以下、本発明のいくつかの例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、図1(a)および図2を参照するに、本発明の例示的な第1の実施形態に従う自転車レンタル・システム(以下、単に「システム」という。)10は、各々、複数台の自転車12を保管する複数のステーション20(図1(a)には、それらステーション20のうちの代表的なステーション20のみが図示されている)においてそれら自転車12の貸出および返却をユーザに対して行うサービスを提供するためのシステムである。各ステーション20は、対応する駐輪場(レンタル自転車保管用敷地)22に割り当てられる。
ステーション20の管理方式として、各ステーション20ごとに、そのステーション20に設置された設備のみを用いて自立的に(個別的にないしは自己完結的に)管理される自立管理方式と、複数のステーション20が遠隔的にある管理サーバと通信することによってそれらステーション20を集中的に管理する集中管理方式とが存在する。本実施形態に従うシステム10は、後者の集中管理方式を採用する。
その集中管理方式を実現するため、このシステム10は、複数のステーション20にそれぞれ設置される複数の発信機(ステーション側ユニットの一例)30と、複数のステーション20を集中的に管理する管理センタ40に設置される管理サーバ(センタ側ユニットの一例)50とを備えている。複数のステーション20はそれぞれ、固有のステーションIDを予め割り当てられている。複数のステーション20(正確には、各ステーション20に設置された発信機30)と管理サーバ50とは、直接的に通信されるのではなく、ユーザの携帯端末90を介して通信される。
本実施形態においては、1台の発信機30が、各ステーション20ごとに、固有のステーションIDを識別し得る局地的識別信号を発信するように構成され、その結果、対応するステーション20において、そこに保管される複数台の自転車12に共通に使用される。
ただし、これに代えて、1台の発信機30を、各自転車12ごとに、固有の自転車ID(または、固有の自転車IDと固有のステーションIDとの組合せ)を識別し得る局地的識別信号を発信するように構成することが可能である。
図1(b)に示すように、各自転車12のうちの特定の部位には、車台番号提示部5858が形成されており、その車台番号提示部58には、各自転車12に予め割り当てられた固有の車台番号60が表示されている。
その車台番号提示部58の一例においては、車台番号60が、ユーザが直接視認可能な文字・数字列という形態で、印刷によって不動的に、各自転車12のうちの特定の部位(例えば、自転車12においてサドル62を下方から支持する三角フレーム64の最上頂点部近傍に装着されたパネル)上に表示される。
その車台番号提示部58の別の例においては、車台番号60が、コンピュータ読み取り可能な表示物(例えば、バーコード、2次元コード)という形態で、印刷によって不動的に、各自転車12のうちの特定の部位上に表示される。
各自転車12の車台番号は、複数のステーション20の全体を通じて、他の自転車12の車台番号と重複しないように選択される。その結果、各自転車12の流れを監視する際に、実際には1台しかない自転車12が、別のステーション20に保管されている別の自転車12としても誤って特定されてしまうことが防止される。それにより、各自転車12の流れ、すなわち、各ステーション20における存否を正しく特定することが可能となる。
図1(a)に示すように、このシステム10は、各ステーション20において、いずれも1つの駐輪場22に設置された固着物としての、上述の発信機30と、複数台の自転車12を保管するための自転車ラック(自転車収容装置)70とを備えている。その自転車ラック70は、自転車12を1台ずつ収容するための自転車ストール(小区画)72を複数備えている。一例においては、駐輪場22に設置されたフレーム74により、自転車ラック70が複数の自転車ストール72に仕切られている。
ユーザへの貸出しに先立ち、各自転車12が各自転車ストール72に収容(保管)されており、この収容状態においては、自転車12が自転車ストール72の個別フレームに、図1(d)に示すダイヤル錠式ワイヤ・ロック80を用いて繋ぎ止められている。すなわち、ユーザへの貸出しに先立ち、各自転車12が各自転車ストール72に、ユーザによる利用が不可能な状態で保管されているのである。
そのダイヤル錠式ワイヤ・ロック80は、よく知られているように、フレキシブルな1本のワイヤ82の両端がダイヤル錠84を介して互いに連結されることによって構成されている。
管理センタ40によって管理される複数のステーション20に収容される複数台の自転車12は、それぞれ互いに異なる暗証番号によって解錠されるダイヤル錠84を割り当てられる。したがって、1つの暗証番号によって解錠できる自転車12は1台のみである。
図2および図3に示すように、このシステム10においては、ユーザが、自身の携帯端末90を用いて、ユーザが現在滞在しているステーション20に設置されている発信機30から前述の局地的識別信号を、発信機30との接触状態または非接触状態で受信する(近距離一方向無線通信を行う)とともに、管理センタ40の管理サーバ50との間で遠距離双方向無線通信を行う。
ユーザの携帯端末90は、ユーザによって携帯されるとともに無線通信機能を有するデバイス、例えば、携帯電話機、スマートフォン、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、PDAなどである。
ここで、複数のステーション20にそれぞれ設置される複数台の発信機30を代表する1台の発信機30につき、ハードウエア構成(図4参照)およびソフトウエア構成(図5参照)を説明する。
まず、概念的に説明するに、発信機30は、各ステーション20に少なくとも1台ずつ設置され、対応するステーション20に固有のステーションIDを識別し得る識別信号を局地的に発信する非接触式または接触式の通信デバイスである。
発信機30は、通常、対応するステーション20に移動不能に固定的に設置されるが、随時移動可能であるように可動的に設置することも可能である。また、発信機30は、少なくとも送信機能を有すれば足りるが、必要に応じ、受信機能をも併有するように構成してもよい。
次に、作動方式を説明するに、発信機30は、固有の識別信号を外部からのトリガ信号を要することなく能動的に、局地的に、かつ、供給電力が不足しない限り永続的に発信する。
発信機30は、一般に、識別信号としてのビーコン信号を発信するビーコン装置、無線標識などの名称でも知られている装置である。この発信機30は、一例においては、原信号を変調することにより、対応するステーションIDを表す識別信号を生成し、その生成された識別信号を、IR信号、Bluetooth(登録商標)信号、NFC(近距離無線通信)信号などとして局地的に発信する。
次に、機能ブロック図である図4を参照してハードウエア構成を説明するに、発信機30は、プロセッサ100およびそのプロセッサ100によって実行される複数のアプリケーションを記憶するメモリ102を有するコンピュータ104を主体として構成されている。
この発信機30は、さらに、電源としての交換可能な使い捨て電池106を有している。電池106に代えて、充電可能な電池を採用したり、外部電源としての商用電源を採用することが可能である。
この発信機30は、さらに、識別信号を生成して発信する発信部108を有している。その発信部108は、電池106によって作動させられるとともに、コントローラ110によって制御される。そのコントローラ110は、コンピュータ100によって制御される。
次に、図5を参照して発信機30のソフトウエア構成を説明するに、発信機30のプロセッサ100は、図5にフローチャートで概念的に表されているプログラムを反復的に実行する。各回のプログラムの実行時には、まず、ステップS1において、メモリ102からステーションID(すなわち、今回の発信機30が実際に設置されているステーション20に割り当てられた固有のステーションID)が読み込まれ、次に、ステップS2において、電池106の残量が推定される。
続いて、ステップS3において、前記読み込まれたステーションIDと、前記推定された電池残量とが反映されるように、原信号(例えば、搬送信号)を変調するための信号がコントローラ110に対して出力される。そのコントローラ110は、発信部108を制御し、その結果、発信部108は、今回発信すべき識別信号を生成する。その後、ステップS4において、その生成された識別信号が発信部108から発信される。続いて、ステップS1に戻る。
なお付言するに、発信機30において、ステーションIDと電池残量とのうち少なくともステーションIDが反映されるように識別信号を生成するアルゴリズムまたは手順は、図5に示すアルゴリズムまたは手順とは異なるものを採用することが可能である。
ここで、この発信機30に関連付けてユーザの携帯端末90の一機能を説明するに、その携帯端末90は、発信機30から識別信号を受信している状態で、その携帯端末90のコンピュータに予めインストールされているあるプログラム、すなわち、発信機処理のための専用アプリケーション(以下、「発信機用アプリケーション」という。)を起動させる(ログイン)と、前記受信した識別信号を復調し、それにより、前記ステーションIDを解読する。携帯端末90は、さらに、その解読されたステーションIDを管理サーバ50に送信する。
さらに、携帯端末90は、発信機30から識別信号を受信している状態で、前記発信機用アプリケーションを起動させると、前記受信した識別信号に基づき、その識別信号を発信したときの発信機30の位置と、その識別信号を受信したときの携帯端末90の位置との間の距離を測定することも行う。
すなわち、携帯端末90は、発信機30から受信した識別信号に基づき、その発信機30が実際に設置されているステーション20に固有のステーションIDと、そのときの発信機30との距離との双方を獲得するようになっているのである。
携帯端末90のユーザは、自身の携帯端末90を持ったまま発信機30に接近し、その携帯端末90を発信機30のうちの発信部108に完全にまたはほぼ接触させると、携帯端末90は、発信機30から識別信号を接触式で受信することができる。
これに対し、携帯端末90のユーザが自身の携帯端末90を持ったまま特定の受信エリア内に進入すると、携帯端末90は、発信機30から識別信号を非接触式で受信することができる。
図6に概念的に平面図で示すように、発信機30には、2種類の受信エリアが割り当てられる。それらは、受信可能エリアと有効受信エリアである。それらエリアは、いずれも、発信機30を発信源とする円で概して定義され、受信可能エリアは、最大受信半径を有するのに対し、有効受信エリアは、有効受信半径を有する。
しかし、具体的には、受信可能エリアは、発信機30の電力供給が正常である場合に、その発信機30からの識別信号が到達可能なエリア、すなわち、そのエリア内に存在する限り、携帯端末90がその識別信号を受信可能なエリアを意味する。
これに対し、有効受信エリアは、受信可能エリアの最大受信半径より小さい有効受信半径を有している。最大受信半径は、任意に設定することが不可能であるのに対し、有効受信半径は、任意に設定することが可能である。
すなわち、最大受信半径は、ハードウエアによって決まる受信限度を意味するのに対し、有効受信半径は、ソフトウエアによって決まる受信限度を意味するということが可能なのである。
前述のように、携帯端末90は、それが受信した識別信号を発信したときの発信機30との距離を測定する。その距離測定値は、有効受信半径を超えることもあれば、超えないこともある。そして、その距離測定値が受信有効半径を超えないときは、携帯端末90が有効受信エリア内に存在するときであるのに対し、その距離測定値が受信有効半径を超えるときは、携帯端末90が受信可能エリア内には存在するが有効受信エリア内には存在しないときである。
携帯端末90は、前記発信機用アプリケーションを起動させることにより、前記距離測定値が有効受信半径の設定値以下であるか否かを判定し、その設定値以下であると判定すると、携帯端末90が現在、有効受信エリア内に位置するから、携帯端末90は、「発信機30からの識別信号を有効に受信した(以下、単に「識別信号を受信した」ともいう。)」と判定する。
これに対し、携帯端末90は、前記距離測定値が前記設定値より大きいと判定すると、携帯端末90が現在、有効受信エリア外に位置するから、携帯端末90は、「発信機30からの識別信号を有効に受信していない(以下、単に「識別信号を受信していない」ともいう。)」と判定する。
すなわち、本実施形態においては、携帯端末90が有効受信エリア外に位置する場合には、実際には、携帯端末90が識別信号を受信しているにもかかわらず、みかけ上、携帯端末90は識別信号を受信していないこととしてソフトウエア上で取り扱われることになるのである。
図7には、同じステーション20に位置する発信機30と携帯端末90との間における近距離一方向無線通信の内容が時系列的にかつ概念的に表されている。発信機30は、同じ識別信号を携帯端末90に発信し続ける。
なお念のために識別信号の不変性について付言するに、識別信号はステーションIDのみならず電池残量をも反映した信号であることから、識別信号は、ステーションIDが不変であっても、時間と共に変動することが想定される。
しかし、電池残量が急に変化することはないから、携帯端末90に関連付けて想定される短い時間スパン内においては、電池残量は不変であるとみなすことが可能である。一方、ステーションIDが変化することは想定されていない。
よって、識別信号は、短い時間スパン内においては、同じ情報を繰返し伝達しているから、その実体的な意味において、識別信号は、そもそも不変であるものとして取り扱うことが可能である。
ところで、識別信号は、連続波である場合には、物理的に、複数個の信号として観察されないのに対し、断続波である場合には、複数個の信号として観察される。しかし、連続波であっても、識別信号が周期的である以上、複数個の周期信号が時系列的に並んだものとして把握することは可能である。よって、説明の便宜上、図7に概念的に表すように、連続波であるか断続波であるかを問わず、識別信号は、複数の個別信号が時系列的に並んだものとして把握することが可能である。
なお付言するに、図7には、さらに、携帯端末90と、遠隔地にある管理サーバ50との間における遠距離双方向無線通信の内容も概念的に表されているが、これについては、後に詳述する。
次に、機能ブロック図である図8を参照して携帯端末90のハードウエア構成を説明するに、携帯端末90は、プロセッサ130およびそのプロセッサ130によって実行される複数のアプリケーションを記憶するメモリ132を有するコンピュータ134を主体として構成されている。
この携帯端末90は、さらに、情報を表示する表示部(例えば、液晶ディスプレイ)136と、発信機30および管理サーバ50からの信号を受信する受信部138と、信号を生成してその信号を管理サーバ50に送信する送信部140とを有する。
次に、図9を参照して携帯端末90のソフトウエア構成を説明するに、携帯端末90のプロセッサ130は、複数のプログラムを実行する。それらプログラムの一つが、前述の発信機用アプリケーションであり、そのアプリケーションが図9にフローチャートで概念的に表されている。
携帯端末90のプロセッサ130は、その発信機用アプリケーション(以下、単に「プログラム」ともいう。)を反復的に実行する。各回のプログラムの実行時には、まず、ステップS101において、ユーザの操作に応答し、このプログラムが起動する。
次に、ステップS102において、携帯電話90が発信機30から識別信号を有効に受信したか否かが判定される。
携帯端末90が現在、前記受信可能エリア外に位置する場合には、携帯端末90は発信機30から識別信号を全く受信できないため、ステップS102の判定がNOとなる。
その後、ステップS115において、操作エラーが存在することをユーザに告知するか、または操作方法を修正して再試行することをユーザに催促するためのメッセージが表示部136の画面上に表示される。このとき、携帯端末90と管理サーバ50との通信が終了する(ログアウト)。上記のメッセージの一例は、「発信機からの信号を正常に受信できません。お客様の携帯端末を発信機に十分に近づけるかまたは接触させた後、再度、アプリを起動させてください」旨のメッセージである。以上で、このプログラムの今回の実行が終了する。
これに対し、携帯端末90が現在、前記受信可能エリア内に位置する場合には、携帯端末90は発信機30から識別信号を受信できる。この場合、ステップS102においては、その受信した識別信号に基づき、今回の発信機30との距離が測定される。このステップS102においては、さらに、その距離測定値が前記設定値より小さいか否か、すなわち、携帯端末90が現在、前記有効受信エリア内に位置するか否かが判定される。前記距離測定値が前記設定値以上である場合には、ステップS102の判定がNOとなり、ステップS115に移行する。
これに対し、携帯端末90が現在、前記有効受信エリア内に位置する場合には、前記距離測定値が前記設定値より小さいため、ステップS102の判定がYESとなる。これにより、図7に示すように、発信機30との関係において1回目の受信確認(これは、前記「第1受信イベント」の一例である)が完了する。その後、今回のセッション、すなわち、ユーザが今回のレンタル・サービスを利用するための管理サーバ50との1回分の双方向通信が開始する。
本実施形態においては、管理サーバ50が、実際には、携帯端末90が発信機30から識別信号を有効に受信した事実を直接的に確認するようには設計されていない。しかし、発信機30から識別信号を有効に受信しない限り携帯端末90は管理サーバ50へのアクセス要求を行わないというプロトコルないしは事実を前提に、管理サーバ50は、携帯端末90からアクセス要求があったという事実のみから、携帯端末90が発信機30から識別信号を有効に受信した事実を推定する。
よって、管理サーバ50は、事実上、携帯端末90が発信機30から識別信号を有効に受信した事実を確認するための動作を行っているのに等しい。
今回のセッションが開始すると、まず、ステップS103において、ユーザの会員IDが管理サーバ50に送信される。次に、ステップS104において、ユーザのパスワードが管理サーバ50に送信される。
続いて、ステップS105において、ユーザからの今回のリクエスト、すなわち、あるステーション20における自転車12の貸出しを希望する貸出リクエストと、貸出ステーション20と同じかまたはそれとは異なる返却ステーション20への自転車12の返却を希望する返却リクエストとのうちのユーザが希望するものが管理サーバ50に送信される。その後、ステップS106において、ユーザが借りたい自転車12(すなわち、今回の貸出ステーション20に保管されている複数台の自転車12のうちのいずれか)に付されている車台番号60が管理サーバ50に送信される。
続いて、ステップS107において、前記受信した識別信号が復調され、それにより、その識別信号によって表されるステーションIDが解読される。これにより、今回のステーション20(今回の貸出ステーション20または返却ステーション20)を一義的に特定するステーションIDが識別される。
その後、ステップS108において、ステップS102の実行時において発信機30から受信した識別信号と同じステーションIDを表す識別信号(すなわち、実質的に同じ識別信号)を携帯端末90が有効に受信したか否かが判定される。その有効受信の有無を判定するためのアルゴリズムは、ステップS102について前述したものと同じである。
今回は、携帯端末90が、今回のセッション中、同じステーション20の同じ有効受信エリア内に継続的に存在していると仮定すると、携帯端末90は、前回受信した識別信号と同じステーションIDを表す識別信号を受信するから、ステップS108の判定がYESとなる。これにより、図7に示すように、発信機30との関係において2回目の受信確認(これは、前記「第2受信イベント」の一例である)が完了する。
その後、ステップS109において、前記識別されたステーションIDが管理サーバ50に送信される。このステップS109は、ステップS108の判定がYESとなると、他の実質的な処理を行うことなく実行されるため、前記2回目の受信確認の後、速やかに、ステップS109が実行され、それにより、2回目に受信された識別信号であって1回目に受信されたものと同じものから変換されたステーションIDが携帯端末90から管理サーバ50に送信される。
その結果、管理サーバ50は、事実上、携帯端末90が発信機30から2回目の識別信号を有効に受信すると、その後、意図的に延長された待ち時間なしで、すなわち、実質的にリアルタイムで、その識別信号を、それから変換されたステーションIDという形態で、受信することになる。それら識別信号とステーションIDとは、情報としては、実質的に互いに同一である。
したがって、管理サーバ50は、後述のように、そのステーションIDを受信した直後に現在時刻を計測すれば、その現在時刻を、自転車12の実際の貸出時刻または返却時刻(ユーザが自転車12の貸出しをリクエストする場合には貸出時刻、ユーザが自転車12の返却をリクエストする場合には返却時刻)を反映する時刻として精度よく認識できることになる。
さらに、本実施形態においては、携帯端末90が発信機30から受信した識別信号が、携帯端末90が管理サーバ50に送信するステーションIDに変換される過程において、ユーザの意図的な介入、すなわち、ユーザによるデータ入力やデータ編集が存在しないため、ユーザは、ステーションIDを改ざんすることが不可能となる。その結果、携帯端末90を経由して発信機30から管理サーバ50に送信されるステーション位置関連情報のセキュリティが向上する。
これに対し、今回は、携帯端末90が、今回のセッション中、あるステーション20の有効受信エリアから、別のステーション20の有効受信エリアに移動したと仮定すると、携帯端末90は、前回受信した識別信号とは異なる識別信号を受信するから、ステップS108の判定がNOとなる。
この場合には、その後、図示しないが、携帯端末90の表示部136の画面上に警告メッセージが表示される。その警告メッセージは、例えば、「レンタルの申込みが完了しないうちにユーザが最初のステーションから別のステーションに移動し、この行為により、このレンタル・サービスを利用する資格が喪失した」旨のメッセージが表示される。以上で、このプログラムの今回の実行が終了する。このとき、携帯端末90と管理サーバ50との通信が終了する(ログアウト)。
ところで、発信機30が発信する識別番号は、その発信機30に固有であり、また、その発信機30が設置されている1つのステーション20に固有でもある。さらに、1つのステーション20に設置された発信機30の受信可能エリアは、別のステーション20に設置された別の発信機30の受信可能エリアとオーバラップしない。よって、携帯端末90が同時に複数の発信機30から複数の識別信号を受信してしまうことはない。
そうすると、「携帯端末が同じステーションIDを表す識別信号を同じセッション中に再度受信した」という事実は、「携帯端末90をもっているユーザが、その識別信号によって特定される1つのステーション20内に、ある時間スパンの間、継続的に滞在していた」という事実を高い確度で推論できる。しかし、携帯端末90が発信機30から識別信号を1回受信しただけで、その識別信号に対応するステーションIDを管理サーバ50に送信してしまう場合には、同じ推論を低い確度でしか遂行できない。
ここに、「ある時間スパン」とは、具体的には、例えば、前記1回目の受信確認が行われた時刻から、前記2回目の受信確認が行われた時刻までの時間的隔たりを意味するが、その時間的隔たりは、例えば、1秒を下限値として有したり、5秒を上限値として有することが可能である。例えば、その時間的隔たりが1秒に設定された例においては、ユーザは、少なくとも1秒間、同じステーション20に、かつ、発信機30の有効受信エリア内に滞在することが、自転車レンタル・サービスを受けるための条件となる。
ステップS109において今回のステーションIDが管理サーバ50に送信されると、ステップS110において、管理サーバ50からの返信が待たれる。後述のように、その返信されたデータには、自転車12の貸出しのための処理が開始されたか否かを表すデータ、返却のための処理が完了したか否かを表すデータ、借りたい自転車12のダイヤル錠84を解錠するために必要な暗証番号を表すデータ、返却後の精算を表す支払明細などを表すデータが含まれる。
管理サーバ50からそのような返信があれば、ステップS111において、その返信されたデータが、自転車12の貸出しのための処理が開始されたことを表す貸出開始データであったか否かが判定される。貸出開始データであった場合には、ステップS111の判定がYESとなる。
今回は、管理サーバ50から前記暗証番号も返信されているため、ステップS112において、その返信された暗証番号が携帯端末90の表示部136の画面上に表示される。このとき、携帯端末90と管理サーバ50との通信が終了する(ログアウト)。以上で、このプログラムの今回の実行が終了する。これにより、ユーザは、借りたい自転車12のダイヤル錠式ワイヤ・ロック80のダイヤル錠84を解錠し、その自転車12を利用することが可能となる。
その結果、今回のセッション、すなわち、ユーザへの自転車12の貸出しのための管理サーバ50との1回分の双方向通信が終了する。
これに対し、管理サーバ50から今回返信されたデータが貸出開始データではなかった場合には、ステップS111の判定がNOとなり、ステップS113において、その返信されたデータが、返却のための処理が完了したことを表す返却完了データであったか否かが判定される。返却完了データであった場合には、ステップS113の判定がYESとなる。
今回は、管理サーバ50から前記支払明細が返信されているため、ステップS114において、その返信された支払明細が携帯端末90の表示部136の画面上に表示される。このとき、携帯端末90と管理サーバ50との通信が終了する(ログアウト)。以上で、このプログラムの今回の実行が終了する。
これにより、ユーザは、今回のレンタル・サービスの対価として支払ったレンタル料金の金額を知ることが可能となる。その後、ユーザは、これから返却しようとする自転車12を、使用されていないいずれかの自転車ストール72にワイヤ・ロック80を用いて繋ぎ止め、その後、そのワイヤ・ロック80のダイヤル錠84を施錠する。
その結果、今回のセッション、すなわち、ステーション20への自転車12の返却のための管理サーバ50との1回分の双方向通信が終了する。
次に、機能ブロック図である図10を参照して管理サーバ50のハードウエア構成を説明するに、管理サーバ50は、プロセッサ160およびそのプロセッサ160によって実行される複数のアプリケーションを記憶するメモリ162を有するコンピュータ164を主体として構成されている。
この管理サーバ50は、さらに、情報を表示する表示部(例えば、液晶ディスプレイ)166と、携帯端末90からの信号を受信する受信部168と、信号を生成してその信号を携帯端末90に送信する送信部170と、時計172とを有する。この管理サーバ50は、発信機30からの受信を直接的には行わず、事実上、携帯端末90を介して行うことになる。
次に、機能ブロック図である図11を参照して管理サーバ50のコンピュータ164のソフトウエア構成を概念的に説明する。
図11に示すように、管理サーバ50は、自転車12の貸出しを処理するための貸出処理部200と、自転車12の返却を処理するための返却処理部202とを有する。
この管理サーバ50は、さらに、リスト作成部204とリスト表示部206とを有する。リスト作成部204は、図15に示す利用状況管理リストを作成する。これに対し、リスト表示部206は、管理サーバ50のオペレータからの表示リクエストに応答し、前記作成された利用状況管理リストをメモリ162から読み出して表示部166の画面上に表示する。
管理サーバ50は、さらに、返却催促部208を有する。この返却催促部208は、前記利用状況管理リストに基づき、複数人のユーザから、自転車12の返却が完了していない未返却ユーザを反復的に抽出し、その抽出された未返却ユーザの携帯端末90に、借りている自転車12の返却が完了していない旨のメッセージを送信する。
管理サーバ50は、さらに、自転車12をレンタルしたユーザが支払うべきレンタル料金を計算するレンタル料金計算部210と、そのレンタル料金をユーザが支払うことを可能にする決済処理部212とを有する。
具体的には、レンタル料金計算部210は、前記貸出時刻から前記返却時刻までの経過時間の長さを、ユーザが自転車12を利用した利用時間(レンタル時間)の長さとして計算する。レンタル料金の額は、その利用時間の長さに応じて増額するとともに、前記返却ステーションIDが前記貸出ステーションIDと一致しない場合には、一致する場合より増額するように設定されており、その関係が料金テーブル(図示しない)としてメモリ162に予め記憶されている。
このレンタル料金計算部210は、さらに、前記返却ステーションIDが前記貸出ステーションIDと一致するか否かを判定し、その判定結果と、前記計算された利用時間の長さとに基づき、前記料金テーブルを参照することにより、今回のレンタル料金の額を計算する。
また、決済処理部212は、今回のユーザに対して銀行決済、クレジット決済、プリペイド方式の決済などを行うことにより、今回のレンタル料金をユーザから徴収する。
次に、図12および図13を参照して管理サーバ50のソフトウエア構成を更に詳しく説明するに、管理サーバ50のプロセッサ160は、メモリ162に記憶されている複数のプログラムのうち、図12および図13にフローチャートで概念的に表されているメイン・プログラム(貸出しおよび返却を行うためのプログラム)を反復的に実行する。
このメイン・プログラムの各回の実行は図12に示すステップS201において開始され、そのステップS201においては、ユーザから、携帯端末90を介して、管理センタ40に対して出される今回のリクエストの種別が貸出リクエストと返却リクエストとのいずれであるかを特定するための情報と、車台番号60と、ステーションIDとを、今回のユーザについて予め割り当てられた会員IDおよびパスワードと共に受信する。
このシステム10によって提供される自転車レンタル・サービスを享受するために、ユーザは、会員として事前に登録することを要求されており、その際、事後的な個人認証に必要なパスワードも併せて登録することを要求されている。
このステップS201においては、さらに、ユーザの携帯端末90との通信が開始されてから設定時間が経過しないうちにユーザの携帯端末90からステーションIDを受信した否かが判定され、前記設定時間内にステーションIDを受信しなかった場合には、その判定がNOとなり、管理サーバ50は、ユーザの携帯端末90との今回の通信を遮断する。
管理サーバ50が前記設定時間内にユーザの携帯端末90からステーションIDを受信できなかったのは、ユーザの携帯端末90において、前述の1回目の受信確認が成立したために図9のステップS102の判定がYESとなり、管理サーバ50との通信が開始されたが、ユーザの携帯端末90において、前述の2回目の受信確認が成立しなかったために同図のステップS108の判定がNOとなり、ステップS109がスキップされたからである。
よって、前記設定時間内にユーザの携帯端末90からステーションIDを受信した場合に限り、ステップS202に移行する。
なお、前記設定時間内にユーザの携帯端末90からステーションIDを受信したか否かの判定は、ステップS201においてではなく、そのステップS201より後であって、ステップS204より前に実行してもよい。例えば、ステップS202とS203との間において実行しても、ステップS203とS204との間において実行してもよい。
また、本実施形態においては、ユーザの携帯端末90が、同じステーションIDを表す識別信号を発信機30から複数回受信したときに、そのステーションIDが、ユーザの携帯端末90から管理サーバ50に送信され、それをトリガーとして、管理サーバ50は本格的な処理を開始する。よって、管理サーバ50は、ユーザの携帯端末90から、同じステーションIDを複数回受信することはない。
これに代えて、ユーザの携帯端末90が発信機30から識別信号を受信するごとに、各識別信号によって表される各ステーションIDを管理サーバ50に送信し、その管理サーバ50が、ユーザの携帯端末90から、同じステーションIDを複数回受信したときに、管理サーバ50が本格的な処理を開始する態様で、本発明を実施することも可能である。
次に、ステップS202において、前記受信した会員IDおよびパスワードと、前記登録されている情報との照合結果から、今回のユーザについての個人認証が成功したか否かが判定される。その個人認証が成功すると、ステップS203において、ユーザからの今回のリクエストが貸出リクエストであるか否かが判定される。
今回のリクエストが返却リクエストである場合には、判定がNOとなり、続いて、図13に示すステップ群に移行するが、今回のリクエストが貸出リクエストである場合には、判定がYESとなり、ステップS204に移行する。
このステップS204においては、時計172を用いて現在時刻が計測され、その現在時刻と同じ時刻として、今回の自転車12がユーザに貸し出されることが開始される貸出時刻(レンタル開始時刻)がメモリ162に記録される。
このステップS204は、ステップS201において管理サーバ50が携帯端末90からステーションIDを受信した時刻(これは、ユーザの貸出過程において、携帯端末90が発信機30から2回目の識別信号を有効に受信した時刻にほぼ一致する時刻である)の後、速やかに(1分とか、必要以上に長い時間が経過しないうちに)実行される。よって、貸出時刻が、ユーザの貸出過程において、携帯端末90が発信機30から2回目の識別信号を有効に受信した時刻にほぼ一致する時刻として認識されることになる。
すなわち、このステップS204においては、管理サーバ50が携帯端末90からステーションIDを受信した時刻、すなわち、ユーザの貸出過程において、携帯端末90が発信機30から2回目の識別信号を有効に受信した時刻にほぼ一致する時刻に基づき、ユーザへの貸出しの開始時刻が認識されるのである。
続いて、ステップS205において、携帯端末90から受信したステーションIDが貸出ステーションIDとしてメモリ162に記録される。
その後、ステップS206において、その貸出ステーションIDが、図16に概念的に表す対応関係テーブルであって複数のステーションIDと複数のステーション名との対応関係を表すもの(メモリ162に記憶されている)に登録されている複数のステーションIDのいずれかと一致するか否かが判定され、それにより、今回の貸出ステーションIDが真正であるか否かが判定される。
図16に例示するように、メモリ162には予め、複数のステーションIDと、複数のステーション名との間の対応関係が記録されている。よって、各時点において、今回のステーション20が特定されれば、対応する1つのステーション20の場所や名称が特定されることになる。
今回の貸出ステーションIDが真正ではない場合には、ユーザから今回受信したデータに何らかの異常があるとして、今回のサービスをユーザに提供することなく、このメイン・プログラムの実行が終了する。
これに対し、今回の貸出ステーションIDが真正である場合には、ステップS206の判定がYESとなり、続いて、ステップS207において、今回の車台番号60が、図示しない自転車テーブルであって複数の車台番号と複数の暗証番号との対応関係を表すもの(メモリ162に記憶されている)に登録されている複数の車台番号のいずれかと一致するか否かが判定され、それにより、今回の車台番号60が真正であるか否かが判定される。
今回の車台番号60が真正ではない場合には、ユーザから今回受信したデータに何らかの異常があるとして、今回のサービスをユーザに提供することなく、このメイン・プログラムの実行が終了する。
これに対し、今回の車台番号60が真正である場合には、ステップS207の判定がYESとなり、続いて、ステップS208において、車台番号60を有する自転車12をユーザに貸し出すことが許可される。その前提として、ユーザが、前記貸出時刻に、前記ステーションIDを有するステーション20に実際に居ると認識される。
その後、ステップS209において、図16に示す対応関係テーブルに従い、貸出ステーションIDに対応する貸出ステーション20が取得され、それにより、今回の貸出ステーション20が特定される。さらに、このステップS209においては、後の使用に備えて、今回の貸出時刻と貸出ステーションとが、今回の会員と車台番号60に関連付けてメモリ162に保存される。
具体的には、このステップS209においては、図15に示す利用状況管理リストが作成される。さらに具体的には、このステップS209においては、あるユーザについての1台の自転車12の貸出しというイベントの発生を契機とし、1回のレンタル・サービスごとに、貸出ステーション20と、貸出時刻と、返却ステーション20と、返却時刻と、ユーザを識別する情報(会員ID)と、車台番号60とが互いに関連付けられて成るデータブロック(例えば、紐づけされたデータ列)が作成される。複数のレンタル・サービスに対応する複数のデータブロックは、リスト化され、それにより、利用状況管理リストが作成される。
その利用状況管理リストの一例においては、複数のデータブロックが時系列的に配列され、例えば図15に示す例においては、貸出時刻が新しい順に複数のデータブロックが配列される。
図15に示す例においては、上から1番目のデータブロックが、ステーションAにおいて会員「田中」に対して自転車12(車台番号:0123)の貸出しが1月20日の10:00に行われたがその自転車12は未だ返却されていない(レンタル中である)ことを表す。
上から2番目のデータブロックは、ステーションAにおいて会員「鈴木」に対して自転車12(車台番号:1234)の貸出しが1月20日の9:00に行われたがその自転車12は未だ返却されていない(レンタル中である)ことを表す。
上から3番目のデータブロックは、ステーションAにおいて会員「加藤」に対して自転車12(車台番号:2345)の貸出しが1月20日の8:00に行われ、その自転車12はステーションAに1月20日の17:00に返却され、レンタル料金も支払われたことを表す。
上から4番目のデータブロックは、ステーションAにおいて会員「小林」に対して自転車12(車台番号:3456)の貸出しが1月19日の8:00に行われ、その自転車12はステーションBに1月19日の12:00に返却され、レンタル料金も支払われたことを表す。
すなわち、管理サーバ50のうち、このステップS209を実行する部分が、リスト作成部204を構成しているのである。
続いて、ステップS210において、前記自転車テーブルを参照することにより、今回の車台番号60に対応する暗証番号、すなわち、今回の自転車12において施錠されているダイヤル錠84をユーザが自ら解錠するためにそのダイヤル錠84に与えるべき番号(例えば、複数桁の数字)が取得される。
その後、ステップS211において、その取得された暗証番号と、自転車12の貸出しを開始することを表すメッセージとが、ユーザの携帯端末90に向かって送信される。
続いて、ステップS212において、図14に示すリスト表示プログラム(後に詳述する)が実行されることにより、必要に応じ、前記利用状況管理リストが表示部166の画面上に表示され、これにより、管理サーバ50のオペレータに対して前記利用状況管理リストが可視化される。
その後、ステップS213において、図17に示す返却催促プログラム(後に詳述する)が実行される。以上で、このメイン・プログラムのうち、自転車12の貸出しを行う部分の実行が終了する。
これに対し、ユーザから出された今回のリクエストが返却リクエストである場合には、図12のステップS203の判定がNOとなり、図13に示すステップS214に移行する。このステップS214においては、時計172を用いて現在時刻が計測され、その現在時刻と同じ時刻として、今回の自転車12がユーザによって返却されることが完了する返却時刻(レンタル終了時刻)がメモリ162に記録される。
このステップS214は、ステップS201において管理サーバ50が携帯端末90からステーションIDを受信した時刻(これは、ユーザの返却過程において、携帯端末90が発信機30から2回目の識別信号を有効に受信した時刻にほぼ一致する時刻である)の後、速やかに(1分とか、必要以上に長い時間が経過しないうちに)実行される。よって、返却時刻が、ユーザの返却過程において、携帯端末90が発信機30から2回目の識別信号を有効に受信した時刻にほぼ一致する時刻として認識されることになる。
すなわち、このステップS214においては、管理サーバ50が携帯端末90からステーションIDを受信した時刻、すなわち、ユーザの返却過程において、携帯端末90が発信機30から2回目の識別信号を有効に受信した時刻にほぼ一致する時刻に基づき、ユーザからの返却の終了時刻が認識されるのである。
続いて、ステップS215において、携帯端末90から受信したステーションIDが、今回は、返却ステーションIDとしてメモリ162に記録される。
続いて、ステップS216において、その返却ステーションIDが前記ステーション・テーブル内の複数のステーションIDのいずれかと一致するか否かを判定することにより、今回の返却ステーションIDが真正であるか否かが判定される。今回の返却ステーションIDが真正ではない場合には、ステップS216の判定がNOとなり、ユーザから今回受信したデータに何らかの異常があるとして、今回のサービスをユーザに提供することなく、このメイン・プログラムの実行が終了する。
これに対し、今回の返却ステーションIDが真正である場合には、ステップS216の判定がYESとなり、続いて、ステップS217において、今回の車台番号60が前記自転車テーブル内の複数の車台番号のいずれかと一致するか否かを判定することにより、今回の車台番号60が真正であるか否かが判定される。
今回の車台番号60が真正ではない場合には、ステップS217の判定がNOとなり、ユーザから今回受信したデータに何らかの異常があるとして、車台番号60を有する自転車12をユーザが今回のステーション20に返却することが禁止される。以上で、このメイン・プログラムの実行が終了する。
これに対し、今回の車台番号60が真正である場合には、ステップS217の判定がYESとなり、続いて、ステップS218において、車台番号60を有する自転車12をユーザが今回のステーション20に返却することが許可される。その前提として、ユーザが、前記測定された返却時刻に、前記復元されたステーションIDを有するステーション20に実際に居ると認識される。
その後、ステップS219において、今回の返却対象である自転車12についての貸出時刻と貸出ステーションとが、今回の車台番号60に関連付けてメモリ162から読み出される。
続いて、ステップS220において、前記貸出時刻から前記返却時刻までの経過時間の長さが、ユーザが自転車12を利用した前記利用時間(レンタル時間)の長さとして計算される。その後、ステップS221において、前記返却ステーションIDが前記貸出ステーションIDと一致するか否かが判定される。
続いて、ステップS222において、前記計算された利用時間の長さと、前記返却ステーションIDが前記貸出ステーションIDと一致するか否かの判定結果とに基づき、前記料金テーブルを参照することにより、今回のレンタル料金の額が計算される。その後、ステップS223において、その計算されたレンタル料金につき、今回のユーザに対して決済が行われ、それにより、今回のレンタル料金がユーザから徴収される。
続いて、ステップS224において、返却が完了したことを表すメッセージと、今回のレンタル料金についての支払明細とがユーザの携帯端末90に向けて送信される。
その後、ステップS225において、図16に示す対応関係テーブルに従い、返却ステーションIDに対応する返却ステーション20が取得され、それにより、今回の返却ステーション20が特定される。
さらに、このステップS225においては、返却時刻および返却ステーションのそれぞれの今回のデータが反映されるように、前記利用状況管理リストが更新される。続いて、ステップS226において、図14に示すリスト表示プログラム(後に詳述する)が実行されることにより、必要に応じ、最新の利用状況管理リストが表示部166の画面上に表示され、これにより、管理サーバ50のオペレータに対して前記利用状況管理リストが可視化される。
その後、ステップS227において、図17に示す返却催促プログラム(後に詳述する)が実行される。以上で、このメイン・プログラムのうち、自転車12の返却を行う部分の実行が終了する。
本実施形態においては、携帯端末90がステーションごとに固有の局地的識別信号を発信機30から受信し、その識別信号をステーションIDに変換して、そのステーションIDを携帯端末90が管理サーバ50に送信するが、これは、事実上、レンタル車両を保管するステーションごとに固有の局地的識別信号をレンタル車両のユーザの携帯端末を経由して管理サーバ50が受信することと等価である。
このように、発信機30からの識別信号が携帯端末90を経由して管理サーバ50に送信されるおかげで、ユーザが、特定されたいずれかの時刻に、かつ、特定されたいずれかのステーション20に居ることを管理サーバ50が認識することが可能となる。
ところで、本実施形態においては、携帯端末90が同じステーションIDを表す識別信号を複数回有効に受信し、ユーザが滞在しているステーション20の同一性を確認した後に、携帯端末90が1回のみ、その識別信号に対応するステーションIDを管理サーバ50に送信する。
これに対し、携帯端末50が識別信号を受信するごとに、その識別信号をステーションIDに変換して管理サーバ50に送信し、その管理サーバ50が、同じステーションIDを複数回受信し、ユーザが滞在しているステーション20の同一性(ユーザが、同じステーション20に居続けていること)を確認した後に、自転車12の貸出しまたは返却を処理する態様で本発明を実施することが可能である。
しかし、この態様では、管理サーバ50が複数人のユーザとの間でレンタルに関する複数のセッション(各セッションは、一連のインタラクティブな操作)を一括して処理することが通常であることを考慮すると、管理サーバ50の処理負担が増加する傾向がある。
これに対し、本実施形態においては、貸出過程または返却過程においてユーザが滞在しているステーション20の同一性を確認するというイベントを管理サーバ50にではなくユーザの携帯端末90に行わせるため、管理サーバ50の負担軽減が容易となる。
さらに、本実施形態においては、図7に示すように、管理サーバ50が、携帯端末90が発信機30から識別信号を受信したという第1受信イベントに応答して、携帯端末90との実質的な通信(1回分のセッション)を開始し、その通信開始後、携帯端末90が発信機30から同じステーションIDを表す識別信号を再度受信したという第2受信イベントに応答して、携帯端末90から、前記識別信号に対応するステーションIDを受信する。
本実施形態によれば、携帯端末90の処理と管理サーバ50の処理とを互いに並行して行うことが可能となり、よって、それら処理が直列に行われる場合より迅速に、ユーザは、自転車12の貸出しまたは返却を行うことが可能となる。
ここで、図14を参照して前記リスト表示プログラムを詳細に説明する。
このリスト表示プログラムは繰返し実行され、各回の実行時においては、まず、ステップS301において、管理サーバ50のオペレータからリスト表示リクエストが出されるのが待たれる。
そのリスト表示リクエストが出されると、ステップS301の判定がYESとなり、ステップS302において、前記利用状況管理リストがメモリ162から読み出される。続いて、ステップS303において、その読み出された利用状況管理リストが管理サーバ50の表示部172の画面上に表示される。以上で、このリスト表示プログラムの今回の実行が終了する。
次に、図17を参照して前記返却催告プログラムを詳細に説明する。
この返却催告プログラムは繰返し実行され、各回の実行時においては、まず、ステップS401において、前記利用状況管理リストに、貸出しというイベント単位で記録されている複数のデータブロックから、今回注目すべきデータブロックが選択される。
続いて、ステップS402において、その選択されたデータブロックにおいて、返却時刻の欄を参照することにより、そのデータブロックに対応する今回のユーザが自転車12を返却した時刻が記録されていないか否か、すなわち、今回のユーザが自転車12を未返却のままであるか否かが判定される。
今回のユーザが自転車12を未返却のままである場合には、ステップS402の判定がYESとなり、ステップS403において、管理サーバ50から今回のユーザの携帯端末90に、返却を催促するためのメッセージが送信される。その後、ステップS401に戻り、別のデータブロックが実行対象として選択される。
これに対し、今回のユーザが自転車12を返却していた場合には、ステップS402の判定がNOとなり、ステップS403がスキップされてステップS401に戻る。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、管理サーバ50のうち、ステップS201−S208およびS210−S211を実行する部分が、貸出処理部200を構成し、ステップS201−S203およびS214−S224を実行する部分が、返却処理部202を構成し、また、ステップS209およびS225を実行する部分が、リスト作成部204を構成し、また、ステップS212およびS226を実行する部分が、リスト表示部206を構成し、また、ステップS213およびS227を実行する部分が、返却催促部208を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、管理サーバ50のうち、ステップS201を実行する部分が、前記リアルタイム受信部および前記リアルタイム受信工程のそれぞれの一例を構成し、また、ステップS203−S205,S209,S214,S215およびS225を実行する部分が、前記情報認識部および前記情報認識工程のそれぞれの一例を構成しているのである。
[第2の実施形態]
次に、図18を参照することにより、本発明の例示的な第2の実施形態に従う自転車レンタル・システム10を説明する。ただし、本実施形態は、前述の第1の実施形態と共通する要素が多いため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同じ名称または同じ符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略する。
前述のように、第1の実施形態においては、発信機30と、ユーザの携帯端末90と、管理サーバ50との間の信号のやりとりに際し、図7に時系列的に示すように、携帯端末90の処理と管理サーバ50の処理とを部分的に互いに並行して行われる。
これに対し、本実施形態においては、図18に時系列的に示すように、携帯端末90の処理と管理サーバ50の処理とが直列的に行われる。
具体的には、本実施形態においては、管理サーバ50が、携帯端末90が発信機30から識別信号を受信したという第1受信イベントが発生してから、携帯端末90が発信機30から同じステーションIDを表す識別信号を再度受信したという第2受信イベントが発生するまでの間は、携帯端末90と実質的な通信を行わない。
その第2受信イベントの発生後にはじめて、その第2受信イベントに応答して、携帯端末90との実質的な通信(1回分のセッション)を開始し、その後、携帯端末90から、前記識別信号に対応するステーションIDを受信する。
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、それら実施形態によれば、例えば次のようないくつかの効果が得られる。
1.ステーション20に設置されるレンタル・サービス用設備の低コスト化
既に種々のデバイス・メーカから、外部に送出または発信したい情報を指定すると、その情報を識別信号に変換、変調または暗号化し、その識別信号を局地的に発信する非接触式または接触式の発信機が市販されている。
この市販品を用いて本実施形態のうちの発信機30を実現することが可能である。すなわち、発信機30を実現するために、専用の発信機を設計して製造することは不可欠ではないのである。
よって、本実施形態によれば、各ステーション20に設置することが必要なレンタル・サービス用設備の低コスト化が容易となる。
2.ユーザが実際に、いずれのステーション20に居るのかを認識する精度の向上
本実施形態によれば、レンタル車両の一例としての自転車12を保管するステーション20ごとに固有の局地的識別信号であって発信機30から発信されたものをユーザの携帯端末90を経由して管理サーバ50が、事実上、受信することによって自転車12のレンタル・サービスが行われる。
ここに、発信機30から発信する識別信号は、一種の暗号化信号であるから、ユーザがみだりに改変することは不可能である。また、管理サーバ50は、ユーザが現在居るステーション20の場所を、発信機30からの識別信号を用いて特定する。
さらに、ユーザの携帯端末90が発信機30から受信した識別信号が、携帯端末90が管理サーバ50に送信するステーションIDに変換される過程において、ユーザの意図的な介入、すなわち、ユーザによるデータ入力やデータ編集が存在しない。よって、ユーザは、ステーションIDを改ざんすることが不可能となる。その結果、利用されるステーション20から管理サーバ50に送信されるステーション位置関連情報のセキュリティが向上する。
したがって、本実施形態によれば、ユーザが、例えば、正規のレンタル料金より低額のレンタル料金が管理サーバ50によって計算されることを目的として、実際に居るステーション20とは異なるステーション20に居るユーザになりすますしてレンタル・サービスを受けることが阻止される。
よって、本実施形態によれば、ユーザが実際、いずれのステーション20に居るのかを認識する精度が向上する。
3.ユーザが実際に、いずれの時刻に、あるステーション20において貸出または返却を行うのかを認識する精度の向上
本実施形態によれば、ステーション20ごとに固有の局地的識別信号が発信機30からユーザの携帯端末90を経由して管理サーバ50に、ステーションIDという形態で実質的にリアルタイムで送信される。管理サーバ50は、例えば、そのステーションIDを受信した時刻を参照して、ユーザへの貸出しを開始した時刻や、ユーザからの返却が終了した時刻を認識する。よって、ユーザは、それら時刻を改ざんすることは不可能である。
したがって、本実施形態によれば、ユーザが、実際に、いずれの時刻に、あるステーション20において貸出または返却を行うのかを認識する精度が向上する。よって、このことによっても、利用するステーション20から管理サーバ50に送信されるステーション位置関連情報のセキュリティが向上する。
4.ユーザが、本当にレンタル目的で、あるステーション20に居たのか、偶然にあるステーション20の近傍に居たに過ぎないのかという観点でのユーザ行動の分別的監視
本実施形態によれば、ユーザの携帯端末90が同じステーションIDを表す識別信号を複数回、互いに異なる時刻に有効に受信するというイベント、すなわち、同じステーションIDを表す識別信号をある時間的スパンにわたって実質的に継続的に受信するのを待って、管理サーバ50が、レンタルのための処理を行う。
すなわち、本実施形態によれば、ある識別信号の瞬間的受信すなわちあるステーション20へのユーザの瞬間的滞在を必要条件とするのではなく、同じステーションIDを表す識別信号の継続的受信すなわち同じステーション20へのユーザの継続的滞在を十分条件として、管理サーバ50が、ユーザが現在、本当に滞在しているステーション20の位置すなわちステーションIDを推定ないしは特定するのである。
その結果、本実施形態によれば、ユーザの携帯端末90の位置すなわちユーザの位置を瞬間的にではなく継続的に観察し、それにより、ユーザが本当に自転車12の貸出しまたは返却という目的であるステーション20に居たのか、それとも、偶然にあるステーション20の近傍に居たに過ぎないのかという観点で、ユーザの行動を区別して観察することが可能となる。
さらに、本実施形態によれば、ユーザが偶然にあるステーション20の近傍に居たに過ぎない可能性が判明した場合に、管理サーバ50が、レンタルのための処理を開始しないか、開始しても中止し、最終的に、無駄な処理が行われないようにすることが可能である。
したがって、本実施形態によれば、ユーザの携帯端末90が識別信号を最初に有効に受信したという1回のイベントのみに応答して、管理サーバ50が、レンタルの処理を行う場合より精度よく、無断なレンタルのための処理を回避することが可能となる。
例えば、ユーザの携帯端末90において、レンタル・サービスのためのアプリケーションが誤って起動してしまい、そのときに偶然にユーザがいずれかのステーション20の近傍に居たために、そこに設置されている発信機30からの識別信号を受信してしまったとしても、次の瞬間にユーザがそのステーション20から遠ざかっている限り、ユーザは、知らないうちに、管理サーバ50に対して誤ったレンタルの申込みをせずに済む。よって、誤ったレンタル料金が管理サーバ50によってユーザに請求されずに済む。
なお付言するに、上述のいくつかの実施形態は、本発明を、自転車をレンタル対象とするレンタル・サービスに適用した場合のいくつかの具体例であるが、これに代えて、本発明は、例えば、自動車をレンタル対象とするレンタル・サービスに適用したり、自動二輪車をレンタル対象とするレンタル・サービスに適用することが可能である。
さらに付言するに、上述のいくつかの実施形態においては、動産がレンタル対象であるが、固有のIDが割り当てられるのはその動産ではなく、その動産の貸出し元および返却先であるステーションである不動産である。
すなわち、それら実施形態においては、不動産の有する固着性(位置が時間によって変動しないという性質)と、固着性を有しない動産といえでも、一時的には、一義的に1つの不動産に関連付けられるという性質と着目し、そのうえで、各不動産に、固有のIDが割り当てられ、そのうえで、複数の動産が、それぞれ1対1または多対1の関係で関連付けられる不動産を媒介にして管理されるのである。
さらに、それら実施形態においては、ユーザが、動産の貸出し時には、必ず、1つの不動産に滞在し、かつ、動産の返却時にも、必ず、1つの不動産に滞在するという事実に着目し、それぞれのタイミングでユーザが自身の携帯端末で、該当するIDをリアルタイムで管理サーバに送信することを強制することにより、管理サーバが動産の貸出時刻と返却時刻とを、不正行為が介在する余地が皆無である状態で特定することを可能にする。
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。