JP6757680B2 - トルク変動抑制装置、トルクコンバータ、及び動力伝達装置 - Google Patents

トルク変動抑制装置、トルクコンバータ、及び動力伝達装置 Download PDF

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Description

本発明は、トルク変動抑制装置、特に、回転軸の回りに回転するとともにトルクが入力される回転体のトルク変動を抑制するためのトルク変動抑制装置に関する。また、本発明は、トルク変動抑制装置を備えたトルクコンバータ及び動力伝達装置に関する。
例えば、自動車のエンジンとトランスミッションとの間には、ダンパ装置を含むクラッチ装置やトルクコンバータが設けられている。また、トルクコンバータには、燃費低減のために、所定の回転数以上で機械的にトルクを伝達するためのロックアップ装置が設けられている。
ロックアップ装置は、一般に、クラッチ部と、複数のトーションスプリングを有するダンパと、を有している。また、クラッチ部は、油圧の作用によってフロントカバーに押し付けられる摩擦部材付きのピストンを有している。そして、ロックアップオンの状態では、トルクは、フロントカバーから摩擦部材を介してピストンに伝達され、さらに複数のトーションスプリングを介して出力側の部材に伝達される。
このようなロックアップ装置では、複数のトーションスプリングを有するダンパによって、トルク変動(回転速度変動)が抑えられる。
また、特許文献1のロックアップ装置では、イナーシャ部材を含むダイナミックダンパ装置を設けることによって、トルク変動を抑えるようにしている。特許文献1のダイナミックダンパ装置は、トーションスプリングを支持するプレートに装着されており、このプレートと相対回転自在な1対のイナーシャリングと、プレートとイナーシャリングとの間に設けられた複数のコイルスプリングと、を有している。
特開2015−094424号公報
特許文献1を含む従来のダイナミックダンパ装置では、所定の回転数域に現れるトルク変動のピークを抑えることができる。しかし、エンジンの仕様等が変わると、それに応じてトルク変動のピークが現れる回転数域が変わる。このため、エンジンの仕様等の変更に伴ってイナーシャリングの慣性量及びコイルスプリングのばね定数を変更する必要があり、対応が困難な場合がある。
本発明の課題は、回転部材のトルク変動を抑えるための装置において、比較的広い回転数域においてトルク変動のピークを抑えることができるようにすることにある。
(1)本発明に係るトルク変動抑制装置は、トルクが入力される回転体のトルク変動を抑制する装置である。このトルク変動抑制装置は、質量体と、複数の遠心子と、複数のカム機構と、を備えている。質量体は、回転体とともに回転可能であり、かつ回転体に対して相対回転自在に配置されている。複数の遠心子は、回転体及び質量体の回転による遠心力を受けるように配置されている。複数のカム機構は、遠心子に作用する遠心力を受けて、回転体と質量体との間に回転方向における相対変位が生じたときには、遠心力を、相対変位が小さくなる方向の円周方向力に変換する。
また、カム機構は、第1カムと、第2カムと、転動体と、を有する。第2カムは、第1カムと径方向に対向して設けられ、回転体と質量体との間の回転方向の相対変位に応じて遠心子とともに径方向に移動可能である。転動体は、第1カムと第2カムとの間に、回転体及び質量体に対して移動自在にかつ第1カム及び第2カムに沿って転動するように配置されている。
この装置では、回転体にトルクが入力されると、回転体及び質量体が回転する。回転体に入力されるトルクに変動がない場合は、回転体と質量体との間の回転方向における相対変位はなく、同期して回転する。一方、入力されるトルクに変動がある場合は、質量体は回転体に対して相対回転自在に配置されているために、トルク変動の程度によっては、両者の間に回転方向における相対変位(以下、この変位を「回転位相差」と表現する場合がある)が生じる。
ここで、回転体及び質量体が回転すると、遠心子は遠心力を受ける。そして、回転体と質量体との間に相対変位が生じたときには、カム機構は遠心子に作用する遠心力を円周方向力に変換し、この円周方向力は回転体と質量体の間の相対変位を小さくするように作用する。このようなカム機構の作動によって、トルク変動が抑えられる。
ここでは、遠心子に作用する遠心力を、トルク変動を抑えるための力として利用しているので、回転体の回転数に応じてトルク変動を抑制する特性が変わることになる。また、例えばカムの形状等によって、トルク変動を抑制する特性を適切に設定することができ、より広い回転数域におけるトルク変動のピークを抑えることができる。
また、ここでは、カム機構を、第1カム及び第2カムと、回転体及び質量体に対して移動自在でかつ第1カム及び第2カムに沿って転動する転動体と、によって構成されている。したがって、転動体を支持するための機構が不要となり、カム機構を簡単な構成で実現できる。
また、転動体は回転体や質量体に支持されていないので、回転体と質量体との間に回転位相差が生じた場合、転動体が例えば質量体に支持されていた場合に比較して、転動体の移動量は1/2になる。さらに、転動体の移動量が小さくなるので、遠心子の内周側への移動量も小さくなる。このため、遠心子の円周方向の幅を小さくでき、さらに、遠心子の径方向の移動を支持する部分の構成をコンパクトにすることができる。
(2)好ましくは、第1カムは質量体とともに回転し、第2カムは回転体とともに回転する。
ここでは、質量体と回転体との間に回転位相差が生ずると、この回転位相差に応じて第1カムと第2カムとの間に配置された転動体が転動する。この転動体は、遠心力によって移動する遠心子とともに移動し、カム機構が作動する。
(3)好ましくは、第1カムは質量体に設けられ、第2カムは回転体に配置されている。
(4)好ましくは、回転体は外周面に複数の凹部を有し、遠心子は凹部に径方向移動自在に収容されている。そして、第2カムは、遠心子の外周面に形成され、回転体と質量体との間の回転方向における相対変位量に応じて円周方向力が変化するような形状を有する。
(5)好ましくは、回転体の回転軸に直交する平面における第1カムと転動体との第1接線と、回転体の回転軸に直交する平面における第2カムと転動体との第2接線と、をさらに備えている。そして、第1カム及び第2カムは、回転体と質量体との間に回転方向における相対変位が生じたときに第1接線と第2接線とのなす角度が外周側に行くにしたがって小さくなるように形成されている。
ここでは、トルク変動によって回転体と質量体との間に回転位相差が生じた場合、転動体もその回転位相差に応じて両カムに沿って転動する。このとき、転動体と両カムとの第1接線及び第2接線が、両接線のなす角度が外周側に行くにしたがって小さくなるようにカム形状が設定されている。したがって、転動体が外周側に飛び出すのを防止できる。
(6)好ましくは、第1カムは、外周側に窪む円弧状の曲面又は複数の平坦面であり、第2カムは、内周側に窪む円弧状の曲面又は複数の平坦面である。すなわち、第1カムと第2カムの形状は、以下の4パターンを取り得る。
第1パターン:第1カムが曲面であり、第2カムが曲面
第2パターン:第1カムが曲面であり、第2カムが複数の平坦面
第3パターン:第1カムが複数の平坦面であり、第2カムが曲面
第4パターン:第1カムが複数の平坦面であり、第2カムが複数の平坦面
(7)本発明に係るトルクコンバータは、エンジンとトランスミッションとの間に配置される。このトルクコンバータは、エンジンからのトルクが入力される入力側回転体と、トランスミッションにトルクを出力するハブフランジと、入力側回転体とタービンとの間に配置されたダンパと、以上に記載のいずれかのトルク変動抑制装置と、を備えている。
(8)本発明に係る動力伝達装置は、フライホイールと、クラッチ装置と、以上に記載のいずれかのトルク変動抑制装置と、を備えている。フライホイールは、回転軸を中心に回転する第1慣性体と、回転軸を中心に回転し第1慣性体と相対回転自在な第2慣性体と、第1慣性体と第2慣性体との間に配置されたダンパと、を有する。クラッチ装置は、フライホイールの第2慣性体に設けられている。
以上のような本発明では、回転部材のトルク変動を抑えるための装置において、比較的広い回転数域においてトルク変動のピークを抑えることができる。また、本発明では、カム機構の構成を簡単にすることができる。
本発明の第1実施形態によるトルクコンバータの模式図。 図1のハブフランジ及びトルク変動抑制装置の正面部分図。 図2の矢視A図。 図2に示された部分の側面図。 カム機構の作動を説明するための図。 カム機構の作動を説明するための模式図。 回転数とトルク変動の関係を示す特性図。 本発明の適用例1を示す模式図。 本発明の適用例2を示す模式図。 本発明の適用例3を示す模式図。 本発明の適用例4を示す模式図。 本発明の適用例5を示す模式図。 本発明の適用例6を示す模式図。 本発明の適用例7を示す模式図。 本発明の適用例8を示す模式図。 本発明の適用例9を示す模式図。
図1は、本発明の一実施形態によるトルク変動抑制装置をトルクコンバータのロックアップ装置に装着した場合の模式図である。図1において、O−Oがトルクコンバータの回転軸線である。
[全体構成]
トルクコンバータ1は、フロントカバー2と、トルクコンバータ本体3と、ロックアップ装置4と、出力ハブ5と、を有している。フロントカバー2にはエンジンからトルクが入力される。トルクコンバータ本体3は、フロントカバー2に連結されたインペラ7と、タービン8と、ステータ(図示せず)と、を有している。タービン8は出力ハブ5に連結されており、出力ハブ5の内周部には、トランスミッションの入力軸(図示せず)がスプラインによって係合可能である。
[ロックアップ装置4]
ロックアップ装置4は、クラッチ部や、油圧によって作動するピストン等を有し、ロックアップオン状態と、ロックアップオフ状態と、を取り得る。ロックアップオン状態では、フロントカバー2に入力されたトルクは、トルクコンバータ本体3を介さずに、ロックアップ装置4を介して出力ハブ5に伝達される。一方、ロックアップオフ状態では、フロントカバー2に入力されたトルクは、トルクコンバータ本体3を介して出力ハブ5に伝達される。
ロックアップ装置4は、入力側回転体11と、ハブフランジ12(回転体)と、ダンパ13と、トルク変動抑制装置14と、を有している。
入力側回転体11は、軸方向に移動自在なピストンを含み、フロントカバー2側の側面に摩擦部材16が固定されている。この摩擦部材16がフロントカバー2に押し付けられることによって、フロントカバー2から入力側回転体11にトルクが伝達される。
ハブフランジ12は、入力側回転体11と軸方向に対向して配置され、入力側回転体11と相対回転自在である。ハブフランジ12は出力ハブ5に連結されている。
ダンパ13は、入力側回転体11とハブフランジ12との間に配置されている。ダンパ13は、複数のトーションスプリングを有しており、入力側回転体11とハブフランジ12とを回転方向に弾性的に連結している。このダンパ13によって、入力側回転体11からハブフランジ12にトルクが伝達されるとともに、トルク変動が吸収、減衰される。
[トルク変動抑制装置14]
図2は、ハブフランジ12及びトルク変動抑制装置14の正面図である。なお、図2は一方(手前側)のイナーシャリングを取り外して示している。図3は図2をA方向から視た図であり、後述する第1カム31aを取り外して示している。また、図4は図2のIV−IV線断面図である。図2以降の図ではハブフランジ12及びトルク変動抑制装置14の一部を示しているが、全体としては、円周方向の4ヶ所に、各図に示した部分が等角度間隔で設けられている。
トルク変動抑制装置14は、質量体20を構成する第1イナーシャリング201及び第2イナーシャリング202と、4個の遠心子21と、4個のカム機構22と、を有している。
<第1及び第2イナーシャリング201,202>
第1及び第2イナーシャリング201,202は、それぞれ連続した円環状に形成された所定の厚みを有するプレートであり、図3及び図4に示すように、ハブフランジ12を挟んでハブフランジ12の軸方向両側に所定の隙間をあけて配置されている。すなわち、ハブフランジ12と第1及び第2イナーシャリング201,202とは、軸方向に並べて配置されている。第1及び第2イナーシャリング201,202は、ハブフランジ12の回転軸と同じ回転軸を有し、ハブフランジ12とともに回転可能で、かつハブフランジ12に対して相対回転自在である。なお、第1イナーシャリング201と第2イナーシャリング202とは、図示しない複数のリベットによって互いに固定されている。したがって、第1イナーシャリング201と第2イナーシャリング202とは、互いに軸方向、径方向、及び回転方向に移動不能である。
<ハブフランジ12>
ハブフランジ12は、円板状に形成され、内周部が前述のように出力ハブ5に連結されている。ハブフランジ12の外周部には、所定の幅の4つの凹部12aが形成されている。凹部12aは、外周側に開くように形成され、所定の深さを有している。
<遠心子21>
遠心子21は、ハブフランジ12の凹部12aに配置されており、ハブフランジ12の回転による遠心力によって径方向に移動可能である。遠心子21は、円周方向に延びて形成され、円周方向の両端に形成された溝21a,21bと、外周面に形成された溝21cと、を有している。溝21a,21bの幅は、ハブフランジ12の厚みより大きく、溝21a,21bの一部にハブフランジ12が挿入されている。また、溝21cは、底面が内周側に窪む円弧状に形成されており、この底面が後述するように、第2カム31bとして機能する。溝21cの幅は、後述するコロ30の幅(厚み)よりも大きく形成されており、この溝21c内をコロ30が自由に回転し、移動することが可能である。
遠心子21の両端の溝21a,21bには、それぞれ2個のローラ26a,26bが配置されている。各ローラ26a,26bは、溝21a,21bを回転軸方向に貫通して設けられたピン27の回りに回転自在に装着されている。そして、各ローラ26a,26bは、凹部12aの側面に当接して転動可能である。
<カム機構22>
カム機構22は、転動体としてのカムフォロア(具体的には円筒状のコロ)30と、第1カム31aと、第2カム31bと、から構成されている。
第1カム31aはコロ支持部材32に形成されている。コロ支持部材32は、第1イナーシャリング201の外周端部と第2イナーシャリング202の外周端部との間に固定されている。コロ支持部材32は、円周方向に延びる部材であり、ハブフランジ12の凹部12aの円周方向幅よりも短い。コロ支持部材32の外周面は、第1及び第2イナーシャリング201,202の外周面と面一になるように形成されている。また、コロ支持部材32の内周面は、外周側に窪む円弧状に形成され、この内周面が第1カム31aとして機能する。
なお、コロ支持部材32は、第1及び第2イナーシャリング201,202と別部材で構成してもよいし、いずれかのイナーシャリング201,202と一体で形成してもよい。
第2カム31bは、前述のように、遠心子21の溝21cの底面であり、内周側に窪む円弧状に形成されている。第2カム31bは、第1カム31aの内周側に第1カム31aと径方向に対向して設けられている。この第2カム31bは、ハブフランジ12と、第1及び第2イナーシャリング201,202と、の間の回転方向の相対変位に応じて遠心子21とともに径方向に移動可能である。
コロ30は、ハブフランジ12、第1イナーシャリング201、及び第2イナーシャリング201,202に支持されたり、固定されたりしていない。すなわち、コロ30はハブフランジ12及び両イナーシャリング201,202に対して移動自在である。しかし、コロ30は、径方向外側へはコロ支持部材32(第1カム31a)によって、径方向内側へは遠心子21(第2カム31b)によって、それぞれ移動が規制される。また、コロ30は、溝21c内に収容されているので、軸方向の移動も規制されている。
このように、コロ30は、第1カム31aと第2カム31bとの間に挟まれて、第1カム31a及び第2カム31bに沿って転動し、第1及び第2カム31a,31bと溝21cとに規制されながら、円周方向及び径方向に移動自在である。
詳細は後述するが、コロ30と第1及び第2カム31a,31bとの接触によって、ハブフランジ12と第1及び第2イナーシャリング201,202との間に回転位相差が生じたときに、遠心子21に生じた遠心力は、回転位相差が小さくなるような円周方向の力に変換される。
また、図5はハブフランジ12と第1及び第2イナーシャリング201,202との間に回転位相差が生じた状態を示している。この図に示すように、ハブフランジ12と第1及び第2イナーシャリング201,202との間に回転位相差が生じた場合であっても、コロ30が外周側に飛び出さないように、第1カム31a及び第2カム31bの形状に設定されている。
より詳細には、図5に示すように、ハブフランジ12と第1及び第2イナーシャリング201,202との間に回転位相差が生じた場合には、コロ30と第1カム31aとの第1接線T1と、コロ第2カム31bとの第2接線T2のなす角度が、外周側に行くにしたがって小さくなるように、第1及び第2カム31a,31bのカム形状が設定されている。このため、コロ30は第1及び第2カム31a,31bの間の空間から飛び出すことはない。
[カム機構22の作動]
図2及び図5を用いて、カム機構22の作動(トルク変動の抑制)について説明する。なお、以下の説明では、第1及び第2イナーシャリング201,202を、単に「イナーシャリング20」と記す場合もある。
ロックアップオン時には、フロントカバー2に伝達されたトルクは、入力側回転体11及びダンパ13を介してハブフランジ12に伝達される。
トルク伝達時にトルク変動がない場合は、図2に示すような状態で、ハブフランジ12及びイナーシャリング20は回転する。この状態では、カム機構22のコロ30はカム31のもっとも内周側の位置(円周方向の中央位置)に当接し、ハブフランジ12とイナーシャリング20との回転位相差は「0」である。
前述のように、ハブフランジ12とイナーシャリング20との間の回転方向の相対変位量を、「回転位相差」と称しているが、これらは、図2及び図5では、遠心子21及びカム31a,31bの円周方向の中央位置と、コロ30の中心位置と、のずれを示すものである。
ここで、トルクの伝達時にトルク変動が存在すると、図5に示すように、ハブフランジ12とイナーシャリング20との間には、回転位相差が生じる。図5は+R側に回転位相差2θが生じた場合を示している。
図5に示すように、ハブフランジ12とイナーシャリング20との間に回転位相差2θが生じた場合は、カム機構22のコロ30は、第1カム31a及び第2カム31bに沿って相対的に図5における左側に転動する。このとき、遠心子21には遠心力が作用しているので、遠心子21に形成された第2カム31bがコロ30から受ける反力は、図5のP0の方向及び大きさとなる。この反力P0によって、円周方向の第1分力P1と、遠心子21を内周側に向かって移動させる方向の第2分力P2と、が発生する。
そして、第1分力P1は、カム機構22及び遠心子21を介してハブフランジ12を図5における左方向に移動させる力となる。すなわち、ハブフランジ12とイナーシャリング20との回転位相差を小さくする方向の力が、ハブフランジ12に作用することになる。また、第2分力P2によって、遠心子21は、遠心力に抗して内周側に移動させられる。
なお、逆方向に回転位相差が生じた場合は、コロ30が第1及び第2カム31a,31bに沿って相対的に図5の右側に転動するが、作動原理は前述の場合と同様である。
ここで、ハブフランジ12とイナーシャリング20との間に回転位相差2θが生じた場合のコロ30の移動量について、図6を用いて説明する。図6は、ハブフランジ12、イナーシャリング20、遠心子21、及びコロ30を模式的に示したものである。
図6(a)はハブフランジ12とイナーシャリング20との間に相対移動(実際は回転位相差)がない場合を示している。一方で、ハブフランジ12にトルク変動が伝達されると、ハブフランジ12とイナーシャリング20との間に相対移動(回転位相差)が生ずる。このときの状態、すなわち、相対移動量が2a(回転位相差2θに相当)の場合を図6(b)に示している。ここで、仮にコロ30がイナーシャリング20に支持されていたとすると、コロ30の移動量は2aとなる。しかし、この実施形態では、コロ30はハブフランジ12及びイナーシャリング20のいずれにも支持されておらず、コロ30は第1及び第2カム31a,31bに沿って転動する。したがって、コロ30の移動量は、ハブフランジ12とイナーシャリング20との相対移動量2aの1/2の「a」となる。
また、コロ30の移動量aは、コロ30が例えばイナーシャリング20に支持されている場合の1/2になるので、遠心子21の内周側への移動量も、コロ30がイナーシャリング20に支持されている場合に比較して小さくなる。ただし、移動量がどの程度小さくなるかは、カムの形状による。
以上のように、トルク変動によってハブフランジ12とイナーシャリング20との間に回転位相差が生じると、遠心子21に作用する遠心力及びカム機構22の作用によって、ハブフランジ12は、両者の回転位相差を小さくする方向の力(第1分力P1)を受ける。この力によって、トルク変動が抑制される。また、コロ30の移動量が小さくなるので、遠心子21の円周方向の幅を小さくでき、遠心子21をコンパクトにすることができる。さらに、遠心子21の径方向の移動量も小さくなるので、ハブフランジ12の凹部12aの深さを浅くすることができる。すなわち、遠心子21の径方向の動きを抑制できるために、遠心子21による新たな起震源を抑制することが可能となる。
以上のトルク変動を抑制する力は、遠心力、すなわちハブフランジ12の回転数によって変化するし、回転位相差や第1及び第2カム31a,31bの形状によっても変化する。したがって、第1及び第2カム31a,31bの形状を適宜設定することによって、トルク変動抑制装置14の特性を、エンジン仕様等に応じた最適な特性にすることができる。
例えば、第1及び第2カム31a,31bの形状は、同じ遠心力が作用している状態で、回転位相差に応じて第1分力P1が線形に変化するような形状にすることができる。また、第1及び第2カム31a,31bの形状は、回転位相差に応じて第1分力P1が非線形に変化する形状にすることができる。
[特性の例]
図7は、トルク変動抑制特性の一例を示す図である。横軸は回転数、縦軸はトルク変動(回転速度変動)である。特性Q1はトルク変動を抑制するための装置が設けられていない場合、特性Q2は従来のダイナミックダンパ装置が設けられた場合、特性Q3は本実施形態のトルク変動抑制装置14が設けられた場合を示している。
この図7から明らかなように、従来のダイナミックダンパ装置が設けられた装置(特性Q2)では、特定の回転数域のみについてトルク変動を抑制することができる。一方、本実施形態(特性Q3)では、すべての回転数域においてトルク変動を抑制することができる。
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
(a)前記実施形態では、イナーシャリングに固定されたコロ支持部材32に第1カム31aを形成し、遠心子21に第2カム31bを形成したが、イナーシャリング及び遠心子とは別にカム機構を設けてもよい。
(b)遠心子はハブフランジに設けられた構成に限定されない。
(c)前記実施形態では、イナーシャリングを連続した円環状の部材で構成したが、分割された複数のイナーシャ体を円周方向に並べて配置してもよい。この場合は、複数のイナーシャ体を保持するために、イナーシャ体の外周側に、円環状の保持リング等の保持部材を設ける必要がある。
(d)前記実施形態では、遠心子の両端にガイドローラを配置したが、樹脂レースやシート等の摩擦を低減する他の部材を配置してもよい。
(e)前記実施形態では、第1カム及び第2カムを、ともに円弧状の曲面で形成したが、第1カム及び第2カムのいずれか一方を、図6に示すような複数の平坦面からなるV字形状あるいは逆V字形状にすることや、第1カム及び第2カムの両方を前記同様の複数の平坦面にすることもできる。
(f)前記実施形態では、転動体としてコロを採用したが、転動体はコロに限定されない。例えば、転動体をプレート部材で形成したり、転動体の形状を卵型やオーバル形状にしたり、さらには転動体としてベアリングを用いるなど、種々の変形が可能である。
[適用例]
以上のようなトルク変動抑制装置を、トルクコンバータや他の動力伝達装置に適用する場合、種々の配置が可能である。以下に、トルクコンバータや他の動力伝達装置の模式図を利用して、具体的な適用例について説明する。
(1)図8は、トルクコンバータを模式的に示した図であり、トルクコンバータは、入力側回転体41と、ハブフランジ42と、両回転体41,42の間に設けられたダンパ43と、を有している。入力側回転体41は、フロントカバー、ドライブプレート、ピストン等の部材を含む。ハブフランジ42は、ドリブンプレート、タービンハブを含む。ダンパ43は複数のトーションスプリングを含む。
この図8に示した例では、入力側回転体41を構成する回転部材のいずれかに遠心子が設けられており、この遠心子に作用する遠心力を利用して作動するカム機構44が設けられている。カム機構44については、前記実施形態に示された構成と同様の構成を適用できる。
(2)図9に示したトルクコンバータは、ハブフランジ42を構成する回転部材のいずれかに遠心子が設けられており、この遠心子に作用する遠心力を利用して作動するカム機構44が設けられている。カム機構44については、前記実施形態に示された構成と同様の構成を適用できる。
(3)図10に示したトルクコンバータは、図8及び図9に示した構成に加えて、別のダンパ45と、2つのダンパ43,45の間に設けられた中間部材46と、を有している。中間部材46は、入力側回転体41及びハブフランジ42と相対回転自在であり、2つのダンパ43,45を直列的に作用させる。
図10に示した例では、中間部材46に遠心子が設けられており、この遠心子に作用する遠心力を利用して作動するカム機構44が設けられている。カム機構44については、前記実施形態に示された構成と同様の構成を適用できる。
(4)図11に示したトルクコンバータは、フロート部材47を有している。フロート部材47は、ダンパ43を構成するトーションスプリングを支持するために部材であり、例えば、環状に形成されて、トーションスプリングの外周及び少なくとも一方の側面を覆うように配置されている。また、フロート部材47は、入力側回転体41及びハブフランジ42と相対回転自在であり、かつダンパ43のトーションスプリングとの摩擦によってダンパ43に連れ回る。すなわち、フロート部材47も回転する。
この図11に示した例では、フロート部材47に遠心子48が設けられており、この遠心子48に作用する遠心力を利用して作動するカム機構44が設けられている。カム機構44については、前記実施形態に示された構成と同様の構成を適用できる。
(5)図12は、2つの慣性体51,52を有するフライホイール50と、クラッチ装置54と、を有する動力伝達装置の模式図である。すなわち、エンジンとクラッチ装置54との間に配置されたフライホイール50は、第1慣性体51と、第1慣性体51と相対回転自在に配置された第2慣性体52と、2つの慣性体51,52の間に配置されたダンパ53と、を有している。なお、第2慣性体52は、クラッチ装置54を構成するクラッチカバーも含む。
図12に示した例では、第2慣性体52を構成する回転部材のいずれかに遠心子が設けられており、この遠心子に作用する遠心力を利用して作動するカム機構55が設けられている。カム機構55については、前記実施形態に示された構成と同様の構成を適用できる。
(6)図13は、図12と同様の動力伝達装置において、第1慣性体51に遠心子が設けられた例である。そして、この遠心子に作用する遠心力を利用して作動するカム機構55が設けられている。カム機構55については、前記実施形態に示された構成と同様の構成を適用できる。
(7)図14に示した動力伝達装置は、図12及び図13に示した構成に加えて、別のダンパ56と、2つのダンパ53,56の間に設けられた中間部材57と、を有している。中間部材57は、第1慣性体51及び第2慣性体52と相対回転自在である。
図14に示した例では、中間部材57に遠心子58が設けられており、この遠心子58に作用する遠心力を利用して作動するカム機構55が設けられている。カム機構55については、前記実施形態に示された構成と同様の構成を適用できる。
(8)図15は、1つのフライホイールにクラッチ装置が設けられた動力伝達装置の模式図である。図15の第1慣性体61は、1つのフライホイールと、クラッチ装置62のクラッチカバーと、を含む。この例では、第1慣性体61を構成する回転部材のいずれかに遠心子が設けられており、この遠心子に作用する遠心力を利用して作動するカム機構64が設けられている。カム機構64については、前記実施形態に示された構成と同様の構成を適用できる。
(9)図16は、図15と同様の動力伝達装置において、クラッチ装置62の出力側に遠心子65が設けられた例である。そして、この遠心子65に作用する遠心力を利用して作動するカム機構64が設けられている。カム機構64については、前記実施形態に示された構成と同様の構成を適用できる。
(10)図面には示していないが、本発明のトルク変動抑制装置を、トランスミッションを構成する回転部材のいずれかに配置してもよいし、さらにはトランスミッションの出力側のシャフト(プロペラシャフト又はドライブシャフト)に配置してもよい。
(11)他の適用例として、従来から周知のダイナミックダンパ装置や、振り子式ダンパ装置が設けられた動力伝達装置に、本発明のトルク変動抑制装置をさらに適用してもよい。
1 トルクコンバータ
11 入力側回転体
12 ハブフランジ(回転体)
12a 開口部
14 トルク変動抑制装置
20,201,202 イナーシャリング(質量体)
21 遠心子
22,44,55,64 カム機構
30 コロ(カムフォロア)
31a 第1カム
31b 第2カム

Claims (8)

  1. トルクが入力される回転体のトルク変動を抑制するトルク変動抑制装置であって、
    前記回転体とともに回転可能であり、かつ前記回転体に対して相対回転自在に配置された質量体と、
    前記回転体及び前記質量体の回転による遠心力を受けるように配置された複数の遠心子と、
    前記遠心子に作用する遠心力を受けて、前記回転体と前記質量体との間に回転方向における相対変位が生じたときには、前記遠心力を、前記相対変位が小さくなる方向の円周方向力に変換する複数のカム機構と、
    を備え、
    前記カム機構は、
    第1カムと、
    前記第1カムと径方向に対向して設けられ、前記回転体と前記質量体との間の回転方向の相対変位に応じて前記遠心子とともに径方向に移動可能な第2カムと、
    前記第1カムと前記第2カムとの間に、前記回転体及び前記質量体に対して移動自在にかつ前記第1カム及び第2カムに沿って転動するように配置された転動体と、
    を有する、
    トルク変動抑制装置。
  2. 前記第1カムは前記質量体とともに回転し、
    前記第2カムは前記回転体とともに回転する、
    請求項1に記載のトルク変動抑制装置。
  3. 前記第1カムは前記質量体に設けられ、
    前記第2カムは前記回転体に配置されている、
    請求項2に記載のトルク変動抑制装置。
  4. 前記回転体は外周面に複数の凹部を有し、前記遠心子は前記凹部に径方向移動自在に収容されており、
    前記第2カムは、前記遠心子の外周面に形成され、前記回転体と前記質量体との間の回転方向における相対変位量に応じて前記円周方向力が変化するような形状を有する、
    請求項3に記載のトルク変動抑制装置。
  5. 前記回転体の回転軸に直交する平面における前記第1カムと前記転動体との第1接線と、
    前記回転体の回転軸に直交する平面における前記第2カムと前記転動体との第2接線と、
    をさらに備え、
    前記第1カム及び前記第2カムは、前記回転体と前記質量体との間に回転方向における相対変位が生じたときに前記第1接線と前記第2接線とのなす角度が外周側に行くにしたがって小さくなるように形成されている、
    請求項1から4のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
  6. 前記第1カムは、外周側に窪む円弧状の曲面又は複数の平坦面であり、
    前記第2カムは、内周側に窪む円弧状の曲面又は複数の平坦面である、
    請求項1から5のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
  7. エンジンとトランスミッションとの間に配置されるトルクコンバータであって、
    前記エンジンからのトルクが入力される入力側回転体と、
    前記トランスミッションにトルクを出力する出力側回転体と、
    前記入力側回転体と前記出力側回転体との間に配置されたダンパと、
    請求項1から6のいずれかに記載のトルク変動抑制装置と、
    を備えたトルクコンバータ。
  8. 回転軸を中心に回転する第1慣性体と、前記回転軸を中心に回転し前記第1慣性体と相対回転自在な第2慣性体と、前記第1慣性体と前記第2慣性体との間に配置されたダンパと、を有するフライホイールと、
    前記フライホイールの前記第2慣性体に設けられたクラッチ装置と、
    請求項1から6のいずれかに記載のトルク変動抑制装置と、
    を備えた動力伝達装置。
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