以下に、本発明の実施の形態に係るヘッド及び該ヘッドを備えるプリンタを、図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係るプリンタの要部構成を示す概略的な平面図である。図1において、符号1は実施の形態1に係るプリンタを示す。
図1に示しているように、プリンタ1は記録用紙100を搬送する搬送ローラ5及び搬送ローラ6を備えており、記録用紙100は搬送ローラ5から搬送ローラ6に搬送される。説明の便宜上、以下においては、搬送ローラ5から搬送ローラ6に向かう方向を搬送方向と言う。また、プリンタ1において、前記搬送方向の下流側をプリンタ1の前方、前記搬送方向の上流側をプリンタ1の後方と定義する。
また、搬送ローラ5,6(搬送部)によって搬送される記録用紙100の面(図1の紙面と平行な面)と平行で、且つ、前記搬送方向と交差する方向を、プリンタ1の左右方向と定義する。換言すれば、図1において、図面視左側がプリンタ1の左方、図面視右側がプリンタ1の右方である。斯かる左右方向は、後述するように、複数のノズル24が配列される方向である。
更に、記録用紙100の面と直交する方向(図1の紙面に対して垂直方向)を、プリンタ1の上下方向と定義する。すなわち、図1の紙面の表側が上方、裏側が下方である。
図1に示すように、プリンタ1は、上述した二つの搬送ローラ5、6に加え、筐体2と、プラテン3と、四つのインクジェットヘッド4と、制御装置7(制御部)とを備えている。
搬送される記録用紙100を指示するプラテン3は筐体2内に平置きされている。プラテン3の上面には、記録用紙100が搬送・載置される。
四つのインクジェットヘッド4は、プラテン3の上方であって、搬送される記録用紙100より上方に配置されている。四つのインクジェットヘッド4は搬送方向に沿って並設されている。
二つの搬送ローラ5、6は、搬送方向において、四つのインクジェットヘッド4を挟んで配置されている。より詳しくは、搬送方向において、インクジェットヘッド4より上流側には搬送ローラ5が設けられており、インクジェットヘッド4より下流側には搬送ローラ6が設けられている。二つの搬送ローラ5,6は、図示しないモータによってそれぞれ駆動され、プラテン3上を経て、プリンタ1の前方に、記録用紙100を搬送する。
図2は、図1に示すII−II線を切断線とした略示断面図、図3は、実施の形態1に係るプリンタ1におけるインクジェットヘッド4の底面図である。
図2及び図3に示すように、各インクジェットヘッド4は、左右方向に延びる、いわゆるラインヘッドであり、左右方向を長手方向とする短冊状をなすホルダ10と、該ホルダ10に取り付けられた複数のヘッドユニット11(ヘッド)とを備えている。複数のヘッドユニット11A〜Iの各々はインクジェットヘッド4の長手方向に長い矩形状をなしており、搬送方向において前側と後側とに交互に分かれて配置されている。例えば、前記複数のヘッドユニット11A〜Iはインクジェットヘッド4の長手方向(左右方向)に沿って、千鳥状に配列されている。
より詳しくは、ヘッドユニット11A,C,E,G,Iはインクジェットヘッド4の長手方向(一方向)に沿って配列された第1ヘッド列を構成しており、ヘッドユニットB,D,F,Hはインクジェットヘッド4の長手方向(一方向)に沿って配列された第2ヘッド列を構成している。前記第1ヘッド列及び第2ヘッド列は、左右方向に交差する搬送方向において前側及び後側に夫々配置されている。以下においては、説明の便宜上、ヘッドユニット11A〜Iを単にヘッドユニット11とも言う。
各ヘッドユニット11の下面21には、複数のノズル24が形成されている。各ヘッドユニット11においては、複数のノズル24が左右方向に沿って並設されてノズル列を形成している。
図4は実施の形態1に係るプリンタ1における、ヘッドユニット11同士間の位置関係を示す説明図である。説明の便宜上、図4においては、図3のヘッドユニット11B(一方のヘッドユニット又は他方のヘッドユニット)及びヘッドユニット11C(他方のヘッドユニット又は一方のヘッドユニット)を例に挙げて示している。
各ヘッドユニット11は複数のノズル列を有している。例えば、図4に示しているように、ヘッドユニット11BはBL1〜BL4のノズル列を有しており、ヘッドユニット11CはCL1〜CL4のノズル列を有している。これら複数のノズル列は搬送方向に並設されている。
また、各ヘッドユニット11においてはその長手方向の端部が、左右方向に交差する搬送方向における、近傍の他のヘッドユニット11の端部と重畳するように配置されている。
例えば、図4に示しているように、ヘッドユニット11Cでは、左右方向における右側の端部が搬送方向にて近傍のヘッドユニット11Bの端部と重畳している。換言すれば、ヘッドユニット11Bでは、左右方向における左側の端部が近傍のヘッドユニット11Cの端部と搬送方向にて重畳している。より詳しくは、前記第1ヘッド列における左右方向の両端のヘッドユニット11A,Iを除く他のヘッドユニット11においては、左右方向の両端部に、搬送方向にて他のヘッドユニット11と重畳する重畳部OSを有している。
一方、ホルダ10にはスリット10aが設けられている。フレキシブル基板51によって、ヘッドユニット11A〜Iと制御装置7とが接続されており、フレキシブル基板51及び配線52はスリット10aに挿通されている。すなわち、スリット10aは、配線52を挿通させる為の孔としても機能している。
図1及び図2に示すように、複数のヘッドユニット11A〜Iの上方にはリザーバ12が設けられている。リザーバ12は、インクタンク(図示略)にチューブ16を介して接続されており、インクタンクから供給されたインクが一時的に貯留される。リザーバ12の下部は複数のヘッドユニット11A〜Iに接続されており、リザーバ12から各ヘッドユニット11にインクが供給される。
ヘッドユニット11A〜Iの内側においては、各ノズル24に圧力室(図示せず)が設けられており、該圧力室にはインクが供給される。また、各圧力室にはPZT素子が設けられており、前記圧力室内のインクはPZT素子の作用によりノズル24を介して吐出される。
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリ、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)を備える。
また、制御装置7は、PC等の外部装置9とデータ通信可能に接続されており、外部装置9から送信された印刷ジョブデータに基づいて、ヘッドユニット11A〜Iを制御する。すなわち、制御装置7は、インクジェットヘッド4におけるヘッドユニット11A〜Iの配置を表す情報を記憶しており、斯かる印刷ジョブデータに基づいて、インクの吐出を実行すべきヘッドユニット(以下、実行ヘッドユニットという)及びノズル(以下、実行ノズルという)を決定し、印刷ジョブデータに係るインクの吐出を制御する。
図5は実施の形態1に係るプリンタ1においてヘッドユニット11と制御装置7との関係を示す機能ブロック図である。
ヘッドユニット11A〜Iは、ユニットコントローラ111A〜I(カウント部)と、メモリ112A〜Iと、吐出部113A〜Iとを夫々有している。
ユニットコントローラ111A〜Iは例えばFPGA(Field Programmable Gate array)又はCPUであり、各ノズルの吐出を制御し、吐出回数をカウントする。ユニットコントローラ111A〜Iによってカウントされたノズルの吐出回数はメモリ112A〜Iに記憶される。また、吐出部113A〜Iはノズル24,24,…24を有している。ヘッドユニット11A〜Iのユニットコントローラ111A〜Iは制御装置7に接続されている。
なお、これに限るものでなく、本実施の形態において、ユニットコントローラ111A〜Iは、他のヘッドユニット11との重畳部での吐出回数のみをカウントするように構成しても良い。これによって、全ノズルの吐出回数をカウントする場合に比べ、ユニットコントローラ111A〜Iの負担が低減し、メモリ112A〜Iの容量も減らすことが出来る。
また、制御装置7は重畳比較部71と、選択部72とを有している。制御装置7は、印刷データに基づいて、各ユニットコントローラ111にデータを分配する。重畳比較部71は、重畳部OSに係る両ヘッドユニット11における、該重畳部OSのノズルの吐出回数を比較する。また、斯かる比較の際、重畳比較部71は実行ノズルか否かに関わらず斯かる重畳部OSの全ノズルの吐出回数を読み出して比較を行う。斯かる吐出回数は重畳部OSの全ノズルの吐出回数の合計であっても良く、1つのノズル平均値(平均吐出回数)であっても良い。また、複数のノズルを有するブロック毎に、行われる吐出を計数し、その回数を吐出回数としてカウントしてもよい。
なお、重畳部OSの全てのノズルの吐出回数を記録するには、メモリ112A〜Iの容量を大きくする必要がある。従って、メモリ112A〜Iが重畳部OSにおける任意の複数のノズルの吐出回数のみを記憶し、斯かる吐出回数に基づいて重畳比較部71及び選択部72による処理が行われるようにしても良い。
選択部72は重畳比較部71の比較結果に基づいて何れかのヘッドユニット11を斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する。
例えば、図4の場合においては、重畳比較部71が、ヘッドユニット11Bのメモリ112B及びヘッドユニット11Cのメモリ112Cから重畳部OS内の各ノズル24の吐出回数を夫々読み取り、これら吐出回数の合計の大小を比較する。選択部72は、重畳比較部71の比較結果に基づいて、ヘッドユニット11B及びヘッドユニット11Cのうち、吐出回数の合計が多い方を斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する。
筐体2には、複数のヘッド保持部8が取り付けられている。複数のヘッド保持部8は、プラテン3の上方で、且つ、二つの搬送ローラ5、6の間の位置において、前後に並設されている。ヘッド保持部8によって、インクジェットヘッド4がそれぞれ保持される。
四つのインクジェットヘッド4は、それぞれ、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを吐出するものである。各インクジェットヘッド4には、図示しないインクタンクから、対応する色のインクが供給される。
このような構成を有する実施の形態1に係るプリンタ1においては、制御装置7が、搬送ローラ5、6を駆動するモータを制御して、搬送ローラ5、6に記録用紙100を搬送方向に搬送させつつ、インクジェットヘッド4を制御して記録用紙100に向けてインクを吐出させる。これにより、記録用紙100に画像が印刷される。
一方、印刷が行われる際、隣接するヘッドユニット11同士間の重畳部OSに対しては、何れかのヘッドユニット11を選択する必要がある。以下においては、制御装置7によるヘッドユニット11の選択処理について説明する。
図6は実施の形態1に係るプリンタ1におけるヘッドユニット11の選択処理を説明するフローチャートである。説明の便宜上、図4に基づいて、ヘッドユニット11B,Cから何れか一つを選択する場合を例にあげて説明する。
制御装置7は、例えば自装置と外部装置9との接続線を監視することにより、印刷ジョブデータを受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。印刷ジョブデータを受け付けていないと判定した場合(ステップS101:NO)、印刷ジョブデータを受け付けるまで制御装置7は斯かる判定を繰り返す。
また、印刷ジョブデータを受け付けたと判定した場合(ステップS101:YES)、制御装置7は斯かる印刷ジョブデータに基づいてインクの吐出を実行すべき実行ヘッドユニット及び実行ノズルを決定する(ステップS102)。詳しくは、仮に、ヘッドユニット11Bを実行ヘッドユニットにした場合の実行ノズルと、ヘッドユニット11Cを実行ヘッドユニットにした場合の実行ノズルとを決定する。
次いで、重畳比較部71はヘッドユニット11Bのメモリ112Bからヘッドユニット11Cとの間の重畳部OS内の各ノズル24の吐出回数(M)を読み出す(ステップS103)。例えば、吐出回数(M)はヘッドユニット11Bの各ノズル24の吐出回数の合計である。
また、重畳比較部71はヘッドユニット11Cのメモリ112Cからヘッドユニット11Bとの間の重畳部OS内の各ノズル24の吐出回数(N)を読み出す(ステップS104)。例えば、吐出回数(N)はヘッドユニット11Cの各ノズル24の吐出回数の合計である。
次いで、重畳比較部71はヘッドユニット11Bの吐出回数(M)及びヘッドユニット11Cの吐出回数(N)の大小を比較する。例えば、重畳比較部71は吐出回数(M)が吐出回数(N)以上であるか否かを判定する(ステップS105)。
重畳比較部71によって吐出回数(M)が吐出回数(N)以上であると判定された場合(ステップS105:YES)、選択部72はヘッドユニット11A,11Bの重畳部のヘッドユニット11Bを斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する(ステップS106)。
一方、重畳比較部71によって吐出回数(M)が吐出回数(N)以上でないと判定された場合(ステップS105:NO)、選択部72はヘッドユニット11Cを斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する(ステップS107)。
ステップS106の処理又はステップS107の処理がされた後、すなわち、何れかのヘッドユニットが選択された後、制御装置7は受け付けた印刷ジョブデータを実行ヘッドユニット毎に割り当てる(ステップS108)。すなわち、制御装置7は斯かる印刷ジョブデータを分割して各実行ヘッドユニットのユニットコントローラに送る。
以降、実行ヘッドユニット及び実行ノズルによって、斯かる印刷ジョブデータに基づくインクの吐出、すなわち印刷ジョブが開始される(ステップS109)。この際、各実行ヘッドユニットのユニットコントローラは各ノズルの吐出回数をカウントする(ステップS110)。ユニットコントローラによってカウントされた吐出回数は、各実行ヘッドユニットのメモリに記憶される。
例えば、所定時間経過後、制御装置7は印刷ジョブが終了したか否かを判定する(ステップS111)。制御装置7によって印刷ジョブが終了したと判定された場合(ステップS111:YES)、本処理は終了する。
一方、制御装置7は印刷ジョブが終了していないと判定した場合(ステップS111:NO)、ノズルの切り替えタイミングか否かを判定する(ステップS112)。ここで、ノズルの切り替えタイミングとは、例えば、印刷ジョブデータの切り替えが必要なとき、ユーザによって事前に設定された所定時間が経過したとき、ユーザによって事前に設定された所定枚数分の印字を行ったとき、印刷用ロール紙が切れたとき等である。
制御装置7は、ノズルの切り替えタイミングでないと判定した場合(ステップS112:NO)、処理を再びステップS109に戻す。一方、制御装置7は、ノズルの切り替えタイミングであると判定した場合(ステップS112:YES)、処理を再びステップS102に戻す。
以上のように、実施の形態1に係るプリンタ1においては、印刷ジョブの実行に際し、重畳部OSに係る2つのヘッドユニット11から、斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットを選択する場合、重畳部OSでのノズルの吐出回数が多い方が選択される。
従って、2つのヘッドユニットのうち、吐出回数が多い方の重畳部のノズルを優先的に使用し、斯かるヘッドユニット内の劣化の不均一が低減されることから、重畳部のノズルの劣化が小さいにも関わらず、該ヘッドユニットを交換してしまうような資源浪費を防止できる。
重畳部に比べ、ヘッドユニットにおいて該重畳部を除く非重畳部は、常に使用しているため、単位ノズルあたりの吐出回数が多い。また、実際の印刷ジョブにおいては、2つの重畳部の使用を択一にするので、前記重畳部は、非重畳部と比べて、吐出回数が分散され、各重畳部での単位ノズルあたりの吐出回数が少なくなる。つまり、ヘッドユニット内において、前記非重畳部と前記重畳部とで吐出回数の不均一が生じ、劣化の不均一に繋がる。しかしながら、本発明のように、重畳部の吐出回数が多い方を優先的に使用することで、重畳部に比べて相対的に吐出回数が多い非重畳部との不均一を低減することができる。
斯かる一方のヘッドユニットの交換後は、他方のヘッドユニットにおける重畳部のノズルが優先的に使用されるので、上述した効果を得ることができる。
なお、上述した重畳比較部71及び選択部72は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、CPU(図示せず)が所定のプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に構築されてもよい。
(実施の形態2)
図7は実施の形態2に係るプリンタ1のヘッドユニット11の要部構成を示す機能ブロック図である。
制御装置7は実施の形態1と同様に選択部72を有しており、更に非重畳比較部73を有している。非重畳比較部73は、重畳部OSに係る両ヘッドユニット11において、該重畳部OSを除く部分(以下、非重畳部と言う)のノズルの吐出回数を比較する。詳しくは、前記非重畳部は、重畳部OSに係る両ヘッドユニット11において、両端の重畳部OSを除く部分である。例えば、図4に示したように、ヘッドユニット11Bの場合、両端側にてヘッドユニット11A、11Cと重畳する重畳部OSを有しているので、ヘッドユニット11Bにおける非重畳部は、両端の重畳部OSを除く部分である。
一方、ヘッドユニット11A、11Iにおいては、一方端にのみ重畳部OSを有していることから、ヘッドユニット11A、11Iにおいては前記非重畳部の範囲が広くなり、該非地重畳部のノズル数が増える。従って、ヘッドユニット11A、11Iにおいても、他のヘッドユニットと同様の範囲を非重畳部として処理を行う。
非重畳比較部73によって比較される吐出回数は非重畳部の全ノズルの吐出回数の合計であっても良く、1つのノズルの平均値(平均吐出回数)であっても良い。選択部72は非重畳比較部73の比較結果に基づいて何れかのヘッドユニット11を斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する。
例えば、図4の場合においては、非重畳比較部73が、ヘッドユニット11Bのメモリ112B及びヘッドユニット11Cのメモリ112Cから非重畳部内の各ノズル24の吐出回数を夫々読み取り、これら吐出回数の合計の大小を比較する。選択部72は、非重畳比較部73の比較結果に基づいて、ヘッドユニット11B及びヘッドユニット11Cのうち、吐出回数の合計が多い方を斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する。
図8は実施の形態2に係るプリンタ1におけるヘッドユニット11の選択処理を説明するフローチャートである。説明の便宜所、図4に基づいて、ヘッドユニット11B,Cの場合を例にあげて説明する。
制御装置7は印刷ジョブデータを受け付けたか否かを判定する(ステップS201)。印刷ジョブデータを受け付けていないと判定した場合(ステップS201:NO)、制御装置7は印刷ジョブデータを受け付けるまで斯かる判定を繰り返す。また、印刷ジョブデータを受け付けたと判定した場合(ステップS201:YES)、制御装置7は斯かる印刷ジョブデータに基づいて印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニット及び実行ノズルを決定する(ステップS202)。
次いで、非重畳比較部73はヘッドユニット11Bのメモリ112Bから前記非重畳部内の各ノズル24の吐出回数(M2)を読み出す(ステップS203)。例えば、吐出回数(M2)はヘッドユニット11Bの前記非重畳部の各ノズル24の吐出回数の合計である。
また、非重畳比較部73はヘッドユニット11Cのメモリ112Cから前記非重畳部内の各ノズル24の吐出回数(N2)を読み出す(ステップS204)。例えば、吐出回数(N2)はヘッドユニット11Cの前記非重畳部の各ノズル24の吐出回数の合計である。
次いで、非重畳比較部73はヘッドユニット11Bの吐出回数(M2)及びヘッドユニット11Cの吐出回数(N2)の大小を比較する。例えば、非重畳比較部73は吐出回数(M2)が吐出回数(N2)以上であるか否かを判定する(ステップS205)。
非重畳比較部73によって吐出回数(M2)が吐出回数(N2)以上であると判定された場合(ステップS205:YES)、選択部72はヘッドユニット11Bを斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する(ステップS206)。
一方、非重畳比較部73によって吐出回数(M2)が吐出回数(N2)以上でないと判定された場合(ステップS205:NO)、選択部72はヘッドユニット11Cを斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する(ステップS207)。
以降、ステップS208〜ステップS212までの処理は、図6のステップS108〜ステップS112までの処理と同じであるので、説明を省略する。
以上のように、実施の形態2に係るプリンタ1においては、印刷ジョブの実行に際し、重畳部OSに係る2つのヘッドユニット11から、斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットを選択する場合、前記非重畳部でのノズルの吐出回数が多い方が選択される。
従って、重畳部OSに係る2つのヘッドユニットのうち、比較的に交換時期が近い方の重畳部のノズルを優先的に使用でき、斯かるヘッドユニット内の劣化の不均一が低減されることから、重畳部のノズルの劣化が小さいにも関わらず、該ヘッドユニットを交換してしまうような資源浪費を防止できる。
非重畳部は、一般的には、重畳部より範囲が広い(例えば、ヘッドユニット11の場合、一端重畳部:非重畳部:他端重畳部の比が「1:30:1」である)。また、非重畳部は該重畳部のような選択的使用が行われる部分でないので、実質的なヘッドユニットの劣化度(交換寿命)を指す部分である。従って、非重畳部の吐出回数を比較することによって、一層正確にヘッドユニットの劣化度を測定することが出来る。なお、劣化度は、ヘッドユニットの交換に至るまでおける、経時(使用)に伴う劣化の程度である。
例えば、ヘッドユニット11Bの前記非重畳部の吐出回数が多い場合、ヘッドユニット11Bの非重畳部に不吐出又は吐出不良が生じる可能性が高くなるので交換する必要がある。ヘッドユニット11Bを交換するときに、重畳部OSのノズルの吐出回数が少ない場合、すなわち劣化が小さい場合は、重畳部OSを使い切っていない状態で交換しなければいけないので、資源の浪費になる。これに対し、実施の形態2は、非重畳部の劣化が激しいヘッドユニットの重畳部を優先的に使うので、該ヘッドユニットにおける劣化の不均一が低減される。従って、上述した資源の浪費という問題を解決できる。
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
また、上述した非重畳比較部73は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、CPU(図示せず)が所定のプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に構築されてもよい。
更に、前記非重畳部の全てのノズルの吐出回数を記録するには、メモリ112A〜Iの容量を大きくする必要がある。従って、メモリ112A〜Iが重畳部OSにおける任意の複数のノズルの吐出回数のみを記憶するように構成しても良い。
なお、本実施の形態において、ユニットコントローラ111A〜Iは非重畳部での吐出回数のみをカウントするように構成しても良い。これによって、全ノズルの吐出回数をカウントする場合に比べ、ユニットコントローラ111A〜Iの負担が低減し、メモリ112A〜Iの容量も減らすことが出来る。
(実施の形態3)
図9は実施の形態3に係るプリンタ1のヘッドユニット11の要部構成を示す機能ブロック図である。
制御装置7は実施の形態1と同様に選択部72を有しており、更に全比較部74を有している。全比較部74は、重畳部OSに係る両ヘッドユニット11における、全てのノズルの吐出回数を比較する。斯かる吐出回数は全ノズルの吐出回数の合計であっても良く、1つのノズルの平均値(平均吐出回数)であっても良い。選択部72は全比較部74の比較結果に基づいて何れかのヘッドユニット11を斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する。
例えば、図4の場合においては、全比較部74が、ヘッドユニット11Bのメモリ112B及びヘッドユニット11Cのメモリ112Cから両ヘッドユニット11の全てのノズル24の吐出回数を夫々読み取り、これら吐出回数の合計の大小を比較する。選択部72は、全比較部74の比較結果に基づいて、ヘッドユニット11B及びヘッドユニット11Cのうち、吐出回数の合計が多い方を斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する。
図10は実施の形態3に係るプリンタ1におけるヘッドユニット11の選択処理を説明するフローチャートである。説明の便宜所、図4に基づいて、ヘッドユニット11B,Cの場合を例にあげて説明する。
制御装置7は印刷ジョブデータを受け付けたか否かを判定する(ステップS301)。印刷ジョブデータを受け付けていないと判定した場合(ステップS301:NO)、制御装置7は印刷ジョブデータを受け付けるまで斯かる判定を繰り返す。また、印刷ジョブデータを受け付けたと判定した場合(ステップS301:YES)、制御装置7は斯かる印刷ジョブデータに基づいて印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニット及び実行ノズルを決定する(ステップS302)。
次いで、全比較部74はヘッドユニット11Bのメモリ112Bからヘッドユニット11Bの全ノズル24の吐出回数(M3)を読み出す(ステップS303)。例えば、吐出回数(M3)はヘッドユニット11Bの各ノズル24の吐出回数の合計である。
また、全比較部74はヘッドユニット11Cのメモリ112Cからヘッドユニット11Cの全ノズル24の吐出回数(N3)を読み出す(ステップS304)。例えば、吐出回数(N3)はヘッドユニット11Cの各ノズル24の吐出回数の合計である。
次いで、全比較部74はヘッドユニット11Bの吐出回数(M3)及びヘッドユニット11Cの吐出回数(N3)の大小を比較する。例えば、全比較部74は吐出回数(M3)が吐出回数(N3)以上であるか否かを判定する(ステップS305)。
全比較部74によって吐出回数(M3)が吐出回数(N3)以上であると判定された場合(ステップS305:YES)、選択部72はヘッドユニット11Bを斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する(ステップS306)。
一方、全比較部74によって吐出回数(M3)が吐出回数(N3)以上でないと判定された場合(ステップS305:NO)、選択部72はヘッドユニット11Cを斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットとして選択する(ステップS307)。
以降、ステップS308〜ステップS312までの処理は、図6のステップS108〜ステップS112までの処理と同じであるので、説明を省略する。
以上のように、実施の形態3に係るプリンタ1においては、印刷ジョブの実行に際し、重畳部OSに係る2つのヘッドユニット11から、斯かる印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットを選択する場合、全ノズルの吐出回数が多い方が選択される。
従って、重畳部OSに係る2つのヘッドユニットのうち、比較的に交換時期が近い方の重畳部のノズルを優先的に使用でき、斯かるヘッドユニット内の劣化の不均一が低減されることから、上述したような資源浪費を防止できる。
実施の形態3においては、ヘッドユニットの全ノズルを対象とした吐出回数を比較しているので、ヘッドユニットの正確な劣化度を測定することができる。全ノズルの吐出回数が多いヘッドユニットは、交換時期が近いヘッドユニットである。一方、選択的な使用が多い重畳部は非重畳部に比べ劣化が小さいので、このまま斯かるヘッドユニットを交換した場合は資源の浪費となる。従って、交換の前にできるだけ斯かるヘッドユニットの重畳部のノズルを使用する必要がある。
これに対し、実施の形態3では、全ノズルの吐出回数から劣化度を測定し、吐出回数が多いヘッドユニットの重畳部を優先的に使用する。従って、交換時期が近いヘッドユニットの重畳部のノズルを十分に使用してから該ヘッドユニットを交換することになるので、結果としてヘッドユニットの交換回数を減らすことができる。
駆動素子(例えば、圧電素子)の劣化に伴い、吐出される液滴速度がどのくらい低下するかによって斯かるノズルの劣化度を推測し、交換タイミングを決める。例えば、プリンタが、液滴速度について10±1m/sの範囲で保証する場合、液滴速度が9m/sを下回る場合、ノズルが劣化したとする。交換のタイミングの基準となる1つのノズルの吐出回数の閾値の具体的な数値は、例えば、家庭用プリンタであれば6億回、オフィス用プリンタであれば10億回、さらに、産業用プリンタであれば1000億回とする。産業用用プリンタで、全ノズル数1000個の吐出回数を比較する場合、1000×1000億回=100兆回がヘッドの交換タイミングの基準である。
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
なお、上述した全比較部74は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、CPU(図示せず)が所定のプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に構築されてもよい。
以上においては、実施の形態に係るプリンタ1がいわゆるラインプリンタである場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものでない。ヘッドユニット同士において重畳部を有する繋ぎヘッドであれば、いわゆるシリアルプリンタであっても本発明を適用することが可能である。
以上においては、印刷ジョブを実行すべき実行ヘッドユニットの重畳部を選択する際、単純に吐出回数を比較していた。しかしながら、各ノズルから吐出される液滴量は、階調表現を行うためにそれぞれ異なる。具体的には、たとえば、大液滴、中液滴、小液滴に分かれ、小液滴を吐出する場合は大液滴より劣化が少ない。従って、ノズルから吐出される液滴量も考慮して、劣化度を算出すると、より正確に駆動素子の消耗度を測定することができ、より適切に実行ヘッドユニットの重畳部を選択できる。
以上においては、ヘッドユニットの劣化度を測定する方法として、重畳部のノズル、非重畳部のノズル又は全ノズルの吐出回数を比較する場合を例に挙げて説明したが本発明はこれに限るものでない。例えば、ノズルのノズルアクチュエータに流れる電流値から当該ノズルの劣化度を測定するように構成しても良い。斯かる電流値が低い程、劣化度が高いので、測定された電流値が低いヘッドユニットの重畳部を選択すればよい。
詳しくは、重畳部に係る両ヘッドユニットにおいて、重畳部のノズル、非重畳部のノズル又は全ノズルの電流値を測定して比較することにより、斯かる電流値が低いヘッドユニットの重畳部のノズルを実行ノズルとして選択する(特開2009−234084参照)。
また、本発明はこれに限るものでなく、例えば、斯かるプリンタの製造直後の吐出量と一定時間経過後の吐出量の変化量から当該ノズルの劣化度を測定するように構成しても良い。
詳しくは、重畳部に係る両ヘッドユニットにおいて、重畳部のノズル、非重畳部のノズル又は全ノズルに対し、製造直後の吐出量と一定時間経過後の吐出量の変化量の標準偏差を求め、該標準偏差値が所定値以上である場合、斯かるノズルの劣化が激しいと推測できる。従って、斯かる推測に基づいて、劣化度が高いヘッドユニットの重畳部のノズルを実行ノズルとして選択する(特開2010−142744参照)。
また、本発明はこれに限るものでなく、例えば、ノズルに電圧が印加された累積時間から当該ノズルの劣化度を測定するように構成しても良い。
詳しくは、重畳部に係る両ヘッドユニットにおいて、重畳部のノズル、非重畳部のノズル又は全ノズルにおける各ノズルに対し電圧が印加された累積時間を測定し、斯かる累積時間が長い程、斯かるノズルの劣化が激しいと推測できる。従って、斯かる推測に基づいて、劣化度が高いヘッドユニットの重畳部のノズルを実行ノズルとして選択する(特開2012−51257)。
また、本発明はこれに限るものでなく、例えば、ノズル毎に設けられたヒータ抵抗の抵抗値を測定し、その抵抗値に基づいてヒータ抵抗が所定の状態よりも劣化しているかどうかを判定することによって、当該ノズルの劣化度を間接的に測定するように構成しても良い。
詳しくは、重畳部に係る両ヘッドユニットにおいて、重畳部のノズル、非重畳部のノズル又は全ノズルにおいてノズル毎に設けられたヒータ抵抗の抵抗値を測定し、測定された抵抗値が出荷時の抵抗値に対して所定閾値以上変化した場合、斯かるノズルの劣化が激しいと推測できる。従って、斯かる推測に基づいて、劣化度が高いヘッドユニットの重畳部のノズルを実行ノズルとして選択する(特開2013−082080参照)。