以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施形態に係る放射性物質除去装置の使用形態の構成図である。
図1に示すように、本実施形態の放射性物質除去装置は、放射性物質が飛散する場所で使用されるもので、流通路1と、放射性物質除去フィルタ2と、高性能フィルタ3と、加温手段4と、を含む。
流通路1は、ガスを通過させるもので、全周が気密性の壁材により覆われた筐体1aにより形成され、一端および他端が開放して一端側と他端側とが1つに繋がるように設けられている。流通路1は、開放された一端がガスを筐体1aの内部に導入する流体入口1bとして構成され、開放された他端がガスを筐体1aの外部に排出する流体出口1cとして構成されている。流体入口1bおよび流体出口1cは、流通路1に後述するファンユニット11が接続されてガスの流れが生じることで決められる。本実施形態において、流通路1は、筐体1aの内部が隔壁1dにより分割された少なくとも3つ(本実施形態では4つ)の部屋1eが1つに繋がるように形成されており、一端側の部屋1eに流体入口1bが設けられ、他端側の部屋1eに流体出口1cが設けられ、中央の2つの部屋1eが上下多段に構成されて1つに繋がっている。なお、流体入口1bおよび流体出口1cは、筐体1a(部屋1e)の内外に通じる接続管1fが設けられている。接続管1fの筐体1aの外部に延在する端部には、接続フランジ1gが設けられている。
放射性物質除去フィルタ2は、その詳細構成については後述するが、主構成として、内外にガスを通過させる通気性の収納部の内部に、ガスに含まれる放射性物質(放射性ガス(放射性よう素(I2)、放射性よう化メチル(CH3I))を吸着する吸着材が収納されたものである。具体的に、吸着材は、母体を構成する基材と、この基材に添着される添着物質とを含む。基材に用いられる材料としては、特に限定されるものではないが、表面に複数の細孔を有するものであればよく、例えば、活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土などが挙げられる。ゼオライトとしては、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトのどちらでもよい。また、ゼオライトとして、モルデナイト系ゼオライトなどが挙げられる。基材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。基材は、粒状、線状、またはフェルト状に形成されている。また、吸着材は、添着物質として、アルカリ性薬品が適用される。この吸着材は、上記構成により、酸性成分として塩酸や塩素などを反応吸着させて除去する。この吸着材は、基材が収納部においてガスを通過させる部分から脱落せずに保持される粒径に形成される。この放射性物質除去フィルタ2は、流体入口1bおよび流体出口1cが設けられていない中央の部屋1eに設置され、当該部屋1eを流通するガスに含まれる放射性物質を吸着して除去する。
高性能フィルタ3は、例えば、対象粒子径が0.15μmで99.97%の除去効率のHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)が適用される。高性能フィルタ3は、流体入口1bおよび流体出口1cが設けられた部屋1eに設けられて、中央の部屋1eと繋がる部分に介在されている。そして、高性能フィルタ3は、流体入口1bが設けられた部屋1eから放射性物質除去フィルタ2が設置された中央の部屋1eに至るガスに含まれる粒子を除去する。また、高性能フィルタ3は、放射性物質除去フィルタ2が設置された中央の部屋1eから流体出口1cが設けられた部屋1eに至るガスに含まれる粒子を除去する。
加温手段4は、流通路1の外部に設けられて流通路1の周囲温度を所定温度に加温する。具体的に、加温手段4は、ケーシング4aと、空調装置4bと、を有する。
ケーシング4aは、流通路1をなす筐体1aから所定距離を置いて筐体1aの全周を気密性の壁材で覆うことで、筐体1aの外周を囲む閉鎖空間Sを形成する。ケーシング4aは、その壁材が断熱材で覆われている。従って、ケーシング4aは、流通路1をなす筐体1aの外周を囲む閉鎖空間Sを断熱材で囲んでいる。なお、図には明示しないが、ケーシング4aは、放射性物質除去フィルタ2や高性能フィルタ3の交換などのメンテナンスを行えるように内部に作業者が入ることのできるマンホールが設けられている。
空調装置4bは、ケーシング4aの内部の閉鎖空間Sにおける温度を調整する。空調装置4bは、ケーシング4aの内部である閉鎖空間Sに配置される室内機と、ケーシング4aの内部に配置される室外機とを有し、室内機と室外機との間を循環する冷媒の気化熱・凝縮熱を利用し、閉鎖空間Sを適した温度や湿度とする。
従って、加温手段4は、空調装置4bによりケーシング4aの内部の閉鎖空間S(流通路1の周囲)の温度が所定温度よりも低温である場合に所定温度に加温することができる。
ここで、ケーシング4aは、その内外に通じる接続管4cが2箇所に設けられている。接続管4cにおいて、ケーシング4aの内部の端部および外部の端部には、接続フランジ4dが設けられている。一方の接続管4cは、流通路1を形成する筐体1aの流体入口1bに設けられた接続管1fに対してフレキシブル管5を介して接続される。フレキシブル管5は、蛇腹などにより可撓性を有する管であり、その両端に接続フランジ5aが設けられている。そして、接続管1fの接続フランジ1gとフレキシブル管5の一端の接続フランジ5aとをボルトの締結などにより接続し、一方の接続管4cの接続フランジ4dとフレキシブル管5の他端の接続フランジ5aとをボルトの締結などにより接続する。これにより、ケーシング4aの内部の閉鎖空間Sにおいて、一方の接続管4cが筐体1aの流体入口1bの接続管1fに接続される。この一方の接続管4cは、ファンユニット11に接続される。
ファンユニット11は、全周を気密性の壁材で覆われたケーシング11aを有している。ケーシング11aは、その内外に通じる接続管11bが設けられている。接続管11bのケーシング11aの外部に延在する端部には、接続フランジ11cが設けられている。そして、一方の接続管4cは、接続管11bに対してフレキシブル管6を介して接続される。フレキシブル管6は、蛇腹などにより可撓性を有する管であり、その両端に接続フランジ6aが設けられている。そして、接続管11bの接続フランジ11cとフレキシブル管6の一端の接続フランジ6aとをボルトの締結などにより接続し、一方の接続管4cの接続フランジ4dとフレキシブル管6の他端の接続フランジ6aとをボルトの締結などにより接続する。これにより、一方の接続管4cがファンユニット11のケーシング11aの接続管11bに接続される。図には明示しないが、ファンユニット11は、ケーシング11aの内部に送風機が配置されている。また、ケーシング11aは、一部が開放して形成されている。従って、送風機を稼働することで、ケーシング11aの開放からケーシング11aの内部に外気が取り込まれ、この外気が接続管11b,6,4c,5,1fを介して放射性物質除去装置の流通路1の流体入口1bから筐体1aの内部に導かれる。なお、図には明示しないが、ファンユニット11は、必要に応じてケーシング11aの内部に火山灰フィルタユニットが配置されている。火山灰フィルタユニットは、粗塵除去フィルタと、火山灰フィルタと、を有する。粗塵除去フィルタは、ケーシング11aの内部に供給された外気に含まれる粒子(粗粒子、異物)を捕捉して除去する。粗塵除去フィルタに除去される粒子は、火山灰を含む。粗塵除去フィルタが除去可能な粒子サイズは、火山灰フィルタが除去可能な粒子サイズよりも大きい。火山灰フィルタは、粗塵除去フィルタを通過した空気に含まれる微粒子を捕捉して除去する。火山灰フィルタは、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)である。
ケーシング4aの他方の接続管4cは、流通路1を形成する筐体1aの流体出口1cに設けられた接続管1fに対してフレキシブル管5を介して接続される。フレキシブル管5は、蛇腹などにより可撓性を有する管であり、その両端に接続フランジ5aが設けられている。そして、接続管1fの接続フランジ1gとフレキシブル管5の一端の接続フランジ5aとをボルトの締結などにより接続し、他方の接続管4cの接続フランジ4dとフレキシブル管5の他端の接続フランジ5aとをボルトの締結などにより接続する。これにより、ケーシング4aの内部の閉鎖空間Sにおいて、他方の接続管4cが筐体1aの流体出口1cの接続管1fに接続される。この他方の接続管4cは、居室12に接続される。
居室12は、人が避難する場所であり、全周を気密性の壁材で覆われたケーシング12aを有している。ケーシング12aは、その内外に通じる接続管12bが設けられている。接続管12bのケーシング12aの外部に延在する端部には、接続フランジ12cが設けられている。そして、他方の接続管4cは、接続管12bに対してフレキシブル管7を介して接続される。フレキシブル管7は、蛇腹などにより可撓性を有する管であり、その両端に接続フランジ7aが設けられている。そして、接続管12bの接続フランジ12cとフレキシブル管7の一端の接続フランジ7aとをボルトの締結などにより接続し、他方の接続管4cの接続フランジ4dとフレキシブル管7の他端の接続フランジ7aとをボルトの締結などにより接続する。これにより、他方の接続管4cが居室12のケーシング12aの接続管12bに接続される。従って、ファンユニット11の送風機を稼働して放射性物質除去装置の流通路1の流体入口1bから筐体1aの内部に導かれた外気は、接続管1f,5,4c,7,12bを介して放射性物質除去装置の流通路1の流体出口1cから筐体1aの外部に送られて居室12に導かれる。すなわち、居室12は、少なくとも高性能フィルタ3および放射性物質除去フィルタ2を通過して放射性物質が除去されたガスが導かれ、安全が確保される。また、図には明示しないが、居室12は、安全をより確保するため、酸素を供給する装置や、二酸化炭素を排出または無害化する装置や、空調装置などが配置される。
図2は、本実施形態に係る放射性物質除去装置を示す構成図である。
上述したように、流通路1と、放射性物質除去フィルタ2と、高性能フィルタ3と、加温手段4と、を含む放射性物質除去装置は、これらが工場などで予め組まれて漏洩検査(中央の多段の部屋1eごとに放射性物質除去フィルタ2の漏洩を検査する)が行われた後、移動や保管される。図2に示すように、放射性物質除去装置は、双方の接続管4cにおいて、ケーシング4aの外部の端部に設けられた接続フランジ4dに、蓋部材8がボルトの締結などにより接合される。これにより、双方の接続管4cが蓋部材8で塞がれ、流通路1の筐体1aが外気から遮断される。すなわち、流通路1の筐体1aの内部に配置された放射性物質除去フィルタ2および高性能フィルタ3が外気から遮断され、漏洩検査後の漏洩のない状態が維持されることとなる。従って、移動後や保管後に放射性物質除去装置を使用する際には漏洩検査は不要である。この結果、使用する現地での漏洩検査が不要となり、現地での準備期間(日数)を削減することができ、かつ検査機器を現地で用意する必要がないことから準備コストを低減することができる。
そして、このような放射性物質除去装置は、搬送車両であるトレーラ13の荷台13aにケーシング4aごと搭載され、車輪13bにより荷台13aが移動することで、使用場所や保管場所に搬送される。また、放射性物質除去装置は、保管場所の床などにケーシング4aごと搭載されることで保管される。移動や保管にあたり、ケーシング4aの底板がリフト用のトレイになったり、ターンバックルやボルトによる固定板になったりすることができる。こうした移動や保管に際し、本実施形態の放射性物質除去装置は、流通路1の周囲の温度が所定温度よりも低温である場合に、加温手段4によりケーシング4aの内部の閉鎖空間S(流通路1の周囲)が所定温度に加温される。加温手段4の空調装置4bの電源は、移動時はトレーラ13のバッテリーから得られ、保管時は専用のバッテリーや商用電源から得られる。この結果、本実施形態の放射性物質除去装置によれば、移動時や保管時に流通路1の周囲が加温されているため、移動後や保管後から直ちに使用する場合、外気温度が低温(例えば、−5℃以下)の環境下であっても、流通路1の内部に至るガスの極度の温度低下を抑えられることから、放射性物質除去フィルタ2の吸着材の細孔が凍結する事態を防ぐことができ、放射性物質除去フィルタ2の性能を常に確保することができる。しかも、本実施形態の放射性物質除去装置によれば、加温手段4により流通路1の外部において流通路1の周囲温度を所定温度に加温するため、流通路1の内部にガスを供給することがなく、流通路1の内部に設けた放射性物質除去フィルタ2にガスを通過させずにその性能を維持することができる。
また、本実施形態の放射性物質除去装置では、加温手段4において空調装置4bを複数台有していることが好ましい。従って、この放射性物質除去装置によれば、1つの空調装置4bが故障した場合でも、他の空調装置4bにより上記効果を確保することができる。
図3〜図5は、本実施形態に係る放射性物質除去装置の他の例を示す構成図である。
図3に示す放射性物質除去装置は、加温手段4のケーシング4aの内部にファンユニット11を配置した例である。このような放射性物質除去装置によれば、移動時や保管時に流通路1およびファンユニット11の周囲が加温されているため、移動後や保管後から直ちに使用する場合、外気温度が低温(例えば、−5℃以下)の環境下であっても、ファンユニット11および流通路1の内部に至るガスの極度の温度低下を抑えられることから、放射性物質除去フィルタ2の吸着材の細孔が凍結する事態をより防ぐことができ、放射性物質除去フィルタ2の性能を常に確保する効果を顕著に得ることができる。
図4に示す放射性物質除去装置は、加温手段4が異なる。図4に示す加温手段4は、断熱部材4eと、ヒータ4fと、を有する。断熱部材4eは、流通路1をなす筐体1aの全周を覆うことで、筐体1aの外周を断熱する。ヒータ4fは、流通路1をなす筐体1aの外面と断熱部材4eとの間に設けられ筐体1aの外周を取り囲むように配置されたヒータトレースとして構成されている。ヒータトレースとしては、筐体1aの外周を取り囲むように配置した電熱線に電気を流す構成が適用されるが、筐体1aの外周を取り囲むように配置した管に加温した流体を供給する構成であってもよい。
このような放射性物質除去装置によれば、移動や保管に際し、流通路1の周囲の温度が所定温度よりも低温である場合に、加温手段4により流通路1の周囲が所定温度に加温される。加温手段4のヒータ4fの電源は、移動時はトレーラ13のバッテリーから得られ、保管時は専用のバッテリーや商用電源から得られる。この結果、本実施形態の放射性物質除去装置によれば、移動時や保管時に流通路1の周囲が加温されているため、移動後や保管後から直ちに使用する場合、外気温度が低温(例えば、−5℃以下)の環境下であっても、流通路1の内部に至るガスの極度の温度低下を抑えられることから、放射性物質除去フィルタ2の吸着材の細孔が凍結する事態を防ぐことができ、放射性物質除去フィルタ2の性能を常に確保することができる。しかも、本実施形態の放射性物質除去装置によれば、加温手段4により流通路1の外部において流通路1の周囲温度を所定温度に加温するため、流通路1の内部にガスを供給することがなく、流通路1の内部に設けた放射性物質除去フィルタ2にガスを通過させずにその性能を維持することができる。しかも、本実施形態の放射性物質除去装置によれば、加温手段4により流通路1の外部において流通路1の周囲温度を所定温度に加温するため、流通路1の内部にガスを供給することがなく、流通路1の内部に設けた放射性物質除去フィルタ2の漏洩検査を予め行いこの検査した状態をそのまま維持することができる。
なお、図4に示す放射性物質除去装置は、ケーシング9を有していることが好ましい。ケーシング9は、流通路1をなす筐体1aから所定距離を置いて筐体1aの周囲を覆うことで、流通路1をなす筐体1aを保護するものである。このケーシング9は、上述したケーシング4aのように筐体1aの全周を気密性の壁材で覆って閉鎖空間Sを形成する必要はなく、断熱材で覆われる必要もない。
図5示す放射性物質除去装置は、加温手段4が異なる。図5に示す加温手段4は、ケーシング4aと、ヒータ4fと、を有する。流通路1をなす筐体1aから所定距離を置いて筐体1aの全周を気密性の壁材で覆うことで、筐体1aの外周を囲む閉鎖空間Sを形成する。ケーシング4aは、その壁材が断熱材で覆われている。従って、ケーシング4aは、流通路1をなす筐体1aの外周を囲む閉鎖空間Sを断熱材で囲んでいる。なお、図には明示しないが、ケーシング4aは、放射性物質除去フィルタ2や高性能フィルタ3の交換などのメンテナンスを行えるように内部に作業者が入ることのできるマンホールが設けられている。ヒータ4fは、流通路1をなす筐体1aの外面を取り囲むように配置されたヒータトレースとして構成されている。ヒータトレースとしては、筐体1aの外周を取り囲むように配置した電熱線に電気を流す構成が適用されるが、筐体1aの外周を取り囲むように配置した管に加温した流体を供給する構成であってもよい。
このような放射性物質除去装置によれば、移動や保管に際し、流通路1の周囲の温度が所定温度よりも低温である場合に、加温手段4により流通路1の周囲が所定温度に加温される。加温手段4のヒータ4fの電源は、移動時はトレーラ13のバッテリーから得られ、保管時は専用のバッテリーや商用電源から得られる。この結果、本実施形態の放射性物質除去装置によれば、移動時や保管時に流通路1の周囲が加温されているため、移動後や保管後から直ちに使用する場合、外気温度が低温(例えば、−5℃以下)の環境下であっても、流通路1の内部に至るガスの極度の温度低下を抑えられることから、放射性物質除去フィルタ2の吸着材の細孔が凍結する事態を防ぐことができ、放射性物質除去フィルタ2の性能を常に確保することができる。しかも、本実施形態の放射性物質除去装置によれば、加温手段4により流通路1の外部において流通路1の周囲温度を所定温度に加温するため、流通路1の内部にガスを供給することがなく、流通路1の内部に設けた放射性物質除去フィルタ2にガスを通過させずにその性能を維持することができる。
ところで、本実施形態の放射性物質除去装置では、上述した加温手段4において、ケーシング4a,9は、遮光材で覆われていることが好ましい。従って、この放射性物質除去装置によれば、遮光材で太陽光を遮ることで、放射性物質除去フィルタ2の吸着材への太陽熱や紫外線による劣化などの影響を防ぐことができる。また、本実施形態の放射性物質除去装置では、上述した加温手段4において、ケーシング4a,9は、放射線遮蔽材で覆われていることが好ましい。放射線遮蔽材は、放射線を遮蔽するコンクリートや金属などで形成される。従って、この放射性物質除去装置によれば、放射性物質除去フィルタ2により放射性物質を除去した場合に、放射性物質除去フィルタ2の放射性物質から放射される放射線がケーシング4a,9の外部に漏れる事態を防ぐことができる。
図6は、本実施形態に係る放射性物質除去フィルタの使用形態の構成図である。図7は、本実施形態に係る放射性物質除去フィルタの使用形態の分解斜視図である。図8は、本実施形態に係る放射性物質除去フィルタの構成図である。図9は、本実施形態に係る放射性物質除去フィルタの構成図である。
図6では、上述した流通路1において、筐体1aおよび部屋1eを簡略化して示している。放射性物質除去フィルタ2は、流通路1の内部に設けられたラック15に設置される。放射性物質除去フィルタ2は、収納部2Aと、吸着材2Bとを有する。
収納部2Aは、その内外にガスを通過させる。具体的に、収納部2Aは、図7および図8に示すように、矩形状の箱体として形成されている。収納部2Aは、剛性の高い金属材からなり、矩形状の4辺の側面が側面板2Aaにより気密に閉塞され、一部である上下面がパンチングメタルなどのような多孔板からなる上下面板2Abにより通気性を有している。すなわち、収納部2Aは、上下面板2Abを介してその内外にガスを通過させる。本実施形態において、収納部2Aは、上下に間隔をおいて複数(本実施形態では2つ)設けられている。そして、放射性物質除去フィルタ2は、各収納部2Aの上下の間において、矩形状の3辺の側面板2Aa間の間隔が閉塞板2Acにより気密に閉塞されて残りの1辺の側面板2Aa間の間隔のみが開放するように開口部2Adが形成されている。閉塞板2Acは、上下に配置された収納部2Aの相互の側面板2Aaが連続して構成されている。従って、上下に間隔をおいて複数設けられる収納部2Aは、相互の側面板2Aaが連続することで相互の間隔を維持しつつ一体に構成されている。また、開口部2Adは、上下に配置された収納部2Aの相互の側面板2Aaが連続した部分に開けられた穴として構成されている。また、放射性物質除去フィルタ2は、穴として開口部2Adが形成された側面板2Aaが、両側方および上下方向にはみ出すように張り出して形成されている。この張り出して形成された側面板2Aaは、その周縁に開口部2Adの開口方向の外側に延在する縁片2Aeが形成されている。また、この張り出して形成された側面板2Aaは、開口部2Adの開口方向の外側に突出する2つの把持部2Afが形成されている。すなわち、把持部2Afを両手で掴んで放射性物質除去フィルタ2を持つことができる。なお、上述した放射性物質除去フィルタ2において、説明の便宜上、開口部2Adや縁片2Aeや把持部2Afが形成された側面板2Aa側を正面側とし、その相反する側面板2Aa側を背面側とし、正面側と背面側との間の側面板2Aa側を側面側とする。
吸着材2Bは、上述した収納部2Aの内部に収容される。吸着材2Bは、流通路1内を流通されるガス中に含まれる放射性物質を吸着するものである。
ラック15は、図6および図7に示すように、上述した放射性物質除去フィルタ2を流通路1の筐体1a内に配置するものである。ラック15は、流通路1の筐体1aの内部を流体入口1b側と流体出口1c側とに区画する正面板15aと、正面板15aの周縁に設けられて筐体1aの内周面に沿う周板15bとを有し、正面板15aに対して相反する側の背面が開放する箱体として構成されている。本実施形態において、流通路1は、四角筒状に形成され、これに合わせてラック15は、正面板15aが四角形状に形成され、周板15bも四角形状に形成されている。ラック15は、正面板15aに、上述した放射性物質除去フィルタ2が挿通される挿通穴15cが形成されている。本実施形態において、ラック15は、複数(本実施形態では3つ)の放射性物質除去フィルタ2を挿通できるように3つの挿通穴15cが形成されている。また、ラック15は、箱体の内部において、挿通穴15cに挿通された放射性物質除去フィルタ2の挿通を案内すると共に支持する支持部材15dが、放射性物質除去フィルタ2の挿通方向となる正面背面方向に沿って設けられている。このようなラック15は、周板15bと筐体1aの内周面との間が気密性を有するようにガスケット(図示せず)を介して筐体1aの内部に配置されている。このため、ラック15は、正面板15aに形成された挿通穴15cのみを介して流通路1を流体入口1b側と流体出口1c側に通じさせている。
このラック15の挿通穴15cに対し、放射性物質除去フィルタ2は、背面側から挿通される。そして、放射性物質除去フィルタ2は、正面側の側面板2Aaにおいて両側方および上下方向に張り出した部分がラック15の正面板15aに当接することでラック15の内部に収納される。そして、放射性物質除去フィルタ2は、図9に示すように、正面側の側面板2Aaがラック15の正面板15aに締結されるボルト17aと、ボルト17aで正面板15aに押し付けられる押付部材17bによりラック15に支持される。また、図9に示すように、放射性物質除去フィルタ2の正面側の側面板2Aaと、ラック15の正面板15aとの当接部分にガスケット18が介在されている。このため、放射性物質除去フィルタ2は、図6に示すように、流通路1に対し、流体入口1bと流体出口1cとの間で、開口部2Ad、収納部2Aの上下面板2Ab、および収納部2Aに収容される吸着材2Bを介してガスを流通させる。なお、放射性物質除去フィルタ2におけるガスの流通方向は、図6に示すように、ガスが流通路1の流体入口1bから供給されて流体出口1cから排出される場合、正面側の開口部2Adから供給されて吸着材2Bを通過して上下に抜けて背面に排出される。また、図には明示しないが、放射性物質除去フィルタ2は、図6におけるガスの流通方向に対してラック15と共に正面側と背面側とを逆にすることで、図6とは逆に背面側から上下方向に吸着材2Bを通過して正面側の開口部2Adからガスが排出される。
このような構成の放射性物質除去フィルタ2において、本実施形態では、図9に示すように押付機構2Cを有している。押付機構2Cは、吸着材2Bを収納部2Aの内部で押し固めるものである。具体的に、押付機構2Cは、閉塞板2Caと、押付ボルト2Cbと、押付板2Ccとを有する。閉塞板2Caは、収納部2Aの正面側の側面板2Aaに形成された貫通穴2Aaaを閉塞するように正面側の側面板2Aaに固定されている。閉塞板2Caは、収納部2Aの正面側の側面板2Aaが兼ねていてもよい。押付ボルト2Cbは、閉塞板2Caに螺込まれて先端が収納部2Aの内部に至り設けられている。押付ボルト2Cbは、締めることで先端が収納部2Aの奥(背面側)に移動し、緩めることで先端が収納部2Aの手前(正面側)に移動する。押付板2Ccは、収納部2Aの内部に配置され、押付ボルト2Cbの先端が当接する。従って、押付機構2Cは、押付ボルト2Cbを締めることで押付板2Ccが収納部2Aの奥(背面側)に移動し、これにより吸着材2Bが収納部2Aの奥(背面側)に押し込まれて押し固められる。なお、収納部2Aの上下面板2Abは、押付板2Ccの移動範囲において多孔要素が設けられておらず、これにより吸着材2Bを収納部2Aの奥(背面側)に確実に押し込むことができる。
従って、本実施形態の放射性物質除去フィルタ2によれば、押付機構2Cを有することで、吸着材2Bを収納部2Aの内部で押し固め、これにより搬送時の移動における振動などで吸着材2Bの間に隙間が発生する事態を防止することができ、あるいは吸着材2Bの間に隙間が発生した場合にこの隙間を埋めることができる。この結果、吸着材2Bの隙間をガスが通過することで放射性物質の除去性能が低下する事態を防ぐことができ、放射性物質の除去性能を確保することができる。