<ハニカム構造体>
まず、本実施の形態において端面が欠陥検査の対象とされるハニカム構造体について説明する。図1は、ハニカム構造体1の外観斜視図である。図2はハニカム構造体1の一方の端面1aの部分拡大模式図である。
ハニカム構造体1は、内部にいわゆるハニカム構造を有する円筒状のセラミックス製の構造体(セラミックス体)である。ハニカム構造体1は、円筒状をなす外壁1wに囲繞された内部に、複数のハニカムセグメント2aを格子状に配置してなるものである。隣り合うハニカムセグメント2a同士は、接合部2bによって接合されてなる。また、それぞれのハニカムセグメント2aは、四角柱状の(断面視四角形状の)複数のセル3を有する。それぞれのセル3は、隔壁4(図2(a)参照)によって区画されてなり、ハニカム構造体1の中心軸の方向(軸方向)に沿っている。ただし、セル3は、その長手方向がハニカム構造体1の中心軸に対して傾斜している斜角柱状をなしていてもよい。いずれの場合も、それぞれのハニカムセグメント2aにおいて、セル3はハニカム構造体1の端面1aにおいて二次元正方格子状に配置されている。なお、特に断らない限り、本明細書において、ハニカム構造体1およびセル3の断面とは、ハニカム構造体1の中心軸に垂直な断面を指し示すものとする。
例えば、外壁1wの厚みは100μm〜1500μm程度であり、接合部2bの厚みは500μm〜2000μm程度であり、隔壁4の厚みは150μm〜400μm程度であり、セル3のサイズを規定することとなる隔壁4のピッチは1.0mm〜2.5mm程度である。また、ハニカム構造体1の軸方向の長さは100mm〜300mm程度であり、軸方向に垂直な断面における半径(断面半径)は100mm〜200mm程度である。
より詳細には、セル3としては、端面1aにおいて開口する第1セル3aと、端面1aにおいて目封止5が施された(目封止5によって元々存在した開口部が塞がれた)第2セル3bとが存在する。それぞれのハニカムセグメント2aにおいて、第1セル3aと第2セル3bとは、交互に(市松模様に)配置されている。なお、他方の端面1bにおいては、第1セル3aに目封止が施されており、第2セル3bが開口している。なお、以降においては、第1セル3aの端面1aにおける開口部を単に、第1セル3aと称することがある。
ハニカム構造体1は、セラミック(例えば、コージェライト、SiC、アルミナなど)の焼成体である。ハニカム構造体1の作製は概略、以下のように行われる。
まず、その構成材料となるセラミックの粉体を有機バインダ、水等とともに混練することにより得られる粘土状の坏土を押出成形法によってハニカムセグメントの形状に成形することにより、ハニカムセグメント2aの成形体を得る。このようにして得られる複数のハニカムセグメント成形体を所定の接合材料により接合してハニカム成形体(ハニカムセグメント集合体)を得る。接合材料としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の充填材に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤、水等を加えて混練したスラリーなどが例示される。
そして、係るハニカム成形体を焼成することでいったん目封止のないハニカム焼成体を作製した後、該ハニカム焼成体に対し目封止処理を施して対象となるセル3に目封止5を形成する。係る目封止5は例えば、目封止5を設けない(第1セル3aとする)セル3の端部をマスキングした後、ハニカム焼成体の端部を該ハニカム焼成体の形成に用いたものと同じセラミックス粉体を含有するスラリー状の充填材に浸漬することによって、開口しているセルに該充填材を充填し、続いてハニカム焼成体を再度焼成することで、形成される。
なお、図1および図2(a)においては理解の助けのために、端面1aにおいてセラミックスからなる部分に斜線を付す一方で目封止されている第2セル3bを(より詳細には第2セル3bを区画する隔壁4を)波線にて示しているが、実際の(欠陥のない)端面1aにおいては、目封止5が周りと区別して視認されることもあれば、図2(b)に示すように、図面において斜線にて示すセラミックス面6に第1セル3aが正方格子状に配置されているように視認されることもある。
図3および図4は、以上のような形態をなしているハニカム構造体1の端面1aに生じる可能性のある欠陥について説明するための図である。なお、端面1aには接合部2bも含まれるが、以降において端面1aの欠陥あるいは端面1aに対する欠陥検査について議論するにあたっては、ハニカム構造体としての機能に寄与しない部位である接合部2bは除外するものとする。ハニカム構造体1の端面1aに生じる可能性のある欠陥としては、いずれも端面1aに対して凹部となる、クラックdf1や、欠けdf2、エグレdf3が、例示される。図3は、これらの欠陥と、正常な(欠陥のない)セラミックス面6に存在する製品規格上問題の無い通常の表面凹凸nsとを模式的に示す斜視図であり、図4は、これらの欠陥がセラミックス面6に形成された様子を例示する上面図である。
図3(a)に示すクラックdf1は、例えば焼成時のハニカム焼成体の収縮に伴ってセラミックス面6に形成される亀裂(凹部)である。クラックdf1は、おおよそ100μm〜300μm程度の幅および160μm〜1000μm程度の深さにて形成される。なお、クラックdf1は、図4に示すように、セラミックス面6において開口する第1セル3a(換言すれば隔壁4の端部)を起点として形成されやすく、ある一の第1セル3aから他の第1セル3aに渡って形成されることもある。
図3(b)に示す欠けdf2は、例えば焼成時あるいは焼成後にセラミックス面6の一部が欠落(脱落)することによって形成される凹部である。欠けdf2は、おおよそ380μm〜500μm程度の幅および200μm〜1000μm程度の深さにて形成される。
また、図3(c)に示すエグレdf3は、例えば焼成時にセラミックス面6において局所的に変形異常が生じるなどの要因によって形成される凹部である。エグレdf3は、おおよそ700μm〜1500μm程度の幅および350μm〜2000μm程度の深さにて形成される。
なお、図4においては端面1aにおいて欠けdf2が第1セル3aに連続して形成され、エグレdf3がセラミックス面6の第1セル3aから離隔した部分(目封止5が施されている部分)に形成されている場合を例示しているが、実際の欠けdf2およびエグレdf3の形成態様はこれに限られるものではない。例えば、エグレdf3が第1セル3aに連続して形成されることもある。
概略的にいえば、クラックdf1、欠けdf2、エグレdf3はいずれも凹部であるが、クラックdf1には、欠けdf2やエグレdf3に比して、幅に対する深さの比率が大きいという特徴がある。一方、欠けdf2とエグレdf3とは形成要因において違いはあるが、サイズは同程度となることがあり、後述する欠陥検査の際にそれらを区別する必要はない。むしろ重要であるのは、正常な(欠陥のない)セラミックス面6が50μm〜500μm程度の凸部間隔および40μm〜300μm程度の深さで図3(d)に示すような表面凹凸nsを有するところ、そのような製品規格上問題の無い通常の表面凹凸nsを欠けdf2やエグレdf3と誤検出しないことである。
以降、このような、端面1aに生じ得る欠陥の検査に関する詳細について、説明する。
<欠陥検査の基本的考え方>
まず、本実施の形態において行う欠陥検査の基本的な考え方について説明する。本実施の形態において行う欠陥検査は、上述のような構成を有するハニカム構造体1の端面1aを対象に行うものであり、概略的には、端面1aに対し斜め方向から照明光を照射したときに、当該端面1aに欠陥が存在していればその存在位置に影領域(周囲に比して輝度の小さい領域)が形成されることを利用して、欠陥の有無を検査するというものであるが、その照明光の照射の仕方および判定用の画像の生成の仕方に特徴を有するものとなっている。
図5は、ハニカム構造体1の端面1aに対していくつかの方向から照明光を照射した場合の様子を模式的に示す図である。
図5(a)は、端面1aが略水平になるようにハニカム構造体1を配置した状態において、端面1aに対し斜め方向から照明光Laを照射した場合の概略上面図であり、図5(b)は照明光Laの照射方向を含む断面についての概略断面図である。係る場合において、端面1aに図5(b)に示すような欠陥(凹部)df4が存在すると、欠陥df4の形状(幅、深さ)および照明光Laの照射角度(照射方向が水平面となす角)によっては、端面1aおよび欠陥df4の大部分は照明光Laの被照射領域RE1aとなる一方で、欠陥df4のうち左側の斜面近傍は照明光Laの当たらない影領域RE2aとなる。
同様に、ハニカム構造体1の配置を図5(a)、(b)の場合と同じにした状態で、ハニカム構造体1の端面1aに対して照明光Lbを照射した場合の概略上面図および照明光Lbの照射方向を含む概略断面図がそれぞれ図5(c)、(d)であり、照明光Lcを照射した場合の概略上面図および照明光Lcの照射方向を含む概略断面図がそれぞれ図5(e)、(f)であり、照明光Ldを照射した場合の概略上面図および照明光Ldの照射方向を含む概略断面図がそれぞれ図5(g)、(h)である。ただし、照明光La、Lb、Lc、Ldの照射角度は全て同じであり、照明光La、Lb、Lc、Ldの照射方向は水平面内において互いに90°ずつ離隔しており、かつ、照明光La、Lb、Lc、Ldの照射範囲は同一であるとする。
照明光Laを照射した場合と同様、照明光Lbを照射した場合には、端面1aおよび欠陥df4の大部分は照明光Lbの被照射領域RE1bとなる一方で、欠陥df4のうち図面上は明示的には現れていない図面視奥側の部分には照明光Lbの当たらない影領域RE2bが存在することになる。
また、照明光Lcを照射した場合には、端面1aおよび欠陥df4の大部分は照明光Lcの被照射領域RE1cとなる一方で、欠陥df4のうち図面視右側の斜面近傍は照明光Lcの当たらない影領域RE2cとなる。
さらには、照明光Ldを照射した場合には、端面1aおよび欠陥df4の大部分は照明光Ldの被照射領域RE1dとなる一方で、欠陥df4のうち図面上は明示的には現れていない図面視手前側の斜面近傍は照明光Ldの当たらない影領域が存在することになる。
このように、欠陥df4が存在する端面1aに対し相異なる方向から斜め方向に照明光を照射した場合、それぞれにおいて欠陥df4に対応して形成される影領域の位置および形状は互いに異なっており、しかも、いずれの場合も欠陥df4の全体に対応するわけではない。
ただし、それぞれの影領域の位置および形状が異なるということは、別の見方をすれば、それぞれの影領域が、欠陥df4の相異なる部分の情報を与えているということでもある。この点を鑑みて、図5(b)、(d)、(f)、(h)の場合に形成された影領域を仮想的に重畳させたものが図5(i)である。この場合、被照射領域RE1は欠陥df4以外の部分のみであり、欠陥df4は全体として影領域RE2となっている。換言すれば、欠陥の実際のサイズに近いサイズで影領域RE2が形成されているということになる。
このことは、図5(a)、(c)、(e)、(g)に示すように相異なる方向から斜めに照明光を照射しつつ端面1aを逐次に撮像し、それぞれの場合に得られる撮像画像を影領域が重畳するように合成して合成画像を生成し、該合成画像に基づいて欠陥の有無を判定するようにすれば、単に斜め方向の照明光を照射した状態で得られる像を用いて判定を行う場合に比して、判定の確度が高められることを意味している。
なお、図5においては、水平面内において互いに90°ずつ離隔した4つの方向から照明光を照射する態様を例示しているが、これは例示であって、さらに多くの方向から照明光を照射する態様であってもよい。
確認的にいえば、相異なる方向から複数の照明光を同時に照射する態様、例えば、例えば互いに対向する位置にて照射される照明光Laと照明光Lcとを同時に照射する態様は、一方のみの照射によって影領域となるところに他方が照射されることによって影領域が形成されなくするものであることから、当該態様が影領域に基づく欠陥判定の確実性を高めるという作用効果を奏することはない。すなわち、本実施の形態においてはあくまで、相異なる複数の方向から個別に照明光を照射してそれぞれに像を得ることに技術的な意義を有する。
次に、図6は、照明光の照射角度の違いが欠陥の検出に与える影響を説明するための図である。一般に、ある凹凸が存在する領域に対して斜めに照明光を照射する場合、その照射角度が大きいほど、かつ、凹凸の深さが小さいほど、影領域は形成されにくくなる。
例えば図6(a)に示すように、ある比較的小さい照射角度の照明光Llがセラミックス面6に存在する通常の凹凸部分である表面凹凸nsに対して照射される場合に、その一部である部分aが影領域となる場合であっても、図6(b)に示すように、照明光Llよりも照射角度が大きい照明光Lhが図6(a)と同じ表面凹凸nsに照射される場合には影領域が形成されないことがある。
これに対し、図6(c)、(d)においてはそれぞれ、セラミックス面6に存在する表面凹凸nsにおける凸部間隔と同程度の幅を有しつつも表面凹凸nsの凹凸深さよりも大きな深さを有するクラックdf5の存在する部分に対し、照明光Llおよび照明光Lhが照射された場合の様子を示している。
係る場合、図6(c)に示すように、照明光Llの照射によってクラックdf5の一部である部分bが影領域となるのみならず、図6(d)に示すような照明光Lhの照射によっても、部分bよりは狭くはなるものの、クラックdf5の一部である部分cが影領域となることがある。
仮に、照明光Llを照射することで得られる端面1aの像に基づいて欠陥判定を行うと、通常の表面凹凸nsに形成される影領域の位置に欠陥が存在すると誤判定してしまう恐れがある。それゆえ、クラックdf5のみを確実に検出し表面凹凸nsを欠陥として誤検出しないためには、照明光Lhのような比較的大きな照射角度の照明光の照射が好ましいということになる。
ただし、クラックに比して深さが小さく幅が大きい欠陥である欠けやエグレの場合も、照射角度が大きいと検出されにくくなる傾向がある。それゆえ、本実施の形態においては、照明光の照射角度を使い分け、それぞれの場合における端面1aの像に現れる暗部の特徴に応じてあらかじめ定めた閾値に基づいて、欠陥の有無を判定することで、確実な判定を実現するようにしている。
<欠陥検査装置>
図7は、本実施の形態において欠陥検査を行う欠陥検査装置1000の構成を示すブロック図である。本実施の形態に欠陥検査装置1000は、上述した基本的考え方に基づく欠陥検査を好適に行えることに加えて、係る欠陥検査の対象から除外すべき領域を迅速かつ確実に特定することができるようになっている点で特徴的である。
欠陥検査装置1000は、検査対象たるハニカム構造体1が載置されるテーブルTと、該テーブルTに載置されたハニカム構造体1に対して照明光を照射しつつ撮像を行う撮像実行部100と、係る撮像実行部100の制御と撮像実行部100において得られた撮像画像に基づく欠陥判定とを行う制御手段200とを主として備える。
撮像実行部100は、テーブルTに載置されたハニカム構造体1を撮像するカメラ(例えばCCDカメラ)110と、カメラ110における撮像を制御する制御部(カメラドライバー)である撮像制御部111と、それぞれにハニカム構造体1に対して照明光を照射する低角度照明部115、中角度照明部120、および高角度照明部130と、撮像実行部100をテーブルTに載置されたハニカム構造体1に対して移動させるための移動機構140とを主として備える。
図8は、撮像実行部100の要部の下面図(鉛直下方から撮像実行部100を見上げた図)であり、図9は、図8のA1−A1’断面図である。ここで、図8のA1−A1’断面とは、カメラ110の光軸CXを含む鉛直断面であって、かつ、後述する低角度単位照明116a、低角度単位照明116e、中角度単位照明121a、および中角度単位照明121eのそれぞれの対称面でもあり、さらには、高角度単位照明131aと高角度単位照明131bの間を通る面かつ高角度単位照明131eと高角度単位照明131fの間を通る面である。ただし、図9においては図示の都合上、A1−A1’断面が高角度単位照明131aと高角度単位照明131eとを通るものとしている。
加えて、図9においては、理解の容易のため、図9において図示を省略するテーブルTの上に載置されたハニカム構造体1についても併せて示している。また、図8および図9には、鉛直方向をz軸方向とする右手系のxyz座標を付しており、図8の図面視左右方向をx軸方向とし、図面視上下方向をy軸方向としている。これにより、図8のA1−A1’断面である図9は、zx断面図ともなっている。
検査の際、ハニカム構造体1は、図9に示すように検査対象面たる端面1aが水平な上面となるように、テーブルT(図示省略)上に載置される。一方、撮像実行部100においては、カメラ110が、鉛直下方を撮像対象とするべく、レンズが鉛直下向きとなる姿勢にて、かつ、その光軸CXを鉛直方向に一致させる態様にて、備わっている。それゆえ、該光軸CXと端面1aとの交点Pを中心とする所定の範囲が、カメラ110によって撮像可能となっている。
なお端面1aが水平な上面であり、かつ、カメラ110の光軸CXが鉛直方向に一致しているということはすなわち、カメラ110が検査対象面たる端面1aをその法線方向から撮像するということを意味する。
カメラ110には撮像制御部111が付随しており、カメラ110に対して撮像指示を与えるとともに、カメラ110による撮像により生成される撮像データを制御手段200に転送する役割を、担っている。
また、本実施の形態に係る欠陥検査装置1000においては、互いに相異なる照射角度にて照明光を照射する低角度照明部115と中角度照明部120と高角度照明部130との3つの照明部が、カメラ110の周囲を取り囲むように、撮像実行部100を構成する支持体101の下面に図示を省略する適宜の配設手段にて配設されてなる。なお、カメラ110は少なくともその撮像時、支持体101に設けられた開口部102に挿入されるようになっている。また、移動機構140によって、カメラ110および各照明部が配設されてなる支持体101が移動可能とさせられてなる。
より具体的には、低角度照明部115は、それぞれの照射角度(照射方向D0と水平面とのなす角度)が全てθ0(好ましくはθ0=5°〜30°、例えば15°)であるm0個(m0≧4)の同一性能の低角度単位照明116が、水平面内においてカメラ110の周りに等角度間隔で設けられた構成を有する。図8および図9においては、m0=8の場合を例示している。すなわち、8つの低角度単位照明116(116a〜116h)が設けられた場合を例示している。それぞれの低角度単位照明116は、図9において低角度単位照明116aおよび116eによって例示されるように、傾斜姿勢にて支持体101に付設されている。また、それぞれの低角度単位照明116としては、多数のLED素子が矩形状に配列されたバー照明を例示している。
また、中角度照明部120は、それぞれの照射角度(照射方向D1と水平面とのなす角度)が全てθ1(好ましくはθ1=30°〜60°、例えば45°)であるm1個(m1≧4)の同一性能の中角度単位照明121が、水平面内においてカメラ110の周りに等角度間隔で設けられた構成を有する。図8および図9においては、m1=8の場合を例示している。すなわち、8つの中角度単位照明121(121a〜121h)が設けられた場合を例示している。それぞれの中角度照明部120は、図9において中角度単位照明121aおよび121eによって例示されるように、傾斜姿勢にて支持体101に付設されている。また、それぞれの中角度単位照明121としては、多数のLED素子が矩形状に配列されたバー照明を例示している。
さらに、高角度照明部130は、それぞれの照射角度(照射方向D2と水平面とのなす角度)が全てθ2(好ましくはθ2=60°〜85°、例えば75°)であるm2個(m2≧4)の同一性能の高角度単位照明131が、水平面内においてカメラ110の周りに等角度間隔で設けられた構成を有する。ただし、より詳細には、図8および図9においては、m2=8であって、高角度照明部130が、多数のLED素子を同心円状に配列させることによってリング状に配置されたリング照明として設けられ、係るリング照明を8等分した領域がそれぞれの高角度単位照明131(131a〜131h)として用いられる場合を例示している。それぞれの高角度照明部130は、図9において高角度単位照明131aおよび131eによって例示されるように、傾斜姿勢にて支持体101に付設されている。
このように図8および図9においてはm0=m1=m2=8であるが、m0=m1=m2であることは必須ではなく、m0≠m1、m0≠m2、m1≠m2の少なくとも1つが成り立っていてもよい。また、図8においては水平面内でのカメラ110周りの方向(周方向)における個々の低角度単位照明116および中角度単位照明121の配置位置と個々の高角度単位照明131の配置位置とが22.5°ずつずれているが、これも必須の態様ではなく、周方向における個々の低角度単位照明116および中角度単位照明121の配置位置と個々の高角度単位照明131の配置位置とは一致していてもよい。
また、図8においては水平面内での周方向における個々の低角度単位照明116の配置位置と個々の中角度単位照明121の配置位置とが一致しているが、これも必須の態様ではなく、m0=m1の場合であっても、中角度単位照明121の配置位置と高角度単位照明131の配置位置との関係のように、両者の配置位置はずれていてもよい。
なお、検査対象面たる端面1aが水平となる姿勢にてハニカム構造体1がテーブルTに載置されている一方で、低角度照明部115に備わる複数の低角度単位照明116と中角度照明部120に備わる複数の中角度単位照明121と高角度照明部130に備わる複数の高角度単位照明131とがそれぞれ水平面内おいて互いに離隔して設けられているということは、複数の低角度単位照明116と複数の中角度単位照明121と複数の高角度単位照明131とがそれぞれ、検査対象面たる端面1aに平行な異なる平面内において互いに離隔して配置されているということを意味する。
また、より詳細には、本実施の形態に係る欠陥検査装置1000は、撮像実行部100に備わる各照明部のそれぞれの単位照明が、各々の上半分と下半分とを個別に調光可能にも構成されている。
具体的には、それぞれの低角度単位照明116はその上半分と下半分とがそれぞれ、個別に調光可能な調光単位116Uと調光単位116Lになっている。すなわち、調光単位116Uと調光単位116Lは、その光量を個別に調整可能とされてなる。同様に、それぞれの中角度単位照明121においても、その上半分の調光単位121Uと下半分の調光単位121Lとが互いに個別に調光可能とされている。さらには、それぞれの高角度単位照明131においても、その上半分の調光単位131Uと下半分の調光単位131Lとが互いに個別に調光可能とされている。
それゆえ、低角度単位照明116(116a〜116h)、中角度単位照明121(121a〜121h)、および高角度単位照明131(131a〜131h)はいずれも、全体としては、それぞれの光軸L0、L1、L2がカメラ110の光軸CXとハニカム構造体1の端面1aとの交点Pを通るように配置されているが、各調光単位についてみれば、その光軸は当該交点Pからずれていることになる。具体的には、調光単位116L、121L、131Lの光軸は交点Pよりも手前側を通り、調光単位116U、121U、131Uの光軸は交点Pよりも奥側を通っている。
なお、各調光単位の調光は、照明制御部220の制御のもとで行われる。また、個別調光を好適に行うという観点からは、LED素子として、指向角半値幅が5°〜30°程度(各単位照明から交点Pまでの距離が180mm程度の場合で例えば12°)のものを用いるのが好ましい。但し、照明から交点Pまでの距離が長い場合は、照明光が検査対象物に到達するまでに広がるために指向半値角が狭いことが好ましく、逆に照明から交点Pまでの距離が短い場合は、指向半値角が広いことが好ましい。
図10は、調光単位ごとの調光(個別調光)の効果について説明するための図である。具体的には、図10は、ある一様な平坦面に対して一の低角度単位照明116から照明光を斜め方向から照射した状態で当該平坦面を撮像したときの、照明(光源)からの水平距離と輝度との関係(輝度分布)を示す図である。
照明光の照度は光源からの距離の2乗に反比例する。それゆえ、調光単位116Lおよび116Uごとの個別調光を行わない場合、図10において「調光なし」として示すように、照明(光源)からの水平距離が遠くなるほど、輝度は単調に低下する。図10の「調光なし」の場合、撮像範囲(画角)の両端で輝度差Δb1が生じている。これは、一の単位照明が全体を一括して調光可能とされているに過ぎず、個別調光を行い得ない場合も同様である。
一方、図10において「調光あり」として示しているのは、調光単位116Lおよび116Uにおいて個別調光を行うことにより、照明に近い側の輝度を「調光なし」の場合と同程度に保ちつつ、照明から遠い側の輝度についても「調光なし」の場合に比して増大させた例である。具体的には低角度単位照明116のうち上半分の調光単位116Uの光量を下半分の調光単位116Lの光量に比して相対的に大きくする態様での調光を行っている。
係る場合、撮像範囲のうち照明に近い側から中ほどまでの輝度は概ね一定か、むしろ中ほど近くの方がやや大きくなっており、撮像範囲の両端での輝度差Δb2も、「調光なし」の場合の輝度差Δb1に比して小さくなっている。
本実施の形態に係る欠陥検査装置1000においては、全ての低角度単位照明116、中角度単位照明121、および高角度単位照明131について、検査に先立ってあらかじめこのような個別調光を行うことで、撮像範囲内での各単位照明からの距離差に応じた輝度差を、抑制できるようになっている。
個別調光の具体的な手法および要件は特に限定されないが、例えば、最低輝度や輝度差Δb2についてある基準が設けられ、当該基準をみたすように調光が行われる態様などが例示される。
なお、撮像画像における輝度分布に基づく調光に代わり、撮像範囲内における照度を所定の計測手段にて直接に測定し、その分布(照度分布)に基づいて個別調光を行う態様であってもよい。
移動機構140は、カメラ110と、低角度照明部115、中角度照明部120、および高角度照明部130が付設された支持体101とを移動させるために備わる。カメラ110の解像度等の理由からカメラ110の撮像範囲がハニカム構造体1の端面1aの面積よりも小さい場合は、ある撮像箇所における撮像が終了する都度、移動機構140がカメラ110および支持体101を次の撮像箇所にまで移動させる。
なお、カメラ110と支持体101とが固定的に設けられ、テーブルTが移動するように、欠陥検査装置1000が構成されていてもよい。
制御手段200は、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどのコンピュータによって実現されるものである。制御手段200は、例えばマウスやキーボードなどからなり、作業者による欠陥検査の実行指示や条件設定のための入力がなされる入力操作部201と、欠陥検査のためのメニュー表示や検査結果の表示などが行われるディスプレイなどの表示部202を備える。
加えて、制御手段200は、当該コンピュータに備わるハードディスク等の図示しない記憶部に記憶された動作プログラムが、同じく当該コンピュータに備わるCPU、ROM、RAM等からなる図示しない制御部において実行されることで実現される機能的構成要素として、欠陥検査装置1000全体の動作を統括的に制御する統括制御部210と、低角度照明部115、中角度照明部120、および高角度照明部130における照明の点灯/消灯(ON/OFF)の切替動作を制御する照明制御部220と、カメラ110による撮像によって生成された撮像画像データに基づいて欠陥の有無の判定に用いられる判定用画像データを生成する画像処理部230と、判定用画像データに基づいて欠陥の有無を判定する欠陥判定部240とを備える。
統括制御部210は、入力操作部201からの検査実行指示に応答して、照明制御部220と撮像実行部100に備わる撮像制御部111とを同期的に制御し、端面1aに対し照明光を照射した状態での欠陥検査用の画像データの撮像を実行させる。
具体的には、統括制御部210から照明制御部220に対して所定の制御信号が与えられると、照明制御部220はこれに応答して、低角度照明部115に備わるm0個の低角度単位照明116、中角度照明部120に備わるm1個の中角度単位照明121、および高角度照明部130に備わるm2個の高角度単位照明131を所定のタイミングおよび点灯時間にて順次に点灯/消灯させる。
一方、統括制御部210から撮像制御部111に対しては、カメラ110による撮像を、m0個の低角度単位照明116、m1個の中角度単位照明121、およびm2個の高角度単位照明131の順次の点灯に同期させて逐次に行わせるための制御信号が与えられる。撮像制御部111は、係る制御信号に応答して、所定のタイミングでカメラ110に撮像を行わせる。
また、統括制御部210は、ある撮像箇所における撮像が終了すると、次の撮像箇所へと撮像実行部100を移動させるための指示も行う。加えて、欠陥判定部240において生成された判定結果データを表示部202に表示させるための処理も担っている。
画像処理部230は、カメラ110による撮像によって生成された撮像画像データを撮像制御部111から直接にまたは間接に(統括制御部210を介して)取得して、所定の処理を施し、最終的に判定用画像データを生成する。画像処理部230は、撮像画像データに基づく判定用画像データの生成を担う機能的構成要素として、輝度補正処理部231と、最大/最小輝度画像生成部232と、判定用画像生成部233と、を備える。
上述のように、低角度照明部115にはm0個(例えば8個)の低角度単位照明116が備わっており、それらが順次に点灯されるたびに逐次にカメラ110による撮像がなされることで、m0個の撮像データ(低角度照明時撮像データ、以下、単に低角度撮像データと称する)が得られる。また、中角度照明部120にはm1個(例えば8個)の中角度単位照明121が備わっており、それらが順次に点灯されるたびに逐次にカメラ110による撮像がなされることで、m1個の撮像データ(中角度照明時撮像データ、以下、単に中角度撮像データと称する)が得られる。同様に、高角度照明部130にはm2個(例えば8個)の高角度単位照明131が備わっており、それらが順次に点灯されるたびに逐次にカメラ110による撮像がなされることで、m2個の撮像データ(高角度照明時撮像データ、以下、単に高角度撮像データと称する)が得られる。
それらm0個の低角度撮像データ、m1個の中角度撮像データ、およびm2個の高角度撮像データは、前処理として輝度補正処理部231による輝度補正を施されたうえで、最大/最小輝度画像生成部232における最大輝度画像および最小輝度画像の生成に供される。
輝度補正処理部231は、カメラ110による撮像によって生成された撮像データ(低角度撮像データ、中角度撮像データ、高角度撮像データ)を取得し、該撮像データの輝度分布を補正する輝度補正処理を担う。
輝度補正処理部231における輝度補正処理は、概略、後段の処理における照明(光源)からの遠近の相違に起因する不具合の発生を抑制するべく、低角度撮像データ同士、中角度画像データ同士、および高角度画像データ同士での、ハニカム構造体1の端面1aの輝度レベルを揃えることを、目的とする処理である。概略的には、端面1aのうち開口している第1セル3aや接合部2bや、欠陥などが存在しない正常部分を基準部分(ベース部分)とし、当該基準部分の輝度が、各撮像データ同士で同水準となるようにする処理である。
図11は、単位照明から被照射位置までの距離が異なることの影響について説明するための図である。
図11(a)は、ハニカム構造体1の端面1aの法線方向(図面手前から奥に向かう方向)に対して互いに対称な方向から、2つの照明光Lnと照明光Lfが端面1aに対し斜めに照射される様子を示している。ここで、照明光Lnは、カメラ110の画角(撮像範囲)におけるある任意の端部近傍部分(以下、単に端部と称する)fv1から近い単位照明から照射されており、照明光Lfは、当該端部fv1から遠い単位照明から照射されているものとする。なお、図11(a)においては説明のために2つの照明光を併せて図示しているが、実際には両者は同時に照射されるわけではない。また、端面1aにおいて接合部2bは省略している。
加えて、図11(b)と図11(c)はそれぞれ、端部fv1に含まれる欠陥(エグレ)df6近傍に対し、照明光Lnと照明光Lfとが照射された際の様子を模式的に示す断面図である。
照明光Lnが照射された場合、図11(b)に示すように、端面1aのうち欠陥df6のない部分と欠陥df6の大部分とは係る照明光Lnの被照射領域RE11aとなるが、欠陥df6の斜面の一部は影領域RE12aとなる。同様に、照明光Lfが照射された場合、図11(c)に示すように、端面1aのうち欠陥df6のない部分と欠陥df6の大部分とは係る照明光Lfの被照射領域RE11bとなるが、欠陥df6の斜面の一部は影領域RE12bとなる。
仮に、端部fv1における照明光Lnと照明光Lfの照度が同じであれば、それぞれの照明光を照射した状態でカメラ110による撮像を行うことにより得られる2つの撮像画像データにおいて2つの被照射領域RE11aとRE11bにおける輝度は同じであり、2つの影領域RE12aとRE12bにおける輝度も同じとなるはずである。
しかしながら、光源までの距離の相違に起因して、端部fv1における照明光Lnと照明光Lfの間に照度の相違がある場合、被照射領域RE11aとRE11bの輝度は同じとはならず、影領域RE12aとRE12bの輝度も同じとはならない。場合によっては、光源までの距離が近い照明光Lnにより形成される影領域RE12aの輝度値の方が、光源までの距離が遠い照明光Lfにより形成される被照射領域RE11bの輝度値よりも大きいようなことも起こり得る。例えば、影領域RE12が判定用画像に反映されない場合もあり得る。このような場合、欠陥検査を精度よく行うことは難しい。輝度補正処理部231における輝度補正処理は、このような不具合の発生を抑制するために行われる。
また、係る輝度補正処理は、上述した調光単位ごとの個別調光によってもなお残り得る、画角内での照明光からの距離の相違に起因した輝度差の解消にも、効果を有する。
本実施の形態に係る欠陥検査装置1000においては、この輝度補正処理部231における輝度補正処理によって各撮像データに基づき生成された補正済み撮像データ(m0個の低角度補正済み撮像データ、m1個の中角度補正済み撮像データ、m2個の高角度補正済み撮像データ)が、最大/最小輝度画像生成部232における最大輝度画像データ(低角度最大輝度画像データ、中角度最大輝度画像データ、高角度最大輝度画像データ)および最小輝度画像データ(低角度最小輝度画像データ、中角度最小輝度画像データ、高角度最小輝度画像データ)の生成に供される。
輝度補正処理部231における輝度補正処理の詳細については後述する。
最大/最小輝度画像生成部232は、m0個の低角度補正済み撮像データから一の低角度最大輝度画像データと一の低角度最小輝度画像データとを生成し、m1個の中角度補正済み撮像データから一の中角度最大輝度画像データと一の中角度最小輝度画像データとを生成し、m2個の高角度補正済み撮像データから一の高角度最大輝度画像データと一の高角度最小輝度画像データとを生成する合成処理を担う。
低角度最大輝度画像データとは、その画素(x,y)における輝度値をB1(x,y)とし、i個目の低角度補正済み撮像データの個々の画素(x,y)における輝度値をB1(x,y)iとするときに、B1(x,y)が、
B1(x,y)=Max{B1(x,y)1,B1(x,y)2,・・・B1(x,y)m0} ・・・(1)
なる式で表される画像データである。
すなわち、低角度最大輝度画像データは、m0個の低角度補正済み撮像データを、それぞれの画素(x,y)における輝度値の最大値Max{B1(x,y)1,B1(x,y)2,・・・B1(x,y)m0}を画素(x,y)についての輝度値とする態様にて合成した、合成画像データである。
同様に、中角度最大輝度画像データとは、その画素(x,y)における輝度値をB2(x,y)とし、i個目の中角度補正済み撮像データの個々の画素(x,y)における輝度値をB2(x,y)iとするときに、B2(x,y)が、
B2(x,y)=Max{B2(x,y)1,B2(x,y)2,・・・B2(x,y)m1} ・・・(2)
なる式で表される画像データである。
同様に、高角度最大輝度画像データとは、その画素(x,y)における輝度値をB3(x,y)とし、i個目の高角度補正済み撮像データの個々の画素(x,y)における輝度値をB3(x,y)iとするときに、B3(x,y)が、
B3(x,y)=Max{B3(x,y)1,B3(x,y)2,・・・B3(x,y)m2} ・・・(3)
なる式で表される画像データである。
一方、低角度最小輝度画像データとは、その画素(x,y)における輝度値をB4(x,y)とし、j個目の低角度補正済み撮像データの個々の画素(x,y)における輝度値をB4(x,y)jとするときに、B4(x,y)が、
B4(x,y)=Min{B4(x,y)1,B4(x,y)2,・・・B4(x,y)m0} ・・・(4)
なる式で表される画像データである。
すなわち、低角度最小輝度画像データは、m0個の低角度補正済み撮像データを、それぞれの画素(x,y)における輝度値の最小値Min{B4(x,y)1,B4(x,y)2,・・・B4(x,y)m0}を画素(x,y)についての輝度値とする態様にて合成した、合成画像データである。
同様に、中角度最小輝度画像データとは、その画素(x,y)における輝度値をB5(x,y)とし、j個目の中角度補正済み撮像データの個々の画素(x,y)における輝度値をB5(x,y)jとするときに、B5(x,y)が、
B5(x,y)=Min{B5(x,y)1,B5(x,y)2,・・・B5(x,y)m1} ・・・(5)
なる式で表される画像データである。
同様に、高角度最小輝度画像データとは、その画素(x,y)における輝度値をB6(x,y)とし、j個目の高角度補正済み撮像データの個々の画素(x,y)における輝度値をB6(x,y)jとするときに、B6(x,y)が、
B6(x,y)=Min{B6(x,y)1,B6(x,y)2,・・・B6(x,y)m2} ・・・(6)
なる式で表される画像データである。
このように、最大/最小輝度画像生成部232は、撮像時の照明の仕方と、画素値の扱い方の組み合わせとが異なる、全6種類の合成画像データを生成する。欠陥検査装置1000においては、最大/最小輝度画像生成部232において生成されたそれら6種類の合成画像データが、判定用画像生成部233における判定用画像データの生成に供される。
判定用画像生成部233は、それら6種類の合成画像データに基づき、欠陥判定部240における判定処理に用いられる低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データを生成する。判定用画像生成部233は、開口部特定処理部233aと、接合部特定処理部233bと、外部特定処理部233cと、フィルタ処理部233dとを備える。
概略的にいえば、低角度(;中角度;高角度)判定用画像データは、低角度(;中角度;高角度)最小輝度画像データによって表される低角度(;中角度;高角度)最小輝度画像から、検査対象とする必要のない部分に相当する画素領域を除外した画像の(階調)画像データを、所定のフィルタ処理によって二値化することにより、生成される。なお、本実施の形態において、「A1(;B1;C1)〜はA2(;B2;C2)・・・である。」なる記載およびこれに準ずる記載は、本来であればA1、A2の箇所をそれぞれB1、B2およびC1、C2と読み替えた記載を実際に並列的に行うべきところ、冗長性を鑑みてまとめたものである。
検査対象とする必要のない部分とは、端面1aにおいて開口している第1セル3aと、撮像画像の取得位置(撮像領域の位置)によっては撮像領域に含まれることのある、接合部2bおよび/またはハニカム構造体1の外部の部分である。これら第1セル3a、接合部2b、およびハニカム構造体1の外部に検査対象たるセラミックスが存在しないことは明らかであるので、本実施の形態においては、欠陥検査の効率化という観点から、それら第1セル3a、接合部2b、およびハニカム構造体1の外部に相当する画素領域について、検査対象外の(検査対象から除外される)領域とする。それぞれの画素領域(除外対象画素領域)の特定は、開口部特定処理部233a、接合部特定処理部233b、および外部特定処理部233cによって行われる。これら開口部特定処理部233a、接合部特定処理部233b、および外部特定処理部233cは、除外領域特定部とも総称される。そして、除外対象画素領域の検査対象からの除外は、フィルタ処理部233dが、低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データに対し当該画素領域をマスクとして作用させるマスク処理を行うことによって、実現される。
なお、同一の撮像領域を対象に撮像された画像に基づいて生成された6種類の合成画像データであれば、それぞれが表す画像における第1セル3a(より詳細にはその開口部)、接合部2b、およびハニカム構造体1の外部の位置は同じであるので、いずれかの合成画像データに基づいてそれらに相当する画素領域が特定できれば、他の5種類の画像データの表す像の同じ画素領域にも、開口部、接合部2b、およびハニカム構造体1の外部が存在していることになる。
フィルタ処理部233dはまた、除外対象画素領域のマスク処理が施された低角度(;中角度;高角度)最小輝度画像データに対し、種々のフィルタ処理を施し、欠陥の有無の判定により適したデータである、低角度(;中角度;高角度)判定用画像データを生成する処理も担う。フィルタ処理としては、いずれも公知の画像処理技術である二値化処理、クロージング処理(膨張収縮処理)、ラベリング処理が含まれる。
概略的には、フィルタ処理部233dは、マスクされた画素領域以外に属する画素が階調値を有する低角度最小輝度画像データ、中角度最小輝度画像データ、および高角度最小輝度画像データのそれぞれに対し、所定の輝度閾値に基づいて二値化処理を施し、その結果、輝度0の暗画素となった画素領域(暗画素が連続する領域)に対しクロージング処理を施すことでノイズ成分となる微小な暗画素領域を排除し、残った暗画素領域に対しラベリング処理によってラベリングを行うことで、低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データを生成する。
判定用画像生成部233の各部(開口部特定処理部233a、接合部特定処理部233b、外部特定処理部233c、およびフィルタ処理部233d)における処理の詳細は後述する。
欠陥判定部240は、低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データに基づいて、欠陥の有無を判定する。概略的には、低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データのそれぞれによって表される判定用画像において、所定の閾値以上の面積にて暗画素領域が存在する場合、欠陥判定部240は、当該暗画素領域の存在位置に欠陥が存在していると判定する。
低角度判定用画像データおよび中角度判定用画像データは、主として欠け、エグレなどの欠陥の検出に用いられる。一方、高角度判定用画像データは、主としてクラックの検出に用いられる。
m0個の低角度撮像データ、m1個の中角度撮像データ、およびm2個の高角度撮像データが欠陥に相当する影領域(輝度値の低い領域)を含む場合、低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データが表すのは、図5において概念的に例示したような、それぞれの撮像データにおける影領域を仮想的に重畳させた画像である。このことは、低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データにおいては、欠陥に由来する影領域が強調されているということを意味する。
その一方で、ある方向から照射された、低角度単位照明、中角度単位照明、もしくは高角度単位照明のもとで撮像が行われることにより得られた低角度撮像データ、中角度撮像データ、または高角度撮像データにおいて、セラミックス面6に存在する通常の表面凹凸nsに起因する影領域があったとしても、当該表面凹凸nsの面積は比較的小さいことから、同一箇所に対し異なる方向から低角度単位照明、中角度単位照明、もしくは高角度単位照明を照射しつつ撮像が行われることにより得られた低角度撮像データ、中角度撮像データ、または高角度撮像データにおいては、当該表面凹凸nsに対応する影領域よりも、欠け、エグレ、クラックが強調される。そもそも、照射角度が大きい高角度単位照明のもとでは、表面凹凸nsに対応する影領域は形成されにくい。
欠陥検査装置1000においては、このような特性を有する低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データを欠陥の有無の判定に利用することで、ハニカム構造体1の端面1aにおける欠陥の検出の確実さが高められている。
なお、低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データはいずれも最小輝度画像データに由来するものであるが、欠陥判定部240は、クラックの検出に関しては、過剰検出を低減するという観点から、高角度最大輝度画像データについても補完的に利用する。
欠陥判定部240における判定処理の詳細は後述する。
<欠陥検査処理>
以降においては、上述した構成を有する欠陥検査装置1000において行われる欠陥検査のための処理について説明する。図12は、欠陥検査装置1000において行われる欠陥検査処理の概略的な手順を示す図である。
欠陥検査装置1000における欠陥検査処理においては、はじめに、低角度照明部115、中角度照明部120、および高角度照明部130のそれぞれに含まれる個々の単位照明を順次に点灯および消灯させつつ、それぞれの点灯時にハニカム構造体1の端面1aをカメラ110によって撮像する撮像処理(ステップSa)が行われる。係る撮像処理により、m0個の低角度撮像データ、m1個の中角度撮像データ、およびm2個の高角度撮像データが生成される。
続いて、輝度補正処理部231において、それらの撮像データに対し、撮像に用いた単位照明からの距離に起因した輝度値の相違を補正する輝度補正処理(ステップSb)が行われる。係る輝度補正処理により、m0個の低角度補正済み撮像データ、m1個の中角度補正済み撮像データ、およびm2個の高角度補正済み撮像データが生成される。
次いで、最大/最小輝度画像生成部232が、それらの補正済み撮像データを式(1)ないし式(6)に基づき合成することにより、6個の合成画像データを生成する合成処理(ステップSc)を行う。具体的には、式(1)ないし式(3)のそれぞれに基づいて低角度最大輝度画像データ、中角度最大輝度画像データ、および高角度最大輝度画像データがそれぞれ生成され、式(4)ないし式(6)のそれぞれに基づいて低角度最小輝度画像データ、中角度最小輝度画像データ、および高角度最小輝度画像データがそれぞれ生成される。
これらの合成画像データが生成されると、判定用画像生成部233の開口部特定処理部233a、接合部特定処理部233b、および外部特定処理部233cにおいて、それぞれの合成画像データによって表される画像における除外対象画素領域を特定する除外領域特定処理(ステップSd)が行われる。続いて、フィルタ処理部233dにより、当該除外対象画素領域を用いたマスク処理(ステップSe)さらにはフィルタ処理(ステップSf)がなされることで、低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データが生成される。
そして、それらの判定用画像データに基づいて、欠陥判定部240による判定処理(ステップSg)が行われる。判定処理の結果は、表示部202に表示される(ステップSh)。
[撮像処理]
図13は、欠陥検査装置1000において欠陥検査のために行われる撮像処理の手順を示す図である。なお、図13およびこれに関連する説明においては、欠陥検査の対象とされるハニカム構造体1を「ワーク」とも称し、そのハニカム構造体1において検査対象面とされる端面1aを「ワークの端面」とも称することがある。
まず、作業者によって、あるいは所定の搬送手段(載置手段)によって、ワークがその端面を上面とする姿勢にてテーブルTに載置される(ステップS1)。係るワークの載置の後、入力操作部201を通じて欠陥検査の実行指示が与えられると、移動機構140が駆動されることによって、撮像実行部100が(より具体的にはカメラ110と低角度照明部115、中角度照明部120、および高角度照明部130を支持する支持体101が)撮像箇所へと移動させられる(ステップS2)。カメラ110の撮像範囲がワークの端面1aの面積よりも小さい場合は、複数回に分けて検査を行うことになるため、端面1aの所定の一部分が一の検査処理における撮像箇所となる。
係る場合においては、矩形状に規定されるカメラ110の撮像範囲における縦横の軸方向に沿ってワークのセル3が(外見上は第1セル3aが)配列するように、ワークがテーブルTに載置される際に位置決めがなされるか、もしくは、カメラ110の水平面内における姿勢が調整されてもよい。ただし、セル3の配列方向がカメラ110の撮像範囲における縦横の軸方向から多少傾斜していたとしても、判定処理の際に必要に応じて係る傾斜を考慮した補正を行うことで、判定処理は問題なく行うことができる。
なお、テーブルTにワークが載置されたことを検知するセンサが設けられており、係るセンサからの検知信号に応答して、統括制御部210が欠陥検査装置1000の各部に対し撮像処理およびその後の判定処理を順次に実行させるための所定の制御信号を発する態様であってもよい。
撮像実行部100が撮像箇所に配置された状態が実現されると、低角度照明部115を使用した撮像(ステップS3)、中角度照明部120を使用した撮像(ステップS4)、および高角度照明部を使用した撮像(ステップS5)が順次に行われる。上述のように、係る撮像は、撮像範囲内での輝度差が低減されるよう、各単位照明があらかじめ個別調光されたうえで行われる。
図14は、これらの撮像処理における具体的な手順を示す図である。いずれの撮像処理においても、p=1を初期値として(ステップS11)、全ての単位照明を順次に点灯させながらのカメラ110による逐次の撮像が行われる。
具体的には、それぞれの照明部(低角度照明部115、中角度照明部120、または高角度照明部130)に属するp番目の単位照明(低角度単位照明116、中角度単位照明121、または高角度単位照明131)が点灯され(ステップS12)、係る点灯状態のもとでカメラ110がワークを撮像する(ステップS13)。係る撮像により得られたp個目の撮像データ(低角度撮像データ、中角度撮像データ、または高角度撮像データ)は、撮像制御部111から輝度補正処理部231へと転送され(ステップS14)、後述する判定用画像データの生成に供される。係る撮像および転送が完了すると、それまで点灯していたp番目の単位照明(低角度単位照明116、中角度単位照明121、または高角度単位照明131)は消灯される(ステップS15)。あるいは、撮像の完了後、直ちにp番目の単位照明が消灯される態様であってもよい。また、それぞれの照明部について、全ての単位照明が撮像に使用され最後の撮像が完了した時点で、全ての撮像データ(低角度撮像データ、中角度撮像データ、または高角度撮像データ)を最大/最小輝度画像生成部232へと転送する態様であってもよい。
この時点で全ての単位照明が使用されていない場合(ステップS16でNO)、つまりは、まだ点灯させていない単位照明が存在する場合、p=p+1として(ステップS17)、ステップS12以降を繰り返す。
一方、全ての単位照明が使用された場合(ステップS16でYES)、当該照明部を用いた撮像処理は終了する。
[輝度補正処理]
図15は、欠陥検査装置1000を用いた欠陥検査において輝度補正処理部231により行われる輝度補正処理(低角度補正処理、中角度補正処理、および高角度補正処理)の概略的な手順を示す図である。また、図16は、輝度補正処理における処理の内容を例示する図である。
いま、撮像データ(低角度撮像データ、中角度撮像データ、または高角度撮像データ)が図16(a)に示すような輝度分布pf1を有しているものとする。具体的には、周囲よりも輝度値が顕著に小さい画素領域RE41が、開口部である第1セル3aの像を表し、周囲よりも輝度値が顕著に大きい画素領域RE42が、接合部2bの像を表し、周囲よりも輝度値が若干小さい画素領域RE43が、端面1aに形成された欠陥(典型的にはエグレ)の像を表しているとする。以降、これらの画素領域RE41、RE42、およびRE43以外の部分をベース部分と称することとする。このベース部分を初めとして輝度分布pf1が全体的に図面視右下がりとなっているのは、個別調光を行ったものの解消しきれなかった輝度差を示したものである。なお、検査対象たるハニカム構造体1の構成によっては、接合部2bは存在しない場合もある。
輝度補正処理においてはまず、このような輝度分布pf1を与える撮像データについて、各画素における輝度値の平均値(平均輝度値)Avrを算出する(ステップS21)。図16(a)においては係る平均輝度値Avrを破線にて示している。
平均輝度値Avrが得られると、矢印AR1およびAR2にて示すように、画素領域RE41のような第1セル3aの輝度値や、存在する場合には画素領域RE42のような接合部2bの輝度値を、平均輝度値Avrで置換する(ステップS22)。図16(b)には、係る置換後の画像データ(置換後データ)による輝度分布pf2を示すとともに、当初の輝度分布pf1についても破線にて示している。第1セル3aや接合部2bの設計上の配置位置やサイズは既知であり、それゆえ、それらの像を構成する画素の位置および範囲は概ね特定可能であるので、係る置換は容易に行える。あるいは、平均輝度値Avrとの差分値が所定の閾値以上に大きい輝度値の画素について、係る置換を行うことでも、同様の結果が得られる。
係る置換がなされると、次に、置換後データを平滑化処理し、平滑化データを生成する(ステップS23)。平滑化処理には公知の手法を適用可能である。図16(c)には、得られた平滑化データによる輝度分布pf3を示している。
平滑化データによって与えられる輝度分布pf3は、輝度補正処理に供された撮像データが与える輝度分布pf1と同様、図面視右下がりとなっている。これはすなわち、いったん置換後データを生成し、係る置換後データを平滑化の対象とすることで得られた平滑化データが与える輝度分布pf3が、第1セル3aや接合部2bといった、もとの輝度分布pf1においてはいわば既知の特異点ともいえるような部分を除く他の部分についての、大まかな輝度の分布傾向を示すものであることを意味する。
また、撮像に使用した単位照明からの距離が近い撮像データに由来する平滑化データにおける輝度値の方が、当該単位照明からの距離が遠い撮像データに由来する平滑化データにおける輝度値よりも、全体として大きくなる傾向がある。
平滑化データが得られると、輝度分布pf1を与える当初の撮像データと平滑化データとの差分を生成し、これを補正済み撮像データとする(ステップS24)。図16(d)には、得られた補正済み撮像データによる輝度分布pf4を示している。より具体的には、補正済み撮像データは、撮像データと平滑化データの同じ画素位置についての輝度値の差分を全ての画素位置において演算することで得られる。
図16(d)に示すように、補正済み撮像データによって表される輝度分布pf4は、図16(a)に示す当初の撮像データと同様、第1セル3aに相当する画素領域RE41と、接合部2bに相当する画素領域RE42と、端面1aに形成された欠陥(典型的にはエグレ)に相当する画素領域RE43とを有する。その一方で、これらの画素領域以外のベース部分における輝度値は、概ね一定となっている。これは、当初の撮像データと同様に図面視右下がりの傾向を有する平滑化データの輝度値を、当初の撮像データから差し引いたことの効果である。
このようにベース部分の輝度値が概ね一定となっていることで、補正済み撮像データにおいては、撮像に用いた単位照明からの距離に起因した輝度値の相違が、解消されたものとなっている。
しかも、単位照明からの距離に応じた輝度値の平滑化データが当初の撮像データから差し引かれるので、低角度照明部115、中角度照明部120、および高角度照明部130のそれぞれにおいて、全ての単位照明が同じように照射される端面1aの正常な(欠陥のない)部分であるベース部分の輝度は、各低角度補正済み撮像データ同士、各中角度補正済み撮像データ同士、および各高角度補正済み撮像データ同士で、同水準(略同一)とみなし得る値となる。これにより、相異なる単位照明からの距離の相違に起因した輝度値の相違についても、解消されてなる。
[合成処理]
輝度補正処理部231において生成されたm0個の低角度補正済み撮像データ、m1個の中角度補正済み撮像データ、およびm2個の高角度補正済み撮像データは、最大/最小輝度画像生成部232に供される。最大/最小輝度画像生成部232においては、式(1)ないし式(6)に基づいて全6種類の合成画像データが生成される。具体的には、m0個の低角度補正済み撮像データ(;m1個の中角度補正済み撮像データ;m2個の高角度補正済み撮像データ)から、低角度(;中角度;高角度)最大輝度画像データと低角度(;中角度;高角度)最小輝度画像データが生成される。
[除外領域特定処理およびマスク処理]
最大/最小輝度画像生成部232において生成された6種類の合成画像データは、判定用画像生成部233に供される。判定用画像生成部233においては、開口部特定処理部233a、接合部特定処理部233b、および外部特定処理部233cのそれぞれによる、除外対象画素領域を特定する処理と、フィルタ処理部233dによる、当該除外領域を用いたマスク処理とが行われる。
図17および図18は、ハニカム構造体1の端面1aにおいて開口する第1セル3aを検査対象から除外する場合を例とした、マスク処理を説明するための図である。図17(a)は、ある低角度最小輝度画像データによって表現される画像IM1を例示している。係る画像IM1は、図4に例示したセラミックス面6に対応するものである。なお、図17および図18においては、暗部SDとして視認される部分にクロスハッチングを付している。
図17(a)に示す画像IM1に存在する暗部SDのうち、正方形状の6個の暗部SD0は、第1セル3aに対応する。一方、暗部SD1、SD2においては、正方形状の暗部に対し図4に例示したクラックdf1や欠けdf2に対応する暗部が連続しており、暗部SD3は、エグレdf3に対応する。なお、図17(a)においては図示の都合上、暗部SD以外の部分が一様な明るさであるように視認されるが、実際には、セラミックス面6に存在する微細な凹凸等に起因して、暗部SD以外の部分にも多少の濃淡があってもよい。
一方、図17(b)には、画像IM1の元になっている画像の撮像と相前後するタイミングで同じセラミックス面6を撮像して得られた他の画像に基づく画像IM2を例示している。説明の簡単のため、当該画像IM2においては、図17(a)に示す画像IM1とは異なり、第1セル3aの開口部に相当する正方形状の暗部SD4のみが視認されるものとする。このような画像IM2は通常、高角度最大輝度画像データあるいは中角度最大輝度画像データなどから得ることができる。
当該暗部SD4の位置が、図17(a)に示す画像IM1において正方形状をなす暗部SD0ならびに暗部SD1およびSD2の一部の位置と略同一である場合、画像IM2を与える画像データが得られたなら、そのデータ内容から暗部SD4を与える画素の範囲(画素領域)を特定し、図17(a)に示す画像IM1を与える低角度最小輝度画像データにおいて当該画素領域の画素情報を不能化すれば、係る不能化後の画像データによって表される像は、画像IM1において存在していた正方形状の暗部をマスクしたものとなる。
図18は、このような不能化がなされた低角度最小輝度画像データによって表現される画像IM3を示している。画像IM3においては、画像IM1において正方形状の暗部が存在していた画素領域に相当する領域を、マスクMSとして示している。第1セル3aの開口部に相当する部分にマスクMSが位置しているので、画像IM3においても暗部SDとして残るのは、クラックdf1に相当する暗部SD1aと、欠けdf2に相当する暗部SD2aと、エグレdf3に相当する暗部SD3のみである。このような画像IM3を与える低角度最小輝度画像データに基づいて判定用画像データを生成すれば、第1セル3aの開口部に相当する画素領域については、あらかじめ欠陥検査の対象から除外されることになる。
なお、不能化を実現する手法としては、対象となる画素領域の画素情報に係る記述を実際に最小輝度画像データから削除する態様や、以降の判定用画像データの生成および欠陥判定に際して当該画素領域の画素情報を無視するよう、最小輝度画像データに記述する態様などが考えられる。
接合部2bやハニカム構造体1の外部部分に対するマスク処理も、係る開口部の場合と同様、接合部2bやハニカム構造体1の外部部分を与える画素領域を特定し、判定用画像の生成に供される最小輝度画像データにおいてそれらの画素領域に係る記述内容を不能化することで実現される。
当然ながら、これらのマスク処理を好適に行うためには、第1セル3a、接合部2b、およびハニカム構造体1の外部部分に該当する除外対象画素領域の特定を、精度よく行うことが求められる。本実施の形態に係る欠陥検査装置1000において、開口部特定処理部233a、接合部特定処理部233b、および外部特定処理部233cのそれぞれによりなされる除外対象画素領域の特定は、この点を踏まえたものとなっている。より詳細には、開口部特定処理部233a、接合部特定処理部233b、および外部特定処理部233cの各部においては、最大/最小輝度画像生成部232において生成された6種類の合成画像データのうち、対象とされる除外対象画素領域の種類に応じた合成画像データが用いられる。
開口部特定処理部233aは、低角度最大輝度画像データに基づいて、第1セル3a(より詳細にはその開口部)に相当する画素領域を除外対象画素領域として特定する。あるいは、中角度最大輝度画像データを用いる態様であってもよい。具体的な特定の仕方としては、低角度最大輝度画像データにおいて輝度値が所定の閾値以下である画素領域を特定するという態様が例示される。
図19は、輝度値の採用の仕方が異なる合成画像データによって表される像の、第1セル3aの開口部を含む部分の拡大像を例示する図である。図19(a)は、低角度最大輝度画像データによる像IM4であり、図19(b)は、低角度最小輝度画像データによる像IM5である。
両者を対比すると、まず、図19(a)に示す像IM4においては、破線にて示すように、左端部を除き明確に区画された正方領域RE21が見出せる。左端部はわずかに暗部領域RE22が連続している。なお、この暗部領域RE22は、第1セル3aの開口部に欠陥の一種である欠けがあることに起因したものである。これに対し、図19(b)に示す像IM5においては、正方領域RE21と同じ位置に示した正方領域RE23の周囲も連続する暗部となっており、特に、左側には、欠陥の存在に起因して、大きな暗部領域RE24が、正方領域RE23に連続する態様にて広がっている。
図19は、最小輝度画像データを用いた場合、開口部が実際よりも広く認識されてしまうおそれがあることを示唆している。特に、図19(b)に示す像IM5のように、第1セル3aの開口部に欠陥が存在するような場合、最小輝度画像データを用いて第1セル3aの存在する画素領域を特定しようとすると、実際の第1セル3aのみならず、これに連続する欠陥部分までが開口部と誤認識されてしまい、判定用画像において欠陥部分が除外されてしまうおそれがあり、好ましくない。
一方、図20は、照明の仕方が異なる合成画像データによって表される像の、第1セル3aを含む部分の拡大像を例示する図である。なお、対象となっている第1セル3aの位置は、図19の場合とは異なっている。図20(a)は、図19(a)の場合と同様、低角度最大輝度画像データによる像IM6であり、図20(b)は、高角度最大輝度画像データによる像IM7である。
両者を対比すると、図20(a)に示す像IM6においては、破線にて示すように、明確に区画された正方領域RE25が見出せるのに対し、図20(b)に示す像IM5においては、楕円にて示す、正方領域RE25と同じ位置に示した正方領域RE26の左側部分において、第1セル3aの内部の壁面に相当する像が確認される。
図20は、高角度最大輝度画像データを用いた場合、領域RE27の範囲が開口部より輝度値が大きいために、実際の第1セル3aよりも狭い範囲が開口部と誤認識されてしまう可能性がある。
こうした図19および図20に示した像を踏まえ、開口部特定処理部233aにおける第1セル3aの特定は、低角度最大輝度画像データに基づき行われる。これにより、第1セル3aの開口部の画素領域を精度よく特定することが出来る。
なお、図19に関していえば、低角度最大輝度画像データを用いたとしても、欠陥を反映した暗部領域RE22までが開口部と特定されてしまうおそれがある。しかしながら、仮にそのような特定がなされ、暗部領域RE22までがマスクされてしまったとしても、図19(b)に示す低角度最小輝度画像データによる像IM5における暗部領域RE22のように、さらに大きな暗部の情報を含む合成画像データが存在することから、そのような合成画像データに基づく判定用画像によって、当該欠陥は検出される。
また、接合部特定処理部233bは、中角度最大輝度画像データまたは高角度最大輝度画像データに基づいて、接合部2bに相当する画素領域を除外対象画素領域として特定する。具体的な特定の仕方としては、中角度最大輝度画像データまたは高角度最大輝度画像データにおいて輝度値が所定の閾値以上である画素領域を特定するという態様が例示される。
図21は、輝度値の採用の仕方が異なる合成画像データによって表される像の、接合部2bを含む部分の拡大像を例示する図である。図21(a)は、高角度最大輝度画像データによる像IM8であり、図21(b)は、高角度最小輝度画像データによる像IM9である。
両者を対比すると、まず、図21(a)に示す像IM8と図21(b)に示す像IM9のそれぞれにおいて、破線に挟まれた領域RE31および領域RE33が、接合部2bに該当する。これらの領域RE31とRE33はともに、略同一の幅を有していることから、一見すると、いずれの画像データを用いたとしても、接合部2bは好適に特定されるようにも見受けられる。しかしながら、像IM8の領域RE31は概ね一様な輝度を有しているのに対し、像IM9の領域RE33には接合部2bの凹凸に起因した細かな濃淡が確認される。
加えて、領域RE32およびRE34に示すように、係る接合部2bには凹部に相当するとみられる暗部が存在するところ、後者の方が、暗部の面積が大きい。このことは、高角度最小輝度画像データを用いて接合部2bを特定した場合、高角度最大輝度画像データを用いる場合に比して、接合部2bの形状を誤認識する恐れが高いことを示唆している。
一方、図22は、照明の仕方が異なる合成画像データによって表される像の、接合部2bを含む部分の拡大像を例示する図である。図22(a)は、図21(a)に示したものと同じ、高角度最大輝度画像データによる像IM8であり、図22(b)は、低角度最大輝度画像データによる像IM9である。
両者を対比すると、図21の場合と同様、図22(a)に示す像IM8と図22(b)に示す像IM10のそれぞれにおいて、破線に挟まれた領域RE31および領域RE35が、接合部2bに該当する。係る場合も、一見すると、いずれの画像データを用いたとしても、接合部2bは好適に特定されるようにも見受けられる。しかしながら、像IM8の領域RE31は概ね一様な輝度を有しているのに対し、像IM10の領域RE35には接合部2bの凹凸に起因した細かな濃淡が確認される。
加えて、領域RE32およびRE36として示される、接合部2bに存在する凹部に相当するとみられる暗部を比較すると、後者の方が面積が大きい。このことは、低角度最大輝度画像データを用いて接合部2bを特定した場合、高角度最大輝度画像データを用いる場合に比して、接合部2bの形状を誤認識する恐れが高いことを示唆している。
なお、図示は省略するが、中角度最大輝度画像データと中角度最小輝度画像データとが示す像を対比した場合や、中角度最大輝度画像データと低角度最大輝度画像データとが示す像を対比した場合にも、同様の結果が得られることが、本発明の発明者によって確認されている。
以上を踏まえ、接合部特定処理部233bにおける接合部2bの特定は、高角度最大輝度画像データまたは中角度最大輝度画像データに基づき行われる。これにより、接合部2bの画素領域を精度よく特定することが出来る。なお、両者は、ハニカム構造体1を構成するセラミックス材料の種類などに応じて、適宜に使い分けられてよい。
さらには、外部特定処理部233cは、低角度最小輝度画像データまたは中角度最小輝度画像データに基づいて、ハニカム構造体1の外側部分を除外対象画素領域として特定する。具体的な特定の仕方としては、低角度最小輝度画像データまたは中角度最小輝度画像データにおいて輝度値が所定の閾値以下であり、かつ、第1セル3aの開口面積に比して十分に大きい画素領域を特定する、という態様が例示される。
図23は、ハニカム構造体1の外壁1wおよび外部を含む部分についての、輝度値の採用の仕方が異なる合成画像データによって表される像を例示する図である。図23(a)は、低角度最小輝度画像データによる像IM11であり、図23(b)は、低角度最大輝度画像データによる像IM12である。
図23(a)に示す像IM11においては、矢印AR1にて示すように、ハニカム構造体1の外壁1wと、一様な暗部として視認されるハニカム構造体1の外部との境界部分が明確に特定される。一方、図23(b)に示す像IM12においては、矢印AR2にて示すように、ハニカム構造体1の外壁1wの近傍部分が帯状の明部となり、かつ、ハニカム構造体1の外部との境界部分はぼやけてしまって、明確に特定することが困難な状況である。
なお、図示は省略するが、中角度最小輝度画像データと中角度最大輝度画像データとが示す像を対比した場合にも、同様の結果が得られることが、本発明の発明者によって確認されている。
以上を踏まえ、外部特定処理部233cにおけるハニカム構造体1の外部部分の特定は、低角度最小輝度画像データまたは中角度最小輝度画像データに基づき行われる。これにより、ハニカム構造体1の外部部分の画素領域を精度よく特定することが出来る。
このような態様にて、開口部特定処理部233a、接合部特定処理部233b、および外部特定処理部233cによる除外対象画素領域の特定がなされると、フィルタ処理部233dは、低角度最小輝度画像データ、中角度最小輝度画像データ、および高角度最小輝度画像データに対し、除外対象画素領域によるマスク処理を施す。具体的には、それらの最小輝度画像データにおいて除外対象画素領域に属する画素の画素情報を不能化する。
[フィルタ処理]
続いてフィルタ処理部233dは、除外対象画素領域をマスクした低角度(;中角度;高角度)最小輝度画像データに対し、種々のフィルタ処理を施し、低角度(;中角度;高角度)判定用画像データを生成する。
具体的には、まず、画素(x,y)における輝度値B4(x,y)(;B5(x,y);B6(x,y))が所定の輝度閾値以上であれば当該画素(x,y)を輝度1の明画素とし、輝度値B4(x,y)(;B5(x,y);B6(x,y))が所定の輝度閾値未満であれば当該画素(x,y)を輝度0の暗画素とする公知の二値化処理を行う。この時点で、明画素とされた画素は、以降の判定処理の対象からは除外されることになる。以下、暗画素の連続部分によって構成される領域を暗部もしくは暗領域とも称する。
続いて、暗部を対象に公知のクロージング処理(膨張収縮処理)を行い、二値化処理後の画像データにおいて離散的に存在しノイズ成分となっている領域面積の小さい(構成画素数の小さい)暗部を以降の判定処理の対象から除外する。
なお、上述したように、処理対象たる画像データには、セラミックス面6に存在する製品規格上問題の無い通常の表面凹凸nsに起因した暗部が存在する場合がある、そうした暗部は比較的領域面積が小さいため、クロージング処理を行うことにより判定処理の対象から相当程度除外されることが見込まれる。
最後に、クロージング処理後に残った暗部を識別するために、全ての暗部に対しそれぞれを一意に識別するための識別情報を関連付ける公知のラベリング処理を行う。
以上のフィルタ処理によって得られる低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データが、欠陥判定部240による判定に供される。
[判定処理]
図24は、欠陥判定部240において行われる判定処理の流れを示す図である。図24に示すように、本実施の形態に係る欠陥検査装置1000においては、判定用画像生成部233のフィルタ処理部233dにおいてそれぞれに生成された、低角度判定用画像データと、中角度判定用画像データと、高角度判定用画像データに基づく判定(ステップS31〜S33)が、順次に行われる。それぞれの判定処理を低角度判定処理、中角度判定処理、高角度判定処理と称する。
そして、低角度判定処理、中角度判定処理および高角度判定処理における判定処理の結果に基づいて、欠陥の有無が総合的に判定される(ステップS34)。判定の結果は適宜、判定結果データとして欠陥判定部240から統括制御部210へと与えられる。欠陥判定部240は、検査対象領域につき、低角度判定処理、中角度判定処理または高角度判定処理の少なくとも1つにおいていずれかの箇所に欠陥があると判定された場合、当該検査対象領域に欠陥があると判定する。
概略的には、低角度(;中角度;高角度)判定処理においては、検査対象である低角度(;中角度;高角度)判定用画像データとあらかじめ定められた判定用閾値とが照合され、低角度(;中角度;高角度)判定用画像データに含まれるラベリングされた暗部SDに、判定用閾値以上の面積(より詳細には当該面積に相当する構成画素数)を占めるものが存在するか否かが、判定される。低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データに判定用閾値以上の面積を有する暗部SDが存在しない場合、欠陥は検出されなかったということになる。一方、低角度判定用画像データ、中角度判定用画像データ、および高角度判定用画像データのいずれかにでもそのような暗部SDが存在する場合、何らかの欠陥が存在するものと判定される。
図25は、欠陥判定部240において行われる判定処理の内容について、より具体的に説明するための図である。図25には、セラミックス面6の通常の表面凹凸nsと、クラックdf1と、エグレdf3(いずれも、図3等参照)についての、低角度判定処理、中角度判定処理、および高角度判定処理における判定例と、それらを踏まえた総合的な判定内容を一覧にして示している。ただし、欠け(カケ)についてはエグレと同様の態様にて判定がなされることから、図25においては代表してエグレについての判定例を示している。より詳細には、エグレdf3に関しては、浅いエグレdf3aと深いエグレdf3bの2通りについての判定例を示しているが、「浅い」および「深い」とはあくまで相対的なものであり、特定の形状的特徴に基づいて明確に峻別されるものではない。
また、図25において判定欄の「OK」とは、欠陥として検出されないことを意味しており、「NG」とは欠陥として検出されることを意味している。ただし、判定欄の「(OK)」なる記載は、本来的には欠陥として検出されるべきところ、判定基準に従えば欠陥がないと誤判定される場合を示している。
より詳細には、図25の「低角度判定処理」なる欄には、ある一の低角度単位照明116(照射方向D1)が点灯している状態における通常の表面凹凸nsと、クラックdf1と、エグレdf3a、df3bの様子と、m0個の低角度撮像データに基づいて生成される低角度判定用画像データが表す低角度判定用画像における通常の表面凹凸nsと、クラックdf1と、エグレdf3a、df3bの様子と、それらの様子に基づく判定結果とが示されている。低角度判定処理における判定は、低角度判定用画像に現れた暗部領域のサイズと低角度判定処理における判定用閾値に相当する閾値領域TH0のサイズとの対比によりなされる。
同様に、「中角度判定処理」なる欄には、ある一の中角度単位照明121(照射方向D1)が点灯している状態における通常の表面凹凸nsと、クラックdf1と、エグレdf3a、df3bの様子と、m1個の中角度撮像データに基づいて生成される中角度判定用画像データが表す中角度判定用画像における通常の表面凹凸nsと、クラックdf1と、エグレdf3a、df3bの様子と、それらの様子に基づく判定結果とが示されている。中角度判定処理における判定は、中角度判定用画像に現れた暗部領域のサイズと中角度判定処理における判定用閾値に相当する閾値領域TH1のサイズとの対比によりなされる。
さらには、「高角度判定処理」なる欄には、ある一の高角度単位照明131(照射方向D2)が点灯している状態における通常の表面凹凸nsと、クラックdf1と、エグレdf3a、df3bの様子と、m2個の高角度撮像データに基づいて生成される高角度判定用画像データが表す判定用画像における通常の表面凹凸nsと、クラックdf1と、エグレdf3a、df3bの様子と、それらの様子に基づく判定結果とが示している。高角度判定処理における判定は、高角度判定用画像に現れた暗部領域のサイズと高角度判定処理における判定用閾値に相当する閾値領域TH2のサイズとの対比によりなされる。
係る場合において、低角度判定処理および中角度判定処理における判定用閾値(閾値領域TH0、TH1のサイズ)は、正常な表面凹凸を欠陥として誤検出することなく、相対的に深さが小さくかつ幅が大きい欠陥であるエグレや欠けが確実に検出できるような値に設定される。なお、低角度判定処理は、中角度判定処理では十分に検出しきれない、相対的に浅いエグレや欠けを確実に検出することを意図して行われる。
これに対し、高角度判定処理における判定用閾値(閾値領域TH2のサイズ)は主として、相対的に深さが大きくかつ幅が小さい欠陥であるクラックを検出できるような値に設定される。具体的には、低角度判定処理および中角度判定処理における判定用閾値よりも小さな値に設定される。高角度判定処理に用いる高角度判定用画像データは、高角度照明部130を照明光源とする撮像により得られた高角度撮像データに由来することから、高角度判定用画像に正常な表面凹凸やエグレおよび欠けに起因する暗部SDが存在することはまれである。それゆえ、上述のように判定用閾値を定めたとしても、高角度判定処理においては、正常な表面凹凸を欠陥であるとする誤判定は生じにくい。
以上を踏まえ、図25における各形状についての判定の内容を確認する。
まず、通常の表面凹凸nsの場合、個々の低角度単位照明116が順次に点灯した際に生じる影部分Aが合成されることにより、低角度判定用画像において影領域A’が形成されるとする。中角度判定用画像においても、同様の影領域A’が形成されることがある。しかしながら、係る影領域A’は通常、低角度判定処理における閾値領域TH0および中角度判定処理における閾値領域TH1よりも小さいので(より詳細には、そのような関係をみたすように判定用閾値を定めているので)、欠陥としては検出されない。
また、中角度単位照明121の照射方向D1が水平面となす角度θ1よりも高角度単位照明131の照射方向D2が水平面となす角度θ2の方が大きいことから、高角度判定用画像においては通常、表面凹凸nsに影領域は形成されない。あるいは形成されたとしても高角度判定処理における閾値領域TH2よりも小さい。
よって、低角度判定処理、中角度判定処理、および高角度判定処理のいずれにおいても、通常の表面凹凸が欠陥として誤検出(誤判定)されることはない。
次に、クラックdf1の場合、個々の低角度単位照明116、中角度単位照明121、および高角度単位照明131のそれぞれが順次に点灯した際にいずれも影部分Bが生じ、係る影部分Bが合成されることにより、低角度判定用画像、中角度判定用画像、および高角度判定用画像において影領域B’が形成されるとする。
このうち、低角度判定用画像および中角度判定用画像において形成される影領域B’のサイズは、表面凹凸nsの誤検出を避けるべく定められてなる低角度判定処理における閾値領域TH0および中角度判定処理における閾値領域TH1のサイズよりも小さいことがある。この場合、クラックdf1は、低角度判定処理および中角度判定処理においては欠陥としては検出されないことになる。このことはすなわち、これら低角度判定処理および中角度判定処理の判定結果のみを参照した場合、クラックdf1に関し誤判定が生じることを意味する。
しかしながら、係るクラック由来の影領域B’のサイズは、高角度判定用画像においては閾値領域TH2のサイズよりも大きいので(より詳細には、そのような関係をみたすように判定用閾値を定めているので)、たとえ低角度判定処理および中角度判定処理においてクラックdf1が欠陥として検出されなかったとしても、高角度判定処理においては欠陥として検出されることになる。
すなわち、クラックについては、たとえ低角度判定処理および中角度判定処理において欠陥として検出されないとしても、少なくとも高角度判定処理においては欠陥として検出される。なお、当然ながら、低角度判定処理および中角度判定処理に際してクラックの影領域B’が閾値領域TH0または閾値領域TH1よりも大きい場合には、低角度判定処理および中角度判定処理の時点で欠陥として検出されることになる。
より詳細には、高角度判定処理においてクラックと思しき欠陥が検出された場合、確認的に、高角度最大輝度画像データにおける当該検出領域の輝度値が参照される。仮に、参照された輝度値が、暗部における値として認められない程度に十分大きい場合、当該検出領域には欠陥はなかったものと判定される。
また、エグレdf3(df3a、df3b)の場合、その深さと照明光の照射角度によって、判定用画像における影領域の形成のされ方に違いが生じ得る。
まず、幅が比較的大きい一方でクラックdf1に比して浅いために、浅いエグレdf3aと深いエグレdf3bの双方ともに、高角度判定用画像において影領域は形成されにくい。それゆえ、高角度判定用画像に基づいてエグレdf3を検出することは難しい。換言すれば、高角度判定用処理においては、エグレは存在しないと誤判定される。
一方、低角度判定用画像および中角度判定用画像では影領域が形成される。いま、図25に示すように、個々の低角度単位照明116および中角度単位照明121のそれぞれが順次に点灯した際にいずれも、浅いエグレdf3aに対応して影部分Cが生じ、エグレdf3bに対応して影部分Dが生じることとする。そして、これらの影部分Cおよび影部分Dが合成されることにより、低角度判定用画像および中角度判定用画像において、影領域C’および影領域D’が形成されるとする。
このとき、撮像時の照明光の照射角度が小さい低角度判定用画像においては、影領域C’および影領域D’がそれぞれ、元々のエグレdf3a、df3bに相当する範囲全般に渡って形成されるのに対し、中角度判定画像においては、影領域D’については元々のエグレdf3bに相当する範囲に形成されるものの、影領域C’については、元々のエグレdf3aの端部(周縁部)のみに形成されるに留まることがある。
それゆえ、少なくとも深いエグレdf3bについては、中角度判定処理における閾値領域TH1を好適に定めることで、検出が可能であるものの、浅いエグレdf3aを確実に検出するという観点からは、低角度判定処理が有効である。
なお、図25に示す例のみによれば一見、エグレ・欠けについては低角度判定処理のみで対応が可能であるようにみられるが、実用上は、種々の形状のエグレや欠けを確実に検出するという観点から、低角度判定処理と中角度判定処理とが併用される。
欠陥判定部240においては、このような低角度判定処理、中角度判定処理および高角度判定処理における判定結果に基づいて、欠陥の有無が総合的に判定される。具体的には、いずれかの判定処理においてNGと判定がなされた場合には、検査対象たるハニカム構造体1の端面1aに、何らかの欠陥が存在することになる。
上述したように、閾値領域TH0、TH1、およびTH2を与える判定用閾値を、検出したいエグレ・欠けやクラックに応じて好適に定めることで、図25に示すように、エグレ・欠けについては高角度判定処理によって検出されないとしても低角度判定処理および/または中角度判定処理によって検出される。また、クラックについては低角度判定処理および中角度判定処理によっては検出されないものの高角度判定処理によって検出される。それゆえ「総合判定」欄には、これらについていずれも「NG」と記載されている。
これらに対し、通常の表面凹凸については、いずれの判定処理においても欠陥であるとして誤検出されないので、「総合判定」欄には、「OK」と記載されている。
以上のような判定の結果は適宜、判定結果データとして欠陥判定部240から統括制御部210へと与えられる。統括制御部210は、欠陥判定部240から与えられた判定結果データの記述内容に基づいて、表示部202に欠陥判定の結果を表示させる。その表示形式には種々の態様が採用可能である。例えば、検査対象領域における欠陥の有無のみが表示される態様であってもよいし、後述するラベリング処理の結果に基づいて欠陥の位置が表示される態様であってもよい。あるいはさらに、暗部の面積(画素数)に基づいて欠陥のサイズが表示される態様であってもよい。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、セラミックス製のハニカム構造体の端面における欠陥の有無を検査するにあたって、照明光の照射方向をそれぞれに違えて得られた複数の撮像データに基づいて判定用画像データを生成することを、照明光の照射角度を3段階に違えつつ行い、得られた3種類の判定用画像データを用いて欠陥の有無を判定することで、正常なセラミックス面の凹凸を欠陥と誤検出することなく、本来検出すべき欠陥を確実に検出することができる。
しかも、それぞれの判定用画像データの生成に先立ち、撮像領域内に存在するセル開口部、ハニカムセグメントの接合部、およびハニカム構造体の外部部分といった、欠陥検査の対象とする必要がない部分に相当する画素領域を、複数の撮像データの最大輝度または最小輝度に基づいて生成される合成画像データのうち、それぞれの部分の特定に適した画像データに基づいてあらかじめ特定し、当該画素領域を除外対象画素領域として検査対象から除外する態様にて判定用画像データを生成するので、欠陥検査をより効率的に行うことが出来る。
<変形例>
上述の実施の形態においては、欠陥検査装置1000が、照射角度θ0が好ましくは5°〜30°である低角度照明部115と、照射角度θ1が好ましくは30°〜60°である中角度照明部120と、照射角度θ2が好ましくは60°〜85°である高角度照明部130という3つの照明部を備えており、それぞれの照明部により照明光を照射した撮像が順次になされるようになっているが、それらの照明部の少なくとも1つが照明角度を違えて多段に設けられることで、全体として4以上の照明部が備わる態様であってもよい。換言すれば、低角度照明部115、中角度照明部120、および高角度照明部130の少なくとも1つが、照明角度の相異なる2以上の照明部により構成されていてもよい。係る場合、照明部の数に応じた合成画像データさらには判定用画像データが生成され、照明部の数に応じた段階での判定処理が行われることになる。
上述の実施の形態では、図13に示すように、低角度照明部115を使用した撮像、中角度照明部120を使用した撮像、および高角度照明部130を使用した撮像を、この順に行っているが、この順序は入れ替わってもよい。その場合、対応する判定処理の順序についても、入れ替わってよい。
また、ハニカム構造体1のサイズがカメラ110の撮像範囲に比して小さい場合、検査の精度が確保されるのであれば、欠陥検査装置1000を使用した欠陥検査に際し、低角度照明部115を使用した撮像と、これにより得られる低角度撮像データに基づくその後の低角度判定処理に至るまでの一連の処理を省略する態様であってもよい。
また、上述の実施の形態は、欠陥検査装置1000が接合部2bを有さないハニカム構造体1を検査対象とすることを、妨げるものではない。係る場合、接合部特定処理部233bによって接合部2bが特定されることがないものの、欠陥検査自体は上述の実施の形態と同様に行われる。あるいは、接合部2bを有さないハニカム構造体1が欠陥検査の対象となることがあらかじめわかっている場合、接合部特定処理部233bの機能が停止させられていてもよい。