<第1実施例>
図1を参照して、この実施例の講話システム100は、たとえば話者から複数の聴取者に対して、講話したり、何らかの話を読み聞かせたりするときに利用される。また、「講話」または「読み聞かせ」は、1人またはあるいは少数の話者(話し手)から多人数の聴取者(聞き手)への一方向のコミュニケーションである。そして、本実施例の複数の聴取者の各々は、抱擁体10を抱擁した状態で話を聞く。
図2は講話システム100の構成を示す図解図である。図2を参照して、講話システム100は、抱擁体10、FM受信機20、マイク30およびFM送信機32を有する。
抱擁体10とは、聴取者が腕を回して抱擁(ハグ)できる物体を意味し、聴取者は自分の体に抱擁体10が密着することによって、安心感を得て、それによって癒しを実感する。また、抱擁体10の各々には、FM受信機20を収納するポケット18(図3(A)参照)が設けられている。なお、ポケット18は収納部または収容部と言われることもある。また、抱擁体10による癒しの効果については、特願2013−142674号を参照されたい。
FM受信機20は、FM放送に準拠したFM信号を受信するものである。本実施例のFM受信機20は、音声信号を含むFM信号を受信し、その音声信号に応じた音声を出力する。そのため、FM受信機20はFMラジオ、ラジオまたは受信手段と言われることがある。
マイク30は、図1に示すように話者によって利用され、FM送信機32と接続される。FM送信機32は、FM放送に準拠したFM信号を送信するものである。本実施例のFM送信機32は、マイク30から出力された音声信号を含むFM信号(以下、単に「音声信号」と言う)を送信する。なお、FM送信機32は、FMトランスミッタまたは送信手段と言われることがある。
そして、FM送信機32から送信された音声信号は、各々の抱擁体10のポケット18に収納されているFM受信機20によって受信され、各々のFM受信機20からは、受信した音声信号に応じた音声が出力される。
たとえば、話者はマイク30を使用して複数の聴取者に話しかける。各々の聴取者は、抱擁体10のポケット18に収納されているFM受信機20に耳元を近接させた状態で、抱擁体10を抱擁する。このような状態で、FM受信機20が音声信号を受信すると、各々の聴取者はFM受信機20によって話者の声(言葉)を耳元で聞くことになる。つまり、各々の聴取者は話者の声を身近に聞くことが出来る。そして、聴取者は、FM受信機20から聞こえる声と実際の声との間には時差が感じられないため、話者の実際の声が抱擁体10から聞こえるように感じる。
このように、FM送信機32が送信した音声信号は、複数のFM受信機20によって略同時に受信することが出来るため、話者はマイク30に音声を入力することで、複数の聴取者に対して同時に語りかけることができる。
また、上述したように、話者から多人数の聴取者への一方向のコミュニケーションであるため、本実施例の講話システム100ではラジオ放送形式のシステムを採用した。そのため、一般的に売られているFM受信機20およびFM送信機32を利用して、講話システム100を容易に構築することが出来る。
なお、他の実施例では他の放送または通信の形式によって、話者から多人数の聴取者に講話または読み聞かせを行ってもよい。また、本実施例では、複数の聴取者をまとめて聴衆と言うことがある。
図3を参照して、本実施例では、抱擁体10は、一例として、人間のミニマルデザインに基づく外観、形状を有するように作られる。つまり、本実施例の抱擁体10の本体12は、人間の頭に相当してかつ頭と見える頭部12aと、その下の、人間の胴体に相当してかつ胴体と見える胴体部12bと、胴体部12bから左右に延びる、人間の手および腕に相当して手および腕と見える腕部12cと、胴体部12bの下部であって人間の足に相当しかつ足と見える足部12dとを含む。抱擁体10のサイズは、全体として約40cmの背の高さを有し、太さは聴取者が腕を回して抱擁できる程度の大きさ、たとえば胴体部12bの直径はおよそ60cm±20cm程度に設定される。
抱擁体10は、特に図3(D)の断面図からよくわかるように、たとえば上述のような外観を有する外被14を含み、この外被14の中に、内蔵物16が内蔵される。外被14は任意の材料からなる生地、たとえば布状の生地、網状の生地、膜またはシート状の生地
などで作ることができるが、本実施例では、たとえばサテンのような布を縫製して作っている。外被14の材料としては、その他、シリコンや塩化ビニルなどの合成樹脂などが利用可能である。そして、抱擁体10はその名のとおり、聴取者に抱かせるものであるので、外被14としては、肌触りのよい素材であって、できるだけ抗菌性や防汚性のあるものが好ましい。
外被14の中に収容される内蔵物16は、たとえば発泡ウレタンや綿などを外被14と同様の形状に予め成形したものであってもよく、たとえば発泡スチロールなど合成樹脂のビーズ(たとえば直径1mm程度)であってもよい。前者の場合は、内蔵物16自体が抱擁体10の外観形状を形成するので、内蔵物16の上に外被14を被せるだけでよいが、後者の場合には、内蔵物16自体は定形を持っていないので、先に準備した外被14の中にビーズを詰め込むという手順で抱擁体10を作ることになる。いずれの場合にも、抱擁体10すなわち内蔵物16は弾性を持っていても、弾性を持っていなくてもよい。しかしながら、重すぎないことが望ましいので、発泡樹脂などが内蔵物16の材料として好適する。
さらに、内蔵物16として、抱擁体10の外観、形状と同型の合成樹脂やゴムの袋に気体や液体を入れた、風船や水風船などを利用することも考えられる。
このような抱擁体10の、人間の頭に相当する部分すなわち頭部12aの側面、実施例では右側面には、ポケット18が形成される。このポケット18は、図3(C)に示すように、FM受信機20をその中に収納するためのものである。そして、FM受信機20は、ポケット18に対して容易に出し入れすることが出来る。したがって、講話システム100の管理者は、FM受信機20に対する電池の入れ替えなどのメンテナンス作業を容易に行うことが出来る。
抱擁体10の頭部12aとその下の胴体部12bとの間にはくびれ部22が形成されていて、このくびれ部22は、頭部12aの変位を可能にするためのものである。たとえば、頭部12aを聴取者の頭の方に引き寄せるように変位させることによって、頭部12aのポケット18に収納されているFM受信機20を聴取者の耳に近接させることが出来る。つまり、ポケット18は、抱擁体10が聴取者に抱擁されている状態では、聴取者の耳元に近接する位置に設けられている。
聴取者は、図4に示すように、右腕および左腕を抱擁体10の背面に回る様に抱擁する。これにより、抱擁体10の正面側が聴取者の正面に密着しかつ抱擁体10の背面にしっかりと両腕が回された状態になる。そして、聴取者の耳元に、FM受信機20が収納されたポケット18が近接した状態になる。これにより、聴取者は、FM受信機20から出力される話者の声を身近に聞くことが出来る。また、聴取者は、自分の体に抱擁体10が密着することによって安心感を得て、それによって癒しを実感する。したがって、聴取者は、抱擁体10を抱擁するだけで、癒しを実感しながら、話者の声を身近に聞くことが出来る。
以上の説明から分かるように、本実施例では、抱擁体10を抱擁することで得られる癒しの効果によって、聴取者は、話者の声へ注意を集中するための心理的な余裕を得ることが出来る。したがって、複数の聴取者は集中して話を聞くことが出来る。
ここで、発明者等は、小学校に入学する前の35人の子ども(聴取者)に対して、抱擁体10を抱擁した状態の子ども達に話者が読み聞かせを行った場合と、抱擁体10を抱擁していない状態の子ども達に話者が読み聞かせを行った場合とを比較する実験を行った。
実験結果によれば、抱擁体10を抱擁した状態の子ども達は、読み聞かせが始まってからしばらくして抱擁体10を離してしまう子どももいたが、全体を通して常時、半数以上の子どもが抱擁体10からの声に耳を傾けていた。これに対して、抱擁体10を抱擁していない状態の子ども達は、話者の話に興味をなくして、歩き回ったり、周囲の子どもと遊び始めたりと注意が分散ししてしまう子どもと、話者の話に集中する子どもとに分かれていた。
このような発明者等の実験結果からは、抱擁体10を抱擁した状態の子ども達の方が、話者の読み聞かせに集中していたと考えられ、本願発明の効果が十分に発揮されたと考えられる。
また、他の実施例では、図5に示すように、マイク30に代えて、語りかける話を記録することで作成されたコンテンツを再生することが可能なPC(再生手段)40がFM送信機32に接続されてもよい。たとえば、英単語、九九および百人一首などを読み上げる教材のコンテンツは、CDなどの光学ディスクに予め記録されている。
システムの管理者がPC40を利用してこのような光学ディスクを再生すると、教材のコンテンツの音声に応じた音声信号がFM送信機32から送信される。そして、複数の聴取者の各々が抱擁している抱擁体10では、その抱擁体10のポケット18に収納されているFM受信機20から教材のコンテンツの音声が出力される。その結果、複数の聴取者の各々は、再生された教材のコンテンツの音声を身近に聞くことが出来る。
このように、語りかける話は、話者がリアルタイムに話す必要はなく、予め記録しておくことが出来る。そして、管理者は、多人数の聴取者または管理者の都合に合わせて、任意の時間に語りかける話のコンテンツを再生して、複数の聴取者にコンテンツの音声を聞かせることが出来る。特に、上述したように、講話システム100は容易に構築できるため、管理者は任意の場所でコンテンツを再生することも可能である。
また、本実施例の「話」には、話者が話すものだけでなく、コンテンツによって再生されるものも含まれる。さらに、「話」の内容も、物語や、話者が演じる演目に関するものだけでなく、英単語、九九および百人一首などのように、個々の単語またはフレーズに意味を持つものの羅列であってもよい。
なお、コンテンツには、音声だけを含むものと、音声と画像とを含むものとの両方が含まれる。コンテンツに音声と画像とが含まれている場合は、コンテンツの音声に応じた音声信号だけがFM送信機32に出力されることになる。また、このような場合は、大画面のディスプレイなどにコンテンツの画像を大きく表示することで、複数の聴取者に対してコンテンツの画像を略同時に見せてもよい。また、複数の聴取者の各々または複数の聴取者をいくつかに分けたグループに対してディスプレイを割り当てることで、コンテンツの画像を複数の聴取者に略同時に見せてもよい。
また、コンテンツが記憶される光学ディスクは、CD以外に、DVD,BDなどの光学ディスクであってもよい。また、この光学ディスクは、PC40などの汎用再生機ではなく、CDプレーヤや、DVDプレーヤなどの専用再生機で再生されてもよい。
さらに、コンテンツは、光学ディスク(光学記憶媒体)ではなく、フレキシブルディスク(磁気記憶媒体)や、USBメモリおよびメモリカードなどの記憶媒体に記録されていてもよい。また、これらの記憶媒体に記憶されているコンテンツが、PC40のHDDまたはSSDなどの記憶媒体に移されてもよい。さらに、コンテンツはサーバなどからネットワークを通じてPC40などの再生手段に配信されてもよい。
次に、その他の実施例では、図6に示すように、マイク30やPC40に代えて、ミキサ50がFM送信機32に接続される。ミキサ50には、2つのマイク30および1台のPC40が接続される。ミキサ50は、混合器とも呼ばれ、これらの音声信号出力手段から出力された音声信号を混合し、FM送信機32に出力する。ミキサ50で混合された音声信号はFM送信機32から送信される。そして、各々の抱擁体10のFM受信機20では、混合された音声信号に応じた音声が出力される。その結果、複数の聴取者の各々は、2人の話者の話およびPC40で再生されたコンテンツの音声を身近に聞くことが出来る。つまり、複数の聴取者の各々は、複数の話者による話を、略同時に聞くことが出来る。
たとえば、その他の実施例の講話システム100は、PC40でBGM(background music)のコンテンツを再生した状態で、2人の話者がそれぞれマイク30を持って、劇を演じるときに利用することが出来る。
なお、話者の声を集音するマイク30およびコンテンツなどを再生するPC40は、音声信号出力手段と言われることもある。また、他の音声信号出力手段として、通常の電話回線またはインターネット回線を利用する電話機(IP電話機、TV電話を含む)などが、FM送信機32に接続されてもよい。
また、音声信号は、ネットワーク配信形式を利用して送受信されてもよい。たとえば、マイク30またはPC40などの音声信号出力手段は、たとえばイントラネットなどのネットワークに接続可能な送信手段と接続される。この場合、ネットワークを介して送信された音声信号は、たとえばスマートフォンなどの受信手段によって受信される。そして、複数のスマートフォンの各々は抱擁体10のポケット18に収納され、このようなスマートフォンの各々は、受信した音声信号に応じた音声を出力する。
また、講話システム100における複数のFM受信機20または複数のスマートフォンなどの受信手段は、全て同じ機種である必要はない。たとえば、異なるメーカーの異なる機種であってもよく、送信手段が送信した音声信号を略同時に受信できるものであれば、どのような受信手段が用いられてもよい。また、受信手段がスマートフォンなどの場合は、音声信号を受信するためにインストールされるアプリケーションは、講話システム100の専用アプリケーションであってもよいし、USTREAM(登録商標)などで配信されたコンテンツを受信することが可能なように作られた汎用アプリケーションであってもよい。
また、構成の講話システム100では、話者と複数の聴取者は、同じ部屋に居なくてもよい。たとえば、上述したネットワークを利用する講話システム100では、話者と複数の聴取者とが同じ建屋の異なる部屋に居てもよいし、複数の聴取者の各々または複数の聴取者をいくつかに分けたグループが異なる部屋に居てもよい。
また、音声信号は、2つ以上の異なる形式を利用して略同時に送信されてもよい。たとえば、本実施例のようにFM信号を利用して送受信するものと、ネットワークを介して配信(送受信)するものとを利用して、音声信号が送信される。この場合、1つのマイク30から出力された音声信号が、FM送信機32とネットワークに接続可能な送信手段とにそれぞれ入力される。これにより、音声信号はラジオ放送形式およびネットワーク配信形式をそれぞれ利用して送信されることになる。このように送信された音声信号は、FM受信機20を利用して受信されると共に、スマートフォンなどを利用して受信される。このようにすることで、たとえば話者は、同じ部屋に居る聴取者にはラジオ放送形式を利用して語りかけると共に、異なる部屋に居る聴取者にはネットワーク配信形式を利用して、略同時に語りかけることが出来る。
また、ミキサ50に接続されるマイク30およびPC40の数は、図6に示すものだけに限られず、3本以上のマイク30および2台以上のPC40が接続されてもよい。また、マイク30およびPC40以外の音声信号出力手段が、マイク30およびPC40と同時にミキサ50に接続されてもよい。また、複数の音声出力手段が接続されるミキサ50が音声出力手段と言われることもある。
<第2実施例>
第2実施例では、抱擁体10の姿勢が特定姿勢である場合、FM受信機20から出力される音声の音量を変化させる。以下、第2実施例について説明するが、講話システム100の構成、抱擁体10の外観などは第1実施例と略同じであるため、重複した説明は省略する。
図7は、FM受信機20の外観の一例を示す図解図である。図7を参照して、FM受信機20は縦長の扁平矩形のハウジング60を含む。ハウジング60の主面(表面)には、たとえば液晶や有機ELなどで構成され、表示部として機能するディスプレイ62が設けられる。ディスプレイ62の上には、タッチパネル64が設けられる。さらに、ハウジング60の縦方向一端の主面側にスピーカ66が内蔵される。
たとえば、聴取者は、ディスプレイ62に表示されたソフトキーに対してタッチ操作を行うことで周波数を入力して、所定の周波数で送信されているFM信号を受信し、スピーカ66によってFM信号に基づく音声を聞くことが出来る。
図8を参照して、図7に示すFM受信機20は、コンピュータまたはCPUとも言われるプロセッサ110などを含む。プロセッサ110には、バス112を介して、FM受信回路114、D/A変換器118、表示ドライバ120、メモリ122、タッチパネル制御回路124および加速度センサ126などが接続される。また、FM受信回路114にはFMアンテナ116が接続され、D/A変換器118にはスピーカ66が接続される。
プロセッサ110は、FM受信機20の動作を制御する。メモリ122はROMおよびRAMを含む。ROMには、FM信号の周波数などが記録されている。RAMには、ROMに予め設定されているプログラムの全部または一部が使用に際して展開され、プロセッサ110はこのRAM上のプログラムに従って動作する。また、RAMはさらに、プロセッサ110のワーキング領域ないしバッファ領域として用いられる。
FM受信回路114は、FMアンテナ116を通して、FM信号を受信するための回路である。たとえばFM受信機20の電源がオンにされると、FM送信機32などから送信されたFM信号はFMアンテナ116によって受信される。また、受信されたFM信号には、FM受信回路114によって復調処理および復号処理が施される。
D/A変換器118は、復調処理および復号処理によって得られた受話音声信号、つまりディジタルの音声データをアナログの音声信号に変換して、アンプを介してスピーカ66に与える。したがって、受信したFM信号に基づく音声がスピーカ66から出力される。
表示ドライバ120には図7に示すディスプレイ62が接続され、したがって、ディスプレイ62はプロセッサ110から出力される画像データに従って画像を表示する。表示ドライバ120は表示するためのデータを一時的に記憶するビデオメモリを含んでおり、プロセッサ110から出力されたデータはこのビデオメモリに記憶される。そして、表示ドライバ120は、ビデオメモリの内容に従って、ディスプレイ62に画像を表示する。つまり、表示ドライバ120は、プロセッサ110の指示の下、当該表示ドライバ120に接続されたディスプレイ62の表示を制御する。
タッチパネル制御回路124には、図7に示すタッチパネル64が接続される。タッチパネル制御回路124は、タッチパネル64に必要な電圧などを付与すると共に、タッチパネル64に対するタッチの開始を示すタッチ開始信号、タッチの終了を示す終了信号、およびタッチされたタッチ位置を示す座標データをプロセッサ110に入力する。
タッチパネル64は、その表面と指などの物体(以下、便宜上合わせて指と言う。)との間に生じる静電容量の変化を検出する静電容量方式のタッチパネルである。タッチパネル64は、たとえば1本または複数本の指がタッチパネル64に触れたことを検出する。したがって、聴取者は、タッチパネル64の表面に対してタッチ操作を行うことで、操作位置や、操作方向などをFM受信機20に入力する。そのため、タッチパネル64はポインティングデバイスと言われることがある。
なお、タッチ操作には、タップ操作、ロングタップ操作、フリック操作、スワイプ(スライド)操作などが含まれる。また、タッチ操作は聴取者の指だけに限らず、スタイラスペンなどによって行われてもよい。
加速度センサ126は、検出手段とも言われ、FM受信機20の傾きや動きを検出する。たとえば、加速度センサ126は、FM受信機20における3軸(X,Y,Z)方向の加速度を検出する。また、加速度センサ126は、重力を検出することで上述した3軸(X,Y,Z)の回転(角速度)も検出することが可能である。そして、プロセッサ110は、加速度センサ126が出力する3軸の角速度および3軸方向の加速度に基づいて、FM受信機20の傾きや、動きを検出する。
図9はFM受信機20の加速度センサ126によって検出される加速度の3つの軸の一例を示す図解図である。図9に示す姿勢のFM受信機20に対して横方向がX軸となり、FM受信機20に対して縦方向がY軸となり、FM受信機20の裏側から表側の方向がZ軸となる。そして、第2実施例の加速度センサ126は、これらのXYZ軸方向の加速度を検出すると共に、各軸周りの回転角を検出する。
また、第2実施例では、X軸の回転角をピッチ角と言い、Y軸の回転角をロール角と言い、Z軸の回転角をヨー角と言う。これらのピッチ角、ヨー角およびロール角は、加速度センサ126によって検出される重力および加速度を利用して算出される。
図10(A)を参照して、FM受信機20は、ハウジング60の上部が上側となり、かつ主面側に内蔵されているスピーカ66が聴取者の顔に向くように、抱擁体10のポケット18に収納される。これにより、図10(B)に示すように抱擁体10が聴取者によって抱擁されると、スピーカ66(ポケット18)が聴取者の顔(耳)に近接した状態となる。
第2実施例では、特定姿勢として、抱擁体10が聴取者から離された姿勢が検出された場合、出力されている音声の音量が下げられる。以下、音量を下げる処理について具体的に説明する。
図11を参照して、FM受信機20は、ポケット18に収納されている状態では、縦向きの状態となる。ピッチ角θpは、図11の状態で「0度」となる。また、ハウジング60の上端が後ろ側に倒れるにつれて、つまり抱擁体10が聴取者から離されるにつれてピッチ角θpは大きくなり、主面が上側を向く水平状態でピッチ角θpは「90度」となる。一方、ハウジング60の上端が前側に倒れるにつれて、つまり抱擁体10が聴取者側に傾けられるにつれてピッチ角θpは小さくなり、主面が下側を向く水平状態でピッチ角θpは「−90度」となる。なお、ハウジング60の上端が下側を向いた状態、つまり抱擁体10の上下が逆さまになった状態では、ピッチ角θpは「180度」または「−180度」となる。そして、このピッチ角θpが数1に示す第1角度範囲となった場合、音声の音量を下げる処理が実行される。
[数1]
第1角度範囲:40<θp<180
図12を参照して、抱擁体10が聴取者から離された姿勢にされてピッチ角θpが大きくなり、ピッチ角θpが第1角度範囲に入ると、音声の音量が下げられる。たとえば、聴取者は、FM受信機から出力される音声がうるさい場合、自身から抱擁体10を離すことが想定される。そして、第2実施例では、聴取者は図12に示すように抱擁体10を自身から離すだけで、FM受信機20から出力される音声の音量を下げることが出来る。
次に、特定姿勢として、抱擁体10を聴取者側に傾ける姿勢が検出された場合、出力されている音声の音量が上がる。具体的には、上述したピッチ角θpが数2に示す第2角度範囲となった場合、音声の音量を上げる処理が実行される。
[数2]
第2角度範囲:−20>θp>−180
図13を参照して、聴取者が抱擁体10を自分側に傾け、抱擁体10が聴取者側に傾いた姿勢にされてピッチ角θpが小さくなり、ピッチ角θpが第2角度範囲に入ると、音声の音量が上げられる。つまり、聴取者は、音量を下げたときとは逆の方向に抱擁体10を傾けることで、音声の音量を上げることが出来る。これにより、音声が聞き取りづらい場合、聴取者は容易に音量を上げることが出来る。
また、抱擁体10が聴取者から離された姿勢が維持されている場合、所定時間(たとえば、2秒)が経過する毎に、音量が連続して下げられる。そして、抱擁体10を元の姿勢、たとえば図10(B)に示す姿勢に戻ると、音声を下げる処理は実行されなくなる。
一方、抱擁体10を聴取者側に傾ける姿勢が維持されている場合、所定時間が経過する毎に、音量が連続して上げられる。そして、抱擁体10の姿勢が元の姿勢に戻されると、音量を上げる処理は実行されなくなる。
このように、聴取者は、抱擁体10の特定姿勢を維持することで、所望の音量になるまで、音声の音量を調整することが出来る。
なお、図12に示す姿勢だけでなく、聴取者が顔を抱擁体10に密着させた状態で、図12に示す方向に抱擁体10を傾けた(倒した)場合でも、音量は下げられる。この場合、聴取者は、音声の音量の変化を確認することが出来るため、所望の音量となったところで抱擁体10の姿勢を戻しやすくなる。
次に、特定姿勢として、抱擁体10が抱擁されていない姿勢が検出された場合、音量は最低値に設定される。以下、音量を最低値に設定する処理について具体的に説明する。
図14を参照して、ロール角θrは、図14の状態で「0度」となり、ハウジング60の左側を持ち上げるように回転させるにつれてロール角θrは大きくなり、ハウジング60の左側が上を向いた状態でロール角θrは「90度」となる。一方、ハウジング60の右側を持ち上げるように回転させるにつれてロール角θrは小さくなり、ハウジング60の右側が上を向いた状態でロール角θrは「−90度」となる。なお、ハウジング60の主面が下側を向いた位状態では、ロール角θrは「180度」または「−180度」となる。
そして、抱擁体10が図15に示すように置かれている場合、ロール角θrは約90度(約−90度)となる。そこで、第2実施例では、90度の絶対値を中心とした±40度の角度範囲を第3角度範囲とする。そして、ロール角θrが数3に示す第3角度範囲となった場合、音声の音量は最低値(たとえば、0)となるように設定される。
[数3]
第3角度範囲:130>|θr|>50
図15を参照して、聴取者が抱擁体10を離して、抱擁体10を床などに置くと、ロール角θrが約90度となりロール角θrが第3角度範囲に入ると、音声の音量が最低値となるように設定される。抱擁体10が床などに置かれた場合は、聴取者はFM受信機20から出力される音声を聞くつもりがないと考えられるため、FM受信機20から音声が出力されないようにされる。これにより、聴取者によって抱擁されていない抱擁体10(FM受信機20)から出力される音声が他の聴取者に影響を与えないようにすることが出来る。
以上の説明から分かるように、抱擁体10が聴取者から離されたり、聴取者側に傾けられた、床に置かれたりすると、音声の音量が下げられたり、音量が上げられたり、音声の出力が停止されたりする。つまり、聴取者は、特定姿勢となるように抱擁体10を抱擁するだけで、音量を任意に調整することが出来る。
上述では第2実施例の特徴を概説した。以下では、図16に示すメモリマップおよび図17、図18に示すフロー図を用いて本実施例について詳細に説明する。
図16はFM受信機20のメモリ122のメモリマップの一例を示す図解図である。図16に示すように、メモリ122はプログラム記憶領域302およびデータ記憶領域304を含む。プログラム記憶領域302には、出力される音声の音量を制御するための音量制御プログラム310などが記憶される。なお、図示は省略するが、FM受信機20を動作させるためのプログラムには、ディスプレイ62の表示を制御するためのプログラムなども含まれる。
データ記憶領域304には、加速度バッファ330、姿勢バッファ332、音量バッファ334および姿勢カウンタ336などが設けられる。
加速度バッファ330には、加速度センサ126から出力された加速度のデータが一時的に記憶される。姿勢バッファ332には、加速度バッファ330に記憶される加速度のデータなどに基づいて算出されたピッチ角θp、ロール角θrおよびヨー角θyが一時的に記憶される。音量バッファ334には、音量を示す値(以下、「音量値」と言う。)が一時的に記憶されている。なお、音声を出力する際には、音量バッファ334に記憶されている音量値が参照される。
姿勢カウンタ336は、FM受信機20(抱擁体10)の姿勢が維持されているかを計測するためのカウンタであり、初期化されるとカウントを開始し、カウントを開始してから所定時間が経過すると満了する。また、姿勢カウンタ336は姿勢タイマと言われることもある。
なお、図示は省略するが、データ記憶領域304には、様々な計算の結果を一時的に格納するバッファおよびFM受信機20の動作に必要な他のカウンタおよびフラグなども設けられる。
FM受信機20のプロセッサ110は、android(登録商標)などのOSの制御下で、図17および図18に示す音量制御処理などを含む、複数のタスクを処理する。
図17は音量制御処理の一部のフロー図である。たとえば、FM受信機20の電源がオンにされると、音量制御処理が実行される。
音声制御処理が実行されると、プロセッサ110はステップS1で、音量の初期値を設定する。つまり、音量バッファ334に対して、音量の初期値が記憶される。続いて、ステップS3でプロセッサ110は、ピッチ角θpが第1角度範囲か否かを判断する。たとえば、図12に示すように抱擁体10が聴取者から離された姿勢であるかが判断される。具体的には、姿勢バッファ332からピッチ角θpが読み出され、そのピッチ角θpが数1に示す第1角度範囲内に含まれているかが判断される。ステップS3で“YES”であれば、つまり抱擁体10が聴取者から離された姿勢である場合、ステップS5でプロセッサ110は、音量を下げる。たとえば、音量バッファ334に記憶されている音量値がディクリメント(−1)される。続いて、ステップS7でプロセッサ110は、姿勢タイマをオンにする。つまり、姿勢カウンタ336が初期化され、抱擁体10が聴取者から離された姿勢が維持されている時間の計測が開始される。
続いて、ステップS9でプロセッサ110は、姿勢タイマが満了したか否かを判断する。つまり、プロセッサ110は、抱擁体10が聴取者から離された姿勢のまま所定時間が経過したかを判断する。ステップS9で“YES”であれば、つまり抱擁体10が聴取者から離された姿勢のまま所定時間が経過すると、プロセッサ110はステップS5の処理に戻る。つまり、音量が再び下げられる。
一方、ステップS9で“NO”であれば、抱擁体10が聴取者から離された姿勢のまま所定時間が経過していなければ、ステップS11でプロセッサ110は、姿勢が変化したか否かを判断する。つまり、抱擁体10(FM受信機20)の姿勢が変化し、加速度バッファ330に記憶される加速度のデータが変化したかが判断される。ステップS11で“NO”であれば、つまり抱擁体10の姿勢が変化していなければ、プロセッサ110はステップS9の処理に戻る。つまり、抱擁体10が聴取者から離された姿勢のまま所定時間が経過したかが再び判断される。
一方、ステップS11で“YES”であれば、つまり抱擁体10の姿勢が変化すれば、ステップS13でプロセッサ110は、音声の出力が停止したか否かを判断する。たとえば、FM信号が受信されなくなったかが判断される。ステップS13で“YES”であれば、たとえばFM信号が受信されなくなると、プロセッサ110は音量制御処理を終了する。
また、ステップS13で“NO”であれば、たとえばFM信号が受信されており、音声の出力が停止していなければ、ステップS3の処理に戻る。
ステップS3で“NO”であれば、つまり抱擁体10が聴取者から離された姿勢でなければ、ステップS15でプロセッサ110は、ピッチ角θpが第2角度範囲か否かを判断する。たとえば、図13に示すように抱擁体10を聴取者側に傾けた姿勢であるかが判断される。具体的には、姿勢バッファ332からピッチ角θpが読み出され、そのピッチ角θpが数2に示す第2角度範囲内に含まれているかが判断される。ステップS15で“YES”であれば、つまり抱擁体10を聴取者側に傾けた姿勢であれば、ステップS17でプロセッサ110は、音量を上げる。たとえば、音量バッファ334に記憶されている音量値をインクリメント(+1)する。続いて、ステップS19でプロセッサ110は、姿勢タイマをオンにする。つまり、姿勢カウンタ336が初期化され、抱擁体10を聴取者側に傾けた姿勢が維持されている時間の計測が開始される。
続いて、ステップS21でプロセッサ110は、姿勢タイマが満了したか否かを判断する。つまり、プロセッサ110は、抱擁体10を聴取者側に傾けた姿勢のまま所定時間が経過したかを判断する。ステップS21で“YES”であれば、つまり抱擁体10を聴取者側に傾けた姿勢のまま所定時間が経過すると、プロセッサ110はステップS17の処理に戻る。つまり、音量が再び上げられる。
一方、ステップS21で“NO”であれば、つまり抱擁体10を聴取者側に傾けた姿勢のまま所定時間が経過していなければ、ステップS23でプロセッサ110は、ステップS11と同様、姿勢が変化したか否かを判断する。ステップS23で“NO”であれば、つまり姿勢が変化していなければ、プロセッサ110はステップS21の処理に戻る。つまり、抱擁体10を聴取者側に傾けた姿勢のまま所定時間が経過したかが再び判断される。一方、ステップS23で“YES”であれば、つまり抱擁体10の姿勢が変化していれば、プロセッサ110はステップS13の処理に進む。
また、ステップS15で“NO”であれば、つまり抱擁体10を聴取者側に傾けた姿勢でなければ、図18のステップS25でプロセッサ110は、ロール角θrが第3角度範囲か否かを判断する。つまり、抱擁体10が抱擁されていない姿勢であるかが判断される。具体的には、姿勢バッファ332からロール角θrが読み出され、そのロール角θrが数3に示す第3角度範囲内に含まれているかが判断される。ステップS25で“NO”であれば、つまり抱擁体10が抱擁されていない姿勢でなければ、プロセッサ110はステップS13の処理に進む。
一方、ステップS25で“YES”であれば、つまり抱擁体10が抱擁されていない姿勢であれば、ステップS27でプロセッサ110は、音量を最低値に設定する。たとえば、音量バッファ334に記憶される音量値が「0」にされる。
続いて、ステップS29でプロセッサ110は、抱擁された姿勢か否かを判断する。つまり、抱擁体10が再び抱擁されたかが判断される。具体的には、姿勢バッファ332からロール角θrが読み出され、そのロール角θrが数3に示す第3角度範囲内に含まれていないかが判断される。ステップS29で“YES”であれば、たとえば抱擁体10が再び抱擁されると、ステップS31でプロセッサ110は、ステップS1と同様、音量の初期値を設定する。つまり、FM受信機20は、音声を再び出力する。そして、ステップS31の処理が終了すると、プロセッサ110はステップS13の処理に進む。
また、ステップS29で“NO”であれば、たとえば抱擁体10が再び抱擁されていなければ、ステップS33でプロセッサ110は、ステップS13と同様、音声の出力が終了したか否かを判断する。ステップS33で“NO”であれば、つまり音声の出力が停止していなければ、プロセッサ110はステップS29の処理に戻る。
一方、ステップS33で“YES”であれば、たとえば床に抱擁体10が置かれた状態で、FM信号が受信されなくなると、プロセッサ110は音声制御処理を終了する。
なお、ステップS5,S17,S27の処理を実行するプロセッサ110は音量制御手段として機能する。
また、他の実施例の音声制御処理では、ステップS15−S33が省略されてもよい。つまり、抱擁体10が聴取者から離された姿勢では音声の音量を下げるが、他の姿勢では音量が変化しないようにしてもよい。
<第3実施例>
第3実施例では、FM受信機20に代えて、FMラジオ機能を有する携帯電話機200が受信手段として利用される。以下、第3実施例について説明するが、講話システム100の構成、抱擁体10の外観および音量の制御などについては、第1実施例および第2実施例と略同じであるため、重複した説明は省略する。
図19を参照して、第3実施例の携帯電話機200は、一例としてスマートフォン(smartphone)であり、縦長の扁平矩形のハウジング202を含む。
ハウジング202の主面(表面)には、たとえば液晶や有機ELなで構成され、ディスプレイ204が設けられる。ディスプレイ204の上には、タッチパネル206が設けられる。
ハウジング202の縦方向一端の主面側にスピーカ210が内蔵され、縦方向他端の主面側にマイク208が内蔵される。
ハウジング202の主面には、タッチパネル206と共に入力操作手段を構成するハードキーとして、この実施例では、キー214が設けられる。
たとえば、ユーザは、ディスプレイ204に表示されたダイヤルパッドに対して、タッチ操作が行われると電話番号が入力され、通話を開始するソフトキーにタッチ操作がされると音声通話が開始される。通話を終了するためのソフトキーにタッチ操作がされると音声通話が終了する。
また、キー214が操作されると、ディスプレイ204にホーム画面が表示される。ユーザは、その状態でディスプレイ204に表示されているソフトキーに対してタッチ操作を行うことで、任意のアプリケーションを実行することが出来る。
なお、携帯電話機200は、後述するFM受信回路250を有しており、FMラジオ機能などを実行することが可能である。
図20を参照して、図19に示す実施例の携帯電話機200は、コンピュータまたはCPUと呼ばれるプロセッサ230などを含む。プロセッサ230には、バス232を介して、無線通信回路234、A/D変換器238、D/A変換器240、入力装置242、表示ドライバ244、メモリ246、タッチパネル制御回路248、FM受信回路250および加速度センサ254などが接続される。なお、表示ドライバ244、タッチパネル制御回路248およびFM受信回路250については、FM受信機20のものと略同じであるため、詳細な説明は省略する。
プロセッサ230は、携帯電話機200の全体制御を司る。メモリ246はROMおよびRAMを含む。ROMには、コンテンツデータなどが記録されている。RAMには、ROMに予め設定されているプログラムの全部または一部が使用に際して展開され、プロセッサ230はこのRAM上のプログラムに従って動作する。また、RAMはさらに、プロセッサ230のワーキング領域ないしバッファ領域として用いられる。
入力装置242は、図1に示すキー214を含むものである。そのため、キー214に対するキー操作を受け付ける操作受付部を構成する。操作受付部が受け付けたハードキーの情報(キーデータ)はプロセッサ230に入力される。
無線通信回路234は、アンテナ236を通して、音声通話やメールなどのための電波を送受信するための回路である。実施例では、無線通信回路234は、CDMA方式での無線通信を行うための回路である。たとえば、タッチパネル206が受け付けた発呼(音声発信)の操作に基づき、無線通信回路234は、プロセッサ230の指示の下、音声発信処理を実行し、アンテナ236を介して音声発信信号を出力する。音声発信信号は、基地局および通信網を経て相手の電話機に送信される。そして、相手の電話機において音声着信処理が行われると、通信可能状態が確立され、プロセッサ230は通話処理を実行する。
A/D変換器238には図1に示すマイク208が接続され、上述のようにマイク208からの音声信号はこのA/D変換器238でディジタルの音声データに変換され、プロセッサ230に入力される。一方、D/A変換器240にはスピーカ210が接続される。D/A変換器240は、ディジタルの音声データを音声信号に変換して、アンプを介してスピーカ210に与える。したがって、音声データに基づく音声がスピーカ210から出力される。そして、通話処理が実行されている状態では、マイク208によって集音された音声が相手の電話機に送信され、相手の電話機で集音された音声が、スピーカ210から出力される。
加速度センサ254は、検出手段とも言われ、携帯電話機200の傾きや動きを検出する。たとえば、加速度センサ254は、FM受信機20の加速度センサ126と同様、携帯電話機200における3軸(X,Y,Z)方向の加速度を検出する。また、加速度センサ254は、重力を検出することで上述した3軸(X,Y,Z)の回転(角速度)も検出することが可能である。そして、携帯電話機200のプロセッサ230は、加速度センサ254が出力する3軸の角速度および3軸方向の加速度に基づいて、携帯電話機200の傾きや、動きを検出する。
図21は携帯電話機200の加速度センサ254によって検出される加速度の3つの軸の一例を示す図解図である。図21に示す姿勢の携帯電話機200に対して横方向がX軸となり、携帯電話機200に対して縦方向がY軸となり、携帯電話機200の裏側から表側の方向がZ軸となる。そして、第3実施例の加速度センサ254は、これらのXYZ軸方向の加速度を検出すると共に、各軸周りの回転も検出することが可能である。
また、第3実施例でも、X軸の回転角をピッチ角と言い、Y軸の回転角をヨー角と言い、Z軸の回転角をロール角と言う。携帯電話機200のピッチ角、ヨー角およびロール角も、加速度センサ254によって検出される重力および加速度を利用して算出される。
ここで、図22(A)を参照して、第3実施例の携帯電話機200は、第2実施例のFM受信機20と同様、ハウジング202の上部が上側となり、かつ主面側に内蔵されているスピーカ210が聴取者の顔に向くように、抱擁体10のポケット18に収納される。これにより、第2実施例で示した図10(B)と同様、抱擁体10が聴取者によって抱擁されると、スピーカ210(ポケット18)が聴取者の顔(耳)に近接した状態となる。
したがって、第3実施例でも、第2実施例と同様、音声の音量を制御することが出来る。なお、抱擁体10と携帯電話機200の姿勢との関係などについては、第2実施例と略同じであるため詳細な説明は省略する。
なお、第1−第3実施例では、抱擁体10の外観を人のミニマルデザインとすることで、聴取者の注意が抱擁体10に惹かれにくくなり、聴取者が話に集中しやすくなる。ただし、抱擁体10は、抱擁しやすい形状であればよいため、外観が人間のミニマルデザインでなくてもよい。たとえば、抱擁体10の外観は、本体12から腕部12cが省略されたものであってもよい。また、抱擁体10の外観が、動物やキャラクタなどであってもよい。この場合、抱擁体10は人形またはぬいぐるみと言われることもある。また、抱擁体10の大きさは、聴取者の身体の大きさや、年齢に応じて変更されてもよい。
また、抱擁体10に対して、左右の腕を通す腕通し部を設けるようにしてもよい。たとえば、聴取者は、腕通し部に左右の腕を通すことで、頭部12aすなわちFM受信機20の位置が安定的に保持されるので、話者の話を安定的に聞くことが出来るとともに、抱擁体10の頭部12aが聴取者の頬に接触するようになるので、さらなる癒しを聴取者に与えることができる。
また、抱擁体10にヒータを埋め込んで聴取者の腕を温めたり、抱擁体10の頭部12aににおい袋を収納するための別ポケットを設けたり、抱擁体10の内蔵物16の中にバルーンを収納して抱擁体10の硬さを調節したり、抱擁体10の一部または全体が動くようにしたりして、さらなる癒しを聴取者に与えるようにしてもよい。
また、聴取者は、子どもだけに限らず、発達障害をもつ人や、高齢者などであってもよい。たとえば、老人ホームなどの施設で公演などを行う際に、講話システム100の利用が考えられる。
また、本実施例では、FM受信機20とFM送信機32とは無線通信している状態であったが、有線接続されていてもよい。そして、有線接続される場合は、FM受信機20とFM送信機32とは、有線接続に対応する受信手段と送信手段とに変更される。また、マイク30およびFM送信機32についても、有線接続されてもよいし、無線通信が行われてもよい。
また、マイク30、FM送信機32、PC40およびミキサ50の全てまたは一部が1つの装置にまとめられてもよい。
また、図1に示したマイク30はヘッドセット型であったが、話者が手で直接持つようなものであってもよい。
また、抱擁体10にバイブレータなどを内蔵し、任意または全部の抱擁体10のバイブレータを動作せるような制御信号を、話者側から任意に送信できるようにしてもよい。たとえば、集中力が低下している聴取者の抱擁体10のバイブレータを動作させることで、その聴取者の注意を抱擁体10に引き戻して、話者の話に再び集中させるようにしてもよい。
また、講話システム100は、「(多人数)読み聞かせシステム」と言われたり、「セミナーシステム」と言われたりすることもある。
また、第2実施例または第3実施例では、加速度センサに代えて、ジャイロセンサを利用してFM受信機20(携帯電話機200)の姿勢が検出されてもよい。
また、第2実施例または第3実施例では、FM受信機20(携帯電話機200)がポケット18に収納される姿勢は、図10(A)または図22に示すものだけでなくてもよい。たとえば、FM受信機20(携帯電話機200)の上下が逆であったり、左右に傾けられたりしてもよい。この場合、抱擁体10のポケット18に収納された後、音声を出力するタイミングに合わせてFM受信機20の姿勢が初期化される。具体的には、FM受信機20がポケット18に収納される実際の姿勢に関係なく、FM受信機20が図10に示すようにポケット18に入れられた姿勢で出力されるロール角θr、ピッチ角θpおよびヨー角θyと同じ値となるように、角度センサ126の出力が初期化(補正)される。これにより、聴取者等がFM受信機20を任意の姿勢でポケット18に収納したとしても、抱擁体10の特定姿勢が適切に検出される。
また、第2実施例または第3実施例の他の例では、ピッチ角θpまたはロール角θrなどを利用せずに、XYZの各軸の加速度の値の変化量などを利用して、抱擁体10が聴取者から離された姿勢、抱擁体10を聴取者側に傾ける姿勢および抱擁体10が抱擁されていない姿勢などの特定姿勢を検出するようにしてもよい。
また、第2実施例または第3実施例のその他の例では、抱擁体10(FM受信機20)を振るような動作が加速度センサ126の出力に基づいて検出された場合、音声の音量を初期化するようにしてもよい。これにより、聴取者は、音声の音量を任意に変化させたとしても、抱擁体10(FM受信機20)を振ることで、元の音量に戻すことができる。
また、第2実施例または第3実施例の特定姿勢には、抱擁体10を聴取者の正面側に傾ける姿勢などが含まれていてもよい。たとえば、抱擁体10を聴取者の正面側に傾ける姿勢が検出された場合も、音声の音量が下げられる。
そして、本明細書中で挙げた、具体的な数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様変更などに応じて適宜変更可能である。