JP6749593B2 - モノクローナル抗体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、モノクローナル抗体の製造方法及び製造装置に関する。
モノクローナル抗体は、高い抗原結合特異性と結合強度とを有する高感度な検出プローブである。モノクローナル抗体は、ポストゲノム時代の生命科学で必須な研究ツールであるだけでなく、均一な品質の抗体を大量生産できるため、商業的にも有用な高機能生物素材である。そのため、現在、抗体を用いた疾患検査薬、診断薬、医薬品等の市場が拡大し続けている。
モノクローナル抗体の製造方法には、大きく分けて、以下の2通りの方法がある。
1)動物に抗原を免疫してハイブリドーマを作製するハイブリドーマ法、
2)免疫グロブリンの抗原結合領域の遺伝子を遺伝子工学的に発現させるインビトロディスプレイ法。
いずれの手法も一長一短あるが、ハイブリドーマ法はシステム導入が容易であるため、多くの研究所で行われている。しかしながら、ハイブリドーマ法では、手間及び時間がかかり、また、抗原の立体構造を認識する抗体を取得することが困難であった。
1979年にHerzenbergらは、フローサイトメーターを使用するハイブリドーマ法を開発した(例えば、非特許文献1参照。)。ハイブリドーマは分泌型免疫グロブリンと同じ抗原結合特異性を有する膜型免疫グロブリン分子が細胞膜上に発現している。このため、抗原は、分泌型免疫グロブリン、すなわち抗体だけでなく、この膜型免疫グロブリンとも結合する。よって、Herzenbergらが開発した方法では、抗原を蛍光標識することで、目的のハイブリドーマを蛍光標識し、スクリーニング及びクローニングを行う。
また、2009年にMeagherらは、遺伝工学的に改変したハイブリドーマ及びフローサイトメーターを使用するハイブリドーマ法を開発した(例えば、特許文献1〜3、及び非特許文献2参照。)。具体的には、まず、Igα遺伝子が導入されたミエローマ細胞と抗原免疫したマウスから取得したB細胞と、又は、ミエローマ細胞と抗原免疫したマウスから取得し、且つIgα遺伝子が導入されたB細胞と、を細胞融合してハイブリドーマを得る。このハイブリドーマでは、Igα分子がハイブリドーマの細胞膜上に高発現しており、これにより、膜型免疫グロブリンの発現を増強することができる。次いで、該ハイブリドーマと、ビオチン化標識した抗原ペプチドと、Streptavidine−PEとを接触させて、フローサイトメーターを用いてクローニングを実施する。
上述したHerzenbergらが開発した方法及びMeagherらが開発した方法では、最も手間及び時間がかかるスクリーニング及びクローニングを1回のフローサイトメーターによる操作で終えることができる。
米国特許第7629171号明細書 米国特許第7148040号明細書 米国特許第8912385号明細書
Parks D R et al., "Antigen-specific identification and cloning of hybridomas with a fluorescence-activated cell sorter", Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 76, no. 4, p1962-1966, 1979. Price P W et al., "Engineered cell surface expression of membrane immunoglobulin as a means to identify monoclonal antibody-secreting hybridomas", J. Immunol. Methods, vol. 343, no. 1, p28-41, 2009.
非特許文献1に記載の方法では、蛍光標識された抗原と、ハイブリドーマとを接触させ、フローサイトメーターを用いて、検出することで、抗原の立体構造を認識する抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。しかしながら、1979年当時では、蛍光色素の蛍光強度が弱く、また、フローサイトメーターの機械性能が低かったため、抗体取得効率が非常に悪かった。
また、特許文献1〜3、及び非特許文献2に記載の方法では、Igα遺伝子が導入されたミエローマ細胞を利用する必要があった。また、抗体取得効率が低く、改善の余地があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高品質で構造を認識可能なモノクローナル抗体の製造方法及び製造装置を提供する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、一般的な作製方法のハイブリドーマと、構造が保持された状態の抗原とを用いて、フローサイトメーターによって高品質で構造を認識可能なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを検出できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るモノクローナル抗体の製造方法は、アイソタイプがIgG又はIgMであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとビオチン標識された抗原とを2時間触させた後、蛍光物質が結合したアビジンを2時間接触させて、ハイブリドーマ−ビオチン標識された抗原−蛍光物質が結合したアビジンからなる複合体を形成させて、アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを優先的に標識する標識工程と、前記標識工程後の前記アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをフローサイトメトリーにより検出する検出工程と、前記検出工程において蛍光が検出された前記アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを1細胞ずつ播種する播種工程と、を備え、前記抗原が、α−Tubulinである、アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体の製造方法である。
上記態様によれば、高品質で構造を認識可能なモノクローナル抗体の製造方法及び製造装置を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造方法のフローを示す図である。 従来のモノクローナル抗体の製造方法のフローを示す図である。 本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造装置を模式的に示す図である。 試験例1における実施例1で得られた6種類の抗体の多数のサンプルについて、配列認識度(ELISAでの蛍光強度)を縦軸に、構造認識度(フローサイトメーターでの蛍光強度)を横軸にプロットしたグラフである。 実施例2における蛍光標識されていないIgG抗体を産生するハイブリドーマ(コントロール群)、並びに蛍光標識時間が2、6、12、及び24時間であるIgG抗体を産生するハイブリドーマを撮影した画像である。 実施例2における実施例2における蛍光標識されていないIgM抗体を産生するハイブリドーマ(コントロール群)、並びに蛍光標識時間が2、6、12、及び24時間であるIgM抗体を産生するハイブリドーマを撮影した画像である。 実施例2における蛍光標識されていないIgG抗体を産生するハイブリドーマ(コントロール群)、及び蛍光標識時間が2時間であるIgG抗体を産生するハイブリドーマをフローサイトメーターにより検出した結果を示すグラフである。 実施例2におけるIgM抗体を産生するハイブリドーマ(コントロール群)、及び蛍光標識時間が2時間であるIgM抗体を産生するハイブリドーマをフローサイトメーターにより検出した結果を示すグラフである。
≪モノクローナル抗体の製造方法≫
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造方法は、ハイブリドーマと蛍光標識された抗原とを接触させる標識工程と、前記標識工程後のハイブリドーマをフローサイトメトリーにより検出する検出工程と、前記検出工程において蛍光が検出されたハイブリドーマを1細胞ずつ播種する播種工程と、を備える方法である。
本実施形態の製造方法によれば、高品質なモノクローナル抗体を短期間で製造することができる。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造方法のフローを示す図である。また、図1Bは、従来のモノクローナル抗体の製造方法のフローを示す図である。また、本実施形態の製造方法と従来の製造方法とにおける各工程の所用時間を表1に示す。
従来の製造方法では、以下に示すように、スクリーニング及びクローニングが課題であった。具体的には、従来の製造方法では、全ハイブリドーマ中の数%の陽性細胞を手作業でスクリーニングしなければならかった。さらに、長期(1ヶ月)にわたって注意深く細胞を培養し続ける必要があった。ゆえに、手間及び時間を要していた。
一方、本実施形態の製造方法では、フローサイトメーターを用いることで、スクリーニングを1日で行うことができる。また、フローサイトメーターが自動で陽性細胞をソートするため、クローニングの手間も格段に少ない。
さらに、本実施形態の製造方法と従来の製造方法とにおいて得られる抗体の特徴を表2に示す。なお、表2において、「+」とは配列認識又は構造認識ができる抗体であることを示し、「−」とは配列認識又は構造認識ができない抗体であることを示す。また、「○」とは配列認識及び構造認識についての表に示すとおりの特徴を有する抗体を得られることを示し、「×」とは配列認識及び構造認識についての表に示すとおりの特徴を有する抗体を得られないことを示す。
表2に示すように、従来の製造方法では、主にELISAを用いてハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を評価し、スクリーニングを行う。ELISAで使用する抗原は変性状態であり、配列認識抗体が得られる。しかしながら、配列認識抗体は、抗原が天然状態で構造を保持している状態のときは、抗原を認識することが出来ない場合があり有用性はあまり高くない。
これに対し、本実施形態の製造方法では、フローサイトメーターを用いてハイブリドーマの細胞膜上に発現している膜型免疫グロブリンと、構造を保持している抗原との結合により、スクリーニングを行う。よって、構造認識抗体をスクリーニングすることができる。
構造を認識する抗体は、生体内の生理活性を保ったタンパク質と結合することが必須である。よって、本実施形態の製造方法により得られる抗体は、検査診断薬や医薬品に利用できる有用な抗体である。また、従来の製造方法では、スクリーニングにおいて取りこぼしていた構造認識抗体を確実に取得できるため、有用性が高い。
本明細書において、「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な特異性を持つ抗体を意味する。
また、本実施形態の製造方法により得られるモノクローナル抗体のアイソタイプは、特別な限定はなく、例えば、IgA(IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4)、IgM等が挙げられる。中でも、本実施形態の製造方法により得られるモノクローナル抗体のアイソタイプは、最も一般的に用いられ、病原体の侵入に対して起こる免疫反応の多くに関与していることから、IgGであることが好ましい。
以下、本実施形態の製造方法について、図1Aを参照しながら、詳細を説明する。
[標識工程]
まず、例えば、HAT選択培地等を含む培養容器内において、ハイブリドーマと蛍光標識された抗原とを接触させる。
本実施形態における「ハイブリドーマ」は、目的の抗原を免疫した動物由来の脾臓細胞、リンパ節細胞(例えば、B細胞等)、末梢血白血球等の抗体産生細胞と、ミエローマ細胞とを細胞融合させることで得られる。
前記動物としては、ヒト以外の哺乳動物又は鳥類動物が好ましい。前記ヒト以外の哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター等の齧歯類、ウサギ、ヤギ、サル等が挙げられ、これらに限定されない。また、前記鳥類動物としては、例えば、ニワトリ等が挙げられ、これらに限定されない。
また、前記抗体産生細胞としては、ヒト由来のものであってもよい。ヒト抗体産生細胞は、例えば、ヒトの血液から単離された末梢血単核球等の抗体産生細胞を用いればよい。又は、免疫されていないヒト由来のリンパ球等の細胞に対して、抗原を培地中で作用させることによって得られたヒト抗体産生細胞を用いればよい。また、ヒト抗体産生細胞は、EBウイルス等を用いて不死化されていてもよい。
本明細書における「抗原」としては、タンパク質、又は抗体認識部位を含むポリペプチド断片であればよく、特別な限定はない。また、本実施形態において用いられる前記タンパク質又は前記ポリペプチド断片は、天然状態で構造が保持されていることが好ましい。
また、本実施形態における蛍光標識された抗原は、抗原と蛍光物質とが直接的又は間接的に結合していればよい。
抗原と蛍光物質とが直接的に結合している場合、両者がリンカーを介して結合していてもよい。前記リンカーとしては、1〜数個(例えば1〜5個程度等)のアミノ酸からなるペプチドリンカー、ポリエチレングリコール等の合成高分子化合物からなるリンカー等が挙げられ、これらに限定されない。
また、抗原と蛍光物質とが間接的に結合している場合、例えば、ビオチン−アビジン等の相互に結合するタンパク質を活用する方法等が挙げられる。具体的には、ビオチン標識された抗原を調製し、ハイブリドーマとビオチン標識された抗原とを接触させる。さらに、蛍光物質が結合したアビジン(例えば、ストレプトアビジン)を接触させることで、ハイブリドーマ−ビオチン標識された抗原−蛍光物質が結合したアビジンからなる複合体が形成される。これにより、ハイブリドーマは、蛍光物質により間接的に標識される。
前記蛍光物質としては、フローサイトメーターにおいて一般的用いられる公知のモノであれば特別な限定はない。蛍光物質として具体的には、以下の表3に示すもの等が挙げられる。
また、抗原がタンパク質である場合、蛍光物質は蛍光タンパク質であってもよい。前記蛍光タンパク質としては、以下の表4及び5に示すもの等が挙げられる。
また、抗原タンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質を調製することで、蛍光標識された抗原を得ることができる。
前記融合タンパク質は、例えば次のような方法により作製することができる。まず、融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて、宿主を形質転換する。続いて、当該宿主を培養して融合タンパク質を発現させる。培地の組成、培養の温度、時間、誘導物質の添加等の条件は、形質転換体が生育し、融合タンパク質が効率よく産生されるよう、公知の方法に従って当業者が決定できる。また、例えば、選択マーカーとして抗生物質抵抗性遺伝子を発現ベクターに組み込んだ場合、培地に抗生物質を加えることにより、形質転換体を選択することができる。続いて、宿主が発現した融合タンパク質を適宜の方法により精製することにより、融合タンパク質が得られる。
また、ハイブリドーマと蛍光標識された抗原とを接触させる、すなわち標識時間は、12時間未満、好ましくは10時間以下、より好ましくは30分以上6時間以下、特に好ましくは1時間以上5時間以下、最も好ましくは2時間程度である。
標識時間が上記下限値以上であることにより、ハイブリドーマの細胞膜上の膜型免疫グロブリンと抗原とが万遍なく接触し、抗原抗体反応を行うことができる。また、標識時間が上記上限値以下であることにより、短時間で効率的にハイブリドーマを標識することができる。
さらに、標識時間が上記上限値以下であることにより、後述の実施例に示すように、ハイブリドーマのうち、細胞膜上の膜型免疫グロブリンのアイソタイプがIgGであるハイブリドーマを優先的に標識することができる。これは、IgGのほうがIgMよりも構造的に抗原が接触しやすく、標識されやすいためであると推察される。
このことは、上述のHerzenbergらが開発した方法及びMeagherらが開発した方法等の従来のフローサイトメーターを用いた方法では、知られておらず、本発明者らが初めて見出したものである。
これに対し、本実施形態の製造方法では、標識時間が上記上限値以下であることで、ハイブリドーマのうち、細胞膜上の膜型免疫グロブリンのアイソタイプがIgGであるハイブリドーマを優先的に標識することができる。
また、標識工程と並行して、又は標識工程の後に、7−Amino−Actinomycin D(7−AAD)等を用いて、ハイブリドーマのうち、死細胞を予め染色しておいてもよい。このとき、抗原に結合している蛍光物質と、死細胞を判別するための蛍光物質とは、両者の最大蛍光波長が異なる組み合わせを適宜選択すればよい。
[検出工程]
次いで、標識工程後のハイブリドーマをフローサイトメトリーにより検出する。検出結果の評価方法としては、例えば、未標識のハイブリドーマにおけるシグナルの最頻値から2倍以上、好ましくは2.5倍以上、より好ましくは5倍以上の蛍光強度を示すハイブリドーマを陽性細胞とすればよい。
また、細胞のソーティング効率を高めるために、検出工程の前、又は複数のサンプルを用いる場合は、サンプル間において、フローサイトメーターの流路を洗浄する洗浄工程を備えていてもよい。
洗浄工程においては、公知の洗浄液を用いて洗浄を行えばよい。具体的には、例えば、洗浄力が高く、適度な粘度の洗浄液(例えば、次亜塩素酸塩、2%程度の水酸化ナトリウム、及び界面活性剤(例えば、アルキルアミンオキシド等)を含む市販の配管洗浄剤等)を用いることで流路内に残存するタンパク質等を充分に洗浄することができる。
[播種工程]
次いで、検出工程において蛍光が検出されたハイブリドーマ、すなわち陽性と評価されたハイブリドーマを1細胞ずつ播種する。本実施形態の製造方法では、フローサイトメーターを用いることで、陽性と評価されたハイブリドーマを自動的に1細胞ずつ培養容器に播種することができるため、クローニングの手間がかからない。
培養容器としては、ハイブリドーマの培養に用いられる公知のものであればよく、材質及び形状に特別な限定はない。例えば、培養容器としては、任意の数のウェルが配置されたマルチウェルプレート、シャーレ等が挙げられる。ウェルの数としては、プレート1枚当たり、たとえば、6、12、24、96、384、1536個等が挙げられる。また、培養容器の底面は、陽性と評価されたハイブリドーマを播種する際の衝撃が少なく、細胞生存率をより高く保つことができることから、縦断面の形状がU字型である底面であってもよい。
また、本実施形態の製造方法は、標識工程の前に、免疫工程、細胞融合工程、及び増殖工程等を備えていてもよい。また、播種工程の後に、培養工程、評価工程等を備えていてもよい。
[免疫工程]
免疫する動物としては、上述の[標識工程]において例示されたものと同様のものが挙げられる。
免疫感作方法は、例えば、マウスを免疫する場合、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮膚内等へ抗原を注射することにより行なう。接種間隔、接種量等は、接種方法により異なるが、例えば、マウスの腹腔内に抗原を接種し免疫する場合、抗原を1回免疫した後、2週間後に再度免疫し、合計2回間程度免疫を行えばよい。さらに、最後の免疫から、例えば3日後程度で、免疫感作された動物から、脾臓細胞、リンパ節細胞(例えば、B細胞等)、末梢血白血球等の抗体産生細胞を取り出せばよい。
[細胞融合工程]
次いで、免疫工程で得られたB細胞等の抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合する。
細胞融合に用いられるミエローマ細胞としては、再生経路(サルベージ経路)で必要なHGPRT欠損株が好ましく用いられる。また、ミエローマ細胞としては、公知の種々の細胞株を使用することができる。抗体産生細胞及びミエローマ細胞は、それらが融合可能であれば、異なる動物種起源のものでもよいが、同一の動物種起源のものであることが好ましい。
ミエローマ細胞は、細胞融合前の準備操作として、通常用いられるイーグル最小基本培地(MEM)、ダルベッコ改良MEM、PRMI1640等の基本培地に、10%CS(子ウシ血清)、10%FCS(ウシ胎児血清)等を添加した培地で、予め培養されたものを用いればよい。
細胞融合の方法としては、例えば、公知のケーラーおよびミルスタインの方法(例えば、Kohler & Milstein, Nature, 256:495,1975. 参照)等が挙げられる。具体的には、細胞融合は、ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを1:5〜1:20の割合で混合することにより行なえばよい。この際、ポリエチレングリコール、センダイウィルス等の融合剤を用いてもよい。
[増殖工程]
次いで、細胞融合後、HAT選択培地で培養することにより、抗体産生細胞と融合したハイブリドーマだけを増殖させることができる。
HAT選択培地は、ヒポキサンチン(hypoxantin)、アミノプテリン(aminopterin)、チミジン(thymidin)を含む培地である。DNA合成の材料となるヌクレオチドを作るために、細胞内には新生経路(de novo pathway)と、再生経路(サルベージ経路)とが存在する。アミノプテリンは新生経路を阻害するため、これが培地に含まれていると、細胞は再生経路だけによってヌクレオチドを供給しなければならない。よって、サルベージ経路に欠損をもつ細胞は、増殖できず死滅する。この現象を利用して、サルベージ経路が欠損したミエローマ細胞のみ、又はミエローマ同士が細胞融合したハイブリドーマでは増殖できず死滅する。また、抗体産生細胞のみ、又は抗体産生細胞同士が細胞融合したハイブリドーマでは、増殖することができるが不死化されていないため、一定期間の培養の後、死滅する。一方、ミエローマ細胞と抗体産生細胞とが細胞融合したハイブリドーマは、不死化されているため制限なく増殖しつづけることができ、サルベージ経路によりヌクレオチドを作ることができる。そのため、HAT選択培地で培養することで、ミエローマ細胞と抗体産生細胞とが細胞融合したハイブリドーマのみを選択的に増殖させることができる。
前記HAT培地は、例えばインターロイキンー6(IL−6)等の細胞増殖因子を含んでいてもよい。
増殖期間は、例えば3日以上10日以下であればよく、例えば5日程度であればよい。
増殖環境としては、ハイブリドーマを増殖させるための公知の環境下であればよい。具体的には、温度は、例えば20℃以上40℃以下であればよく、例えば約5%のCO条件下であってもよい。
[培養工程]
播種工程後の陽性と評価されたハイブリドーマを、HAT選択培地等を用いて培養することで、モノクローナル抗体を産生させればよい。培養環境としては、ハイブリドーマを増殖させるための公知の環境下であればよい。具体的には、温度は、例えば20℃以上40℃以下であればよく、例えば約5%のCO条件下であってもよい。
モノクローナル抗体は、培養液中に含まれ、培養液をそのまま用いてもよく、必要に応じて精製しても用いてもよい。
[評価工程]
また、培養工程後に得られたモノクローナル抗体は、その抗原特異性を、公知のスクリーニング方法を用いて、評価してもよい。
前記スクリーニング方法としては、例えば、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)法、CLEIA(Chemiluminescent Enzyme Immuno Assay)法(化学発光酵素免疫測定法)、ウエスタンブロッティング法、免疫沈降法、免疫染色法、フローサイトメトリー等が挙げられる。
上記のいずれの方法においても、得られたモノクローナル抗体と、抗原又は該抗原が固定化された担体と、による抗体抗原反応を行い、標識された2次抗体等を用いて検出することで、モノクローナル抗体の抗原特異性を評価することができる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るモノクローナル抗体の製造方法は、前記標識工程において、異なる抗原に対する抗体を産生する2種類以上の前記ハイブリドーマと、2種類以上の前記蛍光標識された抗原とを接触させる方法である。
本実施形態におけるハイブリドーマは、例えば、2種類以上の異なる抗原を免疫した1個体の動物から得られた抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合させて得てもよい。又は、例えば、2個体以上の同一種の動物において、それぞれ異なる抗原を免疫して得られた抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合させて得てもよい。いずれの場合においても、複数種類の抗体を産生するハイブリドーマが混在した形で得られる。
よって、本実施形態における標識工程において、それぞれ異なる蛍光物質により標識されており、且つ免疫抗原と対応した種類の抗原を含むことにより、複数のモノクローナル抗体を同時にスクリーニング及びクローニングすることができる。
≪モノクローナル抗体の製造装置≫
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造装置は、ハイブリドーマと蛍光標識された抗原とを含む標識部と、フローサイトメーターと、前記蛍光標識された抗原が結合されたハイブリドーマを1ウェルに1細胞ずつ含む培養容器を有する細胞播種部と、を備える装置である。
本実施形態の製造装置によれば、高品質なモノクローナル抗体を短期間で製造することができる。
本実施形態の製造方法により得られるモノクローナル抗体のアイソタイプは、特別な限定はなく、上述の≪モノクローナル抗体の製造方法≫において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、本実施形態の製造方法により得られるモノクローナル抗体のアイソタイプは、最も一般的に用いられ、病原体の侵入に対して起こる免疫反応の多くに関与していることから、IgGであることが好ましい。
図2は、本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造装置を模式的に示す図である。以下、本実施形態の製造装置について、図2を参照しながら、詳細を説明する。
図2に示すモノクローナル抗体の製造装置1Aは、標識部10と、フローサイトメーター20と、細胞播種部30とを備える。各構成部について以下に説明する。
[標識部]
標識部10は、ハイブリドーマ2と蛍光標識された抗原4とを含む。標識部1は、例えば、図2に示すように、HAT選択培地等の培養液を含む培養容器1内にハイブリドーマ2と蛍光標識された抗原4とを含む形態であってもよい。
ハイブリドーマ2のうち、目的抗体産生ハイブリドーマ2aは、細胞膜上に存在する膜型免疫グロブリン3と、抗原4aとが特異的に結合することで、蛍光物質4bにより標識されている。一方、その他の抗体産生ハイブリドーマ2bは、細胞膜上に存在する膜型免疫グロブリンと、抗原とが結合しないため、標識されていない。
抗原の種類及び抗原を標識する蛍光物質としては、上述の≪モノクローナル抗体の製造方法≫において例示されたものと同じものが挙げられる。
[フローサイトメーター]
フローサイトメーター20は、ハイブリドーマ2を1細胞ずつソートさせ、蛍光を検出することができるものあれば、特別な限定はなく、公知の装置をそのまま用いればよい。具体的には、例えば、MoFlo Astrios EQ/EQs(ベックマンカウンター社製)、MoFlo XDP(ベックマンカウンター社製)等が挙げられ、これらに限定されない。
フローサイトメーター20は、図2に示すように、例えば、第1の検出器5、第2の検出器6、励起光源7、エアソーター8等を備えていてもよい。
前記第1の検出器5は、例えば、蛍光を検出するためのものであって、特別な限定はない。また、前記第2の検出器6は、例えば、ハイブリドーマのサイズ等を計測するためのものであって、特別な限定はない。また、励起光源7は、ハイブリドーマに結合した蛍光物質を励起させるためのものであって、特別な限定はない。また、ソーター8は、例えば、空気;水等の液体等の噴射物質8aによって、その他の抗体産生ハイブリドーマ2bを系外に排出させるためのものであって、特別な限定はない。
[細胞播種部]
細胞播種部30は、培養容器9を有する。培養容器9内には、蛍光標識された抗原が結合されたハイブリドーマが1ウェルに1細胞ずつ含まれる。
[使用方法]
図2に示すモノクローナル抗体の製造装置1Aは、以下に示す方法で用いればよい。まず、標識部10において、ハイブリドーマ2を含む培養容器1に、蛍光標識された抗原4を添加する。これにより、目的抗体産生ハイブリドーマにおいてのみ、細胞膜上に存在する膜型免疫グロブリン3と抗原4aとが特異的に結合し、蛍光物質4bにより間接的又は直接的に標識される。次いで、標識後のハイブリドーマ2をフローサイトメーターに導入する。導入されたハイブリドーマ2は、1細胞ずつにソートされて、流路を流れる。次いで、励起光源7から光が照射され、ハイブリドーマに間接的又は直接的に結合した蛍光物質が蛍光を発する。蛍光は第1の検出器5において検出される。また、ハイブリドーマのサイズ等は第2の検出器6において検出される。次いで、ソーター8から噴射された空気等の噴射物質8aにより、その他の抗体産出ハイブリドーマ2bは系外に除外される。一方、目的抗体産生ハイブリドーマ2aは、細胞播種部30において、培養容器9内に1ウェル1細胞ずつ播種される。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るモノクローナル抗体の製造装置は、前記標識部が2種類以上の前記ハイブリドーマと2種類以上の前記蛍光標識された抗原とを含む装置である。
本実施形態におけるハイブリドーマは、例えば、2種類以上の異なる抗原を免疫した1個体の動物から得られた抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合させて得てもよい。又は、例えば、2個体以上の同一種の動物において、それぞれ異なる抗原を免疫して得られた抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合させて得てもよい。いずれの場合においても、複数種類の抗体を産生するハイブリドーマが混在した形で得られる。
よって、標識部において、それぞれ異なる蛍光物質により標識されており、且つ免疫抗原と対応した種類の抗原を含むことにより、複数のモノクローナル抗体を同時にスクリーニング及びクローニングすることができる。
[使用方法]
本発明の第2実施形態に係るモノクローナル抗体の製造装置は、以下に示す方法で用いればよい。まず、標識部において、異なる抗原に対する抗体を産生する2種類以上の前記ハイブリドーマを含む培養容器に、2種類以上の蛍光標識された抗原を添加する。このとき、複数種類の目的抗体産生ハイブリドーマを同時に、蛍光標識された抗原により標識することができる。次いで、標識後のハイブリドーマをフローサイトメーターに導入する。導入されたハイブリドーマは、1細胞ずつにソートされて、流路を流れる。次いで、励起光源から光が照射され、ハイブリドーマに間接的又は直接的に結合した蛍光物質が蛍光を発する。このとき、また、抗原に結合している蛍光物質の種類が異なることで、検出される蛍光の波長が異なる。そのため、検出された蛍光波長に基づいて、続く、細胞播種部において、抗原の種類ごとに、別々の培養容器に、ハイブリドーマを1細胞ずつ播種することもできる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.モノクローナル抗体の製造
(1)マウスの免疫
まず、マウスの腹腔足底部から抗原、キャリアタンパク質、及び自家調製アジュバンドの混合液を注入し、1週間後にもう一度免疫し、計2回免疫した。抗原については、以下の表6に示す6種類の抗原をそれぞれ免疫した。なお、表6において、いずれの抗原も公知のタンパク質である。また、全長タンパク質ではなく、抗体認識部位を含むポリペプチドを抗原として用いた。
(2)B細胞の回収
次いで、最後の免疫から3日後(最初の免疫から10日後)に、マウスの脾臓を摘出し、B細胞を回収した。
(3)細胞融合及びハイブリドーマの増殖
次いで、B細胞とマウスミエローマ細胞(SP2/0−Ag14)とを細胞融合させてハイブリドーマを得た。次いで、HAT選択培地を用いて5日間培養した。
(4)ハイブリドーマの標識
次いで、ハイブリドーマにビオチン標識された各抗原を添加し、120分インキュベートした。次いで、さらに、PE(Phycoerythrin)標識されたストレプトアビジン(BioRad社製)を添加し、2時間インキュベートした。これにより、ハイブリドーマを間接的に蛍光標識した。
(5)フローサイトメーターによるスクリーニング及びクローニング
次いで、フローサイトメーター(ベックマンカウンター社製)に、ハイブリドーマを導入し、スクリーニングを行った。このとき、未標識のハイブリドーマにおけるシグナルの最頻値から5倍以上の強度を持つものを、陽性細胞の蛍光強度とした。この陽性細胞を96ウェルプレートに1細胞ずつ分取し、12日間培養した。各陽性細胞から得られた抗体について、評価を行った。
[比較例1]
従来のELISAによるハイブリドーマのスクリーニング及び限界希釈法による単一クローンニングにより、モノクローナル抗体を製造した。詳細は、以下に示すとおりである。
1.モノクローナル抗体の製造
(1)マウスの免疫
実施例1の1.の(1)と同様の方法を用いて、マウスにα−Tubulinを抗原として免疫した。
(2)B細胞の回収
次いで、最初の免疫から17日後に、実施例1の1.の(2)と同様の方法を用いて、B細胞を回収した。
(3)細胞融合及びハイブリドーマの増殖
次いで、実施例1の1.の(3)と同様の方法を用いて、細胞融合を行い、ハイブリドーマを96ウェルプレートに播種し、HAT選択培地を用いて12日間培養した。
(4)ELISAによるスクリーニング
次いで、ハイブリドーマの培養液中に分泌された抗体を用いて、実施例1の2.の(1)と同様の方法を用いてELISAを行った。
(5)限界希釈法によるクローニング
次いで、ELISAにより陽性であったハイブリドーマを限界希釈法で一つのウェルに理論上1細胞しか入らないように希釈し、96ウェルプレートに播種し、12日間培養した。各陽性細胞から得られた抗体について、評価を行った。
[試験例1]
1.モノクローナル抗体の評価
(1)ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)による評価
実施例1及び比較例1の各陽性細胞から得られた抗体について、固相に各抗原が固定化されたプレートを用いて、ELISAを行った。まず、各抗原が固定化されたプレートに各抗体を含む溶液(各陽性細胞の培養上清)を添加し、60分インキュベートした。次いで、HRP結合抗マウス抗体(MBL社製)を含む溶液(1万倍希釈)を滴下し、60分インキュベートした。次いで、Powerscan HT(DS−Pharma Biomedical製)を用いて、検出した。ELISAにおいても陽性であったサンプルの数を計測し、陽性率({(陽性サンプル数/全サンプル数)×100})を算出した。結果を表6に示す。
(2)ウエスタンブロッティングによる評価
実施例1及び比較例1の各陽性細胞から得られた抗体について、抗原を電気泳動し、転写したメンブレンを用いて、ウエスタンブロッティングを行った。まず、抗原がブロットされているメンブレンを、スキムミルク溶液を用いて、ブロッキングした。次いで、各抗体を含む溶液(各陽性細胞の培養上清を2倍希釈したもの)を添加し、120分インキュベートした。次いで、HRP結合抗マウス抗体(MBL社製)を含む溶液(5万倍希釈)を滴下し、60分インキュベートした。次いで、LAS−4000 mini(富士フィルム社製)を用いて、検出した。ウエスタンブロッティングにおいても陽性であったサンプルの数を計測し、陽性率({(陽性サンプル数/全サンプル数)×100})を算出した。また、交差反応性を示さなかったサンプルの数を計測し、全サンプル数に対する交差反応性を示さなかったサンプルの割合(%)を算出した。結果を表6に示す。表6において、「WB」がウエスタンブロッディングによる評価結果である。
(3)アイソタイプの評価
実施例1及び比較例1の各陽性細胞から得られた抗体について、上述の(2)の「ウエスタンブロッティングによる評価」又はIso Strip マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(シグマアルドリッチ社製)を用いてアイソタイプを評価した。
ウエスタンブロッティングを用いた評価方法では、上述の(2)の「ウエスタンブロッティングによる評価」の結果において、検出されたバンドの大きさの違いから、アイソタイプを評価した。
また、Iso Strip マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキットを用いた評価方法では、具体的には、まず、キット中のディベロプメントチューブに、各抗体を含む溶液(10倍希釈)をピペットで滴下し、揺らして攪拌した。次いで、チューブにアイソタイプ用ストリップを浸漬し、5分間静置した。次いで、ストリップの青色のバンドが検出された部分(κ又はλ部分、及び特定のクラス又はサブクラスの部分)を確認し、アイソタイプがIgGである抗体の割合を算出した。結果を表6に示す。
表6から、比較例1で得られた陽性細胞ではELISAでの陽性率が8.75%であった。これに対し、実施例1で得られた6種類の抗原に対する各陽性細胞では、全てにおいて陽性率の向上が見られた。
また、ウエスタンブロッティングでの陽性率が大幅に向上していた。その中でも、交差反応性のない抗体、すなわち、抗原を特異的に認識する抗体の割合について、比較例1での割合に対し、実施例1での割合は、抗チューブリン抗体では35倍で、抗原Xでは260倍であった。
さらに、一般的に抗体として使用されるアイソタイプであるIgGの抗体の割合についても、比較例1での割合に対し、実施例1での割合は、6種類全てにおいて向上した。
以上のことから、実施例1の方法により、ELISA、ウエスタンブロッティングにおいて使用できる高品質な抗体を得ることができた。
また、実施例1で得られた6種類の抗体の多数のサンプルについて、配列認識度(ELISAでの蛍光強度)を縦軸に、構造認識度(フローサイトメーターでの蛍光強度)を横軸にプロットしたグラフを図3に示す。図3において、「配列認識」とはELISAでの蛍光強度を示し、「構造認識度」とはフローサイトメーターでの蛍光強度を示す。
図3から、多くの抗体では、構造認識と配列認識とに相関がみられ、構造認識及び配列認識を同程度認識していた。一方、図3の右下において、配列よりも構造を優位に認識する抗体が存在した。この抗体では、ELISAでは抗原と反応せず陽性を示さなかったが、ウエスタンブロッティングでは抗原と反応し、陽性を示した。
構造を認識する抗体は、生体内の生理活性を保ったタンパク質と結合することが必須である。
以上のことから、実施例1の方法により、構造を認識する抗体を得られることが明らかとなった。
[実施例2]
1.モノクローナル抗体の製造
(1)マウスの免疫
実施例1の1.の(1)と同様の方法を用いて、マウスにα−Tubulinを抗原として免疫した。
(2)B細胞の回収
次いで、最後の免疫から3日後(最初の免疫から10日後)に、実施例1の1.の(2)と同様の方法を用いて、B細胞を回収した。
(3)細胞融合及びハイブリドーマの増殖
次いで、実施例1の1.の(3)と同様の方法を用いて、ハイブリドーマを作製し、培養した。
(4)ハイブリドーマの標識
次いで、試験例1の1.の(3)と同様の方法を用いて、アイソタイプを評価し、IgG抗体を産生するハイブリドーマと、IgM抗体を産生するハイブリドーマを選別した。次いで、IgG抗体又はIgM抗体を産生するハイブリドーマにビオチン標識された各抗原を添加し、120分インキュベートした。次いで、さらに、PE標識されたストレプトアビジン(BioRad社製)を添加し、2、6、12、及び24時間インキュベートした。また、コントロールとして、PE標識されたストレプトアビジンを添加しないハイブリドーマ(コントロール群)も準備した。これらのハイブリドーマを、蛍光顕微鏡(TCS SP8、Leica社製)を用いて撮像した。結果を図4A及び図4Bに示す。
図4A及び図4Bから、IgG抗体を産生するハイブリドーマでは、蛍光標識の時間が2時間であっても、細胞膜上の膜型免疫グロブリンIgGが標識され、蛍光が検出された。
一方、IgM抗体を産生するハイブリドーマでは、蛍光標識の時間が2、6時間では、蛍光がほとんど検出されず、12時間以降において蛍光が検出されるようになり、24時間では、IgG抗体を産生するハイブリドーマと同程度蛍光が検出された。
(5)フローサイトメーターによるスクリーニング
また、PE標識されたストレプトアビジンの添加から2時間後IgG抗体又はIgM抗体を産生するハイブリドーマをフローサイトメーター(ベックマンカウンター社製)にかけた。結果を図5A及び図5Bに示す。図5A及び図5Bにおいて、縦軸は、細胞数を示し、横軸はPEの蛍光強度を示す。
図5A及び図5Bから、蛍光標識の時間が2時間では、コントロール群と比較して、IgG抗体を産生するハイブリドーマでは2.5倍の蛍光強度が検出された。一方、コントロール群とIgM抗体を産生するハイブリドーマとでは同程度の蛍光強度であった。
以上のことから、蛍光標識の時間を短時間(12時間未満、好ましくは10時間以下、より好ましくは6時間以下、特に好ましくは5時間以下、最も好ましくは2時間程度)とすることで、IgG抗体を産生するハイブリドーマを優先的に得ることができることが明らかとなった。
本実施形態のモノクローナル抗体の製造方法及び製造装置によれば、高品質なモノクローナル抗体を短期間で製造することができる。また、得られたモノクローナル抗体は抗原の構造を認識することができるものである。よって、前記モノクローナル抗体は、疾患検査薬、疾患診断薬、及び医薬品等に応用することができる。
1A…モノクローナル抗体の製造装置、1,9…培養容器、2…ハイブリドーマ、2a…目的抗体産生ハイブリドーマ、2b…その他の抗体産生ハイブリドーマ、3…膜型免疫グロブリン、4…蛍光標識された抗原、4a…抗原、4b…蛍光物質、5…第1の検出器、6…第2の検出器、7…励起光源、8…ソーター、8a…噴射物質、10…標識部、20…フローサイトメーター、30…細胞播種部。

Claims (1)

  1. アイソタイプがIgG又はIgMであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとビオチン標識された抗原とを2時間触させた後、蛍光物質が結合したアビジンを2時間接触させて、ハイブリドーマ−ビオチン標識された抗原−蛍光物質が結合したアビジンからなる複合体を形成させて、アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを優先的に標識する標識工程と、
    前記標識工程後の前記アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをフローサイトメトリーにより検出する検出工程と、
    前記検出工程において蛍光が検出された前記アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを1細胞ずつ播種する播種工程と、
    を備え
    前記抗原が、α−Tubulinである、アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体の製造方法。
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