[0007] 本発明の第1の態様によれば、調整可能回折格子が提供される。この調整可能回折格子は、入力放射ビームを受光するための光学面を有する光学素子であって、光学面の下方に複数の閉鎖チャネルが設けられ、各閉鎖チャネルの上方の光学面が材料膜から形成されている、光学素子と、光学面の形状を制御するように閉鎖チャネルの上の膜を歪ませるように、及び、入力放射ビームが光学素子から回折されて複数の角度分離されたサブビームを形成するように回折格子として機能する周期構造を光学面上に形成するように動作可能である1以上のアクチュエータを備える歪み機構と、を備える。
[0008] 本発明の第1の態様は、1以上の出力放射ビームを出力するための多用途の回折格子機構を提供する。その特性は歪み機構を用いて制御されることができる。光学素子は固定されたままであり、出力放射ビームの特性を制御するために周期構造の形状のみを用いるので、調整可能回折格子は短い応答時間で高速動作することができる。更に、光学素子に対する入力放射ビームの入射角度に制限はない。これによって調整可能回折格子は、極めて小さいかすめ入射角で動作することが可能となり、調整可能回折格子により吸収されるパワーを低減させることができる。
[0009] 1以上のアクチュエータは、閉鎖チャネルの内部と光学面との間の圧力差を制御するように動作可能である。
[0010] 閉鎖チャネルには流体が充填され、歪み機構は、複数のチャネル内の流体の圧力を制御するように動作可能である1以上のアクチュエータを備え得る。
[0011] 流体は、光学素子の通常動作中に液相を保つように充分に高い蒸気圧を有することが望ましい場合がある。すなわち、流体の沸騰効果は考慮する必要がない。これに加えて又はこの代わりに、流体は、漏れを蒸発によって除去することができるよう充分に高い蒸気圧、すなわち、光学素子の周囲動作圧力(典型的に真空条件下であり得る)よりも高い蒸気圧を有することが望ましい場合がある。流体は、22℃で評価される場合に10〜100Paの範囲内の蒸気圧を有し得る。そのような流体を用いる場合の光学素子の動作温度は22℃に限定されず、広範囲の光学素子の動作温度で用いられ得ることは、当業者には認められよう。22℃という温度は、適切な水力学的流体(hydraulic fluid)の蒸気圧を明白に規定することができる一例として使用するに過ぎない。光学素子の典型的な動作温度は15〜150℃の範囲内であり得る。例えば、光学素子の典型的な動作温度は15〜60℃の範囲内であり得る。例えば、光学素子の典型的な動作温度は15〜30℃の範囲内であり得る。
[0012] 流体はCxHyOzの形態の炭化水素を含み得る。有利な点として、そのような流体は硫黄又はハロゲン等の腐食要素を含まず、従って水力学的流体の漏れにより生じる損傷のリスクが低減する。一実施形態において、流体は、約22℃の動作温度で約12Paの蒸気圧を有するn−ドデカン(C12H26)とすればよい。
[0013] 調整可能回折格子は、複数のチャネルに流体を供給すると共に複数のチャネルから流体を除去するように構成された外部流体供給を更に備え得る。
[0014] 有利な点として、そのような構成では、水力学的流体(例えば水又は炭化水素)を冷却媒体として用いることができる。複数のチャネル内の流体の平均圧力は外部流体供給の特性によって規定される。
[0015] 外部流体供給はチャネル内に振動圧力を生成するように構成することができる。
[0016] 歪み機構は1以上の圧電アクチュエータを備え得る。この圧電アクチュエータ又は各圧電アクチュエータは、光学面の形状を制御するように閉鎖チャネルの1以上の上の膜を歪ませるように動作可能である。
[0017] 閉鎖チャネルには流体が充填され、この圧電アクチュエータ又は各圧電アクチュエータは、複数のチャネル内の流体の圧力を制御するように動作可能である。
[0018] あるいは、各圧電アクチュエータは、圧電アクチュエータが内部に設けられている閉鎖チャネルの上方の材料膜を直接制御するように動作可能である。
[0019] 圧電アクチュエータは、2つの電極と、これらの電極間に配置された1以上の圧電材料層と、を備える圧電曲げアクチュエータであり得る。
[0020] 歪み機構は1以上の静電アクチュエータを備え得る。この静電アクチュエータ又は各静電アクチュエータは、光学面の形状を制御するように閉鎖チャネルの1以上の上の膜を歪ませるように動作可能である。
[0021] 複数のチャネルはグループ別に配置され、各グループ内のチャネルは全て流体連通し、チャネルの各グループは隣接グループから隔離され得る。
[0022] チャネルの各グループに、そのグループ内のチャネルの各々を共に接続するように配置された1以上の接続チャネルが設けられ得る。
[0023] チャネルの各グループに、そのグループの各チャネル内の流体の圧力を制御するように動作可能であるアクチュエータが設けられ得る。
[0024] 調整可能回折格子は、冷却流体を循環させるための、光学素子の本体によって規定される1以上の冷却チャネルを更に備え得る。
[0025] 本発明の第2の態様によれば、入力放射ビームを受光すると共に出力放射ビームを出力するための減衰器が提供される。この減衰器は、本発明の第1の態様に従った調整可能回折格子と、阻止部材であって、サブビームの少なくとも1つが阻止部材を通り過ぎて出力放射ビームを形成すると共にサブビームの少なくとも1つが阻止部材によって阻止されるように光学素子の遠距離場(far field)に位置決めされた阻止部材と、を備える。
[0026] 本発明の第2の態様は、入力放射ビームを減衰させるための簡単かつ便利な機構を提供する。
[0027] 減衰器は、出力放射ビームのパワーを示す量を明らかにするように動作可能であるセンサを更に備え得る。
[0028] 歪み機構は、出力放射ビームのパワーを制御するように、出力放射ビームのパワーを示す量に応じて周期構造の形状を制御するように動作可能である。周期構造の形状は、例えば周期構造の振幅を制御することで制御できる。
[0029] 本発明の第3の態様によれば、リソグラフィ装置が提供される。このリソグラフィ装置は、本発明の第2の態様に従った減衰器と、減衰器の出力放射ビームを調節するように構成された照明システムと、出力放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構築された支持構造と、基板を保持するように構築された基板テーブルと、パターン付放射ビームを基板上に投影するように構成された投影システムと、を備える。
[0030] 本発明の第4の態様によれば、リソグラフィシステムが提供される。このリソグラフィシステムは、放射ビームを生成するように動作可能である放射源と、1以上のリソグラフィ装置と、本発明の第2の態様に従った少なくとも1つの減衰器であって、放射源により生成された放射ビームの少なくとも一部を受光すると共に減衰器の出力放射ビームを1以上のリソグラフィ装置の少なくとも1つに提供するように配置された減衰器と、を備える。
[0031] 本発明の第5の態様によれば、入力放射ビームを受光すると共に複数の出力放射ビームを出力するためのビーム分割装置が提供される。このビーム分割装置は、入力放射ビームを受光するための光学面を有する光学素子であって、入力放射ビームが光学素子から回折されて複数の角度分離された出力放射ビームを形成するように回折格子として機能する周期構造が光学面上に設けられている、光学素子と、周期構造の形状を制御するように光学面を歪ませるように動作可能である歪み機構と、コントローラと、を備え、コントローラが、入力放射ビームの波長の変動による出力放射ビームの相対出力パワーの変化を少なくとも部分的に補正するように、歪み機構を用いて周期構造の形状を制御するように動作可能である。
[0032] 本発明の第5の態様に従ったビーム分割装置は、入力放射ビームを複数の出力放射ビームに分割するための便利な機構を提供する。入力放射ビームは、例えば自由電子レーザ等の放射源によって出力され得る。出力放射ビームの各々は、1以上のリソグラフィ装置に対して放射を与え得る。従って、本発明の第5の態様に従ったビーム分割装置は、リソグラフィシステムのビームデリバリシステム内で使用することができる。
[0033] 出力放射ビームの角度分離は、周期格子構造に対する入力放射ビームの向き(例えばかすめ入射角)、周期構造のピッチ、及び入力放射ビームの波長に依存する。出力放射ビームの相対パワーは、周期構造の形状及び入力放射ビームの波長に依存する。従って、出力放射ビームの角度分離及び出力放射ビームの相対パワーは双方とも入力放射ビームの波長に依存する。本発明の第5の態様に従ったビーム分割装置によって、複数の出力放射ビームの相対パワーは、経時的な入力放射ビームの波長のドリフトによって実質的に影響を受けないままとすることができる。
[0034] ビーム分割装置は、入力放射ビームの波長を明らかにするように動作可能であるセンサを更に備え得る。
[0035] ビーム分割装置は、出力放射ビームの1つのパワーを示す量を明らかにするように動作可能であるセンサを更に備え得る。
[0036] 歪み機構は、(a)入力放射ビームの明らかになった波長、及び/又は(b)出力放射ビームのパワーを示す量、に応じて出力放射ビームのパワーを制御するように周期構造の形状を制御するように動作可能である。
[0037] 本発明の第6の態様によれば、放射システムが提供される。この放射システムは、メイン放射ビームを生成するように動作可能である放射源と、メイン放射ビームを受光すると共に複数の出力放射ビームを出力するように配置された本発明の第5の態様のビーム分割装置と、を備える。
[0038] 本発明の第7の態様によれば、リソグラフィシステムが提供される。このリソグラフィシステムは、メイン放射ビームを生成するように動作可能である放射源と、複数のリソグラフィ装置と、放射源からメイン放射ビームを受光し、メイン放射ビームを複数の別々の分岐放射ビームに分割し、分岐放射ビームの各々を複数のリソグラフィ装置の異なるものに送出するように動作可能であるビームデリバリシステムと、を備え、ビームデリバリシステムが本発明の第5の態様に従ったビーム分割装置を備える。
[0039] 本発明の第8の態様によれば、入力放射ビームを複数の出力放射ビームに分割するための方法が提供される。この方法は、光学面を含む調整可能回折格子を提供することであって、光学面上に周期構造が設けられている、ことと、入力放射ビームが光学素子から回折されて複数の角度分離された出力放射ビームを形成するように光学面を照明するように入力放射ビームを送出することと、入力放射ビームの波長の変動による出力放射ビームの相対出力パワーの変化を少なくとも部分的に補正するように周期構造の形状を制御することと、を備える。
[0040] 本発明の第9の態様によれば、入力放射ビームを受光すると共に出力放射ビームを出力するための減衰器が提供される。この減衰器は、入力放射ビームを受光するための光学面を有する光学素子と、入力放射ビームが光学素子から回折されて複数の角度分離されたサブビームを形成するように回折格子として機能する周期構造を光学面上に形成するように光学面を歪ませるように動作可能である歪み機構と、阻止部材であって、サブビームの少なくとも1つが阻止部材を通り過ぎて出力放射ビームを形成すると共にサブビームの少なくとも1つが阻止部材によって阻止されるように光学素子の遠距離場に位置決めされた阻止部材と、を備え、歪み機構が、出力放射ビームのパワーを制御するように周期構造の振幅を制御するように動作可能である。
[0041] 本発明の第9の態様は、入力放射ビームを減衰させるための簡単な機構を提供する。光学素子は固定されたままであり、出力放射ビームの特性を制御するために周期構造の形状のみを用いるので、減衰器は短い応答時間で高速動作することができる。更に、光学素子に対する入力放射ビームの入射角度に制限はない。これによって減衰器は、極めて小さいかすめ入射角で動作することが可能となり、減衰器により達成される最小減衰を低減させることができる。
[0042] 歪み機構は、光学面に表面音響波を誘導するように動作可能な1以上のアクチュエータを備え得る。光学面上の調整可能周期構造は表面音響波を含む。
[0043] 光学素子は圧電材料層を含み、1以上のアクチュエータはトランスデューサを含み、トランスデューサは圧電材料上に設けられた2つの電極を含み得る。2つの電極は交流電源に接続されている。
[0044] 1以上のアクチュエータは、光学面の反対側の辺に沿って圧電材料上に設けられた2つのそのようなトランスデューサを含み得る。そのような構成において、固定長の光学素子では、トランスデューサを1つだけ含む構成に比べ、光学面上に形成される表面音響波の振幅の変動が小さくなる。
[0045] このトランスデューサ又は各トランスデューサは、光学面上で入力放射ビームによって形成されるビームスポット領域の短軸に対して概ね平行な光学面の辺に隣接して配置されることができる。
[0046] 所与の振幅の表面音響波を達成するのに必要なパワーは、トランスデューサの電極の長さに依存する。この長さが、音響エネルギが広がる面積を決定するからである。このトランスデューサ又は各トランスデューサを、ビームスポット領域の短軸に対して概ね平行な光学面の辺に隣接して配置することにより、電極の長さを最小限に抑え、従って所与の振幅の表面音響波を達成するのに必要なパワーを最小限に抑える。更に、光学面上の調整可能周期構造の有効ピッチを最大化する。
[0047] トランスデューサは交差指型トランスデューサ(interdigitated transducer)であってもよい。
[0048] トランスデューサは、光学面上で入力放射ビームによって形成されるビームスポット領域の長軸に対して斜角で光学面を伝搬する表面音響波を生成するように配置されればよい。ビームスポット領域の長軸に対して斜角に表面音響波の伝搬方向を配することにより、(伝搬方向が長軸に対して平行である構成に比べて)表面音響波の伝搬距離が縮小する。有利な点として、この縮小により、(a)歪み機構の応答時間の短縮、及び(b)表面音響波の減衰の低減(従って、光学面上に形成される表面音響波の振幅の変動の低減)が得られる。
[0049] 例えばトランスデューサは、光学素子の1つの辺に沿って配置された複数の電極を備え得る。複数の電極の各々は、スパイン部(spine section)と、このスパイン部から延出すると共にこれに対して概ね垂直である複数の平行で均一に離間したフィンガと、を備える。各電極のスパイン部は、光学面上で入力放射ビームによって形成されるビームスポット領域の長軸に対して斜角に配置されることができる。
[0050] 圧電材料は石英とすればよい。石英は高いQ値を有し、従って有利な点として、石英を使用することにより表面音響波の減衰が低減する(従って、光学面上に形成される表面音響波の振幅の変動が低減する)。
[0051] 光学素子は、光学面の下方に複数の閉鎖チャネルが設けられ、各閉鎖チャネルの上方の光学面が材料膜から形成され得る。歪み機構は、光学面の形状を制御するように、閉鎖チャネルの上の膜を歪ませるように動作可能である1以上のアクチュエータを備え得る。
[0052] 1以上のアクチュエータは、閉鎖チャネルの内部と光学面との間の圧力差を制御するように動作可能である。
[0053] 閉鎖チャネルには流体が充填され、歪み機構は、複数のチャネル内の流体の圧力を制御するように動作可能である1以上のアクチュエータを備え得る。
[0054] 閉鎖チャネルの各々の内部に圧電素子を設けることができる。圧電素子は、光学面の形状を制御するように、閉鎖チャネルの上の膜を歪ませるように動作可能である。
[0055] 閉鎖チャネルの各々の内部に静電アクチュエータを設けることができる。静電アクチュエータは、光学面の形状を制御するように、閉鎖チャネルの上の膜を歪ませるように動作可能である。
[0056] 減衰器は、出力放射ビームのパワーを示す量を明らかにするように動作可能であるセンサを更に備え得る。
[0057] 歪み機構は、出力放射ビームのパワーを制御するように、出力放射ビームのパワーを示す量に応じて周期構造の振幅を制御するように動作可能である。
[0058] 本発明の第10の態様によれば、リソグラフィ装置が提供される。このリソグラフィ装置は、本発明の第9の態様に従った減衰器と、減衰器の出力放射ビームを調節するように構成された照明システムと、出力放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構築された支持構造と、基板を保持するように構築された基板テーブルと、パターン付放射ビームを基板上に投影するように構成された投影システムと、を備える。
[0059] 本発明の第11の態様によれば、リソグラフィシステムが提供される。このリソグラフィシステムは、放射ビームを生成するように動作可能である放射源と、1以上のリソグラフィ装置と、本発明の第9の態様に従った少なくとも1つの減衰器であって、放射源により生成された放射ビームの少なくとも一部を受光すると共に減衰器の出力放射ビームを1以上のリソグラフィ装置の少なくとも1つに提供するように配置された減衰器と、を備える。
[0060] 本発明の第12の態様によれば、減衰方法が提供される。この減衰方法は、入力放射ビームを受光するための光学面を有する光学素子を提供することと、光学面を歪ませて、入力放射ビームが光学素子から回折されて複数の角度分離されたサブビームを形成するように回折格子として機能する調整可能周期構造を光学面上に形成することと、出力放射ビームのパワーを示す量を明らかにすることと、出力放射ビームのパワーを制御するように、出力放射ビームのパワーを示す量に応じて周期構造の振幅を制御することと、を備える。
[0061] 本発明の第13の態様によれば、入力放射ビームを受光すると共に複数の出力放射ビームを出力するためのビーム分割装置が提供される。このビーム分割装置は、入力放射ビームを受光するための光学面を有する光学素子と、光学面を歪ませて、入力放射ビームが光学素子から回折されて複数の角度分離された出力放射ビームを形成するように回折格子として機能する調整可能周期構造を光学面上に形成するように動作可能である歪み機構と、を備え、歪み機構が、複数の出力放射ビームの相対出力パワーを制御するように周期構造の振幅を制御するように動作可能である。
[0062] 本発明の1以上の態様を、本明細書に記載する1以上の他の態様と、及び/又は、前述のもしくは以下の説明に記載された1以上の特徴と組み合わせることも可能である。
[0064] 図1は、本発明の一実施形態に従ったリソグラフィシステムLSを示す。リソグラフィシステムLSは、放射源SO、ビームデリバリシステムBDS、及び複数のリソグラフィツールLAa〜LAnを備えている。放射源SOは、極端紫外線(EUV)放射ビームB(これをメインビームと称する場合がある)を生成するように構成され、例えば少なくとも1つの自由電子レーザを含み得る。各リソグラフィツールは、放射ビームを受光する任意のツールであってもよい。ツールLAa〜LAnのことを本明細書では概してリソグラフィ装置と称するが、これらのツールがそれに限定されないことは認められよう。例えばこれらのツールは、リソグラフィ装置、マスクインスペクション装置、空間像測定システム(AIMS:Arial Image Measurement System)を含み得る。
[0065] ビームデリバリシステムBDSはビーム分割光学部品を備えている。ビーム分割光学部品は、メイン放射ビームBを、n個の別々の放射ビームBa〜Bn(これらを分岐ビームと称する場合がある)に分割する。これらのビームは各々、n個のリソグラフィ装置LAa〜LAnの異なるものに送出される。
[0066] ビームデリバリシステムBDSは更に、ビーム拡大光学部品及び/又はビーム整形光学部品を備え得る。ビーム拡大光学部品は、メイン放射ビームB及び/又は分岐放射ビームBa〜Bnの断面積を拡大させるように構成されることができる。これは、ビーム拡大光学部品の下流にあるミラーに対する熱負荷のパワー密度を低下させる。これにより、ビーム拡大光学部品の下流にあるミラーは、低スペックで、あまり冷却を行わない、従って安価なものとすることができる。更に、そのようなミラーでのパワー密度低下のため、熱膨張による光学面の変形が低減する。これに加えて又はこの代わりに、下流のミラーに対する熱負荷のパワー密度の低下によって、これらのミラーは、より大きいかすめ入射角のメイン放射ビーム又は分岐放射ビームを受光することが可能となる。例えばこれらのミラーは、例えば2度でなく5度のかすめ入射角の放射を受光し得る。ビーム整形光学部品は、メイン放射ビームB及び/又は分岐放射ビームの断面形状及び/又は強度プロファイルを変更させるように構成されることができる。
[0067] 代替的な実施形態において、ビームデリバリシステムBDSは、ビーム拡大光学部品又はビーム整形光学部品を含まない場合がある。
[0068] いくつかの実施形態において、ビームデリバリシステムBDSは、メイン放射ビームB及び/又は分岐放射ビームの1以上の断面積を縮小するように構成されたビーム縮小光学部品を備え得る。上述のように、ビーム拡大光学部品は、ビームデリバリシステムBDS内のミラーが受光する熱負荷のパワー密度を低下させることができ、これが望ましい場合がある。しかしながら、ビーム拡大光学部は同時に前記ミラーのサイズを拡大させ、これは望ましくない場合がある。ビーム拡大光学部品及びビーム縮小光学部品を用いて、所望のビームサイズを得ることが可能となる。所望のビームサイズは、光学収差が所与の閾値レベル未満となる最小ビーム断面積であり得る。
[0069] 図2を参照すると、リソグラフィ装置LAaは、照明システムIL、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MT、投影システムPS、及び基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTを備えている。照明システムILは、リソグラフィ装置LAaによって受光される分岐放射ビームBaがパターニングデバイスMAに入射する前にこれを調節するように構成されている。投影システムPSは、放射ビームBa’’(この時点でパターニングデバイスMAによりパターン付与されている)を基板W上に投影するように構成されている。基板Wは、以前に形成されたパターンを含むことがある。これが当てはまる場合、リソグラフィ装置は、基板W上の以前に形成されたパターンとパターン付与された放射ビームBa’’とを位置合わせする。
[0070] リソグラフィ装置LAaによって受光される分岐放射ビームBaは、ビームデリバリシステムBDSから照明システムILの閉鎖構造の開口8を通って照明システムIL内に入る。任意選択的に、分岐放射ビームBaを集束させて、開口8において又は開口8の近くに中間焦点を形成してもよい。
[0071] 照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を含むことができる。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、放射ビームBaに所望の断面形状及び所望の角度分布を与える。放射ビームBaは、照明システムILから出て、支持構造MTにより保持されたパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは放射ビームを反射し、これにパターンを付与して、パターン付ビームBa’’を形成する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含むこともある。照明システムILは例えば、個別に移動可能なミラーのアレイを含むことができる。個別に移動可能なミラーは、例えば直径1mm未満であり得る。個別に移動可能なミラーは、例えば微小電気機械システム(MEMS)デバイスとすればよい。
[0072] パターン付放射ビームBa’’は、パターニングデバイスMAから方向転換(例えば反射)した後、投影システムPSに入射する。投影システムPSは、基板テーブルWTによって保持された基板Wに放射ビームBa’’を投影するように構成された複数のミラー13、14を備えている。投影システムPSは放射ビームに縮小率を適用して、パターニングデバイスMAの対応するフィーチャよりも小さいフィーチャを有する像を形成することができる。例えば縮小率4を適用すればよい。図2において投影システムPSは2つのミラーを有するが、投影システムは任意の数のミラー(例えば6のミラー)を含むことができる。
[0073] リソグラフィ装置LAaは、放射ビームBa’の断面にパターンを付与し、このパターン付放射ビームを基板のターゲット部分に投影することで、基板のターゲット部分をパターン付放射に露光するように動作可能である。リソグラフィ装置LAaは、例えばスキャンモードで使用することができる。このモードでは、放射ビームBa’’に与えたパターンを基板Wに投影している間に、支持構造MT及び基板テーブルWTを同期してスキャンする(すなわち動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの縮小率及び像反転特性によって決定することができる。基板Wに入射するパターン付放射ビームBa’’は、ある放射帯を含み得る。この放射帯を露光スリットと称することができる。スキャン露光中、露光スリットが基板Wのターゲット部分の上を移動することで基板Wのターゲット部分をパターン付放射に露光するように、基板テーブルWT及び支持構造MTを移動させる。基板Wのターゲット部分内の所与の位置が露光される放射ドーズ量は、放射ビームBa’’のパワーと、その位置上で露光スリットをスキャンする際にその位置が放射に露光される時間量とに依存することは認められよう(この例ではパターンの影響は無視される)。「ターゲット位置」という言葉は、放射に露光される(かつ受光した放射ドーズ量を算出することができる)基板上の位置を表すために使用可能である。
[0074] 一実施形態において、分岐放射ビームBa〜Bnはそれぞれ、各減衰器15a〜15nを介して送出された後、各リソグラフィ装置LAa〜LAnに入射する。各減衰器15a〜15nは、分岐放射ビームBa〜Bnが対応するリソグラフィ装置LAa〜LAnに入射する前に各分岐放射ビームBa〜Bnの強度を調整するように構成されている。各減衰器15a〜15nは、その対応するリソグラフィ装置LAa〜LAnの一部を形成すると考えられる。あるいは各減衰器15a〜15nは、その対応するリソグラフィ装置LAa〜LAnとは別個のものと考えることも可能である。各減衰器15a〜15nは、その減衰器に関連付けられたリソグラフィ装置から与えられるフィードバックを用いて、コントローラCTa〜CTnにより制御することができる。例えばリソグラフィ装置LAnは、このリソグラフィ装置内に分岐放射ビームBnの強度を監視するセンサSLnを含むことができる。センサSLnからの出力を用いて減衰器15nを制御できる。従って、破線Fnで示すようにフィードバックベースの制御ループが与えられる。センサSLnは、リソグラフィ装置LAn内の任意の適切な位置に設ければよい。例えばセンサSLnは、リソグラフィ装置の投影システムPSの後段に位置付けることができる。センサSLnは、例えば破線SLaで概略的に示すように、基板W上に設けられ得る。これに加えて又はこの代わりに、センサSLnは、リソグラフィ装置の投影システムPSの前段に位置付けてもよい。例えばセンサSLnは、破線SLaで概略的に示すように照明システムIL内に、又は照明システムILと支持構造MTとの間に位置付けられ得る。
[0075] 基板W上のターゲット位置は、約1ms以上であり得る露光時間期間中、EUV放射を受光することができる。いくつかの実施形態において、露光時間は数十ミリ秒のオーダーとすることができ、例えば50〜100msの範囲内である。フィードバックベースの減衰器15a〜15nを介してリソグラフィ基板に送出されるEUV放射のパワーを制御すると、リソグラフィ基板上のターゲット位置における露光ドーズ量の均一性を向上させることができる。10kH以上の周波数で動作するフィードバックベースの制御ループは、1msで送出される露光ドーズ量をある程度制御する。50kHz以上の周波数で動作するフィードバックベースの制御ループでは、1msで送出される露光ドーズ量の制御が向上する(これは、EUV放射ビームパワーの変動(fluctuations)をより完全に平滑化することができる)。約100kHz以上の周波数で動作するフィードバックベースの制御ループでは、1msで送出される露光ドーズ量の制御が更に向上し得る。1MHz以上の周波数で動作するフィードバックベースの制御ループでは、ドーズ量制御の点で著しい利点は追加されない場合がある。これは、1msの露光時間では、このような周波数でのEUV放射の変動が露光時間中に実質的に平均化されるからである。
[0076] 放射源SO、ビームデリバリシステムBDS、及びリソグラフィ装置LAa〜LAnは全て、外部環境から隔離可能であるように構成及び配置することができる。放射源SO、ビームデリバリシステムBDS、及びリソグラフィ装置LAa〜LAnの少なくとも一部において真空を与えて、EUV放射の吸収を最小限に抑えることができる。リソグラフィシステムLSの異なる部分に、異なる圧力の真空を与える(すなわち大気圧未満の異なる圧力に維持する)ことも可能である。
[0077] 再び図1を参照すると、放射源SOは、リソグラフィ装置LAa〜LAnの各々へ供給するのに充分なパワーのEUV放射ビームBを発生するように構成されている。上記のように、放射源は自由電子レーザを含み得る。
[0078] 自由電子レーザは電子源を含み、これは、バンチ化相対論的電子ビームと、この相対論的電子バンチが送り出される周期磁場と、を生成するように動作可能である。周期磁場はアンジュレータにより生成され、これによって電子は中心軸を中心とした振動経路をとる。磁気構造によって生じた加速の結果、電子は概ね中心軸方向に電磁放射を自発的に放射する。相対論的電子はアンジュレータ内の放射と相互作用する。特定の条件下で、この相互作用によって電子はバンチ化して、アンジュレータ内の放射の波長で変調されたマイクロバンチ(microbunch)となり、中心軸に沿った放射のコヒーレントな放出が誘導される。
[0079] 電子が通る経路は、正弦波形状かつ平面状であって電子が周期的に中心軸を横断するか、又は、らせん状であって電子が中心軸を中心に回転する場合がある。振動経路のタイプは、自由電子レーザが放出する放射の偏光に影響を及ぼし得る。例えば、らせん状の経路に沿って電子を伝搬させる自由電子レーザは楕円偏光放射を放出し得る。これは、一部のリソグラフィ装置による基板Wの露光には望ましい場合がある。
[0080] 図3は自由電子レーザFELの概略図であり、これは、入射器21、線形加速器22、バンチ圧縮器23、アンジュレータ24、電子減速器26、及びビームダンプ100を備えている。
[0081] 入射器21は、バンチ化電子ビームEを生成するように構成され、例えば熱イオンカソード又はフォトカソード等の電子源と加速電場とを備えている。入射器21は、電子銃及び電子ブースタを備え得る。電子銃は、パルスレーザビームを受光するように配置された真空チャンバ内部のフォトカソードを備えることができる。レーザビームの光子はフォトカソードによって吸収され、フォトカソード内の電子を励起し、結果としてフォトカソードから一部の電子が放出される。フォトカソードは、高い負の電圧(例えば数百キロボルトのオーダー)に保持され、このためフォトカソードから放出される電子をフォトカソードから離れる方向に加速するように機能し、これによって電子のビームが形成される。レーザビームがパルス状であるので、このレーザビームのパルスに対応して電子はフォトカソードからバンチ状に放出される。フォトカソードから放出される電子ビームEは電子ブースタによって加速される。電子ブースタは電子バンチを、例えば約5MeVを超えるエネルギに加速することができる。いくつかの実施形態では、電子ブースタは電子バンチを、約10MeVを超えるエネルギに加速することができる。いくつかの実施形態では、電子ブースタは電子バンチを最大で約20MeVのエネルギに加速することができる。
[0082] 電子ビームE内の電子は線形加速器22によって更に加速される。一例において線形加速器22は、共通軸に沿って軸方向に離間した複数の無線周波数空洞と、共通軸に沿って電磁場を制御して電子バンチが通過する際に各電子バンチを加速するように動作可能である1以上の無線周波数電力源と、を備えることができる。空洞は超伝導無線周波数空洞とすればよい。有利な点として、これによって、比較的大きい電磁場を高いデューティサイクルで印加すること、ビームアパーチャが大きくなるので航跡場(wakefield)による損失を低減させること、(空洞の壁を通って放散するものに対して)ビームに伝達される無線周波数エネルギ部分を増大させることが可能となる。あるいは、空洞は従来どおり伝導性とすることも可能であり(すなわち超伝導ではない)、例えば銅から形成すればよい。
[0083] いくつかの加速ステップを経て、ビームEの最終エネルギに到達することができる。例えばビームEは、ビーム輸送要素(ベンド、ドリフト空間等)により分離された複数の線形加速器モジュールを通るように送出することができる。この代わりに又はこれに加えて、ビームEは同一の線形加速器モジュールを繰り返し通るように送出することも可能であり、この場合、ビームEのエネルギの利得及び/又は損失は繰り返しの数に応じる。他のタイプの線形加速器も使用可能である。例えば、レーザ航跡場加速器又は逆自由電子レーザ加速器を用いることができる。
[0084] 入射器21及び線形加速器22は、バンチ化電子ビームを生成するように動作可能な電子源を形成すると考えることができる。
[0085] 電子ビームEは、線形加速器22とアンジュレータ24との間に配置されたバンチ圧縮器23を通過する。バンチ圧縮器23は、電子ビームE内の電子をバンチ化すると共に電子ビームE内の既存の電子バンチを空間的に圧縮するように構成されている。あるタイプのバンチ圧縮器23は、電子ビームEを横断する方向に向けられた放射場を含む。電子ビームE内の電子は放射と相互作用して、近傍の他の電子とバンチ化する。別のタイプのバンチ圧縮器23は磁気シケイン(magnetic chicane)を含む。この場合、電子がシケインを通過する際の経路の長さはそのエネルギに依存する。このタイプのバンチ圧縮器を用いると、電位が例えば無線周波数で振動する複数の導体によって、線形加速器22で加速された電子バンチを圧縮することができる。
[0086] 次いで電子ビームEはアンジュレータ24を通過する。一般的に、アンジュレータ24は複数のモジュールから成る。各モジュールは周期的な磁気構造を含み、これは周期磁場を生成するように動作可能であり、入射器21及び線形加速器22によって生成された相対論的電子ビームEをそのモジュール内の周期経路に沿って導くように配置されている。この結果、各アンジュールモジュール内で、電子は概ねそのモジュール内の周期経路の中心軸の方向に電磁放射を放射する。アンジュレータ24は更に、1以上の隣接モジュール対の間にある四重極磁石等、電子ビームEを再集束させる(refocus)ための機構を備えることができる。電子ビームEを再集束するための機構は電子バンチのサイズを縮小することができ、これによってアンジュレータ24内の電子と放射との結合を向上させて、放射の放出の誘導を増大させることができる。
[0087] 電子は、各アンジュレータモジュールを通過する際、放射の電場と相互作用し、放射とエネルギを交換する。一般に、条件が以下で与えられる共振条件に近くない限り、電子と放射との間で交換されるエネルギ量は高速で振動する。
ここで、λemは放射の波長であり、λuは電子が伝搬しているアンジュレータモジュールのアンジュレータ周期であり、γは電子のローレンツ因子であり、Kはアンジュレータパラメータである。Aはアンジュレータ24の幾何学的形状に依存する。円偏光放射を生成するヘリカルアンジュレータ(helical undulator)ではA=1であり、平面アンジュレータ(planar undulator)ではA=2であり、楕円偏光放射を生成するヘリカルアンジュレータ(すなわち円偏光でもなく直線偏光でもない)では1<A<2である。実際には、各電子バンチはある幅のエネルギを有するが、この幅は(電子ビームEを低いエミッタンスで生成することによって)できる限り最小限に抑えることができる。アンジュレータパラメータKは典型的に約1であり、以下によって与えられる。
ここで、q及びmはそれぞれ電子の電荷及び質量であり、Boは周期磁場の振幅であり、cは光の速度である。
[0088] 共振波長λemは、各アンジュレータモジュールを通過する電子が自発的に放射する第1高調波波長に等しい。自由電子レーザFELは、SASE(self−amplified spontaneous emission:自己増幅自発放出)モードで動作することができる。SASEモードの動作では、電子ビームEが各アンジュレータモジュールに入射する前にその電子バンチのエネルギ幅が小さいことが必要であり得る。あるいは、自由電子レーザFELは、アンジュレータ24内の誘導放出により増幅可能なシード放射源を備えることができる。自由電子レーザFELは再循環増幅器自由電子レーザ(RAFEL:recirculating amplifier free electron laser)として動作可能であり、この場合、自由電子レーザFELが発生する放射の一部を用いて更なる放射の発生をシードする(seed)。
[0089] アンジュレータ24を通過する電子によって、放射の振幅を増大させることができる。すなわち、自由電子レーザFELは非ゼロの利得を有し得る。共振条件を満たす場合、又は条件が共振に近いがわずかに外れている場合に、最大の利得を達成できる。アンジュレータ24において生成された放射は、例えば図1の放射ビームBに対応し得る放射ビームBFELとしてアンジュレータから出射する。
[0090] 各アンジュレータモジュールの中心軸の周りの領域を、「有効磁場領域(good field region)」と見なすことができる。有効磁場領域は、中心軸の周りのある体積であり、アンジュレータモジュールの中心軸に沿った所与の位置では、この体積内の磁場の大きさ及び方向が実質的に一定である。有効磁場領域内で伝搬する電子バンチは、式(1)の共振条件を満たすことができ、従って放射を増幅する。更に、有効磁場領域内で伝搬する電子ビームEは、補償されない磁場による著しい予測外の分裂(disruption)を経験しないはずである。
[0091] 各アンジュレータモジュールは、許容可能な初期軌道範囲を有し得る。この許容可能な初期軌道範囲内の初期軌道でアンジュレータモジュールに入射する電子は、式(1)の共振条件を満たすことができ、そのアンジュレータモジュール内で放射と相互作用してコヒーレント放射の放出を誘導する。これに対して、他の軌道でアンジュレータモジュールに入射する電子は、コヒーレント放射の顕著な放出を誘導しない場合がある。
[0092] 例えば、一般的にらせん状のアンジュレータモジュールでは、電子ビームEはアンジュレータモジュールの中心軸と実質的に位置合わせしなければならない。電子ビームEとアンジュレータモジュールの中心軸との間の傾斜又は角度は概ね1/10pを超えてはならない(pはピアスパラメータである)。そうでない場合、アンジュレータモジュールの変換効率(すなわち、そのモジュール内で放射に変換される電子ビームEのエネルギ部分)は、所望の量未満に低下し得る(又はほとんどゼロまで低下し得る)。一実施形態では、EUVヘリカルアンジュレータモジュールのピアスパラメータは0.001のオーダーである場合があり、これは、アンジュレータモジュールの中心軸に対する電子ビームEの傾斜が100マイクロラジアン未満でなければならないことを示している。
[0093] 平面アンジュレータモジュールでは、より広い初期軌道範囲が許容可能であり得る。電子ビームEが平面アンジュレータモジュールの磁場に対して実質的に垂直のままであり、平面アンジュレータモジュールの有効磁場領域内に留まるならば、コヒーレントな放射の放出を誘導することができる。
[0094] 電子ビームEの電子が各アンジュレータモジュール間のドリフト空間を移動する際、電子は周期経路をとらない。従ってこのドリフト空間では、電子は空間的に放射と重複するが放射と大きなエネルギを交換しないので、事実上放射から切り離される。
[0095] バンチ化電子ビームEは有限エミッタンスを有するので、再集束されない限り直径が増大する。このため、アンジュレータ24は更に、1以上の隣接モジュール対の間に電子ビームEを再集束するための機構を備えている。例えば、各隣接モジュール対の間に四重極磁石を設けることができる。四重極磁石は電子バンチのサイズを縮小し、電子ビームEをアンジュレータ24の有効磁場領域内に維持する。これによって次段のアンジュレータモジュール内の電子と放射との結合が向上し、放射の放出の誘導が増大する。
[0096] アンジュレータ24に入射する際に共振条件を満たす電子は、放射を放出(又は吸収)する際にエネルギを喪失(又は獲得)するので、共振条件は満たされなくなる。従っていくつかの実施形態では、アンジュレータ24をテーパ化することができる。すなわち、電子バンチがアンジュレータ24を通って導かれる際にこれを共振又は共振近傍に維持するため、周期磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuは、アンジュレータ24の長さに沿って変化し得る。テーパ化を達成するには、各アンジュレータモジュール内で及び/又はモジュールごとに、周期磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuを変化させればよい。これに加えて又はこの代わりに、テーパ化を達成するには、各アンジュレータモジュール内で及び/又はモジュールごとに、アンジュレータ24のらせん性(helicity)を変化(これによってパラメータAを変化)させればよい。
[0097] 電子ビームEは、アンジュレータ24から出射した後、ダンプ100によって吸収される。ダンプ100は、電子ビームEを吸収するために充分な材料の量を含むことができる。この材料は、放射能誘導についての閾値エネルギを有し得る。閾値エネルギ未満のエネルギでダンプ100に入射する電子は、ガンマ線シャワーを生成する可能性はあるが、著しいレベルの放射能は誘導しない。材料は、電子衝突による放射能誘導についての高い閾値エネルギを有し得る。例えばビームダンプは、約17MeVの閾値エネルギを有するアルミニウム(Al)を含む場合がある。電子ビームEがダンプ100に入射する前に、その電子エネルギを低減させることが望ましい。これによって、ダンプ100から放射性廃棄物を除去及び処分する必要性が解消されるか又は少なくとも低減される。放射性廃棄物を除去するためには自由電子レーザFELを周期的にシャットダウンする必要があり、放射性廃棄物を処分することは高コストであると共に環境への重大な影響を伴う恐れがあるので、これは有利である。
[0098] アンジュレータ24とビームダンプ100との間に配置された減速器26に電子ビームEを送出することによって、電子ビームEがダンプ100に入射する前にその電子エネルギを低減させることができる。
[0099] 一実施形態において、アンジュレータ24から出射した電子ビームEを減速させるには、線形加速器22における無線周波数(RF)フィールドに対して180度の位相差で電子を線形加速器22に戻せばよい。このように、線形加速器におけるRFフィールドは、アンジュレータ24から出力した電子を減速させるように機能する。電子が線形加速器22で減速すると、それらのエネルギの一部は線形加速器22のRFフィールドに移動する。従って、減速している電子からのエネルギは線形加速器22によって回収されて、入射器21から出力した電子ビームEを加速させるために用いることができる。このような構成は、エネルギ回収線形加速器(ERL:energy recovering linear accelerator)として知られている。図4に、ERLを用いた自由電子レーザFELの一例を示す。
[00100] 図4を参照すると、線形加速器22から出た相対論的電子ビームEはステアリングユニット25に入射する。ステアリングユニット25は、相対論的電子ビームEを線形加速器22からアンジュレータ24に向けるように電子ビームEの軌道を変えるように動作可能である。ステアリングユニット25は例えば、ステアリングユニット25内に磁場を発生させるように構成された1以上の電磁石及び/又は永久磁石を含むことができる。この磁場は電子ビームEに力を加え、これが電子ビームEの軌道を変えるように作用する。線形加速器22から出る際の電子ビームEの軌道は、電子をアンジュレータ24へと向けるように、ステアリングユニット25によって変更される。
[00101] ステアリングユニット25が1以上の電磁石及び/又は永久磁石を含む実施形態において、磁石は、磁気双極子、磁気四極子、磁気六極子、及び/又は、電子ビームEに力を加えるように構成された他のいずれかの種類の多極磁場機構の1以上を形成するように配置すればよい。ステアリングユニット25は、これに加えて又はこの代わりに1以上の帯電プレートを備えることも可能であり、これはステアリングユニット25内に電場を生成して電子ビームEに力を加えるように構成することができる。概して、ステアリングユニット25は、電子ビームEに力を加えてその軌道を変えるように動作可能であればいかなる装置も含み得る。
[00102] 図4に示す自由電子レーザの実施形態では、アンジュレータ24から出た電子ビームE’は第2のステアリングユニット26に入射する。第2のステアリングユニット26は、アンジュレータ24から出た電子ビームE’の軌道を変更して、電子ビームE’を再び線形加速器22に送出する。第2のステアリングユニット26はステアリングユニット25と同様のものとすればよく、例えば1以上の電磁石及び/又は永久磁石を含むことができる。第2のステアリングユニット26は、アンジュレータ24から出た放射ビームBFELの軌道には影響を与えない。従って、ステアリングユニット25は放射ビームBFELから電子ビームE’の軌道を切り離す。いくつかの実施形態では、電子ビームE’の軌道を、第2のステアリングユニット26に達する前に、(例えば1以上の磁石を用いて)放射ビームBFELの軌道から切り離してもよい。
[00103] 第2のステアリングユニット26は、電子ビームE’がアンジュレータ24から出た後にこれを線形加速器22に送出する。アンジュレータ24を通過した電子バンチは、線形加速器22における加速フィールド(例えば無線周波数フィールド)に対して約180度の位相差で線形加速器22に入射し得る。電子バンチと線形加速器22における加速フィールドとの位相差のため、電子はこのフィールドにより減速される。減速する電子E’はエネルギの一部を線形加速器22のフィールドに戻し、これによって、電子源21から到着する電子ビームEを加速させるフィールドの強度が増大する。従ってこの機構は、(線形加速器により電子バンチが加速された時に)線形加速器22において電子バンチに与えられたエネルギの一部を回収し、電子源21から到着する後続の電子バンチを加速する。このような機構はエネルギ回収LINACとして既知であり得る。
[00104] 線形加速器22により減速された電子E’は、ビームダンプ100によって吸収される。ステアリングユニット25は、線形加速器22により減速された電子ビームE’の軌道を、線形加速器22により加速された電子ビームEの軌道から切り離すように動作可能であり得る。これによって、減速された電子ビームE’をビームダンプ100で吸収すると共に、加速された電子ビームEをアンジュレータ24に送出することができる。
[00105] 自由電子レーザFELは、電子源21から入来するビームEの軌道とステアリングユニット26から入来するビームE’の軌道とを実質的に重複させるビームマージ(merging)ユニット(図示せず)を備えることができる。このマージが可能であるのは、加速器22による加速の前にビームEのエネルギがビームE’のエネルギよりも著しく小さいという事実のためである。実質的に一定の磁場を発生させることによって、加速した電子ビームEの軌道を減速した電子ビームE’の軌道から切り離すことができる。加速した電子ビームEと減速した電子ビームE’とのエネルギ差により、2つの電子ビームの軌道を一定の磁場によって異なる量だけ変えることができる。従って、2つの電子ビームの軌道は相互に切り離される。
[00106] あるいは、ステアリングユニット25は例えば、加速した電子ビームE及び減速した電子ビームE’を形成する電子バンチと実質的に一定の位相関係を有する周期磁場を発生させるように動作可能であり得る。例えば加速した電子ビームEからの電子バンチがステアリングユニット25に入射する時、ステアリングユニット25はこの電子をアンジュレータ24に送出するように作用する磁場を発生させることができる。減速した電子ビームE’からの電子バンチがステアリングユニット25に入射する時、ステアリングユニット25はこの電子をビームダンプ100に送出するように作用する磁場を発生させることができる。あるいは、減速した電子ビームE’からの電子バンチがステアリングユニット25に入射する時、ステアリングユニット25は、この電子がステアリングユニット25から外れてビームダンプ100に向かうように、磁場をほとんど又は全く発生させないことも可能である。
[00107] あるいは、自由電子レーザFELは、ステアリングユニット25とは別個のビーム分割ユニット(図示せず)を備え、これを、ステアリングユニット25の上流で減速した電子ビームE’の軌道から加速した電子ビームEの軌道を切り離すように構成することができる。ビーム分割ユニットは例えば、加速した電子ビームE及び減速した電子ビームE’を形成する電子バンチと実質的に一定の位相関係を有する周期磁場を発生させるように動作可能であり得る。
[00108] 線形加速器22は、減速器として動作している場合、電子E’のエネルギを閾値エネルギ未満に低減させるように動作可能であり得る。この閾値エネルギ未満の電子は、ビームダンプ100において著しいレベルの放射能を誘導しない可能性がある。
[00109] いくつかの実施形態では、線形加速器22とは別個の減速器(図示せず)を用いて、アンジュレータ24を通過した電子ビームE’を減速させることができる。電子ビームE’は、線形加速器22によって減速することに加えて、又は線形加速器22によって減速する代わりに、この減速器によって減速することができる。例えば、電子ビームE’が線形加速器22によって減速される前に、第2のステアリングユニット26がこの電子ビームE’を減速器に通過させることができる。これに加えて又はこの代わりに、電子ビームE’は、線形加速器22により減速した後であってビームダンプ100により吸収される前に減速器を通過することも可能である。あるいは、電子ビームE’は、アンジュレータ24から出た後に線形加速器22を通過せずに、1以上の減速器によって減速させ、その後ビームダンプ100によって吸収することができる。
[00110] 自由電子レーザFELは、図1のリソグラフィシステムLSの一部を形成することができる。この場合、自由電子レーザが生成する放射は最終的に、1以上のリソグラフィ装置LAa〜LAn内の1以上の基板Wによって受光される。これらの基板Wは、パターン付放射を受光するように配置されたターゲット部分を含むと考えられる。リソグラフィシステムLS内で、放射は自由電子レーザFELから基板まで伝送されるが、その間に、(i)ビームデリバリシステムBDS(例えばビーム拡大光学部品及びビーム分割光学部品を備える)、及び(ii)リソグラフィ装置LAa〜LAn内の光学部品(例えば光学部品10、11、13、14)を経由する。ビームデリバリシステムBDS及びリソグラフィ装置内の光学部品は、自由電子レーザFELから基板Wまで放射を伝送するように構成された光路と称することができる。光路は、ある放射ドーズ量を基板Wに与えるように放射を反射及び/又は透過させる。光路を伝搬して基板Wに入射する放射ビームBの部分を光路の透過率と称することができる。光路は反射性及び/又は透過性の素子を含むことができ、光路の透過率は、光路における反射性素子の反射率と光路における透過性素子の透過率とに依存することは認められよう。光路の透過率は更に、放射ビームBの断面と、放射ビームが入射する光路内の光学素子とのマッチングに依存し得る。例えば、光路における光学素子(例えばミラー)は、この光学素子に入射する放射ビームBの断面よりも小さい断面を有することがある。従って、光学素子の断面の外側にある放射ビームBの断面部分は、(例えばミラーで反射されないことによって)放射ビームから失われ、従って光路の透過率を低下させる可能性がある。
[00111] リソグラフィシステムLSのリソグラフィ装置LAa〜LAnにおいて基板W上のターゲット位置が受光する放射ドーズ量を制御することが望ましい場合がある。特に、基板上の所与のターゲット部分の各ターゲット位置が実質的に同じ放射ドーズ量を受光するように放射ドーズ量を制御することが望ましい場合がある(パターニングデバイスMAが放射ドーズ量に対して著しい影響を及ぼさないと仮定して)。特に、各リソグラフィ装置LAa〜LAn内で基板W上のターゲット位置が受光する放射ドーズ量を、他のリソグラフィ装置LAa〜LAn内で基板W上のターゲット位置が受光する放射ドーズ量とは独立して制御可能であることが望ましい場合がある。
[00112] 図2を参照して上述したように、基板Wのターゲット位置が受光する放射ドーズ量は、ターゲット位置を露光する放射ビーム(例えばパターン付放射ビームBa’’)のパワーと、基板Wのターゲット位置が放射ビームに露光される時間量と、に依存する。リソグラフィ装置LAaにおけるパターン付放射ビームBa’’のパワーは、放射源SOが放出する放射ビームBのパワーと、放射源SO及び基板Wの間の光路の透過率と、に依存する。従って、基板Wのターゲット位置で受光される放射ドーズ量を制御するには、放射源SOから放出される放射ビームBのパワーの制御、及び/又は放射源SOと基板Wとの間の光路の透過率の制御を行えばよい。
[00113] 一実施形態において、リソグラフィ装置は、スキャン方向を横切る方向に基板Wのターゲット部分に延出する放射帯に対して基板をスキャンすることによってターゲット部分を露光するように構成可能である。この放射帯を露光スリットと称することができる。基板W上のターゲット位置で受光される放射ドーズ量は、そのターゲット位置上に放射ビーム(例えばパターン付放射ビームBa’’)が送出される露光時間期間と、この露光時間期間中に放射ビームで発生するパルスの数及び持続時間と、に依存する。例えばスキャンリソグラフィ装置において、基板Wのターゲット位置が放射ビームに露光される時間量は、露光スリットがその位置上を移動するため要する時間に依存する。ターゲット位置で受光される放射ドーズ量は、その露光時間期間中に生じる放射ビームのパルス数と、各パルスでターゲット位置に送出される平均エネルギと、に依存する。一実施形態では、露光時間期間が約1msであるようにウェーハを露光スリットに対してスキャンすることができる。他の実施形態では、露光時間期間は1ms超としてもよく、例えば5msの長さとすることができる(例えば露光スリットに対するウェーハのスキャン移動が低速であるので)。他の実施形態では、露光時間期間は1msより著しく長く、例えば50〜100msの範囲内としてもよい。
[00114] 図5及び図5aは、図1及び図2に示す減衰器15aに相当し得る減衰器100の一例を示す。減衰器100は、反射性光学面115を有する光学素子110を備えている。光学面115は入力放射ビームBinを受光するように配置されている。入力放射ビームBinは、ビームデリバリシステムBDSによって出力される分岐放射ビームBa〜Bnの1つに相当し得る。
[00115] 光学面115は、EUV放射を含み得る入力放射ビームBinに対して比較的反射性である材料から形成されるか、又はこの材料のコーティングが設けられている。適切な材料にはルテニウム(Ru)及びモリブデン(Mo)が含まれる。
[00116] 入力放射ビームBinは、比較的小さいかすめ入射角βで光学面115に入射する。かすめ入射角βが小さくなると、光学面115での吸収による損失も低減し、減衰器100の効率が高くなる。例えば20度のかすめ入射角βでは、ルテニウムでコーティングされた光学面115の場合、光学面115は約70%の効率を有することができる。許容可能なかすめ入射角βの範囲は、容認できる減衰レベルに依存し得る。例えば入力放射ビームBinは、約5度以下のかすめ入射角βで光学面115に入射することができる。いくつかの実施形態において、かすめ入射角βは約2度以下であり得る。いくつかの実施形態において、かすめ入射角βは約1度以下であり得る。入力放射ビームBinは、断面を概ね円形とし、直径を約10mmとすることができる。いくつかの実施形態では、入力放射ビームの直径は5mmから20mmの範囲内であり得る。概ね円形の入力放射ビームBinは、光学面115の概ね楕円形の領域116を照射する。この領域をビームスポット領域と称することができる。ビームスポット領域116の短軸の長さは入力放射ビームの直径である。ビームスポット領域116の長軸の長さは、サイン(β)に対する入力放射ビームの直径の比であるか、又は、小さい角度ではβ(測定単位はラジアン)に対する入力放射ビームの直径の比である。入力放射ビームBin全体が光学面115を照射するため、ビームスポット領域116は光学面115よりも小さくなければならない。従って、光学面115の最大寸法はビームスポット領域116の長軸のサイズに対して上限を与える。また、入力放射ビームBinの所与の直径では、これはかすめ入射角βに対して下限を与える。
[00117] いくつかの実施形態において、光学素子110はシリコンウェーハから形成することができる。シリコンウェーハは、例えば300mmの直径を有し得る。そのような実施形態では、ビームスポット領域116の長軸の長さは、例えば260mm未満であることが望ましい場合がある。直径が5mmの入力放射ビームBinでは、これはかすめ入射角βに対して1.1度という下限を与える。直径が10mmの入力放射ビームBinでは、これはかすめ入射角βに対して2.2度という下限を与える。直径が20mmの入力放射ビームBinでは、これはかすめ入射角βに対して4.4度という下限を与える。
[00118] 以下で詳述するように、減衰器100は更に、光学面115を歪ませて光学面115上に調整可能周期構造を形成するように動作可能である歪み機構を備えている。この周期構造は、光学面115全体に延出する複数のリッジ131を含む。光学面115上の周期構造は回折格子として作用し、入力放射ビームBinが光学素子110から回折されて複数の角度分離したサブビームB0、B+1、B−1を形成するようになっている。光学素子110の遠距離場では、サブビームB0、B+1、B−1は空間的に分離している。各サブビームB0、B+1、B−1は異なる方向に伝搬し、異なる回折次数に対応する。本出願では、特に指定のない限り、Bmはm次の回折ビームに対応したサブビームを指すものと理解される。例えば、サブビームB0は0次の回折ビームに対応し、これは光学面115に対して入力放射ビームBinと同じ角度を形成する。図5には0次、+1次、及び−1次の回折次数のみを示すが、より高い次数も存在し得ることは理解されよう。
[00119] 図5aにおいて、光学素子110は、入射面130(入力放射ビームBinの伝搬方向と光学面115に対する法線とを含む。すなわち図5aのx−z面)が、周期構造を形成する複数のリッジ131の延出方向(図5aのy方向)に対して概ね垂直であるように、入力放射ビームBinに対して配向されている。そのような配置では、各サブビームB0、B+1、B−1の伝搬方向も面130内にある。従って、そのような配置を平面回折と呼ぶことができる。
[00120] 入射面130が、周期構造を形成する複数のリッジ131の延出方向に対して概ね垂直でない場合、出射するサブビームB0、B+1、B−1は面内に存在せず、円錐の表面上にある。そのような配置を円錐回折と呼ぶことができる。
[00121] 入射面130が周期構造を形成する複数のリッジ131の延出方向に対して概ね垂直であるように光学素子110が入力放射ビームBinに対して配向されていることの利点は、光学面115上の所与の格子ピッチについて、入力放射ビームBinによって見られる光学面115上の調整可能周期構造の有効ピッチが小さくなることである。従って、図5aに示すような配向により、他の配向で必要となるよりも大きい格子ピッチを用いることができる。平面回折では、光学面115上の調整可能周期構造の有効ピッチは、ピッチΛとサイン(β)との積によって与えられるか、又は、小さい角度ではピッチΛとβ(測定単位はラジアン)との積によって与えられる。
[00122] 入力放射ビームBinに対する光学素子110の配向は、かすめ角β(単位はラジアン)とタンジェント(Π/2−θ)との積が1よりも著しく小さいようにすることが望ましい場合がある。ここで、θは入射面130とリッジ131の方向との間の角度である。例えば、β=35マイクロラジアン(2度と同等)のかすめ入射角、及びθ=Π/4では、β・タンジェント(θ)=0.035であり、これは1よりも著しく小さい。
[00123] 複数のサブビームの相対強度は、光学面115上の調整可能周期構造の形状に依存する。具体的には、入力放射ビームBinのパワーに対するサブビームB0のパワーの比は、光学面115上の調整可能周期構造の形状及びかすめ入射角βに依存する。所与のピッチでは、光学面115上の調整可能周期構造の形状は、調整可能周期構造の振幅に依存する。入力放射ビームBinのパワーに対するサブビームBmのパワーの比を、サブビームBmの相対パワーと呼ぶことができる。所与のかすめ入射角βでは、周期構造の振幅が増大すると、各サブビームBmの相対パワーは極大と極小との間で変動する。全てのサブビームBmの相対パワーの和(すなわち全ての回折次数について合計したもの)は、光学素子110の反射率に等しい。充分に小さいかすめ入射角βでは、光学素子110の反射率は1に近くなり得る。例えば、光学面115上にルテニウムのコーティングを設け、β<0.2ラジアンである実施形態では、光学素子110の反射率Rは、R=1−0.75βによって近似的に与えられ得る。ここで、βの単位はラジアンである。従って、光学面115にルテニウムのコーティングを設け、β=17マイクロラジアン(1度と同等)である実施形態では、光学素子110の反射率は、R=1−0.75×0.017=0.987によって近似的に与えられ得る。
[00124] 図6は、固定かすめ入射角βについて、サブビームB0、B+1、B−1の相対パワーを、光学面115上の調整可能周期構造の振幅の関数として示す。振幅の関数としてのサブビームB0の相対パワーは曲線201によって与えられ、振幅の関数としての各サブビームB+1及びB−1の相対パワーは曲線202によって与えられる。小さい振幅では、サブビームB0の相対パワーは1に近く、サブビームB+1及びB−1の相対パワーは0に近い。振幅が増大すると、サブビームB0の相対パワーはゼロまで低下し、サブビームB+1及びB−1の各々の相対パワーは約0.5まで上昇する。
[00125] 全てのサブビームBmのパワーの和に対するサブビームBmのパワーの比を、サブビームBmの部分パワーと呼ぶことができる。全てのサブビームBmの部分パワーの和(全ての回折次数について合計したもの)は1に等しい。
[00126] 図6aは、(固定かすめ入射角βについて)光学面115上の正弦周期構造における0次、1次、2次、及び3次の回折ビームB0、B+1、及びB−1の部分パワーを、正弦周期構造の振幅の関数として示す。振幅の関数としてのサブビームB0の部分パワーは曲線205によって与えられ、振幅の関数としての各サブビームB+1及びB−1の部分パワーは曲線206によって与えられ、振幅の関数としての各サブビームB+2及びB−2の部分パワーは曲線207によって与えられ、振幅の関数としての各サブビームB+3及びB−3の部分パワーは曲線208によって与えられる。小さい振幅では、サブビームB0の部分パワーは1に近く、より高次のサブビームの部分パワーは0に近い。
[00127] 各サブビームBmと光学面115との間の角度αmは、光学面115上の調整可能周期構造のピッチ及びかすめ入射角βに依存する。具体的には、平面回折では、サブビームBmと光学面115との間の角度αmは以下の条件を満たす。
ここで、λは入力放射ビームBinの波長であり、Λは光学面115上の調整可能周期構造のピッチである。円錐回折では、式(3)は成立しない。円錐回折では、コサイン(αm)をコサイン(ε)コサイン(αm)で置き換えなければならず、コサイン(β)をコサイン(ε)コサイン(β)で置き換えなければならない。ここで、εは入射面130とリッジ131の方向に垂直な平面との間の角度である。式3から、サブビームB0と、より高次の回折ビームに相当するサブビームB+1、B−1との間の角度分離は、入力放射ビームBinの波長と、入力放射ビームBinによって見られる光学面115上の調整可能周期構造の有効ピッチとに依存することがわかる。平面回折では、光学面115上の調整可能周期構造の有効ピッチは、ピッチΛとサイン(β)との積によって与えられ、又は、小さい角度ではピッチΛとβ(測定単位はラジアン)との積によって与えられる。サブビームB0とサブビームB+1、B−1との間の角度分離を最大限にするため、有効ピッチをできる限り小さくすることが望ましい場合がある。具体的には、有効ピッチを入力放射ビームBinの波長のオーダーとすることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、入力放射ビームBinの波長は約13.5nmであり、かすめ入射角βは約5度であり、光学面115上の調整可能周期構造のピッチは例えば約100μmであり得る。
[00128] 減衰器100は更に、アパーチャ125が設けられた壁120を備えている。壁120は、0次回折に対応するサブビームB0がアパーチャ125を通過すると共に、より高次の回折ビームに対応するサブビームB+1、B−1が壁120に入射するように位置決めされている。すなわち壁120は、サブビームB0がより高次の回折ビームに相当するサブビームB+1、B−1から空間的に分離されるように、光学素子110の遠距離場に位置決めされている。サブビームB0は壁120のアパーチャ125を通過し、減衰器100の出力放射ビームBoutを形成する。より高次の回折ビームに相当するサブビームB+1、B−1は、壁120により阻止される。従って壁120は、光学素子110の遠距離場に位置決めされた阻止部材として機能し、サブビームB0が阻止部材を通り過ぎて出力放射ビームBoutを形成すると共にサブビームB+1、B−1が阻止部材によって阻止されるようになっている。例えば、サブビームB+1、B−1は壁120によって吸収することができる。あるいは、サブビームB+1、B−1は、壁120によって出力放射ビームBoutから離れる方へ送出することができる(例えば反射によって)。代替的な実施形態において、阻止部材は、アパーチャ125を備えた壁120でなく、複数の別々の部材を備え、各部材が高次の回折ビームに相当するサブビームB+1、B−1の異なるものを阻止するように配置されると共に、サブビームB0が前記別々の部材の間を通過することも可能である(図5aを参照のこと)。
[00129] サブビームB0を高次の回折ビームに相当するサブビームB+1、B−1から空間的に分離するため、サブビームB0及びサブビームB+1、B−1の各々の中心間の分離距離は、入力放射ビームBinの直径よりも大きくなければならない。従って、壁120と光学面115との間の最小距離は、入力放射ビームBinの直径及び角度分離に依存する。サブビームB0とより高次の回折ビームに相当するサブビームB+1、B−1との間の角度分離について、小さい角度の近似を用いると、壁120と光学面115との間の最小距離は、角度分離(測定単位はラジアン)に対する入力放射ビームBinの直径の比によって与えられる。減衰器100のサイズを最小限に抑えるように、壁120と光学面115との間の距離を最小限とすることが望ましい場合がある。
[00130] いくつかの実施形態において、歪み機構は、出力放射ビームBoutのパワーを制御するように、出力放射ビームBoutのパワーに応じて光学面115上の周期構造を制御するように動作可能である。出力放射ビームBoutのパワーは、光学面115上の周期構造の形状(これは周期構造の振幅に依存する)及びかすめ入射角βに依存する。歪み機構は、例えばセンサSLaにより出力される信号に応じて図1のコントローラCTa〜CTnの1つによって制御できる。センサSLaにより出力される信号は、(例えばパワーを示す量から)直接的に又は間接的に決定され得る出力放射ビームBoutのパワーを示すことができる。放射ビームのパワーを示す量は、放射ビームのパワーを決定できる任意の量とすればよく、例えば、センサ(例えばセンサSLa)の方へ送出された放射ビームの部分のパワーを含み得る。そのようなコントローラは、減衰器100の一部を形成してもよく、あるいは減衰器100とは別個としてもよい。光学面115上の周期構造のピッチΛは固定のままとすることができ、歪み機構は、出力放射ビームBoutのパワーを制御するように、出力放射ビームBoutのパワーに応じて周期構造を制御するように動作可能である。
[00131] いくつかの実施形態において、コントローラCTa〜CTnの1つは、周期構造の振幅が0に近いが0に等しくはない公称値を中心とした範囲内に収まるように、歪み機構を制御するように動作可能である。例えば周期構造の振幅は、図6に示す公称値204を中心とした範囲203内に保持することができる。これによって、出力放射ビームBoutのパワーを必要に応じて又は所望のように増大又は低減できる。いくつかの実施形態において、減衰器100は、ドーズ量が公称値から±10%だけ変動し得るようにこれを制御するように動作することができる。
[00132] 要約すると、サブビームB0とより高次の回折ビームに相当するサブビームB+1、B−1との間の角度分離を最大にするため、有効格子ピッチを最小限に抑えることが望ましい場合がある。これは、かすめ入射角β及び/又は光学面115上の周期構造のピッチΛを最小限に抑えることで達成可能である。有効格子ピッチは、楕円形ビームスポット領域116内に多数の格子周期が存在することを保証できるよう充分に小さくなければならない。例えば有効格子ピッチは、楕円形ビームスポット領域116内に約100以上の格子周期又は約1000以上の格子周期が存在することを保証できるほど充分に小さい場合がある。最小格子入射角は、光学面115の寸法及び入力放射ビームBinの直径により決定される。サブビームB0とより高次の回折ビームに相当するサブビームB+1、B−1との間の角度分離を最大化するように有効格子ピッチを最小限に抑えると、減衰器の物理的なサイズが縮小する。これは望ましい場合がある。
[00133] 光学面115上に調整可能周期構造が存在しない場合、光学面115は概ね平坦であり得る。
[00134] 以下に、減衰器100の一部を形成し得る歪み機構の様々な異なる実施形態について記載する。
[00135] 一実施形態において、歪み機構は、光学素子110の光学面115上に表面音響波を誘導するように動作可能な1以上のアクチュエータを備えている。図7aはそのような構成を示す。
[00136] 上述のように、光学素子110の光学面115は、入力放射ビームBinが照射される概ね楕円形のビームスポット領域116を備えている。ビームスポット領域116の短軸の長さ116aは、入力放射ビームBinの直径に等しく、約10mmとすることができる。ビームスポット領域の長軸の長さ116bは、サイン(β)に対する入力放射ビームの直径の比であり、約260mmとすることができる。長軸は短軸よりも著しく長いので、光学面は2つの短辺110b及び2つの長辺110aを備えている。
[00137] 光学素子110は、圧電材料層を備え得るベース層から形成することができる。あるいは、光学素子を圧電材料から形成することも可能である。適切な圧電材料は、例えばシリコン、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、又は石英を含み得る。圧電材料の上に、少なくとも入力ビームBinが入射するビームスポット領域116を覆うように反射性コーティングを設けてもよい。反射性コーティングは、例えばルテニウム(Ru)又は炭化ケイ素(SiC)を含み得る。一実施形態において、光学素子110は、約300mmの直径を有し得るシリコンウェーハから形成することができる。例えば、概ね円形のシリコンウェーハを小さく切断することで、概ね矩形の光学素子110を形成すればよい。従って、長辺110aは約300mmの長さであり得る。任意選択的に、そのような実施形態では、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)又は石英等の圧電材料層をシリコンに設けてもよい。
[00138] 短辺110bの1つに隣接して、光学面115上にトランスデューサ210が設けられている。
[00139] トランスデューサ210は、2つの電極212、214と、これら2つの電極212、214間に交流電圧を印加するように配置された交流電源(図示せず)と、を備えている。電極212、214は、標準的なリソグラフィ技法を用いて圧電材料上に形成することができる。各電極212、214は、スパイン部212a、214a及び単一フィンガ212b、214bを備えている。スパイン部212a、214aは光学素子110の長辺110aに平行であり、スパイン部212aは部分的に光学素子110の一方の長辺110aに沿って延出していると共に、スパイン部214aは部分的に対向する長辺110aに沿って延出している。フィンガ212b、214bの各々は光学素子の短辺110bに平行である。フィンガ212b、214bはピッチ216を有する。代替的な実施形態において、トランスデューサ210は交差指型トランスデューサ(IDT:interdigitated transducer)であり、各電極212、214がスパイン部212a、214aから延出する複数の平行で均一に離間したフィンガを備えて、トランスデューサ210が2つの噛み合った櫛型電極を含むようにしてもよい。そのような実施形態において、2つの電極は、(異なる電極から形成される)隣接した各フィンガ対の間に一定の間隔があくように配置されている。
[00140] 2つの電極212、214間に電力を与えることによって、圧電材料に交流周期電位が印加される。これにより交流周期歪み場が生じ、音響波が発生してトランスデューサ210から全ての方向へ伝搬する。2つの電極212、214は比較的薄い層として光学面115の圧電材料に適用されている。例えばいくつかの実施形態において、電極212、214は約100nmの厚さを有し得る。従って、前記音響波の大部分は、トランスデューサ210から双方向へ伝搬する表面音響波(SAW)から成る。従って、これらの表面音響波の一部は、トランスデューサ210から光学素子110の対向する短辺110bの方へ光学面115全体を伝搬する。これは図7aにおいて、複数の等しく離間した波面220によって示されている。表面音響波がビームスポット領域116全体にわたって発生することを保証するため、電極212、214のフィンガ212b、214bの各々は、ビームスポット領域116の短軸116aと少なくとも同じ長さでなければならない。
[00141] 表面音響波の周波数は、電源により与えられる交流電圧の周波数によって決定される。図7aの矢印vで示すように、表面音響波は、光学面115の圧電材料の特性である速度vで光学面115を伝搬する。表面音響波の波長は、周波数に対する速度vの比によって与えられる。例えば一実施形態において、圧電材料は石英を含み、石英での表面音響波の速度は約3000m/sである。そのような実施形態において、光学面115上の交流周期構造を100μmのピッチで達成するため、電源は約30MHzの周波数で動作しなければならない。表面音響波の波長(すなわち連続した2つの波面間の距離)を、2つの電極212、214のフィンガ212b、214bのピッチ216に合致させることが望ましい場合がある。例えば、表面音響波の波長が2つの電極212、214のピッチ216のほぼ2倍であることを保証することが望ましい場合がある。
[00142] 表面音響波の波長は、電源により印加される電圧の振幅、圧電材料の種類、並びにトランスデューサ210の電極の間隔及び幅に依存する。電源は、充分な電力を供給してビームスポット領域116内で表面音響波の所望の振幅を達成し、あらゆる電力損失(すなわち、ビームスポット領域116の表面音響波に変換されない電力)を考慮に入れなければならない。
[00143] 所望の振幅は、所望の減衰量(すなわちサブビームB0の所望の相対パワー)に依存する。表面音響波の所与の振幅を達成するために必要なパワーは、電極212、214のフィンガ212b、214bの各々の長さに依存する。この長さが、音響エネルギが広がる面積を決定するからである。上述のように、フィンガ212b、214bの最小サイズはビームスポット領域116の短軸116aの長さによって、言い換えると入力放射ビームBinの直径によって設定される。従って、必要なパワーは入力放射ビームBinの直径に依存し、入力放射ビームBinの直径が大きくなるにつれて必要なパワーが増大する。
[00144] 光学面115の各短辺110bに沿って吸収体230が設けられている。これらの吸収体230は、短辺110bの各々からの表面音響波の反射を防止するか又は少なくとも著しく低減させる。従ってこの実施形態では、表面音響波は進行波である。
[00145] いくつかの実施形態において、トランスデューサ210は、当技術分野において既知の電力循環法を採用することができる。これによって、表面音響波を生成するために必要な電力量を、例えば約7分の1に低減することができる。
[00146] サブビームB0の(従って出力放射ビームBoutの)相対パワーは、光学面115上の調整可能周期構造の振幅に依存するので、光学面全体にわたって実質的に一定の振幅を有する表面音響波を生成することが望ましい。しかしながら、波が光学面115上を伝搬する際には、ある程度のエネルギ損失が生じる。表面音響波がビームスポット領域上を伝搬する際の減衰は、波の移動距離に依存する。表面音響波は光学面を伝搬し、ほぼ光学素子110の長辺110aの長さの距離だけ移動する。上述のように、光学素子110の長辺110aは約300mmの長さを有し得る。
[00147] エネルギ損失の1つの原因は、光学面材料に固有のエネルギ損失である。これは圧電材料のQ値に依存する。こういった損失を最小限に抑えるため、高いQ値、言い換えると小さい帯域幅を有する圧電材料を用いることが望ましい。圧電材料のQ値は、一部のセラミックの約10から、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)の約104まで、更には石英の105超まで、数桁にわたって変動し得る。石英は1.6×107/fのQ値を有する。ここでfは表面音響波の周波数である(測定単位はメガヘルツ)。300MHzの周波数(上述のように約100μmのピッチで必要とされる)では、石英は約5×105のQ値を有する。
[00148] 散乱及び材料特性の変化によるエネルギ損失は、光学面115が何にも接触せず平滑であることを保証することで低減できる。減衰器100はEUV放射の減衰のため用いられ得るので、使用の際に光学素子110は真空中に配置され、これによりエネルギ損失が低減する。表面音響波は、圧電材料表面の近くの薄い層に閉じ込められる。従って、充分に厚い圧電材料層では、この圧電材料層を剛性のベース基板に取り付けることは、表面音響波に大きな影響を及ぼさないはずである。
[00149] 図7bは、圧電材料の異なるQ値について、(図7aの歪み機構を用いた光学素子110での)表面音響波の振幅を、トランスデューサ210からの距離の関数として示す(トランスデューサ210における表面音響波の振幅に正規化されている)。曲線302、304、306、308は、それぞれ102、103、104、105のQ値に対応する。曲線308から、105のQ値を有する圧電材料では、正規化振幅は300mmの距離によって1から0.9超まで低減することがわかる。
[00150] また、ピッチΛに対する光学面115上の周期構造の振幅の比を最小限に抑えることが望ましい場合もある。これによって、圧電材料内の応力と、歪み機構が要するエネルギとが最小限に抑えられる。
[00151] 図8aは、光学素子110の歪み機構の代替的な実施形態を示す。図8aの構成は図7aのものと概ね同様であるが、トランスデューサ210の反対側の短辺110bにおいて光学面115上に第2のトランスデューサ250が設けられている点が異なる。
[00152] 第2のトランスデューサ250は概ねトランスデューサ210と同様であり、2つの電極252、254と、これら2つの電極252、254に交流電圧を印加するように配置された交流電源(図示せず)と、を備えている。トランスデューサ210と同様、第2のトランスデューサ250の各電極252、254は、スパイン部252a、254a及び単一のフィンガ252b、254bを備えている。2つのトランスデューサ210、250は共通の交流電源(図示せず)を共有してもよく、あるいは、2つのトランスデューサ210、250に別個の交流電源を設け、それらを同期させる(すなわち同一の周波数を有する)ことも可能である。
[00153] 2つのトランスデューサ210、250があるので、固定長の光学素子110について、そのような構成では図7aの構成に比べ、光学面115上に形成される表面音響波の振幅の変動が少ない。事実上、これは、光学面上の任意のポイントとトランスデューサの一方との間の最大距離が実質的に半分になっているからである。
[00154] 図8bは、圧電材料の異なるQ値について、図8aの構成を用いて発生された表面音響波の正規化振幅をトランスデューサ210からの距離の関数として示す。図8aの正規化振幅は、各トランスデューサ210、250においてそのトランスデューサ210、250から生じる表面音響波に対する成分に正規化されている。表面音響波は、2つのトランスデューサ210、250の各々からの成分の和であり、従って図8aの正規化振幅は0から2までの間にある。このモデルでは、第2のトランスデューサ250はトランスデューサ210から300mm離して配置されている。トランスデューサ210から0mの距離では、表面音響波の正規化振幅は、トランスデューサ210から生じる成分(すなわち、この成分は減衰されていないので1)と、トランスデューサ250から生じる成分(すなわち、0.3mにわたる減衰のため<1)との和である。曲線352、354、356、358は、それぞれ102、103、104、105のQ値に対応する。2つのトランスデューサに等しい電圧が印加されるので、表面音響波の振幅は、2つのトランスデューサ210、250の中間すなわちトランスデューサ210から150mmの距離で最小値を有する。105のQ値を有する圧電材料では、その最小値で振幅は約0.1%低減する。
[00155] 同一の周波数で、光学面115の反対側の2つの辺から(トランスデューサ210、250を用いて)表面音響波を作動する構成によって、光学面上で表面音響定在波が発生する。従って、光学面115上で形成される周期構造の振幅は時間と共に変動する。2つのトランスデューサ210、250の各々からの定在波に対する各成分の振幅がAである場合、各波腹における定在表面音響波の振幅は時間と共に0から2Aまでの間で振動する。各波腹における定在表面音響波の時間平均振幅は、Aに2/Π≒0.64を乗算することにより与えられる。
[00156] そのような時間で変動する振幅のため、減衰器100の出力放射ビームBoutの相対パワーも時間と共に変動する。減衰器100の出力放射ビームBoutの相対パワーと周期構造の振幅との関係は非線形であることに留意すべきである(図6を参照のこと)。従って減衰器100の出力放射ビームBoutの相対パワーは、単に図7aの構成によって与えられるのでなく、0.64Aの振幅を有する値となる。図7a及び図8aの構成を用いて入力放射ビームBinの同じ時間平均減衰を達成するためには、図8aの2つのトランスデューサ210、250の各々が発生する表面音響波に対する成分(contribution)は、図7aのトランスデューサ210が発生する表面音響波の振幅のほぼ2倍でなければならない。
[00157] リソグラフィ装置において基板が受光する放射ドーズ量を制御するため、減衰器100をフィードバックループの一部として用いる実施形態では、減衰器100の出力放射ビームBoutの相対パワーにおける変動の時間期間は、基板の露光時間よりも大幅に短くなければならない。
[00158] 上述のように、減衰器100の出力放射ビームBoutのパワーは表面音響波の振幅に依存する。図7a及び図8aに示す実施形態において、表面音響波の振幅は、このトランスデューサ又は各トランスデューサの電極に印加される交流電圧の振幅に依存する。表面音響波は、圧電材料において音速で光学素子110を伝搬する。表面音響波が光学面115を伝搬するのに要する時間は、伝搬速度に対する光学面115の長辺110aの長さの比によって与えられる。これは、歪み機構の応答時間、すなわち表面音響波の振幅を変化させるのに必要な最小時間である。例えば、表面音響波の速度が約3000m/sであり、光学素子110の長辺110aの長さが約300mmである実施形態において、歪み機構は約0.1msの応答時間を有し得る。
[00159] 図9は、図7a及び図8aに示す実施形態の変形である、減衰器100の歪み機構の別の実施形態を示す。この歪み機構は交差指型トランスデューサ(IDT)310を備え、これは、光学素子110の長辺110aの一方に沿って(更に、ビームスポット領域116の長軸に沿って)配置された複数の電極312(この例では12の電極)を備えている。
[00160] 各電極312は、スパイン部312aと、このスパイン部312aから延出すると共にこれに対して概ね垂直である複数の平行で均一に離間したフィンガ312bと、を備えている。各電極312のフィンガ312bは、そのスパイン部312aから双方向に延出している。各電極312のスパイン部312aは、ビームスポット領域116の長軸に対して角度αに配置されている。隣接した対の電極312のフィンガ312bは、(異なる電極312からの)隣接した対のフィンガ312b間に一定の間隔316があるように噛み合っている。交流電源(図示せず)によって、隣接した対の電極312に同一周波数の交流電圧を印加する。交流電源314は、1つおきの電極312が同相になるように構成されている。
[00161] IDT310は、光学素子110の光学面115上に、ビームスポット領域116の長軸に対して角度αで伝搬する進行表面音響平面波を誘導するように動作可能である。表面音響波がビームスポット領域116全体にわたって発生するように、電極312は長辺110aに沿って配置されている。
[00162] 光学面115の各長辺110aに沿って吸収体330が設けられている。これらの吸収体330は、長辺110aの各々からの表面音響波の反射を防止するか又は少なくとも著しく低減させる。従ってこの実施形態では、表面音響波は進行波である。
[00163] 表面音響波の伝搬方向をビームスポット領域116の長軸に対して斜角αに配置することで、IDT310とビームスポット領域116の向こう側との間の伝搬距離を縮小する。有利な点として、この伝搬距離の縮小により、(a)歪み機構の応答時間の短縮、及び(b)表面音響波の減衰の低減(従って、光学面115上に形成される表面音響波の振幅の変動の低減)が得られる。例えば、35マイクロラジアン(2度と同等)のかすめ入射角で光学面に入射する直径10mmの入力放射ビームBinでは、ビームスポット領域116の長軸の長さは約285mmである。これは、図7a及び図8aの実施形態の場合には表面音響波の伝搬距離となる。しかしながら、図9の実施形態の場合には、α=45度で伝搬距離は約14mmである。
[00164] また、表面音響波の伝搬方向をビームスポット領域116の長軸に対して斜角に配置すると、光学素子110の遠距離場に生成される回折パターンが変わる。具体的には、これにより、所与の波長又はピッチの表面音響波について、複数の空間的に分離したサブビームB0、B+1、B−1の角度分離が変化する。実質的に、放射ビームBinが見る周期パターンのピッチは、1/コサイン(α)倍に増大する。従って、図7a及び図8aの実施形態と同じ角度分離を達成するためには、表面音響波の波長をコサイン(α)分の1に縮小しなければならない。あるいは、光学素子110と壁120のアパーチャ125との間の距離を拡大して角度分離の低減を補償することも可能である。
[00165] 代替的な実施形態において、光学素子110には、光学面115の下方に複数の閉鎖チャネルが設けられている。前記チャネルは光学面の近くにあり、各チャネルの上の光学面が、歪み機構によって歪ませることができる材料の膜から形成されるようになっている。図10、図10a、図11、図11a、及び図12に、そのような実施形態を示す。
[00166] 図10及び図10aはそれぞれ、減衰器100の光学素子110に相当し得る光学素子400の一部の部分断面図及び断面図を示す。光学素子400は、光学面410(図5の光学面115に相当し得る)と、光学面410の下方で光学素子400を貫通する複数の閉鎖チャネル420と、を備えている。各チャネル420は断面が矩形であるが、代替的に他の形状も使用できることは認められよう。各チャネル420の上方に概ね均一な厚さの膜430が設けられるように、各チャネル420は光学面410の下で概ね一定の深さに延出している。各チャネル420は図のy方向に延出している。膜430は、例えば約5μmの厚さを有し得る。代替的に異なる厚さを使用できること、並びに、この膜が形成される材料の剛性/可撓性及び歪み機構によって加えられる力/圧力に関連付けて膜430の厚さを選択できることは認められよう。チャネル420は、光学素子400内に周期構造を形成するように、相互に平行であると共に等しく離間されている。この周期構造のピッチは、各チャネル420の幅(その延出に対して垂直な方向、すなわちx方向)と、隣接した対のチャネル420間の分離距離(これもその延出に垂直な方向、すなわちx方向)との和である。各チャネル420は、約80μmの幅及び20μmの隣接チャネル420間分離を有することで、光学素子400内で約100μmのピッチの周期構造を生成し得る。他の幅、分離距離、及びピッチも代替的に使用できることは認められよう。
[00167] 前述の実施形態と同様、光学素子400の光学面410は、入力放射ビームBinによって照射される概ね楕円形のビームスポット領域を備えることができる。ビームスポット領域の短軸の長さは、入力放射ビームBinの直径に等しく、約10mmであり得る。ビームスポット領域の長軸の長さは、サイン(β)に対する入力放射ビームの直径の比であり、約260mmであり得る。光学面410は概ね矩形とすることができる。長軸は短軸よりも著しく長いので、いくつかの実施形態では、光学面410は2つの短辺及び2つの長辺を備えている。光学面410は、EUV放射を含み得る入力放射ビームBinに対して比較的反射性である材料から形成されるか、又はこの材料のコーティングが設けられ得る。適切な材料には、ルテニウム(Ru)及びモリブデン(Mo)が含まれる。
[00168] チャネル420の各々は、光学素子400の辺に対して平行に延出することができる。例えばチャネル420の各々は、光学面410の短辺に対して平行に延出し得る。
[00169] 図10及び図11にはチャネルを3つのみ示すが、これらの図は光学素子400の一部を示すだけであり、任意の数のチャネルが設けられ得ることは認められよう。ビームスポット領域が約300mmの長さであり、ピッチが100μmである実施形態では、光学素子は約3000のチャネルを含み得る。
[00170] これより図12を参照し、実質的に上記したような複数の閉鎖チャネル420を備えた光学素子400を形成する方法について記載する。光学素子400は2つの層、すなわちベース基板440及びパターン付基板450から形成することができる。
[00171] ベース基板440は、例えばシリコンウェーハを含み得る。ベース基板440は、概ね均一な厚さであり、概ね平坦な対向する上面440a及び下面440bを備えている。
[00172] パターン付基板450は、概ね平坦な上面450aと、複数の開放チャネル(図12には1つのみを示す)を含む下面450bと、有する。パターン付基板450はシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハを含み、上シリコン層452と、中央インシュレータ層454と、下シリコン層456とを備えることができる。開放チャネルは、下シリコン層456の領域をエッチングすることによって形成すればよい。例えば、下シリコン層456の領域をインシュレータ層454までエッチバックすることにより、開放チャネルの周期構造を形成できる。
[00173] いったん複数の開放チャネルが下面450bに形成されたら、パターン付基板450の下面450bをベース基板440の上面440aに接合する。ベース基板440の上面440aはパターン付基板450の下面450bの開放チャネルを閉鎖し、複数の閉鎖チャネル420を形成する。例えば接着剤、直接接合、又は陽極接合のうち任意のものを含む任意の適切な接合機構を用いればよい。
[00174] 光学素子400の光学面410の下に複数の閉鎖チャネルが形成される実施形態では、歪み機構は、光学面410の形状を制御するように複数のチャネル420の各々の上の膜430を歪ませるように動作可能である1以上のアクチュエータを備えている。図11及び図11aに、各チャネル420の上の膜430の歪みを示す。サブビームB0の(従って出力放射ビームBoutの)相対パワーを変化させるように、歪みの振幅をアクチュエータによって制御することができる。ここで、歪み機構の一部を形成し得る種々の異なるアクチュエータについて説明する。
[00175] 一実施形態において、歪み機構は水力学を利用する。この実施形態では、閉鎖チャネル420には流体が充填され、光学素子400の歪み機構は、複数の閉鎖チャネル420内の流体の圧力を制御するように動作可能な1以上のアクチュエータを備えている。
[00176] 流体は水とすればよいが、代替的に他の流体も使用可能である。一般に、閉鎖チャネル420内の流体は、流体が液相を保つよう充分に高い圧力に維持することが望ましい。これによって流体が非圧縮性であることが保証され、閉鎖チャネル420により形成される水圧システムの弾性エネルギ(流体の気相が存在する結果として生じ得る)を低減させることができる。これは、閉鎖チャネル420内の流体の圧力を流体の蒸気圧よりも高く維持することによって達成可能である。
[00177] いくつかの実施形態において、入力放射ビームBinはEUV放射を含む。従って、EUV放射の吸収を抑えるため、光学面410は典型的に真空条件下にある。
[00178] 光学素子400をリソグラフィシステムLSの周囲温度に維持することが望ましい場合がある。これは、およそ室温(22℃)であり、例として周囲温度は15〜30℃の範囲内であり得る。使用の際、光学素子400はEUV放射を吸収するため温度が上昇する可能性がある。例えば使用中に光学素子400は、入力放射ビームBinの熱負荷のために30℃以上温度が上昇することがある。従って、使用中の光学素子400の動作温度は15〜60℃の範囲内となり得る。上述のように、いくつかの実施形態では、EUV放射に対して比較的高い反射率を有する材料(例えばルテニウム又はモリブデン)のコーティングを光学面410に設けることができる。そのような実施形態では、光学素子400の動作温度は、それを超えるとそのようなEUV反射コーティングが劣化する危険がある閾値温度よりも低く維持することが望ましい場合がある。例えば、光学素子400の温度を150℃未満に維持することが望ましい場合がある。入力放射ビームが比較的高いパワー(例えば約50kW)を有する場合、及び/又は熱管理よりも光学素子の水力学的性能の方が優先される場合、光学素子400の動作温度は例えば15〜150℃の範囲内であり得る。
[00179] いくつかの実施形態では、光学素子400をリソグラフィシステムLSの周囲温度未満の温度に冷却してもよい。例えば、光学素子400を約−20度の温度に維持することができる。
[00180] 光学面410が真空条件下にある実施形態では、膜430における最小圧力差は流体の蒸気圧である。従って、流体が水である場合、膜430における最小圧力差は、約22℃の動作温度において約2kPaである。これは、比較的薄い膜430が損傷なく耐えるためには高すぎる可能性がある。従って、水よりも低い蒸気圧を有する代替的な流体を使用することが望ましい場合がある。沸騰効果を考慮する必要がないよう充分に低く、かつ、水力学的流体の漏れを蒸発によって除去できるよう充分に高い蒸気圧を有する流体を使用することが望ましい場合がある。例えば、光学素子400の典型的な動作温度で10〜100Paの範囲内の蒸気圧を有する流体が使用され得る。適切な流体には、CXHYOZの形態の炭化水素が含まれ得る。有利な点として、そのような流体は硫黄又はハロゲン等の腐食要素を含まず、従って水力学的流体の漏れにより生じる損傷のリスクが低減する。例えば、n−ドデカン(C12H26)は、約22℃の動作温度で約12Paの蒸気圧を有する。
[00181] 具体的には、アクチュエータは、各閉鎖チャネル420の上の膜430における圧力差を制御するように動作可能である。1以上の圧力センサを用いて、複数の閉鎖チャネル420内の圧力及び/又は各閉鎖チャネル420の上の膜430における圧力差を監視することができる。使用の際、光学面410は真空条件下に維持され得る。
[00182] 各閉鎖チャネル420の上の膜430における圧力差を変化させることにより、各膜430を調整可能に歪ませて、光学面410上に調整可能周期構造を形成することができる(図11及び図11aに示すように)。上述のとおり、前記周期構造のピッチは、閉鎖チャネル420の(x方向の)幅及び分離によって与えられる。各閉鎖チャネル420の上の膜430における圧力差を制御することによって、光学面410上の調整可能周期構造の振幅を制御できる。
[00183] ここで、図13a、図13b、及び図14を参照して、上述のタイプの水圧歪み機構の一例を説明する。図13a及び図13bは、光学素子400の一部の、2つの異なる垂直断面図を示す。図13bに示す図は図13aに示すラインA−Aの断面であり、図13aに示す図は図13bに示すラインB−Bの断面である。図14は、図13bに示す光学素子400の断面図の一部の拡大図である。
[00184] 複数のチャネル420はグループ別に配置され、各グループ内の全チャネル420は流体連通している。図示する実施形態において、各グループは4つのチャネル420を含むが、代替的な実施形態では各グループがより多数又は少数のチャネルを含み得ることは認められよう。チャネル420の各グループはバリア465によって隣接グループから隔離されている。
[00185] チャネルの各グループに、第1の接続チャネル462及び第2の接続チャネル463が設けられている。チャネル420の各々は、そのチャネル420が属するグループの第1の接続チャネル462と第2の接続チャネル463との間でy方向に延出している。第1の接続チャネル462は所与のグループ内の各チャネル420の第1の端部を接続し、第2の接続チャネル463は所与のグループ内の各チャネル420の第2の端部を接続する。従って、第1及び第2の接続チャネル462、463は、光学素子400の反対側に設けられている。第1及び第2の接続チャネル462、463はチャネル420に対して概ね垂直である。すなわち、第1及び第2の接続チャネル462、463はx方向に延出している。第2の接続チャネル463の各々はポンプボリューム460に流体連通している。
[00186] チャネルの各グループは、対応する第1及び第2の接続チャネル462、463並びにパンプボリューム460と共に、水力学的流体が充填される水圧回路を形成すると考えることができる。いくつかの実施形態では、各水圧回路内の水力学的流体量が固定されたままとなるように、そのような各水圧回路は閉鎖され得る。
[00187] チャネルの各グループ(及び関連付けられた水圧回路)に、単一のアクチュエータが設けられている。この実施形態では、圧電アクチュエータ461が各ポンプボリューム460に設けられ、対応する水圧回路内の流体の圧力を制御するように動作可能である。図14に示すように、圧電アクチュエータ461は、2つの電極471a、474aと、これらの電極間に配置された2つの圧電材料層472a、473aとを備えることができる。圧電アクチュエータ461は更に、2つの電極471a、474a間に電圧を印加するように動作可能である電源(図示せず)と、この電源によって印加される電圧を制御するように動作可能であるコントローラ(図示せず)と、が設けられている。2つの圧電材料層472a、473aは、電極471a及び474a間に印加される電圧によって圧電アクチュエータ461に曲げが生じるように構成されている。
[00188] 図示する圧電アクチュエータ461はバイモルフ圧電曲げアクチュエータであり、2つの圧電材料層を備えている。しかしながら、多くの他のタイプの曲げアクチュエータも可能であることは認められよう。例えば圧電アクチュエータ461は代替的に、ユニモルフ(unimorph)圧電曲げアクチュエータ(すなわち単一の圧電材料層を備えている)か、又はマルチモルフ(multimorph)(すなわち3つ以上の圧電材料層を備えている)としてもよい。
[00189] 2つの電極471a、474a間に電圧を印加すると、圧電アクチュエータ461は曲がるか又はたわむ(図14を参照のこと)。その結果として、ボリューム460、対応する第1及び第2の接続チャネル462、463、並びにチャネル420のグループ内の水力学的流体の圧力が増大する。これによって、複数のチャネルの各々の上にある膜430は上方向に歪む。
[00190] 2つの電極471a、474a間に印加される電圧を適切に制御することで、各水圧回路内の圧力を制御し、結果として光学面410の変調の振幅を制御することができる。
[00191] 図示する実施形態において、各圧電アクチュエータ460は4つのチャネル420のグループを作動させるが、上述のように、各圧電アクチュエータ460は代替的に異なる数のチャネル420を作動させてもよい。例えば各グループは4つのチャネル420よりも多いか又は少ないチャネルを含むことも可能であり、例えば単一のチャネル420だけを含んでもよい。第1及び第2の接続チャネル462、463における寄生のコンプライアンスが小さくなるので、チャネル420の比較的小さいグループが有利であり得る。従ってそのような実施形態は、より高い共振周波数で動作し、より高い制御帯域幅を可能とする。しかしながら、各圧電アクチュエータ461を個別に較正し電気的に接続する必要があるので、チャネル420の大きいグループの使用にもいくらかの利点があり得る。
[00192] 第1の接続チャネル462は任意選択的であり、省略され得ることは認められよう。
[00193] 図13bに見られるように、いくつかの実施形態では、光学素子400の本体を貫通する複数の冷却チャネル464を設けることができる。使用の際、例えば水のような適切な冷却流体を冷却チャネル464内に注入して、入力放射ビームBinからの熱を除去することができる。図示する実施形態において、冷却チャネル464は、チャネル420に概ね平行な方向(すなわちy方向)に延出している。代替的な実施形態では、冷却チャネル464は、チャネル420に概ね垂直な方向(すなわちx方向)に延出してもよい。
[00194] 使用の際、入力放射ビームBinは、1度から2度のかすめ入射角で光学面410に入射し、約1.5kWのパワーを有する場合がある。そのような構成では、約20から40Wのパワーが光学素子400によって吸収され、その後で熱として放散され得る。例えばこの放散された熱は、冷却チャネル464を流れる冷却流体によって除去することができる。しかしながら、この代わりに又はこれに加えて、水力学的流体(例えば水)を冷却媒体として用いてもよい。
[00195] これを達成するため、水圧回路を開放して、水力学的流体の水圧回路内への入力及び水圧回路からの抜き取りを可能とすることができる。例えば変更された実施形態において、バリア465を除去することでチャネル420のグループを相互接続し、第1及び第2の接続チャネル462、463を冷却/水力学的流体用の供給及び戻りラインとして使用すると共に外部の流体供給に接続することができる。チャネル420内の流体の平均圧力は、外部流体供給の特性によって規定される。圧電アクチュエータ461を用いて制御される準静的圧力を維持するのではなく、代替的な実施形態では、外部流体供給がチャネル420内に振動(又はパルス)圧力を生成するように構成され得る。圧電アクチュエータ461は、(絶対圧力でなく)振動圧力の振幅を変調するため使用可能である。圧力の振動が充分に高い周波数である(例えば>10kHz)場合、これらの振動によって生じる出力放射ビームBoutの出力パワーの変動は、リソグラフィ装置LAaからLAn内のドーズ量制御のためには充分に平均化される。
[00196] 水力学的流体が冷却のためにも用いられるそのような開放水圧システムを用いる実施形態では、チャネル420と第1及び第2の接続チャネル462、463との間の移行部は、ゼロ振幅の波節を有する定在波パターンの発生を低減させるため、音響波の著しい反射が存在しないように設計され得る。これは、インピーダンス整合及び/又は音響エネルギの吸収体の使用によって達成すればよい。
[00197] 水圧式の実施形態(歪み機構がチャネル420内の水力学的流体の圧力を用いて光学面410の形状を制御する)では、歪み機構の応答時間、すなわち光学面410上の周期構造の振幅を変化させるのに必要な最小時間は、(a)アクチュエータが引き起こす圧力変化がチャネル420内の圧力変化に影響を及ぼすのに要する時間、及び(b)アクチュエータ(複数のアクチュエータ)をチャネル420にリンクする水圧回路の力学、に依存する。アクチュエータが引き起こす圧力変化がチャネル420内の圧力変化に影響を及ぼすのに要する時間は、回路内の流体(例えば水)中の音速と、アクチュエータ(複数のアクチュエータ)及びチャネル420間の距離と、によって規定される。水圧回路の力学は、チャネル長とシステムの剛性とによって規定される。システムの剛性は、以下で説明するように、水のバルク剛性及びチャネル420のコンプライアンスによって規定される組み合わせ剛性である。
[00198] ここで、各閉鎖チャネル420の上にある膜430が一部を形成する上シリコン層452がシリコンから形成され、170GPaのヤング率及び0.064のポアソン比を有する例示的な実施形態について、歪み機構の応答時間を推定する。膜430の各々は5μmの厚さを有し、各チャネル420は80μmの幅を有し、隣接チャネル420間の分離は20μmである(すなわち、光学素子400内の周期構造は約100μmのピッチを有する)。各チャネル420は20μmの深さを有する。各チャネルの長さは光学面410の短辺の長さに依存し、短辺の長さは入力放射ビームBinの直径に依存する。この推定では、各チャネルの長さは約50mmであると仮定されるが、実際には各チャネルの長さはこれより短い場合がある(例えば約5〜20mm)。
[00199] 水圧システム内の水の剛性は、水の体積弾性率及びシステム内の水の体積に依存する。水の体積弾性率は2.2×109Paである。システムの体積は、各チャネル420の体積にチャネルの総数を乗算することで推定できる。各チャネルが、80μmの幅、20μmの深さ、及び50mmの長さを有する場合、各チャネルの体積は8×10−11m3である。3000のチャネルを備える実施形態では、システムの全体積は2.4×10−7m3である。水の剛性は、システムの体積に対する体積弾性率の比によって与えられる。すなわち、9.2×1015Pa/m3である。
[00200] 各チャネル420内の圧力が1バールの場合、光学面上の周期構造の振幅は4.2nmであり、これは各膜430の中心の約8.4nmの隆起に対応する。これは、4.2×10−13m2の余分なチャネル面積及び2.1×10−14m3のチャネル体積の変化に対応する。各チャネルの剛性は、チャネルの体積に対するチャネル内の圧力の差によって与えられる。従って、1チャネル当たりの剛性は4.8×1018Pa/m3であり、全て(3000)のチャネルの総剛性は1.6×1015Pa/m3である。
[00201] システムの組み合わせ剛性を推定するため、求積法で(quadrature)水の剛性をチャネルの剛性に加算すると、1.36×1015Pa/m3となる。ここから、システムの有効体積弾性率及び音速(acoustic velocity)は、それぞれ3.3×108Pa及び571m/sと推定できる。応答時間は、システムの音速に対する、圧力波が移動するチャネル最大長の比として推定することができる。最大チャネル長が0.2mであると仮定すると、応答時間は0.35msと推定できる。
[00202] 別の実施形態では、各閉鎖チャネル内に圧電素子が設けられている。各圧電素子に適切な電圧を印加することにより、光学面410の形状を高精度に制御することができる。
[00203] 図15a及び図15bは、各閉鎖チャネル420内に圧電アクチュエータ475が設けられている実施形態を示す。この実施形態において、膜430を形成する層は、接着層470又は直接接合を用いて下方のパターン付基板476に取り付けられている。この取り付けによって複数の閉鎖チャネル420が形成される。各チャネル420において、圧電曲げアクチュエータ475は、チャネル420内に配置されるように膜430の下面に取り付けられている。
[00204] この実施形態において、各圧電アクチュエータ475は、その上の光学面410(すなわち膜430)の形状を直接制御するように動作可能である。圧電アクチュエータ475は、2つの電極471、474と、これらの電極間に配置された2つの圧電材料層472、473とを備えることができる。圧電アクチュエータ475は更に、2つの電極471、474間に電圧を印加するように動作可能である電源(図示せず)と、この電源によって印加される電圧を制御するように動作可能であるコントローラ(図示せず)と、が設けられている。2つの圧電材料層472、473は、電極471及び474間に印加される電圧によって圧電アクチュエータ461に曲げが生じるように構成されている。
[00205] 図示する圧電アクチュエータ475はバイモルフ圧電曲げアクチュエータであり、2つの圧電材料層を備えている。しかしながら、多くの他のタイプの曲げアクチュエータも可能であることは認められよう。例えば圧電アクチュエータ475は代替的に、ユニモルフ圧電曲げアクチュエータ(すなわち単一の圧電材料層を備えている)か、又はマルチモルフ(すなわち3つ以上の圧電材料層を備えている)としてもよい。
[00206] 図16に、各チャネル420内に圧電アクチュエータを備える代替的な実施形態を示す。圧電アクチュエータ500はプッシュプル圧電素子である。制御電圧に応答して、圧電アクチュエータ500は、概ねz方向である力を膜430に加えるように構成されている。(図15a及び図15bに示すような)曲げアクチュエータに比べ、プッシュプル圧電素子500の利点は、より大きな垂直方向の力及びより高速の応答時間を生成できることである。欠点は、一般に、コンパクトな垂直方向の空間で大きい振幅を達成することが難しくなることである(z方向のチャネル420の大きさが比較的小さいので)。
[00207] 別の実施形態では、各閉鎖チャネル内に静電アクチュエータが設けられている。各静電アクチュエータに適切な電圧を印加することにより、光学面410の形状を高精度に制御することができる。
[00208] 各チャネル内の静電アクチュエータを用いる実施形態は、概ね図16に示す形態であり得るが、アクチュエータ500は、膜430に対して下方向又は上方向の力を発生させるように動作可能な静電アクチュエータである。図17に、1つのそのような静電アクチュエータの実施形態を示す。この静電アクチュエータは、可撓性の膜電極502及び第2の電極504を備えている。膜電極502は、第2の電極504に隣接すると共に第2の電極504から分離している。
[00209] 膜電極502は、各端部で、その幅にわたって(又はx方向で)ポスト503により支持されている。ポスト503は、膜電極502を光学素子400の下基板476に接続する。膜電極502は支柱501を介して膜430に接続されている。
[00210] 静電アクチュエータは更に、膜電極502及び第2の電極504間に電圧を印加するように動作可能である電源(図示せず)と、この電源によって印加される電圧を制御するように動作可能であるコントローラ(図示せず)と、が設けられている。膜電極502及び第2の電極504にこの電圧を印加することで、2つの電極502、504間に引力が生じる。この力は支柱501を介して膜430に伝達される。
[00211] コンポーネント501〜504の各々は、各チャネル420の全長にわたってy方向に延出し得る。あるいは、これらのコンポーネント501〜504の1以上を複数の部分に分割して、チャネル420の全長が複数の静電アクチュエータによって作動されるようにしてもよい。
[00212] 図10〜図17を参照して説明した光学素子400の実施形態は、図5及び図5aに示すタイプの減衰器としての使用に適したものとして記載されているが、光学素子400のこれらの実施形態が他の目的に使用できる調整可能回折格子を提供することは認められよう。例えば、そのような光学素子400は代替的にビーム分割装置として用いることができる。
[00213] 図18は、本発明の一実施形態に従ったビーム分割装置600の概略図を示す。ビーム分割装置600は、例えば図1のビームデリバリシステムBDSの一部を形成し得る。ビーム分割装置600は、光学素子610、歪み機構620、及びコントローラ630を備えている。光学素子610は、入力放射ビームBinを受光するための光学面を有する。以下で説明するように、光学面上には回折格子として機能する周期構造が設けられ、入力放射ビームBinが光学素子610から回折されて複数の角度分離した出力放射ビームB1、B2、B3を形成するようになっている。歪み機構620は、周期構造の形状を制御するように光学素子610の光学面を歪ませるように動作可能である。
[00214] コントローラ630は、入力放射ビームBinの波長の変動による出力放射ビームB1、B2、B3の相対出力パワーの変化を少なくとも部分的に補正するように、歪み機構620を用いて周期構造の形状を制御するように動作可能である。コントローラ630は、歪み機構620によって受信される制御信号655を発生させるように動作可能である。
[00215] 入力放射ビームBinの波長の変動による出力放射ビームB1、B2、B3の相対出力パワーの変化を少なくとも部分的に補正するため、ビーム分割装置600は更に、入力放射ビームBin及び出力放射ビームB1、B2、B3のうち1以上の特性の1以上を明らかにするように動作可能な1以上のセンサも備え得る。これらの特性は、歪み機構620に送信される制御信号655を発生するためコントローラ630によって用いることができる。
[00216] 例えばいくつかの実施形態において、ビーム分割装置は、入力放射ビームBinの波長を明らかにするように動作可能なセンサ641を備えることができる。センサ641は例えば干渉計を含み得る。センサ641は、入力放射ビームBinの波長を示す信号651をコントローラ630に送信するように動作可能である。
[00217] これに加えて又はこの代わりに、ビーム分割装置600は、出力放射ビームB1、B2、B3のうち1つのパワーを示す量を明らかにするように動作可能な1以上のセンサ642、643、644を備えることができる。各センサ642、643、644は、出力放射ビームB1、B2、B3のうち1つのパワーを示す信号652、653、654をコントローラ630に送信するように動作可能である。図示する実施形態において、センサ642は、出力放射ビームB1のパワーを示す量を明らかにし、それを示す信号652をコントローラ630に送信するように動作可能であり、センサ643は、出力放射ビームB2のパワーを示す量を明らかにし、それを示す信号653をコントローラ630に送信するように動作可能であり、センサ644は、出力放射ビームB3のパワーを示す量を明らかにし、それを示す信号654をコントローラ630に送信するように動作可能である。
[00218] コントローラ630は、制御信号651、652、653、654の1以上を受信すると、これらの制御信号651、652、653、654の1以上に応じて制御信号655を発生させるように動作可能である。そのような構成によって、歪み機構620は、出力放射ビームのパワーを制御するように、(a)入力放射ビームの明らかになった波長、及び/又は(b)出力放射ビームのパワーを示す量、に応じて周期構造の形状/振幅を制御するように動作可能である。
[00219] 図19a、図19b、及び図19cに、光学素子610の一実施形態を概略的に示す。光学素子610は反射面612を含み、入力放射ビームBinを受光するのに適している。入力放射ビームBinは、例えば図3の自由電子レーザFELによって出力される放射ビームBFELを含み得る。
[00220] 反射面612は概ね面内にある(図19a〜図19cのx−y面)。使用の際、光学素子610は入力放射ビームBinを受光すると共に複数の放射ビームB1、B2、B3を出力するように配置されている。
[00221] 入力放射ビームBinは、かすめ入射角βで反射面612に入射する。かすめ入射角βは、入力放射ビームBinと反射面612との間の角度である。かすめ入射角βは、例えば5度未満、例えば約2度、又はそれ未満、例えば約1度とすればよい。入力放射ビームBinは断面が概ね円形であり、従って反射面612の概ね楕円形の領域を照射し得る。この概ね楕円形の領域をビームスポット領域614と称することができる。ビームスポット領域614の寸法は、入力放射ビームBinの直径とかすめ入射角βとによって決まる。楕円形ビームスポット領域の短軸の長さは入力放射ビームBinの直径に等しく、楕円形ビームスポット領域の長軸の長さは入力放射ビームBinの直径をサイン(β)で除算したものに等しい。ビームスポット領域の向きは入力放射ビームBinの方向に依存する。図19a〜図19cに示す例示的な実施形態では、ビームスポット領域の長軸はy方向に位置合わせされ、ビームスポット領域の短軸はx方向に位置合わせされている。
[00222] 以下で説明するように、入力放射ビームBinは、反射面612に入射すると、遠距離場で出力放射ビームB1、B2、B3が空間的に分離するように回折される。これを達成するため、反射面612は平坦でなく、格子構造が設けられている。すなわち、反射面612はx−y面だけに位置するのではなく、x−y面に対して垂直な方向に多少の変化(modulation)を有する。この実施形態において、出力放射ビームB2は0次の回折ビームに相当し、出力放射ビームB1及びB3は±1次の回折ビームに相当する。他の実施形態では、ビームスポット領域614から異なる数の放射ビームB1、B2、B3が出力され得る。例えば一実施形態では、ビームスポット領域614から5つの放射ビームが出力され、これら5つの出力放射ビームは、0次、±1次、±2次の回折ビームに相当し得る。
[00223] 格子構造は、反射面612に延出する複数の溝を備えている。これらの溝は、例えばエッチング、スタンピング、又は電鋳のような任意の適切なプロセスによって形成すればよい。溝は任意のプロファイル形状を有し得る。すなわち、延出方向に対して垂直な面内での溝の断面形状は任意の形状を有し得る。
[00224] (以下で記載するような)一実施形態において、溝は複数の概ね平坦な面から形成される。図20に、そのような実施形態のx−z面内の反射面612の一部の断面を示す。
[00225] 溝615は複数のリッジ616を形成し、反射面612を3つのグループの反射面に分割する。各リッジ616の上面は第1のグループの面S1を形成し、各リッジ616の左側は第2のグループの面S2を形成し、各リッジ616の右側は第3のグループの面S3を形成する。従って、溝615は反射面612を複数のグループの反射面に分割し、各グループ内の面は実質的に平行であるが、他の各グループの面に対しては角度が異なる。すなわち、特定のグループ内の面は各々、他のグループ内の面とは異なる特定の向きを有する。
[00226] 他の溝プロファイルも代替的に使用可能であることは認められよう。例えば、代替的な実施形態において、溝のプロファイルは1以上の湾曲部を含み得る。
[00227] 格子構造は、複数の単位セル617から形成されると考えることができる。単位セル617は、溝615のプロファイル形状、すなわち、反射面612上の所与の位置における、延出方向に対して垂直な面内での溝615の断面形状とすることができる(x方向)。各単位セル617は、溝615又はリッジ616の一部分から、隣接する溝615又はリッジ616の対応する部分まで延出し得る。例えば各単位セル617は、リッジ616の上面S1、リッジ616の左側S2、及びリッジ616の右側S3を含み得る(これら3つの面は相互に隣接している)。格子構造の単位セル617のサイズ及び形状は概ね均一であり得る。格子構造の単位セル617の幅をそのピッチと呼ぶことができる。格子構造の単位セル617の幅wは、例えば約1μmとすればよい。S1面の幅w1は、例えば0.10μmから0.50μmの範囲内とすればよい。
[00228] 格子構造(すなわち溝615)に対する入力放射ビームBinの所与の方向、及び入力放射ビームBinの所与の波長について、放射ビームB1、B2、B3の方向は、格子のピッチすなわち単位セル617の幅wに依存し、単位セルの形状には依存しない。しかしながら、出力放射ビームB1、B2、B3の相対パワーは格子構造の単位セル617の形状に依存する。具体的には、分岐放射ビームの強度比は、格子構造の単位セル617のピッチの幅wに対するS1面の幅w1(x方向)の比に依存する。上面S1により形成される単位セル617の幅(x方向)の割合を、格子構造の「デューティサイクル」と呼ぶことができる。
[00229] 出力放射ビームB1、B2、B3の各々のパワーは、格子構造のデューティサイクルと入力放射ビームBinのかすめ入射角βとに依存する。一実施形態において、格子構造の単位セル617の幅wは1μmであり、入力放射ビームBinの波長は13.5nmであり、かすめ入射角βは1.1度である。そのような実施形態では、26%のデューティサイクルによって、出力放射ビームB1、B2、B3間で均等なパワー配分が得られる(すなわち、各ビームが光学素子610によって出力されるパワーの33%を受ける)。他のデューティサイクルでは、出力放射ビームB1、B2、B3間で異なるパワー配分となる。
[00230] 反射面612は、任意の適切な数の溝615を備えることができる。ビームスポット領域614における溝615の数は、格子構造の単位セル617の幅wとビームスポット領域614の短軸の長さとによって決定される。1つの例示的な実施形態では、反射面612はビームスポット領域614において1000のオーダーの溝615を備え得る。
[00231] 出力放射ビームB1、B2、B3は、遠距離場において(例えばリソグラフィツールLA1〜LAnで)、入力放射ビームBinの強度分布と実質的に同様の強度分布を有し得る。これは望ましい場合がある。
[00232] 記載した例示的な実施形態において、溝615は概ねy方向に延出している。すなわち溝615は、入力放射ビームBinの入射面(入来する放射ビームBinと反射面612に対する法線すなわちz方向とを含む面)に対して概ね平行である。溝に対して垂直な方向(すなわちx方向)は入力放射ビームBinの入射面内でないので、格子によって円錐回折が生じ、出力放射ビームB1、B2、B3は円錐上にある。代替的な実施形態では、溝は入力放射ビームBinの伝搬方向に対して概ね垂直に延出して、出力放射ビームB1、B2、B3が面内にある場合がある。
[00233] ビーム分割装置600は、放射ビームのための光学システムの一部を形成し得る。例えばビーム分割装置600は、リソグラフィシステムLS向けのビームデリバリシステムBDSの一部を形成することができ、1以上の放射源SOから1以上のリソグラフィ装置LAa〜LAnへ放射を送出できる。
[00234] 光学素子610は入力放射ビームBinを3つの分岐放射ビームに分割するように構成されているが、放射ビームを異なる数の分岐放射ビームに分割する格子を設けてもよいことは認められよう。一般に、放射ビームを2つ以上の分岐放射ビームに分割する格子を設けることができる。
[00235] ビーム分割装置600は、入力放射ビームBinを複数の出力放射ビームB1、B2、B3に分割するための便利な機構を提供する。出力放射ビームB1、B2、B3の角度分離は、周期格子構造に対する入力放射ビームBinの向き(例えばかすめ入射角)、周期構造のピッチ、及び入力放射ビームBinの波長に依存する。更に、出力放射ビームB1、B2、B3の相対パワーは、周期構造の形状及び入力放射ビームBinの波長に依存する。従って、出力放射ビームB1、B2、B3の角度分離及び出力放射ビームB1、B2、B3の相対パワーは双方とも入力放射ビームBinの波長に依存する。
[00236] 従って、静的格子構造によって得られるビーム分割装置では、出力のパワー及び方向が入力放射ビームBinの波長の変動の影響を受けやすい。しかしながら、自由電子レーザFEL(図3を参照のこと)が出力する放射ビームBFELの波長は、時間と共に変動することが予想される。入力放射ビームBinの波長が変動すると、出射する回折次数の角度(0次を除く)及び格子から出射する異なる次数のパワーが双方とも変化する。
[00237] 出力放射ビームB1、B2、B3の向かう方向の変動は、比較的小さく、ビーム分割装置600の下流にある光学部品に対して問題とならない可能性がある。しかしながら、ビーム分割装置600が図1のビームデリバリシステムBDSで用いられる実施形態では、出力放射ビームB1、B2、B3のパワーが変動すると、結果として、リソグラフィツールLAa〜LAnに供給される分岐放射ビームBa〜Bnのパワーが変動する。これは次いで、基板Wの様々な部分に送出される放射ドーズ量の変動を招く。これは、基板W上に形成される画像にエラーを引き起こす可能性があり、特に、リソグラフィツールのクリティカルディメンションの均一性に影響を及ぼす恐れがある。0.1%のオーダーのドーズ量安定性を得るためには、0.01%よりも良好な波長安定性が要求され得ると推定される。自由電子レーザの出力放射ビームBFELでは、そのような波長安定性を達成することは不可能である場合がある。
[00238] 図21a及び図21bに示すように、ビーム分割装置600は2つのアクチュエータ661、662を備えている。アクチュエータ661、662の各々は、光学素子610の対向するエッジに隣接して設けられている。2つのアクチュエータ661、662の各々は、格子構造の溝615の延出方向(y方向)に垂直な方向(x方向)に概ね向かう力を光学素子610に加えるように動作可能である。同時に、2つのアクチュエータ661、662は、格子構造の溝615の方向(y方向)に垂直な方向(x方向)に光学面612を圧縮又は膨張させるように動作可能である。この結果として、アクチュエータ661、662は周期格子構造のピッチを制御するように動作可能である。
[00239] アクチュエータ661、662を用いた適切な作動によって、入力放射ビームBinの波長の変動による出力放射ビームB1、B2、B3の相対出力パワーの変化を少なくとも部分的に補正するように周期構造の形状を制御することができる。同時に、2つのアクチュエータ661、662は、周期構造の形状を制御するように動作可能な歪み機構であると考えることができる。2つのアクチュエータは、図18の歪み機構620の具体的な例を与える。
[00240] 格子構造の平均ピッチ又は公称ピッチは約1000nmとすることができる。反射面612の外側寸法は、300mm(y方向)及び20mm(x方向)のオーダーとすることができる。アクチュエータ661、662は、周期格子構造の公称ピッチをほぼ±0.1%変動させるように動作可能である。幅(又はx方向の光学素子610の大きさ)が20mmである実施形態において、これは、アクチュエータ661、662が光学素子610の幅を±20μm変動させるように動作可能であることを示唆している。そのような作動範囲は実現可能である。例えば、2つのアクチュエータの各々は圧電アクチュエータを含み得る。
[00241] 更に、光学素子610のこの作動は、例えば10kHzまでの帯域幅のような比較的高い帯域幅で達成可能である。基板W上のターゲット位置は、約1ms以上であり得る露光時間期間中、EUV放射を受光することができる。いくつかの実施形態において、露光時間は数十ミリ秒のオーダーとすることができ、例えば50〜100msの範囲内である。10kHz以上の周波数で動作するビーム分割装置600を用いたフィードバックベースの制御ループは、1msで送出される露光ドーズ量をある程度制御する。従って、ビーム分割装置600を用いて、基板Wの異なる部分に与えられる放射ドーズ量の変動を少なくとも部分的に補正することができる。ビーム分割装置600を用いて、広い周波数帯内でドーズ量の安定性を達成できる。具体的には、ビーム分割装置600は、100Hzから10kHzの周波数範囲において放射波長の変動によって引き起こされるドーズ量変動を少なくとも部分的に補正するように動作可能である。より高い周波数の変動については、露光時間中のスキャン平均化によって、いかなるドーズ量エラーも低減されることに留意すべきである。
[00242] ビーム分割装置600は、複数の出力放射ビームB1、B2、B3の相対パワーが経時的な入力放射ビームの波長のドリフトによって実質的に影響を受けないままとすることができる機構を提供する。更に、ビーム分割装置600は、複数の出力放射ビームB1、B2、B3の方向が経時的な入力放射ビームの波長のドリフトによって実質的に影響を受けないままとすることができる機構を提供する。
[00243] 光学素子610は、例えばシリコンウェーハの結晶面に沿った異方性エッチングによってシリコンから形成することができる。例えば、上面S1は(100)結晶面に沿って形成し、面S2、S3は(111)及び(−111)結晶面に沿って形成すればよい。この場合、溝の底部の角度618は約70.5度となり、溝615及びリッジ616は(01−1)方向に沿って延出している。上面S1を記述する(hkl)数に応じて様々なレイアウトが可能であることは認められよう。
[00244] 上面S1が(100)結晶面に沿って形成され、面S2、S3が(111)及び(−111)結晶面に沿って形成されている格子は、複数の(例えば3つの)出力放射ビームを形成する。出力放射ビームの数は、存在する回折次数に依存する。存在する回折次数は、入力放射ビームBinのかすめ入射角に依存する。かすめ入射角が大きくなると、より多くの回折次数が可能となるからである。
[00245] 光学素子610にシリコンを用いる利点は、約123Kでの動作によって動作中の熱膨張が制限され得ることである。この温度では、シリコンの熱伝導率は600W/m/K以上のオーダーであり、これは室温における熱伝導率の4倍であり、銅(Cu)の熱伝導率よりも約50%大きい。従って、著しい熱負荷にもかかわらず、光学素子の膨張が小さく、その設計上の構造寸法が維持される範囲内に光学素子の温度を保ちながら、比較的大きい熱負荷に耐えることができる。
[00246] 上述のことから、反射性格子構造を提供する光学素子が複数の適切な方法のいずれかで製造され得ることは明らかであろう。一実施形態では、実質的に原子的に平坦な表面を有するリッジを設けるため、複数のエッチャントを用いてシリコンウェーハを処理することによって格子を生成すればよい。例えば水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、及びフッ化アンモニウム(NH4F)等のエッチャントを使用できる。適切な格子は上述のように製造され得る。その後、金属ガラスにおける熱可塑性成形等のプロセスを用いて、又は例えばスタンピングによって、格子をコピーすればよい。
[00247] エッチング表面はシリコンであり得ることを記載したが、他の材料も使用可能であることは理解されよう。格子を設けるため異方性エッチングを行うことができる他の材料の例には、ゲルマニウム(Ge)、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコン−ゲルマニウム(SiGe)、リン化インジウム(InP)、及びヒ化インジウム(InAs)が含まれる。しかしながら一般には、任意の適切な(結晶)材料が使用され得る。
[00248] 光学素子610は、(EUV放射に対して)より反射性の高い(より吸収性の低い)材料のコーティングを設けることができる。例えば、ミラーにルテニウム(Ru)又はモリブデン(Mo)のコーティングを設ければよい。これは例えば約50nmの厚さを有し得る。モリブデン及びルテニウムは双方とも、波長が13.5nmの放射に対して比較的高いかすめ入射反射率を有する。他の放射波長では他のコーティングを選択すればよい。しかしながら一般には、電子密度が充分に高い透明材料によって良好なかすめ入射反射が与えられる。重元素金属はそのような材料の例である。更に、EUV放射誘導プラズマの発生等、ビームデリバリシステムBDS内に存在すると考えられる条件に耐性を持つように材料を選択することも可能である。
[00249] いくつかの実施形態では、光学素子(平坦な又はエッチングしたシリコン)上に、Mo及びRuの混合物等のアモルファス金属(又は金属ガラス)を堆積して、反射性コーティングを設けることができる。金属ガラスのアモルファス構造を用いて、所望の波長に対して高い反射率を有する平滑な表面を提供できる。
[00250] ジルコニウム(Zr)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)のような他の任意の適切な材料も使用可能であることは認められよう。
[00251] 反射性コーティングを設ける場合、この反射性コーティングに更に別のコーティングを塗布してもよい。例えば、存在すると考えられる条件に対する反射性コーティングの安定性及び耐性を増大させるために、酸化物、窒化物、カーバイド等を塗布することができる。
[00252] 反射性コーティングを設ける場合、エッチングした材料(例えばSi)と反射性コーティングとの間に1以上のインタフェース層を設けることで、表面粗さを低減すると共に熱伝導率を上昇させてもよい。例えば、グラフェンのインタフェース層を設けることができる。
[00253] 図には示していないが、上述したいずれかの又は全ての光学素子の反対側(すなわち入力放射ビームBinを受光しない側)に冷却チャネルを設けることも可能である。そのような冷却チャネルは、水等の液体冷却剤又は2相の液体/気体冷却剤を受容するように配置することができる。
[00254] 本明細書において、物体が、放射ビームを受光すると共に1以上の出力放射ビームを形成するように放射ビームを散乱させるよう構成されているものとして記載される場合、「散乱させる」という言葉は、反射又は回折(反射性又は透過性のいずれか)を含むことが意図されることは認められよう。
[00255] 光学面のビームスポット領域は、入力放射ビームが入射する光学面の領域を意味するものとして理解される。例えば、斜角で光学面に入射する概ね円形の入力放射ビームは、光学面の概ね楕円形の領域を照射する。そのような楕円形のビームスポット領域は短軸及び長軸を有する。入力放射ビームが明瞭に規定されたエッジを有しない場合があること、例えば入力放射ビームがガウス分布状の(Gaussian−like)強度プロファイルを有し得ることは認められよう。そのような実施形態において、入力放射ビームのエッジは、強度が所定のカットオフ値未満に低下するポイントとして規定され得る。あるいは、回転対称の強度プロファイルにおいて、入力放射ビームのエッジは、放射ビームのパワーの所定の割合(例えば95%)を含む円として規定され得る。これに応じてビームスポット領域を規定すればよい。
[00256] 上述の実施形態では、光学素子の光学面上に調整可能周期構造が形成される。これによって、それぞれが異なる回折次数に相当する複数のサブビームが光学面から射出する。上述の実施形態において、光学素子は減衰器の一部を形成する。サブビームの1つが減衰器の出力放射ビームを形成し、周期構造の振幅を変動させることで前記出力放射ビームのパワーを変動させ得る。代替的な実施形態において、光学素子はビーム分割装置の一部を形成することができる。例えば、光学素子はビームデリバリシステムBDSの一部を形成し、メイン放射ビームを複数のサブビームに分割し得る。光学素子から出射するサブビームの各々が、ビーム分割装置の分岐放射ビームを形成することができる。これは、例えば壁120に2つ以上のアパーチャを設けることによって達成できる。
[00257] 減衰器15a〜15nは、上述の実施形態の1以上を単独で又は他の減衰器と組み合わせて備えることができる。他の減衰器は、異なる時間尺度で動作するフィードバックループの一部を形成し得る。例えば、上述した減衰器100は、リアルタイムで(すなわち基板の露光中に)リソグラフィ装置内の基板Wに送出される放射のドーズ量制御を行うように動作可能であり得る。より低速の減衰器を用いて、基板によって受光される放射ドーズ量の更に長い時間尺度のドリフトに対処する(account for)ことができる。例えば、ガスチャンバベースの減衰器を用いて、基板によって受光される放射ドーズ量の更に長い時間尺度のドリフトに対処できる。
[00258] いくつかの実施形態では、コントローラが、放射源SOから発したEUV放射のパワーを制御することができる。センサ装置が、放射源SOにより出力されるEUV放射ビームのパワー、又はEUV放射ビームのパワーに相関させたパラメータを監視することができる。コントローラは、センサ装置の出力に基づいて放射源SOを調整すればよい。このようにフィードバックベースの制御ループを設けることができる。センサ装置は、リソグラフィシステムLS内の任意の適切な位置に設ければよい。
[00259] 図1に関連付けて、各分岐放射ビームに対してそれぞれ減衰器15a〜15nを設けることを記載したが、他の実施形態では、分岐放射ビームの1つ又はいくつかに対してのみ減衰器を設けてもよいことは認められよう。更に、複数の分岐放射ビームに対して単一の減衰器を設けてもよい。例えば、減衰器15a〜15nはビームデリバリシステムBDSの外側に配置されるものとして示すが、他の実施形態では、本明細書に記載するような減衰器は、複数の分岐放射ビームを減衰させるようにビームデリバリシステムBDS内に配置することも可能である。例えば、分岐放射ビームBb〜Bnの全てを共に減衰させるため、第1の分岐放射ビームBaの分岐の直後に減衰器を設ければよい。減衰器の任意の組み合わせ又は構成を設けることができる。
[00260] 一般的に上述したような減衰器は、リソグラフィシステム内で基板Wの前段のどこか他の場所に位置決めすることも可能である。例えば、図2を参照すると、減衰器は照明システムIL内に位置決めしてもよい。
[00261] 本発明の実施形態について単一の自由電子レーザFELの文脈で記載したが、任意の数の自由電子レーザFELを使用可能であることは認められよう。例えば2つの自由電子レーザを、複数のリソグラフィ装置にEUV放射を与えるように配置してもよい。これは、ある程度の冗長性を織り込んでいる。これによって、一方の自由電子レーザが修理中であるか又は保守を受けている時に他方の自由電子レーザを使用することが可能となる。
[00262] リソグラフィシステムLSは任意の数のリソグラフィ装置を含むことができる。リソグラフィシステムLSを形成するリソグラフィ装置の数は例えば、自由電子レーザから出力される放射量と、ビームデリバリシステムBDSで失われる放射量と、に依存し得る。これに加えて又はこの代わりに、リソグラフィシステムLSを形成するリソグラフィ装置の数は、1つのリソグラフィシステムLSのレイアウト及び/又は複数のリソグラフィシステムLSのレイアウトに依存し得る。
[00263] また、リソグラフィシステムLSの実施形態は、1以上のマスクインスペクション装置MIA及び/又は1以上のAIMS(Aerial Inspection Measurement System)を含むことができる。いくつかの実施形態において、リソグラフィシステムLSは、ある程度の冗長性を織り込むために2つのマスクインスペクション装置を含み得る。これによって、一方のマスクインスペクション装置が修理中であるか又は保守を受けている時に他方のマスクインスペクション装置の使用を可能とする。このため、一方のマスクインスペクション装置は常に使用に供することができる。マスクインスペクション装置は、リソグラフィ装置よりも低パワーの放射ビームを用い得る。更に、本明細書に記載したタイプの自由電子レーザFELを用いて発生させた放射は、リソグラフィ又はリソグラフィ関連の用途以外の用途に使用可能であることは認められよう。
[00264] 「相対論的電子」という言葉は、相対論的エネルギを有する電子を意味するものと解釈するべきである。電子は、その運動エネルギが静止質量エネルギ(自然単位で511keV)以上に相当する場合に相対論的エネルギを有すると見なすことができる。実際には、自由電子レーザの一部を形成する粒子加速器は、静止質量エネルギよりはるかに大きいエネルギに電子を加速させることができる。例えば粒子加速器は、10MeV超、100MeV超、1GeV超、又はそれ以上のエネルギに電子を加速させ得る。
[00265] 放射源SOは、EUV放射ビームを生成するように動作可能である1以上の自由電子レーザFELを備えることができる。しかしながら他の実施形態では、放射源SOは放射を発生させる他の手段を備え得ることは認められよう。例えば放射源SOは、1以上の「レーザ生成プラズマ(LPP)」源を備えることができる。実際、いくつかの実施形態において放射源SOは、適切な高パワーの放射ビームを提供するように動作可能である任意の手段を利用し得ることは理解されよう。
[00266] 本発明の実施形態について、EUV放射ビームを出力する自由電子レーザFELの文脈で説明した。しかしながら自由電子レーザFELは、任意の波長を有する放射を出力するように構成可能である。従って、本発明のいくつかの実施形態は、EUV放射ビームでない放射ビームを出力する自由電子レーザを含み得る。
[00267] 「かすめ入射角」という言葉は、入射放射ビームの伝搬方向とこれが入射する反射面との間の角度を指すことは認められよう。この角度は入射角の余角である。すなわち、かすめ入射角と入射角との和は直角である。
[00268] 「EUV放射」という言葉は、4〜20nmの範囲内、例えば13〜14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含すると考えることができる。EUV放射は、10nm未満、例えば6.7nm又は6.8nmのような4〜10nmの範囲内の波長を有し得る。
[00269] リソグラフィ装置LAa〜LAnはICの製造に用いることができる。あるいは、本明細書に記載したリソグラフィ装置LAa〜LAnは他の用途を有し得る。可能である他の用途には、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造が含まれる。
[00270] 本発明の特定の実施形態について記載したが、記載とは異なる方法でも本発明を実施可能であることは認められよう。上述の記載は限定でなく例示を意図している。従って、以下に述べる特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、記載したような本発明に変更を行い得ることが当業者には認められよう。