JP6749617B2 - 抗菌性合剤の探索方法 - Google Patents

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Description

本発明は、グリコペプチド系抗菌化合物及びβラクタム系抗菌化合物を有効成分として含有する抗菌性合剤に関する。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、健康を脅かす薬剤耐性病原体として最もよく知られている病原体の1つである。MRSAの爆発的な流行に立ち向かうため、グリコペプチド系抗菌化合物であるバンコマイシン(以下、「VCM」と略記する場合がある)は世界中の病院で患者の治療に用いられている。一方、VCMの乱用により、近年耐性株が出現するようになった。
CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institutes)では、バンコマイシン低感受性(中間耐性)黄色ブドウ球菌(VISA)は、VCMのMIC(minimum inhibitory concentration;最小発育阻止濃度)値が4〜8μg/mLであると定義され、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)はVCMのMIC値が16μg/mL以上であると定義されている。
VRSAは蔓延してはいないが、βラクタム系抗生物質と同様に、黄色ブドウ球菌感染にVCMが全く効かなくなることは時間の問題に過ぎない。よって、VCM等の抗生物質に対して耐性を獲得するメカニズムの解明及び代替治療方法の開発は、近い将来に起こり得るVRSAの蔓延に備えるために極めて重要である。
これまでに、バンコマイシンとβラクタム系抗菌化合物との併用により、VISAの増殖阻害について相乗効果を示すことが示唆されている(非特許文献1、2)。
非特許文献1、2で用いられているVISAに対する、VCMのMIC値は2μg/mL以下であり、そのVISAについて、バンコマイシンとβラクタム系抗菌化合物との相乗効果により、VCMのMIC値が1μg/mLになったことが開示されている。
しかしながら、一般に抗菌化合物(抗生物質)の力価の評価において、2倍以下の差を評価することは難しいとされている。したがって、バンコマイシンとβラクタム系抗菌化合物との相乗効果が本当にあるのか否かについて議論が残っている。また、非特許文献1、2において抗菌の対象となっている菌はVRSAではなくVISAである。
また、バンコマイシンとβラクタム系抗菌化合物との併用により、臨床現場で分離されたVRSAの増殖阻害について相乗効果があるとしている文献がある(非特許文献3)。
非特許文献3で用いられているVRSAは、VCM耐性エンテロコッカス菌からvanA遺伝子を獲得したことにより、VCM高耐性を獲得したと考えられている。
しかしながら、本当にvanA遺伝子が転移することにより、VCM高耐性を獲得するかどうかという点について議論が残っている。
更に、今後蔓延する可能性が指摘されているVCM耐性菌は、vanA遺伝子等の外来遺伝子の獲得によらず、菌自体が変異してVCM耐性を獲得するのではないかと考えられている。
したがって、vanA遺伝子転移に起因しない、VCM高耐性菌に効果がある抗菌剤の開発が急がれる。
Steinkraus, G. et al, J Antimicrob Chemother., 60, 788-94, 2007 Werth, B. J. et al, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 57, 2376-9, 2013 Paige, M. et al, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 50, 2951-6, 2006
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、VRSAに対しても十分に抗菌活性を発揮する新規の抗菌剤を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、vanA遺伝子転移とは別の、変異蓄積により黄色ブドウ球菌に高VCM耐性を獲得させる、すなわちVRSAを作製することができることを見出した。
そして、作製したVRSAを用いて初めて検討できた結果、本発明者らは、グリコペプチド系抗菌化合物及びβラクタム系抗菌化合物との併用により、上記作製したVRSAの増殖阻害について相乗効果を示すことを見出した。更に、これらの抗菌化合物の体内動態を一致させることにより、上記相乗効果が増強することを見出した。
すなわち、本発明は、グリコペプチド系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩、及びβラクタム系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する抗菌性合剤であり、該グリコペプチド系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩、及び該βラクタム系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩の体内動態を一致させることにより相乗作用を発揮することを特徴とする抗菌性合剤を提供するものである。
本発明によれば、前記問題点や前記課題を解決し、既に医療現場に蔓延しているVISAや、将来医療現場で蔓延する危険性が指摘されている菌自体が変異することによりVCM耐性を獲得したVRSAに対して十分に抗菌活性を発揮する抗菌性合剤を提供することができる。
また本発明は、グリコペプチド系抗菌化合物及びβラクタム系抗菌化合物の体内動態を一致させることによって抗菌活性について相乗効果を発揮させるという特異な技術思想に基づいており、本発明の抗菌性合剤は新規性・進歩性を有する。
また、本発明の抗菌性合剤は、少なくともバンコマイシン耐性低感受性菌(VISA)やバンコマイシン耐性菌(VRSA)の両者に上記相乗作用を発揮することができる。
(A)EMS/VCM選択回数とVCMのMIC値との関係を示したグラフである。(B)OXA選択後のEMS/VCM選択回数とVCMのMIC値との関係を示すグラフである。 VCMのMIC値を測定した結果を示す写真である。(左)MR3、(右)VR3 本発明で作製した細菌変異株に対して行ったポピュレーション解析の結果を示すグラフである。(A)親株がMR3である細菌変異株、(B)親株がMR7である細菌変異株 (A)VR7(OXA+)に対するVCMのMIC値を測定した結果を示す写真である。(B)OXAの濃度と、OXAとVCMとの相乗効果との関係を示すグラフである。(C)OXA存在下/非存在下におけるポピュレーション解析の結果を示すグラフである。 変異原処理により得られたVRSAに対するVCMとの併用効果における、セフトリアキソン及びサイクロセリンの用量依存性の検討を行った結果を示すグラフである。 変異原処理により得られたVRSAに対する抗生物質の併用による治療効果の結果を示すグラフである。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
本発明の抗菌性合剤は、グリコペプチド系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩(以下、単に「グリコペプチド系抗菌化合物」と略記する場合がある)、及び、βラクタム系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩(以下、単に「βラクタム系抗菌化合物」と略記する場合がある)を有効成分として含有する抗菌性合剤であり、該グリコペプチド系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩、及び該βラクタム系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩の体内動態を一致させることにより相乗作用を発揮することを特徴とする。
本発明の抗菌性合剤は、グリコペプチド系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩、及びβラクタム系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する。
上記グリコペプチド系抗菌化合物の例として、バンコマイシン、テイコプラニン等が挙げられる。バンコマイシンを用いることが好ましい。
上記βラクタム系抗菌化合物の例として、メチシリン、オキサシリン、ナフシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、チモシリン、アモキシシリン、ピペラシリン、タランピシリン、バカンピシリン、アンピシリン、チカルシリン、ベンジルペニシリン、カルベニシリン等のペニシリン系抗菌化合物;セファロチン、セファゾリン、セフォチアム、セフメタゾール、セフォタキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフォペラゾン、セフミノクス、ラタモキセフ、フロモキセフ、セフピロム、セフェピム、セフォゾプラン、セファレキシン等のセフェム系抗菌化合物;イミペネム、パニペネム、メロペネム、ビアペネム、ドリペネム、エルタペネム、テビペネム等のカルバペネム系抗菌化合物;等が挙げられる。
上記グリコペプチド系抗菌化合物と体内動態を一致させる点で、セフェム系抗菌化合物を用いることが好ましく、セフォジジム、セフトリアキソン又はセフミノクスを用いることがより好ましい。
本発明の抗菌性合剤は、上記グリコペプチド系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩、及び上記βラクタム系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩の体内動態を一致させることによって、抗菌活性について相乗作用を発揮する。本明細書において、「体内動態」とは、「体内での化合物の吸収、分布、代謝、排泄等の動態」を指す。「体内での化合物の吸収」には、別化合物で該化合物の吸収が制御されている場合も含む。別化合物の例として、腸溶剤等が挙げられる。
上記体内動態が血中半減期、平均血中滞留時間、血中クリアランス等の血中動態であることが好ましく、血中半減期であることがより好ましい。
カイコとヒトの体内動態が類似していることは既に知られている(例えば、特開2009−047552号公報、特開2010−075096号公報等)。
例えば、グリコペプチド系抗菌化合物及びβラクタム系抗菌化合物の血中半減期を1〜10時間にすることが好ましく、2〜9時間にすることがより好ましく、4〜8時間にすることが特に好ましい。
グリコペプチド系抗菌化合物に併用するβラクタム系抗菌化合物の血中半減期は、グリコペプチド系抗菌化合物の血中半減期の1/3倍〜3倍が好ましく、1/2倍〜2倍がより好ましく、1/1.5倍〜1.5倍が特に好ましく、1/1.2倍〜1.2倍が更に好ましい。
上記範囲であると、体内動態が一致していると言え、両者の相乗効果に基づく血中の細菌数の減少、並びにそれによる治療等の効果を発揮する。
グリコペプチド系抗菌化合物がバンコマイシンの場合、バンコマイシンの血中半減期は4.3〜5.2時間であるので、バンコマイシンと併用するβラクタム系抗菌化合物の血中半減期は、1.43〜15.6時間が好ましく、2.2〜10.4時間がより好ましく、2.9〜7.8時間が特に好ましく、3.6〜6.2時間が更に好ましい。
本発明の抗菌性合剤は、少なくとも、バンコマイシン耐性低感受性菌とバンコマイシン耐性菌の両者に上記相乗作用を発揮する。バンコマイシン耐性低感受性菌として、バンコマイシン低感受性(中間耐性)黄色ブドウ球菌(VISA)等が挙げられる。バンコマイシン耐性菌として、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)等が挙げられる。本発明は特に、バンコマイシン耐性菌用抗菌性合剤であり、更には、VRSA用抗菌性合剤である。
また、本発明の抗菌性合剤は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても抗菌活性を発揮する。
本発明の抗菌性合剤に対する、各抗菌化合物の含有量は、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができる。該抗菌性合剤全体を100質量部としたときに、上記グリコペプチド系抗菌化合物は、0.1〜90質量部の含量で配合することが好ましく、より好ましくは0.5〜85質量部、特に好ましくは1〜80質量部の含量で配合することができる。また、上記βラクタム系抗菌化合物は、0.1〜90質量部の含量で配合することが好ましく、より好ましくは0.5〜85質量部、特に好ましくは1〜80質量部の含量で配合することができる。
本発明の抗菌性合剤は、上記有効成分に加えて、「その他の成分」を含有することができる。
前記抗菌性合剤における、上記「その他の成分」としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薬学的に許容され得る担体等が挙げられる。
かかる担体としては、特に制限はなく、例えば、後述する剤型等に応じて適宜選択することができる。また、前記抗菌性合剤中の前記「その他の成分」の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の抗菌性合剤の剤型としては、特に制限はなく、例えば、後述するような所望の投与方法に応じて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶剤、懸濁剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散布剤等が挙げられる。
前記経口固形剤としては、例えば、前記有効成分に、賦形剤、更には必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。
前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
前記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
前記経口液剤としては、例えば、前記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
前記注射剤としては、例えば、前記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。
前記軟膏剤としては、例えば、前記有効成分に、公知の基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を配合し、常法により混合し、製造することができる。
前記基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。前記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
本発明の抗菌性合剤の投与対象動物としては、特に制限はないが、例えば、ヒト;マウス;サル;ウマ;ウシ、ブタ、ヤギ、ニワトリ等の家畜;ネコ、イヌ等のペット;等が挙げられる。
また、前記抗菌性合剤の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、剤型等に応じて適宜選択することができ、経口投与、腹腔内投与、血液中への注射、腸内への注入等が挙げられる。
また、前記抗菌性合剤の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である個体の年齢、体重、所望の効果の程度、投与方法等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の経口投与量は、有効成分の量として、1mg〜30gが好ましく、10mg〜10gがより好ましく、100mg〜3gが特に好ましい。
また、前記抗菌性合剤の投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、予防的に投与されてもよいし、治療(改善)的に投与されてもよい。
<合剤の評価方法>
また、本発明は、カイコでの体内動態が一致する2つ以上の化合物を、それぞれ合剤の候補とすることを特徴とする合剤のスクリーニング方法である。
本発明の合剤のスクリーニング方法において、上記体内動態は、血中半減期、平均血中滞留時間、血中クリアランス等のカイコの血中動態であることが好ましく、カイコの血中半減期であることがより好ましい。
上記体内動態が血中半減期であり、2つの化合物を合剤の候補とするとき、一方の化合物の血中半減期は、他方の血中半減期の1/3倍〜3倍が好ましく、1/2倍〜2倍がより好ましく、1/1.5倍〜1.5倍が特に好ましく、1/1.2倍〜1.2倍が更に好ましい。
上記範囲であると、体内動態が一致していると言え、両者の相乗効果に基づく効果を十分に発揮する。
[作用]
本発明において、グリコペプチド系抗菌化合物とβラクタム系抗菌化合物が相乗効果を発揮する作用・原理は明らかではなく、また、本発明は、かかる作用・原理の範囲に限定されるわけではないが、以下のことが考えられる。
βラクタム系抗菌化合物は、黄色ブドウ球菌のペニシリン結合タンパク質(PBP、Penicillin Binding Proteins)に結合し、ペプチドグリカン生合成におけるペプチド鎖の架橋構造の形成を阻害し、抗菌活性を示す(Walsh, C. Molecular mechanisms that confer antibacterial drug resistance. Nature 406, 775-781, doi:10.1038/35021219 (2000))。MRSAは、βラクタム系抗菌化合物に対する親和性が著しく低いPBP2’をコードするmecA遺伝子を含むSCC−mec領域をゲノムDNA中に含んでいることが知られており、このPBP2’の発現により菌は、βラクタム系抗生物質に対して耐性となる。
OXAは0.125μg/mL、CTRXは0.5μg/mL、という単独では抗菌効果を示さない濃度で、VRSAのVCMに対するMICの顕著な低下を引き起こす。これらのβラクタム系抗菌化合物は、VRSAのPBP2’以外のPBPsに作用して細胞壁合成に影響を及ぼしていると考えらえる。VCMは伸長しているGlcNAC−MurNAC単位末端のD−Ala−D−Alaと結合してペプチドの架橋反応を阻害する。
よって、βラクタム系抗菌化合物のPBPsへの作用が、VRSAの細胞壁の構造変化をもたらした結果、VCMが効果的に作用できるようになり、VRSAの生育を止めると考えられる。
以下、実施例及び試験例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等の具体的範囲に限定されるものではない。
<<アルキル化剤処理及び薬剤耐性株の選択>>
アルキル化剤としてメタンスルホン酸エチル(以下、「EMS」と略記する場合がある)を使用した。黄色ブドウ球菌(8種類のMRSA及び4種類のMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌))をそれぞれ0.1%EMS存在下で培養した。一晩培養後、EMSが存在しない培地に播種した。その後、薬剤を含有する寒天培地を用いて薬剤耐性菌を選択した。
<<ポピュレーション解析>>
BHI培地(brain heart infusion broth)で培養し、一晩培養した培養液をOD576が0.3になるように希釈し、8、16、24、又は28μg/mLの薬剤(VCM)を含む寒天培地に播いた。72時間37℃でインキュベーション後、プレート中のコロニー数を数えた。
<<抗菌活性の測定>>
各種抗菌化合物のMIC値の測定は、Ishii, et al., Sci Rep, 5, 17092, 2015に記載の方法を参考にした。簡潔に記述すると、寒天培地上で培養した各菌株のコロニーをかき取り、滅菌生理食塩水に懸濁後、OD600が0.5になるように調整した。調整した菌液をCa2+およびMg2+を加えたMueller Hinton Broth(MHB、Difco)に1/400に希釈し、96ウェル丸底プレートに分注した。この時、適当な濃度の抗菌化合物をMHBに加えた。その後、分注した菌液入りMHBに抗菌化合物を適当な濃度を各ウェルに2倍ずつ希釈した各種抗菌化合物を加え、37℃で48時間培養後、各ウェル内の菌液の生育を観察した。本実施例においては、MIC値の比較において4倍以上の差がある場合、顕著な差があるとした。
<<カイコの飼育>>
実験に用いたカイコ幼虫は、Kaito, et al., Microb Pathog, 32, 183-190, 2002に記載の方法を参考にし、飼育した。簡潔に記述すると、愛媛蚕種株式会社から購入した受精卵(交雑種ふ・よう×つくば・ね)を、消毒した27℃のインキュベーター内で孵化させて飼育した。飼料には、日本農産工業株式会社から購入した抗生物質入りの人工飼料であるシルクメイト2Sを用いた。4齢眠のカイコを分離し、1終夜絶食させ、脱皮したものを5齢1日目とした。
<<黄色ブドウ球菌カイコ感染モデルを用いた抗菌化合物の治療効果の検証>>
カイコ感染モデルを用いた抗菌化合物の治療効果の検証は、Hamamoto, et al., Antimicrob Agents Chemother, 48, 774-779, 2004に記載の方法を一部改変して行った。5齢1日目のカイコに対して、1.1〜1.2gの人工飼料(抗生物質を含まない、日本農産工業株式会社製)を与え、27℃で約20〜24時間飼育した。翌日、黄色ブドウ球菌の終夜培養菌液の希釈液を50μLカイコに注射し(注射菌量は1匹のカイコ当たり1.1×10細胞)、引き続いて生理食塩水又は様々な濃度の抗菌化合物を50μLずつカイコの体液内に注射した。注射に用いた各抗菌化合物の濃度は、バンコマイシン(VCM)100μg/mL、セフトリアキソン(CTRX)800μg/mL、オキサシリン(OXA)800μg/mLであった。
菌液及び抗菌化合物を注射後、カイコを37℃のインキュベーター内で培養し、経時的にカイコの生死を観察した。また、統計処理としてPrismソフトによるログランクテスト(Log-rank test)を使用し、菌液と抗菌化合物を注射した後のカイコの生存率の経時的変化を求めた。更に、菌液と薬剤を注射した後の経過時間とその時のカイコの生存率をプロットして作成した生存曲線をもとに、黄色ブドウ球菌感染カイコの生存率が50%となるのに要した時間を、半数致死時間(LT50)として求めた。
実施例1
[黄色ブドウ球菌臨床株からのVCM耐性変異株の選択]
まず、RN4220(メチシリン感受性実験室株)を親株として、連続突然変異誘発(serial mutagenesis)によるVCM耐性株を得ることを試みた。EMS処理及びVCM耐性株選択(以下、「EMS/VCM選択」と略記する場合がある)により得られた変異株について、VCMのMIC値を測定した結果を図1Aに示す。
図1Aの横軸はEMS/VCM選択を行った回数、縦軸はVCMのMIC値(μg/mL)を示す。MIC値は菌株を48時間インキュベーション後に微量希釈法により測定した。
その結果、EMS/VCM選択回数が多くなるほど、VCMのMIC値が上昇することがわかった(図1A、◇印)。
次に、日本においてそれぞれ異なる地域で単離された臨床MRSA株及びMSSA株に対してEMS/VCM選択を行った。結果を表1、図1A及び図2に示す。
図1Aの結果、親株に関わらず、EMS/VCM選択により、全ての変異株においてVCMのMIC値が上昇していた。
図2はEtest(登録商標、ビオメリュー社)を用いてMIC値の測定を行った結果である。37℃で72時間インキュベーション後にMIC値を測定した。左がMR3(親株)、右がVR3(VR3−EMS21、変異株)の結果である。
図2の結果より、微量希釈法以外の測定法でも、EMS/VCM選択により得られた変異株について、VICのMIC値が上昇していたことがわかった。
また、10回以上のEMS/VCM選択後、MRSA由来変異株において、オキサシリン(OXA)の感受性が増大していた(MIC値が2μg/mL以下だった)。この結果は、VCM耐性株の選択により、本来MRSAが有する性質(βラクタム抗生物質に対する耐性)が欠損したことを意味し、既に報告されている結果と一致している(Sieradzki et al,1999)。
また、OXA含有寒天培地におけるVCM耐性株の表現型の特徴を調べる過程において、OXA感受性株の中に、OXA耐性株が存在していることがわかった。そこで、得られた変異株を、50μg/mLのOXAが存在する培地に移して、OXA耐性株を単離(OXA選択)し、更にその中からVCM耐性株の単離(EMS/VCM選択)を続けた。OXA選択後にEMS/VCM選択により得られた変異株についてVCMのMIC値を測定した結果を図1B及び表2に示す。
図1Bの横軸はOXA選択後のEMS/VCM選択を行った回数、縦軸はVCMのMIC値(μg/mL)を示す。MIC値は菌株を48時間インキュベーション後に微量希釈法により測定した。
表2中のMIC値は37℃で48時間インキュベーション後、微量希釈法を用いて測定した。「VCM」はバンコマイシン、「VCM+OXA」はオキサシリン(2μg/mL)存在下でのバンコマイシンのMIC値を示す。表2中の単位は、unit(μg/mL)である。VR1〜VR8については、それぞれEMS/VCM選択の途中で、OXA選択を行っており、Mu3及びMu50はOXA選択を行っていない。
表2の結果、合計19〜26回のEMS/VCM選択により、VCMに対して高い耐性を有するMRSA由来変異株が得られた。更に該変異株は、OXAのMIC値も128μg/mL以上であり、OXAに対しても高い耐性を有していた。
また、EMS/VCM選択により得られたVR1〜8については、オキサシリン存在下において、VCMのMIC値は、何れの変異株においても2μg/mLとなった。この結果は、バンコマイシンとオキサシリンを併用することによって、VCMのMIC値が16μg/mL以上であるVRSAの増殖阻害について相乗効果が確認されたことを示している。
検討例1
[VCM耐性株における抗生物質の感受性]
実施例1で得られた変異株(VR3及びVR7)について、MRSA感染治療に用いられる抗生物質(アレベカシン(ABK)、リネゾリド(LNZ)、ダプトマイシン(DAP)、ゲンタマイシン(GTM)及びリファンピシン(RFP))の感受性を検証した。また近年本発明者らによって同定された、細胞膜中のメナキノンを標的としているライソシンE(LYE)(Hamamoto,H et al,Nat Chem Biol.,11,127-33,2015、特許第5878302号等)についても感受性を検証した。更に、バンコマイシンとβラクタム系抗菌化合物との相乗効果についても検証した。結果を表3及び図4に示す。
37℃で48時間インキュベーション後、微量希釈法によりMIC値を測定した。表中の単位は、unit(μg/mL)である。
表3の結果より、実施例1で得られた変異株(VR3及びVR7株)は、VR7に対するダプトマイシンのMIC値を除いて、親株に対するMIC値とほぼ同じMIC値を示していた。これらの結果より、EMS/VCM選択を繰り返すことによる高レベルのVCM耐性獲得には多剤耐性表現型は伴わないことがわかった。
また、表3の結果より、ライソシンEはVR3、VR7何れについても効果があった。よって、ライソシンEはVCM耐性株に対して、代替化学療法の1つとして使用することができることがわかった。ライソシンEは細菌の細菌膜に存在するメナキノンと相互作用し、細胞溶解を引き起こすことがわかっている。このような抗菌メカニズムは他の抗生物質の作用機序とは異なる。以上の結果は、ライソシンEはVCM及び他の抗生物質とは異なる、新規の抗菌ターゲットを有することを示している。
また、表3中、「VCM+OXA」は2μg/mLのOXAを含む培地を用いたとき、「VCM+CFZ」は2μg/mLのCFZを含む培地を用いたとき、「VCM+GTM」は0.25μg/mL(MR3及びVR3)又は8μg/mL(MR7及びVR7)のGTMを含む培地を用いたときの、VCMのMIC値を示す。
表3の結果より、2μg/mLのOXA存在下における、VR3及びVR7に対するVCMのMIC値を微量希釈法によって測定した結果、それぞれ親株とほとんど変わらなかった。OXAと同じくβラクタム系抗生物質であるセファゾリンでも同様に、VCM耐性株に対するVCMの感受性が増加したが、アミノ配糖体系抗生物質であるゲンタマイシンでは変化がなかった。
図4Aは2μg/mLのOXAを含有するミューラーヒントン寒天培地を用い、Etest(登録商標)によりMIC値を測定した結果である。図の写真は37℃で72時間インキュベーション後の結果であり、VR7に対するVCMのMIC値の結果である。
微量希釈法以外の測定法でも、OXAの存在下でのVCM耐性株のVCM感受性が上昇することを確認した。
図4BはOXA存在下で24時間インキュベーション後に、微量希釈法によりVCMのMIC値を測定した結果である。横軸はOXAの濃度(μg/mL)、縦軸はVCMのMIC値(μg/mL)である。○はMR7(親株)、◆はVR7(変異株)の結果を示す。
VR7に対するVCM感受性は、OXAの濃度が0.125μg/mL以上の場合では、用量依存的に増加していた。
図4CはOXA存在/非存在下のポピュレーション解析の結果を示すグラフである。MR7又はVR7を、VCMを含有するBHI寒天培地に播き、37℃72時間インキュベーション後のコロニー数を測定した。グラフ中の「OXA−」はOXAを含まない培地を用いた場合、「OXA+」は2μg/mLのOXAを含有する培地を用いた場合を示す。
OXA存在下におけるVR7のポピュレーション解析を行った結果、OXAの存在により劇的に、VCMに対して感受性を有する変異株が増えていた。
表3及び図4の結果より、本発明により作製されたVCM耐性菌においてβラクタム系抗生物質がVCMと相乗的に作用していると考えられる。
実施例2
[錠剤の製造]
バンコマイシン塩酸塩10mg、セフォジジムナトリウム10mg、ラクトース40mg、デンプン20mg、及び、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース5mgを均一に混合した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース8質量%水溶液を結合剤として湿式造粒法で打錠用顆粒を製造した。これに滑沢性を与えるのに必要なステアリン酸マグネシウムを0.5〜1mg加えてから打錠機を用いて打錠し、錠剤とした。
実施例3
[液剤の製造]
テイコプラニン6mg及びセフトリアキソンナトリウム水和物4mgを、2質量%2−ヒドロキシプロピル−β−サイクロデキストリン水溶液10mLに溶解し、注射用液剤とした。
実施例4
[セフトリアキソンとバンコマイシンとの併用効果]
次に、別のβラクタム系抗生物質であるセフトリアキソン(CTRX)とVCMとの相乗効果の有無を、上記MR1〜8株及びVR1〜8株について、検討した。
CTRX又はVCMのMIC値、若しくはCTRXを併用した時のVCMのMIC値を、37℃で48時間インキュベーション後、微量希釈法により測定した。
結果を表4に示す。表中の単位は、unit(μg/mL)である。VCMと併用したCTRXの濃度は4μg/mLである。
表4の結果、8株のVCM耐性株(VR1〜8株)全てがCTRX耐性(MIC>128μg/mL)を示したが、4μg/mLの CTRX存在下では、VR8株を除く7株において、VCMに対するMIC値が顕著に低下することが分かった。特にVR1、VR2、VR3、VR6、VR7のVCMに対するMIC値は、1/8に低下していた。VR8においても、VCMに対するMIC値は、CTRXにより1/2に低下した。
VR1〜VR8株の8株は、それぞれ異なるMRSAから独立に分離されたVCM体制株である。したがって、βラクタム系抗菌化合物とVCMの相乗効果は、今後出現することが危惧されるVRSA全般に対しても見られるであろうと予想される。
更に、種々の濃度のセフトリアキソン(CTRX)存在下でのVCMとの相乗効果の有無を検討した。結果を図5に示す。
図5中、縦軸がVCMのMIC値(μg/mL)を示し、横軸がCTRXの濃度(μg/mL)を示す。
図5の結果、VR7に対して、0.5μg/mL以上の濃度のCTRXが、VCMに対するMIC値の顕著な低下をもたらすことが分かった。
次に、OXAやCTRX以外の様々なβラクタム系抗菌化合物が、VRSA株のVCMに対するMIC値に及ぼす効果を検討した。結果を表5及び表6に示す。
表中、CFZはセファゾリン、DMPPCはメチシリン、ABPCはアンピシリン、PCGはベンジルペニシリン、CBPCはカルベニシリン、CTRXはセフトリアキソン、CEXはセファレキシン、及びMCIPCはクロキサシリンを示す。
MR7株とVR7株を用い、37℃で48時間インキュベーション後、微量希釈法によりMIC値を測定した。表中の単位は、unit(μg/mL)である。VCMと併用した各βラクタム系抗菌化合物の濃度は2μg/mLである。
表5及び表6の結果、検討した9種類何れのβラクタム系抗菌化合物についても、VR7のVCMに対するMIC値(16μg/mL)が、顕著に低下する(4μg/mL〜1μg/mL)ことが分かった。
実施例5
[カイコ感染モデルを用いた、VCMとβラクタム系抗菌化合物の併用による治療効果の評価]
一般に、抗菌化合物の治療効果の評価には、動物実験が必要不可欠である。なぜなら、抗菌化合物の体内動態の問題のために、試験管内の結果が必ずしも動物体内では反映されないからである。そこで、カイコの感染モデルを用いて、上記で分離したVRSA株による感染症に対するVCMとβラクタム系抗菌化合物の併用による治療効果が見られるか否かを検討した。
VR7に感染したカイコに対して、生理食塩水、VCM(5μg/匹)、OXA(40μg/匹)、及びCTRX(40μg/匹)を単独投与、またはVCMとOXA、VCMとCTRXを併用投与した際の(VCMは5μg/匹、OXA又はCTRXは40μg/匹投与)、各時間におけるカイコの生存率(LT50、半数致死時間)を測定した。注射菌数は1.1×10cfu/匹であり、1群あたりn=5で行った。
また統計処理として、VCMを単独投与した群、及びVCMとOXA又はCTRXを併用投与した群の生存曲線をログランクテストに供し、P値を算出した。
検討結果を図6及び表7に示す。
図6中の縦軸はカイコの生存率(Survival silkworms)を示し、横軸はVR7及び抗菌化合物を投与後の時間を示す。
VR7をカイコの体液中に注射するとカイコは感染死した。一方、VCMとCTRXを併用した場合には、VCM単独に比べ、統計的に有意な差の延命効果が認められた (図6及び表7)。これに対してVCMとOXAを併用投与した群では、VCM単独投与群と比べ延命効果に統計的に有意な差は認められなかった(図6及び表7)。また、40μg/匹のOXA又はCTRXを単独投与したときは、延命効果はみられなかった(表7)。
<実施例のまとめ>
MRSAの変異原処理により得られたVCM高度耐性MRSA(VRSA)を用いて、βラクタム系抗菌化合物(オキサシリン、セフトリアキソン、セファゾリン、メチシリン、アンピシリン、ベンジルペニシリン、カルベニシリン、セファレキシン、クロキサシリン)がインビトロ(in vitro)での抗菌効果の評価系において顕著なVCMに対するMICの低下を引き起こすことを明らかにした。また、VCMとCTRXが、カイコを用いたインビボ(in vivo)での治療効果評価系において、相乗効果をもたらすことを見出した。
一方、VCMとOXAの組み合わせは、カイコ感染モデルでは治療効果を示さなかった。これらの結果は、将来問題となることが危惧される高度VCM耐性MRSA感染症に対して、VCMと特定のβラクタム系抗菌化合物の併用療法が有効であることを示唆された。
これまでに、in vitroにおけるVISAに対する抗菌活性に、VCMとβラクタム系抗菌化合物が相乗効果を示すことが指摘されている (非特許文献2)。しかしながら、従来の試験に用いられているVISAのVCMに対する耐性が低いため(MIC≦8μg/mL)、MICの低下で判定される相乗効果の有無については議論が残っていた。また、動物モデルでの治療効果に対するデータは得られていなかった。
本実施例で、変異原処理により得られたVRSAに対してin vitroにおいて抗菌活性の上昇が見られた8種類のβラクタム系抗菌化合物とVCMの組み合わせが何れも、試験管内での菌の増殖に対して明瞭な相乗効果を示すことを明らかにした。さらに、カイコを用いたin vivoの感染治療評価系においても、CTRXとVCMが相乗効果をもたらすことを見出した(図6、表7)。
一方、カイコを用いたin vivoでの薬効評価において、OXAはVCMとの併用効果を示さなかった(図6、表7)。OXAはヒトにおいて、血中半減期が短く、血清タンパク質の結合率が高く、体内動態に問題があることが指摘されている(Barza, M. & Weinstein, L. Some determinants of the distribution of penicillins and cephalosporins in the body. Practical and theoretical considerations. Ann N Y Acad Sci, 235, 613-620 (1974))。OXAの血中半減期はカイコでも短いことが予測される。よって、OXAとVCMによる治療に対する両者の相乗効果が、カイコ感染モデルで見られない原因であると示唆された。
VCMとβラクタム系抗菌化合の相乗効果は、MRSAの各種株に対してもわずかであるが見出された(表2、表5)。何れのMRSAもVCMに対して感受性である為、MIC値の低下を顕著な差として明確に判定することは困難である。しかしながら、現在問題となっている、MRSAのVCM感受性に関するMIC Creepと呼ばれる現象に対して、VCMとβラクタム系抗菌化合の併用効果は有用性があると示唆された。
既存薬を見直し、適用疾患を拡張させるドラッグリポジショニングが提唱されている(Ashburn, T. T. & Thor, K. B. Drug repositioning: identifying and developing new uses for existing drugs. Nat Rev Drug Discov 3, 673-683, doi:10.1038/nrd1468 (2004))。このドラッグリポジショニングの考え方を元に、耐性菌の出現で使用が不適当であると判定される抗菌化合物を併用することにより再利用するとい「ドラッグリユース(Drug reuse)」という新たなコンセプトを本明細書で提案する。既に安全性や体内動態の問題がないことが立証されている抗菌化合物の組み合わせによる治療法の確立は、急速に出現する薬剤耐性菌感染症を低コストでしかも迅速に克服する上で有用であると示唆された。
本発明である新規の抗菌性合剤は、今後蔓延する可能性が指摘されているバンコマイシン耐性菌に対して有効性を示すことから、新たな感染症治療薬として利用可能である。

Claims (3)

  1. グリコペプチド系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩、及び、βラクタム系抗菌化合物又はその製薬学的に許容される塩の組み合わせに関し、
    連続突然変異誘発(serial mutagenesis)による変異蓄積によって、該グリコペプチド系抗菌化合物に対して耐性低感受性若しくは耐性を獲得させた黄色ブドウ球菌を用い、
    カイコ感染モデルにおけるカイコ生存率の測定、又は、該グリコペプチド系抗菌化合物と該βラクタム系抗菌化合物のカイコ血中半減期の比較によって、
    該組み合わせから治療効果を示す組み合わせを選択することを特徴とする抗菌性合剤の探索方法。
  2. 上記グリコペプチド系抗菌化合物がバンコマイシンである請求項1に記載の抗菌性合剤の探索方法。
  3. 上記βラクタム系抗菌化合物が、セフェム系抗菌化合物、ペニシリン系抗菌化合物、又は、カルバペネム系抗菌化合物である請求項1又は請求項2に記載の抗菌性合剤の探索方法。
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