〔実施形態1〕
本発明の実施形態1におけるスイッチ1Aについて、図1〜図6を参照しながら詳細に説明する。
(スイッチ1Aの構成)
スイッチ1Aの構成について、図1〜図5を参照しながら説明する。
図1は、スイッチ1Aの外観を示す斜視図である。図2は、スイッチ1Aの構成を示す分解斜視図である。以降の説明では、図1における+x方向を前方向、−x方向を後方向、+y方向を右方向、−y方向を左方向、+z方向を上方向、−z方向を下方向として説明する。
図1および図2に示すように、スイッチ1Aは、ケース2と、ベース3と、押ボタン(操作部材)4と、防水・防塵用のゴムキャップ5と、ゴムキャップ5をケース2に固定するためのキャップホルダー6と、コイルばね7と、第1固定端子8と、第2固定端子9と、摺動子10とを備えている。
ケース2は、略直方体状の第1部材2aと、第1部材2aの側面2cから右方向に突出する第2部材2bとによって構成されている。ケース2は、後述するベース3の側壁3aとともに、スイッチ1Aの筐体を構成する。
第1部材2aは、図2に示すように、内部に空洞が形成されており、側面2cと対向する面に開口部2dが形成されている。第1部材2aの上面には、後述する押ボタン4が挿入される挿入孔2eと、挿入孔2eの周囲に設けられゴムキャップ5およびキャップホルダー6をケース2にそれぞれ取り付けるための第1凹部2fおよび第2凹部2gとが形成されている。
第2部材2bには、スイッチ1Aが搭載される装置にスイッチ1Aを取り付けるための取付孔2hが形成されている。また、第1部材2aの前面には、上記装置に対するスイッチ1Aの取付位置を規定するための環状の突起2iが形成されている。
ベース3は、図2に示すように、側壁3aと、基部3bとを備えている。ベース3は、樹脂によって形成されており、絶縁性を有している。
側壁3aは、平板形状になっており、ケース2の開口部2dを塞ぐことにより、ケース2とともにスイッチ1Aの筐体を構成する。側壁3aの下部には、上下方向に沿って並ぶ2つの端子孔3aa・3abが形成されている。
基部3bは、ケース2および側壁3aによって構成される筐体の内部に収納されている板状体である。基部3bは、後述する第1固定端子8および第2固定端子9の大部分を内部に収納しており、第1固定端子8および第2固定端子9を支持している。
図3は、スイッチ1Aにおける、摺動子10およびベース3の基部3bの上部の斜視図である。図4は、スイッチ1Aにおける、摺動子10およびベース3の基部3bの上部の正面図である。図3および図4に示すように、基部3bの上部中央には、上方に突出する円柱形リブ3dが形成されている。また、基部3bの上部には、円柱形リブ3dを挟んで右側(+Y方向側)に、上方に向かって突出する突出部3eおよび突出部3fが形成されており、円柱形リブ3dを挟んで左側(−Y方向側)に、上方に向かって突出する突出部3gおよび3hが形成されている。
図5は、図4におけるA−A線矢視断面図である。図5に示すように、突出部3hの上面には、段差が形成されている。これにより、突出部3hの前面3haの上端が、突出部3hの後面3hbの上端よりも上方に位置するようになっている。なお、図示していないが突出部3fの上面は、段差は形成されておらず、平面になっている。
押ボタン4は、凹部が形成された台座4aと、台座4aから上方に延在する円柱形の被押圧部4bとを備えている。被押圧部4bは、上下方向に移動可能となるように、ケース2の内部に配設されている。被押圧部4bの上端部は、ケース2の挿入孔2e、およびゴムキャップ5に形成された貫通孔を介してケース2から上方に突出している。押ボタン4は、被押圧部4bをレバーなどにより外部から押圧されることにより、上下方向に移動できるようになっている。
第1固定端子8は、金属で形成されており、導電性を有している。第1固定端子8は、上下方向に延びる第1摺動子接続用端子部8aと、上下方向に垂直な面を有する外部端子接続用端子部8bと、第1摺動子接続用端子部8aおよび外部端子接続用端子部8bを接続する接続部8cとを備えている。
第1摺動子接続用端子部8aは、接続部8cから上方に延びる埋設部8dと、埋設部8dから右方向に向かって延設されている第1被摺動部8eとによって構成されている。埋設部8dは、ベース3の突出部3eの内部に埋設されている。第1被摺動部8eは、ベース3の突出部3eからベース3の外部に突出しており、下面がベース3の突出部3fの上面と当接している。第1被摺動部8eの前面と突出部3hの前面とは、同一平面上に存在している。同様に、第1被摺動部8eの後面と突出部3hの後面とは、同一平面上に存在している。
第1固定端子8の第1被摺動部8eは、押ボタン4が押圧されていない状態から押ボタン4が完全に押圧されるまでの間、後述する摺動子10の接触部12abおよび接触部12bbが、第1被摺動部8eの前面および後面にそれぞれ接触できるように、上下方向に延びている。これにより、摺動子10と第1固定端子8とは、常に電気的に接続されている状態となっている。すなわち、第1被摺動部8eの前面および後面は、スイッチ1Aにおいて、コモン固定接点部として機能する。
外部端子接続用端子部8bの一部は、ベース3の側壁3aに形成されている端子孔3aaを介してスイッチ1Aから露出しており、図示しない外部端子(外部回路)と接続される。
第2固定端子9は、金属で形成されており、導電性を有している。第2固定端子9は、上下方向に延びる第2摺動子接続用端子部9aと、上下方向に垂直な面を有する外部端子接続用端子部9bと、第2摺動子接続用端子部9aおよび外部端子接続用端子部9bを接続する接続部9cとを備えている。第2摺動子接続用端子部9aは、接続部9cから上方に延びる埋設部9dと、埋設部9dから左方向に向かって延設されている第2被摺動部9eとによって構成されている。埋設部9dは、ベース3の突出部3gの内部に収納されている。第1被摺動部8eは、ベース3の突出部3gからベース3の外部に突出している。
図5に示すように、第2被摺動部9eの下面の前後方向の中央には、YZ平面に平行な段差が形成されている。これにより、第2被摺動部9eの後面9ebの下端が第2被摺動部9eの前面9eaの下端よりも下方になっている。第2被摺動部9eの下面に形成された段差と、突出部3hの上面に形成された段差とが係合して第2被摺動部9eの下面と突出部3hの上面とが当接している。
第2被摺動部9eの前面9eaと突出部3hの前面3haとは、同一平面上に存在している。同様に、第2被摺動部9eの後面9ebと突出部3hの後面3hbとは、同一平面上に存在している。
導電性を有する第2被摺動部9eの前面9ea(第1導通領域)、および絶縁性を有する突出部3hの前面3ha(第1絶縁領域)は、スイッチ1Aにおいて、第1常閉固定接点部C1として機能する。また、導電性を有する第2被摺動部9eの後面9eb(第2導通領域)、および絶縁性を有する突出部3hの後面3hb(第2絶縁領域)は、スイッチ1Aにおいて、第2常閉固定接点部C2として機能する。第1常閉固定接点部C1と、第2常閉固定接点部C2とによって、スイッチ1Aにおける常閉固定接点部(開閉接点部)が構成されている。
外部端子接続用端子部9bの一部は、ベース3の側壁3aに形成されている端子孔3abを介してスイッチ1Aから露出しており、図示しない外部端子(外部回路)と接続される。
摺動子10は、導電性を有する金属板を折り曲げて形成されており、導電性を有している。摺動子10は、図2および図3に示すように、連結部11と、可動接点部12・13とを備えている。連結部11の右端に可動接点部12が形成されており、連結部11の左端に可動接点部13が形成されている。
可動接点部12は、図3に示すように、第1可動接触部12aと第2可動接触部12bとを備えており、第1可動接触部12aと第2可動接触部12bとによって第1固定端子8の第1被摺動部8e(上記のコモン固定接点部)を挟むクリップを構成している。第1可動接触部12aは、連結部11の左端から下方に向かって延びるアーム部12aaと、アーム部12aaの先端に設けられ、第1被摺動部8eの前面に接触する接触部12abとを備えている。同様に、第2可動接触部12bは、連結部11の左端から下方に向かって延びるアーム部12baと、アーム部12baの先端に設けられ、第1被摺動部8eの後面に接触する接触部12bbとを備えている。接触部12abと接触部12bbとは、上下方向における同じ位置において、第1被摺動部8eに接触する。
可動接点部13は、図3〜図5に示すように、第1可動接触部13aと第2可動接触部13bとを備えており、第1可動接触部13aと第2可動接触部13bとによって上記の常閉固定接点部を挟むクリップを構成している。第1可動接触部13aは、連結部11の右端から下方に向かって延びるアーム部13aaと、アーム部13aaの先端に設けられ、第1常閉固定接点部C1を摺動する接触部(第1摺動部)13abとを備えている。同様に、第2可動接触部13bは、連結部11の右端から下方に向かって延びるアーム部13baと、アーム部13baの先端に設けられ、第2常閉固定接点部C2を摺動する接触部(第2摺動部)13bbとを備えている。接触部13abおよび接触部13bbは、上下方向における同じ位置において、第1常閉固定接点部C1および第2常閉固定接点部C2にそれぞれ接触する。
連結部10aは、押ボタン4の台座4aに保持されている。これにより、押ボタン4が下方に押圧されると、当該押圧に連動して押ボタン4の台座4aが摺動子10の連結部11を下方に押圧し、摺動子10が下方に移動する。
コイルばね7は、ベース3と、摺動子10との間に配置される弾性体である。コイルばね7は、ケース2内において、上端が摺動子10の連結部11に当接しており、下端がベース3の円柱形リブ3dが挿入されている。これにより、コイルばね7は、摺動子10の連結部11に対して上向きの力を付勢する。
(スイッチ1Aの動作)
次に、本実施形態におけるスイッチ1Aの動作について、図6を参照しながら説明する。
図6は、スイッチ1Aの動作を示すものであり、(a)は接触部13abが第2被摺動部9eの前面9eaに接触し、かつ接触部13bbが第2被摺動部9eの後面9ebに接触している状態を示す図であり、(b)は接触部13abが突出部3hの前面3haに接触し、かつ接触部13bbが第2被摺動部9eの後面9ebに接触している状態を示す図であり、(c)は接触部13abが突出部3hの前面3haに接触し、かつ接触部13bbが突出部3hの後面3hbに接触している状態を示す図である。
<開動作>
まず、スイッチ1Aの開動作について説明する。
スイッチ1Aにおける開動作を行う前には、図6の(a)に示すように、摺動子10がコイルばね7に付勢されており、摺動子10が上方の初期位置(以降では、第1位置とも呼称する)に位置している。この状態においては、第1可動接触部13aの接触部13abが第2被摺動部9eの前面9eaに接触し、また第2可動接触部13bの接触部13bbが第2被摺動部9eの後面9ebに接触している。このため、第2固定端子9と摺動子10とが電気的に接続されており、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態(すなわち、スイッチ1Aが導通状態)となっている。
次に、外部から押ボタン4の被押圧部4bを押圧する。これにより、摺動子10が押ボタン4により押圧され、コイルばね7の付勢力に抗して下方に移動する。摺動子10が下方に移動すると、図6の(b)に示すように、摺動子10は、接触部13abが突出部3hの前面3haに接触し第2被摺動部9eの前面9eaから離れる位置(以降では、第2位置と呼称する)に移動する。摺動子10が第2位置に移動しても、接触部13bbが第2被摺動部9eの後面9ebと接触しているので、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態(すなわち、スイッチ1Aが導通状態)となっている。
次に、押ボタン4の被押圧部4bをさらに押圧する。これにより、摺動子10がさらに下方に移動し、図6の(c)に示すように、摺動子10は、接触部13bbが突出部3hの後面3hbに接触し第2被摺動部9eの後面9ebから離れる位置(以降では、第3位置と呼称する)に移動する。摺動子10が第3位置にあるときには、接触部13abが突出部3hの前面3haに接触し、かつ接触部13bbが突出部3hの後面3hbに接触した状態となる。その結果、第2固定端子9と摺動子10との電気的接続が遮断され、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電していない状態(すなわち、スイッチ1Aが絶縁状態)となる。
さらに、押ボタン4の被押圧部4bを押圧すると、摺動子10はがさらに下方に移動する。この間においては、接触部13abが突出部3hの前面3haを摺動し、接触部13bbが突出部3hの後面3hbを摺動する。以上により、スイッチ1Aの開動作が完了する。以降では、押ボタン4が十分に押し込まれ、開動作が完了する位置を第4の位置とする。
<閉動作>
次に、スイッチ1Aの閉動作について説明する。
スイッチ1Aの閉動作を行う前には、押ボタン4の被押圧部4bが下方に押し込まれた状態となっている(すなわち、第4の位置に位置している)。すなわち、接触部13abが突出部3hの前面3haに接触し、接触部13bbが突出部3hの後面3hbと接触した状態となっており、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電していない状態となっている。
この状態において、押ボタン4の被押圧部4bへの押圧力を解除する。これにより、被押圧部4bによる摺動子10への下方への押圧が解除されるので、摺動子10はコイルばね7の付勢力により上方に移動する。
摺動子10が上方に移動すると、図6の(b)に示すように、まず、摺動子10は、接触部13bbが第2被摺動部9eの後面9ebと接触し突出部3hの後面3hbから離れる位置(第2位置)へ移動する。摺動子10が第2位置に移動すると、接触部13bbが第2被摺動部9eの後面9ebと接触するので、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電状態(すなわち、スイッチ1Aが導通状態)となる。
さらに摺動子10が上方に移動すると、接触部13abが第2被摺動部9eの前面9eaに接触し突出部3hの前面3haから離れる。そして、さらに摺動子10が上方に移動すると、図6の(a)に示すように、摺動子10は、初期位置(第1位置)に移動する。以上により、スイッチ1Aの閉動作が完了する。
(スイッチ1Aの特徴)
一般的に、大きい電流(例えば、数百mA以上の電流)を開閉するスイッチでは、導通状態と絶縁状態とが切り替わる際に、スイッチの接触点にアーク放電が発生する。アーク放電が発生すると、アーク放電により接触点が高温になり、端子が融解してしまい、端子が消耗するという問題点がある。
そこで、本実施形態のスイッチ1Aでは、上述したように、常閉固定接点部の前面(表面)である第1常閉固定接点部C1は、摺動子10が押ボタン4によって押圧されて初期位置(第1位置)から移動する方向へ向かって順に、第2被摺動部9eの前面9eaおよび突出部3hの前面3haとなっている。また、常閉固定接点部の後面(裏面)である第2常閉固定接点部C2は、摺動子10が押ボタン4によって押圧されて初期位置(第1位置)から移動する方向へ向かって順に、第2被摺動部9eの後面9ebおよび突出部3hの後面3hbとなっている。そして、摺動子10が移動する方向(Z軸方向)において、第2被摺動部9eの後面9ebと突出部3hの後面3hbとの境界の位置が、第2被摺動部9eの前面9eaと突出部3hの前面3haとの境界の位置よりも下方になっている。これにより、摺動子10が移動する間において、接触部13abが第2被摺動部9eの前面9eaと突出部3hの前面3haとの境界に到達するタイミングと、接触部13bbが第2被摺動部9eの後面9ebと突出部3hの後面3hbとの境界に達するタイミングとが異なっている。
上記の構成により、スイッチ1Aの開動作における導通状態と絶縁状態とが切り替わる位置は、第2被摺動部9eの後面9ebと突出部3hの後面3hbとの境界となる。その結果、スイッチ1Aの開動作において、常閉固定接点部の第2常閉固定接点部C2側において、アーク放電が発生するようになっている。
また、スイッチ1Aの閉動作における導通状態と絶縁状態とが切り替わる位置は、第2被摺動部9eの後面9ebと突出部3hの後面3hbとの境界となる。その結果、スイッチ1Aの閉動作においても、常閉固定接点部の第2常閉固定接点部C2側において、アーク放電が発生するようになっている。
以上のように、スイッチ1Aでは、開動作および閉動作の両方において、常閉固定接点部の第2常閉固定接点部C2側でアーク放電が発生するようになっている。すなわち、接触部13abが第1常閉固定接点部C1における導通と絶縁とを切り替える位置(すなわち、第2被摺動部9eの前面9eaと突出部3hの前面3haとの境界)にあるときには、接触部13bbが第2被摺動部9eの後面9ebに接触しており、摺動子10と第2固定端子9とが同電位となっている。そのため、第1常閉固定接点部C1において、アーク放電が発生しない。その結果、第1常閉固定接点部C1および第1可動接触部13aの接触部13abがアーク放電により消耗することを防ぐことができるようになっている。また、アーク放電によって発生する消耗粉は、接点の導通または絶縁を妨げ得る。しかしながら、スイッチ1Aでは、アーク放電によって発生する消耗粉が第2常閉固定接点部C2側のみで発生するため、消耗粉が第2常閉固定接点部C2側の反対側である第1常閉固定接点部C1側に移動しにくい。それゆえ、スイッチ1Aが導通不良および絶縁不良になることを防ぐことができる。このため、従来のスイッチに比べて、高い電流を開閉できるとともに、安定して導通状態および絶縁状態を維持できるようになっている。
また、スイッチ1Aは、1つの第2被摺動部9eと、第2被摺動部9eを挟む1つの可動接点部13とにより、接触部13abにアーク放電を生じさせない構成を実現している。それゆえ、スイッチ1Aは、簡易な構成で、耐久性および信頼性が高いスイッチとなっている。
<変形例1>
次に、実施形態1のスイッチ1Aの変形例としてのスイッチ1Bについて、図7および図8を参照しながら説明する。
本変形例におけるスイッチ1Bは、スイッチ1Aにおける摺動子10の可動接点部13に代えて可動接点部14を、スイッチ1Aにおける第2固定端子9の第2被摺動部9eに代えて第2被摺動部9fを、スイッチ1Aにおけるベース3の突出部3hに代えて突出部3iを備えている。
図7は、スイッチ1Bの摺動子10および常閉固定接点部の断面図である。図7に示すように、ベース3の突出部3iの上面は平面となっており、第2被摺動部9fの下面は平面となっている。そして、上下方向に垂直な平面(XY平面に平行な平面)において、突出部3iの上面と第2被摺動部9fの下面とが当接している。
導電性を有する第2被摺動部9fの前面9fa(第1導通領域)、および絶縁性を有する突出部3iの前面3ia(第1絶縁領域)は、スイッチ1Bにおいて、第1常閉固定接点部C3として機能する。また、導電性を有する第2被摺動部9fの後面9fb(第2導通領域)、および絶縁性を有する突出部3iの後面3ib(第2絶縁領域)は、スイッチ1Bにおいて、第2常閉固定接点部C4として機能する。第1常閉固定接点部C3と、第2常閉固定接点部C4とによって、スイッチ1Bにおける常閉固定接点部(開閉接点部)が構成されている。
可動接点部14は、図7に示すように、第1可動接触部14aと第2可動接触部14bとを備えており、第1可動接触部14aと第2可動接触部14bとによって、上記の常閉固定接点部を挟むクリップを構成している。第1可動接触部14aは、連結部11の右端から下方に向かって延びるアーム部14aaと、アーム部14aaの先端に設けられ、第1常閉固定接点部C3を摺動する接触部(第1摺動部)14abとを備えている。同様に、第2可動接触部14bは、連結部11の右端から下方に向かって延びるアーム部14baと、アーム部14baの先端に設けられ、第2常閉固定接点部C4を摺動する接触部(第2摺動部)14bbとを備えている。
スイッチ1Bでは、第1可動接触部14aのアーム部14aaの長さが、第2可動接触部14bのアーム部14baの長さよりも長く形成されている。これにより、上下方向において、接触部14abが第1常閉固定接点部C3を摺動する位置が、接触部14bbが第2常閉固定接点部C4を摺動する位置よりも下方になっている。
(スイッチ1Bの動作)
次に、本変形例におけるスイッチ1Bの動作について、図8を参照しながら説明する。
図8は、スイッチ1Bの動作を示すものであり、(a)は接触部14abが第2被摺動部9fの前面9faに接触し、かつ接触部14bbが第2被摺動部9fの後面9fbに接触している状態を示す図であり、(b)は接触部14abが突出部3iの前面3iaに接触し、かつ接触部14bbが第2被摺動部9fの後面9fbに接触している状態を示す図であり、(c)は接触部14abが突出部3iの前面3iaに接触し、かつ接触部14bbが突出部3iの後面3ibに接触している状態を示す図である。
<開動作>
まず、スイッチ1Bの開動作について説明する。
スイッチ1Bにおける開動作を行う前には、図8の(a)に示すように、摺動子10がコイルばね7に付勢されており、摺動子10が上方の初期位置に位置している。この状態においては、第2固定端子9と摺動子10とが電気的に接続されており、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態(すなわち、スイッチ1Bが導通状態)となっている。
次に、外部から押ボタン4の被押圧部4bを押圧する。これにより、摺動子10が押ボタン4により押圧され、コイルばね7の付勢力に抗して下方に移動する。摺動子10が下方に移動すると、図8の(b)に示すように、摺動子10は、第1可動接触部14aの接触部14abが突出部3iの前面3iaに接触し第2被摺動部9fの前面9faから離れる位置(第2位置)に移動する。摺動子10が第2位置に移動しても、第2可動接触部14bの接触部14bbが第2被摺動部9fの後面9fbと接触しているので、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態(すなわち、スイッチ1Bが導通状態)となっている。
次に、押ボタン4の被押圧部4bをさらに押圧する。これにより、摺動子10がさらに下方に移動し、図8の(c)に示すように、摺動子10は、接触部14bbが突出部3iの後面3ibに接触し第2被摺動部9fの後面9fbから離れる位置(第3位置)に移動する。摺動子10が第3位置にあるときには、接触部14abが突出部3iの前面3iaに接触し、かつ接触部14bbが突出部3iの後面3ibに接触した状態となる。その結果、第2固定端子9と摺動子10との電気的接続が遮断され、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電していない状態(すなわち、スイッチ1Bが絶縁状態)となる。
さらに、押ボタン4の被押圧部4bを押圧すると、摺動子10はがさらに下方に移動する。この間においては、接触部14abが突出部3iの前面3iaを摺動し、接触部14bbが突出部3iの後面3ibを摺動する。以上により、スイッチ1Aの開動作が完了する。以降では、押ボタン4が十分に押し込まれ、開動作が完了する位置を第4の位置とする。
<閉動作>
次に、スイッチ1Bの閉動作について説明する。
スイッチ1Bの閉動作を行う前には、押ボタン4の被押圧部4bが下方に押しこまれた状態となっている(すなわち、第4の位置に位置している)。すなわち、接触部14abが突出部3iの前面3iaに接触し、接触部14bbが突出部3iの後面3ibと接触した状態となっており、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電していない状態となっている。
この状態において、押ボタン4の被押圧部4bへの押圧力を解除する。これにより、摺動子10はコイルばね7の付勢力により上方に移動する。
摺動子10が上方に移動すると、図8の(b)に示すように、摺動子10は、接触部14bbが第2被摺動部9fの後面9fbと接触し突出部3iの後面3ibから離れる位置(第2位置)へ移動する。摺動子10が第2位置に移動すると、接触部14bbが第2被摺動部9fの後面9fbと接触するので、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電状態(すなわち、スイッチ1Bが導通状態)となる。
さらに摺動子10が上方に移動すると、接触部14abが第2被摺動部9fの前面9faに接触し突出部3iの前面3iaから離れる。そして、さらに摺動子10が上方に移動すると、図8の(a)に示すように、摺動子10は、初期位置(第1位置)に移動する。以上により、スイッチ1Bの閉動作が完了する。
以上のように、スイッチ1Bでは、開動作および閉動作において、スイッチ1Bの導通状態と絶縁状態とが切り替わる位置は、第2被摺動部9fの後面9fbと突出部3iの後面3ibとの境界となる。したがって、開動作および閉動作の両方において、常閉固定接点部の第2常閉固定接点部C4側でアーク放電が発生する。すなわち、接触部14abが第1常閉固定接点部C3における導通と絶縁とを切り替える位置(すなわち、第2被摺動部9fの前面9faと突出部3iの前面3iaとの境界)にあるときには、接触部14bbが第2被摺動部9fの後面9fbに接触しており、摺動子10と第2固定端子9とが同電位となっている。そのため、第1常閉固定接点部C3において、アーク放電が発生しない。その結果、第1常閉固定接点部C3および第1可動接触部14aの接触部14abがアーク放電により消耗することを防ぐことができる。また、第2常閉固定接点部C4側においてアーク放電により発生した消耗粉が第2常閉固定接点部C4側の反対側である第1常閉固定接点部C3側に移動しにくい。それゆえ、スイッチ1B導通不良および絶縁不良になることを防ぐことができる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図9〜11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
本実施形態におけるスイッチ1Cは、スイッチ1Aにおける第2固定端子9の第2被摺動部9eに代えて第2被摺動部9gを、スイッチ1Aにおけるベース3の突出部3hに代えて突出部3jを備えている。
図9は、スイッチ1Cにおける、摺動子10およびベース3の基部3bの上部の正面図である。図10は、図9のA−A線矢視断面図である。
突出部3jは、図9に示すように、突出部3gの上部において、突出部3gから左方向へ突出している。また、図10に示すように、突出部3jの下面の前後方向の中央には、YZ平面に平行な段差が形成されている。
第2被摺動部9gは、埋設部9dから左方向に向かって延設されており、図9および図10に示すように、ベース3の上部から上方に向かって突出している。第2被摺動部9gの上面の前後方向の中央には、YZ平面に平行な段差が形成されている。第2被摺動部9gの上面に形成された段差と、突出部3jの下面に形成された段差とが係合して第2被摺動部9gの上面と突出部3jの上面とが当接している。
図10に示すように、導電性を有する第2被摺動部9gの前面9ga(第1導通領域)、および絶縁性を有する突出部3jの前面3ja(第1絶縁領域)は、スイッチ1Cにおいて、第1常開固定接点部D1として機能する。また、導電性を有する第2被摺動部9gの後面9gb(第2導通領域)、および絶縁性を有する突出部3jの後面3jb(第2絶縁領域)は、スイッチ1Cにおいて、第2常開固定接点部D2として機能する。第1常開固定接点部D1と、第2常開固定接点部D2とによって、スイッチ1Cにおける常開固定接点部(開閉接点部)が構成されている。
(スイッチ1Cの動作)
次に、本実施形態におけるスイッチ1Cの動作について、図11を参照しながら説明する。
図11は、スイッチ1Cの動作を示すものであり、(a)は接触部13abが突出部3jの前面3jaに接触し、かつ接触部13bbが突出部3jの後面3jbに接触している状態を示す図であり、(b)は接触部13abが第2被摺動部9gの前面9gaに接触し、かつ接触部13bbが突出部3jの後面3jbに接触している状態を示す図であり、(c)は接触部13abが第2被摺動部9gの前面9gaに接触し、かつ接触部13bbが第2被摺動部9gの後面9gbに接触している状態を示す図である。
<閉動作>
まず、スイッチ1Cの閉動作について説明する。
スイッチ1Cにおける閉動作を行う前には、図11の(a)に示すように、摺動子10がコイルばね7に付勢されており、摺動子10が上方の初期位置(以降では、第1位置とも呼称する)に位置している。この状態においては、第1可動接触部13aの接触部13abが突出部3jの前面3jaに接触し、第2可動接触部13bの接触部13bbが突出部3jの後面3jbに接触している。このため、第2固定端子9と摺動子10とは電気的に遮断されており、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電していない状態(すなわち、スイッチ1Cが絶縁状態)となっている。
次に、外部から押ボタン4の被押圧部4bを押圧する。これにより、摺動子10が押ボタン4により押圧され、コイルばね7の付勢力に抗して下方に移動する。摺動子10が下方に移動すると、図11の(b)に示すように、摺動子10は、接触部13abが第2被摺動部9gの前面9gaに接触し突出部3jの前面3jaから離れる位置(以降では、第2位置と呼称する)に移動する。摺動子10が第2位置に移動すると、接触部13abが第2被摺動部9gの前面9gaと接触するので、第2固定端子9と摺動子10とが電気的に接続する。その結果、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態(すなわち、スイッチ1Cが通電状態)となる。
次に、押ボタン4の被押圧部4bをさらに押圧する。これにより、摺動子10がさらに下方に移動し、図11の(c)に示すように、摺動子10は、接触部13bbが第2被摺動部9gの後面9gbに接触し突出部3jの後面3jbから離れる位置(以降では、第3位置と呼称する)に移動する。
さらに、押ボタン4の被押圧部4bを押圧すると、摺動子10はがさらに下方に移動する。この間においては、接触部13abが第2被摺動部9gの前面9gaを摺動し、接触部13bbが第2被摺動部9gの後面9gbを摺動する。以上により、スイッチ1Cの閉動作が完了する。以降では、押ボタン4が十分に押し込まれ、閉動作が完了する位置を第4の位置とする。
<開動作>
次に、スイッチ1Cの開動作について説明する。
スイッチ1Cの開動作を行う前には、押ボタン4の被押圧部4bが下方に押しこまれた状態となっている(すなわち、第4の位置に位置している)。すなわち、接触部13abが第2被摺動部9gの前面9gaに接触しており、接触部13bbが第2被摺動部9gの後面9gbと接触した状態となっており、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態となっている。
この状態において、押ボタン4の被押圧部4bへの押圧力を解除する。これにより、被押圧部4bによる摺動子10への下方への押圧が解除されるので、摺動子10はコイルばね7の付勢力により上方に移動する。
摺動子10が上方に移動すると、図11の(b)に示すように、まず、摺動子10は、接触部13bbが突出部3jの後面3jbと接触し第2被摺動部9gの後面9gbから離れる位置(第2位置)へ移動する。摺動子10が第2位置に移動しても、接触部13abが第2被摺動部9gの前面9gaと接触しているので、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態(すなわち、スイッチ1Aが導通状態)となっている。
さらに摺動子10が上方に移動すると、接触部13abが突出部3jの前面3jaに接触し第2被摺動部9gの前面9gaから離れる。その結果、接触部13abが突出部3jの前面3jaに接触し、かつ接触部13bbが突出部3jの後面3jbに接触した状態となるので、第2固定端子9と摺動子10との電気的接続が遮断され、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電していない状態(すなわち、スイッチ1Cが絶縁状態)となる。
さらに摺動子10が上方に移動すると、図11の(a)に示すように、摺動子10は、初期位置(第1位置)に移動する。以上により、スイッチ1Cの開動作が完了する。
(スイッチ1Cの特徴)
本実施形態のスイッチ1Cでは、上述したように、常開固定接点部の前面(表面)である第1常開固定接点部D1は、摺動子10が押ボタン4によって押圧されて初期位置(第1位置)から移動する方向へ向かって順に、突出部3jの前面3jaおよび第2被摺動部9gの前面9gaとなっている。また、常開固定接点部の後面(裏面)である第2常開固定接点部D2は、摺動子10が押ボタン4によって押圧されて初期位置(第1位置)から移動する方向へ向かって順に、突出部3jの後面3jbおよび第2被摺動部9gの後面9gbとなっている。そして、摺動子10が移動する方向(Z軸方向)において、第2被摺動部9gの後面9gbと突出部3jの後面3jbとの境界の位置が、第2被摺動部9gの前面9gaと突出部3jの前面3jaとの境界の位置よりも下方になっている。
上記の構成により、スイッチ1Cでは、開動作および閉動作の両方において、スイッチ1Cの導通状態と絶縁状態とが切り替わる位置は、第2被摺動部9gの前面9gaと突出部3jの前面3jaとの境界となる。その結果、スイッチ1Cの開動作および閉動作の両方において、常開固定接点部の第1常開固定接点部D1側において、アーク放電が発生するようになっている。すなわち、接触部13bbが第2常開固定接点部D2における導通と絶縁とを切り替える位置(すなわち、第2被摺動部9gの後面9gbと突出部3jの後面3jbとの境界)にあるときには、接触部13abが第2被摺動部9gの前面9gaに接触しており、摺動子10と第2固定端子9とが同電位となっている。そのため、第2常開固定接点部D2において、アーク放電が発生しない。その結果、第2常開固定接点部D2および第2可動接触部13bの接触部13bbがアーク放電により消耗することを防ぐことができるようになっている。また、スイッチ1Cでは、アーク放電によって発生する消耗粉が第1常開固定接点部D1側のみで発生するため、消耗粉が第1常開固定接点部D1側の反対側である第2常開固定接点部D2側に移動しにくい。それゆえ、スイッチ1Cが導通不良および絶縁不良になることを防ぐことができる。
<変形例2>
次に、実施形態2のスイッチ1Cの変形例としてのスイッチ1Dについて、図12および図13を参照しながら説明する。
本変形例におけるスイッチ1Dは、スイッチ1Cにおける摺動子10の可動接点部13に代えて可動接点部14を、スイッチ1Cにおける第2被摺動部9gに代えて第2被摺動部9hを、スイッチ1Cにおけるベース3の突出部3jに代えて突出部3kを備えている。
図12は、スイッチ1Dの摺動子10および常開固定接点部の断面図である。
図12に示すように、ベース3の突出部3kの下面は平面となっており、第2被摺動部9hの上面は平面となっている。そして、上下方向に垂直な平面(XY平面に平行な平面)において、突出部3kの下面と第2被摺動部9hの上面とが当接している。
導電性を有する第2被摺動部9hの前面9ha(第1導通領域)、および絶縁性を有する突出部3kの前面3ka(第1絶縁領域)は、スイッチ1Dにおいて、第1常開固定接点部D3として機能する。また、導電性を有する第2被摺動部9hの後面9hb(第2導通領域)、および絶縁性を有する突出部3kの後面3kb(第2絶縁領域)は、スイッチ1Bにおいて、第2常開固定接点部D4として機能する。第1常開固定接点部D3と、第2常開固定接点部D4とによって、スイッチ1Dにおける常開固定接点部(開閉接点部)が構成されている。
(スイッチ1Dの動作)
次に、本変形例におけるスイッチ1Dの動作について、図13を参照しながら説明する。
図13は、スイッチ1Dの動作を示すものであり、(a)は接触部14abが突出部3kの前面3kaに接触し、かつ接触部14bbが突出部3kの後面3kbに接触している状態を示す図であり、(b)は接触部14abが第2被摺動部9hの前面9haに接触し、かつ接触部14bbが突出部3kの後面3kbに接触している状態を示す図であり、(c)は接触部14abが第2被摺動部9hの前面9haに接触し、かつ接触部14bbが第2被摺動部9hの後面9hbに接触している状態を示す図である。
<閉動作>
まず、スイッチ1Dの閉動作について説明する。
スイッチ1Dにおける閉動作を行う前には、図13の(a)に示すように、摺動子10がコイルばね7に付勢されており、摺動子10が上方の初期位置(以降では、第1位置とも呼称する)に位置している。この状態においては、第1可動接触部14aの接触部14abが突出部3kの前面3kaに接触し、第2可動接触部14bの接触部14bbが突出部3kの後面3kbに接触している。このため、第2固定端子9と摺動子10とは電気的に遮断されており、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電していない状態(すなわち、スイッチ1Dが絶縁状態)となっている。
次に、外部から押ボタン4の被押圧部4bを押圧する。これにより、摺動子10が押ボタン4により押圧され、コイルばね7の付勢力に抗して下方に移動する。摺動子10が下方に移動すると、図13の(b)に示すように、摺動子10は、接触部14abが第2被摺動部9hの前面9haに接触し突出部3kの前面3kaから離れる位置(以降では、第2位置と呼称する)に移動する。摺動子10が第2位置に移動すると、接触部14abが第2被摺動部9hの前面9haと接触するので、第2固定端子9と摺動子10とが電気的に接続する。その結果、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態(すなわち、スイッチ1Dが通電状態)となる。
次に、押ボタン4の被押圧部4bをさらに押圧する。これにより、摺動子10がさらに下方に移動し、図13の(c)に示すように、摺動子10は、接触部14bbが第2被摺動部9hの後面9hbに接触し突出部3kの後面3kbから離れる位置(以降では、第3位置と呼称する)に移動する。
さらに、押ボタン4の被押圧部4bを押圧すると、摺動子10はがさらに下方に移動する。この間においては、接触部14abが第2被摺動部9hの前面9haを摺動し、接触部14bbが第2被摺動部9hの後面9hbを摺動する。以上により、スイッチ1Dの閉動作が完了する。以降では、押ボタン4が十分に押し込まれ、閉動作が完了する位置を第4の位置とする。
<開動作>
次に、スイッチ1Dの開動作について説明する。
スイッチ1Dの開動作を行う前には、押ボタン4の被押圧部4bが下方に押しこまれた状態となっている(すなわち、第4の位置に位置している)。すなわち、接触部14abが第2被摺動部9hの前面9haに接触しており、接触部14bbが第2被摺動部9hの後面9hbと接触した状態となっており、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態となっている。
この状態において、押ボタン4の被押圧部4bへの押圧力を解除する。これにより、被押圧部4bによる摺動子10への下方への押圧が解除されるので、摺動子10はコイルばね7の付勢力により上方に移動する。
摺動子10が上方に移動すると、図13の(b)に示すように、まず、摺動子10は、接触部14bbが突出部3kの後面3kbと接触し第2被摺動部9hの後面9hbから離れる位置(第2位置)へ移動する。摺動子10が第2位置に移動しても、接触部14abが第2被摺動部9hの前面9haと接触しているので、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電している状態(すなわち、スイッチ1Aが導通状態)となっている。
さらに摺動子10が上方に移動すると、接触部14abが突出部3kの前面3kaに接触し第2被摺動部9hの前面9haから離れる。その結果、接触部14abが突出部3kの前面3kaに接触し、かつ接触部14bbが突出部3kの後面3kbに接触した状態となるので、第2固定端子9と摺動子10との電気的接続が遮断され、第1固定端子8と第2固定端子9との間が通電していない状態(すなわち、スイッチ1Dが絶縁状態)となる。
さらに摺動子10が上方に移動すると、図13の(a)に示すように、摺動子10は、初期位置(第1位置)に移動する。以上により、スイッチ1Dの開動作が完了する。
以上のように、スイッチ1Dでは、開動作および閉動作において、スイッチ1Dの導通状態と絶縁状態とが切り替わる位置は、第2被摺動部9hの前面9haと突出部3kの前面3kaとの境界となる。したがって、開動作および閉動作の両方において、常開固定接点部の第1常開固定接点部D3側でアーク放電が発生する。すなわち、接触部14bbが第2常開固定接点部D4における導通と絶縁とを切り替える位置(すなわち、第2被摺動部9hの後面9hbと突出部3kの後面3kbとの境界)にあるときには、接触部14abが第2被摺動部9hの前面9haに接触しており、摺動子10と第2固定端子9とが同電位となっている。そのため、第2常開固定接点部D4において、アーク放電が発生しない。その結果、第2常開固定接点部D4および第2可動接触部14bの接触部14bbがアーク放電により消耗することを防ぐことができる。また、第1常開固定接点部D3側においてアーク放電により発生した消耗粉が第1常開固定接点部D3側の反対側である第2常開固定接点部D4側に移動しにくい。それゆえ、スイッチ1Dが導通不良および絶縁不良になることを防ぐことができる。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図14に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図14は、摺動子10が押ボタン4により押圧されていない状態における、スイッチ1Eの摺動子10および常開固定接点部の断面図である。
スイッチ1Eは、図14に示すように、実施形態2におけるスイッチ1Cの突出部3jに代えて、突出部3mを備えている。
導電性を有する第2被摺動部9gの前面9ga(第1導通領域)、および絶縁性を有する突出部3mの前面3ma(第1絶縁領域)は、スイッチ1Eにおいて、第1常開固定接点部D1として機能する。また、導電性を有する第2被摺動部9gの後面9gb(第2導通領域)、および絶縁性を有する突出部3mの後面3mb(第2絶縁領域)は、スイッチ1Eにおいて、第2常開固定接点部D2として機能する。第1常開固定接点部D1と、第2常開固定接点部D2とによって、スイッチ1Eにおける常開固定接点部(開閉接点部)が構成されている。
スイッチ1Eは、図14に示すように、摺動子10が押ボタン4により押圧されていない位置(初期位置)にあるときに、摺動子10が突出部3mと乖離するようになっている。これにより、摺動子10が初期位置にある状態における、スイッチ1Eの絶縁性を向上させることができる。
また、スイッチ1Eでは、摺動子10が初期位置から移動する方向とは逆方向(すなわち、上方向)に向かうにつれて、突出部3mの上部において前面3maと後面3mbとの間の距離が小さくなる形状となっている。これにより、摺動子10が押ボタン4により押圧されて初期状態から下方に移動するときに、接触部13abおよび接触部13bbが、突出部3mをスムーズに挟むことができるようになっている。
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、図15に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
本実施形態におけるスイッチ1Fは、実施形態1における可動接点部13の代わりに、可動接点部15を備えている。
図15は、スイッチ1Fにおける、摺動子10およびベース3の基部3bの上部の正面図である。
可動接点部15は、第1可動接触部15aを備えている。第1可動接触部15aは、連結部11の左端から下方に向かって延びるアーム部15aaと、アーム部15aaの先端に設けられ、第2被摺動部9eの前面9eaに接触する2つの接触部(第1摺動部)15ab・15acとを備えている。接触部15ab・15acは、左右方向において互いに離れて形成されている。
上記の構成により、スイッチ1Fでは、可動接点部15が、接触部15abおよび接触部15acの2箇所において、第2被摺動部9eの前面9eaに接触することができるようになっている。これにより、例えば、接触部15abと第2被摺動部9eの前面9eaとの間に異物が存在することに起因して接触部15abと第2被摺動部9eの前面9eaとの間で電気的接続が行えない場合においても、接触部15acと第2被摺動部9eの前面9eaとの間において電気的接続を行うことができる。したがって、可動接点部15と第2被摺動部9eの前面9eaとの接触の信頼性を向上させることができる。その結果、スイッチ1Fの信頼性を向上させることができる。
なお、図示していないが、可動接点部15は、第2可動接触部が2つの接触部を備える構成となっている。
なお、本実施形態では、第1可動接触部15aが2つの接触部15ab・15acを備える構成であったが、これに限られるものではない。すなわち、第1可動接触部15aが3つ以上の接触部を備える構成であってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。