JP6747975B2 - 安定な抗体を産生するための手段及び方法 - Google Patents

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Description

本発明は、医学、分子生物学及び免疫学の分野に関する。より詳細には、本発明は、抗体の分野に関する。
ex vivo B細胞培養物は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体を産生するための重要なツールである。モノクローナル抗体(mAb)は、単一の抗体分子の複数の同一コピーを表し、これらのコピーは、同じ親和性で抗原に結合し、同じエフェクター機能を促進する。mAbの利益の中で、抗原上の同じエピトープに対するそれらの特異性が存在する。この特異性により、より従来的な処置に勝る、mAbに関するある特定の臨床上の利益が付与される一方、患者には、一般に副作用の少ない、有効で忍容性の良好な治療オプションを提供する。更に、mAbは、生物学的及び医学的研究にとって有用である。
mAbを得るための従来の手法は、ハイブリドーマ技術であり、B細胞は、ハイブリッド抗体産生細胞株(ハイブリドーマ)を形成するために、骨髄腫細胞と融合される。しかし、ヒトB細胞を用いたハイブリドーマ技術は、得られたハイブリドーマが不安定であるため、あまり功を奏さなかった。一方、ex vivo B細胞培養物が、長期の複製寿命で生成される改良技術が開発されてきた(WO2007/067046)。この技術は、BCL6を、Blimp-1及び/又は抗アポトーシス核酸と一緒にB細胞内で発現させるヒトex vivo培養に関する。これは、これらのB細胞の複製寿命を改良する。典型的には、ヒトB細胞は、ヒトmAbを得るために培養される。ヒトmAbは、他の種の抗体と比較して低い免疫原性のために、ヒトにおける治療適用に好適である。
例えば、薬学的又は研究用途のために商業的に抗体を産生する場合に直面する課題の1つは、例えば大量に産生するために、患者に投与するために及び/又は長期保存のために十分に安定である抗体を得ることである。特に、治療用抗体の安定性を増大させるためにかなりの努力がなされている。目的の抗原に対して特異性及び高親和性を有する抗体の研究開発の初期段階で、典型的には、安定性は考慮される特性ではない。代わりに、所望の特異性及び親和性を有する抗体が特定されると、抗体の安定性は、コード化している核酸に変異を導入し、得られた抗体をそれらの安定性について試験することによって変更される。これらの変異した抗体を産生するコスト及び関与する時間を考慮すると、安定な抗体を得るための代替法が所望される。
WO2007/067046 WO2012/072814 WO2013/081463
Kwakkenbosら、Nature medicine, 16(1), 123〜128. doi:10.1038/nm.2071;Methods 2013 doi:10.1016/j.ymeth.2013.07.002 Christopherson, K.S.ら PNAS 89、6314〜8(1992) Guzman, L.M.ら Bacteriol 177、4121〜4139(1995) Phillips及びHernandez de la Pena、2001、The Combined Use of the Thermoflour Assay and ThermoQ Analytical Software for the Determination of Protein Stability and Buffer Optimization as an Aid in Protein Crystallization. Hoboken, NJ, USA:John Wiley & Sons, Inc. doi:10.1002/0471142727.mb1028s94 Garber及びDemarest、2007、Biochemical and Biophysical Research Communications、355、751〜757 Matrosovich M.ら、2010、Journal of Virology、77(15)、8418〜8425 Lokateら、2007、J Am Chem Soc. 129(45):14013〜8
安定な抗体を産生することができるB細胞を選択するため及びこのような安定な抗体を産生するため、並びにこのような安定な抗体を産生することができるB細胞を生成するための手段及び方法を提供することが、本発明の目的である。特に、本発明の方法は、開発プロセスの初期の段階で安定な抗体を選択することを可能にする。
本発明は、目的の抗原に対する抗体を産生することができるB細胞、好ましくはB細胞培養物を生成するための方法であって、
a)目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞、又は目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞に発達することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と、
b)前記少なくとも1種のB細胞において、BCL6の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程、並びに抗アポトーシス核酸の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程と、
c)前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて第1のB細胞培養物とする工程と、
d)前記第1のB細胞培養物におけるB細胞の、目的の前記抗原に対する平均結合能よりも高い目的の前記抗原に対する結合能を有する少なくとも1種のB細胞を前記第1のB細胞培養物から選択する工程と、
e)好ましくは、工程d)において選択された前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて第2のB細胞培養物とする工程と、
f)工程d)において選択された前記少なくとも1種のB細胞によって又は前記第2のB細胞培養物によって産生された抗体の安定性を決定する工程と、
g)前記第1のB細胞培養物のB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と
を含む方法を提供する。好ましくは、工程g)で選択された前記少なくとも1種のB細胞は、増殖させて更にB細胞培養物とする。
更に、ex vivo B細胞培養物から、前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択するための方法であって、
a)目的の抗原に対して特異的な抗体を産生することができるex vivo B細胞培養物を準備する工程と、
b)前記ex vivo B細胞培養物のB細胞の、目的の前記抗原に対する平均結合能よりも高い目的の前記抗原に対する結合能を有する少なくとも1種のB細胞を前記ex vivo B細胞培養物から選択する工程と、
c)工程b)において選択された前記少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体の安定性を決定する工程と、
d)前記ex vivo B細胞培養物のB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と
を含む方法を提供する。
本明細書で使用される場合、「(目的の)抗原に対して特異的な」及び「(目的の)抗原に特異的に結合することができる」は、抗体とその抗原の間の相互作用を指し、前記抗体が、他の抗原より前記抗原に優先的に結合することを意味する。したがって、抗体は、他の抗原に非特異的に結合するが、その抗原に対する前記抗体の親和性は、任意の他の抗原に対する前記抗体の非特異的親和性よりもかなり高い。目的の抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞は、例えばKwakkenbosら(Nature medicine, 16(1), 123〜128. doi:10.1038/nm.2071;Methods 2013 doi:10.1016/j.ymeth.2013.07.002;特許出願WO2007/067046)に記載されるように、末梢血から記憶B細胞を単離し、続いて標識抗原で染色し、抗原結合B細胞を単離することにより得ることができる。
本発明の方法は、少なくとも1種のB細胞の結合能を決定する工程、及びこの少なくとも1種のB細胞が由来するB細胞培養物のB細胞の、目的の抗原に対する平均結合能を決定する工程を伴う。次に、B細胞培養物のB細胞の平均結合能より高い結合能を有するB細胞を選択する。本明細書で使用される場合、用語「結合能」は、B細胞の目的の抗原への結合に寄与する全ての相互作用の累積強度を指す。目的の抗体へのB細胞の結合に寄与する因子は、B細胞の細胞表面に発現されるB細胞受容体の数である。実際に、所望の抗原に対する結合能力について選択される場合、抗原への比較的低い結合能力について選別されたB細胞は、高い結合について選別されたB細胞と比較してB細胞の表面に発現する免疫グロブリンが少ないことが、WO2012/072814において確認された。それにもかかわらず、高い抗原結合性を有するB細胞が培養されると、これらは、低い抗原結合性を有するB細胞によって産生された抗体と比較して抗原に対する高親和性を有した抗体を産生するようである。WO2012/072814において、更に驚くべきことに、その抗原結合性に基づいて第1の集団から選択されたこのような高親和性のB細胞を増殖させて、B細胞の第2の集団とする場合、この第2の集団におけるB細胞は、予期されたように第1の集団におけるB細胞の平均親和性に戻るかわりに、選択されたB細胞の高親和性を保持することが見出された。したがって、抗原に対する分泌抗体の親和性も、所望の抗原に対するB細胞の結合能力に相関する。したがって、WO2012/072814において、目的の抗原に対して高親和性を有する抗体を産生するB細胞を選択し、選択されたB細胞の抗原に対する高い抗原結合性に基づく高親和性を維持しながら更に培養しうると結論付けられた。
本発明は、特定の抗原に対するB細胞の結合能に相関する別の因子は、前記B細胞によって産生された抗体の安定性であるという知見をもたらす。本発明者らは、驚くべきことに、WO2012/072814において記載されたように、抗原に対する高い結合能を有することについて選択され、実際に抗原に対して高親和性を有する抗体を産生するB細胞のサブセットに加えて、抗原に対して高い結合能を有することについて選択されたB細胞の別のサブセットは、高い安定性を有する抗体を産生することを見出した。更に、高い結合能を有するB細胞のこのサブセットにより産生された非常に安定な抗体が、抗原に対する高親和性を必ずしも有する訳ではないということを見出した。例えば、抗原に対して高い結合能を有するB細胞のサブセットは、高度に安定であり、抗原に対する平均親和性を有する抗体を産生し、抗原に対する高い結合能を有するB細胞の第2のサブセットは、高度に安定であり、抗原に対する高親和性を有する抗体を産生し、抗原に対する高い結合能を有するB細胞の第3のサブセットは、平均安定性及び抗原に対する高親和性を有する抗体を産生し、抗原に対する高親和性を有するB細胞の第4のサブセットは、不安定であるが抗原に対する高親和性を有する抗体を産生する等である。本発明は、目的の抗原に対するB細胞の結合能とこれらのB細胞によって産生された抗体の安定性の間の相関を初めて確立する。更に、本発明は、抗体をコードする遺伝子において自然に変異が起こる一方で、抗体は特異的な抗原に対してこれらの特異性及び/又は親和性を維持し、これに対して、抗体を産生するB細胞の結合能を決定することにより予備選択が行われうることを示す。更に、本発明は、抗体を産生するB細胞の特性を決定することによる抗体の安定性を選択することについて初めて記載する。
いかなる理論にも拘泥することなく、目的の抗原に対する抗体の親和性における差異又はモノクローナルB細胞の集団内の抗体の安定性の差異は、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)により媒介されるプロセスから生じうると考えられる。胚中心において抗原により活性化されたナイーブB細胞及びメモリーB細胞は、AIDにより媒介されたIg遺伝子の体細胞超変異(SHM)及びクラススイッチ組換え(CSR)を伴って大きく増殖する。AIDは、免疫グロブリン遺伝子においてデオキシシチジン残基を脱アミノ化して、抗体の多様化を駆動する。抗体産生B細胞(に発達するB細胞)におけるAIDの発現により、BCL6及び抗アポトーシス核酸で形質導入する前の本来のB細胞には存在しなかった変異を保有する新規免疫グロブリンの発生を可能にする。したがって、体細胞超変異がAIDの発現により誘導されるB細胞を培養することにより、例えば、目的の抗原に対する高い若しくは低い親和性を有する、又はより安定である免疫グロブリン変異体の発生を可能にする。
WO2012/072814には、AID活性による体細胞超変異が誘導されるB細胞を培養することにより、高い安定性を有する抗体変異体が生じる場合があることが記載されているが、WO2012/072814から、B細胞がこれらの結合能力に基づいて選択される、記載された選択方法によっては、安定な抗体を特異的にほとんど選択しないことも明らかである。代わりに、WO2012/072814には、目的の抗原に対する高親和性を有する変異体は、このような選択方法を使用して選択されることが開示されている。したがって、WO2012/072814は、「本発明による高親和性のB細胞」について繰り返し言及する。これに対し、本発明は、高い安定性を有するB細胞を特異的に特定する選択方法を提供する。
したがって、B細胞を使用する本発明による方法は、抗体の安定性は、抗体、例えば治療用抗体の発生の初期段階の間に容易に考慮し改良しうるという利益を提供する。このことにより、開発プロセスのはるかに後期において、結合性及び/又は親和性特性に基づいてすでに選択された抗体の安定性を、抗体をコードする核酸に変異を導入し得られた抗体をその安定性について試験することにより改良する必要性が低減され、又は排除される。一般的に、現在使用されている目的の抗原に対して特異的な抗体の安定性を改良するためのこのような組換え法では、まず、抗体のアミノ酸配列の決定が必要になる。次に、1種又は複数の変異が、多量の変異した抗体が産生されうるように、抗体をコードする核酸の配列を核酸配列における複数の可能な位置に導入される。次いで、1種又は複数の変異を含有する遺伝子は、細胞内で発現され、続いて産生細胞内で抗体が産生される必要がある。最後に、変異した抗体は、これらの安定性について試験され、改良された安定性を有する抗体が得られたかどうかが決定される。抗体の安定性を改良するためのこのようなプロセスは、手がかかり、時間のかかるものである。本発明による方法により、抗体の結合能及び/又は親和性について選択するのと同じ開発の段階で分子工学を必要とせず、簡単に安定な抗体を選択し、あまり手のかからないプロセスが可能となる。本発明の方法を使用して、抗体は、ex vivo B細胞培養物で産生される。目的の抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞が得られると、B細胞は培養することができ、この間に、親和性及び安定性における差異が、このような培養の間に導入される変異の結果として生じる。したがって、B細胞培養物は、目的の抗原に対して全て特異的であるが、抗原に対する親和性及び抗原の安定性においては変動する膨大な量のB細胞からなる。抗原に特異的なB細胞のこの培養物において、B細胞の小サブグループは、B細胞培養物におけるB細胞の平均安定性と比較して特に高い安定性を有する。本発明の前は、所望の高い安定性を有する抗体を産生するB細胞が少量であることを考慮すると、抗体の安定性についての選択は、所望の高い安定性を有する抗体を特定するために、多量のB細胞によって産生された抗体を試験することを必要とする。上で詳述したように、本発明は、目的の抗原に対するB細胞の高い結合能とこれらのB細胞によって産生された抗体の高い安定性の間には相関があるという知見を提供する。したがって、特定の抗原に対して高い結合能を有するB細胞のサブセット内における非常に安定な抗体を産生することができるB細胞のサブセットは、B細胞培養物全体内における非常に安定な抗体を産生することができるB細胞のサブセットよりもかなり大きい。したがって、抗原に対して高い結合能を有するB細胞を選択する際に、同時に非常に安定な抗体を産生することができるB細胞の予備選択もなされる。制限された数のB細胞のみから得られた抗体が、ここで、安定性について試験されることを要する。このことは、高い結合能を有するB細胞の選択が、これらの安定性について抗体を試験することと比べて比較的迅速であり、容易であり、安価であるため、有利である。
ex vivo B細胞培養物による抗体の産生が使用される本発明の方法は、目的の抗原に対する特異性を有し、更に高い安定性を有する抗体の迅速、簡単且つ安価な選択を可能にする。すなわち、本発明は、発達の初期段階における抗体の選択におけるパラメータとして安定性を含めることを可能にする。本発明に従って、安定な抗体が選択される安定なex vivo B細胞培養物を生成する好ましい方法は、例えば参照により本明細書に組み込まれるWO2007/067046に記載された方法である。WO2007/067046に開示された方法において、ヒト個体から得られたB細胞の収集物は、BCL6核酸及び抗アポトーシス核酸(又はこのような核酸の発現を増大させる化合物)を使用する培養において維持され、次に培養される。このことにより、長期間(6カ月超まで)抗体を増殖し産生することができるヒトB細胞を生じる。本発明の方法において、これらのB細胞は、特定の抗原に対するこれらの結合能について試験される。高い結合能を有することについて選択された1種又は複数のB細胞は、好ましくは、更に増殖させて、さらなるB細胞培養物とする。培養の間に、安定化したB細胞が抗体を産生し、抗体は培地中に分泌される。本発明の方法において、これらの抗体は安定性について、及び任意選択で抗原に対する親和性について試験する。これらの試験手順として、およそ100ng/mlの最少抗体濃度の培地が典型的には使用される。高い結合能のB細胞を選択し増殖させた後にこの抗体の最少濃度を得るために必要とされる時間は、B細胞が最初に単離された哺乳動物による。安定化されたヒトB細胞として、このような抗体濃度は、典型的には単一のB細胞から培養を開始して15〜20日後に得られる。したがって、ヒトB細胞培養物を使用して、抗体は、単一のB細胞の培養を開始して少なくとも15〜20日後、典型的には約20日で採取する。ラマのB細胞はヒトB細胞を同様の成長速度を有し、その結果、ラマのB細胞培養物が用いられると、抗体もまた、典型的には、単一のB細胞培養物を開始した後少なくとも15〜20日後に採取する。より長い倍加時間を有するマウスのB細胞では、100ng/mlの最少濃度を有する抗体は、典型的には、単一のB細胞培養物を開始した後20日を超えた後に得られる。ウサギのB細胞を使用する場合、単一
のB細胞培養物を開始した11〜12日後に、少なくとも100ng/mlの抗体濃度がすでに得られる。当業者が認識するように、培養が1種超のB細胞から開始される場合、所望の抗体濃度をより早い時点で得ることができる。
好ましくは、本発明の方法において、少なくとも1種のB細胞が得られるB細胞培養物において、B細胞の平均結合能より高い結合能を有するとして選択された少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体の安定性、又は高い結合能を有するとして選択された前記少なくとも1種のB細胞の増殖後にB細胞培養物によって産生された抗体の安定性は、少なくとも1種のB細胞が得られるB細胞培養物において、B細胞の平均結合能より高い結合能を有する前記少なくとも1種のB細胞を選択してから4カ月以内に決定される。より好ましくは、前記安定性は、少なくとも1種のB細胞が得られるB細胞培養物において、B細胞の平均結合能より高い結合能を有する前記少なくとも1種のB細胞を選択してから3カ月以内、より好ましくは2カ月以内に決定される。最も好ましくは、前記安定性は、少なくとも1種のB細胞を得たB細胞培養物におけるB細胞の平均結合能より高い結合能を有する前記少なくとも1種のB細胞を選択してから1カ月以内、例えば12から30日以内、より好ましくは12〜25日以内に決定される。
抗体を産生することができるB細胞は、抗体若しくはその機能的部分を産生及び/若しくは分泌することができるB細胞と定義され、並びに/又はその細胞は、抗体若しくはその機能的部分を産生及び/若しくは分泌することができる細胞に発達することができる。抗体の機能的部分は、必ずしも量においてではなく、種において前記抗体として少なくとも1つの同じ特性を有する部分として定義される。好ましくは、前記機能的部分は、必ずしも同じ程度にではないが、前記抗体と同じ抗原に結合することができる。好ましくは、抗体の機能的部分は単一のドメイン抗体、一本鎖抗体、FAB断片、ナノボディ、ユニボディ、一本鎖可変断片(scFv)、又はF(ab')2断片を含む。
目的の抗原に対する本発明によるB細胞の結合能は、当業者に知られている任意の方法を使用して測定することができる。例えば、目的の抗原は、例えば蛍光標識で標識される。次に、結合の検出は、蛍光顕微鏡法及び蛍光標識細胞分取(FACS)の中の種々の技術により決定されうる。FACSにより、例えばB細胞の大きさ、及び/又はB細胞の細胞表面に発現されたB細胞受容体に結合した標識された抗原の蛍光に基づいた、懸濁液中における細胞の分離を可能にする。
B細胞培養物から、好ましくはモノクローナルB細胞株から目的の抗原に対する高い結合能を有する少なくとも1種のB細胞を選択することは、当業者に知られている任意の方法を使用して実行されうる。本発明のよる少なくとも1種の高親和性を有するB細胞の選択は、例えば結合能が測定される同じ方法の間に、例えばFACS(上記参照)を使用する細胞分取により、又は限界希釈により、例えば実行される。限界希釈は、単一の細胞が所望の容積で存在するまで、細胞の懸濁液、例えばB細胞を連続希釈することを含む。次に、各B細胞(単一の細胞から集団に増殖した後)の結合能は、抗原に対する高親和性を有する抗体を産生するB細胞の選択を可能にするために試験される。
B細胞が得られるB細胞培養物の平均結合能より高い結合能を有する少なくとも1種のB細胞を選択することは、好ましくは、B細胞培養物からB細胞の結合能を決定すること及びB細胞の平均結合能を決定することを含む。次に、少なくとも1種のB細胞の結合能は、B細胞培養物からのB細胞の平均結合能と比較され、B細胞培養物からのB細胞の平均結合能より高い結合能を有するB細胞が選択される。
本明細書で使用される場合、用語「安定性」は、好ましくは、抗体の化学的及び/又は物理的安定性、例えば抗体の産生及び/又は保存の間の安定性を指す。したがって、本明細書で使用される場合、安定性は、化学的及び/又は物理的安定性、より好ましくは抗体の産生及び/又は保存の間の安定性、より好ましくは熱安定性及び/又は凝集に対する抵抗性である。産生及び保存の間に、液体製剤、例えば医薬組成物における抗体は、抗体の物理的及び/又は化学的特性に影響を与える様々なプロセスに影響される。このようなプロセスは、抗体の分解、凝集、酸化、及び断片化を含む。このようなプロセスは、これらが、例えば、製剤における機能的抗体の量の減少を生じるため、及び/又は抗体の抗原結合性を低減させることにより、抗体の有効性に有害である。このようなプロセスの1つ又は複数に少なくとも部分的に抵抗性である抗体は、安定な抗体と称される。したがって、本発明の方法において少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体の安定性を決定することは、前記抗体の分解、凝集、酸化及び/又は断片化に対する抵抗性を決定することを含む。更に、本発明の方法に従って選択されたB細胞培養物のB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体は、したがって、好ましくは、B細胞培養物の前記B細胞によって産生された抗体の分解、凝集、酸化及び/又は断片化に対する平均的抵抗性と比較して分解、凝集、酸化及び/又は断片化に対する高い抵抗性を有する抗体である。本明細書で使用される場合、抗体の平均的抵抗性と比較した抗体の「分解、凝集、酸化及び/又は断片化に対する高い抵抗性」という用語は、抗体が、同等の条件下で所望の期間内に分子量の低減若しくは増加、及び/又は構造の変更をほとんど示さないことを意味する。分解、凝集、酸化及び/又は断片化に対する高い抵抗性の結果は所望の期間内にこのような抗体の活性の損失が、平均的分解、凝集、酸化及び/又は断片化に対する抵抗性を有する抗体と比較して少ないということである。したがって、抗体の乏しい安定性により、非機能的な抗体、例えば凝集体、抗体分解生成物及び化学的に修飾された抗体を形成する傾向を有する抗体のサブセットを生じうる。これらの抗原結合性を失うことに加えて、これらの凝集体は、患者に投与された場合に、潜在的に危険及び/又は免疫原性である。乏しい安定性により、例えば、機能の損失も生じる抗体の変性を更に生じる場合がある。
本明細書で使用される場合、「安定な」抗体は、好ましくは、保存の際にその物理的及び/又は化学的安定性及び/又は生物活性を実質的に保持する抗体を指す。抗体を含むタンパク質の安定性を測定するために、本技術分野では種々の方法が利用される。例えば、安定性は、所定の温度で所定の期間測定されうる。実施例において、安定性を決定するためのこのような方法の2つの例が詳述される。第1の方法は、抗体の熱安定性を決定することを含み、動的走査蛍光法(dynamic scanning fluorescence)又はDSFとも称される。この方法において、加熱の際の抗体のアンフォールディングが決定される。抗体が加熱されると。これらはアンフォールドし、蛍光色素は、これらがアンフォールドした際に抗体に結合することができる。これがアンフォールドされた抗体に結合すると、色素が蛍光となり、蛍光が経時的に測定される。例えば、抗体のアンフォールディングは、30〜95℃の温度範囲で測定される。実施例で詳述される別の方法は、抗体が凝集する傾向を測定する。この方法は、ゲルクロマトグラフィーを使用する、抗体モノマーの分離及び抗体の凝集を含む。例えば、経時的に凝集する抗体の傾向が測定され得、それによって、凝集した抗体の量が、所定の温度で所定の期間保存した後に測定される。例えば、抗体の凝集は、保存の1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10週若しくは1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10カ月後、又は保存の0.5、1、1.5及び2年前並びに後に測定される。保存は、例えば、室温、4℃〜7℃の温度で又は-80℃〜-20℃の温度である。したがって、本明細書で使用される場合、抗体の安定性は、好ましくは化学的安定性及び/物理的安定性、より好ましくは抗体の産生及び/又は保存の間の安定性を指す。本明細書で使用される場合、抗体の安定性は、最も好ましくは、熱安定性及び/又は凝集に対する抵抗性を指す。好ましくは、-80から80℃の間の温度で、少なくとも1年、より好ましくは少なくとも18カ月、更により好ましくは少なくとも2年間安定である抗体が選択される。より好ましくは、-80から80℃の間の温度で、好ましくは-80から65℃の間の温度で、より好ましくは80℃から65℃の間の温度で、例えば室温で、4℃〜7℃の温度で又は-80℃〜-20℃
の温度で、少なくとも1年、より好ましくは少なくとも18カ月、更により好ましくは少なくとも2年間安定である抗体が選択され、このような抗体を産生することができるB細胞が選択される。好ましくは、選択された抗体は、液体製剤中で、固体中で、例えば凍結乾燥した製剤中で、少なくとも1年、より好ましくは少なくとも18カ月間、更により好ましくは少なくとも2年間の有効期間を有する。抗体は、指示された期間に実質的な凝集、アンフォールディング及び/又は変性を示さなければ、これらの期間安定であると考えられる。「実質的な凝集、アンフォールディング及び/又は変性」に関して、最大20%の抗体、より好ましくは最大10%の抗体、より好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%の抗体が、指示された期間に凝集し、アンフォールドし及び/又は変性することを意味する。最も好ましくは、最大1%の抗体が、指示された期間に凝集し、アンフォールドし及び/又は変性する。
本発明に従って、B細胞を得ることができるB細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性より高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択することは、好ましくは、B細胞によって産生された抗体の安定性を決定すること及びB細胞培養物からのB細胞によって産生された抗体の平均安定性を決定することを含む。次に、少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体の安定性が、B細胞培養物からのB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較され、B細胞培養物からのB細胞によって産生された抗体の平均安定性より高い安定性を有する抗体を産生することができるB細胞が選択される。
B細胞培養物の又はB細胞の集団の平均結合能は、それぞれ、前記培養物又は集団における全ての個々のB細胞の結合能の平均として本明細書で定義される。高い結合能を有するB細胞培養物、好ましくはモノクローナルB細胞培養物から選択されたB細胞は、好ましくは、結合能に対して前記B細胞培養物のB細胞の上位40%から、好ましくは前記培養物のB細胞の上位30%から、より好ましくは前記B細胞培養物のB細胞の上位25%から、より好ましくは前記B細胞培養物のB細胞の上位20%から、より好ましくは前記B細胞培養物のB細胞の上位15%から、より好ましくは前記B細胞培養物のB細胞の上位10%から、より好ましくは前記B細胞培養物のB細胞の上位5%から選択される。最も好ましくは、ひとつの高結合能B細胞が、結合能に対してB細胞培養物のB細胞の上位1%から選択される。
B細胞培養物の又はB細胞の集団のB細胞によって産生された抗体の平均安定性は、それぞれ、前記培養物又は集団における全ての個々のB細胞によって産生された抗体の安定性の平均として本明細書で定義される。本発明に従って、高い安定性を有する抗体を産生することができるB細胞培養物から選択されたB細胞は、好ましくは、前記B細胞によって産生された抗体の安定性に対して前記B細胞培養物のB細胞の上位40%から、好ましくは前記培養物のB細胞の上位30%から、より好ましくは前記B細胞培養物のB細胞の上位25%から、より好ましくは前記B細胞培養物のB細胞の上位20%から、より好ましくは前記B細胞培養物のB細胞の上位15%から、より好ましくは前記B細胞培養物のB細胞の上位10%から、より好ましくは前記B細胞によって産生された抗体の安定性に対して前記B細胞培養物のB細胞の上位5%から選択される。最も好ましくは、安定な抗体を産生することができるB細胞は、前記B細胞によって産生された抗体の安定性に対してB細胞培養物のB細胞の上位1%から選択される。
本発明に従って選択された少なくとも1種のB細胞によって産生された又は本発明に従って産生された抗体が、第1の(ex vivo)B細胞培養物におけるB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有するかどうかは、例えば、抗体の安定性を決定するために本明細書に記載された1種又は複数のアッセイを使用して、又は当技術分野で知られている抗体の安定性を決定するための代替法を用いて決定される。安定性の差異が、これらのアッセイの1種又は複数で観察され、本発明に従って選択された又は本発明に従って選択された抗体によって生成された抗体が、前記第1の(ex vivo)B細胞培養物におけるB細胞によって産生された抗体より高い安定性を示す場合、本発明に従って選択された抗体又は本発明に従って選択された抗体によって生成された抗体は、前記第1の(ex vivo)B細胞培養物のB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有すると結論付けられる。
本発明に従って選択され又は産生された少なくとも1種のB細胞から培養された、B細胞培養物によって、好ましくはモノクローナルB細胞株によって産生された抗体の平均安定性は、好ましくは、非常に安定な抗体を産生することができるB細胞が選択された第1の(ex vivo)B細胞培養物におけるB細胞によって産生された抗体の平均安定性の少なくとも1.1倍、より好ましくは前記第1の(ex vivo)B細胞培養物におけるB細胞によって産生された抗体の平均安定性より少なくとも1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、10.0、20、50、100倍又はそれ超である。このような倍率は、例えば抗体の安定性を決定するために本明細書に記載された1種又は複数のアッセイを使用して確立される。例えば、抗体の凝集が測定される本明細書に記載されたアッセイにおいて、凝集された試料中の抗体の割合を計算することが可能である。本発明に従って選択された又は本発明に従って選択された抗体によって生成された抗体は、例えば、試料中の凝集した抗体の割合が、前記第1の(ex vivo)B細胞培養物におけるB細胞によって産生された凝集した抗体の割合より1.2倍より低い場合、1.2倍高い安定性を有するということができる。
好ましくは、本発明の方法は、B細胞が選択される(ex vivo)B細胞培養物の平均結合能より高い結合能を有するために選択されたB細胞によって産生された抗体の、目的の抗原に対する親和性を決定する工程を含む。好ましくは、前記親和性は、前記B細胞培養物からのB細胞によって産生された抗体の平均親和性と比較される。B細胞培養物によって又はB細胞の集団によって産生された抗体の目的の抗原に対する平均親和性は、それぞれ、前記培養物又は集団における全ての個々のB細胞によって産生された抗体の対象の前記抗原に対する親和性の平均として本明細書で定義される。したがって、好ましくは、本発明の方法は、高い結合能を有するとして選択された前記少なくとも1種のB細胞によって産生された又は前記少なくとも1種のB細胞が選択されたB細胞培養物から産生された抗体の、目的の抗原に対する親和性を決定する工程、及び前記少なくとも1種のB細胞が選択されるB細胞培養物のB細胞によって又はex vivo B細胞培養物によって産生される抗体の平均親和性と比較して抗原に対する高親和性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程を更に含む。
しかし、別のより好ましい実施形態では、前記少なくとも1種のB細胞が選択されるB細胞培養物のB細胞によって又はex vivo B細胞培養物によって産生される抗体の対象の前記抗原に対する平均親和性と同様である又はこれより低い目的の抗原に対する親和性を有する抗体を産生することができるB細胞が選択される。このような低い又は平均親和性は、抗体の機能性、例えばこれらの治療活性を十分に有するために十分であることが多い。一方、抗体の高い安定性は、商業生産及び目的の抗原に特異的な抗体の(治療用途)使用に対する絶対条件である。すなわち、本発明に従った方法で、不安定である又は比較的低い安定性を有する高親和性の抗体を選択するよりも、特に高い安定性を有するが平均親和性又は平均よりやや低い親和性を有する抗体を選択することがより好ましい。今や、本発明によって、目的の抗原に対するB細胞の結合能とB細胞によって産生された抗体の安定性の間の相関が確立されているので、抗体のスクリーニング及び発達プロセスにおける初期段階ですでに、高親和性を有する不安定な抗体よりも、抗原に対する平均親和性を有するこのように非常に安定な抗体を選択することが可能になっている。
目的の抗原に対する抗体を生成することができるB細胞を生成するための方法であって、
a)目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞、又は目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞に発達することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と、
b)前記少なくとも1種のB細胞において、BCL6の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程、並びに抗アポトーシス核酸の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程と、
c)前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて第1のB細胞培養物とする工程と、
d)前記第1のB細胞培養物におけるB細胞の、目的の前記抗原に対する平均結合能よりも高い目的の前記抗原に対する結合能を有する少なくとも1種のB細胞を前記第1のB細胞培養物から選択する工程と、
e)好ましくは、工程d)において選択された前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて第2のB細胞培養物とする工程と、
f)工程d)において選択された前記少なくとも1種のB細胞によって又は前記第2のB細胞培養物によって産生された抗体の安定性、及び目的の前記抗原に対する親和性を決定する工程と、
g)前記第1のB細胞培養物のB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有し、前記第1のB細胞培養物によって産生された抗体の、又は目的の前記抗原に対する平均親和性と同様である又はこれより低い目的の前記抗原に対する親和性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と
を含む方法を提供する。
更に、ex vivo B細胞培養物から、前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択するための方法であって、
a)目的の抗原に対して特異的な抗体を産生することができるex vivo B細胞培養物を準備する工程と、
b)前記ex vivo B細胞培養物のB細胞の、目的の前記抗原に対する平均結合能よりも高い目的の前記抗原に対する結合能を有する少なくとも1種のB細胞を前記ex vivo B細胞培養物から選択する工程と、
c)工程b)において選択された前記少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体の安定性、及び目的の抗原に対する親和性を決定する工程と、
d)前記ex vivo B細胞培養物のB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有し、前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の、目的の抗原に対する平均親和性と同様である又はこれより低い目的の前記抗原に対する親和性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と
を含む方法を提供する。
抗体の親和異性は、当業者に知られている任意の方法を使用して決定されうる。抗体の親和性は、例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、表面プラズモン共鳴法(Biocore等)又はオクテット(ForteBio)を使用して決定される。表面プラズモン共鳴法(SPR)及びオクテットは、標識をつけない環境でリアルタイムで生体分子の相互作用を測定する技術である。SPRでは、相互作用物、例えば抗体の1種がセンサー表面に固定化され、もう一方、例えば抗原は、溶液中で遊離しており、表面上を通過する。会合及び解離は任意の単位で測定され、好ましくはセンサーグラムに表示される。バイオセンサーチップに結合した分子の数における任意の変化により、干渉波がシフトし、それはリアルタイムで測定されうる。オクテットを使用して、2つの表面、すなわちバイオセンサーチップに固定化されたタンパク質の層、及び内部基準層の表面から反射した白色光の干渉波が解析される。バイオセンサーチップ表面、例えば抗体に固定化されたリガンドと、溶液中のタンパク質、例えば目的の抗原の間の結合により、バイオセンサーチップにおける光学的厚さを増大させ、その結果、生物学的層の厚みの変化の直接的尺度である波長シフトを生じる。ELISAは、タンパク質、例えば目的の抗原を固体支持体、例えば96ウェルプレートの表面に固定化させること、及び検出又は定量化される試料を固体支持体に適用することを含む。或いは、捕捉抗体を、検出又は定量化されるタンパク質を含有する試料が、目的のタンパク質に結合される固定化された捕捉抗体に適用される固体支持体の表面に固着される。次いで、非結合タンパク質が洗い流される。次に、標識又は酵素にコンジュゲートした特異的抗体(又は標識若しくは酵素にコンジュゲートした1次抗体、続いて2次抗体)が固体支持体に付加される。好ましくは、本発明のB細胞により産生された抗体の親和性定数(KD)が決定される。
B細胞が得られるB細胞培養物により産生された抗体の平均親和性より高い、同様である、又は低い特異的抗体に対する親和性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択することは、好ましくは、抗原に対するB細胞により産生された抗体の親和性を決定すること及び抗原に対するB細胞培養物からのB細胞により産生された抗体の平均親和性を決定することを含む。次に、少なくとも1種のB細胞により産生された抗体の抗原に対する親和性をB細胞培養物からのB細胞により産生された抗体の抗原に対する平均親和性と比較し、B細胞培養物からのB細胞によって産生された抗体の平均親和性より高い、同様の、又は低い親和性を有する抗体を産生することができるB細胞が選択される。
好ましくは、本発明に従うB細胞培養物又はex vivo B細胞培養物は、モノクローナルB細胞培養物である。本発明に従うB細胞培養物又はex vivo B細胞培養物の例は、B細胞、好ましくはモノクローナルB細胞の細胞株である。したがって、本発明に従うB細胞培養物又はex vivo B細胞培養物は、最も好ましくは、モノクローナルB細胞株である。その結合性又は安定性について選択されたB細胞を増殖させてB細胞培養物とすることは、例えば、前記B細胞をB細胞の集団が得られるまで増殖させることにより達成される。
本発明による方法において使用された又は選択されたB細胞の非限定例は、ヒト個体、げっ歯類、ウサギ、ラマ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、サル、チンパンジー、マカク及びゴリラ由来のB細胞を含む。好ましくは、前記B細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、ウサギ細胞、サル細胞、チンパンジー細胞、マカク細胞及び/又はラマ細胞である。最も好ましくは、前記B細胞は、ヒトB細胞又はウサギB細胞である。好ましくは、BCL6及び抗アポトーシス核酸の発現が誘導され、増強され及び/又は維持される本発明の方法に従って選択される目的の抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞は、記憶B細胞、例えばヒト記憶B細胞又はウサギ記憶B細胞である。特に好ましいのは、末梢血記憶B細胞である。末梢血記憶B細胞は、それらが得られる個体に多大な不快感なく、容易に得られ、本発明による方法における使用に非常に適していることが実証された。
好ましくはモノクローナルの、目的の抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞のB細胞培養物内で、少なくとも1種の、任意選択で1種超の、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、50、100、103、104、105、又は106種等の目的の前記抗原に対する前記B細胞培養物の平均結合能より高い目的の前記抗原に対する結合能を有するB細胞を選択することが可能である。WO2012/072814に記載されているように、所望のB細胞培養物中のB細胞のサブセットは前記抗原に対する高い結合性を示す目的の抗原に対して特異的な抗体を生成し、これは、B細胞の前記サブセットによって産生された抗体が、前記B細胞培養物によって産生された抗体の平均親和性より高い抗原に対する親和性を有するという事実と相関する。本発明は、抗原に対する高い結合能を有するB細胞の別のサブセットが、前記B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性より高い安定性を有する抗体を産生するという知見を提供する。更に、WO2012/072814に記載されているように、高親和性抗体を産生する抗体産生B細胞を培養した後に得られたB細胞培養物は、その抗体が、本来のB細胞培養中の平均B細胞より高親和性を有する抗原に結合する能力を維持したB細胞を含有する。同じことが、高い安定性を有するB細胞産生抗体のサブセットにも当てはまり、このような高い安定性の抗体産生B細胞を培養した後に得られたB細胞培養物は、本来のB細胞培養物中の平均B細胞より高い安定性を有する抗体を産生するB細胞を含有する。したがって、単一のB細胞は、当技術分野で公知の方法によってそれらの高い結合能を基準として所与のB細胞培養物から単離し増殖させて、産生された抗体の平均安定性が前記所与のB細胞培養物におけるB細胞の平均安定性より高い新たなB細胞培養物とすることができる。
本発明による方法において、好ましくは、例えば個体から得られたポリクローナルB細胞集団から、目的の抗原に特異的である単一のB細胞を選択する。次に、単一のB細胞は、好ましくは、増殖させてモノクローナルB細胞培養物とする。これは、例えば、以前に本明細書で説明されている、WO2007/067046に記載された方法を使用して達成される。したがって、目的の抗原に対して特異的であるモノクローナルB細胞株が得られる。原則として、モノクローナルB細胞株における全てのB細胞は実質的に前記抗原に対して特異的な同じ抗体を産生するが、前記モノクローナルB細胞株のB細胞間には抗体の安定性における小さな差異が存在する場合があり、すなわち、モノクローナル培養物における一部のB細胞は、平均安定性よりわずかに高い安定性を有する抗体を産生し、モノクローナル培養物における一部のB細胞はわずかに低い安定性を有する抗体を産生する。B細胞培養物は、再度わずかに不均一になる。本発明に従って、平均結合能より高い結合能を有する少なくとも1種のB細胞を、モノクローナルB細胞株から選択する。平均結合能より高い結合能を有する全てのB細胞のうち、サブセットは、B細胞培養物におけるB細胞によって産生された抗体の平均安定性より高い安定性を有する抗体を産生する。次に、本発明に従って、平均安定性より高い安定性を有する抗体を産生する少なくとも1種のこのようなB細胞を選択する。次に、選択されたB細胞を好ましくは培養して第2の、好ましくはモノクローナルのB細胞培養物とする。本発明は、この第2の、好ましくはモノクローナルのB細胞培養物が、本来の(モノクローナル)B細胞培養物の平均安定性より高い平均安定性を有する抗体を産生するという知見を提供する。上述のように、選択されたB細胞によって産生された抗体の高い安定性は、培養が長期間に及んだとしても、培養後に維持されることが見出された。したがって、本発明に従って得られた第2の(モノクローナル)B細胞培養物によって産生された抗体は、第1の(モノクローナル)B細胞培養物によって産生された抗体より高い平均安定性を有する。
前に本明細書で詳述したように、好ましくは、B細胞が選択されるB細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性より高い安定性を有する抗体を産生することができるひとつのB細胞が選択される。別の実施形態では、このような高い安定性を有する抗体を産生することができるこのようなB細胞の1種超、例えば、2、3、4、5、10、15、25、50、100、103、104、105、106種のB細胞が選択される。B細胞は、例えば、ポリクローナルB細胞培養物から、又は生体試料から選択される。次に、B細胞は、例えば、WO2007/067046に記載された方法を使用し増殖させてB細胞培養物とする。したがって、得られたB細胞培養物は、この場合、(第2の)ポリクローナルB細胞培養物である。その後、モノクローナルB細胞培養物が、好ましくは産生される。これは、例えば、本明細書に記載されているように、蛍光標識細胞分取(FACS)又は限界希釈を使用して、前記(第2の)ポリクローナルB細胞培養物から単一のB細胞を選択し、前記選択された単一のB細胞を増殖させてモノクローナルB細胞培養物とすることによってなされる。次いで、好ましくは、モノクローナルB細胞培養物の平均結合能より高い結合能を有し、モノクローナルB細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性より高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する。次に、選択されたB細胞は、好ましくは、培養して、第2のモノクローナルB細胞培養物とし、その後に、前記第2のモノクローナルB細胞株によって産生された抗体が得られうる。好ましくは、抗体の重鎖及び軽鎖の少なくとも一部のアミノ酸配列が決定し、B細胞が本来選択された(ex vivo)B細胞培養物によって産生された抗体の重及び軽鎖(の該当部分)のアミノ酸配列と比較する。このようにして、抗体の安定性の増大を促進するアミノ酸配列における変異が同定されうる。更に、好ましい方法は、第2の細胞において増大した安定性を有する抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子を発現させる工程を含む。好ましくは、前記第2の細胞は、いわゆる産生細胞、例えば、好ましくは市販の抗体産生に適合される、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)の細胞、NSO(マウスの骨髄腫)又は293(T)細胞株等である。このような産生細胞の増殖に
より、本発明による安定な抗体を産生することができる産生細胞株が生じる。
本発明の一実施形態では、前記モノクローナルB細胞培養物から高い安定性の抗体を産生する少なくとも1種のB細胞を選択する工程の後に、前記少なくとも1種のB細胞を増殖させてB細胞培養物、好ましくはモノクローナルB細胞株とし、再度、その後に、前記新たなB細胞培養物、好ましくは前記新たなモノクローナルB細胞株から高い安定性の抗体を産生する少なくとも1種のB細胞を選択する別の工程が実施する。選択されたB細胞を増殖させてB細胞培養物とする工程、並びにその結合能を基準に及び/又はそれによって産生された抗体の安定性を基準に少なくとも1種のB細胞を選択する工程を繰り返すことによって、高親和性抗体産生B細胞を生じることが可能である。好ましくは、上述のように増殖及び選択の工程を繰り返すことにより、各選択サイクルで、得られるB細胞培養物によって産生された抗体の安定性を増大させることが可能である。
好ましい実施形態では、ex vivo B細胞培養物から、本発明による前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性より高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する方法において、工程a)は、目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程、又は目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞に発達することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程、及び前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて前記ex vivo B細胞培養物とする工程を含む。好ましくは、前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて前記ex vivo B細胞培養物とする工程、及び工程b)において、前記ex vivo B細胞培養物によって産生されたB細胞受容体又は抗体の、目的の前記抗原に対する平均結合能より高い目的の前記抗原に対する結合能を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を前記ex vivo B細胞培養物から選択する工程は、少なくとも1回繰り返される。前記工程は、2回、3回、4回、5回又は更に多い回数繰り返されてもよい。
したがって、ex vivo B細胞培養物から、本発明に従って前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択するための方法が、更に提供され、ここで、工程a)は、目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程、又は目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞に発達することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程、及び、前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて、前記ex vivo B細胞培養物とする工程を含み、前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて、前記ex vivo B細胞培養物とする工程、及び、工程b)において、前記ex vivo B細胞培養物によって産生されたB細胞受容体又は抗体の、目的の前記抗原に対する平均結合能より高い目的の前記抗原に対する結合能を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を前記ex vivo B細胞培養物から選択する工程は、少なくとも1回繰り返される。前記工程は、例えば1回繰り返されるが、好ましくは2回、3回、4回、5回又は更に多い回数繰り返される。
好ましくは、本発明の方法は、B細胞及び/又は(ex vivo)B細胞培養物においてBCL6の発現を誘導し、増強させ、及び/又は維持する工程を含む。BCL6は、正常B細胞及びT細胞の発達並びに成熟に必要であり、胚中心の形成に必要である転写抑制因子をコードする。BCL6は、胚中心B細胞において高度に発現される一方、形質細胞ではほとんど発現されない。BCL6は、活性化B細胞が形質細胞に分化するのを阻害する。本発明による方法では、BCL6発現生成物は、ex vivo培養物のB細胞において存続する。BCL6の存在は、抗アポトーシス核酸の存在と一緒に、B細胞の複製寿命を延長する。好ましくは、BCL6の発現は、BCL6発現促進化合物を培養のために使用されるB細胞に投与すること、又はこのような化合物の存在下でB細胞を培養することによって誘導、増強又は維持される。
BCL6の発現を直接的又は間接的に増強させることができる種々の化合物が、本技術分野で知られている。このような化合物は、例えば、シグナル伝達兼転写活性化因子5(STAT5)タンパク質又はその機能的部分若しくは機能的誘導体、及び/又はそれをコードする核酸配列を含む。STAT5は、BCL6の発現を増強させることができるシグナルトランスデューサーである。STAT5の知られた2つの形態、STAT5a及びSTAT5bが存在し、これらは、2つの異なるタンデムに連結した遺伝子によってコードされている。STAT5の投与及び/又は活性化により、増強されたレベルのBCL6が生じる。したがって、STAT5、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体は、BCL6の発現を直接的に増大させることができる。したがって、STAT5、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体を有するB細胞を準備する工程、或いはSTAT5、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする核酸分子を有するB細胞を準備する工程、或いはSTAT5、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体の存在下で前記B細胞を培養する工程を含む本発明による方法が提供される。
STAT5の存在により、BCL6の量を直接的に増加させる。BCL6の発現を間接的に増大させることも可能である。これは、例えば、順にSTAT5を直接的若しくは間接的に活性化することができる、及び/又はSTAT5の発現を増大させることができる特定の化合物の量を調節することによってなすことができる。したがって、一実施形態では、内在性及び/又は外来性STAT5の発現及び/又は活性が増大される。例えば、STAT5を活性化することができ、順にBCL6の発現を増大させるインターロイキン(IL)2及び/又はIL4の存在下でB細胞を培養することによってBCL6の発現を間接的に増強することも可能である。
しかし、BCL6、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする核酸分子を有するB細胞を提供することが好ましい。このように、前記B細胞におけるBCL6の濃度を直接的に調節することも可能である。また、したがって、BCL6、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする核酸分子を有する前記B細胞を準備する工程を含む本発明の方法が提供される。一実施形態では、前記核酸分子は、構成的に活性であり、BCL6、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体が、調節剤の存在とは無関係に、継続的に発現されることを意味する。別の実施形態では、前記核酸分子は、誘導性であり、その発現が、少なくとも1種の誘導物質及び/又は抑制因子により調節されることを意味する。このように、前記核酸分子の発現は、随意に調節される。例えば、Tet-On及びTet-Off発現系[例えば、Tet-On(登録商標)及びTet-Off(登録商標)Advanced Inducible Gene Expression Systems, Clontech社]が、目的の核酸配列の誘導性発現のために使用されうる。これらの系において、転写活性化因子(tTA)の発現は、テトラサイクリン(TC)又はドキシサイクリン(dox)等の誘導体の存在(Tet-On)又は非存在(Tet-Off)によって調節される。原則として、tTAは、大腸菌(Escherichia coli) Tet抑制因子タンパク質(TetR)及び単純ヘルペス(Herpes simplex)ウイルストランス活性化ドメインVP16から構成される。tTAは、Tetオペレーター(TetO)DNA配列及びプロモーター配列、例えばヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーターを含むテトラサイクリン-反応性エレメント(TRE)の制御下で目的の核酸配列の転写を調節する。例えば、Bcl6、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする核酸配列が、このプロモーターの下流に配置されうる。
Tet-off系において、tTaは、TC又はdoxの非存在下でTREに結合し、目的の核酸配列の転写が活性化され、一方、TC又はdoxの存在下ではtTAはTREに結合できず、目的の核酸配列の発現は阻害される。対照的に、Tet-on系は、doxの存在下でTREにのみ結合できるリバースtTA(rtTA)を使用する。目的の核酸配列の転写は、doxの非存在下で阻害され、doxの存在下で活性化される。或いは、誘導性発現は、例えば、エクジソン誘導性遺伝子発現系[例えば、RheoSwitch(登録商標)、New England Biolabs社]等のホルモン誘導性遺伝子発現系を使用して実行される[Christopherson, K.S.ら PNAS 89、6314〜8(1992)]。エクジソンは、例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)由来の昆虫ステロイドホルモンである。エクジソン受容体で形質導入された細胞において、エクジソン受容体(Ecr)及びレチノイドX受容体(RXR)からなるヘテロダイマーは、エクジソン、ムリステロンA及びポナステロンA等のその類似体の1つ、及び非ステロイドエクジソンアゴニストから選択されるエクジソンアゴニストの存在下で形成される。アゴニストの存在下で、Ecr及びRXRは相互作用し、発現カセットに存在するエクジソン反応性エレメントに結合する。したがって、エクジソン反応性エレメントの発現カセット下流に位置する目的の核酸配列の発現は、B細胞をエクジソンアゴニストにさらすことによって誘導される。
本発明の別の例として、誘導性発現は、アラビノース誘導性遺伝子発現系(例えば、pBAD/gIII kit、Invitrogen社)を使用して実行される[Guzman, L.M.ら Bacteriol 177、4121〜4139(1995)]。アラビノースは、5つの炭素原子を含有する単糖である。アラビノース誘導性プロモーターPBADで形質導入された細胞において、次いで、アラビノースの存在下で、PBADの下流に配置された目的の核酸配列の発現が誘導されうる。
その活性が、少なくとも1つの誘導物質及び/又は抑制因子によって調節されるBCL6タンパク質、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体(をコードする核酸分子)を使用することも可能である。非現定例は、調節エレメントがBCL6の少なくとも一部をコードする配列に融合される融合タンパク質である。例えば、エストロゲン受容体(ER)がBCL6に融合され、融合タンパク質ER-BCL6を生じる。この融合タンパク質は、細胞基質において熱ショックタンパク質と複合体を形成するため不活性である。外来性誘導物質4ヒドロキシタモキシフェン(4HT)の投与の際に、融合タンパク質ER-BCL6が熱ショックタンパク質から解離し、その結果融合タンパク質のBCL6部分が活性になる。
好ましくは、本発明の方法は、B細胞及び/又は(ex vivo)B細胞培養物において抗アポトーシス核酸の発現を誘導し、増強させ、及び/又は維持することを含む。本明細書で使用される場合、用語「抗アポトーシス核酸分子」は、B細胞におけるアポトーシス遅延させる及び/又は防止することができる核酸分子を指す。好ましくは、前記抗アポトーシス核酸分子は、抗体を増殖させること及び産生することの両方ができる形質芽細胞様B細胞においてアポトーシスを遅延させる及び/又は防止することができる。好ましくは、外来性核酸分子を含む抗アポトーシス核酸分子が使用される。このことは、B細胞において自然に発現されない核酸配列が使用されるか、又は天然に存在する核酸配列のさらなるコピーが使用されるかのいずれかを意味し、その結果、得られたB細胞における発現が天然のB細胞と比較して増強される。種々の抗アポトーシス核酸分子が当技術分野で知られており、その結果、種々の実施形態が利用できる。好ましくは、抗アポトーシスBcl-2タンパク質がB細胞において良好な抗アポトーシス阻害剤であるため、Bcl-2ファミリーの抗アポトーシスメンバーである抗アポトーシス核酸分子が使用される。Bcl-2ファミリー(そのファミリーは、アポトーシス促進性及び抗アポトーシスタンパク質の両方を含む)によって制御される多くのプロセスは、アポトーシスのミトコンドリア経路に関する。抗アポトーシスBcl-2ファミリーのメンバーBcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、Bcl-2関連タンパク質A1(Bcl2-A1若しくはA1)、Bcl-2様10(Bcl2L 10)及びMcl-1、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体の使用が、Bcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、A1、Bcl2L 10及びMcl-1が、一般的にミトコンドリア外膜で統合されるため、好ましい。これらは、ミトコンドリア膜の統合性を保護するためにBcl-2ファミリーに属するアポトーシス促進性タンパク質に直接的に結合し、阻害する。
したがって、前記抗アポトーシス核酸分子が、Bcl2ファミリー、好ましくはBcl-xL又はMcl-1又はBcl-2又はA1又はBcl-w又はBcl2L 10の抗アポトーシス遺伝子又はその機能的部分若しくは機能的誘導体を含む本発明による方法が好ましい。
好ましくは、Bcl-xL又はMcl-1又はBcl-2又はA1又はBcl-w又はBcl2L 10の発現は、これらの抗アポトーシス遺伝子のいずれかの発現を促進させることができる少なくとも1つの化合物を、B細胞に投与することによって、又は、このような化合物の存在下でB細胞を培養することによって誘導され、増強され又は維持される。したがって、更に、
- Bcl-xL及び/若しくはMcl-1及び/若しくはBcl-2及び/若しくはA1及び/若しくはBcl-w及び/若しくはBcl2L 10の発現を直接的若しくは間接的に増強させることができる化合物を有する前記B細胞を準備する工程、並びに/又は
- Bcl-xL及び/若しくはMcl-1及び/若しくはBcl-2及び/若しくはA1及び/若しくはBcl-w及び/若しくはBcl2L 10の発現を直接的若しくは間接的に増強させることができる化合物の存在下で前記B細胞を培養する工程を含む本発明による方法が提供される。
しかし、より好ましくは、Bcl2ファミリーの、好ましくは、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w、Bcl2L 10及びその機能的部分若しくは機能的誘導体からなる群から選択される抗アポトーシス遺伝子をコードする少なくとも1つの核酸分子を有するB細胞が提供される。このように、前記B細胞における発現生成物の量を直接的に増大させることが可能である。したがって、Bcl2ファミリーの、好ましくは、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w、Bcl2L 10及びその機能的部分若しくは機能的誘導体からなる群から選択される抗アポトーシス遺伝子をコードする少なくとも1つの核酸分子を有する前記B細胞を準備する工程を含む本発明による方法も提供される。一実施形態では、前記核酸分子は、構成的に活性であり、前記核酸分子が、継続的に発現されることを意味する。別の実施形態では、前記核酸分子は誘導性であり、その発現は、少なくとも1種の誘導物質及び/又は抑制因子により調節されることを意味する。当技術分野で知られている誘導性核酸分子発現系の非現定例は、本明細書で前に記載されている。
特に好ましい実施形態では、前記抗アポトーシス核酸分子は、Bcl-xL又はMcl-1又はその機能的部分若しくは機能的誘導体、最も好ましくはBcl-xL又はMcl-1をコードする。本発明によれば、BCL6とBcl-xLの組合せは、特に良好に、B細胞の複製寿命を増加させることができ、したがって、得られた形質芽細胞様B細胞の長期の培養物を形成することができる。同じことがBCL6とMcl-1の組合せにも当てはまる。最も好ましくは、前記抗アポトーシス核酸分子は、Bcl-xL又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードし、最も好ましくはBcl-xLをコードする。
BCL6、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、Al、Bcl-w又はBcl2L10の機能的部分は、それぞれ天然のBCL6、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、Al、Bcl-w又はBcl2L10と比較して、B細胞の複製寿命を増加させるという、必ずしも量においてではなく質において同じ能力を有するタンパク質性分子である。このような機能的部分は、例えば、前記能力に関与しない又は極わずかしか関与しないアミノ酸を含まない。
例えば、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w及びBcl2L 10の機能的部分は、それぞれ、全長Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w及びBcl2L 10と同じ種類のアポトーシス特性を保持した(種類においてであり、必ずしも量においてではない)、それぞれBcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w及びBcl2L 10の断片と、本明細書で定義される。典型的には、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w又はBcl2L 10の機能的部分は、それぞれ、B細胞におけるアポトーシスを遅延させる及び/又は防止することができるBcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w又はBcl2L 10の短い断片である。このような機能的部分は、例えば、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w及びBcl2L 10の抗アポトーシス活性に有意に寄与しない配列を欠いている。典型的には、BCL6の機能的部分は、B細胞の複製寿命を増加させることができるBCL6の短い断片である。
BCL6、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w又はBcl2L 10の機能的誘導体は、それぞれ、B細胞の複製寿命を増加させるその能力(種類においてであり、必ずしも量においてではない)を変更されたが維持している、BCL6、Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w又はBcl2L 10タンパク質として定義される。機能的誘導体は、多くの方法で、例えば、1つのアミノ酸が、一般的に同じ特性(大きさ、疎水性等)を有する別のアミノ酸によって置換され、その結果全体的な機能が重大な影響を受けない保存的アミノ酸置換を介して提供される。或いは、機能的誘導体は、例えば、検出可能な標識を有する又は誘導性化合物を有する融合タンパク質を含む。
更に、IL21及びCD40Lを有する前記B細胞を準備する工程を更に含む、本発明による方法が提供される。好ましくは、前記IL21は、マウス又はヒトIL21、最も好ましくはマウスIL21である。前記CD40Lはまた、好ましくはマウス又はヒトCD40L、最も好ましくはヒトCD40Lである。
BCL6発現及び抗アポトーシス核酸分子の発現を増大させることの他に、B細胞におけるBlimp-1の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持することも有利である。このことは、前記B細胞の抗体産生を増強させる。したがって、一態様は、前記B細胞におけるBlimp-1の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程を更に含む本発明による方法を提供する。好ましくは、Blimp-1の発現は、誘導され又は増強される。
B細胞におけるBlimp-1の発現の程度は、様々な方法において調節されうる。例えば、Blimp-1の発現を直接的又は間接的に増大させることができる化合物を有するB細胞が準備される。更に、又は或いは、B細胞は、Blimp-1の発現を直接的又は間接的に増大させることができる化合物の存在下で培養される。更に、
- Blimp-1の発現を直接的若しくは間接的に増大させることができる化合物を有する前記B細胞を準備する工程、及び/又は
- Blimp-1の発現を直接的若しくは間接的に増大させることができる化合物の存在下で前記B細胞を培養する工程を更に含む本発明による方法が提供される。
好ましくは、Blimp-1の発現を増大させることができる前記化合物は、IL21を含む。したがって、B細胞がIL2の存在下で、少なくとも培養時間の一部の間培養される方法が提供される。
Blimp-1の発現を増大させることができる別の好ましい化合物は、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)タンパク質又はその機能的部分若しくは機能的誘導体、及び/又はそれをコードする核酸配列を含む。STAT3は、シグナルトランスデューサーであり、B細胞の発達及び分化に関与する。STAT3は、Blimp-1の発現を上方制御することができる。別の好ましい方法において、したがって、STAT3又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする核酸分子を有するB細胞が提供され、好ましくは、ここで、前記核酸分子の発現が、抑制因子の外来性誘導物質により調節され、その結果STAT3発現の程度が、随意に調節される。例えば、早期に述べた誘導性発現系の1つが使用される。例えば、STAT3又はその機能的部分若しくは機能的誘導体、及びERを含む融合生成物が使用され、融合タンパク質ER-STAT3としてエストロゲン受容体(ER)及びSTAT3をコードする核酸分子を有するB細胞が準備される。この融合タンパク質は、細胞基質において熱ショックタンパク質を有する複合体を形成するため、不活性である。このように、STAT3は核に到達することができず、Blimp-1の発現は増強されない。外来性誘導物質4ヒドロキシタモキシフェン(4HT)の投与の際に、融合タンパク質ER-STAT3は、熱ショックタンパク質から解離し、その結果STAT3は、核に入り、Blimp-1の発現を活性化することができる。
本明細書で使用される場合、STAT3の機能的部分は、天然のSTAT3と比較してBlimp-1の発現を増大させるという、必ずしも量においてではなく質において同じ能力を有するSTAT3の断片として定義される。このような機能的部分は、例えば、前記能力に関与しない又は極わずかしか関与しないアミノ酸を含まない。
STAT3の機能的誘導体は、Blimp-1の発現を増大させるその能力(種類においてであり、必ずしも量においてではない)を変更したが維持していないSTAT3タンパク質として定義される。機能的誘導体は、多くの方法で、例えば、1つのアミノ酸が、一般的に同様の特性(大きさ、疎水性等)を有する別のアミノ酸によって置換され、その結果全体的な機能が重大な影響を受けない保存的アミノ酸置換を介して提供される。或いは、機能的誘導体は、例えば、検出可能な標識を有する又は誘導性化合物を有する融合タンパク質を含む。
STAT3は、Blimp-1の発現を増大させることができるため、STAT3の活性及び/又は発現を増大させることができる化合物を投与することによって、Blimp-1の発現を間接的に増大させることも可能である。一実施形態では、したがって、STAT3の活性を増強させることができ、その結果Blimp-1の発現が間接的に増強される化合物を有するB細胞が準備される。
STAT3は、様々な方法で活性化される。好ましくは、STAT3は、サイトカインを有するB細胞を準備することによって活性化される。天然にB細胞の分化に関与するサイトカインは、STATタンパク質を調節することにおいて非常に誘導である。STAT3の非常に有効な活性剤はIL21及びIL6であるが、IL2、IL7、IL10、IL15及びIL27もSTAT3を活性化することが知られている。更に、自然免疫に関与するトール様受容体(TLR)はまた、STAT3を活性化することができる。本発明の好ましい方法において、したがって、B細胞は、IL21、IL2、IL6、IL7、IL10、IL15及び/又はIL27の存在下で培養される。最も好ましくは、IL21が、本発明によるB細胞培養物の抗体産生を増強するのに特に適しているため、IL21が使用される。IL21は、Blimp-1の発現がBCL6によって妨害された場合にさえ、Blimp-1の発現を上方制御することができる。
更に、又は或いは、変異したヤヌスキナーゼ(JAK)がSTAT3を活性化するために使用される。自然には、JAKは、STAT3がそれ自体、少なくとも1種のサイトカインによって活性化された後にSTAT3をリン酸化することができる。サイトカインの存在とは無関係に、STAT3を活性化することができる変異したヤヌスキナーゼは、本発明による方法において、特に適している。
更に別の実施形態では、Blimp-1の発現は、サイトカインシグナル抑制因子(SOCS)タンパク質を有するB細胞を準備することによって、及び/又は前記細胞内でSOCSタンパク質を活性化することによって増大される。或いは、又は更に、Eタンパク質、E47、E12、E2-2及びHEBの少なくとも1種がBlimp-1の発現を増大させるために使用される。E47は、Eタンパク質という名称の、へリックス-ループ-へリックスタンパク質のファミリーに属する転写因子である。4種のEタンパク質、E12、E47、E2-2及びHEBが存在し、これらはリンパ球の発達に関与する。E12及びE47は、様々にスプライシングされるE2Aという名称の1つの遺伝子によってコードされる。Eタンパク質は、腫瘍サプレッサーとして記載されている。E47の特異的標的は、Socs1及びSocs3遺伝子である。
更に、本発明は、本発明による方法で得ることができる単離された又は組換えB細胞を提供する。好ましくは、このような単離された又は組換えB細胞は、外来性抗アポトーシス核酸配列及びBCL6又はSTAT5、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする外来性核酸配列を含む。更に、したがって、BCL6又はSTAT5、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする外来性核酸配列及び外来性抗アポトーシス核酸配列を含む、単離された又は組換えB細胞が準備される。前に説明したように、前記外来性核酸分子は、B細胞において天然に生じない核酸配列を含有するか、天然のB細胞核酸配列のさらなるコピーを含有する。Bcl-xL、Mcl-1、Bcl-2、A1、Bcl-w及びBcl2L 10は、好ましい抗アポトーシス核酸分子である。したがって、BCL6又はSTAT5又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする外来性核酸配列、及びBcl-xL又はMcl-1又はBcl-2又はA1又はBcl-w又はBcl2L 10又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする外来性核酸配列を含む、単離された又は組換えB細胞が好ましい。BCL6又はSTAT5又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする前記核酸配列、及び前記外来性抗アポトーシス核酸配列は、1つの核酸分子に存在してよい。或いは、これらの配列は、少なくとも2つの核酸分子に存在する。
目的の抗原に対する抗体を産生することができるB細胞を生成するための方法であって、
a)目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞、又は目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞に発達することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と、
b)BCL6及び/又はSTAT5、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする核酸分子を有する前記B細胞を準備することによって、前記B細胞において、BCL6の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程、好ましくは、STAT3、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする核酸分子を有する前記B細胞を準備することによって、又はIL21の存在下で前記B細胞を培養することによって、前記B細胞において、Blimp-1の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程、並びに前記少なくとも1種のB細胞において、BCL2ファミリー、好ましくはBcl-xL又はMcl-1の抗アポトーシス分子をコードする遺伝子の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程と、
c)前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて第1のB細胞培養物とする工程と、
d)前記第1のB細胞培養物におけるB細胞の、目的の前記抗原に対する平均結合能よりも高い目的の前記抗原に対する結合能を有する少なくとも1種のB細胞を前記第1のB細胞培養物から選択する工程と、
e)好ましくは、工程d)において選択された前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて第2のB細胞培養物とする工程と、
f)工程d)において選択された前記少なくとも1種のB細胞によって又は前記第2のB細胞培養物によって産生された抗体の安定性を決定する工程と、
g)前記第1のB細胞培養物のB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と
を含む方法を提供する。
更に、ex vivo B細胞培養物から、前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択するための方法であって、
a)目的の抗原に対して特異的な抗体を産生することができるex vivo B細胞培養物を準備する工程と、
b)前記ex vivo B細胞培養物のB細胞の、目的の前記抗原に対する平均結合能よりも高い目的の前記抗原に対する結合能を有する少なくとも1種のB細胞を前記ex vivo B細胞培養物から選択する工程と、
c)工程b)において選択された前記少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体の安定性を決定する工程と、
d)前記ex vivo B細胞培養物のB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と
を含み、
BCL6及び/又はSTAT5、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする核酸分子を有する前記ex vivo B細胞培養物を準備することによって、前記ex vivo B細胞培養物において、BCL6の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程、好ましくは、STAT3、又はその機能的部分若しくは機能的誘導体をコードする核酸分子を有する前記ex vivo B細胞培養物を準備することによって、又はIL21の存在下で前記ex vivo B細胞培養物を培養することによって、前記ex vivo B細胞培養物において、Blimp-1の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程、並びに前記ex vivo B細胞培養物において、BCL2ファミリー、好ましくはBcl-xL又はMcl-1の抗アポトーシス分子をコードする遺伝子の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程を更に含む方法を提供する。
好ましくは、本発明による方法は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1カ月、より好ましくは少なくとも3カ月、より好ましくは少なくとも6カ月間安定である安定な抗体を産生することができるB細胞の細胞株を生成するために使用され、その結果高い安定性を有する抗体の商業生産が可能になった。好ましくは、安定なモノクローナル抗体を産生することができる安定な細胞株が生成される。好ましくは、これは、例えば、CD19(B細胞マーカー)及び細胞表面のIgG及び/又はCD27(記憶細胞をマークするための)に対する選択により、試料から単離された記憶B細胞を使用することによって実施される。更に、目的の抗原に特異的に結合することができる記憶B細胞は、例えば、目的の前記抗原を使用する結合アッセイにおいて選択される。次に、BCL6及び抗アポトーシス核酸、好ましくはBcl-xL又はMcl-1は、好ましくは前記B細胞において共発現され、目的の抗原に対して特異的な細胞の集団を生じる。好ましくは、本明細書で記載された方法において、1種のみの記憶B細胞を使用し増殖させて(ex vivo)B細胞培養物とし、その結果、モノクローナル抗体(モノクローナルB細胞株)を産生するB細胞培養物が得られる。
一実施形態では、目的の抗原に以前にさらされた個体から生じるB細胞は、好ましくは記憶B細胞が、本発明による方法において使用される。しかし、これは必要ではない。目的の抗原にさらされていない個体からのB細胞を使用することも可能である。例えば、別の抗原に対して特異的であるが、目的の抗原と交差反応性を示さないB細胞が使用される。別の例として、個体のナイーブB細胞集団から選択されるB細胞が使用される。個体のナイーブB細胞集団は、個体が目的の前記抗原にさらされていなかったとしても、目的の抗原と反応性を示すB細胞を含有する場合がある。ナイーブB細胞集団からのこのようなB細胞は、例えば、標識化された目的の抗原を使用して選択される。
本発明は更に、目的の抗原に対して特異的な抗体を産生するための方法であって、
- ex vivo B細胞培養物から、本発明による方法で、前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と、
- 前記少なくとも1種のB細胞を培養してB細胞培養物とする工程と、
- 前記B細胞培養物によって産生された抗体を得る工程と
を含む方法を提供する。
更に、目的の抗原に対して特異的な抗体を産生するための方法であって、
- ex vivo B細胞培養物から、本発明による方法で、前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と、
- 任意選択で、前記選択された少なくとも1種のB細胞を増殖させてB細胞培養物とする工程と、
- 高い安定性を有する前記抗体の重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列を決定する工程と、
- 第2の細胞において、前記抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子を発現させる工程と
を含む方法が提供される。好ましくは、前記第2の細胞は、いわゆる産生細胞、例えば、好ましくは市販の抗体産生に適合される、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)の細胞、NSO(マウスの骨髄腫)又は293(T)細胞株等である。このような産生細胞の増殖により、本発明による安定な抗体を産生することができる産生細胞株が生じる。好ましくは、前記産生細胞株は、ヒトにおいて使用するための抗体を産生するのに適している。したがって、前記産生細胞株は、好ましくは、病原性微生物等の病原体を含まない。
更に、基準抗体の重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列と比較して、抗体の重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列において少なくとも1つの変異を特定するための方法であって、その変異は前記抗体の安定性を促進し、
- ex vivo B細胞培養物から、本発明による方法で、前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と、
- 任意選択で、前記選択された少なくとも1種のB細胞を増殖させてB細胞培養物とする工程と、
- 前記選択された少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体の重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列の少なくとも一部を決定する工程と、
- 前記アミノ酸配列を、基準抗体の重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列の少なくとも一部と比較して、それによって、前記抗体の重鎖及び/又は軽鎖におけるアミノ酸配列において少なくとも1つの変異を特定する工程であって、その変異は前記抗体の安定性を促進する、工程と
を含む方法が提供される。
本発明に従って選択された抗体の重鎖及び/又は軽鎖の少なくとも一部のアミノ酸配列、又は本発明に従って選択されたB細胞によって産生された抗体のアミノ酸配列は、質量分析又はエドマン分解反応による等、当技術分野で知られている任意の方法を使用して決定されうる。好ましくは、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の少なくとも相補性決定領域(CDR)、より好ましくは重鎖のCDR及び軽鎖のCDRのアミノ酸配列が決定される。
好ましくは、基準抗体は、本明細書で言及されるように、高い結合能を有するB細胞が、本発明に従って選択される第1のB細胞培養物又はex vivo B細胞培養物により産生された抗体である。したがって、好ましくは、前記基準抗体は、本発明に従って、目的の抗原に対する抗体を産生することができるB細胞を産生するための方法の工程c)において得られた第1のB細胞培養物によって産生された抗体である。別の好ましい実施形態では、前記基準抗体は、ex vivo B細胞培養物から、本発明に従って、前記ex vivo B細胞培養物によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択するための方法の工程a)において準備される、目的の抗原に対して特異的な抗体を産生することができるex vivo B細胞培養物によって産生された抗体である。
更に、本発明は、本発明による方法によって得られた、単離された又は組換えB細胞、B細胞培養物及びB細胞の集団、好ましくはモノクローナルB細胞株を提供する。好ましくは、安定な抗体を産生することができるこのようなB細胞は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1カ月間、より好ましくは少なくとも3カ月間、より好ましくは少なくとも6カ月間安定であり、B細胞は、前記期間に、抗体を複製すること及び産生することの両方ができ、又は複製して、抗体を産生する細胞に発達させることができることを意味する。好ましくは、本発明に従って選択された又は生成されたB細胞は、IgM、IgG、IgA、又はIgE、好ましくはIgGを生成する細胞を含む。本発明に従って選択された又は生成されたB細胞は、抗体を産生するB細胞株を生成することにおいて使用するのに特に適している。本発明に従って選択された又は生成された高い安定性の抗体を産生することができるB細胞は、好ましくは、ex vivoで培養され、抗体は、好ましくは更に使用するために収集される。或いは、本発明に従って選択された又は産生された高い安定性の抗体を産生することができるB細胞のアミノ酸配列が決定され、安定な抗体を産生し、収集するために抗体の重及び/又は軽鎖をコードする核酸分子を有する産生細胞株が準備される。したがって、高い安定性を有する抗体を産生することができる前記少なくとも1種のB細胞の重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列の少なくとも一部を決定する工程を更に含む本発明による方法が提供される。本発明に従って選択された及び/又は産生されたB細胞から又はB細胞培養物若しくはモノクローナルB細胞株から得られた抗体も提供される。本発明による方法で産生された安定な抗体又はその機能的部分は、例えば、治療、予防及び診断用途、並びに研究目的及びex vivo実験等、広範な用途に有用である。
特徴は、明確性及び簡潔な記載の目的で、本発明の同じ又は別個の態様若しくは実施形態の一部として、本明細書に記載されてよい。本発明の範囲は、同じ又は別個の実施形態の一部として、本明細書に記載された特徴の全て又は一部の組合せを有する実施形態を含んでよいことが当業者に認識される。
本発明は、以下の実施例で更に説明される。これらの実施例は、本発明の範囲を制限せず、単に本発明を明確にするためのものである。
インフルエンザ群1及びインフルエンザ群2の交差反応性HA特異的親クローンAT10_004の平均結合性と比較して標識したH1又はH3の増加した結合性を有するサブクローン(異常値)選択及び単離を示す図である。細胞は、IgG-PE又はラムダ-PE抗体と一緒に、Alexa-647で標識したHA H3又はH1抗原で染色された。増加した抗原結合性に対して豊富な3つの次ラウンドに続いて、AT10_004細胞の単細胞クローニングが、セルソーターを用いて実施された。 親AT10_004クローンと比較して増加したH1又はH3の抗原結合性を有するサブクローンの選択を示す図である。AT10_004細胞は、蛍光CD19抗体で標識され、非標識サブクローン細胞と混合された。この細胞の混合物は、ラムダ-PE及びAlexa-647で標識したH3又はH1で染色された。親AT10_004細胞と比較したサブクローンのBCR発現に関する抗原結合性の強度が示される。 組換え親抗体及び変異AT10_004抗体の動的走査蛍光法(DSF)の融解曲線を示す図である。親AT10_004が二峰性の融解曲線を示すのに対し、軽鎖の変異を有するサブクローン[S30N(図示せず)、D50G及びS92Y]は、高温でのみ単一のピークを示す。P100dF変異は、DSF曲線に影響しない。 図3−1の続きである。 組換え親及び変異AT10_004のゲルろ過クロマトグラムオーバーレイを示す図である。組換えAT10_004抗体溶液は、ゲルろ過カラムに塗布され、凝集した抗体の存在を検出した。 AT10_004及びLC変異D50Gの抗体モノマーは、ゲルろ過を使用して精製され(パネル1及び3)、-20℃で保存された。2カ月後、抗体溶液を解凍し、抗体凝集物の存在について分析した(パネル2及び4)。 図4B−1の続きである。 組換え抗体による、MDCK-SIAT細胞上のH1N1(A/Hawaii/31/2007)及びH3N2(A/Netherlands/177/2008)ウイルスのin vitroインフルエンザAウイルス中和を示す図である。上のパネルは、低い(左のパネル)又は高い(右のパネル)ウイルス力価を使用するH3N2中和を示す。下のパネルは、異なる(変異)抗体によるH1N1ウイルス中和を示す。 安定化した組換えAT10_004.8(HC:P100dF)変異抗体を用いたMDCK-SIAT細胞上のH1N1(A/Hawaii/31/2007)ウイルスのin vitroインフルエンザAウイルス中和を示す図である。
インフルエンザヘマグルチニンB細胞クローンAT10_004の生成及び特性評価
ヒト記憶B細胞を、Kwakkenbosら(Nature medicine、16(1)、123〜128. doi:10.1038/nm.2071;Methods 2013 doi:10.1016/j.ymeth.2013.07.002;特許出願WO2007/067046)によって記載されたBCL6/Bcl-xL技術を使用して不死化した。交差反応性抗インフルエンザヘマグルチニン特異的B細胞クローンAT10_004の同定及び特性評価が、特許出願WO2013/081463及びWO2012/072814に記載されている。AT10_004抗体の異なるヘマグルチニンタンパク質への結合を、固相ELISAを使用して、又はウイルス感染細胞を用いたFACSアッセイを使用して試験した(特許出願WO2013/081463に記載された)。AT10_004は、群2のヘマグルチニンタンパク質に最も強い結合を示すが、群1のヘマグルチニンタンパク質には中程度の結合しか検出されない[Table 1(表1)]。
増加した抗原結合性を有するサブクローンの選択
特許出願WO2012/072814では、モノクローナルB細胞クローンの不均一な亜集団内で、増加した抗原結合能力を有する細胞は、抗原染色(H3-Alexa-647)とBCR染色の組合せを使用して選択されうることが示されている。BCR染色は、BCRの重又は軽鎖に結合する抗体を用いて実施した。高いH3染色及び等しい又は低いBCR染色は、その特定のサブクローンのBCRの高い抗原結合能力を示し、一方低いH3染色及び等しい又は高いBCR染色は、BCR当たりの抗原結合が少ないことを示す。
本研究において、HA特異的B細胞クローン(AT10_004)を2〜3週間培養し、数百万個の細胞を生成し、抗原-BCR染色が実施される前に、偏りのない不均一なB細胞集団を作製した。溶解性の標識したHAタンパク質のH1又はH3(H1 HA:A/New Caledonia/20/1999又はH3 HA:A/Wyoming/03/2003)への増加した抗原結合性を示した細胞を選択し、セルソーターで選別した。3ラウンドの選別及び成長の後、FACS分析をこれらの細胞について実施し、抗原結合性の差を決定した。増加した抗原結合性について3回選別された細胞は、選択されていない細胞と比較して、抗原染色において明らかなシフトを示す(図1)。次いで、これらの選別された細胞を、FACSAria III(BD Biosciences社)を使用して単一細胞のクローニングに供した。クローンを2〜3週間培養して増殖させ、次いで親クローンと比較して増加した抗原結合性について試験した。
抗原競合アッセイ
これまでは、抗原結合性における差異は、全く同じ数の細胞をBCR抗体及び標識した抗原で染色することで、同様の細胞/染色溶液の比を有するようにすることによって検出した。ここでの実験においては、増加した抗原結合性を示すサブクローンを、抗原競合実験を使用して検出する。AT10_004細胞を採取し、氷上でPe-Cy7標識したCD19抗体で染色した。15分後、細胞を洗浄し、1ウェル当たり40.000個の細胞で播種し、100μlのサブクローン細胞を添加する。次に、細胞混合物を洗浄し、標識した抗原(H1 HA:A/New Caledonia/20/1999又はH3 HA:A/Wyoming/03/2003)と標識したBCR抗体で染色する。細胞を氷上で1〜3時間インキュベートし、洗浄し、FACSCanto(BD Biosciences社)で測定する。CD19陽性細胞(親AT10_004細胞)に結合する標識した抗原の量を、サブクローン(CD19陰性)に結合した標識した抗原の量と比較する。図2でプロットされているのは、H1又はH3抗原のいずれかに対し増加した抗原結合性を示す6つのサブクローンである。
AT10_004の選択されたサブクローン抗体のクローニング及び配列解析
親AT10_004クローンと比較して増強された抗原結合性に基づいて、サブクローンのパネルを選択した。これらのサブクローンのうち、本発明者らは、RNeasy(登録商標)ミニキット(Qiagen社)で全RNAを単離し、cDNAを生成し、PCRを実施し、配列解析を実施した。組換えヒトIgGを産生するために、本発明者らは、ヒトIgG1及びカッパ定常領域とフレームが合うように、重及び軽鎖可変領域をpcDNA3.1(Invitrogen社)ベースのベクターにクローニングし、293T細胞に一過性に形質導入した。本発明者らは、MAbSelect Sureカラム(GE Healthcare社)を使用して、培養物上清から組換えIgGを精製した。
選択されたAT10_004サブクローンの配列解析により、いくつかのサブクローンが、単一の変異として又はさらなる変異との組合せのいずれかで、同一の変異を有することが明らかとなった[Table 2(表2)]。興味深いことに、増強されたH3結合性を示すサブクローンの全ては変異した軽鎖を有する。17個のH3の選択されたサブクローンから、11個は軽鎖D50G変異を有し、一方他の6個は軽鎖S92Y変異を示す。増強されたH1結合性を示す、同定されたサブクローン(6)の全ては、重鎖P100dF変異を含有する。これらのサブクローンの3個は、更に軽鎖に変異を保有する。以下に記載した実験において、本発明者らは、クローンAT10_004.10において検出された軽鎖のS30N変異の効果を分析した。
AT10_004安定性試験
本発明者らは、iCycler RealTime PCR機器(BIORAD社)を使用して、動的走査蛍光法(DSF)(Phillips及びHernandez de la Pena、2001、The Combined Use of the Thermoflour Assay and ThermoQ Analytical Software for the Determination of Protein Stability and Buffer Optimization as an Aid in Protein Crystallization. Hoboken, NJ, USA:John Wiley & Sons, Inc. doi:10.1002/0471142727.mb1028s94)を用いて組換え親及び変異AT10_004抗体の構造的安定性を試験した(図3)。DSFアッセイでは、抗体は、温度の上昇に供され、それらの構造をアンフォールドさせる。タンパク質のアンフォールディングを、蛍光リポーター色素(SyPro、Invitrogen社)で測定する。本来のAT10_004抗体のDSF溶解曲線は、異なる温度での抗体サブドメイン(Fab、CH2及びCH3)のアンフォールディングを表す、多峰性のパターンを示す(Garber及びDemarest、2007、Biochemical and Biophysical Research Communications、355、751〜757)。軽鎖変異S30N(図示せず)、D50G及びS92Yを含有する変異は、親抗体で観察された±60℃での第1の「アンフォールディングピーク」を欠いており(図3)、これらの選択された変異が増大された熱安定性を有することを示す。
次に、本発明者らは、組換えによって産生され、精製された抗体溶液における凝集物の存在を、Superdex200ゲルろ過カラム(GE Healthcare社)でのゲルろ過によって分析した。ゲルろ過分析により、精製されたAT10_004に凝集物が存在することがはっきりと示される(図4a)。軽鎖変異(S30N、D50G又はS92Y)を有するAT10_004変異は、これらの凝集物を形成しない(図4a)。更に、本発明者らは、長期保存の間の凝集物の形成をみることにより、AT10_004の安定性に関する軽鎖変異の効果について分析した。抗体モノマー(AT10_004及び変異LC:D50G)をゲルろ過で精製し(図4b、パネル1及び3)、-20℃で2カ月間保存した。保存後、各試料中の凝集物の量をゲルろ過で決定した。AT10_004は、変異LC:D50Gより多くの凝集物を含有する(図4b、パネル2及び4)。同様の結果が軽鎖変異S30N及びS92Yで得られる(データ示さず)。
これらの結果は、本発明者らが得た軽鎖変異(S30N、D50G又はS92Y)は、AT10_004抗体の熱安定性を増強させ、変異により凝集物の形成が妨げられることを示唆する。
ウイルス中和
得られた変異抗体が、親AT10_004抗体と比較して異なる中和能力を有するかどうかを決定するために、in vitro中和アッセイを実施した。アッセイは、MDCK-SIAT細胞で実施した(Matrosovich M.ら、2010、Journal of Virology、77(15)、8418〜8425)。MDCK-SIAT細胞は、96ウェルプレート(CellCarrier Plate、PerkinElmer社)において、80〜100%のコンフルエンシーまで、DMEM/8%FCS/PS/G418で増殖させた。中和アッセイを、FCS又はBSAなしでOptimem/PS/G418/Trypsin培地で実施する。50μlの組換えmAbをH3N2(A/Ned/177/2008)又はH1N1(A/Hawaii/31/2007)インフルエンザのウイルス懸濁液(100TCID50/50μl又は1000TCID50/50μl)50μlと混合し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、懸濁液を、多連で、100μlのOptimem/PS/G418/Trypsin中にMDCK-SIAT細胞を含有する95ウェルプレートに移した。使用する前に、MDCK-SIAT細胞を150μlのPBSで2回洗浄した。次いで、プレートを2500rpmで室温で15分間遠心分離し、37℃/5%CO2に置いた。24時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、室温で10分間ホルマリン(水中37%のホルムアルデヒド)で固定し、150μlのPBSで2回洗浄し、室温で、DAPI及び抗体でインフルエンザウイルス(NP-FITC、Abcam社)の核タンパク質に対して染色した。30分後、細胞を150μlのPBSで2回洗浄し、100μlのPBS+50%グリセロールをウェルに添加した。MDCK-SIAT細胞のウイルス感染は、10xの対物レンズを使用するOperetta(PerkinElmer社)で測定し、分析した。mAbの中和能力を定量化するために、感染した細胞の数を計数した(DAPI及びNP-FITCに対して陽性)。IC50値は、Prism(GraphPad software)を用いて計算した。LC:D50G又はLC:S92Y変異を含有する抗体は、最低TCID50でH3N2中和能力を維持し、中和アッセイが高いウイルス投与量(>3000TCID50)で実施された場合、低いIC50によって示されるように増大した中和能力を有しさえした[図5及びTable 3(表3)]。これらの軽鎖変異では、H1中和能力の増大は検出されなかった(150μg/mlまで試験した)。標識したH1抗原での選択によって同定されたAT10_004サブクローン(AT10_004.8、AT10_004.9及びAT10_004.10)は、低減したH3N2中和能力を示した[図5及びTable 3(表3)]が、AT10_004.8及びAT10_004.9は増大したH1N1中和能力を示した。本来のAT10_004抗体又は軽鎖変異がH1N1感染の阻害を示さないのに対して、抗体AT10_004.8は、H1N1感染に顕著な効果を示す。
表面プラズモン共鳴(SPR)分析
SPR分析を、前述のように、IBIS MX96 SPRイメージングシステム(IBIS Thchnoligies BV社、Enschede、The Netherlands)で実施した(Lokateら、2007、J Am Chem Soc. 129(45):14013〜8)。この実験において、抗体(カップリング緩衝液中1.0μg/ml:10mM MES-NaOH、pH 4.5+0.05% Tween20)を、連続流マイクロスポッター装置(continuous flow microspotter device)(Wasatch Microfluidics社、Salt Lake City、UT、USA)を使用して、Easy2Spot gold-film gel-type SPR-sensor(Ssens社、Enschede、The Netherland)で直接的に固定化した。スポッティング後に、センサーを50mMのエタノールアミン、pH8.5で不活性化した。不活性化後、それぞれ、エンプティアッセイ緩衝液(PBS+0.05%アジ化ナトリウム、0.05% Tween20及び0.01% BSA)を用いる45分の注入に続き、再生緩衝液(50mMのグリシン-HCl、pH2.0)を用いる2分のインキュベーションからなる、数回のブランク注入サイクルがなされた。
SPR分析は、H3又はH1タンパク質を用いる複数サイクルの連結注入からなる。各サイクルは、会合工程(10分)[アッセイ緩衝液に希釈された組換えインフルエンザHA3又はH1タンパク質(H1 HA:A/California/07/09;H3 HA:A/Wyoming/03/2003)は、被覆センサーに注入される]、解離工程(15分)[センサーは、アッセイ緩衝液でフラッシングされる]、最後に再生緩衝液を用いた洗浄(2分)からなり、任意の残存する結合分析物をセンサーから除去する。SPRデータを、Sprintソフトウェア(バージョン1.6.8.0、IBIS Technologies BV社、Enschede、The Netherlands)を使用して分析した。結合定数は、Scrubber2ソフトウェア(Biologic Software社、Campbell、Australia)を使用して一致させた。軽鎖において安定化変異を有するサブクローン[クローンAT10_004.2(D50G)、AT10_004.5(S92Y)& AT10_004.12(S30N)]は全て、本来のAT10_004クローンと同様のH3親和性を有する[Table 4(表4)]。これらのサブクローンのH1親和性もまた、本来のAT10_004クローンと同様である(偏差50%未満)[Table 4(表4)]。H1誘導HC:P100dF変異はH1に対する結合親和性を増大させ、H3結合性を低減させ[Table 4(表4)]、このことは、これらのウイルスに対するこのサブクローン(AT10_004.8)の中和能力と一致する。サブクローンAT10_004.8(P100dF)が、本発明者らが特定した安定化LC変異の1つを組み込むことによって安定化されると、H1に対するその親和性が更に増加し[Table 4(表4)]、このことは、変異AT10_004.13(LC:D50G)で最も明白である。この変異(HC:P100dF+LC:D50G)は、HC:P100dF変異のみと比較して、H1に対しても改良された中和能力を示す(図6)。

Claims (9)

  1. 目的の抗原に対する抗体を産生することができるB細胞を生成するための方法であって、
    a)目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞、又は目的の前記抗原に対して特異的な抗体を産生することができるB細胞に発達することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と、
    b)前記少なくとも1種のB細胞において、BCL6の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程、並びに抗アポトーシス核酸の発現を誘導し、増強させ及び/又は維持する工程と、
    c)前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて第1のB細胞培養物とする工程と、
    d)前記第1のB細胞培養物におけるB細胞の、目的の前記抗原に対する平均結合能よりも高い目的の前記抗原に対する結合能を有する少なくとも1種のB細胞を前記第1のB細胞培養物から選択する工程と、
    e)好ましくは、工程d)において選択された前記少なくとも1種のB細胞を増殖させて第2のB細胞培養物とする工程と、
    f)工程d)において選択された前記少なくとも1種のB細胞によって又は前記第2のB細胞培養物によって産生された抗体の安定性及び目的の前記抗原に対する親和性を決定する工程と、
    g)前記第1のB細胞培養物のB細胞によって産生された抗体の平均安定性と比較して高い安定性を有し、前記第1のB細胞培養物によって産生された抗体の目的の前記抗原に対する平均親和性と同じである又はこれより低い、目的の前記抗原に対する親和性を有する抗体を産生することができる少なくとも1種のB細胞を選択する工程と
    を含む方法。
  2. より高い安定性を有する抗体を産生することができる前記少なくとも1種のB細胞の重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列の少なくとも一部を決定する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1のB細胞培養物におけるB細胞の平均結合能より高い結合能を有するとして選択された前記少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体の安定性、又は前記第2のB細胞培養物によって産生された抗体の安定性は、前記第1のB細胞培養物におけるB細胞の平均結合能より高い結合能を有する前記少なくとも1種のB細胞を選択してから4カ月以内に決定される、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記第1のB細胞培養物におけるB細胞の平均結合能より高い結合能を有するとして選択された前記少なくとも1種のB細胞によって産生された抗体の安定性、又は前記第2のB細胞培養物によって産生された抗体の安定性は、前記第1のB細胞培養物におけるB細胞の平均結合能より高い結合能を有する前記少なくとも1種のB細胞を選択してから1カ月以内に決定される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記抗アポトーシス核酸が、抗アポトーシス分子をコードする遺伝子を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記抗アポトーシス核酸が、BCL2ファミリーの抗アポトーシス分子をコードする遺伝子を含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記抗アポトーシス核酸が、Bcl-xL又はMcl 1の抗アポトーシス分子をコードする遺伝子を含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記少なくとも1種のB細胞におけるBlimp-1発現生成物の量を、直接的又は間接的に誘導し、増強させ及び/又は維持する工程を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記少なくとも1種のB細胞が、目的の前記抗原に以前にさらされた個体に由来する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
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