向きは、入射する放射ビームの所望の割合が異なる回折次数に分割されるように選択することができる。
[00163] 一般に、1つ以上の回折格子の向きを使用して、放射が回折格子に入射するときのかすめ入射角α及び/又は方位角φを制御し、複数の回折次数に分割される放射の量を制御することができる。この向きは動的に制御されても、所望の結果を得るためにあらかじめ選択されてもよい。
[00164] いくつかの実施形態では、回折格子の分割比が、放射が回折格子に入射するかすめ入射角αの関数として変化するように回折格子を構成することができる。例えば、分割比がかすめ入射角α1とかすめ入射角α2(α2>α1)の間で変化するように、回折格子を構成することができる。
[00165] 以上に記載したように、一般に、回折格子において吸収される放射の量は、かすめ入射角αの増加に伴って増加する。吸収されて失われる放射の量を制限するために、α2及びα1の両方は比較的小さくてよい。例えば、α2及びα1の両方は約5°未満でよく、約4°未満でもよい。いくつかの実施形態では、α2はおよそ70ミリラジアン(およそ4°)でよく、α1はおよそ17ミリラジアン(およそ1°)でよい。
[00166] α1<α<α2の範囲内で、0次回折次数(鏡面反射)への最大回折が約α1のかすめ入射角αで起こり、0次回折次数(鏡面反射)への最小回折が約α2のかすめ入射角αで起こるように回折格子を構成することができる。すなわち、+1及び/又は−1回折次数への最大回折は約α2のかすめ入射角αで起こり、+1及び/又は−1回折次数への最小回折は約α1のかすめ入射角αで起こる。
[00167] これらの条件は、0次回折次数がα<α1のかすめ入射角において抑制されるように回折格子のピッチを設定することによって満たすことができる。これは、例えばピッチPがP=λ/α1(ここでλは回折対象の放射の波長であり、α1はラジアン単位である)に実質的に等しく設定される場合に達成することができる。
[00168] 以上に記載したように、回折格子の溝の側壁の角度θ
a、θ
bは、基板を形成する材料の結晶面の向きによって決定することができる。基板の結晶面の向きは、基板材料の固有の特性である可能性があり、したがって、可変自在なパラメータでない可能性がある。溝の深さd
1は、所望の光学特性を得るために選ぶことができる可変パラメータである。例えば、基板の溝の深さd
1は、0次回折次数(鏡面反射)が約α
2のかすめ入射角において抑制されるように選ぶことができる。この条件は、例えば次の関係を満たす場合に満たすことができる:
ここで、jは0以上の整数であり、α
2はラジアン単位である。いくつかの実施形態では、式(4)の関係は、深さd
1がおよそd
1=λ/4α
2に設定されるように、j=0と設定することで満たすことができる。
[00169] α1=17ミリラジアン及びα2=70ミリラジアンの範囲のかすめ入射角で13.5nmの波長を有する放射を受けるように回折格子を構成することができる。上記の関係を用いた場合、そのような回折格子は、およそ794nmのピッチP及びおよそ48nmの溝深さd1を有する可能性がある。
[00170] 所望の光学特性をもたらす正確な寸法は、近似値とみなすべき上記の関係とは若干異なる可能性がある。例えば、いくつかの実施形態では、所望の光学特性をもたらす寸法は、上記の関係と最大約2倍異なる可能性がある。実際には、所望の光学特性を有する回折格子の正確な寸法は、試行錯誤の要素を用いて、及び/又は回折格子の光学特性のコンピュータシミュレーションを実施することにより求めることができる。
[00171] 以上で検討したタイプの回折格子を用いて、所望のパワーを有する分岐放射ビームを提供することができる。例えば、異なる回折次数に回折される放射の量を変更するように、入射放射のかすめ入射角(例えば、α1<α<α2の範囲内)を変更するように動作可能な1つ以上のアクチュエータを、回折格子に設けることができる。いくつかの実施形態では、複数の実質的に同様の回折格子を用いて、図4及び図6に示すタイプのビームデリバリシステムを形成することができる。異なる回折格子における分割比が異なるように、1つ以上の回折格子を異なるかすめ入射角で配置することができる。複数の回折格子は、回折格子におけるかすめ入射角がα1<α<α2の範囲内にあるように配置することができる。
[00172] 図7は、誘導光学系を含むビームデリバリシステムBDSの一部分の概略図である。図7に示すビームデリバリシステムBDSの部分は、例えば、図4A及び図4Bに示すビームデリバリシステムBDSの一部分に対応してよい。入力放射ビームが第1の回折格子41に入射する。第1の回折格子41は、(例えば+1回折次数を含んでよい)第1の分岐放射ビームBa、(例えば−1回折次数を含んでよい)第2の分岐放射ビームBb及び(例えば0次回折次数を含んでよい)サブビーム61を含む回折パターンを形成する。
[00173] 第1の分岐放射ビームBaは、第1の誘導光学系31aにより第1のリソグラフィ装置LAaに誘導される。第2の分岐放射ビームBbは、第2の誘導光学系31bにより第2のリソグラフィ装置LAbに誘導される。第1の誘導光学系31aは、第1の反射要素311及び第2の反射要素313を備える。第1の反射要素311は、第1の回折格子41から第1の分岐放射ビームBaを受け、第1の分岐放射ビームBaを反射して第2の反射要素313に入射させるように配置される。第2の反射要素は、第1の分岐放射ビームBaを反射し、第1の分岐放射ビームBaを第1のリソグラフィ装置LAaに誘導するように配置される。
[00174] 第2の誘導光学系31bは、第3の反射要素315及び第4の反射要素317を備える。第4の反射要素315は、第1の回折格子41から第2の分岐放射ビームBbを受け、第2の分岐放射ビームBbを反射して第4の反射要素317に入射させるように配置される。第4の反射要素317は、第2の分岐放射ビームBbを反射し、第2の分岐放射ビームBaを第2のリソグラフィ装置LAaに誘導するように配置される。
[00175] いくつかの実施形態では、第1の誘導光学系31a及び/又は第2の誘導光学系31bは、図7に示すものよりも多くの反射要素を含んでよい。
[00176] 第1の回折格子が受ける入力放射ビームBは偏光でよい。例えば、入力放射ビームBは、偏光放射を放出する自由電子レーザFELから放出することができる。自由電子レーザFELから放出される放射の偏光状態は、自由電子レーザFELの一部を形成するアンジュレータ24の構成に依存する。特に、自由電子レーザFELから放出される放射の偏光状態は、アンジュレータを通って電子を誘導する経路の性質に依存してよい。例えば電子がアンジュレータ24を通って平面経路をたどる場合は、自由電子レーザFELは直線偏光放射を放出することができる。電子がアンジュレータ24を通って螺旋状の経路をたどる場合は、自由電子レーザFELは楕円又は円偏光放射を放出することができる。
[00177] 自由電子レーザFELから放出される放射の偏光状態は、光学要素における相互作用中の変化を受ける可能性がある。例えば、入力放射ビームBの偏光状態は、第1の回折格子において変更される可能性がある。第1及び第2の分岐放射ビームBa、Bbの偏光状態は、反射要素311、313、315、317における反射中の変化を受ける可能性がある。
[00178] 反射要素に入射する偏光放射は、p偏光成分及びs偏光成分を含むものと考えることができる。p偏光成分及びs偏光成分は、反射要素の入射面に対して定義される。反射要素の入射面は、反射要素に入射する放射及び反射要素から反射される放射の両方が存在する面である。入射面に対して平行な電場ベクトルの成分はp偏光成分を形成し、入射面に対して垂直な電場ベクトルの成分はs偏光成分を形成する。
[00179] 反射要素での反射は、p偏光成分とs偏光成分の間に位相変化を生じさせる可能性がある。p偏光成分とs偏光成分の間に生じる位相変化をリターダンスと呼んでよい。p偏光成分とs偏光成分の位相差は、放射の偏光状態に影響を及ぼす。例えば、直線偏光放射は、互いに同相のp及びs偏光成分を含む。円偏光放射は、互いに異相(すなわちπ/2の位相差)のp及びs偏光成分を含む。楕円偏光放射は、例えば0とπ/2の間の位相差を有するp及びs偏光成分を含む。したがって、反射要素で生じたリターダンスによって、直線偏光放射が楕円又は円偏光放射に変換され、円偏光放射が楕円又は直線偏光放射に変換される可能性がある。位相リターダンスを受けた楕円偏光放射は、直線又は円偏光放射に変換される可能性がある。代替的に、楕円偏光状態の楕円率は、生じた位相リターダンスによって変更することができる。
[00180] 各リソグラフィ装置に提供される放射が所与の偏光状態を有することが望ましい可能性がある。リソグラフィ装置に提供される放射の偏光状態は、入力放射ビームBの偏光状態を制御すること、及びリソグラフィ装置への放射の光路に沿って生じる位相リターダンスを制御することによって制御することができる。しかし、図8を参照して説明されるように、リソグラフィ装置への分岐放射ビームの光路に沿って生じる位相リターダンスは、リソグラフィ装置によって異なる可能性がある。その結果、異なるリソグラフィ装置に提供される異なる分岐放射ビームの偏光状態は互いに異なる可能性がある。
[00181] 図8は、図7に示すビームデリバリシステムBDS内の異なる位置における放射の偏光状態の概略図である。偏光状態は、放射の伝播方向に対して垂直な面に電場ベクトルによって描かれた形状で表される。図8の171と表示された実線は、第1の回折格子41に入射する入力放射ビームBの偏光状態を表す。図8の172と表示された破線は、第1のリソグラフィ装置LAaに提供される第1の分岐放射ビームBaの偏光状態を表す。図8の173と表示された点線は、第2のリソグラフィ装置LAbに提供される第2の分岐放射ビームBbの偏光状態を表す。入力放射ビームB、第1の分岐放射ビームBa及び第2の分岐放射ビームBbの偏光状態は同じプロット上に表示されているが、これらの放射ビームの伝播方向は実際には互いに異なることが理解されよう。
[00182] 図8から、第1の分岐放射ビームBa及び第2の分岐放射ビームBb
の偏光状態は、入力放射ビームBの偏光状態と異なることが分かる。これは、第1の回折格子41及び誘導光学系31a、31bにおいて分岐放射ビームBa、Bbに生じるリターダンスに起因する。図8に示す例では、入力放射ビームBの偏光状態は、第2のリソグラフィ装置LAbに提供される第2の分岐放射ビームBbが円偏光状態を有するように選ばれる。いくつかの実施形態では、リソグラフィ装置に円偏光放射を提供することが望ましい可能性がある。他の実施形態では、リソグラフィ装置に異なる偏光状態を有する放射を提供することが望ましい可能性がある。例えば、リソグラフィ装置に所与の楕円偏光状態を有する放射を提供することが望ましい可能性がある。
[00183] 図8に示す例では、リソグラフィ装置に円偏光放射を提供することが望ましく、入力放射ビームBの偏光状態は、第2のリソグラフィ装置LAbに円偏光放射を提供するように選ばれることが仮定されている。しかし、図8から分かるように、第1のリソグラフィ装置LAaに提供される放射の偏光状態は、第2のリソグラフィ装置LAbに提供される放射の偏光状態と異なる。第2のリソグラフィ装置LAbには円偏光放射が提供されるが、第1のリソグラフィ装置LAaには楕円偏光放射が提供される。これは、第1及び第2のリソグラフィ装置LAa、LAbへの光路に沿って第1及び第2の分岐放射ビームBa、Baに生じるリターダンスの差に起因する。その結果、第1及び第2のリソグラフィ装置LAa、LAbの両方に、同じ所望の偏光状態を有する放射が提供されることになる入力放射ビームBの偏光状態は存在しない。
[00184] 図9は、第1及び第2のリソグラフィ装置に実質的に同じ偏光状態を有する放射を提供するように構成されたビームデリバリシステムの一部分の概略図である。図9に示すビームデリバリシステムは、入力放射ビームBを受けるように配置された第1の反射回折格子41を含む。第1の回折格子41は、(例えば+1回折次数を含んでよい)第1の分岐放射ビームBa、(例えば−1回折次数を含んでよい)第2の分岐放射ビームBb及び(例えば0次回折次数を含んでよい)サブビーム61を含む回折パターンを形成する。
[00185] 第1の分岐放射ビームBaは、第1の誘導光学系31aにより第1のリソグラフィ装置LAaに誘導される。第2の分岐放射ビームBbは、第2の誘導光学系31bにより第2のリソグラフィ装置LAbに誘導される。第1の誘導光学系31aは、第1の反射要素321及び第2の反射要素323を備える。第1の反射要素321は、第1の回折格子41から第1の分岐放射ビームBaを受け、第1の分岐放射ビームBaを反射して第2の反射要素323に入射させるように配置される。第2の反射要素は、第1の分岐放射ビームBaを反射し、第1の分岐放射ビームBaを第1のリソグラフィ装置LAaに誘導するように配置される。
[00186] 第2の誘導光学系31bは、第3の反射要素325及び第4の反射要素327を備える。第4の反射要素325は、第1の回折格子41から第2の分岐放射ビームBbを受け、第2の分岐放射ビームBbを反射して第4の反射要素327に入射させるように配置される。第4の反射要素327は、第2の分岐放射ビームBbを反射し、第2の分岐放射ビームBaを第2のリソグラフィ装置LAaに誘導するように配置される。
[00187] 図9に示す実施形態では、誘導光学系31a、31bは、第1のリソグラフィ装置LAaへの第1の分岐放射ビームBaの光路に沿って、第1の分岐放射ビームBaに第1の誘導光学系31aによって生じるリターダンスが、第2のリソグラフィ装置LAbへの第2の分岐放射ビームBbの光路に沿って、第2の分岐放射ビームに第2の誘導光学系によって生じるリターダンスと実質的に同じになるように配置される。
[00188] 第1及び第2の分岐放射ビームBa、Bbに生じるリターダンスは、少なくとも部分的に、入射する放射に対する反射要素321、323、325、327の向きによって決定される。図7を参照して以上で説明したように、各反射要素における偏光状態は、各反射要素の入射面に対するp偏光及びs偏光成分に分解することができる。図9に示す構成では、第1の反射要素321の入射面は、第2の反射要素323の入射面に対して実質的に垂直である。その結果、第2の反射要素323におけるp及びs偏光成分は、第1の反射要素321におけるs及びp偏光成分とそれぞれ対応する。
[00189] 第1の反射要素321で反射されるp及びs偏光成分は、図9のように表示される。表示されたp及びs偏光成分は、第1の反射要素321において位相差を生じさせる直交成分を表す。第2の反射要素323で反射されるp及びs偏光成分は、図9においてp’及びs’と表示される。第2の反射要素323の入射面は、第1の反射要素321の入射面に対して垂直である。その結果、第2の反射要素323におけるp’成分は第1の反射要素321におけるs成分と対応する。同様に、第2の反射要素323におけるs’成分は第1の反射要素321におけるp成分と対応する。したがって、第1の反射要素321において位相変化を生じさせる直交偏光成分は、第2の反射要素323において位相変化を生じさせる直交偏光成分と同じである。
[00190] 第1及び第2の反射要素321、323の入射面は互いに垂直であるため、直交偏光成分に生じる位相変化の方向は、第1及び第2の反射要素321、323において反対である。すなわち、第2の反射要素323において生じるリターダンスは、第1の反射要素321において生じるリターダンスと対抗するように作用する。しかし、第1の反射要素321において生じる位相変化の大きさは、第2の反射要素323において生じる位相変化と異なる可能性があるため、第1及び第2の反射要素321、323における反射から正味のリターダンスが生じる。反射要素での反射中に生じるリターダンスの大きさは、反射要素に放射が入射するかすめ入射角に依存する。小さいかすめ入射角では、リターダンスの大きさはかすめ入射角に実質的に比例する可能性がある。
[00191] 図9に示す実施形態では、第2の誘導光学系31bの向きは、反射面が入力放射ビームBが存在するy−z面である場合、第1の誘導光学系31aの向きの鏡像である。誘導光学系の向きが互いの鏡像である場合について言及しているが、誘導光学系の位置が互いの鏡像でない可能性がある。例えば、第3の反射要素325は、第1の反射要素321のz方向の位置と異なるz方向の位置に位置する可能性がある。ただし、第3の反射要素325の向きは、第1の反射要素321の向きの鏡像である可能性がある。例えば、第3の反射要素325における第2の分岐放射ビームBbのかすめ入射角は、第1の反射要素321における第1の分岐放射ビームBaのかすめ入射角と同じである可能性がある。第3の反射要素325の入射面がz方向となす角度が、第1の反射要素321の入射面がz方向となす角度と等しくかつ反対である可能性がある。
[00192] 第3の反射要素での反射後のp及びs偏光成分は、図9においてp及びsと表示される。第4の反射要素327での反射後のp及びs偏光成分は、図9においてp’及びs’と表示される。第3及び第4の反射要素325、327は、第3の反射要素325の入射面が第4の反射要素327の入射面に対して実質的に垂直となるように配置される。その結果、第4の反射要素におけるp’成分は、第3の反射要素325におけるs成分と対応する。第4の反射要素におけるs’成分は、第3の反射要素325におけるp成分と対応する。したがって、第1の誘導光学系31aと同様に、第3及び第4の反射要素325、327の両方における同じ直交成分間に位相差が生じる。第4の反射要素327において生じる位相差の方向は、第3の反射要素325において生じる位相差の方向と反対である。第4の反射要素327において生じる位相差の大きさは、第3の反射要素325において生じる位相差の大きさと異なる可能性があるため、第3及び第4の反射要素325、327における反射から正味のリターダンスが生じる。
[00193] 以上に記載したように、第2の誘導光学系の向きは第1の誘導光学系の向きの鏡像である。その結果、第3の反射要素325におけるかすめ入射角は、第1の反射要素321におけるかすめ入射角と同じである。同様に、第4の反射要素327におけるかすめ入射角は、第2の反射要素323におけるかすめ入射角と同じである。反射要素のそれぞれの光学特性が実質的に同じである(例えば、それぞれが同じ組成を有する)場合は、第3の反射要素325において生じるリターダンスは、第1の反射要素321において生じるリターダンスと同じになる。同様に、第4の反射要素327において生じるリターダンスは、第2の反射要素323において生じるリターダンスと同じになる。したがって、第1の誘導光学系31aが第1の分岐放射ビームBaに生じさせるリターダンスは、第2の誘導光学系31bが第2の分岐放射ビームBbに生じさせるリターダンスと実質的に同じである。よって、第1のリソグラフィ装置LAa及び第2のリソグラフィ装置LAbには、実質的に同じ偏光状態を有する分岐放射ビームが提供される。入力放射ビームBの偏光状態は、第1及び第2のリソグラフィ装置LAa、LAbの両方に所望の偏光状態を有する放射が提供されるように設定することができる。
[00194] 図10は、図9に示すビームデリバリシステムBDS内の異なる位置における放射の偏光状態の概略図である。偏光状態は、放射の伝播方向に対して垂直な面に電場ベクトルによって描かれた形状で表される。図10の711と表示された実線は、第1の回折格子41に入射する入力放射ビームBの偏光状態を表す。図10の721と表示された破線は、第1のリソグラフィ装置LAaに提供される第1の分岐放射ビームBaの偏光状態を表す。図10の731と表示された点線は、第2のリソグラフィ装置LAbに提供される第2の分岐放射ビームBbの偏光状態を表す。入力放射ビームB、第1の分岐放射ビームBa及び第2の分岐放射ビームBbの偏光状態は同じプロット上に表示されているが、これらの放射ビームの伝播方向は実際には互いに異なることが理解されよう。
[00195] 図10から分かるように、第1のリソグラフィ装置LAaに提供される第1の分岐放射ビームBaの偏光状態は、第2のリソグラフィ装置LAbに提供される第2の分岐放射ビームBbの偏光状態と実質的に同じである。図10に示すプロットでは、第1及び第2の分岐放射ビームの偏光状態を示す線は、プロット内に両方が見られるように意図的にわずかに分離されている。しかし、偏光状態は実際には同じである可能性がある。図10に示す例では、入力放射ビームBの偏光状態は、リソグラフィ装置LAa、LAbに提供される分岐放射ビームBa、Bbが実質的に円偏光となるように選択される。他の実施形態では、入力放射ビームBの偏光状態は、リソグラフィ装置LAa、LAbに提供される分岐放射ビームBa、Bbが円偏光以外の偏光状態を有するように選択されてもよい。例えば、入力放射ビームBの偏光状態は、リソグラフィ装置LAa、LAbに提供される分岐放射ビームBa、Bbが所望の楕円偏光状態を有するように選択されてよい。
[00196] 図9に示すビームデリバリシステムは、2つの反射要素をそれぞれ含む第1及び第2の誘導光学系31a、31bを備えるが、他の実施形態はこれよりも多いか又は少ない反射要素を含んでもよい。例えば、第1、第2、第3及び/又は第4の反射要素321、323、325、327は、それぞれ複数の反射要素で置き換えることができる。例えば1つの反射要素を、分岐放射ビームの伝播方向に所望の変化をもたらすように分岐放射ビームを順次反射する複数の反射要素で置き換えることができる。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第3の反射要素321、325は、例えば一連の8つの反射要素で置き換えることができる。8つの反射要素のそれぞれにおけるかすめ入射角は、単一の反射要素を使用する場合のかすめ入射角よりもかなり小さくなる。上述のように、一般的に反射要素でのEUV放射の吸収は、かすめ入射角の増加と共に増加する。したがって、各反射要素におけるかすめ入射角を小さくする役割を果たす複数の反射要素の使用によって、有利には、放射がより多くの反射を受けるにもかかわらず、反射要素での放射の全吸収を減らすことができる。
[00197] いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の誘導光学系は、分岐放射ビームをリソグラフィ装置に提供する前に調節するように構成された更なる反射要素を含んでよい。図11は、第1の誘導光学系31aの一部を形成し得る更なる反射要素329〜332の概略図である。更なる反射要素329〜332は、それぞれ第1の分岐放射ビームBaを受け、第1の分岐放射ビームBaを反射することによって、各反射要素の入射面が規定される。図11に示す例では、第5の反射要素329の入射面は、第6の反射要素330の入射面と実質的に同じ面にある。第7の反射要素331の入射面は、第8の反射要素332の入射面と実質的に同じ面にある。第5及び第6の反射要素329、330の入射面は、第7及び第8の反射要素331、332の入射面に対して実質的に垂直である。
[00198] したがって、第5〜第8の反射要素329〜332のそれぞれの入射面は、互いに対して平行であるか、互いに対して垂直であるかのいずれかである。その結果、間に位相変化が導入される直交偏光成分は各反射要素で同じである。第5及び第6の反射要素329、330において導入される位相差は、互いに同じ方向に作用する。第7及び第8の反射要素331、332において導入される位相差は、互いに同じ方向に作用する。第7及び第8の反射要素331、332において導入される位相差は、第5及び第6の反射要素329、330において導入される位相差と反対方向に作用する。いくつかの実施形態では、第5及び第6の反射要素329、330において導入される位相差の和は、第7及び第8の反射要素331、332において導入される位相差と実質的に等しくかつ反対である。したがって、第5〜第8の反射要素329〜333の正味の効果は、分岐放射ビームBaに実質的にリターダンスを導入しないことである可能性がある。
[00199] 放射ビームの偏光に正味の変化を導入しないように共に構成された更なる反射要素(例えば、第5〜第8の反射要素329〜333)を含む実施形態では、これらの更なる反射要素は、必ずしも他の反射要素に対して特定の方法で配置されない可能性がある。例えば、第5〜第8の反射要素329〜333におけるs及びp成分は、誘導光学系を形成する他の反射要素におけるs及びp成分に対応しない可能性がある。第5〜第8の反射要素は、他の反射要素とは独立して作用すると考えることができ、また、全体として分岐放射ビームの偏光状態に正味の効果を及ぼさない偏光中性成分と考えることができる。
[00200] 他の実施形態では、第5〜第8の反射要素329〜333は正味のリターダンスを導入する可能性がある。第2の誘導光学系31bは、図11に示すものと同様の更なる反射要素を含んでよい。更なる反射要素が正味の位相リターダンスを導入する実施形態では、第1の誘導光学系に含まれる更なる反射要素は、第2の誘導光学系に含まれる更なる反射要素と実質的に同じ正味のリターダンスを導入するように配置することができる。
[00201] 更なる反射要素は、分岐放射ビームの1つ以上の特性を変化させるように構成することができる。例えば、更なる反射要素は、分岐放射ビームの断面形状を変化させてリソグラフィ装置に所望の断面形状を有する分岐放射ビームを提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、更なる反射要素は、楕円断面形状を有する分岐放射ビームを、円断面形状を有する分岐放射ビームに変換するように構成することができる。
[00202] 第1の誘導光学系の向きが第2の誘導光学系の向きの鏡像である誘導光学系31a、31bの特定の実施形態を以上に記載してきたが、他の実施形態では、他の向きを使用してもよい。一般に、第1の分岐放射ビームに導入されるリターダンスが第2の分岐放射ビームに導入されるリターダンスと実質的に同じである、第1の分岐放射ビーム及び第2の分岐放射ビームにリターダンスを導入する反射要素の任意の向きを使用してよい。
[00203] いくつかの実施形態では、第1及び第2の誘導光学系の反射要素は、各反射要素の入射面が、分岐放射ビームを放つ、前の(すなわち、直前の)反射要素の入射面に対して実質的に平行か垂直のどちらかとなるように配向することができる。例えば、第1の誘導光学系は、第1の分岐放射ビームBaを最初に受けて反射するように配置された第1の反射要素と、第1の分岐放射ビームBaを連続的に受けて反射するように配置された1つ以上の更なる反射要素とを備えてよい。1つ以上の更なる反射要素は、1つ以上の更なる反射要素のそれぞれの入射面が、第1の分岐放射ビームBaを最後に反射した反射要素の入射面に対して実質的に平行か実質的に垂直のどちらかとなるように配向することができる。そのような構成では、各反射要素における同じ直交偏光成分間に位相差が生じる。
[00204] 第2の誘導光学系は、第2の分岐放射ビームBbを最初に受けて反射するように配置された第2の反射要素と、第2の分岐放射ビームBbを連続的に受けて反射するように配置された1つ以上の更なる反射要素とを備えてよい。1つ以上の更なる反射要素は、1つ以上の更なる反射要素のそれぞれの入射面が、第2の分岐放射ビームBbを最後に反射した反射要素の入射面に対して実質的に平行か実質的に垂直のどちらかとなるように配向することができる。そのような構成では、各反射要素における同じ直交偏光成分間に位相差が生じる。
[00205] そのような構成では、反射要素の向きは、第1の分岐放射ビームBaに第1の誘導光学系31aによって導入されるリターダンスと第2の分岐放射ビームBbに第2の誘導光学系31bによって導入されるリターダンスとが互いに実質的に同じになるように選択することができる。これによって、有利には実質的に同じ偏光状態を有する放射ビームを複数のリソグラフィ装置に提供できるようになる。入力放射ビームBの偏光状態は、各リソグラフィ装置が所望の偏光状態を有する放射を受けるように選択することができる。
[00206] 以上に提示した考察では、誘導光学系31a、31bによって導入されるリターダンスだけを考慮した。誘導光学系31a、31bによって引き起こされるリターダンスの他に、回折格子における放射の回折がリターダンスを導入する可能性もある。例えば、回折格子において形成される回折次数が、回折格子に入射する入力放射ビームに対するリターダンスを含む可能性がある。一般的には、+1回折次数に導入されるリターダンスは、−1回折次数に導入されるリターダンスと実質的に同じである(例えば、回折格子の溝と入射面の間の方位角φがゼロに実質的に等しい場合)。したがって、第1の回折格子41によって同じリターダンスが第1及び第2の分岐放射ビームBa、Bbに導入される。よって、誘導光学系31a、31bに提供される分岐放射ビームBa、Bbは、実質的に同じ偏光状態を有する。
[00207] 図9に示す実施形態では、単一の回折格子において形成される分岐放射ビームBa、Bbだけが示され説明される。いくつかの実施形態では、第1の回折格子41において形成されるサブビーム61は、更なる分岐放射ビームが形成される更なる回折格子に入射することができる。図12A及び図12Bは、複数の回折格子を備えるビームデリバリシステムBDSの一部分の概略図である。図12AはビームデリバリシステムBDSの上面図を示し、図12BはビームデリバリシステムBDSの側面図を示す。図12A及び図12Bでは一貫してデカルト座標を用いる。
[00208] 入力放射ビームBが第1の回折格子41に入射する。第1の回折格子41は、第1の分岐放射ビームBa、第2の分岐放射ビームBb及び第1のサブビーム61を含む回折パターンを形成する。第1のサブビーム61は第2の回折格子42に入射する。第2の回折格子42は、第3の分岐放射ビームBc、第4の分岐放射ビームBd及び第2のサブビーム62を含む回折パターンを形成する。第2のサブビーム62は、第1の反射要素71及び第2の反射要素72を介して誘導され第3の回折格子43に入射する。第3の回折格子43は、第5の分岐放射ビームBe、第6の分岐放射ビームBf及び第3のサブビーム63を含む回折パターンを形成する。第3のサブビーム63は、第4の回折格子44に入射する。第4の回折格子44は、第7の分岐放射ビームBg、第8の分岐放射ビームBh及び第4のサブビーム64を含む回折パターンを形成する。第4のサブビーム64は、第3の反射要素73に続いて第4の反射要素74に入射する。
[00209] 第1、第2、第3及び第4の反射要素71〜74は、回折格子41〜44においてサブビーム61〜64に導入されるリターダンスを反転させるように構成される。例えば、第1の回折格子41は、第2の回折格子に入射するサブビーム61が、第1の回折格子41に入射する入力放射ビームBと異なる偏光状態を有するように、第1のサブビーム61にリターダンスを導入する可能性がある。第2の回折格子42は、第2のサブビーム62に更なるリターダンスを導入する可能性がある。第1及び第2の反射要素71、72は、第1及び第2の反射要素71、72の入射面が第1及び第2の回折格子41、42の入射面に対して実質的に垂直になるように配置される。その結果、間に位相差が導入される直交偏光成分は、第1及び第2の回折格子41、42及び第1及び第2の反射要素71、72において同じである。第1及び第2の反射要素71、72において導入される位相差の方向は、第1及び第2の回折格子41、42において導入される位相差の方向と対向する。
[00210] 第1及び第2の反射要素71、72は、第1及び第2の反射要素71、72において生じる正味のリターダンスが第1及び第2の回折格子41、42において生じる正味のリターダンスと実質的に等しくかつ反対となるように構成することができる。これは、例えば、第1及び第2の反射要素71、72におけるかすめ入射角の和が第1及び第2の回折格子41、42におけるかすめ入射角の和と実質的に等しい場合に達成することができる。したがって、第3の回折格子に入射する第2のサブビーム62の偏光状態は、第1の回折格子41に入射する入力放射ビームBの偏光状態と実質的に同じである。
[00211] 図12A及び図12Bに示していないが、分岐放射ビームBa〜Bhのそれぞれを、各誘導光学系によってリソグラフィ装置に誘導することができる。図9及び図10を参照して以上に記載したように、誘導光学系のそれぞれは、同じリターダンスを分岐放射ビームのそれぞれに導入するように構成することができる。したがって、全てのリソグラフィ装置に実質的に同じ偏光状態を有する分岐放射ビームを提供するために、回折格子41〜44のそれぞれに入射する放射ビームの偏光状態は実質的に同じであることが望ましい。
[00212] 以上で説明したように、第1及び第2の反射要素71、72は、第3の回折格子43に入射する第2のサブビーム62の偏光状態が、第1の回折格子41に入射する入力放射ビームの偏光状態と実質的に同じになるように構成される。したがって、有利には、第3の回折格子43において形成される第5及び第6の分岐放射ビームBe、Bfの偏光状態は、第1の回折格子41において形成される第1及び第2の分岐放射ビームBa、Bbの偏光状態と実質的に同じであってよい。
[00213] いくつかの実施形態では、ビームデリバリシステムBDSは、第1の回折格子41と第2の回折格子42の間の第1のサブビーム61の光路に1つ以上の更なる反射要素を含んでよい。1つ以上の更なる反射要素は、第1の回折格子41によって生じるリターダンスと実質的に等しくかつ反対のリターダンスを第1のサブビーム61に導入するように構成することができる。したがって、第2の回折格子42に入射する第1のサブビーム61は、第1の回折格子41に入射する入力放射ビームBと実質的に同じ偏光状態を有する可能性がある。
[00214] 図12A及び図12Bに示す実施形態では、第1の回折格子41と第2の回折格子42の間に更なる反射要素は設けられていない。その結果、第2の回折格子42に入射する第1のサブビーム61の偏光状態は、(第1の回折格子において導入されるリターダンスに起因して)第1の回折格子41に入射する入力放射ビームBの偏光状態とわずかに異なる可能性がある。したがって、第2の回折格子42において形成される第3及び第4の分岐放射ビームBc、Bdの偏光状態は、第1の回折格子41において形成される第1及び第2の分岐放射ビームBa、Bbの偏光状態とわずかに異なる可能性がある。一般的には、回折格子において0次回折次数に導入されるリターダンスは、(かすめ入射角が小さい場合)回折格子におけるかすめ入射角に実質的に比例する。第1の回折格子41におけるかすめ入射角は5°未満、例えば約2°、又は更に小さい、例えば約1°でもよい。したがって、第1の回折格子41において導入されるリターダンスは比較的小さい可能性がある。よって、第1のサブビーム61と入力放射ビームBの偏光状態の差は比較的小さくて許容可能である可能性がある。その結果、第1の回折格子41と第2の回折格子42の間に反射要素が設けられない。
[00215] 第1及び第2の回折格子41、42において生じる正味のリターダンスを反転させるために、第2の回折格子42と第3の回折格子43の間に反射要素71、72を設ける。単一の回折格子において導入されるリターダンスは許容可能である可能性があるが、2つの回折格子において導入される正味のリターダンスは、(例えば、第1及び第2の反射要素71、72による)調整が必要なほど大きい可能性がある。
[00216] 図12A及び図12Bに示す実施形態では、第4のサブビーム64の光路に第3及び第4の反射要素73、74を設ける。第3及び第4の反射要素73、74は、第3及び第4の回折格子43、44によって導入される正味のリターダンスと実質的に等しくかつ反対のリターダンスを第4のサブビーム64に導入するように構成することができる。したがって、第4の反射要素から反射される第4のサブビーム64の偏光状態は、第3の回折格子43に入射する第2のサブビーム62及び第1の回折格子41に入射する入力放射ビームBの偏光状態と実質的に同じである可能性がある。第4の反射要素から反射される第4のサブビーム64は、例えば、図12A及び図12Bに示していない更なる回折格子に提供される可能性がある。更なる回折格子は、第4のサブビーム64を分割し、更なる分岐放射ビームを形成するように構成することができる。
[00217] 一般に、ビームデリバリシステムBDSを通る放射の光路中の任意の場所に1つ以上の反射要素を含めることができる。1つ以上の反射要素は、1つ以上の回折格子において導入されるリターダンスと実質的に等しくかつ反対のリターダンスを放射ビームに導入するように構成することができる。
[00218] 誘導光学系が1つ以上の回折格子を備えるビーム分割装置において形成される分岐放射ビームを受けるように構成された誘導光学系の実施形態を以上に記載した。誘導光学系は、付加的又は代替的に他の形態のビーム分割装置と共に使用することができる。図13は、ビーム分割装置の代替的な実施形態を含むビームデリバリシステムBDSの概略図である。ビーム分割装置は複数の反射要素81〜86を備える。反射要素81〜86は、入力放射ビームの各部分を受け、これを反射して分岐放射ビームBa〜Bfを形成するように配置される。
[00219] 第1の反射要素81は、入力放射ビームBの第1の部分を受け、この第1の部分を反射して第1の分岐放射ビームBaを形成するように配置される。第2の反射要素82は、入力放射ビームBの第2の部分を受け、この第2の部分を反射して第2の分岐放射ビームBbを形成するように配置される。第1の分岐放射ビームBaは、第1の誘導光学系3111aによって第1のリソグラフィ装置LAaに誘導される。第2の分岐放射ビームBbは、第2の誘導光学系3111bによって第2のリソグラフィ装置LAbに誘導される。第1及び第2の誘導光学系3111a、3111bは、図9を参照して以上で説明した第1及び第2の誘導光学系31a、31bと同様のものであってよい。特に、第1及び第2の誘導光学系は、第1の分岐放射ビームBaに導入されるリターダンスが第2の分岐放射ビームBbに導入されるリターダンスと実質的に同じになるように配置された反射要素を含んでよい。したがって、第1のリソグラフィ装置LAaに提供される第1の分岐放射ビームBaの偏光状態は、第2のリソグラフィ装置LAbに提供される第2の分岐放射ビームBの偏光状態と実質的に同じであってよい。
[00220] 第1又は第2の反射要素81、82に入射しない入力放射ビームBの部分を、第3、第4、第5又は第6の反射要素83、84、85、86の1つが受ける。第3、第4、第5及び第6の反射要素83、84、85、86のそれぞれは、入力放射ビームの一部分を受け、各部分を反射して分岐放射ビームBc〜Bfを形成するように配置される。分岐放射ビームBc〜Bfのそれぞれは、各誘導光学系3111c〜3111fによってリソグラフィ装置LAc〜LAfに誘導される。誘導光学系3111c〜3111fのそれぞれは、実質的に同じリターダンスを分岐放射ビームBc〜Bfのそれぞれに導入するように配置することができる。したがって、リソグラフィ装置LAc〜LAfに提供される分岐放射ビームBc〜Bfのそれぞれの偏光状態は、互いに実質的に同じであってよい。
[00221] 1つ以上の光学要素が、入力放射ビームを受け、この入力放射ビームを異なる方向に伝播する少なくとも第1の出力放射ビーム及び第2の出力放射ビームに分割するように配置されるビーム分割装置の実施形態を図9〜図13を参照して以上で説明した。例えば、異なる方向に伝播する第1及び第2の分岐放射ビームをそれぞれ形成する+1及び−1回折次数を回折格子に提供することができる。その結果、第1の分岐放射ビームを受ける第1の誘導光学系を、第2の分岐放射ビームを受ける第2の誘導光学系と異なる配向にすることができる。以上に記載したように、第1及び第2の誘導光学系は、第1の誘導光学系が生じさせる偏光変化が第2の誘導光学系が生じさせる偏光変化と実質的に同じになるように配置することができる。
[00222] 他の実施形態では、全てが実質的に同じ方向に伝播する分岐放射ビームを形成するようにビーム分割装置を配置することができる。例えば、図6に示すビーム分割装置の実施形態では、分岐放射ビームBa〜Bdのそれぞれは、回折格子において形成される+1回折次数から形成される。回折格子は、分岐放射ビームBa〜Bdのそれぞれが実質的に同じ方向に伝播するように配置することができる。これによって、誘導光学系31a〜31dのそれぞれを互いに実質的に同じものにすることができる。誘導光学系31a〜31dが全て互いに実質的に同じものである場合は、誘導光学系31a〜31dが生じさせる偏光変化が、誘導光学系31a〜31dの構成にかかわらず、各分岐放射ビームBa〜Bdについて実質的に同じになる。これによって、実質的に同じ偏光状態をそれぞれ有する分岐放射ビーム31a〜31dをリソグラフィ装置LAa〜LAdに提供しながらも、誘導光学系31a〜31dの設計の自由度を高めることができる。したがって、図6に示すタイプのビーム分割装置は、有利には誘導光学系31a〜31dの設計を単純化することができる。
[00223] 図6に示すタイプの構成では、所与の数の分岐放射ビームを提供するために、より多くの回折格子が必要となることが理解されよう。例えば、図4A及び図4Bに示す実施形態では、5つの回折格子が10個の分岐放射ビームを提供する。図6に示すタイプの構成を用いて10個の分岐放射ビームを提供するために、9つの回折格子を必要とする可能性がある。その結果、1つ以上の分岐放射ビームは、図4A及び図4Bの実施形態では、回折格子における1つの分岐放射ビームが受ける反射の最大数が5であるのに対し、1つの回折格子において9つの反射を受けている可能性がある。放射の一部は回折格子における各反射の間に失われることになるため、図6に示すタイプの構成では、図4A及び図4Bに示すタイプの構成の場合よりも、回折格子における吸収による放射損失が大きくなる可能性がある。
[00224] しかし、図6の構成によって与えられる誘導光学系の設計の自由度が高いため、回折格子における吸収の増加に対し、誘導光学系における吸収の減少で対抗することができる。例えば、図6に示すタイプの構成において使用される誘導光学系は、誘導光学系における吸収損失を減らすように配置することができる。図4A及び図4Bに示すタイプの実施形態と共に使用される誘導光学系の構成は、具体的に所望の偏光変化をもたらすように配置することができる。そのような構成によって、誘導光学系における吸収量が増加する可能性がある。したがって、図4A及び図4Bに示すタイプの実施形態よりも総吸収損失を少なくする、図6に示すタイプの実施形態を提供することが可能である。
[00225] 反射性コーティングが配設された基板を回折格子が備える反射回折格子の実施形態を以上で説明した。例えば回折格子は、ルテニウム反射性コーティングが配設されたシリコン基板を備えてよい。回折格子の構造は、基板の部分を選択的にエッチングして形成することができる。例えば、最初にマスクを基板上に形成し、マスクによって覆われていない基板の領域にエッチングプロセスを行うことができる。
[00226] マスクはフォトリソグラフィプロセスを用いて形成することができる。例えば、最初にフォトレジストを基板の全ての領域上に堆積させることができる。次にフォトレジストの部分をリソグラフィ露光の一環として放射に露光することによって、露光部分の状態の変化を引き起こすことができる。次にレジストは、(使用されているレジストがポジ型かネガ型かに応じて)レジストの露光部分を除去するか、又はレジストの非露光部分を除去するかのいずれかによって現像することができる。レジストの残りの部分は、(例えば、複数の平行なリッジを有する)エッチング耐性マスクを形成することができる。例えば、基板に対してパターニングデバイスを移動させる又はスキャンすることによってリソグラフィ露光を行うことができる。パターニングデバイスは、基板上でスキャン又は移動可能なパターンを放射ビームに付与することができる。
[00227] 次に、エッチング耐性マスクが存在するために、エッチング耐性マスクによって覆われていない基板の領域のみをエッチングするエッチングプロセスが行われてよ
い。このエッチングプロセスは基板に溝を形成する一方、溝間に延びるリッジを残すことができる。その後エッチング耐性マスクは基板から除去され、実質的に平坦なリッジを露出することができる。次に基板上に反射性コーティング(例えばルテニウム又はモリブデンのコーティング)を堆積させ、反射回折格子を形成することができる。
[00228] 以上に記載した方法を用いて回折格子を形成することによって、状況によっては反射性コーティングに欠陥が現れる可能性がある。例えば、反射性コーティングが1つ以上の欠陥を含み得る、及び/又は基板から剥離し得る可能性がある。図14は、走査電子顕微鏡を使って撮像された反射回折格子101の一部分の画像である。回折格子101は、リッジ153間に配設された溝151を含む。回折格子の構造に反射性コーティング(例えば、ルテニウムコーティング)が塗布される。図14から、反射性コーティングは図14に示す中央のリッジ153の左側に沿って延びる欠陥161を含むことが分かる。図14から更に、回折格子は反射性コーティングが基板から剥離した領域163を含むことが分かる。
[00229] 反射性コーティングの欠陥は、回折格子101の光学特性に影響を及ぼし、特に回折格子の光学特性に有害である可能性がある。したがって、図14に示すタイプの欠陥を含まない回折格子を提供することが望ましい。
[00230] 図14に見られる欠陥161、163はいずれもリッジ153のエッジの近くにある。これらの領域は、特に欠陥の形成が起こりやすい可能性がある。図15は、回折格子の一部を形成するリッジ153の一部分の断面図を示す画像である。リッジ153は構造基板165から形成される。反射性コーティング167を基板165上に配設する。図15から、反射性コーティング167は、反射性コーティング167の厚さが反射性コーティング167の残りの部分に対して薄い肉薄部166を含むことが分かる。肉薄部166はリッジ153の角の近くに位置する。この角において、基板165は鋭いエッジを形成する形状ではなく、代わりに欠陥を含むことが分かる。このような欠陥によって、反射性コーティング167が図15に示すような肉薄部166を含むことになる可能性がある。反射性コーティングの肉薄部166は、反射部の残りの部分よりも構造的に弱くなり、反射性コーティング167に欠陥をもたらす可能性がある。例えば、反射性コーティング167の剥離は肉薄部166で起こる可能性がある。
[00231] 図15の肉薄部166の位置に見られる欠陥などの基板165の欠陥は、溝151のアンダーエッチングから生じる可能性がある。その結果、リッジ153の1つ以上のエッジが、図15の肉薄部166の近くに見られるような欠陥を含む可能性がある。反射性コーティングの基板165への接着を促進するエッジ(例えばリッジ153のエッジ)が基板に形成されるように基板をエッチングすることが望ましい。例えば、反射性コーティング167の基板165からの剥離につながる恐れのある欠陥を基板が実質的に含まないように基板をエッチングすることが望ましい。
[00232] いくつかの実施形態では、基板のアンダーエッチングの影響は、更なるエッチングプロセスを基板に適用することによって減らすことができる。例えば、溝151を選択的にエッチングするのに使用するマスクを除去し、マスクが所定の位置にない非選択的エッチングプロセスを実行してよい。非選択的エッチングプロセスは、例えば、比較的短時間で実行することができる。比較的短時間の非選択的エッチングプロセスは、基板上のエッジを丸くする効果を有してよい。例えば、リッジ165のエッジを比較的短時間の非選択的エッチングプロセスによって実質的に丸くすることができる。基板上のエッジを丸くすることによって、有利には基板内のどんな欠陥(例えば、基板のアンダーエッチングにより生じる欠陥)も取り除くことができる。その結果、反射性コーティング167の基板165への接着性を向上させることができ、有利には反射性コーティング167における欠陥の存在を減らすことができる。
[00233] 図16は、回折格子の一部を形成し得る基板165の一部分の画像である。基板165は、平坦な有底溝151が点在するリッジ153を含む。リッジ及び溝は、以上に記載したように、(例えばマスクを用いた)選択的エッチングプロセスを用いて基板165に形成することができる。その後基板165に比較的短い時間、非選択的エッチングプロセスを行う。以上に記載したように、非選択的エッチングプロセスは、基板上の角を丸くする効果を有する。これは、リッジ153の角153aが丸みを帯びたように見える図16に見られる。有利には、これによって、基板165と、その後基板165上に配設される反射性コーティングとの接着性が向上する。その結果、反射性コーティングの欠陥が減少する、又は取り除かれる。
[00234] 以上に記載したように、非選択的エッチングプロセスは、(例えば、基板上の角を丸くすることによって)基板165によって形成される回折格子構造の形状を変化させる。回折格子構造の形状の変化は、回折格子の光学特性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、回折格子の分割比は、回折格子構造の角を丸くすることによって影響を受ける可能性がある。非選択的エッチングプロセスから生じる回折格子の光学特性の変化は、回折格子の1つ以上の他の特性を変化させることによって補償することができる。例えば、溝151の平底部の幅及び/又はリッジ153の平頂部の幅は、回折格子構造の角を丸くすることから生じるどんな光学的効果も補償するように変化させることができる。追加的又は代替的に、回折格子のピッチは、回折格子構造の角を丸くすることから生じるどんな光学的効果も補償するように変化させることができる。したがって、基板に非選択的エッチングプロセスを行い、回折格子の他のパラメータを設定する際に非選択的エッチングプロセスの効果を考慮することによって、所望の光学特性(例えば、所望の分割比)を有し、欠陥が反射性コーティングに存在する可能性が低い回折格子を設計及び製造することができる。
[00235] 回折格子の製造に非選択的エッチングプロセスを含めるプロセスは、平底の溝及び平頂のリッジを含む回折格子との関連で以上に説明した。しかし、非選択的エッチングプロセスがもたらす利点は、他の形態の回折格子構造にも適用できることが理解されよう。例えば、実質的に平底部を有しない溝を含む回折格子構造も、回折格子を形成する基板と反射性コーティングの接着性を向上させるために、非選択的エッチングプロセスを行うことにより利益を得ることができる。
[00236] 放射源SOの実施形態を、自由電子レーザFELを備えるものとして記載及び図示してきたが、放射源SOは、自由電子レーザFEL以外の放射源を含んでもよい。
[00237] 自由電子レーザFELを備える放射源は、任意の数の自由電子レーザFELを備えてよいことを理解すべきである。例えば、放射源は2つ以上の自由電子レーザFELを備えてよい。例えば、2つの自由電子レーザは、複数のリソグラフィ装置にEUV放射を提供するように配置することができる。これは、ある程度の冗長性を織り込んでいる。これによって、一方の自由電子レーザが修理中であるか又は保守を受けている時に他方の自由電子レーザを使用することが可能となる。
[00238] リソグラフィシステムLSは、任意の数のリソグラフィ装置を備えてよい。リソグラフィシステムLSを形成するリソグラフィ装置の数は、例えば、放射源SOから出力される放射の量、及びビームデリバリシステムBDSにおいて失われる放射の量に依存する可能性がある。リソグラフィシステムLSを形成するリソグラフィ装置の数は、追加的又は代替的に、リソグラフィシステムLSのレイアウト及び/又は複数のリソグラフィシステムLSのレイアウトに依存する可能性がある。
[00239] リソグラフィシステムLSの実施形態はまた、1つ以上のマスク検査装置MIA及び/又は1つ以上の空中検査測定システム(AIMS)を含んでよい。いくつかの実施形態では、リソグラフィシステムLSは、多少の冗長性を考慮した複数のマスク検査装置を備えてよい。こうすることで、一方のマスク検査装置が修理中であるか又は保守を受けている時に、他方のマスク検査装置を使用できる可能性がある。したがって、1つのマスク検査装置が常に利用可能である。マスク検査装置は、リソグラフィ装置よりも低出力の放射ビームを使用してよい。更に、本明細書に記載したタイプの自由電子レーザFELを使用して発生させた放射は、リソグラフィ又はリソグラフィに関連する用途以外の用途に使用できることが理解されよう。
[00240] 上記のようなアンジュレータを備えた自由電子レーザは、これに限定されないが、リソグラフィを含む多くの用途に放射源として使用できることも理解されよう。
[00241] 「EUV放射」という用語は、4〜20nmの範囲内、例えば13〜14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含すると見なしてよい。EUV放射は、10nm未満、例えば、6.7nm又は6.8nmなどの4〜10nmの範囲内の波長を有してよい。
[00242] 本明細書に記載したリソグラフィ装置は、ICの製造において使用することができる。代替的に、本明細書に記載したリソグラフィ装置は、他の用途を有してもよい。他の可能な用途には、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造が含まれる。
[00243] 異なる実施形態を互いに組み合わせることができる。実施形態の特徴を他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。
[00244] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上記以外の態様で実施できることが理解されよう。以上の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、以下に記載の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えることができる。