JP2011036089A - 振動発電素子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】素子を大型化させることなく発生電力を向上させ、低コストで製造することができ、生産性を向上させることができる振動発電素子、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に形成されエレクトレット膜を有する第1の電極と、前記第1の電極とエアギャップを隔てて対向し、複数の開口部が形成されている第2の電極と、前記第1の電極の周辺部に形成され、かつ、バネ部を介して前記第2の電極と接続する支持部を有し、前記支持部における前記エアギャップよりも高い位置における部分は、前記第2の電極と同一の材料を有することにより、MEMS技術を応用した一貫形成が可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、静電誘導を用いて機械的な振動エネルギーを電力に変換する振動発電素子に関し、特に、MEMS技術を用いて、半導体基板あるいは複合半導体基板から一貫形成した振動発電素子の製造方法に関する。
振動発電素子は、実用化に向け研究開発が進められており、歩行、自動車、橋梁などの低周波の環境振動を利用して、振動エネルギーを電力に変換することでモバイル機器の補助電源、センサと無線通信機との組合せで電池交換が困難な監視システムなどへの用途が検討されている。
振動発電素子は、エネルギーの変換方式から電磁誘導、静電誘導、圧電に分類される。電磁誘導は微小化が難しく、圧電は電気機械結合係数が高いPZTは鉛を含むことから、MEMS技術の発達によりエレクトレット材料を用いた静電誘導による小型振動発電素子の研究開発が活発化している。一般に、電荷を半永久的に蓄えたエレクトレット基板と金属電極を備えた基板を対向させ、エレクトレットによる静電場によって金属電極に誘導電荷が生じ、エレクトレットと金属電極とが対向して重なる部分の面積を変化させることにより、外部に交流電流を発生させることができる。
なお、エレクトレットは誘電体膜に電荷を帯電させ固定することで形成され、電荷を帯電させ固定することをエレクトレット化といい、固定された電荷の量を着電量という。
このような振動発電素子の製造工程は、拡散工程(ウェハ工程)とその後の組立、検査工程とで構成されている。
図23から図26は、従来の振動発電素子の製造方法を説明するために模式的に示す振動発電素子の図面である。
図23は、従来の製造方法によって製造された振動発電素子の要部構成を模式的に示す断面図である。金属電極107の上にエレクトレット(誘電体膜)108を備えた第1基板106がバネ105によってケース102に両端を固定されている。これにより、第1基板106は振動が可能である。金属電極104を備える第2基板103は第1基板106と対向させケース蓋101に固定されている。
図24は、従来の製造方法によって製造された振動発電素子の要部構成を模式的に示す平面図で、図23のD−D線に対応する。第1基板106が備える金属電極107は櫛型であり、その上の並行する直線部分にエレクトレット108が載せられている。
図25は、従来の製造方法によって製造された振動発電素子の要部構成を模式的に示す平面図で、図23のE−E線に対応する。第2基板103が備える金属電極104は櫛型であり、静止時に第1基板106が備えるエレクトレット108に対面するように第2基板103をケース蓋101に設置されている。
図26は、振動発電素子と周辺回路との接続を示した回路図で、一般に振動発電素子と整流回路、DC−DCコンバータを組込んだモジュールとして最終的に用いられる。
従来の振動発電素子の製造方法では、図23に示す第1基板106および第2基板103をまず製作する。第1基板106および第2基板103に備える金属電極107および104がそれぞれ拡散工程による金属蒸着、エッチングにより成形され、更に第1基板106では、金属電極107の上に拡散工程による塗布、エッチングにより誘電体膜108を重ねて形成して、金属電極107にイオンを誘導する電位を与えイオン照射することで誘電体膜108のエレクトレット化を実施する。その後、第1基板106および第2基板103を個片に切断する。
個片にされた第1基板106および第2基板103は、第1基板106の備えるエレクトレット108と第2基板103の備える金属電極104が対向するように位置および間隔の精度を保ち、第1基板106はバネ105によってケース102に取り付けられ、第2基板103はケース蓋101に取り付け組立てられる。(例えば、特許文献1の図1等参照)。最後に、完成した振動発電素子に対して検査が行われる。
上記のように、振動発電素子は、第1基板106が備えるエレクトレット108を半導体基板状態でイオン照射を行い形成する。このため、従来の振動発電素子の製造方法では複数の第1基板106および第2基板103を、まず拡散工程で半導体基板に形成して、それを切断して個片にすることで製作し、他のパーツを加えて組立を実施している。
振動発電素子の発生電力は、第1基板106が備えるエレクトレット108と第2基板103が備える金属電極104が対向して重なる面積が振動で大きく変化するほど大きくなる。このため、エレクトレット108と金属電極104を櫛型に配置して、振動によって両者の重なる面積比が100%と0%に交互に切替わるように構成されている。また、振動発電素子の発生電力は、エレクトレット108と金属電極104が対向する間隔に逆比例する。
特開2008−161036号公報
従来の振動発電素子は、振動発電素子を第1基板106および第2基板103の個片と他のパーツとの組立により製造を行うため、エレクトレット108と金属電極104の間隔は、70〜100μmが限界であり、さらに両者の間隔を狭め、位置精度を高く維持することができない。このため、発生電力に限界があるという問題があった。
また、従来の振動発電素子では、拡散工程に加えて専用の組立工程が必要で、特に組立工程を自動化する場合は、微小なパーツの保持や取り付けを実施することのできる高度な設備が必要となる。このため製造工程が多く、組立工程では半導体製品の組立に用いる汎用設備を流用できないため、製造コストが高くなるという問題があった。
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、素子を大型化させることなく発生電力を向上させると共に、低コストで製造することができ、生産性を向上させることができる振動発電素子、およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決し目的を達成するために、本発明にかかるMEMSデバイスは、基板上に形成されたエレクトレット膜を有する第1の電極と、第1の電極とエアギャップを隔てて対向するように設けられ、かつ、所定の間隔を空けて複数の開口部が形成されている第2の電極と、基板上における第1の電極の周辺部に形成され、かつ、バネ部を介して第2の電極と接続する支持部を有し、支持部におけるエアギャップよりも高い位置における部分は、第2の電極と同一の材料を有することを特徴とする。
また、本発明にかかるMEMSデバイスの製造方法は、誘電体膜を有する第1の電極と、第1の電極とエアギャップを隔てて対向するように、かつ、所定の間隔を空けて複数の開口部が形成されている第2の電極とを形成する工程(a)と、第1の電極と第2の電極との間に所定の電位差を付与した状態で、コロナ放電により発生したイオンを誘電体膜に入射することで、誘電体膜をエレクトレット化する工程(b)を有することを特徴とする。
本発明にかかるMEMSデバイスは、MEMS技術により半導体基板あるいは複合半導体基板から一貫形成されることにより、誘電体膜(エレクトレット)と金属電極の間隔を狭く加工することが可能となり、両者の位置精度を高く維持することによって発電効率を向上することができる。また、本発明のMEMSデバイスおよびその製造方法によれば、組立工程を削減することができ、モジュール全体の製造工程を簡素化することができる。また、汎用半導体製造設備の流用によって設備費用を低減できるとともに、生産性を向上させ、生産コストを低減することができる。
本発明の第1の実施形態による振動発電素子の要部を模式的に示す断面図 図1のA−A断面に対応する振動発電素子の要部を模式的に示す平面図 図1のB−B断面に対応する振動発電素子の要部を模式的に示す平面図 本発明の振動発電素子における電圧発生の原理を説明する図 振動電極の位置ずれが生じた場合の不具合を説明する図 本発明の振動発電素子の素子形成プロセス(製法1)を説明する図 本発明の振動発電素子の素子形成プロセス(製法2)を説明する図 本発明の振動発電素子の素子形成プロセス(製法3)を説明する図 本発明の振動発電素子の素子形成プロセス(製法4)を説明する図 本発明の第1の実施形態におけるエレクトレット化工程を示す概念図 本発明の第1の実施形態におけるエレクトレット化装置を示す概念図 本発明の第1の実施形態におけるエレクトレット化装置の変形例を示す概念図 本発明の第1の実施形態における検査工程を模式的に示す概念図 振動発電素子が複数形成された半導体基板全体を示す平面図 振動発電モジュールの構成を模式的に示す平面図 2軸の振動に対応する振動発電モジュールの構成を模式的に示す平面図 本発明の第2の実施形態による振動発電素子の要部を模式的に示す断面図 図17のC−C断面に対応する振動発電素子の要部を模式的に示す平面図 本発明の第2の実施形態におけるエレクトレット化工程を示す概念図 本発明の第2の実施形態におけるエレクトレット化装置を示す概念図 本発明の第2の実施形態における検査工程を模式的に示す概念図 振動発電素子が複数形成された半導体基板全体を示す平面図 従来の振動発電素子の要部構成を模式的に示す断面図 図23のD−D断面に対応する従来の振動発電素子を示す平面図 図23のE−E断面に対応する従来の振動発電素子を示す平面図 従来の振動発電素子と周辺回路との接続を示す回路図
本発明の各実施形態において、MEMSデバイスの一例として、振動発電素子を例に説明することにする。なお、各実施形態において使用される材料及び数値は、好ましい範囲を示している。ただし、これらの材料及び数値に限定されるものではない。
なお、本願においては、例えばCMOS(complementary metal−oxide semiconductor)等の製造プロセス技術を利用して多数のチップが同時に製造されている基板(ウェハ)を分割することによって、デバイスを製造する技術をMEMS技術と称し、このようなMEMS技術を用いて製造されたデバイスをMEMSデバイスと称する。
(第1の実施形態)
<基本構成>
図1は、本発明の第1の実施形態による振動発電素子の要部を模式的に示す断面図であり、図2は、図1のA−A断面における振動発電素子の要部を模式的に示す平面図である。
本実施形態における振動発電素子は、MEMS技術により半導体基板あるいは複合半導体基板から一貫形成される。
図1に示すように、半導体基板10上に、第1電極21および第3電極22、前記第1電極21の上に形成される誘電体膜(エレクトレット)30、パッド60c、第3電極22からパッド60cへ基板を貫通して接続する配線70cを備えている(なお、図面上は、第3電極とパッドの接続については簡略化して記載してある)。また、図示していないが、第1電極21からパッド60aへ接続する配線70a、第2電極51からパッド60bへ接続する配線70bを備えている。
半導体基板10と対向する振動層45には、その下面の一部に第2電極(振動電極)51が形成されており、第2電極51の間に、誘電体膜30に対向して設けられる開口部46を有している。振動層45の両端部には、バネ部47a、47bが形成されており、これによって第2電極51は、第1電極21、第3電極22の上をX軸方向に振動可能に構成されている(第2電極の平面方向に可動するように構成されている)。
半導体基板10上に形成された犠牲層40、低抵抗層50、絶縁層44は、振動層45と、第2電極51と、バネ部47a、47bとを支える支持部を形成している。
第2電極51は、初期状態(静止した状態)において、ギャップ(エアギャップ)41を介して第3電極22と対向し、開口部46は第1電極21と対向するように形成されており、開口部46の幅は、第1電極21上に形成された誘電体膜30の幅とほぼ同じである。
ここで、支持部におけるエアギャップ41よりも高い位置における部分は、第2の電極51と同一の材料を有することが好ましい。
また、支持部におけるエアギャップ41と同程度の高さの位置における部分は、第2の電極51と同一の材料を有していてもよい。
また、支持部におけるエアギャップ41よりも高い位置における部分に、バネ部47a、47bが接続されていることが好ましい。
なお、図1(b)に示すように、基板10の裏面にパッド60を設け、貫通ビアによる配線70によって、それぞれの電極と接続するようにしてもかまわない。例えば、基板裏面に形成されたパッド60aと第1電極21が、第1の貫通ビアによる配線70aによって接続されていても構わない。また、基板裏面に形成されたパッド60bと第2電極51が第2の貫通ビアによる配線70bによって接続されていても構わない。また、基板裏面に形成されたパッド60cと第3電極22が第3の貫通ビアによる配線70cによって接続されていても構わない。
このように、基板裏面にパッドを形成することで、携帯電話などの電子機器のプリント基板への搭載が容易になるという効果がある。その際、パッド60とプリント基板とを導電性のボール300を介して接続しても構わない。
また、パッド60a、60b、60cのどれかが基板裏面側に形成され、どれかが第2電極の表面側に形成されても構わない。また、それぞれのパッド60に貫通ビアによる配線70を接続する場合には、貫通ビア周囲と貫通ビアとの絶縁性を確保するために、貫通ビア周囲に絶縁膜を形成することが好ましい。
図2に示すように、第1電極21と第3電極22は櫛形に形成され、櫛歯の部分が互い違いになるように交差して配置されている。したがって、誘電体膜30は、第3電極22に挟まれるように、第1電極21の上に形成されている。また、誘電体膜30には、負極性のエレクトレット化が施されている。なお、エレクトレット化が施されている誘電体膜をエレクトレット膜と呼ぶことも可能である。第1電極21は、配線70aによりパッド60aに接続されており、第2電極51は、バネ部47bおよび配線70bを介してパッド60bに接続されている。
図3に示すように、第2電極51は格子型に形成され、バネ部47a、47bを介して低抵抗層50と電気的に接続されている。なお、第2電極51の形状は、第1電極21、第3電極22と同様に櫛形に形成してもよい。また、第2電極51の格子部分(櫛歯部分)の幅と、第1電極21および第3電極22の櫛歯部分の幅は、ほぼ同じである。開口部46は、スリット状に形成されているが、第2電極51の形状に応じて、例えば弧形状に形成してもよい。
図1〜図3に示す振動発電素子は、図26と同様の回路構成で用いられる。第3電極22はゲート電極と呼ばれ、パッド60cを経由してGNDに接続される。これにより、誘電体膜30の電位と第3電極22の電位に明確な差異が設けられる。
第2電極51がX軸方向に振動することにより、誘電体膜30と対向する状態と、第3電極22と対向する状態とに交互に変位し、第2電極51に誘起される電荷を利用して発電を行うことができる。
図4(a)に示すように、第2電極51の誘電体膜30と対向した部分に正の電荷が誘起され、GNDに電流が流れるため、これを電圧計で検知することにより、第2電極51の移動量を示す信号を電圧として取り出すことができる。
図4(b)に示すように、第2電極51の移動量と発生電圧は比例関係にある。したがって、図4(c)に示すように、所定の電圧値(閾値)に達するまでにかかる時間を測定することによって、加速度を測定することも可能である。
後に詳述するが、本実施形態の振動発電素子はMEMS技術により半導体基板から一貫形成されたものであるから、振動電極となる第2電極51と、第1電極21、第3電極22との位置決め精度が高い。このため、第2電極51の初期状態において、第2電極51の端部と誘電体膜30の端部がほぼ同じ位置で、かつ両者が重ならない位置に形成することが可能である。
仮に、第2電極51の初期状態において、第2電極51の端部と誘電体膜30の端部の位置が一致せず、両者が重なったり、離れすぎたりした場合は、図5に示すように発生電圧と振動電極の移動量がリニアな関係にならず、精度の高い測定を行うことが困難となる。したがって、第2電極51の変位量を電圧によって高い精度で取り出すためには、初期状態における各電極の位置決め精度が重要である。
<素子形成工程>
以下、図6〜図9を用いて、MEMS技術を応用した本実施形態における振動発電素子の形成プロセスを説明する。
(製法1)
図6(a)において、半導体基板10上に第1電極21、第3電極22を形成し、その後、第1電極21の上に誘電体膜30を形成する。第1電極21、第3電極22には、Al、Au等の金属膜や、ポリシリコン等の導電性材料を用いることができる。誘電体膜30には、TEOS(TetraEthOxySilane:Si(OC)、SiOF(Fluorine−doped Silicon Oxide)等のSiO系のエレクトレット材料を用いることができる。
その後、図6(b)に示すように、犠牲層40、導電層である低抵抗層50、絶縁層44を順に形成する。ここで、犠牲層40には、PSG、BSG、BPSG等のシリコン酸化膜材料を用いることができ、低抵抗層50にはポリシリコンや金属膜などの導電性の材料を用いることができる。絶縁層44には、ポリパラキシリレン樹脂やパリレンなどを用いることが好ましい。これらの樹脂は、後に行う犠牲層40のエッチング液に対するエッチング耐性が高く、かつ弾性特性が良いため、バネ部47a、47bの材料として好適だからである。
ここで、ばね部47a、47bは、絶縁層44及び低抵抗層50から構成されることになる。なお、低抵抗層50の上に絶縁層44を形成しているが、必ずしも形成しなくても構わない。導電層である低抵抗層のみであってもかまわない。
その後、図6(c)に示すように、絶縁層44の上にレジストマスク80を形成し、異方性エッチングを施すことにより、振動層45、開口部46、バネ部47a、47b、第2電極51を同時形成する。
その後、図6(d)に示すように、犠牲層40をエッチングすることによって、ギャップ41を形成し、レジストマスク80を除去した後、パッド60と配線70を形成して振動発電素子が完成する。
なお、パッド60を基板10の裏面に形成する場合は、 パッド60と配線70はこれより前の工程で形成しても構わない。
ここで、パッド60の変形例について、図6(e)、図6(f)を用いて簡単に説明する。なお、図6(e)、図6(f)は、図6(d)の二点鎖線で囲った部分の部分図である。
図6(e)のように、パッド60bは、絶縁層44内に形成されることで、低抵抗層50と接続していても構わない。また、図6(f)のように、パッド60bは、絶縁層44内に形成された第2の貫通ビア(TSV)を用いた配線70bにより低抵抗層50と接続していても構わない。以上の構成により、バネ部、低抵抗層を介して、可動する第2の電極とパッドは電気的に接続されることとなる。
また、パッド60aは絶縁層44、低抵抗層50、犠牲層40を貫通する第1の貫通ビアを用いた配線70aにより、第1電極21と接続させることが可能であり、パッド60cは絶縁層44、低抵抗層50、犠牲層40を貫通する第3の貫通ビアを用いた配線70cにより、第3電極22と接続させることが可能である(不図示)。
上記のとおり、本実施形態の振動発電素子は、MEMS技術により半導体基板あるいは複合半導体基板から一貫形成されるため、振動層45の第2電極51と誘電体膜30の間隔を10μm以下に加工することができる。
(製法2)
図7(a)において、ガラス基板15上に第1電極21、第3電極22を形成し、その後、第1電極21の上に誘電体膜30を形成する。第1電極21、第3電極22には、Al、Au等のエッチングガスに侵されない金属膜を好適に用いることができる。誘電体膜30には、TEOS、SOF等のSiO系のエレクトレット材料を用いることができる。
その後、図7(b)に示すように、ガラス基板15上に、導電層である低抵抗層50を陽極接合する。ここで、低抵抗層50には、低抵抗シリコン基板を用いることができる。この導電層50の一部が第2電極51となる。
その後、図7(c)に示すように、低抵抗層50の上にレジストマスク80を形成し、異方性ドライエッチングを施す。ここでは、主に六フッ化硫黄(SF)ガスを用いた等方性エッチングと、Cなどのテフロン(登録商標)系のガスを用いた側壁保護とを繰り返し行うボッシュプロセスが好適に用いられる。これにより、第2電極51、開口部52、バネ部53a、53bを同時形成する。
その後、図7(d)に示すように、六フッ化硫黄(SF)ガスを用いた等方性エッチングを施すことにより、ギャップ54を形成し、図7(e)に示すように、レジストマスク80を除去した後、パッド60と配線70を形成して振動発電素子が完成する。なお、パッド60と配線70はこれより前の工程で形成しても構わない。
本製法を採用した場合は、製法1を採用した場合と比較して、プロセスの相違に基づく材料の相違が生じるが、基本的な構造、機能は図1〜図3で説明したものと同様である。
(製法3)
図8(a)において、導電層である低抵抗層50(低抵抗シリコン基板)にエッチングを施してギャップ54を形成し、その後レジストマスク80を除去する。この導電層50の一部が第2電極51となる。
一方、図8(b)に示すように、ガラス基板15上に第1電極21、第3電極22を形成し、その後、第1電極21の上に誘電体膜30を形成する。第1電極21、第3電極22には、Al、Au等のエッチングガスに侵されない金属膜を好適に用いることができる。誘電体膜30には、TEOS、SOF等のSiO系のエレクトレット材料を用いることができる。
その後、図8(c)に示すように、ガラス基板15上に、ギャップ54を形成した低抵抗層50を陽極接合する。
その後、図8(d)に示すように、低抵抗層50の上にレジストマスク80を形成し、異方性ドライエッチングを施す。ここでは、主に六フッ化硫黄(SF)ガスを用いた等方性エッチングと、Cなどのテフロン(登録商標)系のガスを用いた側壁保護とを繰り返し行うボッシュプロセスが好適に用いられる。これにより、第2電極51、開口部52、バネ部53a、53bを同時形成する。
その後、図8(e)に示すように、レジストマスク80を除去し、パッド60と配線70を形成して振動発電素子が完成する。なお、パッド60と配線70はこれより前の工程で形成しても構わない。
本製法を採用した場合は、製法1を採用した場合と比較して、プロセスの相違に基づく材料の相違が生じるが、基本的な構造、機能は図1〜図3で説明したものと同様である。
(製法4)
図9(a)において、低抵抗層50(低抵抗シリコン基板)裏面にエッチングを施してギャップ54を形成し、その後レジストマスク80を除去する。
その後、図9(b)に示すように、低抵抗層50(低抵抗シリコン基板)の上にレジストマスク80を形成し、異方性ドライエッチングを施す。ここでは、主に六フッ化硫黄(SF)ガスを用いた等方性エッチングと、Cなどのテフロン(登録商標)系のガスを用いた側壁保護とを繰り返し行うボッシュプロセスが好適に用いられる。これにより、第2電極51、開口部52、バネ部53a、53bを同時形成し、その後レジストマスク80を除去する。
一方、図9(c)に示すように、ガラス基板15上に第1電極21、第3電極22を形成し、その後、第1電極21の上に誘電体膜30を形成する。第1電極21、第3電極22には、ポリシリコンや金属膜などの導電性の材料を用いることができる。誘電体膜30には、TEOS、SOF等のSiO系のエレクトレット材料を用いることができる。
その後、図9(d)に示すように、ガラス基板15上に、低抵抗層50を陽極接合する。その後、パッド60と配線70を形成して振動発電素子が完成する。なお、パッド60と配線70はこれより前の工程で形成しても構わない。
本製法を採用した場合は、製法1を採用した場合と比較して、プロセスの相違に基づく材料の相違が生じるが、基本的な構造、機能は図1〜図3で説明したものと同様である。
以上の製法1〜製法4を比較すると、第2電極51と誘電体膜30とのギャップを狭く形成できるという点では、製法1が最も好ましい。その理由は、犠牲層40の積層厚でギャップ長が決まるため振動電極51の平面性もよく、精度よい制御が可能だからである。
また、初期状態における第2電極51と、第1電極21、第3電極22の位置決め精度の観点では、製法1および製法4が最も好ましい。その理由は、ガラス基板15と抵抗層50の陽極接合によるアライメント誤差が発生しにくいためである。また製法4は低抵抗層50の開口部52とガラス基盤15上の誘電体膜30を位置合せしながら陽極接合が可能だからである。
また、第2電極51の移動量と発生電圧との関係において、良好な特性が得られやすいという観点では、製法1が最も好ましい。その理由は、バネ部47a、47bが、弾性特性の良いポリパラキシリレン樹脂やパリレンを有することができるからである。
なお、製法2〜4においては、ガラス基板15の上に可動電極となる第2の電極を有する構造(導電層からなる低抵抗層50)を形成したが、シリコン基板の上に可動電極となる第2の電極を有する構造を形成しても構わない。その際には、シリコン基板の上に形成されるシリコン酸化膜などの絶縁膜を介して第2の電極を有する構造を形成することが好ましい。
<エレクトレット化工程>
以下、素子形成工程後に行うエレクトレット化工程について、図10〜図12を参照しながら説明する。
図10は、本発明の第1の実施形態におけるエレクトレット化を模式的に示す断面図である。エレクトレット化工程では、同一の半導体基板上に形成された複数の振動発電素子が個片化される前に、基板状態(ウェハー状態)でエレクトレット化を実施することが好ましい。なお図10は、図1〜図3に示した振動発電素子の同一の構成要素には、図1〜図3と同一の符号を付している。
図10では、第2電極51にDC電圧91b(負電圧)、第3電極22にスイッチ(SW)を介してDC電圧91a(正電圧)を印加する、また第1電極21をGNDに接地する。図示していないが、前記の各接続は図1および図2に示したパッド60a、60b、60cにプローブを接触させて行う。
図11は、本発明の第1の実施形態におけるエレクトレット化装置を示す断面図である。この装置では、半導体基板上に形成された一つの振動発電素子に、放電電極のコロナ放電によって−イオンを照射して、当該振動発電素子のエレクトレット化を実施する。
ステージ95上に複数の振動発電素子94を形成した半導体基板96が載置され、エレクトレット化を実施する振動発電素子94aの上方に針状電極(放電電極)93が配置される。なお、ステージ95は、水平方向および上下方向に移動可能に構成されており、ステージを加熱してエレクトレット化を行う誘電体以外の部分にイオンが帯電することを防止することが望ましい。
針状電極93には、針状電極93にコロナ放電を発生させるための高圧電源91cが接続されている。針状電極93は、ステージ95に載置された半導体基板96からの高さを調整できるように垂直方向に移動可能に構成されている。
上述のエレクトレット化装置を用いて振動発電素子のエレクトレット化を行う際には、ステージ95上に複数の振動発電素子94を形成した半導体基板96が載置された状態で、ステージ95が水平移動とプローブを振動発電素子94のパッド60a、60b、60cに接触させる上下方向の移動とを繰返すことで、各振動発電素子のエレクトレット化を実施する。
なお、当該エレクトレット化装置は、例えば、一般の半導体集積回路装置の製造工程の電気特性検査等で使用されるプローバ装置を用いて構成することができる。
図10および図11により具体的なエレクトレット化の方法を説明する。まず、図11に示すように、ステージ95を水平移動させてエレクトレット化を実施する振動発電素子94aを針状電極93の直下に載置する。
次にステージ95を上昇させ、プローブにパッド60a、60b、60cを接触させることで、図10に示すように第2電極51にDC電圧91b(負電圧)、第3電極22にスイッチ(SW)を介してDC電圧91a(正電圧)を接続する。また第1電極21をGNDに接地する。
続いて、スイッチ(SW)をONにして、第3電極22にDC電圧91a(正電圧)を印加することで、第2電極51と第3電極22の間に矢印で表わしたクーロン力(吸引力)が働き、ステージ95の水平移動および上昇によって発生した第2電極51の振動を、バネ部47aおよび47bが平衡を保つ位置(初期状態)に静止させる。これにより、開口部46は、誘電体膜30に対向して重なる。
スイッチ(SW)をOFFにして、針状電極93のコロナ放電により−イオン92を照射し、開口部46を経由して誘電体膜30のエレクトレット化を実施する。この時、第2電極51に加えるDC電圧91bによって、振動層45へのイオンの帯電防止とエレクトレット化の時間の制御を行う。
次に、図11に示すステージ95を下降させプローブをパッド60a、60b、60cと切り離し、続いてステージ95を水平移動することで、次にエレクトレット化を行う振動発電素子を針状電極93の直下に載置する。
以上のように、半導体基板96と針状電極93との相対的な移動を、前記誘電体膜30の着電量が所定量に達する時間間隔で行い、上記エレクトレット化を連続的に実施する。
図12は、エレクトレット化装置の変形例を示す概念図である。図12に示すように、針状電極93に代えて直線状のワイヤ電極(放電電極)97を用いて、複数の振動発電素子が形成された半導体基板で、一方向に直線状に配列された被エレクトレット化振動発電素子94aに対し、コロナ放電によるイオンを同時に照射してエレクトレット化を実施することも可能である。
以上のような工程により、コロナ放電によるイオンが、平面方向に可動する第2の電極51に複数形成された開口部を通り抜けて、誘電体膜をエレクトレット化することが可能となり、スループットを向上させることができる。
なお、複数の被エレクトレット化振動発電素子94aの誘電体膜30が必要とする着電量に達する時間ごとに、すなわちエレクトレット化が終了するごとに、半導体基板を次々に図12に示す矢印の方向に移動させることで、連続して複数の被エレクトレット化振動発電素子94aのエレクトレット化を実施することにより、スループットを向上させてもよい。
<検査工程>
次に、図13(a)および図13(b)を用いて、エレクトレット済振動発電素子の検査工程について説明する。図13(a)および図13(b)は、検査装置を模式的に示す断面図であり、図1〜図3に示した振動発電素子の同一の構成要素には、図1〜図3と同一の符号を付している。
まず、図13(a)に示すように、振動層45が備える第2電極51にDC電圧91b(負電圧)、第3電極22にDC電圧91a(正電圧)を印加することで、第2電極51と第3電極22の間に矢印で示すクーロン力(吸引力)を働かせ、振動層45の振動をバネ部47aおよび47bが平衡を保つ位置に静止させる。これは、振動発電素子が静止した初期状態と同じである。この状態で第2電極51と第1電極21との間の静電容量を容量計99aで計測する。また、第2電極51と第3電極22の間の静電容量を容量計99bで計測する。
次に、図13(b)に示すように、振動層45の第2電極51にDC電圧91a(正電圧)を印加することで、第2電極51と誘電体膜30(負電位)との間に矢印で示すクーロン力(吸引力)を働かせ、振動層45を移動させる。これは、振動発電素子が振動した状態と同じである。この状態で、図13(a)と同様に、第2電極51と第1電極21の間の静電容量を容量計99aで計測する。また、第2電極51と第3電極22の間の静電容量を容量計99bで計測する。図示していないが、前記の各接続は図1および図2に示したパッド60a、60b、60cにプローブを接触させて行う。
図13(a)の状態では、振動層45の第2電極51と第3電極22が対向することから、容量計99bの測定値は大きな静電容量値となり、容量計99aの測定値は微小な値となる。図13(b)の状態では、第2電極51と誘電体膜30ならびに第1電極21が対向するから、図13(a)とは逆に容量計99bの測定値は微小な値となり、逆に容量計99aの測定値は大きな静電容量値に変化する。両方の状態で、容量計99aならびに容量計99bの測定値に規格を設けることで、振動発電素子の機能検査を行うことが可能である。
図14は、振動発電素子94が複数形成された半導体基板全体を示す平面図である。図14では、被エレクトレット化振動発電素子94aと、検査が実施される被検査振動発電素子94bとの2個の振動発電素子のみを半導体基板上に図示している。
図11に示したステージ95に当該半導体基板を載置して、図14に示す被エレクトレット化振動発電素子94aのエレクトレット化と、被検査振動発電素子94bの検査とを同時に行い、完了後、図14に示す矢印の方向にステージ95を移動し、次の振動発電素子をプローブの直下に配置する。
以上のように、半導体基板上の被エレクトレット化振動発電素子94aのエレクトレット化と、被検査振動発電素子94bの検査を同時に実施してもよい。また、被エレクトレット化振動発電素子94aの着電量が所定量に達する時間、あるいは被検査振動発電素子94bの検査が完了する時間のどちらか長い方の時間間隔で、半導体基板と放電電極との相対的な移動を行い、半導体基板上の複数の振動発電素子のエレクトレット化および検査を連続的に実施してもよい。
<モジュール構成>
図15は、振動発電モジュールの構成を示す平面図である。図15(a)に示す振動発電モジュールは、振動発電素子チップ1aおよび整流回路とDC−DCコンバータから成るチップ3をモジュール基板4に搭載すると共に、パッド60(チップ側)とパッド5(基板側)をワイヤ6で接続し、先に図26で説明した振動発電素子と周辺回路の接続を行ったものである。
図15(b)に示す振動発電モジュールは、振動発電素子に整流回路とDC−DCコンバータ部8を統合したチップ1bをモジュール基板4に搭載すると共に、パッド60(チップ側)とパッド5(基板側)をワイヤ6で接続し、先に図26で説明した振動発電素子と周辺回路の接続を行ったものである。
図15(a)および図15(b)には記載していないが、モジュールは金属キャップあるいは樹脂で封止され、モジュール基板4の裏面に外部端子が設けられる。また、振動方向を矢印で表現している。
図16は、2軸の振動に対応する振動発電モジュールの構成を示す平面図である。振動発電素子1aの振動方向をX軸、振動発電素子1cの振動方向をY軸として搭載する。さらに、振動発電素子1aおよび1cに対応して、整流回路とDC−DCコンバータからなるチップ3aと3bを搭載して両者の出力を加える。
図示していないが、モジュールは金属キャップあるいは樹脂で封止され、モジュール基板4の裏面に外部端子が設けられる。また、振動方向を矢印で表現している。
以上のような実装および配線を施すことにより、本実施形態の振動発電素子を用いた振動発電モジュールが完成する。
(第2の実施形態)
<基本構成>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、単一極性のエレクトレットを備える振動発電素子について説明したが、本実施形態では、発電効率の向上を目的に、第1電極21と第3電極22の双方に誘電体膜30を形成し、交互に極性が異なるエレクトレットを備えている点で、第1の実施形態と異なる。
図17は、本発明の第2の実施形態による振動発電素子の要部を模式的に示す断面図であり、図18は、図17のC−C断面における振動発電素子の要部を模式的に示す平面図である。
本実施形態の振動発電素子は、図17に示すように、第1電極21および第3電極22の双方に誘電体膜30を形成し、第1電極21の上に形成される誘電体膜30aと、第3電極22の上に形成される誘電体膜30bとに交互に逆極性のエレクトレット化が施されている。図17に示した例では、誘電体膜30aに負極性のエレクトレット化、誘電体膜30bに正極性のエレクトレット化が施されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
本実施形態による振動発電素子では、第2電極51が振動することによって、互いに極性が異なる誘電体膜30aおよび30bと交互に対向することで、第2電極51に誘起される電荷の振幅が大きくなり、発電効率を向上させることができる。
なお、本実施形態の素子形成工程は、第1電極21および第3電極22の双方に誘電体膜30を形成する点を除き、第1の実施形態と同様の工程である。
<エレクトレット化工程>
図19(a)および図19(b)は、本発明の第2の実施形態におけるエレクトレット化工程を模式的に示す断面図である。なお、図19(a)および図19(b)では、図17および図18に示した振動発電素子の同一の構成要素には、同一の符号を付している。
図19(a)に示すのは、負極性のエレクトレット化を施す工程である。第2電極51にDC電圧91b(負電圧)を印加し、第1電極21には、SW・Aを介してDC電圧91b(負電圧)印加(1)とGND(2)とを切替可能に接続する。また、第3電極22には、SW・Bを介してDC電圧91a(正電圧)印加(1)とオープン状態(2)とを切替可能に接続する。
まず、図19(a)に示すように、振動層45が備える第2電極51にDC電圧91b(負電圧)を印加し、第3電極22にDC電圧91a(正電圧)を印加する。また、第1電極21にDC電圧91b(負電圧)印加を印加する。これにより第2電極51と第1電極21の間にクーロン力(斥力)が働き、第2電極51と第3電極22の間にクーロン力(吸引力)が働く。そのため、ステージ95の水平移動および上昇による振動層45の振動を、バネ部47aおよび47bが平衡を保つ位置(初期状態)に静止させると共に、振動層45の開口部46は、第1電極21の誘電体膜30aに対向して重なる。第2電極51と第3電極22の間のクーロン力(吸引力)を矢印で示す。
次に、SW・Aを(2)側に切替えて、第1電極21をGNDとし、SW・Bを(2)側に切替えて第3電極22をオープン状態とする。この状態で、図20(a)に示す針状電極93aから振動層45の開口部46を介して、−イオン92aを第1電極21の誘電体膜30aに照射することにより、誘電体膜30aに対し、負極性のエレクトレット化を実施する。第2電極51に加えるDC電圧91bは、振動層45への−イオンの帯電防止とエレクトレット化時間の制御の効果がある。
図19(b)に示すのは、正極性のエレクトレット化を施す工程である。図19(b)に示すように、第2電極51にDC電圧91a(正電圧)を印加し、−電荷を有する誘電体膜30aと第2電極51の間にクーロン力(吸引力)を働かせる。誘電体膜30aと第2電極51の間のクーロン力を矢印で示す。
次に、第3電極22をGNDに接続し、その後、図20(a)に示す針状電極93bから振動層45の開口部46を介して、+イオン92bを第3電極22の誘電体膜30bへ照射することにより、振動発電素子94cの誘電体膜30bに対し、正極性のエレクトレット化を実施する。
なお、図示していないが、前記の各接続は図17および図18に示したパッド60a、60b、60cにプローブを接触させて行う。
図19(b)における第2電極51に加えるDC電圧91aは、振動層45への+イオンの帯電防止とエレクトレット化時間の制御の効果がある。
図20(a)は、本発明の第2の実施形態におけるエレクトレット化装置を示す断面図である。
ステージ95上に、複数の振動発電素子94を形成した半導体基板96が載置されている。ステージ95は、水平方向および上下方向に移動可能に構成されており、ステージを加熱してエレクトレット化を行う誘電体以外の部分にイオンが帯電することを防止することが望ましい。
負極性のエレクトレット化を実施する振動発電素子94aの上方に針状電極(放電電極)93aが配置される。針状電極93aには、コロナ放電を発生させるための高圧電源91cが接続されている。
また、正極性のエレクトレット化を実施する振動発電素子94cの上方に針状電極(放電電極)93bが配置される。針状電極93bには、コロナ放電を発生させるための高圧電源91dが接続されている。
針状電極93aおよび93bは、ステージ95に載置された半導体基板96からの高さを調整できるように垂直方向に移動可能に構成されている。
上記の装置により、半導体基板96が備える振動発電素子94aおよび94cに対し、異なる位置で、極性の異なるエレクトレット化を同時に実施する。
まず、図20(a)に示すように、ステージ95を水平移動させて、負極性のエレクトレット化を実施する振動発電素子94aを針状電極93aの直下に、正極性のエレクトレット化を実施する振動発電素子94cを針状電極93bの直下に載置する。
次に、ステージ95を上昇させ、プローブに振動発電素子94aおよび振動発電素子94cのパッド60a、60b、60cを接触させ、エレクトレット化を行う。
最後に、ステージ95を下降させ、プローブを振動発電素子94aおよび振動発電素子94cのパッド60a、60b、60cと切り離し、続いてステージ95水平移動することで、次の被エレクトレット化振動発電素子94a、94cを針状電極93aおよび針状電極93bの直下に載置する。
以上のように、誘電体膜30aおよび誘電体膜30bの着電量が所定量に達する時間間隔で、半導体基板96と針状電極93aおよび針状電極93bとの相対的な移動を行い、上記エレクトレット化を連続的に実施する。
図20(b)は、本発明の第2の実施形態におけるエレクトレット化装置の変形例を示す断面図である。振動発電素子94dに対して、交互に負極性と正極性のエレクトレット化を実施する構造を有する点で、図20(a)に示したエレクトレット化装置と異なっている。
ステージ95上に、複数の振動発電素子94を形成した半導体基板96が載置され、エレクトレット化を実施する振動発電素子94dの上方に針状電極(放電電極)93cが配置される。ステージ95は、水平方向および上下方向に移動可能に構成されており、ステージを加熱して、エレクトレット化を行う誘電体以外の部分にイオンが帯電することを防止することが望ましい。
針状電極93cには、コロナ放電を発生させるための高圧電源98が接続されている。針状電極93cは、−イオンと+イオンを発生させることが可能で、針状電極93cの下部に円筒状の金属からなる集電電極97を設け、スイッチ(SW)を介してDC電圧91a((1)正電圧)およびDC電圧91b((2)負電圧)を切替えて印加することができる。
針状電極93cおよび集電電極97は、ステージ95に載置された半導体基板96からの高さを調整できるように垂直方向に移動可能に構成されている。
SWを(1)側に切替えて、集電電極97にDC電圧91aを印加すると、針状電極93cから照射された−イオンは集電電極97に誘導され、残った+イオンのみが振動発電素子94dに到達する。
SWを(2)側に切替えて、集電電極97にDC電圧91bを印加すると、針状電極93cから照射された+イオンは集電電極97に誘導され、残った−イオンのみが振動発電素子94dに到達する。
以上のように、振動発電素子94dに対して同一位置で、交互に−イオンと+イオンを照射して、負極性と正極性のエレクトレット化を実施することができる。
次に、図20(b)のエレクトレット化装置を用いたエレクトレット化工程について説明する。
まず、図20(b)に示すように、ステージ95を水平移動させて、振動発電素子94dを針状電極93cおよび集電電極97の直下に載置する。
続いて、ステージ95を上昇させ、プローブに振動発電素子94dのパッド60a、60b、60cを接触させる。
最初に、SWを(2)側に切替えてDC電圧91b(負電圧)を印加すると、針状電極93cから照射された+イオンは集電電極97に誘導され、残った−イオンのみが振動発電素子に照射が可能となる。負極性のエレクトレット化工程は、図19(a)を用いて説明した工程と同様である。
振動発電素子94dの誘電体膜30aが所定の着電量に達した後、SWを(1)側に切替え、集電電極97にDC電圧91aを印加すると、針状電極93cから照射された−イオンは集電電極97に誘導されて、残った+イオンのみが振動発電素子94dに照射が可能となる。正極性のエレクトレット化工程は、図19(b)を用いて説明した工程と同様である。
振動発電素子94dの誘電体膜30bが所定の着電量に達した後、ステージ95を下降させプローブを振動発電素子94dのパッド60a、60b、60cと切り離し、続いてステージ95水平移動することにより、次にエレクトレット化を行う振動発電素子を針状電極93cおよび集電電極97の直下に載置する。
以上のように、誘電体膜30a、30bの着電量が所定量に達する時間間隔で、半導体基板96と針状電極93cおよび集電電極97との相対的な移動を行い、上記エレクトレット化を連続的に実施する。
なお、図20(a)および図20(b)のエレクトレット化装置は、例えば、一般の半導体集積回路装置の製造工程における電気特性検査等で使用されるプローバ装置を用いて構成することができる。
<検査工程>
次に、図21(a)および図21(b)を参照しながら、本実施形態におけるエレクトレット済振動発電素子の検査方法を説明する。
図21(a)および図21(b)は、検査装置を模式的に示す断面図で、図17および図18に示した振動発電素子の同一の構成要素には、図17および図18と同一の符号を付している。
まず、図21(a)に示すように、振動層45が備える第2電極51にDC電圧91b(負電圧)を印加することにより、第2電極51と第3電極22上の誘電体膜30bとの間に、矢印で示すクーロン力(吸引力)を働かせ、振動層45をバネ部47aおよび47bが平衡を保つ位置に静止させる。これは、振動発電素子が静止した初期状態と同じである。
この状態で、第2電極51と第1電極21との間の静電容量を、容量計99aで計測する。また、第2電極51と第3電極22との間の静電容量を容量計99bで計測する。
続いて、図21(b)に示すように、振動層45が備える第2電極51にDC電圧91a(正電圧)を印加することにより、第2電極51と第1電極21上の誘電体膜30aとの間に矢印で示すクーロン力(吸引力)を働かせ、第2電極51と誘電体膜30aとを対向させる。これは、振動発電素子が振動した状態と同じである。
この状態で、図21(a)と同様に、第2電極51と第1電極21との間の静電容量を容量計99aで計測する。また、第2電極51と第3電極22との間の静電容量を容量計99bで計測する。
図示していないが、上記の各接続は、図17および図18に示したパッド60a、60b、60cにプローブを接触させて行う。
図21(a)の状態では、第2電極51と第3電極22が対向することから、容量計99bの測定値は大きな静電容量値となり、容量計99aの測定値は微小な値となる。
図21(b)の状態では、第2電極51と第1電極21が対向するから、図21(a)とは逆に、容量計99bの測定値は微小な値となり、逆に容量計99aの測定値は大きな静電容量値に変化する。
両方の状態で、容量計99aならびに容量計99aの測定値に規格を設けることで、振動発電素子の機能検査を行うことが可能である。
図22(a)は、振動発電素子94が複数形成された半導体基板全体を示す平面図である。図22(a)では、負極性の被エレクトレット化振動発電素子94a、正極性の被エレクトレット化振動発電素子94c、エレクトレット化後の検査が実施される被検査振動発電素子94bの3個の振動発電素子のみを半導体基板上に図示している。
図22(a)に示す矢印は、負極性のエレクトレット化と、正極性のエレクトレット化と、エレクトレット化後の検査とを順に行う際の、ステージ95の移動方向を示している。このように、負極性のエレクトレット化と、正極性のエレクトレット化と、検査とをライン上で同時に行ってもよい。また、ステージ95上の半導体基板と、放電電極との相対的な移動を、着電量が所定量に達する時間あるいは検査が完了する時間のどちらか長い方の時間間隔で実施して、半導体基板96上の複数の振動発電素子のエレクトレット化および検査を連続的に実施してもよい。
図22(b)は、振動発電素子94が複数形成された半導体基板全体を示す平面図である。
図22(b)では、負極性および正極性のエレクトレット化を順に施す被エレクトレット化振動発電素子94dと、エレクトレット化後の検査を行う被検査振動発電素子94bの2個の振動発電素子のみを半導体基板上に図示している。
図22(b)に示す矢印は、被エレクトレット化振動発電素子94dのエレクトレット化と、被検査振動発電素子94bの検査とが完了した後に、次の振動発電素子をプローブの直下に配置する際のステージ95の移動方向を示している。
このように、被エレクトレット化振動発電素子94dの負極性および正極性のエレクトレット化を行うと同時に、被検査振動発電素子94bの検査を実施してもよい。また、ステージ95上の半導体基板と、放電電極との相対的な移動を、着電量が所定量に達する時間あるいは検査が完了する時間のどちらか長い方の時間間隔で実施して、半導体基板96上の複数の振動発電素子のエレクトレット化および検査を連続的に実施してもよい。
以上説明したとおり、本発明にかかる振動発電素子およびその製造方法によれば、MEMS技術により半導体基板あるいは複合半導体基板から一貫形成され、振動層45の第2電極51と、第1電極21、第3電極22との間隔を10μm以下に加工でき、両者の位置精度を高く維持することにより、発電効率を向上することができる。
また、汎用半導体製造設備の流用で設備費用を低減できるとともに、生産性を向上させることができ、振動発電素子の生産コストを低減することができる。
本発明は、振動発電素子の発電効率向上、生産性向上、および設備費用削減という効果を奏する点で、振動発電素子の新たな構造および製造方法として有用である。
1 振動発電素子
1a 振動発電素子(振動方向X軸)
1b 振動発電素子(振動方向X軸)・整流回路・DC−DCコンバータ統合チップ
1c 振動発電素子(振動方向Y軸)
3 整流回路・DC−DCコンバータチップ
4 モジュール基板
5 パッド(基板側)
6 ワイヤ
8 整流回路・DC−DCコンバータ部
10 半導体基板
15 ガラス基板
21 第1の電極
22 第3の電極
30 誘電体膜
40 犠牲層
41 ギャップ
44 絶縁層
45 振動層
46 開口部
47 バネ部
50 低抵抗層
51 第2の電極(振動電極)
52 開口部
53 バネ部
60 パッド
70 配線
80 レジスト
91a DC電圧(正電圧)
91b DC電圧(負電圧)
93a 針状電極(−イオン放電電極)
93b 針状電極(+イオン放電電極)
93c 針状電極(−/+イオン放電電極)
94 振動発電素子
94a 負極性エレクトレット化を実施する振動発電素子
94b エレクトレット化済振動発電素子
94c 正極性エレクトレット化を実施する振動発電素子
94d 負/正極性エレクトレット化を実施する振動発電素子
95 ステージ
96 複数の振動発電素子94を形成した半導体基板
97 直線状のワイヤ電極(放電電極)
98 高圧電源
99 容量計
101 ケース蓋
102 ケース
103 第2基板
104 金属電極
105 バネ
106 第1基板
107 金属電極
108 誘電体膜
300 ボール

Claims (32)

  1. 誘電体膜を有する第1の電極と、前記第1の電極とエアギャップを隔てて対向するように、かつ、所定の間隔を空けて複数の開口部が形成されている第2の電極とを形成する工程(a)と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に所定の電位差を付与した状態で、コロナ放電により発生したイオンを前記誘電体膜に入射することで、前記誘電体膜をエレクトレット化する工程(b)を有することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
  2. 前記誘電体膜は、前記第1の電極における前記第2電極側に設けられることを特徴とする請求項1に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  3. 前記誘電体膜は、所定の間隔を空けて複数形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  4. 前記第1の電極は、櫛歯状の形状を構成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  5. 前記第2の電極は、所定の間隔を空けて複数の前記開口部が形成されることで、櫛歯状の形状を構成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  6. 前記第2の電極は、前記第2の電極の平面方向に可動することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  7. 前記工程(b)は、イオンが、複数形成された前記開口部を通り抜けて、前記誘電体膜をエレクトレット化する工程であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  8. 前記誘電体膜は、所定の間隔を空けて複数形成されており、
    前記工程(b)は、隣り合う前記誘電体膜の極性が異なるように、エレクトレット化されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  9. 前記工程(b)の後に、検査をする工程を有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  10. 基板上に誘電体膜を有する第1の電極を形成する工程(a)と、
    前記第1の電極の上に、犠牲層を形成する工程(b)と、
    前記犠牲層の上に、所定の間隔を空けて複数の開口部が形成されている、第2の電極を有する層を形成する工程(c)と、
    前記犠牲層をエッチングすることで、前記第1の電極と前記第2の電極の間にエアギャップを形成する工程(d)と、
    前記誘電体膜をエレクトレット化する工程(e)を有していることを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
  11. 前記第2の電極を有する層の一部がバネ部となることを特徴とする請求項10に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  12. 前記誘電体膜は、所定の間隔を空けて複数形成されることを特徴とする請求項10又は11に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  13. 前記第1の電極は、櫛歯状の形状を構成することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  14. 前記第2の電極は、所定の間隔を空けて複数の前記開口部が形成されることで、櫛歯状の形状を構成することを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  15. 前記第2の電極は、前記第2の電極の平面方向に可動することを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  16. 前記工程(e)は、イオンが、複数形成された前記開口部を通り抜けて、前記誘電体膜をエレクトレット化することを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の請求項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  17. 基板上に誘電体膜を有する第1の電極を形成する工程(a)と、
    所定の間隔を空けて複数の開口部が形成されている、第2の電極を有する層と前記基板を接合する工程(b)と、
    前記第2の電極を有する層の一部をエッチングすることにより、前記第1の電極と前記第2の電極の間にエアギャップを形成する工程(c)と、
    前記誘電体膜をエレクトレット化する工程(d)を有することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
  18. 前記工程(b)における接合は、陽極接合によって接合する工程であることを特徴とする請求項17に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  19. 前記工程(b)における接合は、絶縁膜を介して前記第2の電極を有する層と前記基板を接合する工程であることを特徴とする請求項17又は18に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  20. 前記第2の電極を有する層の一部がバネ部となることを特徴とする請求項17〜19のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  21. 前記誘電体膜は、所定の間隔を空けて複数形成されることを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  22. 前記第1の電極は、櫛歯状の形状を構成することを特徴とする請求項17〜21のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  23. 前記第2の電極は、所定の間隔を空けて複数の前記開口部が形成されることで、櫛歯状の形状を構成することを特徴とする請求項17〜22のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  24. 前記第2の電極は、前記第2の電極の平面方向に可動することを特徴とする請求項17〜23のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  25. 前記工程(d)は、イオンが、複数形成された前記開口部を通り抜けて、前記誘電体膜をエレクトレット化することを特徴とする請求項17〜24のいずれか1項に記載の請求項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
  26. 基板上に形成されたエレクトレット膜を有する第1の電極と、
    前記第1の電極とエアギャップを隔てて対向するように設けられ、かつ、所定の間隔を空けて複数の開口部が形成されている第2の電極と、
    前記基板上における前記第1の電極の周辺部に形成され、かつ、バネ部を介して前記第2の電極と接続する支持部を有し、
    前記支持部における前記エアギャップよりも高い位置における部分は、前記第2の電極と同一の材料を有することを特徴とするMEMSデバイス。
  27. 前記支持部における前記エアギャップよりも高い位置における部分に、前記バネ部が接続していることを特徴とする請求項26に記載のMEMSデバイス。
  28. 前記第1の電極上に、前記エレクトレット膜が形成されていることを特徴とする請求項26又は27に記載のMEMSデバイス。
  29. 前記第1の電極は、絶縁膜を介して前記基板の上に形成されていることを特徴とする請求項26〜28のいずれか1項に記載のMEMSデバイス。
  30. 前記支持部は、絶縁膜を介して前記基板の上に形成されていることを特徴とする請求項26〜29のいずれか1項に記載のMEMSデバイス。
  31. 前記支持部における前記エアギャップと同程度の高さの位置における部分は、前記第2の電極と同一の材料を有することを特徴とする請求項26〜30のいずれか1項に記載のMEMSデバイス。
  32. 基板上に形成された第1の電極と、
    前記第1の電極とエアギャップを隔てて対向するように設けられ、かつ、所定の間隔を空けて複数の開口部が形成されている第2の電極と、
    前記基板上における前記第1の電極の周辺部に形成され、かつ、バネ部を介して前記第2の電極と接続する支持部を有し、
    前記支持部における前記エアギャップよりも高い位置における部分は、前記第2の電極と同一の材料を有することを特徴とするMEMSデバイス。
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