JP6739359B2 - 変圧器 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器巻線からの漏れ磁束による損失を低減することができる変圧器に関するものである。
近年の電力需要の高まりから、変圧器は益々大容量化される傾向にある。それに伴い、変圧器巻線からの漏れ磁束も増大する傾向にある。漏れ磁束による損失増加は、変圧器内部における局部的な温度上昇を引き起こし、絶縁物の劣化や変圧器油の冷却効率低下などの観点から問題となる。
とりわけ、巻線の近くに配置されている下部鉄心締付金具については、巻線からの漏れ磁束が多く鎖交することから、損失が大きい。下部鉄心締付金具における損失を低減する方法として、特許文献1では、下部鉄心締付金具に磁気シールドを配置する方策が示されている。この発明では、磁気シールドを下部鉄心締付金具の反鉄心側の側面に配置することで、下部鉄心締付金具での漏れ磁束による発生損失を効果的に低減することが可能であるとしている。
また、特許文献2では、下部鉄心締付金具の巻線側に非磁性体からなる磁気シールドを配置し、さらに、下部鉄心締付金具の反巻線側に強磁性体からなる磁気シールドを配置する。これらの磁気シールドによって、下部鉄心締付金具付近の磁束の流れを制御し、巻線からの漏れ磁束による発生損失を低減している。
特開昭60−57911号公報 特開2014−60235号公報
下部鉄心締付金具には鉄心と下部鉄心締付金具を連結して固定するために、作業用穴が反鉄心側の側面に設けられていて、その穴を塞ぐための蓋が設置される。特許文献1のような構造では、一体物の磁気シールドを下部鉄心締付金具の反鉄心側の側面に配置することが困難であるという課題がある。
この課題を解決するために、特許文献2では、磁気シールドを下部鉄心締付金具の巻線面・反巻線面に配置して、漏れ磁束の流れを制御している。しかし、下部鉄心締付金具の巻線側には、巻線の冷却のために送油孔が設けられているため、磁気シールドに送油孔を設ける加工が必要となり、作業工数が増大する。また、下部鉄心締付金具の巻線面・反巻線面に磁気シールドを施した場合、磁気シールドの厚み分だけ変圧器寸法が大きくなり、変圧器重量や材料コストが増大する。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、変圧器本体の低損失化を図り、下部鉄心締付金具での損失集中や局部的な温度上昇による製品の不具合を除去した変圧器を提供する。
本発明は、複数の鉄心脚部と、前記鉄心脚部の上下端に配置された上部鉄心部および下部鉄心部と、前記鉄心脚部に巻回された巻線と、前記巻線の上下端に配置され前記巻線を狭持する上部鉄心締付金具および下部鉄心締付金具と、これらを収容するタンクで構成された変圧器において、前記下部鉄心締付金具の前記巻線の面を、送油孔を設けた絶縁物で構成し、さらに、前記巻線の支持部材を備えたことを特徴とする。
本発明の変圧器によれば、巻線からの漏れ磁束による発生損失が大きい下部鉄心締付金具における損失を低減できる。また、下部鉄心締付金具における過大な損失集中や局部的な温度上昇による不具合を防止できる。
下部鉄心締付金具を有する変圧器の巻線から生じる漏れ磁束の流れを模式的に示した図である。 実施例1における変圧器の要部断面図である。 巻線短絡時に巻線に働くコイル周方向の電磁力を模式的に示した図である。 巻線短絡時に巻線に働くコイル軸方向の電磁力を模式的に示した図である。 実施例1における巻線を支持するために設けるT字形の支持部材の例である。 実施例1における巻線を支持するために設ける板状の支持部材の例である。 実施例1における三相五脚鉄心構造の変圧器を上方より示す断面図である。 実施例1における下部鉄心締付金具の構成を示した図である。 実施例2における三相五脚鉄心構造の変圧器を上方から示すとともに、巻線からの漏れ磁束を矢印で示した図である。 実施例2において、巻線を支持するための支持部材に鎖交する磁束によって発生する渦電流を模式的に示した図である。 実施例2において、巻線を支持するための支持部材にスリットを施した場合に、支持部材を流れる渦電流を模式的に示した図である。
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は、下部鉄心締付金具を有する変圧器の巻線から生じる漏れ磁束の流れを模式的に示した図である。図1に示すように変圧器は鉄心脚部1、上部鉄心部2、下部鉄心部3、巻線4、上部鉄心締付金具5、下部鉄心締付金具6、変圧器のタンク7から構成される。下部鉄心締付金具6は鉄心側の側面、巻線側となる上面、反鉄心側となる側面、反巻線側となる下面で構成される。下部鉄心締付金具6の上面には、巻線4を冷却するための送油孔8が設けられている。
また、下部鉄心締付金具6の反鉄心側の側面には、鉄心脚部1を支えるための鉄心支持台9と、下部鉄心締付金具6の反巻線側を締結して固定するための作業用穴10が設けられている。この作業用穴10を塞いで冷却用油道20を確保するために、下部鉄心締付金具6の反鉄心側の外側に蓋11が設けられている。
巻線4からの漏れ磁束50は、矢印で示すように下部鉄心締付金具6を通り、下部鉄心部3に流れ込む。下部鉄心締付金具6の上面は、巻線4と対向しており、多くの漏れ磁束50が鎖交する。ゆえに、下部鉄心締付金具6の上面では、鎖交する磁束の変化量に応じて発生する渦電流による損失が大きくなる。
下部鉄心締付金具6の上面は、巻線支持部の絶縁体13と密着する構造である。そのため、下部鉄心締付金具6の上面で発生する損失は、冷却されにくく、過大な損失が発生した場合には、巻線支持部の絶縁体13を損傷してしまう恐れがある。
以下、本実施例の構成について図2を用いて説明する。同図において、図1と同一の部分には同じ参照番号を付記し、説明は省略する。下部鉄心締付金具6の上面は、絶縁物15によって構成される。下部鉄心締付金具6の上面に用いる絶縁物15は、強度や加工性を考慮して、プレスボードやフェノール樹脂、FRP、絶縁木とするのが好ましい。また、下部鉄心締付金具6は冷却用油道20の機能を備えているため、絶縁物15と下部鉄心締付金具6は密着している必要があり、下部鉄心締付金具6と絶縁物15は、ボルトあるいは接着剤で接合される。接着剤は、たとえば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂やフッ素ゴム接着剤が好ましい。以上の構造を適用することで、巻線4からの漏れ磁束50が下部鉄心締付金具6に鎖交することで生じる損失を大幅に低減することができる。
図3および図4に、一次巻線30と二次巻線31を含む巻線4に働く電磁力32を示す。電磁力32を示す矢印の向きは、電磁力32の方向を示している。図3のように巻線4には、水平方向に電磁力32が働く。巻線4に水平方向の電磁力32が作用すると、図4に示すように巻線4は上下方向にも変形し、振動する。巻線4の上下方向の振動は、図1に示す巻線支持部の絶縁体13を介して、下部鉄心締付金具6に加わる。
図2のように、下部鉄心締付金具6の上面を絶縁物15で構成した場合、電磁力32に起因する振動を受けて絶縁物15が破損する可能性がある。絶縁物15が破損した場合、冷却用油道20から絶縁媒体12が漏れ、巻線4を効率的に冷却できなくなる恐れがある。そこで、下部鉄心締付金具6には、巻線4の重量および電磁力32を支持するための支持部材14が設けられる。支持部材14は、強度を鑑みて、例えば、図5に示すような金属製のT字型支持部材40を下部鉄心締付金具に設けた構造や、図6に示すように下部鉄心締付金具6の上面の巻線と対向する部分に板状支持部材41を設ける構造にすることが望ましい。下部鉄心締付金具6と巻線の支持部材14は、例えば、溶接によって接続される。
図7に図1の三相五脚鉄心構造を上から見た要部平面図を示す。下部鉄心締付金具6に設けられる巻線4の支持部材14は、巻線4の重量と巻線4から加わる電磁力32を支持することを目的としているため、巻線4の直下に配置するのが望ましい。加えて、下部鉄心締付金具6の上面の巻線4と対向する部分には、巻線4を冷却するために、冷却用の送油孔8が設けられ、絶縁媒体12が巻線4へ送られる。図8に示すように、下部鉄心締付金具6の上面に配置される絶縁物15は、下部鉄心締付金具6の上面において、巻線4の支持部材14が配置されていない部分に設けられる。
本実施例の構造では、下部鉄心締付金具6の上面を構成する金属板を省略できることから、従来の構造よりも重量を低減できる。また、従来の構造では、巻線4の冷却用の送油孔8を下部鉄心締付金具6の上面に使用する金属板に設ける必要があったが、本実施例に示す構造では、加工が比較的容易な絶縁物に送油孔8を設ければ良く、作業性が向上する。さらに、本実施例の構成を採用することで、損失低減効果を期待できるので、変圧器の小型軽量化を図る設計が可能となる。
図9は実施例2における三相五脚鉄心構造の変圧器を上方から示すとともに、巻線からの漏れ磁束を矢印で示した図である。下部鉄心締付金具6を有した三相五脚鉄心構造の変圧器において、巻線4の支持部材を板状の部材で構成している。また支持部材には強磁性体が施され強磁性体支持部材16としている。強磁性体としては、例えば、珪素鋼板が考えられる。また、巻線4の支持部材の表面には、図11に示すようなスリットが施されている。実施例1と同一部分については同一符号を付記して、その説明を省略する。
以下、本実施例の巻線から生じる漏れ磁束50の流れについて、図9を参照して説明する。巻線4から生じる漏れ磁束50の大部分は矢印のように、強磁性体で構成された巻線4の強磁性体支持部材16、下部鉄心締付金具6を経由して、他相あるいは下部鉄心部3に流れ込む。巻線4の支持部材を強磁性体で構成することにより、下部鉄心締付金具6の側面に鎖交する巻線4からの漏れ磁束50を低減することができるため、下部鉄心締付金具6の側面における損失を低減することができる。
下部鉄心締付金具6の相間部(各巻線の間)を流れる漏れ磁束50は、巻線4の直下に配置された巻線4の強磁性体支持部材16を通り、他相の巻線4へ流れる。図10および図11は、下部鉄心締付金具6を上方から見た要部平面図である。図10に示すように巻線4の強磁性体支持部材16には、漏れ磁束50によって渦電流61が流れる。なお、図10では紙面上向きに流れる漏れ磁束50を示している。これによって、巻線4の強磁性体支持部材16で渦電流損が発生する。この渦電流損を抑制するために、巻線4の強磁性体支持部材16の表面に、図11に示すスリット60を設ける。渦電流61のループが小さくなることで、巻線4の強磁性体支持部材16で発生する渦電流損を低減できる。
以上のように、巻線4の支持部材に強磁性体を使用し、さらに、その表面にスリット60を設けることで、下部鉄心締付金具6の側面および巻線4の強磁性体支持部材16における損失を削減することができる。これによって、実施例1よりも過大な損失発生や温度上昇を抑制することが可能となる。なお本実施例での強磁性体支持部材16は図5のようにT字形の支持部材としてもよい。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1:鉄心脚部
2:上部鉄心部
3:下部鉄心部
4:巻線
5:上部鉄心締付金具
6:下部鉄心締付金具
7:タンク
8:送油孔
9:鉄心支持台
10:作業用穴
11:蓋
12:絶縁媒体
13:巻線支持部の絶縁体
14:支持部材
15:絶縁物
16:強磁性体支持部材
20:冷却用油道
30:一次巻線
31:二次巻線
32:電磁力
40:T字型支持部材
41:板状支持部材
50:漏れ磁束
60:スリット
61:渦電流

Claims (6)

  1. 複数の鉄心脚部と、
    前記鉄心脚部の上下端に配置された上部鉄心部および下部鉄心部と、
    前記鉄心脚部に巻回された巻線と、
    前記巻線の上下端に配置され前記巻線を狭持する上部鉄心締付金具および下部鉄心締付金具と、
    これらを収容するタンクで構成された変圧器において、
    前記下部鉄心締付金具の前記巻線の面を、送油孔を設けた絶縁物で構成し、さらに、前記巻線の支持部材を備えたことを特徴とする変圧器。
  2. 請求項1に記載の変圧器において、
    前記支持部材をT字形の支持部材で構成したことを特徴とする変圧器。
  3. 請求項1に記載の変圧器において、
    前記支持部材を板状の部材で構成したことを特徴とする変圧器。
  4. 請求項3に記載の変圧器において、
    前記支持部材として、さらに強磁性体を用いたことを特徴とする変圧器。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の変圧器において、
    前記下部鉄心締付金具の上面の複数個所に前記支持部材を配置したことを特徴とする変圧器。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の変圧器において、
    前記支持部材の表面にスリットを施したことを特徴とする変圧器。
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