JP6749593B2 - モノクローナル抗体の製造方法 - Google Patents
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Description
1)動物に抗原を免疫してハイブリドーマを作製するハイブリドーマ法、
2)免疫グロブリンの抗原結合領域の遺伝子を遺伝子工学的に発現させるインビトロディスプレイ法。
いずれの手法も一長一短あるが、ハイブリドーマ法はシステム導入が容易であるため、多くの研究所で行われている。しかしながら、ハイブリドーマ法では、手間及び時間がかかり、また、抗原の立体構造を認識する抗体を取得することが困難であった。
また、特許文献1〜3、及び非特許文献2に記載の方法では、Igα遺伝子が導入されたミエローマ細胞を利用する必要があった。また、抗体取得効率が低く、改善の余地があった。
本発明の第1態様に係るモノクローナル抗体の製造方法は、アイソタイプがIgG又はIgMであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとビオチン標識された抗原とを2時間接触させた後、蛍光物質が結合したアビジンを2時間接触させて、ハイブリドーマ−ビオチン標識された抗原−蛍光物質が結合したアビジンからなる複合体を形成させて、アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを優先的に標識する標識工程と、前記標識工程後の前記アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをフローサイトメトリーにより検出する検出工程と、前記検出工程において蛍光が検出された前記アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを1細胞ずつ播種する播種工程と、を備え、前記抗原が、α−Tubulinである、アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体の製造方法である。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造方法は、ハイブリドーマと蛍光標識された抗原とを接触させる標識工程と、前記標識工程後のハイブリドーマをフローサイトメトリーにより検出する検出工程と、前記検出工程において蛍光が検出されたハイブリドーマを1細胞ずつ播種する播種工程と、を備える方法である。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造方法のフローを示す図である。また、図1Bは、従来のモノクローナル抗体の製造方法のフローを示す図である。また、本実施形態の製造方法と従来の製造方法とにおける各工程の所用時間を表1に示す。
一方、本実施形態の製造方法では、フローサイトメーターを用いることで、スクリーニングを1日で行うことができる。また、フローサイトメーターが自動で陽性細胞をソートするため、クローニングの手間も格段に少ない。
これに対し、本実施形態の製造方法では、フローサイトメーターを用いてハイブリドーマの細胞膜上に発現している膜型免疫グロブリンと、構造を保持している抗原との結合により、スクリーニングを行う。よって、構造認識抗体をスクリーニングすることができる。
構造を認識する抗体は、生体内の生理活性を保ったタンパク質と結合することが必須である。よって、本実施形態の製造方法により得られる抗体は、検査診断薬や医薬品に利用できる有用な抗体である。また、従来の製造方法では、スクリーニングにおいて取りこぼしていた構造認識抗体を確実に取得できるため、有用性が高い。
また、本実施形態の製造方法により得られるモノクローナル抗体のアイソタイプは、特別な限定はなく、例えば、IgA(IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4)、IgM等が挙げられる。中でも、本実施形態の製造方法により得られるモノクローナル抗体のアイソタイプは、最も一般的に用いられ、病原体の侵入に対して起こる免疫反応の多くに関与していることから、IgGであることが好ましい。
以下、本実施形態の製造方法について、図1Aを参照しながら、詳細を説明する。
まず、例えば、HAT選択培地等を含む培養容器内において、ハイブリドーマと蛍光標識された抗原とを接触させる。
本実施形態における「ハイブリドーマ」は、目的の抗原を免疫した動物由来の脾臓細胞、リンパ節細胞(例えば、B細胞等)、末梢血白血球等の抗体産生細胞と、ミエローマ細胞とを細胞融合させることで得られる。
前記動物としては、ヒト以外の哺乳動物又は鳥類動物が好ましい。前記ヒト以外の哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター等の齧歯類、ウサギ、ヤギ、サル等が挙げられ、これらに限定されない。また、前記鳥類動物としては、例えば、ニワトリ等が挙げられ、これらに限定されない。
また、前記抗体産生細胞としては、ヒト由来のものであってもよい。ヒト抗体産生細胞は、例えば、ヒトの血液から単離された末梢血単核球等の抗体産生細胞を用いればよい。又は、免疫されていないヒト由来のリンパ球等の細胞に対して、抗原を培地中で作用させることによって得られたヒト抗体産生細胞を用いればよい。また、ヒト抗体産生細胞は、EBウイルス等を用いて不死化されていてもよい。
抗原と蛍光物質とが直接的に結合している場合、両者がリンカーを介して結合していてもよい。前記リンカーとしては、1〜数個(例えば1〜5個程度等)のアミノ酸からなるペプチドリンカー、ポリエチレングリコール等の合成高分子化合物からなるリンカー等が挙げられ、これらに限定されない。
前記融合タンパク質は、例えば次のような方法により作製することができる。まず、融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて、宿主を形質転換する。続いて、当該宿主を培養して融合タンパク質を発現させる。培地の組成、培養の温度、時間、誘導物質の添加等の条件は、形質転換体が生育し、融合タンパク質が効率よく産生されるよう、公知の方法に従って当業者が決定できる。また、例えば、選択マーカーとして抗生物質抵抗性遺伝子を発現ベクターに組み込んだ場合、培地に抗生物質を加えることにより、形質転換体を選択することができる。続いて、宿主が発現した融合タンパク質を適宜の方法により精製することにより、融合タンパク質が得られる。
標識時間が上記下限値以上であることにより、ハイブリドーマの細胞膜上の膜型免疫グロブリンと抗原とが万遍なく接触し、抗原抗体反応を行うことができる。また、標識時間が上記上限値以下であることにより、短時間で効率的にハイブリドーマを標識することができる。
このことは、上述のHerzenbergらが開発した方法及びMeagherらが開発した方法等の従来のフローサイトメーターを用いた方法では、知られておらず、本発明者らが初めて見出したものである。
これに対し、本実施形態の製造方法では、標識時間が上記上限値以下であることで、ハイブリドーマのうち、細胞膜上の膜型免疫グロブリンのアイソタイプがIgGであるハイブリドーマを優先的に標識することができる。
次いで、標識工程後のハイブリドーマをフローサイトメトリーにより検出する。検出結果の評価方法としては、例えば、未標識のハイブリドーマにおけるシグナルの最頻値から2倍以上、好ましくは2.5倍以上、より好ましくは5倍以上の蛍光強度を示すハイブリドーマを陽性細胞とすればよい。
洗浄工程においては、公知の洗浄液を用いて洗浄を行えばよい。具体的には、例えば、洗浄力が高く、適度な粘度の洗浄液(例えば、次亜塩素酸塩、2%程度の水酸化ナトリウム、及び界面活性剤(例えば、アルキルアミンオキシド等)を含む市販の配管洗浄剤等)を用いることで流路内に残存するタンパク質等を充分に洗浄することができる。
次いで、検出工程において蛍光が検出されたハイブリドーマ、すなわち陽性と評価されたハイブリドーマを1細胞ずつ播種する。本実施形態の製造方法では、フローサイトメーターを用いることで、陽性と評価されたハイブリドーマを自動的に1細胞ずつ培養容器に播種することができるため、クローニングの手間がかからない。
免疫する動物としては、上述の[標識工程]において例示されたものと同様のものが挙げられる。
免疫感作方法は、例えば、マウスを免疫する場合、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮膚内等へ抗原を注射することにより行なう。接種間隔、接種量等は、接種方法により異なるが、例えば、マウスの腹腔内に抗原を接種し免疫する場合、抗原を1回免疫した後、2週間後に再度免疫し、合計2回間程度免疫を行えばよい。さらに、最後の免疫から、例えば3日後程度で、免疫感作された動物から、脾臓細胞、リンパ節細胞(例えば、B細胞等)、末梢血白血球等の抗体産生細胞を取り出せばよい。
次いで、免疫工程で得られたB細胞等の抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合する。
細胞融合に用いられるミエローマ細胞としては、再生経路(サルベージ経路)で必要なHGPRT欠損株が好ましく用いられる。また、ミエローマ細胞としては、公知の種々の細胞株を使用することができる。抗体産生細胞及びミエローマ細胞は、それらが融合可能であれば、異なる動物種起源のものでもよいが、同一の動物種起源のものであることが好ましい。
ミエローマ細胞は、細胞融合前の準備操作として、通常用いられるイーグル最小基本培地(MEM)、ダルベッコ改良MEM、PRMI1640等の基本培地に、10%CS(子ウシ血清)、10%FCS(ウシ胎児血清)等を添加した培地で、予め培養されたものを用いればよい。
次いで、細胞融合後、HAT選択培地で培養することにより、抗体産生細胞と融合したハイブリドーマだけを増殖させることができる。
前記HAT培地は、例えばインターロイキンー6(IL−6)等の細胞増殖因子を含んでいてもよい。
増殖環境としては、ハイブリドーマを増殖させるための公知の環境下であればよい。具体的には、温度は、例えば20℃以上40℃以下であればよく、例えば約5%のCO2条件下であってもよい。
播種工程後の陽性と評価されたハイブリドーマを、HAT選択培地等を用いて培養することで、モノクローナル抗体を産生させればよい。培養環境としては、ハイブリドーマを増殖させるための公知の環境下であればよい。具体的には、温度は、例えば20℃以上40℃以下であればよく、例えば約5%のCO2条件下であってもよい。
モノクローナル抗体は、培養液中に含まれ、培養液をそのまま用いてもよく、必要に応じて精製しても用いてもよい。
また、培養工程後に得られたモノクローナル抗体は、その抗原特異性を、公知のスクリーニング方法を用いて、評価してもよい。
上記のいずれの方法においても、得られたモノクローナル抗体と、抗原又は該抗原が固定化された担体と、による抗体抗原反応を行い、標識された2次抗体等を用いて検出することで、モノクローナル抗体の抗原特異性を評価することができる。
本発明の第2実施形態に係るモノクローナル抗体の製造方法は、前記標識工程において、異なる抗原に対する抗体を産生する2種類以上の前記ハイブリドーマと、2種類以上の前記蛍光標識された抗原とを接触させる方法である。
よって、本実施形態における標識工程において、それぞれ異なる蛍光物質により標識されており、且つ免疫抗原と対応した種類の抗原を含むことにより、複数のモノクローナル抗体を同時にスクリーニング及びクローニングすることができる。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造装置は、ハイブリドーマと蛍光標識された抗原とを含む標識部と、フローサイトメーターと、前記蛍光標識された抗原が結合されたハイブリドーマを1ウェルに1細胞ずつ含む培養容器を有する細胞播種部と、を備える装置である。
図2は、本発明の第1実施形態に係るモノクローナル抗体の製造装置を模式的に示す図である。以下、本実施形態の製造装置について、図2を参照しながら、詳細を説明する。
標識部10は、ハイブリドーマ2と蛍光標識された抗原4とを含む。標識部1は、例えば、図2に示すように、HAT選択培地等の培養液を含む培養容器1内にハイブリドーマ2と蛍光標識された抗原4とを含む形態であってもよい。
フローサイトメーター20は、ハイブリドーマ2を1細胞ずつソートさせ、蛍光を検出することができるものあれば、特別な限定はなく、公知の装置をそのまま用いればよい。具体的には、例えば、MoFlo Astrios EQ/EQs(ベックマンカウンター社製)、MoFlo XDP(ベックマンカウンター社製)等が挙げられ、これらに限定されない。
前記第1の検出器5は、例えば、蛍光を検出するためのものであって、特別な限定はない。また、前記第2の検出器6は、例えば、ハイブリドーマのサイズ等を計測するためのものであって、特別な限定はない。また、励起光源7は、ハイブリドーマに結合した蛍光物質を励起させるためのものであって、特別な限定はない。また、ソーター8は、例えば、空気;水等の液体等の噴射物質8aによって、その他の抗体産生ハイブリドーマ2bを系外に排出させるためのものであって、特別な限定はない。
細胞播種部30は、培養容器9を有する。培養容器9内には、蛍光標識された抗原が結合されたハイブリドーマが1ウェルに1細胞ずつ含まれる。
図2に示すモノクローナル抗体の製造装置1Aは、以下に示す方法で用いればよい。まず、標識部10において、ハイブリドーマ2を含む培養容器1に、蛍光標識された抗原4を添加する。これにより、目的抗体産生ハイブリドーマにおいてのみ、細胞膜上に存在する膜型免疫グロブリン3と抗原4aとが特異的に結合し、蛍光物質4bにより間接的又は直接的に標識される。次いで、標識後のハイブリドーマ2をフローサイトメーターに導入する。導入されたハイブリドーマ2は、1細胞ずつにソートされて、流路を流れる。次いで、励起光源7から光が照射され、ハイブリドーマに間接的又は直接的に結合した蛍光物質が蛍光を発する。蛍光は第1の検出器5において検出される。また、ハイブリドーマのサイズ等は第2の検出器6において検出される。次いで、ソーター8から噴射された空気等の噴射物質8aにより、その他の抗体産出ハイブリドーマ2bは系外に除外される。一方、目的抗体産生ハイブリドーマ2aは、細胞播種部30において、培養容器9内に1ウェル1細胞ずつ播種される。
本発明の第2実施形態に係るモノクローナル抗体の製造装置は、前記標識部が2種類以上の前記ハイブリドーマと2種類以上の前記蛍光標識された抗原とを含む装置である。
よって、標識部において、それぞれ異なる蛍光物質により標識されており、且つ免疫抗原と対応した種類の抗原を含むことにより、複数のモノクローナル抗体を同時にスクリーニング及びクローニングすることができる。
本発明の第2実施形態に係るモノクローナル抗体の製造装置は、以下に示す方法で用いればよい。まず、標識部において、異なる抗原に対する抗体を産生する2種類以上の前記ハイブリドーマを含む培養容器に、2種類以上の蛍光標識された抗原を添加する。このとき、複数種類の目的抗体産生ハイブリドーマを同時に、蛍光標識された抗原により標識することができる。次いで、標識後のハイブリドーマをフローサイトメーターに導入する。導入されたハイブリドーマは、1細胞ずつにソートされて、流路を流れる。次いで、励起光源から光が照射され、ハイブリドーマに間接的又は直接的に結合した蛍光物質が蛍光を発する。このとき、また、抗原に結合している蛍光物質の種類が異なることで、検出される蛍光の波長が異なる。そのため、検出された蛍光波長に基づいて、続く、細胞播種部において、抗原の種類ごとに、別々の培養容器に、ハイブリドーマを1細胞ずつ播種することもできる。
1.モノクローナル抗体の製造
(1)マウスの免疫
まず、マウスの腹腔足底部から抗原、キャリアタンパク質、及び自家調製アジュバンドの混合液を注入し、1週間後にもう一度免疫し、計2回免疫した。抗原については、以下の表6に示す6種類の抗原をそれぞれ免疫した。なお、表6において、いずれの抗原も公知のタンパク質である。また、全長タンパク質ではなく、抗体認識部位を含むポリペプチドを抗原として用いた。
次いで、最後の免疫から3日後(最初の免疫から10日後)に、マウスの脾臓を摘出し、B細胞を回収した。
次いで、B細胞とマウスミエローマ細胞(SP2/0−Ag14)とを細胞融合させてハイブリドーマを得た。次いで、HAT選択培地を用いて5日間培養した。
次いで、ハイブリドーマにビオチン標識された各抗原を添加し、120分インキュベートした。次いで、さらに、PE(Phycoerythrin)標識されたストレプトアビジン(BioRad社製)を添加し、2時間インキュベートした。これにより、ハイブリドーマを間接的に蛍光標識した。
次いで、フローサイトメーター(ベックマンカウンター社製)に、ハイブリドーマを導入し、スクリーニングを行った。このとき、未標識のハイブリドーマにおけるシグナルの最頻値から5倍以上の強度を持つものを、陽性細胞の蛍光強度とした。この陽性細胞を96ウェルプレートに1細胞ずつ分取し、12日間培養した。各陽性細胞から得られた抗体について、評価を行った。
従来のELISAによるハイブリドーマのスクリーニング及び限界希釈法による単一クローンニングにより、モノクローナル抗体を製造した。詳細は、以下に示すとおりである。
(1)マウスの免疫
実施例1の1.の(1)と同様の方法を用いて、マウスにα−Tubulinを抗原として免疫した。
次いで、最初の免疫から17日後に、実施例1の1.の(2)と同様の方法を用いて、B細胞を回収した。
次いで、実施例1の1.の(3)と同様の方法を用いて、細胞融合を行い、ハイブリドーマを96ウェルプレートに播種し、HAT選択培地を用いて12日間培養した。
次いで、ハイブリドーマの培養液中に分泌された抗体を用いて、実施例1の2.の(1)と同様の方法を用いてELISAを行った。
次いで、ELISAにより陽性であったハイブリドーマを限界希釈法で一つのウェルに理論上1細胞しか入らないように希釈し、96ウェルプレートに播種し、12日間培養した。各陽性細胞から得られた抗体について、評価を行った。
1.モノクローナル抗体の評価
(1)ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)による評価
実施例1及び比較例1の各陽性細胞から得られた抗体について、固相に各抗原が固定化されたプレートを用いて、ELISAを行った。まず、各抗原が固定化されたプレートに各抗体を含む溶液(各陽性細胞の培養上清)を添加し、60分インキュベートした。次いで、HRP結合抗マウス抗体(MBL社製)を含む溶液(1万倍希釈)を滴下し、60分インキュベートした。次いで、Powerscan HT(DS−Pharma Biomedical製)を用いて、検出した。ELISAにおいても陽性であったサンプルの数を計測し、陽性率({(陽性サンプル数/全サンプル数)×100})を算出した。結果を表6に示す。
実施例1及び比較例1の各陽性細胞から得られた抗体について、抗原を電気泳動し、転写したメンブレンを用いて、ウエスタンブロッティングを行った。まず、抗原がブロットされているメンブレンを、スキムミルク溶液を用いて、ブロッキングした。次いで、各抗体を含む溶液(各陽性細胞の培養上清を2倍希釈したもの)を添加し、120分インキュベートした。次いで、HRP結合抗マウス抗体(MBL社製)を含む溶液(5万倍希釈)を滴下し、60分インキュベートした。次いで、LAS−4000 mini(富士フィルム社製)を用いて、検出した。ウエスタンブロッティングにおいても陽性であったサンプルの数を計測し、陽性率({(陽性サンプル数/全サンプル数)×100})を算出した。また、交差反応性を示さなかったサンプルの数を計測し、全サンプル数に対する交差反応性を示さなかったサンプルの割合(%)を算出した。結果を表6に示す。表6において、「WB」がウエスタンブロッディングによる評価結果である。
実施例1及び比較例1の各陽性細胞から得られた抗体について、上述の(2)の「ウエスタンブロッティングによる評価」又はIso Strip マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(シグマアルドリッチ社製)を用いてアイソタイプを評価した。
ウエスタンブロッティングを用いた評価方法では、上述の(2)の「ウエスタンブロッティングによる評価」の結果において、検出されたバンドの大きさの違いから、アイソタイプを評価した。
また、Iso Strip マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキットを用いた評価方法では、具体的には、まず、キット中のディベロプメントチューブに、各抗体を含む溶液(10倍希釈)をピペットで滴下し、揺らして攪拌した。次いで、チューブにアイソタイプ用ストリップを浸漬し、5分間静置した。次いで、ストリップの青色のバンドが検出された部分(κ又はλ部分、及び特定のクラス又はサブクラスの部分)を確認し、アイソタイプがIgGである抗体の割合を算出した。結果を表6に示す。
また、ウエスタンブロッティングでの陽性率が大幅に向上していた。その中でも、交差反応性のない抗体、すなわち、抗原を特異的に認識する抗体の割合について、比較例1での割合に対し、実施例1での割合は、抗チューブリン抗体では35倍で、抗原Xでは260倍であった。
さらに、一般的に抗体として使用されるアイソタイプであるIgGの抗体の割合についても、比較例1での割合に対し、実施例1での割合は、6種類全てにおいて向上した。
以上のことから、実施例1の方法により、ELISA、ウエスタンブロッティングにおいて使用できる高品質な抗体を得ることができた。
構造を認識する抗体は、生体内の生理活性を保ったタンパク質と結合することが必須である。
以上のことから、実施例1の方法により、構造を認識する抗体を得られることが明らかとなった。
1.モノクローナル抗体の製造
(1)マウスの免疫
実施例1の1.の(1)と同様の方法を用いて、マウスにα−Tubulinを抗原として免疫した。
次いで、最後の免疫から3日後(最初の免疫から10日後)に、実施例1の1.の(2)と同様の方法を用いて、B細胞を回収した。
次いで、実施例1の1.の(3)と同様の方法を用いて、ハイブリドーマを作製し、培養した。
次いで、試験例1の1.の(3)と同様の方法を用いて、アイソタイプを評価し、IgG抗体を産生するハイブリドーマと、IgM抗体を産生するハイブリドーマを選別した。次いで、IgG抗体又はIgM抗体を産生するハイブリドーマにビオチン標識された各抗原を添加し、120分インキュベートした。次いで、さらに、PE標識されたストレプトアビジン(BioRad社製)を添加し、2、6、12、及び24時間インキュベートした。また、コントロールとして、PE標識されたストレプトアビジンを添加しないハイブリドーマ(コントロール群)も準備した。これらのハイブリドーマを、蛍光顕微鏡(TCS SP8、Leica社製)を用いて撮像した。結果を図4A及び図4Bに示す。
一方、IgM抗体を産生するハイブリドーマでは、蛍光標識の時間が2、6時間では、蛍光がほとんど検出されず、12時間以降において蛍光が検出されるようになり、24時間では、IgG抗体を産生するハイブリドーマと同程度蛍光が検出された。
また、PE標識されたストレプトアビジンの添加から2時間後のIgG抗体又はIgM抗体を産生するハイブリドーマをフローサイトメーター(ベックマンカウンター社製)にかけた。結果を図5A及び図5Bに示す。図5A及び図5Bにおいて、縦軸は、細胞数を示し、横軸はPEの蛍光強度を示す。
Claims (1)
- アイソタイプがIgG又はIgMであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとビオチン標識された抗原とを2時間接触させた後、蛍光物質が結合したアビジンを2時間接触させて、ハイブリドーマ−ビオチン標識された抗原−蛍光物質が結合したアビジンからなる複合体を形成させて、アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを優先的に標識する標識工程と、
前記標識工程後の前記アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをフローサイトメトリーにより検出する検出工程と、
前記検出工程において蛍光が検出された前記アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを1細胞ずつ播種する播種工程と、
を備え、
前記抗原が、α−Tubulinである、アイソタイプがIgGであるモノクローナル抗体の製造方法。
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