以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係る空気浄化システムの構成図である。
図1に示すように、本実施形態の空気浄化システムは、ファンユニット1と、フィルタユニット2と、検査ユニット(検査装置)3と、を有する。
ファンユニット1は、周囲が外壁で囲まれて入口1aaとなる一端および出口1abとなる他端が開口して一端から他端へ一繋がりに連続する筒状のケーシング1aを有している。ケーシング1aは、気密性が確保された流通路として形成されている。そして、ファンユニット1は、ケーシング1a内に、一端側から他端側へ順に、平型フィルタ1b、中性能フィルタ1c、ファンユニットヒータ1d、ファン(送風機)1eが設けられている。
平型フィルタ1bは、例えば、対象粒子径が50μm以上のフィルタである。
中性能フィルタ1cは、例えば、対象粒子径が25μm以上50μm未満のフィルタである。中性能フィルタ1cは、平型フィルタ1bよりもガスの下流側に配置される。
ファンユニットヒータ1dは、ケーシング1aの内部に流通されるガスを加熱するためのものである。
ファン1eは、ケーシング1aの内部に、一端側から他端側へガスを通過させるものである。ファン1eおよびファンユニットヒータ1dの配置は、上記に限らない。
また、ファンユニット1は、ファンユニット温度計1gおよびファンユニット差圧計1fが設けられている。ファンユニット温度計1gは、ケーシング1aの内部の温度を計測するものである。ファンユニット差圧計1fは、ケーシング1aの内部であって、中性能フィルタ1cの上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差を計測するものである。
すなわち、ファンユニット1は、ファン1eを稼働することで、ケーシング1aにおいて入口1aaから出口1abへ内部にガスが通過する。そして、ケーシング1aの内部を通過するガスは、平型フィルタ1bにより50μm以上の対象粒子径の塵埃などが除去され、続いて中性能フィルタ1cにより25μm以上50μm未満の対象粒子径の塵埃などが除去される。また、ケーシング1aの内部を通過するガスは、ファンユニットヒータ1dにより加熱されることで温度が上昇し相対湿度が低下する。後述するフィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cは、湿分により性能に影響を及ぼすことから、ガスの相対湿度を低下させることで、放射性物質除去フィルタ2cにおける湿分による影響を抑え、放射性物質(ガス状の放射性よう素(よう素[I2],よう化メチル[CH3I])の他、ミスト状のセシウム[Cs]やストロンチウム[Sr]などを含む放射性物質:以下、放射性物質という)の吸着性能を確保する。ケーシング1aの内部を通過するガスの温度は、ファンユニット温度計1gにより計測され、計測された温度に基づいてファンユニットヒータ1dの制御を行うことができる。また、ファンユニット差圧計1fにより中性能フィルタ1cの上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差を計測することで、中性能フィルタ1cの性能を判断することができる。
フィルタユニット2は、周囲が外壁で囲まれて入口2aaとなる一端および出口2abとなる他端が開口して一端から他端へ一繋がりに連続する筒状のケーシング2aを有している。ケーシング2aは、気密性が確保された流通路として形成されている。そして、フィルタユニット2は、ケーシング2a内に、一端側から他端側へ順に、第一高性能フィルタ2b、放射性物質除去フィルタ2c、第二高性能フィルタ2dが設けられている。
第一高性能フィルタ2bおよび第二高性能フィルタ2dは、例えば、対象粒子径が0.15μmで99.97%の除去効率のHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)が適用される。
放射性物質除去フィルタ2cは、主構成として、内外にガスを通過させる通気性の収納部の内部に、ガスに含まれる放射性物質を吸着する吸着剤が収納されたものである。具体的に、吸着剤は、母体を構成する基材と、この基材に添着される添着物質とを含む。基材に用いられる材料としては、特に限定されるものではないが、表面に複数の細孔を有するものであればよく、例えば、活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土などが挙げられる。ゼオライトとしては、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトのどちらでもよい。また、ゼオライトとして、モルデナイト系ゼオライトなどが挙げられる。基材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。基材は、粒状、線状、またはフェルト状に形成されている。また、吸着剤は、添着物質として、アルカリ性薬品が適用される。この吸着剤は、上記構成により、酸性成分として塩酸や塩素などを反応吸着させて除去する。この吸着剤は、基材が収納部においてガスを通過させる部分から脱落せずに保持される粒径に形成される。
また、フィルタユニット2は、フィルタユニット温度計2e、フィルタユニット湿度計2jおよびフィルタユニット差圧計2fが設けられている。フィルタユニット温度計2eは、ケーシング2aの内部の温度を計測するものである。フィルタユニット湿度計2jは、ケーシング2aの内部の相対湿度を計測するものである。フィルタユニット差圧計2fは、ケーシング2aの内部であって、第一高性能フィルタ2bの上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差を計測するものである。
また、フィルタユニット2は、ケーシング2aの外周を囲むようにフィルタユニット温調器2gが設けられている。フィルタユニット温調器2gは、ケーシング2aの外側を加熱・冷却することで、ケーシング2aの内部の温度を調整する。
また、フィルタユニット2は、ケーシング2aの内部であって放射性物質除去フィルタ2cよりも上流側にフィルタユニット湿調器2kが設けられている。フィルタユニット湿調器2kは、ケーシング2aの内部を加湿・除湿することで、ケーシング2aの内部の相対湿度を調整する。
また、フィルタユニット2は、ケーシング2aの出口2abに設けられた接続管6に、フィルタユニット流量調整弁2hおよびフィルタユニット流量計2iが設けられている。フィルタユニット流量調整弁2hは、接続管6を通過するガスの流量を調整する。フィルタユニット流量計2iは、接続管6を通過するガスの流量を計測する。従って、接続管6を通過するガスの流量は、フィルタユニット流量計2iにより計測され、この計測に基づいてフィルタユニット流量調整弁2hを制御することで調整される。また、フィルタユニット流量計2iにより計測された流量に基づき流速を算出することができる。
このフィルタユニット2は、ケーシング2aの入口2aaがファンユニット1におけるケーシング1aの出口1abに接続管5を介して接続される。また、フィルタユニット2は、ケーシング2aの出口2abが接続管6を介して部屋(図示せず)に接続される。
部屋は、壁、天井および床により囲まれたものであり、例えば、原子力設備を制御・監視するために原子炉建屋内に設置される制御室、会議や居住するために原子炉建屋内に設置される居室、原子力設備の事故時などに原子力設備を制御・監視するために原子炉建屋外に設置される代替制御室、原子力設備の事故時などに会議や居住するために原子炉建屋外に設置される代替居室、原子力設備の事故時などに原子力設備に従事する人や原子力設備近くの住民が避難するための非常用居室などがある。
すなわち、フィルタユニット2は、ファンユニット1におけるケーシング1aを通過したガスがケーシング2aの入口2aaから供給され、ケーシング2aにおいて入口2aaから出口2abへ内部にガスが通過する。そして、ケーシング2aの内部を通過するガスは、第一高性能フィルタ2bにより0.15μm以上の対象粒子径の微粒子などが除去される。続いて、ケーシング2aの内部を通過するガスは、放射性物質除去フィルタ2cにより放射性物質が除去される。続いて、第二高性能フィルタ2dにより0.15μm以上の対象粒子径の微粒子など(ここでは、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤からなる微粒子を含む)が除去される。そして、微粒子や放射性物質が除去されたガスがケーシング2aにおける出口2abから接続管6を介し、フィルタユニット流量調整弁2hにより流量を調整されつつ部屋に供給される。また、フィルタユニット差圧計2fにより第一高性能フィルタ2bの上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差を計測することで、第一高性能フィルタ2bの性能を判断することができる。また、フィルタユニット2は、フィルタユニット温調器2gを稼働することでケーシング2aの内部の温度を調整することができる。放射性物質除去フィルタ2cは、湿分により性能に影響を及ぼすことから、例えば、フィルタユニット2を使用していないとき(ファンユニット1からガスを供給しないとき)、ケーシング2aの内部の空気の温度を上昇させ相対湿度を低下させることが好ましく、または凍結を防止することが好ましく、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤における放射性物質の吸着性能を維持することができる。ケーシング2aの内部の温度は、フィルタユニット温度計2eにより計測され、計測された温度に基づいてフィルタユニット温調器2gの制御を行うことができる。また、フィルタユニット2は、フィルタユニット湿調器2kを稼働することでケーシング2aの内部の相対湿度を調整することができる。ケーシング2aの内部の相対湿度は、フィルタユニット湿度計2jにより計測され、計測された相対湿度に基づいてフィルタユニット湿調器2kの制御を行うことができる。
なお、ファンユニット1とフィルタユニット2は、ケーシング1a,2aが一繋がりに連続して流通路が一体に形成されていてもよい。
ここで、放射性物質除去フィルタ2cの詳細な構成の例を説明する。図2は、本実施形態に係る空気浄化システムにおける放射性物質除去フィルタの使用形態を示す断面図である。図3は、本実施形態に係る空気浄化システムにおける放射性物質除去フィルタの使用形態を示す分解斜視図である。図4は、本実施形態に係る空気浄化システムにおける放射性物質除去フィルタの断面図である。
放射性物質除去フィルタ2cは、図2に示すように、ケーシング2aの内部に設けられたラック8に設置される。放射性物質除去フィルタ2cは、収納部2cAと、吸着剤2cBとを有する。
収納部2cAは、その内外にガスを通過させる。具体的に、収納部2cAは、図3および図4に示すように、矩形状の箱体として形成されている。収納部2cAは、剛性の高い金属材からなり、矩形状の4辺の側面が側面板2cAaにより気密に閉塞され、一部である上下面がパンチングメタルなどのような多孔板からなる上下面板2cAbにより通気性を有している。すなわち、収納部2cAは、上下面板2cAbを介してその内外にガスを通過させる。本実施形態において、収納部2cAは、上下に間隔をおいて複数(本実施形態では2つ)設けられている。そして、放射性物質除去フィルタ2cは、各収納部2cAの上下の間において、矩形状の3辺の側面板2cAa間の間隔が閉塞板2cAcにより気密に閉塞されて残りの1辺の側面板2cAa間の間隔のみが開放するように開口部2cAdが形成されている。閉塞板2cAcは、上下に配置された収納部2cAの相互の側面板2cAaが連続して構成されている。従って、上下に間隔をおいて複数設けられる収納部2cAは、相互の側面板2cAaが連続することで相互の間隔を維持しつつ一体に構成されている。また、開口部2cAdは、上下に配置された収納部2cAの相互の側面板2cAaが連続した部分に開けられた穴として構成されている。また、放射性物質除去フィルタ2cは、穴として開口部2cAdが形成された側面板2cAaが、両側方および上下方向にはみ出すように張り出して形成されている。この張り出して形成された側面板2cAaは、その周縁に開口部2cAdの開口方向の外側に延在する縁片2cAeが形成されている。また、この張り出して形成された側面板2cAaは、開口部2cAdの開口方向の外側に突出する2つの把持部2cAfが形成されている。すなわち、把持部2cAfを両手で掴んで放射性物質除去フィルタ2cを持つことができる。なお、上述した放射性物質除去フィルタ2cにおいて、説明の便宜上、開口部2cAdや縁片2cAeや把持部2cAfが形成された側面板2cAa側を正面側とし、その相反する側面板2cAa側を背面側とし、正面側と背面側との間の側面板2cAa側を側面側とする。
吸着剤2cBは、上述した収納部2cAの内部に収容される。吸着剤2cBは、ケーシング2aの内部を通過するガス中に含まれる放射性物質を吸着するものである。
ラック8は、図2および図3に示すように、上述した放射性物質除去フィルタ2cをケーシング2aの内部に配置するものである。ラック8は、ケーシング2aの内部を入口2aa側と出口2ab側とに区画する正面板8aと、正面板8aの周縁に設けられてケーシング2aの内周面に沿う周板8bとを有し、正面板8aに対して相反する側の背面が開放する箱体として構成されている。本実施形態において、ケーシング2aは、四角筒状に形成され、これに合わせてラック8は、正面板8aが四角形状に形成され、周板8bも四角形状に形成されている。ラック8は、正面板8aに、上述した放射性物質除去フィルタ2cが挿通される挿通穴8cが形成されている。本実施形態において、ラック8は、複数(本実施形態では3つ)の放射性物質除去フィルタ2cを挿通できるように3つの挿通穴8cが形成されている。また、ラック8は、箱体の内部において、挿通穴8cに挿通された放射性物質除去フィルタ2cの挿通を案内すると共に支持する支持部材8dが、放射性物質除去フィルタ2cの挿通方向となる正面背面方向に沿って設けられている。このようなラック8は、周板8bとケーシング2aの内周面との間が気密性を有するようにガスケット(図示せず)を介してケーシング2aの内部に配置されている。このため、ラック8は、正面板8aに形成された挿通穴8cのみを介してケーシング2aを入口2aa側と出口2ab側に通じさせている。
このラック8の挿通穴8cに対し、放射性物質除去フィルタ2cは、背面側から挿通される。そして、放射性物質除去フィルタ2cは、正面側の側面板2cAaにおいて両側方および上下方向に張り出した部分がラック8の正面板8aに当接することでラック8の内部に収納される。そして、放射性物質除去フィルタ2cは、正面側の側面板2cAaがラック8の正面板8aに締結されるボルトなどで支持される。また、図には明示しないが、放射性物質除去フィルタ2cの正面側の側面板2cAaと、ラック8の正面板8aとの当接部分にガスケットが介在されている。このため、放射性物質除去フィルタ2cは、図2に示すように、ケーシング2aに対し、入口2aaと出口2abとの間で、開口部2cAd、収納部2cAの上下面板2cAb、および収納部2cAに収容される吸着剤2cBを介してガスを流通させる。なお、放射性物質除去フィルタ2cにおけるガスの流通方向は、図2に示すように、ガスがケーシング2aの入口2aaから供給されて出口2abから排出される場合、正面側の開口部2cAdから供給されて吸着剤2cBを通過して上下に抜けて背面に排出される。また、図には明示しないが、放射性物質除去フィルタ2cは、図2におけるガスの流通方向に対してラック8と共に正面側と背面側とを逆にすることで、図2とは逆に背面側から上下方向に吸着剤2cBを通過して正面側の開口部2cAdからガスが排出される。
図1に戻って、検査ユニット3は、フィルタユニット2に接続された分岐管3Aを有している。分岐管3Aは、入口3Aaとなる一端および出口3Abとなる他端が開口して一端から他端へ一繋がりに連続する筒状に形成されている。分岐管3Aは、入口3Aaとなる一端が、フィルタユニット2におけるケーシング2aの内部であって第一高性能フィルタ2bと放射性物質除去フィルタ2cとの間に配置され、出口3Abとなる他端が、ケーシング2aの外部に配置されている。従って、分岐管3Aは、放射性物質除去フィルタ2cの入口2aa側からケーシング2aの内部のガスの一部を抜き取り通過させることでケーシング2aの内部のガスの一部が通過可能に設けられて気密性が確保された別の流通路として形成されている。
そして、検査ユニット3は、分岐管3Aに対し、検査用フィルタ3Bと、検査用ガス供給部3Cと、調整部3Dと、濃度計測部3Eとを有する。
検査用フィルタ3Bは、分岐管3Aの内部に配置される。検査用フィルタ3Bは、一繋がりに連続する筒状のケース(図示せず)に、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBと同組成の吸着剤が充填されたものである。筒状のケースの入口となる一端と出口となる他端の寸法は、上述した放射性物質除去フィルタ2cにおける1つの収納部2cAの上下寸法と同じに形成されている。ただし、筒状のケースの径は、放射性物質除去フィルタ2cにおける1つの収納部2cAの前後両側の寸法と比較して遙かに小さく形成されている。すなわち、検査用フィルタ3Bは、放射性物質除去フィルタ2cにおける1つの収納部2cAの一部を取り出したように構成されている。検査用フィルタ3Bは、分岐管3Aの内部において、分岐管3Aの連続する方向に筒状のケースが連続する方向を合わせるように配置され、かつケースと分岐管3Aの内壁との間に気密性が確保されて配置される。すなわち、検査用フィルタ3Bのケースは、分岐管3Aの内部を通過するガスの全てを吸着剤を介して通過させるように構成されている。この、検査用フィルタ3Bは、分岐管3Aに対して着脱可能に設けられ、分岐管3Aの内部に設置されたり、分岐管3Aの内部から取り出されたりすることができる。
検査用ガス供給部3Cは、分岐管3Aにおける検査用フィルタ3Bの上流側(入口3Aa側)に検査用ガスを供給するもので、検査用ガス貯留部3Caと、検査用ガス供給管3Cbと、検査開閉弁3Ccとを有する。検査用ガス貯留部3Caは、例えば、検査用ガスである非放射性のよう化メチルを貯留する。検査用ガス貯留部3Caは、検査用ガスを分岐管3Aの内部の圧力よりも高い圧力の状態で貯留する。検査用ガス供給管3Cbは、検査用ガス貯留部3Caを分岐管3Aに接続する。検査開閉弁3Ccは、検査用ガス供給管3Cbに設けられて検査用ガス供給管3Cbを開閉する。従って、検査用ガス供給部3Cは、検査開閉弁3Ccを開けることで検査用ガス貯留部3Caに貯留された検査用ガスを検査用ガス供給管3Cbを介して分岐管3Aの内部に供給する。一方、検査用ガス供給部3Cは、検査開閉弁3Ccを閉じることで検査用ガスの供給を停止する。
調整部3Dは、分岐管3Aの内部における温度や、分岐管3Aの内部における相対湿度や、検査用フィルタ3Bの下流側(出口3Ab側)の流量を調整するもので、検査温度計3Daと、検査温調器3Dbと、検査湿度計3Deと、検査湿調器3Dfと、検査流量計3Dcと、検査流量調整弁3Ddとを有する。検査温度計3Daは、分岐管3Aの内部の温度を計測する。検査温調器3Dbは、分岐管3Aの外側を加熱・冷却することで、分岐管3Aの内部の温度を調整する。従って、分岐管3Aの内部の温度を検査温度計3Daにより計測し、計測した温度に基づいて検査温調器3Dbの制御を行うことで分岐管3Aの内部の温度を調整できる。検査湿度計3Deは、分岐管3Aの内部の相対湿度を計測する。検査湿調器3Dfは、分岐管3Aの内部を加湿・除湿することで、分岐管3Aの内部の相対湿度を調整する。従って、分岐管3Aの内部の温度を検査湿度計3Deにより計測し、計測した温度に基づいて検査湿調器3Dfの制御を行うことで分岐管3Aの内部の相対湿度を調整できる。検査流量計3Dcは、分岐管3Aを通過するガスの流量を計測する。検査流量調整弁3Ddは、分岐管3Aを通過するガスの流量を調整する。従って、分岐管3Aを通過するガスの流量を検査流量計3Dcにより計測し、計測した流量に基づいて検査流量調整弁3Ddを制御して分岐管3Aを通過するガスの流量を調整できる。なお、検査流量計3Dcにより計測した流量に基づいて流速を算出することができる。
濃度計測部3Eは、分岐管3Aの内部に設けられた検査上流濃度計3Eaおよび検査下流濃度計3Ebを含む。検査上流濃度計3Eaは、分岐管3Aの内部において、検査用ガス供給部3Cの接続箇所よりも下流側(出口3Ab側)であって、検査用フィルタ3Bの上流側(入口3Aa側)に配置され、検査用フィルタ3Bの上流側(入口3Aa側)における検査用ガスの濃度を計測する。検査下流濃度計3Ebは、検査用フィルタ3Bの下流側(出口3Ab側)に配置され、検査用フィルタ3Bの下流側(出口3Ab側)における検査用ガスの濃度を計測する。従って、濃度計測部3Eの検査上流濃度計3Eaにより計測された検査用ガスの濃度(S1)と、検査下流濃度計3Ebにより計測された検査用ガスの濃度(S2)とにより、検査用フィルタ3Bによる検査用ガスの除去効率(η[%])をη=(1-S2/S1)・100の式により算出することができる。
なお、検査ユニット3は、分岐管3Aの出口3Abがケーシング2aの外部に配置されていればよく、検査用フィルタ3B、検査用ガス供給部3C、調整部3D、および濃度計測部3Eがケーシング2aの内部側に配置されていてもよい。
また、本実施形態の空気浄化システムは、ファンユニット1におけるケーシング1aの外部であって入口1aa付近に、放射線計4が設けられている。放射線計4は、例えば、ガスクロマトグラフやガンマ線検出器がある。そして、例えば、原子力設備の事故時において、放射線計4により放射線が検出された場合、ファンユニット1のファン1eを稼働させ、フィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cにより放射性物質を除去したガスを部屋に供給することができる。一方、原子力設備の正常稼働時においては、本実施形態の空気浄化システムが正常に稼働するかを定期的に確認するため、ファンユニット1のファン1eを稼働させ、フィルタユニット2を経たガスを部屋に供給または外気に排気することができる。
図5は、本実施形態に係る空気浄化システムのブロック図である。図6は、本実施形態に係る空気浄化システムにおける情報管理部のブロック図である。
空気浄化システムは、上記構成に加え、入出力部9と、情報管理部10と、データベース11とを有する。
入出力部9は、各種データの入出力を行うものである。具体的に、入出力部9は、上述した、ファンユニットヒータ1d、ファン1e、ファンユニット差圧計1f、ファンユニット温度計1g、フィルタユニット温度計2e、フィルタユニット差圧計2f、フィルタユニット温調器2g、フィルタユニット流量調整弁2h、フィルタユニット流量計2i、フィルタユニット湿度計2j、フィルタユニット湿調器2k、検査開閉弁3Cc、検査温度計3Da、検査温調器3Db、検査流量計3Dc、検査流量調整弁3Dd、検査湿度計3De、検査湿調器3Df、検査上流濃度計3Ea、検査下流濃度計3Eb、放射線計4が接続される。従って、入出力部9は、ファンユニット差圧計1f、ファンユニット温度計1g、フィルタユニット温度計2e、フィルタユニット差圧計2f、フィルタユニット流量計2i、フィルタユニット湿度計2j、検査温度計3Da、検査流量計3Dc、検査湿度計3De、検査上流濃度計3Ea、検査下流濃度計3Eb、放射線計4から計測データである各情報を入力し、ファンユニットヒータ1d、ファン1e、フィルタユニット温調器2g、フィルタユニット流量調整弁2h、フィルタユニット湿調器2k、検査開閉弁3Cc、検査温調器3Db、検査流量調整弁3Dd、検査湿調器3Dfへの駆動データである各情報を出力する。
情報管理部10は、例えば、コンピュータであり、図6に示すように、演算処理装置101や記憶装置(コンピュータプログラム)102などにより実現される。また、情報管理部10は、表示装置103と、入力装置104と、音声出力装置105と、ドライブ装置106と、入出力インターフェース装置107とを有してもよい。演算処理装置101は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを含む。記憶装置102は、ROMやRAMのようなメモリおよびストレージを含む。演算処理装置101は、記憶装置102に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施する。表示装置103は、フラットパネルディスプレイを含む。入力装置104は、操作されることにより入力データを生成する。入力装置104は、キーボードおよびマウスの少なくとも一方を含む。なお、入力装置104が表示装置103の表示画面に設けられたタッチセンサを含んでもよい。音声出力装置105は、スピーカーを含む。ドライブ装置106は、情報管理部10を実行させるためのプログラムなどのデータが記録された記録媒体108からデータを読み出す。記録媒体108は、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスクなどのように情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリなどの様に情報を電気的に記録する半導体メモリなど、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。入出力インターフェース装置107は、演算処理装置101と記憶装置102と表示装置103と入力装置104と音声出力装置105とドライブ装置106との間でデータ通信する。
情報管理部10は、駆動部10Aと、設定部10Bと、判定部10Cと、判断部10Dと、調整設定部10Eとを有する。
駆動部10Aは、ファンユニットヒータ1d、ファン1e、フィルタユニット温調器2g、フィルタユニット流量調整弁2h、フィルタユニット湿調器2k、検査開閉弁3Cc、検査温調器3Db、検査流量調整弁3Dd、検査湿調器3Dfへの駆動データを生成する。駆動部10Aは、例えば、放射線計4による放射線計測に基づきファン1eを駆動する駆動データを生成したり、ファンユニット温度計1gによる温度計測に基づきファンユニットヒータ1dを駆動する駆動データを生成したり、フィルタユニット温度計2eによる温度計測に基づきフィルタユニット温調器2gを駆動する駆動データを生成したり、フィルタユニット湿度計2jによる湿度計測に基づきフィルタユニット湿調器2kを駆動する駆動データを生成したり、フィルタユニット流量計2iによる流量計測に基づきフィルタユニット流量調整弁2hを駆動する駆動データを生成したり、検査開始の指令に基づき検査開閉弁3Ccを駆動する駆動データを生成したり、検査温度計3Daによる温度計測に基づき検査温調器3Dbを駆動する駆動データを生成したり、検査湿度計3Deによる湿度計測に基づき検査湿調器3Dfを駆動する駆動データを生成したり、検査流量計3Dcによる流量計測に基づき検査流量調整弁3Ddを駆動する駆動データを生成したりする。
設定部10Bは、ファンユニットヒータ1d、ファン1e、フィルタユニット温調器2g、フィルタユニット流量調整弁2h、フィルタユニット湿調器2k、検査開閉弁3Cc、検査温調器3Db、検査流量調整弁3Dd、検査湿調器3Dfへの駆動データの設定値を生成する。設定部10Bは、例えば、ファンユニットヒータ1dを駆動する設定温度を設定したり、フィルタユニット温調器2gを駆動する設定温度を設定したり、フィルタユニット湿調器2kを駆動する設定湿度を設定したり、フィルタユニット流量調整弁2hを駆動する設定流量(流速)を設定したり、検査開閉弁3Ccを開放する開放時間を設定したり、検査温調器3Dbを駆動する設定温度を設定したり、検査湿調器3Dfを駆動する設定湿度を設定したり、検査流量調整弁3Ddを駆動する設定流量(流速)を設定したりする。設定値は、予め設定された設定データや、入出力部9から入力された各情報や、データベース11に記憶された各情報に基づいて設定される。
判定部10Cは、検査ユニット3の検査用ガス供給部3Cにより検査用ガスが供給される場合に、濃度計測部3Eにて計測された濃度に基づき、フィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期を判定する。判定部10Cは、記憶装置102に記憶されている例えば、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および事例ベース推論などによる1または複数の推論規則に基づいてフィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期を判定する。判定部10Cは、例えば、濃度計測部3Eの検査上流濃度計3Eaにより計測された検査用ガスの濃度(S1)と、検査下流濃度計3Ebにより計測された検査用ガスの濃度(S2)とにより、検査用フィルタ3Bによる検査用ガスの除去効率(η[%])をη=(1-S2/S1)・100の式により算出する。そして、算出した除去効率(η[%])が所定の閾値を下回った場合、フィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期とする。または、判定部10Cは、例えば、算出した除去効率(η[%])が低下傾向にある場合、所定の閾値を下回る時期(寿命)を判定してその時期を交換時期とする。所定の閾値は、例えば、ASTM D3803-89において定められたよう素除去効率97%とする。この交換時期を判定した情報を判定情報という。判定情報は、記憶装置102に記憶され、かつデータベース11に記憶されており、情報管理部10において取得することができる。
判断部10Dは、フィルタユニット2のケーシング2aを通過するガスの環境情報および判定部10Cにより判定した判定情報から放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能を判断する。環境情報は、温度や相対湿度や気候などであり、例えば、フィルタユニット2を設置してから検査を行うまでの間の温度(フィルタユニット温度計2eで計測されたケーシング2a内の平均温度)や相対湿度(フィルタユニット湿度計2jで計測されたケーシング2a内の平均相対湿度)や気候(空気浄化システムが設置された地域の天気・気温・降水量・風などを情報管理部10の入力装置104で入力したりインターネットや後述するネットワーク12から取得したりする)であって、記憶装置102に記憶され、かつデータベース11に記憶されており、情報管理部10において取得することができる。判断部10Dは、環境情報および判定情報から、記憶装置102に記憶されている例えば、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および事例ベース推論などによる1または複数の推論規則に基づいてフィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能を判断する。
判断部10Dは、フィルタユニット2のケーシング2aを通過するガスに関する環境情報や、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの個体情報および判定部10Cにより判定した判定情報から放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能を判断する。環境情報は、上述した温度や相対湿度や気候などである。個体情報は、吸着剤2cBの母材の種類や生産地、吸着剤2cBの製造年月日などであり、入力装置104やドライブ装置106から取得されて記憶装置102に記憶され、かつデータベース11に記憶されており、情報管理部10において取得することができる。判断部10Dは、環境情報、個体情報および判定情報の各情報から、記憶装置102に記憶されている例えば、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および事例ベース推論などによる1または複数の推論規則に基づいてフィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能を判断する。
調整設定部10Eは、判断部10Dの判断から、性能低下率が最小となるようにフィルタユニット2のケーシング2aを通過するガスの環境(温度や相対湿度)を調整する。調整設定部10Eは、判断部10Dが判断した放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能から、記憶装置102に記憶されている例えば、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および事例ベース推論などによる1または複数の推論規則に基づいて、当該吸着剤2cBの交換時期(寿命)が長くなるように、温度や相対湿度を調整し設定する。
データベース11は、入出力部9などの外部から入力した各種データや、情報管理部10が生成した各データなどを記憶するものである。データベース11に記憶されるデータは、情報管理部10が取り出すことができる。
上述した空気浄化システムの動作について説明する。図7~図9は、本実施形態の空気浄化システムの動作を示すフローチャートである。
定期点検時において、図7に示すように、情報管理部10は、オペレータの点検指令に基づき駆動部10Aによりファンユニット1のファン1eを稼働させる(ステップS1)。次に、情報管理部10は、フィルタユニット温度計2eとフィルタユニット湿度計2jとフィルタユニット流量計2iの測定値を取得する(ステップS2)。次に、情報管理部10は、検査温度計3Daと検査湿度計3Deと検査流量計3Dc測定値がフィルタユニット温度計2eとフィルタユニット湿度計2jとフィルタユニット流量計2iの測定値と同じくなるように駆動部10Aにより検査温調器3Dbと検査湿調器3Dfと検査流量調整弁3Ddを制御する(ステップS3)。これにより、フィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cを通過するガスと検査ユニット3の検査用フィルタ3Bを通過するガスの温度、相対湿度および流量が等しくなり、各フィルタ2c,3Bを同等の環境下とすることができる。
検査時において、図8に示すように、情報管理部10は、オペレータの検査指令に基づき駆動部10Aによりファンユニット1のファン1eを稼働させる(ステップS11)。次に、情報管理部10は、駆動部10Aにより検査用ガス供給部3Cを稼働させ、検査開閉弁3Ccを開けて分岐管3Aの内部に検査用ガス(例えば、非放射性のよう化メチルの濃度100ppm)を供給する(ステップS12)。次に、情報管理部10は、検査温度計3Daと検査湿度計3Deと検査流量計3Dc測定値が検査条件となるように検査温調器3Dbと検査湿調器3Dfと検査流量調整弁3Ddを制御する(ステップS13)。すなわち、ステップS13では、検査用フィルタ3Bを、所定の検査条件(ASTM D3803-89において、温度30℃、相対湿度95%RH、流速20cm/s)の環境とする。次に、情報管理部10は、濃度計測部3Eにて計測された濃度を取得し(ステップS14)、取得した濃度に基づき、判定部10Cにおいて、フィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期を判定する(ステップS15)。判定結果(判定情報)は、データベース11に記憶され、必要に応じてオペレータに報知する。
このような、定期点検や検査を繰り返すことで、データベース11には、様々な環境において定期点検された吸着剤2cBについて数多くの判定結果が記憶される。そして、情報管理部10は、判断部10Dにおいて、フィルタユニット2のケーシング2aを通過するガスの環境情報および判定情報に基づいて放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能を判断する。
また、情報管理部10は、上記判断から吸着剤2cBの交換時期(寿命)が長くなるように、調整設定部10Eにより環境情報である温度や相対湿度を調整し設定する。そして、その後の定期点検において、図9に示すように、情報管理部10は、オペレータの点検指令に基づき駆動部10Aによりファンユニット1のファン1eを稼働させる(ステップS21)。次に、情報管理部10は、フィルタユニット温度計2eとフィルタユニット湿度計2jとフィルタユニット流量計2iの測定値を取得する(ステップS22)。次に、情報管理部10は、調整結果に合わせフィルタユニット温調器2gとフィルタユニット湿調器2kとフィルタユニット流量調整弁2hを制御する(ステップS23)。次に、情報管理部10は、フィルタユニット温度計2eとフィルタユニット湿度計2jとフィルタユニット流量計2iの測定値を取得して環境を確認する(ステップS24)。すなわち、ステップS23,S24では、情報管理部10は、吸着剤2cBの交換時期(寿命)が長くなるような環境下に放射性物質除去フィルタ2cを置く。次に、情報管理部10は、測定値と同じくなるように駆動部10Aにより検査温調器3Dbと検査湿調器3Dfと検査流量調整弁3Ddを制御する(ステップS25)。これにより、フィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cを通過するガスと検査ユニット3の検査用フィルタ3Bを通過するガスの温度、相対湿度および流量が等しくなり、各フィルタ2c,3Bを同等に吸着剤2cBの交換時期(寿命)が長くなるような環境下とすることができる。そして、その後の検査(図8参照)において、吸着剤2cBの交換時期(寿命)が長くなったか否かを判定することができる。
このように、本実施形態の空気浄化システムは、入口2aaと出口2abとが一繋がりに連続して形成されて気密性が確保されたケーシング(流通路)2aと、入口2aaから出口2abに至りケーシング2aの内部にガスを通過させるファン(送風機)1eと、ケーシング2a内に設けられて入口2aaから出口2abに至るガス中に含まれる放射性物質を吸着する吸着剤2cBが充填された放射性物質除去フィルタ2cと、を有している。そして、本実施形態の空気浄化システムは、放射性物質除去フィルタ2cの入口2aa側からケーシング2aの内部のガスの一部が通過可能に設けられた分岐管(別の流通路)3Aと、分岐管3A内に設けられて放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBと同組成の吸着剤が充填された検査用フィルタ3Bと、分岐管3A内における温度、相対湿度および検査用フィルタ3Bの下流側の流速を調整する調整部3Dと、分岐管3A内の検査用フィルタ3Bの上流側に検査用ガスを供給する検査用ガス供給部3Cと、分岐管3A内の検査用フィルタ3Bの上流側および下流側の検査用ガスの濃度を計測する濃度計測部3Eと、検査用ガス供給部3Cにより検査用ガスが供給される場合に、濃度計測部3Eにて計測された濃度から推論規則に基づき放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期を判定する判定部10Cと、を備える。
この空気浄化システムによれば、従来は、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBを検査機関に送り検査していたが、この検査を放射性物質除去フィルタ2cから吸着剤2cBを抜くことなく、かつその場で検査し、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期を判定する。具体的には、定期点検時などでケーシング2aにガスを通過させる場合に、ケーシング2aを通過するガスの一部を分岐管(別の流通路)3Aにも通過させて、検査用フィルタ3Bを設けた分岐管3A内の雰囲気(温度、相対湿度および流速)を、放射性物質除去フィルタ2cが設けられたケーシング2a内の雰囲気になりゆきで合わせる。そして、検査時において、調整部3Dにより分岐管3A内における温度、相対湿度および検査用フィルタ3Bの下流側の流速を検査条件(ASTM D3803-89に準拠した、温度30℃、相対湿度93%RH~96%RH、流速20cm/s)に調整する。そして、検査後は、再び分岐管3A内の雰囲気をケーシング2a内の雰囲気になりゆきで合わせる。すなわち、検査時以外は分岐管3A内の雰囲気をケーシング2a内の雰囲気になりゆきで合わせ、検査時においてケーシング2a内の放射性物質除去フィルタ2cを取り出すことなく分岐管3A内の雰囲気を検査条件として検査用フィルタ3Bの性能を基準に放射性物質除去フィルタ2cの性能を確認する。この結果、放射性物質除去フィルタ2cの性能低下を簡便に把握することができる。通常は、雰囲気(なりゆき)にて放射性物質除去フィルタ2cと検査用フィルタ3Bに通気している。検査時には、検査用フィルタ3Bのみを試験条件を以て検査する。そして、フィルタの除去効率が97%以上であることを確認し、それ以下になると放射性物質除去フィルタ2cを交換する必要が発生する。また、検査が終了すれば検査用フィルタ3B系を、放射性物質除去フィルタ2c系と同じ雰囲気に戻して通気運転に戻る。
また、本実施形態の空気浄化システムでは、調整部3Dは、ケーシング2aにガスを通過させる場合に、分岐管3Aを通過するガスの温度、相対湿度および流速がケーシング2aと同じになるように調整する一方、検査用ガス供給部3Cにより検査用ガスを供給する場合に、分岐管3Aの温度、相対湿度および流速が所定の検査条件となるように調整することが望ましい。
この空気浄化システムによれば、定期点検時にケーシング2aにガスを通過させる場合は、検査用フィルタ3Bを放射性物質除去フィルタ2cと同じ環境とすることができ、検査時は、検査用フィルタ3Bを検査用の環境にすることができる。この結果、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能低下を正確に把握することができる。
また、本実施形態の空気浄化システムでは、ケーシング2aを通過するガスに関する環境情報および判定部10Cにより判定した判定情報から推論規則に基づいて放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能を判断する判断部10Dを有することが望ましい。
この空気浄化システムによれば、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能を判断することで、吸着剤2cBの性能低下傾向を把握することができる。また、この空気浄化システムによれば、性能低下傾向を把握することで、検査頻度を最適化することができる。
また、本実施形態の空気浄化システムでは、ケーシング2aを通過するガスに関する環境情報、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの個体情報および判定部10Cにより判定した判定情報から推論規則に基づいて放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能を判断する判断部10Dを有することが望ましい。
この空気浄化システムによれば、吸着剤2cBの母材の種類や生産地、吸着剤2cBの製造年月日など個体情報から吸着剤2cBの性能を判断することで、個体情報に基づいて吸着剤2cBの性能低下傾向を把握することができる。また、この空気浄化システムによれば、性能低下傾向を把握することで、検査頻度を最適化することができる。
また、本実施形態の空気浄化システムでは、判断部10Dの判断に基づいてケーシング2aを通過するガスの環境を調整する調整設定部10Eをさらに有することが望ましい。
この空気浄化システムによれば、吸着剤2cBの性能低下傾向を把握した場合、これに基づき性能低下率を最小とするようにケーシング2aを通過するガスの環境を調整することで、寿命を延長することができる。
また、本実施形態の検査ユニット(検査装置)3は、入口2aaと出口2abとが一繋がりに連続して形成されて気密性が確保されたケーシング(流通路)2aと、入口2aaから出口2abに至りケーシング2aの内部にガスを通過させるファン(送風機)1eと、ケーシング2a内に設けられて入口2aaから出口2abに至るガス中に含まれる放射性物質を吸着する吸着剤2cBが充填された放射性物質除去フィルタ2cと、を有する空気浄化システムに用いられる検査ユニット(検査装置)3であって、放射性物質除去フィルタ2cの入口2aa側からケーシング2aの内部のガスの一部が通過可能に設けられ、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBと同組成の吸着剤が充填された検査用フィルタ3Bが設けられる分岐管(別の流通路)3Aと、分岐管3A内における温度、相対湿度および検査用フィルタ3Bの下流側の流速を調整する調整部3Dと、分岐管3A内の検査用フィルタ3Bの上流側に検査用ガスを供給する検査用ガス供給部3Cと、分岐管3A内の検査用フィルタ3Bの上流側および下流側の検査用ガスの濃度を計測する濃度計測部3Eと、検査用ガス供給部3Cにより検査用ガスが供給される場合に、濃度計測部3Eにて計測された濃度から推論規則に基づき放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期を判定する判定部10Cと、を備える。
この検査ユニット(検査装置)3によれば、従来は、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBを検査機関に送り検査していたが、この検査を放射性物質除去フィルタ2cから吸着剤2cBを抜くことなく、かつ空気浄化システムの場所で検査し、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期を判定する。この結果、放射性物質除去フィルタ2cの性能低下を簡便に把握することができる。
また、本実施形態の検査ユニット(検査装置)3では、調整部3Dは、ケーシング2aにガスを通過させる場合に、分岐管3Aを通過するガスの温度、相対湿度および流速がケーシング2aと同じになるように調整する一方、検査用ガス供給部3Cにより検査用ガスを供給する場合に、分岐管3Aの温度、相対湿度および流速が所定の検査条件となるように調整することが望ましい。
この検査ユニット(検査装置)3によれば、定期点検時にケーシング2aにガスを通過させる場合は、検査用フィルタ3Bを放射性物質除去フィルタ2cと同じ環境とすることができ、検査時は、検査用フィルタ3Bを検査用の環境にすることができる。この結果、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能低下を正確に把握することができる。
図10は、本実施形態に係る空気浄化システムの他の例のブロック図である。図10に示す実施形態は、同様な複数の空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…があって、これら空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…がネットワーク12を介して接続されている点が上述した実施形態と異なり、その他の構成は同様である。
各空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…は、同期管理部13を有する。同期管理部13は、入出力部9と情報管理部10との間でそれぞれに接続されていると共に、ネットワーク12に接続され、各空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…の間で情報の共有を行うものである。例えば、同期管理部13は、ネットワーク12を通して各情報(環境情報、個体情報および判定情報)の送受信を行い、各情報の更新を行う。ここでの更新とは、新たな検査により発生した新たな各情報をデータベース11に記憶することをいう。
また、データベース11は、各空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…にそれぞれ接続されていてもよいが、図10に示すように、単一のデータベース11がネットワーク12に接続されて各情報が統括して記憶され、この単一のデータベース11からネットワーク12を介して各空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…が各情報を共有可能に構成されていてもよい。従って、データベース11は、ネットワーク12経由にて取得した各情報を時系列毎に保管することができる。
本実施形態の空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…において、上述した各情報は、特定された放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの固有識別情報を含むように設定され、同期管理部13は、ネットワーク12を介し、固有識別情報に基づいて特定された放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBに関する各情報を取得する。また、同期管理部13は、空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…が適用され得る様々な原子力設備における気候情報をネットワーク12を介して取得する。
このように、図10に示す空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…は、固有識別情報に基づいて特定された放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBに関する環境情報、個体情報および判定情報をネットワーク12を介して取得され、データベース11に記憶されて各空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…において同期管理部13で共有される。
この空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…によれば、取得した空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…の各情報から、調整設定部10Eは、記憶装置102に記憶されている例えば、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および事例ベース推論などによる1または複数の推論規則に基づいて、総合的に放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期を判定し、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能低下傾向を判断することができる。また、空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…によれば、取得した空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…の各情報から、調整設定部10Eは、記憶装置102に記憶されている例えば、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および事例ベース推論などによる1または複数の推論規則に基づいて、各空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…毎の温度および相対湿度を調整することで、定期点検時の環境や検査頻度などの最適化を図らせることができる。すなわち、点検・検査時期と温度、相対湿度および気候条件との相関データを蓄積させて、吸着剤2cBの性能劣化要因となる温度、相対湿度および気候条件を踏まえ、性能劣化要因の抑制、試験条件の緩和などを図ることができ、吸着剤2cBの性能低下を最小とする、すなわち寿命を延長することで交換頻度や検査頻度を低減することができる。
上述したように、推論規則は、記録媒体108やネットワーク12を介して各空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…において情報管理部10に入力され記憶装置102に記憶されている。そして、空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…の情報管理部10は、記憶装置102に記憶されている推論規則を更新することができる。そのため、空気浄化システムSI1,SI2,SI3,SI4…の情報管理部10は、図10に示すように、更新部10Fを有している。
情報管理部10は、上述したように、記憶装置102に記憶され、かつデータベース11に記憶された環境情報を取得することができる。また、情報管理部10は、上述したように、記憶装置102に記憶され、かつデータベース11に記憶された個体情報を取得することができる。また、情報管理部10は、上述したように、記憶装置102に記憶され、かつデータベース11に記憶された判定情報を取得することができる。
更新部10Fは、記憶装置102やデータベース11に記憶された環境情報と個体情報との関係において所定の条件を満たす判定がなされた判定情報に基づいて、新たな推論規則を生成する。そして、更新部10Fは、この新たな推論規則を所定の条件を満たす場合の環境情報と個体情報とを関連付けた1または複数の推論規則を記憶装置102に記憶する。所定の条件を満たすとは、例えば、放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能低下を最小とすることができた場合であり、更新部10Fは、この所定の条件を満たした場合の環境情報と個体情報との関係に基づいて新たな推論規則を生成する。
そして、情報管理部10の判定部10Cは、新たな推論規則に基づいて、フィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの交換時期を判定することで、より精度の高い判定を行うことができる。また、情報管理部10の判断部10Dは、新たな推論規則に基づいて、フィルタユニット2の放射性物質除去フィルタ2cの吸着剤2cBの性能を判断する。ことで、より精度の高い判断を行うことができる。また、情報管理部10の調整設定部10Eは、新たな推論規則に基づいて、吸着剤2cBの交換時期(寿命)が長くなるように、温度や相対湿度を調整し設定することで、より吸着剤2cBの寿命を延ばす設定を行うことができる。
ところで、図11~図13は、本実施形態に係る空気浄化システムの他の例の構成図である。
図1で示した空気浄化システムは、フィルタユニット2において1段の放射性物質除去フィルタ2cを設けた構成であるが、性能向上を図るため、図11~図13に示すように1段目の放射性物質除去フィルタ2cの下流側であって放射性物質除去フィルタ2cと第二高性能フィルタ2dとの間に、2段目の放射性物質除去フィルタ2c’が設けられている。放射性物質除去フィルタ2c’の構成は放射性物質除去フィルタ2cと同様である。
このように2段目に放射性物質除去フィルタ2c’を設けた場合、図11に示す空気浄化システムでは、検査ユニット3は、分岐管3Aの入口3Aaが、図1に示す空気浄化システムと同様に、第一高性能フィルタ2bと放射性物質除去フィルタ2cとの間に配置されている。検査用フィルタ3Bは、1段で構成されている。この図11に示す空気浄化システムでは、検査用フィルタ3Bにより1段目の放射性物質除去フィルタ2cの性能低下を検査する。そして、1段目の放射性物質除去フィルタ2cの交換時期が判定された場合は、2段目の放射性物質除去フィルタ2c’の交換時期も1段目の放射性物質除去フィルタ2cと同じと判定する。
図12に示す空気浄化システムでは、検査ユニット3,3’を備える。検査ユニット3は、分岐管3Aの入口3Aaが、図1に示す空気浄化システムと同様に、第一高性能フィルタ2bと放射性物質除去フィルタ2cとの間に配置されている。検査用フィルタ3Bは、1段で構成されている。また、検査ユニット3’は、検査ユニット3と同じ構成であり、分岐管3A’の入口3Aa’が、1段目の放射性物質除去フィルタ2cと2段目の放射性物質除去フィルタ2c’との間に配置されている。検査用フィルタ3B’は、1段で構成されている。この図12に示す空気浄化システムでは、検査用フィルタ3Bにより1段目の放射性物質除去フィルタ2cの性能低下を検査する。そして、1段目の放射性物質除去フィルタ2cの交換時期が判定される。また、図12に示す空気浄化システムでは、検査用フィルタ3B’により2段目の放射性物質除去フィルタ2c’の性能低下を検査する。そして、2段目の放射性物質除去フィルタ2c’の交換時期が判定される。このように、図12に示す空気浄化システムでは、検査ユニット3,3’により、1段目の放射性物質除去フィルタ2cの交換時期と、2段目の放射性物質除去フィルタ2c’の交換時期とをそれぞれ判定する。なお、図12において、検査ユニット3’は、検査ユニット3と同じ構成であり、検査ユニット3’の構成の符号には、検査ユニット3の構成の符号に「’」を付け、その説明を省略する。
図13に示す空気浄化システムでは、検査ユニット3は、図11に示す構成に対し、1段目の検査用フィルタ3Bの下流に2段目の検査用フィルタ3B’を有する。この図13に示す空気浄化システムでは、検査用フィルタ3B,3B’により1段目の放射性物質除去フィルタ2cおよび2段目の放射性物質除去フィルタ2c’の性能低下を検査する。
このように、本実施形態の空気浄化システムは、図11~図13で示す様々な形態により、2段(複数段)で配置された放射性物質除去フィルタ2c,2c’に応じて検査を実施することができる。