JP6757932B2 - 転がり軸受装置 - Google Patents
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Description
本発明は、転がり軸受の潤滑寿命を向上させることができる転がり軸受装置を提供することを目的とする。
このような構成によって、浸透部材に浸透された潤滑剤を案内部材の供給面から案内面へ向けてスムーズに供給することができる。
このような構成によって、浸透部材に浸透された潤滑剤を、溝部を介して案内面と被案内面との間に好適に供給することができる。また、案内面と被案内面との間に供給された潤滑剤が消費されても、浸透部材に浸透された潤滑剤が表面張力によって溝部内に補給されるため長期間にわたり継続して潤滑を行うことができる。
このような構成によって、浸透部材から溝部を介して案内面と被案内面との間へ最短距離で潤滑剤を供給することができる。
このような構成によって、保持器の被案内面が案内面上を摺動するときの溝部による抵抗を少なくし、案内面上で被案内面をスムーズに摺動させることができる。また、溝部の長さを可及的に長くすることができ、溝部内により多くの潤滑剤を保持することができる。
このような構成によって、供給面及び案内面上の潤滑剤が転がり軸受に供給されて減少すると、浸透部材に浸透された潤滑剤が増ちょう剤に吸引されることにより供給面を介して案内面と被案内面との間に供給される。したがって、転がり軸受装置の使用開始当初から円滑な潤滑を行うことができる。
このような構成によって、案内部材を活用して貯留室を形成することができる。
前記外周壁又は前記内周壁が、前記固定輪と前記回転輪との間に挿入されて前記案内部材を構成していることが好ましい。
例えば転がり軸受装置が人工衛星に適用される場合、打ち上げまでの間に部品の評価やメンテナンス等の作業が行われるが、これらの作業には、転がり軸受の内部を真空引きする工程が含まれることがある。しかし、この工程において、貯留室の内部に含まれる空気が案内部材の案内面と保持器の被案内面との間への潤滑剤の供給経路を介して貯留室の外部へ排出されると、潤滑剤浸透部材に浸透された潤滑剤までも外部へ流出させてしまい、貯留室内の潤滑剤が減少してしまう可能性がある。したがって、上記構成のように、前記潤滑剤貯留部材に連通孔を形成することによって、転がり軸受の内部が真空引きされたときに貯留室内の空気を連通孔を介して排出することができ、浸透部材に浸透した潤滑剤が空気とともに流出してしまうのを好適に抑制することができる。
このような構成によって、上記のように転がり軸受内を真空引きするときに、環状空間により近い位置から空気を排出することができる。
このような構成によって、浸透部材が収容されていない領域に含まれる空気を連通孔を介して好適に貯留室から排出することができる。
このような構成によって、浸透部材に含まれる空気を連通孔を介して好適に貯留室から排出することができる。
このような構成によって、2つの転がり軸受の双方を1つの潤滑剤貯留部材を用いて好適に潤滑することができる。
このような構成によって、間座を潤滑剤貯留部材としても活用できる。
[第1の実施形態]
[転がり軸受の全体構成]
図1は、第1の実施形態に係る転がり軸受装置を示す断面図である。図2は、転がり軸受と潤滑剤貯留部材とを拡大して示す断面図である。図3は、保持器と案内部材とを拡大して示す断面図である。
転がり軸受装置10は、軸方向に間隔をあけて配置された2個(複列)の転がり軸受11と、2個の転がり軸受11の間に設けられた間座12,13とを備えている。この転がり軸受装置10は、宇宙で使用される機器、例えば人工衛星において、姿勢制御用のフライホールやジャイロスコープ等で用いられる軸を回転自在に支持するために用いられる。
本実施形態の転がり軸受11は、内輪軌道面22aが転動体23に対して斜めに接し、軸方向に予圧を付与して使用されるアンギュラ玉軸受とされている。また、内輪22は、その内周面が回転運動する軸Sに嵌合されることによって、軸Sに固定されている。外輪21は、その外周面が転がり軸受装置10が適用される機器のハウジングHに嵌合されることによって、ハウジングHに固定されている。したがって、外輪21は固定輪を構成し、内輪22は回転輪を構成している。2個のアンギュラ玉軸受11は、背面合わせの関係で配置されている。
保持器24は、合成樹脂製とすることができる。例えば、保持器24は、フェノール樹脂により形成することができる。フェノール樹脂は、内部に潤滑剤を取り込むことが可能である。
外輪間座12は、2個の転がり軸受11の外輪21の間に配置されている。2個の外輪21は、外輪間座12によって、互いに軸方向に接近する方向へ移動が規制されている。言い換えると、2個の外輪21は、外輪間座12によって軸方向の位置が設定され、互いの間隔が保持されている。また、外輪間座12は、転がり軸受11に軸方向の予圧を付与するために用いられる。
外輪間座12は、外輪21と同様にその外周面がハウジングHに嵌合されることによって、ハウジングHに固定されている。外輪間座12は、後述するように潤滑剤貯留部材と案内部材とを構成する。
図1に示すように、外輪間座12は、外周壁31と、内周壁32と、第1側壁33と、第2側壁34とを有している。また、外輪間座12は、潤滑剤を貯留するための貯留室35を有している。
外周壁31は、断面形状が平板状とされた円筒形状に形成されている。外周壁31の外径は、外輪21の外径とほぼ同一である。外周壁31の外周面は、ハウジングHに嵌合されている。外周壁31の軸方向寸法は、2個の転がり軸受11の外輪21の間隔よりも小さく形成されている。
また、第2側壁34の内径は、内周壁32の外径よりも大きい。そのため、第2側壁34の内周面と内周壁32の外周面とは間隔をあけて配置されている。
図2に示すように、浸透部材40は、第1部分41と第2部分42とを有している。第1部分41は、貯留室35内に配置されている。第2部分42は、開口部36内に配置されている。第1部分41及び第2部分42は、いずれも円環状に形成されている。第1部分41及び第2部分42は、それぞれ断面長方形状に形成されている。
第1部分41の外径は、第2部分42の外径よりも大きい。第1部分41の軸方向寸法は、貯留室35の軸方向寸法とほぼ同一である。第1部分41の断面における径方向寸法は、貯留室35の断面における径方向寸法よりも小さい。第1部分41は、貯留室35の容積の半分以上を占める範囲で設けられている。貯留室35は、内周側の領域が第1部分41で埋め尽くされ、外周側の領域が空間とされ、この空間内に潤滑剤が充填される。
なお、転がり軸受装置10の使用開始時には、図3に示すように、供給面32d及び案内面32bに予め増ちょう剤を含むグリースが塗布される。そして、塗布されたグリースの基油が転がり軸受11の内部側へ排出されることによって減少すると、浸透部材40の第2部分42に浸透した基油が、供給面32d上の増ちょう剤に毛細管現象によって吸引され、案内面32bと被案内面24bとの間に供給される。このような作用によって、転がり軸受装置10の使用開始時点から継続した潤滑を行うことができる。なお、グリースは、案内面32b及び供給面32dだけでなく内周壁32の外周面全体に塗布してもよい。
図4は、第2の実施形態に係る転がり軸受装置を示す断面図である。
本実施形態は、2個のアンギュラ玉軸受11が、正面合わせの関係で配置されている。そして、外輪間座12の内周壁(案内部材)32を、外輪21と内輪22との間の環状空間に挿入させるため、内輪22の外周面には、凹部22bが形成されている。この凹部22bは、軸方向の外側(外輪間座12側)ほど外径が小さくなる傾斜面を有している。内周壁32の軸方向端部の内周側には、凹部22bの傾斜面に対向する傾斜面が形成されている。
その他の構成は、第1の実施形態と同様であり、本実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果を奏するため、詳細な説明は省略する。
図5は、第3の実施形態に係る転がり軸受装置の一部を示す断面図である。
本実施形態の転がり軸受装置10は、保持器24の軸方向一端部の外周面に被案内面24cが形成されている。また、外輪間座12のうち、第2側壁34が案内部材として構成されている。具体的に、第2側壁34には、転がり軸受11側に突出する案内部34aが形成され、この案内部34aが、外輪21と内輪22との間の環状空間に挿入されている。そして、案内部34aの内周面が、被案内面24cに対向して保持器24の回転を案内する案内面34cとされている。また、第2側壁34の内周面34dのうち案内面34cを除く部分は、浸透部材40の第2部分42が直接的に接触し、案内面34cと被案内面24cとの間へ潤滑油を供給するための供給面とされている。外輪21の内周面には、第2側壁34の案内部34aを挿入させるための凹部21bが形成されている。第2側壁34の内周面34dは、全体が研削加工によって仕上げられる。一方、第1の実施形態において案内部材を構成していた内周壁32は、本実施形態では外周面の研削加工が不要となり、外周面全体を切削加工のみにより形成することができる。そのため、図3に示すような研削領域と切削領域との境界を設定する凹溝32cも不要となる。
図6は、第4の実施形態に係る転がり軸受装置を示す断面図である。
上記各実施形態の転がり軸受装置10は、転がり軸受11が複列に設けられ、潤滑剤貯留部材を構成する外輪間座12が、複列の転がり軸受11に対応して2個の貯留室35を備えていたが、第4の実施形態の転がり軸受装置10は、1つの転がり軸受11に対応する1つの貯留室35が外輪間座12に形成されたものとなっている。
本実施形態においても、貯留室35に貯留された潤滑剤が浸透部材40に浸透し、浸透部材40から供給面32dを伝って案内面32bと保持器24の被案内面24bとの間に潤滑剤が供給される。その他の構成及び作用効果は上記第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図7は、第5の実施形態に係る転がり軸受装置を示す断面図である。
本実施形態では、外輪間座12における内周壁32の外周面に溝部50が形成されている。この溝部50には、浸透部材40に浸透された潤滑剤が流入し、保持される。また、外輪間座12における第2側壁34には、貯留室35の内部と、転がり軸受11における外輪21と内輪22との間の環状空間とを連通し、気体を通過させることができる連通孔55が形成されている。
なお、本実施形態の外輪間座12は、単列の転がり軸受11に対応する1つの貯留室35を備えたものとなっているが、上述の第1の実施形態のように複列の転がり軸受11に対応する2つの貯留室35を備えたものであってもよい。
図10は、第6の実施形態に係る転がり軸受装置の外輪間座を示す斜視図である。
本実施形態では、外輪間座12の内周壁32には、第5の実施形態と同様に複数の溝部50が形成されているが、この溝部50は、軸方向に対して傾斜しており、螺旋形状に形成されている。複数の溝部50は互いに平行に並べられている。
また、溝部50が軸方向に対して傾斜して形成されているので、案内面32b上を保持器24の被案内面24bが摺動したときに、当該被案内面24bが溝部50を垂直に横切らず、斜めに横切ることになる。そのため、溝部50による抵抗が少なくなり、案内面32b上で被案内面24bを円滑に摺動させることができる。
図11は、第7の実施形態に係る転がり軸受装置の外輪間座を示す斜視図である。
本実施形態では、第6の実施形態と同様に、外輪間座12の内周壁32に複数の溝部50a,50bが形成されているが、この溝部50a,50bは、軸方向に対して一方向に傾斜し螺旋形状に形成された複数の第1の溝部50aと、軸方向に対して他方向に傾斜し螺旋形状に形成された複数の第2の溝部50bとからなる。複数の第1の溝部50aは互いに平行に並べられ、複数の第2の溝部50bは互いに平行に並べられている。第1の溝部50aと第2の溝部50bとは互いに交差している。
また、本実施形態では、第1及び第2の溝部50a、50bが軸方向に対して傾斜して形成されているので、案内面32b上を保持器24の被案内面24bが摺動したときに、当該被案内面24bが溝部50を垂直に横切らず、斜めに横切ることになる。そのため、溝部50による抵抗が少なくなり、案内面32b上で被案内面24bを円滑に摺動させることができる。
上記第5〜第7の実施形態において、溝部50、50a、50bは、内周壁32の外周面の軸方向幅全体に形成されていなくてもよく、浸透部材40が接触する一部分と案内面32bとにわたる範囲で形成されていればよい。
図12は、第8の実施形態に係る転がり軸受装置の外輪間座の一部を拡大して示す断面図である。本実施形態の転がり軸受装置の外輪間座12は、上記第5の実施形態と同様に、第2側壁34に連通孔55が形成されている。本実施形態の連通孔55は、テーパー状に形成され、一端側(貯留室35側)の開口55aよりも他端側(転がり軸受側)の開口55bが小さく形成されている。また、一端側の開口55aは、一部が貯留室35内の浸透部材40に重なるように配置されている。
また、連通孔55は、転がり軸受11側の開口55bが貯留室35側の開口55aよりも小さく形成されているので、貯留室35内の潤滑剤が連通孔55に入り込んだとしても外部へ排出され難くなっている。
図13は、第9の実施形態に係る転がり軸受装置の外輪間座の一部を拡大して示す断面図である。本実施形態の転がり軸受装置は、上記第5の実施形態と同様に、外輪間座12の第2側壁34に連通孔55が形成されている。本実施形態の連通孔55は、一方の開口55a側にフィルター部材56が設けられている。このフィルター部材56は、空気の通過を許容し、潤滑剤の通過を抑制するものである。フィルター部材56は、例えば網状に形成されたものを使用することができる。フィルター部材56は、浸透部材40の連続気孔よりも目の粗いもの(気孔率が大きなもの)が用いられる。
なお、フィルター部材56は、連通孔55の他方の開口55b側に設けられていてもよいし、連通孔55の中間部に設けられていてもよい。
例えば、貯留室35を有する外輪間座12は、外周壁31、内周壁32、及び第1側壁33が一体に形成されていたが、これらの一部又は全てを別体で形成し、適宜、溶接等の結合手段によって一体的に形成してもよい。また、第2側壁34を外周壁31と一体的に形成してもよい。ただし、第2側壁34を外周壁31と別体とすることによって、貯留室35内に浸透部材40を挿入し易くすることができる。また、第2側壁34は、一体化された外周壁31、内周壁32、及び第1側壁33と比べて構造が簡単であるため、第2側壁34の軸方向寸法を調整することによって、アンギュラ玉軸受の予圧調整を容易に行うことができる。
上記第1〜第3の実施形態において、潤滑剤貯留部材は、2つの転がり軸受11に対応して2つの貯留室35を備えているが、2つの転がり軸受に対応する1つの貯留室35を備えていてもよい。
また、連通孔55は、外輪間座12の第2側壁34に形成されていたが、他の部分、例えば第1側壁33や内周壁32に形成されていてもよい。
また、本発明は、アンギュラ玉軸受以外の転がり軸受11、例えば、深溝玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心軸受等にも適用することができる。
Claims (11)
- 固定輪、回転輪、前記固定輪と前記回転輪との間に配置された複数の転動体、および、前記複数の転動体を保持する保持器を有する転がり軸受と、
前記固定輪に対して軸方向に隣接して配置され、内部に潤滑剤を貯留するための貯留室を有する潤滑剤貯留部材と、
前記潤滑剤貯留部材に設けられ、前記固定輪及び前記回転輪の間に挿入されるとともに、前記保持器の回転を案内する案内面を有する案内部材と、
少なくとも一部が前記貯留室に配置され、自身に浸透させた前記貯留室内の潤滑剤を前記案内面とこの案内面に対向する前記保持器の被案内面との間に供給する浸透部材と、を備え、
前記潤滑剤貯留部材には、前記貯留室の内部と、前記固定輪と前記回転輪との間の環状空間とを連通させ、かつ気体が通過可能な連通孔が形成され、
前記連通孔の前記貯留室側の開口は、前記貯留室における前記浸透部材が収容されている領域と前記浸透部材が収容されていない領域とに跨って形成されている、転がり軸受装置。 - 前記案内部材は、前記案内面と面一の状態で前記案内面に隣接して形成された供給面を備え、この供給面の少なくとも一部に前記浸透部材が接触している、請求項1に記載の転がり軸受装置。
- 前記供給面における少なくとも前記浸透部材が接触する部分と前記案内面とに、潤滑剤の通路となる溝部が形成されている、請求項2に記載の転がり軸受装置。
- 前記溝部が、軸方向に沿って形成されている、請求項3に記載の転がり軸受装置。
- 前記溝部が、軸方向に対して傾斜して形成されている、請求項3に記載の転がり軸受装置。
- 前記供給面及び前記案内面には、増ちょう剤を含む潤滑剤が塗布されている、請求項2〜5のいずれか1項に記載の転がり軸受装置。
- 前記案内部材が、前記貯留室を形成する壁として構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の転がり軸受装置。
- 前記潤滑剤貯留部材は、円筒状の外周壁と、前記外周壁の径方向内側に前記外周壁とは間隔をあけて配置された円筒状の内周壁と、前記外周壁と前記内周壁との間に配置された環状の第1側壁と、前記第1側壁よりも前記転がり軸受側に配置された環状の第2側壁とを有し、前記貯留室が、前記外周壁、前記内周壁、前記第1側壁、及び前記第2側壁によって囲まれた空間により形成され、
前記外周壁又は前記内周壁が、前記固定輪と前記回転輪との間に挿入されて前記案内部材を構成している、請求項7に記載の転がり軸受装置。 - 2つの前記転がり軸受が、軸方向に間隔をあけて設けられ、
2つの前記転がり軸受の間に1つの前記潤滑剤貯留部材が設けられ、
前記潤滑剤貯留部材には、前記各転がり軸受に対応する2つの前記貯留室と、前記各転がり軸受の前記保持器を案内する2つの前記案内部材とが設けられている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の転がり軸受装置。 - 前記潤滑剤貯留部材が、前記固定輪の軸方向の位置を設定する間座により構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の転がり軸受装置。
- 前記案内部材が、前記保持器の内周面を案内するものであり、前記保持器は、軸方向一端部の内周面に、前記案内面によって案内される被案内面を有しており、
前記被案内面の軸方向両側には、前記被案内面から軸方向へ離れるに従い漸次内径が増大する傾斜面が形成され、前記転がり軸受の内部側の傾斜面が、前記転がり軸受の外部側の傾斜面よりも大きい傾斜角度で形成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の転がり軸受装置。
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