本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他様々な形態が実施可能である。
なお、本発明はカラー複写機及びモノクロ複写機の双方に対して複写牽制効果を有する技術であるため、本発明における「複写機」には、カラー複写機及びモノクロ複写機の双方を含むものとする。
はじめに、本発明における複写牽制印刷物(以下「印刷物(A)」という。)の概要について説明する。図1(a)は、本発明における印刷物(A)の平面図である。印刷物(A)の形態の例としては、紙幣、証券、パスポート、身分証明書等の偽造防止及び複写防止対策を要する貴重印刷物等の印刷物がある。印刷物(A)は、基材(1)の少なくとも一部に、基材(1)と異なる色の印刷画像(2)を備えている。基材(1)は、紙、フィルム、プラスチック等を用いることができ、印刷用の色材が形成可能な平面を備えていれば、特に限定されるものではない。
さらに、印刷画像(2)は、図1(b)に示す目視で視認可能な可視画像(3)と、図1(c)に示す複写により視認可能となる潜像画像(4)を有している。つまり、印刷画像(2)を反射光下で視認した状態が図1(b)、印刷画像(2)を複写した後に視認される状態が図1(c)に示されている。本発明では、複写時に同一画像領域内で明瞭に画像をチェンジさせるために、可視画像(3)と潜像画像(4)の少なくとも一部が重なった状態で配置されている。各画像の構成については後述する。なお、本発明では、図1に示すとおり、可視画像(3)をアルファベットの「A」とし、潜像画像(4)をアルファベットの「B」として説明するが、これらの画像は、アルファベットの文字に限定されるものではなく、その他の文字、数字、記号、図形、マーク及び模様のいずれか又はその組合せで形成されてもよい。
各画像について詳細に説明する。まずは、印刷画像(2)を二つの色相により形成する場合の説明である。図2に示すとおり、可視画像(3)は、色相の違いにより視認可能な有意味な画像を形成しており、可視背景部(5)と可視画像部(6)は互いの色相差によって区分けされる。有意味な画像を視認できるように表現する方法として、同一色相で面積率を変化させる方法があるが、本発明においては、明瞭な画像のチェンジ効果を得るために、各部の色相を異ならせることで、反射光下において可視画像(3)を視認させている。なお、可視背景部(5)と可視画像部(6)は、反射光下において区分け可能な程度色相が異なっていればいかなる色相の組合せでも問題はなく、例えば、可視背景部(5)が赤色で形成される場合は、可視画像部(6)は青色、黄色、緑色などの赤色とは異なる色相により形成する。なお、本発明における「色相」とは、赤色、青色、黄色といった色の様相のことであり、具体的には、可視光領域(400〜700nm)の特定の波長の強弱の分布を示すものである。
また、潜像画像(4)については、図3に示すとおり、可視画像(3)と同じ領域内で、潜像背景部(7)と潜像画像部(8)に区分けされる。前述したとおり、潜像画像(4)は、印刷画像(2)を複写した際に視認される画像であるため、潜像画像部(8)は複写で再現される大きさの要素、潜像背景部(7)は複写で再現されない大きさの要素で形成するか、若しくは、潜像画像部(8)を複写で再現されない大きさの要素、潜像背景部(7)は複写で再現される大きさの要素で形成する。なお、本発明における「複写で再現されない大きさ」には、複写により、再現が著しく低下する大きさも含む。
また、「複写で再現される大きさ」及び「複写で再現されない大きさ」は、要素を形成する色相やその明度によっても異なる。例えば、色相が異なる赤色の要素と青色の要素では、複写で再現される、あるいは、再現されない大きさは異なり、更に、同じ色相であっても、明度が高い赤色の要素と明度が低い赤色の要素では、複写での再現性が異なる。また、複写機の精度(複写機メーカにより異なる場合もある。)にも影響を受ける。
よって、本発明における「複写で再現される大きさ」及び「複写で再現されない大きさ」については、対象とする複写機及び要素の色相や明度によって異なるが、実際に複写をした際に再現されるかされないかに基づくものとし、要素の大きさは、色相やその明度に応じて十分吟味する必要がある。要素の具体的な構成については、後述する。
前述したとおり、本発明において、反射光下で可視画像(3)を視認させる方法として、可視背景部(5)と可視画像部(6)の色相を異ならせる方法を採用するのは、同一画像領域内における可視画像(3)から潜像画像(4)への画像のチェンジを明瞭にするためである。仮に、可視背景部(5)と可視画像部(6)を同一色相で面積率を変化させることで区分けした場合には、複写時に潜像画像(4)に可視画像(3)が干渉することで、明瞭な画像のチェンジ効果が得られない。これは、本発明では可視画像(3)と潜像画像(4)が同一画像領域内で重なった状態であるため、複写で再現される大きさの要素で形成される潜像画像部(8)が、可視画像部(6)と可視背景部(5)を形成する領域を有しているためである。このように、可視背景部(5)と可視画像部(6)とを、面積率を異ならせる方法で区分けした場合には、これらの濃淡差が複写後の潜像画像部(8)内でも再現されてしまうため、潜像画像(4)中に可視画像(3)が干渉することで視認性が低下し、明瞭なチェンジ効果が得られないからである。
各部の構成について、より詳細に説明する。図4に示すとおり、可視背景部(5)は第1の領域(9)及び第2の領域(10)、可視画像部(6)は第3の領域(11)及び第4の領域(12)により形成され、図5に示すとおり、潜像背景部(7)は第1の領域(9)及び第3の領域(11)、潜像画像部(8)は第2の領域(10)及び第4の領域(12)により形成される。前述したとおり、同一画像領域内で画像がチェンジすることで高い複写牽制効果を有するように、可視画像(3)と潜像画像(4)は少なくとも一部が重なって配置されているため、各画像は共通の領域を有した状態である。以下、各領域の詳細な構成について説明する。
図6に示す第1の領域(9)は、可視背景部(5)及び潜像背景部(7)に共通する領域であり、複写機で再現されない領域である。そこで、第1の領域(9)は、複写機で再現されない大きさの第一の要素(13)が複数配置されることで、第1の面積率を有している。具体的には、5μm〜100μmの大きさの要素を、50μm〜150μmのピッチで配置させるように、第一の色相の有色インキにより形成する。なお、第一の色相は、基材(1)の表面色と明確に区別のつく色相である。
なお、本発明における、各領域を形成する「要素」は、印刷画像を形成する最小単位の小さな網点のことである。図19(a)は大きさDh=Dvの円形の要素がピッチPで規則的に配置された状態であるが、これらの要素を特定の方向に一定の距離連続して配置した点線や破線の分断線、直線、曲線及び破線を画線とし、少なくとも一つの印刷網点又は印刷網点を複数集めて一塊にした円や三角形(図19(b))、四角形(図19(c))を含む多角形、星形(図19(d))等の各種図形、あるいは文字(図19(e))や記号、数字等を画素とする。すなわち、網点の組合せの構成によって画線や画素が構成される。
また、各要素は、必ずしも規則的に配置する必要はなく、不規則に配置することも可能である。この場合、要素を不規則に配置した箇所は、他の箇所よりも若干濃く視認されることとなるが、各領域の視認性に影響を及ぼさない程度であれば、前述及び後述するピッチの範囲内で要素を不規則に配置してもよい。
図7に示した第2の領域(10)は、可視背景部(5)及び潜像画像部(8)に共通する領域であり、複写機で再現される領域である。そこで、第2の領域(10)は、複写機で再現される大きさの第二の要素(14)が複数配置されることで、第2の面積率を有している。具体的には、90μm〜300μmの大きさの要素を、160μm〜600μmのピッチで配置させる。
第2の領域(10)の色相及び面積率について説明する。前述したとおり、第2の領域(10)は、第1の領域(9)とともに可視背景部(5)を形成する領域であるため、第1の領域(9)と第2の領域(10)は、目視で等濃度でなければならない。等濃度でない場合は、第1の領域(9)と第2の領域(10)が濃度の違いにより区分けして視認されるため、何らかの情報が埋め込まれていると視認されてしまうからである。そこで、第1の領域(9)と第2の領域(10)を目視で区分けできないようにするため、第二の要素(14)は、第一の要素(13)を形成する第一の色相の有色インキを用いるとともに、第1の領域(9)の面積率と等しくなるように配置する。つまり、第1の面積率と第2の面積率は等しい状態である。ただし、要素の大きさやピッチの違い、使用する色材や基材の違いにより、同一面積率でも濃淡差が感じられることがあるため、この場合には要素の大きさやピッチ等を適宜調整し、目視で等濃度になるように設定する。つまり、この場合の面積率は完全に同一ではなく、ほぼ同一の状態となるが、目視で区分けできなければ問題はない。
なお、本発明における「等濃度」とは、目視ではほとんど差別化することができない状態であり、領域が区分けできない程度に各領域の濃度が近い状態を指すこととする。具体的には、色差ΔEが分光測色計で6未満であることをいう。さらには、第1の領域(9)と第2の領域(10)の色差ΔEが分光測色計で3以下であることが好ましい。これは、「品質管理シンポジウム報文集(昭和54年3月1日、(財)日本規格協会)発行」にも記載されているとおり、色差ΔEが3以下であれば、一般的に等色であると思われるレベルだからである。
図8に示した第3の領域(11)は、可視画像部(6)及び潜像背景部(7)に共通する領域であり、複写機で再現されない領域である。そこで、第3の領域(11)は、複写機で再現されない大きさの第三の要素(15)が複数配置されることで、第3の面積率を有している。具体的には、5μm〜100μmの大きさの要素を、50μm〜150μmのピッチで配置させる。
第3の領域(11)の色相について説明する。前述したとおり、第3の領域(11)は、後述する第4の領域(12)とともに可視画像部(6)を形成する領域であるため、可視背景部(5)を形成する第1の領域(9)及び第2の領域(10)とは色相が異なる必要がある。そこで、第三の要素(15)は、可視背景部(5)の色相とは異なる第二の色相の有色インキにより形成する。なお、第二の色相についても、基材(1)の表面色と明確に区別のつく色相でなければならない。
また、第一の色相と第二の色相については、色差ΔEが分光測色計で20以上であることが好ましい。色差ΔEが20以上であれば、可視画像(3)の視認性が良く、複写物における潜像画像(4)への明瞭なチェンジ効果が得られる。
しかし、印刷物(A)の形成に使用するインキや、印刷物(A)の複写に用いる複写機の性能によって、可視画像(3)の視認性や、複写物における再現性は異なるため、第一の色相と第二の色相の選定は、十分吟味する必要がある。
さらに、第3の領域(11)は、第1の領域(9)とともに潜像背景部(7)を形成する領域であるため、複写機で再現した際に、第1の領域(9)と第3の領域(11)は等濃度に再現されなければならない。等濃度でない場合は、第1の領域(9)と第3の領域(11)が濃度の違いにより区分けして視認されるため、潜像画像(4)の視認性が悪くなるとともに、画像のチェンジ効果が乏しくなり、複写牽制効果が低下する。
図9に示した第4の領域(12)は、可視画像部(6)及び潜像画像部(8)に共通する領域であり、複写機で再現される領域である。そこで、第4の領域(12)は、複写機で再現される大きさの第四の要素(16)が複数配置されることで、第4の面積率を有している。具体的には、90μm〜300μmの大きさの要素を、160μm〜600μmのピッチで配置させる。
第4の領域(12)の色相及び面積率について説明する。前述したとおり、第4の領域(12)は、第3の領域(11)とともに可視画像部(6)を形成する領域であるため、第1の領域(9)及び第2の領域(10)から形成される可視背景部(5)とは色相が異なるとともに、第4の領域(12)と第3の領域(11)は等濃度である必要がある。等濃度でない場合は、第4の領域(12)と第3の領域(11)が濃度の違いにより区分けして視認されるため、何らかの情報が埋め込まれていると視認されてしまうからである。そこで、第4の領域(12)と第3の領域(11)を目視で区分けできないようにするため、第四の要素(16)は、第三の要素(15)を形成する第二の色相の有色インキを用いて、第3の領域(11)の面積率と等しくなるように配置する。つまり、第4の面積率と第3の面積率は等しい状態である。ただし、要素の大きさやピッチの違い、使用する色材や基材の違いにより、同一面積率でも濃淡差が感じられることがあるため、この場合には要素の大きさやピッチ等を適宜調整し、目視で等濃度になるように設定する。よって、この場合の面積率は完全に同一ではなく、ほぼ同一の状態となるが、目視で区分けできなければ問題はない。
さらに、第4の領域(12)は、第2の領域(10)とともに潜像画像部(8)を形成する領域であるため、複写機で再現した際に、第2の領域(10)と第4の領域(12)は等濃度に再現されなければならない。等濃度でない場合は、第2の領域(10)と第4の領域(12)が濃度の違いにより区分けして視認されるため、潜像画像(4)の視認性が悪くなるとともに、画像のチェンジ効果が乏しくなり、複写牽制効果が低下する。そこで、第2の領域(10)と第4の領域(12)が複写時に区分けして視認できず、等濃度となるように後述する手順を経て設計する必要がある。
以上が、各画像を形成する各領域の説明である。次に、各画像が視認される原理について説明する。
本発明では、図1(a)で示したとおり、反射光下において可視画像(3)が視認される。前述したとおり、可視画像(3)は可視背景部(5)と可視画像部(6)により形成されるが、これらは異なる色相の有色インキにより形成されるため、可視画像(3)は色相の違いにより各部が区分けされて視認される。
ただし、可視画像(3)の中に、複写物で出現する潜像画像(4)の情報が視認されると、何らかの情報が埋め込まれていることが明らかになる。さらに、この事象は、可視画像(3)の視認性や、潜像画像(4)へのチェンジ効果にも影響を与えるため、複写牽制効果が低下してしまう。そこで、本発明においては、可視背景部(5)を形成する第1の領域(9)と第2の領域(10)及び可視画像部(6)を形成する第3の領域(11)と第4の領域(12)は、反射光下において、それぞれ等濃度で視認されるように調整する。具体的には、第一の色相の有色インキで形成される第1の領域(9)を形成する第一の要素(13)と第2の領域(10)を形成する第二の要素(14)を、反射光下で等濃度に視認されるように、面積率を調整する必要がある。さらに、第二の色相の有色インキで形成される第3の領域(11)を形成する第三の要素(15)と第4の領域(12)を形成する第四の要素(16)についても、等濃度で視認されるように、面積率を調整する必要がある。
なお、可視背景部(5)を形成する第一の要素(13)と第二の要素(14)、更に、可視画像部(6)を形成する第三の要素(15)と第四の要素(16)については、複写における再現性の違いにより、各要素の大きさ及び配置ピッチが異なることがある点に注意が必要である。使用する色材の色相や複写機の性能による各要素の調整方法の詳細は、後述する。
続いて、図1(a)に示した可視画像(3)を複写した状態を説明する。図1(c)に示すとおり、本発明においては、複写物では可視画像(3)とは異なる潜像画像(4)が出現する。前述したとおり、潜像画像(4)は潜像背景部(7)と潜像画像部(8)により形成されるが、複写物では各部が異なる濃度で再現されるため、その濃淡差により、潜像背景部(7)と潜像画像部(8)に区分けされることで潜像画像(4)が視認される。例えば、潜像背景部(7)が淡い状態(複写されない状態)の場合は、潜像画像部(8)は濃い状態(複写で再現された状態)とする。
この複写物において、可視画像(3)の情報が視認されると、潜像画像(4)の視認性や可視画像(3)から潜像画像(4)へのチェンジ効果にも影響を与えるため、複写牽制効果も低下してしまう。そこで、本発明においては、潜像背景部(7)を形成する第1の領域(9)と第3の領域(11)及び潜像画像部(8)を形成する第2の領域(10)と第4の領域(12)は、複写の状態で等濃度になり、各領域が区分けして視認できない状態でなければならない。具体的には、第1の領域(9)を形成する第一の要素(13)と第3の領域(11)を形成する第三の要素(15)を、複写物が等濃度(消失して全く再現されない状態も含む。)で視認されるように、面積率を調整する必要がある。さらに、第2の領域(10)を形成する第二の要素(14)と第4の領域(12)を形成する第四の要素(16)についても、複写物が等濃度で視認されるように、面積率を調整する必要がある。
なお、複写物における、潜像背景部(7)と潜像画像部(8)の濃淡差については、目視において潜像背景部(7)と潜像画像部(8)とが区分け可能な濃淡差を有していればよい。具体的には、色差ΔEが分光測色計で6以上であることをいう。さらに、潜像背景部(7)及び潜像画像部(8)の色差ΔEが分光測色計で12以上であることが好ましい。これは「品質管理シンポジウム報文集」にも記載されているとおり、色差ΔEが12以上であれば、一般的に別の色として区別されるレベルだからである。
さらに、潜像背景部(7)を形成する第一の要素(13)と第三の要素(15)及び潜像画像部(8)を形成する第二の要素(14)と第四の要素(16)については、色相が異なっており、要素の大きさも使用する色材によって異なる点が本発明の特長である。各要素の大きさ及び配置ピッチの調整方法の詳細は、後述する。以上が、印刷画像(2)を二つの色相により形成する場合の説明である。
続いて、印刷画像(2)が三つ以上の色相を有する場合について説明する。この構成であっても、前述した二つの色相から形成される印刷物(A)と効果は同じであり、構成の多くは共通しているため、異なる点を中心に説明し、共通する構成については説明を省略する。ここでは、四種類の色材を用いて印刷画像(2)を形成した場合について説明する。具体的には、可視背景部(5)を二つの色相で、可視画像部(6)を可視背景部(5)の色相とは異なる二つの色相により形成する(可視画像(3)が四つの色相を有する)場合の説明である。
図10(a)には、四つの色相を有する印刷物(A)の構成を示している。前述したとおり、図10(b)に示す可視画像(3)は、二つの色相から形成される可視背景部(5)と可視背景部(5)の色相とは異なる二つの色相により形成する可視画像部(6)から形成されるとともに、各部の色相の違いにより視認可能な有意味な画像を形成している。また、潜像画像(4)については、図10(c)に示すとおり、可視画像(3)と同じ領域内で、潜像背景部(7)と潜像画像部(8)に区分けされる。
各部の構成について、より詳細に説明する。図11に示すとおり、可視背景部(5)は、第一の色相を有する第1−1の領域(9−1)と第2−1の領域(10−1)及び第三の色相を有する第1−2の領域(9−2)と第2−2の領域(10−2)から形成され、可視画像部(6)は、第二の色相を有する第3−1の領域(11−1)と第4−1の領域(12−1)及び第四の色相を有する第3−2の領域(11−2)と第4−2の領域(12−2)により形成される。
また、図12に示すとおり、潜像背景部(7)は、第一の色相を有する第1−1の領域(9−1)、第三の色相を有する第1−2の領域(9−2)、第二の色相を有する第3−1の領域(11−1)及び第四の色相を有する第3−2の領域(11−2)により形成され、潜像画像部(8)は第一の色相を有する第2−1の領域(10−1)、第三の色相を有する第2−2の領域(10−2)、第二の色相を有する第4−1の領域(12−1)及び第四の色相を有する第4−2の領域(12−2)により形成される。
可視背景部(5)と潜像背景部(7)に共通する第1−1の領域(9−1)と第1−2の領域(9−2)は、複写機で再現されない領域であるため、各領域は複写機で再現されない大きさの要素が複数配置される。なお、複写後の第1−1の領域(9−1)と第1−2の領域(9−2)に濃度の違いが生じると、各領域が区分けして視認されるため、潜像画像(4)の視認性が悪くなるとともに、画像のチェンジ効果が乏しくなり、複写牽制効果が低下する。そこで、複写後の第1−1の領域(9−1)と第1−2の領域(9−2)は、目視で等濃度でなければならない。
可視背景部(5)と潜像画像部(8)に共通する第2−1の領域(10−1)と第2−2の領域(10−2)は、複写機で再現される領域であるため、各領域は複写機で再現される大きさの要素が複数配置される。なお、第2−1の領域(10−1)と第2−2の領域(10−2)は、第1−1の領域(9−1)と第1−2の領域(9−2)とともに可視背景部(5)を形成する領域であるため、同じ色相である第1−1の領域(9−1)と第2−1の領域(10−1)は、第1−2の領域(9−2)と第2−2の領域(10−2)とともに、目視で等濃度でなければならない。等濃度でない場合は、濃度の違いにより各領域が区分けして視認されるため、何らかの情報が埋め込まれていると視認されてしまうからである。
可視画像部(6)と潜像背景部(7)に共通する第3−1の領域(11−1)と第3−2の領域(11−2)は、複写機で再現されない領域であるため、各領域は複写機で再現されない大きさの要素が複数配置される。なお、第3−1の領域(11−1)と第3−2の領域(11−2)は、第1−1の領域(9−1)と第1−2の領域(9−2)とともに潜像背景部(7)を形成するため、複写機で再現した際に、各領域は等濃度に再現されなければならない。等濃度でない場合は、濃度の違いにより各領域が区分けして視認されるため、潜像画像(4)の視認性が悪くなるとともに、画像のチェンジ効果が乏しくなり、複写牽制効果が低下する。そこで、複写後の第3−1の領域(11−1)と第3−2の領域(11−2)は、第1−1の領域(9−1)と第1−2の領域(9−2)とともに、目視で等濃度でなければならない。
可視画像部(6)と潜像画像部(8)に共通する第4−1の領域(12−1)と第4−2の領域(12−2)は、複写機で再現される領域であるため、各領域は複写機で再現される大きさの要素が複数配置される。
なお、第4−1の領域(12−1)と第4−2の領域(12−2)は、第3−1の領域(11−1)と第3−2の領域(11−2)とともに可視画像部(6)を形成する領域であるため、同じ色相である第3−1の領域(11−1)と第4−1の領域(12−1)は、第3−2の領域(11−2)と第4−2の領域(12−2)とともに、目視で等濃度でなければならない。等濃度でない場合は、濃度の違いにより各領域が区分けして視認されるため、何らかの情報が埋め込まれていると視認されてしまうからである。
さらに、第4−1の領域(12−1)と第4−2の領域(12−2)は、第2−1の領域(10−1)と第2−2の領域(10−2)とともに潜像画像部(8)を形成する領域であるため、複写機で再現した際に、各領域は等濃度に再現されなければならない。等濃度でない場合は、濃度の違いにより各領域が区分けして視認されるため、潜像画像(4)の視認性が悪くなるとともに、画像のチェンジ効果が乏しくなり、複写牽制効果が低下する。そこで、第4−1の領域(12−1)と第4−2の領域(12−2)は、第2−1の領域(10−1)と第2−2の領域(10−2)とともに、複写時に区分けして視認できないように等濃度にする。後述する手順を経て設計する必要がある。
以上が、印刷画像(2)が三つ以上の色相を有する場合の説明である。本発明では、印刷画像(2)が四つの色相を有する場合を示したが、三つの色相を有する場合も、五つ以上の色相を有する場合も、同様の構成となる。つまり、前提として、可視画像(3)については、色相の違いにより視認可能とする有意味な画像とするため、可視背景部(5)を形成する領域と、可視画像部(6)を形成する領域は、異なる色相でなければならない。
また、可視背景部(5)が二つ以上の色相を持つ場合には、第1−1の領域(9−1)から第1−nの領域(9−n)(nは2以上の整数)までの領域は全て色相が異なり、第2−1の領域(10−1)から第2−nの領域(10−n)までの領域も全て色相が異なる。なお、第1−1の領域(9−1)と第2−1の領域(10−1)が同じ色相であり、第1−nの領域(9−n)と第2−nの領域(10−n)が同じ色相である。
さらに、可視画像部(6)が二つ以上の色相を持つ場合にも同様に、第3−1の領域(11−1)から第3−nの領域(11−n)までの領域は全て色相が異なり、第4−1の領域(12−1)から第4−nの領域(12−n)までの領域も全て色相が異なる。そして、第3−1の領域(11−1)と第4−1の領域(12−1)が同じ色相であり、第3−nの領域(9−n)と第4−nの領域(12−n)が同じ色相である。
また、印刷画像(2)を複写機で複写した際に、可視画像(3)とは異なる潜像画像(4)を出現させるために、潜像背景部(7)は複写時に再現されない要素から成る第1−1の領域(9−1)から第1−nの領域(9−n)までの領域、及び第3−1の領域(11−1)から第3−nの領域(11−n)までの領域により形成され、潜像画像部(8)は複写時に再現される要素から成る第2−1の領域(10−1)から第2−nの領域(10−n)までの領域、及び第4−1の領域(12−1)から第4−nの領域(12−n)までの領域により形成される。
また、本発明における印刷物(A)に形成される印刷画像(2)の印刷方式は、特に限定されるものではなく、オフセット印刷、フレキソ印刷やグラビア印刷、凹版印刷やスクリーン印刷等を用いることができる。また、IJPやレーザプリンタ等で形成してもよく、この場合には一枚一枚の情報が異なるオンデマンド印刷が可能である。
次に、本発明における印刷物(A)の作製方法について説明する。図13は、本発明の作製工程の手順を示すフローチャートである。本発明では、あらかじめ使用する色材を選定し、色材ごとに要素を決定する流れである。以下、この図に準じて説明する。
ステップ(以下「S」とする)1は、消失要素決定工程であり、複写時に再現されない領域の各要素の大きさ、ピッチ、形状を決定する工程である。
S2は、再現要素候補検討工程であり、複写時に再現される領域の各要素の候補を検討する工程である。
S3は、再現要素決定工程であり、複写時に再現される領域の各要素を決定する工程である。
S4は、画像作製工程であり、各ステップで決定した要素を用いて印刷画像(2)を作製する工程である。作製した印刷画像(2)をもとに各種印刷方式により印刷物(A)を得る。
各工程の詳細を以下に記載する。なお、本発明における、使用する色材の数nに制約はないが、n<5の範囲で使用することが望ましい。これは、一般的にCYMKの四色を用いることができればフルカラー画像を作製することができるため、使用する色材はあまり多くない方が、後述する各要素を決定する工程が複雑にならず、効率的に印刷物(A)を作製できるためである。以下の各ステップの詳細については、使用する色材の種類が二種類(n=2)の場合について説明する。
はじめに、S1について説明する。S1では、複写機で再現されない、第一の色材で形成する第1の領域(9)、及び第二の色材で形成する第3の領域(11)を構成する各要素を決定する工程である。第1の領域(9)及び第3の領域(11)では使用する色材は異なるが、各要素の決定方法については同じ方法を用いるため、以下、第1の領域(9)の決定方法について説明する。
図14に、S1の詳細なフローチャートを示す。S1では、まず、S1−1で示す要素設計工程において、第一の要素(13)について、複写機での再現されない大きさやピッチ、形状について設計する。次に、S1−2である濃度チャート作製工程において、S1−1で決定した第一の要素(13)の大きさやピッチを変化させて、図15に示す要素決定用濃度チャートを作製する。その後、S1−3である濃度チャート複写工程において、S1−2で作製した要素決定用濃度チャートを複写する。
最後に、S1−4で示す選択肢において、S1−3で得た濃度チャートの複写物を目視確認した結果、濃度チャート内に複写で再現されない濃度がある場合は、その濃度と要素の設計値を記録して、S2に作業を進める。再現されない濃度がない場合は、要素の大きさやピッチを再設計することで、複写で再現されない濃度を得るまで一連の動作を繰り返し、第1の領域(9)を形成する第一の要素(13)の設計値を決定する。
次に、S2について説明する。S2は、複写機で再現される、第一の色材で形成する第2の領域(10)、及び第二の色材で形成する第4の領域(12)を構成する各要素の候補を検討する工程である。第2の領域(10)及び第4の領域(12)では使用する色材は異なるが、決定方法については同じ方法を用いるため、以下、第2の領域(10)の決定方法について説明する。
図17に、S2の詳細なフローチャートを示す。S2では、まず、S2−1で示す要素設計工程において、第二の要素(14)について、S1で決定した第一の要素(13)の設計値と目視で等濃度となり、かつ、複写機で再現される大きさやピッチ、形状について決定する。
次に、S2−2において、S1で決定した第一の要素(13)とS2−1で設計した第二の要素(14)とが、目視で等濃度に観察されることを確認する。仮に、濃度差により区分けして視認される場合には再設計を繰り返して、濃度差で区分けされない第二の要素(14)の設計値を見いだす。これは、第一の要素(13)で形成される第1の領域(9)と、第二の要素(14)で形成される第2の領域(10)は、どちらも可視背景部(5)を構成する領域であるため、第1の領域(9)と第2の領域(10)が等濃度で観察できない場合には、複写前の印刷物(A)において、潜像画像(4)が埋め込まれていることを認識されてしまうためである。
次に、S2−3において、S2−2で見いだした設計値で形成された第二の要素(14)を複写し、複写物で再現可能であることを確認し、要素の候補として設計値を記録する。仮に、複写で再現できない場合には、要素の再設計を繰り返して複写で再現される設計値を見いだすこととなる。
次に、S3について説明する。S3は、複写で再現される潜像画像部(8)を形成する第2の領域(10)と第4の領域(12)を構成する各要素を決定する工程である。具体的には、S2で記録した設計値で形成された第二の要素(14)と第四の要素(16)の複写物の濃度が目視で等濃度となるか確認する。
図18に、S3の詳細なフローを示す。S3では、まず、S3−1で示す選択肢において、S2で決定した各要素の複写物における濃度が、目視で等濃度に視認されることを確認する。これは、S2で設計する第二の要素(14)で形成される第2の領域(10)と、第四の要素(16)で形成される第4の領域(12)は、どちらも潜像画像部(8)を構成する領域であるため、第2の領域(10)と第4の領域(12)が等濃度で観察されない場合には、複写物において可視画像部(6)を形成する第4の領域(12)が干渉し、潜像画像(4)への明瞭なチェンジ効果が得られないためである。
仮に、S3−1において、複写物の濃度が等濃度で観察されない場合には、S2に戻って第二の要素(14)や第四の要素(16)を再設計する。
S3−1において、複写物の濃度が等濃度で観察されたら、S3−2において、S1で決定した各要素で形成した印刷領域の複写物と、S2で決定した各要素で形成した印刷領域の複写物が、目視で濃度差を明確に認識できるかを確認する。これは、S1で決定した各要素と、S2で決定した各要素の複写物について、濃度差により区別ができなければ、複写物において潜像画像(4)が出現しないためである。
仮に、S3−2において濃度差が認識できない場合には、色材の選定やS1又はS2に戻って再設計する必要がある。
なお、使用する色材が三つ以上の場合は、複写濃度を順に比較して、濃度が高いほうの要素をステップ2に戻って新たな設計値を得る作業を繰り返し、全ての要素の複写濃度が等しくなるように要素を決定する。
S4では、これまでの工程で得た各要素の設計値を用いて、印刷画像(2)を作製する。以上が、印刷物(A)の作製方法についての説明である。
(実施例1)
以下、前述の発明を実施するための形態に従って、具体的に作製した印刷物(A)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
図1に示す複写牽制印刷物を、二種類の異なる色材を用いて作製した。また、可視画像(3)で視認されるアルファベットの「A」が、複写物ではアルファベットの「B」にチェンジするデザインとした。
また、第一の色材にシアン、第二の色材にマゼンタの各プロセスカラーを用いた。つまり、可視画像(3)においては、可視背景部(5)がシアン、可視画像部(6)がマゼンタで形成されるため、シアンの背景中にマゼンタの「A」が観察される印刷物(A)となる。なお、第一の色材のシアンと第二の色材のマゼンタを分光測色計で測定したところ、色差ΔEは105であった。
図13のフローチャートに示すとおり、まずは、S1において、第一の色材(シアン)で、第1の領域(9)を形成する、複写時に消失する要素である第一の要素(13)、及び第二の色材(マゼンタ)で、第3の領域(11)を形成する、複写時に消失する要素である第三の要素(15)を決定する。
第一の要素(13)のピッチ(P1)を141μm、第三の要素(15)のピッチ(P3)を同じく141μmに固定し、各要素の大きさを変えて濃度を変化させることで、図15に示す要素決定用濃度チャートを作成することとした。具体的には、各要素の形状は図19に示すような円形を用い、第一の要素(13)の大きさ(Dh1=Dv1)と第三の要素(15)の大きさ(Dh3=Dv3)を15μmから100μmまで変化させることで、濃度(面積率)を変化させた要素決定用濃度チャートを作成(1%から40%まで作成)した。
作成したチャートを複写機(株式会社リコー社製 imagioMP6001RC 自動濃度設定。以下の複写条件に共通)でモノクロ複写し、図16に示す複写物を得た。
図16(a)は第一の色材のシアン色を使用した場合の第一の要素(13)で形成した印刷領域の複写状態、図16(b)は第二の色材のマゼンタ色を使用した場合の第三の要素(15)で形成した印刷領域の複写状態を示したものである。図16(a)の状態を観察し、複写で再現されていない濃度(面積率)の中から、第一の要素(13)は28%(Dh1=Dv1=84μm)を選定した。また、図16(b)の状態を観察し、複写で再現されていない濃度(面積率)の中から第三の要素(15)は20%(Dh3=Dv3=71μm)を選定した。以上から、第一の要素(13)の設計値は配置ピッチP1=141μm、円形要素でDh1=Dv1=84μm、第三の要素(15)の設計値は配置ピッチP3=141μm、円形要素でDh3=Dv3=71μmとした。
次に、S2において、第一の色材(シアン)で形成する第二の要素(14)の設計値及び第二の色材(マゼンタ)で形成する第四の要素(16)の設計値を選定する。まず、第二の要素(14)について、第一の要素(13)の設計値と目視比較して等濃度となる設計値として、配置ピッチP2=191μm、円形要素の大きさDh2=Dv2=103μmを得た。この要素を複写したところ、複写では再現されなかったため、再設計して配置ピッチP2=254μm、円形要素の大きさDh2=Dv2=134μmを得た。再度、この要素を複写したところ、再現が確認できたため、第二の要素(14)の設計値(配置ピッチP2=254μm、円形要素の大きさDh2=Dv2=134μm)とした。
次に、第四の要素(16)の設計値について、第三の要素(15)の設計値と目視比較して等濃度となる設計値として、配置ピッチP4=317μm、円形要素の大きさDh4=Dv4=143μmを得た。この要素を複写したところ、再現が確認できたため、第四の要素(16)の設計値(配置ピッチP4=317μm、円形要素の大きさDh4=Dv4=143μm)とした。
次に、S3において、可視画像(3)から潜像画像(4)に明瞭な画像のチェンジ効果を得るために必要な条件である、第二の要素(14)と第四の要素(16)が複写時に等濃度となることを確認する。S2で決定した設計値で作製した第二の要素(14)と第四の要素(16)の複写物を目視で比較したところ、第四の要素(16)の方が濃く再現された。そのため、第四の要素(16)を再設計し、設計値(配置ピッチP4=254μm、円形要素の大きさDh4=Dv4=118μm)を得た。確認のため複写したところ、再現が確認できたため、第二の要素(14)と複写物濃度を比較したところ、目視では等濃度に観察できたため、第二の要素(14)の設計値(配置ピッチP2=254μm、円形要素の大きさDh2=Dv2=134μm)、及び第四の要素(16)の設計値(配置ピッチP4=254μm、円形要素の大きさDh4=Dv4=118μm)を決定した。
以上、決定した要素の設計値を基に、図1に示すような印刷画像(2)を形成し、複写物を観察したところ、複写前は、シアン色の背景にアルファベットの「A」がマゼンタ色で観察できた印刷物(A)が、複写物では灰色のアルファベットの「B」が、複写前の画像が干渉することなく明瞭に出現することが確認できた。なお、複写物では、第一の要素(13)と第三の要素(15)は再現されておらず、また、第二の要素(14)と第四の要素(16)の色差ΔEは0.51であり、潜像画像(4)に可視画像(3)が干渉することなく明瞭に画像が切り替わった。
(実施例2)
実施例1とは異なる二種類の色材を用いて図1に示す複写牽制印刷物を作製した。また、デザインについては実施例1と同様に、可視画像(3)で視認されるアルファベットの「A」が、複写物ではアルファベットの「B」にチェンジするものとした。
また、第一の色材にブラック、第二の色材に紫を用いた。つまり、可視画像(3)においては、可視背景部(5)がブラック、可視画像部(6)が紫で形成されるため、ブラックの背景中に紫の「A」が観察される印刷物(A)となる。なお、第一の色材のブラックと第二の色材の紫を分光測色計で測定したところ、色差ΔEは40であった。
図13のフローチャートに示すとおり、まずは、S1において、第一の色材(ブラック)で、第1の領域(9)を形成する、複写時に消失する要素である第一の要素(13)、及び第二の色材(紫)で、第3の領域(11)を形成する、複写時に消失する要素である第三の要素(15)を決定する。
第一の要素(13)のピッチ(P1)を141μm、第三の要素(15)のピッチ(P3)を同じく141μmに固定し、各要素の大きさを変えて濃度を変化させることで、図15に示す要素決定用濃度チャートを作成することとした。具体的には、各要素の形状は図19に示すような円形を用い、第一の要素(13)の大きさ(Dh1=Dv1)と第三の要素(15)の大きさ(Dh3=Dv3)を15μmから100μmまで変化させることで、濃度(面積率)を変化させた要素決定用濃度チャートを作成(1%から40%まで作成)した。
作成したチャートを複写機(Canon ImagePRESS C1+)でカラー複写し、複写物を得た(図示なし)。
複写物の状態を観察し、複写で再現性が著しく劣化する濃度(面積率)の中から、第一の要素(13)は14%(Dh1=Dv1=60μm)を選定し、第三の要素(15)は11%(Dh3=Dv3=53μm)を選定した。以上から、第一の要素(13)の設計値は配置ピッチP1=141μm、円形要素でDh1=Dv1=60μm、第三の要素(15)の設計値は配置ピッチP3=141μm、円形要素でDh3=Dv3=53μmとした。
次に、S2において、第一の色材(ブラック)で形成する第二の要素(14)の設計値及び第二の色材(紫)で形成する第四の要素(16)の設計値を選定する。まず、第二の要素(14)について、第一の要素(13)の設計値と目視比較して等濃度となる設計値として、配置ピッチP2=254μm、円形要素の大きさDh2=Dv2=95μmを得た。この要素を複写したところ、再現が確認できたため、第二の要素(14)の設計値(配置ピッチP2=254μm、円形要素の大きさDh2=Dv2=95μm)とした。
次に、第四の要素(16)の設計値について、第三の要素(15)の設計値と目視比較して等濃度となる設計値として、配置ピッチP4=254μm、円形要素の大きさDh4=Dv4=100μmを得た。この要素を複写したところ、再現が確認できたため、第四の要素(16)の設計値(配置ピッチP4=254μm、円形要素の大きさDh4=Dv4=100μm)とした。
次に、S3において、可視画像(3)から潜像画像(4)に明瞭な画像のチェンジ効果を得るために必要な条件である、第二の要素(14)と第四の要素(16)が複写時に等濃度となることを確認する。S2で決定した設計値で作製した第二の要素(14)と第四の要素(16)の複写物を目視で比較したところ、目視では等濃度に観察できたため、第二の要素(14)の設計値(配置ピッチP2=254μm、円形要素の大きさDh2=Dv2=95μm)、及び第四の要素(16)の設計値(配置ピッチP4=254μm、円形要素の大きさDh4=Dv4=100μm)を決定した。
以上、カラー複写機(Canon ImagePRESS C1+)で複写したカラー複写物を観察したところ、複写前は、ブラック色の背景にアルファベットの「A」が紫色で観察できた印刷物(A)が、複写物では第一の色材のブラックと第二の色材の紫の差が感じられず、灰色のアルファベットの「B」が、複写前の画像が干渉することなく明瞭に出現することが確認できた。なお、複写物では、第一の要素(13)と第三の要素(15)は再現されておらず色差ΔEは1.90であり区分けができず、また、第二の要素(14)と第四の要素(16)の色差ΔEは2.22であり、潜像画像(4)に可視画像(3)が干渉することなく明瞭に画像が切り替わった。