JP6737411B2 - 鋼板 - Google Patents

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Description

本開示は、優れた成形性と超高強度特性とを有する鋼板に関係し、具体的には優れた局部延性と高い引張強度とを有する含有Mn濃度の高い鋼板に関係する。
自動車の車体及び部品等の、軽量化と安全性との両方を達成するために、これらの素材である鋼板の高強度化が進められている。一般に、鋼板を高強度化すると、伸びが低下し、鋼板の成形性が損なわれる。鋼板を素材とする自動車の車体用部品の多くがプレス加工により成形されるため、車体部品用として使用される高強度鋼板には、優れたプレス成形性を有することが要求される。特に、伸びフランジ成形や穴広げ加工が主体となる車体用部材に対しては、鋼板の機械的特性として、高い強度を有しながら、高い局部延性を有することが求められている。
加工・成形性を向上させるために、これまでに、残留オーステナイトの変態誘起塑性を利用した、いわゆるTRIP鋼が提案されている(例えば、特許文献1)。
残留オーステナイトは、Cをオーステナイト中に濃化させることによって、オーステナイトが室温でも他の相に変態しないようにすることによって得られる。オーステナイトを安定化させる技術として、Si及びAl等の炭化物析出抑制元素を鋼板に含有させて、鋼板の製造段階において鋼板に生じるベイナイト変態の間にオーステナイト中にCを濃化させることが提案されている。この技術では、鋼板に含有させるC含有量が多ければ、オーステナイトがさらに安定化し、残留オーステナイト量を増やすことができ、その結果、強度と伸びとの両方が優れた鋼板を造ることができる。しかしながら、鋼板が構造部材に使用される場合、鋼板に溶接が行われることが多いが、鋼板中のC含有量が多いと溶接性を十分確保することが困難となり、構造部材として使用することに制限がかかる。したがって、より少ないC含有量で、鋼板の強度と伸びとの両方を向上することが望まれている。
C含有量が上記TRIP鋼よりも少なく、さらに、残留オーステナイト量が上記TRIP鋼よりも多く、強度と延性が上記TRIP鋼を超える鋼板として、4.0質量%超のMnを添加した鋼が提案されている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、上記鋼は箱焼鈍のような長時間加熱プロセスを要件としている。そのため、自動車用の部材に供する高強度鋼板の製造に適する連続焼鈍のような短時間加熱プロセスにおける材料設計は十分に検討されておらず、その場合の局部延性を高める要件は明らかでなかった。
特許文献2には、3.5質量%以上のMnを添加した鋼板であって、フェライトを30%〜80%に制御することによって、引張強度及び伸び性が優れる鋼板が開示されている。
特許文献3には、3〜7質量%のMnを添加した鋼について、残留オーステナイトの生成を20体積%未満に抑制することによって局部延性を向上させた、具体的には、局部伸びが8%以上の鋼板が開示されている。
特許文献4には2.0〜6.0質量%のMnを含有し、残留オーステナイト量を20体積%以上有する高強度鋼板が開示されている。
特許文献5には、1.68〜3.8質量%のMnを含有し、局部延性に優れ、局部伸びが4%以上の高強度鋼板が開示されている。
特開平5−59429号公報 特開2012−237054号公報 特開2003−138345号公報 特開平7−188834号公報 特開2017−53001号公報
古川敬、松村理、熱処理、日本国、日本熱処理協会、平成9年、第37号巻、第4号、p.204
自動車用の部材として高強度鋼板を使用するためには、溶接性を低下させずに、相反する特性である強度と成形性とを確保することが望まれる。具体的には、優れた伸び特性及び高強度を有することが望まれる。
しかしながら、例えば上述した特許文献2及び非特許文献1に開示されているような含有Mn濃度が高い鋼板においては、未再結晶フェライトを多く含むので加工硬化せず、加工・成形性が低い。すなわち、このような未再結晶フェライトを多く含む組織を有する含有Mn濃度の高い鋼板は、自動車用鋼板に求められる引張強度と加工・成形性とを兼備し得るものではない。
特許文献3に記載の発明例となる鋼板は、Cの含有量が0.2質量%未満と低いため、引張強度が1090MPa以下であり、Cの含有量を0.2質量%未満に維持したまま引張強度を1200MPa以上の高強度としたものについては、引張強度が1233MPaで、局部伸びが1.3%である比較例が示されており、局部延性が低下している。
特許文献4に記載の鋼板は、熱延板あるいは冷延板を800℃以上に予備熱処理してオーステナイト化して冷却し、その後650〜750℃の焼鈍温度にて焼鈍を2回行うことによって、オーステナイト中への合金元素の濃縮を促進して20体積%以上の残留オーステナイトを生成させたものである。しかし、特許文献4に記載の発明となる鋼板では、十分な局部延性が得られていなかった。
特許文献5に記載の含有Mn濃度を高めた鋼板については、Mnの含有量が6.0質量%で、局部伸びが0.9%である比較例が示されており、局部延性は高くない。
したがって、優れた局部延性と高い引張強度とを有する含有Mn濃度の高い鋼板が望まれている。
含有Mn濃度の高い鋼板において、優れた局部延性と高強度とを確保するために、本発明者らは、鋼板の金属組織に、面積率(面積%)で、母相として25%以上90%以下の焼き戻しマルテンサイト及び3%以下のフェライト、並びにその他の相として10%以上50%以下の残留オーステナイト及び25%以下のフレッシュマルテンサイトを含ませ、焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度が2.7μm-1以上とすることが有効であることを見出した。
局部延性は、伸びフランジ成形や曲げ加工の局所変形領域で生じる亀裂進展に材料が耐えうる特性であり、その指標は、単軸引張試験によって得られる局部伸びである。
単軸引張試験において、ミクロ組織中に高硬度を有するフレッシュマルテンサイト又は残留オーステナイトが存在した場合、局部変形開始後のくびれ領域においてボイドが発生し得る。ボイドが発生すると、その後の変形過程でボイド同士が連結、進展することで、き裂が発生・伝播し破断に至る。
本発明者等は、任意の方向からの亀裂伝播に対してばらつきの少ないミクロ組織とすることが局部延性向上に有効であると考え、鋭意検討の結果、本発明者らは以下のミクロ組織とすることで高強度且つ優れた局部延性を有する鋼板が得られることを見出した。
鋼板の金属組織の母相を焼き戻しマルテンサイトとする。マルテンサイトはその相中に転位を多く含む低温変態相であり、鋼板の強度を増加させるのに有用な相である。さらに焼き戻しマルテンサイトにすることで、強度−局部延性のバランスが向上する。
ミクロ組織中に残留オーステナイトを含有することで延性を向上させる。これによって、軟質なオーステナイトによる延性向上効果だけでなく、加工時にマルテンサイトに加工誘起変態することでTRIP効果が発現して、強度−延性−局部延性のバランスをさらに向上させることができる。
残留オーステナイトの周囲には焼入れ時に一部変態したフレッシュマルテンサイトが隣接し得る。フレッシュマルテンサイト及び加工誘起変態により生じたマルテンサイトは、母相の焼き戻しマルテンサイトよりも硬質な相であり、鋼の強度を増加させるだけでなく、軟質相から伝播してくる亀裂の伝播を界面で止める役割も有する。
具体的には、L断面において表面から厚みの1/4位置における金属組織が、面積率で、25%以上90%以下の焼き戻しマルテンサイト、3%以下のフェライト、10%以上50%以下の残留オーステナイト、及び25%以下のフレッシュマルテンサイトを含む。なお、ここで、L断面とは、板厚方向と圧延方向に平行に鋼板の圧延方向の中心軸を通るように切断した面をいう。
ただし、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトが互いに連結した粗大な組織形態を有している場合、焼き戻しマルテンサイトの母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面が少なくなることによって亀裂伝播の障害が減少し、早期に破断に至る、すなわち局部延性が劣化し得ることを知見した。
そこで、本発明者等は、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトを微細かつ複雑な形状とすることで局部延性が著しく向上することをさらに見出した。具体的には、図1及び図2に示すように、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとからなる組織が焼き戻しマルテンサイトに対して細かく複雑に入り組んだ組織とすることで、軟質層から伝播してくる亀裂伝播を、焼き戻しマルテンサイトの母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面で止めることができる。図1は、本発明の一実施形態の鋼板のL断面を鏡面研磨及びナイタール処理して観察した走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図2は、図1のSEM画像を2値化処理した2階調画像である。焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度が2.7μm-1以上となるように、鋼板の金属組織を制御する。この金属組織には、任意の亀裂伝播方向に対して障害となる母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面が一定の割合で存在するため、界面強度が向上し、優れた局部延性が得られる。
本開示の鋼板は上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.20%超0.55%未満、
Si:0.001%以上3.50%未満、
Mn:4.00%超9.00%未満、
sol.Al:0.001%以上3.00%未満、
P:0.100%以下、
S:0.010%以下、
N:0.050%未満、
O:0.020%未満、
B:0.0000%以上0.010%未満
Cr:0.00%以上2.00%未満、
Mo:0.00%以上2.00%以下、
W:0.00%以上2.00%以下、
Cu:0.00%以上2.00%以下、
Ni:0.00%以上2.00%以下、
Ti:0.00%以上0.300%以下、
Nb:0.00%以上0.300%以下、
V:0.00%以上0.300%以下、
Ca:0.00%以上0.010%以下、
Mg:0.00%以上0.010%以下、
Zr:0.00%以上0.010%以下、
REM:0.00%以上0.010%以下、
Sb:0.00%以上0.050%以下、
Sn:0.00%以上0.050%以下、及び
Bi:0.00%以上0.050%以下を含有し、
残部が鉄及び不純物であり、
L断面において表面から厚みの1/4位置における金属組織が、面積率で、25%以上90%以下の焼き戻しマルテンサイト、10%以上50%以下の残留オーステナイト、25%以下のフレッシュマルテンサイトライトを含み、
前記1/4位置における金属組織において、残留オーステナイトまたはフレッシュマルテンサイトのいずれかである領域である第1の領域と、前記1/4位置における金属組織から前記第1の領域を除いた領域である第2の領域と、の境界の長さの総和を、前記第1の領域と前記第2の領域との合計面積で除した値である界面密度が2.7μm-1以上であること
を特徴とする鋼板。
(2)質量%で、
B:0.0003%以上0.010%未満
を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の鋼板。
(3)質量%で、
Cr:0.01%以上2.00%未満、
Mo:0.01%以上2.00%以下、
W:0.01%以上2.00%以下、
Cu:0.01%以上2.00%以下、及び
Ni:0.01%以上2.00%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の鋼板。
(4)質量%で、
Ti:0.005%以上0.300%以下、
Nb:0.005%以上0.300%以下、及び
V:0.005%以上0.300%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼板。
(5)質量%で、
Ca:0.0001%以上0.0100%以下、
Mg:0.0001%以上0.0100%以下、
Zr:0.0001%以上0.0100%以下、及び
REM:0.0001%以上0.0100%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼板。
(6)質量%で、
Sb:0.0005%以上0.0500%以下、
Sn:0.0005%以上0.0500%以下、及び
Bi:0.0005%以上0.0500%以下
の1種又は2種以上をさらに含有することを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼板。
(7)前記鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の鋼板。
(8)前記鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の鋼板。
本開示によれば、優れた局部延性及び高強度を有する含有Mn濃度の高い鋼板を提供することができる。
図1は、実施例で得られた鋼板のL断面を鏡面研磨及びナイタール処理して観察した走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。 図2は、図1のSEM像を2値化処理した2階調画像である。 図3は、比較例で得られた鋼板のL断面を鏡面研磨及びナイタール処理して観察したSEM画像である。
以下、本開示の鋼板の実施形態の例を説明する。
1.化学組成
本開示の鋼板の化学組成を上述のように規定した理由を説明する。以下の説明において、各元素の含有量を表す「%」は特に断りがない限り質量%を意味する。
(C:0.20%超0.55%未満)
Cは、鋼の引張強度を高めるために、極めて重要な元素である。十分な残留オーステナイト量を得るためには、0.20%超のC含有量が必要となる。一方、Cを過剰に含有すると鋼板の溶接性を損なうので、C含有量の上限を0.55%未満とした。引張強度と全伸びとを高める点から、C含有量の下限値は、好ましくは0.24%以上、より好ましくは0.28%以上である。C含有量の上限値は、好ましくは0.40%以下、より好ましくは0.35%以下であり、C含有量の上限値を上記範囲にすることによって、鋼板の溶接性をより高めることができる。
(Si:0.001%以上3.50%未満)
Siは、焼き戻しマルテンサイトを強化し、組織を均一化し、局部延性を改善するのに有効な元素である。また、Siは、セメンタイトの析出と粗大化とを抑制し、焼鈍中に生成するオーステナイトを制御しやすくする作用も有する。上記効果を得るために、0.001%以上のSi含有量が必要となる。Si含有量の下限値は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.30%以上、さらに好ましくは0.50%以上である。Si含有量の下限値を上記範囲にすることによって、鋼板の局部延性をさらに向上させることができる。一方、Siを過剰に含有すると鋼板のめっき性や化成処理性を損なうので、Si含有量の上限値を3.50%未満とした。さらに、Si含有量の上限値は、好ましくは3.00%以下、より好ましくは2.50%以下である。
(Mn:4.00%超9.00%未満)
Mnは、オーステナイトを安定化させ、焼入れ性を高める元素である。また、本開示の鋼板においては、Mnをオーステナイト中に分配させ、よりオーステナイトを安定化させる。室温でオーステナイトを安定化させるためには、4.00%超のMnが必要である。一方、鋼板がMnを過剰に含有すると延性及び局部延性を損なうので、Mn含有量の上限を9.00%未満とした。Mn含有量の下限値は、好ましくは4.30%以上、より好ましくは4.80%以上である。Mn含有量の上限値は、好ましくは8.00%以下、より好ましくは7.50%以下である。Mn含有量の下限値及び上限値を上記範囲にすることによって、さらにオーステナイトを安定化させることができる。
(sol.Al:0.001%以上1.00%未満)
Alは、脱酸剤であり、0.001%以上含有させる必要がある。また、Alは、焼鈍時の二相温度域を広げるため、材質安定性を高める作用も有する。Alの含有量が多いほどその効果は大きくなるが、Alを過剰に含有させると、表面性状、塗装性、及び溶接性などの劣化を招くので、sol.Alの上限を1.00%未満とした。sol.Al含有量の下限値は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上、さらに好ましくは0.020%以上である。sol.Al含有量の上限値は、好ましくは0.80%以下、より好ましくは0.60%以下である。sol.Al含有量の下限値及び上限値を上記範囲にすることによって、脱酸効果及び材質安定向上効果と、表面性状、塗装性、及び溶接性とのバランスがより良好になる。本明細書にいう「sol.Al」は、「酸可溶性Al」を意味する。
(P:0.100%以下)
Pは不純物であり、鋼板がPを過剰に含有すると靭性や溶接性を損なう。したがって、P含有量の上限を0.100%以下とする。P含有量の上限値は、好ましくは0.050%以下、より好ましくは0.030%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。本実施形態に係る鋼板はPを必要としないので、Pを実質的に含有しなくてもよく、P含有量の下限値は0.000%である。P含有量の下限値は0.000%超または0.001%以上でもよいが、P含有量は少ないほど好ましい。
(S:0.010%以下)
Sは不純物であり、鋼板がSを過剰に含有すると、熱間圧延によって伸張したMnSが生成し、靭性の劣化を招く。したがって、S含有量の上限を0.010%以下とする。S含有量の上限値は、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.003%以下である。本実施形態に係る鋼板はSを必要としないので、Sを実質的に含有しなくてもよく、S含有量の下限値は0.000%である。S含有量の下限値を0.000%超または0.001%以上としてもよいが、S含有量は少ないほど好ましい。
(N:0.050%未満)
Nは不純物であり、鋼板が0.050%以上のNを含有すると靭性を損なう。したがって、N含有量の上限を0.050%未満とする。N含有量の上限値は、好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.006%以下である。本実施形態に係る鋼板はNを必要としないので、Nを実質的に含有しなくてもよく、N含有量の下限値は0.000%である。N含有量の下限値を0.000%超または0.001%以上としてもよいが、N含有量は少ないほど好ましい。
(O:0.020%未満)
Oは不純物であり、鋼板が0.020%以上のOを含有すると延性の劣化を招く。したがって、O含有量の上限を0.020%未満とする。O含有量の上限値は、好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%以下である。本実施形態に係る鋼板はOを必要としないので、Oを実質的に含有しなくてもよく、O含有量の下限値は0.000%である。O含有量の下限値を0.000%超または0.001%以上としてもよいが、O含有量は少ないほど好ましい。
(B:0.0000%以上0.010%以下)
Bは本実施形態に係る鋼板に必須の元素ではないので含まれなくてもよく、含有量は0.0000%以上である。しかしながら、Bは、焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトの界面を強化し、局部延性をさらに向上させる効果が大きいので、本実施形態の鋼板は好ましくはBを含む。B添加による局部延性の向上効果を得るためには、0.0003%超のB含有量が必要となる。一方、Bを過剰に含有すると靭性を損なうので、B含有量の上限を0.010%以下とした。B含有量の下限値は、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0008%以上であり、B含有量の上限値は、好ましくは0.0050%以下、より好ましくは0.0030%以下である。
本実施形態の鋼板は、更に、Cr、Mo、W、Cu、Ni、Ti、Nb、V、Ca、Mg、Zr、REM、Sb、Sn及びBiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。しかしながら、本実施形態に係る鋼板はCr、Mo、W、Cu、Ni、Ti、Nb、V、Ca、Mg、Zr、REM、Sb、Sn及びBiを必要としないので、Cr、Mo、W、Cu、Ni、Ti、Nb、V、Ca、Mg、Zr、REM、Sb、Sn及びBiを含有しなくてもよい、すなわち含有量の下限値は0%であってもよい。本明細書にいうREMとは、Sc、Y、およびランタノイドの合計17元素を指し、REM含有量とは、REMが1種の場合はその含有量、2種以上の場合はそれらの合計含有量を指す。また、REMは一般的には複数種のREMの合金であるミッシュメタルとしても供給されている。このため、個別の元素を1種または2種以上添加してREM含有量が上記の範囲となるように含有させてもよいし、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REM含有量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
(Cr:0.00%以上2.00%未満)
(Mo:0.00%以上2.00%以下)
(W:0.00%以上2.00%以下)
(Cu:0.00%以上2.00%以下)
(Ni:0.00%以上2.00%以下)
Cr、Mo、W、Cu、及びNiはそれぞれ、本実施形態に係る鋼板に必須の元素ではないので含まれなくてもよく、それぞれの含有量は0.00%以上である。しかしながら、Cr、Mo、W、Cu、及びNiは、鋼板の強度を向上させる元素であるので、含有されてもよい。鋼板の強度向上効果を得るために、鋼板は、Cr、Mo、W、Cu、及びNiからなる群から選択された1種又は2種以上の元素それぞれを0.01%以上含有してもよい。しかしながら、鋼板がこれらの元素を過剰に含有すると、熱延時の表面傷が生成しやすくなり、さらには、熱延鋼板の強度が高くなりすぎて、冷間圧延性が低下する場合がある。したがって、Cr、Mo、W、Cu、及びNiからなる群から選択された1種又は2種以上の元素それぞれの含有量の上限値を2.00%以下とする。
(Ti:0.000%以上0.300%以下)
(Nb:0.000%以上0.300%以下)
(V:0.000%以上0.300%以下)
Ti、Nb、及びVは、本実施形態に係る鋼板に必須の元素ではないので含まれなくてもよく、それぞれの含有量は0.000%以上である。しかし、Ti、Nb、及びVは、微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を生成する元素であるので、鋼板の強度向上に有効である。したがって、鋼板は、Ti、Nb、及びVからなる群から選択される1種または2種以上の元素を含有してもよい。鋼板の強度向上効果を得るためには、Ti、Nb、及びVからなる群から選択される1種または2種以上の元素それぞれの含有量の下限値を0.005%以上とすることが好ましい。一方で、これらの元素を過剰に含有させると、熱延鋼板の強度が上昇しすぎて、冷間圧延性が低下する場合がある。したがって、Ti、Nb、及びVからなる群から選択される1種または2種以上の元素それぞれの含有量の上限値を0.300%以下とする。
(Ca:0.000%以上0.010%以下)
(Mg:0.000%以上0.010%以下)
(Zr:0.000%以上0.010%以下)
(REM:0.000%以上0.010%以下)
Ca、Mg、Zr、及びREM(希土類金属)は、本開示の鋼板に必須の元素ではないので含まれなくてもよく、それぞれの含有量は0.000%以上である。しかしながら、Ca、Mg、Zr、及びREMは、鋼板の靭性を向上させる。この効果を得るためには、Ca、Mg、Zr、及びREMからなる群から選択される1種または2種以上の元素それぞれの含有量の下限値を好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上とする。しかし、過剰量のこれら元素は、鋼板の加工性を劣化させるので、これら元素それぞれの含有量の上限を0.010%以下とし、Ca、Mg、Zr、及びREMからなる群から選択される1種または2種以上の元素の含有量の合計を0.030%以下とすることが好ましい。
(Sb:0.000%以上0.050%以下)
(Sn:0.000%以上0.050%以下)
(Bi:0.000%以上0.050%以下)
Sb、Sn、及びBiは、本開示の鋼板に必須の元素ではないので含まれなくてもよく、それぞれの含有量は0.000%以上である。しかしながら、Sb、Sn、及びBiは、鋼板中のMn、Si、及び/又はAl等の易酸化性元素が鋼板表面に拡散され酸化物を形成することを抑え、鋼板の表面性状やめっき性を高める。この効果を得るために、Sb、Sn、及びBiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素それぞれの含有量の下限値を好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.001%以上とする。一方、これら元素それぞれの含有量が0.050%を超えると、その効果が飽和するので、これら元素それぞれの含有量の上限値を0.050%以下とした。
本実施形態に係る鋼板の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。
「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
2.金属組織
次に、本実施形態に係る鋼板の金属組織について説明する。以下の説明において、各相の分率を表す「%」は特に断りが無い限り面積率(%)を意味する。
本実施形態に係る鋼板のL断面において表面から厚みの1/4位置(1/4t部ともいう)における金属組織は、母相として25%以上90%以下の焼き戻しマルテンサイト及び3%以下のフェライト、並びにその他の相として10%以上50%以下の残留オーステナイト及び25%以下のフレッシュマルテンサイトを含む。さらに、焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度が2.7μm-1以上である。ここで、各相の分率は、焼鈍の条件によって変化し、強度、局部延性などの材質に影響を与える。L断面とは、板厚方向と圧延方向に平行に鋼板の圧延方向の中心軸を通るように切断した面をいう。
焼き戻しマルテンサイト及びフェライトの面積率は、走査型電子顕微鏡(SEM)による組織観察から算出される。鋼板のL断面を鏡面研磨した後に、3%ナイタール(3%硝酸―エタノール溶液)で腐食し、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡で、表面から1/4位置における金属組織を観察して、焼き戻しマルテンサイト及びフェライトのそれぞれの面積率を測定する。
残留オーステナイトの面積率はX線回折法により測定される。走査型電子顕微鏡の観察において残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイト(即ち、焼き戻しされていないマルテンサイト)との区別が難しいので、焼き戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率は次の方法で測定する。鋼板のL断面を鏡面研磨した後に、3%ナイタール(3%硝酸―エタノール溶液)で腐食し、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡で、鋼板の表面から厚みの1/4位置のミクロ組織を観察して、残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの合計の面積率を測定する。次いで、残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの合計の面積率からX線回折法で測定された残留オーステナイトの面積率を差し引いて、フレッシュマルテンサイトの面積率を算出する。
(鋼板の1/4t部の金属組織中の焼き戻しマルテンサイトの面積率:25%以上90%以下)
本実施形態に係る鋼板のL断面において表面から厚みの1/4t部における金属組織は、面積率で、25%以上90%以下の焼き戻しマルテンサイトを含む。焼き戻しマルテンサイトは、局部延性を高める本実施形態に係る鋼板の母相である。したがって、局部延性を向上させるためには、25%以上の焼き戻しマルテンサイトが必要である。一方、焼き戻しマルテンサイトを過剰に含有すると、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトが過少となるため、引張強度が低くなるだけでなく、延性が劣化するので、焼き戻しマルテンサイトの面積率の上限を90%以下とした。焼き戻しマルテンサイトの面積率の下限値は好ましくは40%以上である。焼き戻しマルテンサイトの面積率の上限値は、好ましくは80%以下である。
(鋼板の1/4t部の金属組織中の残留オーステナイトの面積率:10%以上50%以下)
本実施形態に係る鋼板のL断面において表面から厚みの1/4t部における金属組織は、面積率で、10%以上50%以下の残留オーステナイトを含む。
残留オーステナイトは、変態誘起塑性によって、鋼板の引張強度と延性を高める相である。残留オーステナイトは、引張変形を伴う張出し加工、絞り加工、伸びフランジ加工、または曲げ加工によってマルテンサイトに変態し得るので、鋼板を加工することによって得られる鋼材の強度の向上にも寄与する。これら効果を得るために、残留オーステナイトの面積率を10%以上にすることが必要である。残留オーステナイトの面積率の下限値は好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。
残留オーステナイトの面積率は高いほど好ましい。しかしながら、上述した化学成分を有する合金を以下で述べる方法で製造した場合、50%が残留オーステナイトの面積率の上限となる。9.0%超のMnを含有させれば、残留オーステナイトを50%超にすることができるが、この場合、熱間加工性や鋳造性が損なわれる。残留オーステナイトの面積率は、水素脆性の観点を考慮すると、45%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。
(鋼板の1/4t部の金属組織中のフレッシュマルテンサイトの面積率:25%以下)
本実施形態に係る鋼板のL断面において表面から厚みの1/4t部における金属組織は、面積率で、25%以下のフレッシュマルテンサイトを含む。
本実施形態に係る鋼板においては、金属組織中のフレッシュマルテンサイトは、焼き戻しされていないマルテンサイトであり、本実施形態に係る鋼板を強化し、鋼板の引張強度を高める相である。しかし、フレッシュマルテンサイト自体は硬質の相であるので、局部延性を劣化させる作用を有する相でもある。局部延性を低下させないために、金属組織中のフレッシュマルテンサイトの面積率を25%以下、好ましくは15%以下とし、さらに好ましくは10%以下とする。
(鋼板の1/4t部の金属組織中のフェライトの面積率:3%以下)
本実施形態に係る鋼板のL断面において表面から厚みの1/4t部における金属組織は、面積率で、3%以下のフェライトを含む。
実施形態に係る鋼板においては、金属組織中のフェライトの含有量が少ないことが重要である。金属組織中のフェライト含有量が多くなると、延性が低下するためである。延性を低下させないために、金属組織中のフェライトの面積率を3%以下とし、より好ましくは1%以下とし、さらに好ましくは実質的に0%とする。
(鋼板の1/4t部の金属組織中における焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトの界面密度が2.7μm-1以上)
本実施形態に係る鋼板のL断面において表面から厚みの1/4t部における金属組織において、残留オーステナイトまたはフレッシュマルテンサイトのいずれかである領域である第1の領域と、1/4位置における金属組織から第1の領域を除いた領域である第2の領域と、の境界の長さの総和を、第1の領域と第2の領域との合計面積で除した値である界面密度が2.7μm-1以上である。より好ましくは、界面密度は3.15μm-1以上である。
本実施形態に係る鋼板においては、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとが、焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相との間に界面を生成する。残留オーステナイトまたはフレッシュマルテンサイトのいずれかの領域である第1の領域と、第1の領域以外の焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相である第2の領域と、の境界の長さの総和を、第1の領域と第2の領域との合計面積で除した値である界面密度は2.7μm-1以上である。このように、本実施形態に係る鋼板は、焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面の密度、(すなわち、界面密度)が2.7μm-1以上である組織を有する。焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度の測定は、上記の走査型電子顕微鏡によるミクロ組織画像に基づいて行うことができる。
焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度は局部延性に大きく影響し、その密度が2.7μm-1以上の場合、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとは微細かつ互いに独立した構造を呈する為、均質な界面分布となり、良好な局部延性が得られる。
焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度が2.7μm-1未満の場合、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとが粗大且つ互いに連結した構造を呈する為、均質な界面分布とならず、き裂進展を抑制する効果を損なう。
走査型電子顕微鏡によるミクロ組織画像から、焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度の導出は、以下のようにする。先ず、ミクロ組織画像において、残留オーステナイトまたはフレッシュマルテンサイトのいずれかの領域を第1の領域とし、前記ミクロ組織画像の全領域から第1の領域を除いた領域を第2の領域とする。第1の領域と第2の領域との区別は、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとが、走査型電子顕微鏡によるミクロ組織画像では他の相に対して相対的に輝度の高い領域となることを利用して行う。そして、第1の領域と第2の領域との境界の長さの総和を導出し、第1の領域と第2の領域との合計面積で除した値を、焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度とする。上記のミクロ組織画像は、鋼板のL断面において表面から厚みの1/4t部における金属組織において、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)写真により5000倍の倍率で観察した24μm×18μm程度の領域であることができる。
より具体的には、以下のようにして界面密度の導出を行う。焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度は、画像解析ソフトウェアImageJを用いて測定される。SEMを用いて対象とする組織を5000倍の倍率で観察してSEM画像(24μm×18μm)を得る。次いで、ImageJを用いて、SEM画像に1280×960個の分割領域を形成する。各分割領域について、残留オーステナイトまたはフレッシュマルテンサイトの何れかである領域を黒、その他の領域を白となるように2値化処理を施して2階調画像を得る。2値化の閾値は、「Glasbey, CA (1993), "An analysis of histogram-based thresholding algorithms", CVGIP: Graphical Models and Image Processing 55: 532-537」に記載されている輝度値の平均値を閾値として採用する手法を用いて決定する。このアルゴリズムはImageJに実装されており、Auto threshold機能を利用して閾値の決定方法をMethod=Meanとすることで自動的に2値化する。すなわち、2値化の閾値は、ImageJにてMethod=Mean、radius=15として、各ピクセル値を、着目したピクセルを中心として半径15ピクセル以内のピクセル値の平均と置き換えて、スムージングした後のヒストグラムから自動的に決定する。焼き戻しマルテンサイトに対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度の測定は、得られた2階調画像において、孤立したすべての残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの焼き戻しマルテンサイトに対する界面の長さを逐次解析し、その合計値を画像の全領域の面積(24μm×18μm)で除することで行う。残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとが隣接する場合、上記2値化処理過程で両者は一体組織となるため、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面の長さは除かれる。逐次解析とは、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトのそれぞれについて、界面を重複することなく、界面密度を測定することをいう。
3.機械特性
次に、本実施形態に係る鋼板の機械特性について説明する。
本実施形態に係る鋼板の引張強度(TS)は、好ましくは1200MPa以上、より好ましくは1320MPa以上である。これは、鋼板を自動車の素材として使用する際、高強度化によって板厚を減少させ、軽量化に寄与するためである。鋼板の引張強度の上限は特に規定されないが、例えば1600MPaであってもよい。また、本実施形態に係る鋼板をプレス成形に供するためには、延性と局部延性が優れることが望ましい。延性に関して、引張試験の全伸びは、好ましくは15%以上である。全伸びの上限は特に規定されないが、例えば35%以下であってもよい。局部延性に関して、局部伸びは、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは4%以上、さらにより好ましくは5%以上である。局部伸びの上限は特に規定されないが、例えば6%以下であってもよい。
本開示の鋼板は上記のように、高強度を有し、さらに局部延性も良好であり成形性に優れているので、クロスメンバーなどの自動車の構造部品用途に最適である。さらに、本開示の鋼板は含有Mn濃度が高いので、自動車の軽量化にも寄与するので、産業上の貢献が極めて顕著である。
4.製造方法
次に、本実施形態に係る鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態に係る鋼板は、上述の化学組成を有する鋼を常法で溶製し、鋳造してスラブまたは鋼塊を作製し、これを加熱して熱間圧延し、得られた熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧延し、焼鈍を施して製造する。
熱間圧延は、通常の連続熱間圧延ラインで行えばよい。焼鈍は、後で述べる条件を満たせば、焼鈍炉及び連続焼鈍ラインのどちらで行ってもよいが、好ましくは後述する1回目の焼鈍及び2回目の焼鈍はいずれも、連続焼鈍ラインを用いて行うことができるので、生産性を向上することができる。1回目の焼鈍及び2回目の焼鈍は、好ましくは還元雰囲気で行われ、例えば窒素98%及び水素2%の還元雰囲気で行ってもよい。還元雰囲気で熱処理することにより、鋼板の表面にスケールが付着するのを防ぐことができ、酸洗浄を要せずにめっき工程にそのまま送ることができる。更に、冷延圧延後の鋼板に、スキンパス圧延を行ってもよい。
本開示の鋼板の機械特性を得るためには、熱延条件、特に焼鈍条件を、以下に示す範囲内で行うことが好ましい。
本実施形態に係る鋼板が上述の化学組成を有する限り、溶鋼は、通常の高炉法で溶製されたものであってもよく、電炉法で作成された鋼のように、原材料がスクラップを多量に含むものでもよい。スラブは、通常の連続鋳造プロセスで製造されたものでもよいし、薄スラブ鋳造で製造されたものでもよい。
上述のスラブまたは鋼塊を加熱し、熱間圧延を行う。熱間圧延に供する鋼材の温度は、1100℃以上1300℃以下とすることが好ましい。熱間圧延に供する鋼材の温度を1100℃以上にすることにより、熱間圧延時の変形抵抗をより小さくすることができる。一方、熱間圧延に供する鋼材の温度を1300℃以下にすることにより、スケールロス増加による歩留まりの低下を抑制することができる。本明細書において、温度は、鋼板表面の中央位置で測定される温度である。
熱間圧延前に1100℃以上1300℃の温度域に保持する時間は特に規定しないが、曲げ性を向上させるためには、30分間以上とすることが好ましく、1時間以上にすることがさらに好ましい。また、過度のスケールロスを抑制するために、1100℃以上1300℃以下の温度域に保持する時間は、10時間以下とすることが好ましく、5時間以下とすることがさらに好ましい。なお、直送圧延または直接圧延を行う場合には、加熱処理を施さずにそのまま熱間圧延に供してもよい。
仕上圧延開始温度は700℃以上1000℃以下とすることが好ましい。仕上圧延開始温度を700℃以上とすることにより、圧延時の変形抵抗を小さくすることが可能になる。一方、仕上圧延開始温度を1000℃以下にすることにより、粒界酸化による鋼板の表面性状の劣化を抑制することができる。
仕上圧延を行って得られる熱延鋼板を冷却し、巻取り、コイルにすることができる。冷却後の巻取温度を700℃以下とすることが好ましい。巻取温度を700℃以下にすることによって、内部酸化が抑制され、その後の酸洗が容易になる。巻取温度は、より好ましくは650℃以下であり、さらに好ましくは600℃以下である。巻取温度の下限は特に規定しないが、例えば室温でもよい。冷間圧延時の破断を抑制するために、室温まで冷却された後、冷間圧延前に300℃以上600℃以下で熱延板を焼き戻してもよい。
熱延鋼板は、常法により酸洗を施された後に、冷間圧延が行われ、冷延鋼板とされる。
冷間圧延の前であって酸洗の前または後に0%超〜5%程度の軽度の圧延を行って形状を修正すると、平坦確保の点で有利となるので好ましい。また、酸洗前に軽度の圧延を行うことより酸洗性が向上し、表面濃化元素の除去が促進され、化成処理性やめっき処理性を向上させる効果がある。
焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトの界面密度を制御する観点から、冷間圧延の圧下率を低減することが重要である。冷間圧延の圧下率を低く抑えることで、焼鈍後の組織が均質化させることができ、すなわち、焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面分布が均質化される。その結果、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトの界面がより多く金属組織中に存在することが可能となる。この効果を得るために、冷間圧延の圧下率の上限値は50%以下であり、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下、さらにより好ましくは15%以下である。冷間圧延の圧下率の下限値は0%以上であり、好ましくは5%以上である。冷間圧延の圧下率を50%以下とすることは、本発明で規定する界面密度の条件を満足するための重要な要件である。冷間圧延の圧下率を、より好ましくは18%以下とすることにより、3.15μm−1以上のより大きな界面密度を得ることができ、且つ3.0%以上のより大きな局部伸びを得ることができる。
上記熱間圧延工程及び冷間圧延工程を経て得られた冷延鋼板を740℃以上800℃未満に加熱して1回目の焼鈍を行う。740℃以上800℃未満の温度域で10秒以上保持し、その後に、740℃以上800℃未満の上記保持温度から、平均冷却速度2℃/秒以上2000℃/秒以下で500℃以下の温度域まで冷却し、室温まで冷却することが好ましい。次いで、600℃以上Ac3点未満に再度加熱して2回目の焼鈍を行う。600℃以上Ac3点未満の温度域で5秒以上保持し、その後に、600℃以上Ac3点未満の上記保持温度から、平均冷却速度10℃/秒以上で300℃以下の温度域まで冷却する。次いで、200℃以上450℃以下の温度域で30秒以上保持し、その後に、室温まで冷却する。
冷間圧延後の1回目の焼鈍温度は740℃以上800℃未満である。上記焼鈍温度を740℃以上とすることにより、再結晶を著しく促進することができ、さらに、鋼板中のフェライトの面積率を少なくすることができ、延性を向上することができる。フェライトの面積率を0%とするために、1回目の焼鈍温度はAc3以上であることが好ましい。一方、焼鈍温度を800℃未満とすることで、オーステナイト粒成長が抑制され、旧オーステナイト粒の微細化効果により、焼き戻しマルテンサイトに対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトの界面密度が増加し、局部延性の向上に寄与する。未再結晶を完全に除去し、良好な靭性を安定して確保するには、740℃以上800℃未満の温度域での保持時間を10秒以上とすることが好ましい。生産性の観点からは、740℃以上800℃未満の温度域での保持時間を300秒以内とすることが好ましい。ここで、C:0.05%〜0.5%、Si:0%〜3.5%、Mn:0〜9.0%、及びAl:0〜2.0%を含有する複数種類の冷延鋼板について加熱速度0.5〜50℃/秒においてAc3点を計測し検討した結果、Ac3点として以下の式:
Ac3=910−200√C+44Si−25Mn+44Al
が得られ、この式を用いてAc3点を算出することができる。上記の式中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
1回目の焼鈍後、740℃以上800℃未満の上記保持温度から、平均冷却速度2℃/秒以上で500℃以下の温度域まで冷却することが好ましい。平均冷却速度を2℃/秒以上とすることによって臨界冷却速度以上で冷却され、冷却後の鋼材全体をマルテンサイト主体の組織にすることができる。一方、水焼入れ冷却法やミスト噴射冷却法を用いても、平均冷却速度を2000℃/秒以上に制御することすることは難しいので、平均冷却速度の実質的上限は2000℃/秒になる。また、冷却停止温度を500℃以下にすることにより、マルテンサイト変態開始温度以下まで冷却され、冷却後の鋼材全体をマルテンサイト主体の組織にすることができる。上記冷却の後、鋼板を室温まで冷却することが好ましい。上記冷却後2回目の焼鈍の前に、100℃以上500℃以下の温度域で10秒以上1000秒以下の時間で保持して焼戻し処理を行ってもよい。
1回目の焼鈍の後の2回目の焼鈍温度は600℃以上Ac3点未満である。2回目の焼鈍温度を600℃以上Ac3点未満にすることにより、焼き戻しマルテンサイトを所望の面積率に制御でき、引張強度と局部延性とを高めることができる。セメンタイトを溶解させ、良好な靭性を安定して確保する観点から、600℃以上Ac3点未満の温度域での保持時間を5秒以上とすることが好ましい。また、生産性の観点からは、600℃以上Ac3点未満の温度域での保持時間を300秒以内とすることが好ましい。
2回目の焼鈍後、600℃以上Ac3点未満の上記保持温度から、平均冷却速度10℃/秒以上で300℃以下の温度域まで冷却する。次いで、200℃以上450℃以下の温度域で30秒以上保持する。
平均冷却速度10℃/秒以上で300℃以下の温度域まで冷却することで、残留オーステナイト組織の粗大化を抑制できるので、焼き戻しマルテンサイトの母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面分布を固定し、所望の界面密度にすることが可能になる。すなわち、平均冷却速度10℃/秒以上という速度で300℃以下の温度域まで冷却することで、1回目の焼鈍で生成した界面分布を維持して界面密度の減少を避けることができ、局部延性の向上に寄与する。なお、上述したように、平均冷却速度を2000℃/秒以上に制御することすることは難しいので、2回目の焼鈍後の冷却における平均冷却速度の実質的上限も2000℃/秒になる。次いで、200℃以上450℃以下の温度域で30秒以上保持することでフレッシュマルテンサイト中の過飽和炭素の残留オーステナイト中への拡散が助長され、残留オーステナイトの生成を促進するとともに、界面密度が高いことに起因してC拡散が促進され、残留オーステナイト内部のCが均一になる効果が得られ、局部延性が高まる。
200℃以上450℃以下の温度域で30秒以上保持した後の冷却は、鋼板にめっきしない場合には、そのまま室温まで行われればよい。また、鋼板にめっきする場合には、以下のようにして製造する。
鋼板の表面に溶融亜鉛めっきを施して溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、200℃以上450℃以下の温度域で30秒以上保持した鋼板を、430〜500℃の温度範囲に再び加熱し、次いで鋼板を溶融亜鉛のめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっき処理を行う。めっき浴の条件は通常の範囲内とすればよい。めっき処理後は室温まで冷却すればよい。
鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっきを施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施した後、鋼板を室温まで冷却する前に、450〜620℃の温度で溶融亜鉛めっきの合金化処理を行う。合金化処理条件は、通常の範囲内とすればよい。
以上のように鋼板を製造することによって、本実施形態に係る鋼板を得ることができる。
本開示の鋼板を、例を参照しながらより具体的に説明する。ただし、以下の例は本開示の鋼板の例であり、本開示の鋼板は以下の例の態様に限定されるものではない。
1.評価用鋼板の製造
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により245mm厚のスラブを得た。
表1中の下向き矢印は、その一つ上の欄と同じであることを意味する。
得られたスラブを表2に示す条件にて熱間圧延し、2.6mm厚の熱延鋼板を製板した。次いで、得られた熱延鋼板を酸洗し、表2に示す冷間圧延率で冷間圧延を施して、表2に示す種々の板厚の冷延鋼板を製板した。
得られた冷延鋼板について、表3に示す条件の熱処理を施して焼鈍冷延鋼板を作製した。冷延鋼板の熱処理は、窒素98%及び水素2%の還元雰囲気で行った。
一部の焼鈍冷延鋼板例については、最終の焼鈍を行った後、冷却を460℃で停止し、冷延鋼板を460℃の溶融亜鉛のめっき浴に2秒間浸漬して、溶融亜鉛めっき処理を行った。めっき浴の条件は従来のものと同じである。後で述べる合金化処理を施さない場合、460℃の保持後に、平均冷却速度10℃/秒で室温まで冷却した。
一部の焼鈍冷延鋼板例については、溶融亜鉛めっき処理を行った後に、室温に冷却せずに、続いて合金化処理を施した。520℃まで加熱し、520℃で5秒間保持して合金化処理を行い、その後、平均冷却速度10℃/秒で室温まで冷却した。
このようにして得られた焼鈍冷延鋼板を伸び率0.1%で調質圧延し、各種評価用鋼板を準備した。
2.評価方法
各例で得られた焼鈍冷延鋼板について、焼き戻しマルテンサイト、残留オーステナイト、フレッシュマルテンサイト、及びフェライトの面積率、焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度、引張強度、全伸び、並びに局部伸びを評価した。各評価の方法は次のとおりである。
焼き戻しマルテンサイト及びフェライトの面積率は走査型電子顕微鏡による組織観察から算出した。残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率は、走査型電子顕微鏡による組織観察及びX線回折測定から算出した。鋼板を圧延方向に平行に切断したL断面について、鏡面研磨を行い、次いで3%ナイタールによりミクロ組織を現出させて、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡で、表面から1/4位置におけるミクロ組織を観察し、0.1mm×0.3mmの範囲について画像解析(Photoshоp(登録商標))により、焼き戻しマルテンサイトの面積率、フェライトの面積率、及び残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの合計の面積率を算出した。さらに、得られた鋼板から幅25mm、長さ25mmの試験片を切り出し、この試験片に化学研磨を施して板厚1/4分を減厚し、化学研磨後の試験片の表面に対して、Co管球を用いたX線回折分析を3回実施し、得られたプロファイルを解析し、それぞれを平均して残留オーステナイトの面積率を算出した。走査型電子顕微鏡観察で算出した残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの合計の面積率から、X線回折測定で算出した残留オーステナイトの面積率を差し引いて、フレッシュマルテンサイトの面積率を算出した。
焼き戻しマルテンサイトを主体とする母相に対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度は、画像解析ソフトウェアImageJを用いて測定した。まず、SEMを用いて対象とする組織を5000倍の倍率で観察してSEM画像(24μm×18μm)を得た。次いで、ImageJを用いて、SEM画像に1280×960個の分割領域を形成した。各分割領域について、残留オーステナイトまたはフレッシュマルテンサイトの何れかである領域を黒、その他の領域を白となるように2値化処理を施して2階調画像を得た。2値化の閾値は、「Glasbey, CA (1993), "An analysis of histogram-based thresholding algorithms", CVGIP: Graphical Models and Image Processing 55: 532-537」に記載されている輝度値の平均値を閾値として採用する手法を用いて決定した。このアルゴリズムはImageJに実装されており、Auto threshold機能を利用して閾値の決定方法をMethod=Meanとすることで自動的に2値化した。すなわち、2値化の閾値は、ImageJにてMethod=Mean、radius=15として、各ピクセル値を、着目したピクセルを中心として半径15ピクセル以内のピクセル値の平均と置き換えて、スムージングした後のヒストグラムから自動的に決定した。焼き戻しマルテンサイトに対する残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面密度の測定は、得られた2階調画像において、孤立したすべての残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの焼き戻しマルテンサイトに対する界面の長さを逐次解析し、その合計値を画像の全領域の面積(24μm×18μm)で除することで行った。残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとが隣接する場合、上記2値化処理過程で両者は一体組織となるため、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトとの界面の長さは除かれている。逐次解析とは、残留オーステナイトとフレッシュマルテンサイトのそれぞれについて、界面を重複することなく、界面密度を測定することをいう。
(機械的性質)
鋼板の圧延方向に直角方向からJIS5号引張試験片を採取し、引張強度(TS)、全伸び(EL)、及び局部伸び(LEL)を測定した。引張試験は、JIS5号引張試験片を用いて、JIS Z2241:2011に規定される方法で行った。全伸びの測定は、JIS5号試験片を用いて、JIS Z2241:2011に規定される方法で行った。局部伸びの測定は、破断した試験片を突き合せた際の全伸びの値から最大荷重点の伸び(均一伸び)の値を引くことにより算出した。
3.評価結果
上記の評価の結果を表4に示す。2.7μm−1以上の界面密度、1200MPa以上の引張強度、2.0%以上の局部伸びを示す鋼板を、優れた局部延性及び高強度を有する鋼板として評価した。
図1に、試料No.31の鋼板のL断面を、上記鏡面研磨及びナイタール処理して観察したSEM画像を示す。図2に、図1のSEM画像を2値化処理した2階調画像を示す。図3に、試料No.4の鋼板のL断面を、上記鏡面研磨及びナイタール処理して観察したSEM画像を示す。図2の2階調画像から測定された界面密度は3.35μm−1であった。図3のSEM画像を2値化処理した2階調画像から測定された界面密度は1.50μm−1であった。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.20%超0.55%未満、
    Si:0.001%以上3.50%未満、
    Mn:4.00%超9.00%未満、
    sol.Al:0.001%以上3.00%未満、
    P:0.100%以下、
    S:0.010%以下、
    N:0.050%未満、
    O:0.020%未満、
    B:0.0000%以上0.010%未満
    Cr:0.00%以上2.00%未満、
    Mo:0.00%以上2.00%以下、
    W:0.00%以上2.00%以下、
    Cu:0.00%以上2.00%以下、
    Ni:0.00%以上2.00%以下、
    Ti:0.000%以上0.300%以下、
    Nb:0.000%以上0.300%以下、
    V:0.000%以上0.300%以下、
    Ca:0.000%以上0.010%以下、
    Mg:0.000%以上0.010%以下、
    Zr:0.000%以上0.010%以下、
    REM:0.000%以上0.010%以下、
    Sb:0.000%以上0.050%以下、
    Sn:0.000%以上0.050%以下、及び
    Bi:0.000%以上0.050%以下を含有し、
    残部が鉄及び不純物であり、
    Ca、Mg、Zr、及びREMからなる群から選択される1種または2種以上の元素の含有量の合計が0.030%以下であり、
    L断面において表面から厚みの1/4位置における金属組織が、面積率で、25%以上90%以下の焼き戻しマルテンサイト、3%以下のフェライト、10%以上50%以下の残留オーステナイト、及び25%以下のフレッシュマルテンサイトを含み、
    前記1/4位置における金属組織において、残留オーステナイトまたはフレッシュマルテンサイトのいずれかである領域である第1の領域と、前記1/4位置における金属組織から前記第1の領域を除いた領域である第2の領域と、の境界の長さの総和を、前記第1の領域と前記第2の領域との合計面積で除した値である界面密度が2.7μm-1以上であること
    を特徴とする鋼板。
  2. 質量%で、
    B:0.0003%以上0.010%未満
    を含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼板。
  3. 質量%で、
    Cr:0.01%以上2.00%未満、
    Mo:0.01%以上2.00%以下、
    W:0.01%以上2.00%以下、
    Cu:0.01%以上2.00%以下、及び
    Ni:0.01%以上2.00%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の鋼板。
  4. 質量%で、
    Ti:0.005%以上0.300%以下、
    Nb:0.005%以上0.300%以下、及び
    V:0.005%以上0.300%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼板。
  5. 質量%で、
    Ca:0.0001%以上0.0100%以下、
    Mg:0.0001%以上0.0100%以下、
    Zr:0.0001%以上0.0100%以下、及び
    REM:0.0001%以上0.0100%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼板。
  6. 質量%で、
    Sb:0.0005%以上0.0500%以下、
    Sn:0.0005%以上0.0500%以下、及び
    Bi:0.0005%以上0.0500%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鋼板。
  7. 前記鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋼板。
  8. 前記鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋼板。
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