以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るパネル取付け装置及びスピーカ装置を具体的に開示した各実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態のパネル取付け装置100を備えたスピーカ装置10を天井パネル37の上方より見た斜視図である。
スピーカ装置10は、例えば壁や天井の平面に穴を開けて埋め込まれる埋込型のものとなる。以下の本実施の形態において、スピーカ装置10は、天井埋込型を例示する。
スピーカ装置10は、スピーカ本体11を有する。スピーカ本体11は、下面を開放させた円形碗状のスピーカカバー部13の上面中央に駆動部15が設けられる。なお、本明細書中、下とは鉛直方向の下を称し、上とは鉛直方向の上を称す。スピーカ本体11は、例えば駆動部15に永久磁石を有する動電方式となる。動電方式は、コイルが可動するダイナミック型、鉄片が可動するマグネット型のいずれであってもよい。また、コイルや鉄片によって振動する振動板17(図3参照)は、コーン型、ドーム型、平面型、リボン型等のいずれであってもよい。
スピーカ本体11は、永久磁石の磁界にコイルの音電流による磁界を重ね合わせ、その磁界の強弱によってボイスコイルを振動させ、連結した振動板17を振動させる。スピーカ本体11では、音が振動板17からスピーカカバー部13の下側のスピーカ開口部19(図4参照)に向けて進行する。この他、スピーカ本体11には、外部配線を接続するコネクタ、適切なインピーダンスを選択可能とするマッチングトランス23等が設けられている。
図2は、図1に示したスピーカ装置10の平面図である。
スピーカ装置10は、パネル取付け装置100を備える。パネル取付け装置100は、ベース25と、スピーカパネル27と、紐29と、スプリング31と、スリット部33と、を有する。
ベース25は、スピーカ穴35(図4参照)の形成された面材の裏側に配置される。なお、本実施の形態において、面材は、例えば石膏ボート等の天井パネル37である。ベース25には、上記のスピーカ本体11が取り付けられている。ベース25は、例えば合成樹脂により方形状で成形される。ベース25は、天井パネル上に置いて設置するほか、四隅に設けられたねじ固定孔39に、固定ねじ(図示略)を挿通することにより天井パネル37の裏面に固定することもできる。
ベース25は、第1の挿通孔の一例としての紐挿通孔41と、第2の挿通孔の一例としてのスプリング挿通孔43を有する。紐挿通孔41は、紐29の外径よりも大きな内径で形成される。スプリング挿通孔43は、スプリング31の外径よりも大きな内径で形成される。紐挿通孔41及びスプリング挿通孔43は、図2に示すように、円形状のスピーカカバー部13の中心を通る直径方向の仮想線上でスピーカカバー部13を挟んで配置される。
図3は、図2のA−A断面図である。
スピーカパネル27は、面材を挟んでベース25の反対側に配置されて、穴の一例としてのスピーカ穴35を被せる(つまり、覆う)。スピーカ装置10では、スピーカ開口部19が、スピーカ穴35に一致するようにしてベース25が天井パネル37に取り付けられる。ここで、ベース25に設けられた紐挿通孔41及びスプリング挿通孔43は、スピーカ穴35の内側に配置される。一方、天井パネル37の下面側でスピーカ穴35を覆うスピーカパネル27は、スピーカ穴35よりも大径で形成されている。スピーカパネル27は、例えば外周に環状で形成した樹脂製のフレーム部45を有し、フレーム部45の中央側開口が音の進行を可能とするネット47により覆われている。スピーカ開口部19が表出するスピーカ穴35は、スピーカパネル27が取り付けられることにより見栄え良く覆われる。
図4は、スピーカパネル27が取り外されてスピーカ穴35から表出したスピーカ装置10を天井パネル37の下方から見た斜視図である。
スピーカ装置10は、スピーカパネル27が取り外されると、スピーカ本体11のスピーカ開口部19がスピーカ穴35から表出する。スピーカ穴35には、スピーカ開口部19を挟んで2つのフックが配置される。本実施の形態において、このフックは、S字フック49となる。それぞれのS字フック49は、スピーカ開口部19の外周と、スピーカ穴35の内周との間に配置されている。
図5は、スピーカ装置10の下面図である。
2つのS字フック49のうち、一方のS字フック49は、紐29に接続される。紐29は、紐挿通孔41よりベース25の上側(裏側)より導出されている。また、他方のS字フック49は、スプリング31に接続される。スプリング31は、スプリング挿通孔43よりベース25の上側(裏側)より導出されている。
図6は、通常時におけるスピーカ装置10の平面図である。
紐29は、ベース25を挟み面材と反対側から紐挿通孔41に挿通される。紐29の挿通先端には、上記のS字フック49が接続される。S字フック49は、紐挿通孔41を通過不能となる。従って、ベース25の裏側から紐挿通孔41を貫通して下側(スピーカ穴側)へ引き出された紐29は、S字フック49により紐挿通孔41からベース25の裏側へは引き込まれないようになっている。
図7は、通常時における紐29及びスプリング31とスピーカパネル27の斜視図である。
S字フック49は、スピーカパネル27に係止する。スピーカパネル27の上面(スピーカ穴35に対向する側の面)には、複数(本実施の形態では4つ)のフック係止部51がフレーム部45の円周方向に等間隔で起立している。
紐29には、例えば釣り糸等を用いることができる。釣り糸としては、例えばナイロン、ナイロン/ナイロン6共重合体、ナイロン/ナイロン12共重合体などのポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂などからなるモノフィラメント等を用いることができる。
スプリング31は、螺旋状に巻かれた素線の両端に環部を有する。本実施の形態において、環部は、スプリング31におけるコイル部の両端に形成された丸フック53(図11参照)となる。丸フック53は、例えばコイル部の素線を端末加工することにより形成される。丸フック53は、スプリング挿通孔43を通過することができる。スプリング31は、ベース25を挟み面材と反対側(ベース25の裏側)からスプリング挿通孔43に挿通される。スプリング31の挿通先端の丸フック53には、上記のS字フック49が接続される。S字フック49は、スプリング挿通孔43を通過不能となる。従って、ベース25の裏側からスプリング挿通孔43を貫通して下側(スピーカ穴側)へ引き出されたスプリング31は、S字フック49によりスプリング挿通孔43からベース25の裏側へは引き込まれないようになっている。
スプリング31の挿通先端に接続されたS字フック49は、紐29に接続されたS字フック49と同様に、スピーカパネル27のフック係止部51に係止される。この際、紐29に接続されたS字フック49と、スプリング31に接続されたS字フック49とは、スピーカパネル27の直径方向両端側のフック係止部51にそれぞれ係止される。
スプリング31は、S字フック49の接続された挿通先端と反対側の丸フック53が、紐29に接続される。丸フック53と紐29との接続箇所は、接続部となる。この接続部は、種々の形態とすることができる。本実施の形態において、この接続部は、紐29が締結されるスプリング31の丸フック53となる。
スプリング31は、静荷重を受ける引っ張りばねとして用いることができる。即ち、紐29とスプリング31とは、接続部により接続されている。紐29は、接続部と反対側がS字フック49により紐挿通孔41に支持される。また、スプリング31は、接続部と反対側がS字フック49によりスプリング挿通孔43に支持される。両端が支持された紐29とスプリング31とは、スプリング31の弾性復元力により張力が加えられた状態となっている。この張力は、スプリング31の常用応力となる。常用応力は、そのスプリング31が許容できる最大応力よりも低く(例えば60%程度以下に)設定される。
パネル取付け装置100では、紐側のS字フック49と、スプリング側のS字フック49とが、スピーカパネル27のそれぞれのフック係止部51に係止されることにより、スピーカパネル27にスプリング31の引っ張り力が加わる。これにより、スピーカパネル27は、ベース25に引っ張られて、スピーカ穴35を覆った状態で天井パネル37に押圧されて固定される。
スプリング31の材質としては、例えばばね鋼(SUP)、硬鋼線(SW)、ピアノ線(SWP)、ステンレス鋼線(SUS)、りん青銅線(PBW)等を用いることができる。
図6に示すように、スリット部33は、面材と反対側のベース25の面に設けられる。スリット部33は、例えばスリットを隔ててベース25に立設した一対の離間壁とすることができる。このスリット部33は、紐29を挿通させる一方、紐29と環部の接続部(即ち、丸フック53)の通過を阻止する。
従って、本実施の形態のパネル取付け装置100では、スリット部33により通過の阻止される接続部が、環部であるスプリング31の丸フック53となっている。
パネル取付け装置100では、スピーカ本体11が、スピーカ穴35と同軸となる円形状の最大外径部55をスピーカカバー部13に有する。最大外径部55の外側には、最大外径部55に沿って引き回し経路57が設けられている。引き回し経路57は、最大外径部55の外周面の一部分と、湾曲壁59との間に、溝状となって形成される。
接続部により接続された紐29及びスプリング31は、スリット部33とスプリング挿通孔43との間が、この引き回し経路57に収容される。引き回し経路57は、最大外径部55の円周長の半分より長い距離で、ほぼ最大外径部55に沿って形成される。
引き回し経路57の一方の終端は、スリット部33となる。スリット部33と紐挿通孔41との間には、余長ガイド経路61が形成される。余長ガイド経路61は、スリット部33から紐29を略180度方向(つまり、スリット部33を起点として反対方向に)転換させるための半円壁部63を有する。紐29は、この半円壁部63により、スリット部33を通過した後、略180度方向が反転されて紐挿通孔41へ向けられる。パネル取付け装置100は、この余長ガイド経路61を有することにより、所定長の紐29を所定位置(スプリング挿通孔43と直径方向反対側)の紐挿通孔41へ導くことができる。これにより、所定の紐長及び所定のスプリング長が確保できるようになされている。
図8は、通常時における紐29及びスプリング31とスピーカパネル27の平面図である。
スプリング31は、常用応力が加えられている通常時、紐29との接続部が、引き回し経路長の略中央位置に配置される。この状態で、スプリング31は、許容できる最大応力よりも常用応力が低く設定されている。
次に、スピーカパネル27の取り付け方法を説明する。
図9は、フックを引き出した状態のスピーカ装置10の平面図である。
天井パネル37の上面には、ベース25が固定されている。図4に示すように、天井パネル37のスピーカ穴35から、スピーカ本体11のスピーカ開口部19が表出している。スピーカ穴35には、2つのS字フック49が、紐挿通孔41とスプリング挿通孔43とに当接した状態で配置されている。
図10は、フックを引き出した状態における紐29及びスプリング31とスピーカパネル27の平面図である。
スピーカ穴35から一方のS字フック49を引っ張り出し、スピーカパネル27の一方のフック係止部51にS字フック49を引っ掛ける。このとき、紐29とスプリング31の接続部である丸フック53は、スリット部33に近接する位置まで移動する。次いで、同様に、他方のS字フック49を引っ張り出し、スピーカパネル27の他方のフック係止部51にS字フック49を引っ掛ける。
この状態でスピーカパネル27には、スプリング31の引っ張り力が加わる。このため、スピーカパネル27は、ベース25に引っ張られて天井パネル37に押圧された状態で固定される。以上の作業により、スピーカパネル27の取り付け作業が完了する。
次に、上記した構成の作用を説明する。
図11は、スリット部33により接続部の通過が規制された状態の要部拡大平面図である。図12は、スリット部33に支持された紐29によりスピーカパネル27が吊り下げられたスピーカ装置10の斜視図である。
本実施の形態のパネル取付け装置100では、スプリング31が腐食等により劣化し、破断すると、スプリング31が破断部を境に複数に分離される。フックによりスピーカパネル27に係止していた破断スプリング65は、破断部がスプリング挿通孔43を通過する。このため、スピーカパネル27は、スプリング31に係止されていた側の支持がなくなる。一方、紐29は、スプリング31の張力が消失することにより、主にスピーカパネル27に作用する重力で紐挿通孔41から引き出される。紐挿通孔41から引き出された紐29は、破断スプリング65との接続部(例えば丸フック53)がスリット部33に到達すると、図11に示すように、丸フック53がスリット部33に当接してそれ以上の移動(つまり、丸フック53のスリット部33の通過)が規制される。即ち、スピーカパネル27は、図12に示すように、丸フック53がスリット部33に支持された紐29により、吊り下げられた状態となり、落下が防止される。
また、パネル取付け装置100において、スプリング31は、上述した特許文献1,2のようなストッパ機構を取り付ける必要が無い。このため、組付けの手間を少なくすることができる。また、スプリング31は、拡大部を有する特注品とせずに市販品を使用できる。これらにより、パネル取付け装置100は、製造コストや部品コストの増大を抑制することができる。
パネル取付け装置100では、上述のように、スピーカパネル27に作用する重力で紐挿通孔41から引き出された紐29は、紐端接続部67に締結された丸フック53が通過阻止部の一例としてのスリット部33に当接することによりそれ以上の移動が規制される。上述したように、スリット部33は、天井パネル37と反対側のベース25の面に設けられている。この丸フック53は、一般的な市販品のスプリング31において丸フック53として形成されている。従って、市販品のスプリング31をそのまま使用してスリット部33に抜け止め可能な接続部を安価に構成できる。
なお、紐29の移動の規制は、通過阻止部の一例としてのスリット部33に限ってなされるものではなく、例えば通過阻止部の一例としての第1の挿通孔の一例としての紐挿通孔41によってなされても構わない。これにより、例えばスプリング31の破断時に、接続部の一例としての丸フック53がスリット部33を通過した場合でも、紐挿通孔41が丸フック53の通過を阻止できるので、スピーカパネル27の落下を防ぐことが可能となる。
また、このパネル取付け装置100では、紐29及びスプリング31の引き回し経路57が、スピーカ本体11の最大外径部55に沿ってその外側に形成される。引き回し経路57は、最大外径部55の円周長の半分より長い距離で確保される。従って、限られたスピーカ装置10の収容スペースにおいて、最大外径部55の周囲スペースを有効に利用して、他部材との干渉を抑制しながら長尺の紐29及びスプリング31を収納することが可能となる。長尺の紐29及びスプリング31の使用が可能となることで、設置施工時において低荷重で紐29及びスプリング31を長く引き出せるようになり、作業性を向上させることができる。
スプリング31は、静荷重を受ける引っ張りばねとして用いられる。スプリング31は、長い引き回し経路57により長尺のものが使用できるので、常用応力を小さく設定することができる。これにより、残留応力を生じにくくし、耐久性を高めることができる。また、最大外径部55の周囲に引き回し経路57を形成するので、面材と平行な面方向でスプリング31を収納でき、面材に垂直方向の収容スペースを小さくできる。これにより、パネル取付け装置100を備えるスピーカ装置10において、装置高さを低く(低背化を実現)できる。その結果、スピーカ装置10は、埋込スペースが確保しにくい現場であっても取り付けし易くできる。
そして、パネル取付け装置100を備えたスピーカ装置10では、スプリング31が腐食等により破断した場合であっても、スピーカパネル27の不意な落下を防止できるので、製品の信頼性を向上させることができる。
(実施の形態2)
図13は、スリット部33を通過不能となる紐端接続部69が環部に接続された要部拡大平面図である。
実施の形態2によるパネル取付け装置200は、スリット部33により通過の阻止される接続部が、環部に接続される紐29の紐端接続部69である。紐端接続部69には、例えば貫通孔を有した樹脂製の球状部材を用いることができる。この球状部材の貫通孔に、紐29を締結し、かつ丸フック53を係止することができる。
このパネル取付け装置200では、スプリング31の環部に締結される紐端接続部69が、スリット部33を通過不能に構成される。従って、スプリング31の環部が腐食等により破損した場合であっても、スリット部33に当接した紐端接続部69によりそれ以上の紐29の移動が規制される。その結果、スピーカパネル27は、紐端接続部69をスリット部33に支持した紐29により吊り下げられて落下が防止される。
(実施の形態2の変形例)
図14は、紐挿通孔41を通過不能となる紐端接続部71が環部に接続された要部拡大平面図である。
実施の形態2の変形例によるパネル取付け装置200Aは、丸フック53に接続される紐29の紐端接続部71が、スリット部33の通過を許容しかつ紐挿通孔73の通過を阻止する形状若しくは大きさで形成されている。なお、本変形例では、紐挿通孔73が、上記の紐挿通孔41よりも小径で形成される。
このパネル取付け装置200Aでは、スプリング31の丸フック53に締結される紐端接続部71が、紐挿通孔73を通過不能に構成される。従って、丸フック53が腐食等により破損すると、紐29は、スピーカパネル27に作用する重力で紐挿通孔41から引き出され、紐端接続部71がスリット部33を通過する。引出方向に移動した紐端接続部71は、紐挿通孔73に到達すると、紐挿通孔73に当接し、それ以上の移動が規制される。その結果、スピーカパネル27は、紐端接続部71を紐挿通孔73に支持した紐29により吊り下げられて落下が防止されることになる。
(実施の形態3)
図15は、実施の形態3のパネル取付け装置300を備えたスピーカ装置30を天井パネルの上方より見た斜視図である。なお、実施の形態3においては図1〜図12に示した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
スピーカ装置30は、パネル取付け装置300を備える。パネル取付け装置300は、ベース81と、スピーカパネル27と、紐29と、スプリング83と、ストッパ85と、を有する。
図16は、図15に示したスピーカ装置30の平面図である。
ベース81は、スピーカ穴35(図19参照)の形成された面材の裏側に配置される。ベース81には、上記のスピーカ本体11が取り付けられている。ベース81は、天井パネル上に置いて設置するほか、四隅に設けられたねじ固定孔39に、固定ねじ(図示略)を挿通することにより天井パネル37の裏面に固定することもできる。
ベース81は、第1の挿通孔の一例としてのスプリング挿通孔87と、第2の挿通孔の一例としてのスプリング挿通孔43とを有する。スプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43は、スプリング83の外径よりも大きな内径で形成される。スプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43は、図16に示すように、円形状のスピーカカバー部13の中心を通る直径方向の仮想線上でスピーカカバー部13を挟んで配置される。
スプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43は、周囲が筒状のガイド周壁89により包囲される。ガイド周壁89の内径は、スプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43の内径よりも大きく形成される。ガイド周壁89は、スプリング83の呑み込み高さを最適にして、スプリング83の引き出しをスムーズにしている。
図17は、図16のB−B断面図である。
本実施の形態においても、上記と同様のスピーカパネル27が、面材を挟んでベース81の反対側に配置されて、穴の一例としてのスピーカ穴35を被せる(つまり、覆う)。
図18は、スピーカパネル27が取り外されてスピーカ穴35から表出したスピーカ装置30を天井パネル37の下方から見た斜視図である。
スピーカ装置30は、スピーカパネル27が取り外されると、スピーカ本体11のスピーカ開口部19がスピーカ穴35から表出する。スピーカ穴35には、スピーカ開口部19を挟んで2つのフックが配置される。本実施の形態において、このフックは、S字フック49となる。それぞれのS字フック49は、スピーカ開口部19の外周と、スピーカ穴35の内周との間に配置されている。
2つのS字フック49は、スプリング83の両端にそれぞれに接続される。スプリング83は、ベース81の上側(裏側)よりスプリング挿通孔87、スプリング挿通孔43を介してスピーカ穴35側へ導出されている。
図15に示すように、スプリング83は、螺旋状に巻かれた素線93(図19参照)の両端にS字フック49が接続される。本実施の形態のスプリング83は、上記のコイル部の両端に形成された丸フック53(図11参照)を必須の構成としない。スプリング83は、第1の挿通孔(スプリング挿通孔87)を介した第1の挿通先端と、第2の挿通孔(スプリング挿通孔43)を介した第2の挿通先端とのそれぞれに、スピーカパネル27に係止するS字フック49を備える。
スプリング83の両端は、ベース81の裏側からスプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43を貫通して下側(スピーカ穴側)へ引き出され、S字フック49によりスプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43からベース81の裏側へは引き込まれないようになっている。
このスプリング83には、紐29が接続される。紐29は、ストッパ85を介してスプリング83に接続される。ストッパ85は、スプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43を通過不能となる。ストッパ85は、スプリング83に引っ掛けて紐29の基端をスプリング83に掛止する。基端をストッパ85を介してスプリング83に掛止した紐29は、先端をスプリング挿通孔87又はスプリング挿通孔43のいずれか一方に挿通して、S字フック49に締結している。本実施の形態では、紐29は、スプリング挿通孔87に挿通されてS字フック49に締結される。
ここで、ストッパ85は、紐29の導出されるスプリング挿通孔87又はスプリング挿通孔43に近い位置で、スプリング83に引っ掛けられている。本実施の形態では、紐29は、スプリング挿通孔87から導出される。従って、ストッパ85は、スプリング挿通孔43よりもスプリング挿通孔87に近い位置でスプリング83に引っ掛けられている。
図19は、ストッパ引っ掛け時の要部拡大斜視図である。
ストッパ85は、弾性線材を環状に巻回して内方95を開放可能としたリングからなる。弾性線材は、少なくともスプリング83よりも耐腐食性の高いステンレス鋼材等であることが好ましい。リングの外径は、スプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43の内径よりも大きい。つまり、ストッパ85は、スプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43を通過不能となる。本実施の形態では、ストッパ85に締結された紐29は、スプリング83と共にスプリング挿通孔87から挿通されてS字フック49に締結される。従って、仮にスプリング83が複数に破断しても、スプリング挿通孔87を挿通不能となったストッパ85により、紐29の基端がベース81に支持され、この紐29を介してS字フック49に係止されるスピーカパネル27の落下が防止される。
図19に示すように、リングは、線材端部97をリング周部99から離間させて挿入間隙101を形成し、この挿入間隙101を介して開放されたリングの内方95に、スプリング83の素線93を挿入してスプリング83に引っ掛けられている。
なお、ストッパ85は、上記のリングに限定されない。ストッパ85は、スプリング挿通孔87及びスプリング挿通孔43を通過不能となってストッパ85に掛止できるものであれば他の部材であってもよい。他の部材としては、例えば結束バンドや、小型のカラビナ等の掛止具であってもよい。
次に、スピーカパネル27の取り付け方法を説明する。
図20は、フックを引き出した状態のスピーカ装置30の平面図である。
天井パネル37の上面には、ベース81が固定されている。図18に示すように、天井パネル37のスピーカ穴35から、スピーカ本体11のスピーカ開口部19が表出している。スピーカ穴35には、2つのS字フック49が、スプリング挿通孔87とスプリング挿通孔43とに当接した状態で配置されている。
図21は、スプリング83を伸ばしてスピーカパネル27を引っ掛けた状態の斜視図である。
スプリング挿通孔43から導出された一方のS字フック49を引っ張り出し、スピーカパネル27の一方のフック係止部51にS字フック49を引っ掛ける。このとき、スプリング83は、ストッパ85がスプリング挿通孔87から離間する方向に伸びる。ストッパ85は、スプリング挿通孔87からの距離が紐29の長さと略等しくなったときに、紐29の張力により移動が規制される。その後、スプリング83は、ストッパ85とS字フック49との間が伸びる。
次いで、同様に、他方のS字フック49を、スプリング挿通孔87から引っ張り出し、スピーカパネル27の他方のフック係止部51に引っ掛ける。スプリング挿通孔87からのスプリング83の引き出し長は、ストッパ85がスプリング挿通孔87に到達する長さ(即ち、紐29の長さ)まで許容される。
この状態でスピーカパネル27には、スプリング83の引っ張り力が加わる。このため、スピーカパネル27は、ベース81に引っ張られて天井パネル37に押圧された状態で固定される。以上の作業により、スピーカパネル27の取り付け作業が完了する。
次に、上記した構成の作用を説明する。
図22は、スプリング挿通孔87により通過不能となったストッパ85を表す要部拡大平面図である。
本実施の形態のパネル取付け装置300では、スプリング83が腐食等により劣化し、破断すると、スプリング83が破断部を境に複数に分離される。フックによりスピーカパネル27に係止していた破断スプリングは、破断部がスプリング挿通孔43を通過する。このため、スピーカパネル27は、スプリング挿通孔43側のS字フック49に係止されていた支持がなくなる。一方、紐29は、スプリング31の張力が消失することにより、主にスピーカパネル27に作用する重力でスプリング挿通孔87から引き出される。スプリング挿通孔87から引き出された紐29は、ストッパ85がスプリング挿通孔87に到達すると、図22に示すように、ストッパ85がスプリング挿通孔87に当接してそれ以上の移動(つまり、ストッパ85のスプリング挿通孔87の通過)が規制される。即ち、スピーカパネル27は、図12に示したように、ストッパ85がスプリング挿通孔87に支持された紐29により、吊り下げられた状態となり、落下が防止される。
このパネル取付け装置300では、ストッパ85と紐29とを用いることにより、従来構造では、防止できなかったスプリング83の複数箇所の破断時におけるスピーカパネル27の落下を確実に防止することができる。
また、スプリング83は、拡大部を有する特注品とせずに市販品を使用できる。これにより、パネル取付け装置300は、製造コストや部品コストの増大を抑制することができる。
そして、パネル取付け装置300では、ストッパ85が、紐29の導出されるスプリング挿通孔87に近い位置でスプリング83に引っ掛けられているので、スプリング83の伸長可能な領域を大きくすることができる。これにより、スプリング83が弾性限度を超えて引っ張られることを抑制できる。
また、パネル取付け装置300では、ストッパ85による抜け止め構造を、安価な部品を用いて、簡素な構造で、しかも、高い信頼性で実現できる。
更に、パネル取付け装置300では、ストッパ85をリングで構成する。リングは、線材端部97をリング周部99から離間させて挿入間隙101を形成し、この挿入間隙101を介して開放されたリングの内方95にスプリング83の素線93を挿入して、スプリング83に容易に引っ掛けることができる。このため、結束バンド等のような切断ごみが生じない。また、切断工具を使用せずにスプリング83への掛止を容易に行うことができる。
従って、本実施の形態に係るパネル取付け装置100、パネル取付け装置200、パネル取付け装置200Aによれば、スピーカパネル27をより落下しにくくできる。
また、本実施の形態に係るスピーカ装置10によれば、塩害による腐食が激しい地域や、生理食塩水の雰囲気濃度が高い病院等の設置場所においても、長期に渡りパネル落下防止機能を維持し続けることができる。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
例えば、上記の各種の実施の形態の構成例では、紐の挿通を許容する一方、紐と環部の接続部の通過を阻止する部位をスリット部として説明したが、当該部分はスリットには限定されず例えば貫通穴であってもよい。また、上記の構成例ではスプリングに非金属の紐が接続される場合を例に説明したが、本開示に係るパネル取付け装置は、スプリングに金属線(ワイヤ等)が接続されるものであってもよい。この場合、金属線は、材質がステンレス等、耐腐食性を有するものであることが好ましい。