JP6736396B2 - 電気化学セル - Google Patents
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この種の電気化学セルのパッケージにおいて、封止性に優れ、長期信頼性を向上させるとともにリフローはんだ付けに対応できるセラミックパッケージが提案されている(特許文献1参照)。
また、この種の電気化学セルの電極として、活物質と集電体との密着性を向上させ、表面抵抗値を抑制した構造が知られている(特許文献2参照)。
このため、従来のラミネートタイプと同様の用途に用いられ、同様の搭載空間にセラミックパッケージを備えた電気化学セルを配置するためには、導電性や容量密度を従来の構成よりも高める必要があった。
また、この種の電気化学セルにおいて、セルを急速に昇圧する(短い充電時間とする)必要がある場合、従来の活性炭塗工電極では過剰な容量のために充填に時間がかかる問題がある。更に、電極量(集電体の大きさ)を減らして充電時間を減らそうとすると抵抗が大きくなってしまう問題が生じる。
さらに、この種の電気化学セルにおいて、リフローはんだ付けを行うと、はんだの熱によって内部抵抗が上昇するなどの問題が生じ、電気化学セルがリフローはんだ工程によって特性劣化するという課題があった。例えば、セラミックパッケージを用いた電気化学セルにおいて、パッケージを封止する際に封止部分周囲に溶接の熱が伝わることがあるので、電解液の組成によっては熱を受けた電解液が一部蒸発し、特性が劣化するおそれがあった。
気密構造のベース容器にセル要素と電解液を収容し、支持塩とプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートを好適な割合とする電解液としているので、支持塩の溶解性が高く、リフローはんだの熱を受けても内部抵抗の上昇割合が低く、容量劣化の少ない耐熱性を高めた電気化学セルを提供できる。
また、総厚み1〜15μmの好適な厚みの導電粒子層とアルミニウム集電体との界面をアルミニウムと炭素の化合物を利用して固定しているので、正極又は負極において導電粒子層と集電体の間の抵抗が低いため、充電時間を短くすることができ、内部抵抗が上昇するおそれが少ない電気化学セルが得られる。
本発明において、前記非水電解液が、スピロ化合物の支持塩10〜40質量%、残部溶媒であり、前記残部溶媒の質量比率において、プロピレンカーボネート:31〜53質量%、エチレンカーボネート:0〜40質量%、ジメチルカーボネート:20〜47質量%の組成を有することが好ましい。
本発明において、前記導電粒子層が総厚み6〜11μmである構成を採用できる。
リッドをベース容器にシーム溶接などの溶接法で溶接する場合、ベース容器に収容されている電解液の一部に溶接時の熱が伝わる。しかし、前記組成比の溶媒であるならば、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートを好適な割合とする電解液としているので溶接時の熱を受けても電解液の一部成分蒸発の影響が少なく、目的の高容量を得やすく、低抵抗かつリフローはんだの熱を受けても特性劣化の少ない電気化学セルを提供できる。
本発明において、前記導電粒子層が酸化チタン粒子の層である構成を採用できる。
本発明において、前記アルミニウム集電体の表面部分に前記アルミニウムと炭素の化合物を含む介在層が形成され、前記介在層から外側に向かって延在する第2の表面部分が形成され、該第2の表面部分に複数の導電粒子が固定された構造を採用することで、熱を受けても導電粒子がアルミニウム集電体から分離しない電極構造にできる。このため、リフローはんだの熱を受けてもアルミニウム集電体表面における導電粒子の密着性が低下し難いので、耐熱性の高い電気化学セルを提供できる。
本発明において、前記第2の表面部分に活性炭を含む活物質が固定されてなる構成を採用できる。
本発明において、前記支持塩が、4級アンモニウム塩または4級ホスホニウム塩である構成を採用できる。
これらの支持塩であるならば、電解液中の支持塩の高い溶解性を得ることができ、電気伝導度の高い溶媒とすることができる。
本第1実施形態の電気化学セル1は、主にパーソナルコンピューターや小型の携帯機器内部の基板に実装されて用いられる。
(電気化学セル1)
図1(a)は、本実施形態の電気化学セル1の外観図である。
図1に示すように電気化学セル1は一例として直方体の形状で示されているが、トラック形状や円筒形状であってもよい。本実施形態の電気化学セル1は、発電要素であるセル要素6を収納して容器として機能するベース容器2と、その開口部を気密に塞ぐための封口板として機能するリッド(蓋体)10を外装部品として備えている。電気化学セル1の外装容器は、前記ベース容器2とベース容器2の開口部を封止するリッド10とから構成されている。
ベース容器2は上方を開口部とした箱体状のセラミックからなる容器であって、長方形状のベース底部2aと、ベース底部2aの外縁に立設された長方形枠状のベース周壁部2bを有している。このベース容器2は一辺5〜20mm程度、高さ1〜3mm程度とすることができる。図2(a)、(b)は、それぞれベース容器2のベース内底面2cとベース下面2dを示す図である。図2(a)に示すベース内底面2cには、導電性材料からなる一対のパッド膜5が配置されている。パッド膜5の下面には、破線で示されるビア配線3がそれぞれ4個隣接して設けられ、これらビア配線3はそれぞれベース下面2dに配置された接続端子4(同じく破線で示す)に接続されている。
本実施形態のベース容器2は、例えば、長方形状に打ち抜かれたベース底部2aに対応するセラミックグリーンシートに、長方形枠状に打ち抜かれたベース周壁部2bに対応するセラミックグリーンシートを貼り合せた後、焼成することにより形成される。なお、ベース底部2bに対応するセラミックグリーンシートにパンチングによりあらかじめ孔を開けることにより貫通孔を形成することができ、この貫通孔を利用してビア配線3を形成することができる。
ビア配線3は、ベース容器2のベース内底面2cからベース下面2dにかけて形成された配線である。このビア配線3は、まず、ベース底部2aに、ベース内底面2cとベース下面2dとを略垂直に貫通して接続する貫通孔を設け、貫通孔にタングステンなどの金属の配線用ペーストを充填することにより形成される。また、ビア配線3を形成することにより、貫通孔の気密が満たされている。
なお、ビア配線3に使用する導電性ペーストとして、炭素と樹脂を混合したペーストや、タングステン、モリブデン、ニッケル、金、又はこれら金属の複合材料と樹脂を混合したペーストを用いることができる。
なお、前述のとおり、ベース容器2をソーダライムガラスや耐熱ガラスなどのガラス素材で形成する場合、これらのガラスに凹部や貫通孔を形成する手段としては、化学的なエッチング法、サンドブラストのような物理的方法、あるいは高温雰囲気において型を用いて凹部と貫通孔を同時に形成することができる。そして、貫通孔の内面にアルミニウム膜を形成した後、熱膨張係数をマッチングさせたガラスペーストを貫通孔に充填し、脱バインダー及び焼成を実施することにより、気密で導電性を有するビア配線3を形成することができる。このような場合は、ビア配線3が後述する電解液7により溶解するという懸念はない。また、ビア配線3の内面を形成する膜はアルミニウムに限定されることなく、チタンなどのその他の弁金属を含む膜であってよい。
図2(b)に示すベース下面2dには、パッド膜5に対向するように一対の接続端子4が設けられている。接続端子4は、リフロー処理などにより、実装基板のパターンに設けられたクリームハンダなどで基板に固着される。
本実施形態では、ベース容器2となるセラミックグリーンシートにあらかじめタングステンによる電極のパターンを印刷し、当該セラミックグリーンシートを焼成することにより、接続端子4を形成することができる。また、接続端子4は、印刷法により形成したタングステンのパターンに、ニッケルと金とからなるメッキ膜が施されていることが好ましい。さらに、ベース側面2eの凹部にもタングステンやこれらメッキ材料がパターニングされ、これらが接続端子の一部として機能する。
パッド膜5は、ベース内底面2cの2箇所に配置される導電性材料からなる略矩形状の膜である。このパッド膜5は、ビア配線3の上端部と電解液7との直接の接触を防止するとともに、セルリード8を溶接により接続するための溶接部分を有している。
なお、本実施形態のパッド膜5は、ベース容器2の長手方向に並置されているが、短辺方向に並置することや、長手方向の対角線方向に並べることも可能である。
パッド膜5は、アルミニウムやチタン等の化学的に安定な弁金属からなる膜であり、電解液7に溶解し難い材料からなる。これらの膜は、例えば、蒸着、イオンプレーティングやスパッタリングなどの周知の膜形成方法によって設けることができる。これらの方法による場合は、まず、タングステンなどの金属を貫通孔に印刷法等により充填・焼成し、気密なビア配線3を仕上げた後に形成する。真空中で成膜する場合は、例えば、正負のパッド膜5をそれぞれ構成するように、互いに空間的に分離した2つの開口を持つようにパターニングした金属製等のマスクを準備して、成膜装置のチャンバーの中に収納し、真空排気系で所定の真空度に排気した後、弁金属材料を蒸着させるか、弁金属材料からなるターゲットを物理的にイオンで叩いて弁金属材料を飛ばして、ベース内底面2cに成膜する。これらの成膜法では、成膜の条件が制御し易いので、形成した膜の抵抗率が低く、かつ液体が浸透しにくい高密度な膜が形成できる。
この結果、セルリード5個中1個のサンプルにおいて、ガラス板に微小なクラックを発生することが認められた。従って、5μmはパッド膜5の膜厚としては実用上の下限値であると推定できる。実用的にパッド膜5の膜厚を10μm以上とすることが望ましい。
続いて、セル要素6について説明する。セル要素6は、厚み5μm〜100μmのアルミニウム箔を集電体とし、その表面に導電粒子層を設けた正極と負極の一対の電極シートを、絶縁物からなるセパレータを挟んで巻回、積層、折畳みなどの手法で一体化した発電要素である。
本実施形態のセル要素6は、後述するようにアルミニウム集電体の表面部分にアルミニウムと炭素の化合物を含む介在層が形成され、前記介在層から外側に向かって延在する第2の表面部分が形成され、該第2の表面部分に固定している複数の導電粒子を含む総厚み1〜15μmの導電粒子層が形成された特殊な構造の電極シートを備えている。なお、導電粒子層の総厚みとは、アルミニウム箔の片面側のみに導電粒子層を形成する場合はその導電粒子層の厚みを、アルミニウム箔の両面側に導電粒子層を形成する場合は両面に形成したそれぞれの導電粒子層の厚みの合計をいう。また、本発明における導電粒子層には活物質を含んでいてもよく、活物質を含んでいる場合は活物質層の厚みも含んだ厚みを総厚みという。
この熱処理によりアルミニウム箔の表面にアルミニウムと炭素の化合物を生成させることができ、このアルミニウムと炭素の化合物により弁金属の酸化物からなる導電粒子をアルミニウム箔表面に固定することができる。アルミニウムと炭素の化合物は特にアルミニウム炭化物(Al4C3)が好ましい。また、導電粒子は、弁金属の酸化物に限らず、炭素粒子などの炭素材料からなる導電粒子であっても良い。
より具体的には弁金属であるチタンの酸化物粒子層を用いた東洋アルミニウム株式会社製トーヤルチタン(登録商標)を用いることができる。
また、上記実施形態において、第2の表面部分にアルミニウムと炭素の化合物により活性炭を含む活物質を固定した電極シートを形成することにより、電気化学セルの容量を大きくすることができる。この場合でも、リフローはんだの熱を受けてもアルミニウム集電体表面における導電粒子の密着性が低下し難いため、耐熱性の高い電気化学セルとすることができる。
セル要素6は図4(a)に示すように、弁金族の酸化物粒子あるいは炭素材料などの粒子からなる導電粒子の集合体を含む導電粒子層30及びアルミニウム箔の正極集電体31からなるフィルム状の正極体(正極)32と、弁金族の酸化物粒子あるいは炭素材料などの粒子からなる導電粒子の集合体を含む導電粒子層40及びアルミニウム箔の負極集電体41からなるフィルム状の負極体(負極)42と、これら正極体32と負極体42との間に設けられるフィルム状のセパレータ35とが積層されたラミネート構造を有している。即ち、セル要素6は、フィルム状の正極体32と負極体42とが、セパレータ35を介し対向して重ね合わせられ、このラミネート状の積層体が、同方向に巻回されたスパイラル構造とされている。
セル要素6に設けられている導電粒子層30、40は、それぞれ1〜15μmの総厚みを有しているが、導電粒子層30、40の総厚みがこの範囲であれば、必要以上に容量を大きくすることがなく、充電時間を短くできる。導電粒子層30、40の総厚みが1μm未満では、層厚が不足するため、リフローはんだの熱によって抵抗が上昇するおそれがあり、15μmを超えて厚い場合、容量の増加に伴い電気化学セルとしての充電時間が長くなる。
また、正極集電体31の一部に正極用のセルリード8が接合され、負極集電体41の一部に負極用のセルリード8が接合され、これらがスパイラル構造体の外部に引き出されて図4(a)に示すセル要素6が構成されている。
正極集電体31と導電粒子層30との関係は図4(b)に拡大して示す構造とされている。すなわち、正極集電体31の表面部分に弁金属の酸化物などからなる導電粒子の集合体を含む導電粒子層30が形成され、正極集電体31と導電粒子層30との間に介在層33が形成されている。介在層33は、アルミニウムからなる正極集電体31の表面の少なくとも一部の領域に形成されたアルミニウムと炭素の化合物を含む第1の表面部分を構成している。導電粒子層30は介在層33のアルミニウムと炭素の化合物から外側に向かって伸びるように延在されたアルミニウムと炭素の化合物の第2の表面部分34を含む。この第2の表面部分34に酸化チタン粒子あるいは炭素粒子などの導電粒子36が固定されて、該導電粒子を含む導電粒子層30が構成されている。この導電粒子層30は、図4(a)に示すように正極集電体31の一つの面に形成されていても良く、両面に形成されていても良い。
また、本実施形態において、導電粒子層内には、導電粒子36上にさらに、活性炭、導電助剤、バインダーからなる活物質層が総厚みの範囲内で形成されていても良い。
負極集電体41と導電粒子層40との関係も同様に、負極集電体41の表面に介在層(第1の表面部分)33が形成され、その上に第2の表面部分34が形成され、第2の表面部分34に複数の酸化チタン粒子などの導電粒子36が固定されて、該導電粒子を含む導電粒子層40が構成されている。この導電粒子層40内にも活性炭、導電助剤、バインダーからなる活物質層が総厚みの範囲内で形成されていても良い。また、導電粒子層40は、図4(a)に示すように負極集電体41の一つの面に形成されていても良く、両面に形成されていても良い。
なお、図4(a)に示すセル要素6の構成は、巻回型のセル要素の一般例であるが、セル要素は積層型、折り畳み型等、いずれの構成を採用しても良い。
電解液7は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)からなる混合溶媒に支持塩を溶解した混合電解液を用いることが好ましい。ただし、エチレンカーボネート(EC)は混合溶媒に含まない場合がある。
支持塩は、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩などが挙げられる。より具体的には、4級アンモニウム塩の内、脂肪鎖のみを有する化合物としては、例えば、トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)塩、テトラエチルアンモニウム(TEA)塩等が挙げられる。スピロ化合物としては、例えば、5−アゾニアスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレート(スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム:SBP−BF4)、6−アゾニアスピロ[5,5]ウンデカンテトラフルオロボレート、3−アゾニアスピロ[2,6]ノナンテトラフルオロボレート、4−アゾニアスピロ[3,5]ノナンテトラフルオロボレート等が挙げられる。また、4級ホスホニウム塩としては、5−ホスホニルスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレートが挙げられる。
支持塩としては、4級アンモニウム塩が好ましく、スピロ化合物がより好ましく、5−アゾニアスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレートがさらに好ましい。4級アンモニウム塩のスピロ化合物は電気伝導率が高いため、放電容量を増大できる。
例えば、電解液全体の質量に対し質量比(%)において支持塩25質量%、残部溶媒として、溶媒の比率においてPC:EC:DMC=39質量%:32質量%:29質量%の割合で混合した電解液を用いることができる。
また、電解液全体の質量に対し支持塩の質量は、22〜27質量%の範囲がより好ましい。
また、溶媒全体に対する各成分の質量比については、PC=33〜42質量%、EC=27〜36質量%、DMC=28〜32質量%の範囲が更に好ましく、PC=37〜40質量%、EC=31〜33質量%、DMC=28〜31質量%の範囲が最も好ましい。
セルリード8は、セル要素6から電力を取り出すための端子である。このセルリード8は、集電体そのものを細く延長させた延長部や、別の細く薄い板やワイヤ状のリードを機械的に接続して延長部を形成したものが用いられる。本実施形態のセルリード8は、集電体そのものを延長させたものが望ましく、このセルリード8の一部分である溶接領域8aがパッド膜5の溶接部分5aに溶接により固定される。
本実施形態のセルリード8は、図3(a)、(b)に示すように、セル6をベース容器2の外に置くことができる程度の長さであって、パッド膜5と溶接する際に溶接用チップ20の移動の妨げにならない程度の長さにすることが望ましい。過度に長くすると内部抵抗が増加するからである。なお、セル要素6は、セルリード8とパッド膜5とを溶接した後、ベース容器2の中に収納されるが、この際、セルリード8はベース容器2の内部で折りたたまれる。
また、セルリード8を折りたたむ際は、セル要素6のショートを回避するため、セルリード8がシールリング9に混触しないように注意する必要がある。
シールリング9は、図1に示すように、ベース容器2のベース壁部2bの上端面の形状に合わせた四角枠状の断面を有しており、ベース壁部2bの上端面にロウ材を介して接合されている。このシールリング9は、熱膨張係数がセラミックの熱膨張係数と近い材料、例えば、鉄・コバルト・ニッケル合金であるコバール(ウェスティングハウス社商品名)などを用いることができる。また、ロウ材は、Ag−Cu合金やAu−Cu合金などから形成されている。
リッド10は、図1に示すように、シールリング9の上面に接合されており、ベース容器2を密封している。リッド10は、熱膨張係数においてセラミックの熱膨張係数と近いコバールや42alloyなどの合金にニッケルメッキを施したものが使用される。より具体的には、コバールからなる0.1mm〜0.2mm程度の厚みを有する薄板で、表面に2μm〜4μm程度の厚みで電解ニッケルメッキや無電解ニッケルメッキを施したものが用いられる。このような材料を用いたリッド10は、例えば、抵抗シーム溶接、レーザーシーム溶接などによってシールリング9に溶接することができ、塞がれた状態のベース容器2内部の気密性を向上できる。このリッド10によりベース容器2が気密に閉じられている。
続いて、例えば、長辺の端からローラー電極で長辺がなぞられるようにベース容器2とリッド10が移動して溶接される。次に、ベース容器2とリッド10は90度回転され、同様に短辺が溶接される。このようにして、リッド10の一周に亘って溶接が行われる。前述した仮固定においても、本抵抗シーム溶接においても、リッド10とシールリング9との界面で、金とニッケルの拡散が発生し、気密で強固な拡散接合層が形成される。これにより、リッド10は、ベース容器2を高い気密性でもって封止する。
なお、電解液7が常温で液体状の溶媒や支持塩からなり、リッド10を封止する前に電解液7を充填する工程を採用する場合は、液体がリッド10とシールリング9の界面に存在する場所があり得る。このような場合でも、シーム溶接を用いた接合は可能である。
シーム溶接は、ローラー電極を使用するものでも、レーザーの走査照射を用いるものでもかまわない。
前記界面に液体が存在しても気密な溶接が可能となるのは、界面に存在する液体は、溶接時に近傍の温度が急激に上昇するので蒸発して飛散することによるものと考えられる。なお、シールリング9を使用せず、ベース容器2の上端面とリッド10とをロウ材を介して接合させてもよい。
また、セル要素6を収容したベース容器2をリッド10でレーザー溶接やシーム溶接あるいはロウ付けなどの方法で封止する場合、封止のための熱がリッド近くの非水電解液7に伝わったとしても、上述の組成の非水電解液7が蒸発し難く、非水電解液7の変質による抵抗上昇の生じ難い電気化学セル1を提供できる。
図5に示す電気化学セル15では、ビア配線3をベース内底面2cからベース下面2dに直接貫通させたものではなく、ベース底部2aを構成する2枚の板であるベース第1底部2fとベース第2底部2gとの界面でビア配線3を止めた構造になっている。この界面には、配線パターン18が設けられている。配線パターン18は、ビア配線3と接続し、水平に延出して外面に露出し、更に接続端子4に接続した構成である。
パッド膜5は、前述した第1実施形態と同様に、アルミニウム膜が5μmから100μmの厚みで形成されたものである。セル要素6に接続する一対のセルリード8は、パッド膜5に溶接で接続されている。また、電解液7が充填された後、ベース容器2はリッド10によって気密に封止され、外装容器を構成している。
図5に示す構成の電気化学セル15においても、先の電気化学セル1と同様に、導電性と容量密度が高く、小さな素子形状であっても信頼性の高いリフローはんだ付けが可能な電気化学セル15を提供できる。また、導電性および容量密度が高く充電特性に優れ、気密封止構造であっても非水電解液の変質による抵抗劣化の生じ難い電気化学セル15を提供できる。
図6に示す電気化学セル16では、セラミックスの平板のみからなるベース容器2と、凹状の形状からなる金属製のキャビティ型リッド10aから外装容器を構成したものであり、図6は断面構造を示している。外装容器の内部には、先の実施形態と同様に、セル要素6と、一対のセルリード8と、電解液7とが収納され、セルリード8とベース容器2に形成されたパッド膜5とは溶接により接続されている。
キャビティ型リッド10aでは、キャビティ型リッド10aの底面部(図中では上端部)に小孔を設けている。これは、ベース容器2とキャビティ型リッド10aを溶接した後に、電解液7をこの小孔から充填し、その後に封止栓10bを用いて気密に封止できるように意図されたものである。
これにより、シールリング9とキャビティ型リッド10aの接合面との間に電解液7が存在することによる、封止作業の能率低下を防ぐことができる。ベース容器2の内側面に形成されるパッド膜5の材料やその厚みの範囲、ビア配線3の構造やその個数、セルリード8とパッド膜5との接合手段は、前述と同様であるので記載を省略する。
図6に示す構成の電気化学セル16においても、先の電気化学セル1と同様に、導電性と容量密度が高く、小さな素子形状であっても信頼性の高いリフローはんだ付けが可能な電気化学セル16を提供できる。また、導電性および容量密度が高く充電特性に優れ、気密封止構造であっても非水電解液の変質による抵抗劣化の生じ難い電気化学セル16を提供できる。
図7(a)に、第4実施形態で用いるベース容器2を示した。本実施形態では、ベース容器2が、セラミックス製の平板と、平板に接合された金属製の筒状の金属側壁12から構成されており、これによって凹状の容器を成している。ベース容器2のベース内底面2cには、ベース底部2aを直接貫通するビア配線3が設けられ、その上にパッド膜5が一対配置されている。金属製の金属側壁12は、熱膨張率がベース容器2とマッチングするように選択され、平板にロウ材で接合されている。
一方、ベース容器2において反対側の開口部は、リッド10の接合面を形成している。本変形例では、リッド10を封止するための第1実施形態のシールリング9は不要であり、金属側壁12それ自体がシールリング9の役割も果たしている。そのため、金属側壁12において少なくともリッド10と接合する面には、ニッケルと金のメッキ膜が施されており、リッド10は、メッキ面に当接されて、抵抗シーム溶接やレーザーシーム溶接を用いて接合が可能なように構成されている。
図7(c)に示す電気化学セル17では、図7(b)と同様に金属側壁12を用いているが、パッド膜5は正極側にのみ形成されている。正極セルリード8bはパッド膜5に超音波溶接で接続される一方で、負極セルリード8cは、金属側壁12の内側に溶接で接続されている。金属側壁12が金属製で、かつ、電流の流れる経路が大きいので、負極側の配線抵抗値は低く抑えられる。従って、本実施の形態の電気化学セル17は大電流放電が可能となる。
図7に示す構成の電気化学セル17においても、先の電気化学セル1と同様に、導電性と容量密度が高く、小さな素子形状であっても信頼性の高いリフローはんだ付けが可能な電気化学セル17を提供できる。また、導電性および容量密度が高く充電特性に優れ、気密封止構造であっても非水電解液の変質による抵抗劣化の生じ難い電気化学セル17を提供できる。
ベース容器2は、セラミックグリーンシートに長方形枠状に打ち抜いた壁部2cに対応するセラミックグリーンシートを貼り合わせ、約1500℃で焼成することにより形成した。ビア配線3は外径0.2mmのものをベース内底面2cとベース下面2dを直接貫通するように正極側と負極側にそれぞれ4個ずつ設けた。ビア配線3の表面にニッケルと金のめっきを施した。ベース下面2dには一対の接続端子4を配置し、ビア配線3に接続した。接続端子4にはニッケルを下地とした金めっきを施した。
電極体の1例として、20μmの厚みを持つアルミニウム箔からなる集電体表面にアルミニウム炭化物(Al4C3)で酸化チタン粒子からなる片面当りの厚さ6μmの導電粒子層を両面に支持した構造のシート電極(東洋アルミニウム株式会社製トーヤルチタン(登録商標))を用いた。
次に、それぞれのセル要素6が収納された複数のベース容器2を、液体の電解液7の中に浸漬させ、1分間真空脱泡した。ここで、電解液7の支持塩はSBP・BF4(5−アゾニアスピロ[4.4]ノナン テトラフルホロボラート)を用い、溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液を以下の割合で混合し、混合電解液として用いた。混合の割合は、電解液7全体の質量に対し25質量%の支持塩、残部溶媒の組成であり、溶媒はPC:EC:DMC=39質量%:32質量%:29質量%の割合で混合した溶媒としている。
続いて、大気圧に戻して、セル要素6を収納したベース容器2を電解液7から取り出した後に、窒素雰囲気下でリッド10をシールリング9に当接し、長辺側の2点の仮溶接を行い、続いて長辺側と短辺側をこの順に連続して抵抗シーム溶接を行い、ベース容器2を気密に封止した。このようにして実施例1の電気化学セルを作製した。
作製した第1実施例の電気化学セルについて後述する電気特性試験を行った。
実施例1の電気化学セルを作製する際、適用する電解液中の支持塩の質量比について、15質量%に設定した電解液を用いた実施例2の電気化学セルと、40質量%に設定した電解液を用いた実施例3の電気化学セルと、10質量%に設定した電解液を用いた実施例4の電気化学セルと、45質量%に設定した電解液を用いた比較例2の電気化学セルと、5質量%に設定した比較例3の電気化学セルを作製した。
作製した各電気化学セルについてリフローはんだに対する耐性を評価するために、電気化学セル全体を260℃に5秒間保持するリフローはんだテストを行い、リフローはんだテスト後の内部抵抗(Ω)を測定した。内部抵抗は交流1kHzにおけるインピーダンスを測定することにより求めた(以下に示す内部抵抗の測定も同様である)。その結果を以下の表1と図8に記載する。
各実施例及び比較例の電気化学セルは充電電圧2.5V/充電電流10mAで10分間充電後、放電電流1mA、放電終止電圧1.4Vの条件にてリフローはんだテスト後の放電時間(sec)を計測した。
上記のように、表1〜3及び図8〜10から、支持塩の含有量を本願の好ましい範囲(8〜43質量%)とすることで、内部抵抗の小さい電気化学セルを提供することができる。
前記構成の電気化学セルを作製する場合、支持塩として25質量%のSBP・BF4(5−アゾニアスピロ[4.4]ノナン テトラフルホロボラート)を用い、非水溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液を以下の割合で混合し、混合電解液として用いた。
混合の割合は、電解液7全体の質量に対し25質量%の支持塩、残部溶媒の組成であり、溶媒としてPC:EC:DMC=47質量%:20質量%:23質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを実施例5として用いた。
支持塩を前記同等組成比、溶媒としてPC:EC:DMC=31質量%:40質量%:29質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを実施例6として用いた。
支持塩を前記同等組成比、溶媒としてPC:EC:DMC=53質量%:0質量%:47質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを実施例7として用いた。
支持塩を前記同等組成比、溶媒としてPC:EC:DMC=55質量%:16質量%:29質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを実施例8として用いた。
支持塩を前記同等組成比、溶媒としてPC:EC:DMC=25質量%:45質量%:30質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを比較例4として用いた。
充電条件として、各実施例及び比較例の電気化学セルは充電電圧2.5V/充電電流10mAで10分間充電後、放電電流1mA、放電終止電圧1.4Vの条件にてリフローはんだテスト後の放電時間(sec)を計測した。
上記のように、表4〜6及び図11〜13に示す結果から、エチレンカーボネートの含有量を本願の好ましい範囲(0〜43質量%)とすることで、内部抵抗が小さく、かつ、充電時間の短い電気化学セルを提供できることがわかる。
混合の割合は、電解液7全体の質量に対し25質量%の支持塩、残部溶媒の組成であり、溶媒としてPC:EC:DMC=39質量%:32質量%:29質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを実施例9として用いた。
支持塩を前記同等組成比、溶媒としてPC:EC:DMC=32質量%:23質量%:45質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを実施例10として用いた。
支持塩を前記同等組成比、溶媒としてPC:EC:DMC=44質量%:36質量%:20質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを実施例11として用いた。
支持塩を前記同等組成比、溶媒としてPC:EC:DMC=34質量%:28質量%:38質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを実施例12として用いた。
支持塩を前記同等組成比、溶媒としてPC:EC:DMC=47質量%:43質量%:10質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを比較例5として用いた。
支持塩を前記同等組成比、溶媒としてPC:EC:DMC=29質量%:21質量%:50質量%の割合で混合した溶媒を用いた電気化学セルを比較例6として用いた。
充電条件として、各実施例及び比較例の電気化学セルは充電電圧2.5V/充電電流10mAで10分間充電後、放電電流1mA、放電終止電圧1.4Vの条件にてリフローはんだテスト後の放電時間(sec)を計測した。
上記のように、表7〜9及び図14〜16から、ジメチルカーボネートの含有量を本願の好ましい範囲(16〜48質量%)とすることで、内部抵抗の小さな電気化学セルを提供することができる。
また、シート電極の他の例として実施例13は、20μmの厚みを持つアルミニウム箔からなる集電体表面に、アルミニウム炭化物(Al4C3)で粒子径6μmの活性炭粒子を片面のみ10μmになるように層状に固定した構造のシート電極を用いた。実施例14、比較例7は、20μmの厚みを持つアルミニウム箔からなる集電体表面にアルミニウム炭化物(Al4C3)で炭素粒子からなる片面当りの厚さ1μmの導電粒子層を両面に支持した構造のシート電極(東洋アルミニウム株式会社製トーヤルカーボ(登録商標))を集電体とし、粒子径6μmの活性炭85質量%、導電助剤(ケッチェンブラック、8質量%)及びバインダー(ポリテトラフルロエチレン、7質量%)からなる活物質層をそれぞれ、片面のみに10μm(実施例14)、30μm(比較例7)になるように塗工した。
比較のためにさらに、20μm厚みのアルミニウム集電体上に比較例7と同様の粒子径6μmの活性炭85質量%、導電助剤(ケッチェンブラック、8質量%)及びバインダー(ポリテトラフルオロエチレン、7質量%)からなる厚み30μmの活物質を塗工した従来電極を用いた(比較例8)。これらの実施例及び比較例のシート電極を備えた電気化学セルを作製し、以下の試験に供した。
また、各実施例及び比較例の電気化学セル対し、先の例と同等のリフローはんだテストを行い、充電電圧2.5V/充電電流10mAで10分間充電後、放電電流1mA、放電終止電圧1.4Vの条件にてリフローはんだテスト後の放電時間(sec)を計測した。
さらに、各実施例及び比較例の電気化学セルについて、先の例と同等のリフローはんだテストを行い、充電電流100μAで2.5Vに達するまでの充電時間を測定した。
これらの結果を以下の表10〜表12、図17〜図19に示す。
また、実施例1、13、14、比較例7、8の電気化学セルにおいて、充電時間を10000secとしたときの各電気化学セルの放電時間を100とした場合、各電気化学セルの放電時間の相対値について、以下の表14及び図21に示す。
これは活性炭よりも容量密度が小さい酸化チタン粒子からなる活物質を用いることに加えて、活物質層等の厚みを従来よりも小さく制御することができるためである。これにより、実施例1の構造を採用することで急速充電特性に特に優れた電気化学セルとすることができることがわかる。
一方、実施例13、14に示すように、導電粒子層を炭素材料で構成したシート電極であっても、導電粒子層の総厚みを小さくすることにより、短時間充電でも放電容量を大きく維持することができる。
これにより、導電粒子層の総厚みを本願の好ましい範囲である15μm以下、より好ましくは10μm以下とするシート電極を用いることでも、急速充電特性に優れる電気化学セルを提供することができる。
Claims (9)
- ベース容器と、前記ベース容器の中に収納されるセル要素と、前記セル要素の延長部である複数のセルリードと、前記ベース容器の内底面に形成された弁金属からなるパッド膜と、前記パッド膜と接続され、かつ前記ベース容器の内底面から下面にかけて形成されたベース内配線と、前記ベース容器を気密に閉じるリッドを少なくとも有する電気化学セルであり、
前記セル要素において正極と負極がセパレータを挟んで配置され、さらに、非水電解液が含有されており、前記正極と負極の少なくとも一方がアルミニウム集電体と、該アルミニウム集電体上にアルミニウムと炭素の化合物により固定された導電粒子を含む総厚み1〜15μmの導電粒子層を含み、
前記非水電解液が、支持塩8〜43質量% 、残部溶媒であり、残部溶媒質量比率において、プロピレンカーボネート:26〜57質量% 、エチレンカーボネート:0〜43質量% 、ジメチルカーボネート:16〜48質量%の組成を有することを特徴とする電気化学セル。 - 前記非水電解液が、スピロ化合物の支持塩10〜40質量%、残部溶媒であり、前記残部溶媒の質量比率において、プロピレンカーボネート:31〜53質量%、エチレンカーボネート:0〜40質量%、ジメチルカーボネート:20〜47質量%の組成を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
- 前記導電粒子層が総厚み6〜11μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
- 前記リッドが前記ベース容器に溶接されてなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電気化学セル。
- 前記導電粒子層が前記アルミニウムと炭素の化合物により固定された弁金属の酸化物の導電粒子を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電気化学セル。
- 前記導電粒子層が酸化チタン粒子の層であることを特徴とする請求項5に記載の電気化学セル。
- 前記アルミニウム集電体の表面部分に前記アルミニウムと炭素の化合物を含む介在層が形成され、前記介在層から外側に向かって延在する第2の表面部分が形成され、該第2の表面部分に固定している複数の導電粒子を含む前記導電粒子層が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
- 前記第2の表面部分に活性炭を含む活物質が固定されてなることを特徴とする請求項7に記載の電気化学セル。
- 前記支持塩が、4級アンモニウム塩または4級ホスホニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
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