A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。なお、燃料電池スタック100は、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックに相当する。
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。なお、図2および図3には、一部の断面が拡大して示されている。
図4および図5に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレス等のCr(クロム)を含む金属により形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。単セル110は、特許請求の範囲における電気化学反応単セルに相当する。
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、少なくともZrを含んでおり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、CaSZ(カルシア安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。なお、空気極114の表面形状の詳細については後述する。
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルともいう。
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレス等のCr(クロム)を含む金属により形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形状の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形状の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。集電体要素135は、特許請求の範囲における導電性部材に相当する。
図4および図5に示すように、空気極側集電体134の表面は、導電性のコート136によって覆われている。コート136は、例えば、スピネル型酸化物(例えば、Mn1.5Co1.5O4やMnCo2O4、ZnCo2O4、ZnMn2O4、ZnMnCoO4、CuMn2O4)により形成されている。空気極側集電体134の表面へのコート136の形成は、例えば、スプレーコート、インクジェット印刷、スピンコート、ディップコート、めっき、スパッタリング、溶射等の周知の方法で実行される。なお、上述したように、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されているため、実際には、空気極側集電体134の表面の内、インターコネクタ150との境界面はコート136により覆われていない一方、インターコネクタ150の表面の内、少なくとも酸化剤ガスの流路に面する表面(すなわち、インターコネクタ150における空気極114側の表面や酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108に面した表面等)はコート136により覆われている。また、空気極側集電体134に対する熱処理によって酸化クロムの被膜ができることがあるが、その場合には、コート136は、当該被膜ではなく、当該被膜が形成された空気極側集電体134を覆うように形成された層である。以下の説明では、特記しない限り、空気極側集電体134(または集電体要素135)は「コート136に覆われた空気極側集電体134(または集電体要素135)」を意味する。
空気極114と空気極側集電体134とは、導電性を有する多孔質の接合層138により接合されている。接合層138は、例えば、Zn、Mn、Co、Cuの少なくとも1つを含む材料、より具体的には、スピネル型酸化物(例えば、Mn1.5Co1.5O4やMnCo2O4、ZnCo2O4、ZnMn2O4、ZnMnCoO4、CuMn2O4)により形成されている。接合層138は、例えば、接合層用のペーストが空気極114の表面の内、空気極側集電体134を構成する各集電体要素135の先端部と対向する部分に印刷され、各集電体要素135の先端部がペーストに押し付けられた状態で所定の条件で焼成されることにより形成される。接合層138により、空気極114と空気極側集電体134とが電気的に接続される。先に、空気極側集電体134は空気極114の表面と接触していると説明したが、正確には、(コート136に覆われた)空気極側集電体134と空気極114との間には接合層138が介在している。なお、本実施形態では、コート136と接合層138とは、主成分元素が互いに同一であるスピネル型酸化物により形成されている。ここでいう主成分元素とは、スピネル型酸化物を構成する金属元素のことをいう。また、スピネル型酸化物の同定は、X線回折と元素分析を行うことによって実現される。
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134(およびコート136、接合層138)を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、空気極側集電体134の表面を覆うコート136によって、空気極側集電体134の表面からCrが放出されて拡散する「Cr拡散」と呼ばれる現象が発生することが抑制される。
A−3.空気極114の詳細構成:
図4および図5に示すように、空気極114における電解質層112とは反対側の表面(上面115)は、平坦面部分115Aと、傾斜面部分115Bと、突出面部分115Cとを含む。平坦面部分115Aは、Z方向視で上面115の中央部に位置する略矩形状の部分である。また、平坦面部分115Aは、上下方向(Z軸方向)に略直交する平面部分であり、換言すれば、平坦面部分115Aは、電解質層112の上面および各集電体要素135の先端面(下面)と略平行な平面部分である。傾斜面部分115Bは、Z方向視で平坦面部分115Aの全周を囲むように配置された環状の部分である。傾斜面部分115Bは、上面115の中央部側(図4および図5の拡大図において紙面右側)から周縁部側(図4および図5の拡大図において紙面左側)に向かうに連れて電解質層112に近づくように傾斜する部分である。突出面部分115Cは、Z方向視で傾斜面部分115Bの全周を囲むように配置された環状の部分である。突出面部分115Cは、傾斜面部分115Bに対して上面115の周縁部側に配置され、傾斜面部分115Bを含む第1の仮想平面V1よりも電解質層112とは反対側に突出する部分である。空気極114の上面115は、特許請求の範囲における第1の表面に相当する。なお、本実施形態では、平坦面部分115Aと傾斜面部分115Bとは隣接しており、傾斜面部分115Bと突出面部分115Cとは隣接している。第1の仮想平面V1は、特許請求の範囲における仮想平面に相当する。
図4の拡大図に示すように、突出面部分115Cにおける上下方向の最大の厚さH1(以下、単に「突出面部分115Cの厚さH1」という)は、空気極114の上面115の中央部(平坦面部分115A)における上下方向の最大の厚さH2(以下、単に「平坦面部分115Aの厚さH2」という)より小さい。換言すれば、上下方向において、突出面部分115Cの全体は、空気極114の上面115の中央部(平坦面部分115A)を含み、かつ、上下方向に直交する第2の仮想平面V2より電解質層112側に位置している。
また、突出面部分115Cの内、上面115の中央部側に位置する表面部分を、内側面部分115C1といい、上面115の周縁部側に位置する表面部分を、外側面部分115C2という。外側面部分115C2について上下方向に直交する第3の仮想平面V3に対する傾斜角度(例えば、5度以上、20度以下 以下、「突出面部分115Cの外側傾斜角度θ1」という)は、傾斜面部分115Bについて第3の仮想平面V3に対する傾斜角度(例えば、0.02度以上、0.10度以下 以下、「傾斜面部分115Bの傾斜角度θ2」という)より大きい。また、突出面部分115Cの外側傾斜角度θ1は、内側面部分115C1について第3の仮想平面V3に対する傾斜角度(例えば、0.02度以上、5度以下 以下、「突出面部分115Cの内側傾斜角度θ3」という)より大きい。なお、外側傾斜角度θ1は、傾斜角度θ2および内側傾斜角度θ3より大きく、かつ、内側傾斜角度θ3は、傾斜角度θ2より大きいことが好ましい。これにより、燃料電池スタック100の発電量を向上させることができる。第3の仮想平面V3は、特許請求の範囲における第1の平面に相当し、突出面部分115Cの外側傾斜角度θ1は、特許請求の範囲における第1の傾斜角度に相当し、傾斜面部分115Bの傾斜角度θ2は、特許請求の範囲における第2の傾斜角度に相当し、突出面部分115Cの内側傾斜角度θ3は、特許請求の範囲における第3の傾斜角度に相当する。
また、図4および図5に示すように、集電体要素135は、インターコネクタ150から空気極114の上面115に向けて突出した凸部である。集電体要素135は、空気極114の上面115に対向し、かつ、上下方向視で、突出面部分115Cと重なる位置に配置されている。さらに、上下方向視で、突出面部分115Cの内、電解質層112から最も離れた先端部位115C3と集電体要素135とは重なっていない(異なる位置に配置されている)。具体的には、上下方向視で、突出面部分115Cの先端部位115C3は、上面115の中央部を中心とする径方向において、集電体要素135より外側に配置されている。
A−4.燃料電池スタック100の製造方法:
上述した構成の燃料電池スタック100の製造方法は、例えば以下の通りである。
(電解質層112と燃料極116との積層体の形成)
はじめに、電解質層112と燃料極116との積層体を形成する。具体的には、YSZ粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるジオクチルフタレート(DOP)と、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、電解質層用グリーンシートを得る。また、NiOの粉末とYSZの粉末との混合粉末に対して、造孔材である有機ビーズと、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、燃料極用グリーンシートを得る。電解質層用グリーンシートと燃料極用グリーンシートとを貼り付けて乾燥させ、例えば1400℃にて焼成を行うことによって、電解質層112と燃料極116との積層体を得る。
(空気極114の形成)
次に、空気極114を形成する。はじめに、LSCF粉末と、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを混合し、粘度を調整して、空気極114を形成するための材料である空気極用ペーストを調製する。
次に、準備された空気極用ペーストを、電解質層112と燃料極116との積層体における電解質層112側の表面に例えばスクリーン印刷によって塗布する。この際、例えば、空気極用ペーストの粘度、スクリーン印刷時においてスクリーン版を積層体から離すスピード、スクリーン印刷後の空気極用ペーストの放置時間等を調整することにより、突出面部分115Cの突出高さ、突出面部分115Cの外側傾斜角度θ1や内側傾斜角度θ3を調整することができる。空気極用ペーストが塗布された積層体を、乾燥させた後、所定の焼成温度で焼成する。これにより、上述した形状の空気極114が成形され、単セル110を作成することができる。また、まず、突出面部分115Cに相当する部分をスクリーン印刷によって形成し、その後、空気極用ペーストを、電解質層112と燃料極116との積層体にスクリーン印刷することによって、周縁部まで傾斜し、突出面部分115Cが無い空気極を形成することにより、上述した形状の空気極114が成形されるとしてもよい。なお、スクリーンマスクの乳剤厚みや、突出部分用のペーストと空気極用のペーストとの粘度をそれぞれ調整することにより、突出高さや傾斜角度を調整することができる。
上述の方法により複数の単セル110を作製し、複数の単セル110を、空気極側集電体134や燃料極側集電体144、インターコネクタ150等の集電部材を間に介してZ軸方向に並べて配置し、ボルト22により締結することにより、上述した燃料電池スタック100が製造される。
A−5.本実施形態の効果:
図6は、本実施形態および比較例1,2における空気極側集電体134(134X,134Y)および空気極114(114X,114Y)のXZ断面構成を示す説明図である。また、空気極側集電体134(134X,134Y)と空気極114(114X,114Y)とが対向する対向領域のうち、空気極側集電体134(134X,134Y)と空気極114(114X,114Y)とが接触する部分は、空気極114と集電体要素135との導通が確保される導通確保部分E1(電気化学反応の際に電流が流れる領域)である。具体的には、図5の拡大図に示すように、導通確保部分E1は、空気極側集電体134における集電体要素135と空気極114とが接合層138を介して接合された部分である。また、対向領域のうち、空気極側集電体134(134X,134Y)と空気極114(114X,114Y)とが接触しない部分は、電流は流れないが、酸化剤ガスOGに触れるガス接触部分E2(電気化学反応に寄与する領域)である。具体的には、図5の拡大図に示すように、ガス接触領域E2は、空気極側集電体134における集電体要素135が無い部分と空気極114とが空間を介して対向している部分である。
ここで、比較例1では、空気極114Xの上面115Xは、平坦面部分115Aおよび傾斜面部分115Bを含むが、突出面部分115Cを含まない周縁部傾斜の形状である。このため、上面115の周縁部の強度が比較的に低い。また、上下方向視で、平坦面部分115Aは、接合層138Xを介して集電体要素135と重なっているが、傾斜面部分115Bは、集電体要素135と重なっていない。すなわち、空気極114の上面115の面積に対して、集電体要素135の空気極114に対向する部分の面積(集電面積)が小さい。このため、例えば、導通確保部分E1の面積を所定面積だけ確保しようとすると、ガス接触領域E2が狭くなるため、比較例1の構成を有する燃料電池スタックの発電量は比較的に少ない。
比較例2では、空気極114Yの上面115Yは、上記比較例1と同様、周縁部傾斜の形状である。しかし、比較例2では、比較例1とは異なり、上下方向視で、平坦面部分115Aおよび傾斜面部分115Bの両方が、集電体要素135と重なっている。このため、比較例1に比べて、空気極114Yと集電体要素135との対向領域の面積が大きくなることによって、比較例2の構成を有する燃料電池スタックの発電量が大きくなることが期待される。しかし、比較例2でも、次の理由により、比較例2の構成を有する燃料電池スタックの発電量が低下するおそれがある。製造段階において、空気極114Yと集電体要素135との間に接合層138Yを形成するための導電性の接合剤が、空気極114Yの上面115Yに塗布される。しかし、塗布された接合剤は、傾斜面部分115Bに沿って上面115Yの周縁部側に流動して上面115Yから流れ落ちるおそれがある。塗布された接合剤が上面115Yから流れ落ちると、傾斜面部分115Bと集電体要素135との間の接合剤が不足して接合層138Yが十分に形成されないことによって、傾斜面部分115Bと集電体要素135とが対向する領域が導通確保部分E1として有効に利用されない可能性がある。また、流れ落ちた接合剤によって、空気極114Yとセパレータ120とが導通して空気極114Yと燃料極116とがショートする可能性がある。これらの理由により、比較例2の構成を有する燃料電池スタックの発電量が低下するおそれがある。
これに対して、本実施形態の燃料電池スタック100では、空気極114の上面115は、傾斜面部分115Bと突出面部分115Cとを含む。突出面部分115Cは、傾斜面部分115Bを含む第1の仮想平面V1よりも電解質層112側に突出している。このため、比較例1,2のような周縁部傾斜の形状に比べて、空気極114の周縁部の厚さが大きくなる分だけ、空気極114の周縁部の強度低下を抑制することができる。また、単セル110の製造段階において、空気極114と集電体要素135との間に接合層138を形成するための導電性の接合剤が、空気極114の上面115に塗布される。塗布された接合剤は、傾斜面部分115Bに沿って上面115の周縁部側に流動し得る。しかし、接合剤の流動は、突出面部分115Cによって抑制されることによって、十分な量の接合剤が空気極114の上面115上に確保される。そのため、接合剤の硬化後において、空気極114と集電体要素135とを十分に接合させるとともに十分に導通させることができる。すなわち、空気極114と集電体要素135との接合不良に起因して、単セル110および燃料電池スタック100の性能が低下することを抑制することができる。例えば、図6に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100では、比較例1に比べて、対向領域の面積が広いため、導通確保部分E1の面積を所定面積だけ確保しつつ、ガス接触領域E2を広く確保できるため、燃料電池スタック100の発電量を向上させることができる。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、空気極114の上面115の周縁部側でも導通確保部分E1を確保できるため、導通確保部分E1の面積を所定面積だけ確保しつつ、比較例2に比べて、ガス接触領域E2を広く確保できる。
また、突出面部分115Cの厚さH1は、平坦面部分115Aの厚さH2より小さい。これにより、突出面部分115Cが空気極114の上面115の中央部より電解質層112とは反対側に突出しないため、突出面部分115Cが外力(集電体要素135からの押圧力)を受けて破損することを抑制することができる。また、上下方向において、突出面部分115Cの全体は、空気極114の上面115の中央部(平坦面部分115A)を含み、かつ、上下方向に直交する第2の仮想平面V2より電解質層112側に位置している。このため、突出面部分115Cが各ガス(OG,OOG)の流れの障害になることが抑制することができる。例えば、燃料極116内において、酸化剤ガス供給連通孔132から供給された酸化剤ガスOGを、空気極114の上面115の全体に円滑に流すことができる。
また、突出面部分115Cの外側面部分115C2の勾配(外側傾斜角度θ1)は、傾斜面部分115Bの勾配(傾斜角度θ2)より大きい。これにより、外側面部分115C2の勾配が、傾斜面部分115Bの勾配より小さい場合に比べて、空気極114と集電体要素135との導通確保部分の面積を広く確保することができる。また、傾斜面部分115Bの勾配より小さい分だけ、傾斜面部分115Bを介して、上面115の中央部側と周縁部側との間でガスを円滑に流すことができる。
また、突出面部分115Cの外側面部分115C2の勾配(外側傾斜角度θ1)は、突出面部分115Cの内側面部分115C1の勾配(内側傾斜角度θ3)より大きい。これにより、外側面部分115C2の勾配が、内側面部分115C1の勾配より小さい場合に比べて、空気極114と集電体要素135との導通確保部分の面積を広く確保することができる。空気極114の周縁部の厚さが大きくなる分だけ、空気極114の周縁部の強度低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、集電体要素135は、空気極114の上面115に対向し、かつ、上下方向視で、突出面部分115Cと重なる位置に配置されている。このため、上面115の周縁部側も空気極114と集電体要素135との導通確保部分として利用することができる。さらに、上下方向視で、突出面部分115Cの先端部位115C3は、上面115の中央部を中心とする径方向において、集電体要素135より外側に配置されている。これにより、突出面部分115Cの先端部位115C3に集電体要素135からの加重が直接かかることが抑制されるため、突出面部分115Cの破損を抑制することができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態では、傾斜面部分115Bおよび突出面部分115Cは、空気極114の上面115の周縁部の全周にわたって形成されているとしたが、これに限定されず、傾斜面部分115Bおよび突出面部分115Cの少なくとも一方は、空気極114の上面115の周縁部の一部だけに形成されているとしてもよい。例えば、突出面部分115Cは、空気極114の上面115の周縁部の内、酸化剤ガス供給連通孔132に対向する側の辺と燃料ガス供給連通孔142に対向する側の辺との少なくとも一方だけに形成されているとしてもよい。
また、上記実施形態では、空気極114の上面115は、平坦面部分115Aと、傾斜面部分115Bと、突出面部分115Cとを含むとしたが、これに限定されず、例えば平坦面部分115Aを含まず、上面115の中心から突出面部分115Cの位置まで傾斜面部分が形成されているとしてもよい。また、空気極114の上面115は、平坦面部分115Aの代わりに、上面115の中心に向かうに連れて電解質層112に近づくように傾斜する凹部分であるとしてもよい。また、傾斜面部分115Bと突出面部分115Cとの間に平坦面部分が配置されているとしてもよい。
また、上記実施形態では、空気極114の上面115に本発明を適用した構成であったが、これに限定されず、燃料極116の電解質層112とは反対側の面に本発明を適用してもよい。例えば、燃料極116の電解質層112とは反対側の面が、少なくとも傾斜面部分と突出面部分とを含むとしてもよい。
上記実施形態において、突出面部分115Cの厚さH1は、平坦面部分115Aの厚さH2以上であってもよい。例えば、上下方向視で突出面部分115Cと集電体要素135とが重ならない位置に配置されている場合、突出面部分115Cが、上面115の中央部(平坦面部分115A)より集電体要素135側に突出しているとしてもよい。このような構成であれば、接合剤が空気極114の上面115から流れ落ちることを、より確実に抑制することができる。
上記実施形態において、突出面部分115Cの外側傾斜角度θ1は、傾斜面部分115Bの傾斜角度θ2と同じであるとしてもよいし、傾斜面部分115Bの傾斜角度θ2より小さいとしてもよい。このような構成であれば、外側傾斜角度θ1が小さい分だけ、上面115の周縁部と中央部側と間でガスを円滑に流すことができる。
上記実施形態において、突出面部分115Cの外側傾斜角度θ1は、突出面部分115Cの内側傾斜角度θ3と同じであるとしてもよいし、突出面部分115Cの内側傾斜角度θ3より小さいとしてもよい。また、上記実施形態では、突出面部分115Cの内側傾斜角度θ3は、傾斜面部分115Bの傾斜角度θ2より大きいとしているが、これに限定されず、突出面部分115Cの内側傾斜角度θ3は、傾斜面部分115Bの傾斜角度θ2と同じであるとしてもよいし、突出面部分115Cの内側傾斜角度θ3より小さいとしてもよい。ただし、内側傾斜角度θ3が大きいほど、上面115の中央部側に接合剤を多く確保することができるとともに、接合層と空気極とが、内側面部分115C1を介して互いに勘合し合うために、接合層と空気極との対向方向に直交する方向における位置ズレを抑制することができる。
上記実施形態において、集電体要素135は、上下方向視で、突出面部分115Cと重ならない位置に配置されているとしてもよい。また、上下方向視で、突出面部分115Cの先端部位115C3は、上面115の中央部を中心とする径方向において、集電体要素135より内側に配置されているとしてもよい。
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
また、上記実施形態では、ボルト22の両側にナット24が嵌められているとしているが、ボルト22が頭部を有し、ナット24はボルト22の頭部の反対側にのみ嵌められているとしてもよい。
また、上記実施形態では、エンドプレート104,106が出力端子として機能するとしているが、エンドプレート104,106の代わりに、エンドプレート104,106のそれぞれと接続された別部材(例えば、エンドプレート104,106のそれぞれと発電単位102との間に配置された導電板)が出力端子として機能するとしてもよい。
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
また、上記実施形態において、空気極側集電体134と、それに隣接するインターコネクタ150とが別部材であってもよい。また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、上記実施形態では、空気極側集電体134は、Crを含む金属により形成されているが、空気極側集電体134は、コート136により覆われていれば他の材料により形成されていてもよい。また、空気極側集電体134を構成する各集電体要素135の形状は、四角柱状に限らず、インターコネクタ150側から空気極114側に突出するような形状であれば他の形状であってもよい。
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
本明細書において、部材(または部材のある部分、以下同様)Aを挟んで部材Bと部材Cとが互いに対向するとは、部材Aと部材Bまたは部材Cとが隣接する形態に限定されず、部材Aと部材Bまたは部材Cとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に他の層が設けられた構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
また、上記実施形態(または変形例、以下同様)では、燃料電池スタック100に含まれるすべての単セル110について、空気極114の上面115が、傾斜面部分115Bおよび突出面部分115Cを含む構成であるとしているが、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの発電単位102について、そのような構成となっていれば、空気極114と集電体要素135との接合不良に起因して、単セル110および燃料電池スタック100の性能が低下することを抑制することができる。
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号公報に記載されているように公知であるため、ここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルおよび電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、空気極および燃料極の少なくとも一方における電解質層とは反対側の表面が、傾斜面部分および突出面部分を含む構成を採用すれば、空気極と、当該空気極の表面に接合される導電性部材との接合不良に起因して、電解単セルおよび電解セルスタックの性能が低下することを抑制することができる。