ここでは、溶融樹脂を原料に用いる電界紡糸装置を例にとって説明する。図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る電界紡糸装置10では、樹脂液吐出装置20によって吐出した樹脂液が、樹脂流通路43を流通し、導電体製ノズル31の先端部から繊維状樹脂となって紡出される。導電体製ノズル31は、当該ノズル31を覆うように配された電極32によって電極に印加された電圧と反対の極性の電荷によって帯電しているため、電極とノズルの間には電界が形成され、特に、電極に対して相対的に小さい表面積を有するノズル周囲には、強い電界を形成する。この強い電界中に紡出した繊維状樹脂も強く帯電し、帯電した繊維状樹脂は静電反発によって、より微細な繊維状樹脂となる。樹脂吐出装置部品21に設けられた気体導入口23から加熱気体が導入される。加熱気体は、電気的絶縁部40の気体流通路44を流通し、電気的絶縁部40の導電体製ノズル31側の先端に設けられた複数個の気体噴出孔(図示せず)から噴出するようになっている。噴出した加熱気体は、導電体製ノズル31から紡出された繊維状樹脂を、繊維の捕集部である捕集用電極60まで搬送するための、搬送流として利用される。本実施形態に係る電界紡糸装置10は、加熱気体による搬送流の速度が速くなる事により、搬送流によって発生するノズル先端部の垂直面近傍の負圧がノズル内部の樹脂液を引き出す現象を解消して、樹脂液の紡出が不安定になるのを効果的に回避できるようにする機能を備えている。
そして、本実施形態の電界紡糸装置10は、図1に示すように、樹脂液を吐出する樹脂液吐出装置20と、樹脂液吐出装置20から吐出された樹脂液を紡出する導電体製ノズル31と、導電体製ノズル31との間に電界を生じさせるための電極32と、導電体製ノズル31又は電極32に電圧を印加する電源装置62と、導電体製ノズル31から紡出された繊維状樹脂を捕集する捕集部60と、導電体製ノズル31の樹脂液紡出口31bの後方から捕集部60に向けて、導電体製ノズル31の軸方向に沿って流れる気流を搬送流として発生する気流発生手段24,23,52,53,44とを有している。電極32が、導電体製ノズル31を囲むように凹曲面が配置された凹曲面電極となっており、導電体製ノズル31は、図4に拡大して示すように、ノズル内流通路31aと、導電体製ノズル31の先端部を貫通して設けられた、ノズル内流通路31aの内径よりも小さな内径を有する、ノズル内流通路31aと連通する樹脂液紡出口31bとを備えている。樹脂液紡出口31bは、導電体製ノズル31の先端部において、導電体製ノズル31の外周面から気流が流れる方向に向けて導電体製ノズル31の中心軸側に傾斜する、先端部傾斜面31dに開口して設けられている。
本実施形態の電界紡糸装置10は、樹脂液吐出装置20を備えている。樹脂液吐出装置20は、繊維の原料となる樹脂を溶融させて吐出させるために用いられる。樹脂液吐出装置20には、一般に、内部にシリンダ(図示せず)を備えている押出機が用いられる。該シリンダ内にはスクリュー(図示せず)が挿入されている。シリンダとスクリューは、樹脂を溶融混練して押し出すための構造となっている。シリンダとスクリューを備えた押出機の種類としては主に、シリンダとスクリューとを一組備えた一軸押出機、シリンダとスクリューとを二組備え混練性能を向上させた二軸押出機がある。樹脂液吐出装置20にはヒーターが備えられており、該ヒーターによってシリンダの壁面が加熱されるようになっている。スクリューの一端は、樹脂液吐出装置20に付設されているか、又は樹脂液吐出装置20の外に別途に設置された駆動源(図示せず)に接続されており、該駆動源の回転によってスクリューはその軸周りに一方向に回転可能になっている。一軸押出機の場合、樹脂液吐出装置20にはホッパー(図示せず)が付設されており、該ホッパー内には繊維の原料となる樹脂が充填されるようになっている。ホッパーはシリンダと連通している。ホッパー内に充填されたペレット状又は粉末状等の原料樹脂は、スクリューの回転に連れて徐々にシリンダ内に供給される。樹脂液の吐出量はスクリューの回転数によって決まる。二軸押出機の場合には、一般的に押出機へ原料樹脂を供給するフィーダーが必要となり、フィーダーの供給量によって樹脂液の吐出量が決まる。どちらの種類の押出機においても、シリンダ内に供給されたペレット状又は粉末状等の原料樹脂は、シリンダの内壁とスクリューとの間で熱及び圧力を受けて次第に溶融しながら、スクリューの回転軸方向に向けて前進する。樹脂液吐出装置20は、この熱及び圧力に耐え得る材料から構成されており、一般に金属製である。つまり導電性の材料から構成されている。また、樹脂液吐出装置としては、前記押出機の樹脂液吐出側にギヤポンプを接続し、樹脂液吐出の定量性を一層向上させたものもある。この場合のギヤポンプも、前記の理由によって一般に金属製であり、つまり導電性の材料から構成されている。
樹脂液吐出装置20の先端側、すなわち樹脂液が吐出される側の先端には、該樹脂液吐出装置20の一部をなす樹脂吐出装置部品21が、該樹脂液吐出装置20に接続された状態で配置されている。樹脂吐出装置部品21は、その内部に貫通孔22が形成されている。貫通孔22の一端は、樹脂液吐出装置20のシリンダ(図示せず)と連通している。また、樹脂吐出装置部品21は、その側面に気体導入口23を有している。気体導入口23には、電界紡糸装置10の外部に設置された気体供給源24から供給された気体が流入するようになっている。樹脂吐出装置部品21は、樹脂液吐出装置20と同様に金属製である。つまり導電性の材料から構成されている。
上述のとおり、樹脂吐出装置部品21の気体導入口23には、電界紡糸装置10の外部に設置された気体供給源24から気体が供給される。気体としては、樹脂液からの繊維形成に影響を及ぼさないものであれば、その種類に特に制限はない。一般的には空気を用いることが簡便である。気体導入口23に供給される気体供給源24としては、加熱気体供給源を用いることができる。該加熱気体供給源24から供給された加熱気体は、気体導入口23を通じて、後述する電気的絶縁部40に設けられた気体流通路44に導入されるようになっている。気体導入口23に供給される気体供給源24としては、室温気体供給源を用いることもできる。この場合にも、該室温気体供給源24から供給された室温気体は、気体導入口23を通じて、電気的絶縁部40に設けられた気体流通路44に導入されるようになっている。本発明において室温とは、40℃又はそれ以下の温度のことをいう。
加熱気体供給源と室温気体供給源とは、それらのうちのいずれか一方のみを用いることができ、あるいは両方を用いることもできる。両方の供給源を用いる場合には、これらの供給源と気体導入口23とを三方弁等の流路切り替え手段(図示せず)で接続し、室温気体供給源と加熱気体供給源とが択一的に気体流通路44に導入可能になるようにすることが好ましい。また、室温気体供給源は用いず、加熱気体供給源のみを用い、且つ該加熱気体供給源の加熱部を作動させずに気体を供給することで室温気体供給源とすることもできる。この形態は、設備を簡略化する観点でより好ましい。
電界紡糸装置10は紡糸部30を備えている。紡糸部30は、導電体製ノズル31を備えている。導電体製ノズル31については、後に詳述する。
紡糸部30は、導電体製ノズル31に加えて電極32を備えている。電極32は、電気絶縁性材料からなる支持部材37によって、その外面が支持されている。電極32は、導電体製ノズル31との間に電界を生じさせ、導電体製ノズル31を帯電させるために用いられる。導電体製ノズル31の帯電量を増加させる目的で、電極32は、導電体製ノズル31を囲むように凹曲面が配置された凹曲面電極から構成されている。詳細には、電極32は、その内面に凹曲面32aを備えている。電極32は、その内面が凹曲面32aとなっている限りにおいて、その全体の形状はいかなるものであってもよい。図1に示す凹曲面32aは略椀形をしている。凹曲面32aは導電性材料から構成されており、一般には金属製である。
略椀形をしている凹曲面32aをその開口端側から見たとき、該開口端は円形をしている。この円形は、真円形でもよく、あるいは楕円形でもよい。導電体製ノズル31の先端に電荷を集中させて導電体製ノズル31の帯電量を高める観点からは、凹曲面32aの開口端は真円形であることが好ましい。開口端の形状が真円でない場合、該開口端の形状としては、例えば特開2014−95174号公報の図3(a)ないし(d)に示す形状とすることができる。凹曲面32aの開口端が楕円であるときには、楕円に内接する円C1の直径D1と、該楕円に外接する円C2の直径D2との比であるD1/D2の値が9/16以上であることが好ましく、3/4以上であることが更に好ましく、4/5以上であることが更に好ましい。
凹曲面32aは、そのいずれの位置においても曲面になっていることが好ましい。ここで言う曲面とは、(イ)平面部を全く有していない曲面のことであるか、(ロ)平面部を有する複数のセグメントを繋ぎ合わせて全体として凹曲面32aとみなせる形状となっていることであるか、又は(ハ)互いに直交する三軸のうち一軸が曲率を有さない帯状部を有する複数の環状セグメントを繋ぎ合わせて全体として凹曲面とみなせる形状となっていることのいずれかを言う。(ロ)の場合は、例えば縦及び横の長さが0.5mm以上5mm以下程度の四角形又は六角形となっている、同一の又は異なる大きさの平面部を有するセグメントを繋ぎ合わせて凹曲面32aを形成することが好ましい。(ハ)の場合は、例えば半径が種々異なり、且つ高さが0.001mm以上5mm以下である扁平な複数種類の円筒からなる環状セグメントを繋ぎ合わせて凹曲面32aを形成することが好ましい。この環状セグメントにおいては、互いに直交する三軸、すなわちX軸、Y軸及びZ軸のうち、円筒の横断面を含むX軸及びY軸が曲率を有し、且つ円筒の高さ方向であるZ軸が曲率を有していない。
凹曲面32aは、その任意の位置における法線が導電体製ノズル31の先端又はその近傍を通るような値となっていることが好ましい。この観点から、略椀形をしている凹曲面32aは、真球の球殻の内面と同じ形状をしていることが特に好ましい。
特に、電極32の凹曲面32aにおける開口端によって画成される円の半径をrとしたとき、該円を含む平面上に中心を同じくして描かれる、半径がr/5である仮想円を考えた場合、導電体製ノズル31の軸芯は、その延びる方向が、該仮想円の内側と、凹曲面32aにおける最底部とを通るように配置されることが好ましい。とりわけ、前記仮想円として、半径がr/10であるものを考えた場合、導電体製ノズル31の軸芯は、その延びる方向が、半径がr/10である該仮想円の内側と、凹曲面32aにおける最底部とを通るように配置されることが好ましい。更に好ましい形態として、導電体製ノズル31の軸芯は、その延びる方向が、電極32の凹曲面32aにおける開口端によって画成される円の中心と、該凹曲面32aにおける最底部とを通るように配置される形態が挙げられる。
図1に示すとおり、紡糸部30は、導電体製ノズル31及び電極32に加えて、被覆体33を備えている。被覆体33は、電極32の凹曲面32aの全面を被覆していることが好適である。電極32と被覆体33とは直接に接触している。被覆体33において電極32の凹曲面32aを被覆している面は、電極32の凹曲面32aと相補形状を有している。また、被覆体33のうち、外方に露出している面は凹曲面33aをなしている。この凹曲面の曲率は、電極32の凹曲面32aの曲率と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
被覆体33は誘電体からなることが好ましい。誘電体からなる被覆体33を電極32の凹曲面32aに接触して配置することで、導電体製ノズル31の帯電量を一層高めることができる。被覆体はその表面、すなわち内面に誘電体が露出し、該表面に金属などの導電体が非存在とした被覆体であることが好ましい。単一種の誘電体から構成された被覆体がその典型例であるが、被覆体は複数種の誘電体が積層された複合体であってもよいし、表面が誘電体のみで構成されていれば、内部(表面に露出しない部分)に金属の粒子又は空気の層等を含んだ複合体であってもよい。特に電極32と被覆体33の接合部の一部に空気の層が存在していてもよいが、電極と被覆体の接合を強固にする観点からは電極と被覆体は密着している方が好ましい。
被覆体33に使用する誘電体としては、絶縁材料であるマイカ、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム等のセラミックス材料や、ベークライト(フェノール樹脂)、ナイロン(ポリアミド)、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂系材料が挙げられる。これらのうち、アルミナ、ベークライト、ナイロン、塩化ビニル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種以上の絶縁材料を用いることが好ましく、特にナイロンを用いることが好ましい。ナイロンとしては、6ナイロンや66ナイロンなどの各種のポリアミドを用いることができる。またナイロンとして市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、例えばMCナイロン(登録商標)が挙げられる。被覆体33に用いる誘電体には帯電防止剤を含有させることができる。帯電防止剤を含有させることによって、帯電した樹脂液や繊維等が被覆体33に付着したとき、被覆体33の帯電を低減することができる。帯電防止剤としては公知の市販品を使用することができ、例えばペレクトロン(登録商標、三洋化成工業(株))、エレクトロストリッパー(登録商標、花王(株))、リケマール(登録商標 理研ビタミン(株))などを用いることができる。
被覆体33を構成する、表面に露出した誘電体の厚みは、0.8mm以上、特に8mm以上であることが好ましい。これよりも薄いと、樹脂液の帯電量を高められない場合がある。この厚みは、被覆体33が単一種又は複数種の誘電体から構成されている場合、被覆体33の厚みを指す(被覆体33の厚みに等しい)ものとする。また被覆体33が内部(表面に露出しない部分)に金属の粒子又は空気の層等を含んだ複合体である場合は、該被覆体33の厚みから該被覆体33の厚み方向における金属の粒径や空気の層の厚みの合計を差し引いた誘電体のみの厚みを指すものとする。被覆体33の厚みは、電極32の大きさ、及び電極32と導電体製ノズル31との位置関係によるが、少なくとも被覆体33と導電体製ノズル31とが直接接することのない値であることが好ましい。
電界紡糸装置10は、導電体製ノズル31の先端と対向する位置に、繊維の捕集用電極60が配置されている。捕集用電極60は、導電体製ノズル31から紡出された繊維状樹脂を捕集するために用いられる。捕集用電極60は円筒状のものであり、その周面が導電体製ノズル31の先端に臨むように配置されている。捕集用電極60の周面は金属等の導電体、又は捕集用電極である導電体を被覆した誘電体から構成されている。捕集用電極60の周面と、導電体製ノズル31の延びる方向とは略直交している。捕集用電極60は、高電圧電源61によって負の電圧が印加されている。捕集用電極60と導電体製ノズル31の先端との距離は、その下限値を好ましくは100mm以上、更に好ましくは500mm以上とすることができる。上限値は好ましくは3000mm以下、更に好ましくは2000mm以下とすることができる。例えば前記距離は、好ましくは100mm以上3000mm以下、更に好ましくは500mm以上2000mm以下とすることができる。
図1に示すとおり、樹脂液吐出装置20と導電体製ノズル31との間には、電気的絶縁部40が配置されている。電気的絶縁部40は、内筒41と、該内筒41を覆う外筒42で形成された二重管の構造を有している。電気的絶縁部40の横断面においては、図2(a)に示すとおり、内筒41と外筒42とはいずれも円形をしており、且つ同心の位置関係になっている。内筒41の内部は、樹脂液吐出装置20から吐出された樹脂液を流通させる樹脂流通路43となっている。内筒41と外筒42との間の空間は、気体流通路44となっている。このように、電気的絶縁部40には、樹脂液を流通させる樹脂流通路43が形成されているとともに、該樹脂流通路43を囲むように気体流通路44が形成された構造となっている。
電気的絶縁部40はその長手方向における導電体製ノズル31側の一端部において、ノズル接続部材48を介して該導電体製ノズル31と接続されている。ノズル接続部材48はフランジ部(図示せず)を有している。このフランジ部は、外筒42における導電体製ノズル31側の内壁と、内筒41における導電体製ノズル31側の端部との間で把持されて固定されている。ノズル接続部材48と導電体製ノズル31との接続は、例えば螺合などによって達成されるが、これらの接続方法に限定されない。電気的絶縁部40と導電体製ノズル31との接続状態において、電気的絶縁部40の内筒41の内部と、後述する導電体製ノズル31のノズル内流通路31aとは連通している。
また、電気的絶縁部40はその長手方向における導電体製ノズル31側の一端部において、該電気的絶縁部40を構成する外筒42の端部に、該外筒42の中心方向に向けて張り出した張り出し部42aが形成されている。張り出し部42aは、内筒41の端部を覆うように張り出している。しかし張り出し部42aは、内筒41の内部を覆うようには張り出していない。張り出し部42aのうち、内筒41と外筒42との間で形成される空間である気体流通路44に対応する位置には、1個又は複数個の気体噴出孔(図示せず)が形成されている。電気的絶縁部40を導電体製ノズル31の先端側から見たときに、気体噴出孔は、導電体製ノズル31を囲むように複数個形成されていることが好ましい。それによって、導電体製ノズル31から紡出された繊維状樹脂を囲むように、気体噴出孔から気体が気流(搬送流)として噴出するようになっている。気体噴出孔の形状は、孔以外にもスリット状や切欠き状でもよい。
電気的絶縁部40は、樹脂液吐出装置20と導電体製ノズル31との間に介在して、両者を電気的に絶縁している。また、電気的絶縁部40を介在させることで、導電体製ノズル31及び電極32から樹脂液吐出装置20までを例えば50mm以上の距離でもって遠ざけることにより、樹脂液吐出装置20の導電体部分が、導電体製ノズル31と電極32の間に生じる電界を乱さないようにしている。この目的のために、電気的絶縁部40は、絶縁材料から構成されている。例えば電気的絶縁部40は、各種セラミックスや耐熱性樹脂などから構成されている。上述のとおり電気的絶縁部40は内筒41及び外筒42の2部材から構成されているので、内筒41及び外筒42のいずれもが絶縁材料から構成されている。本発明において絶縁材料とは、体積抵抗率が1×107Ω・cm以上である材料のことである。
電気的絶縁部40の長手方向における樹脂液吐出装置20側の一端部には、該電気的絶縁部40を構成する外筒42の外面に係止部42bが突設されている。この係止部42bが、導電体製連結部材50と導電体製取付部材51とによって係止されることで、該一端部は導電体製連結部材50に接続されている。更に、外筒42が上述のとおり導電体製連結部材50に係止されることで、内筒41及びノズル接続部材48は外筒42の張り出し部42aによって導電体製連結部材50側に押し付けられて係止される。導電体製連結部材50は、樹脂液吐出装置20と電気的絶縁部40との間に配置されて、両者を接続する部材である。導電体製連結部材50は、貫通孔50aを有し、電気的絶縁部40と導電体製連結部材50とが接続された状態において、電気的絶縁部40における樹脂流通路43と、導電体製連結部材50の貫通孔50aとが連通するようになっている。導電体製連結部材50と導電体製取付部材51とは、例えば螺合やボルト締結等の結合方法によって結合されるようになっている。導電体製連結部材50及び導電体製取付部材51は、耐熱性や機械的強度等の観点から、例えば金属で構成されている。
更に、導電体製連結部材50における樹脂液吐出装置20側の端部は、先に述べた樹脂吐出装置部品21と接続されている。両者が接続された状態において、導電体製連結部材50の貫通孔50aと、樹脂吐出装置部品21の貫通孔22は連通するようになっている。導電体製連結部材50と樹脂吐出装置部品21は、例えば螺合やボルト締結等の結合方法によって結合されるようになっている。
また、前記の導電体製連結部材50には、それに隣接する樹脂吐出装置部品21に設けられた気体導入口23に連通し、導入された気体を周方向に分配する空間である周方向気体分配部52、及び該周方向気体分配部52に連通する空間である気体流通部53が形成されている。周方向気体分配部52及び気体流通部53はいずれも環状の空間になっており、周方向に均等に配置された複数の貫通孔によって連通している。気体流通部53は、導電体製連結部材50に電気的絶縁部40が接続された状態において、電気的絶縁部40に設けられた気体流通路44と連通するようになっている。
以上のとおりに電界紡糸装置10を構成する各部材が組み付けられることで、該電界紡糸装置10においては、樹脂液吐出装置20の先端から、導電体製ノズル31にわたって連通した樹脂液の流通路が形成される。また、樹脂吐出装置部品21に設けられた気体導入口23から、電気的絶縁部40に設けられた気体流通路44にわたって連通した気体の流通路が形成される。
電界紡糸装置10においては、樹脂液吐出装置20がヒーター等の加熱手段(図示せず)によって所定温度に保たれるようになっている。また、樹脂液吐出装置20に隣接して、該樹脂液吐出装置20の一部をなす部材である樹脂吐出装置部品21は、導電体製ノズル31から遠い側に位置する部位21aが、ヒーター等の加熱手段(図示せず)によって、樹脂液吐出装置20の温度と同温度又は異なる温度に保たれるようになっている。一方、樹脂吐出装置部品21のうち、導電体製ノズル31に近い側に位置する部位21bにはヒーター等の加熱手段が取り付けられていない。この部位21bには、先に述べた気体導入口23が設けられている。このように、樹脂液吐出装置20のうち、最も導電体製ノズル31側の位置であって、且つ加熱手段の非設置位置に、気体導入口23が設けられている。また、導電体製ノズル31を含め、樹脂吐出装置部品21よりも、導電体製ノズル31側に位置するすべての部材、すなわち導電体製連結部材50、導電体製取付部材51、電気的絶縁部40及び紡糸部30にも、ヒーター等の加熱手段が取り付けられていない。
電界紡糸装置10は、紡糸部30の導電体製ノズル31又は電極32に高電圧を印加するための高電圧電源装置62を備えている。図1においては、高電圧電源装置62が電極32に接続されている状態が示されている。高電圧電源装置62と電極32とは、該電極32の背面から引き出された電気導通路34を介して接続されている。本実施形態においては、高電圧電源装置62を電極32に接続することに代えて、高電圧電源装置62を導電体製ノズル31に接続してもよい。また図1においては、電極32に負電圧が印加されている状態が示されているが、これに代えて正電圧を印加してもよい。
高電圧電源装置62を電極32に接続する場合には、導電体製ノズル31はアースに接続する。逆に、高電圧電源装置62を導電体製ノズル31に接続する場合には、電極32はアースに接続する。いずれの場合においても、導電体製ノズル31に電圧を印加するための電気導通路、又は該導電体製ノズル31をアースに接続するための電気導通路が必要となる。本実施形態においては、図1に示すとおり、この電気導通路35を、電気的絶縁部40を構成する部材の内部に配置している。詳細には、電気的絶縁部40を構成する部材である内筒41と外筒42との間の空間、すなわち気体流通路44内に電気導通路35を配置している。図1に示す実施形態では、電気導通路35はその一端が導電体製のノズル接続部材48に接続され、電気導通路35と導電体製ノズル31は電気的に導通している。また電気導通路35は電気的絶縁部40の途中から外部に引き出されて、他端がアースに接続されている。このように導電体製ノズル31の後方に電気導通路35を配することで、電極32と該電気導通路35との間の放電を防止し、また導電体製ノズル31の先端から前方に向けて紡出される繊維の搬送を妨げることなく、導電体製ノズル31をアースに接続することができる。
以上の構成を有する電界紡糸装置10によれば、導電体製ノズル31を囲むように凹曲面電極32が配置されており、導電体製ノズル31と電極32との間に電圧を印加することで、導電体製ノズル31の帯電量を大幅に高めることができる。それによって、導電体製ノズル31と電極32との間に生じる電界強度を大幅に高め、導電体製ノズル31から紡出される樹脂液の帯電量を大幅に高めることができるという利点がある。導電体製ノズル31の帯電量を高めるためには、凹曲面電極32を用いることに加えて、帯電の分散を避けることが有利である。また、導電体製ノズル31と電極32との間により高い電圧を印加して帯電量をより高くするためには、導電体製ノズル31や電極32と導電体部品との間に生じる放電を防止することが重要となる。これらの目的のために、導電体製ノズル31や電極32の近傍、例えば50mm以内に、ヒーター等の加熱手段を含め、導電体部品を配置しないことが望ましい。また、導電体から構成される部材である樹脂液吐出装置20の設置位置も、導電体製ノズル31や電極32から可能な限り離間させることが望ましい。そこで、本実施形態においては、導電体製ノズル31及び電極32を含む紡糸部30と、樹脂液吐出装置20との間に電気的絶縁部40を介在させて、導電体製ノズル31の帯電量を高める工夫をしている。ところで、導電体製ノズル31に電圧を印加するための、又は該導電体製ノズル31をアースに接続するための電気導通路35も導電体であるところ、該電気導通路35を通じて電流が流れるとしても、その値は0.1mA以下と微小なことから、該電気導通路35としては、帯電の分散への影響をほとんど与えない導体である1mm以下の線径の導線を使用できる。
ところで、紡糸部30と樹脂液吐出装置20との距離を隔てると、樹脂液吐出装置20において溶融状態にある樹脂が、紡糸部30に到達するまでの間に冷却されて溶融粘度が上昇し、該樹脂の吐出に大きな動力を要してしまう可能性がある。最悪の場合には吐出不能になる可能性がある。また樹脂の溶融粘度が上昇することで、ノズルから紡出された樹脂の電界による延伸・細径化に支障を来す可能性もある。そこで、本実施形態の電界紡糸装置10においては、加熱気体供給源から供給された加熱空気を、紡糸部30と樹脂液吐出装置20とを隔てる電気的絶縁部40内に形成された樹脂液の流通路43を囲むように流通させることで、樹脂液の冷却及びそれに起因する溶融粘度の上昇を抑制している。
紡糸部30における樹脂液の粘度を低下させて微細な繊維を形成するには、樹脂を高温(例えばポリプロピレンの場合には280℃以上350℃以下)にすることが有利である。しかし、高温の状態下に樹脂を長時間置くと、樹脂の熱劣化が生じやすい。これに対して本実施形態の電界紡糸装置10においては、樹脂液吐出装置20及び樹脂吐出装置部品21における樹脂の温度は、電気的絶縁部40に吐出するのに必要最低限の温度とし、加熱空気を電気的絶縁部40内に形成された樹脂液の流通路43を囲むように流通させて、電気的絶縁部40において樹脂液の温度をより上昇させることで、電界紡糸装置10の内部において樹脂が高温に曝される時間を短縮できるとともに、紡出時の樹脂液の粘度を低下させることが可能となる。更に、加熱空気をこのように流通させることで、該電気的絶縁部40に存在する樹脂の温度を速やかに上昇させることができ、電気的絶縁部40の加熱を開始してから短時間で紡糸を行うことが可能になる。そのことに起因して、樹脂の熱劣化を効果的に抑制することができる。以上のとおり、電界紡糸装置10によれば、樹脂の熱劣化を抑制しつつ繊維の一層の細径化が可能となる。一方、電界紡糸装置10の停止時には、電気的絶縁部40内に加熱気体を流通させることに代えて、室温気体供給源から供給された相対的に低温の気体を流通させることで、電気的絶縁部40内に存在する樹脂の温度を速やかに低下させることができる。このことによっても、長時間にわたって高温に曝されることに起因する樹脂の熱劣化を効果的に抑制することができる。この観点から、室温気体供給源と加熱気体供給源とが択一的に電気的絶縁部40の気体流通路44に導入可能になっているか、より好ましくは加熱気体供給源の加熱部を作動させずに気体を供給することで室温気体供給源とすることが有利である。
本実施形態の電界紡糸装置10における電気的絶縁部40は、その横断面形状が図2(a)に示すとおりとなっているところ、電気的絶縁部40の組立て、取り付けを容易にすることを目的として、電気的絶縁部40を、樹脂液の流通路43の周囲に複数の気体流通路44を配置した部材から構成することができる。具体的には、図2(b)に示すとおり、円柱状の内柱45と、該内柱45と嵌まり合う大きさを有する円筒状の外筒42とから電気的絶縁部40を構成し、該内柱45の横断面において、その中心に1つの樹脂流通路43を配置するとともに、該内柱45の側面に、該内柱45の長手方向に延びる複数の切り欠き凹部46を設け、内柱45と外筒42とが嵌まり合うことで画成される切り欠き凹部46を含む空間を気体流通路44として用いた電気的絶縁部40を採用することができる。あるいは、図2(c)に示すとおり、電気的絶縁部40を1本の円柱47から構成し、該円柱の横断面において、その中心に1つの樹脂流通路43を配置するとともに、該樹脂流通路43を囲むように複数の気体流通路44を配置した電気的絶縁部40を採用することもできる。
図1に示すとおり、気体供給源24により供給される加熱気体は、樹脂吐出装置部品21に設けられた気体導入口23から導入される。気体導入口23は、樹脂吐出装置部品21における符号21bで示される部位に設けられている。この部位に気体導入口23を設け、そこから気体供給源24により供給される加熱気体を導入し、前述の導電体製連結部材50の周方向気体分配部52と気体流通部53を介して、電気的絶縁部40の気体流通路44に気体を流通させることで、該気体流通路44での気体の流通を周方向で均一な状態にすることが可能となる。
電気的絶縁部40内に導入された加熱気体は、該電気的絶縁部40内に滞留せず、電気的絶縁部40の導電体製ノズル31側の先端に設けられた複数個の気体噴出孔(図示せず)から噴出するようになっている。噴出した加熱気体は、後述する導電体製ノズル31の樹脂液紡出口31bの後方から捕集部60に向けて、導電体製ノズル31の軸方向に沿って流れる気流となる。また噴出した加熱気体は、導電体製ノズル31から紡出された繊維状樹脂を、繊維の捕集部である捕集用電極60まで搬送する搬送流として利用される。これによって加熱気体を効率的に利用できる。また、加熱気体を繊維状樹脂の搬送流として用いることで、繊維の一層の細径化が達成される。ここで、本実施形態では、気体供給源24、気体導入口23、周方向気体分配部52、気体流通部53、及び気体流通路44は、電気的絶縁部40の導電体製ノズル31側の先端に設けられた複数個の気体噴出孔を含めて、導電体製ノズル31の樹脂液紡出口31bの後方から捕集部60に向けて、導電体製ノズル31の軸方向に沿って流れる気流を発生する、気流発生手段を構成している。気体噴出部は複数個の孔である必要は必ずしもなく、例えば電気的絶縁部40の内筒41と外筒42の間にノズル31の先端側に開口した隙間を設ける構造とし、この隙間から気体を噴出させることもできる。また、外筒42のノズル31の先端側開口部に半径方向に延びる切欠きを設ける構造とし、この切欠きから気体を噴出させることもできる。
そして、本実施形態では、導電体製ノズル31は、図3及び図4にも示すように、ノズル内流通路31aと、当該導電体製ノズル31の先端部31cを貫通して設けられた、ノズル内流通路31aの内径よりも小さな内径を有する、当該ノズル内流通路31aと連通する樹脂液紡出口31bとを備えており、樹脂液紡出口31bは、導電体製ノズル31の先端部31cにおいて、導電体製ノズル31の外周面から気流が流れる方向に向けて導電体製ノズル31の中心軸側に傾斜する、先端部傾斜面31dに開口して設けられている。また、本実施形態では、樹脂液紡出口31bは、好ましくは先端部傾斜面31dに対して垂直な方向に向けて開口するように設けられている。
本実施形態では、導電体製ノズル31は、金属等の導電体から構成されており、ノズル内流通路31aを内部に備える。導電体製ノズル31は、上述した樹脂液吐出装置20から吐出された樹脂液を紡出するために用いられる。この目的のために、導電体製ノズル31には、樹脂液の流通が可能な貫通孔が、ノズル内流通路31aとして、導電体製ノズル31の長手方向に沿って形成されている。なお、本実施形態では、樹脂液吐出装置20から吐出されてノズル内流通路31aに供給される樹脂液は、溶融樹脂による樹脂液であっても良く、樹脂溶液による樹脂液であっても良い。樹脂溶液を原料とする場合には、樹脂液吐出装置20として前述の押出機を用いる必要はなく、シリンジポンプなどの定量性のあるポンプやディスペンサーなどを用いればよい。
ここで、導電体製ノズル31の外径は、その下限値を好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上に設定することができる。一方、その上限値を好ましくは10mm未満、更に好ましくは5mm以下に設定することができる。ノズル31の外径は、好ましくは0.5mm以上10mm未満、更に好ましくは1mm以上5mm以下に設定することができる。導電体製ノズル31の外径を、10mm未満とすることにより、電荷密度を高くすることが可能になって、より強い電界を形成することが可能になる。
本実施形態では、導電体製ノズル31の先端部31cに、導電体製ノズル31の外周面から気流が流れる方向に向けて導電体製ノズル31の中心軸側に傾斜する、先端部傾斜面31dが設けられている。この先端部傾斜面31dに、ノズル内流通路31aの内径よりも小さな内径を有する、当該ノズル内流通路31aと連通する樹脂液紡出口31bが、好ましくは当該先端部傾斜面31dに対して垂直な方向に向けて開口するように設けられている。
本実施形態では、導電体製ノズル31の先端部31cは、円錐台形状を有しており、先端部31cの先端部傾斜面31dは、ノズル31の周方向に沿って曲率を有する曲面となっており、導電体製ノズル31の中心軸に沿った断面においては、直線状に傾斜して設けられている。この先端部傾斜面31dに、樹脂液紡出口31bが開口している。樹脂液紡出口31bが、先端部傾斜面31dに開口していることにより、後述するように、樹脂液紡出口31b当たりの樹脂液の紡出量を少なくしたり、樹脂液紡出口31bから紡出した繊維状樹脂を搬送する気流を増加させた場合でも、繊維状樹脂が途切れ難く、安定的に繊維状樹脂を生産することが可能になる。
先端部傾斜面31dの、導電体製ノズル31の中心軸に対する傾斜角度θは、その下限値を好ましくは10度以上、更に好ましくは20度以上に設定することができる。一方、その上限値を好ましくは60度以下、更に好ましくは45度以下に設定することができる。先端部傾斜面31dの、導電体製ノズル31の中心軸に対する傾斜角度θは、好ましくは10度以上60度以下、更に好ましくは20度以上45度以下に設定することができる。先端部傾斜面31dの、導電体製ノズル31の中心軸に対する傾斜角度θをこの範囲内に設定することで、樹脂液を安定して吐出するとともに、強い電界が形成されているノズルの先端部近傍へ、樹脂液をスムーズに吐出する事が可能になる。
導電体製ノズル31の先端部31cの形状は、円錐台形状のみならず、円錐形状とすることもできる。また、図5に示すように、角錐台形状や、角錐形状とすることもできる。更に図6に示すように、ドーム形状を備えていても良い。導電体製ノズル31の先端部31cの形状を、ドーム形状とした場合に、先端部傾斜面31dは、導電体製ノズル31の中心軸に沿った断面において、湾曲しながら傾斜した状態で設けられる。導電体製ノズル31の先端部31cは、ノズル31の中心軸に向かって傾斜した先端部傾斜面31dを有している限りにおいて、その全体の形状はいかなるものであってもよい。つまり、先端部傾斜面31dは、平面であってもよく、曲面であってもよい。
樹脂液紡出口31bは、ノズル内流通路31aと連通して、先端部傾斜面31dに開口して設けられている。詳述には、樹脂液紡出口31bは、先端部傾斜面31dに円形に開口しており、ノズル内流通路31aと連通している。樹脂液紡出口31bは、好ましくは先端部傾斜面31dに対して垂直な方向に向けて開口するように設けられている。樹脂液紡出口31bが、先端部傾斜面31dに対して垂直な方向に向けて開口して設けられていることにより、ノズルの表面を流れる搬送流に対しても垂直に近い方向に向けて開口している事となり、樹脂液紡出口31bの近傍に生じる負圧が緩和される。
樹脂液紡出口31bの直径は、その下限値を好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上に設定することができる。一方、その上限値を好ましくは2000μm以下、更に好ましくは1000μm以下に設定することができる。樹脂液紡出口31bの直径は、好ましくは50μm以上2000μm以下、更に好ましくは100μm以上1000μm以下に設定することができる。樹脂液紡出口31bの直径をこの範囲内に設定することで、樹脂液を容易に、且つ定量的に送液できるとともに、延伸する樹脂液の初期の径を細くする事ができるので好ましい。
そして、上述の構成を備える本実施形態の電界紡糸装置10によれば、搬送流の速度が速くなる事により、搬送流によって発生するノズル先端部の垂直面近傍の負圧がノズル内部の樹脂液を引き出す現象を解消して、樹脂液の紡出が不安定になるのを効果的に回避することが可能になる。
すなわち、本実施形態によれば、導電体製ノズル31は、ノズル内流通路31aと、ノズル内流通路31aと連通する樹脂液紡出口31bとを備えており、樹脂液紡出口31bは、導電体製ノズル31の先端部において、導電体製ノズル31の外周面から気流が流れる方向に向けて導電体製ノズル31の中心軸側に傾斜する、先端部傾斜面31dに開口して設けられているので、微細繊維を製造する際に、図7に示すように、導電体製ノズル31の先端部31cにおいて、導電体製ノズル31の軸方向に沿って流れる気流を、先端部傾斜面31dにより、導電体製ノズル31の中心軸方向に回り込ませながら、樹脂液紡出口31bから樹脂液を紡出して、紡出された繊維状樹脂を捕集部60で捕集することが可能になる。
これによって、図8に示す従来の導電体製ノズルのように、樹脂液紡出口が、導電体製ノズルの軸方向とは垂直な面に開口しているものと比較して、導電体製ノズルの軸方向に沿って流れる搬送流によって垂直な面の近傍に生じる、負圧の影響を受けないようにすることが可能になる。またこれによって、例えば導電体製ノズル31の先端部31cに形成した樹脂液紡出口31bの数を多くして樹脂液の吐出量を増加する場合に、紡出した樹脂液による極細繊維の逆戻りの現象が生じるのを防止するために、搬送流の量をより多くして搬送流の速度を速くしても、負圧の影響で搬送気流による樹脂液の引き出しの現象が生じるのを、搬送流を導電体製ノズル31の中心軸方向に回り込ませることにより効果的に回避して(図7参照)、安定した樹脂液の紡出を行えるようにすることが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、絶縁材料の内筒41と絶縁材料の外筒42の2重構造で電気的絶縁部としているが、この内筒を導電体製材料で形成し、外筒のみを電気的絶縁部としてもよい。