JP6750530B2 - イオンフィルタ、イオン検出装置及びイオンフィルタの製造方法 - Google Patents

イオンフィルタ、イオン検出装置及びイオンフィルタの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、イオンフィルタ、イオン検出装置及びイオンフィルタの製造方法に係り、更に詳しくは、イオンを選別することができるイオンフィルタ、該イオンフィルタを備えるイオン検出装置、及びイオンを選別することができるイオンフィルタの製造方法に関する。
気体や気化した化学物質を分析する方法の一つとして、電界非対称波形イオン移動度分光分析(Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometry :以下では、「FAIMS」ともいう)と呼ばれる方法がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
この方法は、イオン化された気体分子や化学物質(以下では、これらを総称して「化学物質等」ともいう)を、イオンフィルタに通して移動度の差によって選別し、検出器で検出することにより、該化学物質等を特定するものである。
近年、FAIMSに用いられる分析装置(以下では、「イオン検出装置」ともいう)に対して、小型化及び低消費電力化が要求されるようになった。
イオン検出装置の小型化及び低消費電力化には、イオンフィルタにおける電極の間隔及び電極の厚さを小さくすることが考えられる。
しかしながら、従来のイオン検出装置に用いられているイオンフィルタでは、耐久性や信頼性の低下を招くことなく、電極の間隔及び電極の厚さを小さくするのは困難であった。
本発明は、支持層と、前記支持層の上に積層された絶縁層と、前記絶縁層の上に積層され、積層方向に直交する面内において、互いの櫛歯が交互に噛み合うように対向して配置された2つの櫛歯電極を含む電極層とを有し、前記2つの櫛歯電極の隙間の少なくとも一部に、前記絶縁層及び前記支持層の一部が取り除かれ、前記積層方向にイオンが通過することができる流路を有し、前記2つの櫛歯電極における前記櫛歯は、一部が前記絶縁層と接しているイオンフィルタである。
本発明のイオンフィルタによれば、耐久性や信頼性の低下を招くことなく、電極の間隔及び電極の厚さを小さくすることができる。
一実施形態に係るイオン検出装置の概略構成図である。 イオンの移動度の電界強度依存性を説明するための図である。 イオンフィルタ部の電極間における3つのイオン(イオンA、イオンB、イオンC)の移動の軌跡を説明するための図(その1)である。 電極Aと電極Bとの間に発生させる電界波形を説明するための図である。 イオンフィルタ部の電極間における3つのイオン(イオンA、イオンB、イオンC)の移動の軌跡を説明するための図(その2)である。 一実施形態に係るイオンフィルタ部の斜視図である。 図7(A)〜図7(C)は、それぞれ比較例のイオンフィルタ部を説明するための図である。 図8(A)〜図8(C)は、それぞれ実施例1のイオンフィルタ部を説明するための図である。 図9(A)〜図9(C)は、それぞれ実施例2のイオンフィルタ部を説明するための図である。 図10(A)〜図10(C)は、それぞれ実施例3のイオンフィルタ部を説明するための図である。 図11(A)〜図11(C)は、それぞれ実施例4のイオンフィルタ部を説明するための図である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その1)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その2)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その3)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その4)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その5)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その6)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その7)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その8)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その9)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その10)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その11)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その12)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その13)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その14)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その15)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その16)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その17)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その18)である。 イオンフィルタ部の製造方法を説明するための図(その19)である。 対向する2つの櫛歯電極間に形成されるコンデンサを説明するための図である。 図32(A)は矩形信号を説明するための図であり、図32(B)は矩形信号が鈍った信号を説明するための図である。 図33(A)及び図33(B)は、それぞれ櫛歯電極と支持層との間のキャパシタンスを説明するための図(その1)である。 櫛歯電極と支持層と間のキャパシタンスを説明するための図(その2)である。 図35(A)〜図35(C)は、それぞれ具体例1を説明するための図である。 実施例4における櫛歯電極が支持層とコンデンサを構成する部分を説明するための図である。 具体例1における櫛歯電極が支持層とコンデンサを構成する部分を説明するための図である。 具体例1における3つの電極を説明するための図である。 図39(A)〜図39(C)は、それぞれ具体例2を説明するための図である。 具体例2における櫛歯電極が支持層とコンデンサを構成する部分を説明するための図である。 図41(A)〜図41(C)は、それぞれ具体例3を説明するための図である。 具体例3における櫛歯電極が支持層とコンデンサを構成する部分を説明するための図である。 図43(A)〜図43(C)は、それぞれ具体例4を説明するための図である。
「概要」
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るイオン検出装置10の概略構成が示されている。
このイオン検出装置10は、イオン発生部100、イオンフィルタ部200、検出部600、及び制御部900などを備えている。なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系を用い、被測定分子の進行方向を+Z方向とする。
イオン発生部100は、被測定分子をイオン化する。イオンフィルタ部200は、イオン発生部100からのイオンを選別する。検出部600は、イオンフィルタ部200で選別されたイオンを検出する。制御部900は、装置全体を制御する。
イオン検出装置10の基本的な検出原理について説明する。
イオンフィルタ部200は、対向して配置された2つの電極(電極A、電極B)を有している。
イオンは、電界Eの環境下では次の(1)式で示される移動速度Vで移動する。ここで、Kは、該イオンの移動度である。
V=K×E ……(1)
ところで、イオンの移動度には電界強度依存性がある。そして、この電界強度依存性は、イオンの種類によって異なっている。図2には、一例として、種類が異なる3つのイオン(イオンA、イオンB、イオンC)における移動度の電界強度依存性が示されている。なお、図2では、分かりやすくするため、各イオンの移動度が電界強度0で等しくなるように正規化されている。
3つのイオン(イオンA、イオンB、イオンC)の移動度は、電界強度が9kV/cm以下の低電界強度ではほぼ変化なしである。電界強度が約10kV/cmから増すにつれてイオンの種類固有の特性が移動度に現れる。イオンAの移動度は、電界強度が増加するに従って大きく増加し、Emaxで最大となる。イオンBの移動度は、イオンAよりも緩やかに増加する。イオンCの移動度は、緩やかに減少する。このように三者三様の特性を示している。イオンフィルタ部200は、低電界強度での移動度と高電界強度での移動度との違いを利用してイオンの選別を行う。
図3には、イオンフィルタ部200の電極間における3つのイオン(イオンA、イオンB、イオンC)の移動の軌跡が示されている。なお、ここでは、分かりやすくするため、便宜的に、電極A及び電極Bを導電体でできた平行平板としている。
電極Aと電極Bとの間に発生する電界の波形を非対称電界波形とすることによって、任意のイオン(図3では、イオンB)のみを検出部600に到達させることができる。
図4には、電極Aと電極Bとの間に発生させる電界波形の一例が示されている。この電界波形は、正の高電界(Emax)と負の低電界(Emin)を交互に繰り返している。そして、高電界の期間(t1)は低電界の期間(t2)よりも短く、t1とt2の比は1:3〜1:5である。このように電界波形は、上下に関して非対称である。この非対称電界波形は、時間平均電界が零であり、次の(2)式が成り立つように設定されている。
|Emax|×t1=|Emin|×t2 ……(2)
すなわち、図4における領域Aの面積と領域Bの面積が一致するように設定されている。
なお、以下では、次の(3)式に示されるように、|Emax|×t1の値、及び|Emin|×t2の値をβとする。
|Emax|×t1=|Emin|×t2=β ……(3)
ところで、高電界の期間(t1)に、イオンがY軸方向に関して移動する速度Vupは、次の(4)式で示される。ここで、K(Emax)は、高電界(Emax)のときのイオンの移動度である。
Vup=K(Emax)×|Emax| ……(4)
例えば、|Emax|が約10kV/cm以上の場合、3つのイオン(イオンA、イオンB、イオンC)では、イオン毎に移動度が異なる(図2参照)ので、3つのイオンの移動速度Vupは三者三様に異なる。すなわち、図5に示されるように、高電界の期間(t1)では、3つのイオンの移動軌跡の傾斜は互いに異なっている。
そして、高電界の期間(t1)に、イオンがY軸方向に関して移動した距離である変位yup(図5参照)は、次の(5)式で示される。
yup=Vup×t1 ……(5)
一方、低電界の期間(t2)に、イオンがY軸方向に関して移動する速度Vdownは、次の(6)式で示される。ここで、K(Emin)は、低電界(Emin)のときのイオンの移動度である。
Vdown=−K(Emin)×|Emin| ……(6)
例えば、|Emin|が約5kV/cm以下の場合、3つのイオン(イオンA、イオンB、イオンC)では、移動度がほぼ同一である(図2参照)ので、3つのイオンの移動速度Vdownはほぼ同一である。すなわち、図5に示されるように、低電界の期間(t2)では、3つのイオンの移動軌跡の傾斜はほぼ同じである。
そして、低電界の期間(t2)に、イオンがY軸方向に関して移動した距離である変位ydown(図5参照)は、次の(7)式で示される。
ydown=Vdown×t2 ……(7)
非対称電界波形の1周期(T)内では、イオンは、+Z方向に移動しつつ、期間t1の間に+Y方向に移動し、期間t2の間に−Y方向に移動する。
そこで、図5に示されるように、ジグザグ運動を繰り返しながら電極Aに向かうもの(イオンA)と、ジグザグ運動を繰り返しながら電極Bに向かうもの(イオンC)と、+Y方向の変位と−Y方向の変位とが釣り合い、検出部に向かうもの(イオンB)とに分かれることとなる。
ところで、非対称電界波形における1周期(T)での、イオンのY軸方向に関する平均変位ΔyRFは、次の(8)式で表される。
ΔyRF=yup+ydown
=K(Emax)×|Emax|×t1−K(Emin)×|Emin|×t2 ……(8)
そして、上記(8)式は、上記(3)式を用いて次の(9)式のように表すことができる。
ΔyRF=β{K(Emax)−K(min)} ……(9)
ここで、K(Emax)−K(min)をΔKとおくと、上記(9)式は次の(10)式のように表される。
ΔyRF=βΔK ……(10)
βは電極Aと電極Bとの間に印加される非対称電界で決まる定数である。そこで、非対称電界波形の1周期(T)あたりのイオンのY軸方向に関する変位は、低電界(Emin)での移動度と高電界(Emax)での移動度の差分であるΔKに依存する。
キャリアガスだけがイオンをZ軸方向に移送させると仮定すると、イオンが電極Aと電極Bとの間に滞在しているときの、該イオンのY軸方向に関する変位Yは、次の(11)式となる。ここで、tresは、イオンが電極Aと電極Bとの間に滞在している平均時間(平均イオン滞在時間)である。
Figure 0006750530
平均イオン滞在時間tresは、次の(12)式で表される。ここで、Aはイオンフィルタ部の断面積、LはZ軸方向に関する電極の長さ(電極深さ)(図5参照)、Qはキャリアガスの容積流量である。Vはイオンフィルタ部の容積(=AL)である。
Figure 0006750530
上記(11)式は、上記(12)式及び上記(3)を用いて、次の(13)式のように表すことができる。ここで、Dは非対称電界波形のデューティであり、D=t1/Tである。
Figure 0006750530
非対称電界波形における高電界Emax、イオンフィルタ部の容積V、非対称電界波形のデューティD、及びキャリアガスの容積流量Qについて、すべてのイオン種に対して同一の値を用いると、上記(13)式から、変位Yは、イオン種固有の低電界(Emin)での移動度と高電界(Emax)での移動度との差分ΔKに比例することがわかる。
なお、図5ではイオンBのみが、変位Yが最小であり、検出部600に到達することができるが、デューティDを変化させることによってイオンBとは異なるΔKを有するイオンを検出部600に到達させることができる。さらに、デューティDを小刻みに変化させていくことで、ΔKが異なる様々なイオンの有無や量を検出することができる。
また、イオン検出装置10において、ΔKが異なる様々なイオン種を検出する方法として、非対称電界波形に低強度のDC電界を重畳する方法がある。この方法によると、期間t1及び期間t2でのY軸方向に関する変位量を変化させることができる。そこで、電極A又は電極Bに接触せずに検出部600に到達することができるイオン種を連続的に変えることができる。なお、非対称電界波形に重畳するDC電界は補償電圧(CV:compensasion voltages)と呼ばれている。この方法では、補償電圧を掃引してΔKが異なる様々なイオン種の有無や量を検出する。
ところで、検出部600に到達する前に電極A又は電極Bに接触したイオンは、中和されてイオンでなくなり検出されない。
なお、制御部900は、従来のイオン検出装置における制御部とほぼ同様であるため、ここでは制御部900の動作についての詳細な説明は省略する。
「詳細」
イオン検出装置10は、電界強度が10kV/cm以上のときにイオン種によって移動度が異なることを利用してイオン検出を行なう。図2の例では、Emaxとして、20kV程度の電界強度を、イオンフィルタ部200における電極間に発生させることでイオン種を分別することになる。例えば、イオンフィルタ部200における電極間の距離を1mm(0.1cm)とすると、20kV/cmの電界を発生させるために電極間に印加される電圧Vmaxは、次の(14)式に示されるように2kVとなる。
Vmax=20kV/cm×0.1cm=2kV ……(14)
イオン検出装置を設備として設置場所を固定して使用する場合は、AC電源が使用できるので電圧や消費電力に関して問題なかった。また、設置場所が確保できれば多少外形が大きくても問題になることはなかった。しかし、従来のイオン検出装置を電池駆動とし、可搬性のある小型装置として実現しようとすると、数V〜十数Vの電池電源から交流電圧Vdとして数十V〜数百Vを発生させねばならず、昇圧回路や高耐圧部品の使用などが必要となり、機器の小型化と低消費電力化の障害となっていた。
低い電圧で同じ電界強度を実現するためには、イオンフィルタ部における電極の間隔を小さくすれば良い。例えば、電極の間隔を1μm(0.0001cm)にすると、2Vの電圧で20kV/cmの電界強度を実現することができる。
ところで、特許文献1では、電極をLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスで試作したことが記載されている。一方、本実施形態では、半導体製造で使用されているSOI(Silicon On Insulator)と呼ばれるウエハを使用して電極を実現している。
電極の間隔と電極深さLの比であるアスペクト比を一定に保ったまま電極の間隔を小さくすると、電極深さLも小さくなるが構わない。例えば、電極の間隔が100μm、電極深さLが1000μmのアスペクト比10の従来例に対して、電極の間隔を1μmにし、アスペクト比10を維持すると電極深さLは10μmとなり、少ないエッチング量で済むこととなる。これは半導体製造で使われるディープ反応性イオンエッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)技術でシリコンをエッチングするのに十分可能な値である。
また、電極として櫛歯電極を用い、2つの櫛歯電極を互いの櫛歯が交互に噛み合うように対向して配置する場合、ある決まったチップ面積においてイオンが通過する流路であるイオンチャネルの面積を大きくしようとすると、櫛歯の幅を可能な限り小さい値、例えば1μmにする必要がある。
従来のイオンフィルタ部では、例えば、櫛歯の長さを1000μmとすると、櫛歯一本のアスペクト比は1000となり、応力や衝撃に対して非常に脆弱な形状となる。この場合、製造の際に必要なレジスト塗布、エッチングや搬送、洗浄といった工程では、櫛歯に力が加わり、櫛歯が変形したり、隣の櫛歯と接触したり、接触したまま櫛歯同士が付着するいわゆるスティッキング現象が起こったり、最悪の場合は破壊されるおそれがあった。
また、動作時には非対称電界波形を発生させるためのパルス信号が電極に印加される。その際に静電気力によって櫛歯が振動することも考えられる。本実施形態は、以上の不都合点を解決するものである。
図6には、本発明の一実施形態に係るイオンフィルタ部200が示されている。イオンフィルタ部200は、SOI(Silicon On Insulator)と呼ばれるウエハ基板を用いて製造される。このウエハ基板は、シリコン(Si)を主たる材料とし、LSI(大規模集積回路)の製造にも用いられるものである。なお、図6では、パッド電極部分が省略されている。また、図6では、各櫛歯電極における櫛歯の数をそれぞれ3個としているが、これは煩雑さを避けるため及び説明をわかりやすくするためであり、3個に限定されるものではない。
イオンフィルタ部200は、電極層201、BOX(Buried Oxide)層202、支持層203を有している。電極層201は、シリコン(Si)にあらかじめ燐(P)やホウ素(B)などの不純物をドーピングして電気抵抗を低く(電気伝導率を高く)した層である。BOX層202は、シリコン酸化膜(SiO)でできている絶縁膜であり、電気抵抗が非常に高い層である。支持層203は、シリコン(Si)でできた層である。なお、支持層203は、電気抵抗の高い方が寄生キャパシタンスの影響が少なくなるので好ましい。
なお、ここでは、3つの層の積層方向をc軸方向とし、該c軸方向に直交する方向をa軸方向とし、c軸方向及びa軸方向のいずれにも直交する方向をb軸方向とする。
電極層201には、ab平面内において櫛歯電極211と櫛歯電極212とが分離して形成されている。なお、櫛歯電極211及び櫛歯電極212は、一部がBOX層202と接している。BOX層202は絶縁膜であるので、櫛歯電極211と櫛歯電極212は電気的に分離されていることになり、両者に異なる電圧を印加しても電流は流れない。BOX層202は支持層203に接しており、櫛歯電極211及び櫛歯電極212はその相対位置が固定されている。
なお、図6では隠れているが、櫛歯電極211と櫛歯電極212との隙間の一部に、その下のBOX層202と支持層203が取り除かれ、イオンがc軸方向に関して通過するための流路(イオンチャネル)が形成されている。
櫛歯電極211及び櫛歯電極212は、一方の櫛歯電極をGND(グラウンド)とし、他方の櫛歯電極に補償電圧(compensation voltages:CV)と呼ばれるDC電圧と分散電圧(dispersion fields:DF)と呼ばれる電圧パルスとが重畳された非対称電界波形信号が印加される。
<比較例>
比較例のイオンフィルタ部が図7(A)〜図7(C)に示されている。図7(A)は、比較例のイオンフィルタ部の平面図であり、図7(B)は、図7(A)におけるA−A断面図であり、図7(C)は、図7(A)におけるB−B断面図である。
比較例のイオンフィルタ部は、櫛歯電極211及び櫛歯電極212における櫛歯の先端部が自由に動ける状態にある。そのため、製造時の薬液の対流による応力、重力、物理的振動、あるいは非対称電界波形信号による静電力などによって、櫛歯が変形したり、振動したり、隣の櫛歯と接触したり、隣接する櫛歯同士が接触したまま付着するいわゆるスティッキング現象が起こったり、等の不都合が生じる。また、最悪の場合は、櫛歯電極が破壊されることもある。
<実施例1>
実施例1のイオンフィルタ部200が図8(A)〜図8(C)に示されている。図8(A)は、実施例1のイオンフィルタ部200の平面図であり、図8(B)は、図8(A)におけるA−A断面図であり、図8(C)は、図8(A)におけるB−B断面図である。
実施例1のイオンフィルタ部200は、櫛歯の先端部の−c側にBOX層202及び支持層203が残されていることに特徴を有している。この場合は、櫛歯の先端部が自由に動けないように固定される。そのため、上述した比較例における不都合を抑制することができる。なお、図8(A)における破線で囲まれた部分で、BOX層202と支持層203とが取り除かれている領域が、イオンが通過することができる流路(イオンチャネル)である。
<実施例2>
実施例2のイオンフィルタ部200が図9(A)〜図9(C)に示されている。図9(A)は、実施例2のイオンフィルタ部200の平面図であり、図9(B)は、図9(A)におけるA−A断面図であり、図9(C)は、図9(A)におけるB−B断面図である。
実施例2のイオンフィルタ部200は、櫛歯の先端部以外の任意の位置の−c側にBOX層202及び支持層203がリブ状に残されていることに特徴を有している。以下では、便宜上、リブ状に残されているBOX層202と支持層203からなる部分を「リブ部」ともいう。
この場合は、櫛歯がリブ部に固定されることとなり、櫛歯がたわんだり、振動するのを抑制することができる。そこで、上述した実施例1のイオンフィルタ部200と同様の効果を得ることができる。
なお、図9(A)及び図9(C)では、リブ部が、b軸方向に関して中央部に位置しているが、これに限定されるものではなく、任意の位置で良い。また、リブ部は、1本に限定されるものではなく、複数のリブ部があっても良い。
ところで、櫛歯の中央部がリブ部によって固定されていると、固定されてないときに比べて櫛歯のたわみ量は小さくなる。
次の(15)式は、両端固定梁の等分布荷重における中央部のたわみ量δcを表す式である。
Figure 0006750530
ここで、wは単位梁長さあたりの荷重であり、lは梁の長さであり、Eはヤング率であり、Iは断面2次モーメントである。
上記(15)式からわかるように、たわみ量δcは長さlの4乗に比例して増加する。つまり、実施例2のように櫛歯の中央部がリブ部で固定されていると、例えば重力による等分布荷重によるたわみ量が1/16に激減することになる。
また、例えば、櫛歯を長さ方向(ここでは、b軸方向)に関して3等分する位置にリブ部を2本設けると、たわみ量は1/81に減少する。
<実施例3>
実施例3のイオンフィルタ部200が図10(A)〜図10(C)に示されている。図10(A)は、実施例3のイオンフィルタ部200の平面図であり、図10(B)は、図10(A)におけるA−A断面図であり、図10(C)は、図10(A)におけるB−B断面図である。
実施例3のイオンフィルタ部200は、実施例1と実施例2を組み合わせたものであり、櫛歯の先端部に接するBOX層202と支持層203が残されており、かつ、櫛歯の先端部以外の任意の位置にリブ部を有している点に特徴を有している。
この場合は、櫛歯の先端部が自由に動けないように固定されるとともに、櫛歯がリブ部に固定されることとなり、櫛歯がたわんだり、振動するのを抑制することができる。そこで、上記実施例1及び実施例2のイオンフィルタ部200と同様の効果を得ることができる。
<実施例4>
実施例4のイオンフィルタ部200が図11(A)〜図11(C)に示されている。図11(A)は、実施例4のイオンフィルタ部200の平面図であり、図11(B)は、図11(A)におけるA−A断面図であり、図11(C)は、図11(A)におけるB−B断面図である。
実施例4のイオンフィルタ部200は、前述した実施例1のイオンフィルタ部200に対して、櫛歯の長さ方向に直交する方向(ここでは、a軸方向)に関して、BOX層202及び支持層203が取り除かれている領域の長さが小さい。この場合も、実施例1のイオンフィルタ部200と同様の効果を得ることができる。
なお、実施例4のイオンフィルタ部200と実施例1のイオンフィルタ部200との違いは、a軸方向に関して、両端に位置する櫛歯がBOX層202に接している点である。これにより、2つの櫛歯電極によって形成される複数の隙間のうちa軸方向における両端の隙間はBOX層202と支持層203とで塞がれ、イオンチャネルとして機能していない。
ところで、a軸方向における両端の隙間が、製造時に他の隙間とエッチングの進行速度が異なり、両端の隙間の幅や両端に位置する櫛歯の幅などが他の隙間及び櫛歯と異なるようにできあがる場合には、実施例4のイオンフィルタ部200が好ましい。
両端の隙間の幅や両端に位置する櫛歯の幅などが他の隙間及び櫛歯と異なると、イオンフィルタ部としての特性がばらつくおそれがあるからである。
また、電気的に考えると、a軸方向に関して最も端の電極は、櫛歯よりも幅広であり電気抵抗の値も異なる。そして、その違いによって高周波の非対称電界波形信号が印加された際に端から2番目の電極である櫛歯に左右両隣から作用される静電気力に差が生じ、物理的振動が生じるおそれがある場合も、実施例4のイオンフィルタ部200が好ましい。
実施例4のイオンフィルタ部200では、a軸方向における両端の隙間がイオンチャネルとして機能しないため、特性の安定性を向上させることができる。なお、イオンチャネルとして機能しない隙間の数を更に増やしても良い。
次に、イオンフィルタ部200の製造方法について説明する。
図12には、半導体製造に使用されるSOI(SOI:Silicon On Insulator)ウエハ基板の断面図が示されている。このウエハ基板は、電極層201、BOX層202、支持層203で構成されている。なお、実際は、支持層203は機械的強度を要求されるためBOX層202及び電極層201より厚みが大きいが、便宜上、小さく図示している。
(1)電極層201の上に、NSG(Nitride silicon glass)膜221を蒸着する(図13参照)。このNSG膜221は絶縁膜である。
(2)後工程で蒸着されるメタル層が電極層と電気的に接続されるように、フォトリソグラフィ工程によってNSG膜をエッチングしコンタクトホールを開ける(図14参照)。
(3)アルミニウムや金あるいは銅などの金属層222を蒸着する。
(4)フォトリソグラフィ工程によって、コンタクトホールを覆う部分を残して、金属層222をエッチングで除去する(図15参照)。残された金属層222は、電極層201に非対称電界波形信号を入力するための信号線が接続されるパッド電極となる。このパッド電極には、ワイヤボンディングがなされたり、バンプが取り付けられたりする。
(5)パッド電極の開口部周囲を保護するために窒化保護膜223を形成する(図16参照)。
(6)フォトレジスト224を全面に塗布する。
(7)櫛歯電極構造をパターニングする(図17参照)。櫛歯電極構造のパターン例が図18に示されている。
ここでは、チップを個別化するエッチング部、チップを個別に切り離す部分(チップ同士の境界、半導体チップでのいわゆるダイシング領域)もエッチングされるようにパターニングされている。櫛歯電極は、櫛歯同士の間隔が狭く、櫛歯の幅が薄いとダイシングの際の振動や流体から加わる圧力等によって容易に破壊されてしまう。そのため、本実施形態ではダイヤモンドブレードを使って削り出し、チップ化する従来の方法は採らず、ウエハ基板の裏表両面からエッチングすることによってチップ化する方法を採っている。
(8)電極層201をBOX層202までエッチングし、櫛歯電極間の隙間を作る(図19参照)。このとき、チップ境界部のチップを個別化するエッチング部も同時にエッチングで取り除く。
(9)粘着剤225を用いてサポートウエハ226を貼り付ける(図20参照)。本実施形態では、ウエハ基板の裏表両面からエッチングすることによってチップを個別化するので、ばらばらにならないようにサポートウエハ226を貼り付ける。
(10)支持層203にフォトレジスト227を塗布し、支持層203を取り除く部分をパターニングする(図21参照)。
なお、図21には、実施例1〜3の場合が示されている。また、櫛歯電極の反対側のフォトレジスト227について、−Z側から見たときの図が図22〜図25に示されている。図22は実施例1の場合であり、図23は実施例2の場合であり、図24は実施例3であり、図25は実施例4の場合である。
(11)支持層203をBOX層202までエッチングする(図26参照)。
(12)BOX層202をエッチングしてイオンチャネル部を貫通させる(図27参照)。このとき、同時にチップの境界部分も除去され、チップが個別化される。
(13)支持層側のフォトレジスト227を除去する(図28参照)。
(14)サポートウエハ226を取り除く(図29参照)。
(15)電極層側のフォトレジスト224を除去する(図30参照)。これによって、イオンフィルタ部200となる。
ところで、イオンフィルタ部200には、駆動回路(制御部900の一部)を介して非対称電界波形信号(電圧信号)が印加される。そして、この駆動回路は出力インピーダンスを有している。また、非対称電界波形信号が印加されるとイオンフィルタ部200には負荷容量であるキャパシタンスが生じる。なお、以下では、便宜上、イオンフィルタ部200で生じるキャパシタンスを「イオンフィルタのキャパシタンス」ともいう。
そこで、イオンフィルタ部200に印加される非対称電界波形信号の形状は、主に駆動回路の出力インピーダンスとイオンフィルタのキャパシタンスとによる時定数τで決定される。時定数τは、最終到達電圧の約63%に達するまでの時間であり、次の(16)式で表される。
τ(秒)=出力インピーダンス(Ω)×イオンフィルタのキャパシタンス(F) ……(16)
そのため、図32(A)に示される矩形波形状の非対称電界波形信号を印加しようとしても、一例として図32(B)に示されるように、立ち上がり時及び立ち下がり時が鈍った形状の非対称電界波形信号が印加される場合がある。
駆動回路の出力インピーダンスは、その大きさを完全に零にすることは困難であり、必ずある有限の値を有している。
ここで、イオンフィルタのキャパシタンスを、対向する櫛歯電極211と櫛歯電極212との間のイオンチャネルとなる部分で生じるキャパシタンスと、それ以外で生じるキャパシタンスとに分けて考える。
非対称電界波形信号が印加されると、対向する櫛歯電極211と櫛歯電極212との間のイオンチャネルとなる部分は、電気的にコンデンサとなる(図31参照)。このコンデンサにおける誘電体は、分析対象のイオン化された気体である。なお、以下では、便宜上、このコンデンサのキャパシタンスを「イオンチャネルのキャパシタンス」ともいう。そして、イオンチャネルのキャパシタンスは、櫛歯の数や2つの櫛歯電極の間隔等によって決まるある値を持っている。例えば、2つの櫛歯電極の間隔を小さく(狭く)すると、イオンチャネルのキャパシタンスは増加する。
ところで、前述した図5において、yup及びydownは、電極Aと電極Bの間隔Wに対して、yup<<W、ydown<<Wの関係が必要である。仮に、yup、ydownが間隔Wと等しいかそれ以上になると、イオン検出部600に到達すべきイオンも途中で電極Aあるいは電極Bに接触し、イオン検出部600に辿り付く前に電荷を放出してしまいイオンフィルタの機能をなさなくなる。
電極Aと電極Bとの間に印加される非対称電界波形信号の低電圧化を図るには、間隔Wを短くする必要がある。この場合に、yup<<W、ydown<<Wの関係を維持するには、非対称電界波形信号におけるパルスの周期Tを短くする必要がある。換言すると、非対称電界波形信号の周波数を高くする必要がある。
そして、非対称電界波形信号の周波数が高くなると、信号波形の鈍りに対するイオンチャネルのキャパシタンスの影響が大きくなる。極端になると、非対称電界波形信号における振幅が所望の電圧まで振幅されないおそれがある。図32(B)で説明すると、電界がEmaxに達する前に立ち下がってしまうおそれがある。
すなわち、イオン検出装置10の低電圧化を図るためには、イオンフィルタ部200における2つの櫛歯電極の間隔を短くすることが必要であるが、それは必然的に非対称電界波形信号の周波数を高くすること、及びイオンチャネルのキャパシタンスを増加させることになる。これらは、どちらもイオンフィルタ部200に印加される非対称電界波形信号に対し、立ち上がり及び立ち下がりに鈍りが生じるように作用する。
次に、イオンチャネル以外の部分で生じるキャパシタンスとして、櫛歯電極と支持層との間のキャパシタンスについて説明する。
図33(A)は、上記実施例4と同様なイオンフィルタ部200の平面図であり、図33(B)は、図33(A)におけるC−C断面図である。櫛歯電極211は、支持層203に対してキャパシタンスC1ができ上がっており、櫛歯電極212は、支持層203に対してキャパシタンスC2ができ上がっている。支持層203は、ある抵抗値R1を有してキャパシタンスC1とキャパシタンスC2に接続されており、櫛歯電極211と櫛歯電極212との間にキャパシタンス成分を発生させている。
これが、前記イオンチャネルのキャパシタンスに加算され、イオンフィルタ部200に印加される非対称電界波形信号における立ち上がり及び立ち下がりをさらに鈍らせる原因となる。イオンチャネルのキャパシタンスでは誘電体が気体であるので比誘電率はほぼ1であるが、キャパシタンスC1及びキャパシタンスC2では誘電体となるBOX層202がシリコン酸化膜(SiO)であり、その比誘電率は約4である。しかも、BOX層202は通常0.5μm以下という薄い膜であるため、イオンチャネル以外の部分で発生するキャパシタンスは大きいものとなってしまう。
ところで、2枚の電極間のキャパシタンスC(F)は次の(17)式で表される。ここで、εは真空の誘電率、すなわち8.8542×10−12(m−3kg−1)であり、εは比誘電率(空気:約1、SiO:約4)であり、Sは電極の面積(m)であり、dは電極間の距離(m)である。
C=ε×ε×S/d ……(17)
イオンフィルタ部200では、櫛歯電極211及び櫛歯電極212の一方はGNDに接続され、他方に非対称電界波形信号が入力される。図34には、櫛歯電極211がGNDに接続されている例が示されている。
また、支持層203が電気的にどこにも接続されず、いわゆるフローティング状態であれば、イオンによる電荷が蓄積し高電圧となるおそれがある。そのため、図34に示されるように、支持層203は通常GNDに接続されている。
図34の例では、櫛歯電極212と支持層203との間にキャパシタンスC3が生じる。そして、櫛歯電極212と支持層203とが向かい合っている面の面積を小さくすることによって、キャパシタンスC3を小さくすることができる。すなわち、イオンチャネル以外の部分で生じるキャパシタンスを減らすことができる。なお、櫛歯電極211は支持層203と同じGNDに接続されているので、櫛歯電極211と支持層203との間に生じるキャパシタンスは問題にはならない。
そこで、イオンフィルタ部200に印加される非対称電界波形信号の鈍りが大きくて無視できない場合には、イオンチャネル以外の部分で生じるキャパシタンスを減らすのが好ましい。以下、この具体例について説明する。
<具体例1>
具体例1のイオンフィルタ部200が図35(A)〜図35(C)に示されている。図35(A)は、具体例1のイオンフィルタ部200の平面図であり、図35(B)は、図35(A)におけるA−A断面図であり、図35(C)は、図35(A)におけるB−B断面図である。
具体例1のイオンフィルタ部200では、櫛歯電極211及び櫛歯電極212への配線を最小限残して電極層201をエッチングしている。すなわち、櫛歯電極211及び櫛歯電極212を電極層201の周辺部と電気的に分離し、櫛歯電極211及び櫛歯電極212の面積を最小限にしている。なお、図35(A)における符号301は、櫛歯電極211用の電極パッドであり、符号302は、櫛歯電極212用の電極パッドである。各電極パッドは、ワイヤボンディングやプローブピンを接触させるために設けられているが、この部分の面積も必要最小限の面積に留めるのが好ましい。
図36には、前述した実施例4において櫛歯電極212が支持層203とコンデンサを構成する部分が斜めのハッチングで示されている。また、図37には、具体例1において櫛歯電極212が支持層203とコンデンサを構成する部分が斜めのハッチングで示されている。図36と図37を比較すると、斜めのハッチング部分の面積が、具体例1のほうが実施例4よりも小さい。同様に、櫛歯電極211が支持層203とコンデンサを構成する部分の面積も、具体例1のほうが実施例4よりも小さい。すなわち、具体例1のイオンフィルタ部200は、前述した実施例4のイオンフィルタ部200よりも、イオンチャネル以外の部分で生じるキャパシタンスを小さくすることができる。
イオンフィルタ部200では、櫛歯電極211及び櫛歯電極212の一方はGNDに接続され、他方に非対称電界波形信号が入力される。図38には、具体例1のイオンフィルタ部200において、櫛歯電極211がGNDに接続され、櫛歯電極212に非対称電界波形信号が入力される場合が示されている。なお、逆に櫛歯電極212がGNDに接続され、櫛歯電極211に非対称電界波形信号が入力されても良い。
具体例1のイオンフィルタ部200では、電極層201は、その周辺部に、櫛歯電極211及び櫛歯電極212とは電気的に分離されているリング状の額縁のような部分(以下では、「電極213」ともいう)を有している。この電極213を仮にどこにも接続させずフローティング状態にしておくと、イオン検出時に電荷がチャージされ高電圧になってイオンフィルタの機能を損ねる可能性があるので、電極213はGNDに接続する(図38参照)。
<具体例2>
具体例2のイオンフィルタ部200が図39(A)〜図39(C)に示されている。図39(A)は、具体例2のイオンフィルタ部200の平面図であり、図39(B)は、図39(A)におけるA−A断面図であり、図39(C)は、図39(A)におけるB−B断面図である。
具体例2のイオンフィルタ部200では、図40に示されるように、櫛歯電極212に非対称電界波形信号が入力され、櫛歯電極212はGNDに接続されている。
具体例2のイオンフィルタ部200では、非対称電界波形信号が入力される櫛歯電極212の面積を小さくしている。そして、櫛歯電極211は、前記具体例1のイオンフィルタ部200における電極213と一体化されている。
また、図40には、図39(A)において櫛歯電極212が支持層203とコンデンサを構成する部分が斜めのハッチングで示されている。斜めのハッチング部分の面積は、前記具体例1のイオンフィルタ部200と同様に小さくなっている。一方、櫛歯電極211に関しては、特に支持層203との間に発生するキャパシタンスを小さくする工夫は行なわれてはいない。
<具体例3>
具体例3のイオンフィルタ部200が図41(A)〜図41(C)に示されている。図41(A)は、具体例3のイオンフィルタ部200の平面図であり、図41(B)は、図41(A)におけるA−A断面図であり、図41(C)は、図41(A)におけるB−B断面図である。
具体例3のイオンフィルタ部200では、図42に示されるように、櫛歯電極211に非対称電界波形信号が入力され、櫛歯電極212はGNDに接続されている。
具体例3のイオンフィルタ部200では、非対称電界波形信号が入力される櫛歯電極211の面積を小さくしている。そして、櫛歯電極212は、前記具体例1のイオンフィルタ部200における電極213と一体化されている。
また、図42には、図41(A)において櫛歯電極211が支持層203とコンデンサを構成する部分が斜めのハッチングで示されている。斜めのハッチング部分の面積は、前記具体例1のイオンフィルタ部200と同様に小さくなっている。一方、櫛歯電極212に関しては、特に支持層203との間に発生するキャパシタンスを小さくする工夫は行なわれてはいない。
<具体例4>
具体例4のイオンフィルタ部200が図43(A)〜図43(C)に示されている。図43(A)は、具体例4のイオンフィルタ部200の平面図であり、図43(B)は、図43(A)におけるA−A断面図であり、図43(C)は、図43(A)におけるB−B断面図である。
具体例4のイオンフィルタ部200は、前記具体例1のイオンフィルタ部200における電極213を全て取り除いたものである。この場合は、電極の数を前記具体例1の場合よりも少なくすることができる。
なお、上記各具体例は、実施例4のイオンフィルタ部200に対してイオンチャネル以外の部分で生じるキャパシタンスを低下させているが、前述した実施例1〜3に対しても上記各具体例と同様な方法を用いることにより、イオンチャネル以外の部分で生じるキャパシタンスを低下させることが可能である。
また、上記各具体例のイオンフィルタ部200は、前述したイオンフィルタ部200の製造方法の工程(7)において、それぞれに対応した櫛歯電極構造をパターニングすることにより、前述したイオンフィルタ部200の製造方法と同様な手順で製造することができる。
以上の説明から明らかなように、上記イオンフィルタ部211の製造方法において、本発明のイオンフィルタの製造方法が実施されている。
以上説明したように、本実施形態に係るイオンフィルタ部200は、支持層203と、該支持層203の上に積層された絶縁層202と、該絶縁層202の上に積層され、積層方向に直交する面内において、互いの櫛歯が交互に噛み合うように対向して配置された2つの櫛歯電極(櫛歯電極211、櫛歯電極212)を含む電極層201とを有している。
そして、2つの櫛歯電極の隙間の少なくとも一部に、絶縁層202及び支持層203の一部が取り除かれ、積層方向にイオンが通過することができる流路(イオンチャネル)を有し、2つの櫛歯電極における櫛歯は、一部が絶縁層202と接している。
実施例1では、櫛歯の根元部と先端部とが絶縁層202と接しており、実施例2では、櫛歯の中央部が絶縁層202と接している。また、実施例3では、櫛歯の根元部と先端部と中央部とが絶縁層202と接している。
これらの実施例では、櫛歯の変形や振動が抑制されることとなり、耐久性や信頼性の低下を招くことなく、電極の間隔及び電極の厚さを小さくすることが可能となる。そこで、イオンフィルタ部200は、電池で駆動させることができる。
さらに、櫛歯の根元部と先端部を除く複数箇所が絶縁層202と接していても、実施例1〜3と同様な効果を得ることができる。
また、実施例4では、2つの櫛歯電極によって形成される複数の隙間のうちa軸方向における両端の隙間には、イオンの流路が設けられていない。この場合は、さらに、イオンフィルタ部としての特性の安定性を向上させることができる。
また、電極層201は、不純物が注入されたシリコンからなっている。この場合は、櫛歯電極の電気抵抗を低くして非対称電界波形信号の周波数応答性を向上させることができる。
さらに、具体例1では、2つの櫛歯電極は、電極層201における周辺部から電気的に分離されている。そして、電極層201における周辺部は、2つの櫛歯電極とは異なる電極213を含んでいる。具体例2及び具体例3では、2つの櫛歯電極のいずれかが具体例1における電極213と一体化されている。すなわち、2つの櫛歯電極のいずれかが周辺部に含まれる電極と電気的に接続されている。具体例4では、電極層201における2つの櫛歯電極の周辺部が取り除かれている。これら具体例のイオンフィルタ部200では、いずれもイオンチャネル以外の部分で生じるキャパシタンスを低下させることができる。非対称電界波形信号の鈍りを小さくすることが可能となる。
そこで、各具体例のイオンフィルタ部200は、耐久性や信頼性の低下を招くことなく、電極の間隔及び電極の厚さを小さくすることができるとともに、非対称電界波形信号の鈍りを小さくすることができる。その結果、安定的に電池で駆動させることが可能となる。
そして、本実施形態に係るイオン検出装置10によると、イオンフィルタ部200を備えているため、その結果として小型化及び低消費電力化を図ることができる。
なお、上記実施形態において、電極層201が、金属がコーティングされたシリコンからなっていても良い。この場合は、櫛歯電極の表面が酸化してイオンフィルタ部の機能が損なわれることを防止したり、櫛歯電極の電気抵抗を低くして非対称電界波形信号の周波数応答性を向上させることができる。
また、上記実施形態では、イオンフィルタ部200がSOI(SOI:Silicon On Insulator)ウエハ基板から製造される場合について説明したが、これに限定されるものではない。
10…イオン検出装置、100…イオン発生部、200…イオンフィルタ部(イオンフィルタ)、201…電極層、202…BOX層(絶縁層)、203…支持層、211…櫛歯電極(2つの櫛歯電極の一方)、212…櫛歯電極(2つの櫛歯電極の他方)、213…電極(第3の電極)、221…NSG膜、222…金属層、223…窒化保護膜、224…フォトレジスト、225…粘着剤、226…サポートウエハ、227…フォトレジスト、600…検出部(検出器)、900…制御部。
米国特許出願公開第2015/0028196号明細書 特許第4063676号公報 特許第5221954号公報

Claims (19)

  1. 支持層と、
    前記支持層の上に積層された絶縁層と、
    前記絶縁層の上に積層され、積層方向に直交する面内において、互いの櫛歯が交互に噛み合うように対向して配置された2つの櫛歯電極を含む電極層とを有し、
    前記2つの櫛歯電極の隙間の少なくとも一部に、前記絶縁層及び前記支持層の一部が取り除かれ、前記積層方向にイオンが通過することができる流路を有し、
    前記2つの櫛歯電極における前記櫛歯は、一部が前記絶縁層と接しているイオンフィルタ。
  2. 前記2つの櫛歯電極における前記櫛歯は、根元部と先端部とが前記絶縁層と接していることを特徴とする請求項1に記載のイオンフィルタ。
  3. 前記2つの櫛歯電極における前記櫛歯は、中央部が前記絶縁層と接していることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオンフィルタ。
  4. 前記2つの櫛歯電極の少なくとも一方は、前記電極層における周辺部から電気的に分離されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオンフィルタ。
  5. 前記電極層における周辺部は、前記2つの櫛歯電極とは異なる第3の電極を含み、該第3の電極は、前記2つの櫛歯電極のいずれかと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオンフィルタ。
  6. 前記第3の電極はGND(グラウンド)に接続され、前記2つの櫛歯電極のうち前記第3の電極に電気的に接続されていないほうの櫛歯電極に信号が入力されることを特徴とする請求項5に記載のイオンフィルタ。
  7. 前記電極層における前記2つの櫛歯電極の周辺部は取り除かれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオンフィルタ。
  8. 前記2つの櫛歯電極における前記櫛歯は、根元部と先端部を除く複数箇所が前記絶縁層と接していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオンフィルタ。
  9. 前記2つの櫛歯電極の隙間のうち、両端の隙間には、前記流路が設けられていないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のイオンフィルタ。
  10. 前記電極層は、不純物が注入されたシリコンからなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のイオンフィルタ。
  11. 前記電極層は、金属がコーティングされたシリコンからなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のイオンフィルタ。
  12. 被測定分子をイオン化するイオン発生器と、
    前記イオン発生器からのイオンを選別する請求項1〜11のいずれか一項に記載のイオンフィルタと、
    前記イオンフィルタで選別されたイオンを検出する検出器と、を備えるイオン検出装置
  13. 前記イオンフィルタは電池で駆動されることを特徴とする請求項12に記載のイオン検出装置。
  14. 支持層と絶縁層と電極層とが積層された基板を用いてイオンフィルタを製造する方法であって、
    前記電極層に、積層方向に直交する面内において、互いの櫛歯が交互に噛み合うように対向して配置された2つの櫛歯電極を形成する工程と、
    前記2つの櫛歯電極の隙間の少なくとも一部において、前記絶縁層及び前記支持層の一部を取り除き、前記積層方向にイオンが通過することができる流路を形成する工程と、を含み、
    前記流路を形成する工程では、前記2つの櫛歯電極における前記櫛歯の一部が前記絶縁層と接するように、前記絶縁層及び前記支持層の一部を取り除くことを特徴とするイオンフィルタの製造方法。
  15. 前記流路を形成する工程では、前記2つの櫛歯電極における前記櫛歯の根元部と先端部とが前記絶縁層と接するように、前記絶縁層及び前記支持層の一部を取り除くことを特徴とする請求項14に記載のイオンフィルタの製造方法。
  16. 前記流路を形成する工程では、前記2つの櫛歯電極における前記櫛歯の中央部が前記絶縁層と接するように、前記絶縁層及び前記支持層の一部を取り除くことを特徴とする請求項14又は15に記載のイオンフィルタの製造方法。
  17. 前記流路を形成する工程では、前記2つの櫛歯電極における前記櫛歯の根元部と先端部を除く複数箇所が前記絶縁層と接するように、前記絶縁層及び前記支持層の一部を取り除くことを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載のイオンフィルタの製造方法。
  18. 前記流路を形成する工程では、前記2つの櫛歯電極の隙間のうち、両端の隙間には前記流路が設けられないように、前記絶縁層及び前記支持層の一部を取り除くことを特徴とする請求項14〜17のいずれか一項に記載のイオンフィルタの製造方法。
  19. 前記基板は、SOI(SOI:Silicon On Insulator)基板であることを特徴とする請求項14〜18のいずれか一項に記載のイオンフィルタの製造方法。
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