しかしながら、特許文献1に開示されたガラスロールの製造方法は、仮巻き取り工程を実行した後、本巻き取り工程を実行し、場合によってはその後に巻き直し工程を実行することが開示されているに過ぎない。
そのため、ガラス製造メーカー等から最終製品として出荷されるガラスロールを、巻きズレが十分に少なく且つ寸法精度も十分に良い高品質なものとするには、上記の各工程における処理だけでは不十分となる。
以上の観点から、本発明の課題は、ガラスフィルムが成形されてから出荷されるまでの間に実行される複数の巻き取り工程の種類および各工程での処理を適正なものとして、出荷用のガラスロールの高品質化を図ることである。
上記課題を解決するために創案された本発明は、成形されつつ搬送されるガラスフィルムを、保護シートと共に巻芯の廻りに巻き取ることで、母ガラスロールを作製する元巻き取り工程と、母ガラスロールを巻き解き、ガラスフィルムを再び保護シートと共に巻芯の廻りに巻き取る処理と、ガラスフィルムの長手方向両端部にリーダーを連結する処理とを行うことで、リーダー付き母ガラスロールを作製するリーダー連結巻き取り工程と、リーダー付き母ガラスロールを巻き解き、ガラスフィルムを再び保護シートと共に巻芯の廻りに巻き取りつつ、ガラスフィルムを長手方向に沿って切断して所定幅にすることで、リサイズ済みリーダー付きガラスロールを作製するリサイズ巻き取り工程と、リサイズ済みリーダー付きガラスロールを巻き解き、ガラスフィルムを再び保護シートと共に巻芯の廻りに巻き取って出荷用に巻き直すことで、出荷用リサイズ済みリーダー付きガラスロールを作製する出荷用巻き取り工程と、を有することに特徴づけられる。なお、上記のリーダー連結巻き取り工程、リサイズ巻き取り工程、および出荷用巻き取り工程は、何れも、いわゆるロール・ツー・ロール方式(以下、ロールtoロール方式という)によって巻き取りが実行されることが好ましい。
このような構成によれば、ガラスフィルムが成形されてから出荷されるまでの間に実行される巻き取り工程が上記の四種類となり、且つこれらの巻き取り工程ではそれぞれ適正な処理が行われる。したがって、これらの巻き取り工程の実行が全て完了して最終製品として得られる出荷用のガラスロールすなわち出荷用リサイズ済みリーダー付きガラスロールは、巻きズレが十分に少なく且つ寸法精度も十分に良いものとなり得る。そのため、出荷用のガラスロールの高品質化を図ることが可能となる。
上記の方法において、元巻き取り工程では、ガラスフィルムを巻芯に固定せず且つ保護シートを巻芯に固定して巻き取りを実行することが好ましい。
このようにすれば、元巻き取り工程では、保護シートが巻芯に固定されているのに対してガラスフィルムは巻芯に固定されていないため、ガラスフィルムに巻芯から直接的に張力が付与されず、且つ巻き取り時にガラスフィルムが不当に拘束されることもない。そのため、ガラスフィルムが成形されている間にその成形部が巻き取り側から悪影響を受ける事態が生じ難くなって、ガラスフィルムの厚みが不当にばらつくなどの不具合が生じ難くなる。しかも、ガラスフィルムは蛇行しながら搬送されてきて母ガラスロールとして巻き取られるのが現状であるが、このガラスフィルムの蛇行は、強制的に修正されることがなくなる。これによっても、ガラスフィルムの成形に悪影響を及ぼす事態が生じ難くなると共に、強制的な修正に起因する巻き取り時におけるガラスフィルムの破損や損傷も生じ難くなる。
以上の方法において、リーダー連結巻き取り工程とリサイズ巻き取り工程では、リーダーを巻芯に固定し且つ保護シートをリーダーに固定して巻き取りを実行することが好ましい。
このようにすれば、リーダー連結巻き取り工程では、ガラスフィルムに連結されたリーダーが巻芯に固定され、保護シートがそのリーダーに固定されるため、ガラスフィルムの巻き取り動作が正確に拘束される。したがって、ガラスフィルムの巻き取り位置への送りは、正確な経路に沿うように誘導されると共に、ガラスフィルムに適切な張力を作用させることが可能となる。その結果、母ガラスロールに生じていた大きな巻きズレを修正するための初回の動作が適正に行われる。また、保護シートは、リーダーに固定されるため、巻芯に固定される場合に比して、保護シートの巻き取り長さを短くして、その使用量を削減することができる。また、リサイズ巻き取り工程では、直前のリーダー連結巻き取り工程と同様に、リーダーが巻芯に固定され、保護シートがそのリーダーに固定されるため、直前の工程で大きな巻きズレが修正されている事と相俟って、ガラスフィルムの巻き取り位置への送りは、さらに正確な経路に沿うように誘導される。その結果、母ガラスロールに生じていた大きな巻きズレを修正するための二回目の動作がさらに適正に行われるのみならず、母ガラスロールのガラスフィルムに生じていた大きな切断ズレを消失させつつ、ガラスフィルムを所要の幅に正確に切断(リサイズ)することが可能となる。
以上の方法において、出荷用巻き取り工程では、リーダーを巻芯に固定し且つ保護シートを巻芯に固定して巻き取りを実行することが好ましい。
このようにすれば、出荷用巻き取り工程では、巻芯の巻き取り力が、保護シートに直接伝達されるため、保護シートからガラスフィルムにより一層確実に張力を作用させることができる。その結果、より一層適正に巻き直された出荷用のガラスロールを得ることができる。
これに代えて、出荷用巻き取り工程では、上述のリーダー連結巻き取り工程及びリサイズ巻き取り工程と同様に、リーダーを巻芯に固定し且つ保護シートをリーダーに固定して巻き取りを実行するようにしてもよい。
このようにした場合であっても、より一層適正に巻き直された出荷用のガラスロールを得ることができる。
また、これらに代えて、出荷用巻き取り工程では、ガラスフィルムの一方の面にラミネート用シートを貼着し、リーダーを巻芯に固定し且つ保護シートをガラスフィルムの他方の面と前記ラミネートシートとの間に介装して巻き取りを実行するようにしてもよい。
このようにすれば、保護シートはガラスフィルムの面とラミネートシートの面との間に介装されることになるため、保護シートが二つのガラスフィルムの面の間に介装される場合に比して、保護シートに滑りが生じ難くなる。その結果、巻きズレや巻き締りが効果的に生じ難くなり、適正に巻き直された出荷用ガラスロールを得ることができる。
この場合の出荷用巻き取り工程では、保護シートを巻芯に固定せずに巻き取りを実行するようにしてもよい。
このようにすれば、上述のように保護シートの滑りを生じ難くした上で、保護シートの巻き取り長さを短くして、その使用量を削減することができる。
なお、以上の製造方法における出荷用巻き取り工程を終えたガラスロールは、以下に示す構成を備えていることが特徴となる。
すなわち、第1のガラスロールは、ガラスフィルムが保護シートと共に巻芯の廻りにロール状に巻かれた出荷用のガラスロールであって、ガラスフィルムにリーダーが連結されると共に、リーダーが巻芯に固定され、且つ、保護シートが巻芯に固定されていることが特徴となる。なお、この第1のガラスロールの製造に際しては、必ずしも既述の四種類の巻き取り工程を行う必要がない。
また、第2のガラスロールは、ガラスフィルムが保護シートと共に巻芯の廻りにロール状に巻かれた出荷用のガラスロールであって、ガラスフィルムにリーダーが連結されると共に、リーダーが巻芯に固定され、且つ、保護シートがリーダーに固定されていることが特徴となる。なお、この第2のガラスロールの製造に際しても、必ずしも既述の四種類の巻き取り工程を行う必要がない。
さらに、第3のガラスロールは、ガラスフィルムが保護シートと共に巻芯の廻りにロール状に巻かれた出荷用のガラスロールであって、ガラスフィルムにリーダーが連結され、ガラスフィルムの一方の面にラミネート用シートが貼着されると共に、リーダーが巻芯に固定され、且つ、保護シートが、巻芯に固定されずにガラスフィルムの他方の面とラミネートシートとの間に介装されていることが特徴となる。なお、この第3のガラスロールの製造に際しても、必ずしも既述の四種類の巻き取り工程を行う必要がない。
本発明によれば、ガラスフィルムが成形されてから出荷されるまでの間に実行される複数の巻き取り工程の種類および各工程での処理が適正なものとなり、出荷用のガラスロールの高品質化が図られる。
以下、本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法の手順を示すフローチャートである。同図に示すように、ガラスロールの製造方法は、元巻き取り工程A1と、リーダー連結巻き取り工程A2と、リサイズ巻き取り工程A3と、出荷用巻き取り工程A4とを有する。
これらの巻き取り工程A1〜A4では、概ね、次のような処理が実行される。すなわち、元巻き取り工程A1では、成形されつつ搬送されるガラスフィルムを保護シートと共に巻芯の廻りに巻き取ることで、母ガラスロールを作製する。また、リーダー連結巻き取り工程A2では、上述の母ガラスロールを巻き解いて、ガラスフィルムを再び保護シートと共に巻芯の廻りに巻き取る処理と、ガラスフィルムの長手方向両端部にリーダーを連結する処理とを行うことで、リーダー付き母ガラスロールを作製する。さらに、リサイズ巻き取り工程A3では、上述のリーダー付き母ガラスロールを巻き解いて、ガラスフィルムを再び保護シートと共に巻芯の廻りに巻き取りつつ、ガラスフィルムを長手方向に沿って切断して所定幅にすることで、リサイズ済みリーダー付きガラスロールを作製する。加えて、出荷用巻き取り工程A4では、上述のリサイズ済みリーダー付きガラスロールを巻き解いて、ガラスフィルムを再び保護シートと共に巻芯の廻りに巻き取って出荷用に巻き直すことで、出荷用リサイズ済みリーダー付きガラスロールを作製する。
そして、このような四種類の巻き取り工程A1〜A4が実行されることで、最終製品として得られる出荷用のガラスロールすなわち出荷用リサイズ済みリーダー付きガラスロールは、巻きズレが十分に少なく且つ寸法精度も十分に良い高品質なものとなり得る。
以下、これら四種類の巻き取り工程A1〜A4でそれぞれ実行される各処理について、詳細に説明する。
図2は、元巻き取り工程A1が実行されている状況を示す概略正面図である。同図に示すように、この元巻き取り工程A1は、成形装置1で成形されたガラスフィルムGが、切断装置2で所定幅に切断された後に、ガラスフィルム搬送経路の下流端に存する巻き取り位置3で巻き取りを実行するものである。
成形装置1は、本実施形態では、オーバーフローダウンドロー法を実行する。詳述すると、この成形装置1は、上方から順に、成形ゾーン4、徐冷ゾーン5、及び冷却ゾーン6を有する。なお、成形装置1は、スロットダウンドロー法やリドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよく、さらにはフロート法を実行するものであってもよい。
成形ゾーン4では、成形体7の頂部から両側方に溢れ出た溶融ガラスG0をその下端部で融合させて流下させることで、溶融ガラスG0から板状のガラスフィルムGを成形する。この成形されたガラスフィルムGは、徐冷ゾーン5で除歪され、冷却ゾーン6で室温付近まで冷却される。徐冷ゾーン5と冷却ゾーン6とには、複数のローラ群8が配置され、これらローラ群8によってガラスフィルムGの幅方向両端部が下方側に案内される。
成形されたガラスフィルムGは、成形装置1の下方位置で下方から支持する複数の方向変換ローラ群9によって略水平方向に湾曲された後、その姿勢を維持したまま切断装置2に送られる。なお、方向変換ローラ群9は、成形装置1がフロート法を実行するものである場合には適用されない。
切断装置2は、ガラスフィルムGの幅方向両端部に形成された非有効部(耳部)Gxを切断除去する。この非有効部Gxは、ガラスフィルムGの幅方向中央部の有効部Gyに比して相対的に厚肉である。
詳述すると、この切断装置2は、ガラスフィルムGを略水平姿勢で下流側に搬送する搬送手段10と、この搬送手段10上に載置されたガラスフィルムGに、レーザービームLを照射して局部加熱を施す局部加熱手段11と、冷媒Wを噴射する冷却手段12とを備える。そして、搬送手段10でガラスフィルムGを下流側に送りつつ、ガラスフィルムGに局部加熱による膨張と冷媒の冷却による収縮とで熱応力を生じさせ、ガラスフィルムGの非有効部Gxをレーザー割断により除去する。この後、ガラスフィルムGの有効部Gy(以下、ガラスフィルム13という)は、巻き取り位置3に送られて、元巻き取り工程A1が実行される。
元巻き取り工程A1では、シートロール14から連続的に巻き外される保護シート15を、ガラスフィルム13の外周面に重ねながら、巻芯16の廻りに巻き取ることで、母ガラスロール17の製造を進行する。この場合、シートロール14から巻き外された保護シート15は、ローラ(フリーローラ)18によってガラスフィルム13との重ね合わせ位置19に案内される。このローラ18は、保護シート15に張力を付与するテンションローラとしての役割を果たす。
ここで、ガラスフィルム13は、厚みが300μm以下、200μm以下、100μm以下または50μm以下であって、且つ、1μm以上、5μm以上または10μm以上の薄肉ガラスリボンである。また、ガラスフィルム13の幅方向(巻芯16の軸心と平行な方向)の長さは、100mm以上、300mm以上または500mm以上である。ここで説明したガラスフィルム13に関する事項は、以後の工程A2〜A4においても同一である。
一方、保護シート15の厚みは、1000μm以下または500μm以下もしくは300μm以下であって、且つ、10μm以上または20μm以上である。また、保護シート15の幅方向の長さは、ガラスフィルム13の幅方向の長さよりも短くても長くてもよく或いは同一であってもよい。この場合、保護シート15としては、例えば、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロン(登録商標)フィルム(ポリアミドフィルム)、ポリイミドフィルム、セロファンなどの有機樹脂フィルム(合成樹脂フィルム)などを使用することができる。ここで説明した保護シート15に関する事項は、以後の工程A2〜A4において同一である。
この元巻き取り工程A1では、図3に示すように、保護シート15の巻き始め側の始端部15aが、粘着テープあるいは接着テープ等のテープ体20によって巻芯16の外周面16aに固定されている。これに対して、ガラスフィルム13の巻き始め側の始端部13aは、巻芯16に固定されておらず且つ保護シート15にも固定されていない。したがって、ガラスフィルム13が保護シート15と共に母ガラスロール17として巻芯16の廻りにロール状に巻き取られていく過程では、ガラスフィルム13は、保護シート15の内周面15xと外周面15yとの間に挟み込まれるだけの状態となる。
この元巻き取り工程A1では、保護シート15として、樹脂フィルムを使用することが好ましい。このようにすれば、保護シート15に適切な張力を付与させ且つガラスフィルム13に大きな張力を付与させずに、緩みのない母ガラスロール17を作製することができる。この場合の保護シート15の引張弾性率は、1〜5GPaとすることができる。
なお、この元巻き取り工程A1では、ガラスフィルム13の幅方向両端部における切断端面を保護する観点から、保護シート15の幅方向両端部がガラスフィルム13の幅方向両端部から食み出しているが、このような態様に限定されない。すなわち、ガラスフィルム13の幅方向両端部が保護シート15の幅方向両端部から食み出していてもよく、或いは保護シート15の幅方向両端部とガラスフィルム13の幅方向両端部とが揃っていてもよい。ここで説明したガラスフィルム13及び保護シート15の幅方向両端部に関する事項は、以後の工程A2〜A4において同一である。
以上のように、この元巻き取り工程A1では、ガラスフィルム13に巻芯16から直接的に大きな張力が付与されることはない。また、ガラスフィルム13は、保護シート15との関係において連係するものではないため、巻き取り時にガラスフィルム13が不当に拘束されることもない。そのため、ガラスフィルム13(G)が成形装置1により成形されている間に、巻き取り位置3側から悪影響を受け難くなり、これに伴って、ガラスフィルム13(G)の厚みに不当なばらつきが生じ難くなる。しかも、ガラスフィルム13(G)は、搬送手段10上を蛇行しながら搬送されて巻き取り位置3に至る場合があるが、このガラスフィルム13(G)の蛇行は、強制的に修正されない。したがって、これによってもガラスフィルム13(G)の成形が悪影響を受け難くなる。さらに、ガラスフィルム13(G)の蛇行が強制的に修正された場合には、巻き取り時にガラスフィルム13にねじり力等の応力が局部的に作用して損傷や破損等を招く要因にもなり得るが、このような要因は効果的に消失され得る。元巻き取り工程A1では、以上のような優れた作用効果を享受できる代償として、当該工程A1で得られた母ガラスロール17には、大きな巻きズレや切断ズレが生じている。
次に、リーダー連結巻き取り工程A2は、図4に例示する態様のロールtoロール方式を採用して実行される。同図に示すように、このリーダー連結巻き取り工程A2では、巻き解き位置21で、母ガラスロール17を巻き解きつつ、巻き取り位置22で、ガラスフィルム13を再び保護シート23と共に巻芯24の廻りにロール状に巻き取ることで、リーダー付き母ガラスロール25を作製する処理が行われる。この場合、図示の状態では、リーダー付き母ガラスロール25として巻き取られているガラスフィルム13の巻き始め側の始端部13a1に、既にリーダー(以下、巻始側リーダーという)26が連結されている。
詳述すると、図5に示すように、ガラスフィルム13の始端部13a1と、巻始側リーダー26の終端部26bとが、粘着テープや接着テープ等のテープ体(表裏一対のテープ体)27によって連結されている。ガラスフィルム13の幅方向長さと、巻始側リーダー26(後述する巻終側リーダーも同様)の幅方向長さとは同一であって、両者13、26が連結された状態の下では、両者13、26の幅方向両端部がそれぞれ一直線上に沿って延びている。そして、巻始側リーダー26の始端部26aは、巻芯24の外周面24aに、上記と同種特性のテープ体28によって固定されている。この巻始側リーダー26は、巻芯24の軸心と直交する方向に正確に延びるように、巻芯24に固定されている。また、保護シート23の始端部23aは、巻始側リーダー26の外周面26y(内周面でもよい)に、上記と同種特性のテープ体29によって固定されている。なお、巻始側リーダー26(後述する巻終側リーダーも同様)の全長は、図4に示す巻き解き位置21から巻き取り位置22に至る搬送経路の全長よりも長くされていることが好ましい。
ここで、図6は、巻始側リーダー26とガラスフィルム13との好ましい連結構造を示す要部概略平面図である。同図に示すように、この連結構造は、巻始側リーダー26の幅方向長さW1が、ガラスフィルム13の幅方向長さW2よりも短くされた上で、巻始側リーダー26の終端部26bと、ガラスフィルム13の始端部13a1とが、シート状連結体30を介して連結される。詳述すると、シート状連結体30の幅方向長さW3は、巻始側リーダー26の幅方向長さW1よりも短くされる。シート状連結体30の始端部30aは、巻始側リーダー26の終端部26b近傍の表面に、上記と同種特性のテープ体31によって貼着される。また、シート状連結体30の終端部30bは、ガラスフィルム13の始端部13a1近傍の表面に、上記と同種特性のテープ体32によって貼着される。従って、シート状連結体30は、巻始側リーダー26及びガラスフィルム13の一方側の面のみに架け渡された状態となる。そして、巻始側リーダー26、ガラスフィルム13、及びシート状連結体30は、それら全ての幅方向中央(同図に示す中心線M)を基準としてその両側に対称となるように配列される。シート状連結体30は、平面視が矩形をなす樹脂フィルムであることが好ましいが、その平面視形状及び材質は特に限定されない。
なお、図5に示す例では、便宜上、巻始側リーダー26の長手方向中間部における始端部26a側寄り位置に、保護シート23の始端部23aを固定したが、巻始側リーダー26の長手方向中間部における終端部26b側寄り位置に、保護シート23の始端部23aを固定することが好ましい。具体的には、巻始側リーダー26が巻きズレなく巻芯24の廻りに巻き取られたことを確認した後、巻始側リーダー26に保護シート23を固定することが好ましい。このようにすれば、巻始側リーダー26に引きつられて保護シート23も巻きズレなく巻き取られるのみならず、保護シート23を短くしてその使用量を削減する等の利点も得られる。
また、この保護シート23としては、母ガラスロール17の保護シート15と同一種類の樹脂フィルムを使用してもよく、あるいは、母ガラスロール17の保護シート15よりも張力に対する伸縮量が小さい樹脂フィルムを使用してもよい。
このような巻芯24の周辺構造を有するリーダー付き母ガラスロール25を作製する態様を、図4に基づいてさらに詳細に説明する。同図に示すように、巻き解き位置21で母ガラスロール17から巻き解かれたガラスフィルム13は、テンションローラとしての役割を果たす複数のローラ33によって案内されながら、巻き取り位置22に送られる。この場合、巻き解き位置21では、ガラスフィルム13が保護シート15から離反し、その保護シート15がシートロール34として巻き取られていく。一方、巻き取り位置22では、保護シート23が常に最外層となるように、ガラスフィルム13の外周面に、新たなシートロール35から巻き外された保護シート23が重ねられつつ、巻芯24の廻りに巻き取られていく。
そして、巻き取り位置22において、ガラスフィルム13の巻き取り長さが所定長さに達した時点で、図示しない切断装置によってガラスフィルム13を幅方向に切断する。この後、ガラスフィルム13の切断端部と、その巻き終わり側に配置される図外のリーダー(以下、巻終側リーダーという)の始端部とに、上記と同種特性のテープ体を貼着することで、この両者を連結する。この場合の巻終側リーダーとガラスフィルム13との連結構造は、上述の図6に示す態様と同一であることが好ましい。そして、この巻終側リーダーもガラスフィルム13に引き続いて巻芯24の廻りに巻き取る。なお、この巻き取り位置22で、保護シート23の巻き取り長さが所定長さに達した場合には、その幅方向に切断するが、保護シート23は、ガラスフィルム13の最外周面を全て覆うような長さであればよい。詳しくは、保護シート23の終端部は、ガラスフィルム13の終端部に揃うか或いは当該終端部から食み出していてもよく、当該終端部から食み出していれば、さらに巻終側リーダーの終端部から食み出していてもよく或いは食み出していなくてもよい。
以上のように、このリーダー連結巻き取り工程A2では、ガラスフィルム13に連結された巻始側リーダー26の始端部26aが巻芯24に固定され、保護シート23の始端部23aが巻始側リーダー26の長手方向中間部に固定されるため、ガラスフィルム13の巻き取り動作が正確に拘束される。したがって、ガラスフィルム13の巻き取り位置22への送りは、巻芯24の軸心と直交する正確な経路に沿うように誘導されると共に、ガラスフィルム13に適切な張力を作用させることが可能となる。その結果、母ガラスロール17に生じていた大きな巻きズレを修正するための初回の動作が適正に行われる。
次に、リサイズ巻き取り工程A3は、図7に例示する態様のロールtoロール方式を採用して実行される。同図に示すように、このリサイズ巻き取り工程A3では、巻き解き位置36で、リーダー付き母ガラスロール25を巻き解きつつ、リサイズ位置37で、ガラスフィルム13をリサイズした後、巻き取り位置38で、リサイズ済みのガラスフィルム46を再び保護シート39と共に巻芯40の廻りにロール状に巻き取ることで、リサイズ済みリーダー付きガラスロール41を作製する処理が行われる。巻き解き位置36と巻き取り位置38とでは、既述のリーダー連結巻き取り工程A2と基本的に同一の処理が行われるため、両工程A2、A3につき共通する処理については、その詳細な説明を省略する。
リサイズ位置37に設置されているリサイズ装置42は、既述の切断装置2と同様に、搬送手段43と、局部加熱手段44と、冷却手段45とを備え、搬送手段43でガラスフィルム13を下流側に送りつつ、ガラスフィルム13に熱応力を生じさせる。これによって、ガラスフィルム13の幅方向両端部の不要部がレーザー割断で除去されて、ガラスフィルム13の幅が所定幅にリサイズされる。この後、リサイズ済みのガラスフィルム46は、巻き取り位置38に送られて、リサイズ巻き取り工程A3が実行される。この場合にも、図示の状態では、リサイズ済みリーダー付きガラスロール41として新たな保護シート39と共に巻き取られているガラスフィルム46に、既に巻始側リーダー47が連結されている。なお、この場合も、巻始側リーダー47(巻終側リーダーも同様)の全長は、図7に示す巻き解き位置36から巻き取り位置38に至る搬送経路の全長よりも長くされていることが好ましい。
詳述すると、ここでのガラスロール41の巻き始めにおいては、巻始側リーダー47とリサイズ前のガラスフィルム13とが連結された状態となっているが、その状態での両者47、13の連結構造は、上述の図6に示す態様と同一であることが好ましい。すなわち、図6に示すように、リサイズ前のガラスフィルム13は、その幅方向両端部の割断予定線Xに沿ってレーザー割断されることで、リサイズ済みのガラスフィルム46となる。このリサイズ済みのガラスフィルム46の幅方向長さWcは、巻始側リーダー47の幅方向長さW1と同一もしくは略同一となる。この場合、巻始側リーダー47とガラスフィルム13(46)とは、幅方向長さが最も短いシート状連結体48を介して連結されている。そのため、巻始側リーダー47の終端部47bと、ガラスフィルム13(46)の始端部13a1(46a1)との間には、十分な隙間が存在する。この隙間が有効利用されて既述のレーザー割断が開始される。従って、円滑且つ確実なレーザー割断が可能となる。ここでの工程A3で得られるガラスロール41の巻始側リーダー47は、直前の工程A2で得られたガラスロール25の巻終側リーダーを共用するものであってもよい。
なお、巻始側リーダー47の巻芯40に対する取付構造、及び巻始側リーダー47に対する新たな保護シート39の取付構造は、上述の図5に示す態様と同一である。そこで、両工程A2、A3につき共通の構成要素の主要部については、図5に括弧付き符号を付して、ここではその詳細な説明を省略する。
以上のように、このリサイズ巻き取り工程A3では、上述のリーダー連結巻き取り工程A2と同様に、巻始側リーダー47の始端部47aが巻芯40に固定され、保護シート39の始端部39aが巻始側リーダー47の長手方向中間部に固定されるため、上述のリーダー連結巻き取り工程A2で大きな巻きズレが修正されている事と相俟って、リサイズ済みのガラスフィルム46の巻き取り位置3への送りは、さらに正確な経路に沿うように誘導される。その結果、母ガラスロール17に生じていた大きな巻きズレを修正するための二回目の動作がさらに適正に行われるのみならず、母ガラスロール17のガラスフィルム13に生じていた大きな切断ズレを消失させつつ、ガラスフィルム13を所要の幅に正確に切断(リサイズ)して、寸法精度の良いリサイズ済みのガラスフィルム46を得ることが可能となる。
次に、出荷用巻き取り工程A4について説明するが、この工程A4は、既述の図4に例示する態様と同一のロールtoロール方式を採用して実行されるため、このロールtoロール方式に係る態様の説明は、ここでは省略する。
この出荷用巻き取り工程A4では、図8に示すように、リサイズ済みのガラスフィルム46の始端部46aと、巻始側リーダー49の終端部49bとが一対のテープ体50によって連結されているが、この巻始側リーダー49は、既述のリサイズ巻き取り工程A3で巻終側リーダーとして使用されていたものをそのまま使用してもよく、新たな巻始側リーダーと取り替えてもよい。さらに、同図に示すように、巻始側リーダー49の始端部49aは、巻芯51の外周面51aに、上記と同種特性のテープ体52によって固定されると共に、保護シート53の始端部53aも、巻芯51の外周面51aに、上記と同種特性のテープ体54によって固定されている。この場合、保護シート53は、巻始側リーダー49の始端部49aを覆い越えた状態で巻芯51の外周面51aに固定されているが、保護シート53の始端部53aと巻始側リーダー49の始端部49aとは、同一箇所でそれぞれテープ体52、54によって巻芯51の外周面51aに固定されていることが好ましい。また、ガラスフィルム46の終端部は、図外の巻終側リーダーの始端部にテープ体によって連結されているが、この巻終側リーダーも、既述のリサイズ巻き取り工程A3で巻始側リーダーとして使用されていたものをそのまま使用してもよく、新たな巻終側リーダーと取り替えてもよい。
以上のように、この出荷用巻き取り工程A4では、巻始側リーダー49に加えて保護シート53も巻芯51に固定されているため、巻芯51の巻き取り力が、保護シート53に直接伝達される。そのため、保護シート53からガラスフィルム46により一層確実に張力を作用させることができ、これに伴って、より一層適正に巻き直された出荷用のガラスロール55を得ることができる。
したがって、既述の前工程A1〜A3が実行された後に、この出荷用巻き取り工程A4が実行されることによって、ガラスフィルム46に巻始側リーダー49及び巻終側リーダーが連結されると共に、巻始側リーダー49が巻芯51に固定され且つ保護シート53が巻芯51に固定された状態で、ガラスフィルム46が保護シート53と共に巻芯51の廻りにロール状に巻かれた高品質の出荷用ガラスロール55が得られる。
この場合、出荷用巻き取り工程A4では、上述のリーダー連結巻き取り工程A2及びリサイズ巻き取り工程A3と同様に(既述の図5に示す態様と実質的に同様に)、巻始側リーダー49の始端部49aを、巻芯51の外周面51aにテープ体52によって固定し、且つ、保護シート53の始端部53aを、巻始側リーダー49の長手方向中間部の外周面(内周面でもよい)にテープ体54によって固定してもよい。
このようにすれば、ガラスフィルム46に巻始側リーダー49及び巻終側リーダーが連結されると共に、巻始側リーダー49が巻芯51に固定され且つ保護シート53が巻始側リーダー49に固定された状態で、ガラスフィルム46が保護シート53と共に巻芯51の廻りにロール状に巻かれた高品質の出荷用ガラスロール55が得られる。
図9は、本発明の他の実施形態に係るガラスロールの製造方法の実施状況を例示するものであって、各工程のうちの出荷用巻き取り工程A4の実施状況を例示している。その他の工程A1〜A3については、既述の実施形態に係るガラスロールの製造方法と実施状況が同一であるので、その図示及び説明を省略する。
同図に示すように、当該他の実施形態に係る出荷用巻き取り工程A4では、ラミネート用フィルム56の粘着面を有する一方の面56xを、リサイズ済みのガラスフィルム46の一方の面46xに貼着しつつ巻き取り位置57に送ると共に、巻き取り位置57で、保護シート53を、ラミネート用フィルム56の他方の面56yとガラスフィルム46の他方の面46yとの間に介装しながら巻き取りを実行する。この場合、ガラスフィルム46に巻始側リーダー49及び巻終側リーダーが連結されている点と、巻始側リーダー49の始端部49aが巻芯51の外周面51aに固定されている点とについては、既述の実施形態で説明した事項と同一であるので、ここでは共通する構成要素に同一符号を使用して、その図示及び説明を省略する。そして、この工程A4では、保護シート53が巻芯51に固定されずにガラスフィルム46とラミネート用フィルム56との間に介装されているだけである。このようにすれば、保護シート53の使用量を削減した上で、巻きズレや巻き締りを防止できるという利点が得られる。なお、この工程A4においては、既述の実施形態と同様に、保護シート53の始端部53aを、巻始側リーダー49の始端部49aと共に、巻芯51の外周面51aに固定するようにしてもよい。なお、ラミネート用フィルム56は、一方の面56xだけでなく他方の面56yも粘着面を有していてもよい。
そして、この出荷用巻き取り工程A4が実行されることによって、ガラスフィルム46に巻始側リーダー49及び巻終側リーダーが連結され、ガラスフィルム46の一方の面46xにラミネート用フィルム56が貼着されると共に、巻始側リーダー49が、巻芯51に固定され、且つ、保護シート53が、巻芯51に固定されずにガラスフィルム46の他方の面46yとラミネート用フィルム56との間に介装された状態で、ガラスフィルム46が保護シート53と共に巻芯51の廻りにロール状に巻かれた高品質の出荷用ガラスロール58が得られる。
なお、以上の実施形態では、リーダー連結巻き取り工程A2、リサイズ巻き取り工程A3及び出荷用巻き取り工程A4で、図4及び図7に示すように多数のローラ33を使用してガラスフィルム13の搬送経路が遠周りする態様としたが、ローラ33の個数を少数にするなどして、ガラスフィルム13を遠周りさせずに搬送するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、出荷用巻き取り工程A4で、巻始側リーダー49(及び巻終側リーダー)とリサイズ済みのガラスフィルム46との連結構造にシート状連結体を用いていないが、必要に応じてシート状連結体を用いるようにしてもよい。