JP2018001798A - 空気入りタイヤおよびタイヤ成形金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】副溝におけるゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上して副溝の溝下のトレッド厚みを均一化し、かつトリムの作業性を向上する。【解決手段】トレッド部2に、タイヤ周方向に沿って延在しタイヤ幅方向に複数並ぶ主溝22と、主溝22により区画形成されてタイヤ周方向に沿って延在する複数の陸部23と、陸部23に対してタイヤ周方向に交差して延在する副溝24と、陸部23のトレッド面21に形成されたスピュー10と、を備える空気入りタイヤ1において、所定の陸部23の各副溝24に対し、各副溝24の開口縁から各副溝24の溝幅Dの500%の距離の範囲P内にスピュー10が同数形成され、かつタイヤ周方向で並んで設けられており、副溝24の溝幅Dが大きいほど、スピュー10のタイヤ周方向寸法を変えてスピュー10の断面積Sを大きくする。【選択図】図2

Description

本発明は、空気入りタイヤおよびタイヤ成形金型に関するものである。
従来、例えば、特許文献1に記載の空気入りタイヤは、トレッド踏面部に、トレッド幅方向の延在成分を有する副溝(横溝)を設けるとともに、少なくとも二種類の異なるピッチをトレッド周方向に組み合わせてトレッドパターンを形成し、各ピッチにおけるネガティブ率を25%〜55%とした空気入りタイヤであって、陸部に残存するベントスピューの横断面積の総和を、ピッチ長さの長い部分ほど大きくしてなる。
また、例えば、特許文献2に記載の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に設けられる主溝(縦溝)と、主溝に交差してタイヤ周方向に複数種類のピッチ毎に設けられる副溝(横溝)とを有するトレッド部を含む空気入りタイヤであって、副溝の溝断面積を調整することにより、タイヤ径方向(半径方向)に対するトレッド部の剛性をタイヤ周方向に均一化する。
特許第3618767号公報 特開2004−210133号公報
特許文献2に示すように、空気入りタイヤは、タイヤのピッチノイズを広い周波数に分散させて、タイヤの騒音特性を向上させるため、ピッチバリエーション手法が採用されている。具体的には、タイヤ周方向に設けられる主溝と、この主溝に交差して設けられる副溝とから成るトレッドパターンを、トレッド部に有し、副溝をタイヤの周方向に複数種類のピッチで設ける。
そして、このような空気入りタイヤは、タイヤ径方向の剛性が不均一となり、振動特性が低下する問題がある。この問題は、タイヤ周方向に配列されるブロック部の大きさが各ブロック部間にて相互に異なること、および、トレッド部のゴムの押し込まれ量にバラツキがあるため、各ブロック部の厚みが不均一となること、により生じ得る。従って、特許文献2では、副溝の溝断面積を調整することで、ゴムの押し込まれ量を調整して剛性の不均一を解消しようとしている。しかし、近年では、さらなる振動特性の向上が望まれており、副溝の溝下のトレッド厚みの均一化が必要になっている。
また、特許文献1では、陸部に残存するベントスピューの、それらの長さ方向と直交する方向の横断面積の総和を、ピッチ長さの長い部分ほど大きくして、エア充填状態のタイヤ中心から陸部表面までの距離を、ピッチ長さの短い部分ほど長くし、均一化を図っている。
しかし、特許文献1に記載の発明では、トレッドゴム厚みは、陸部表面積に対して、ベントスピュー径およびベントスピュー本数を選択することによって容易にコントロールできることが示されているが、その図面からすると、実質的には副溝から離れた陸部の中央寄りのスピューの数により調整している。そして、陸部の中央寄りのスピューでは、副溝におけるゴムの押し込まれ量の調整が十分でなく、振動特性の向上のために、副溝の溝下のトレッド厚みを均一化することは難しい。
また、スピューを切除するトリムにおいてタイヤ周方向に回転させながら切除するが、スピューがタイヤ幅方向でずれて配置されていると、カッタをタイヤ幅方向に動かさなければならず、トリムの作業性が低下する問題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、副溝におけるゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上して副溝の溝下のトレッド厚みを均一化することができ、かつトリムの作業性を向上することのできる空気入りタイヤおよびタイヤ成形金型を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空気入りタイヤは、トレッド部に、タイヤ周方向に沿って延在しタイヤ幅方向に複数並ぶ主溝と、前記主溝により区画形成されてタイヤ周方向に沿って延在する複数の陸部と、前記陸部に対してタイヤ周方向に交差して延在する副溝と、前記陸部のトレッド面に形成されたスピューと、を備える空気入りタイヤにおいて、所定の前記陸部の各前記副溝に対し、各前記副溝の開口縁から各前記副溝の溝幅の500%の距離の範囲内に前記スピューが同数形成され、かつ各前記副溝間でタイヤ周方向に並んで設けられており、前記副溝の溝幅が大きいほど、前記スピューのタイヤ周方向寸法を変えて前記スピューの断面積を大きくすることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、副溝の溝幅が大きいほど、当該副溝の範囲内に配置されたスピューの断面積が大きく形成されていることで、スピューをなすタイヤ成形金型のベントにおいて、副溝の溝幅が大きいほど、断面積が大きくゴムの排出量が大きくなる。このため、副溝の溝幅に係るゴムの押し込まれ量に応じてゴムの排出量が変わるため、副溝を成形する際のゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上する。この結果、副溝の溝下のトレッド厚みをより均一化することができ、空気入りタイヤのタイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。しかも、この空気入りタイヤによれば、スピューが各副溝間でタイヤ周方向に並んで設けられているため、スピューを切除するトリムにおいてタイヤ周方向に回転させながら切除するとき、カッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。しかも、スピューのタイヤ周方向寸法を変えて断面積が設定されているため、スピューのタイヤ幅方向寸法を同様にすることができ、これによってもカッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。
本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記タイヤ周方向に並ぶ前記スピューは、タイヤ幅方向寸法を一定に形成されることが好ましい。
この空気入りタイヤによれば、タイヤ周方向に並ぶスピューがタイヤ幅方向寸法を一定に形成されることで、スピューを切除するトリムにおいてタイヤ周方向に回転させながら切除するとき、カッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。
本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、任意の前記副溝の溝幅をD1、任意の前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの断面積をS1とし、任意の前記副溝にタイヤ周方向で隣接する前記副溝の溝幅をD2、隣接する前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの断面積をS2として、D2<D1、および係数α=1.0〜2.0とした場合、S1/S2=(D1/D2)αの関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤによれば、タイヤ周方向に隣接する各副溝について、副溝の溝幅D1,D2とスピューの断面積S1,S2との関係を規定することで、副溝の溝幅に応じたスピューの断面積によりゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上し、各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記スピューは、タイヤ幅方向寸法Wが0.5mm以上3.0mm以下の範囲であり、タイヤ周方向寸法Lが0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることが好ましい。
スピューのタイヤ幅方向寸法Wやタイヤ周方向寸法Lが0.5mm未満であるとゴムの排出量が足りず、スピューのタイヤ幅方向寸法Wやタイヤ周方向寸法Lが3.0mmを超えるとゴムの排出量が多すぎるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度の向上効果が低くなる。従って、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで、スピューのタイヤ幅方向寸法Wやタイヤ周方向寸法Lを0.5mm以上3.0mm以下の範囲とすることが好ましい。
本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、任意の前記副溝の溝幅をD1、任意の前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの任意の前記副溝の開口縁からの距離をX1とし、任意の前記副溝にタイヤ周方向で隣接する前記副溝の溝幅をD2、隣接する前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの隣接する前記副溝の開口縁からの距離をX2として、D2<D1、および係数β=0.5〜1.0とした場合、X1/X2=(D1/D2)βの関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤによれば、タイヤ周方向に隣接する各副溝について、副溝の溝幅D1,D2とスピューの距離X1,X2との関係を規定することで、溝幅が大きい副溝に対応して設けられるスピューほど副溝の近くに配置されるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上し、各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るタイヤ成形金型は、金型本体におけるトレッド面を形成する基準面に突出してタイヤ周方向に沿って延在しタイヤ径方向に複数並ぶ主突出部と、前記主突出部により区画形成されてタイヤ周方向に沿って延在する複数の凹部と、前記凹部に対してタイヤ周方向に交差して延在する副突出部と、前記凹部の前記基準面から前記金型本体を貫通して設けられるベントと、を備えるタイヤ成形金型において、所定の前記凹部に各前記副突出部に対し、各前記副突出部の基端の周縁から各前記副突出部の突出幅の500%の距離の範囲内に前記ベントが同数形成され、かつ各前記副突出部間でタイヤ周方向に並んで設けられており、前記副突出部の突出幅が大きいほど、前記ベントのタイヤ周方向寸法を変えて前記ベントの断面積を大きくする。
このタイヤ成形金型によれば、副突出部の突出幅が大きいほど、当該副突出部の範囲内に配置されたベントの断面積が大きく形成されていることで、副突出部の突出幅が大きいほど、ベントの断面積が大きくゴムの排出量が大きくなる。このため、タイヤ成形金型において副溝を成形する際のゴムの押し込まれ量に応じてゴムの排出量が変わるため、副溝を成形する際のゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上する。この結果、副突出部がなす副溝の溝下のトレッド厚みをより均一化することができ、空気入りタイヤのタイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。しかも、このタイヤ成形金型によれば、ベントが各副突出部間でタイヤ周方向に並んで設けられているため、ベントがなすスピューを切除するトリムにおいてタイヤ周方向に回転させながら切除するとき、カッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。しかも、ベントのタイヤ周方向寸法を変えて断面積が設定されているため、ベントがなすスピューのタイヤ幅方向寸法を同様にすることができ、これによってもカッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。
本発明の一態様に係るタイヤ成形金型では、前記タイヤ周方向に並ぶ前記ベントは、タイヤ幅方向寸法を一定に形成されることが好ましい。
このタイヤ成形金型によれば、タイヤ周方向に並ぶベントがタイヤ幅方向寸法を一定に形成されることで、ベントがなすスピューを切除するトリムにおいてタイヤ周方向に回転させながら切除するとき、カッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。
本発明の一態様に係るタイヤ成形金型では、任意の前記副突出部の突出幅をD’1、任意の前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントの断面積をS’1とし、任意の前記副突出部にタイヤ周方向で隣接する前記副突出部の突出幅をD’2、隣接する前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントの断面積をS’2として、D’2<D’1、および係数α’=1.0〜2.0とした場合、S’1/S’2=(D’1/D’2)α’の関係を満たすことが好ましい。
このタイヤ成形金型によれば、タイヤ周方向に隣接する各副突出部について、副突出部の突出幅D’1,D’2とベントの断面積S’1,S’2との関係を規定することで、副突出部の突出幅に応じたベントの断面積によりゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上し、成形される空気入りタイヤの副溝の各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
本発明の一態様に係るタイヤ成形金型では、前記ベントは、タイヤ幅方向寸法W’が0.5mm以上3.0mm以下の範囲であり、タイヤ周方向寸法L’が0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることが好ましい。
ベントのタイヤ幅方向寸法W’やタイヤ周方向寸法L’が0.5mm未満であるとゴムの排出量が足りず、ベントのタイヤ幅方向寸法W’やタイヤ周方向寸法L’が3.0mmを超えるとゴムの排出量が多すぎるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度の向上効果が低くなる。従って、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで、ベントのタイヤ幅方向寸法W’やタイヤ周方向寸法L’を0.5mm以上3.0mm以下の範囲とすることが好ましい。
本発明の一態様に係るタイヤ成形金型では、任意の前記副突出部の突出幅をD’1、任意の前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントにおける任意の前記副突出部の基端縁からの距離をX’1とし、任意の前記副突出部にタイヤ周方向で隣接する前記副突出部の突出幅をD’2、隣接する前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントにおける隣接する前記副突出部の基端縁からの距離をX’2として、D’2<D’1、および係数β’=0.5〜1.0とした場合、X’1/X’2=(D’1/D’2)β’の関係を満たすことが好ましい。
このタイヤ成形金型によれば、タイヤ周方向に隣接する各副突出部について、副突出部の突出幅D’1,D’2とベントの距離X’1,X’2との関係を規定することで、突出幅が大きい副突出部に対応して設けられるベントほど副突出部の近くに配置されるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上し、成形される空気入りタイヤの副溝の各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
本発明に係る空気入りタイヤは、副溝におけるゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上して副溝の溝下のトレッド厚みを均一化することができ、かつトリムの作業性を向上することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。 図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。 図3は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの拡大平面図である。 図4は、本発明の実施形態に係るタイヤ成形金型の側面図である。 図5は、本発明の実施形態に係るタイヤ成形金型の子午断面図である。 図6は、本発明の実施形態に係るタイヤ成形金型の内面図である。 図7は、本発明の実施形態に係るタイヤ成形金型の拡大内面図である。 図8は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
本実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。図1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤの拡大平面図である。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。なお、図2は、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向の一方側のみを示している。
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すようにトレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延在し、タイヤ幅方向に複数(本実施の形態では4本)並ぶ主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。また、トレッド面21は、各陸部23において、タイヤ周方向(主溝22)に交差して延在する副溝24が設けられている。副溝24は、溝幅が1mm以上のものである。陸部23は、副溝24によってタイヤ周方向で複数に分けられている。副溝24は、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側でタイヤ幅方向外側に開口して形成されている。また、副溝24は、主溝22に連通している形態、または主溝22に連通していない形態がある。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、あるいは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
なお、図2において、二点鎖線は、ピッチバリエーションの各ピッチを示している。ここでは、主溝22で区画された1つの陸部23に設けられる副溝24が1ピッチに1本配置されている例を示しているが、1ピッチに副溝24が複数配置されていてもよい。そして、副溝24は、大きい(タイヤ周方向の範囲が長い)ピッチほど溝幅Dが大きくなるように設定されている。なお、溝幅Dは、副溝24の延在方向に交差する方向の差し渡しの距離である。図2では、溝幅Dは、下側から上側に向かって大きくなっている。このように、ピッチの大きさに対応して副溝24の溝幅Dを設定することで、後述するタイヤ成形金型101において副溝24を成形する際のゴムの押し込まれ量が各ピッチの大きさに応じて変わるため、各ピッチにおける陸部23の副溝24の溝下でのトレッド厚みがタイヤ周方向で均一化される傾向となり、振動特性の向上に寄与することができる。なお、副溝24の溝幅Dは、1つの副溝24の延在方向における平均とする。また、トレッド厚みとは、副溝24の溝底からベルトコード(ベルト層7またはベルト補強層8)までのタイヤ径方向寸法であり、1つの副溝24の延在方向における平均とする。
また、上述したような空気入りタイヤ1において、図2に示すように、トレッド面21の外方に向けて延出して設けられるスピュー10を有する。スピュー10は、後述するタイヤ成形金型101のベント110により成形される。ベント110は、空気入りタイヤ1を成形する際のゴムの加硫における空気抜け穴であって、空気入りタイヤ1側では、空気が抜ける際にベント110を通過するゴムによりトレッド面21に形成される突起である。このスピュー10は、空気入りタイヤ1を成形してタイヤ成形金型101から抜き出した後に切断されるもので、単体の空気入りタイヤ1としては、断面として存在する。
本実施形態の空気入りタイヤ1では、スピュー10は、図2に示すように、各副溝24に対し、各副溝24の開口縁から各副溝24の溝幅Dの500%の距離の範囲(図2中破線で示す)P内に同数形成されている。範囲P内以外にスピュー10が配置されている場合や、範囲P内以外にスピュー10が配置されていない場合を含む。また、スピュー10は、各副溝24間でタイヤ周方向に並んで設けられている。範囲P内以外にスピュー10が配置されている場合は、範囲P内のスピュー10と共にタイヤ周方向に並んで設けられる。また、範囲Pをなす副溝24の溝幅Dが大きいほど、当該範囲P内のスピュー10の断面積Sがスピュー10のタイヤ周方向寸法Lを変えて大きく設定されている。即ち、副溝24の溝幅Dの大きさに応じてスピュー10のタイヤ周方向寸法Lを変えてスピュー10の断面積Sの大きさが設定され、副溝24の溝幅Dが他の副溝24と比較して大きければ、当該副溝24の範囲P内のスピュー10の断面積Sが他のスピュー10と比較して大きくなり、逆に、副溝24の溝幅Dが他の副溝24と比較して小さければ、当該副溝24の範囲P内のスピュー10の断面積Sが他のスピュー10と比較して小さくなる。また、範囲P内の全てのスピュー10が、この規定となる。なお、スピュー10がタイヤ周方向に並んで設けられているとは、タイヤ周方向で各スピュー10の少なくとも一部が重なる形態を含み、好ましくは図2および図3に一点鎖線で示すタイヤ周方向上にスピュー10のタイヤ幅方向寸法Wの中心が配置される形態である。
このように構成された空気入りタイヤ1によれば、副溝24の溝幅Dが大きいほど、当該副溝24の前記範囲P内に配置されたスピュー10の断面積Sが大きく形成されていることで、スピュー10をなすタイヤ成形金型101のベント110において、副溝24の溝幅Dが大きいほど、断面積が大きくゴムの排出量が大きくなる。このため、後述するタイヤ成形金型101において副溝24を成形する際に、副溝24の溝幅Dに係るゴムの押し込まれ量に応じてゴムの排出量が変わるため、副溝24を成形する際のゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上する。この結果、副溝24の溝下のトレッド厚みをより均一化することができ、空気入りタイヤ1のタイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。なお、本実施形態では、各副溝24の溝深さを一様として溝幅Dによりゴムの押し込まれ量を調整しており、この溝幅Dを基準にスピュー10の断面積Sを設定している。その他、各副溝24の断面積(1つの副溝24の延在方向における平均の断面積)によりゴムの押し込まれ量を調整し、この断面積を基準にスピュー10の断面積Sを設定してもよい。つまり、副溝24の断面積が大きいほど、当該副溝24の範囲P内に配置されたスピュー10の断面積Sを大きく形成する。さらに、各副溝24の容積によりゴムの押し込まれ量を調整し、この容積を基準にスピュー10の断面積Sを設定してもよい。つまり、副溝24の容積が大きいほど、当該副溝24の範囲P内に配置されたスピュー10の断面積Sを大きく形成する。
ここで、副溝24の溝幅Dにおいて、ピッチが最も小さい場合の最小溝幅Dminと、その他の溝幅Detcとの関係Detc/Dminは、1.2≦Detc/Dmin≦2.5の範囲とすることが、副溝24の溝下のトレッド厚みをより均一化するうえで好ましい。
しかも、本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、スピュー10が各副溝24間でタイヤ周方向に並んで設けられているため、スピュー10を切除するトリムにおいてタイヤ周方向に回転させながら切除するとき、カッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。しかも、スピュー10のタイヤ周方向寸法を変えて断面積Sが設定されているため、スピュー10のタイヤ幅方向寸法Wを同様にすることができ、これによってもカッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。
なお、スピュー10が各副溝24の範囲P内に同数形成されていることでもトリムの作業性を向上することができる。また、スピュー10が各副溝24の範囲P内に同数形成されていると、各副溝24におけるゴムの押し込まれ量の設定を容易に行うことができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向に並ぶスピュー10は、タイヤ幅方向寸法Wを一定に形成されることが好ましい。ここで、タイヤ幅方向寸法Wが一定とは、タイヤ周方向に並ぶスピュー10のタイヤ幅方向寸法Wが同一であることであり、タイヤ幅方向寸法Waにおいて係数a=0.9〜1.1の誤差範囲を含む。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ周方向に並ぶスピュー10がタイヤ幅方向寸法Wを一定に形成されることで、スピュー10を切除するトリムにおいてタイヤ周方向に回転させながら切除するとき、カッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図3に示すように、任意の副溝24の溝幅をD1、任意の副溝24の範囲P内に設けられたスピュー10の断面積をS1とする。また、任意の副溝24にタイヤ周方向で隣接する副溝24の溝幅をD2、隣接する副溝24の範囲P内に設けられたスピュー10の断面積をS2とする。そして、各副溝24の溝幅D1,D2の関係がD2<D1であり、係数α=1.0〜2.0とする。この場合、S1/S2=(D1/D2)αの関係を満たす。なお、溝幅D2は、任意の副溝24が設けられたピッチにタイヤ周方向で隣接するピッチの副溝24の溝幅としてもよい。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ周方向に隣接する各副溝24について、副溝24の溝幅D1,D2とスピュー10の断面積S1,S2との関係を規定することで、副溝24の溝幅に応じたスピュー10の断面積によりゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上し、各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、スピュー10は、タイヤ幅方向寸法Wが0.5mm以上3.0mm以下であり、タイヤ周方向寸法Lが0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることが好ましい。
スピュー10のタイヤ幅方向寸法Wやタイヤ周方向寸法Lが0.5mm未満であるとゴムの排出量が足りず、スピュー10のタイヤ幅方向寸法Wやタイヤ周方向寸法Lが3.0mmを超えるとゴムの排出量が多すぎるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度の向上効果が低くなる。従って、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで、スピュー10のタイヤ幅方向寸法Wやタイヤ周方向寸法Lを0.5mm以上3.0mm以下の範囲とすることが好ましい。
なお、1つのスピュー10において、タイヤ幅方向寸法Wとタイヤ周方向寸法Lとの関係L/Wは、上記0.5mm以上3.0mm以下の範囲から0.17≦L/W≦6.0の範囲となる。また、好ましくは、1つのスピュー10において、L≦Wとすることで、副溝24の延在方向であるタイヤ幅方向に沿って断面形状が長くなるため、副溝24の溝下のトレッド厚みを均一化する調整がしやすくなる。また、スピュー10の断面形状は、円形状、長円形状、楕円形状など円弧を外径とした形状であることが、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図3に示すように、任意の副溝24の溝幅をD1、任意の副溝24の範囲P内に設けられたスピュー10の任意の副溝24の開口縁からの距離をX1とする。また、任意の副溝24にタイヤ周方向で隣接する副溝24の溝幅をD2、隣接する副溝24の範囲P内に設けられたスピュー10の隣接する副溝24の開口縁からの距離をX2とする。そして、各副溝24の溝幅D1,D2の関係がD2<D1であり、係数β=0.5〜1.0とする。この場合、X1/X2=(D1/D2)βの関係を満たす。なお、溝幅D2は、任意の副溝24が設けられたピッチにタイヤ周方向で隣接するピッチの副溝24の溝幅としてもよい。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ周方向に隣接する各副溝24について、副溝24の溝幅D1,D2とスピュー10の距離X1,X2との関係を規定することで、溝幅が大きい副溝24に対応して設けられるスピュー10ほど副溝24の近くに配置されるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上し、各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。なお、距離X(X1,X2)は、1mm以上5mm未満であることが、欠けを防止し、ゴムの排出を適宜行ううえで好ましい。
本実施形態に係るタイヤ成形金型について説明する。図4は、本実施形態に係るタイヤ成形金型の側面図である。図5は、本実施形態に係るタイヤ成形金型の子午断面図(図4のA−A断面図)である。図6は、本実施形態に係るタイヤ成形金型の内面図である。図7は、本実施形態に係るタイヤ成形金型の拡大内面図である。
以下の説明において、タイヤ径方向、タイヤ周方向、タイヤ幅方向、タイヤ赤道面CLは、上述した空気入りタイヤ1に準ずる。
タイヤ成形金型101は、上述した空気入りタイヤ1を加硫成形するためのものである。図4および図5に示すように、タイヤ成形金型101は、金型本体として、セクタ101A、サイドプレート101Bと、ビードリング101Cとにより構成されている。
セクタ101Aは、空気入りタイヤ1のトレッド部2を成形するための金型であり、円環がタイヤ周方向に複数(例えば、図4に示す8個以上)で等分割され、合わせ部101Dにおいて相互に突き合わされる分割金型として構成されている。セクタ101Aは、図5および図6に示すように、その内面に、トレッド面21を形成するための基準面121を有する。基準面121は、タイヤ周方向に沿って延在し、タイヤ幅方向に複数(本実施の形態では4本)並ぶ主突出部122が設けられている。主突出部122は、主溝22をトレッド部2に形成するためのものである。そして、基準面121は、これら複数の主突出部122により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行な凹部123が複数形成されている。また、基準面121は、各凹部123において、タイヤ周方向(主突出部122)に交差して延在する副突出部124が設けられている。副突出部124は、副溝24をトレッド部2に形成するためのものであり、その突出幅が1mm以上のものである。凹部123は、副突出部124によってタイヤ周方向で複数に分けられている。副突出部124は、主突出部122に連通している形態、または主突出部122に連通していない形態がある。
また、セクタ101Aは、空気入りタイヤ1の加硫成形時の空気抜きのためのベント110を有する。ベント110は、セクタ101Aをタイヤ径方向で貫通して設けられている。このベント110により上述した空気入りタイヤ1のスピュー10が形成される。
サイドプレート101Bは、空気入りタイヤ1のショルダー部3およびサイドウォール部4を成形するための金型である。サイドプレート101Bは、各セクタ101Aに対して合わせ部101Eにおいて相互に突き合わされる分割金型として構成されている。また、ビードリング101C(図5では省略)は、空気入りタイヤ1のビード部5を成形するための金型である。
なお、図6において、二点鎖線は、ピッチバリエーションの各ピッチを示している。ここでは、主突出部122で区画された1つの凹部123に設けられる副突出部124が1ピッチに1本配置されている例を示しているが、1ピッチに副突出部124が複数配置されていてもよい。そして、副突出部124は、大きい(タイヤ周方向の範囲が長い)ピッチほど突出幅D’が大きくなるように設定されている。なお、突出幅D’は、副突出部124の延在方向に交差する方向の差し渡しの距離である。図6では、突出幅D’は、下側から上側に向かって大きくなっている。このように、ピッチの大きさに対応して副突出部124の突出幅D’を設定することで、タイヤ成形金型101において副突出部124を成形する際のゴムの押し込まれ量が各ピッチの大きさに応じて変わるため、成形される空気入りタイヤ1において、各ピッチにおける陸部23の副溝24の溝下でのトレッド厚みがタイヤ周方向で均一化される傾向となり、振動特性の向上に寄与することができる。なお、副突出部124の突出幅D’は、1つの副突出部124の延在方向における平均とする。
このようなタイヤ成形金型101において、ベント110は、図6に示すように、各副突出部124に対し、各副突出部124が基準面121に繋がる基端の周縁から各副突出部124の突出幅D’の500%の距離の範囲(図6中破線で示す)P’内に同数形成されている。範囲P’内以外にベント110が配置されている場合や、範囲P’内以外にベント110が配置されていない場合を含む。また、ベント110は、各副突出部124間でタイヤ周方向に並んで設けられている。範囲P’内以外にベント110が配置されている場合は、範囲P’内のベント110と共にタイヤ周方向に並んで設けられる。また、範囲P’をなす副突出部124の突出幅D’が大きいほど、当該範囲P’内のベント110の断面積S’がベント110のタイヤ周方向寸法L’を変えて大きく設定されている。即ち、副突出部124の突出幅D’の大きさに応じてベント110のタイヤ周方向寸法L’を変えてベント110の断面積S’の大きさが設定され、副突出部124の突出幅D’が他の副突出部124と比較して大きければ、当該副突出部124の範囲P’内のベント110の断面積S’が他のベント110と比較して大きくなり、逆に、副突出部124の突出幅D’が他の副突出部124と比較して小さければ、当該副突出部124の範囲P’内のベント110の断面積S’が他のベント110と比較して小さくなる。また、範囲P’内の全てのベント110が、この規定となる。なお、ベント110がタイヤ周方向に並んで設けられているとは、タイヤ周方向で各ベント110の少なくとも一部が重なる形態を含み、好ましくは図6および図7に一点鎖線で示すタイヤ周方向上にベント110のタイヤ幅方向寸法W’の中心が配置される形態である。
このように構成されたタイヤ成形金型101によれば、副突出部124の突出幅D’が大きいほど、当該副突出部124の範囲P’内に配置されたベント110の断面積S’が大きく形成されていることで、副突出部124の突出幅D’が大きいほど、ベント110の断面積S’が大きくゴムの排出量が大きくなる。このため、タイヤ成形金型101において副溝24を成形する際のゴムの押し込まれ量に応じてゴムの排出量が変わるため、副溝24を成形する際のゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上する。この結果、副突出部124がなす副溝24の溝下のトレッド厚みをより均一化することができ、空気入りタイヤ1のタイヤ周方向での振動特性の向上効果を顕著に得ることができる。なお、本実施形態では、各副突出部124の突出高さ(タイヤ径方向寸法)を一様として突出幅D’によりゴムの押し込まれ量を調整しており、この突出幅D’を基準にベント110の断面積S’を設定している。その他、各副突出部124の断面積(1つの副突出部124の延在方向における平均の断面積)によりゴムの押し込まれ量を調整し、この断面積を基準にベント110の断面積S’を設定してもよい。つまり、副突出部124の断面積が大きいほど、当該副突出部124の範囲P’内に配置されたベント110の断面積S’を大きく形成する。さらに、各副突出部124の容積によりゴムの押し込まれ量を調整し、この容積を基準にベント110の断面積S’を設定してもよい。つまり、副突出部124の容積が大きいほど、当該副突出部124の範囲P’内に配置されたベント110の断面積S’を大きく形成する。
ここで、副突出部124の突出幅D’において、ピッチが最も小さい場合の最小突出幅D’minと、その他の突出幅D’etcとの関係D’etc/D’minは、1.2≦D’etc/D’min≦2.5の範囲とすることが、副突出部124がなす副溝24の溝下のトレッド厚みをより均一化するうえで好ましい。
しかも、本実施形態のタイヤ成形金型101によれば、ベント110が各副突出部124間でタイヤ周方向に並んで設けられているため、ベント110がなすスピュー10を切除するトリムにおいてタイヤ周方向に回転させながら切除するとき、カッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。しかも、ベント110のタイヤ周方向寸法を変えて断面積Sが設定されているため、ベント110がなすスピュー10のタイヤ幅方向寸法Wを同様にすることができ、これによってもカッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。
なお、ベント110が各副突出部124の範囲P’内に同数形成されていることでも、トリムの作業性を向上することができる。また、ベント110が各副突出部124の範囲P’内に同数形成されていると、各副溝24におけるゴムの押し込まれ量の設定を容易に行うことができる。
また、本実施形態のタイヤ成形金型101では、タイヤ周方向に並ぶベント110は、タイヤ幅方向寸法W’を一定に形成されることが好ましい。ここで、タイヤ幅方向寸法W’が一定とは、タイヤ周方向に並ぶベント110のタイヤ幅方向寸法W’が同一であることであり、タイヤ幅方向寸法W’aにおいて係数a=0.9〜1.1の誤差範囲を含む。
このタイヤ成形金型101によれば、タイヤ周方向に並ぶベント110がタイヤ幅方向寸法W’を一定に形成されることで、ベント110がなすスピュー10を切除するトリムにおいてタイヤ周方向に回転させながら切除するとき、カッタをタイヤ幅方向に動かすことがないため、トリムの作業性を向上することができる。
また、本実施形態のタイヤ成形金型101では、図7に示すように、任意の副突出部124の突出幅をD’1、任意の副突出部124の範囲P’内に設けられたベント110の断面積をS’1とする。また、任意の副突出部124にタイヤ周方向で隣接する副突出部124の突出幅をD’2、隣接する副突出部124の範囲P’内に設けられたベント110の断面積をS’2とする。そして、各副突出部124の突出幅D’1,D’2の関係がD’2<D’1であり、係数α’=1.0〜2.0とする。この場合、S’1/S’2=(D’1/D’2)α’の関係を満たす。なお、突出幅D’2は、任意の副突出部124が設けられたピッチにタイヤ周方向で隣接するピッチの副突出部124の突出幅としてもよい。
このタイヤ成形金型101によれば、タイヤ周方向に隣接する各副突出部124について、副突出部124の突出幅D’1,D’2とベント110の断面積S’1,S’2との関係を規定することで、副突出部124の突出幅に応じたベント110の断面積によりゴムの押し込まれ量の調整の精度が向上し、成形される空気入りタイヤ1の副溝24の各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。
また、本実施形態のタイヤ成形金型101では、ベント110は、タイヤ幅方向寸法W’が0.5mm以上3.0mm以下であり、タイヤ周方向寸法L’が0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることが好ましい。
ベント110のタイヤ幅方向寸法W’やタイヤ周方向寸法L’が0.5mm未満であるとゴムの排出量が足りず、ベント110のタイヤ幅方向寸法W’やタイヤ周方向寸法L’が3.0mmを超えるとゴムの排出量が多すぎるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度の向上効果が低くなる。従って、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで、ベント110のタイヤ幅方向寸法W’やタイヤ周方向寸法L’を0.5mm以上3.0mm以下の範囲とすることが好ましい。
なお、1つのベント110において、タイヤ幅方向寸法W’とタイヤ周方向寸法L’との関係L’/W’は、上記0.5mm以上3.0mm以下の範囲から0.17≦L’/W’≦6.0の範囲となる。また、好ましくは、1つのベント110において、L’≦W’とすることで、副突出部124の延在方向であるタイヤ幅方向に沿って断面形状が長くなるため、副突出部124がなす副溝24の溝下のトレッド厚みを均一化する調整がしやすくなる。また、ベント110の断面形状は、円形状、長円形状、楕円形状など円弧を外径とした形状であることが、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上するうえで好ましい。
また、本実施形態のタイヤ成形金型101では、図7に示すように、任意の副突出部124の突出幅をD’1、任意の副突出部124の範囲P’内に設けられたベント110の任意の副突出部124の周縁からの距離をX’1とする。また、任意の副突出部124にタイヤ周方向で隣接する副突出部124の突出幅をD’2、隣接する副突出部124の範囲P’内に設けられたベント110の隣接する副突出部124の周縁からの距離をX’2とする。そして、各副突出部124の突出幅D’1,D’2の関係がD’2<D’1であり、係数β’=0.5〜1.0とする。この場合、X’1/X’2=(D’1/D’2)β’の関係を満たす。なお、突出幅D’2は、任意の副突出部124が設けられたピッチにタイヤ周方向で隣接するピッチの副突出部124の突出幅としてもよい。
このタイヤ成形金型101によれば、タイヤ周方向に隣接する各副突出部124について、副突出部124の突出幅D’1,D’2とベント110の距離X’1,X’2との関係を規定することで、突出幅が大きい副突出部124に対応して設けられるベント110ほど副突出部124の近くに配置されるため、ゴムの押し込まれ量の調整の精度を向上し、成形される空気入りタイヤ1の副溝24の各溝下のトレッド厚みをさらに均一化することができる。なお、距離X’(X’1,X’2)は、1mm以上5mm未満であることが、欠けを防止し、ゴムの排出を適宜行ううえで好ましい。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、振動特性およびトリム作業性に関する性能試験が行われた(図8参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤ(試験タイヤ)をタイヤ成形金型により加硫した。
振動特性の評価方法は、上記試験タイヤを15×6Jの正規リムにリム組みし、空気圧180kPaの正規内圧を充填し、フォースバリエーション試験機により、正規加重を加えて、JASO C607の規格に基づくRFV(ラジアル・フォース・バリエーション:縦方向の剛性バランス)を測定した。そして、従来例の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、指数が小さいほど振動が小さく振動特性が優れていることを示している。
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
トリム作業性の評価方法は、上記試験タイヤをタイヤ周方向に回転させながらスピューをカッタにより切除する作業を同試験タイヤ10本行い、トリム作業の時間を計測し1本あたりのトリム作業時間を算出した。そして、従来例の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、指数が大きいほどトリム作業時間が短く優れていることを示している。
図8においては、従来例、比較例1、比較例2および実施例1〜実施例8の空気入りタイヤの副溝に係る範囲P内にあるスピューについて規定した。従来例、比較例1、比較例2および実施例1〜実施例8の空気入りタイヤは、スピューのタイヤ幅方向寸法Wが全て0.5mmである。従来例の空気入りタイヤは、スピューが各副溝間でタイヤ周方向に並列して設けられておらず副溝の溝幅に係わらずスピューの断面積は同一である。比較例1の空気入りタイヤは、スピューが各副溝間でタイヤ周方向に並列して設けられ副溝の溝幅が大きいほどスピューの断面積が小さくなっている。比較例2の空気入りタイヤは、スピューが各副溝間でタイヤ周方向に並列して設けられておらず副溝の溝幅が大きいほどスピューの断面積が大きくなっている。一方、実施例1〜実施例8の空気入りタイヤは、スピューが各副溝間でタイヤ周方向に並列して設けられ副溝の溝幅が大きいほどスピューの断面積が大きくなっている。また、実施例1〜実施例8の空気入りタイヤは、係数αが1.0〜2.0の範囲内である。また、実施例1〜実施例5の空気入りタイヤは、副溝からのスピューの距離が同一であるが、実施例6〜実施例8は距離の係数βが0.5〜1.0の範囲内である。
図8の試験結果に示すように、実施例1〜実施例8の空気入りタイヤは、振動特性が改善され、かつトリム作業性が改善されていることが分かる。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
21 トレッド面
22 主溝
23 陸部
24 副溝
10 スピュー
101 タイヤ成形金型
110 ベント
121 基準面
122 主突出部
123 凹部
124 副突出部

Claims (10)

  1. トレッド部に、タイヤ周方向に沿って延在しタイヤ幅方向に複数並ぶ主溝と、前記主溝により区画形成されてタイヤ周方向に沿って延在する複数の陸部と、前記陸部に対してタイヤ周方向に交差して延在する副溝と、前記陸部のトレッド面に形成されたスピューと、を備える空気入りタイヤにおいて、
    所定の前記陸部の各前記副溝に対し、各前記副溝の開口縁から各前記副溝の溝幅の500%の距離の範囲内に前記スピューが同数形成され、かつ各前記副溝間でタイヤ周方向に並んで設けられており、前記副溝の溝幅が大きいほど、前記スピューのタイヤ周方向寸法を変えて前記スピューの断面積を大きくすることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記タイヤ周方向に並ぶ前記スピューは、タイヤ幅方向寸法を一定に形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 任意の前記副溝の溝幅をD1、任意の前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの断面積をS1とし、任意の前記副溝にタイヤ周方向で隣接する前記副溝の溝幅をD2、隣接する前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの断面積をS2として、D2<D1、および係数α=1.0〜2.0とした場合、S1/S2=(D1/D2)αの関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記スピューは、タイヤ幅方向寸法Wが0.5mm以上3.0mm以下の範囲であり、タイヤ周方向寸法Lが0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  5. 任意の前記副溝の溝幅をD1、任意の前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの任意の前記副溝の開口縁からの距離をX1とし、任意の前記副溝にタイヤ周方向で隣接する前記副溝の溝幅をD2、隣接する前記副溝の前記範囲内に設けられた前記スピューの隣接する前記副溝の開口縁からの距離をX2として、D2<D1、および係数β=0.5〜1.0とした場合、X1/X2=(D1/D2)βの関係を満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  6. 金型本体におけるトレッド面を形成する基準面に突出してタイヤ周方向に沿って延在しタイヤ径方向に複数並ぶ主突出部と、前記主突出部により区画形成されてタイヤ周方向に沿って延在する複数の凹部と、前記凹部に対してタイヤ周方向に交差して延在する副突出部と、前記凹部の前記基準面から前記金型本体を貫通して設けられるベントと、を備えるタイヤ成形金型において、
    所定の前記凹部に各前記副突出部に対し、各前記副突出部の基端の周縁から各前記副突出部の突出幅の500%の距離の範囲内に前記ベントが同数形成され、かつ各前記副突出部間でタイヤ周方向に並んで設けられており、前記副突出部の突出幅が大きいほど、前記ベントのタイヤ周方向寸法を変えて前記ベントの断面積を大きくすることを特徴とするタイヤ成形金型。
  7. 前記タイヤ周方向に並ぶ前記ベントは、タイヤ幅方向寸法を一定に形成されることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ成形金型。
  8. 任意の前記副突出部の突出幅をD’1、任意の前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントの断面積をS’1とし、任意の前記副突出部にタイヤ周方向で隣接する前記副突出部の突出幅をD’2、隣接する前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントの断面積をS’2として、D’2<D’1、および係数α’=1.0〜2.0とした場合、S’1/S’2=(D’1/D’2)α’の関係を満たすことを特徴とする請求項6または7に記載のタイヤ成形金型。
  9. 前記ベントは、タイヤ幅方向寸法W’が0.5mm以上3.0mm以下の範囲であり、タイヤ周方向寸法L’が0.5mm以上3.0mm以下の範囲であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1つに記載のタイヤ成形金型。
  10. 任意の前記副突出部の突出幅をD’1、任意の前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントにおける任意の前記副突出部の基端縁からの距離をX’1とし、任意の前記副突出部にタイヤ周方向で隣接する前記副突出部の突出幅をD’2、隣接する前記副突出部の前記範囲内に設けられた前記ベントにおける隣接する前記副突出部の基端縁からの距離をX’2として、D’2<D’1、および係数β’=0.5〜1.0とした場合、X’1/X’2=(D’1/D’2)β’の関係を満たすことを特徴とする請求項6から9のいずれか1つに記載のタイヤ成形金型。
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