JP6740619B2 - エポキシ樹脂とその製造法、及び該樹脂に基づくエポキシ樹脂組成物 - Google Patents

エポキシ樹脂とその製造法、及び該樹脂に基づくエポキシ樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、25℃の粘度が低くハンドリング性に優れ、加水分解性塩素量、全塩素量が低い電気特性に優れたエポキシ樹脂とその製造法、及びこのエポキシ樹脂を含む絶縁信頼性に優れたエポキシ樹脂組成物とその硬化物に関する。
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、耐熱性、電気的性質等に優れた硬化物となることから、接着剤、塗料、電気・電子材料等の幅広い分野で利用されている。特に、エポキシ樹脂がハンドリング性、絶縁特性、耐熱性、吸湿性、接着性に優れているという特徴を活かして、電気・電子材料の分野において多く用いられている。
また、近年の電子部品の小型化や薄型化にともなって、これらの用途に用いる場合の要求性能は更に厳しく、多様なものとなっており、例えば、エポキシ樹脂そのものに対しては、薄型の金型へ注型するための低粘度化、電気的信頼性を上げるための加水分解性塩素量や全塩素量を更に少なくする等の要望がある。更に、エポキシ樹脂組成物(硬化物)にはより厳しい環境下でも電子デバイスが使用できるように高い絶縁信頼性が求められている。
特開2005−314512号公報
本発明の第1の課題は、粘度が低くハンドリング性に優れ、加水分解性塩素量、全塩素量が低く電気特性に優れたエポキシ樹脂とその製造法の提供である。また、本発明の第2の課題は絶縁信頼性に優れたエポキシ樹脂組成物及びその硬化物の提供である。
このようなエポキシ樹脂組成物及びその硬化物は電気・電子部品に好適に用いられる。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構成単位を有するエポキシ樹脂であって、かつ、そのエポキシ当量、25℃における粘度、加水分解性塩素量、全塩素量を特定の範囲に制御した4−アミノフェノール型エポキシ樹脂が上記の課題を解決できることを見出し、その製造法。該エポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を併せた本発明の完成に至った。
即ち本発明の要旨は、次の[1]〜[7]に存する。
[1] 下記式(1)で表されるエポキシ化合物由来の構成単位を含有するエポキシ樹脂であって、以下の性状を有することを特徴とするエポキシ樹脂。
(a)エポキシ当量:97〜110g/eq
(b)25℃の粘度:800〜1500mPa・s
(c)加水分解性塩素:1000ppm以下
(d)全塩素:3000ppm以下
Figure 0006740619
[2] 上記[1]に記載のエポキシ樹脂と、該エポキシ樹脂100重量部あたり0.01〜1000重量部の硬化剤とを含有してなるエポキシ樹脂組成物。
[3] 前記硬化剤が、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、及びアミド系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤である上記[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4] 更に、上記[1]に記載のエポキシ樹脂とは異なるエポキシ樹脂を含有する[2]又は[3]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[5] 上記[2]〜[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
[6] 上記[5]に記載の硬化物からなる電気・電子部品。
[7] 4−アミノフェノールとエピハロヒドリンとを反応させて得られた粗エポキシ樹脂を、該粗エポキシ樹脂の加水分解性塩素量に対して2〜5倍のアルカリ金属水酸化物を用いて、樹脂含量10%以上35%以下、温度40℃以上75℃以下の条件で反応させる上記[1]に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
本発明によれば、粘度が低く取扱い性が良好で、加水分解性塩素量、全塩素量が低い電気特性に優れたエポキシ樹脂とその製造法。また、このエポキシ樹脂を含む絶縁信頼性に優れたエポキシ樹脂組成物、硬化物が提供される。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
以下、本発明の構成要件を個別に説明する。
1.エポキシ樹脂
(1)特徴
本発明のエポキシ樹脂は、下記式(1)で表されるエポキシ化合物由来の構成単位を含有するエポキシ樹脂(以下「エポキシ樹脂(1)」と記すことがある)であり、その特徴は25℃での粘度が低く、加水分解性塩素量、全塩素量が低く電気特性に優れている点である。
Figure 0006740619
このエポキシ化合物由来の構成単位を有するエポキシ樹脂(エポキシ樹脂(1))は、25℃での粘度が低いので、エポキシ樹脂組成物において、電気的、力学的、耐熱的に優れるフィラーを多量に配合しても、組成物の粘度があまり高くならず、例えば射出成型に
より成形する際にも、大型物品や薄型の成形品であっても、金型への充填を万遍なく、かつ速やかに行うことができるので、成形不良の防止やサイクルタイムの向上に非常に有効である。
また、加水分解性塩素量、全塩素量が少ないため、硬化物からの遊離塩素量を少なくでき、電気・電子機器の配線腐食が防止されて、絶縁不良等のトラブルを予防できる。
(2)エポキシ当量
本願では、エポキシ樹脂(1)に含まれるエポキシ基数の尺度として「エポキシ当量」を用いる。「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に従って測定することができる。
エポキシ樹脂(1)のエポキシ当量は、低温条件下でのハンドリング性の観点から、97〜110g/eq(「g/eq」は上記エポキシ当量を表す単位である)であることが必要である。
また、その他の品質面の観点から97〜107g/eqであることが好ましく、特に100〜107g/eqであることが好ましい。
エポキシ当量が上記の範囲であると、上記エポキシ樹脂(1)に含まれるオリゴマー成分が少なくなり、低粘度とすることができる。
エポキシ当量を97g/eq以上とするためには、脱塩素化反応の際のアルカリ濃度を高くしたり、上記反応時の樹脂含量を高くしたり、反応温度を高く及び/又は反応時間を長くする操作をして、上記式(1)のエポキシ化合物のオリゴマー化をある程度進めて、所望のエポキシ当量となるようにすればよい。
エポキシ当量を110g/eq以下とするためには、上記とは反対に、脱塩素化反応時のアルカリ濃度を低くしたり、反応時の樹脂含量を低くしたり、反応温度を低く及び/又は反応時間を短くする操作をすればよい。
なお、オリゴマー化反応の進捗状況は、上記反応中に適時サンプリングを行い、エポキシ当量を測定することで確認できる。
(3)25℃の粘度
本発明のエポキシ樹脂(1)は、25℃での粘度が800mPa・s以上1500mPa・s以下である。
この粘度範囲とすることで、取扱い性と絶縁の信頼性に優れたエポキシ樹脂及びその硬化物となる。
25℃の粘度は、890mPa・s以上1410mPa・s以下であることがより好ましく、特に910mPa・s以上1410mPa・s以下であることが好ましい。
25℃での粘度を上記の好ましい範囲とすることで、特に絶縁信頼性が良好になる。
なお、本発明において「25℃の粘度」とは、キャノンフェンスケ管中にエポキシ樹脂を充填し、25℃に調整した恒温水層中で30分保持した後に粘度を測定した値である。
25℃の粘度が上記好適範囲にあるエポキシ樹脂(1)は、例えば、脱塩素化反応時のアルカリ濃度、反応時の樹脂含量、反応温度、反応時間を適宜調整し、適時サンプリングを行いながら、粘度が所望の範囲となったことを確認することによって得ることができる。
(4)加水分解性塩素量
本発明のエポキシ樹脂(1)は、加水分解性塩素の含有量(以下「加水分解性塩素量」と記す場合がある。)が1000ppm以下である。
加水分解性塩素量が少ないほど、得られる製品の電気的な信頼性等の面で好ましい。
エポキシ樹脂(1)の加水分解性塩素量は、1000ppm以下であるが、より絶縁信頼性を良好にするためには、760ppm以下が好ましく、より好ましくは630ppm以下である。
加水分解性塩素量の下限は0ppm、即ち、下記の加水分解性塩素量の測定において「検出限界以下」となることであるが、加水分解性塩素量を過度に低くすると、エポキシ当量や粘度を上記好適範囲とすることが困難になることがあるので、加水分解性塩素量の下限は通常10ppmである。
加水分解性塩素量の測定方法は、例えば約0.5gの精秤したエポキシ樹脂を20mlのジオキサンに溶解し、1NのKOH/エタノール溶液5mlで30分還流した後、0.01N硝酸銀溶液で滴定することにより定量する方法が用いられる。
(5)全塩素量
本発明のエポキシ樹脂(1)は、全塩素の含有量(以下「全塩素量」と記す場合がある)が3000ppm以下である。
全塩素量は少ないほど、得られる製品の電気的な信頼性等の面で好ましい。より絶縁信頼性を高いものとするためには2730ppm以下が好ましく、2260ppm以下が特に好ましい。
全塩素量の下限は0ppm、即ち、全塩素量の測定において「検出限界以下」となることであるが、全塩素量を過度に低くすると、エポキシ当量や粘度を好適な範囲とすることが困難となることがあるため、全塩素量の下限は通常10ppm程度である。
なお全塩素量はJIS K7299に従って測定することができる。
2.エポキシ樹脂の製造方法
エポキシ当量、25℃の粘度、加水分解性塩素量、及び全塩素量が前述の条件を満たす、本発明のエポキシ樹脂(1)の製造方法を、以下説明する。
本発明のエポキシ樹脂(1)の製造方法は、上記各項目の条件が満たされる限り、特に制限されるものではないが、例えば、以下に説明する製造方法を経由すると、効率的に製造することができる。
(1)粗エポキシ樹脂の合成
本発明のエポキシ樹脂(1)の製造方法においては、下式(2)で示される4−アミノフェノール(以下「PAP」と記す場合がある)と、エピハロヒドリンとを反応させることにより、エポキシ樹脂を製造する方法が好ましく用いられる。
Figure 0006740619
なお、上記方法によるエポキシ樹脂の製造に際しては、原料としてPAPの他に、その他の多価ヒドロキシ化合物を併用してもよい。この場合、本発明の対象となる「エポキシ樹脂」の他に、その他のエポキシ樹脂も生成することになる。
但しこの場合でも、本発明の趣旨に従って、原料ヒドロキシ化合物中のPAPの比率は、30モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。特に好ましいのは100モル%である。
なお、本発明では、「多価ヒドロキシ化合物」等における「ヒドロキシ化合物」はフェノール化合物及びアルコール化合物の両者を含む総称である。
上記その他の多価ヒドロキシ化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールAF、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂等の種々の多価フェノール類(ただし、フェノール樹脂(2)を除く。)や、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、キシレン樹脂とフェノール類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール樹脂類、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の鎖状脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロデカンジオール等の環状脂肪族ジオール類;ポリエチレンエーテルグリコール、ポリオキシトリメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類等が例示できる。
これらの中で好ましいものとしてはフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、フェノールとヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合反応で得られる多価フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の鎖状脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロデカンジオール等の環状脂肪族ジオール類、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリオキシトリメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類等が挙げられる。
原料として用いる、PAPと必要に応じて用いられるその他の多価ヒドロキシ化合物は、これらの合計である全ヒドロキシ化合物の水酸基1当量あたり、通常0.8〜20当量、好ましくは0.9〜15当量、より好ましくは1.0〜10当量に相当する量のエピハロヒドリンに溶解させて均一な溶液とする。エピハロヒドリンの量が0.8当量以上であると高分子量化反応を制御しやすく、得られるエポキシ樹脂を適切な溶融粘度とすることができるために好ましい。一方、エピハロヒドリンの量が2.0当量以下であると生産効率が向上する傾向となるので好ましい。なお、この反応におけるエピハロヒドリンとしては、通常、エピクロルヒドリン又はエピブロモヒドリンが用いられる。
次いで、その溶液を撹拌しながら、これに原料の全ヒドロキシ化合物の水酸基1当量当たり通常0.5〜2.0当量、好ましくは0.7〜1.8当量、より好ましくは0.9〜1.6当量に相当する量のアルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液として加えて反応させる。アルカリ金属水酸化物の量を0.5当量以上とすることで、未反応の水酸基と生成したエポキシ樹脂との反応を抑制できて、高分子量化反応を制御しやすいので好ましい。また、アルカリ金属水酸化物の量が上記2.0当量以下とすることで、副反応による不純物の生成を防止できるので好ましい。なお、アルカリ金属水酸化物としては通常、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが用いられる。
上記反応は、常圧下又は減圧下で行うことができ、反応温度は通常40〜150℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは80〜100℃である。反応温度が40℃以上
であると反応が進行しやすく、かつ制御もしやすいので好ましい。また、反応温度が上記150℃以下とすることで、副反応が抑制でき、特に塩素不純物を低減しやすいので好ましい。
エポキシ樹脂の生成反応は、必要に応じて所定の温度を保持しながら反応液を共沸させ、揮発する蒸気を冷却して得られた凝縮液を油/水分離して油分を反応系へ戻す方法により脱水しながら行われる。触媒であるアルカリ金属水酸化物は、急激な反応を抑えるために、通常0.1〜8時間、好ましくは0.1〜7時間、より好ましくは0.5〜6時間掛けて少量ずつ断続的又は連続的に添加する。アルカリ金属水酸化物の添加時間を0.1時間以上とすることで、反応の急激な進行を防止でき、反応温度の制御がしやすくなる。添加時間を8時間以下にすることで、塩素不純物の生成を減らすことができ、また経済性の観点からも好ましい。
この反応の全反応時間は通常1〜15時間である。反応終了後、副生した不溶性塩を濾別及び/又は水洗によって除去した後、未反応のエピハロヒドリンを減圧留去することでエポキシ樹脂を得ることができる。
なお、この反応においては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩;ベンジルジメチルアミン、2,4 ,6−ト
リス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド等のホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類等の触媒を用いてもよい。
また、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メトキシプロパノール等のグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等の不活性な有機溶媒を反応媒体として使用してもよい。
(2)粗エポキシ樹脂の精製
上記で得られた粗エポキシ樹脂中には、未反応の原料化合物やエピハロヒドリンの反応により生成した塩素や塩素含有化合物などの塩素系不純物が含まれている。このような塩素系不純物を強アルカリと反応させることにより、含まれる塩素を無機塩素系の水溶性化合物に変換し、水洗除去することによって、精製されたエポキシ樹脂を得ることができる。
なお、この精製工程においては、粗エポキシ樹脂の純度や製造条件、あるいは精製工程における処理(反応)条件の違いによって、処理時間によって精製度合い(加水分解性塩素含有量、全塩素量等)が変わる可能性がある。所望の精製度のエポキシ樹脂を得るためには、随時サンプリングを行い、エポキシ当量、粘度、塩素含有量等を分析することが好ましい。
粗エポキシ樹脂中の残留塩素化合物成分を除去するためには、強アルカリと反応させる方法が一般的である。この反応に際しては、粗エポキシ樹脂を溶解させるための有機溶媒を用いてもよい。反応に用いる有機溶媒は、特に制限されるものではなく、精製効率、取り扱い性、作業性等の面から、非プロトン性極性溶媒及び/又は非プロトン性極性溶媒以外の不活性有機溶媒を、単独または混合溶媒として使用することができる。
非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘ
キサメチルホスホルアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの非プロトン性極性溶媒の中では、入手し易く、洗浄効果が優れていることから、ジメチルスルホキシドが好ましい。
非プロトン性極性溶媒以外の不活性な有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられるが、洗浄効果や後処理の容易さなどから、芳香族炭化水素溶媒またはケトン系溶媒が好ましく、特にトルエン、キシレンまたはメチルイソブチルケトンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記の非プロトン性極性溶媒とこれ以外の不活性有機溶媒とを混合して用いる場合は、全溶剤中の非プロトン性極性溶媒の割合が3〜20重量%となるようにすることが好ましい。
粗エポキシ樹脂中の含塩素成分とアルカリとの反応時の、有機溶媒中の粗エポキシ樹脂の濃度(含量)は、35重量%以下とすることが好ましい。より好ましくは30重量%以下である。またその下限の濃度は、反応性の観点から10%重量以上が好ましく、より好ましくは20%重量以上である。
ここで用いるアルカリ成分としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を固体又は溶液として使用することができる。これらのアルカリ金属水酸化物は水や有機溶媒に溶解して使用してもよい。使用するアルカリ金属水酸化物の量としては、固形分換算として、粗エポキシ樹脂中の加水分解性塩素量に対して2〜5倍量を使用することが好ましい。
アルカリ金属水酸化物(具体例として水酸化カリウムを示す)の使用量は、粗エポキシ樹脂の加水分解性塩素量から、以下の手順で計算することができる。
[計算例]
(前提)
粗エポキシ樹脂:加水分解性塩素量2100ppm、使用量100g
水酸化カリウム使用量(使用量比率:2倍)
(計算)
粗エポキシ樹脂中の塩素量(グラム原子)
=2100ppm*100g/35(塩素の原子量)=0.006(グラム原子)
水酸化カリウム使用量(g)
=0.006(モル)*56(水酸化カリウム式量)*2(倍数)=0.672(g):水酸化カリウム(固形分)
上記反応の反応温度の上限は、通常75℃であり、好ましくは65℃である。また、加減は、通常40℃、好ましくは50℃である。反応温度をこの範囲内とすることで、温和で制御可能な反応を進めることができる。
また、その反応時間としては、上限は通常20時間、好ましくは10時間であり、下限は10分、好ましくは30分である。反応時間を上記範囲とすることで、反応の過度な進行を予防しつつ、合理的な反応進行が可能となる。
残留塩素成分を除去する反応が終了した後、水洗等によって過剰のアルカリ金属水酸化物や副性塩を除去し、続いて有機溶媒を用いた場合は、該有機溶媒を減圧留去及び/又は水蒸気蒸留等の方法で除去することができる。
3.エポキシ樹脂組成物
(1)エポキシ樹脂組成物の特徴
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくとも前述した本発明のエポキシ樹脂(1)と硬化剤とを含む。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、本発明のエポキシ樹脂(1)以外の他のエポキシ樹脂(以下、単に「他のエポキシ樹脂」と記す場合がある)、硬化促進剤、無機充填剤、カップリング剤等を、本発明の趣旨、効果を阻害しない限り、適宜配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂は、その主成分であるエポキシ樹脂(1)が、25℃の粘度が低く、加水分解性塩素量、全塩素量が少ない、という特徴を有することで、この組成物から得られる硬化物の絶縁信頼性に優れ、電気・電子部品を始めとする各種用途に好適に使用することができる。
以下、組成物を構成する必須成分及び任意成分について個別に説明する。
(2)硬化剤
本発明において硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖延長反応に寄与する物質を示す。なお、本発明においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の含有量は、全エポキシ樹脂成分100重量部(固形分)に対して、0.01〜1000重量部とすることが好ましい。
なお、上記において、「固形分」とは溶媒を除いた成分のことを意味し、固体のエポキシ樹脂だけでなく、半固形や粘稠な液状物も含むものである。また「全エポキシ樹脂成分」とは、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の量に相当し、エポキシ樹脂組成物がエポキシ樹脂(1)のみを含む場合は、エポキシ樹脂(1)の量を意味し、エポキシ樹脂(1)と他のエポキシ樹脂を含む場合は、エポキシ樹脂(1)と他のエポキシ樹脂の合計量に相当する。
硬化剤の含有量が0.01重量部未満では、エポキシ樹脂組成物を硬化させるために過大な時間を要することとなり、実用的でない。一方、この含有量が1000重量部を超えるほど多量に硬化剤を使用すると、エポキシ樹脂の硬化反応が極めて速くなり、成形品が不均一になったり、歪みを生じやすくなったりするだけでなく、硬化反応に寄与しない硬化剤が硬化物中に多量に残存して、成形品表面にベタつきが発生したり、所望の硬度が得られなかったりすることがある。
好ましい硬化剤の含有量の上限は500重量部で、300重量部を上限とすることがより好ましい。このような量で用いると、硬化剤中に不純物として含まれる低分子成分が硬化物からブリードすることを防ぐことができる。
また硬化剤の含有量の下限は0.5重量部が好ましく、1重量部がより好ましい。このような量とすることで、より迅速に所望の硬度を得ることができる。
硬化剤としては、特に制限はなく一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、芳香族アミンなどのアミン系硬化剤、アミド系硬化剤、第3級アミン、イミダゾール類等が挙げられる。
このうち、酸無水物系硬化剤を含むことにより、本発明のエポキシ樹脂組成物は、優れた耐熱性、耐応力性を得ることができるため、硬化剤としては酸無水物系硬化剤を含むことが好ましい。また、耐熱性等の観点からはアミン系硬化剤を含むことが好ましい。また、イミダゾール類を用いることも、硬化反応を十分に進行させ、耐熱性を向上させる観点
から好ましい。
硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤の2種以上を併用する場合、これらを予め混合して混合硬化剤を調製してから使用してもよいし、エポキシ樹脂組成物の各成分を混合する際に硬化剤の各成分をそれぞれ別々に添加して同時に混合してもよい。
<酸無水物系硬化剤>
酸無水物系硬化剤としては、酸無水物、酸無水物の変性物等が挙げられる。
酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、ヘット酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、1−メチル−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
酸無水物の変性物としては、例えば、上述した酸無水物をグリコールで変性したもの等が挙げられる。ここで、変性に用いることのできるグリコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポチテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルグリコール類等が挙げられる。更には、これらのうちの2種類以上のグリコール及び/又はポリエーテルグリコールの共重合ポリエーテルグリコールを用いることもできる。
酸無水物の変性物においては、酸無水物1モルに対してグリコール0.4モル以下で変性させることが好ましい。変性量が上記上限値以下であると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎず、作業性が良好となる傾向にあり、また、エポキシ樹脂との硬化反応の速度も良好となる傾向にある。
以上で挙げた酸無水物硬化剤は1種のみでも2種以上を任意の組み合わせ及び配合量で組み合わせて用いてもよい。
酸無水物系硬化剤を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基に対する硬化剤中の官能基の当量比で0.8〜1.5の範囲となるように用いることが好ましい。この範囲内であると未反応のエポキシ基や硬化剤の官能基が残留しにくくなるために好ましい。
<フェノール系硬化剤>
フェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールA
ノボラック樹脂、トリスフェノールメタン型樹脂、ナフトールノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂等の種々の多価フェノール類や、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、キシレン樹脂とフェノール類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジメトキサイド重縮合物、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジハライド重縮合物、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジメトキサイドビフェニル重縮合物、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジハライドビフェニル重縮合物等の各種のフェノール樹脂類等が挙げられる。
これらのフェノール系硬化剤は、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも組成物の硬化後の耐熱性、硬化性等の観点から、上記フェノール性硬化剤の中でも、フェノールノボラック樹脂(例えば下記式(3)で表される化合物)、フェノールアラルキル樹脂(例えば下記式(4)で表される化合物)、ビフェニルアラルキル樹脂(例えば下記式(5)で表される化合物)、ナフトールノボラック樹脂(例えば下記式(6)で表される化合物)、ナフトールアラルキル樹脂(例えば下記式(7)で表される化合物)、トリスフェノールメタン型樹脂(例えば下記式(8)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジメトキサイド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジハライド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジメトキサイドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジハライドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10)で表される化合物)等が好ましく、特にフェノールノボラック樹脂(例えば下記式(3)で表される化合物)、フェノールアラルキル樹脂(例えば下記式(4)で表される化合物)、ビフェニルアラルキル樹脂(例えば下記式(5)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジメトキサイド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジハライド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジメトキサイドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジハライドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10)で表される化合物)が好ましい。
Figure 0006740619
(ただし、上記式(3)〜(8)において、k〜kはそれぞれ0以上の数を示す。)
Figure 0006740619
(ただし、上記式(9)、(10)においてk、k、l、lはそれぞれ1以上の数を示す。)
フェノール系硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分100重量部に対して好ましくは0.1〜1000重量部であり、より好ましくは500重量部以下、更に好ましくは300重量部以下、特に好ましくは100重量部以下である。
<アミン系硬化剤>
アミン系硬化剤としては、第3級アミン以外の硬化剤、例えば脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等、及びこれらの硬化剤以外の第3級アミン類があげられる。
第3級アミン以外の硬化剤を以下に列挙する。
脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等が例示される。
ポリエーテルアミン類としては、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が例示される。
脂環式アミン類としては、イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン等が例示される。
芳香族アミン類としては、テトラクロロ−p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノアニソール、2,4−トルエンジアミン、2,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ
−1,2−ジフェニルエタン、2,4−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−アミノフェノール、m−アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α−(m−アミノフェニル)エチルアミン、α−(p−アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が例示される。
上記列挙した第3級アミン以外のアミン系硬化剤は、その1種のみを用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、第3級アミンは、上記第1級アミンや第2級アミンと異なり、分子中に活性水素を有していないためエポキシ基との反応性が低いが、硬化促進剤として硬化反応の触媒作用を有し、かつその後硬化に寄与することがある、という特徴を有している。
このような第3級アミンとしては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が例示され、このような第3級アミンも、その1種のみを用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で用いてもよい。
これらのアミン系硬化剤及び第3級アミンは、フェノール樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基に対する硬化剤中の官能基の当量比(以下「当量配合比」と記す)として、0.8〜1.5の範囲となるように用いることが好ましい。また、硬化物の物性をより優れたものとするためには、上記当量配合比を0.9〜1.1とすることがより好ましい。当量配合比をこの範囲内とすることにより未反応のエポキシ基や硬化剤が残留しにくくなるので好ましい。
なお、当量配合比とは下記式によって定義される値である。
当量配合比=(硬化剤量(g)/硬化剤の当量(g/eq))/(エポキシ樹脂量(g)
/エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq))
(但し、「硬化剤の当量」は、一当量のエポキシ基と反応可能な硬化剤の質量である。)
<アミド系硬化剤>
アミド系硬化剤としてはジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
アミド系硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
アミド系硬化剤を用いる場合、フェノール樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分とアミド系硬化剤との合計に対してアミド系硬化剤が0.1〜20重量%となるようにすることが好ましい。
<イミダゾール類>
イミダゾール類としては、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイ
ミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類との付加体等が例示される。なお、イミダゾール類は触媒能を有するため、一般的には硬化促進剤にも分類されうるが、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
以上挙げたイミダゾール類は1種のみでも、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
イミダゾール類を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分とイミダゾール類との合計に対してイミダゾール類が0.1〜20重量%となるように用いることが好ましい。
<他の硬化剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物においては前記硬化剤以外にその他の硬化剤を用いることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物に使用することのできるその他の硬化剤は特に制限はなく、一般的にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用できる。これらの他の硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(3)他のエポキシ樹脂
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(1)以外に、エポキシ樹脂(1)に該当しない、他のエポキシ樹脂を含むことができる。他のエポキシ樹脂を含むことにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の耐熱性、耐応力性、耐吸湿性、難燃性等を向上させることができる。
本発明において用いることのできる他のエポキシ樹脂は、本発明の目的・効果を阻害しない限り、前記エポキシ樹脂(1)以外のエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる。
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、ビスフェノールシクロドデシル型エポキシ樹脂、ビスフェノールジイソプロピリデンレゾルシン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、メチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、チオジフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシスチルベン類から誘導されるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、テルペンフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒドの縮合物から誘導されるエポキシ樹脂、フェノール・クロトンアルデヒドの縮合物から誘導されるエポキシ樹脂、フェノール・グリオキザールの縮合物から誘導されるエポキシ樹脂、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂から誘導されるエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されるエポキシ樹脂、アミノフェノールから誘導されるエポキシ樹脂、キシレンジアミンから誘導されるエポキシ樹脂、メチルヘキサヒドロフタル酸から誘導されるエポキシ樹脂、ダイマー酸から誘導されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
これらは1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で用いてもよい。
これらのエポキシ樹脂の中でも組成物の流動性、及び硬化物の耐熱性や耐吸湿性や難燃性等を向上できる点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂及び4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型のエポキシ樹脂及びジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物が、上記の他のエポキシ樹脂を含む場合、その含有量は組成物中の、全エポキシ樹脂成分100重量部に対して好ましくは0.01〜60重量部であり、より好ましくは40重量部以下、更に好ましくは30重量部以下、特に好ましくは20重量部以下、一方、より好ましくは1重量部以上である。
(4)その他の組成物成分
(4−1)硬化促進剤
本発明のエポキシ樹脂組成物は硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤を含むことにより、硬化時間の短縮、硬化温度の低温化が可能となり、より容易に所望の硬化物を得ることができる。
硬化促進剤の種類としては、エポキシ樹脂の硬化反応を促進するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩等のリン系化合物、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等が例示できる。
硬化促進剤として使用できるリン系化合物として以下のようなものが例示できる。
1)有機ホスフィン類:トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等
2)有機ホスフィン類の誘導体:上記のような有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体、有機ホスフィン類と他の化合物との付加化合物
ここで用いることができる他の化合物としては、無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等が例示できる。
3)ホスホニウム塩:ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウム塩、アル
キルトリフェニルホスホニウム塩等を有する化合物が挙げられ、具体的には、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−メチルフェニルボレート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が例示できる。
上記例示した硬化促進剤の中でも有機ホスフィン類及びホスホニウム塩が好ましく、有機ホスフィン類が最も好ましい。また、硬化促進剤は、単独で用いても、また2種以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、これらの硬化促進剤は、全エポキシ樹脂成分100重量部に対して0.1重量以上20重量部以下の範囲で用いることが好ましく、その下限としては0.5重量部以上がより好ましく、更に好ましくは1重量部以上である。一方、上限値としては15重量部以下がより好ましく、更に好ましくは10重量部以下である。
硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることで、良好な硬化促進効果を得ることができ、上記上限値以下とすることで、所望の硬化物性を得やすくなる。
(4−2)無機充填剤
本発明のエポキシ樹脂組成物には無機充填剤を配合することができる。無機充填剤としては例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス粉、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、チッ化ホウ素等が挙げられる。これらは、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
無機充填剤を使用することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止材として用いたときに、半導体封止材の熱膨張係数を内部のシリコンチップやリードフレームに近づけることができ、また半導体封止材全体の吸湿量を減らすことができるため、耐ハンダクラック性を向上させることができる。中でも半導体封止材用のエポキシ樹脂組成物には、無機充填剤として破砕型及び/又は球状の、溶融及び/又は結晶性シリカ粉末充填剤を用いることが好ましい。
無機充填剤の平均粒子径は、通常1〜50μm、好ましくは1.5〜40μm、より好
ましくは2〜30μmである。平均粒子径が上記下限値以上であると溶融粘度があまり高くならないので、流動性が低下しにくい。また平均粒子径が上記上限値以下であると成形時に金型の隙間に充填材が目詰まりしにくく、材料の充填性が向上して成形不良が少なくなるので好ましい。
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物における無機充填剤の使用量は、エポキシ樹脂組成物全体の50〜95重量%の範囲であることが好ましい。
(4−3)離型剤
本発明のエポキシ樹脂成物には離型剤を配合することができる。離型剤としては例えば、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸類及びその金属塩類、パラフィン等の炭化水素系離型剤等を特に限定することなく用いることができる。これらは、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物における離型剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。離型剤の配合量を上記範囲内とすることでエポキシ樹脂組成物の硬化特性を維持しつつ、良好な離型性を発現することができるので好ましい。
(4−4)カップリング剤
本発明のエポキシ樹脂組成物には、カップリング剤を配合することが好ましい。カップリング剤を無機充填剤と併用すると、マトリックスであるエポキシ樹脂と無機充填剤との接着性を向上させることができる。このようなカップリング剤としてはシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキ
シル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン類、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン類などの他、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分子タイプのシラン類などが挙げられる。
チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
これらのカップリング剤は、1種のみで用いてもよく、またその2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物にカップリング剤を配合する場合の配合量は、全エポキシ樹脂成分100重量部に対し、0.1〜3.0重量部用いることが好ましい。カップリング剤の配合量を上記範囲内とすることで、カップリング剤によるエポキシ樹脂と無機充填材との密着性が向上するとともに、得られる硬化物からのカップリング剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
(4−5)その他の成分
本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記以外の成分(「その他の成分」と記すことがある)を配合することができる。このようなその他の成分としては例えば、難燃剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料等が挙げられ、必要に応じて本発明の趣旨・硬化を阻害しない範囲で適宜配合することができる。勿論、上記の「その他の成分」は単なる例示であり、これらの成分以外の成分を用いることを排除するものではない。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いることができる難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノール樹脂等のハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、赤燐、リン酸エステル類、ホスフィン類等のリン系難燃剤、メラミン誘導体等の窒素系難燃剤及び水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤等が挙げられる。
4.硬化反応と硬化物
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、本発明の硬化物を得ることができ、得られた硬化物は、耐熱分解性、耐熱応力性、及び耐吸湿性が優れている。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させる方法は特に限定されないが、通常、加熱による熱硬化反応により硬化させることができる。このときの加熱温度は用いる硬化剤の種類によって適宜選択すればよい。例えば、酸無水物系硬化剤を用いた場合、硬化温度は通常100〜300℃であり、フェノール系硬化剤を用いた場合の硬化温度は通常130〜300℃である。
この硬化反応は、硬化剤に加えて硬化促進剤を添加することにより、硬化温度を下げたり、硬化速度を高めたりすることも可能である。
硬化反応の反応時間は、通常1〜20時間程度で、好ましくは2〜18時間、より好ましくは3〜15時間である。反応時間を上記範囲とすることで、硬化反応が十分に進行しかつ加熱による樹脂成分等の劣化や加熱時の放熱ロスを少なくできる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に基づく硬化物は絶縁信頼性に優れている。特に、エポキシ樹脂硬化物の抽出水の塩素量抽出水の塩素量が1000ppm以下のように低いことは、高温高湿環境下における電気電子部品が絶縁悪化防止に有効である。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものでもあり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
1.原材料
(1)薬品類
本実施例で使用した薬品類は以下の通りである。
4−アミノフェノール:東京化成工業(株)製、試薬1級
エピクロルヒドリン:鹿島ケミカル(株)製
2−プロパノール:和光純薬工業(株)製、試薬特級
水酸化ナトリウム:和光純薬工業(株)製、試薬特級
水酸化カリウム:和光純薬工業(株)製、
メチルイソブチルケトン:和光純薬工業(株)製、試薬特級
アセトン:和光純薬工業(株)製、試薬特級
酢酸:和光純薬工業(株)製、氷酢酸
硝酸銀:和光純薬工業(株)製、試薬特級
(2)助剤類
樹脂組成物の硬化試験に用いた硬化剤、硬化促進剤は以下の通り。
硬化剤:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸(70/30混合物)(新日本理化(株)製、商品名:リカシッドMH−700(酸無水物当量:165g/当量))
硬化促進剤:2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(三菱化学(株)製、商品名:EMI−24)
2.分析・評価方法
本実施例における、エポキシ当量、加水分解性塩素量、全塩素量、及び粘度(25℃)の測定・評価方法は、本明細書の[発明を実施するための形態]の、[発明の詳細な説明]、「1.エポキシ化合物、エポキシ樹脂」の、(2)〜(5)に記載した通りである。
3.エポキシ樹脂の合成
(1)合成例
[合成例1:粗エポキシ樹脂の合成]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量5Lの四口フラスコに、4−アミノフェノール109g、エピクロルヒドリン1400g、2−プロパノール1400gを仕込み、系内を減圧として窒素置換した後、窒素雰囲気下で撹拌して均一に溶解させた。
60℃に昇温して3時間撹拌した後、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:48.5重量%
)406gを90分かけて滴下した。滴下終了後、60℃で30分間保持して反応を完了させた。
水1000mLを追加した後、分液ロートに反応液を移し、温度を60℃に保って1時間静置して油層と水層に分離した。ここから水層を抜き出して、副生塩及び過剰の水酸化ナトリウムを除去した。
次いで、油層から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンと2−プロパノールを留去して、粗エポキシ樹脂を得た。この粗エポキシ樹脂はエポキシ当量:96g/当量、25℃の粘度:700mPa・s、加水分解性塩素:3000ppm、全塩素:5000ppmであった。
(2)実施例、比較例
(2−1)エポキシ樹脂の合成
[実施例1]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの四口フラスコに、合成例1で得られた粗エポキシ樹脂100g、反応溶剤のメチルイソブチルケトン300gを仕込み、系内を減圧にして窒素置換した。
窒素雰囲気下、加温下で撹拌して均一に溶解した後、60℃に昇温して1時間撹拌した。
ここに反応触媒として8重量%水酸化カリウム/2−プロパノール溶液29gを一括投入し、1時間反応させた。反応終了後、水を加えた後、分液ロートに反応液を移して60℃に保った状態で1時間静置し油水分離を行った。ここから水層を抜き出し、副生塩及び過剰の水酸化カリウムを除去した。次いで、油層から減圧下でメチルイソブチルケトンを留去して、本発明のエポキシ樹脂を得た。
[実施例2]
反応時間を2時間にしたこと以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂を得た。
[実施例3]
反応時間を1時間として、反応触媒を8重量%水酸化カリウム/2−プロパノール溶液15gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂を得た。
[実施例4]
反応時間を2時間として、反応触媒を8重量%水酸化カリウム/2−プロパノール溶液15gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂を得た。
[比較例1]
反応溶剤をメチルイソブチルケトン203g、反応温度を65℃、反応触媒を8重量%水酸化カリウム/2−プロパノール溶液から48重量%水酸化ナトリウム水溶液2gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂を得た(特開2005-314512
の実施例1に記載の生成工程)。
[比較例2]
反応溶剤をメチルイソブチルケトン150g、反応温度を50℃、反応触媒を8重量%水酸化カリウム/2−プロパノール溶液から20重量%水酸化カリウム/エタノール溶液3gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂を得た。(特開2005-3
14512の実施例2に記載の生成工程)
[比較例3]
反応溶剤をメチルイソブチルケトン150g、反応温度を50℃、反応触媒を8重量%水酸化カリウム/2−プロパノール溶液9gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂を得た。
[比較例4]
反応溶剤をメチルイソブチルケトン150g、反応温度を50℃、反応触媒を8重量%水酸化カリウム/2−プロパノール溶液36gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂を得た。
[比較例5]
反応溶剤をメチルイソブチルケトン150g、反応温度を80℃、反応触媒を8重量%水酸化カリウム/2−プロパノール溶液9gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂を得た。
[比較例6]
反応溶剤をメチルイソブチルケトン150g、反応温度を65℃、反応触媒を8重量%水酸化カリウム/2−プロパノール溶液3gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂を得た。
(2−2)油水分離性
上記の実施例、比較例において、反応終了後の分液ロートを用いた油水分離操作において、1時間静置後に油層と水層が完全に分離したものを「○」、界面部分が乳濁状態となって十分分離しなかったものを「×」とした。
(2−3)エポキシ当量、加水分解性塩素量、全塩素量、25℃における粘度
油水分離によって分離した油層を採取して、前述の方法で上記各項目を測定・評価した。
なお、乳濁液部分が生成した試料は、透明層が形成した油層部分のみを回収して測定試料とし、エマルジョン層及び水層は廃棄した。
実施例1〜4及び比較例1〜6の反応生成物の分離状況及び得られたエポキシ樹脂の諸
物性の測定結果を表1、2に示す。
Figure 0006740619
Figure 0006740619
4.エポキシ樹脂組成物の製造及び評価
(1)エポキシ樹脂組成物
[実施例5〜8及び比較例7,8]
表3に示す割合でエポキシ樹脂と硬化剤を配合し、100℃に加熱して均一になるまで撹拌した。その後、80℃まで冷却し、硬化促進剤を同表(表3)に示す割合で添加し、均一になるまで撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物50gを80℃でアルミ皿に注型し、100℃で3時間、
140℃で3時間加熱し、硬化させて硬化物を得た。
なお、表3において、「部」は「重量部」を表す。
(2)硬化物の評価(抽出水の塩素量)
上記で得られた硬化物をワンダーブレンダー(大阪ケミカル(株)製)で粉砕し、20メッシュの金網を通して、粉砕された硬化物を作成した。
この硬化物をポリエチレン製の瓶に8g秤取し、超純水を80mL加えた後、密閉して、95℃の乾燥機中で加熱した。20時間加熱した後、室温まで冷却し、内容物をろ紙5Aでろ過して抽出水を得た。
得られた抽出水1gをビーカーに入れ、アセトン100mL、酢酸25mLを追加し、0.002モル/L濃度の硝酸銀溶液を用いて、電位差滴定法により塩素量を測定した。得られた結果を表3に示す。
Figure 0006740619
4.結果の評価
表1、2より本発明の範囲内のエポキシ当量、加水分解性塩素量、全塩素量、25℃の粘度が本発明の規定範囲内である、実施例1〜4のエポキシ樹脂は、比較例1、2、6のエポキシ樹脂に対し、加水分解性塩素量、全塩素量が良好である。
また、実施例1〜4のエポキシ樹脂は比較例3〜5のエポキシ樹脂に対し、水洗時の分離状況や、品質バランスに優れていることも見られる。
表3より、加水分解性塩素量、全塩素量が本発明の規定範囲内である本発明のエポキシ樹脂を用いた実施例5〜8のエポキシ樹脂硬化物は、比較例7〜9に示す、本発明の範囲外のエポキシ樹脂を用いた硬化物に対し、抽出水の塩素量が少ないので、成形品とした時の絶縁信頼性に優れていると考えられる。
本発明により得られたエポキシ樹脂は常温での粘度が低く取扱い性が良好で、これより得られる組成物は成形品は絶縁信頼性に優れている。
このような特性は、例えば、自動車用電着塗料、船舶・橋梁用重防食塗料、飲料用缶の内面塗装用塗料等の塗料分野;積層板、半導体封止材、絶縁粉体塗料、コイル含浸用等の電気電子分野;橋梁の耐震補強、コンクリート補強、建築物の床材、水道施設のライニング、排水・透水舗装、車両・航空機用接着剤の土木・建築・接着剤分野等の用途のいずれにも好ましいものであり、特に半導体封止材・積層板のような電気・電子用途における、封止材その他に有用である。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表されるエポキシ化合物由来の構成単位を含有するエポキシ樹脂であって、以下の性状を有することを特徴とするエポキシ樹脂。
    (a)エポキシ当量:97〜110g/eq
    (b)25℃の粘度:800〜1500mPa・s
    (c)加水分解性塩素:1000ppm以下
    (d)全塩素:2060ppm以上3000ppm以下
    Figure 0006740619
  2. 請求項1に記載のエポキシ樹脂と、該エポキシ樹脂100重量部あたり0.01〜1000重量部の硬化剤とを含有してなるエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記硬化剤が、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、及びアミド系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤であることを特徴とする請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 更に、請求項1に記載のエポキシ樹脂とは異なるエポキシ樹脂を含有することを特徴とする、請求項2又は3に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
  6. 請求項5に記載の硬化物からなる電気・電子部品。
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