JP6745055B2 - サージ防護素子 - Google Patents

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Description

本発明は、落雷等で発生するサージから様々な機器を保護し、事故を未然に防ぐのに使用するサージ防護素子に関する。
電話機、ファクシミリ、モデム等の通信機器用の電子機器が通信線との接続する部分、電源線、アンテナ或いはCRT、液晶テレビおよびプラズマテレビ等の画像表示駆動回路等、雷サージや静電気等の異常電圧(サージ電圧)による電撃を受けやすい部分には、異常電圧によって電子機器やこの機器を搭載するプリント基板の熱的損傷又は発火等による破壊を防止するために、サージ防護素子が接続されている。
従来、例えば特許文献1に示すように、一対の封止電極から対向状態に突出した一対の突出電極部を備え、絶縁性管の内面に放電補助部が形成されたアレスタ型のサージ防護素子が記載されている。このサージ防護素子では、一対の突出電極部の対向面に略直方体状の多数の穴部が略マトリクス状に配置形成され、各穴部内面に、五酸化バナジウム−酸化亜鉛−酸化バリウム−二酸化テルル系ガラスが含有された被膜が形成されている。
実用新案登録第3151069号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、従来の構造では、突出電極部におけるアーク放電の到達場所は一定ではなく、突出電極部の外周部に到達する場合がある。また、アーク放電の到達場所は、繰り返し同じ場所に到達する場合がある。このような突出電極部の外周部へのアーク放電の到達又は同じ場所への集中によって、突出電極部の外周部が大きく損傷してしまう不都合があった。特に、サージ印加電流が10kAを超えるような場合は損傷が顕著になってしまう。このような突出電極部の外周部の損傷は、突出電極部を構成する金属が溶融飛散するものであり、金属成分が絶縁性管の内面に付着し、一対の封止電極間の絶縁性を悪化させてしまう問題があった。また、放電開始電圧を低下させ、設定した放電開始電圧の許容域を超えてしまい、サージ防護素子としての機能を喪失してしまうおそれがあった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、アーク放電による突出電極部の外周部の損傷を軽減することができるサージ防護素子を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るサージ防護素子は、絶縁性管と、前記絶縁性管の両端開口部を閉塞して内部に放電制御ガスを封止する一対の封止電極とを備え、一対の前記封止電極が、内方に突出し互いに対向した一対の突出電極部を有し、一対の前記突出電極部の対向面の中央領域に中央凹部が形成され、前記中央凹部内の底面から対向する前記突出電極部に向けて前記中央凹部周囲の前記対向面よりも突出した突起部が形成されていることを特徴とする。
本発明のサージ防護素子では、中央凹部内の底面から対向する突出電極部に向けて中央凹部周囲の対向面よりも突出した突起部が形成されているので、アーク放電の到達場所が中央凹部内の突起部に集中し、突出電極部の外周部の損傷を軽減することができると共に放電開始電圧を安定させることができる。すなわち、対向する突出電極部の対向面からのアーク放電は、突起部周囲の中央凹部や突起部より低い位置となる中央凹部周囲の対向面には到達し難くなるため、突起部に集中する。また、突起部におけるアーク放電の安定した受電により、放電開始電圧の変動幅も小さくなる。
第2の発明に係るサージ防護素子は、第1の発明において、前記中央凹部内の前記突起部の周囲に前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層が形成されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、中央凹部内の突起部の周囲に封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層が形成されているので、放電が到達し難い放電活性層に囲まれることで、さらにアーク放電が突起部に集中し易くなると共に、放電活性層によって繰り返し放電に対する動作電圧の安定性や優れた耐電圧特性などが得られる。
第3の発明に係るサージ防護素子は、第1又は第2の発明において、前記突起部の先端が略球状に形成されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、突起部の先端が略球状に形成されているので、アーク放電が集中する突起部の表面を丸くして角部を無くすことで、耐久性を向上させることができる。
第4の発明に係るサージ防護素子は、第1又は第2の発明において、前記突起部の先端面に先端凹部が形成され、前記先端凹部内に前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層が形成されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、突起部の先端面に先端凹部が形成され、先端凹部内に封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層が形成されているので、対向する突出電極部に近い突起部の放電活性層からも電子が放出されて、動作電圧の安定性等がさらに向上する。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサージ防護素子によれば、中央凹部内の底面から対向する突出電極部に向けて中央凹部周囲の対向面よりも突出した突起部が形成されているので、アーク放電の到達場所が中央凹部内の突起部に集中し、突出電極部の外周部の損傷を軽減することができると共に放電開始電圧を安定させることができる。
したがって、アーク放電の安定した受電により放電開始電圧の変動幅を小さくすることができると共に、電極損傷の低減により素子の高寿命化に寄与し、作動可能なサージ印加数を増加させることが可能になる。さらに、耐量が向上するため、小型化も可能になる。特に、本発明に係るサージ防護素子は、大電流サージ耐性が要求されるインフラ用(鉄道関連、再生エネルギー関連(太陽電池、風力発電等))の電源及び通信設備に好適である。
本発明に係るサージ防護素子の第1実施形態を示す軸方向の断面図である。 本発明に係るサージ防護素子の第2実施形態を示す軸方向の断面図である。 本発明に係るサージ防護素子の第3実施形態を示す軸方向の断面図である。 図3のA−A線矢視断面図である。 本発明に係るサージ防護素子の第4実施形態を示す軸方向の断面図である。 図5のB−B線矢視断面図である。
以下、本発明に係るサージ防護素子の第1実施形態を、図1を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
本実施形態のサージ防護素子1は、図1に示すように、絶縁性管2と、絶縁性管2の両端開口部を閉塞して内部に放電制御ガスを封止する一対の封止電極3とを備えている。
また、本実施形態のサージ防護素子1は、絶縁性管2の内周面にイオン源材料で形成された放電補助部4を備えている。
上記一対の封止電極3は、内方に突出し互いに対向した一対の突出電極部5を有している。
また、上記一対の突出電極部5の対向面5bの中央領域には、中央凹部5aが形成され、中央凹部5a内の底面から対向する突出電極部5に向けて中央凹部5a周囲の対向面5bよりも突出した突起部5cが形成されている。
上記中央凹部5a内の突起部5cの周囲には、封止電極3の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層8が形成されている。
上記放電活性層8は、例えばSi,Oを主成分元素とし、Na,Cs,Cのうちの少なくとも一つを含んでいる。この放電活性層8は、例えばケイ酸ナトリウム溶液に炭酸セシウム粉末を加えて前駆体を作製し、この前駆体を中央凹部5a内に塗布した後、前駆体に対してケイ酸ナトリウムが軟化する温度以上かつ炭酸セシウムが融解及び分解する温度以上の温度で熱処理を行うことで作製される。
上記放電補助部4は、導電性材料であって、例えば炭素材で形成された放電補助部である。
なお、本実施形態では、放電補助部4は、絶縁性管2の内周面に軸線Cに沿って直線状に形成されている。
また、図1では、放電補助部4を軸線Cに沿った1本のみ図示しているが、周方向に互いに間隔を空けて複数本形成しても構わない。
上記封止電極3は、例えば42アロイ(Fe:58wt%、Ni:42wt%)やCu等で構成されている。
封止電極3は、絶縁性管2の両端開口部に導電性融着材(図示略)により加熱処理によって密着状態に固定されている円板状のフランジ部7を有している。このフランジ部7の内側に、内方に突出していると共に絶縁性管2の内径よりも外径の小さな円柱状の突出電極部5が一体に設けられている。
上記絶縁性管2は、アルミナなどの結晶性セラミックス材である。なお、絶縁性管2は、鉛ガラス等のガラス管で形成しても構わない。
上記導電性融着材は、例えばAgを含むろう材としてAg−Cuろう材で形成されている。
上記絶縁性管2内に封入される放電制御ガスは、不活性ガス等であって、例えばHe,Ar,Ne,Xe,Kr,SF,CO,C,C,CF,H,大気等及びこれらの混合ガスが採用される。
上記中央凹部5aは、軸線Cを中心に円形に形成され軸方向断面が矩形状とされた凹部である。
上記突起部5cは、軸方向断面が矩形状とされ中央凹部5aの深さより長い円柱状に形成されており、突出電極部5の軸線C上に設けられている。
このサージ防護素子1では、過電圧又は過電流が侵入すると、まず放電補助部4と突出電極部5との間で初期放電が行われ、この初期放電をきっかけに、さらに放電が進展して、図1に図示する二点鎖線の矢印のように、一方の突出電極部5の対向面5bの各所から他方の突出電極部5の突起部5cへアーク放電が行われる。
このように本実施形態のサージ防護素子1では、中央凹部5a内の底面から対向する突出電極部5に向けて中央凹部5a周囲の対向面5bよりも突出した突起部5cが形成されているので、アーク放電の到達場所が中央凹部5a内の突起部5cに集中し、突出電極部5の外周部の損傷を軽減することができると共に放電開始電圧を安定させることができる。
すなわち、対向する突出電極部5の対向面5bからのアーク放電は、突起部5c周囲の中央凹部5aや突起部5cより低い位置となる中央凹部5a周囲の対向面には到達し難くなるため、突起部5cに集中する。また、突起部5cにおけるアーク放電の安定した受電により、放電開始電圧の変動幅も小さくなる。
また、中央凹部5a内の突起部5cの周囲に封止電極3の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層8が形成されているので、放電が到達し難い放電活性層8に囲まれることで、さらにアーク放電が突起部5cに集中し易くなると共に、放電活性層8によって繰り返し放電に対する動作電圧の安定性や優れた耐電圧特性などが得られる。
次に、本発明に係るサージ防護素子の第2から第4実施形態について、図2から図6を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、突起部5cが、軸方向断面が矩形状とされた円柱状に形成されているのに対し、第2実施形態のサージ防護素子21は、図2に示すように、突起部25cの先端が略球状に形成されている点である。
すなわち、第2実施形態では、封止電極23における突出電極部25の中央凹部5a内に、先端が略球状に丸く形成された略円柱状の突起部25cが設けられている。
このように第2実施形態のサージ防護素子21では、突起部25cの先端が略球状に形成されているので、アーク放電が集中する突起部25cの表面を丸くして角部を無くすことで、耐久性を向上させることができる。
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、中央凹部5aの中心に1本の略円柱状の突起部25cが立設されているのに対し、第3実施形態のサージ防護素子31では、図3及び図4に示すように、中央凹部5aの中央に円筒状に突出した突起部35cが形成されている点である。
すなわち、第3実施形態では、突起部35cが封止電極33及び突出電極部35の軸線Cを中心とした円筒状に形成され、突起部35c内の中央凹部5a底面にも放電活性層8が形成されている。
この第3実施形態のサージ防護素子31でも、第2実施形態と同様に、突起部35cにアーク放電が集中し、突出電極部35の外周部の損傷を軽減することができると共に放電開始電圧を安定させることができる。なお、突起部35cは、第2実施形態の突起部25cよりも先端部が円環状とされていることから、アーク放電に対する高い耐久性が得られる。
次に、第4実施形態と第3実施形態との異なる点は、突起部35cが円筒状に形成され、突起部35c内の中央凹部5a底面にも放電活性層8が形成されているのに対し、第4実施形態のサージ防護素子41では、図5及び図6に示すように、突起部45cの先端面に先端凹部45dが形成され、先端凹部45d内に封止電極43の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層8が形成されている点である。
すなわち、第4実施形態では、突起部45cが略円柱状に形成され、その先端面に突起部45cの突出量より浅い先端凹部45dが円形状に形成されている。したがって、この先端凹部45dの底面は、対向面5bよりも対向する突出電極部45に近くなっている。
このように第4実施形態のサージ防護素子41では、突起部45cの先端面に先端凹部45dが形成され、先端凹部45d内に封止電極43の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層8が形成されているので、対向する突出電極部45に近い突起部45cの放電活性層8からも電子が放出されて、動作電圧の安定性等がさらに向上する。
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態および上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1実施形態では、中央凹部内に1本の突起部が立設されているが、中央凹部内に複数本の突起部を設けても構わない。この場合でも、アーク放電は、中央凹部内の複数本の突起部に集中するため、突出電極部の外周面の損傷を軽減することが可能になる。
1,21,31,41…サージ防護素子、2…絶縁性管、3…封止電極、4…放電補助部、5…突出電極部、5a…中央凹部、5b…突出電極部の対向面、5c…突起部、8…放電活性層、45d…先端凹部

Claims (2)

  1. 絶縁性管と、
    前記絶縁性管の両端開口部を閉塞して内部に放電制御ガスを封止する一対の封止電極とを備え、
    一対の前記封止電極が、内方に突出し互いに対向した一対の突出電極部を有し、
    一対の前記突出電極部の対向面の中央領域に中央凹部が形成され、
    前記中央凹部内の底面から対向する前記突出電極部に向けて前記中央凹部周囲の前記対向面よりも突出した突起部が形成され
    前記突起部の先端面に先端凹部が形成され、
    前記先端凹部内に前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層が形成されていることを特徴とするサージ防護素子。
  2. 請求項1に記載のサージ防護素子において、
    前記中央凹部内の前記突起部の周囲に前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で放電活性層が形成されていることを特徴とするサージ防護素子。
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