JP6756078B2 - Ti−Al系合金の製造方法 - Google Patents

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本発明は、低級スポンジチタン、スクラップチタン、ルチル鉱石などの酸化チタン(TiO2)のような低品位のチタン原料にアルミ原料およびフラックスを加えたものを溶解させることで、高品位すなわち低酸素なTi-Al系合金を製造するTi-Al系合金の製造方法に関するものである。
近年、航空機及び自動車向け素材としてTi-Al系合金の需要が増加している。従来、Ti-Al系合金は酸素に対して非常に活性であるため、酸素の影響を低減可能な真空アーク溶解法(VAR)、電子ビーム溶解法(EB)、プラズマアーク溶解法(PAM)、真空誘導溶解(VIM)、水冷銅式誘導溶解(CCIM)などの手法を用いて溶解・鋳造が行われている。
上述した溶解・鋳造の手法の中でも、真空雰囲気下で行われるVAR、EB、VIMなどの手法に基づく溶解プロセスでは、合金元素のAlだけでなく、Tiも揮発によって失われるため、工業プロセスにおいては溶解後の組成を制御することが困難であり、製造コストの増加を招くことが危惧される。
また、Ti-Al系合金を溶製する際のチタン原料として、一般的には、酸素含有量が少ない高品位な原料を用いているが、昨今は高品位なチタン原料の価格が高騰しており、酸素含有量の多い低品位な鉱石やスクラップなどのチタン原料を用いても高品位、すなわち低酸素なTi-Al系合金を得たいというニーズが高まっている。
そこで、揮発によるTiのロスが起こりやすいVAR、EB、VIMなどの溶解法を用いるのではなく、PAMやCCIMなどの溶解法を用い、低品位な原料(酸素含有量の0.1質量%以上と多いチタン原料)から、AlやTiの揮発ロスを抑えつつ脱酸を行って、Ti-Al系合金を製造する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、PAMやCCIMを用い、1.33Pa以上の雰囲気下で高酸素含有TiにAlを40質量%以上添加して溶解・保持すると、Ti-Al系合金中の酸素がAlと結合してAl2O3の形でTi-Al中から排出されて脱酸が進行し、且つ、CaO-CaF2系のフラックスを添加すると、Al2O3の活量が低下して、更に脱酸が進行すると記載されている。
上述した特許文献1の製造方法では、確かにTi-Al系合金中の酸素はAl2O3の形で排出されて脱酸される。しかし、単純にPAMやCCIMを用いて溶解・保持しただけでは、脱酸の副生成物であるAl2O3や脱酸促進のために添加するCaO-CaF2系のフラックスがTi-Al合金の特定部位に残留してしまう可能性があり、Ti-Al系合金中に脱酸が進行している部位と脱酸が進行していない部位(Al2O3が残留している部位)とが混在することとなってしまう。
また、特許文献1には、Al2O3やCaO-CaF2系のフラックスが部分的に残留したTi-Al系合金に、低酸素Ti、言い換えれば純Tiなどの高品位のTiを添加してAlを希釈すれば、Al含有量が40質量%未満で且つ酸素含有量の少ないTi-Al系合金を製造することができるとも記載されている。
しかし、Ti-Al系合金中にはAl2O3やフラックスが残留している部位があり、これに純Tiを添加してAl含有量が40質量%未満のTi-Al系合金を溶製しようとすると、フラックスの内部のAl2O3等が分解/再溶解して、酸素濃度等がかえって上昇してしまう。それゆえ、特許文献1の製造方法では、Al含有量が40質量%未満となるような高品位すなわち低酸素のTi-Al系合金を得ることは容易ではない。
なお、Al2O3等が残留した部位を切断等により機械的に除去した上で、高品位すなわち低酸素のTiを添加して溶解すれば、Al含有量が40質量%未満の低酸素のTi-Al系合金が得られるが、再利用できないAl2O3等が残留した部位は廃棄せざるを得ず、加えてAl2O3等の機械的除去の際には金属Tiの一部も一緒に除かれてしまうため、Ti-Al系合金の歩留が非常に悪くなり、コストアップに繋がってしまう。
つまり、特許文献1の脱酸方法では、Alを40質量%以上含有するTi-Al系合金に対しては、Al2O3やCaO-CaF2系のフラックスをいかにTi-Al系合金中に残さないか、言い換えればAl2O3やCaO-CaF2系フラックスが残留した場合には、残留したフラックスなどの物質をいかにTi-Al系合金中から分離/除去するかが重要となる。
この点、特許文献2や特許文献3には、残留したフラックスなどの物質をTi-Al系合金中から分離/除去する際に有用な技術が開示されている。
例えば、特許文献2には、コールドクルーシブル型浮揚溶解装置(CCIM)を用いて、Tiに脱酸剤として希土類金属(実施例ではセリウムやミッシュメタル)、フラックスとしてフッ化カルシウム(CaF2)を添加して溶解すると、溶湯と水冷銅るつぼの間に溶融フラックスを存在させることができ、この溶融フラックス層に固体あるいは液体の非金属介在物を移行させることで、溶融金属の清浄度を向上させる溶融金属の精製方法が記載されている。
一般的に、CCIMなどの高周波誘導炉を用いて非金属介在物を含んだ金属を溶解する場合には、非金属介在物はTiなどの金属と比較して電気伝導度が低いため、溶融金属の外側(水冷銅るつぼ側)に集まる傾向があることが知られている。そのため、特許文献2の手法を用いればTi-Al系合金からAl2O3などの非金属介在物を局在化させて物理的に除去できる可能性がある。
さらに、特許文献3には、炉内に収容された収容物に対してるつぼ本体が上下方向に相対移動可能とされた水冷銅るつぼを備えた誘導溶解炉が開示されている。この特許文献3には、金属原料の溶解と水冷銅るつぼの引き下げとを繰り返し行って、長尺な活性金属鋳塊を製造することも記載されている。この特許文献3も、水冷銅るつぼを備えた高周波誘導炉を使用しているという点で特許文献2と同様であり、原理的には、金属鋳塊の外側に非金属介在物が集まる傾向があるため、特許文献2同様Ti-Al系合金からAl2O3などの非金属介在物を物理的に除去できる可能性がある。
特開2016−135907号 特開平11−246919号公報 特開2006−122920号公報
特許文献2の溶融金属の精製方法は、非金属介在物を含んだ金属をコールドクルーシブル型浮揚溶解装置(CCIM)を用いて単純に溶解するのみとなっており、Al2O3等の非金属介在物がフラックス中に移行するに適した条件とはなっていない。そのため、フラックスへの非金属介在物の移行が起こったとしても、量的に十分な移行が行われる可能性は低く、非金属介在物が溶融金属中に残留してしまう可能性が高い(後述する本発明の比較例1、比較例2では非金属介在物が残留する結果が実際に得られている)。
加えて、Al2O3等の非金属介在物の移行が十分に行われたとしても、溶融金属中に残留しているフラックスをどのように処理するかについての記載が特許文献2には無い。つまり、溶融金属中に残留しているフラックスを何らかの方法で溶融金属から除去できなければ、特許文献2の技術を用いても清浄度の高いTi-Al系合金を得ることはできない。
また、特許文献3の活性金属鋳塊の製造方法も、原理的には特許文献2と同様に、金属鋳塊の外側に非金属介在物を集めることができるものであるが、非金属介在物がフラックス中に移行するに適した条件とはなっていないため、実際にTi-Al系合金中のAl2O3などの非金属介在物を除去できない可能性がある(後述する比較例3では非金属介在物が残留する結果が実際に得られている)。
さらに、特許文献3では、フラックスを添加した溶解を想定しておらず、脱酸や介在物除去に関しての記載も無い。従って、特許文献3に規定される引き下げ速度で引き下げを行った場合は、問題なく脱酸や介在物除去が行われるかどうかも不明である。例えば、特許文献3では、引き下げ時の速度を毎分30mm以下としているが、このような速い引き下げ速度の場合、フラックス層が破断して、溶湯が漏れ出るなどしてしまい、脱酸が確実に行われない可能性もある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、酸素を高濃度で含むような低品位のチタン材料から、高品位且つ低酸素のTi-Al系合金を、歩留まり良く、効率的に製造することができるTi-Al系合金の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のTi-Al系合金の製造方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のTi-Al系合金の製造方法は、チタン材料およびアルミニウム材料よりなる酸素を合計で0.1質量%以上、且つAlを40質量%以上含有するTi-Al系合金の合金材料に、酸化カルシウムにフッ化カルシウムを35〜95質量%配合したCaO-CaF2系のフラックスを、Ti-Al系合金に対して3〜20質量%となるように配合した溶解原料について、当該溶解原料を、鋳造終了時の最終目標鋳塊重量に対して分割後の溶解原料の重量が最大で全体の4/5以下となるようにn分割する第1工程と、前記第1工程で分割された溶解原料の第1分割体を、水冷銅るつぼに装入して1.33Pa以上の不活性ガス雰囲気下で溶解させ且つ前記水冷銅るつぼの底部を毎分15mm以下の速度で下方に引き下げる操作を行い、その後、前記第1工程で分割された溶解原料の第2分割体を、前記水冷銅るつぼに装入して1.33Pa以上の不活性ガス雰囲気下で溶解させ且つ前記水冷銅るつぼを毎分15mm以下の速度で下方に引き下げる操作を行い、以降、第n分割体まで前記操作を繰り返すことで鋳塊を形成する第2工程と、前記第2工程で形成させた鋳塊の表面に付着するフラックス層を機械的に除去する第3工程と、を有することを特徴とする。
なお、好ましくは、前記第3工程でフラックス層が除去された鋳塊にチタン材料を添加して、1.33Pa以上の雰囲気で水冷銅容器を用いた溶解法によって前記鋳塊を溶解する第4工程を行うことにより、Al含有量が40質量%未満のTi-Al系合金を得るとよい。
本発明のTi-Al系合金の製造方法によれば、酸素を高濃度で含むような低品位のチタン材料から、高品位且つ低酸素のTi-Al系合金を、歩留まり良く、効率的に製造することができる。
本発明にかかるTi-Al系合金の製造方法を工程ごとに分けて模式的に示した図である。
以下、本発明に係るTi-Al系合金の製造方法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態のTi-Al系合金1の製造方法は、第1工程〜第3工程の3つの工程を経て、好適には第1工程〜第3工程の後にさらに第4工程を行って、酸素を0.1質量%以上含むTi-Al系合金1の合金材料から酸素の含有量が0.1質量%未満とされた高品位なTi-Al系合金1を製造するものとなっている。
具体的には、このTi-Al系合金1の製造方法に用いられる合金材料はチタン材料にアルミニウム材料を混ぜ合わせたものである。このようにしてアルミが配合された溶解原料2を第2工程で溶解させると、アルミが合金材料中の酸素と反応して脱酸が行われる。また、本発明の製造方法では、第1工程において合金材料に脱酸を促進させる目的でCaO-CaF2系のフラックス3を添加している。このようなフラックス3を第1工程で添加すると第2工程での脱酸がさらに促進されて、酸素が0.1質量%以上含まれた合金材料から最終的には酸素が0.1質量%未満の高品位なTi-Al系合金1を得ることができる。
また、第1工程ではフラックス3が添加された溶解原料2が複数個に分割されて分割体が形成される。そして、第2工程では、溶解原料2の分割体の溶解操作に続いて引き下げ操作がすべての分割体に対して行われ、フラックス3にAl2O3等の非金属介在物を移行させると共に、非金属介在物が移行したフラックス3を鋳塊の外周面に偏在化(局在化)させることができるようになっている。このようにして偏在化した非金属介在物及びフラックス3を第3工程で機械的に除去するか、好ましくは第4工程で成分調整をさらに行うことで、本発明のTi-Al系合金1が製造される。
以降では、本発明の製造方法に設けられる第1工程〜第4工程の各工程についてそれぞれ説明する。
第1工程は、Ti-Al系合金1の合金材料にフラックス3を加えて溶解原料2を作製し、作製した溶解原料2をn個に分割して、溶解原料2の第1分割体41〜第n分割体を形成するものとなっている。この溶解原料2の分割操作が、本発明の製造方法の特徴となっている。
具体的には、溶解原料2に用いられるTi-Al系合金1の合金材料は、チタン材料およびアルミニウム材料よりなるものであり、酸素を合計で0.1質量%以上、且つAlを40質量%以上含有している。また、合金材料に配合されるフラックス3は、酸化カルシウムにフッ化カルシウムを35〜95質量%配合したCaO-CaF2系のフラックス3となっている。そして、上述した合金材料にフラックス3を3〜20質量%となるように配合したものが、本実施形態の溶解原料2となっている。
なお、上述した合金材料を構成するチタン材料は、低品位で酸素を多く含むスポンジチタン、スクラップ原料、ルチル鉱石などの酸化チタン(TiO2)などを含むものである。このように合金材料に低品位なチタン材料を用いる理由は、これらチタン材料が廉価であり調達し易いからである。
また、上述した合金材料は、酸素の合計含有量を0.1質量%以上とされている。例えば、合金材料中の酸素の合計含有量が0.1質量%未満の場合には、酸素の含有量は僅かであり脱酸自体が必要ないからである。なお、本発明では、酸素の含有量の上限は規定しないが、合金材料に実際に含有される酸素の合計含有量の上限は、25質量%程度であると考えられる。
また、第1工程の溶解原料2に用いられる合金材料に、Alを40質量%以上含有するTi-Al系合金1を用いるのは、以下のような理由に基づいている。
例えば、公知のTi-Al-Oの3元系状態図(国際公開2016/035824の図5などを参照)によれば、Ti-Al系合金1中に固溶する最大酸素量は、Ti-Al系合金1中のAl含有量を大きくするほど、固溶酸素濃度が低くなる傾向を有している。つまり、低品位なチタン材料を用いて作製したTi-Al系合金1を含む溶解原料2であっても、Alの含有量を40質量%以上まで高めれば、第2工程で脱酸を行った際に合金材料中の酸素を下げることができるのではないかと考え、本発明者らは本発明を完成させるに至ったのである。
上述したフラックス3は、溶解原料2に添加されることで溶解原料2中のAl2O3の活量を低下させ、後述する第2工程で脱酸反応を促進させる機能を有している。つまり、このフラックス3は、Ti-Al系合金1の脱酸生成物であるAl2O3を溶解させることで、脱酸反応における生成種であるAl2O3の活量を低下させ、脱酸反応を促進させる効果を備えている。
なお、このフラックス3へのAl2O3の溶解は、フラックス3が溶融した状態で初めて生じるものである。そのため、フラックス3の融点が高くなりすぎると、フラックス3が溶融しなくなりAl2O3の溶解が生じなくなる。つまり、CaO-CaF2系のフラックス3の場合であれば、融点が低いCaF2の含有量を増加させるなどして、フラックス3自体の融点を低下させる必要がある。具体的には、本実施形態の脱酸では、フラックス3の融点が1800K以下となるように、フラックス3中のCaF2の含有量は35質量%以上とされている。また、第3工程または第4工程後に製品として得られるTi-Al系合金1がCaF2中のふっ素で汚染されることがないように、フラックス3中のCaF2の含有量は95質量%未満とされている。
また、上述した溶解原料2に対するCaO-CaF2系のフラックス3の添加量は、製品であるTi-Al系合金1に対して3質量%〜20質量%となっている。Ti-Al系合金1に対する添加量が3質量%より少なければ、Al2O3活量の低下があまり生じず、脱酸促進効果がほとんど得られない。Ti-Al系合金1に対する添加量が20質量%より多くなれば、添加したフラックス3が製造されたTi-Al系合金1中に残留してしまうリスクが高くなってしまう。
このようにして第1工程では、合金材料にフラックス3を配合して溶解原料2がまず調製される。
ところで、上述した第1工程でTi-Al系合金1の合金材料にフラックス3が配合された溶解原料2を水冷銅るつぼ5に装入して溶解させる(るつぼ内凝固法を行う)だけでは、Al2O3等の非金属介在物を十分に除去することはできない。非金属介在物を十分に除去するためには、以降に示すような第2工程の操作を行うことが必要となる。
具体的には、上述した溶解原料2が調製されたら、次に調製された溶解原料2をn個に分割して、第1分割体41〜第n分割体を形成する。この溶解原料2の分割数である「n」は2以上の整数となっており、第1工程においては溶解原料2が複数個の分割体に分割される。
また、第1工程において溶解原料2を分割する場合には、鋳造終了時の最終目標鋳塊重量に対して各分割体(第1分割体41〜第n分割体)の重量が最大で全体の4/5以下となるように調整後の溶解原料2をn分割する。例えば、図1に示す如く、最終目標鋳塊重量が100tonの場合において、溶解原料2を3分割する場合であれば、第1分割体41〜第3分割体43のいずれもが80ton以下となるように分割する必要がある。工業的には、分割体は等分割(この場合は33.3ton)することが好ましいが、本発明は、分割体を等分割することに限定はされない。
このような分割を行えば、第1工程において得られる第1分割体41〜第n分割体がいずれも鋳造終了時の最終目標鋳塊重量の4/5を超えないものとなり、鋳造時における水冷銅るつぼ5の底部7からの抜熱を抑制可能となって、脱酸反応を十分に促進可能となる。
より詳しく説明すれば、上述したように溶解原料2を分割した後の個々の分割体の原料重量は、最終鋳塊重量に対して、最大でも全体の4/5以下となるように分割する。つまり、最低、2回の溶解操作と2回の引き下げ操作(分割体の装入/溶解→引き下げ→分割体の装入/溶解→引き下げ)が必要である。なぜならば、1回の溶解操作のみでは、底部7の水冷銅るつぼ5に近い部分は強冷却されており、投入されたフラックス3が十分に溶融しないうちに凝固が進行するため、Al2O3等の非金属介在物とフラックス3とが反応しにくい。この点、2回目以降の溶解操作については底部7からの抜熱が抑制されるため、2回目以降の溶解の際にフラックス3と非金属介在物とが十分に反応し合って脱酸が促進する。
なお、個々の分割体の重量を、最終目標重量に対して、全体の4/5超の重量にすると、2回目以降の溶解操作を行ったとしても、メタルとフラックス3の分離効率が下がる可能性がある。例えば、第1分割体41の重量が最終目標重量の4/5超となる場合には、2回目以降の溶解で残りの1/5より少ない量を溶解させても、非金属介在物とフラックス3との反応が起こりにくくなる。そのため、分割体の重量は最大でも全体の4/5以下に分割することが望ましく、好ましくは全体の2/3以下、より好ましくは全体の1/2以下とされるのが望ましい。
なお、図1に示される本実施形態では、第1工程で溶解原料2を3分割して脱酸させる例を挙げて、本発明を説明しているが、分割数は、5分割であっても11分割であっても何ら問題はない。
第2工程は、第1工程で分割された溶解原料2の第1分割体41〜第n分割体を、水冷銅るつぼ5(底引き水冷銅るつぼ5)に装入して1.33Pa以上の不活性ガス雰囲気下で溶解させ且つ水冷銅るつぼ5を毎分15mm以下の速度で下方に引き下げる操作を行い、その後、第1工程で分割された溶解原料2の第2分割体42を、底引き水冷銅るつぼ5に装入して1.33Pa以上の不活性ガス雰囲気下で溶解させ且つ水冷銅るつぼ5を毎分15mm以下の速度で下方に引き下げる操作を行い、以降、第n分割体まで同様な操作を繰り返すことで鋳塊を形成するものとなっている。
言い換えれば、第2工程は、溶解原料2の分割体を水冷銅るつぼ5に装入して1.33Pa以上の不活性ガス雰囲気下で溶解させる溶解操作と、この溶解操作に続いて水冷銅るつぼ5を毎分15mm以下の速度で下方に引き下げるという引き下げ操作とを、1回ずつ連続して行う操作を「基本操作」とするものである。そして、この基本操作を、第1分割体41、第2分割体42、・・・、第n分割体のそれぞれについて、順番に1回ずつ行うものとなっている。
なお、本実施形態の場合であれば、溶解原料2は3分割されるため、第1分割体41の溶解操作→第1分割体41の引き下げ操作→第2分割体42の溶解操作→第2分割体42の引き下げ操作→第3分割体43の溶解操作→第3分割体43の引き下げ操作という順番で溶解原料2を処理することで第2工程が進行する。
次に、第2工程において溶解原料2の各分割体に対して行われる溶解操作及び引き下げ操作について、詳しく説明する。
第2工程は、溶解原料2の各分割体を1.33Pa以上の不活性ガス雰囲気に容器内が調製された水冷銅るつぼ5(水冷銅鋳型)内に装入して、水冷銅るつぼ5内で溶解原料2の各分割体をプラズマアークまたは誘導加熱を熱源として溶解を行うことにより、鋳塊を鋳造するものとなっている。なお、水冷銅るつぼ5を用いて溶解原料2の分割体を溶解させる際には、好ましくは誘導加熱を熱源として溶解を行うのが良い。一般的に、誘導加熱により酸化物などの非金属介在物を含んだ金属を溶解した場合、非金属介在物と金属の電気伝導率の違いにより、非金属介在物は、溶融金属の外側に集まることが知られている。つまり、水冷銅るつぼ5の内部に供給された溶湯中のAl2O3が溶解したフラックス3は、誘導加熱により鋳型内周面近傍に偏って集まり、偏って集まった状態で凝固が行われる。その結果、第2工程で溶製される鋳塊には、下方に引き抜かれる鋳塊の外周側にフラックス3が偏って存在する表面付着フラックス層8が形成されるようになる。このように外周側に表面付着フラックス層8が存在する鋳塊であれば、表面付着フラックス層8を第3工程のショットブラストや研削などの機械的手段で削り取ることが可能となり、フラックス3ごとAl2O3等の非金属介在物を除去することが可能となるからである。
また、第2工程において溶解原料2の分割体の溶解操作に続いて行われる引き下げ操作は、上述した溶解操作でフラックス3を溶解させることにより鋳塊の表面に形成される表面付着フラックス層8を、鋳型と鋳塊との間に偏在させるものである。具体的には、上述した水冷銅るつぼ5は、上方と下方との双方に向かって開口した筒形状のるつぼ本体6と、るつぼ本体6の底側に配備された底部7とを組み合わせた構造となっている。この水冷銅るつぼ5の底部7はるつぼ本体6に対して上下方向に移動可能に取り付けられており、るつぼ本体6に対して底部7を下降させれば、底部7の上側に載置された鋳塊も下降させることが可能となる。第2工程では、このような引き下げ操作を行うことで、表面付着フラックス層8を、鋳塊の外周側、言い換えれば鋳型と鋳塊との間に偏在させている。
また、本実施形態の引き下げ操作では、鋳塊の引き下げ速度、言い換えれば水冷銅るつぼ5の底部7の下降速度を、好ましくは15mm/分以下、より好ましくは10mm/分以下としている。鋳塊の引き下げ速度が10mm/分、好ましくは15mm/分を超えると、上述した第2工程で鋳塊の外周表面に形成された表面付着フラックス層8が破断されてしまい、表面付着フラックス層8を鋳型と鋳塊との間に十分に偏在させることが困難になるからである。
上述した溶解操作と引き下げ操作とを続けて1回ずつ行うものが、ある分割体に対する「基本操作」となる。この「基本操作」は、第1分割体41、第2分割体42、・・・、第n分割体のそれぞれに対して1回ずつ行われる。
例えば、図例の第2工程の場合であれば、溶解原料2が3分割されており、第1分割体41、第2分割体42、第3分割体43が存在するため、第1分割体41の溶解操作→第1分割体41の引き下げ操作→第2分割体42の溶解操作→第2分割体42の引き下げ操作→第3分割体43の溶解操作→第3分割体43の引き下げ操作が行われ、最終的には上下方向に長尺な円筒状の鋳塊が第2工程で溶製(鋳造)されることになる。
上述した第2工程で鋳造された鋳塊の外周面にはフラックス3が偏った状態で凝固した表面付着フラックス層8が形成されており、この表面付着フラックス層8にはAl2O3等の非金属介在物も高濃度で含まれている。それゆえ、鋳塊の外周面に形成された表面付着フラックス層8を第3工程のショットブラストや研削などの機械的手段で削り取れば、フラックス3ごとAl2O3等の非金属介在物を除去することが可能となり、鋳塊に含まれる酸素濃度を全体として下げることができる。
上述した第1工程から第3工程を経て得られるTi-Al系合金1は、第2工程で鋳塊の外周面に形成されていた表面付着フラックス層8が、第3工程のショットブラストや研削などの機械的手段で除去されているため、Ti-Al系合金1中に含まれる酸素含有量が大きく低下し、合金材料に当初含まれていた酸素が確実に脱酸されて低減されたものとなっている。つまり、本実施形態のTi-Al系合金1の製造方法であれば、酸素を高濃度で含む低品位のチタンから、高品位すなわち低酸素のTi-Al系合金1を、歩留まり良く、効率的に製造することができる。
なお、本実施形態のTi-Al系合金1の製造方法は、合金材料中のAl含有量を40質量%以上にすることで、Ti-Al系合金1中に含まれる酸素含有量を合計で0.1質量%未満とするものであるため、製造されるTi-Al系合金1は必然的にAl含有量が40質量%以上になる。しかし、得られたTi-Al系合金1を利用する場合には、Al含有量を40質量%未満まで下げたいという要望も存在する。
このような場合は、上述した第1工程〜第3工程に加えて、以降に示す第4工程を行うとよい。
すなわち、第4工程は、鋳塊にチタン材料を添加して1.33Pa以上の雰囲気で水冷銅鋳型(水冷銅容器9)を用いた溶解法によって溶解することにより、Al含有量が40質量%未満のTi-Al系合金1を得るものとなっている。なお、図1に例示する溶解法は水冷銅容器を用いたものであるが、この第4工程に用いられる溶解法は水冷銅式誘導溶解(CCIM)以外の溶解法、例えば真空アーク溶解法(VAR)や真空誘導溶解(VIM)などを用いて行っても良い。
具体的には、第4工程で鋳塊に添加されるチタン材料は、この第4工程後にAl含有量が40質量%未満のTi-Al系合金1を得る場合には、Al含有量が40質量%未満のチタン材料とされるのが良い。例えば、アルミを不純物に含まない純TiのようなAl含有量が40質量%未満のチタン材料を添加すれば、鋳塊に含まれるAl含有量が希釈により小さくなるため、Al含有量が40質量%未満となるようなTi-Al系合金1を得ることができる。
なお、第4工程で添加されるチタン材料は、製造しようとするTi-Al系合金1の要求品質によって変化するため、チタン材料におけるアルミ以外の成分(Sn、V、Mnのようなアルミ以外の金属)の濃度は規定することはできず、任意に変更可能となっている。
また、本実施形態の製造方法においては、最終鋳塊高さH(最終目標鋳塊高さ)と、鋳塊直径Dとの比(H/D)は、特に限定はしないが、生産性の観点から1以上とするのが好ましい。
上述した第1工程〜第3工程に加えて第4工程を行えば、酸素やアルミ以外の組成についても要求品質に合致したTi-Al系合金1を得ることができ、本発明の製造方法の利便性をさらに高めることが可能となる。
次に、比較例及び実施例を用いて、本発明のTi-Al系合金1の製造方法が有する作用効果について詳しく説明する。
実施例及び比較例は、チタン材料にアルミ材料を混ぜ合わせて調整された合金材料に対して、CaO-CaF2のフラックス3を添加して、合金材料中に含まれるO(酸素)を脱酸したものである。
なお、実施例1はAlを40質量%、Oを0.8質量%含む合金材料について、第1工程〜第4工程の処理を行ったものである。また、実施例2はAlを60質量%、Oを0.8質量%含む合金材料について、第1工程〜第4工程の処理を行ったものである。実施例3はAlを45質量%、Oを0.8質量%含む合金材料について、第1工程〜第4工程の処理を行ったものである。実施例4はAlを52質量%、Oを0.8質量%含む合金材料について、第1工程〜第4工程の処理を行ったものである。
なお、実施例1〜4の溶解原料2の分割数は「11」であり、第1分割体41〜第11分割体51のそれぞれに対して、1回の溶解操作と1回の引き下げ操作とで構成された「基本操作」を行っている。
また、比較例1は、実施例1と同じ組成の合金材料を用いたものであるが、第1工程の際に溶解原料2の分割を行わず、第2工程で溶解操作だけを行って鋳塊を得たものとなっている。比較例1では、得られた鋳塊に対して、さらに第4工程を行って、Ti-30Alの鋳塊を得たものとなっている。
さらに、比較例2は、比較例1と同じ処理を行って鋳塊を得たものであり、得られた鋳塊の特定部位のみを用いて第4工程を行ったものである。
さらに、比較例3は、実施例1と同様に、Alを40質量%、Oを0.8質量%含む合金材料について、第1工程〜第4工程の処理を行ったものである。比較例3が実施例1と異なるのは溶解原料2にフラックス3を配合していない点である。
具体的には、上述した第1工程〜第4工程は、以下のような条件で実施した。
まず、第1工程は、スクラップTi、酸化チタン(TiO2)、純Alを合金材料とし、比較例1、比較例2、実施例1についてはCaO-CaF2系のフラックス3をTi-Al系合金1の重量に対して10%配合して、比較例3についてはフラックス3を配合せずに、溶解原料2を作製した。これらの比較例及び実施例に用いるフラックス3は、CaO:CaF2=2:8重量比となるようにCaOとCaF2とを含むフラックス3(CaO-CaF2系のフラックス3)である。
また、第2工程は、底がない(無底の)水冷銅るつぼ5(内径80mm)中に第1工程で調製した溶解原料2を装入し、不活性ガスであるアルゴンを用いたAr雰囲気下で、圧力が6.6×104Paとされた条件下で誘導溶解装置を用いて溶解した。なお、実施例1及び比較例3の第2工程では、第1工程で溶解原料2を11分割して第1分割体41〜第3分割体51を予め形成しておき、溶解操作と引き下げ操作とをそれぞれの分割体に対して1回ずつ行い、溶解原料2を溶解させて脱酸を進行させた。また、比較例1及び比較例2については、上述したように第2工程自体を実施していない。
このようにして第2工程で鋳造された鋳塊については、溶製後の鋳塊内部をSEMにて観察した。
また、第3工程では、第2工程で鋳造された鋳塊について、鋳塊の表面に対して機械的手段としてショットブラストを行い、鋳塊の表面に付着した表面付着フラックス層8を除去した。第3工程で表面付着フラックス層8が除去された鋳塊については、鋳塊中に含まれる酸素濃度を不活性ガス融解法にて分析した。
さらに、第4工程では、第3工程で表面付着フラックス層8が除去された鋳塊について、プラズマアーク溶解炉を用いて、酸素濃度が0.05質量%の純Tiを添加し、Ti-30質量%Al合金を溶製した。第4工程で溶製されたTi-30質量%Al合金の鋳塊についても、第3工程後の鋳塊と同様に酸素濃度を不活性ガス融解法にて分析した。
実施例及び比較例の分析結果を表1に示す。
「比較例1」
比較例1は、上述したように第1工程で溶解原料2の分割を行わず、第2工程では分割されていない溶解原料2に対して引き下げ操作を伴わない溶解操作のみを行って、鋳塊を得たものである。
比較例1で得られた鋳塊を、第2工程後に取り出して目視すると、鋳塊の表面には表面付着フラックス層8が形成されていた。また、比較例1においては、合金組織の内部に巻込まれているフラックス3も目視で確認できた。
また、「比較例1」の鋳塊については、鋳塊内部に対するSEM観察も行っている。SEMによって観察したところ、鋳塊内部に、Al2O3やフラックス3が存在しない部位と、フラックス3が存在する部位とが、混在していることが確認された。
さらに、得られた鋳塊について酸素濃度を不活性ガス融解法にて分析した結果、介在物が存在していない部位には酸素が0.50質量%、介在物が存在している部位には酸素が1.16質量%検出された。
さらに、上述した鋳塊を第4工程でプラズマアーク溶解炉を用いて溶解し、上記鋳塊に純Ti(酸素濃度0.05質量%)を添加してTi-30質量%Al合金を溶製して、得られたTi-30質量%Al合金の鋳塊の酸素濃度を不活性ガス融解法で分析した。分析の結果、酸素が0.79質量%検出された。さらにまた、Ti-30質量%Al合金の鋳塊の内部をSEMにて観察すると、Al2O3等の酸化物介在物の存在は確認されなかった。
上述した目視検査及びSEM観察の結果から、比較例1では、得られた鋳塊にフラックス3及び酸化物系介在物(非金属系介在物)が残り、このフラックス3及び酸化物系介在物が鋳塊内部にまで残っていると判断され、Ti-Al系合金1中の酸素を十分に低減できていないことがわかる。
また、比較例のTi-Al系合金1中の酸素濃度を計測すると、介在物の有無にかかわらず0.1質量%を大きく上回る酸素が検出されており、酸素濃度からもTi-Al系合金1中から酸素を十分に低減できていないことがわかった。
さらに、一度溶製した鋳塊を第4工程で再溶解させると、介在物が存在していない部分では酸素濃度が0.50質量%から0.79質量%に上昇した。これは、第4工程で鋳塊に純Ti10を添加して成分調整を行うと、鋳塊中に残されていた酸化物系介在物が純Tiにより分解してTi-Al中に再溶解し、酸素濃度が上昇してしまったものと考えられる。
「比較例2」
比較例2は、比較例1と同様の溶解原料2、溶解方法にて鋳塊を溶製したものである。そのため、溶製した鋳塊の介在物が存在していない部位の酸素濃度は0.51質量%であり、介在物が存在している部位は1.12質量%となっている。この比較例2の鋳塊のうち、介在物が存在していない部位を選んで、プラズマアーク溶解炉を用いて溶解し、純Ti10(酸素濃度0.05質量%)を添加してTi-30質量%Al合金の鋳塊を溶製した。溶製した鋳塊について酸素濃度を分析した結果、酸素濃度は0.42質量%と比較例1よりも低下した結果となった。
このことから、比較例1と異なり、Al2O3等の介在物がほとんど確認されなかった部位を使用して第4工程を行うと、鋳塊に含まれていたAl2O3等の酸化物系介在物の分解に伴う酸素濃度上昇は抑えられることがわかる。しかし、介在物が存在する部位は再溶解の原料としては使用できないため、表1の「歩留」の評価は比較例1が○であるのに対し、×の評価結果となっている。このことから、比較例2では、鋳塊に含まれる酸素濃度は低下できるものの、歩留が悪いという結果となり、総合的な評価は×となっている。
「比較例3」
比較例1及び比較例2と同様に、Ti-40質量%Al-0.8質量%Oとなるように、溶解原料2を調製し、鋳塊(2800g)を溶製した。なお、比較例3の溶解原料2は、比較例1及び比較例2と異なり、第1工程で合金材料にフラックス3を配合せずに溶解原料2を作製したものであり、また溶解原料2を11個に分割したものとなっている。具体的には、最初に水冷銅るつぼ5に装入する第1分割体41は原料重量が800g(フラックス3は除く)であり、それ以降に追加装入する第2分割体42〜第11分割体は原料重量がいずれも200gとされている。この第1分割体41の原料(800g)を、純Ti製のスターティングブロック(水冷銅るつぼ5の底部7)上に装入し、Ar雰囲気下で、圧力が6.6×104Paのるつぼ内で溶解した。第1分割体41が溶解した後、るつぼの底部7を毎分2mmの速度で5分間(10mm)引き下げて引き下げ操作を実施した。その後、追加装入原料フィーダーに予め装入していた第2以降の分割体の追加原料(200g)を水冷銅るつぼ5内に装入して溶解し、溶解後にるつぼの底部7を引き下げる操作を、第2分割体42〜第11分割体51の全てに対して行って、鋳塊を溶製した。
溶製後の比較例3の鋳塊内部をSEMにて観察した結果、比較例1や比較例2と同様に、非金属介在物のAl2O3が殆ど存在していない部位と存在している部位とが内部組織にあることが分かった。また、鋳塊の酸素濃度を不活性ガス融解法にて分析した結果、非金属介在物が殆ど存在していない部位の酸素濃度は0.75質量%となり、非金属介在物が存在している部位の酸素濃度は0.94質量%となった。このことから、フラックス3を用いずに溶解及び脱酸を行った場合には、Ti-Al中の非金属介在物であるAl2O3は鋳塊表面に殆ど移行せず、鋳塊内に留まってしまっているため、第1工程で溶解原料2の分割を行っていても、酸素濃度は殆ど低減できていないことがわかる。
また、上述した比較例3の鋳塊に対して、プラズマアーク溶解炉を用いて、純Ti10(酸素濃度0.05質量%)を添加しTi-30質量%Al合金を溶製してTi-30質量%Al合金の鋳塊を鋳造し、Ti-30質量%Al合金の鋳塊の酸素濃度を分析すると0.60質量%という結果が得られた。このことから、比較例1と同様に、酸化物系介在物が鋳塊内部にまで残っている鋳塊に対して純Tiを添加して成分調整を行っても、鋳塊中に残されていた酸化物系介在物が純Tiにより分解してTi-Al中の酸素濃度が上昇するため、Ti-Al系合金1中の酸素を十分に低減できないと判断される。
「実施例1」
実施例1は、比較例3と同様に溶解原料2を11個に分割し鋳塊を溶製したものである。実施例1が比較例3と異なるのは、フラックス3をTi-Al系合金1重量に対して10質量%配合していることである。
溶解操作終了後に取り出した鋳塊表面を目視で確認すると、添加したフラックス3が溶解/凝固して形成されたと思われる層(表面付着フラックス層8)が鋳塊の表面に付着していた。同様な鋳塊内部をSEMにて観察すると、鋳塊内部には殆どAl2O3等の非金属介在物(酸化物系介在物)は存在していないことが分かった。これは、鋳塊表面に形成されたフラックス層にAl2O3等の非金属介在物が移行したことによるものと推測された。
また、この鋳塊表面のフラックス層(表面付着フラックス層8)は、ショットブラストにより、容易に除去することができた。ショットブラストにより表面付着フラックス層8が除去された鋳塊の酸素濃度を不活性ガス融解法にて分析した結果、Al2O3が存在していない部位の酸素濃度は0.30質量%であり、わずかにAl2O3等の酸化物系介在物が確認された部位でも酸素濃度は0.40質量%と非常に少なかった。このことから、第1工程でフラックス3を配合すると共に溶解原料2を分割し、第2工程で分割体ごとに溶解操作と引き下げ操作とを繰り返し行った実施例1では、鋳塊中の酸素濃度を大きく低減できることがわかる。
また、上述した実施例1の鋳塊についてプラズマアーク溶解炉を用いて溶解しつつ、純Ti10(酸素濃度0.05質量%)を添加してTi-30質量%Al合金の鋳塊を溶製すると、Ti-30質量%Al合金の鋳塊の酸素濃度は0.25質量%にまで低下した。
このことから、実施例1の第4工程では、比較例1〜比較例3とは異なり、鋳塊中に酸化物系介在物がほとんど存在していなかったため、再溶解しても酸素濃度が上昇しておらず、また歩留低下も無いことがわかった。それゆえ、本発明の製造方法を用いれば、低品位な原料を用いて、Al含有量40質量%未満の低酸素なTi-Al系合金1を、歩留まり良く、効率的に製造することが可能であると判断される。
「実施例2」
実施例2は、比較例3と同様に溶解原料2を11個に分割し鋳塊を溶製したものである。実施例2が比較例3と異なるのは、フラックス3をTi-Al系合金1重量に対して10質量%配合していることである。
溶解操作終了後に取り出した鋳塊表面を目視で確認すると、添加したフラックス3が溶解/凝固して形成されたと思われる層(表面付着フラックス層8)が鋳塊の表面に付着していた。同様な鋳塊内部をSEMにて観察すると、鋳塊内部には殆どAl2O3等の非金属介在物(酸化物系介在物)は存在していないことが分かった。これは、鋳塊表面に形成されたフラックス層にAl2O3等の非金属介在物が移行したことによるものと推測された。
また、この鋳塊表面のフラックス層(表面付着フラックス層8)は、ショットブラストにより、容易に除去することができた。ショットブラストにより表面付着フラックス層8が除去された鋳塊の酸素濃度を不活性ガス融解法にて分析した結果、Al2O3が存在していない部位の酸素濃度は0.045質量%であり、わずかにAl2O3等の酸化物系介在物が確認された部位でも酸素濃度は0.065質量%と非常に少なかった。このことから、第1工程でフラックス3を配合すると共に溶解原料2を分割し、第2工程で分割体ごとに溶解操作と引き下げ操作とを繰り返し行った実施例2では、鋳塊中の酸素濃度を大きく低減できることがわかる。
また、上述した実施例2の鋳塊についてプラズマアーク溶解炉を用いて溶解しつつ、純Ti10(酸素濃度0.05質量%)を添加してTi-30質量%Al合金の鋳塊を溶製すると、Ti-30質量%Al合金の鋳塊の酸素濃度は0.057質量%にまで低下した。
このことから、実施例2の第4工程では、比較例1〜比較例3とは異なり、鋳塊中に酸化物系介在物がほとんど存在していなかったため、再溶解しても酸素濃度が上昇しておらず、また歩留低下も無いことがわかった。それゆえ、本発明の製造方法を用いれば、低品位な原料を用いて、Al含有量60質量%未満の低酸素なTi-Al系合金1を、歩留まり良く、効率的に製造することが可能であると判断される。
「実施例3」
実施例3は、比較例3と同様に溶解原料2を11個に分割し鋳塊を溶製したものである。実施例3が比較例3と異なるのは、フラックス3をTi-Al系合金1重量に対して10質量%配合していることである。
溶解操作終了後に取り出した鋳塊表面を目視で確認すると、添加したフラックス3が溶解/凝固して形成されたと思われる層(表面付着フラックス層8)が鋳塊の表面に付着していた。同様な鋳塊内部をSEMにて観察すると、鋳塊内部には殆どAl2O3等の非金属介在物(酸化物系介在物)は存在していないことが分かった。これは、鋳塊表面に形成されたフラックス層にAl2O3等の非金属介在物が移行したことによるものと推測された。
また、この鋳塊表面のフラックス層(表面付着フラックス層8)は、ショットブラストにより、容易に除去することができた。ショットブラストにより表面付着フラックス層8が除去された鋳塊の酸素濃度を不活性ガス融解法にて分析した結果、Al2O3が存在していない部位の酸素濃度は0.16質量%であり、わずかにAl2O3等の酸化物系介在物が確認された部位でも酸素濃度は0.20質量%と非常に少なかった。このことから、第1工程でフラックス3を配合すると共に溶解原料2を分割し、第2工程で分割体ごとに溶解操作と引き下げ操作とを繰り返し行った実施例3では、鋳塊中の酸素濃度を大きく低減できることがわかる。
また、上述した実施例3の鋳塊についてプラズマアーク溶解炉を用いて溶解しつつ、純Ti10(酸素濃度0.05質量%)を添加してTi-30質量%Al合金の鋳塊を溶製すると、Ti-30質量%Al合金の鋳塊の酸素濃度は0.15質量%にまで低下した。
このことから、実施例3の第4工程では、比較例1〜比較例3とは異なり、鋳塊中に酸化物系介在物がほとんど存在していなかったため、再溶解しても酸素濃度が上昇しておらず、また歩留低下も無いことがわかった。それゆえ、本発明の製造方法を用いれば、低品位な原料を用いて、Al含有量45質量%未満の低酸素なTi-Al系合金1を、歩留まり良く、効率的に製造することが可能であると判断される。
「実施例4」
実施例4は、比較例3と同様に溶解原料2を11個に分割し鋳塊を溶製したものである。実施例4が比較例3と異なるのは、フラックス3をTi-Al系合金1重量に対して10質量%配合していることである。
溶解操作終了後に取り出した鋳塊表面を目視で確認すると、添加したフラックス3が溶解/凝固して形成されたと思われる層(表面付着フラックス層8)が鋳塊の表面に付着していた。同様な鋳塊内部をSEMにて観察すると、鋳塊内部には殆どAl2O3等の非金属介在物(酸化物系介在物)は存在していないことが分かった。これは、鋳塊表面に形成されたフラックス層にAl2O3等の非金属介在物が移行したことによるものと推測された。
また、この鋳塊表面のフラックス層(表面付着フラックス層8)は、ショットブラストにより、容易に除去することができた。ショットブラストにより表面付着フラックス層8が除去された鋳塊の酸素濃度を不活性ガス融解法にて分析した結果、Al2O3が存在していない部位の酸素濃度は0.042質量%であり、わずかにAl2O3等の酸化物系介在物が確認された部位でも酸素濃度は0.060質量%と非常に少なかった。このことから、第1工程でフラックス3を配合すると共に溶解原料2を分割し、第2工程で分割体ごとに溶解操作と引き下げ操作とを繰り返し行った実施例4では、鋳塊中の酸素濃度を大きく低減できることがわかる。
また、上述した実施例4の鋳塊についてプラズマアーク溶解炉を用いて溶解しつつ、純Ti10(酸素濃度0.05質量%)を添加してTi-30質量%Al合金の鋳塊を溶製すると、Ti-30質量%Al合金の鋳塊の酸素濃度は0.055質量%にまで低下した。
このことから、実施例4の第4工程では、比較例1〜比較例3とは異なり、鋳塊中に酸化物系介在物がほとんど存在していなかったため、再溶解しても酸素濃度が上昇しておらず、また歩留低下も無いことがわかった。それゆえ、本発明の製造方法を用いれば、低品位な原料を用いて、Al含有量52質量%未満の低酸素なTi-Al系合金1を、歩留まり良く、効率的に製造することが可能であると判断される。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 Ti-Al系合金
2 溶解原料
3 フラックス
41 第1分割体
42 第2分割体
43 第3分割体
5 水冷銅るつぼ
6 るつぼ本体
7 底部
8 表面付着フラックス層
9 水冷銅容器
10 純Ti

Claims (2)

  1. チタン材料およびアルミニウム材料よりなる酸素を合計で0.1質量%以上、且つAlを40質量%以上含有するTi-Al系合金に、酸化カルシウムにフッ化カルシウムを35〜95質量%配合したCaO-CaF2系のフラックスを、Ti-Al系合金に対して3〜20質量%となるように配合した溶解原料について、当該溶解原料を、鋳造終了時の最終目標鋳塊重量に対して分割後の溶解原料の重量が最大で全体の4/5以下となるようにn分割する第1工程と、
    前記第1工程で分割された溶解原料の第1分割体を、水冷銅るつぼに装入して1.33Pa以上の不活性ガス雰囲気下で溶解させ且つ前記水冷銅るつぼの底部を毎分15mm以下の速度で下方に引き下げる操作を行い、その後、前記第1工程で分割された溶解原料の第2分割体を、前記水冷銅るつぼに装入して1.33Pa以上の不活性ガス雰囲気下で溶解させ且つ前記水冷銅るつぼを毎分15mm以下の速度で下方に引き下げる操作を行い、以降、第n分割体まで前記操作を繰り返すことで鋳塊を形成する第2工程と、
    前記第2工程で形成させた鋳塊の表面に付着するフラックス層を機械的に除去する第3工程と、を有する
    ことを特徴とするTi-Al系合金の製造方法。
  2. 前記第3工程でフラックス層が除去された鋳塊にチタン材料を添加して、1.33Pa以上の雰囲気で水冷銅容器を用いた溶解法によって前記鋳塊を溶解する第4工程を行うことにより、Al含有量が40質量%未満のTi-Al系合金を得る
    ことを特徴とする請求項1に記載のTi-Al系合金の製造方法。
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