JP6736825B2 - 化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、化合物、その製造方法、及びその使用に関する。
近年、ペロブスカイト構造を有する金属ハロゲン化物が、半導体材料などの様々な用途で注目されている。ペロブスカイト構造を有する化合物は、Aサイト及びBサイトのカチオンと、Xサイトのアニオンとから構成される。そのような化合物の例として、非特許文献1に記載の(C49NH32PbI4を挙げることができ、この例において、AサイトのカチオンはC49NH3 +に、Bサイトのカチオン:Pb2+、XサイトのアニオンはI-に、それぞれ対応する。Bサイトのカチオンは、Xサイトのアニオンに6配位で結合しており、対称又は非対称な八面体を形成している。例えば、単層の鉛カチオンとハロゲンアニオンとの八面体ユニット層と有機アンモニウム層が交互に配置された層構造から構成されるペロブスカイト構造の化合物は、一般式としてA2BX4等で表される。ペロブスカイト構造を有することで、材料中での電荷の移動や、光などによる励起キャリア(電子や正孔など)の長寿命化に有利であることが知られている。
非特許文献1には、Aサイトに炭素鎖の長い(例えば、炭素数4の)有機分子カチオンと、CH3NH3 +などの比較的小さなカチオンとを共に含むことで、鉛カチオンとハロゲンアニオンとの八面体ユニット層を複数層有する3次元構造と層構造(2次元構造)とを周期的に含む、2次元−3次元構造も形成することができることが記載されている。例えば、AサイトのカチオンがC49NH3 +及びCH3NH3 +、BサイトのカチオンがPb2+、XサイトのアニオンがI-であり、鉛カチオンとハロゲンアニオンとの八面体ユニット層を2層有する(C49NH32(CH3NH3)Pb27が開示されている。鉛カチオンとハロゲンアニオンとの八面体ユニット層を単層よりも多く、複数層有することで、電荷の移動に有利となる。
J. Am. Soc. Chem. 2015, 137, 7843.
しかしながら、非特許文献1に記載の(C49NH32PbI4は、鉛カチオンとハロゲンアニオンとの八面体ユニット層が単層である結晶構造のため、より電荷の移動に適した結晶構造であることが望ましい。
また、非特許文献1に記載の(C49NH32(CH3NH3)Pb27は、長波長での光吸収端を有するために、透過光の有効利用の観点から、より透明な材料の開発が求められている。
本発明は、上記の従来技術が有する課題の少なくとも一部に鑑みてなされたものであり、電荷の移動特性と透明性とに優れる化合物、その製造方法、及びその使用を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、所定のカチオンと所定のアニオンとを含み、所定の結晶構造を有する化合物とすることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は下記のとおりものである。
[1]カチオンとアニオンとを含む化合物であって、前記カチオンが、3種類以上のカチオンを含み、前記カチオンの10モル%以上80モル%以下が第14族元素カチオンであり、前記カチオンの10モル%以上80モル%以下が、炭素数が3以上30以下、かつフッ素数が3以上50以下の有機分子カチオンAであり、前記カチオンの5モル%以上90モル%以下が第1族元素カチオン、及び/又は、炭素数が2以下かつ炭素数と窒素数との和が3以上5以下の有機分子カチオンBであり、前記アニオンの30モル%以上100モル%以下が第17族元素アニオンであり、前記化合物が結晶であり、前記結晶が層状ペロブスカイト構造を有し、前記層状ペロブスカイト構造における第14族元素カチオンとアニオンとによる八面体ネットワークの層数が2層以上8層以下である構造を含む、化合物。
[2]前記カチオンの20モル%以上70モル%以下が、前記有機分子カチオンAである、[1]に記載の化合物。
[3]前記有機分子カチオンAのフッ素数が5以上11以下である、[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]前記有機分子カチオンAの炭素数が3以上20以下である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の化合物。
[5]前記有機分子カチオンAがアンモニウム基を有する、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の化合物。
[6]前記有機分子カチオンAの前記アンモニウム基の数が1以上3以下である、[5]に記載の化合物。
[7]前記有機分子カチオンAは、前記アンモニウム基と結合する炭素原子以外の炭素原子がパーフルオロアルキル基を構成する有機分子アンモニウムカチオンである、[5]又は[6]に記載の化合物。
[8]前記有機分子カチオンAの炭素鎖が非環状である、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の化合物。
[9]前記有機分子カチオンAの炭素鎖が直鎖のみである、[1]〜[8]のいずれか1つに記載の化合物。
[10]前記カチオンの10モル%以上80モル%以下が、前記第1族元素カチオンである、[1]〜[9]のいずれか1つに記載の化合物。
[11]前記第1族元素カチオンが、セシウムカチオンである、[1]〜[10]のいずれか1つに記載の化合物。
[12]前記カチオンの10モル%以上70モル%以下が、前記有機分子カチオンBである、[1]〜[11]のいずれか1つに記載の化合物。
[13]前記有機分子カチオンBがアンモニウムカチオンを含む、[1]〜[12]のいずれか1つに記載の化合物。
[14]前記有機分子カチオンBの窒素数が2である、[1]〜[13]のいずれか1つに記載の化合物。
[15]前記有機分子カチオンBがホルムアミジニウムカチオンである、[1]〜[14]のいずれか1つに記載の化合物。
[16]前記カチオンの20モル%以上70モル%以下が、前記第14族元素カチオンである、[1]〜[15]のいずれか1つに記載の化合物。
[17]前記第14族元素カチオンが、錫カチオン又は鉛カチオンである、[1]〜[16]のいずれか1つに記載の化合物。
[18]前記アニオンの55モル%以上100モル%以下が、前記第17族元素アニオンである、[1]〜[17]のいずれか1つに記載の化合物。
[19]前記アニオンが、塩素アニオン、臭素アニオン及びヨウ素アニオンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオンを含む、[1]〜[18]のいずれか1つに記載の化合物。
[20]前記層状ペロブスカイト構造の層間距離が8Å以上40Å以下である、[1]〜[19]のいずれか1つに記載の化合物。
[21]薄膜の形態である、[1]〜[20]のいずれか1つに記載の化合物。
[22]固体粉体の形態である、[1]〜[21]のいずれか1つに記載の化合物。
[23][1]〜[22]のいずれか1つに記載の化合物の製造方法であって、
50℃以上500℃以下の基板に前記化合物の前駆体溶液を滴下する工程を含む、製造方法。
[24][1]〜[22]のいずれか1つに記載の化合物の半導体材料としての使用。
[25][1]〜[22]のいずれか1つに記載の化合物の導電材料としての使用。
[26][1]〜[22]のいずれか1つに記載の化合物の透明導電材料としての使用。
[27][1]〜[22]のいずれか1つに記載の化合物の太陽電池材料としての使用。
[28][1]〜[22]のいずれか1つに記載の化合物の太陽電池の光吸収層としての使用。
[29][1]〜[22]のいずれか1つに記載の化合物の光センサーとしての使用。
[30][1]〜[22]のいずれか1つに記載の化合物の発光材料としての使用。
本発明によると、電荷の移動特性と透明性とに優れる化合物、その製造方法、及びその使用を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態の化合物は、カチオンとアニオンとを含む化合物であって、上記カチオンが、3種類以上のカチオンを含み、上記カチオンの10モル%以上80モル%以下が第14族元素カチオンであり、上記カチオンの10モル%以上80モル%以下が、炭素数が3以上30以下、かつフッ素数が3以上50以下の有機分子カチオンの有機分子カチオンAであり、上記カチオンの5モル%以上90モル%以下が第1族元素カチオン、及び/又は、炭素数が2以下かつ炭素数と窒素数との和が3以上5以下の有機分子カチオンBであり、上記アニオンの30モル%以上100モル%以下が第17族元素アニオンであり、上記化合物が結晶であり、上記結晶が層状ペロブスカイト構造を有し、上記層状ペロブスカイト構造における第14族元素カチオンとアニオンとによる八面体ネットワークの層数が2層以上8層以下である構造を含む、化合物である。このように構成されているため、本実施形態の化合物は、電荷の移動特性及び透明性に優れる。なお、本実施形態において「電荷の移動特性に優れる」とは、上記層状ペロブスカイト構造における第14族元素カチオンとアニオンとによる八面体ネットワークの層数が2層以上8層以下である構造を含むことなどを意味する。該材料中、電荷は主に第14族元素カチオンとアニオンとによる八面体ネットワーク中を拡散すると考えられ、この八面体ネットワークの総数が複数となることで、単層の時よりも電荷の拡散に優れるようになる。また、「透明性に優れる」とは、励起子吸収のピークトップが短波長であること、バンドギャップ由来や励起子吸収由来の吸収端が短波長であること、及び、励起子吸収を有しないことなどを意味する。例えば、励起子吸収のピークトップが430nm以下であること、などを意味する。
(化合物)
本実施形態における化合物は、カチオンとアニオンとを含む化合物であって、上記カチオンの全量(100モル%。以下同様。)に対して10モル%以上80モル%以下が第14族元素カチオンである。該化合物を形成するために更に有利となる観点から、化合物における第14族元素カチオンの含有量は、上記カチオンの全量に対して、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。また、層状構造の形成に更に有利となる観点から、上記化合物における第14族元素カチオンの含有量は、上記カチオンの全量に対して、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
上記第14族元素カチオンとしては、特に限定されないが、例えば、Si4+、Ge2+、Ge4+、Sn2+、Sn4+、及びPb2+が挙げられる。第14族元素カチオンと第17族元素アニオンとの八面体構造の形成のためにより有利である観点から、第14族元素カチオンは2価のカチオンであることが好ましく、具体的には、Ge2+、Sn2+又はPb2+が好ましい。また、酸化に対して比較的安定である観点から、第14族元素カチオンは、Sn2+、又はPb2+がより好ましく、Pb2+がさらに好ましい。本実施形態においては、第14族元素カチオンが、錫カチオン及び鉛カチオンの少なくとも一方を含むことが特に好ましく、錫カチオン又は鉛カチオンであることが極めて好ましい。第14族元素カチオンは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態における化合物において、カチオンの10モル%以上80モル%以下が、有機分子カチオンAである。なお、本実施形態における「有機分子カチオン」とは、炭素原子を有する分子カチオンを意味する。透明性に優れる化合物を形成する観点から、その化合物に含まれるカチオンの10モル%以上80モル%以下が有機分子カチオンAであることが重要である。同様の観点から、該化合物に含まれる有機分子カチオンAの量は、化合物に含まれるカチオンの全量に対して、20モル%以上であると好ましく、25モル%以上であるとより好ましい。一方、該化合物の形成に有利である観点から、その化合物に含まれる有機分子カチオンAの量は、化合物に含まれるカチオンの全量に対して、70モル%以下であると好ましく、60モル%以下であるとより好ましい。
有機分子カチオンAは、化合物の結晶構造を形成が容易になる観点、導電性が向上する観点、及び透明性が改善する観点から、アンモニウム基を有することが好ましい。該化合物を形成することにさらに有利となる観点、及び、化合物の結晶性向上にさらに有利となる観点から、上記化合物が有する有機分子カチオンAのアンモニウム基の数は、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましく、1であることが最も好ましい。
有機分子カチオンAのフッ素数が3以上50以下であることにより、特に透明性に有利とすることができる。具体的には、バンドギャップを大きくすることができ、励起子吸収を短波長化および/または減少させることができる。特に、フッ素数を2よりも大きくすることで、前述の効果をより高めることができる。バンドギャップを大きくする観点、励起子吸収を短波長化する観点、励起子吸収を減少させる観点から、有機分子カチオンAのフッ素数は、5以上であると好ましく、7以上であるとより好ましい。該化合物の形成にさらに有利である観点から、有機分子カチオンAのフッ素数は35以下であると好ましく、25以下であるとより好ましく、15以下であるとさらに好ましく、11以下であるとなおもさらに好ましい。
本実施形態において、有機分子カチオンAの炭素数が3以上30以下であることにより、有機分子カチオンAが安定となり、バンドギャップを大きくすることができ、励起子吸収を短波長化及び/又は減少させることができる。さらに加えて、該化合物の熱的安定性、耐湿性、及び電荷移動特性をさらに有利にすることもできる。有機分子カチオンA中の正に帯電している部位、特にプロトンを生成しやすい官能基、より具体的にはアンモニウム基など、と結合している炭素原子にフッ素原子が結合している分子は安定に存在することが難しい。そこで、その帯電している部位に結合している炭素原子には、フッ素原子が結合していないことが重要である。そのために、有機分子カチオンAの炭素数は、特に、炭素数が2以上であることが重要である。更に、より多くフッ素原子を含むことができる観点、バンドギャップを大きくする観点、励起子吸収を短波長化する観点、励起子吸収を減少させる観点、及び結晶構造が安定化する観点から、有機分子カチオンAの炭素数は、3以上であることが重要である。一方、バンドギャップを大きくする観点、励起子吸収を減少させる観点、及び結晶構造が安定化する観点から、有機分子カチオンAの炭素数は、20以下が好ましく、16以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、6以下がなおもさらに好ましく、4以下が特に好ましい。
より多くのフッ素原子を含むことができる観点、バンドギャップを大きくする観点、励起子吸収を短波長化する観点、励起子吸収を減少させる観点、及び、結晶構造が安定化する観点から、有機分子カチオンAの炭素鎖は、環状の構造を有さない(すなわち、炭素鎖が非環状である。)ことが好ましく、直鎖のみであることがさらに好ましい。ここで、「直鎖」とは、分岐鎖のない炭素鎖などを含み、芳香環は含まない。バンドギャップを大きくする観点、励起子吸収を短波長化する観点、励起子吸収を減少させる観点、及び、結晶構造が安定化する観点から、有機分子カチオンAは、アンモニウム基と結合する炭素原子以外の炭素原子がパーフルオロアルキル基を構成する有機分子アンモニウムカチオンであることが好ましい。
具体的な有機分子カチオンAとしては、特に限定されないが、例えば、プロピルアンモニウムカチオン、ブチルアンモニウムカチオン、ペンチルアンモニウムカチオン、ヘキシルアンモニウムカチオン、ヘプチルアンモニウムカチオン、オクチルアンモニウムカチオン、ノナンアンモニウムカチオン、デカンアンモニウムカチオン、ジエチルアンモニウムカチオン、ジプロピルアンモニウムカチオン、及びトリエチルアンモニウムカチオン、並びに、これらのカチオンの異性体、における3つ以上の水素原子をフッ素原子に置換したものが挙げられる。より具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアンモニウム、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアンモニウム、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルアンモニウム、及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルアンモニウムが挙げられ、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアンモニウム、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアンモニウム、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルアンモニウム、及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルアンモニウムが好ましい。
本実施形態において、化合物のカチオンのうち5モル%以上90モル%以下は、第1族元素カチオン、及び/又は、炭素数が2以下かつ炭素数と窒素数との和が3以上5以下の有機分子カチオンBである。化合物のカチオンが、所定量の第1族元素カチオンを含むことは、層状ペロブスカイト構造に上記八面体ネットワークの層数が複数層である構造を含ませること、導電性の向上、透明性の改善、及び熱安定性の向上の観点から重要である。また、化合物のカチオンが、所定量の炭素数が2以下かつ炭素数と窒素数との和が3以上5以下の有機分子カチオンBを含むことは、化合物の層状ペロブスカイト構造により多層の八面体ネットワーク構造を含ませること、導電性の向上、透明性の改善、熱安定性の向上、及び結晶性の向上の観点から重要である。化合物のカチオンは、第1族元素カチオン及び炭素数が2以下かつ炭素数と窒素数との和が3以上5以下の有機分子カチオンBのいずれか一方を含んでもよく、両方を含んでもよいが、それらの合計の含有量は、上述と同様の観点から、化合物に含まれるカチオンの全量に対して、5モル%以上であり、10モル%以上であると好ましく、14モル%以上であるとより好ましく、18モル%以上であると更に好ましい。それらの合計の含有量は、化合物の層状向上の形成に更に有利である観点から、化合物に含まれるカチオンの全量に対して、90モル%以下であり、80モル%以下であると好ましく、70モル%以下であるとより好ましく、60モル%以下であるとさらに好ましい。なお、本実施形態における有機分子カチオンAと有機分子カチオンBとは、互いにその構造が異なるものである。
化合物に含まれるカチオンの全量に対する第1族元素カチオンの含有量は、化合物により多層の八面体ネットワークを含ませること、熱安定性の向上、動作安定性の向上、及び、凹凸の小さな薄膜形成に更に有利である観点から、10モル%以上であることが好ましく、14モル%以上であることがより好ましく、18モル%以上であることがさらに好ましい。その第1族元素カチオンの含有量は、化合物の層状構造の形成に更に有利である観点から、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましく、60モル%以下であることがさらに好ましく、50モル%以下であることがなおもさらに好ましい。第1族元素カチオンとしては、具体的には、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、及びセシウムカチオンが挙げられる。化合物に上記八面体ネットワークの層数が複数層である構造を含ませること、熱安定性の向上、動作安定性の向上、及び結晶性の向上により有利である観点から、第1族元素カチオンは、ルビジウムカチオン、又はセシウムカチオンであると好ましく、セシウムカチオンであるとより好ましい。第1族元素カチオンは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
化合物に含まれるカチオンの全量に対する有機分子カチオンBの含有量は、化合物により多層の八面体ネットワーク構造を含ませること、熱安定性の向上、動作安定性の向上、結晶性の向上、及び太陽電池光吸収層としての太陽光エネルギー変換の向上により有利である観点から、10モル%以上であることが好ましく、14モル%以上であることがより好ましく、18モル%以上であることがさらに好ましく、20モル%以上であることがなおもさらに好ましい。その有機分子カチオンBの含有量は、化合物の層状構造の形成に更に有利である観点から、70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることがさらに好ましい。有機分子カチオンBは、炭素数と窒素数との和が3以上5以下であることが、熱安定性の向上、動作安定性の向上、結晶性の向上、及びc軸方向への配向の形成により有利となる観点から重要である。熱安定性の向上、動作安定性の向上、結晶性の向上、及びc軸方向への配向形成などにより有利となる観点から、有機分子カチオンBの炭素数と窒素数との和は、3以上4以下であることが好ましく、3であることがより好ましい。有機分子カチオンBの炭素数は、化合物により多層の八面体ネットワーク構造を含ませること、熱安定性の向上、動作安定性の向上、結晶性の向上、及びc軸方向への配向形成に有利である観点から、1であることがさらに好ましい。また、有機分子カチオンBの窒素数は、化合物により多層の八面体ネットワーク構造を含ませる観点から、1以上4以下であることが好ましく、2以上3以下であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。有機分子カチオンBは、化合物に上記八面体ネットワークの層数が複数層である構造を含ませること、熱安定性の向上、動作安定性の向上、結晶性の向上、及びc軸方向への配向形成により有利である観点から、アンモニウムカチオンを含むことが好ましい。有機分子カチオンBとして、具体的には、ホルムアミジニウムカチオン、アセトアミジニウムカチオン、及びグアニジウムカチオンが挙げられ、ホルムアミジニウムカチオンがとりわけ好ましい。有機分子カチオンBは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
化合物は、そこに含まれるアニオンの全量(100モル%)に対して、第17族元素アニオンを30モル%以上100モル%以下含む。化合物が第17族元素アニオンを30モル%以上100モル%以下含むことは、容易に除去できる溶剤への化合物の溶解度を高め、該化合物を有利に形成するために重要である。化合物に含まれるアニオンの全量に対する第17族元素の含有量は、化合物が異なる種類の第17族元素アニオンを含む場合は、それらのモル比率の総和である。容易に除去できる溶剤への化合物の溶解度をさらに高め、該化合物を有利に形成するのにより有利となる観点から、化合物に含まれるアニオンの全量に対する第17族元素アニオンの含有量は、55モル%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。具体的な第17族元素アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、ヨウ素アニオン、臭素アニオン、及び塩素アニオンが挙げられる。結晶化に有利である観点から、第17族元素アニオンは、ヨウ素アニオン又は臭素アニオンを含むことが好ましい。バンドギャップをより小さくする観点から、第17族元素アニオンは、ヨウ素アニオンを含むことがより好ましい。結晶性を向上させる観点から、第17族元素アニオンは、臭素アニオンを含むことがより好ましい。第17族元素は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態において、化合物は、層構造を有する結晶を含むと好ましく、また、結晶構造として複数層連なるペロブスカイト構造を含むことが好ましい。本実施形態のペロブスカイト構造とは、後述の八面体ネットワークの層数が複数であるペロブスカイト構造、及び層状ペロブスカイト構造、並びにその両方を含む構造を意味する。なお、層状ペロブスカイト構造とは、結晶構造において層構造を有するペロブスカイト構造を意味する。ペロブスカイト構造を有することで、電荷の移動により有利になる。本実施形態におけるペロブスカイト構造の化合物、例えば八面体ネットワークの層数が2層である層状ペロブスカイト構造は、Aa 2b27という一般式で表され、Aサイト(Aaサイト及びAbサイト)及びBサイトのカチオンと、Xサイトのアニオンとから構成される。そのような化合物としては、例えば、(C25CH2NH32(CH(NH22)Pb27が挙げられる。この化合物において、AサイトのカチオンはC25CH2NH3 +に、BサイトのカチオンはPb2+に、XサイトのカチオンはI-に、それぞれ対応する。Bサイトのカチオンは、Xサイトのアニオンに6配位で結合しており、八面体を形成している。この八面体構造の少なくとも一部は、隣り合う八面体構造と頂点共有をしている。本実施形態における層状構造とは、層構造を有する構造を意味し、層構造とは、BサイトのカチオンとXサイトのアニオンによる八面体構造が頂点共有していない面を有する構造を指す。化合物は層構造を有することで、透明性の向上、薄膜形態の平坦化、励起子の束縛エネルギーを大きくすることにより有利になる。なお、本実施形態において、励起子の束縛エネルギーが大きいことは、その化合物について、室温での励起子吸収が観察されるか否かにより判定することができる。また、本実施形態の化合物は、励起子の束縛エネルギーが大きいことにより、後述の発光材料などとして、より好適に利用できる。束縛エネルギーの大きな化合物について、励起子寿命が長くなることで、励起子吸収がより明確に観察できるようになり、この励起子寿命は結晶性が高くなることで向上する。すなわち、束縛エネルギーが大きな化合物が室温にて励起子吸収を有することや、さらにこの励起子吸収が急峻であることは、化合物の結晶性が高いことを意味する。また、層状ペロブスカイト構造とは、層構造を有し、かつ八面体が連なった平面構造(以下、「八面体平面構造」という。)を有する構造を意味する。さらに、八面体ネットワークとは、上記八面体平面構造が2層以上重なった構造を意味し、例えば各八面体の5つ以上が頂点共有している構造である。第14族元素カチオンとアニオンとによる八面体ネットワークは、八面体平面構造が2層以上重なった構造であり、例えば各八面体の5つ以上が頂点共有している構造である。この結晶構造は、X線結晶構造解析や透過型電子顕微鏡像の格子像などの種々公知の手法により評価することができる。
本実施形態の化合物のペロブスカイト構造において、Aaサイトは有機分子カチオンA、Abサイトは第1族元素カチオン及び/又は有機分子カチオンB、Bサイトは第14族元素カチオン、Xサイトは第17族元素アニオンであることが好ましい。化合物における層状ペロブスカイト構造の層間距離は、層状ペロブスカイト構造の形成に有利である観点から、8Å以上40Å以下であることが好ましい。本実施形態において、層状ペロブスカイト構造に含まれる上記八面体ネットワークの層数が複数層である構造は、上記八面体平面構造が2層以上5層以下重なった構造を含むと好ましい。導電性と透明性に優れるためには、八面体平面構造が2層以上5層以下重なった構造であることがより重要である。励起子の束縛エネルギーを更に大きくする観点から、層状ペロブスカイト構造に含まれる上記八面体ネットワークの層数が複数層である構造は、八面体平面構造が4層以下重なることが好ましく、3層以下重なることがより好ましく、2層重なることがさらに好ましい。
化合物のバンドギャップは、5.0eV以下であると好ましく、4.0eV以下であるとより好ましい。一方、光の透過により有利である観点から、化合物のバンドギャップは、1.0eV以上であると好ましく、1.5eV以上であるとより好ましい。
本実施形態の化合物は、様々な形態をとりうるが、取り扱いがより容易である観点から、固体粉末や薄膜の形態であることが好ましく、積層した構造の調製がより容易である観点から、薄膜の形態であることがより好ましい。
化合物の結晶子サイズは、1nm以上500nm以下であることが好ましい。結晶性向上により有利である観点から、結晶子サイズは5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。凹凸の小さな薄膜とするためにより有利である観点から、結晶子径は200nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。
(化合物の製造方法)
本実施形態の化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する所定の原料及び溶剤を用い、所定の工程を経るものとすることができる。特に、組成がより均一な化合物を調製するためには、溶剤を用いて化合物を調製することが望ましく、とりわけ50℃以上500℃以下の基板にその化合物の前駆体溶液を滴下する工程を含むことが好ましい。この工程を含むことで、該化合物について、不純物をより少なくし純度を高めたり、結晶性をより高めたり、励起子寿命を長くし、束縛エネルギーをより大きくしたりすることができる。
本実施形態の化合物は、溶剤を用いない方法、あるいは、溶剤を用いる方法により製造することもできる。溶剤を用いない方法として、以下に限定されないが、例えば、蒸着法及び固相法が挙げられる。組成がより均一な化合物を製造する観点から、本実施形態の化合物は、溶剤を用いる方法、すなわち、化合物の原料を溶剤に溶解させた溶液から、溶剤を除去することで結晶化させる方法で製造することが好ましい。すなわち、本実施形態に係る化合物の製造方法は、上述の所定のカチオンとアニオンとを含む物質を、非プロトン性溶剤に溶解させて溶液を得る工程と、当該溶液から溶剤を除去する工程とを含むことが好ましい。また、溶剤除去の工程を簡便にできる観点から、容易に除去できる溶剤を化合物の製造方法に用いることが好ましい。
本実施形態の化合物の原料としては、該化合物を構成するカチオン元素を含む物質、及び構成するアニオン元素を含む物質が好ましい。特に、非プロトン性溶剤と、有機分子カチオンAと、第1族元素カチオン及び/又は有機分子カチオンBと、第14族元素カチオンと、第17族元素アニオンとを含む溶液であって、第17族元素アニオンと第14族元素カチオンとのモル比(第17族元素アニオン/第14族元素カチオン)が0.1以上10以下である溶液を調製する工程と、その溶液から溶剤を除去する工程とを含むことが好ましい。
上記化合物は、具体的には、ハロゲン化金属、及び塩基とハロゲン化水素との塩などを原料とすることが好ましい。上記ハロゲン化金属を構成するハロゲン種は、新IUPACの周期表における第17族元素が好ましい。具体的な第17族元素としては、特に限定されないが、例えば、ヨウ素、臭素、及び塩素が挙げられ、化合物の結晶化に有利である観点から、ヨウ素及び臭素が好ましい。化合物のバンドギャップを小さくするために好ましい観点から、第17族元素はヨウ素であるとより好ましい。また、結晶性を向上させる観点から、第17族元素は臭素であるとより好ましい。同様の観点から、ハロゲン化金属は、第14族元素ハロゲン化物であると好ましく、具体的には、ゲルマニウムハロゲン化物、錫ハロゲン化物、及び鉛ハロゲン化物が挙げられ、2価の第14族カチオンが安定である観点から、錫ハロゲン化物、及び鉛ハロゲン化物が好ましく、鉛ハロゲン化物がより好ましい。より具体的には、上記と同様の観点から、ヨウ化鉛及び臭化鉛が好ましい。また、化合物に第1族元素カチオンを含ませる場合は、ハロゲン化金属は、第1族元素ハロゲン化物であってもよく、具体的には、ナトリウムハロゲン化物、カリウムハロゲン化物、ルビジウムハロゲン化物及びセシウムハロゲン化物が挙げられ、結晶形成に有利である観点から、セシウムハロゲン化物が好ましい。ハロゲン化金属は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記塩基とハロゲン化水素との塩としては、有機アミン・ハロゲン化水素塩が好ましい。その具体例としては、以下に限定されないが、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン・ヨウ化水素塩、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン・臭化水素塩、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン・塩化水素塩、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン・ヨウ化水素塩、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン・臭化水素塩、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン・塩化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルアミン・ヨウ化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルアミン・臭化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルアミン・塩化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルアミン・ヨウ化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルアミン・臭化水素塩、及び、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルアミン・塩化水素塩、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩、ホルムアミジン・臭化水素塩、ホルムアミジン・塩化水素塩、メチルアミン・ヨウ化水素塩、メチルアミン・臭化水素塩、及びメチルアミン・塩化水素塩が挙げられる。これらの中では、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン・ヨウ化水素塩、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン・臭化水素塩、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアンミン・塩化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルアミン・ヨウ化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルアミン・臭化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルアミン・塩化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルアミン・ヨウ化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルアミン・臭化水素塩、及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルアミン・塩化水素塩、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩、ホルムアミジン・臭化水素塩、ホルムアミジン・塩化水素塩、メチルアミン・ヨウ化水素塩、メチルアミン・臭化水素塩、及びメチルアミン・塩化水素塩が好ましく、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン・臭化水素塩、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルアミン・臭化水素塩、及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルアミン・臭化水素塩、ホルムアミジン・臭化水素塩、メチルアミン・臭化水素塩がより好ましい。塩基とハロゲン化水素との塩は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記溶液には、化合物に含まれる有機分子カチオンAと、第1族元素カチオン及び/又は有機分子カチオンBと、第14族元素カチオンと、第17族元素アニオンとが含まれることが好ましい。第17族元素アニオンと、第14族元素カチオンとのモル比(第17族元素カチオン/第14族元素カチオン)は、0.1以上10以下であると好ましく、0.5以上8以下であるとより好ましく、1以上5以下であるとさらに好ましい。本実施形態の化合物の製造方法は、上記のように調製された溶液から溶剤を除去する工程をさらに有することがとりわけ好ましい。上記溶液から溶剤を除去する工程としては、特に限定されないが、例えば、加熱により溶剤を蒸発除去する工程、並びに、貧溶媒との接触や混合により、良溶媒である溶剤を除去する工程が挙げられる。
該化合物を製造するための原料の固定化、例えば薄膜の形態の化合物の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、溶液を用いた、スピンコート法、スプレー法、及び液相反応法が挙げられる。溶液の引火などの危険性がより少ない、及び/又は、調製方法の調整がより容易である観点から、スピンコート法が好ましい。また、貧溶媒を用いて、過剰な溶媒の除去や、核生成を促進することもできる。
該化合物を製造するときの温度、特に溶剤を除去する工程における溶液の温度は、0℃以上110℃以下であると好ましい。この温度が0℃以上であると、溶剤の除去がより容易となり、110℃以下であると、加熱により消費されるエネルギーをより少なくすることができる。より小さなエネルギーで該化合物を製造できる観点から、該化合物を製造するときの温度、特に溶剤を除去する工程における温度は、80℃以下であるとより好ましく、50℃以下であるとさらに好ましい。
該化合物を製造するときの雰囲気は、特に限定されず、例えば、大気中や不活性雰囲気中であってもよいが、より簡便に化合物を調製できる観点から、大気中で化合物を調製することが好ましい。また、化合物の純度を更に高くできる観点から、不活性雰囲気中で化合物を調製することが好ましい。
(用途)
本実施形態の化合物は、半導体材料として利用することができる。本実施形態における半導体材料としては、例えば、バンドギャップが2eV以下である材料が挙げられる。
本実施形態の化合物は、他の用途に用いることもできる。具体的には、電子若しくは正孔又はイオンを伝導する材料、光吸収による光励起キャリアの生成を利用する材料、及びその再結合による発光を利用する材料が挙げられる。より具体的には、導電性材料、発光材料、太陽電池材料、太陽電池の光吸収層、光センサー、光触媒、イオン伝導材料、圧電素子、及びパワーデバイスが挙げられる。本実施形態でのイオンとは、該材料を構成するカチオン又はアニオンのことを指す。該化合物は、第14族元素カチオンと第17族アニオンとの八面体ネットワークが2層以上であることから、導電性に優れるために、導電材料としての用途が好ましい。特に、透明性にも優れることから、透明導電材料として利用することが好ましい。
本実施形態の化合物は、優れた発光特性を有するため、該化合物を含む発光素子などに適用することが好ましい。本実施形態の化合物は、発光のストークスシフトを小さくできる、発光量子収率を大きくできるなどの特徴と相俟って、発光材料としても好適に使用できる。
本実施形態の化合物は、優れた光吸収特性を有するため、太陽電池セルに含ませると好ましく、特に、太陽電池セルに備えられる光吸収層が該化合物を含むと好ましい。このような化合物の使用によると、さらに、光電流密度、開放電圧、及びフィルファクターの少なくとも一つを向上させることで、当該化合物が有する光吸収特性と相俟って太陽光変換効率を向上させることができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、これらの実施例と比較例によって何ら限定されるものではない。後述する実施例及び比較例における各種物性及び反応条件は、以下に示す方法により測定及び設定した。
(結晶構造)
化合物の結晶構造は、X線回折装置(製品名「SmartLab」、リガク社製)を用いて測定したCuα線によるX線回折(XRD)パターンから評価した。層状ペロブスカイト構造のような層構造を有するか否かの判定は、該化合物のXRDパターンに、2θ=11°(d=8Å)よりも低角度の回折ピークを有する場合は層構造あり(○)と判定し、そのような回折ピークを有しない場合は層構造なし(×)と判定し、その低角度のピークの回折角から層間距離(d値)を求めた。特に、複数層のPbカチオンとBrアニオンによる八面体が頂点共有しているペロブスカイト構造であるか否かは、PbカチオンとBrアニオンによる八面体が頂点共有している構造において、PbカチオンとBrアニオンとによる面間の回折に由来する、2θ=14〜16°に回折ピークが存在するか否かと、上記層構造のd値が、化合物を構成する有機分子カチオンAから構成されるPbカチオンとBrアニオンによる八面体が頂点共有している構造が単層であるペロブスカイト構造のd値よりも大きいか否かから判定した。また、層状ペロブスカイト構造のPbカチオンとBrアニオンによる八面体が頂点共有している構造が単層である層構造のd値よりも、4〜9Å大きいものの層数は、2であるとした。なお、有機分子カチオンAがC25CH2NH3 +、C37CH2NH3 +、又はC511CH2NH3 +であり、上記頂点共有している構造が単層であるペロブスカイト構造材料のd値は、それぞれ15Å、18Å、又は23Åであった。
(生成物)
化合物のXRDパターンにおける、回折ピークの一番大きな材料を主生成物と判断してその組成を表記し、該化合物と異なる材料が回折ピークの一番大きな材料である場合は、「混合物」と表記した。
(励起子吸収ピークトップ)
励起子吸収の評価は、該化合物の室温における吸収スペクトルを紫外可視近赤外分光計(製品名「UV−PC3100」、SHIMADZU社製)を用いて測定し、その吸収スペクトル中の励起子吸収のピークトップを求めることにより行った。励起子吸収を有しない場合は、「なし」と表記した。
下記に示すとおり、実施例1〜4及び比較例1〜2に係る薄膜を調製し、その物性を評価した。
(実施例1)
溶剤としてDMFを用い、これに2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン・臭化水素塩と、ホルムアミジン・臭化水素塩と、臭化鉛とを、それぞれ0.90M、0.45M、及び0.90Mとなるように溶解させて、前駆体溶液である溶液1を得た。基板としてガラス板を用い、70℃に加熱した基板に溶液1を100μL滴下した。その後、3000rpmで30秒間スピンコートし、基板上に薄膜サンプルを得た。サンプルの結晶構造及び吸収スペクトルを評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン・臭化水素塩の代わりに2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアミン・臭化水素塩を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜サンプルを得、サンプルの結晶構造及び吸収スペクトルを評価した。結果を表1に示す。
(実施例3)
2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン・臭化水素塩の代わりに2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキサンアミン・臭化水素塩を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜サンプルを得、サンプルの結晶構造及び吸収スペクトルを評価した。結果を表1に示す。
(実施例4)
ホルムアミジン・臭化水素塩の代わりにメチルアミン・臭化水素塩を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜サンプルを得、サンプルの結晶構造及び吸収スペクトルを評価した。結果を表1に示す。
(実施例5)
ホルムアミジン・臭化水素塩の代わりにメチルアミン・臭化水素塩を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜サンプルを得、サンプルの結晶構造及び吸収スペクトルを評価した。結果を表1に示す。
(実施例6)
ホルムアミジン・臭化水素塩の代わりに臭化セシウムを用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜サンプルを得、サンプルの結晶構造及び吸収スペクトルを評価した。結果を表1に示す。
(実施例7)
溶液1を滴下する際の基板温度を70℃から20℃に変更した以外は実施例1と同様にして、薄膜サンプルを得、サンプルの結晶構造及び吸収スペクトルを評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン・臭化水素塩の代わりにプロピルアミン・臭化水素塩を用いた以外は実施例1と同様にして、薄膜サンプルを得、サンプルの結晶構造及び吸収スペクトルを評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン・臭化水素塩の代わりにブチルアミン・臭化水素塩を用いた以外は実施例2と同様にして、薄膜サンプルを得、サンプルの結晶構造及び吸収スペクトルを評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006736825
実施例1〜5の結果から、本実施形態の化合物は、層間距離が8Å以上の層構造を有することが示された。さらに実施例1〜5で得られた化合物は、八面体ネットワークの層数が2層以上8層以下の化合物であることが分かり、導電性に優れることが示された。
実施例1〜7と比較例1、2とを比較すると、実施例1〜7では、励起子吸収ピークトップが430nmを下回るか、励起子吸収を有しないのに対して、比較例1、2では励起子吸収ピークトップが430nmを超えた。このことから、実施例1〜7の方が比較例1,2よりも透明性に優れることが示された。
実施例1〜3と、実施例4〜6とを比較すると、有機分子カチオンBをホルムアミジニウムカチオンとすることで、主生成物を該化合物とすることができ、高い純度で所望の化合物を製造できることが示された。
実施例1と実施例7とを比較すると、基板温度が50℃以上500℃以下の基板に前駆体溶液を接触させる工程を含むことで、主生成生物を該化合物とすることができ、高い純度で所望の化合物を製造できることが示された。
本発明によると、電荷の移動特性と透明性とに優れる化合物を提供できるので、半導体材料、導電材料、発光材料、太陽電池の光吸収層などの太陽電池材料等の分野に産業上の利用可能性がある。

Claims (25)

  1. カチオンとアニオンとを含む化合物であって、前記カチオンが、3種類以上のカチオンを含み、
    前記カチオンの20モル%以上50モル%以下がPb 2+ であり、
    前記カチオンの20モル%以上60モル%以下が、炭素数が3以上30以下、かつフッ素数が3以上50以下の有機分子カチオンAであり、
    前記カチオンの18モル%以上60モル%以下がセシウムカチオン、及び/又は、炭素数が2以下かつ炭素数と窒素数との和が3以上5以下の有機分子カチオンBであり、
    前記アニオンの30モル%以上100モル%以下が第17族元素アニオンであり、
    前記化合物が結晶であり、前記結晶が層状ペロブスカイト構造を有し、
    前記層状ペロブスカイト構造におけるPb 2+ とアニオンとによる八面体ネットワークは、八面体平面構造の2層以上が頂点共有しながら重なった構造の層数が2層以上層以下である構造を含む、化合物。
  2. 前記有機分子カチオンAのフッ素数が5以上11以下である、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記有機分子カチオンAの炭素数が3以上20以下である、請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 前記有機分子カチオンAがアンモニウム基を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 前記有機分子カチオンAの前記アンモニウム基の数が1である、請求項に記載の化合物。
  6. 前記有機分子カチオンAは、前記アンモニウム基と結合する炭素原子以外の炭素原子がパーフルオロアルキル基を構成する有機分子アンモニウムカチオンである、請求項4又は5に記載の化合物。
  7. 前記有機分子カチオンAの炭素鎖が非環状である、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物。
  8. 前記有機分子カチオンAの炭素鎖が直鎖のみである、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物。
  9. 前記カチオンの18モル%以上50モル%以下が、前記有機分子カチオンBである、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物。
  10. 前記有機分子カチオンBがアンモニウムカチオンを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物。
  11. 前記有機分子カチオンBの窒素数が2である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
  12. 前記有機分子カチオンBがホルムアミジニウムカチオンである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
  13. 前記アニオンの55モル%以上100モル%以下が、前記第17族元素アニオンである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
  14. 前記アニオンが、塩素アニオン、臭素アニオン及びヨウ素アニオンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオンを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
  15. 前記層状ペロブスカイト構造の層間距離が8Å以上40Å以下である、請求項1〜149のいずれか1項に記載の化合物。
  16. 薄膜の形態である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物。
  17. 固体粉体の形態である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    50℃以上500℃以下の基板に前記化合物の前駆体溶液を滴下する工程を含む、製造方法。
  19. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の半導体材料としての使用。
  20. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の導電材料としての使用。
  21. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の透明導電材料としての使用。
  22. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の太陽電池材料としての使用。
  23. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の太陽電池の光吸収層としての使用。
  24. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の光センサーとしての使用。
  25. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の発光材料としての使用。
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