以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
被実装物作業装置1は、図1に示すように、IC、トランジスタ、コンデンサおよび抵抗などの電子部品7を、基板8などに実装するように構成されている。ここで被実装物作業装置1において、基板8が搬送される方向をX方向とし、水平方向におけるX方向に垂直な方向をY方向とする。また、被実装物作業装置1においてX方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とする。なお、電子部品7は、特許請求の範囲の「部品」の一例である。
<被実装物>
被実装物2は、基板8と、基板8上に実装される複数の電子部品7と、被実装物作業装置1内を搬送されるために基板8が載置される載置部材31とを含む。基板8は、図2に示すように、平らな板状ではなく立体的な形状を有する基板8となっている。たとえば図2の例では、基板8は、ベース部21と、ベース部21から突出した凸部22とを含んでいる。凸部22は、ベース部21の一方の縁部の全長に亘って設けられている。被実装物2は、凸部22の突出方向に高さを有している。
ベース部21の上面は、図2に示すように、電子部品7を実装する第1実装面21aとなっている。また、凸部22の上面は、電子部品7を実装する第2実装面22aとなっている。第1実装面21aには、第1実装面21aの他の部分より凹んでいる凹部23が形成されている。また、第2実装面22aは、平坦面となっている。第1実装面21aには、図示しない位置認識マーク((フィデューシャルマーク)FM)が付されている。
<被実装物作業装置>
被実装物作業装置1は、図1に示すように、搬入される基板8をX2側に搬送し、所定位置において基板8の第1実装面21aおよび第2実装面22aに電子部品7を実装する機能を有している。具体的に、被実装物作業装置1は、基台10と、被実装物搬送部11と、テープフィーダ12(図3参照)と、被実装物保持ユニット13と、ヘッドユニット14と、支持部15と、一対のレール部16(図3参照)と、部品認識カメラ17(図3参照)と、基板認識カメラ18(図4参照)と、レーザー計測部19(図4参照)と、制御装置20(図5参照)とを備えている。
<被実装物搬送部>
被実装物搬送部11は、図3に示すように、基板8を搬入し、搬送方向(X2方向)に搬送し、搬出するように構成されている。被実装物搬送部11は、上流側搬送部111と、中央搬送部112と、下流側搬送部113とを含んでいる。
上流側搬送部111は、図3に示すように、一対の第1コンベア部111aを有している。一対の第1コンベア部111aは、基板8を載置する載置部材31における搬送方向と垂直な方向(Y方向)の両端部を下方から支持する。一対の第1コンベア部111aは、搬入された基板8を中央搬送部112まで搬送する。
中央搬送部112は、上流側搬送部111と下流側搬送部113との間に配置されている。中央搬送部112は、図3に示すように、一対の第2コンベア部112aを有している。一対の第2コンベア部112aは、基板8を載置する載置部材31における搬送方向と垂直な方向(Y方向)の両端部を下方から支持する。一対の第2コンベア部112aは、基板8を上流側搬送部111から受け取り、受け取った基板8を下流側搬送部113まで搬送する。また、一対の第2コンベア部112aは、基板8を被実装物保持ユニット13への受け渡し位置まで移動させる。
下流側搬送部113は、図3に示すように、一対の第3コンベア部113aを有している。一対の第3コンベア部113aは、基板8を載置する載置部材31における搬送方向と垂直な方向(Y方向)の両端部を下方から支持する。一対の第3コンベア部113aは、電子部品7を実装した基板8を中央搬送部112から受け取り、下流側の図示しない搬送路に電子部品7を実装した基板8を搬出する。
<テープフィーダ>
図3に示すように、基台10のY2側の端部には、複数のテープフィーダ12を配置するためのフィーダ配置部10aが設けられている。また、基台10のY1側の端部には、フィーダ配置部10aが設けられておらず、テープフィーダ12が配置されていない。
テープフィーダ12は、図4に示すように、複数の電子部品7を所定の間隔を隔てて保持したテープが巻き回されたリール121を保持している。テープフィーダ12は、リール121を回転させて電子部品7を保持するテープを送出することにより、先端から電子部品7を供給する。各テープフィーダ12は、フィーダ配置部10aに設けられた図示しないコネクタを介して制御装置20(図5参照)に電気的に接続されている。これにより、各テープフィーダ12は、制御装置20からの制御信号に基づいて、リール121からテープを送出する。
<被実装物保持ユニット>
被実装物保持ユニット13は、図1に示すように、受け渡し位置において、被実装物搬送部11から受け渡され、電子部品7が実装される被実装物2を保持する。被実装物保持ユニット13は、被実装物2を保持する保持部132と、保持部132を移動させることにより、保持部132に保持された被実装物2を移動させる移動機構131とを含む。
被実装物保持ユニット13は、保持された被実装物2を移動機構131により上下方向(Z方向)に移動させることができる。被実装物保持ユニット13は、保持された被実装物2を移動機構131により傾斜させることができる。本明細書において傾斜とは、Z方向に対してY1方向またはY2方向に被実装物2を回動させることを示す。被実装物保持ユニット13は、保持された被実装物2を移動機構131により回転させることができる。このように、被実装物保持ユニット13は、移動機構131により保持部132を上下方向の移動、傾斜、回転させる動作のうち少なくとも1つの動作を行うことにより、被実装物2の姿勢を調整可能となっている。なお、被実装物保持ユニット13の詳細な構成は、後述する。
ここで、基板8は、図1に示すように、載置部材31に保持された状態において、被実装物2として被実装物搬送部11により搬送される。載置部材31は、基板8を被実装物搬送部11により搬送するための部材となっている。載置部材31は、基板8を着脱可能に保持している。また、載置部材31は、被実装物保持ユニット13により保持されるように構成されている。
図1に示すように、載置部材31は、板状に形成される載置部311と、載置部311の下面に設けられる被保持部312とを有している。載置部311には、上面(Z1側の面)に微粘着性の接着層が形成されている。載置部311は、被実装物2が接着層に接着されることにより、上面に着脱可能に被実装物2を保持する。また、載置部311の下面(Z2側の面)には、被実装物保持ユニット13が載置部材31を保持するための被保持部312が設けられている。被保持部312は、載置部311に被実装物2が保持された状態の載置部材31のX方向の中央付近に設けられている。被保持部312は、載置部311の下面から下方(Z2方向)に向けて突出する。被実装物保持ユニット13は、載置部材31の被保持部312を挟持することにより載置部材31を保持する。これにより、基板8は、載置部材31を介して被実装物保持ユニット13により保持される。
基台10の中央部には、図3に示すように、平面視において矩形形状を有する開口部10bが形成されている。基台10の開口部10bには、収容部10cが取り付けられている。収容部10cは、図1に示すように、基台10の上面(Z1側の面)から下方(Z2方向)に向けて凹む凹形状に形成されている。被実装物保持ユニット13は、一部が収容部10c内に収容されるように配置されている。
<レール部>
レール部16は、図3に示すように、支持部15を搬送方向と垂直な方向(Y方向)に移動可能に構成されている。具体的には、一対のレール部16は、それぞれY方向に延びるように形成されている。一対のレール部16は、基台10のX方向の両端部に固定されている。一対のレール部16は、それぞれ、Y方向に延びるボールネジ軸16aと、ボールネジ軸16aに設けられた複数のY軸モータ16bと、図示しないガイドレールとを含んでいる。各Y軸モータ16bは、それぞれ対応するボールネジ軸16aを回転させる。支持部15は、各Y軸モータ16bにより各ボールネジ軸16aが回転されると、一対のレール部16に沿って搬送方向と垂直な方向(Y方向)に移動する。
<支持部>
支持部15は、図3に示すように、ヘッドユニット14を搬送方向(X方向)に移動可能に構成されている。具体的には、支持部15は、X方向に延びるボールネジ軸15aと、ボールネジ軸15aを回転させるX軸モーター15bと、X方向に延びる図示しないガイドレールとを含んでいる。ヘッドユニット14は、X軸モーター15bによりボールネジ軸15aが回転されることにより、支持部15に沿って搬送方向(X方向)に移動する。
このような構成により、ヘッドユニット14は、基台10の上方を水平方向(X方向およびY方向)に移動可能に構成されている。これにより、ヘッドユニット14は、たとえばテープフィーダ12の上方に移動して、テープフィーダ12から供給される電子部品7を吸着することが可能となっている。また、ヘッドユニット14は、たとえば被実装物保持ユニット13に保持された状態の基板8の上方に移動して、吸着した電子部品7を基板8上に実装することが可能となっている。
<ヘッドユニット>
ヘッドユニット14は、図1に示すように、被実装物保持ユニット13に保持された被実装物2に対して作業を行う構成となっている。ヘッドユニット14は、支持部15および一対のレール部16を介して、基台10に取り付けられている。また、ヘッドユニット14は、被実装物搬送部11、被実装物保持ユニット13およびテープフィーダ12よりも上方(Z1方向)に配置されている。ヘッドユニット14は、被実装物保持ユニット13により保持された状態の被実装物2に電子部品7の実装作業を行う。実装作業とは、ヘッドユニット14がテープフィーダ12から供給される電子部品7を吸着するとともに、吸着された電子部品7を基板8上に実装する作業となっている。
ヘッドユニット14は、図1に示すように、ディスペンスヘッド141と、実装ヘッド142と、複数のボールネジ軸143と、Z軸モーター144と、R軸モーター145(図5参照)とを有している。ディスペンスヘッド141と実装ヘッド142とは、搬送方向(X方向)に沿って直線状に一列に並んで配置されている。ボールネジ軸143およびZ軸モーター144は、ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142のそれぞれに設けられている。なお、ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142は、特許請求の範囲の「複数のヘッド」の一例である。
ディスペンスヘッド141は、図1に示すように、先端に取り付けられるノズルを有している。ディスペンスヘッド141は、図示しないシリンジから供給されるクリームはんだを先端のノズルから吐出し、被実装物2の第1実装面21aおよび第2実装面22aにクリームはんだを塗布可能に構成されている。
実装ヘッド142は、図1に示すように、先端(下端)に取り付けられるノズルを有している。実装ヘッド142は、図示しない負圧発生機によりノズルの先端部に発生した負圧によって、テープフィーダ12から供給される電子部品7を吸着して保持可能に構成されている。また、実装ヘッド142は、図示しない正圧発生機によりノズルの先端部に発生した正圧によって、保持している電子部品7を被実装物2の第1実装面21aおよび第2実装面22aに実装可能に構成されている。R軸モーター145は、実装ヘッド142をノズルの中心軸回り(Z軸回り)に回転させるように構成されている。
各ボールネジ軸143は、図1に示すように、それぞれ上下方向に延びる。各Z軸モーター144は、それぞれ対応するボールネジ軸143を回転させる。実装ヘッド142およびディスペンスヘッド141は、Z軸モーター144によりボールネジ軸143が回転されると、ボールネジ軸143に沿って上下方向に移動可能となっている。これにより、実装ヘッド142は、電子部品7の吸着および実装(装着)などを行うことが可能な第1高さ位置と、ヘッドユニット14の水平方向の移動が可能となる第2高さ位置との間において上下方向に移動可能となっている。ディスペンスヘッド141は、クリームはんだの塗布などを行うことが可能な第3高さ位置と、ヘッドユニット14の水平方向の移動が可能となる第4高さ位置との間において上下方向に移動可能となっている。
<部品認識カメラ>
部品認識カメラ17は、図3に示すように、電子部品7の実装に先立って実装ヘッド142のノズルに吸着された電子部品7を下方(Z2方向)から撮像するように構成されている。具体的には、部品認識カメラ17は、基台10におけるテープフィーダ12の近傍に設けられている。
<基板認識カメラ>
基板認識カメラ18は、図4に示すように、電子部品7の実装に先立って被実装物2に付された位置認識マークを上方(Z1方向)から撮像するように構成されている。位置認識マークは、被実装物2の位置を認識するためのマークである。具体的には、基板認識カメラ18は、ヘッドユニット14の背面(Y1方向)の下端部(Z2方向)に設けられている。基板認識カメラ18は、ヘッドユニット14とともに、基台10上を水平方向(X方向およびY方向)に移動可能となっている。
<レーザー計測部>
レーザー計測部19は、図1に示すように、電子部品7の実装に先立って被実装物2の高さ位置H1を計測するように構成されている。具体的には、レーザー計測部19は、被実装物2にレーザー光を照射して、被実装物2から反射された反射光を受光することにより、被実装物2の高さ位置H1を計測する。ここで、レーザー計測部19により計測される高さ位置H1は、レーザー計測部19の下端位置から被実装物2の上面の計測位置までの距離に基づいて算出される。なお、レーザー計測部19は、特許請求の範囲の「高さ計測部」の一例である。また、高さ位置H1は、特許請求の範囲の「高さ位置」の一例である。
レーザー計測部19は、図4に示すように、ヘッドユニット14の背面側(Y1方向)に取り付けられている。レーザー計測部19は、ヘッドユニット14とともに、基台10上を水平方向(X方向およびY方向)に移動可能となっている。また、レーザー計測部19は、基台10上を水平方向に移動して、被実装物2における部品実装位置の上方からレーザー光を照射する。
<制御装置>
図5に示すように、制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などを含み、被実装物作業装置1の動作を制御するように構成されている。具体的には、制御装置20は、被実装物搬送部11、被実装物保持ユニット13、ヘッドユニット14、支持部15、一対のレール部16、部品認識カメラ17、基板認識カメラ18、レーザー計測部19、およびテープフィーダ12などを予め記憶されたプログラムに従って制御する。たとえば、制御装置20は、レーザー計測部19の被実装物2の高さ位置H1の計測結果を取得する。制御装置20は、被実装物2の高さ位置H1の計測結果に基づいて、被実装物2の高さ位置H1を被実装物保持ユニット13により調節する。また、制御装置20は、被実装物2の高さ位置の計測結果に基づいて、実装ヘッド142およびディスペンスヘッド141の下降量を調節する。
<被実装物保持ユニット>
図6に示すように、被実装物保持ユニット13は、移動機構131と、保持部132と、固定部133とを含んでいる。また、移動機構131は、昇降機構部131aと、傾斜機構部131bと、回転機構部131cとを有している。
昇降機構部131aは、図6に示すように、上下方向に延びる軸線A1(一点鎖線により示す)に沿って、保持部132を上下方向に移動させるように構成されている。具体的には、昇降機構部131aは、駆動モータ41と、ベルトプーリー機構部42と、ボールネジ軸43と、取付部44とを有している。
駆動モータ41は、ベルトプーリー機構部42を介してボールネジ軸43を回転させる。ボールネジ軸43は、ベルトプーリー機構部42を介して伝達された駆動モータ41の駆動力により、軸線A1回りに回転する。取付部44は、傾斜機構部131b、回転機構部131cおよび保持部132を昇降機構部131aに取り付けるための部材である。取付部44のY1側には、傾斜機構部131bが取り付けられている。傾斜機構部131bのX2側には、回転機構部131cおよび保持部132が取り付けられている。取付部44は、駆動モータ41によりボールネジ軸43が回転されることにより、ボールネジ軸43に沿って上下方向に移動可能となっている。これにより、昇降機構部131aは、取付部44とともに、傾斜機構部131b、回転機構部131c、保持部132を上下方向(Z方向)に移動可能となっている。なお、軸線A1は、ボールネジ軸43の中心を通る軸線である。
傾斜機構部131bは、軸線A1に対して垂直な方向に延びる軸線A2回りに保持部132を回転させることにより、保持部132を傾斜させるように構成されている。具体的には、傾斜機構部131bは、駆動モータ51と、ベルトプーリー機構部52と、回転軸部53とを有している。なお、軸線A2は、特許請求の範囲の「第1回転軸」の一例である。
駆動モータ51は、ベルトプーリー機構部52を介して回転軸部53を回転させる。また、駆動モータ51は、正回転(時計回りの回転)および逆回転(反時計回りの回転)が可能となっている。回転軸部53は、ベルトプーリー機構部52を介して伝達された駆動モータ51の駆動力により、軸線A2回りに回転する。なお、軸線A2は、回転軸部53の中心を通る軸線である。
回転軸部53のX2側の端部には、回転機構部131cが取り付けられている。回転機構部131cは、駆動モータ51により回転軸部53が回転されることにより、回転軸部53とともに軸線A2回りに回転可能となっている。これにより、傾斜機構部131bは、回転機構部131cを保持部132とともに軸線A2回りに回転させて、YZ平面内において傾斜させる。ここで、傾斜機構部131bは、基準状態から搬送方向と垂直なY1方向側またはY2方向側に、それぞれ、0度以上90度以下の角度範囲において回転機構部131cを傾斜させることができる。
回転機構部131cは、図6に示すように、軸線A2に垂直な方向に延びる軸線A3回りに保持部132を回転させるように構成されている。具体的には、回転機構部131cは、駆動モータ61と、ベルトプーリー機構部62とを有している。なお、軸線A3は、特許請求の範囲の「第2回転軸」の一例である。
駆動モータ61は、ベルトプーリー機構部62を介して保持部132を回転させる。また、駆動モータ61は、正回転(時計回りの回転)および逆回転(反時計回りの回転)が可能となっている。保持部132は、ベルトプーリー機構部62を介して伝達された駆動モータ61の駆動力により、軸線A3回りに回転する。
保持部132は、図4に示すように、載置部材31を介して被実装物2を保持するように構成されている。具体的には、保持部132は、図6に示すように、円柱形状を有する本体部と、複数(3つ)のつめ部63とを有している。本体部は、回転機構部131cに取り付けられている。複数(3つ)のつめ部63は、本体部に等角度間隔(120度間隔)において配置されている。また、複数のつめ部63は、それぞれ本体部の径方向に移動可能となっている。複数のつめ部63は、それぞれ本体部の径方向の中心に向かって移動することにより、載置部材31の被保持部312を把持することができる。複数のつめ部63は、それぞれ本体部の径方向の中心とは反対側に向かって移動することにより、載置部材31の被保持部312の把持を解除することができる。
固定部133は、図1に示すように、被実装物保持ユニット13を基台10に取り付けて固定するための部材である。被実装物保持ユニット13は、固定部133を介して、たとえばネジなどを収容部10cの上縁部に挿通させることにより基台10に固定される。
<ディスペンスヘッドによるクリームはんだ塗布の際の干渉回避>
被実装物作業装置1では、ヘッドユニット14がレール部16および支持部15を用いて水平面内を移動する。ここで、ヘッドユニット14が被実装物2の近傍へと移動する場合を想定する。この場合、ヘッドユニット14のディスペンスヘッド141および実装ヘッド142が、被実装物2の高さ位置H1によっては被実装物2に干渉してしまう場合がある。
また、ヘッドユニット14のディスペンスヘッド141によりクリームはんだを被実装物2の表面に塗布できるように、被実装物2の移動および姿勢の変化をさせる場合を想定する。この場合、ディスペンスヘッド141がクリームはんだを塗布する作業面よりも上方に出ている被実装物2の一部分がある場合、被実装物2が実装ヘッド142に干渉してしまう場合がある。
そのため、本実施形態の被実装物作業装置1は、保持部132に保持された被実装物2とヘッドユニット14のノズルとの干渉を回避するように構成されている。以下、被実装物保持ユニット13による、ヘッドユニット14のヘッド(ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142)と保持部132に保持された被実装物2との干渉の回避について説明する。
被実装物作業装置1では、図7に示すような処理に基づいて、被実装物保持ユニット13の保持部132に保持された被実装物2(特に基板8)と実装ヘッド142との干渉を回避する。
まず、ステップS1において、制御装置20は、電子部品7、基板8、ヘッドユニット14およびヘッドの形状のデータを取得する。具体的には、制御装置20は、電子部品7の3次元データ、基板8の3次元データ、ヘッドユニット14の3次元データおよびディスペンスヘッド141の3次元データを取得する。制御装置20では、水平面内の座標および鉛直方向の座標により構成される3次元座標を用いて、電子部品7の形状を表した被実装物2の3次元データがRAMに格納されている。また、制御装置20では、3次元座標を用いて、基板8の形状を表した基板8の3次元データがRAMに格納されている。また、制御装置20では、3次元座標を用いて、ヘッドユニット14の形状を表したヘッドユニット14の3次元データがRAMに格納されている。さらに、制御装置20では、3次元座標を用いて、ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142のそれぞれの形状を表したディスペンスヘッド141および実装ヘッド142の3次元データがRAMに格納されている。なお、電子部品7の3次元データおよび基板8の3次元データは、特許請求の範囲の「被実装物の形状データ」の一例である。
また、制御装置20は、被実装物保持ユニット13およびヘッドユニット14の移動範囲R1のデータを取得する。具体的には、制御装置20は、被実装物保持ユニット13およびヘッドユニット14のそれぞれの移動範囲R1のデータとして、被実装物作業装置1の全体構成の3次元データに基づいて、予め決められているそれぞれの移動範囲R1のデータを取得する。被実装物保持ユニット13、ヘッドユニット14、ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142のそれぞれの移動範囲R1のデータは、RAMに格納されている。
ステップS2において、制御装置20は、ヘッドユニット14の移動範囲R1および被実装物2の形状に基づいて干渉の判断を行う。具体的には、制御装置20は、被実装物保持ユニット13、被実装物2、ヘッドユニット14、ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142の形状の3次元データに基づいてシミュレーションを行う。ここで、シミュレーションは、被実装物保持ユニット13およびヘッドユニット14の移動範囲R1のデータに基づいて、基板8に電子部品7を実装する実装位置に、被実装物保持ユニット13およびヘッドユニット14それぞれを仮想的に移動させることにより行う。このとき、制御装置20は、ヘッドユニット14の3次元データと、被実装物保持ユニット13に保持されている被実装物2の3次元データとが重なり合った場合に干渉が生じると判断する。ステップS2において、ヘッドユニット14の3次元データと被実装物2の3次元データとの間に干渉が生じない場合はステップS9へ進む。
ステップS2のシミュレーションの一例として、図8〜図10に示すように、3次元データ上において、ディスペンスヘッド141が、被実装物2の第1実装面21aにクリームはんだを塗布する場合を想定する。図8に示すように、実装ヘッド142の下方に被実装物2の凸部22が位置している。ここで、図9に示すように、ヘッドユニット14をZ2方向に移動させ、ヘッドユニット14を実装位置I1(第3高さ位置)に仮想的に移動させるとする。被実装物2とヘッドユニット14との干渉または非干渉は、基板8の形状データとヘッドユニット14の移動範囲R1とに基づいて、表1のように表される。
移動範囲R1は、実際のヘッドユニット14の位置から仮想的に移動させたヘッドユニット14の位置までの距離となっている。基板8の形状データは、あらかじめ制御装置20のRAMに格納されている。表1において、基板8の形状データは、上から2行目の形状となっている。また、表1において、移動範囲R1が実装位置I1となるときは、2列目となっている。このとき、表1に示すように、ディスペンスヘッド141が第1実装面21aにクリームはんだを塗布できる実装位置I1に配置されると、被実装物2の凸部22と実装ヘッド142とが干渉(図9参照)してしまうことになる。この場合は、ステップS3に進む。なお、移動範囲R1は、特許請求の範囲の「移動範囲データ」の一例である。
図7に示すように、ステップS3において、制御装置20は、実装ヘッド142と被実装物2とが干渉を回避可能な干渉回避位置I2を取得する。具体的には、制御装置20は、回転機構部131c、傾斜機構部131bおよび昇降機構部131aの少なくとも1つを用いて、保持部132に回転、傾斜または昇降といった対応する動作を行わせることにより干渉回避位置へ移動させる。
ステップS3のシミュレーションの一例として、図9に示したシミュレーション結果に基づいて、制御装置20は、図10(a)に示すような、被実装物2を回転機構部131cにより約180°回転させた位置への移動という干渉回避位置I2のシミュレーション結果を取得する。この場合、被実装物2の凸部22が実装ヘッド142の下方に位置しないので、凸部22と実装ヘッド142とが干渉しない。このように、制御装置20は、被実装物2と実装ヘッド142とが干渉しない被実装物2の位置および姿勢をシミュレーションにより決定する。なお、干渉回避位置I2は、特許請求の範囲の「干渉回避位置」の一例である。
図7に示すように、ステップS4において、制御装置20は、ステップS3において計算された干渉回避位置I2に基づいて、被実装物2を昇降、回転および傾斜させる。すなわち、制御装置20は、昇降機構部131a、傾斜機構部131bおよび回転機構部131cに対して、干渉回避位置I2に移動させるために必要な指令を出力する。上記したシミュレーションによる干渉回避位置I2では、制御装置20は、約180°回転させるという指令を回転機構部131cに対して出力する。これにより、被実装物2は、図10(b)に示すように、回転機構部131cにより約180°回転された状態になる。
ステップS5において、制御装置20は、図10(b)に示すように、レーザー計測部19により被実装物2の高さ位置H1を計測する。レーザー計測部19は、支持部15によるヘッドユニット14の搬送方向(X方向)の移動に伴い、搬送方向(X方向)に移動する。また、レーザー計測部19は、レール部16によるヘッドユニット14の搬送方向に垂直な方向(Y方向)の移動に伴い、搬送方向に垂直な方向(Y方向)に移動する。このように、レーザー計測部19は、支持部15とレール部16とにより水平面内を移動し、被実装物2の上面の全体にレーザー光を照射することができる。レーザー計測部19において計測された高さ位置H1は、制御装置20に送信され、制御装置20の記憶媒体であるRAMに格納される。このように、制御装置20は、実際の被実装物2の上面の高さ位置H1を取得することができる。
ステップS6において、制御装置20は、計測された高さ位置H1が干渉回避位置I2となっているかを確認する。具体的には、ステップS3において取得した干渉回避位置I2のデータと、ステップS5において取得した被実装物2の高さ位置H1のデータとを比較する。ステップS6において、干渉回避位置I2のデータと被実装物2の高さ位置H1のデータとが一致しない場合はステップS4へ戻る。ステップS6において、干渉回避位置I2のデータと被実装物2の高さ位置H1のデータとが一致する場合はステップS7へ進む。
ステップS7において、制御装置20は、図11(a)に示すように、被実装物2を干渉回避位置I2に固定した状態における、ディスペンスヘッド141の可動範囲P1を計算する。すなわち、図11(b)に示すように、レーザー計測部19により計測された被実装物2の上面のデータにおいて、ディスペンスヘッド141が被実装物2に干渉せずに、アクセスできる範囲を計算する。ディスペンスヘッド141がアクセスできる範囲は、被実装物2の3次元データおよびディスペンスヘッド141のそれぞれの形状の3次元データと、ヘッドユニット14の移動範囲R1のデータとに基づいて計算される。
図7に示すように、ステップS8において、制御装置20は、被実装物2を干渉回避位置I2に固定した状態における、ディスペンスヘッド141の作業範囲P2を計算する。すなわち、制御装置20は、図11(c)に示すように、ディスペンスヘッド141がアクセスできる範囲(可動範囲P1)のうち、被実装物2を動かさずに、支持部15およびレール部16を用いてヘッドユニット14を移動させることにより、被実装物2と干渉せずに、ディスペンスヘッド141が作業可能な作業範囲P2を計算する。ディスペンスヘッド141の作業範囲P2は、干渉回避位置I2に移動した状態の被実装物2の形状の3次元データおよびヘッドユニット14の移動範囲R1のデータに基づいて計算される。
ステップS9において、ディスペンスヘッド141は、被実装物2にクリームはんだを塗布する。すなわち、ディスペンスヘッド141は、ステップS8において計算された、被実装物2におけるディスペンスヘッド141が作業できる作業範囲P2内の塗布点に対してクリームはんだを塗布する。
ステップS10において、制御装置20は、ディスペンスヘッド141が作業範囲P2における、ディスペンスヘッド141の基板8へのクリームはんだの塗布が完了したか否かを判断する。制御装置20は、クリームはんだの被実装物2へのクリームはんだの塗布が完了していない場合、ステップS9に戻る。
ステップS11において、制御装置20は、被実装物2の全ての部分における、ディスペンスヘッド141の被実装物2へのクリームはんだの塗布が完了したか否かを判断する。制御装置20は、クリームはんだの被実装物2へのクリームはんだの塗布が完了していた場合、作業を終了する。
<実装ヘッドによる電子部品の実装の際の干渉回避>
次に、被実装物作業装置1では、図12に示すような処理に基づいて、被実装物保持ユニット13の保持部132に保持された被実装物2とディスペンスヘッド141との干渉を回避する。
まず、ステップS12において、制御装置20は、電子部品7、基板8、ヘッドユニット14およびヘッドの形状のデータを取得する。また、制御装置20は、被実装物保持ユニット13、ヘッドユニット14およびヘッド(ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142)の移動範囲R2のデータを取得する。
ステップS13において、制御装置20は、ヘッドユニット14の移動範囲R2および被実装物2の形状に基づいて干渉の判断を行う。具体的には、制御装置20は、被実装物保持ユニット13、被実装物2、ヘッドユニット14、ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142の形状の3次元データに基づいてシミュレーションを行う。ここで、シミュレーションは、被実装物保持ユニット13およびヘッドユニット14の移動範囲R2のデータに基づいて、基板8に電子部品7を実装する実装位置にそれぞれを仮想的に移動させることにより行う。このとき、制御装置20は、ヘッドユニット14の3次元データと、被実装物保持ユニット13に保持されている被実装物2の3次元データとが重なり合った場合に干渉が生じると判断する。ステップS13において、ヘッドユニット14の3次元データと被実装物2の3次元データとの間に干渉が生じない場合はステップS9へ進む。なお、移動範囲R2は、特許請求の範囲の「移動範囲データ」の一例である。
ステップS13のシミュレーションの一例として、図13および図14に示すように、3次元データ上において、実装ヘッド142が、被実装物2の第1実装面21aに電子部品7を実装する場合を想定する。図13(a)に示すように、ディスペンスヘッド141の下方に被実装物2の凸部22が位置している。ここで、図13(b)に示すように、ヘッドユニット14をZ2方向に移動させ、ヘッドユニット14を実装位置I3(第1高さ位置)に仮想的に移動させるとする。被実装物2とヘッドユニット14との干渉または非干渉は、基板8の形状データとヘッドユニット14の移動範囲R2とに基づいて、表2のように表される。
移動範囲R2は、実際のヘッドユニット14の位置から仮想的に移動させたヘッドユニット14の位置までの距離となっている。基板8の形状データは、あらかじめ制御装置20のRAMに格納されている。表2において、基板8の形状データは、上から2行目の形状となっている。また、表2において、移動範囲R2が実装位置I2となるときは、2列目となっている。このとき、表2に示すように、このとき、実装ヘッド142が第1実装面21aに電子部品7を実装できる位置に配置すると、被実装物2の凸部22とディスペンスヘッド141とが干渉(図13(b)参照)してしまうことになる。この場合は、ステップS14に進む。
図14(a)に示すように、ステップS14において、制御装置20は、ディスペンスヘッド141と被実装物2との干渉を回避可能な干渉回避位置I4を取得する。具体的には、制御装置20は、回転機構部131c、傾斜機構部131bおよび昇降機構部131aの少なくとも1つを用いて、保持部132に回転、傾斜または昇降といった対応する動作を行わせることにより干渉回避位置I4へ移動させる。なお、干渉回避位置I4は、特許請求の範囲の「干渉回避位置」の一例である。
ステップS14のシミュレーションの一例として、図13(b)に示したシミュレーション結果に基づいて、制御装置20は、図14(a)に示すような、被実装物2を回転機構部131cにより約180°回転させた位置への移動という干渉回避位置I4のシミュレーション結果を取得する。この場合、被実装物2の凸部22がディスペンスヘッド141の下方に位置しないので、凸部22とディスペンスヘッド141とが干渉しない。このように、制御装置20は、被実装物2と実装ヘッド142とが干渉しない被実装物2の位置および姿勢をシミュレーションにより決定する。
図12に示すように、ステップS15において、制御装置20は、ステップS14において計算された干渉回避位置I4に基づいて、被実装物2を昇降、回転および傾斜させる。すなわち、制御装置20は、昇降機構部131a、傾斜機構部131bおよび回転機構部131cに対して、干渉回避位置I4に移動させるために必要な指令を出力する。上記したシミュレーションによる干渉回避位置I4では、制御装置20は、約180°回転させるという指令を回転機構部131cに対して出力する。これにより、被実装物2は、図14(b)に示すように、回転機構部131cにより約180°回転された状態になる。
ステップS16において、制御装置20は、レーザー計測部19により被実装物2の高さ位置H1を計測する。レーザー計測部19において計測された被実装物2の上面の高さ位置H1は、制御装置20に送信され、制御装置20の記憶媒体であるRAMに格納される。
ステップS17において、制御装置20は、計測された高さ位置H1が干渉回避位置I4となっているかを確認する。具体的には、ステップS14において取得した干渉回避位置I4のデータと、ステップS16において取得した被実装物2の高さ位置H1のデータとを比較する。ステップS17において、干渉回避位置I4のデータと被実装物2の高さ位置H1のデータとが一致しない場合はステップS15へ戻る。干渉回避位置I4のデータと被実装物2の高さ位置H1のデータとが一致する場合は、ステップS18へと進む。
ステップS18において、制御装置20は、図15(a)に示すように、実装物2を干渉回避位置I4に固定した状態における、実装ヘッド142の可動範囲P3を計算する。すなわち、図15(b)に示すように、レーザー計測部19により計測された被実装物2の上面のデータにおいて、実装ヘッド142が被実装物2に干渉せずに、アクセスできる範囲を計算する。実装ヘッド142がアクセスできる範囲は、被実装物2の3次元データおよび実装ヘッド142のそれぞれの形状の3次元データと、ヘッドユニット14の移動範囲R2のデータとに基づいて計算される。
図12に示すように、ステップS19において、制御装置20は、被実装物2を干渉回避位置I4に固定した状態における、実装ヘッド142の作業範囲P4を計算する。すなわち、制御装置20は、図15(c)に示すように、実装ヘッド142がアクセスできる範囲(可動範囲P3)のうち、被実装物2を動かさずに、支持部15およびレール部16を用いてヘッドユニット14を移動させることにより、被実装物2と干渉せずに、実装ヘッド142が作業可能な作業範囲P4を計算する。実装ヘッド142の作業範囲P4は、干渉回避位置I4に移動した状態の被実装物2の形状の3次元データおよびヘッドユニット14の移動範囲R2のデータに基づいて計算される。
ステップS20において、実装ヘッド142は、被実装物2に電子部品7を実装する。すなわち、実装ヘッド142は、ステップS19において計算された、被実装物2における実装ヘッド142が作業できる作業範囲P4内の実装部分に対して電子部品7を実装する。
ステップS21において、制御装置20は、実装ヘッド142の作業範囲P2における、実装ヘッド142による電子部品7の実装が完了したか否かを判断する。制御装置20は、実装ヘッド142による電子部品7の実装が完了していない場合、ステップS20に進む。
ステップS22において、制御装置20は、被実装物2の全ての部分における、実装ヘッド142による電子部品7の実装が完了したか否かを判断する。制御装置20は、実装ヘッド142による電子部品7の実装が完了していた場合、作業を終了する。
なお、図16(a)および図16(b)に示すように、被実装物2が、基板8上に電子部品7が実装されたものであっても、基板8上に電子部品7が実装される毎に、上記した方法により干渉回避位置の計算が行われる。すなわち、ステップS2またはステップS13において、制御装置20は、電子部品7が基板8に実装された被実装物2、ヘッドユニット14、ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142の3次元データに基づいてシミュレーションを行う。
また、図17に示すように、実装ヘッド142が複数(2本)ある場合においても、上記した方法により干渉回避位置の計算が行われる。この場合、干渉回避位置における電子部品7の実装動作の工程の期間を示した1サイクルにかかる時間を短縮するため、制御装置20は、干渉回避位置において実装動作を実装ヘッド142を2本用いて、基板8上に電子部品7を実装してもよい。また、制御装置20は、干渉回避位置において実装動作を実装ヘッド142を2本用いて、1サイクルの実装ヘッドによる基板8上への電子部品7を実装動作を連続しておこなってもよい。
<移動時における被実装物とヘッドユニットとの干渉回避>
次に、被実装物作業装置1では、図18に示すような処理に基づいて、ヘッドユニット14の移動時における、被実装物2とヘッドユニット14との干渉を回避する。
まず、ステップS23において、制御装置20は、電子部品7、基板8、ヘッドユニット14およびヘッド(ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142)の形状のデータを取得する。また、制御装置20は、被実装物保持ユニット13、ヘッドユニット14の移動範囲R3のデータを取得する。
ステップS24において、制御装置20は、ヘッドユニット14の移動範囲R3および被実装物2の形状に基づいて干渉の判断を行う。具体的には、制御装置20は、被実装物保持ユニット13、被実装物2、ヘッドユニット14、ディスペンスヘッド141および実装ヘッド142の形状の3次元データに基づいてシミュレーションを行う。ここで、シミュレーションは、ヘッドユニット14の移動範囲R3のデータに基づいて、ヘッドユニット14をX方向またはY方向に移動させることにより行う。このとき、制御装置20は、ヘッドユニット14の3次元データと、被実装物保持ユニット13に保持されている被実装物2の3次元データとが重なり合った場合に干渉が生じると判断する。ステップS24において、ヘッドユニット14の3次元データと被実装物2の3次元データとの間に干渉が生じない場合はステップS27へ進む。なお、移動範囲R3は、特許請求の範囲の「移動範囲データ」の一例である。
ステップS24のシミュレーションの一例として、図19に示すように、3次元データ上において、ディスペンスヘッド141と被実装物2の凸部22とが干渉する場合を想定する。実装ヘッド142の下方に被実装物2の凸部22が位置している。ここで、図20に示すように、ヘッドユニット14をX1方向に移動させ、ヘッドユニット14を通過位置P1に仮想的に移動させるとする。被実装物2とヘッドユニット14との干渉または非干渉は、基板8の形状データとヘッドユニット14の移動範囲R3とに基づいて、表3のように表される。
移動範囲R3は、実際のヘッドユニット14の位置から仮想的に移動させたヘッドユニット14の位置までの距離となっている。基板8の形状データは、あらかじめ制御装置20のRAMに格納されている。表3において、基板8の形状データは、上から2行目の形状となっている。また、表3において、移動範囲R3が通過位置P1となるときは、2列目となっている。このとき、表3に示すように、支持部15によりヘッドユニット14をそのままX1方向に移動させてしまうと、ディスペンスヘッド141が被実装物2の凸部22に干渉してしまうことになる。この場合は、ステップS25に進む。
図21(a)に示すように、ステップS25において、制御装置20は、ディスペンスヘッド141と被実装物2とが干渉しない、干渉回避位置I5を取得する。具体的には、制御装置20は、回転機構部131c、傾斜機構部131bおよび昇降機構部131aの少なくとも1つを用いて、保持部132に回転、傾斜または昇降といった対応する動作を行わせることにより干渉回避位置I5へ移動させる。なお、干渉回避位置I5は、特許請求の範囲の「干渉回避位置」の一例である。
図21(a)に示すシミュレーションに対応する干渉回避位置I5への移動として、制御装置20は、図21(b)に示すような、被実装物2を昇降機構部131aにより下降させるという干渉回避位置I5を取得する。なお、制御装置20は、図22に示すような、被実装物2を傾斜機後部により傾けさせるという干渉回避位置I5を出力してもよい。
図18に示すように、ステップS26において、制御装置20は、ステップS17において計算された干渉回避位置I5に基づいて、被実装物2を昇降、回転および傾斜させる。すなわち、制御装置20は、昇降機構部131a、傾斜機構部131bおよび回転機構部131cを駆動させる指令を出力する。上記したシミュレーションによる干渉回避位置I5では、制御装置20は、被実装物2を下降または傾斜させるという指令を昇降機構部131aに対して出力する。
ステップS27において、制御装置20は、被実装物2の移動または姿勢変化が完了したか否かを判断する。制御装置20は、被実装物2の移動または姿勢変化が完了していた場合、作業を終了する。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、被実装物作業装置1の制御装置20は、ヘッド(ディスペンスヘッド141または実装ヘッド142)の作業の際、被実装物2とヘッドとに干渉が生じる場合、被実装物2の形状とヘッドユニット14の移動範囲(R1、R2、R3)とに基づいて、保持部132の干渉回避位置(I2、I4、I5)を取得する。また、制御装置20は、保持部132を干渉回避位置(I2、I4、I5)に移動機構131により移動されるように構成されている。これにより、制御装置20は、保持部132を干渉回避位置(I2、I4、I5)に移動機構131により移動されることができるので、ヘッドと被実装物2との干渉を防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御装置20は、ヘッドユニット14の移動の際、ディスペンスヘッド141または実装ヘッド142と被実装物2とに干渉が生じる場合に、干渉回避位置(I2、I4、I5)を取得して、移動機構131により保持部132を干渉回避位置(I2、I4、I5)に移動させる。これにより、ヘッドユニット14が移動する際に、移動機構131により保持部132を干渉回避位置(I2、I4、I5)に移動させることにより、ディスペンスヘッド141または実装ヘッド142と被実装物2との干渉を回避することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御装置20は、被実装物2の3次元の形状データおよびヘッドユニット14の移動範囲データ(R1、R2、R3)に基づいて、被実装物2とヘッドとに干渉が生じるか否かを判断する。そして、制御装置20は、被実装物2とヘッドとに干渉が生じる場合に、干渉回避位置(I2、I4、I5)を取得するように構成されている。これにより、3次元データ上において、被実装物2とヘッドとの干渉が生じるか否かを判断することができる。この結果、実際に被実装物2とヘッドとを移動させて干渉が生じるか否かを判断するよりも、容易かつ迅速に被実装物2と複数のヘッドとの干渉の有無を判断することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御装置20は、移動機構131により保持部132を回転、下降または傾ける動作のうちの少なくとも1つの動作を行うことにより、干渉回避位置(I2、I4、I5)に保持部132を移動させる。これにより、制御装置20は、保持部132を水平面内において直線移動させることなく、被実装物2とヘッドとの干渉を回避することができる。これにより、保持部132を水平面内を直線移動させ、保持部132を回転、下降または傾ける動作のうちの少なくとも1つの動作をさせる場合よりも、保持部132を干渉回避位置(I2、I4、I5)に移動させるための機構(直線移動機構)を減少させることができる。その結果、保持部132の干渉回避位置(I2、I4、I5)への移動の制御を簡略化することができる。
また、本実施形態では、上記のように、移動機構131は、昇降機構部131aと、傾斜機構部131bと回転機構部131cとを含んでいる。ここで、制御装置20は、回転機構部131c、昇降機構部131aおよび傾斜機構部131bの少なくとも1つを用いて、保持部132に回転、下降または傾ける動作の対応する動作を行わせ、干渉回避位置(I2、I4、I5)に保持部132を移動させる。ここで、回転機構部131cが傾斜機構部131bに取り付けられ、傾斜機構部131bが昇降機構部131aに取り付けられていることにより、被実装物2を傾斜機構部131bにより傾かせた後、被実装物2を回転機構部131cにより回転させることができる。これにより、回転機構部131cが傾斜機構部131bに取り付けられ、傾斜機構部131bが昇降機構部131aに取り付けられているので、被実装物2が傾斜機構部131bにより傾いていない状態において、被実装物2を回転機構部131cにより回転させることができる。このため、被実装物2が傾いていない状態において被実装物2を回転させることができるので、被実装物2が傾いている状態において被実装物2を回転させる場合よりも、被実装物2の回転半径を小さくすることができる。この結果、被実装物2が傾いている状態において被実装物2を回転させる機構よりも、被実装物2とディスペンスヘッド141および実装ヘッド142との干渉を抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、被実装物2は、立体的な形状を有する基板8と、基板8上に実装される複数の電子部品7とを含んでいる。また、制御装置20は、複数の電子部品7のそれぞれが基板8に実装される毎に、電子部品7と基板8とを含む被実装物2の形状と、ヘッドの移動範囲(R1、R2、R3)とに基づいて、被実装物2と複数のヘッドとに干渉が生じる場合に、保持部132を移動機構131により干渉回避位置(I2、I4、I5)に移動させる。これにより、基板8に複数の電子部品7のそれぞれが実装される毎に実装された状態の被実装物2の形状の変化を考慮して、保持部132を干渉回避位置(I2、I4、I5)に移動させることができる。この結果、被実装物2の形状が基板8に実装された電子部品7により変化したとしても、被実装物2と複数のヘッドとの干渉を回避することができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御装置20は、2本の実装ヘッド142を用いて基板8上に電子部品7を実装する場合、干渉回避位置(I2、I4)において1サイクルの実装動作をまとめて行うように構成されている。これにより、干渉回避位置(I2、I4)から保持部132により被実装物2を移動させることなく、直線状に並んだ実装ヘッド142により1サイクルの実装動作をまとめて行うことができる。この結果、2本の実装ヘッド142が被実装物2に対して実装動作を行うための、保持部132による被実装物2の移動を最小にすることができる。
また、本実施形態では、上記のように、ヘッドユニット14は、被実装物2の高さ位置H1を計測するレーザー計測部19を含んでいる。また、制御装置20は、干渉回避位置(I2、I4、I5)に保持部132を移動させた状態において、レーザー計測部19により被実装物2の高さ位置H1を計測して、保持部132が干渉回避位置(I2、I4、I5)に配置されているか否かを確認する。これにより、干渉回避位置(I2、I4、I5)に被実装物2が配置されているか否かをレーザー計測部19により確認することができる。これにより、被実装物2とディスペンスヘッド141および実装ヘッド142との干渉を確実に回避することができる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記本実施形態では、ヘッドユニット14が、ディスペンスヘッド141と実装ヘッド142とを含む例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、ヘッドユニットが、ディスペンスヘッドまたは実装ヘッドの一方を複数本含んでいてもよい。また、ヘッドユニットが、ディスペンスヘッドおよび実装ヘッドのそれぞれを複数本含んでいてもよい。また、ディスペンスヘッドおよび実装ヘッド以外の他の作業を行うヘッドを含んでいてもよい。
上記本実施形態では、ディスペンスヘッド141は、クリームはんだを基板8上に塗布する構成であったが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、ディスペンスヘッドが、基板上に接着剤や導電ペーストを塗布する構成であってもよい。
上記本実施形態では、制御装置20は、ディスペンスヘッド141がクリームはんだを基板8上の塗布部分の全てに塗布した後、実装ヘッド142により電子部品7を基板8上の実装部分の全てに実装するように構成されているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、ディスペンスヘッドによるクリームはんだの基板上の塗布と、実装ヘッドにより電子部品の実装とを、それぞれ交互に行ってもよい。
上記本実施形態では、被実装物2は、立体的な基板8を含んでいたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、基板が平面的な基板であってもよい。
上記本実施形態では、制御装置20は、仮想的な空間座標を用いて表した図形を用いたシミュレーションにより干渉回避位置(I2、I4、I5)を計算していたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、制御装置が、ディスペンスヘッド、実装ヘッドおよび実装物の寸法を用いて、数値計算により干渉回避位置を計算してもよい。
上記本実施形態では、制御装置20は、基板8上に電子部品7を実装する1サイクルの間の実装ヘッド142の動作を2本の実装ヘッド142を用いて行っていたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、制御装置が、1サイクルの間の実装ヘッドの動作を3本以上の実装ヘッド142を用いて行ってもよい。
上記本実施形態では、制御装置20は、昇降機構部131a、傾斜機構部131bおよび回転機構部131cのいずれか1つを用いて、干渉回避位置(I2、I4、I5)に被実装物2を移動させていたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、制御装置が、昇降機構部、傾斜機構部および回転機構部のうちの2つ以上を用いて、被実装物を干渉回避位置に移動させてもよい。
上記本実施形態では、特許請求の範囲の「高さ計測部」として、レーザー計測部19を用いていたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、特許請求の範囲の「高さ計測部」として、タッチセンサを用いてもよい。
上記本実施形態では、説明の便宜上、制御部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行なうフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。