以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態では、ミストを噴霧する閉鎖空間がグローブボックスの内部空間である例について説明する。図1(a)は本実施形態に係るミスト噴霧装置1を示す正面図であり、図1(b)はミスト噴霧装置1を示す斜視図である。図1(a)及び図1(b)に示されるように、ミスト噴霧装置1は、直方体状の密閉容器2を備える。密閉容器2の内部空間は、外気から遮断された閉鎖空間Sとされており、閉鎖空間Sには、薬剤が含まれたミストMを噴霧する対象領域である作業領域Aが設けられる。
本実施形態において、ミストMは殺菌剤を含んでいる。作業領域Aには建材等の検体が配置される。作業領域Aに配置された検体にはミストMが噴霧され、ミスト噴霧装置1では、例えば、ミストMが噴霧された検体がどの程度傷むかが試験される。ミスト噴霧装置1は、医薬品工場等の建物で用いられる検体にミストMを噴霧し、ミストMに対する検体の劣化度合い等、ミストMに対する検体の耐性を試験する。ミストMは、例えば、殺菌剤として次亜塩素酸を含んでおり、次亜塩素酸は、安全性が高い殺菌剤として用いられる。なお、ミストMとしては、二酸化塩素等、次亜塩素酸以外のものを用いることも可能である。
密閉容器2は、上面2a、下面2b、第1側面2c、第1側面2cに対向する第2側面2d、第1側面2cに直交する第3側面2e、及び第3側面2eに対向する第4側面2fを有する。上面2a、下面2b、第1側面2c、第2側面2d、第3側面2e及び第4側面2fは、いずれも長方形状となっている。上面2aの面積は、第1側面2cの面積よりも小さく且つ第3側面2eの面積よりも大きい。
密閉容器2の第1側面2cには、密閉容器2の内部に挿入されるグローブが取り付けられた円形のグローブ取付穴Hが一対に設けられている。なお、図1(b)ではグローブ取付穴Hの図示を省略している。各グローブ取付穴Hに取り付けられた各グローブに作業者が手を挿入することにより、密閉容器2の内部の検体をグローブを介して作業者が触れるようになっている。
密閉容器2の第3側面2eには、ミストMが流入するミスト流入部3と、ドライエアD(乾燥空気)が流入するドライエア流入部4(乾燥空気流入部)と、ファン5(送風手段)が配置されている。ミスト流入部3及びドライエア流入部4は、第3側面2eの上端部に配置されている。ミスト流入部3及びドライエア流入部4は、第3側面2eにおいて左右に並んで配置されており、例えば左右対称に配置される。
ファン5は、下面2bよりも上方に配置されており、ファン5の配置位置は、下面2bから離間している。ファン5は、例えば上下に貫通する空洞を備えた架台の上に配置されることにより、下面2bから離間している。ファン5は2台設けられており、例えば2台のファン5は第3側面2eにおいて左右対称に配置される。2台のファン5のうち、一方のファン5(ミスト送風手段)はミスト流入部3の下方に設けられており、他方のファン5(乾燥空気送風手段)はドライエア流入部4の下方に設けられている。すなわち、第3側面2eにおいて、一方のファン5はミスト流入部3の鉛直下方に配置され、他方のファン5はドライエア流入部4の鉛直下方に配置される。各ファン5は、下方からエアを吸い上げて上方に送風を行う。
上面2aには、密閉容器2の内部の湿度及び温度を測定する温湿度センサ6が配置される。なお、温湿度センサ6に代えて、湿度を測定する湿度センサ、又は温度を測定する温度センサを配置してもよい。温湿度センサ6は、例えば、上面2aに形成された穴に通されて当該穴にシール部材が充填された状態で上面2aに固定される。このシール部材により閉鎖空間Sの気密性は確保されている。
温湿度センサ6は、グローブに手を入れた作業者から見て(第1側面2c側から見て)右側且つ奥側に配置されており、これにより作業者の右手が届きやすい配置とされている。なお、以下では、図1(b)の矢印に示されるように、グローブに手を入れた作業者から見たときの前方向、後方向、右方向、左方向、上方向及び下方向を、単に前、後、右、左、上及び下と称することがある。
第4側面2fには、流出部7(ミスト流出部)とパスボックス8が配置されている。流出部7は、第4側面2fの下端部に配置されている。流出部7は第4側面2fの2箇所に配置されている。例えば、前後方向における2つの流出部7の位置は、前後方向におけるミスト流入部3及びドライエア流入部4の位置と同一である。
パスボックス8は、閉鎖空間Sの気密を確保しつつ、外部から閉鎖空間Sの作業領域Aに検体を受け渡すために設けられる。パスボックス8は、2つの流出部7の上方に配置されている。パスボックス8は、密閉容器2に固定されており、密閉容器2の外側に位置する第1扉8aと、第1扉8aの内側に位置する第2扉8bとを備える。第1扉8aは、その外側から施錠が可能となっており、第2扉8bは、その内側から施錠が可能となっている。よって、外から第1扉8aを開けてパスボックス8の内部に検体を置いた後に、作業者がグローブに手を入れて内側から第2扉8bを開けることにより、検体を作業領域Aに移動可能である。パスボックス8は、下面2bよりも高い位置に設けられており、更に作業者から見て右側に設けられるので、作業者の手が届きやすい配置とされている。
下面2bには、前述した作業領域Aが配置されている。作業領域Aは、ミストMを噴霧する検体が配置される領域であり、所定の条件下で作業領域Aに配置された検体にミストMが噴霧されることによって試験が行われる。作業領域Aは、例えば長方形状とされており、グローブに手を入れた作業者から見て右側且つ奥側に配置されている。作業領域Aをこのような配置とすることにより、作業者の手を作業領域Aに届きやすくすることが可能となっている。
図2(a)及び図2(b)は密閉容器2の外部の構成を示しており、図2(a)はミスト噴霧装置1におけるミストMの流れを示す図であり、図2(b)はミスト噴霧装置1におけるドライエアDの流れを示す図である。図2(a)及び図2(b)では、パスボックス8等、一部の図示を省略している。図2(a)及び図2(b)に示されるように、ミスト噴霧装置1は、流出部7から延びる排気路に設けられたポンプ9と、温湿度センサ6に電気的に接続された調節器10(制御部)とを更に備えている。
ポンプ9は、2つの流出部7のそれぞれからミストM及びドライエアDを吸引する。調節器10は、温湿度センサ6によって測定された湿度及び温度に応じて、ミスト流入部3からのミストMの流入、及びドライエア流入部4からのドライエアDの流入を制御する。具体的には、ミスト流入部3にはミストMを噴出する噴霧器3aが設けられており、調節器10は、温湿度センサ6で得られたデータに応じた噴霧器3aへの電気信号の出力を行うことにより、閉鎖空間Sに流入するミストMを制御する。
更に、ドライエア流入部4には、開閉してドライエアDの流入を制御する電磁弁4aが設けられており、調節器10は、温湿度センサ6で得られたデータに応じた電磁弁4aへの電気信号の出力を行うことにより、閉鎖空間Sに流入するドライエアDを制御する。このように、ミスト噴霧装置1では、ミストMの流入とドライエアDの流入が制御されるので、閉鎖空間Sにおける適切な湿度管理を実現させることが可能である。ミスト噴霧装置1では、例えば、ミストMの流入によって閉鎖空間Sにおける湿度が高まり、当該湿度が所定値以上になったことを温湿度センサ6が検出したときに、ドライエアDの流入を行って閉鎖空間Sにおける湿度を低くする制御を行う。
次に、ミスト噴霧装置1を用いて閉鎖空間S内でミストMを噴霧するミスト噴霧方法について説明する。以下では、作業領域Aに検体を置き、当該検体にミストMを当てて試験を行う方法の一例について説明する。まず、ミスト流入部3から閉鎖空間SへのミストMの流入、及びドライエア流入部4から閉鎖空間SへのドライエアDの流入を開始すると共に、2台のファン5を稼動させる(ミストを流入させる工程)。
このとき、上面2aに沿ってミストM及びドライエアDが流入すると共に、各ファン5から密閉容器2の内壁面2gに沿って送風が行われる。ミストM及びドライエアDは上面2aに沿って右方向に流れると共に、ファン5からの空気は、上方に流れてミストM及びドライエアDのそれぞれに合流する。そして、ミストM、ドライエアD、及びファン5からの空気(以下、循環流Cとする)は、上面2aに沿って右方向に流れて第4側面2fに到達し、その後、第4側面2fに沿って下方に流れる。
第4側面2fに沿って下方に流れる循環流Cは、下面2bにおいて分岐する。循環流Cの一部は流出部7から排出され、残部は下面2bに沿って左方向に流れる。流出部7の左方向には作業領域Aが内壁面2gに沿って配置されているので、上記左方向への循環流Cは作業領域Aに流される(循環流Cを流す工程)。このとき、作業領域Aには、例えば左方向に0.6cm/secの循環流Cが流れる。作業領域Aを通過した循環流Cは、下面2bに沿って更に左方向に流れて第3側面2eに到達し、その後、第3側面2eに沿って上方に流れてファン5に吸引される。以上のように、ファン5は、内壁面2gに沿って循環する循環流Cを形成する。
以上のように、閉鎖空間Sにおいて循環流Cを形成し、密閉容器2内の湿度が一定になった後には、作業者は、パスボックス8の第1扉8aを開けて外からパスボックス8の内部に検体を入れ、その後第1扉8aを施錠する。次に、作業者がグローブに手を入れ、内側から第2扉8bを開けて、検体をパスボックス8から取り出して作業領域Aに配置する。その後、第2扉8bを内側から施錠して、閉鎖空間Sの気密性が確保されていることを確認し、検体に対するミストMの曝露を所定時間行う。所定時間が経過した後には、パスボックス8を経由して検体を作業領域Aから取り出し、その後、検体に対してミストMの不活性化処理を行って、検体における反応を停止させて試験は終了する。
次に、ミスト噴霧装置1及びミスト噴霧方法によって得られる作用効果について説明する。ミスト噴霧装置1では、ファン5が送風を行うことにより、閉鎖空間Sの内壁面2gに沿って流れる循環流Cを形成する。このように、ファン5が閉鎖空間Sの内壁面2gに沿ったミストMの循環流Cを形成することにより、閉鎖空間S内におけるミストMの供給量の偏りを低減させることができる。従って、閉鎖空間S内においてミストMの供給量がばらつくという問題を抑制できる。また、内壁面2gに沿ったミストMの循環流Cを形成することにより、内壁面2gへのミストMの付着を抑制することもできるので、閉鎖空間S内に生じる液溜まりを抑制することもできる。従って、閉鎖空間S内の作業領域AにミストMを均一に噴霧させることができる。
また、作業領域Aは、流出部7の循環流Cの下流側で内壁面2gに沿って配置されている。従って、ミストMを噴霧する作業領域Aが内壁面2gに沿って配置されているので、ミストMの循環流Cは、作業領域Aに沿って流れることとなる。よって、作業領域AにミストMを均一に噴霧させることができる。また、作業領域Aは流出部7の循環流Cの下流側に配置されているので、ファン5によって形成されたミストMの循環流Cは、流出部7から流出すると共に作業領域Aに向かって移動する。よって、作業領域Aに循環流Cを緩やかに当てることができるので、作業領域AへのミストMの噴霧を安定して行うことができる。
また、ファン5は、作業領域Aの循環流Cの下流側且つミスト流入部3の循環流Cの上流側、に配置されている。従って、ファン5は、作業領域Aの循環流Cの下流側且つミスト流入部3の循環流Cの上流側に配置されているので、作業領域Aを通った循環流Cを吸い込むと共にミスト流入部3に向かって送風を行う。このようにファン5がミスト流入部3に向かって送風を行うことにより、ミスト流入部3から流入したミストMはスムーズに循環流Cに乗せられる。従って、ミストMによる循環流Cを効率よく形成すると共に循環流Cを安定させることができる。
また、内壁面2gは、閉鎖空間Sの上端を構成する上面2aを含んでおり、ミスト流入部3からは、上面2aに沿ってミストMが流入する。このように、ミスト流入部3からのミストMは上面2aに沿って流入するので、流入したミストMに上方からの気圧がかかりにくくなり、上面2aに対するミストMの付着噴流が生じる。従って、上面2aに引き寄せられるコアンダ効果によりミストMの付着噴流が上面2aに沿って流れるので、循環流Cが途中で下がりにくくすることができる。すなわち、循環流Cが内壁面2gに沿って流れやすくなるので、循環流Cのショートサーキットをより確実に抑制できる。よって、流入したミストMを上面2aに沿って流すことにより、ミストMの循環流Cをより確実に維持することができる。
また、内壁面2gは、閉鎖空間Sの下端を構成する下面2bを含んでおり、ファン5は、下面2bよりも上方に配置されている。よって、ファン5は、下面2bから上昇した循環流Cを吸い込むと共に上方に送風を行うことが可能である。このように、ファン5を下面2bから離間して配置することにより、ファン5が下面2bに配置された場合と比較して、ミストMの循環流Cをより確実に維持することができる。
また、ミスト流入部3は、ファン5の上方に配置されており、ファン5は、ミスト流入部3から流入したミストMに向かって送風を行う。従って、ファン5が上方に送風を行ってミストMの循環流Cを形成するので、上方以外の方向に送風を行う場合と比較して、内壁面2gにミストMを付着させにくくすることができる。よって、ミストMの液溜まりをより確実に抑制することができる。
また、ミスト噴霧装置1は、閉鎖空間S内にドライエアDが流入するドライエア流入部4を備えているので、ドライエアDの流入により閉鎖空間S内の湿度が高くなりすぎないようにすることができる。更に、ドライエア流入部4をミスト流入部3とは別に配置することにより、ミストMがドライエアDで分散することを抑制できるので、閉鎖空間SへのミストMの流入を安定させることができる。
前述したように、ミスト噴霧装置1では、閉鎖空間S内の作業領域AにミストMを均一に噴霧させることができる。具体的には、例えば図3に示されるように、ミスト噴霧装置1の下面2bにおけるミストMの噴霧量を均一に近づけることができる。図3は、下面2bにおけるミストMの量を塩素の検出器によって検出し、下面2bの中央奥側の部分におけるミストMの量を100として、下面2bの各部分に噴霧されたミストMの量を相対的に示している。下面2bの作業領域Aの場所は適宜変更することが可能であり、例えば、下面2bにおいてミストMが均一に噴霧されている領域を検出して作業領域Aとすることも可能である。このように作業領域Aを決定する方法については後述する。
また、閉鎖空間S内における湿度のコントロールを、ドライエアDを入れることで容易に行うことができ、閉鎖空間S内の湿度を容易に一定にすることができる。具体的には、例えば図4に示されるように、閉鎖空間Sの湿度を70%、閉鎖空間Sの温度を25℃に安定させることができ、ミスト噴霧装置1で行われる試験の環境として相応しい環境を提供することもできる。
また、ミスト噴霧装置1は、閉鎖空間S内の湿度及び温度を測定する温湿度センサ6を備えているので、閉鎖空間S内の湿度及び温度を把握することができる。更に、ミスト噴霧装置1は、温湿度センサ6によって測定された湿度及び温度に応じて、ミスト流入部3からのミストMの流入、及びドライエア流入部4からのドライエアDの流入を制御する調節器10を備える。従って、調節器10によってミストMの流入及びドライエアDの流入が制御されるので、閉鎖空間S内における湿度及び温度の制御を容易に行うことができる。このように、調節器10によってミストMの流入及びドライエアDの流入が制御されることにより、閉鎖空間S内にミストMの結露が生じたり、ミストMの液溜まりが生じたりする問題を根本から回避することができる。
また、ファン5は2つ設けられており、一方のファン5はミスト流入部3の下方に設けられており、他方のファン5はドライエア流入部4の下方に設けられている。よって、各ファン5がミスト流入部3及びドライエア流入部4に対応して設けられており、各ファン5からミスト流入部3及びドライエア流入部4のそれぞれに向かって送風が行われる。従って、各ファン5からの送風によってミストMの循環流CとドライエアDの循環流Cとの両方を形成することができる。よって、ミストM及びドライエアDの循環流Cを形成すると共に、閉鎖空間S内における湿度のコントロールを容易に行うことができる。
更に、本実施形態に係るミスト噴霧装置1では、閉鎖空間SにミストMを均一に噴霧することができ、閉鎖空間S内におけるミストMの量を定量的に把握することができる。また、ミスト流入部3からのミストMの流入時間に応じて、閉鎖空間S内におけるミストMの量を調整することができる。従って、閉鎖空間SへのミストMの量に対する検体の耐性を定量的に把握することができるので、ミストMを用いた検体の試験の信頼性を高めることができる。
図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、次亜塩素酸を含むミストMをミスト噴霧装置1に流入した試験から得られた各データを示すグラフである。図5(a)の横軸は、ミスト噴霧装置1の閉鎖空間Sに流入した次亜塩素酸イオンの量を示しており、図5(a)の縦軸は、作業領域Aの検体に噴霧された次亜塩素酸イオンの量を示している。図5(a)に示されるように、ミスト流入部3から流入した次亜塩素酸イオンの量が多いほど、検体に対する次亜塩素酸イオンの曝露量が大きいことが分かる。
図5(b)の横軸は閉鎖空間Sに流入した次亜塩素酸イオンの量を示しており、図5(b)の縦軸は作業領域Aに配置した菌の生残率を示している。図5(b)に示されるように、閉鎖空間Sへの次亜塩素酸イオンの流入量が多いほど、多くの菌が死滅していることが分かる。このように、ミスト噴霧装置1では、次亜塩素酸イオンの量の増加に応じて菌の数が減少しているので、定量的な試験を行うことができる。従って、従来のように、経験則で定性的に試験を行うことが不要となる。
図5(c)の横軸は、作業領域Aの検体に噴霧された次亜塩素酸イオンの量を示しており、図5(c)の縦軸は、作業領域Aに配置した菌の生残率を示している。図5(c)に示されるように、作業領域Aの検体に噴霧された次亜塩素酸イオンの量が多いほど、多くの菌が死滅していることが分かる。
以上のように、本実施形態に係るミスト噴霧装置1では、ミストMを用いた種々の試験を行うことができるが、更に、作業領域Aに配置した検体の劣化試験を加速度的に行うこともできる。すなわち、ミスト噴霧装置1では、作業領域A上の検体を短期間で高負荷のミストMに曝すことが可能である。従って、ミストMを用いた検体の劣化試験を短期間で行うことも可能である。また、ミスト流入部3からのミストMの流入(又はドライエア流入部4からのドライエアDの流入)を間欠的に行う間欠運転によって、閉鎖空間Sの湿度及び温度を調整することも可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、前述の実施形態では、ミスト噴霧装置1が直方体状の密閉容器2及び閉鎖空間Sを備える例について説明したが、密閉容器2及び閉鎖空間Sの形状は、直方体状に限定されず、適宜変更可能である。更に、パスボックス8の位置及び形状についても適宜変更可能である。
また、前述の実施形態では、ミスト流入部3及びドライエア流入部4が第3側面2eの上端部に配置され、流出部7が第4側面2fの下端部に配置される例について説明したが、ミスト流入部及びドライエア流出部の位置を変更することも可能である。例えば図6に示される変形例のミスト噴霧装置21のように、ミスト流入部23及びドライエア流入部24を奥側(グローブが設けられた面からより離れた位置)に配置してもよい。
図6(a)に示されるように、変形例に係るミスト噴霧装置21は、前述の密閉容器2と同様、直方体状の密閉容器22を備えており、密閉容器22は、上面22a、下面22b、ミスト流入部23とドライエア流入部24が設けられた側面22e、及び流出部27が設けられた側面22fを有する。密閉容器22の大きさについて、例えば、長さL1は780mm、幅L2は480mm、高さL3は480mmである。すなわち、密閉容器22における長さL1、幅L2及び高さL3の比は、例えば13:8:8とすることができる。以下では、ミスト流入部23、ドライエア流入部24、ファン5、流出部27及び作業領域Aの好ましい配置の一例について説明する。
図6(b)に示されるように、ミスト流入部23及びドライエア流入部24は、側面22eの奥側(グローブが設けられた面(以下、グローブ面とする)に対向する面側)に配置されている。グローブ面からミスト流入部23までの距離を距離B1、ミスト流入部23とドライエア流入部24との距離を距離B2、ドライエア流入部24からグローブ面に対向する面までの距離を距離B3、とすると、例えば、距離B1は280mm、距離B2は130mm、距離B3は70mmである。
上記のようにミスト流入部23及びドライエア流入部24をグローブ面から離れた位置に配置することにより、グローブに手を入れて行う操作の操作性を向上させることができる。また、ミスト流入部23及びドライエア流入部24は互いに近接して配置されることが好ましい。具体的には、ミスト流入部23とドライエア流入部24との距離B2は130mm以下であることが好ましい。この場合、ミスト流入部23から流入したミストM、及びドライエア流入部24から流入したドライエアDが確実に混合するので、循環流Cの湿度をより確実に制御することができる。
また、ドライエア流入部24からドライエアDが流入する方向は、作業領域Aに向いていることが好ましい。この場合、作業領域Aにおける湿度制御を直接的に且つ効率よく行うことができる。更に、ミスト流入部23からミストMが流入する方向は、ドライエア流入部24からドライエアDが流入する方向と略平行であることが好ましい。この場合、循環流Cにおいて、ミストMとドライエアDとが互いに阻害するのを抑制することができる。
ミスト流入部23及びドライエア流入部24は、例えば、管状に形成されており、ミスト流入部23及びドライエア流入部24の内径は共に22mmである。ミスト流入部23及びドライエア流入部24の高さ位置については、例えば、ミスト流入部23の高さとドライエア流入部24の高さとを同一にすることが可能である。ミスト流入部23及びドライエア流入部24に対する上面22aの高さを高さB4、ファン5に対するミスト流入部23及びドライエア流入部24の高さを高さB5、下面22bに対するファン5の高さを高さB6、とすると、高さB4は0mm〜90mm、高さB5は130mm〜425mm、高さB6は55mm〜240mmとすることが可能である。高さB4を小さくしてミスト流入部23及びドライエア流入部24を上面22aに近接させることにより、流入したミストM及びドライエアDの付着噴流が一層確実に形成される。
ミスト流入部23及びドライエア流入部24は、左右方向(長さL1方向)に沿って見たときに、作業領域Aの幅の範囲内に含まれる箇所に設けられることが好ましい。ミスト流入部23から流入したミストM、及びドライエア流入部24から流入したドライエアDは、上面22aに沿って作業領域Aの真上を進行することが好ましい。また、ミスト流入部23とドライエア流入部24との間の距離B2は、各流入部23,24の内径の6倍以下であることが好ましい(本実施形態では距離B2は130mm)。この場合、作業領域AにミストM及びドライエアDを一層確実且つ均一に供給させることができる。
また、下面22bからの各ファン5の高さB6を55mm以上とすることにより、下面22bから曲げられる循環流Cを一層確実にファン5に吸い込ませることができると共に、側面22eに沿った上昇流を発生させて内壁面に沿った循環流Cを形成できるので、循環流Cのショートサーキットを抑制することができる。よって、内壁面に沿ってミストMを進行させることにより、ミストMが作業領域Aに噴霧されずに流出部27から排出されることを抑制できる。更に、下面22bに対するファン5の高さを側面22e全体の高さの半分以下とすることにより、ファン5から上面22aに吹き付けられる空気の強さを抑えることができるので、上面22aでよりスムーズに循環流Cを形成することができる。
図6(c)に示されるように、2個の流出部27のそれぞれは、ミスト流入部23及びドライエア流入部24が設けられる側面22eに対向する側面22fに配置されて且つ下方(ミスト流入部23及びドライエア流入部24から遠く離れた箇所)に設けられることが好ましい。流出部27の内径は、例えば6mmであり、各流入部23,24の内径より小さいことが好ましい。これによりミストM及びドライエアDの過剰な流出を抑制できる。
下面22bに対する各流出部27の高さをそれぞれ高さB7,B8とすると、高さB7,B8の値は例えば40mm〜80mmである。このように、流出部27の高さを下面22bの高さよりも高くすることにより、結露等によるミストMの液溜まりによって流出部27が閉塞される懸念を確実に解消できる。このようにミスト噴霧装置21では流出部27が閉塞される懸念が無く、一定品質のミストMの供給及び循環が可能であるため、ミスト噴霧装置21(ミスト噴霧装置1)では、連続長時間の曝露試験を行うことが可能である。
また、グローブ面から一方の流出部27までの距離を距離B9、一方の流出部27から他方の流出部27までの距離を距離B10、他方の流出部27からグローブ面に対向する面までの距離を距離B11、とすると、例えば、距離B9,B11は65mm〜70mmであり、距離B10は340mm〜350mmである。
図7は、作業領域Aを決定する前段階で確定させる作業候補領域Rを示しており、例えば、この作業候補領域Rから図3に示される作業領域Aを決定する。図7に示されるように、作業候補領域Rは、下面22bの奥側(グローブ面に対向する面側)であって且つミスト流入部23及びドライエア流入部24から離れた側(流出部27側)に配置されている。グローブ面から作業候補領域Rまでの距離を距離B12、作業候補領域Rの幅を幅B13、作業候補領域Rからグローブ面に対向する面までの距離を距離B14、とすると、例えば、距離B12は180mm、幅B13は250mm〜300mm、距離B14は0mm〜50mmである。このように、作業候補領域R(作業領域A)を下面22bの奥側に配置することにより、グローブに手を通すことによる操作の操作性を向上させることができる。
また、ミスト流入部23及びドライエア流入部24から作業候補領域Rまでの距離を距離B15、作業候補領域Rの長さを長さB16、作業候補領域Rから流出部27までの距離を距離B17、とすると、例えば、距離B15は300mm、長さB16は430mm、距離B17は50mmである。このように、作業候補領域R(作業領域A)をミスト流入部23、ドライエア流入部24、及び流出部27が設けられた側面22e,22fから離して配置することにより、作業候補領域R(作業領域A)で一層水平な循環流Cを得ることができる。
次に、図7に示される作業候補領域Rから図3に示される作業領域Aを確定させる方法の例について説明する。この作業領域Aの確定は、例えば、ミスト噴霧装置21の内部に次亜塩素酸(ミストM)を噴霧して行う。作業候補領域Rは、奥行方向(短手方向)に6等分、横方向(長手方向)に9等分の領域に分けられて、分けられた各領域における次亜塩素酸の濃度が測定される。図3における領域Bは、次亜塩素酸の分散を検証した領域を示しており、ファン5や流出部27による気流撹乱が無い領域であって且つ水平方向に一定の緩やかなミストMが安定して供給される領域を示している。
更に、図3において、作業領域Aについては、上記で分けられた奥行6等分、横9等分の各領域のうち、奥行に関してはグローブ面に対向する面(奥側の面)から5つ目までの領域、横方向に関しては両端それぞれの2つの領域を除いた中央5つの領域、を作業領域Aとしている。この作業領域Aでは、中央奥側における次亜塩素酸の噴霧量を100としたときに100±10%の噴霧量となる範囲である。このようにミストMの噴霧量が均一に近い領域を作業領域Aとすることができる。
図6に示されるように、作業領域Aの位置はファン5の位置から離間していることが好ましい。この場合、ファン5の付近で気流の乱れが生じた場合であっても、この乱れを作業領域Aに届きにくくすることができる。具体的には、作業領域Aとファン5との距離は、下面22bからの各ファン5の高さB6の4倍以上であることが好ましい。すなわち、作業領域Aとファン5との距離は、240mm以上であることが好ましい。例えば、ファン5の大きさについては、ファン5の縦(長さL1方向)の長さは120mm、ファン5の横(幅L2方向)の長さは120mm、ファンの高さ(高さL3方向)の厚さは60mm、とすることができる。ファン5の口径は110mmとすることができる。そして、作業領域Aとファン5とは、ファン5の幅の2倍以上離すことが好ましい。
また、流出部27の位置は作業領域Aの位置から離間していることが好ましい。この場合、流出部27で局所的な気流の乱れが生じたとしても、この乱れを作業領域Aに影響しにくくすることができる。具体的には、作業領域Aと流出部27との距離は50mm以上であることが好ましい。
また、作業領域Aは、重力によってミストMが落下する方向に交差する面に沿って配置されることが好ましく、更には、重力によってミストMが落下する方向に直交する面に沿って配置されることが好ましい。このように作業領域Aを配置することによって、重力を利用した作業領域AへのミストMの均一な噴霧を実現させることができる。なお、作業領域Aを、重力によってミストMが落下する方向に平行な面に配置することも可能である。更に、作業領域Aは、ミスト流入部23からミストMが流入する方向(例えば、上面22a)に沿って配置されていてもよいし、循環流Cに沿って配置されていてもよい。この場合、作業領域AにミストMを確実に沿わせることができ、作業領域Aに均一にミストMを噴霧することができる。
以上のように作業領域Aの位置及び大きさは適宜定めることができるが、これは、ミスト流入部、ドライエア流入部及び流出部についても同様である。また、ミスト流入部、ドライエア流入部及び流出部の位置及び個数は、上記の例に限られず適宜変更可能である。更に、ドライエア流入部4,24については、省略することも可能である。
また、前述の実施形態では、ファン5が第3側面2eに配置される例について説明したが、ファン5の配置位置は、例えば下面2b等、第3側面2e以外としてもよい。また、ファン5の台数は、1台又は3台以上であってもよい。
また、ミスト噴霧装置1を湿度又は温度が制御されるチャンバー(環境試験室)に配置して、湿度又は温度の管理を当該チャンバーで行ってもよい。この場合、ドライエア流入部4、温湿度センサ6及び調節器10を不要とすることもできる。
また、前述の実施形態では、ミストを噴霧する閉鎖空間がグローブボックスの内部空間である例について説明したが、本発明に係るミスト噴霧装置及びミスト噴霧方法は、グローブボックス以外にも適用できる。すなわち、本発明は、閉鎖空間内の対象領域に、ミストを噴霧する対象である対象物を配置し、当該対象物にミストを噴霧させる装置であれば、他のものにも適用可能である。例えば、本発明は、施設の内部を閉鎖空間にすると共に当該閉鎖空間に噴霧対象物を配置し、この噴霧対象物にミストを噴霧する施設にも適用させることが可能である。