JP6746557B2 - 半導体膜、及びそれを用いた半導体素子 - Google Patents

半導体膜、及びそれを用いた半導体素子 Download PDF

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Description

本発明は、半導体膜、及びそれを用いた半導体素子に関する。
近年、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子などの薄型軽量表示素子の開発に伴い、半導体素子としてキャリアの移動度(以下、移動度と記載する)の高い材料の開発が求められている。現在、移動度の高い金属酸化物であるインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物といった金属酸化物が開発されている(特許文献1)。
また、現在の半導体素子はシリコンが中心であり、プロセスは高価な真空装置と高温プロセスを必要とする。また、フォトリソグラフィーを用いているため複数の工程を経る必要がある。このため、半導体素子の製造コストが高いという問題がある。そこで、移動度の高い無機半導体粒子からなる層を形成する方法として、塗布法のような非真空系のプロセスの検討も盛んに行われている。
国際公開第2005/088726号
ところで、無機半導体膜の場合、薄膜の成膜温度として約300度以上の高温を必要とする。このため、無機半導体膜の成膜にはガラス基板やシリコンウェハを基板として用いなければならず、耐衝撃性及びフレキシブル性が望まれる樹脂基板などへの応用は極めて困難である。
そこで本発明は、非真空系プロセスでかつ低温プロセスで製造可能であり、より高い移動度を発現することができる半導体膜、及びそれを用いた半導体素子を提案することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、金属酸化物粒子と、有機化合物と、を含む半導体膜であって、前記半導体膜全体100質量%に対し、前記金属酸化物の含有量は、55質量%以上、95質量%以下であり、前記有機化合物の含有量は、5質量%以上、45質量%以下であり、前記半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、金属酸化物のO2−イオンに帰属されるピークの面積S1と、酸素欠損のO2−イオンに帰属されるピークの面積S2との比(S2/S1)が、0.25以上、0.0以下であり、
前記半導体膜のXPS測定におけるNaの相対元素濃度が、1.0atomic%以下であることを特徴とする。
本発明は、酸化インジウム粒子と、有機化合物と、を含む半導体膜であって、前記半導体膜全体100質量%に対し、前記酸化インジウムの含有量は、55質量%以上、95質量%以下であり、前記有機化合物の含有量は、5質量%以上、45質量%以下であり、前記半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、528eVから530eVに存在するピークの面積S1と、530eVから533eVに存在するピークの面積S2との比(S2/S1)が、0.25以上、0.0以下であり、前記半導体膜のXPS測定におけるNaの相対元素濃度が、1.0atomic%以下であることを特徴とする。
本発明は、酸化亜鉛粒子と、有機化合物と、を含む半導体膜であって、前記半導体膜全体100質量%に対し、前記酸化亜鉛の含有量は、55質量%以上、95質量%以下であり、前記有機化合物の含有量は、5質量%以上、45質量%以下であり、前記半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、酸化亜鉛のO2−イオンに帰属されるピークの面積S1と、酸素欠損のO2−イオンに帰属されるピークの面積S2との比(S2/S1)が、0.25以上、0.0以下であり、前記半導体膜のXPS測定におけるNaの相対元素濃度が、1.0atomic%以下であることを特徴とする。
発明では、前記有機化合物が誘電体であり、比誘電率が5以上100以下であることが好ましい。
本発明では、前記有機化合物が、シアノ基含有有機化合物であることが好ましい。
本発明における半導体素子は、電極と、前記電極に接する、上記に記載の前記半導体膜と、を有することを特徴とする。
本発明における半導体素子では、前記半導体膜の膜厚が、1nm以上1000nm以下であることが好ましい。
本発明における半導体素子は、トランジスタ素子であることが好ましい。
本発明における半導体素子の移動度は、0.001cm/Vs以上、10cm/Vs以下であることが好ましい。
本発明の半導体膜、及びそれを用いた半導体素子によれば、非真空系プロセスでかつ低温プロセスで製造可能であり、より高い移動度を発現することができる。
本発明の分散液を用いることで、半導体膜を、非真空系プロセスでかつ低温プロセスで形成することができる。
本実施の形態における半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。 本実施の形態における半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。 本実施の形態における半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。 本実施の形態における半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。 本実施の形態における半導体素子の製造方法を工程順に示す断面図である。
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。
(半導体膜)
本実施の形態に係る半導体膜について詳細に説明する。本実施の形態に係る半導体膜は、金属酸化物粒子及び有機化合物を有して構成される。
半導体膜は、金属酸化物粒子及び有機化合物のみから構成される膜であってもよいし、金属酸化物粒子及び有機化合物と、その他の成分と、から構成される膜であってもよい。その他の成分としては、例えば、溶媒、バインダー成分、又は無機成分等のいずれか一つ以上が挙げられる。
本実施の形態における半導体膜(コンポジット体とも称される)は、以下の特徴を有している。
(1) 半導体膜全体100質量%に対し、金属酸化物粒子の含有量は、55質量%以上、95質量%以下である。
(2) 半導体膜全体100質量%に対し、有機化合物の含有量は、5質量%以上、45質量%以下である。
(3) 半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、金属酸化物のO2−イオンに帰属されるピークの面積S1と、酸素欠損のO2−イオンに帰属されるピークの面積S2との比(S2/S1)が、0.25以上、0.60以下である。
まず、金属酸化物粒子及び、有機化合物の材質や物性等について説明する。
<金属酸化物粒子>
金属酸化物粒子とは、少なくとも一つ以上の金属と酸素から構成される粒子である。
金属酸化物粒子に用いられるものとしては、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化コバルト、酸化ホルニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、スピネル(MgAl)、BaTiO、FeTiO、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銀、酸化チタン(例えば、結晶型がルチル型、アナターゼ型である酸化チタン(IV)を含む)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ、フッ素ドープの酸化スズ(FTO)、アンチモンドープの酸化スズ、酸化インジウム、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物、酸化ニッケル、酸化バナジウム、チタン酸ストロンチウム、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaCuOS、LaCuOSe、CuInO、ZnRh4、12CaO・7Al(C12A7)、Ga、SrCuO等や類似の金属酸化物が挙げられる。
金属酸化物粒子は、透明性、キャリアの移動度の観点から、酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物が好ましく、特に酸化インジウムが好ましい。また、低コストの観点から、酸化チタン(例えば、結晶型がルチル型、アナターゼ型である酸化チタン(IV)を含む)又は酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)であることが好ましい。金属酸化物粒子に用いられるこれらの金属酸化物は、2種以上を併用してもよい。
金属酸化物粒子のX線回折スペクトルにおいて、主要ピークの半値幅は、金属酸化物の結晶性を表す尺度である。金属酸化物粒子のX線回折測定を行った場合、主要ピークから半値幅を測定できる。金属酸化物の結晶性を示すX線回折から得られる半値幅は、金属酸化物粒子内のキャリア移動度の観点から、5.0°以下が好ましく、3.0°以下がより好ましく、2.0°以下が更に好ましく、1.0°以下が最も好ましい。また、金属酸化物粒子の結晶性が高すぎることで成膜性が悪くなるため、当該半値幅は0.004°以上が好ましく、0.01°以上がより好ましく、0.1°以上が更に好ましく、0.2°以上が最も好ましい。
金属酸化物粒子の代表的な製法としては、塩化金属水溶液などの金属イオンに、アンモニア、苛性ソーダなどのアルカリを加えて中和・沈殿させ、金属水酸化物又は金属炭酸塩を生成させ、大気雰囲気又は還元性雰囲気で500℃以上の高温で加熱処理(焼成)して結晶化させる方法が提案されている。
また、金属酸化物粒子の製法として、例えば、金属アルコキシドを、酸性若しくは塩基性条件で加水分解・重縮合反応させることによってゾルを作り、ゾルを乾燥させてゲル化する方法であるゾルゲル法が用いられる。他の製法としては、例えば、金属を直接熱して気化させ、空気で燃焼させるか、金属硫酸又は金属硝酸の熱分解する方法がある。
また、他の製法としては、金属酸化物をスパッタ法などで作製したものを、粉砕して使用してもよい。粉砕する方法としては、乾式粉砕でも湿式粉砕でもよく、双方の方法を用いてもよい。乾式粉砕には、ハンマークラッシャ等が利用できる。湿式粉砕には、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等が利用できる。湿式粉砕時の溶媒としては、下記が挙げられる。
すなわち、溶媒としては、水、ペンタン、ヘキサン、ペプタン、オクタン、ノナン、デカン、2−メチルヘキサン、デカリン、テトラリン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、グリセリンアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、キシレン、トルエン、フェノール、アニリン、ジフェニルエーテルなどの芳香族類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メチルアセテート、テトラヒドロフラン、乳酸ブチル、N−メチルピロリドン等が挙げられる。またこれらを混合して用いることも可能である。
金属酸化物粒子の表面を有機官能基で修飾してもよい。表面を有機官能基で修飾することで、有機溶媒への分散性が向上し、均一な膜が作製できる。有機官能基の修飾方法としては、例えば、シアノエチル化などが挙げられる。
金属酸化物粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡又は、走査型電子顕微鏡を用いて測定される。
金属酸化物粒子の平均粒子径は、1nm以上500nm以下が好ましい。金属酸化物粒子の平均粒子径としては、接触抵抗低減の観点から、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上が更に好ましく、10nm以上が最も好ましい。また、成膜性の観点から、金属酸化物粒子の平均粒子径は、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましく、50nm以下が最も好ましい。
本実施の形態で用いる金属酸化物粒子は、粒子径分布の相対標準偏差σが、0.1nm以上5.0nm以下であることが好ましい。なお、低抵抗化の観点から、この相対標準偏差σは、3.0nm以下がより好ましく、2.0nm以下が更に好ましく、1.0nm以下が最も好ましい。
金属酸化物粒子の中で、酸化インジウムについて説明する。使用できる酸化インジウムの種類としては、酸化インジウム(III)nanopowder,<100nm particle size(TEM),酸化インジウム(III)99.9% trace metals basis、酸化インジウム(III)99.998% trace metals basis、99.99% trace metals basis、酸化インジウム(III)99.5+CAS13143−2,molar mass 277.64g/mol.,99.5+(EMD Millipore)(以上、シグマ−アルドリッチ社製)、酸化インジウム/99.9%、酸化インジウム(III)99.999%−In PURATREM、酸化インジウム99.99% metals basis(以上、和光純薬社製)、Indium Oxide Nanoparticles(SkySpring Nanomaterials Inc製)、酸化インジウム(SP)(稀産金属株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酸化インジウム粒子の代表的な製法としては、塩化インジウム水溶液などのインジウムイオンに、アンモニア、苛性ソーダなどのアルカリを加えて中和・沈殿させ、インジウム水酸化物を生成させ、大気雰囲気又は還元性雰囲気で500℃以上の高温で加熱処理(焼成)して結晶化させる方法が提案されている。また、他の製法としては、加熱時の焼結を防ぐために臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなどの添加物を加える方法が提案されている。
酸化インジウムの結晶型は、立方晶又はbixbyite型であり、X線回折測定により同定することができる。
金属酸化物粒子の中で、酸化亜鉛について説明する。使用できる酸化亜鉛粒子の種類としては、六角板状酸化亜鉛、板状集積型球状酸化亜鉛、大粒子酸化亜鉛、超微粒子酸化亜鉛、超微粒子酸化亜鉛分散体(以上、堺化学工業社製)、FZO−50(石原産業株式会社製)、MZ−300,MZY−303S、MZ−306X、MZ−500,MZY−505S、MZY−510M3S、MZ−506X、MZ−510HPSX(以上、テイカ社製)、酸化亜鉛分散液(製品番号:721077、721093、721107、721085、633844、以上シグマ−アルドリッチ社製)、酸化亜鉛 nanoparticles,<100nm particle size、酸化亜鉛 nanoparticles,40wt% in ethanol,<130nm particle size、;酸化亜鉛 nanoparticles,<110nm particle size,40 wt% in butyl acetate(以上、シグマ−アルドリッチ製)、酸化亜鉛 0.02μm、酸化亜鉛ナノ粒子 20nm、酸化亜鉛 −5μm,99.9%、酸化亜鉛 99.999%−Zn PURATREM、酸化亜鉛 99.999% metal basis(以上、和光純薬社製)などが挙げられる。
酸化亜鉛粒子の代表的な製法としては、金属亜鉛を熱して気化させ、空気で燃焼させるか、硫酸亜鉛又は硝酸亜鉛の熱分解がある。また、他の製法としては、塩化亜鉛水溶液から塩基性炭酸亜鉛を沈殿させて、焼成する製法も用いられている。
<有機化合物>
本実施の形態で用いられる有機化合物は、金属酸化物粒子の粒子間及び、金属酸化物粒子の表面に存在することで、粒子同士の密着性や、粒子と基板との密着性の向上が期待される。
キャリアの再結合防止、高移動度の観点から、有機化合物の比誘電率は、5以上100以下が好ましく、より好ましくは7以上70以下であり、更に好ましくは8以上50以下であり、最も好ましくは10以上30以下である。このように、有機化合物は、誘電体として機能する。
また、有機化合物は、金属酸化物粒子周辺に存在することで、成膜性を向上させることができる。
有機化合物としては、一般的な樹脂として、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、アセチルセルロース、アニリン樹脂、ABS樹脂、エボナイト、塩化ビニル樹脂、アクリルニトリル樹脂、アニリンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキル樹脂、ウレタン、AS樹脂、エポキシ樹脂、ビニルブチラール樹脂、シリコン樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジェンゴム、シリコーンゴム、酢酸セルロース、スチレン樹脂、デキストリン、ナイロン、軟質ビニルブチラール樹脂、フッ素系樹脂、フルフラル樹脂、ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリアセタール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリサルファイドポリマー、ポリエチレン等が挙げられる。また、アセトン、メチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルアルコール、アニリン、イソブチルメチルケトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、クレゾールグリコール、ジアレルフタレート、デキストリン、ピラノール、フェノール、ベークライトワニス、ホルマリン、チオグリセロール、クロロピレン、コハク酸、コハク酸ニトリル、ニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、プルラン、グルシドールプルラン、ポリビニルアルコール、シュクロース、ソルビトール、シアノ基含有有機化合物等が挙げられる。
ここで、シアノ基含有有機化合物とは、シアノ基が1つ以上含まれる化合物のことである。シアノ基含有有機化合物は、より好ましくは、シアノエチル基含有有機化合物である。シアノ基含有有機化合物の具体例としては、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース(シアノエチルスクロース)、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルデンプン、シアノエチルヒドロキシプロピルデンプン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルソルビトール等が挙げられる。
また、フッ素系樹脂の具体例として、C4−n(nは0から3)を骨格とするポリマーで、具体的には、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。また、これらを共重合させてもよく、前記フッ素系樹脂を基本とし、別な樹脂と共重合させてもよい。また、前記化学式の水素の一部を塩素に置換してもよい。例えば、ポリクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
更に、フッ素系樹脂の具体例として、フッ素系イオン交換樹脂が挙げられる。具体的には、一般式CF=CF−O(CFCFO−(CF−Wで表わされるフッ化ビニル化合物と、一般式CF=CFZで表わされるフッ化オレフィンとの、少なくとも2元共重合体からなるものが挙げられる。ここで、XはF、又は、炭素数1から3のパーフルオロアルキル基、nは、0から3の整数、mは、1から5の整数、Zは、H、Cl、F、又は、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。また、Wは、COOH、SOH、SOF、SOCl、SOBr、COF、COCl、COBr、COCH、COで表される基のいずれかである。
特に、有機化合物の場合、極性の高い原子、又は、官能基を含む有機化合物であると誘電率が大きく好ましい。極性の指標となる双極子モーメントは、結合モーメントの和で推測できる。比誘電率が2以上の有機化合物としては、結合モーメントが1.4D(D=3.33564×10−30Cm)以上の置換基を有している化合物が好ましい。結合モーメントが1.4D以上である置換基としては、OH、CF、CCl、C=O、N=O、CN等がある。これらの置換基を有する比誘電率が2以上の有機化合物としては、フッ素系樹脂、グリセリン、チオグリセロール、シアノ基含有有機化合物等が挙げられる。移動度の観点から、フッ素系樹脂やシアノ基含有有機化合物が好ましい。特に、シアノ基含有有機化合物が良く、更にシアノエチル基含有有機化合物がよい。
半導体膜中の有機化合物は、金属酸化物粒子のバインダーとして機能する観点から分子量600以上の有機化合物がよい。
ところで、本発明者らは、上記に挙げた特徴点(1)(2)の含有量と共に、金属酸化物粒子と有機化合物とを混合して半導体膜を作製したときに、半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、金属酸化物のO2−イオンに帰属されるピークの面積S1と、酸素欠損のO2−イオンに帰属されるピークの面積S2との比(S2/S1)を、0.25以上0.60以下に制御した場合に、半導体特性が著しく向上することを見出した(上記の特徴点(3))。この範囲は、例えば、半導体膜の成膜前における、酸化物半導体粒子に対するアニール温度や時間にて制御することができる。アニール温度を高く、アニール時間を長くすると、比(S2/S1)は小さくなる。また、オゾン存在下で焼成処理を行うことで比(S2/S1)は更に小さく制御できる。
一方、有機化合物の添加による相互作用により、比(S2/S1)は大きくなり、その結果、比(S2/S1)を、0.25以上、0.60以下に制御することができる。
すなわち、本実施の形態における半導体膜は、後述するように、酸化物半導体を用いた半導体素子に使用されるが、半導体特性の向上のためには、半導体素子の酸素欠陥を適切に制御することが必要である。そこで、発明者らが鋭意検討の結果、半導体素子の酸素欠陥を適切に制御するためには、半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、金属酸化物のO2−イオンに帰属されるピークの面積S1と、酸素欠損のO2−イオンに帰属されるピークの面積S2との比(S2/S1)が、0.25以上、0.60以下であることが重要であることを見出したのである。
この比(S2/S1)は、金属酸化物粒子と有機化合物との相互作用に基づくものであり、ピークの面積S1は、半導体膜内部における酸素からなり、ピークの面積S2は、半導体膜の酸素欠損と半導体膜表面の酸素、及び有機化合物との相互作用に起因するものからなると考えられる。よって、ピークの面積S1と、ピークの面積S2との比(S2/S1)の調整を行うことで、酸素欠陥を適切に制御することが可能になる。
本実施の形態では、半導体特性のキャリア移動度の観点から、半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、ピークの面積S1と、ピークの面積S2との比(S2/S1)は、0.25以上が好ましく、0.30以上がより好ましく、0.31以上が更に好ましく、0.32以上が最も好ましい。また、同様に、半導体特性の観点、特に、トランジスタ素子のオフ電流低減の観点から、比(S2/S1)は、0.60以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましく、0.35以下が最も好ましい。
また、金属酸化物粒子と有機化合物とを混合して成る半導体膜とすることで、半導体膜のフレキシブル性を向上させることができる。フレキシブル性の向上にも、金属酸化物粒子と有機化合物との相互作用が重要である。
また、金属酸化物粒子と有機化合物とを混合することで、キャリアの伝導パスが増加する効果がある。金属酸化物粒子だけで半導体膜を形成すると、すなわち、金属酸化物100%で半導体膜を形成すると、金属酸化物粒子同士が繋がっていない箇所が多数発生する。そこで、金属酸化物粒子と有機化合物とを混合することで、疑似的に金属酸化物粒子間のコンタクトを増やすことができる。また、実際に金属酸化物粒子同士が密接につながっていなくても、有機化合物が数nmの間隔で入ることにより、キャリアが半導体膜の内部を通りぬけることが可能になると推測される。また、半導体膜中に占める金属酸化物粒子が多すぎると、基板への成膜性が低下する問題がある。
また、金属酸化物粒子と有機化合物をコンポジットすることで、周辺酸素(すなわち、粒子界面の空壁に存在する空気)を遮断することができる。その結果、酸素で失活するキャリアを減らすことができるため、キャリア密度の向上や移動度の向上を図ることができる。
金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜中の金属酸化物粒子の含有量は、半導体膜全体を100質量%としたとき、半導体特性の観点から、55質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、80質量%が更に好ましく、90質量%が最も好ましい。また、同様の観点から、金属酸化物粒子の含有量は、95質量%以下が好ましく、94質量%以下がより好ましく、93質量%以下が更に好ましく、92質量%以下が最も好ましい。
金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜中の金属酸化物粒子の含有量は、半導体膜全体を100質量%としたとき、半導体特性の観点から、15体積%以上が好ましく、21体積%以上がより好ましく、36体積%が更に好ましく、56体積%が最も好ましい。また、同様の観点から、金属酸化物粒子の含有量は、73体積%以下が好ましく、69体積%以下がより好ましく、65体積%以下が更に好ましく、62体積%以下が最も好ましい。
また、半導体膜中の有機化合物の含有量は、フレキシブル性の観点から、5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、7質量%が更に好ましく、8質量%が最も好ましい。また、同様の観点から、有機化合物の含有量は、45質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が更により好ましい。
同様の観点から、27体積%以上が好ましく、31体積%以上がより好ましく、35体積%が更に好ましく、38体積%が最も好ましい。また、同様の観点から、有機化合物の含有量は、85体積%以下が好ましく、79体積%以下がより好ましく、64体積%以下が更に好ましく、44体積%以下が更により好ましい。
半導体膜のXPS測定における不純物の相対元素濃度を1.0atomic%以下に制御した場合に、半導体特性の、特にトランジスタとして使用した際のオフ電流とヒステリシス特性が著しく向上することを見出した。同様の観点から、不純物の相対元素濃度は0.8atomic%以下がより好ましく、0.5atomic%以下が更に好ましく、0.1atomic%以下が特に好ましい。不純物元素としてはNa、Cl、Ca等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
不純物量を低減するために、金属酸化物粒子を洗浄して用いることができる。洗浄方法は、湿式洗浄と乾式洗浄があり、適宜組み合わせて用いることができる。
湿式洗浄は、金属酸化物粒子の洗浄液への含浸、金属酸化物粒子から洗浄液への不純物の移行、金属酸化物粒子の回収の3つの工程からなる。金属酸化物粒子の洗浄液への含浸工程の際、洗浄液として、特に限定されないが、超純水、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液単独、もしくは組み合わせて用いることができる。また、洗浄液に市販の界面活性剤を用いることもできる。
金属酸化物粒子から洗浄液への不純物の移行工程では、手動での撹拌や超音波洗浄機を用いることができる。特に超音波洗浄機は、超音波のキャビテーション、振動加速度、直進流などの物理的作用で不純物を多く洗浄液に移行させることができる。また、超音波により洗浄液の化学反応が促進され、不純物を多く洗浄液に移行させることができる。
金属酸化物粒子の回収工程は、不純物を含んだ洗浄液と粒子を分離するために、膜蒸留や遠心分離により固形分を多く含んだ金属酸化物を回収できる。上記3つの工程を繰り返し行うことで金属酸化物粒子の不純物をより低減することができる。
乾式洗浄として、UV−オゾン洗浄や酸素プラズマ処理がある。乾式洗浄により、湿式洗浄では落ちにくかった金属酸化物表面に強く化学吸着した分子や、元素を低減することができる。
(半導体素子)
本実施の形態における半導体素子は、電極と、電極に接して形成された上記半導体膜と、を有して構成される。
半導体素子としては、ダイオード、トランジスタ、薄膜トランジスタ(thin film transistor)、メモリ、フォトダイオード、発光ダイオード、発光トランジスタ、センサ等が挙げられる。
トランジスタ及び薄膜トランジスタ(以下、トランジスタ素子と総称する)は、アクティブマトリックス駆動方式ディスプレイ、液晶ディスプレイ、分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、有機発光ディスプレイ、電子ペーパー等の種々の表示装置や、粒子回転型表示素子等の種々の表示素子に利用可能である。
トランジスタ素子は、これらの表示装置において表示画素のスイッチング用トランジスタ、信号ドライバー回路素子、メモリ回路素子、信号処理回路素子等に利用される。
表示装置又は表示素子(以下、表示装置と総称する。)のスイッチング用トランジスタは、表示装置の各画素に配置され、各画素の表示状態をスイッチングする。このようなアクティブ駆動素子は、対向する導電性基板のパターニングが不要なため、回路構成によっては、画素の表示状態をスイッチングするトランジスタを持たないパッシブ駆動型の表示装置と比べて、画素配線を簡略化できる。通常は、1画素当たり1個から数個のスイッチング用トランジスタが配置される。このような表示装置は、基板面に二次元的に形成したデータラインとゲートラインとを交差した構造を有し、データラインやゲートラインがトランジスタのゲート電極、ソース電極、ドレイン電極にそれぞれ接合されている。なお、データラインとゲートラインとを分割することや、電流供給ライン、信号ラインを追加することも可能である。
また、表示装置の各画素に、画素配線、トランジスタに加えてキャパシタを併設して、信号を記録する機能を付与することもできる。更に、表示装置が形成された基板に、データライン及びゲートラインのドライバー回路、画素信号のメモリ回路、パルスジェネレータ、信号分割器、コントローラ等を搭載することもできる。
半導体素子が薄膜トランジスタである場合には、その素子構造としては、例えば、基板/ゲート電極/絶縁体層(誘電体層)/ソース電極・ドレイン電極/半導体層という構造(ボトムコンタクト構造)、基板/半導体層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層(誘電体層)/ゲート電極という構造(トップゲート構造)、基板/ゲート電極/絶縁体層(誘電体層)/半導体層/ソース電極・ドレイン電極という構造(トップコンタクト構造)等が挙げられる。絶縁体層(誘電体層)は、ゲート絶縁膜であり、例えば、比誘電率が3以上150以下の有機化合物膜からなる。また、ソース電極、ドレイン電極、及び、ゲート電極は、それぞれ複数設けてもよい。また、複数の半導体層を同一平面内に設けてもよいし、積層して設けてもよい。
半導体素子の移動度(例えば、上述した薄膜トランジスタの移動度)は、画像を表示する素子に利用するためには、0.001cm/Vs以上が好ましく、0.01cm/Vs以上がより好ましく、0.1cm/Vs以上が更に好ましく、1cm/Vs以上が最も好ましい。また、同様の観点で、10cm/Vs以下が好ましく、8cm/Vs以上がより好ましく、6cm/Vs以上が更に好ましく、4cm/Vs以上が最も好ましい。
トランジスタ素子の構成としては、薄膜トランジスタのほかに、MOS(メタル−酸化物(絶縁体層)−半導体)型トランジスタ、バイポーラ型トランジスタのいずれでも採用可能である。バイポーラ型トランジスタの素子構造としては、例えば、n型半導体層/p型半導体層/n型半導体層という構造や、p型半導体層/n型半導体層/p型半導体層という構造が挙げられ、各半導体層に電極が接続されている。そして、p型半導体層やn型半導体層の少なくとも一つに、本実施の形態の金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜が使用される。
また、半導体素子がダイオードである場合には、その素子構造としては、例えば、電極/n型半導体層/p型半導体層/電極という構造が挙げられる。そして、p型半導体層又はn型半導体層に、本実施の形態の金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜が使用される。
金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜は、電極と接触しており、半導体膜と電極との接合面の少なくとも一部は、ショットキー接合及び/又はトンネル接合とすることができる。このような接合構造の例としては、例えば、電極/ショットキー接合(トンネル接合)/半導体層/電極という構造、電極/半導体層/トンネル接合/半導体層/電極という構造、電極/ショットキー接合(トンネル接合)/半導体層/トンネル接合/半導体層/電極という構造等が挙げられる。
これらのショットキー接合及び、トンネル接合は、ダイオード特性の調整やトンネル接合素子に利用できるばかりでない。ショットキー接合部及び、トンネル接合部に磁性材料や、光応答性材料を用いれば、より高機能な半導体素子を製造することができる。
また、本実施の形態の金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜に、ショットキー接合及び/又はトンネル接合を適用するだけで、ダイオードを形成することができる。このような接合構造を有する半導体素子は、単純な構成でダイオードやトランジスタを作製することができるので好ましい。更に、このような接合構造を有する半導体素子を複数接合して、インバータ、オシレータ、メモリ回路、センサ等の各種素子を形成することもできる。
また、本実施の形態の半導体素子は、ICカード、スマートカード、又は電子タグ等の電子機器における演算素子、記憶素子としても利用することができる。その場合、これらが接触型であっても非接触型であっても、問題なく適用可能である。
これらICカード、スマートカード、及び電子タグは、メモリ、パルスジェネレータ、信号分割器、コントローラ、キャパシタ等で構成されており、更にアンテナ、バッテリを備えていてもよい。
更に、本実施の形態の半導体素子は、センサとして利用することができ、例えば、ガスセンサ、バイオセンサ、血液センサ、免疫センサ、人工網膜、味覚センサ等、種々のセンサに応用することができる。
次に、本実施の形態の半導体膜を用いた半導体素子の具体例を示す。
図1は、本実施の形態に係る半導体素子100の構成例の一例に示す断面図である。図1に示すように、この半導体素子100は、ボトムコンタクト構造の薄膜トランジスタであり、基板110と、基板110上に形成されたゲート電極120と、基板110上に形成されてゲート電極120を覆う絶縁体層130と、ソース電極140と、ドレイン電極150と、半導体層160とを有する。ソース電極140は、基板110上に形成されおり、絶縁体層130を介してゲート電極120の一方の端部上を覆っている。また、ドレイン電極150は、基板110上に形成されており、絶縁体層130を介してゲート電極120の他方の端部上を覆っている。半導体層160は、絶縁体層130を介してゲート電極120上に形成されており、ソース電極140とドレイン電極150との間(すなわち、ギャップ)に現れる絶縁体層130上から、ソース電極140上及びドレイン電極150上にかけて形成されている。
基板110の材料としては、ガラス又は樹脂等が挙げられる。また、ゲート電極120、ソース電極140及び、ドレイン電極150の各材料としては、金属、導電性セラミック材料、炭素、導電性有機材料等が挙げられる。ゲート電極120、ソース電極140及び、ドレイン電極150の各材料は、金属酸化物やシリコンと良好な接合や密着性を得る観点から、より好ましくは金、銀、アルミニウム、銅、酸化インジウムスズ(ITO)、又は、インジウム―ガリウム合金がよい。半導体層160は、薄膜トランジスタのボディ層(すなわち、チャネルが形成される層)であり、本実施の形態の金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜により形成される。
図2は、本実施の形態に係る半導体素子200の一例を模式的に示す断面図である。図2に示すように、この半導体素子200は、トップゲート構造の薄膜トランジスタであり、基板210と、基板210上に形成されたソース電極240及びドレイン電極250と、基板210上に形成されてソース電極240及びドレイン電極250を覆う半導体層260と、半導体層260上に形成された絶縁体層230と、絶縁体層230上に形成されたゲート電極220と、を有する。図2に示すように、ソース電極240とドレイン電極250は、互いに離れて配置されている。半導体層260は、ソース電極240とドレイン電極250との間(すなわち、ギャップ)に現れる基板210上から、ソース電極240上及びドレイン電極250上にかけて形成されている。半導体層260は、本実施の形態の金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜により形成される。また、ゲート電極220は、絶縁体層230を介して、半導体層260上に形成されており、ゲート電極220と、ソース電極240上及びドレイン電極250とが、絶縁体層230及び半導体層260を介して一部対向して設けられている。
図3は、本実施の形態に係る半導体素子300の一例を模式的に示す断面図である。図3に示すように、この半導体素子300は、トップコンタクト構造の薄膜トランジスタであり、基板310と、基板310上に形成されたゲート電極320と、基板310上に形成されてゲート電極320を覆う絶縁体層330と、絶縁体層330上に形成された半導体層360と、ソース電極340及びドレイン電極350とを有する。半導体層360は、本実施の形態の金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜により形成される。ソース電極340は基板310上に形成されており、半導体層360の一方の端部上を覆っている。また、ドレイン電極350も基板310上に形成されており、半導体層360の他方の端部上を覆っている。ソース電極340とドレイン電極350は互いに離れて配置されている。ゲート電極320と、ソース電極340上及びドレイン電極350とが、絶縁体層330及び半導体層360を介して一部対向して設けられている。
図4は、本実施の形態における半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。図4に示す半導体素子400は、図1における基板110とゲート電極120を兼用した、ボトムコンタクト構造の薄膜トランジスタである。半導体素子400は、基板を兼ねたゲート電極420と、絶縁体層430と、ソース電極440と、ドレイン電極450と、半導体層460とを有する。半導体層460は、絶縁体層430を介してゲート電極420上に形成されており、ソース電極440とドレイン電極450との間(すなわち、ギャップ)に現れる絶縁体層430上から、ソース電極440上及びドレイン電極250上にかけて形成されている。
基板を兼ねるゲート電極420の材料としては、p型シリコン、又はn型シリコン等が挙げられる。
また、図示しないが、本実施の形態に係る半導体素子は、ソース電極とドレイン電極との間に半導体層が介装され、これら3層が膜厚方向に積層されたトランジスタとしてもよい。このとき、ゲート電極は、半導体層中又はソース電極(ドレイン電極)の近傍に配置するとよい。
続いて、半導体素子100、200、300、400の各層の材質について説明する。基板110、210、310の材料としては、ガラス又は樹脂が挙げられる。また、ゲート電極120、220、320、ソース電極140、240、340、440及び、ドレイン電極150、250、350、450の各材料としては、金属、導電性セラミック材料、炭素、導電性有機材料等が挙げられる。ゲート電極120、220、320、ソース電極140、240、340、440及び、ドレイン電極150、250、350、450の各材料は、金属酸化物やシリコンと良好な接合や密着性を得る観点から、より好ましくは金、銀、アルミニウム、銅、ITO、又はインジウム―ガリウム合金がよい。また、半導体層160、260、360、460は、薄膜トランジスタのボディ層であり、上記したように、金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜にて形成される。金属酸化物粒子及び、有機化合物については既に記述したので、そちらを参照されたい。なお、図1〜図4の各半導体素子100、200、300、400に関しては、「半導体層」との表現を用いたが、「半導体層」は、「半導体膜」から形成されたものであり、両者を特段区別するものではない。
また、半導体層160、260、360、460(半導体膜)の層厚(膜厚)は、電気特性の観点から、0.001μm(1nm)以上が好ましく、0.01μm以上がより好ましく、0.02μm以上が更に好ましく、0.05μm以上が最も好ましい。また、同様の観点から、半導体層160、260、360、460(半導体膜)の層厚は、1μm(1000nm)以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.2μm以下が更に好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。
(半導体素子の製造方法)
上記した半導体素子の製造方法としては、例えば、予めパターン形成された電極上や、絶縁体層上の各所定領域に、半導体層形成用の分散液(後記)を所定のパターンで塗布して半導体層を形成する方法が挙げられる。また、半導体素子の他の製造方法として、基板上に半導体膜を形成した後に、この半導体膜をパターニングして半導体層を形成し、更に、電極形成、絶縁体層の形成を行う方法が挙げられる。このときの半導体膜のパターニング方法としては、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、スプレイ法等の方法を用いてパターンを形成する方法が採用可能である。
本実施の形態では、ガラス、樹脂等の基板に半導体素子を形成することができる。しかも、半導体膜は溶液の印刷、塗布等の簡便な方法で成膜することができるため、大きな面積に一度に多数の半導体素子を容易に形成することができる。よって、半導体素子や該半導体素子を用いた装置(前述の表示素子、演算素子、記憶素子等)を安価に製造することができる。また、半導体膜を用いて半導体素子を製造することは、半導体素子を用いた装置の薄型化、軽量化にも有効である。
続いて、図1〜図4に示した半導体素子100、200、300、400を製造する方法について、図面を用いて説明する。
図5A〜図5Cは、本実施の形態に係る半導体素子100の製造方法を工程順に示す断面図である。図5Aに示すように、まず、基板110上に、ゲート電極120を形成する。
次に、図5Bに示すように、ゲート電極120の上面及び側面を、絶縁体層130にて覆う。そして、図5Cに示すように、基板110上から絶縁体層130上にかけて、ソース電極140とドレイン電極150とをそれぞれ形成する。その後、半導体層160を形成してソース電極140とドレイン電極150との間のギャップを半導体層160で埋め込む。これにより、図1に示した半導体素子100が完成する。
また、図2に示した半導体素子200は、次の工程順で製造することができる。すなわち、基板210上にソース電極240及びドレイン電極250を形成する。次に、基板210上に半導体層260を形成してソース電極240とドレイン電極250との間、及び、ソース電極240上及びドレイン電極250上を覆う。そして、半導体層260上に絶縁体層230を形成する。その後、絶縁体層230上にゲート電極220を形成する。これにより、図2に示した半導体素子200が完成する。
また、図3に示した半導体素子300は、次の工程順で製造することができる。すなわち、基板310上にゲート電極320を形成する。次に、基板310上に絶縁体層330を形成してゲート電極320上面と側面とを覆う。そして、絶縁体層330上に半導体層360を形成する。その後、基板310上から半導体層360上にかけて、ソース電極340とドレイン電極350とを形成する。これにより、図3に示した半導体素子300が完成する。
また、図4に示した半導体素子400は、次の工程順で製造することができる。すなわち、基板を兼ねたゲート電極420上に絶縁体層430を形成して基板を兼ねたゲート電極420上面を覆う。そして、絶縁体層430上にソース電極440とドレイン電極450とを形成する。その後、ソース電極440とドレイン電極450との間(すなわち、ギャップ)に現れる絶縁体層430上から、ソース電極440上及びドレイン電極450上にかけて、半導体層460を形成する。これにより、図4に示した半導体素子400が完成する。
これらの半導体素子(例えば、薄膜トランジスタ)の構成要素であるゲート電極、ソース電極、ドレイン電極と、絶縁体層、及び、半導体層は、全て印刷、塗布等の方法により形成することが可能である。このため、半導体素子の製造を真空下で行う必要がなく、常圧下で行うことができる。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の各材料(以下、電極材料)としては、金属、導電性セラミック材料、炭素、導電性有機材料等が挙げられる。電極材料は、金属酸化物やシリコンと良好な接合や密着性の観点から、より好ましくは、金、銀、アルミニウム、銅、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム―ガリウム合金がよい。
また、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極をそれぞれ、印刷、塗布等の方法により形成するためには、電極材料は液体状である必要がある。よって、液体状である電極材料は、電極材料としてそのまま単体で使用できるが、液体状でない電極材料は、液体に分散させて使用する必要がある。液体状でない電極材料を液体に分散させて使用する例としては、金、銀、銅、酸化インジウムスズ(ITO)、オスミウム、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、アルミニウム等の粉末を液体中に分散した導電性ペーストが挙げられ、より好ましくは金、アルミニウム、銅、酸化インジウムスズ(ITO)である。インジウム―ガリウムは、室温で液体の合金であるため、そのまま印刷を行い、封止材などで液を固定化できる。
あるいは、電極材料について、前駆体が液体状であるか溶液化しやすいものであれば、前駆体を使用することができる。このような電極材料の例としては、金、銀、ニッケル、インジウム等の有機金属錯体、及び無機金属錯体の溶液が挙げられる。
また、絶縁体層の材料は誘電率が高いことが好ましく、絶縁性セラミック材料、有機化合物、ポリマー等が使用される。ただし、絶縁体層の材料は、電極材料と同様に液体状である必要があるので、これらの材料の溶液、分散体、前駆体を使用するとよい。例えば、アルコラートやアセチルアセトン錯体又はこれらの溶液を塗布又は印刷して薄膜を形成し、この薄膜を熱、光等の輻射エネルギーによって酸化物や硫化物に変換して絶縁体層とすることができる。また、絶縁体層の材料として、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、液晶ポリマー等のポリマーや極性を有する有機化合物も、好ましく使用することができる。更に、絶縁体層の材料として、これらの有機化合物にセラミック材料等の高誘電体を分散した物を用いることもできる。
また、基板110、210、310としては、ガラス基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等のプラスチック基板、アルミニウム基板、ステンレス(SUS)基板、粘土からなる基板、紙基板などの通常用いられるあらゆる基板が使用できる。軽量、フレキシブル、低コストの観点からPET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等のプラスチック基板もしくは紙基板が好ましい。
更に、製造工程順に直列に配置した複数の印刷装置、及び/又は塗布装置を用いれば、連続した基板(又は、シート)上に半導体層形成用の塗布液を連続的に印刷及び/又は塗布することができる。これにより、電極、誘電体層、及び半導体層を基板(又は、シート)上に連続的に形成して、半導体素子を製造することができる。
例えば、基板/ゲート電極/絶縁体層(誘電体層)/ソース電極・ドレイン電極/半導体層という構造(ボトムコンタクト構造)を有する薄膜トランジスタを製造する場合であれば、その製造工程順に直列に配置されたゲート電極印刷装置、絶縁体層印刷装置、ソース電極・ドレイン電極印刷装置、及び半導体層印刷装置に、帯状の基板を順次通す。帯状の基板は、例えば、上述のシートである。これにより、前述の薄膜トランジスタの構成要素が基板上に連続的に形成されて、薄膜トランジスタが効率よく製造される。
このような連続的な薄膜トランジスタの製造方法は、設備の負荷が小さい、工程が短縮される、作業者の数を大幅に削減できる、低コストである等の利点がある。また、大面積の基板に一度に多数の薄膜トランジスタを容易に形成することができるので、大面積のディスプレイ装置を安価に製造することができる。
印刷方法、塗布方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、スプレイ法、ブレード塗布等の公知の方法が使用できる。複数の印刷装置、及び/又は塗布装置において、同一の印刷方法、塗布方法を採用してもよいし、構成要素毎に異なる印刷方法、塗布方法を採用してもよい。
本実施の形態における半導体膜の形成にあっては、以下に説明する分散液を用いて、基板上等に塗布や印刷を行い、その後、必要に応じて乾燥等を行う。
(分散液)
本発明に係る分散液は、基板上に塗布されるため塗布液と呼んでもよい。本発明に係る分散液は、金属酸化物粒子と、有機化合物と、溶媒とを含む。更に、分散剤を含んでもよい。溶媒として、水、ペンタン、ヘキサン、ペプタン、オクタン、ノナン、デカン、2−メチルヘキサン、デカリン、テトラリン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、テルピネオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、グリセリンアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、キシレン、トルエン、フェノール、アニリン、ジフェニルエーテルなどの芳香族類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メチルアセテート、テトラヒドロフラン、乳酸ブチル、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
特に溶媒として、極性の高い溶媒が、金属酸化物粒子の分散性が高くなる点で好ましい。極性の高い溶媒としては、Rohrschneiderの極性パラメータが4以上の溶媒が好ましく、5以上がより好ましく、6以上が更に好ましく、7以上が更により好ましい。
具体的な好ましい溶媒の例として、テルピネオール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどがある。またこれらを混合して用いることも可能である。
なお、分散液中の金属酸化物粒子及び、有機化合物については、上記の(半導体膜)にて説明したので、そちらを参照されたい。
分散剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。具体的には、アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸時エタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテルが挙げられる。また、その他の分散剤として、ビックケミー社製の「Disperbyk−102」、「Disperbyk−111」、「Disperbyk−142」、「Disperbyk−145」、「Disperbyk−110」、「Disperbyk−180」、「Disperbyk−2013」、「Byk−9076」、「ANTI−TERRA−U」、第一工業製薬製の「プライサーフM208F」、「プライサーフDBS」を挙げることができる。また、Triton X−45、Triton X−100、Triton X、Triton A−20、Triton X−15、Triton X−114、Triton X−405、Tween #20、Tween #40、Tween #60、Tween #80、Tween #85、Pluronic F−68、Pluronic F−127、Span 20、Span 40、Span 60、Span 80、Span 83、Span 85、AGCセイミケミカル製の「サーフロンS−211」、「サーフロンS−221」、「サーフロンS−231」、「サーフロンS−232」、「サーフロンS−233」、「サーフロンS−242」、「サーフロンS−243」、「サーフロンS−611」、スリーエム製の「NovecFC−4430」、「NovecFC−4432」、DIC製の「メガファックF−444」、「メガファックF−558」が挙げられる。
金属酸化物粒子の溶媒への分散性を向上する点で、リン酸ポリエステル系の分散剤、アルキルアンモニウム塩系の分散剤、アルキロールアミン塩系の分散剤、顔料親和性を有するコポリマー系分散剤が好ましく、具体的には、ビックケミー社製の、「Disperbyk−111」、「Disperbyk−145」、「Disperbyk−180」、「Disperbyk−2013」を用いるのが好ましい。
また、金属酸化物粒子と有機化合物の親和性を向上する点で、リン酸ポリエステル系の分散剤、顔料親和性を有するコポリマー系分散剤が好ましく、具体的には、ビックケミー社製の、「Disperbyk−111」、「Disperbyk−2013」を用いるのが好ましい。金属酸化物粒子と有機化合物の溶媒中での相互作用は、赤外線吸収スペクトル法で確認することができる。また、ラマン分光法、紫外可視分光法で確認することもできる。これら分散剤は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
分散剤の添加量は、分散液の安定性の観点から、分散液全体に対し0.1質量%以上20質量%が好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上5質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以上5質量%以下が最も好ましい。
分散液の作製方法として、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等が利用できる。また、適宜分散剤等を添加してもよい。
分散液の濃度として、分散液全体100質量%に対し、金属酸化物粒子の含有量は、0.1質量%以上60質量%以下が好ましく、より好ましくは、1質量%以上55質量%以下であり、更に好ましくは、10質量%以上50質量%以下であり、最も好ましくは20質量%以上48質量%以下である。
また、有機化合物の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以上、10質量%以下でり、最も好ましくは2.5質量%以上5質量%以下である。
また、溶媒の含有量は、20質量%以上99.98質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、30質量%以上90質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以上、80質量%以下であり、最も好ましくは、40質量%以上、70質量%以下である。また、金属酸化物粒子の平均粒子径は、1nm以上500nm以下が好ましい。金属酸化物粒子の平均粒子径としては、接触抵抗低減の観点から、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上が更に好ましい。また、成膜性の観点から、金属酸化物粒子の平均粒子径は、200nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましく、50nm以下が最も好ましい。
また、本実施の形態の分散液では、分散液の乾燥後、XPS測定した時に、半導体特性のキャリア移動度の観点から、XPS測定におけるO1sスペクトルの、528eVから530eVに存在するピークの面積S1と、530eVから533eVに存在するピークの面積S2との比(S2/S1)は、0.25以上であることが好ましく、0.30以上がより好ましく、0.31以上が更に好ましく、0.32以上が最も好ましい。また、同様に半導体特性の観点、特に、トランジスタ素子のオフ電流低減の観点から、比(S2/S1)は、0.60以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましく、0.35以下が更により好ましい。
(半導体膜の製造工程)
本実施の形態における半導体膜の製造方法は、金属酸化物粒子と、有機化合物と、溶媒とを含む分散液を、基板に塗布し塗布膜を得る塗布工程と、塗布膜を、20℃以上300℃以下の乾燥温度で乾燥させて、塗布膜から溶媒の少なくとも一部を除去する乾燥工程と、を含む。
半導体膜を印刷方法又は塗布方法で形成する場合は、この塗布工程と乾燥工程とを実行して半導体膜を形成することが好ましい。
また、塗布工程で用いる分散液を準備する工程(すなわち、分散液の準備工程)は、塗布工程と同一の製造ラインで行ってもよいし、塗布工程とは別の製造ラインや別の製造工場で行ってもよい。また、分散液を社外から購入するようにしてもよい。なお、本実施の形態において印刷は塗布の一態様であり、分散液(塗布液)は印刷液、塗布工程は印刷工程と言い換えることができる。以下、分散液準備工程、塗布工程、乾燥工程について説明する。
(1)分散液準備工程
分散液準備工程は、金属酸化物粒子、有機化合物、及び、溶媒から分散液を調製する工程である。溶媒は、金属酸化物粒子と有機化合物を溶解もしくは分散させるため有機溶媒であることが好ましい。金属酸化物粒子、有機化合物、及び、溶媒を混合して、半導体膜形成用の分散液を得る。
金属酸化物粒子は、有機化合物と、溶媒中で混合する前に、事前にアニールして用いることができる。アニールする雰囲気は、酸素ガス中、窒素等の不活性ガス中、空気等の窒素と酸素の混合ガス中でアニールすることができる。アニール温度は、酸素欠陥を制御できる観点で、300℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましく、600℃以上が最も好ましい。また、同様の観点で2000℃以下が好ましく、1500℃以下がより好ましく、1200℃以下が最も好ましい。
半導体膜形成用の分散液に有機化合物として、シアノ基含有有機化合物を含むとき、シアノ基含有有機化合物の含有量は、分散液全体100質量%に対し、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以上、10質量%以下であり、最も好ましくは2.5質量%以上5質量%以下である。
半導体膜形成用の分散液に含まれる金属酸化物の含有量は、分散液の濃度として、分散液全体100質量%に対し、金属酸化物粒子の含有量は、0.1質量%以上60質量%以下が好ましく、より好ましくは、1質量%以上55質量%以下であり、更に好ましくは、10質量%以上50質量%以下であり、最も好ましくは20質量%以上48質量%以下である。
(2)塗布工程
塗布工程は、分散液を基板に塗布し塗布膜を得る工程である。例えば、基板/ゲート電極/絶縁体層(誘電体層)/ソース電極・ドレイン電極/半導体層という構造(ボトムコンタクト構造)を有する薄膜トランジスタを製造する場合、塗布工程は、塗布液をソース電極及びドレイン電極が形成された基板に塗布し塗布膜を得る工程、である。
(3)乾燥工程
乾燥工程とは、塗布膜を乾燥させて塗布膜から有機溶媒の全部又は一部を除去する工程である。この乾燥工程は、従来の高温焼結とは異なる、低温プロセスである。低温プロセスとは、本実施の形態において20℃以上300℃以下の温度領域のこという。この領域の温度では、樹脂基板が利用できるようになり、工業プロセス上、非常に重要な温度領域である。この乾燥工程の温度領域は20℃以上300℃以下が好ましく、より好ましくは20℃以上200℃以下がよく、更に好ましくは20℃以上150℃以下である。150℃以下になると、PETフィルムやPCフィルムなどの安い汎用樹脂基板が利用できるので最適である。
以上の本実施の形態によれば、金属酸化物粒子と有機化合物とを混合して、金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜を形成する。この半導体膜では、キャリアの伝導パスが多く、更にキャリアトラップや再結合が抑制される。また、この半導体膜では周辺酸素を遮断できる。その結果、キャリアの流れる量が増え、キャリアの移動速度も速くなる。これにより、移動度が高く、空気中でも安定した(すなわち、空気と触れても化学変化が生じにくく、劣化しにくい)半導体素子を提供することができる。
また、金属酸化物粒子と有機化合物とを含む半導体膜は、真空系プロセス等を必要とせず、低コストかつ低温プロセスでの形成が可能であり、塗布法又は印刷法のように非真空系プロセスで形成することができる。これにより、半導体素子の製造コストを低減することが可能となる。
このように、本実施の形態によれば、非真空系プロセスで製造可能であり、より高い移動度を発現することができる半導体素子を提供することができる。
以下、具体的な実施例により、本発明をより詳細に説明する。
<評価方法>
以下、特に断らない限り、25℃、及び、湿度45%の条件で評価を行った。
(1)平均粒子径
平均粒子径は、電界放出形走査電子顕微鏡SU−8820(株式会社日立製作所製)を用いて測定した。基板上に成膜した半導体膜の観察位置周囲を割断後、イオンミリング装置E−3500Plus(株式会社日立製作所製)を用いて冷却しながら、アルゴンイオンビームを照射して断面加工を行った。半導体膜の断面観察を行い、合計10点の粒子径を測定し、その平均値を、平均粒子径とした。
(2)XPS測定
XPS測定は、測定温度を23℃とし、X線光電分光法で測定した。具体的には、金属製のマスク(2mmφ)を被せて、X線光電分光(使用機器:アルバック・ファイ社製 VersaProbeII)を用い、以下の測定条件で測定した。
励起源:monoAl Kα 25W×15kV
分析サイズ:約200μmφ
Pass Energy
Survey scan:117.4eV
Narrow scan:23.5eV
ピーク分離は、酸素の1sスペクトルについて、バックグラウンド補正を行ったうえで、528eVから530eVに現れるIn−O結合のピーク、530eVから533eVに現れるOH基等のピークに分離してそれぞれのピークの面積を求めた。ピークの分離は、ガウス−ローレンツ複合関数を用いた非線形最小二乗法によるカーブフィッティング法で行った。その際、3つのピークの半値全幅の取り得る値の上限をそれぞれ2.0eVとした。
試料表面のNaの相対元素濃度は、Survey scan結果を用い、面積計算から全体に占める割合を算出した。各実施例及び比較例のサンプルの不純物量については表1、2、3に示した。
(3)膜厚
半導体膜の層厚は、触針式プロファイリングシステム(Dektak XTL、Bruker株式会社製)によって測定した膜の段差部分で層厚の計測を行った。
(4)半導体膜の移動度
移動度は、パラメーターアナライザー(ケースレー社製、4200−SCS)を用いて測定した。測定パラメータに特に制約はないが、特に断りがない場合、真空条件下、ソース電圧0V、ドレイン電圧80V、ゲート電圧を−60Vから100Vまで1Vずつ掃引し、更に60Vまで測定した際のドレイン電流の変化を測定し、電界効果移動度の式より移動度を算出した。
<電極付き基板>
素子構造には特に制約はないが、特に断りがない場合、200nmの熱酸化膜付きn型シリコンウェハ(電気抵抗率が0.001〜0.0015Ω・cm)上に、2nm膜厚のTiを密着層とし、その上に22nm膜厚のAuを蒸着しソース電極とドレイン電極を形成した。ソース電極とドレイン電極の大きさは200μm×500μmであり、チャネル長50μm、チャネル幅500μmであった。
電極付き基板は使用前に、それぞれセミコクリーン56、超純水、アセトン、及び、2−プロパノール中に含浸し、超音波洗浄機で5分処理した後、卓上型紫外線洗浄改質装置PL21−200(セン特殊光源社製)を用いてUVオゾン処理を10分行った。
参考実施例1]
金属酸化物粒子には、酸化インジウム(III) nanopowder<100nm particle size (TEM),99.9% trace metals basis(シグマ−アルドリッチ社製)を用い、酸化インジウム粒子5.0gをマッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて空気中、600℃で1時間アニール処理を行った。
上記処理を行った酸化インジウム粒子3.33gとシアノエチルサッカロース(信越化学製)1.67g、ジメチルスルホキシド5.00g、0.3mm径の球状酸化ジルコニウム5.0gを容器に入れ、遊星ボールミル装置P−6(フリッチュ社製)を用い、600rpm条件で30分処理することで、シアノエチルサッカロースと酸化インジウム粒子を含む塗布液(分散液)を作製した。
上記塗布液を、電極付き基板上に、スピンコーターMS−B1000(ミカサ株式会社製)を用い、2000rpm、30秒の条件で成膜を行い、120℃ホットプレート上で10分乾燥を行うことで酸化インジウムと有機化合物とを含む半導体膜(コンポジット体)を形成し、半導体素子を得た。その際に0.3mm径の球状酸化ジルコニウムは系外に移動し、半導体膜には残っていなかった。
参考実施例2]
酸化インジウム粒子を3.75g、シアノエチルサッカロースを1.25gに変更した以外は、参考実施例1と同様に半導体素子を得た。
参考実施例3]
金属酸化物粒子には、酸化インジウム(III) nanopowder<100nm particle size (TEM),99.9% trace metals basis>(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた。酸化インジウム粒子を洗浄するために、酸化インジウム粒子に対して10倍量の1mol/L炭酸水素ナトリウム水溶液を加え良く撹拌し、遠心分離器で沈降させる操作を5回繰り返し、次に10倍量の超純水を加えて良く撹拌し、遠心分離器で沈降させる操作を5回繰り返した。その後150℃ホットプレートで2時間加熱し、酸化インジウム粒子を得た。
その後、酸化インジウム粒子5.0gを焼成皿にのせ、卓上型紫外線洗浄改質装置PL21−200(セン特殊光源社製)につながった管状炉に設置し、オゾンを2.0L/minで流した状態で、300℃、1時間処理を行った。
上記処理を行った酸化インジウム粒子4.00gとシアノエチルサッカロース(信越化学製)1.00g、ジメチルスルホキシド5.00g、0.3mm径の球状酸化ジルコニウム5.0gを容器に入れ、遊星ボールミル装置P−6(フリッチュ社製)を用い、600rpm条件で30分処理することで、シアノエチルサッカロースと酸化インジウム粒子を含む塗布液(分散液)を作製した。
上記塗布液を、参考実施例1と同様条件で成膜することで、半導体素子を得た。
参考実施例4]
酸化インジウム粒子5.0gを焼成皿にのせ、UVオゾン洗浄機につながった管状炉に設置し、オゾンを2.0L/minで流した状態で、300℃、1時間処理を行った代わりに、酸化インジウム粒子5.0gをマッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて空気中、600℃で1時間アニール処理を行った以外は、参考実施例3と同様に半導体素子を得た。
参考実施例5]
酸化インジウム粒子を4.55g、シアノエチルサッカロースを0.45gに変更した以外は、参考実施例3と同様に半導体素子を得た。
参考実施例6]
酸化インジウム粒子の洗浄処理を実施しなかった以外は、参考実施例5と同様に半導体素子を得た。
[実施例7]
シアノエチルサッカロース(信越化学製)を2‐メトキシエタノールと混合し、20質量%の溶液を作製した。シアノエチルサッカロース溶液をインクジェットプリンターDMP−2831(富士フイルム社製)を用いて、乾燥後膜厚が約400nmになるように電極付基板に印刷した。
金属酸化物粒子には、酸化インジウム(III) nanopowder<100nm particle size (TEM),99.9% trace metals basis>(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた。酸化インジウム粒子を洗浄するために、酸化インジウム粒子に対して10倍量の1mol/L炭酸水素ナトリウム水溶液を加えで良く撹拌し、遠心分離器で沈降させる操作を5回繰り返し、次に10倍量の超純水を加えて良く撹拌し、遠心分離器で沈降させる操作を5回繰り返した。その後150℃ホットプレートで2時間加熱し、粒子を得た。
その後、酸化インジウム粒子5.0gをマッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて空気中、600℃で1時間アニール処理を行った。
シアノエチルサッカロースを印刷した電極付き基板に、洗浄処理とアニール処理した酸化インジウム粒子をのせ、スパチュラで押し、120℃ホットプレート上で10分乾燥を行うことで、酸化インジウムと有機化合物のコンポジット体で構成された半導体膜を備えた半導体素子を得た。
参考実施例8]
酸化インジウム粒子の洗浄処理を実施しなかった以外は、実施例7と同様に半導体素子を得た。
[実施例9]
酸化インジウム粒子を以下の方法にて合成した。塩化インジウム99.99%、(トランスメタル社製)8.00gを脱水エタノール160mlに溶解させた。これに脱水トリエチルアミン(シグマ−アルドリッチ社製)を添加し、撹拌1時間後、ろ過で固形分を回収した。脱水エタノール50mlでリンスし、40℃で減圧乾燥12時間実施した。固形分の回収量は1.59gであり、収率は22%であった。100mlフラスコで臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(シグマ−アルドリッチ社製)0.36gを脱水エタノール20mlに溶解させた。上記固形分0.62gを加え、更に超純水60mlを添加した。これにpHが10になるように水酸化アンモニウム(和光純薬社製)を添加した。これを100W/cm、2.20kHz、1.5時間、大気中でホモジナイザー処理を行い、その後ろ過により固形分を回収した。超純水100mlで洗浄し、ろ過により固形分を回収した。超純水を用いた洗浄を5回繰り返した。回収した固形分全量をマッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)で350℃、1時間焼成することで、黄色の酸化インジウム粒子0.34gを得た。
合成して得られた酸化インジウム粒子のUltima‐IV(理学社製)XRD測定を実施したところ、酸化インジウムであることが同定され、また結晶子径は13.0nmであった。
その後、酸化インジウム粒子0.50gをマッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて空気中、400℃で1時間アニール処理を行った。
シアノエチルサッカロース(信越化学社製)を2−メトキシエタノールと混合し、20質量%の溶液を作製した。シアノエチルサッカロース溶液をインクジェットプリンターDMP−2831(富士フイルム社製)を用いて、乾燥後膜厚が約400nmになるように電極付基板に印刷した。
シアノエチルサッカロースを印刷した電極付き基板に、洗浄処理とアニール処理した酸化インジウム粒子をのせ、スパチュラで押し、120℃でホットプレート上で10分乾燥を行うことで、酸化インジウムと有機化合物のコンポジット体で構成された半導体膜を備えた半導体素子を得た。
参考実施例10]
酸化インジウム粒子のアニール処理を実施しなかった以外は、参考実施例8と同様に半導体素子を得た。
参考実施例11]
シアノエチルサッカロースに代えてシアノエチルポリビニルアルコール(信越化学社製)を用いた以外は、参考実施例8と同様に半導体素子を得た。
参考実施例12]
シアノエチルサッカロースに代えてシアノエチルプルラン(信越化学社製)を用いた以外は、参考実施例8と同様に半導体素子を得た。
参考実施例13]
シアノエチルサッカロースに代えてグリセリン(和光純薬社製)を用いた以外は、参考実施例8と同様に半導体素子を得た。
参考実施例14]
シアノエチルサッカロースに代えて、ポリビニルアルコール(和光純薬社製、平均重合度:約1500〜1800)を用い、2−メトキシエタノールを水に代えた以外は、参考実施例8と同様に半導体素子を得た。
参考実施例15]
シアノエチルサッカロース(信越化学製)を2‐メトキシエタノールと混合し、10質量%の溶液を作製した。シアノエチルサッカロース溶液をインクジェットプリンターDMP−2831(富士フイルム社製)を用いて、乾燥後膜厚が約200nmになるように電極付基板に印刷した。
金属酸化物粒子には、酸化インジウム(III) nanopowder<100nm particle size (TEM),99.9% trace metals basis>(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた。
その後、酸化インジウム粒子5.0gをマッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて空気中、600℃で1時間アニール処理を行った。
シアノエチルサッカロースを印刷した電極付き基板に、洗浄処理とアニール処理した酸化インジウム粒子をのせ、スパチュラで押し、120℃でホットプレート上で10分乾燥を行うことで、酸化インジウムと有機化合物のコンポジット体で構成された半導体膜を備えた半導体素子を得た。
参考実施例16]
酸化インジウム粒子に代えて、酸化亜鉛nanopowder<100nm particle size(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた以外は、参考実施例1と同様に半導体素子を得た。
参考実施例17]
酸化インジウム粒子に代えて、酸化亜鉛nanopowder<100nm particle size(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた以外は、参考実施例6と同様に半導体素子を得た。
[実施例18]
酸化インジウム粒子に代えて、酸化亜鉛nanopowder<100nm particle size(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた以外は、実施例8と同様に半導体素子を得た。
参考実施例19]
酸化インジウム粒子に代えて、酸化亜鉛nanopowder<100nm particle size(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた以外は、参考実施例10と同様に半導体素子を得た。
[比較例1]
シアノエチルサッカロース(信越化学製)を2‐メトキシエタノールと混合し、20質量%の溶液を作製した。シアノエチルサッカロース溶液を電極付き基板上に、スピンコーターMS−B1000(ミカサ株式会社製)を用い、2000rpm、30秒の条件で成膜を行い、120℃でホットプレート上で10分乾燥を行うことで、シアノエチルサッカロース膜を得た。
[比較例2]
酸化インジウム粒子を2.50g、シアノエチルサッカロースを2.50gに変更した以外は、参考実施例1と同様に半導体素子を得た。
[比較例3]
金属酸化物粒子には、酸化インジウムNanopowder、99.99%、20−70nm(SkySprings Nanomaterials社製)を用い、酸化インジウム粒子5.0gをマッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて空気中、600℃で1時間アニール処理を行った。
上記処理を行った酸化インジウム粒子4.00gとシアノエチルサッカロース(信越化学製)1.00g、ジメチルスルホキシド5.00g、0.3mm径の球状酸化ジルコニウム5.0gを容器に入れ、遊星ボールミル装置P−6(フリッチュ社製)で600rpm条件で30分処理することで、シアノエチルサッカロースと酸化インジウム粒子を含む塗布液(分散液)を作製した。
上記塗布液を、参考実施例1と同様条件で成膜することで、半導体素子を得た。
[比較例4]
酸化インジウムNanopowder、99.99%、20−70nm(SkySprings Nanomaterials社製)に代えて、水酸化インジウム(III)(和光純薬社製)を用いた以外は比較例3と同様に半導体素子を得た。
[比較例5]
酸化インジウム粒子を以下の方法にて合成した。塩化インジウム99.99%(トランスメタル社製)8.00gを脱水エタノール160mlに溶解させた。これに脱水トリエチルアミン(シグマ−アルドリッチ社製)を添加し、撹拌1時間後、ろ過で固形分を回収した。脱水エタノール50mlでリンスし、40℃で減圧乾燥12時間実施した。固形分の回収量は1.59gであり、収率は22%であった。100mlフラスコで臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(シグマ−アルドリッチ社製)0.36gを脱水エタノール20mlに溶解させた。上記固形分0.62gを加え、更に超純水60mlを添加した。これにpHが10になるように水酸化アンモニウム(和光純薬社製)を添加した。これを100W/cm、2.20kHz、1.5時間、大気中でホモジナイザー処理を行い、その後ろ過により固形分を回収した。超純水100mlで洗浄し、ろ過により固形分を回収した。超純水を用いた洗浄を5回繰り返した。回収した固形分全量をマッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて350℃で1時間焼成することで、黄色の酸化インジウム粒子0.34gを得た。
合成して得られた酸化インジウム粒子のUltima−IV(理学社製)XRD測定を実施したところ、酸化インジウムであることが同定され、また結晶子径は13.0nmであった。
その後、酸化インジウム粒子0.50gをマッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて空気中、1000℃で1時間アニール処理を行った。
シアノエチルサッカロース(信越化学製)を2‐メトキシエタノールと混合し、20質量%の溶液を作製した。シアノエチルサッカロース溶液をインクジェットプリンターDMP−2831(富士フイルム社製)を用いて、乾燥後膜厚が約400nmになるように電極付基板に印刷した。
シアノエチルサッカロースを印刷した電極付き基板に、洗浄処理とアニール処理した酸化インジウム粒子をのせ、スパチュラで押し、120℃ホットプレート上で10分乾燥を行うことで、酸化インジウムと有機化合物のコンポジット体で構成された半導体膜を備えた半導体素子を得た。
[比較例6]
酸化インジウム粒子を4.85g、シアノエチルサッカロースを0.15gに変更した以外は、参考実施例1と同様に半導体素子を得た。
[比較例7]
金属酸化物粒子には、酸化インジウム(III) nanopowder<100nm particle size (TEM),99.9% trace metals basis>(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた。酸化インジウムに対し、マッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて空気中、600℃で1時間アニール処理を行った。
金電極付ウェハにアニール処理した酸化インジウム粒子を乗せ、スパチュラで押しつけ、120℃ホットプレート上で10分乾燥を行うことで、酸化インジウム粒子の塊を得た。
[比較例8]
酸化インジウム粒子に代えて、酸化亜鉛nanopowder<100nm particle size(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた以外は、比較例2と同様に半導体素子を得た。
[比較例9]
酸化インジウム粒子に代えて、酸化亜鉛nanopowder<100nm particle size(シグマ−アルドリッチ社製)を用いた以外は、比較例6と同様に半導体素子を得た。
以下、各実施例及び比較例のサンプルに対する評価の結果を、以下の表1、2、3に示す。
成膜性は、50倍倍率の顕微鏡で半導体膜表面を観察し、80%以上の面積に半導体膜が成膜されている状態を○、80%未満の面積に半導体膜が成膜されている状態を×とした。
移動度は、0.1cm/Vs以上を◎、1.0E−3cm/Vs以上0.1cm/Vs未満を○、1.0E−3cm/Vs未満でトランジスタになったものを△、トランジスタにならなかったものを×とした。
オフ電流は、1.0E−10A未満を○、1.0E−10A以上を×とした。ヒステリシスは、Id=1.0nA時の行きと帰りのVgの差が10V未満を○、10V以上を×とした。
Figure 0006746557
Figure 0006746557
Figure 0006746557
表1、2、3に示すように、各実施例では、成膜性及び移動度がいずれも良好であった。特に参考実施例5、6、実施例7、参考実施例8、実施例18は移動度の点で良好であることがわかった。また、参考実施例5、実施例7、9、参考実施例17、実施例18はオフ電流の点で良好であることがわかった。更に、実施例7、9、参考実施例17、19はヒステリシスの点で良好であることがわかった。一方、比較例1及び比較例2では、いずれも絶縁体となり、トランジスタ素子を作製することができなかった。更に比較例1では、成膜性が悪かった。
なお、本発明は、以上に記載した実施の形態や、各実施例に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて実施の形態や各実施例に設計の変更等を加えてもよく、また、実施の形態や各実施例を任意に組み合わせてもよく、そのような変更等を加えた態様も本発明の範囲に含まれる。
本発明により、非真空系プロセスでかつ低温プロセスで製造可能であり、より高い移動度を発現することができる半導体膜、及びそれを用いた半導体素子を提供することができる。
100、200、300、400 半導体素子
110、210、310 基板
120、220、320、420 ゲート電極
130、230、330、430 絶縁体層(ゲート絶縁膜)
140、240、340、440 ソース電極
150、250、350、450 ドレイン電極
160、260、360、460 半導体層

Claims (9)

  1. 金属酸化物粒子と、有機化合物と、を含む半導体膜であって、前記半導体膜全体100質量%に対し、前記金属酸化物粒子の含有量は、55質量%以上、95質量%以下であり、前記有機化合物の含有量は、5質量%以上、45質量%以下であり、
    前記半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、金属酸化物のO2−イオンに帰属されるピークの面積S1と、酸素欠損のO2−イオンに帰属されるピークの面積S2との比(S2/S1)が、0.25以上、0.0以下であり、
    前記半導体膜のXPS測定におけるNaの相対元素濃度が、1.0atomic%以下であることを特徴とする半導体膜。
  2. 酸化インジウム粒子と、有機化合物と、を含む半導体膜であって、前記半導体膜全体100質量%に対し、前記酸化インジウム粒子の含有量は、55質量%以上、95質量%以下であり、前記有機化合物の含有量は、5質量%以上、45質量%以下であり、前記半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、528eVから530eVに存在するピークの面積S1と、530eVから533eVに存在するピークの面積S2との比(S2/S1)が、0.25以上、0.0以下であり、
    前記半導体膜のXPS測定におけるNaの相対元素濃度が、1.0atomic%以下であることを特徴とする半導体膜。
  3. 酸化亜鉛粒子と、有機化合物と、を含む半導体膜であって、前記半導体膜全体100質量%に対し、前記酸化亜鉛粒子の含有量は、55質量%以上、95質量%以下であり、前記有機化合物の含有量は、5質量%以上、45質量%以下であり、前記半導体膜のXPS測定におけるO1sスペクトルの、酸化亜鉛のO2−イオンに帰属されるピークの面積S1と、酸素欠損のO2−イオンに帰属されるピークの面積S2との比(S2/S1)が、0.25以上、0.0以下であり、
    前記半導体膜のXPS測定におけるNaの相対元素濃度が、1.0atomic%以下であることを特徴とする半導体膜。
  4. 前記有機化合物が誘電体であり、比誘電率が5以上100以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の半導体膜。
  5. 前記有機化合物が、シアノ基含有有機化合物であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の半導体膜。
  6. 電極と、
    前記電極に接する、請求項1から請求項のいずれかに記載の前記半導体膜と、を有することを特徴とする半導体素子。
  7. 前記半導体膜の膜厚が、1nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項に記載の半導体素子。
  8. トランジスタ素子であることを特徴とする請求項又は請求項に記載の半導体素子。
  9. 移動度が0.001cm/Vs以上、10cm/Vs以下であることを特徴とする、請求項から請求項のいずれかに記載の半導体素子。
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