JP6495392B2 - 組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、化合物、その製造方法、及びそれらの使用に関する。
近年、ペロブスカイト構造を有する金属ハロゲン化物が、太陽電池用途などの、様々な用途で注目されている。ペロブスカイト構造を有する化合物は、Aサイト及びBサイトのカチオンと、Xサイトのアニオンとから構成される。そのような化合物の例としては、CH3NH3PbI3を挙げることができ、この例において、AサイトのカチオンはCH3NH3 +に、BサイトのカチオンはPb2+に、XサイトのカチオンはI-に、それぞれ対応する。Bサイトのカチオンは、Xサイトのアニオンに6配位で結合しており、対称又は非対称な8面体を形成している。3次元構造のペロブスカイト構造は、一般式としてABX3等で表される。ペロブスカイト構造を有することで、材料中での電荷の移動や、光などによる励起キャリア(電子や正孔など)の長寿命化に有利であることが知られている。
非特許文献1では、ホルムアミジニウムカチオン(CH(NH22+、鉛カチオン(Pb2+)、ヨウ素アニオン、から構成される化合物が、170℃以上の加熱により、ペロブスカイト構造を形成でき、吸収端約820nmの材料となることが記載されている。
非特許文献2には、CH3NH3PbI3とCsPbI3に対して、CsPbI2(BF4)、CsPb(BF43は、(PF6)CsPbI2(PF6)、CsPb(PF63は、バンドギャップがより大きくなり、BF4 -やPF6 -を多く含むことで、バンドギャップが大きくなる傾向であることが開示されている。
非特許文献3には、(CH(NH22)PbI3の(CH(NH22)の一部をCsに置換することで、バンドギャップが大きくなることが開示されている。
J. Phys. Chem. 2014, 118, 16458 J. Mater. Chem A 2015, 3, 9067. Chem. Mater. 2016, 28, 284.
しかしながら、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3に記載の化合物は、吸収端が短波長であり、バンドギャップがより小さいことが望まれる。例えば、太陽光に多く含まれる、より長波長の光を利用し、光吸収特性を向上させるためには、よりバンドギャップの小さな材料の開発が求められている。また、非特許文献1、非特許文献2に記載の化合物は、大気中での安定性が十分ではなく、より安定な化合物の開発が求められている。
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、光吸収特性に優れる、及び/又は安定性に優れる化合物、その製造方法、及びその使用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、所定のカチオンと所定のアニオンを含む化合物とすることで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は下記のとおりのものである。
[1]
カチオンとアニオンとを含み、
前記カチオンのうち10モル%以上90モル%以下が第14族元素カチオンであり、
前記カチオンの10モル%以上90モル%以下が対カチオンであり、ここで当該対カチオンのうち、1モル%以上100モル%以下が、炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンであり、
前記アニオンが、有効イオン半径が2.25Å以上3.00Å以下である無機アニオンを含み、
ペロブスカイト構造を有する、化合物。
[2]
前記アニオンの0.1モル%以上100モル%以下が前記無機アニオンである、[1]に記載の化合物。
[3]
前記無機アニオンが分子アニオンである、[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]
前記アニオンが、17族元素アニオンをさらに含み、
前記化合物に含まれる、ホウ素及びリンの和と前記17族元素との原子比((ホウ素+リン)/第17族元素)が、0.001以上95以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物。
[5]
前記化合物に含まれる、ホウ素及びリンの和と、前記有機分子カチオンとのモル比((ホウ素+リン)/有機分子カチオン)が、0.001以上95以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の化合物。
[6]
前記化合物に含まれる、ホウ素及びリンの和と、前記第14族元素カチオンとのモル比((ホウ素+リン)/第14族元素カチオン)が、0.001以上95以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の化合物。
[7]
前記無機アニオンの有効イオン半径が、2.35Å以上2.90Å以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物。
[8]
前記無機アニオンが、BF4 -及び/又はPF6 -である、[1]〜[7]のいずれかに記載の化合物。
[9]
前記無機アニオンが、PF6 -である、[1]〜[8]のいずれかに記載の化合物。
[10]
前記アニオンの1モル%以上99.9モル%以下が前記第17族元素アニオンである、[4]〜[9]のいずれかに記載の化合物。
[11]
前記第17族元素アニオンが、塩化物アニオン、臭化物アニオン及びヨウ化物アニオンからなる群より選択される少なくとも1つである、[10]に記載の化合物。
[12]
前記カチオンの20モル%以上85モル%以下が前記対カチオンである、[1]〜[11]のいずれかに記載の化合物。
[13]
前記対カチオンの5モル%以上100モル%以下が前記有機分子カチオンである、[1]〜[12]のいずれかに記載の化合物。
[14]
前記有機分子カチオンがアンモニウム基及び/又はアミン基を含む、[1]〜[13]のいずれかに記載の化合物。
[15]
前記有機分子カチオンがホルムアミジウムカチオンを含む、[1]〜[14]のいずれかに記載の化合物。
[16]
前記対カチオンの6モル%以上48モル%以下が第一元素カチオンである、[1]〜[15]のいずれかに記載の化合物。
[17]
前記第一元素カチオンが、Rb及びCsの少なくとも一方を含む、[16]に記載の化合物。
[18]
前記カチオンの15モル%以上80モル%以下が、前記第14族元素カチオンである、[1]〜[17]のいずれかに記載の化合物。
[19]
前記第14族元素カチオンが、錫カチオン及び/又は鉛カチオンである、[1]〜[18]のいずれかに記載の化合物。
[20]
形態が粒子である、[1]〜[19]のいずれかに記載の化合物。
[21]
形態が薄膜である、[1]〜[19]のいずれかに記載の化合物。
[22]
カチオンとアニオンから構成される塩であって、
前記アニオンの1モル%以上100モル%以下が、有効イオン半径が2.25Å以上、3.00Å以下の無機アニオンであり、
前記カチオンの1モル%以上100モル%以下が、炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンである、塩。
[23]
前記無機アニオンが、HBF4アニオン及び/又はHPF6アニオンである、[22]に記載の塩。
[24]
前記有機分子カチオンが、ホルムアミジウムカチオンである、[22]又は[23]に記載の塩。
[25]
前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、前記無機アニオンであり、
前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、ハロゲン化水素アニオンである、[22]〜[24]のいずれかに記載の塩。
[26]
前記ハロゲン化水素アニオンがヨウ化水素アニオンである、[25]に記載の塩。
[27]
前記アニオンの1モル%以上99モル%以下がHPF6アニオンであり、
前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、ハロゲン化水素アニオンであり、
前記カチオンの1モル%以上100モル%以下がホルムアミジウムカチオンである、[22]〜[26]のいずれかに記載の塩。
[28]
カチオンとアニオンから構成される化合物であって、
前記カチオンの91モル%以上100モル%が鉛カチオンであり、
前記アニオンの1モル%以上100モル%以下が、有効イオン半径が2.25Å以上3.00Å以下である無機アニオンである、化合物。
[29]
前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、BF4アニオン又はPF6アニオンであり、
前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、第17族元素のアニオンである、[28]に記載の化合物。
[30]
[1]〜[21]のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、
[22]〜[27]のいずれかに記載の塩及び[28]又は[29]に記載の化合物からなる群より選択される少なくとも2つを反応させる工程を含む、化合物の製造方法。
[31]
[22]〜[27]に記載の塩、及び/又は[28]又は[29]に記載の化合物の、[1]〜[21]のいずれかに記載の化合物の原料としての使用。
[32]
[1]〜[21]のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、
前記カチオンと前記アニオンとを含む化合物前駆体を調製する工程と、
前記化合物前駆体を160℃以下の温度で加熱する工程と、
を含み、
前記化合物前駆体において、前記カチオンの10モル%以上99モル%以下が前記第14族元素カチオンであり、前記カチオンの1モル%以上90モル%以下が前記対カチオンであり、ここで当該対カチオンのうち、1モル%以上100モル%以下が、前記有機分子カチオンであり、前記アニオンが前記BF4アニオン又はPF6アニオンを含む、化合物の製造方法。
[33]
[1]〜[21]のいずれかに記載の化合物の半導体材料としての使用。
[34]
[1]〜[21]のいずれかに記載の化合物の太陽電池材料としての使用。
[35]
[1]〜[21]のいずれかに記載の化合物の太陽電池の光吸収層としての使用。
[36]
[1]〜[21]のいずれかに記載の化合物の光センサーとしての使用。
[37]
[1]〜[21]のいずれかに記載の化合物の発光材料としての使用。
本発明に係る化合物は、光吸収特性、及び/又は安定性に優れる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態の化合物は、カチオンとアニオンとを含み、前記カチオンのうち10モル%以上90モル%以下が第14族元素カチオンであり、前記カチオンの10モル%以上90モル%以下が対カチオンであり、ここで当該対カチオンのうち、1モル%以上100モル%以下が、炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンであり、前記アニオンが、有効イオン半径が2.25Å以上3.00Å以下である無機アニオンを含み、ペロブスカイト構造を有する。
このように構成されているため、本実施形態の化合物は、光吸収特性、及び/又は安定性に優れる。なお、本明細書において、「光吸収特性に優れる」とは、少なくとも、バンドギャップがより小さく、より長波長の光を吸収できることを意味する。また、「安定性に優れる」とは、大気中安定性などに優れることなどであり、より具体的には、耐湿度性、耐酸素性などを意味する。大気中安定性は、大気中静置後処理を施した、該化合物のX線結晶構造解析や、吸収スペクトルから評価することができる。
(化合物)
本実施形態の化合物は、上記のとおり、カチオンとアニオンとを含み、前記カチオンの10モル%以上90モル%以下が第14族元素カチオンである。光吸収特性に有利となる、及び/又は価電子帯や伝導帯を形成する状態密度がより大きくなる観点から、前記14族元素カチオンの含有量は15モル%以上が好ましく、30モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。吸光係数が大きくなることは、化合物が効率良く照射された光を吸収するために有利であり、状態密度が高くなると、吸光係数の増大などに有利となる。また、対カチオンを多く含むことができる観点から、第14族元素カチオンの含有量は80モル%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。
前記14族元素カチオンは、特に限定されないが、例えば、Si4+、Ge2+、Ge4+、Sn2+、Sn4+、Pb2+が挙げられ、前記第14族元素カチオンと前記第17族元素のアニオンとの八面体構造の形成に有利である観点、前記第14族元素カチオンとアニオンとの共有結合性を大きくすることで、それぞれの状態密度を広げることなどに有利である観点から、2価のカチオンであることが好ましく、具体的には、Ge2+、Sn2+、Pb2+などが好ましい。また、酸化に対して比較的安定である観点から、Sn2+、Pb2+がより好ましく、Pb2+がさらに好ましい。上記のとおり、本実施形態においては、第14族元素カチオンが、錫カチオン及び鉛カチオンの少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
本実施形態における化合物には、含まれるカチオンうち、10モル%以上90モル%以下の、前記第14族元素カチオンかつ3周期以降の元素カチオン以外のカチオン(本明細書中、「対カチオン」とも表記する)が含まれる。前記第14族元素カチオンの配列に有利である観点から、化合物に含まれる対カチオンは、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましく、35モル%以上がさらに好ましい。また、前記第14族元素カチオンを多く含むことができる観点から、85モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。
本実施形態において、対カチオンの1モル%以上100モル%以下が、炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンである。対カチオンに1モル%以上の有機分子カチオンが含まれることと、当該有機分子カチオンにおける炭素数と窒素数の和が3以上5以下であることで、化合物の他の構成と相俟って、光吸収特性を向上することができる。光吸収特性を向上させる観点、ペロブスカイト構造の形成に有利となる観点から、上記有機分子カチオンは、対カチオンのうち、5モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましく、55モル%以上がさらに好ましく、75モル%以上がさらに好ましい。前記対カチオンに含まれる有機分子カチオンの炭素数と窒素数の和は、ペロブスカイト構造の形成に有利である観点から、3以上4以下が好ましく、3が最も好ましい。対カチオンに含まれる炭素数は、ペロブスカイト構造の形成に有利である観点から、1以上4以下であることが好ましく、1以上2以下がより好ましく、1が最も好ましい。また、対カチオンに含まれる窒素数は、ペロブスカイト構造の形成に有利である観点から、1以上4以下であることが好ましく、2以上3以下がより好ましく、2が最も好ましい。前記有機分子カチオンの具体例としては、以下に限定されないが、エチルアンモニウムカチオン、プロピルアンモニウムカチオン、ブチルアンモニウムカチオン、ジメチルアンモニウムカチオン、ジエチルアンモニウムカチオン、トリメチルアンモニウムカチオン、ホルムアミジニウムカチオン、アセトアミジニウムカチオン、グアニジウムカチオン、イミダゾールカチオン、及びこれらの異性体などが挙げられ、ペロブスカイト構造の形成に有利である観点から、エチルアンモニウムカチオン、ジメチルアンモニウムカチオン、ホルムアミジニウムカチオン、アセトアミジニウムカチオン、グアニジウムカチオン、イミダゾールカチオンが好ましく、ジメチルアンモニウムカチオン、ホルムアミジニウムカチオン、アセトアミジニウムカチオン、グアニジウムカチオンがより好ましく、カチオンの安定性に優れる観点から、ホルムアミジニウムカチオン、グアニジウムカチオンがさらに好ましく、ホルムアミジニウムカチオンが最も好ましい。上記のとおり、有機分子カチオンがアンモニウム基及び/又はアミン基を含むことが好ましい。なお、対カチオンには、上記有機分子カチオン以外のカチオンを含むこともできる。
本実施形態において、対カチオンの6モル%以上48モル%以下が、第一族元素カチオンであることが、動作安定性に優れる、大気中安定性に優れる、及び/又は光電変換特性に優れる観点から好ましい。前記「動作安定性に優れる」とは、ペロブスカイト構造を形成するために高温を必要とする高温安定相の材料であると、室温での使用時(電圧を印加された際、光励起キャリアを生成した際、など)に、相転移などを生じる可能性があるため、本実施形態では、該ペロブスカイト構造が低温で調製できる低温相であること、などを意味する。前記「光電変換特性に優れる」とは、例えば、本実施形態の化合物を太陽電池材料とした、より具体的には光吸収層とした太陽電池セルにおいて、短絡電流、開放電圧、フィルファクターの少なくともいずれかが向上することや、太陽光変換効率が向上することなどを意味する。対カチオンに6モル%以上48モル%の第一元素カチオンが含まれることと、後述の炭素数と窒素数の和が3以上5以下である有機分子カチオンが、対カチオンの52モル%以上94モル%以下含まれることと、有効イオン半径が2.25Å以上3.00Å以下である無機アニオンを含むことと、相俟って、前記効果を奏するようになる。
光吸収特性を向上させる観点、低温でのペロブスカイト構造の形成に有利となる観点から、上記第一元素カチオンは、対カチオンのうち、10モル%以上が好ましく、13モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。また、光吸収特性を向上させる観点から、38モル%以下が好ましく、33モル%以下がより好ましく、28モル%以下がさらに好ましい。この様に、対カチオンに、第一元素カチオンが含まれるとき、前記観点から、上記有機分子カチオンは、対カチオンのうち、62モル%以上が好ましく、67モル%以上がより好ましく、72モル%以上がさらに好ましく、89モル%以下が好ましく、87モル%以下がより好ましく、80モル%以下がさらに好ましい。前記第一族元素カチオンとは、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられ、光吸収特性を向上させる観点、低温でのペロブスカイト構造の形成に有利となる観点から、Rb、Csが好ましく、Csがより好ましい。
本実施形態において、化合物の対カチオンに、第一族元素カチオン以外の無機物カチオンを含むことができる。無機物カチオンには、金属クラスターカチオンや、単一元素カチオンが挙げられ、製造が容易である観点から、単一元素カチオンであることが好ましい。
化合物を構成するアニオンは、有効イオン半径が2.25Å以上、3.00Å以下の無機アニオンを含む。有効イオン半径は、種々公知の方法から算出することができ、例えば、質量中心と分子中の質量中心から最も離れた原子との距離と、この最も離れた原子のイオン半径との和から算出できる。本実施形態における「無機アニオン」とは、炭素原子を含まないアニオンを意味する。有効イオン半径が2.25Å以上、3.00Å以下、かつ無機アニオンの条件を満たすアニオンを含むことで、ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる。
本発明者らは、特定の理論に拘束されることを欲さないが、本実施形態を満たすことによる、ペロブスカイト構造の形成が容易になる、大気中安定性に優れる、などの効果は下記理由が考えられる。組成式ABX3で示される三次元ペロブスカイト構造の歪みの指標であるトレランスファクターは、次式で表され、この値が1に近いほどペロブスカイト構造は安定となる。
(トレランスファクター)=(Aサイトカチオンのイオン半径)×(Xサイトアニオンのイオン半径)/(√2(Bサイトカチオンのイオン半径)×(Xサイトアニオンのイオン半径)) (式1)
例えば、Aサイトをホルムアミジウムカチオン、BサイトをPb2+カチオン、XサイトをI-アニオンとするペロブスカイトは、ホルムアミジウムカチオン自体が大きすぎることや、ホルムアミジウムカチオン分子の室温付近での熱振動などによる、より大きなカチオンとしての振る舞いにより、トレランスファクターが大きくなりすぎるために、室温付近では、この化合物は六方晶構造が安定な結晶相となる。ここで、XサイトをI-アニオンよりも大きなイオン半径の、有効イオン半径が2.25Å以上、3.00Å以下を満たす無機アニオンを、Aサイトをホルムアミジウムカチオン、BサイトをPb2+カチオン、XサイトをI-アニオンとするペロブスカイトの少なくとも一部に含むことで、前記式1より、トレランスファクターがより小さくなり、結晶構造の歪みが緩和されることで、前記効果を奏するようになると考えられる。すなわち、炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンと、有効イオン半径が2.25Å以上3.00Å以下である無機アニオンを共に所定量を、本実施形態の化合物に含むことが、前記効果を奏するために重要である。
前記無機アニオンは、アスタチンアニオンなどの単元素アニオンや、分子アニオンなどが挙げられるが、放射性が低い観点から、分子アニオンであることが好ましい。前記無機アニオンの有効イオン半径は、該化合物について、ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、2.35Å以上が好ましく、2.40Å以上がより好ましく、2.45以上がさらに好ましい。また、前記観点から、2.90Å以下が好ましく、2.80Å以下がより好ましく、2.70Åがさらに好ましい。前記無機アニオンは、具体的には、分子の対称性が高い、高沸である観点から、BF4 -アニオン、PF6 -アニオン、がとりわけ好ましく、該化合物について、よりペロブスカイト構造の形成が容易になり、よりバンドギャップを小さくすることができ、より大気中安定性に優れる観点から、PF6 -アニオンが最も好ましい。特に、対称性が高いことは、電子や正孔などの拡散に有利となるペロブスカイト構造の形成に有利となり、高沸であることは、化合物の熱安定性に有利となる。化合物のアニオンに含まれる前記無機アニオンは、バンドギャップが小さくなる観点から、0.1モル%以上が好ましく1モル%以上がより好ましく、6モル%以上がさらに好ましく、11モル%以上が最も好ましい。また、化合物のアニオン中に含まれる前記無機アニオンは、100モル%以下でもよいが、結晶性の向上に有利である観点から、化合物のアニオンには、前記無機アニオン以外のアニオンをさらに含むことが好ましい。かかる観点より、化合物のアニオン中に含まれる前記無機アニオンは、38モル%以下が好ましく、30モル%以下がよりに好ましく、22モル%以下がさらに好ましい。なお、化合物の結晶性は、種々公知の方法で評価することができ、例えば、X線回折ピークの半値幅から求まる、結晶子径の大きさから判定することができる。前記無機アニオン以外のアニオンは、第17族元素のアニオンであることが好ましい。
化合物を構成するアニオンは、結晶性の向上に有利である観点から、含まれるアニオンの総量(100モル%)に対して、第17族元素のアニオンを1モル%以上99.9モル%以下含むことが好ましい。結晶性の向上に有利である観点から、5モル%以上含むことがより好ましく、10モル%以上含むことがさらに好ましく、20モル%以上含むことがさらに好ましい。また、ペロブスカイト構造の形成に有利となる観点、バンドギャップが小さくなる観点から、99モル%以下がより好ましく、94モル%以下がさらに好ましく、89モル%以下が最も好ましい。具体的な第17族元素としては、特に限定されないが、例えば、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素等が挙げられ、バンドギャップを小さくすることに有利である観点から、ヨウ素、臭素、塩素が好ましく、ヨウ素、臭素がより好ましく、ヨウ素がさらに好ましい。
化合物に前記17族元素のアニオンが含まれる際は、ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、化合物に含まれうるホウ素及びリンの和と第17族元素との原子比((ホウ素+リン)/17族元素)が、0.001以上95以下であることが好ましい。なお、「化合物に含まれるホウ素及びリン」とは、化合物に含まれる、分子アニオンを構成するホウ素やリン、単原子カチオンまたはアニオンとして存在するホウ素やリン、化合物結晶中に侵入型としてドープや導入された単元素のホウ素やリン、を意味する。ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、上記原子比は、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましく、0.1以上がよりさらに好ましい。ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、上記原子比は、10以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、化合物に含まれうるホウ素及びリンの和と前記炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンとのモル比((ホウ素+リン)/有機分子カチオン)が、0.001以上95以下であることが好ましい。なお、「化合物に含まれるホウ素及びリン」とは、化合物に含まれる、分子アニオンを構成するホウ素やリン、単原子カチオンまたはアニオンとして存在するホウ素やリン、化合物結晶中に侵入型としてドープや導入された単元素のホウ素やリン、を意味する。ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、上記原子比は、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましく、0.1以上がよりさらに好ましい。ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、上記原子比は、10以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、化合物に含まれうるホウ素及びリンの和と前記第14族元素カチオンとのモル比((ホウ素+リン)/第14族元素)が、0.001以上95以下であることが好ましい。なお、「化合物に含まれるホウ素及びリン」とは、化合物に含まれる、分子アニオンを構成するホウ素やリン、単原子カチオンまたはアニオンとして存在するホウ素やリン、化合物結晶中に侵入型としてドープや導入された単元素のホウ素やリン、を意味する。ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、上記原子比は、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましく、0.1以上がよりさらに好ましい。ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、上記原子比は、10以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
本実施形態において、化合物は結晶構造としてペロブスカイト構造を有する。ペロブスカイト構造を有する化合物は、Aサイト及びBサイトのカチオンと、Xサイトのアニオンとから構成される。そのような化合物の例としては、CH3NH3PbI3を挙げることができ、この例において、AサイトのカチオンはCH3NH3 +に、BサイトのカチオンはPb2+に、XサイトのアニオンはI-に、それぞれとして対応する。Bサイトのカチオンは、Xサイトのアニオンに6配位で結合しており、対称又は非対称な8面体を形成しており、この8面体構造は頂点共有している。ペロブスカイト構造は、一般式としてABX3等で表される。ペロブスカイト構造を有することで、材料中での電荷の移動や、光などによる励起キャリア(電子や正孔など)の長寿命化に有利である。Aサイトのカチオンは、例えば前記対カチオン、具体的には炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンや、第一元素カチオン、Bサイトのカチオンは、第14族元素カチオン、Xサイトのアニオンは、無機アニオンであることが好ましい。ペロブスカイト(110)面の面間距離は、バンドギャップが小さくなる観点や電荷の移動に有利となる観点から、5.9Å以上6.9Å以下であることが好ましく、6.1Å以上6.6Å以下であることがより好ましい。
この結晶構造ないし結晶子径は、X線結晶構造解析や透過型電子顕微鏡像の格子像などにより評価することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に基づいて評価することができる。また、上記結晶構造は、例えば、後述する好ましい化合物の製造方法に従う等により得ることができる。
化合物のバンドギャップは、長波長の光を利用できる観点から、小さいことが好ましい。特に、太陽光の利用のためには、長波長の光の利用が重要となる。具体的には、2.00eV以下が好ましく、1.80eV以下がより好ましく、1.60eV以下がさらに好ましく、1.50eVであることが最も好ましい。
本実施形態の化合物は、様々な形態をとりうるが、取り扱いが容易である観点や、積層構造に有利である観点から、粒子や薄膜の形態であることが好ましい。
(化合物の製造方法)
本実施形態の化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する所定の原料を用い、所定の工程を経るものとすることができる。本実施形態の化合物の原料としては、該化合物を構成する元素を含む物質であれば特に限定されず、種々の物質を原料として用いることができる。
上記原料の好適な例としては、カチオンとアニオンから構成される塩であって、前記アニオンの1モル%以上100モル%以下が、有効イオン半径が2.25Å以上、3.00Å以下の無機アニオンであり、前記カチオンの1モル%以上100モル%以下が、炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンである塩を使用することが好ましい。上記塩において、製造する化合物のバンドギャップが小さくなる観点から、無機アニオンが、HBF4アニオン及び/又はHPF6アニオンであることがより好ましく、前記有機分子カチオンが、ホルムアミジウムカチオンであることがさらに好ましい。また、前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、前記無機アニオンであり、かつ、前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、ハロゲン化水素アニオンであることが、この原料の安定性に優れる観点から、よりさらに好ましく、当該ハロゲン化水素アニオンがヨウ化水素アニオンであることが一層好ましい。ハロゲン化水素アニオンの具体例としては、フッ化水素アニオン、塩化水素アニオン、臭化水素アニオン、ヨウ化水素アニオンなどが挙げられ、共有結合性が強いほど、製造する化合物のバンドギャップを小さくするために有利である観点から、ヨウ化水素アニオン、臭化水素アニオン、塩化水素アニオンが好ましく、ヨウ化水素アニオン、臭化水素アニオンがより好ましく、ヨウ化水素アニオンが最も好ましい。さらにまた、前記アニオンの1モル%以上99モル%以下がHPF6アニオンであり、かつ、前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、ハロゲン化水素アニオンであり、かつ、前記カチオンの1モル%以上100モル%以下がホルムアミジウムカチオンであることがより一層好ましい。
また、上記原料の好適な他の例として、カチオンとアニオンから構成される化合物を用いることもでき、前記カチオンの91モル%以上100モル%が第一元素カチオンまたは鉛カチオンであり、前記アニオンの1モル%以上100モル%以下が、有効イオン半径が2.25Å以上3.00Å以下である無機アニオンである化合物を使用することが好ましく、前記無機アニオンが分子アニオンである化合物を使用することがより好ましく、前記無機アニオンがBF4アニオン又はPF6アニオンである化合物を使用することがよりさらに好ましい。さらに、前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、BF4アニオン又はPF6アニオンであり、前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、第17族元素のアニオンであることがより好ましい。得られる本実施形態の化合物のペロブスカイト構造の形成に有利となる観点、バンドギャップを小さくするために有利である観点から、前記カチオンのうち、第一元素カチオンまたは鉛カチオンが95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましい。また、得られる本実施形態の化合物のペロブスカイト構造の形成に有利となる観点から、前記アニオンのうち、第17族元素のアニオンは、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。また、得られる本実施形態の化合物のペロブスカイト構造の形成に有利となる観点から、前記アニオンのうち、BF4アニオン又はPF6アニオンは、5モル%以上であることが好ましく、11モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。上記化合物の具体例としては、以下に限定されないが、Pb(PF62やPb(BF42などが挙げられる。なお、上記した原料としての化合物が、アニオンとして第17族元素のアニオンを含む場合、すなわち、BF4アニオン又はPF6アニオンと第17族元素のアニオンが共存する場合、共存の形態には、物理的に混合されている状態、他のアニオン又はカチオンが結晶中にドープされている状態などが挙げられる。また、本実施形態の原料に、前記カチオンとアニオンから構成される化合物について、安定性に優れる観点から、有効イオン半径が2.25Å以上3.00Å以下である無機アニオンと、第17族元素アニオンを共に含むことが好ましい。
上記の他、本実施形態の化合物を製造するための原料として、金属ハロゲン化物を用いることもできる。金属ハロゲン化物の具体例としては、以下に限定されないが、塩化ルビジウム、臭化ルビジウム、ヨウ化ルビジウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、塩化鉛、臭化鉛、ヨウ化鉛などが挙げられ、得られる本実施形態の化合物のペロブスカイト構造の形成に有利である観点、バンドギャップを小さくするために有利である観点から、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、臭化鉛、ヨウ化鉛が好ましく、ヨウ化セシウム、ヨウ化鉛がより好ましい。
上記のとおり、本実施形態の化合物は、上述した原料を少なくとも2つ反応させる工程を含む製法により、好ましく製造することができる。特に、カチオンとアニオンから構成される塩であって、前記アニオンの1モル%以上100モル%以下が、有効イオン半径が2.25Å以上、3.00Å以下の無機アニオンであり、前記カチオンの1モル%以上100モル%以下が、炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンである塩、及び、カチオンとアニオンから構成される化合物であって、前記カチオンの91モル%以上100モル%が鉛カチオンであり、前記アニオンの1モル%以上100モル%以下が、BF4アニオン又はPF6アニオンである化合物、からなる群より選択される少なくとも2つを反応させる工程を含むことが好ましい。
本実施形態に係る化合物の好ましい製法の一例としては、後述する非プロトン性極性溶剤と、前記対カチオンと、第14族元素カチオンと、前記第17族元素のアニオンと、前記BF4 -又はPF6 -とを含む溶液であって、前記第17族元素のアニオンと前記第14族元素カチオンのモル比(第17族元素のアニオン/第14族元素カチオン)が0.1以上5以下であり、かつ、前記BF4 -又はPF6 -と前記第14族元素カチオンのモル比(PF6又はBF4/第14族元素カチオン)が0.1以上5以下である溶液を調製する工程と、前記溶液から溶剤を除去する工程と、を含む製法が挙げられる。
本実施形態の化合物の原料とすることが好ましい塩は、所定の酸と塩基から得ることができ、当該酸に由来する成分の1モル%以上100モル%以下が、有効イオン半径が2.25Å以上3.00Å以下の無機アニオンとプロトンからなる酸に由来する成分であり、当該塩基に由来する成分の1モル%以上100モル%以下が炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機アミンに由来する成分である塩等が挙げられる。得られる化合物のペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、前記無機アニオンとプロトンからなる酸に由来する成分は、酸に由来する成分の5モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、35モル%以上であることがさらに好ましい。該塩の調製が容易となる観点から、99モル%以下であることが好ましく、95モル%以下であることがより好ましく、90モル%以下であることがさらに好ましい。また、前記無機アニオンとプロトンとの酸以外の酸に由来する成分としては、ペロブスカイト構造の形成が容易になる観点から、ハロゲン化水素に由来する成分が含まれることが好ましい。前記観点から、前記ハロゲン化水素に由来する成分は、酸に由来する成分の1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましい。また、前記無機アニオンとプロトンとの酸を多く含むことができる観点から、99モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましく、55モル%以下であることがさらに好ましい。
また、前記有機アミンに由来する成分としては、得られる本実施形態の化合物のペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、当該有機アミンの炭素数と窒素数の和が3以上4以下であることが好ましく、3であることが最も好ましい。ペロブスカイト構造の形成が容易になり、バンドギャップを小さくすることができ、大気中安定性に優れる観点から、前記塩に含まれる塩基に由来する成分のうち、前記有機アミンに由来する成分は、5モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、55モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることが最も好ましい。
上記の酸及び塩基より得られる塩の具体例としては、以下に限定されないが、ホルムアミジンとHPF6との塩、ホルムアミジンとHBF4との塩、ホルムアミジンとHIとの塩、ホルムアミジンとHBrとの塩、ホルムアミジンとHClとの塩、アセトアミジンとHPF6との塩、アセトアミジンとHBF4との塩、アセトアミジンとHIとの塩、アセトアミジンとHBrとの塩、アセトアミジンとHClとの塩、グアニジンとHPF6との塩、グアニジンとHBF4との塩、グアニジンとHIとの塩、グアニジンとHBrとの塩、グアニジンとHClとの塩、イミダゾールとHPF6との塩、イミダゾールとHBF4との塩、イミダゾールとHIとの塩、イミダゾールとHBrとの塩、イミダゾールとHClとの塩、及びこれらの混合物が挙げられる。得られる本実施形態の化合物のペロブスカイト構造の形成に有利である観点から、ホルムアミジンとHPF6との塩、ホルムアミジンとHBF4との塩、ホルムアミジンとHIとの塩、ホルムアミジンとHBrとの塩、ホルムアミジンとHClとの塩、グアニジンとHPF6との塩、グアニジンとHBF4との塩、グアニジンとHIとの塩、グアニジンとHBrとの塩、グアニジンとHClとの塩、及びこれらの混合物が好ましく、ホルムアミジンとHPF6との塩、ホルムアミジンとHBF4との塩、ホルムアミジンとHIとの塩、ホルムアミジンとHBrとの塩、ホルムアミジンとHClとの塩、及びこれらの混合物、がより好ましく、製造するペロブスカイト構造を有する化合物のバンドギャップを小さくすることに有利である観点から、ホルムアミジンとHPF6との塩、ホルムアミジンとHBF4との塩、ホルムアミジンとHIとの塩、ホルムアミジンとHBrとの塩、及びこれらの混合物がさらに好ましく、ホルムアミジンとHPF6との塩、ホルムアミジンとHIとの塩、及びこれらの混合物が最も好ましい。
本実施形態の化合物は、溶剤を用いない方法、又は溶剤を用いる方法により製造することもできる。溶剤を用いない方法として、以下に限定されないが、例えば、蒸着法、固相法などが挙げられる。組成が均一な化合物を製造する観点から、本実施形態の化合物は、溶剤を用いる方法、すなわち、前記原料を溶剤に溶解させた溶液から、溶剤を除去することで結晶化させる方法で製造することが好ましい。すなわち、本実施形態に係る化合物の製造方法は、上述した所定のカチオンとアニオンとを含む物質を、非プロトン性有機溶剤に溶解させて溶液を得る工程と、当該溶液から溶剤を除去する工程と、を含むことが好ましい。上記において、本実施形態の化合物の好適な原料である第14族元素ハロゲン化物の溶解に有利である観点から、溶剤として非プロトン性有機溶剤を用いる。具体的には、ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記す。)、ジメチルスルホキシド(以降、DMSOと記す。)、γブチロラクトンなどが好ましく、第14族元素ハロゲン化物の溶解に優れる観点から、DMF、DMSOがより好ましい。
前記溶液には、化合物に含まれる対カチオンと、第14族元素カチオンと、必要に応じて第17族元素のアニオンと、BF4 -又はPF6 -アニオンが含まれることが好ましい。第17族元素のアニオンと、第14族元素カチオンとのモル比(第17族元素のカチオン/第14族元素カチオン)は、0.1以上5以下が好ましく、0.5以上4以下がより好ましく、1以上3以下がさらに好ましい。前記BF4 -又はPF6 -アニオンと、第14族元素カチオンとのモル比(BF4 -又はPF6 -アニオン/第14族元素カチオン)は、0.1以上5以下が好ましく、0.5以上4以下がより好ましく、1以上3以下がさらに好ましい。上記のように調製された溶液から溶剤を除く工程をさらに実施することで化合物を製造する方法がとりわけ好ましい。前記溶液から溶剤を除く工程としては、特に限定されないが、例えば、加熱により溶剤を蒸発除去する工程、貧溶媒と接触や混合することで、良溶媒である溶剤を除去する工程が挙げられる。
該化合物を製造するための原料の固定化、例えば薄膜形態の化合物の製造方法としては、以下に限定されないが、溶液を用いた、スピンコート法、スプレー法、液相反応法などが挙げられる。溶液の引火などの危険性が少ない、及び/又は調製方法の調整が容易である観点から、スピンコート法が好ましい。また、過剰な溶媒の除去や、核生成を促進する観点から、貧溶媒を用いて結晶生成をすることが好ましい。貧溶媒は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、クロロベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
該化合物の製造方法は、前記カチオンと前記アニオンとを含む化合物前駆体を調製する工程と、前記化合物前駆体を160℃以下の温度で加熱する工程と、を含み、前記化合物前駆体において、前記カチオンの10モル%以上90モル%以下が前記第14族元素カチオンであり、前記カチオンの10モル%以上90モル%以下が前記対カチオンであり、ここで当該対カチオンのうち、52モル%以上94モル%以下が、前記有機分子カチオンであり、6モル%以上48モル%以下が第一元素カチオンであり、前記アニオンが前記BF4アニオン又はPF6アニオンを含むことが好ましい。BF4アニオン又はPF6アニオンを含むことで、ペロブスカイト構造を形成する温度を低温化することができる。ペロブスカイト構造を形成する温度を低温化することは、製造のために必要となるエネルギーを少なくすることができ、さらに基材に必要とされる温度耐性を緩和することができ、かつ動作安定性に優れるために重要である。前記「動作安定性に優れる」とは、ペロブスカイト構造を形成するために高温を必要とする高温安定相の材料であると、室温での使用時(電圧を印加された際、光励起キャリアを生成した際、など)に、相転移などを生じる可能性がある。そのため、低温で調製できる低温相であると、動作安定性に優れる。前記観点から、前記化合物前駆体を加熱する温度は、130℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
該化合物を製造する雰囲気は、特に限定されず、例えば、大気中や不活性雰囲気中で調製できるが、より簡便に調製できる観点から、大気中で調製することが好ましい。
(用途)
本実施形態の化合物は、半導体材料として利用することができる。本実施形態における半導体材料とは、価電子帯上端と伝導帯下端とのエネルギー差を有する材料などが挙げられる。
該化合物は、他の用途に用いることもできる。具体的には、電子又は正孔又はイオンを伝導する材料や、光吸収による光励起キャリアの生成を利用する材料、及びその再結合による発光を利用する材料などであり、より具体的には、太陽電池材料用、太陽電池の光吸収層用、光センサー用、光触媒用、発光材料、イオン伝導材料、導電性材料、圧電素子、パワーデバイスなどである。本実施形態でのイオンとは、該材料を構成するカチオン又はアニオンのことを指す。太陽光に含まれる波長の光を吸収できる観点から、太陽電池の光吸収層用の化合物であることが好ましい。また、希土類元素由来の蛍光を利用することができる観点から、発光材料としての利用が好ましい。さらに、特定波長の光を利用できる観点から、光センサーとして利用することが好ましい。
本実施形態の化合物は、優れた光吸収特性を有するため、該化合物を含む太陽電池セル、特光吸収層に該化合物を含む太陽電池セルとして適用することが好ましく、さらに、光電流密度、開放電圧、フィルファクターの少なくとも一つを向上させることができる。さらに、当該化合物が有する光吸収特性と前記太陽電池セルとしての各パラメーターの向上と相俟って太陽光変換効率を向上させることができる。
(構成)
本実施形態の化合物は、キャリア移動の異方性に優れる観点から、電子輸送材と接触していることが好ましい。ここでいう電子輸送材とは、電子の有効質量の方が、正孔のものよりも小さい半導体などであり、電子の輸送に有利な材料などである。該化合物が薄膜のとき、接触面積を大きくすることで電子の移動に有利となる観点から、接触している電子輸送材も薄膜であることが好ましい。電子輸送材には、有機物や無機物を含む態様が挙げられるが、強度が高いことで、該化合物と合わせた強度が高くなる観点から、電子輸送材は無機物を含むことが好ましく、物性の調整が比較的容易である観点から、金属化合物であることがより好ましい。大気中で比較的容易に製造、及び保存できる観点から、電子輸送材は金属酸化物であることが、さらに好ましい。金属酸化物の具体例としては、以下に限定されないが、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどを挙げることができ、電子の有効質量が小さい観点から、酸化チタン及び酸化ニオブが好ましく、材料が豊富で安価である観点から、酸化チタンがとりわけ好ましい。電子輸送材のピンホールなどの欠陥を少なくする観点から、電子輸送材に、前駆体材料を吸着、反応させる処理を施すことが好ましい。具体的には、塩化チタン種を電子輸送材に吸着後、加水分解させ酸化チタンを結着させる処理(以降、TiCl4処理と記す。)を施すことが好ましい。
本実施形態の化合物は、キャリア移動の異方性を有することができる観点から、正孔輸送材と接触していることが好ましい。ここでいう正孔輸送材とは、正孔の有効質量の方が電子のものよりも小さい半導体などであり、正孔の輸送に有利な材料などである。該化合物が薄膜のとき、接触面積を大きくすることで電子の移動に有利となる観点から、接触している正孔輸送材も薄膜であることが好ましい。正孔輸送材は、有機物や無機物を含むことが挙げられるが、材料が柔らかいことで、曲りによる膜の欠陥を形成しにくくなる観点から、正孔輸送材は有機物を含むことが好ましく、有機物の具体例としては、有機分子の集合体や、有機高分子が挙げられる。より具体的には、Spiro−OMeTAD、P3HT、PTAA、TPD、NPD、TCTAなどが挙げられ、HOMOの準位が比較的深く、p型材料とオーミックコンタクトを形成することに有利であることや、キャリア密度を高くでき、正孔の輸送に有利とできることや、起電圧を大きくできる観点から、Spiro−OMeTADが好ましい。Spiro−OMeTADはLiTFSIや酸化材を混合するなどして、ドープ処理を施したものが、導電性に優れる観点から好ましい。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、これらの実施例と比較例によって何ら限定されるものではない。後述する実施例及び比較例における物性、反応条件、及び生成物の同定は、以下に示す方法により、測定及び設定した。
(含カチオン量と含アニオン量)
原料の塩、化合物、薄膜サンプルに含まれる第14族カチオン量、ハロゲンアニオン量は、試料をSEM−EDX(SEM:SU−70,日立製作所社製、EDX:EMAX X−max,堀場製作所社製)により評価することによって求めた。原料の塩に含まれるリンの量は、該塩を蒸留水に溶解させた溶液を、ICPで評価することで求め、これをPF6量とした。ICPの評価は、セイコーインスツル株式会社製のSP352UV−DDを用い、高周波パワー1.2kW、キャリアーガスをArとし、三点校正して作成した検量線を元に、溶液中の各元素の濃度から材料中に含まれる元素量を評価した。
(有効イオン半径)
化合物を構成する無機分子アニオンの有効イオン半径は、質量中心と分子中の質量中心から最も離れた原子との距離と、この最も離れた原子のイオン半径との和から算出した。
(結晶構造)
薄膜及び粉末サンプルの結晶構造は、X線回折装置(D8・ブルカー社製)を用いて測定したX線回折(XRD)パターンから評価した。特に、ペロブスカイト構造を有していることは、回折ピークの2θ(110)面に帰属される2θ=13.5〜14.5°(d=6.1〜6.6Å)に存在することから評価した。
(バンドギャップ)
各例で調製された薄膜に対して下記のように測定された吸光度を縦軸とし、横軸を波長としたグラフのベースラインと減衰曲線の接線の交点をこの材料の吸収端とし、この吸収端の波長から、下記の式からバンドギャップエネルギーを算出した。
(バンドギャップエネルギー)=1240/(吸収端の波長)
なお、薄膜の吸光度は、スペクトロフォトメーター U4100(日立製作所社製)を用いて、スキャン速度300nm/分で測定を行った。
(大気中安定性:耐久性試験)
化合物の大気中安定性は、化合物を一週間、または100日の間、大気中(温度:25℃±5℃、湿度:50%±10%)で静置した際の化合物の物性変化を測定することで評価した。この静置後の試料について、前述の結晶構造の評価方法により、ペロブスカイト構造由来の回折ピークが観測されれば○、回折ピークが観測されなければ×、とした。
下記に示すとおり、実施例1〜9及び比較例1〜2に係る薄膜を調製し、その物性の評価を行った。
(実施例1)
ホルムアミジン:HPF6=7:3のモル比で、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩とHPF6を反応させて得た塩(塩1)と、ヨウ化鉛がそれぞれ1MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液1)を調製した。塩1の酸のうち、HPF6、HIのモル分率は、それぞれ30モル%、70モル%であった。70℃に加熱した石英板上に70℃加熱した溶液1を滴下し、3000rpmで30秒スピンコートして得られた薄膜を、70℃で30分加熱した。その後、この薄膜を170℃で10分間加熱することで、薄膜形態の黒色の化合物を得た。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1の溶液1の代わりに、ホルムアミジン:HPF6=1:1のモル比で、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩とHPF6を反応させて得た塩(塩2)と、ヨウ化鉛がそれぞれ1MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液2)を用いた以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。薄膜形態の黒色の化合物を得た。塩2の酸のうち、HPF6、HIのモル分率は、それぞれ50モル%、50モル%であった。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1の溶液1の代わりに、ホルムアミジン:HPF6=9:1のモル比で、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩とHPF6を反応させて得た塩(塩3)と、ヨウ化鉛がそれぞれ1MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液3)を用いた以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。薄膜形態の黒色の化合物を得た。塩3の酸のうち、HPF6、HIのモル分率は、それぞれ90モル%、10モル%であった。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1で得られた薄膜を、一週間の間、大気中(平均温度:25℃、平均湿度:50%)で静置した。薄膜は目視では、静置前からの変化がみられず黒色であった。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例2で得られた薄膜を、一週間の間、大気中(平均温度:25℃、平均湿度:50%)で、実施例4と同様に、静置した。薄膜は目視では、静置前からの変化がみられず黒色であった。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例3で得られた薄膜を、一週間の間、大気中(平均温度:25℃、平均湿度:50%)で、実施例4と同様に、静置した。薄膜は目視では、静置前からの変化がみられず黒色であった。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1で得られた薄膜を、100日の間、大気中(平均温度:25℃、平均湿度:50%)で静置した。薄膜は目視では、静置前からの変化がみられず黒色であった。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例2で得られた薄膜を、100日の間、大気中(平均温度:25℃、平均湿度:50%)で、実施例7と同様に、静置した。薄膜は目視では、静置前からの変化がみられず黒色であった。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例3で得られた薄膜を、100日の間、大気中(平均温度:25℃、平均湿度:50%)で、実施例7と同様に、静置した。薄膜は目視では、静置前からの変化がみられず黒色であった。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の溶液1の代わりに、ホルムアミジン・ヨウ化水素塩と、ヨウ化鉛がそれぞれ1MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液3)を用いた以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。サンプルを評価した結果を表1に示す。
(比較例2)
比較例1で得られた薄膜を、一週間の間、大気中(平均温度:25℃、平均湿度:50%)で、実施例3と同様に、静置した。静置前は黒色であったサンプルは黄色に変色していた。サンプルを評価した結果を表1に示す。
実施例1〜3と比較例1の結果から、得られた化合物は、いずれもペロブスカイト構造、及びバンドギャップを有することがわかり、半導体材料、例えば太陽電池材料、光センサー、発光材料などとして好適に利用できることが示された。
実施例1〜3と比較例1を比較すると、本実施形態の所定の要件を満たすことで、吸収端は長波長になり、バンドギャップが小さくなり、光吸収特性に有利となることがわかった。
大気中静置処理を施した、実施例4〜9と、比較例2の比較の結果、比較例2のサンプルは、ペロブスカイト構造が消失し、バンドギャップが大きくなったが、実施例4〜9は、ペロブスカイト構造を維持し、吸収端も変化しなかった。このことから、本実施形態を満たすことで、大気中安定性が大幅に向上することが示された。
(実施例10)
実施例1の溶液1をスターラーによって撹拌しながら、70℃にて5時間減圧乾燥することで、黒色の粒子形態のサンプルを得た。サンプルを評価した結果を表2に示す。
(実施例11)
実施例2の溶液2をスターラーによって撹拌しながら、70℃にて5時間減圧乾燥することで、黒色の粒子形態のサンプルを得た。サンプルを評価した結果を表2に示す。
(比較例3)
比較例1の溶液3を撹拌しながら、70℃にて5時間減圧乾燥することで、黄緑色の粒子形態のサンプルを得た。サンプルを評価した結果を表2に示す。
実施例10、11と比較例3を比較すると、実施例10、11では、ペロブスカイト構造を形成したが、比較例3では、ペロブスカイト構造は形成しなかった。すなわち、本実施形態の所定の要件を満たすことで、70℃の低温でペロブスカイト構造を形成できるようになり、より少ないエネルギーでペロブスカイト構造の化合物を調製でき、動作安定性に優れる材料となることがわかった。
(実施例12)
実施例1の溶液1の代わりに、塩1と、ヨウ化セシウムと、ヨウ化鉛がそれぞれ0.8M、0.2M、1.0MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液4)を用い、10分間の加熱温度を170℃から100℃にした以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。サンプルを評価した結果を表3に示す。
(実施例13)
実施例1の溶液1の代わりに、塩1と、ヨウ化セシウムと、ヨウ化鉛がそれぞれ0.9M、0.1M、1.0MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液5)を用い、10分間の加熱温度を170℃から100℃にした以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。サンプルを評価した結果を表3に示す。
(実施例14)
実施例1の溶液1の代わりに、塩1と、ヨウ化セシウムと、ヨウ化鉛がそれぞれ0.95M、0.05M、1MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液6)を用い、10分間の加熱温度を170℃から100℃にした以外は、実施例1と同様に調製及び評価した。サンプルを評価した結果を表3に示す。
(比較例4)
比較例1の10分間の加熱温度を170℃から100℃にした以外は、比較例1と同様に調製、および評価した。サンプルを評価した結果を表3に示す。
実施例12〜14と比較例1の結果から、得られた化合物は、いずれもペロブスカイト構造、及びバンドギャップを有することがわかり、半導体材料、例えば太陽電池材料、光センサー、発光材料などとして利用できることが示された。また、本実施形態を満たさない比較例4ではペロブスカイト構造を形成しなかった。また、第一元素カチオンと無機分子アニオンを所定量含む本実施形態である実施例12〜14のペロブスカイト形成温度は、これらを含まない比較例1と比べて、ペロブスカイト形成温度が低下し、動作安定性に優れることが示された。
実施例12〜14と比較例1、2を比較すると、本実施形態の所定の要件を満たすことで、吸収端は長波長になり、すなわちバンドギャップが小さくなり、光吸収特性に有利となることがわかった。
(実施例15)
実施例12にて調製したサンプルを最後に窒素中にて170℃で加熱する以外は、実施例1と同様に調製した。サンプルの結晶構造および1週間の耐久性を評価した結果を表4に示す。
(実施例16)
実施例13にて調製したサンプルを最後に窒素中にて170℃で加熱する以外は、実施例2と同様に調製した。サンプルの結晶構造および1週間の耐久性を評価した結果を表4に示す。
(実施例17)
実施例14にて調製したサンプルを最後に窒素中にて170℃で加熱する以外は、実施例2と同様に調製した。サンプルの結晶構造および1週間の耐久性を評価した結果を表4に示す。
(実施例18)
実施例1の溶液1の代わりに、塩1と、ヨウ化セシウムと、ヨウ化鉛がそれぞれ0.5M、0.5M、1.0MとなるようにDMSOに溶解させた溶液(溶液7)を用いた以外は、実施例1と同様に調製した。サンプルの結晶構造および1週間の耐久性を評価した結果を表4に示す。
実施例15〜18と比較例1を比較すると、製造直後ではペロブスカイト構造が観測されたが、比較例1では一週間の大気中静置によりペロブスカイト構造が消失した。しかし、実施例15〜18では、ペロブスカイト構造を保持した。特に、本実施形態の所定の無機分子アニオンを所定量含むことで、耐久性が向上することが示された。
(実施例19)
実施例1の石英板の代わりに、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)を堆積したガラスのFTO面上に、電子輸送材として50nmのTiO2の緻密層、さらにその上に粒子径30nmのTiO2粒子が堆積し、TiCl4処理を施した膜厚800nmの多孔質膜層が堆積された基板(TiO2/FTOガラス)を用い、溶液1を基板上に滴下後、3000rpmで30秒スピンコートして得られた薄膜を、100℃で30分加熱し、室温に冷却後、0.0059mmolのspiro−OMETAD、0.0317molのLiTFSI、0.0058mmolのCo(4−t−Butylpyridyl−2−1H−pyrazole)・3TFSI、0.195mmolのt−ブチルピリジンをクロロベンゼンに溶解させた溶液(溶液8)を滴下し、4000rpmでスピンコートし、70℃で30分間乾燥し、この上から金を100nm真空蒸着することで得たセルを、疑似太陽光照射下で評価した結果を、表5に示す。
(実施例20)
実施例19の溶液1の代わりに溶液4を用いた以外は同様に操作を行った。結果を表5に示す。
(実施例21)
実施例13の溶液1の代わりに溶液5を用いた以外は同様に操作を行った。結果を表3に示す。
(太陽電池特性評価)
作製したセルの太陽電池特性評価は、下記の装置、及び評価方法により評価した。
[装置]
(疑似太陽光)
疑似太陽光は、ソーラーシミュレーター(MP−160、英弘精機社製)を用い、フォトダイオードで照射量を100mW/cm-2に調整して用いた。照射セルへの照射面積は、いずれのセルでも、0.02cm-2であった。
(直流電源)
セルに電圧印加、光電流値の評価、印加電圧の掃引操作は、ソースメーター(6242、ADCMT社製)を用いて行った。
[評価方法]
(短絡電流密度)
短絡電流は、作製したセルに電圧を印加せずに、前記疑似太陽光を照射した際に流れた光電流密度から求めた。
(開放電圧)
開放電圧は、前記疑似太陽光を照射した際に、電流値が0となるセルへの印加電圧から求めた。
(フィルファクター)
フィルファクター(以降、「F.F.」とも表記する。)は、前記疑似太陽光を照射しながら、印加電圧を掃引した際に、電力が最大となる値(実電力最大値)を、短絡電流密度と開放電圧を積算した値で除算した、以下の式から求めた。
(F.F.)= (実電力最大値)/((短絡電流密度)×(開放電圧))
(太陽光エネルギー変換効率)
太陽光エネルギー変換効率(以降、変換効率とも表記する。)は、以下の式から求めた。
(変換効率)=(実電力最大値(mW cm-2))/100mW cm-2
(光センサー機能)
光センサー機能は、作製したセルに疑似太陽光(100mW/cm-2)を照射した際に、光起電力を生じた際には光センサー機能を有するものとして「○」と、光起電力を生じなかった際には光センサー機能を有さないものとして「×」と、それぞれ評価した。
実施例19〜21の結果から、いずれも光起電力を示し、本実施形態の化合物では、好適に太陽電池材料や、光センサーとして適用できることが示された。また、実施例19と実施例20、21を比較すると、第一元素カチオンと無機分子アニオンを所定量含む、実施例20、21では、短絡電流密度と開放電圧により優れ、より高い太陽光変換効率を示すことが示された。すなわち、第一元素カチオンと無機分子アニオンを所定量含む本実施形態により、より好適に太陽電池材料や、光センサーとして適用できることが示された。

Claims (22)

  1. カチオンとアニオンとを含み、
    前記カチオンのうち10モル%以上90モル%以下が第14族元素カチオンであり、
    前記カチオンの10モル%以上90モル%以下が対カチオンであり、ここで当該対カチオンのうち、1モル%以上100モル%以下が、炭素数と窒素数の和が3以上5以下の有機分子カチオンであり、
    前記アニオンが、有効イオン半径が2.25Å以上3.00Å以下である無機アニオンと、17族元素アニオンと、を含み、
    ペロブスカイト構造を有し、
    前記第14族元素カチオンが、鉛カチオンを含み、
    前記有機分子カチオンが、ホルムアミジニウムカチオンを含み、
    前記17族元素アニオンが、ヨウ素アニオンを含み、
    前記無機アニオンが、PF6 -を含む、化合物。
  2. 前記アニオンの0.1モル%以上100モル%以下が前記無機アニオンである、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記化合物に含まれる、ホウ素及びリンの和と前記17族元素との原子比((ホウ素+リン)/第17族元素)が、0.001以上95以下である、請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 前記化合物に含まれる、ホウ素及びリンの和と、前記有機分子カチオンとのモル比((ホウ素+リン)/有機分子カチオン)が、0.001以上95以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 前記化合物に含まれる、ホウ素及びリンの和と、前記第14族元素カチオンとのモル比((ホウ素+リン)/第14族元素カチオン)が、0.001以上95以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
  6. 前記無機アニオンの有効イオン半径が、2.35Å以上2.90Å以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
  7. 前記アニオンの1モル%以上99.9モル%以下が前記第17族元素アニオンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
  8. 前記カチオンの20モル%以上85モル%以下が前記対カチオンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
  9. 前記対カチオンの5モル%以上100モル%以下が前記有機分子カチオンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
  10. 前記対カチオンの6モル%以上48モル%以下がCsである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
  11. 前記カチオンの15モル%以上80モル%以下が、前記第14族元素カチオンである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
  12. 形態が粒子である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
  13. 形態が薄膜である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
  14. カチオンとアニオンから構成される塩であって、
    前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、6アニオンであり、
    前記カチオンの1モル%以上100モル%以下が、ホルムアミジニウムカチオンであり、
    前記アニオンの1モル%以上99モル%以下が、ヨウアニオンである、塩。
  15. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    請求項14に記載の塩とヨウ化鉛とを反応させる工程を含む、化合物の製造方法。
  16. 請求項14に記載の塩の、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の原料としての使用。
  17. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
    前記カチオンと前記アニオンとを含む化合物前駆体を調製する工程と、
    前記化合物前駆体を160℃以下の温度で加熱する工程と、
    を含み、
    前記化合物前駆体において、前記カチオンの10モル%以上99モル%以下が前記第14族元素カチオンであり、前記カチオンの1モル%以上90モル%以下が前記対カチオンであり、ここで当該対カチオンのうち、1モル%以上100モル%以下が、前記有機分子カチオンであり、前記アニオンが前記PF6アニオンを含む、化合物の製造方法。
  18. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の半導体材料としての使用。
  19. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の太陽電池材料としての使用。
  20. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の太陽電池の光吸収層としての使用。
  21. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の光センサーとしての使用。
  22. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の発光材料としての使用。
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