特許文献2に示すように、空気入りタイヤは、タイヤのピッチノイズを広い周波数に分散させて、タイヤの騒音特性を向上させるため、ピッチバリエーション手法が採用されている。具体的には、タイヤ周方向に設けられる主溝と、この主溝に交差して設けられる副溝とから成るトレッドパターンを、トレッド部に有し、副溝をタイヤの周方向に複数種類のピッチで設ける。
そして、このような空気入りタイヤは、タイヤ径方向の剛性が不均一となり、振動特性が低下する問題がある。この問題は、タイヤ周方向に配列されるブロック部の大きさが各ブロック部間にて相互に異なること、および、トレッド部のゴムの押し込まれ量にバラツキがあるため、各ブロック部の厚みが不均一となること、により生じ得る。従って、特許文献2では、副溝の溝断面積を調整することで、ゴムの押し込まれ量を調整して剛性の不均一を解消しようとしている。しかし、近年では、さらなる振動特性の向上が望まれており、副溝の溝下のトレッド厚みの均一化が必要になっている。
また、特許文献1では、陸部に残存するベントスピューの、それらの長さ方向と直交する方向の横断面積の総和を、ピッチ長さの長い部分ほど大きくして、エア充填状態のタイヤ中心から陸部表面までの距離を、ピッチ長さの短い部分ほど長くし、均一化を図っている。
しかし、特許文献1に記載の発明では、トレッドゴム厚みは、陸部表面積に対して、ベントスピュー径およびベントスピュー本数を選択することによって容易にコントロールできることが示されているが、その図面からすると、実質的には副溝から離れた陸部の中央寄りのスピューの数により調整している。そして、陸部の中央寄りのスピューでは、副溝におけるゴムの押し込まれ量の調整が十分でなく、振動特性の向上のために、副溝の溝下のトレッド厚みを均一化することは難しい。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、副溝におけるゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上して副溝の溝下のトレッド厚みを均一化することのできる空気入りタイヤおよびタイヤ成形金型を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部に、タイヤ周方向に沿って延在しタイヤ幅方向に複数並ぶ主溝と、前記主溝により区画形成されてタイヤ周方向に沿って延在する複数の陸部と、前記陸部に対してタイヤ周方向に交差して延在する副溝と、前記陸部のトレッド面に形成されたスピューと、を備える空気入りタイヤにおいて、所定の前記陸部の各前記副溝に対し、各前記副溝の開口縁から各前記副溝の溝幅の500%の距離の範囲内にて前記スピューが同径に形成されており、かつ前記副溝の溝幅が大きいほど、前記スピューの数が多いことを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、副溝の溝幅が大きいほど、当該副溝の前記範囲内に配置された同径のスピューの数が多く形成されていることで、スピューをなすタイヤ成形金型のベントにおいて、副溝の溝幅が大きいほど、スピューの数が多くゴムの排出量が大きくなる。このため、タイヤ成形金型において副溝を成形する際に、副溝の溝幅に係るゴムの押し込まれ量に応じてゴムの排出量が変わるため、副溝を成形する際のゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上する。この結果、副溝の溝下のトレッド厚みをより均一化することができ、空気入りタイヤのタイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。
本発明の空気入りタイヤでは、任意の前記副溝の溝幅をL1、任意の前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの数をN1とし、任意の前記副溝にタイヤ周方向で隣接する前記副溝の溝幅をL2、隣接する前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの数をN2として、N1/N2=(L1/L2)α、L2<L1、および1.0≦α≦2.0の関係を満たすことを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、タイヤ周方向に隣接する各副溝について、副溝の溝幅L1,L2とスピューの数N1,N2との関係を規定することで、副溝の溝幅に応じたスピューの数によりゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上し、各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
本発明の空気入りタイヤでは、任意の前記副溝の溝幅をL1、任意の前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの任意の前記副溝の開口縁からの距離をW1とし、任意の前記副溝にタイヤ周方向で隣接する前記副溝の溝幅をL2、隣接する前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの隣接する前記副溝の開口縁からの距離をW2として、W1/W2=(L1/L2)β、L2<L1、および0.5≦β≦1.0の関係を満たすことを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、タイヤ周方向に隣接する各副溝について、副溝の溝幅L1,L2とスピューの距離W1,W2との関係を規定することで、溝幅が大きい副溝に対応して設けられるスピューほど副溝の近くに配置されるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上し、各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
本発明の空気入りタイヤでは、前記スピューは、径が0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることを特徴とする。
スピューの径が0.5mm未満であるとゴムの排出量が足りず、スピューの径が3.0mmを超えるとゴムの排出量が多すぎるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度の向上効果が低くなる。従って、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで、スピューの径を0.5mm以上3.0mm以下の範囲とすることが好ましい。
本発明の空気入りタイヤでは、タイヤ周方向に沿って延在する前記陸部に設けられた各前記副溝は、溝壁角度の差が10°以下であることを特徴とする。
ゴムの押し込まれ量の調整は、副溝の溝壁角度を変更することにより行うことができ、各溝下のトレッド厚みを均一化することができるが、タイヤ周方向における各ピッチにおいて陸部の接地面積や陸部の剛性に差が生じて他のタイヤ性能に影響があり設計手法が狭まる。従って、この空気入りタイヤによれば、タイヤ周方向における副溝の溝壁角度の差を10°以下にすることで、他のタイヤ性能への影響を抑えて広い設計手法とすることができる。
本発明の空気入りタイヤでは、タイヤ幅方向最外側の前記陸部を対象とすることを特徴とする。
タイヤ幅方向最外側の陸部は、空気入りタイヤのタイヤ周方向での振動特性の寄与が大きい。従って、タイヤ幅方向最外側の陸部を対象とすることで、タイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のタイヤ成形金型は、金型本体におけるトレッド面を形成する基準面に突出してタイヤ周方向に沿って延在しタイヤ径方向に複数並ぶ主突出部と、前記主突出部により区画形成されてタイヤ周方向に沿って延在する複数の凹部と、前記凹部に対してタイヤ周方向に交差して延在する副突出部と、前記凹部の前記基準面から前記金型本体を貫通して設けられるベントと、を備えるタイヤ成形金型において、所定の前記凹部に各前記副突出部に対し、各前記副突出部の基端の周縁から各前記副突出部の突出幅の500%の距離の範囲内にて前記ベントが同径に形成されており、かつ前記副突出部の突出幅が大きいほど、前記ベントの数が多いことを特徴とする。
このタイヤ成形金型によれば、副突出部の突出幅が大きいほど、当該副突出部の範囲内に配置された同径のベントの数が多く形成されていることで、副突出部の突出幅が大きいほど、ベントの数が多くゴムの排出量が大きくなる。このため、タイヤ成形金型において副溝を成形する際のゴムの押し込まれ量に応じてゴムの排出量が変わるため、副溝を成形する際のゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上する。この結果、副溝の溝下のトレッド厚みをより均一化することができ、空気入りタイヤのタイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。
本発明のタイヤ成形金型では、任意の前記副突出部の突出幅をL’1、任意の前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントの数をN’1とし、任意の前記副突出部にタイヤ周方向で隣接する前記副突出部の突出幅をL’2、隣接する前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントの数をN’2として、N’1/N’2=(L’1/L’2)α’、L’2<L’1、および1.0≦α’≦2.0の関係を満たすことを特徴とする。
このタイヤ成形金型によれば、タイヤ周方向に隣接する各副突出部について、副突出部の突出幅L’1,L’2とベントの数N’1,N’2との関係を規定することで、副突出部の突出幅に応じたベントの数によりゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上し、成形される空気入りタイヤの副溝の各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
本発明のタイヤ成形金型では、任意の前記副突出部の突出幅をL’1、任意の前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントにおける任意の前記副突出部の基端縁からの距離をW’1とし、任意の前記副突出部にタイヤ周方向で隣接する前記副突出部の突出幅をL’2、隣接する前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントにおける隣接する前記副突出部の基端縁からの距離をW’2として、W’1/W’2=(L’1/L’2)β’、L’2<L’1、および0.5≦β’≦1.0の関係を満たすことを特徴とする。
このタイヤ成形金型によれば、タイヤ周方向に隣接する各副突出部について、副突出部の突出幅L’1,L’2とベントの距離W’1,W’2との関係を規定することで、突出幅が大きい副突出部に対応して設けられるベントほど副突出部の近くに配置されるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上し、成形される空気入りタイヤの副溝の各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
本発明のタイヤ成形金型では、前記ベントは、径が0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることを特徴とする。
ベントの径が0.5mm未満であるとゴムの排出量が足りず、ベントの径が3.0mmを超えるとゴムの排出量が多すぎるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度の向上効果が低くなる。従って、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで、ベントの径を0.5mm以上3.0mm以下の範囲とすることが好ましい。
本発明のタイヤ成形金型では、タイヤ周方向に沿って延在する前記凹部に設けられた各前記副突出部は、周壁角度の差が10°以下であることを特徴とする。
ゴムの押し込まれ量の調整は、副突出部の周壁角度を変更することにより行うことができ、各溝下のトレッド厚みを均一化することができるが、タイヤ周方向における各ピッチにおいて陸部の接地面積や陸部の剛性に差が生じて他のタイヤ性能に影響があり設計手法が狭まる。従って、このタイヤ成形金型によれば、タイヤ周方向における副突出部の周壁角度の差を10°以下にすることで、他のタイヤ性能への影響を抑えて広い設計手法とすることができる。
本発明のタイヤ成形金型では、タイヤ幅方向最外側の前記凹部を対象とすることを特徴とする。
タイヤ幅方向最外側の凹部により成形される陸部は、空気入りタイヤのタイヤ周方向での振動特性の寄与が大きい。従って、タイヤ幅方向最外側の凹部を対象とすることで、タイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。
本発明に係る空気入りタイヤは、副溝におけるゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上して副溝の溝下のトレッド厚みを均一化することができる。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
本実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。図1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤの拡大平面図である。図4は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの副溝の拡大断面図である。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。なお、図2は、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向の一方側のみを示している。
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すようにトレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延在し、タイヤ幅方向に複数(本実施の形態では4本)並ぶ主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。また、トレッド面21は、各陸部23において、タイヤ周方向(主溝22)に交差して延在する副溝24が設けられている。副溝24は、溝幅が1mm以上のものである。陸部23は、副溝24によってタイヤ周方向で複数に分けられている。副溝24は、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側でタイヤ幅方向外側に開口して形成されている。また、副溝24は、主溝22に連通している形態、または主溝22に連通していない形態がある。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、あるいは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。即ち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
なお、図2において、二点鎖線は、ピッチバリエーションの各ピッチを示している。ここでは、主溝22で区画された1つの陸部23に設けられる副溝24が1ピッチに1本配置されている例を示しているが、1ピッチに副溝24が複数配置されていてもよい。そして、副溝24は、大きい(タイヤ周方向の範囲が長い)ピッチほど溝幅Lが大きくなるように設定されている。なお、溝幅Lは、副溝24の延在方向に交差する方向の差し渡しの距離である。図2では、溝幅Lは、下側から上側に向かって大きくなっている。このように、ピッチの大きさに対応して副溝24の溝幅Lを設定することで、後述するタイヤ成形金型101において副溝24を成形する際のゴムの押し込まれ量が各ピッチの大きさに応じて変わるため、各ピッチにおける陸部23の副溝24の溝下でのトレッド厚みがタイヤ周方向で均一化される傾向となり、振動特性の向上に寄与することができる。なお、副溝24の溝幅Lは、1つの副溝24の延在方向における平均とする。また、トレッド厚みとは、副溝24の溝底からベルトコード(ベルト層7またはベルト補強層8)までのタイヤ径方向寸法であり、1つの副溝24の延在方向における平均とする。
また、上述したような空気入りタイヤ1において、図2に示すように、トレッド面21の外方に向けて延出して設けられるスピュー10を有する。スピュー10は、後述するタイヤ成形金型101のベント110により成形される。ベント110は、空気入りタイヤ1を成形する際のゴムの加硫における空気抜け穴であって、空気入りタイヤ1側では、空気が抜ける際にベント110を通過するゴムによりトレッド面21に形成される突起である。このスピュー10は、空気入りタイヤ1を成形してタイヤ成形金型101から抜き出した後に切断されるもので、単体の空気入りタイヤ1としては、断面として存在する。
本実施形態の空気入りタイヤ1では、スピュー10は、図2に示すように、各副溝24に対し、各副溝24の開口縁から各副溝24の溝幅Lの500%の距離の範囲(図2中破線で示す)S内にて、同径に形成されている。範囲S内以外にスピュー10が配置されている場合や、範囲S内以外にスピュー10が配置されていない場合を含む。また、範囲Sをなす副溝24の溝幅Lが大きいほど、当該範囲S内のスピュー10の数が多く設定されている。即ち、副溝24の溝幅Lの大きさに応じてスピュー10の数が設定され、副溝24の溝幅Lが他の副溝24と比較して大きければ、当該副溝24の範囲S内のスピュー10の数が他のスピュー10と比較して多くなり、逆に、副溝24の溝幅Lが他の副溝24と比較して小さければ、当該副溝24の範囲S内のスピュー10の数が他のスピュー10と比較して少なくなる。また、範囲S内の全てのスピュー10が、この規定となる。
このように構成された空気入りタイヤ1によれば、副溝24の溝幅Lが大きいほど、当該副溝24の前記範囲S内に配置された同径のスピュー10の数が多く形成されていることで、スピュー10をなすタイヤ成形金型101のベント110において、副溝24の溝幅Lが大きいほど、スピュー10の数が多くゴムの排出量が大きくなる。このため、後述するタイヤ成形金型101において副溝24を成形する際に、副溝24の溝幅Lに係るゴムの押し込まれ量に応じてゴムの排出量が変わるため、副溝24を成形する際のゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上する。この結果、副溝24の溝下のトレッド厚みをより均一化することができ、空気入りタイヤ1のタイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。なお、本実施形態では、各副溝24の溝深さを一様として溝幅Lによりゴムの押し込まれ量を調整しており、この溝幅Lを基準にスピュー10の数を設定している。その他、各副溝24の断面積(1つの副溝24の延在方向における平均の断面積)によりゴムの押し込まれ量を調整し、この断面積を基準にスピュー10の数を設定してもよい。つまり、副溝24の断面積が大きいほど、当該副溝24の範囲S内に配置されたスピュー10の数を多く形成する。さらに、各副溝24の容積によりゴムの押し込まれ量を調整し、この容積を基準にスピュー10の数を設定してもよい。つまり、副溝24の容積が大きいほど、当該副溝24の範囲S内に配置されたスピュー10の数を多く形成する。
なお、スピュー10が各副溝24の範囲S内にて同径に形成されていると、切断負荷を同じくして切断を容易に行うことができる。また、スピュー10が各副溝24の範囲S内にて同径に形成されていると、各副溝24におけるゴムの押し込まれ量の設定を数により容易に行うことができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図3に示すように、任意の副溝24の溝幅をL1、任意の副溝24の範囲S内に設けられたスピュー10の数をN1とする。また、任意の副溝24にタイヤ周方向で隣接する副溝24の溝幅をL2、隣接する副溝24の範囲S内に設けられたスピュー10の数をN2とする。この場合、N1/N2=(L1/L2)α、各副溝24の溝幅L1,L2がL2<L1、および係数αが1.0≦α≦2.0の関係を満たす。なお、溝幅L2は、任意の副溝24が設けられたピッチにタイヤ周方向で隣接するピッチの副溝24の溝幅としてもよい。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ周方向に隣接する各副溝24について、副溝24の溝幅L1,L2とスピュー10の数N1,N2との関係を規定することで、副溝24の溝幅に応じたスピュー10の数によりゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上し、各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図3に示すように、任意の副溝24の溝幅をL1、任意の副溝24の範囲S内に設けられたスピュー10の任意の副溝24の開口縁からの距離WをW1とする。また、任意の副溝24にタイヤ周方向で隣接する副溝24の溝幅をL2、隣接する副溝24の範囲S内に設けられたスピュー10の隣接する副溝24の開口縁からの距離WをW2とする。この場合、W1/W2=(L1/L2)β、各副溝24の溝幅L1,L2がL2<L1、係数βが0.5≦β≦1.0の関係を満たす。なお、溝幅L2は、任意の副溝24が設けられたピッチにタイヤ周方向で隣接するピッチの副溝24の溝幅としてもよい。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ周方向に隣接する各副溝24について、副溝24の溝幅L1,L2とスピュー10の距離W1,W2との関係を規定することで、溝幅が大きい副溝24に対応して設けられるスピュー10ほど副溝24の近くに配置されるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上し、各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、スピュー10は、径が0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることが好ましい。
スピュー10の径が0.5mm未満であるとゴムの排出量が足りず、スピュー10の径が3.0mmを超えるとゴムの排出量が多すぎるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度の向上効果が低くなる。従って、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで、スピュー10の径を0.5mm以上3.0mm以下の範囲とすることが好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、主溝22により区画されてタイヤ周方向に沿って延在する陸部23に設けられた各副溝24は、図4に示すようにタイヤ径方向に対する溝壁角度θの差が10°以下であることが好ましい。即ち、主溝22により区画されてタイヤ周方向に沿って延在する陸部23に設けられた各副溝24において、タイヤ周方向のどの副溝24の溝壁角度θを比較しても、その差が10°以下である。
ゴムの押し込まれ量の調整は、副溝24の溝壁角度θを変更することにより行うことができ、各溝下のトレッド厚みを均一化することができるが、タイヤ周方向における各ピッチにおいて陸部23の接地面積や陸部の剛性に差が生じて他のタイヤ性能に影響があり設計手法が狭まる。従って、この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ周方向における副溝24の溝壁角度θの差を10°以下にすることで、他のタイヤ性能への影響を抑えて広い設計手法とすることができる。なお、全ての副溝24における溝壁角度θの差を10°以下にすることで、他のタイヤ性能への影響を抑えて広い設計手法とすることができる効果をより顕著に得ることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、タイヤ幅方向最外側の陸部23、即ちタイヤ幅方向最外側の主溝22よりもタイヤ幅方向外側のショルダー部3の陸部23を対象とすることが好ましい。
タイヤ幅方向最外側のショルダー部3の陸部23は、空気入りタイヤ1のタイヤ周方向での振動特性の寄与が大きい。従って、タイヤ幅方向最外側のショルダー部3の陸部23を対象とすることで、タイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。
本実施形態に係るタイヤ成形金型について説明する。図5は、本実施形態に係るタイヤ成形金型の側面図である。図6は、本実施形態に係るタイヤ成形金型の子午断面図(図5のA−A断面図)である。図7は、本実施形態に係るタイヤ成形金型の内面図である。図8は、本実施形態に係るタイヤ成形金型の拡大内面図である。
以下の説明において、タイヤ径方向、タイヤ周方向、タイヤ幅方向、タイヤ赤道面CLは、上述した空気入りタイヤ1に準ずる。
タイヤ成形金型101は、上述した空気入りタイヤ1を加硫成形するためのものである。図5および図6に示すように、タイヤ成形金型101は、金型本体として、セクタ101A、サイドプレート101Bと、ビードリング101Cとにより構成されている。
セクタ101Aは、タイヤ1のトレッド部2を成形するための金型であり、円環がタイヤ周方向に複数(例えば、図5に示す8個以上)で等分割され、合わせ部101Dにおいて相互に突き合わされる分割金型として構成されている。セクタ101Aは、図6および図7に示すように、その内面に、トレッド面21を形成するための基準面121を有する。基準面121は、タイヤ周方向に沿って延在し、タイヤ幅方向に複数(本実施の形態では4本)並ぶ主突出部122が設けられている。主突出部122は、主溝22をトレッド部2に形成するためのものである。そして、基準面121は、これら複数の主突出部122により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行な凹部123が複数形成されている。また、基準面121は、各凹部123において、タイヤ周方向(主突出部122)に交差して延在する副突出部124が設けられている。副突出部124は、副溝24をトレッド部2に形成するためのものであり、その突出幅が1mm以上のものである。凹部123は、副突出部124によってタイヤ周方向で複数に分けられている。副突出部124は、主突出部122に連通している形態、または主突出部122に連通していない形態がある。
また、セクタ101Aは、空気入りタイヤ1の加硫成形時の空気抜きのためのベント110を有する。ベント110は、セクタ101Aをタイヤ径方向で貫通して設けられている。このベント110により上述した空気入りタイヤ1のスピュー10が形成される。
サイドプレート101Bは、空気入りタイヤ1のショルダー部3およびサイドウォール部4を成形するための金型である。サイドプレート101Bは、各セクタ101Aに対して合わせ部101Eにおいて相互に突き合わされる分割金型として構成されている。また、ビードリング101C(図6では省略)は、空気入りタイヤ1のビード部5を成形するための金型である。
なお、図7において、二点鎖線は、ピッチバリエーションの各ピッチを示している。ここでは、主突出部122で区画された1つの凹部123に設けられる副突出部124が1ピッチに1本配置されている例を示しているが、1ピッチに副突出部124が複数配置されていてもよい。そして、副突出部124は、大きい(タイヤ周方向の範囲が長い)ピッチほど突出幅L’が大きくなるように設定されている。なお、突出幅L’は、副突出部124の延在方向に交差する方向の差し渡しの距離である。図7では、突出幅L’は、下側から上側に向かって大きくなっている。このように、ピッチの大きさに対応して副突出部124の突出幅L’を設定することで、タイヤ成形金型101において副突出部124を成形する際のゴムの押し込まれ量が各ピッチの大きさに応じて変わるため、成形される空気入りタイヤ1において、各ピッチにおける陸部23の副溝24の溝下でのトレッド厚みがタイヤ周方向で均一化される傾向となり、振動特性の向上に寄与することができる。なお、副突出部124の突出幅L’は、1つの副突出部124の延在方向における平均とする。
このようなタイヤ成形金型101において、ベント110は、図7に示すように、各副突出部124に対し、各副突出部124が基準面121に繋がる基端の周縁から各副突出部124の突出幅L’の500%の距離の範囲(図7中破線で示す)S’内にて同径に形成されている。範囲S’内以外にベント110が配置されている場合や、範囲S’内以外にベント110が配置されていない場合を含む。また、範囲S’をなす副突出部124の突出幅L’が大きいほど、当該範囲S’内のベント110の数が多く設定されている。即ち、副突出部124の突出幅L’の大きさに応じてベント110の数が設定され、副突出部124の突出幅L’が他の副突出部124と比較して大きければ、当該副突出部124の範囲S’内のベント110の数が他のベント110と比較して多くなり、逆に、副突出部124の突出幅L’が他の副突出部124と比較して小さければ、当該副突出部124の範囲S’内のベント110の数が他のベント110と比較して少なくなる。また、範囲S’内の全てのベント110が、この規定となる。
このように構成されたタイヤ成形金型101によれば、副突出部124の突出幅L’が大きいほど、当該副突出部124の前記範囲S’内に配置された同径のベント110の数が多く形成されていることで、副突出部124の突出幅L’が大きいほど、ベント110の数が多くゴムの排出量が大きくなる。このため、タイヤ成形金型101において副溝24を成形する際のゴムの押し込まれ量に応じてゴムの排出量が変わるため、副溝24を成形する際のゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上する。この結果、副溝24の溝下のトレッド厚みをより均一化することができ、空気入りタイヤ1のタイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。なお、本実施形態では、各副突出部124の突出高さ(タイヤ径方向寸法)を一様として突出幅L’によりゴムの押し込まれ量を調整しており、この突出幅L’を基準にベント110の数を設定している。その他、各副突出部124の断面積(1つの副突出部124の延在方向における平均の断面積)によりゴムの押し込まれ量を調整し、この断面積を基準にベント110の数を設定してもよい。つまり、副突出部124の断面積が大きいほど、当該副突出部124の範囲S’内に配置されたベント110の数を多く形成する。さらに、各副突出部124の容積によりゴムの押し込まれ量を調整し、この容積を基準にベント110の数を設定してもよい。つまり、副突出部124の容積が大きいほど、当該副突出部124の範囲S’内に配置されたベント110の数を多く形成する。
なお、ベント110が各副突出部124の範囲S’内にて同径に形成されていると、形成されるスピュー10の切断負荷を同じくして切断を容易に行うことができる。また、ベント110が各副突出部124の範囲S’内にて同径に形成されていると、各副溝24におけるゴムの押し込まれ量の設定を数により容易に行うことができる。
また、本実施形態のタイヤ成形金型101では、図8に示すように、任意の副突出部124の突出幅をL’1、任意の副突出部124の範囲S’内に設けられたベント110の数をN’1とする。また、任意の副突出部124にタイヤ周方向で隣接する副突出部124の突出幅をL’2、隣接する副突出部124の範囲S’内に設けられたベント110の数をN’2とする。この場合、N’1/N’2=(L’1/L’2)α’、各副突出部124の突出幅L’1,L’2がL’2<L’1、および係数α’が1.0≦α’≦2.0の関係を満たす。なお、突出幅L’2は、任意の副突出部124が設けられたピッチにタイヤ周方向で隣接するピッチの副突出部124の突出幅としてもよい。
このタイヤ成形金型101によれば、タイヤ周方向に隣接する各副突出部124について、副突出部124の突出幅L’1,L’2とベント110の数N’1,N’2との関係を規定することで、副突出部124の突出幅に応じたベント110の数によりゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上し、成形される空気入りタイヤ1の副溝24の各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
また、本実施形態のタイヤ成形金型101では、図8に示すように、任意の副突出部124の突出幅をL’1、任意の副突出部124の範囲S’内に設けられたベント110の任意の副突出部124の周縁からの距離W’をW’1とする。また、任意の副突出部124にタイヤ周方向で隣接する副突出部124の突出幅をL’2、隣接する副突出部124の範囲S’内に設けられたベント110の隣接する副突出部124の周縁からの距離W’をW’2とする。この場合、W’1/W’2=(L’1/L’2)β’、各副突出部124の突出幅L’1,L’2がL’2<L’1、係数β’が0.5≦β’≦1.0の関係を満たす。なお、突出幅L’2は、任意の副突出部124が設けられたピッチにタイヤ周方向で隣接するピッチの副突出部124の突出幅としてもよい。
このタイヤ成形金型101によれば、タイヤ周方向に隣接する各副突出部124について、副突出部124の突出幅L’1,L’2とベント110の距離W’1,W’2との関係を規定することで、突出幅が大きい副突出部124に対応して設けられるベント110ほど副突出部124の近くに配置されるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上し、成形される空気入りタイヤ1の副溝24の各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
また、本実施形態のタイヤ成形金型101では、ベント110は、径が0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることが好ましい。
ベント110の径が0.5mm未満であるとゴムの排出量が足りず、ベント110の径が3.0mmを超えるとゴムの排出量が多すぎるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度の向上効果が低くなる。従って、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで、ベント110の径を0.5mm以上3.0mm以下の範囲とすることが好ましい。
また、本実施形態のタイヤ成形金型101では、主突出部122により区画されてタイヤ周方向に沿って延在する凹部123に設けられた各副突出部124は、図9に示すようにタイヤ径方向に対する周壁角度θ’の差が10°以下であることが好ましい。即ち、主突出部122により区画されてタイヤ周方向に沿って延在する凹部123に設けられた各副突出部124において、タイヤ周方向のどの副突出部124の周壁角度θ’を比較しても、その差が10°以下である。
ゴムの押し込まれ量の調整は、副突出部124の周壁角度θ’を変更することにより行うことができ、各溝下のトレッド厚みを均一化することができるが、タイヤ周方向における各ピッチにおいて陸部23の接地面積や陸部の剛性に差が生じて他のタイヤ性能に影響があり設計手法が狭まる。従って、このタイヤ成形金型101によれば、タイヤ周方向における副突出部124の周壁角度θ’の差を10°以下にすることで、他のタイヤ性能への影響を抑えて広い設計手法とすることができる。なお、全ての副突出部124における周壁角度θ’の差を10°以下にすることで、他のタイヤ性能への影響を抑えて広い設計手法とすることができる効果をより顕著に得ることができる。
また、本実施形態のタイヤ成形金型101では、タイヤ幅方向最外側の凹部123、即ちタイヤ幅方向最外側の主突出部122よりもタイヤ幅方向外側のショルダー部3の凹部123を対象とすることが好ましい。
タイヤ幅方向最外側のショルダー部3の凹部123により成形される陸部23は、空気入りタイヤ1のタイヤ周方向での振動特性の寄与が大きい。従って、タイヤ幅方向最外側のショルダー部3の凹部123を対象とすることで、タイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、振動特性に関する性能試験が行われた(図10参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤ(試験タイヤ)をタイヤ成形金型により加硫した。
振動特性の評価方法は、上記試験タイヤを15×6Jの正規リムにリム組みし、空気圧180kPaの正規内圧を充填し、フォースバリエーション試験機により、正規加重を加えて、JASO C607の規格に基づくRFV(ラジアル・フォース・バリエーション:縦方向の剛性バランス)を測定した。そして、従来例の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、指数が小さいほど振動が小さく振動特性が優れていることを示している。
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
図10においては、従来例、比較例および実施例1〜実施例10の空気入りタイヤの副溝に係る範囲S内にあるスピューについて規定した。従来例の空気入りタイヤは、副溝の溝幅に係わらずスピューの径および数は同一である。また、比較例の空気入りタイヤは、副溝の溝幅が大きいほどスピューの数が少なくなっている。一方、実施例1〜実施例10の空気入りタイヤは、副溝の溝幅が大きいほどスピューの数が多くなっている。また、実施例1〜実施例10の空気入りタイヤは、係数αが1.0〜2.0の範囲内である。また、実施例1〜実施例10の空気入りタイヤは、スピューの径が0.5mm〜3.0mmの範囲内である。また、実施例1〜実施例5の空気入りタイヤは、副溝からのスピューの距離が同一であるが、実施例6〜実施例10は距離の係数βが0.5〜1.0の範囲内である。また、実施例1〜実施例8,実施例10の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する陸部における各副溝の溝壁角度の差が10°以下である。また、実施例1〜実施例9の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在するショルダー部の陸部を対象としている。なお、実施例10の空気入りタイヤにおいてセンターの陸部は、図1に示すように、タイヤ赤道面上の陸部である。
図10の試験結果に示すように、実施例1〜実施例10の空気入りタイヤは、振動特性が改善されていることが分かる。