JP6726804B2 - 積層体、三次元曲面を有する反射防止物品、反射防止物品の製造方法 - Google Patents

積層体、三次元曲面を有する反射防止物品、反射防止物品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、積層体、三次元曲面を有する反射防止物品、反射防止物品の製造方法に関する。
陰極線管(CRT)を利用した表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、および液晶ディスプレイ(LCD)のような画像表示装置では、表示面での外光の反射によるコントラスト低下および像の映り込みを防止するために反射防止フィルムを設けることがある。
反射防止フィルムとしては、種々の態様の反射防止フィルムが提案されているが、そのうちの1つの態様として、基材表面に周期が可視光の波長以下の微細な凹凸形状を有する反射防止フィルム、いわゆるモスアイ(moth eye)構造を有する反射防止フィルムが知られている。モスアイ構造により、擬似的に空気から基材の内部のバルク材料に向かって屈折率が連続的に変化する屈折率傾斜層を作り出し、光の反射を防止することができる。
特許文献1には、アクリル系樹脂からなる基材上に、微粒子とバインダーを含有する反射防止層を複数備えた反射防止フィルムであって、反射防止層の基材側とは反対側の表面から、微粒子が突出することにより形成された凸部を有する反射防止フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、可撓性を有する透明樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面に、無機微粒子とマトリクス樹脂とを含有する反射防止層が設けられた反射防止フィルムが画像表示面に配置されているフレキシブル表示装置が開示されている。
特開2010−164824号公報 特開2016−75869号公報
近年、三次元曲面を有する物品に対しても反射防止機能を付与することが求められている。
しかしながら、特許文献1には、反射防止フィルムを三次元曲面を有する物品へ適用することに関する記載がない。また、特許文献2には、半径2mmの円筒形マンドレルを用いて屈曲試験を行った場合にクラックを生じないフレキシブル表示装置が記載されてはいるが、これはあくまで反射防止フィルムを撓ませることができるという程度のものであり、三次元曲面を有する物品に適用することを意図したものではない。また、特許文献2に記載された反射防止フィルムは反射率が高く、反射防止性能も十分とは言えない。
三次元曲面を有する物品に反射防止フィルムを適用することを本発明者らが検討したところ、従来の反射防止フィルムを三次元曲面を有する形状に成形することが難しいこと、三次元曲面を有する形状に成形できたとしても、反射率が高くなる又は反射率のムラが大きくなることが分かった。なお、反射率のムラとは、反射率の最大値と最小値の差である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、三次元曲面を有する形状に成形することができ、反射率が低く、かつ反射率のムラが小さい三次元曲面を有する反射防止物品を提供することができる積層体、上記三次元曲面を有する反射防止物品、及び上記反射防止物品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ね、下記手段により上記課題を解決できることを見出した。
<1>
基材と、バインダー樹脂及び粒子を含有する層(a)とを有する積層体であって、
上記層(a)は、上記基材側とは反対側の表面に上記粒子により形成された凹凸形状を有し、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとの比であるB/Aが0.35以上であり、
上記層(a)の上記基材側とは反対側の表面に存在する粒子の数は、1μm当たり6.3個以上20個以下であり、
上記基材のガラス転移温度+10℃で1時間加熱した時の上記積層体の熱収縮率が20%以上70%未満である、積層体。
<2>
上記基材のガラス転移温度+10℃で1時間加熱した時の、上記基材の熱収縮率が20%以上70%未満である、<1>に記載の積層体。
<3>
上記バインダー樹脂の伸び率が10%以上である、<1>又は<2>に記載の積層体。<4>
上記基材と上記層(a)の間にハードコート層を有する、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の積層体。
<5>
上記ハードコート層の伸び率が10%以上である、<4>に記載の積層体。
<6>
上記粒子の平均一次粒径が250nm以下である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の積層体。
<7>
上記層(a)の上記基材側とは反対側の表面に存在する粒子の数が、1μm当たり7個以上16個以下である、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の積層体。
<8>
三次元曲面を有する反射防止物品であって、
上記三次元曲面の最小曲率半径は1〜1000mmであり、
上記三次元曲面上に、粒子により形成された凹凸形状を有し、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとの比であるB/Aが0.4以上であり、
上記三次元曲面上に存在する上記粒子の数は、1μm当たり9個以上40個以下であり、
上記三次元曲面における反射率の最大値と最小値の差が1.2%より小さい、三次元曲面を有する反射防止物品。なお、上記反射率は波長450nmから波長650nmの範囲を5nm間隔で測定した値の平均値とする。
<9>
上記粒子の平均一次粒径が250nm以下である、<8>に記載の三次元曲面を有する反射防止物品。
<10>
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の積層体を三次元曲面を有する物品の上記三次元曲面の少なくとも一部の領域を覆うように貼合する工程と、上記積層体を貼合した物品を上記積層体の基材のガラス転移温度以上の温度で加熱する工程を含む、三次元曲面を有する反射防止物品の製造方法。
本発明によれば、三次元曲面を有する形状に成形することができ、反射率が低く、かつ反射率のムラが小さい三次元曲面を有する反射防止物品を提供することができる積層体、上記三次元曲面を有する反射防止物品、及び上記反射防止物品の製造方法を提供することができる。
本発明の積層体の一実施形態の概略断面図である。 本発明の積層体の製造方法を示す概略断面図である。
以下、本発明に係る好ましい実施の形態について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において、数値範囲を「(数値1)〜(数値2)」という記載で表す場合、この記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
また、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一種を表し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一種を表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの少なくとも一種を表す。
[積層体]
本発明の積層体は、
基材と、バインダー樹脂及び粒子を含有する層(a)とを有する積層体であって、
上記層(a)は、上記基材側とは反対側の表面に上記粒子により形成された凹凸形状を有し、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとの比であるB/Aが0.35以上であり、
上記層(a)の上記基材側とは反対側の表面に存在する粒子の数は、1μm当たり6.3個以上20個以下であり、
上記基材のガラス転移温度+10℃で1時間加熱した時の上記積層体の熱収縮率が20%以上70%未満である、積層体である。
本発明の積層体は、三次元曲面を有する形状に成形することができるものであり、本発明の積層体を用いれば、反射率が低く、かつ反射率のムラが小さい三次元曲面を有する反射防止物品を提供することができる。具体的には、例えば、三次元曲面を有する物品の形状にあわせて、本発明の積層体を、熱により収縮させながら成形することで、三次元曲面上にモスアイ構造が形成された積層体とすることができ、この積層体を上記三次元曲面を有する物品に貼り付けることで、又は、本発明の積層体を、三次元曲面を有する物品の三次元曲面の少なくとも一部の領域を覆うように貼合し、熱により収縮させることで、三次元曲面上にモスアイ構造が形成され、反射率が低く、かつ反射率のムラが小さい三次元曲面を有する反射防止物品を製造することができる。すなわち、本発明の積層体は、三次元曲面を有する物品の表面に配置するための反射防止積層体を形成するための「反射防止積層体の前駆体」である。また、上記層(a)は反射防止層を形成するための層である。
本発明の積層体を用いて、三次元曲面を有する形状に成形する際、積層体の層(a)の形状が凸型となっても、凹型となってもよい。
なお、三次元曲面とは、可展面でない曲面を指す。可展面とは伸縮することなしに平面に展開できる曲面のことであり、平面を曲げたり切ったりして作ることのできる曲面をいう。
また、三次元曲面を有する形状に成形できる性能を、「三次元曲面成形性」とも呼ぶ。
モスアイ構造とは、光の反射を抑制するための微細構造のことを指す。特に、可視光の反射を抑制する目的の場合には、隣り合う凸部の間隔が380nm未満の微細構造のことを指す。隣り合う凸部の間隔が190nm未満であると、光散乱が減って透明性が増すために好ましい。モスアイ構造の有無は、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)等により表面形状を観察し、上記微細構造パターンが出来ているかどうか調べることによって確認することができる。
本発明の積層体の各構成要素の詳細について、図1を参照しながら説明する。
図1に本発明の積層体の一例を示す。図1の積層体10は、図1に示すように、基材11上に、バインダー樹脂14を含む膜と粒子13とを含有する層(a)12が積層された積層体である。層(a)12は、基材11側とは反対側の表面に、粒子13により形成された凹凸形状を有する。なお、前述のように、本発明の積層体を三次元曲面を有する形状に成形した後では、凹凸形状がモスアイ構造になっていることが好ましいが、成形する前の状態では、積層体の凹凸形状はモスアイ構造であってもよいし、モスアイ構造でなくてもよい。
粒子により形成された凹凸形状とは、好ましくはバインダー樹脂を含む膜から突出した1つ1つの粒子が凸部となり、粒子が存在しない部分が凹部となったものである。
本発明の積層体における層(a)の凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとの比であるB/Aが0.35以上である。B/Aが0.35以上であると、本発明の積層体を三次元曲面を有する形状に成形し、層(a)から反射防止層を形成した時に凸部同士の距離に対する凹部の深さが大きくなり、空気から反射防止層内部にかけて屈折率が緩やかに連続的に変化する屈折率傾斜層を作ることができるため、反射率を低減できる。B/Aが0.40以上であることが好ましく、0.45以上であることがより好ましい。
B/Aは、層(a)におけるバインダー樹脂と粒子の体積比により制御することができる。そのため、バインダー樹脂と粒子の配合比を適切に設計することが重要である。
本発明の積層体において、上記距離Aは、200nm以上400nm以下であることが好ましく、220nm以上300nm以下であることがより好ましく、240nm以上280nm以下であることが更に好ましい。
また、距離Bは、100nm以上180nm以下であることが好ましく、110nm以上160nm以下であることがより好ましく、120nm以上150nm以下であることが更に好ましい。
本発明の積層体の層(a)において、基材側とは反対側の表面に存在する粒子の数は、1μm当たり6.3個以上20個以下である。粒子の粒子個数を上記範囲とすることによって、上記距離Aを好ましい数値範囲とすることが可能となり、本発明の積層体を三次元曲面を有する形状に成形した時に低反射率を達成できる。詳細には、1μm当たり6.3個以上であると三次元曲面を有する形状に成形した時の反射率を低くすることができ、20個以下であると三次元曲面を有する形状に成形した時の反射率のムラを低く抑えることができる。
本発明の積層体の層(a)において、基材側とは反対側の表面に存在する粒子の数は、1μm当たり7個以上16個以下であることが好ましい。
本発明の積層体を基材のガラス転移温度(Tg)+10℃で1時間加熱した時の熱収縮率は、20%以上70%未満である。
積層体が上記範囲内の熱収縮率を有することで、加熱により、三次元曲面を有する形状に成形することが可能となる。また、積層体の熱収縮により、粒子間の距離が縮まり、三次元曲面を有する形状に本発明の積層体を成形した際に、凸部同士の距離に対する凹部の深さが大きくなり、良好な反射防止性能を発現できる。詳細には、熱収縮率を20%以上とすることで曲面への追随性が良くなり、良好な三次元成型性を得ることができる。また70%未満とすることで、三次元成型後の残留歪みを減らすことができ、虹ムラの発生や、形状の長期安定性を得ることができる。
本発明の積層体の熱収縮率は、40%以上60%未満であることが好ましい。
なお、本発明においてガラス転移温度(Tg)とは、本発明の積層体における基材を構成するポリマーの運動性が大きく変化する境界温度である。本発明においてTgは、25℃、相対湿度10%で示差走査熱量測定装置(DSC)の密閉型測定パンに基材を20mg入れ、これを窒素気流中で10℃/分で−100℃から230℃まで昇温し、ベースラインが低温側から偏奇し始める温度とする。
また、本発明において熱収縮は加熱によって基材を構成するポリマーの配列が変化することで生じる不可逆の収縮である。本発明において熱収縮率は下記の方法で求める。すなわち、120mm×35mmに切り出した試料片に対し、100mmの間隔となるように2本の基準線を入れ、無張力下でTg+10℃の加熱オーブン中に1時間放置する。この放置の後、試料片を室温(25℃)まで冷却して、2本の基準線の間隔を測定し、この値をA(単位;mm)とする。測定されたAを用いて、「100×(100−A)/100」の式から算出された数値を熱収縮率とする。
このように、本発明の積層体は、三次元曲面を有する形状に成形が可能である。基材上に屈折率の異なる反射防止層を積層させた従来公知の反射防止フィルムにおいても、基材種、バインダー樹脂種を適切に選択することにより、加熱による三次元曲面の成形は可能であると考えられるが、反射防止層の熱収縮による膜厚の変化に伴い、反射防止機能を発現させるための光の干渉条件から逸脱してしまうため、低反射率を維持することが難しいと考えられる。また、フィルムの端部と中央部とで熱収縮率にもムラが生じやすく、熱収縮後の反射率にムラが生じやすくなると考えられる。
これに対して、本発明では、所定の凹凸形状及び熱収縮率を有することで、積層体の熱収縮後において反射防止性能を発現するために有効なモスアイ構造を形成でき、三次元曲面を有する形状に成形した後であっても反射率が低く、かつ反射率のムラを抑えることが可能となるものと考えられる。
以下、本発明の積層体を構成する各構成要素につき、より詳細に説明する。
<<基材>>
本発明の積層体の基材は、基材のガラス転移温度+10℃で1時間加熱した時の熱収縮率が20%以上70%未満であることが好ましい。
基材としては、透明性および可撓性を有する樹脂(ポリマー)からなるプラスチックフィルムが好ましく用いられる。基材用のプラスチックフィルムとしては、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルム、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、セルロースアシレート等のセルロース系樹脂等からなるフィルムが挙げられる。ただし、上記(メタ)アクリル系樹脂は、ラクトン環構造を有する重合体、無水グルタル酸環構造を有する重合体、グルタルイミド環構造を有する重合体を含む。このほか、必要な強度を有しかつ光学適性を有するものであれば、他のプラスチックフィルムも使用可能である。
基材は、非晶性プラスチックフィルムであることが好ましい。この非晶性プラスチックフィルムを延伸したものが好ましく、三次元曲面の成形性のためには二軸延伸したフィルムがより好ましい。二軸延伸は逐次延伸でも縦横同時延伸延伸のどちらでも構わない。延伸は、基材を構成するプラスチック材料のガラス転移温度以上の温度に加熱して行われる。延伸倍率は1.2倍〜3.3倍が好ましい。延伸倍率は縦と横で異なっても構わない。
基材としては、紫外線透過性を有していても有していなくても良いが、有していないものがより好ましい。紫外線透過性を有さないことで、日光にさらされたときの劣化を低減することができる。
基材の膜厚は特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
<<層(a)>>
層(a)は、バインダー樹脂及び粒子を含有する。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、基材又は基材と他の層との積層体に、粒子を結着させる機能を有することが好ましい。
バインダー樹脂は硬化性化合物の硬化物を含むことが好ましい。
バインダー樹脂は硬化性化合物を硬化させて得ることができる。
バインダー樹脂の形成に用いられる硬化性化合物を硬化性化合物(a1)とも呼ぶ。
<硬化性化合物(a1)>
硬化性化合物(a1)としては、重合性官能基を有する化合物(好ましくは電離放射線硬化性化合物)が好ましい。重合性官能基を有する化合物としては、各種モノマー、オリゴマー又はポリマーを用いる事ができ、重合性官能基(重合性基)としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性不飽和基(炭素−炭素不飽和二重結合性基)等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性不飽和基を有する化合物の具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等を挙げることができる。
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性官能基を有する化合物として、好ましく用いられる。
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーを少なくとも1種含有することが好ましい。
例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキサイド)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールトヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA、同DPHA−2C、同PET−30、同TMPTA、同TPA−320、同TPA−330、同RP−1040、同T−1420、同D−310、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同GPO−303、大阪有機化学工業(株)製V#3PA、V#400、V#36095D、V#1000、V#1080等のポリオールと(メタ)アクリル酸のエステル化物を挙げることができる。また紫光UV−1400B、同UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7550B、同UV−7600B、同UV−7605B、同UV−7610B、同UV−7620EA、同UV−7630B、同UV−7640B、同UV−6630B、同UV−7000B、同UV−7510B、同UV−7461TE、同UV−3000B、同UV−3200B、同UV−3210EA、同UV−3310EA、同UV−3310B、同UV−3500BA、同UV−3520TL、同UV−3700B、同UV−6100B、同UV−6640B、同UV−2000B、同UV−2010B、同UV−2250EA、同UV−2750B(日本合成化学(株)製)、UA−306H、UA−306I、UA−306T、UL−503LN(共栄社化学(株)製)、ユニディック17−806、同17−813、同V−4030、同V−4000BA(大日本インキ化学工業(株)製)、EB−1290K、EB−220、EB−5129、EB−1830,EB−4858(ダイセルUCB(株)製)、A−TMMT、A−TMPT、U−4HA、U−6HA、U−10HA、U−15HA(新中村化学工業(株)製)、ハイコープAU−2010、同AU−2020((株)トクシキ製)、アロニックスM−1960(東亜合成(株)製)、アートレジンUN−3320HA,UN−3320HC,UN−3320HS、UN−904,HDP−4Tなどの3官能以上のウレタンアクリレート化合物、アロニックスM−8100,M−8030,M−9050(東亞合成(株)製、KRM−8307(ダイセルサイテック(株)製)などの3官能以上のポリエステル化合物なども好適に使用することができる。
さらに、3個以上の重合性官能基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等も挙げられる。
また、特開2005−76005号、同2005−36105号公報に記載された化合物、SIRIUS−501、SUBARU−501(大阪有機化学工業(株)製)のようなデンドリマー、特開2005−60425号公報に記載のようなノルボルネン環含有モノマーを用いることもできる。
さらに、粒子と硬化性化合物(a1)を結合させて強固な膜にするために、硬化性化合物(a1)として、重合性官能基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。
重合性官能基を有するシランカップリング剤の具体例としては、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。具体的には、KBM−503、KBM−5103(信越化学工業(株)製)、特開2014−123091号記載のシランカップリング剤X−12−1048、X−12−1049、X−12−1050(信越化学工業(株)製)、及び下記構造式で表される化合物C3等が挙げられる。
重合性官能基を有する化合物は、二種類以上を併用してもよい。これら重合性官能基を有する化合物の重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
層(a)は硬化性化合物(a1)以外の化合物を更に含むことができる。
本発明では、後述する粘着剤層への浸透のしやすさ等の観点から、硬化性化合物(a1)として、1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物を用いてもよいが、特に、1分子中に3個以上の重合性官能基を有する化合物と、1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物、または硬化性化合物(a1)以外の化合物として重合性官能基を有さない化合物を併用することが好ましい。重合性官能基を有さない化合物はバインダー用化合物であってもよい。
1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物、または重合性官能基を有さない化合物としては、重量平均分子量(Mwa)が40<Mwa<500で、Hoy法によるSP値(SPa)が19<SPa<24.5である化合物が粘着剤層へ浸透しやすく好ましい。
1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物は、1分子中に1個の重合性官能基を有する化合物であることが好ましい。
なお、本発明におけるSP値(溶解性パラメーター)は、Hoy法によって算出した値であり、Hoy法は、POLYMERHANDBOOKFOURTHEDITIONに記載がある。
さらに、1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物、または重合性官能基を有さない化合物は、25℃における粘度が100mPas以下であることが好ましく、1〜50mPasがより好ましく、1〜20mPasが更に好ましい。このような粘度範囲にある化合物は、粘着剤層へ浸透しやすい上に、粒子(a2)の凝集を抑制するように働き、ヘイズ、白濁感を抑制できるため好ましい。特に、後述するように粘着剤層を積層する前に硬化性化合物(a1)の一部を硬化させることで粒子(a2)の凝集を抑制することもできるが、このような粘度範囲にある化合物を用いることで、硬化が進んだ状態であっても1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物、または重合性官能基を有さない化合物を十分に粘着剤層に浸透させることができるため好ましい。特に、1〜20mPasの粘度範囲にあると、粒子の隙間にバインダーが詰まることで生じる、反射率の上昇や全光線透過率低下を防ぐ効果が大きいため好ましい。
1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物は、重合性官能基として、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、スチリル基、アリル基等を持つものが好ましい。
重合性官能基を有さない化合物としては、エステル系化合物、アミン系化合物、エーテル系化合物、脂肪族アルコール系化合物、炭化水素系化合物などを好ましく用いることができ、エステル系化合物が特に好ましい。より具体的には、コハク酸ジメチル(SP値20.2、粘度2.6mPas)、コハク酸ジエチル(SP値19.7、粘度2.6mPas)、アジピン酸ジメチル(SP値19.7、粘度2.8mPas)、コハク酸ジブチル(SP値19.1、粘度3.9mPas)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)(SP値19.0、粘度10.8mPas)、スベリン酸ジメチル(SP値19.4、粘度3.7mPas)、フタル酸ジエチル(SP値22.3、粘度9.8mPas)、フタル酸ジブチル(SP値21.4、粘度13.7mPas)、クエン酸トリエチル(SP値22.5、粘度22.6mPas)、クエン酸アセチルトリエチル(SP値21.1、粘度29.7mPas)、ジフェニルエーテル(SP値21.4、粘度3.8mPas)などが挙げられる。
層に含まれるバインダー樹脂の含有量は、100mg/m〜800mg/mが好ましく、100mg/m〜600mg/mがさらに好ましく、100mg/m〜400mg/mが最も好ましい。
更に、前述のとおり、本発明の積層体は、基材のガラス転移温度+10℃で1時間加熱した時の熱収縮率が20%以上70%未満であり、この要件を満たすという観点から、バインダー樹脂は伸び率が10%以上であることが好ましい。このようなバインダー樹脂としては、スペーサーを有するポリマー又はゴム状構造を有するポリマーが挙げられ、上記のうち一方のみ含んでも両方含んでもよい。また、上記ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリレート又はポリウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。なお、バインダー樹脂及び上記ポリマーは前述の本発明の効果を奏するものであれば、分子量については特に限定されないものであり、オリゴマーであってもよい。
ここで、本明細書における伸び率は、測定方向の長さが100mm、幅が10mmとなるようにサンプルを切り出し、25℃、相対湿度60%の環境に2時間放置した直後、インテスコ(株)製全自動引張試験機を用い、25℃、相対湿度60%雰囲気中、チャック間長さ100mm、引張速度10%/分で延伸させた際の破断伸度を伸び率(%)とする。
バインダーの伸び率は、ガラス上に10μm厚の塗膜を作成し、ガラスから剥離することで得られたバインダーのみのサンプルについて、上記測定を行った値である。
スペーサーを有するポリマーとは、分子内にスペーサーを有するポリマーである。スペーサーとは分子間を二次元的又は三次元的に共有結合で連結する基であり、例えば、炭素数2〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルキレンオキシド基などが好ましい。
またゴム状構造を有するポリマーとは、分子内に重合性基を有するポリマーである。このようなポリマーは、硬化させることにより、重合性基が分子間を架橋することで、硬化物はゴム弾性を有するものとなる。重合性基としては、例えば、不飽和重合性基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
バインダー樹脂は、バインダー樹脂形成用化合物を重合させることで得ることができる。バインダー樹脂形成用化合物は、重合性基を有する化合物(硬化性化合物)であり、モノマー又はオリゴマーであることが好ましい。
スペーサーを有するポリマーは、スペーサーを有するバインダー樹脂形成用化合物を重合させることで得ることができる。
ゴム状構造を有するポリマーは、重合性基を有するバインダー樹脂形成用化合物の反応率を調節して得ることができるし、また、バインダー樹脂形成用化合物を重合させた後に、重合性基を導入して得ることもできる。
また、バインダー樹脂及びバインダー樹脂形成用化合物としては、市販品を用いることもできる。
スペーサー又はゴム状構造を有するポリ(メタ)アクリレートの市販品としては、BAC−45(ポリブタジエン末端ジアクリレート、伸び率100%、大阪有機化学工業株式会社製)、ハイドランUV−100A(水溶性アクリル樹脂、伸び率45%、大日本インキ化学工業株式会社製)が好ましい。
また、ポリウレタン(メタ)アクリレート類の市販品としては、UA−122P(ウレタンアクリレートオリゴマー,破断伸度30%,新中村化学工業株式会社製)、UV2750B(ウレタンアクリレートオリゴマー,破断伸度40%,日本合成化学工業株式会社製)、UV−6630B(ウレタンアクリレートオリゴマー,破断伸度12%,日本合成化学工業株式会社製)、UV−7510B(ウレタンアクリレートオリゴマー,破断伸度20%,日本合成化学工業株式会社製)が挙げられる。
<粒子>
粒子としては無機粒子と樹脂粒子のどちらも用いることが出来るが、耐擦傷性が向上する観点から無機粒子が好ましく、金属酸化物粒子が特に好ましい。
<金属酸化物粒子>
金属酸化物粒子としては、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、五酸化アンチモン粒子などが挙げられるが、多くのバインダー樹脂と屈折率が近いためヘイズを発生しにくく、かつモスアイ構造が形成し易い観点からシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子については、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよい。金属酸化物粒子の形状は、球形が最も好ましいが、不定形等の球形以外であっても差し支えない。また、金属酸化物粒子は、1種のみ使用してもよいし、平均一次粒径の異なる2種以上の粒子を用いてもよい。
また高硬度の観点から金属酸化物粒子は焼成シリカ粒子であることが特に好ましい。
焼成シリカ粒子は、加水分解が可能なシリコン化合物を水と触媒とを含む有機溶媒中で加水分解、縮合させることによってシリカ粒子を得た後、シリカ粒子を焼成するという公知の技術により製造することができ、たとえば特開2003−176121号公報、特開2008−137854号公報などを参照することができる。
焼成シリカ粒子を製造する原料のシリコン化合物としては特に限定されないが、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン等のクロロシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン等のアシロキシシラン化合物;ジメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール化合物;等が挙げられる。上記例示のシラン化合物のうち、アルコキシシラン化合物が、より入手し易く、かつ、得られる焼成シリカ粒子に不純物としてハロゲン原子が含まれることが無いので特に好ましい。本発明にかかる焼成シリカ粒子の好ましい形態としては、ハロゲン原子の含有量が実質的に0%であり、ハロゲン原子が検出されないことが好ましい。
焼成温度は特に限定されないが、800〜1300℃が好ましく、1000℃〜1200℃がより好ましい。
金属酸化物粒子は塗布液中での分散性向上、膜強度向上、凝集防止のために表面処理された無機微粒子を使用することが好ましい。表面処理方法の具体例及びその好ましい例は、特開2007−298974号公報の<0119>〜<0147>に記載のものと同様である。
特に、バインダー樹脂を形成するための硬化性化合物(a1)との結着性を付与し、反射防止層の強度を向上させる観点から、粒子表面を重合性不飽和基(好ましくは不飽和二重結合)および粒子表面と反応性を有する官能基を有する化合物で表面修飾し、粒子表面に重合性不飽和基(好ましくは不飽和二重結合)を付与することが好ましい。表面修飾に用いる化合物としては、硬化性化合物(a1)として上述した、重合性官能基を有するシランカップリング剤を好適に用いることができる。
具体的には、市販のKBM−503、KBM−5103(いずれも信越化学工業(株)製、特開2014−123091号記載のX−12−1048、X−12−1049、X−12−1050といった(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤を金属酸化物粒子表面に修飾することが好ましい。
(硬度)
本発明の積層体及び三次元曲面を有する反射防止物品の表面が、より優れた耐擦傷性を有するようになる観点から、粒子の押し込み硬度は、400MPa以上であることが好ましく、450MPa以上であることがより好ましく、550MPa以上であることがさらに好ましい。粒子の押し込み硬度が400MPa以上であるとモスアイ構造の厚み方向の圧力に対する耐久性が高くなるため好ましい。また、脆くて割れやすくならないようにするために粒子の押し込み硬度は1000MPa以下であることが好ましい。
粒子の押し込み硬度は、ナノインデンター等によって測定することができる。具体的な測定手法としては、粒子をそれ自身より硬い基板(ガラス板、石英板等)に一段以上重なりが生じないように並べてダイヤモンド圧子で押し込んで測定することができる。この際、粒子が動かないように、樹脂などで固定することが好ましい。ただし、樹脂で固定する場合には粒子の一部が露出するように調節して行う。また、トライボインデンターにより押し込み位置を特定することが好ましい。
本発明においても、基板上に粒子を並べ、測定値に影響を及ぼさない様に微量の硬化性樹脂を用いて粒子同士を結着及び固定させた試料を作製し、その試料を圧子による測定方法を用いて粒子の押し込み硬度を求める。
(平均一次粒径)
粒子の平均一次粒径は250nm以下であることが好ましく、100nm以上190nm以下が好ましく、120nm以上180nm以下がより好ましく、140nm以上170nm以下が更に好ましい。
ここで、粒子の平均一次粒径は、体積平均粒径の累積の50%粒径を指す。粒径の測定には走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)を用いることができる。粉体粒子(分散液の場合は乾燥させて溶剤を揮発させたもの)をSEM観察により適切な倍率(5000倍程度)で観察し、一次粒子100個のそれぞれの直径を測長してその体積を算出し、累積の50%粒径を平均一次粒径とすることができる。粒子が球形でない場合には、長径と短径の平均値をその一次粒子の直径とみなす。積層体中に含まれる粒子を測定する場合は、積層体を表面側から上記同様SEMで観察して算出する。この際、観察し易いように、試料にはカーボン蒸着、エッチング処理などを適宜施してよい。
<<ハードコート層>>
本発明の積層体は、基材と層(a)の間にハードコート層を有してもよい。ハードコート層は、重合性基を有する化合物である硬化性化合物(好ましくは電離放射線硬化性化合物)の重合反応により形成されることが好ましい。硬化性化合物はモノマーであってもオリゴマーであってもよい。硬化性化合物は、分子内に重合性基を2個以上有していることが好ましい。
重合性基としては、光、電子線又は放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性基が好ましい。
光重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
ハードコート層の伸び率は10%以上であることが好ましい。具体的には上記硬化性化合物又はバインダーと同様の化合物を用いることができる。これによりハードコート層の三次元曲面を有する形状への成形性を向上することができる。ハードコート層の伸び率は、20%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、100%以上が特に好ましい。ハードコート層の伸び率を10%以上にするためには、上記硬化性化合物の硬化物が、前述の積層体のバインダー樹脂において好ましい態様として説明した、スペーサーを有するポリマー又はゴム状構造を有するポリマーとなるようにすることが好ましい。スペーサーを有するポリマー又はゴム状構造を持つことで、3次元曲面を成型する際の基材の収縮にハードコート層が追随することができるため、光学性能を損なわず、また割れ等の欠陥が発生しない。
ハードコート層の伸び率は、ガラス上に10μm厚の塗膜を作成し、ガラスから剥離して得られたサンプルについて、上述の積層体の伸び率の測定と同様の測定を行った値である。
積層体に充分な三次元曲面成形性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましい。
本発明の積層体は三次元曲面を有する形状に成形され、三次元曲面を有する物品の表面に配置されることで、三次元曲面を有する物品に反射防止性能を付与することができる。すなわち、本発明の積層体は、三次元曲面を有する形状に成形されることで、三次元曲面を有する反射防止積層体として機能する。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は特に限定されるものではないが、好ましい製造方法の一態様として、下記の第一〜第五の工程をこの順に含む製造方法が挙げられる。図2に、積層体の製造方法の一実施形態の断面模式図を示す。
本発明の積層体は、図2(1)に示すように、基材11上に、硬化性化合物と、粒子13とを含む硬化性組成物を塗布して、硬化性化合物を含む第一の層15中に粒子13が埋没する厚さで第一の層15を設ける第一の工程と、
図2(2)に示すように、支持体31と支持体31上に設けられた粘着剤層32とを有してなる粘着フィルム33の粘着剤層32と、第一の層15の基材11とは反対側の面(界面)16とを貼り合わせる第二の工程と、
図2(3)に示すように、粒子13が、第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没し、かつ、第一の層15と粘着剤層32との界面16から粒子13が突出するように、界面16の位置を基材11側に近づける第三の工程と、
図2(4)に示すように、粒子13が、第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没した状態で第一の層15を硬化する第四の工程と、
図2(5)に示すように、粘着フィルム33を剥離する第五の工程と、
をこの順に有することが好ましい。
上記の製造方法においては、第二の工程において粘着フィルムと第一の層とを貼り合わせ、第三の工程において粒子13を第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没し、かつ、第一の層15の基材11側とは反対側の界面から突出させ、第四の工程において粒子13が第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没した状態で第一の層を硬化することで、粒子13が第一の層15の硬化前に空気界面に露出しないようにすることで、凝集を抑制し、粒子によって形成された凹凸形状を作製できる。
<<第一の工程>>
第一の工程は、基材上に、硬化性化合物と粒子とを、硬化性化合物を含む第一の層中に粒子が埋没する厚みで設ける工程である。
本発明において、「硬化性化合物を含む層中に粒子が埋没する厚み」とは、粒子の平均一次粒径の0.8倍以上の厚みを表すものとする。
基材については、前述の積層体の基材と同様であるため説明を省略するが、第一の工程の前に、未延伸基材を延伸して、基材に熱収縮性を持たせることが好ましい。
第一の工程において、基材上に第一の層を設ける方法は特に限定されないが、基材上に第一の層形成用組成物を塗布することにより設けることが好ましい。この場合、第一の層は、硬化性化合物と、粒子とを含む組成物を塗布してなる層である。塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
第一の工程において、基材の表面に直交する方向には粒子が複数存在しないことが好ましい。ここで、基材の表面に直交する方向には粒子が複数存在しないとは、基材の面内の10μm×10μmを走査型電子顕微鏡(SEM)で3視野観察した際に、表面に直交する方向に複数重なって存在していない状態の粒子の個数の割合が、80%以上であることを表し、好ましくは95%以上である。
<第一の層形成用組成物>
第一の層は、硬化性化合物と粒子とを含む硬化性組成物(第一の層形成用組成物)を塗布してなることが好ましい。第一の層形成用組成物は、硬化性化合物および粒子以外の成分を含有していてもよく、たとえば、溶剤、重合開始剤、粒子の分散剤、レベリング剤、防汚剤等を含有していてもよい。
硬化性化合物は、前述の積層体の層(a)に含まれるバインダー樹脂を形成するためのバインダー樹脂形成用化合物と同様であるので説明は省略する。
また粒子は、前述の積層体の層(a)に含まれる粒子と同様であるので説明は省略する。
−溶剤−
溶媒としては、粒子と極性が近いものを選ぶのが分散性を向上させる観点で好ましい。具体的には、例えば粒子が金属酸化物粒子の場合にはアルコール系の溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。また、例えば粒子が疎水化表面修飾がされた金属樹脂粒子の場合には、ケトン系、エステル系、カーボネート系、アルカン、芳香族系等の溶剤が好ましく、メチルエチルケトン(MEK)、炭酸ジメチル、酢酸メチル、アセトン、メチレンクロライド、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらの溶剤は、分散性を著しく悪化させない範囲で複数種混ぜて用いてもかまわない。
−粒子の分散剤−
本発明では粒子の分散剤を用いてもよい。
粒子の分散剤は、粒子同士の凝集力を低下させることにより、粒子を均一に配置させ易くすることができる。分散剤としては、特に限定されないが、硫酸塩、リン酸塩などのアニオン性化合物、脂肪族アミン塩、四級アンモニウム塩などのカチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が好ましく、吸着基と立体反発基それぞれの選択の自由度が高いため高分子化合物がより好ましい。分散剤としては市販品を用いることもできる。
−レベリング剤−
レベリング剤は、第一の層の表面張力を低下させることにより、塗布後の液を安定化させ硬化性化合物及び粒子を均一に配置させ易くすることができる。
本発明において用いられる第一の層形成用組成物は、少なくとも1種のレベリング剤を含有することができる。
これにより、乾燥風の局所的な分布による乾燥バラツキに起因する膜厚ムラ等を抑制したり、塗布物のハジキを改良したり、硬化性化合物及び粒子を均一に配置させ易くすることができる。
レベリング剤として、具体的には、シリコーン系レベリング剤及びフッ素系レベリング剤から選択される少なくとも1種のレベリング剤を用いることができる。なお、レベリング剤は、低分子化合物よりもオリゴマー又はポリマーであることが好ましい。
レベリング剤を添加すると、塗布された塗膜の表面にレベリング剤が速やかに移動して偏在化し、塗膜の乾燥後もレベリング剤がそのまま表面に偏在することになる。このため、レベリング剤を添加した膜の表面エネルギーは、低下する。膜厚不均一性、ハジキ、及びムラを防止するという観点からは、膜の表面エネルギーが低いことが好ましい。
シリコーン系レベリング剤の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含み、末端及び/又は側鎖に置換基を有するポリマーあるいはオリゴマーが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含むポリマーあるいはオリゴマー中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはポリエーテル基、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アリール基、シンナモイル基、オキセタニル基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、などを含む基が挙げられる。
シリコーン系レべリング剤の数平均分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることがより好ましく、1000〜30000であることが特に好ましく、1000〜20000であることが最も好ましい。
上記レベリング剤は、第一の層形成用組成物の全固形分中に0.01〜5.0質量%含有されることが好ましく、0.01〜2.0質量%含有されることがより好ましく、0.01〜1.0質量%含有されることが最も好ましい。
フッ素系レベリング剤は、フルオロ脂肪族基と、例えばこのレべリング剤を添加剤として使用したときに、コーティング用、成形材料用等の各種組成物に対する親和性に寄与する親媒性基とを同一分子内に有する化合物であり、このような化合物は、一般に、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと親媒性基を有するモノマーとを共重合させて得ることができる。
フルオロ脂肪族基を有するモノマーと共重合される、親媒性基を有するモノマーの代表的な例としては、ポリ(オキシアルキレン)アクリレート、ポリ(オキシアルキレン)メタクリレート等が挙げられる。
フッ素系レベリング剤として、特開2004−331812号公報、特開2004−163610号公報に記載の化合物等を用いることもできる。
(防汚剤)
第一の層には、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することができる。
シリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤の具体例としては、上記シリコーン系あるいはフッ素系のレベリング剤の中で電離放射線硬化基を有するものを好適に使用することができるがこれらに限定されるものではない。
防汚剤は第一の層中の全固形分に対して0.01〜5.0質量%含有されることが好ましく、0.01〜2.0質量%含有されることがより好ましく、0.01〜1.0質量%含有されることが最も好ましい。
(重合開始剤)
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落<0133>〜<0151>に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
第一の層中の重合開始剤の含有量は、第一の層に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分な量であり、かつ開始点が増えすぎないように設定するという理由から、第一の層中の全固形分に対して、0.1〜8質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
第一の層には、上述した重合性官能基を有するシランカップリング剤を反応させるために光あるいは熱により酸又は塩基を発生する化合物(以下、光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤と称する場合がある。)を含んでいてもよい。
(光酸発生剤)
光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物等を挙げることができる。また、トリアジン類(例えば、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなど)、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物を挙げることもできる。
また、光により酸を発生する基、または化合物をポリマーの主鎖もしくは側鎖に導入した化合物を用いることができる。
さらに、V.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad et al.,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al.,J.Chem.Soc.,(C),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
(熱酸発生剤)
熱酸発生剤としては、酸と有機塩基からなる塩を挙げることができる。
上記の酸としては、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸など有機酸や硫酸、リン酸のような無機酸が挙げられる。硬化性化合物に対する相溶性の観点からは、有機酸がより好ましく、スルホン酸、ホスホン酸が更に好ましく、スルホン酸が最も好ましい。好ましいスルホン酸としては、p−トルエンスルホン酸(PTS)、ベンゼンスルホン酸(BS)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)、p−クロロベンゼンスルホン酸(CBS)、1,4−ナフタレンジスルホン酸(NDS)、メタンスルホン酸(MsOH)、ノナフルオロブタン−1−スルホン酸(NFBS)などが挙げられる。
酸発生剤の具体例としては特開2016−803号に記載のものを好適に用いることができる。
(光塩基発生剤)
光塩基発生剤としては、活性エネルギー線の作用により塩基を発生する物質を挙げることができる。より具体的には、(1)紫外線、可視光、又は赤外線の照射により脱炭酸して分解する有機酸と塩基の塩、(2)分子内求核置換反応や転位反応などにより分解してアミン類を放出する化合物、あるいは(3)紫外線、可視光、又は赤外線の照射により何らかの化学反応を起こして塩基を放出するものを使用できる。
本発明に用いられる光塩基発生剤は、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線などの活性エネルギー線の作用により塩基を発生する物質であれば特に限定されない。
具体的には特開2010−243773に記載のものを好適に用いる事ができる。
第一の層中の、光あるいは熱により酸や塩基を発生する化合物の含有量は、第一の層に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分な量であり、かつ開始点が増えすぎないように設定するという理由から、第一の層中の全固形分に対して、0.1〜8質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
<<第二の工程>>
第二の工程は、支持体31上に粘着剤層32を有する粘着フィルム33を、第一の層15と貼り合わせる工程である。
第一の層15と粘着フィルム33とを貼り合わせる方法としては特に限定されず公知の方法を用いることができ、たとえばラミネート法が挙げられる。
第一の層15と粘着剤層32とが接するように粘着フィルム33を貼り合わせる。
第二の工程の前に、第一の層を乾燥する工程を有していてもよい。第一の層15の乾燥温度は20〜60℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。乾燥時間は0.1〜120秒が好ましく、1〜30秒がより好ましい。
<粘着フィルム>
粘着フィルム33は、支持体と粘着剤層とを有する。
<支持体>
粘着フィルム33における支持体31について説明する。
支持体31としては、透明性および可撓性を有する樹脂からなるプラスチックフィルムが好ましく用いられる。支持体用のプラスチックフィルムとしては、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルム、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、セルロースアシレート等のセルロース系樹脂等からなるフィルムが挙げられる。ただし、上記(メタ)アクリル系樹脂は、ラクトン環構造を有する重合体、無水グルタル酸環構造を有する重合体、グルタルイミド環構造を有する重合体を含む。
このほか、必要な強度を有しかつ光学適性を有するものであれば、他のプラスチックフィルムも使用可能である。支持体は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されていてもよく、また、延伸倍率または延伸の結晶化に伴い形成される軸方法の角度を制御したプラスチックフィルムでもよい。
支持体31としては、紫外線透過性を有するものが好ましい。紫外線透過性を有することで、第四の工程において第一の層15を硬化する際、支持体31側から紫外線照射が可能になるため、製造適性上好ましい。
具体的には、支持体31の波長250nm〜300nmにおける最大透過率が20%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが最も好ましい。波長250nm〜300nmにおける最大透過率が20%以上であると支持体31側から紫外線を照射して第一の層を硬化させやすく好ましい。
また、支持体31上に粘着剤層32を形成した粘着フィルム33の波長250nm〜300nmにおける最大透過率が20%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが最も好ましい。
支持体31の膜厚は特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましく、10μm以上40μm以下であることが更に好ましい。
(粘着剤層)
粘着剤層32は、ゲル分率が95.0%以上の粘着剤からなることが好ましい。
粘着剤32のゲル分率が95.0%以上であることで、第五の工程において、粘着フィルムを剥離して本発明の積層体を製造する際に、粘着剤成分が積層体表面に残りにくく、洗浄を行う必要がない。
粘着剤32のゲル分率は、95.0%以上99.9%以下であることが好ましく、97.0%以上99.9%以下であることがより好ましく、98.0%以上99.9%以下であることが更に好ましい。
粘着剤32のゲル分率は、粘着剤を、25℃で、テトラヒドロフラン(THF)に12時間浸漬した後の不溶解分の比率であり、下記式から求められる。
ゲル分率=(粘着剤のTHFへの不溶解分の質量)/(粘着剤の総質量)×100(%)
粘着剤32におけるゾル成分の重量平均分子量が10000以下であることが好ましく、7000以下であることがより好ましく、5000以下であることが最も好ましい。ゾル成分の重量平均分子量を上記範囲にすることによって粘着フィルムを剥離して本発明の積層体を製造する際に、粘着剤成分が積層体表面に残りにくくすることができる。
粘着剤32のゾル成分は、粘着剤を、25℃で、テトラヒドロフラン(THF)に12時間浸漬した後のTHFへの溶解分を表す。重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析することができる。
粘着剤層32の膜厚は0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上30μm以下であることがより好ましく、1μm以上20μm以下であることが更に好ましい。
粘着剤層32は、剥離速度0.3m/minでの被着体の表面に対する剥離強度(粘着力)が、0.03〜0.3N/25mm程度の、微粘着力を有する粘着剤層であることが、被着体である第一の層から粘着フィルム33を剥がす時の操作性に優れることから好ましい。
粘着剤としては、重合体を含むことが好ましく、(メタ)アクリル系重合体を含むことがより好ましい。特に、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種のモノマーの重合体(2種以上のモノマーの場合は共重合体)が好ましい。(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、20万〜200万であることが好ましい。
アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。上記モノマーは2種以上併用されてもよい。
脂肪族環を有する(メタ)アクリレートモノマーの好適な例としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもシクロヘキシル(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
(メタ)アクリル系重合体は、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、他の共重合性モノマーの少なくとも1種とからなる共重体であってもよい。この場合、他の共重合性モノマーとしては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を含有する共重合性ビニルモノマー、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマー、芳香族系モノマー等が挙げられる。
ヒドロキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種であることが好ましい。
(メタ)アクリル系重合体の100質量部に対して、ヒドロキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを0.1〜15質量部含有することが好ましい。
カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなどが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種であることが好ましい。
(メタ)アクリル共重合体の100質量部に対して、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを0.1〜2質量部含有することが好ましい。
アミノ基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族系モノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル類のほか、スチレン等が挙げられる。
上記以外の共重合性ビニルモノマーとしては、アクリルアミド、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの各種ビニルモノマーが挙げられる。
粘着剤は、粘着剤層を形成するための組成物(粘着剤層組成物ともいう)の硬化物を含むものであってもよい。
粘着剤層組成物は、上記重合体と架橋剤とを含むことが好ましく、熱又は紫外線(UV)などを用いて架橋しても良い。架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤が好ましい。架橋剤を用いる場合は、粘着フィルムを剥離して本発明の積層体を製造する際に、粘着剤成分を本発明の積層体表面に残りにくくする観点から、上記重合体の100質量部に対して、0.1〜15質量部含有することが好ましく、3.5〜15質量部含有することがより好ましく、5.1〜10質量部含有することが更に好ましい。
2官能以上のイソシアネート系化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体、及びイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン又はグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
また、3官能以上のイソシアネート化合物が、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であり、特にヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体からなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
2官能以上のイソシアネート系架橋剤は、重合体100質量部に対して、0.01〜5.0質量部含まれることが好ましく、0.02〜3.0質量部含まれることがより好ましい。
粘着剤層組成物は、帯電防止性能を付与するために、帯電防止剤を含有してもよい。帯電防止剤はイオン化合物であることが好ましく4級オニウム塩であることがさらに好ましい。
4級オニウム塩である帯電防止剤としては、例えば、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するジアルキルメチルベンジルアンモニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するトリアルキルベンジルアンモニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルホスホニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するジアルキルメチルベンジルホスホニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するトリアルキルベンジルホスホニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するテトラアルキルホスホニウム塩、炭素数14〜20のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数14〜20のアルキル基を有するアルキルジメチルエチルアンモニウム塩などを用いることができる。これらのアルキル基は、不飽和結合を有するアルケニル基であってもよい。
炭素数8〜18のアルキル基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。天然油脂に由来する混合アルキル基であってもよい。炭素数8〜18のアルケニル基としては、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、リノレイル基などが挙げられる。
炭素数14〜20のアルキル基としては、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などが挙げられる。天然油脂に由来する混合アルキル基であってもよい。炭素数14〜20のアルケニル基としては、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、リノレイル基、ノナデセニル基、イコセニル基などが挙げられる。
4級オニウム塩のカウンターアニオンとしては、クロリド(Cl)、ブロミド(Br )、メチルサルフェート(CHOSO )、エチルサルフェート(COSO )、パラトルエンスルホネート(p−CHSO )等が挙げられる。
4級オニウム塩の具体例としては、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、トリオクチルベンジルアンモニウムクロリド、トリオクチルベンジルアンモニウムブロミド、トリオクチルベンジルホスホニウムクロリド、トリオクチルベンジルホスホニウムブロミド、トリス(デシル)ベンジルアンモニウムクロリド、トリス(デシル)ベンジルアンモニウムブロミド、トリス(デシル)ベンジルホスホニウムクロリド、トリス(デシル)ベンジルホスホニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムクロリド、テトラオクチルホスホニウムブロミド、テトラノニルアンモニウムクロリド、テトラノニルアンモニウムブロミド、テトラノニルホスホニウムクロリド、テトラノニルホスホニウムブロミド、テトラキス(デシル)アンモニウムクロリド、テトラキス(デシル)アンモニウムブロミド、テトラキス(デシル)ホスホニウムクロリド、テトラキス(デシル)ホスホニウムブロミド、等が挙げられる。
なお、「トリス(デシル)」、「テトラキス(デシル)」はそれぞれ、炭素数10のアルキル基であるデシル基を3個又は4個有することを意味し、炭素数13のアルキル基であるトリデシル基、及び炭素数14のアルキル基であるテトラデシル基とは区別される。
帯電防止剤としては、他にノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系の界面活性剤、イオン性液体、アルカリ金属塩、金属酸化物、金属微粒子、導電性ポリマー、カーボン、カーボンナノチューブなども用いることができる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン変性シリコーン類などが挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、モノアルキル硫酸塩類、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、モノアルキルリン酸塩類などが挙げられる。
また、両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどが挙げられる。
イオン性液体としては、陰イオンと陽イオンとから成り、常温(例えば25℃)で液体である非高分子物質である。陽イオン部分としては、イミダゾリウムイオンなどの環状アミジンイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン等が挙げられる。また、陰イオン部分としては、C2n+1COO、C2n+1COO、NO 、C2n+1SO 、(C2n+1SO、(C2n+1SO、PO 2−、AlCl 、AlCl 、ClO 、BF 、PF 、AsF 、SbF 等が挙げられる。
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩などが挙げられ、イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
帯電防止剤は、重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部含有することが好ましい。
粘着剤組成物は、さらに帯電防止補助剤としてHLBが7〜15のポリエーテル変性シロキサン化合物を含有することもできる。
HLBとは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等で規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
粘着剤組成物は、さらに架橋促進剤を含有することもできる。架橋促進剤は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、共重合体と架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよく、第三級アミン等のアミン系化合物、金属キレート化合物、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。本発明では、架橋促進剤として、金属キレート化合物又は有機錫化合物が好ましい。
金属キレート化合物としては、中心金属原子Mに、1以上の多座配位子Lが結合した化合物である。金属キレート化合物は、金属原子Mに結合する1以上の単座配位子Xを有してもよく、有しなくてもよい。例えば、金属原子Mが1つである金属キレート化合物の一般式を、M(L)(X)で表すとき、m≧1、n≧0である。mが2以上の場合、m個のLは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。nが2以上の場合、n個のXは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。
金属原子Mとしては、Fe,Ni,Mn,Cr,V,Ti,Ru,Zn,Al,Zr,Sn等が挙げられる。多座配位子Lとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ−ケトエステル、アセチルアセトン(別名2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ−ジケトンが挙げられる。これらは、ケトエノール互変異性体化合物であり、多座配位子Lにおいてはエノールが脱プロトンしたエノラート(例えばアセチルアセトネート)であってもよい。
単座配位子Xとしては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、2−エチルヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基等のアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基などが挙げられる。
金属キレート化合物の具体例としては、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄トリスアセチルアセトネート、チタニウムトリスアセチルアセトネート、ルテニウムトリスアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、トリス(2,4−ヘキサンジオナト)鉄(III)、ビス(2,4−ヘキサンジオナト)亜鉛、トリス(2,4−ヘキサンジオナト)チタン、トリス(2,4−ヘキサンジオナト)アルミニウム、テトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)ジルコニウム等が挙げられる。
有機錫化合物としては、ジアルキル錫オキシド、ジアルキル錫の脂肪酸塩、第1錫の脂肪酸塩等が挙げられる。ジオクチル錫化合物等の長鎖アルキル錫化合物が好ましい。具体的な有機錫化合物としては、ジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレート等が挙げられる。
架橋促進剤は、共重合体の100質量部に対して、0.001〜0.5質量部含まれることが好ましい。
支持体31上に粘着剤層32を形成した粘着フィルム33としては、市販の保護フィルムを好適に用いることができる。具体的には、藤森工業(株)製のAS3−304、AS3−305、AS3−306、AS3−307、AS3−310、AS3−0421、AS3−0520、AS3−0620、LBO−307、NBO−0424、ZBO−0421、S−362、TFB−4T3−367AS等が挙げられる。
<<第三の工程>>
第三の工程は、粒子13が、第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没し、かつ、第一の層15の基材側の界面とは反対側の界面16から突出するように、第一の層15と粘着剤層32の界面16の位置を基材11側に近づける(下げる)工程である。
「粒子が、第一の層および粘着剤層を合わせた層中に埋没」するということは、第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17の厚みが粒子13の平均一次粒径の0.8倍以上であることを表すものとする。
第三の工程は、硬化性化合物の一部を基材11(基材が機能層を有する場合は機能層であってもよい)に浸透させることにより行われるか、硬化性化合物の一部を粘着剤層32に浸透させることにより行われることが好ましい。
第三の工程において、硬化性化合物の一部を基材11(支持体が機能層を有する場合は機能層であってもよい)に浸透させる場合、基材11、第一の層15、および粘着剤層32を有する積層体を加熱することが好ましい。加熱することによって、効果的に硬化性化合物の一部を基材に浸透させることができる。加熱における温度は、基材のガラス転移温度より小さいことが好ましく、具体的には、60〜180℃であることが好ましく、80〜130℃であることがより好ましい。
第三の工程において、硬化性化合物の一部を粘着剤層32に浸透させる場合、基材11、第一の層15、および粘着剤層32を有する積層体を60℃未満に保つことが好ましく、40℃以下に保つことがより好ましい。温度を40℃以下に保つことで、硬化性化合物および粘着剤の粘度を高く保つことができるとともに、粒子の熱運動を抑制することができるため、粒子の凝集による反射防止能の低下およびヘイズ又は白濁感の上昇を防ぐ効果が大きい。基材11、第一の層15、および粘着剤層32を有する積層体を保つ温度の下限は特に限定されるものではなく、室温であっても、室温より低い温度であってもよい。
<<第四の工程>>
第四の工程は、粒子13が第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没した状態で第一の層15を硬化する工程である。
「粒子が第一の層および粘着剤層を合わせた層中に埋没した状態」とは、第一の層および粘着剤層を合わせた層の厚みが粒子の平均一次粒径の0.8倍以上であることを表すものとする。
第一の層15を硬化するとは、第一の層15に含まれる硬化性化合物を重合させることを表し、これにより、出来上がりの積層体の層(a)におけるバインダー樹脂14を形成することができる。第四の工程で粒子13が第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没した状態を維持することで、粒子13の凝集を抑制し、目的とする凹凸形状を形成することができる。
なお、粘着剤層32を設けた後に粘着剤層32または第一の層15の成分の揮発あるいは、基材11(基材が機能層を有する場合は機能層であってもよい)への浸透などにより、粒子13が第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没した状態を維持できないと考えられる場合は、粘着剤層32をあらかじめ厚くしておく等の操作を行うことができる。
粒子13が第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没した状態を維持することで粒子凝集が抑制されるメカニズムとしては、第一の層が硬化するまでに粒子13が空気界面に露出すると、横毛管力と言われる表面張力由来の大きな引力が働く事が知られており、第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に粒子を埋没させておくことで上記引力を小さくできるためと推定している。
硬化は電離放射線を照射することで行うことができる。電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が広く用いられる。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm〜1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して第一の層15の硬化性化合物を硬化するのが好ましい。50mJ/cm〜1000mJ/cmであることがより好ましく、100mJ/cm〜500mJ/cmであることがさらに好ましい。照射の際には、上記エネルギーを一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプまたは高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
硬化時の酸素濃度は0〜1.0体積%であることが好ましく、0〜0.1体積%であることがさらに好ましく、0〜0.05体積%であることが最も好ましい。硬化時の酸素濃度を1.0体積%以下とすることで、酸素による硬化阻害の影響を受けにくくなり、強固な膜となる。
第二の工程〜第四の工程において、基材11の表面に直交する方向には粒子が複数存在しないことが好ましい。
第二の工程〜第四の工程において、第一の層15の膜厚と粘着剤層32の膜厚の合計の膜厚が、粒子の平均一次粒径よりも大きいことが好ましい。
第一の層15の膜厚と粘着剤層32の膜厚の合計の膜厚が、粒子13の平均一次粒径よりも大きいと粒子13が第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没した状態にすることができ、好ましい。
ただし、後述する第五の工程で粘着剤層を含む粘着フィルムを剥離後に第一の15層の表面から粒子が突出した形状を得るという理由から、第四の工程において、第一の層15の膜厚は粒子13の平均一次粒径よりも小さいことが好ましく、粒子13の平均一次粒径の半分以下であることがより好ましい。
第四の工程における第一の層15の膜厚は、これを硬化して得られた層(a)(図2(5)におけるバインダー樹脂14を含む層)の基材11側の界面とは反対側の界面16の高さが、粒子13の平均一次粒径の半分以下となるように調整することが好ましく、より好ましくは、第一の層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、任意に100箇所の膜厚を計測してその平均値を求めた場合に、10nm〜100nm、より好ましくは20nm〜90nm、さらに好ましくは30nm〜70nmとなるように調整するのが好ましい。
粒子13は、上記粒子と同様のものを用いることができる。なかでも、粒子13は粒子であることが好ましく、塗布液中での分散性向上、膜強度向上、凝集防止のために表面処理された粒子であることがより好ましい。表面処理方法の具体例およびその好ましい例は、特開2007−298974号公報の<0119>〜<0147>に記載のものと同様である。
特に、バインダー成分との結着性を付与し、膜強度を向上させる観点から、粒子表面を不飽和二重結合および粒子表面と反応性を有する官能基を有する化合物で表面修飾し、粒子表面に不飽和二重結合を付与することが好ましく、(メタ)アクリロイル基が付与されることがより好ましい。
本発明においては、第四の工程で、粒子13が第一の層15および粘着剤層32を合わせた層17中に埋没した状態を維持しながら第一の層15を硬化するが、第四の工程の前の段階で、界面16から突出した粒子13によって形成された凹凸形状を有していることが好ましい。こうすることで、第四の工程で第一の層15を硬化した後、第五の工程で粘着フィルム33を剥離すると、第一の層15の表面から粒子が突出した状態の積層体を得ることができる。
第四の工程の前の段階で、界面16から突出した粒子によって形成された凹凸形状を有しているようにするためには、上記第三の工程で、硬化性化合物の一部を基材11(基材がハードコート層などの機能層を有する場合はその機能層)に浸透させるか、又は硬化性化合物の一部を粘着剤層32に浸透させることが好ましい。
本発明では、第一の工程と第二の工程の間に第一の層15中の硬化性化合物の一部を硬化させ、硬化された化合物を得る工程を含んでもよい。
この工程で硬化性化合物の一部を硬化させることにより、粒子を動きにくくして、粒子の凝集を更に抑制することができる。
硬化性化合物の一部を硬化させるとは、硬化性化合物のすべてではなく、一部のみを硬化させることを表す。この工程で硬化性化合物の一部のみを硬化させることで、第三の工程で粒子13が第一の層15の基材11側の界面とは反対側の界面16から突出するように第一の層15と粘着剤層32の界面16の位置を基材11側に近づけた際に目的とする凹凸形状を形成することができる。
<<第五の工程>>
第五の工程は、上記第四の工程の後に、粘着フィルム33を剥がす工程であり、第一〜第五の工程を経て、本発明の積層体が完成する。
[三次元曲面を有する反射防止物品]
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品は、
三次元曲面を有する反射防止物品であって、
上記三次元曲面の最小曲率半径は1〜1000mmであり、
上記三次元曲面上に、粒子により形成された凹凸形状を有し、
上記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとの比であるB/Aが0.4以上であり、
上記三次元曲面上に存在する上記粒子の数は、1μm当たり9個以上40個以下であり、
上記三次元曲面における反射率の最大値と最小値の差が1.2%より小さい、三次元曲面を有する反射防止物品である。なお、上記反射率は波長450nmから波長650nmの範囲を5nm間隔で測定した値の平均値とする。
前述のとおり、三次元曲面とは、可展面でない曲面を指す。可展面とは伸縮することなしに平面に展開できる曲面のことであり、平面を曲げたり切ったりして作ることのできる曲面をいう。
また、三次元曲面の曲率半径は、三次元曲面を平面と交差させた時に取り得る曲線群において最も曲率が大きくなる曲線における曲率半径(最小曲率半径)で表す。なお、本発明の三次元曲面を有する反射防止物品の三次元曲面には、三次元曲面を平面と交差させた時に取り得る曲線群において、上記最小曲率半径より大きい曲率半径の曲線が含まれていてもよい。三次元曲面の曲率半径は形状スキャナで表面形状の座標を取得し、それを演算処理することで得ることができる。
なお、本発明における三次元曲面を有する反射防止物品は、三次元曲面の形状が凸型、凹型のいずれであってもよい。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品の三次元曲面の最小曲率半径は1〜1000mmであることが好ましく、1〜200mmであることがより好ましい。
前述のとおり、本発明の三次元曲面を有する反射防止物品は、本発明の積層体を三次元曲面を有する形状に成形して得られた反射防止積層体を用いて製造することができる。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品における粒子により形成された凹凸形状とは、好ましくはバインダー樹脂を含む膜から突出した1つ1つの粒子が凸部となり、粒子が存在しない部分が凹部となったものである。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品における凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとの比であるB/Aが0.4以上である。B/Aが0.4以上であると、凸部同士の距離に対する凹部の深さが大きくなり、空気から反射防止物品内部にかけて緩やかに連続的に屈折率が変化する屈折率傾斜層を作ることができるため、反射率を低減できる。B/Aが0.45以上であることが好ましく、0.50以上であることがより好ましい。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品において、上記距離Aは、200nm以上400nm以下であることが好ましく、220nm以上300nm以下であることがより好ましく、240nm以上280nm以下であることが更に好ましい。
また、距離Bは、100nm以上180nm以下であることが好ましく、110nm以上160nm以下であることがより好ましく、120nm以上150nm以下であることが更に好ましい。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品において、三次元曲面上に存在する粒子の数は、1μm当たり9個以上40個以下であることがより好ましい。三次元曲面上に存在する粒子の数を1μm当たり9個以上40個以下にすることで、上記距離Aを好ましい数値範囲とすることが可能となり、低反射率を達成できる。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品における凹凸形状はモスアイ構造になっていることが好ましい。なお、凸部を形成する粒子の表面にバインダー樹脂などの他の成分が存在していてもよい。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品は、平均反射率が1.3%以下であること好ましい。これにより反射防止機能に優れるものとすることができる。平均反射率は1.1%以下であることがより好ましく、0.9%以下であることが更に好ましい。
ここで、本明細書において、反射率とは、以下の方法による測定値とする。
まず三次元曲面を有する反射防止物品において、凹凸形状が形成されている側の裏面に、油性黒インキ(補填用マジックインキ:寺西化学)を塗り、裏面反射をなくした状態とする。分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターARV−474を装着し、サンプル設置のための開口部に三次元曲面を有する反射防止物品の凹凸形状が形成されている側を押し当て、波長380nmから780nmの範囲の積分球反射率を波長間隔5nm刻みで測定する。得られたデータのうち、波長450nmから波長650nmの範囲を5nm間隔で測定した値の平均値を本発明における反射率とする。
三次元曲面を有する反射防止物品の平均反射率は、三次元曲面を平面と交差させた時に取り得る曲線群において最も曲率が大きくなる曲線に沿って1cm間隔でサンプルの端から端まで反射率を測定し、得られた値の平均値とする。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品は、三次元曲面における反射率の最大値と最小値の差が1.2%より小さい。これにより反射率のムラを抑制でき、反射防止機能をより優れたものとすることができる。本発明の三次元曲面を有する反射防止物品の三次元曲面における反射率の最大値と最小値の差は、0.70%以下であることが好ましく、0.50%以下であることがより好ましい。
三次元曲面を有する反射防止物品の三次元曲面における反射率の最大値と最小値の差は、三次元曲面を平面と交差させた時に取り得る曲線群において最も曲率が大きくなる曲線に沿って1cm間隔でサンプルの端から端まで反射率を測定し、得られた値のうちの最大値と最小値の差とする。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品においては、モスアイ構造を構成するために粒子硬度の高い金属酸化物粒子を用いることにより、耐擦傷性にも優れるものとすることができる。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品は、耐擦傷性試験で、擦り前後での反射率差が0.2%以内であることが好ましく、0.1%以内であるとより好ましい。この範囲であると耐擦傷性に優れる。
本明細書における耐擦傷性は、日本スチールウール株式会社製、品番B−204、等級(番手)#0000のスチールウールをラビングテスターの1cm角の先端部に巻いて、三次元曲面を有する反射防止物品の凹凸形状を有する側の表面を50g/cm荷重で擦ったとき、擦った部分と擦っていない部分の反射率差が0.2%以内であるか否かを判断基準とする。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品において、金属酸化物粒子としては、上述の本発明の積層体における金属酸化物粒子と同様である。
本発明の三次元曲面を有する反射防止物品の具体的な一実施形態としては、三次元曲面を有する物品に、上述の本発明の積層体を三次元曲面を有する形状に成形した反射防止積層体を適用したものが挙げられる。
[三次元曲面を有する反射防止物品の製造方法]
三次元曲面を有する反射防止物品の製造方法としては、特に限定されないが、一例としては、
本発明の積層体を三次元曲面を有する物品の上記三次元曲面の少なくとも一部の領域を覆うように貼合する工程と、上記積層体を貼合した物品を上記積層体の基材のガラス転移温度以上の温度で加熱する工程を含む、三次元曲面を有する反射防止物品の製造方法が挙げられる。
三次元曲面を有する反射防止物品は、例えば、積層体を曲げて筒状にし、所定の形状の物品に外嵌した後、加熱処理によって積層体を熱収縮させ、所定の形状の物品に追従密着させること(シュリンク加工)によって製造できる。上記加熱処理の方法としては、例えば、オーブンで加熱する方法、熱風トンネル又はスチームトンネルを通過させる方法、赤外線などの輻射熱で加熱する方法等が挙げられる。その他、スチームで処理する(スチームおよび湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)方法、100℃以上のドライスチームで処理する方法を用いることもできる。温度は基材のガラス転移温度以上で実施することが好ましく、ガラス転移温度以上ガラス転移温度+30℃未満の範囲で実施することがより好ましい。加熱処理の処理時間は1秒から1時間が好ましく、生産性、経済性の観点から、1〜300秒がより好ましい。
三次元曲面を有する物品としては、特に限定されないが、例えば、三次元曲面を有する画像表示装置、車のフロントガラス及びリアガラス、車のヘッドライトカバーやテールランプカバー、車載センサーおよびそのカバー、速度メーターのカバーガラス、車の内装部品、ガラスショーケース、防犯カメラおよびそのカバー等が挙げられる。
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものでない。
<基材の作製>
(基材1 延伸PMMA)
PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製デルペット80N)を90℃の真空乾燥機で乾燥して含水率を0.03%以下とした後、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤(ADEKA(株)製 アデカスタブLA-31)を1.0質量部、安定剤(イルガノックス1010(BASF製)0.3質量部を添加して、2軸混練機にて230℃にて混合し、PMMA樹脂ペレットを作製した。
上記で作製したPMMA樹脂ペレットを、二軸押出機を用いて、コートハンガー型Tダイから溶融押出し、未延伸フィルムを作成した。この未延伸フィルムを同時二軸延伸し、基材1を作製した。得られたフィルム(基材1)の厚さは40μmであった。延伸倍率は縦横とも2倍とした。
(基材2 結晶性PET(ポリエチレンテレフタレート))
基材2として、38μm厚のコスモシャインA−4300PET(二軸延伸ポリエステルフィルム、東洋紡製)を用いた。
(基材3 延伸A−PET)
非晶質ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「ノバクリアA2012」、厚み:200μm)を用意し、温度90℃で同時二軸延伸して基材3を作製した。延伸倍率は縦横とも2倍とした。得られた基材3の膜厚は50μmだった。
(基材4 延伸ポリスチレン)
基材4として、二軸延伸ポリスチレンフィルムを用いた。膜厚は50μm、延伸倍率は縦横とも2倍とした。
(基材5〜8 延伸A−PET)
延伸倍率をそれぞれ下記表1に示したものに変更した以外は、基材3と同様の方法で作製した。
<ハードコート層の形成>
実施例1−11および1−12については、ハードコート層を形成した。
基材上に、後述するハードコート層用塗布液をダイコーターを用いて塗布した。30℃で90秒、続いて60℃で1分間乾燥した後、酸素濃度がおよそ0.3体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度200mW/cm、照射量60mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ10μmのハードコート層を形成した。実施例1−11のハードコート層の伸び率は1.5%、実施例1−12のハードコート層の伸び率は30%だった。
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記の組成で各成分を添加し、得られた組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液HC−1〜HC−2とした。
−ハードコート層用塗布液HC−1−
DPHA 33.6質量部
(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレート混合物)
イルガキュア127 1.4質量部
(光重合開始剤,BASFジャパン(株)製)
メチルエチルケトン(MEK) 35.8質量部
酢酸メチル 29.2質量部
−ハードコート層用塗布液HC−2−
UA−122P 33.6質量部
(ウレタンアクリレート,新中村化学工業(株)製)
イルガキュア127 1.4質量部
(光重合開始剤,BASFジャパン(株)製)
メチルエチルケトン(MEK) 35.8質量部
酢酸メチル 29.2質量部
[シリカ粒子P1の合成]
撹拌機、滴下装置および温度計を備えた容量200Lの反応器に、メチルアルコール67.54kgと、28質量%アンモニア水(水および触媒)26.33kgとを仕込み、撹拌しながら液温を33℃に調節した。一方、滴下装置に、テトラメトキシシラン12.70kgをメチルアルコール5.59kgに溶解させた溶液を仕込んだ。反応器中の液温を33℃に保持しながら、滴下装置から上記溶液を37分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに37分間、液温を上記温度に保持しながら撹拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解および縮合を行い、シリカ粒子前駆体を含有する分散液を得た。この分散液を、瞬間真空蒸発装置(ホソカワミクロン(株)製クラックス・システムCVX−8B型)を用いて加熱管温度175℃、減圧度200torr(27kPa)の条件で気流乾燥させることにより、シリカ粒子P1を得た。
シリカ粒子P1の平均一次粒径は170nm、粒径の分散度(CV値)は7.0%、押し込み硬度は340MPaであった。
[焼成シリカ粒子P2の作製]
5kgのシリカ粒子P1をルツボに入れ、電気炉を用いて900℃で2時間焼成した後、冷却して、次いで粉砕機を用いて粉砕し、分級前焼成シリカ粒子を得た。さらにジェット粉砕分級機(日本ニューマ社製IDS−2型)を用いて解砕および分級を行うことにより焼成シリカ粒子P2を得た。
[シランカップリング剤処理シリカ粒子P3の作製]
5kgの焼成シリカ粒子P2を、加熱ジャケットを備えた容量20Lのヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製FM20J型)に仕込んだ。焼成シリカ粒子P2を撹拌しているところに、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM5103)50gを、メチルアルコール90gに溶解させた溶液を滴下して混合した。その後、混合撹拌しながら150℃まで約1時間かけて昇温し、150℃で12時間保持して加熱処理を行った。加熱処理では、掻き落とし装置を撹拌羽根とは逆方向に常時回転させながら、壁面付着物の掻き落としを行った。また、適宜、へらを用いて壁面付着物を掻き落とすことも行った。加熱後、冷却し、ジェット粉砕分級機を用いて解砕および分級を行い、シランカップリング剤処理シリカ粒子P3を得た。
シランカップリング剤処理シリカ粒子P3の平均一次粒径は171nm、粒径の分散度(CV値)は7.0%、押し込み硬度は470MPaであった。
[シリカ粒子分散液PA−1の作製]
シランカップリング剤処理シリカ粒子P3を50g、MEK200g、直径0.05mmジルコニアビーズ600gを直径12cmの1L瓶容器に入れ、ボールミルV−2M(入江商会)にセットし、250回転/分で10時間分散した。このようにして、シリカ粒子分散液PA−1(固形分濃度20質量%)を作製した。
[樹脂粒子分散液PA−2の作製]
エポスターS(平均一次粒子径200nm、日本触媒(株)製メラミン・ホルムアルデヒド縮合物)を50g、MEK200g、直径0.05mmジルコニアビーズ600gを直径12cmの1L瓶容器に入れ、ボールミルV−2M(入江商会)にセットし、250回転/分で10時間分散した。このようにして、樹脂粒子分散液PA−2(固形分濃度20質量%)を作製した。
[化合物C3の合成]
還流冷却器、温度計を付けたフラスコに3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン19.3gとグリセリン1,3−ビスアクリラート3.9g、2−ヒドロキシエチルアクリレート6.8g、ジラウリン酸ジブチル錫0.1g、トルエン70.0gを添加し、室温で12時間撹拌した。撹拌後、メチルハイドロキノン500ppmを加え、減圧留去を行い化合物C3を得た。
下記の組成となるように各成分をミキシングタンクに投入し、60分間攪拌し、30分間超音波分散機により分散し、第一の層形成用組成物A−1〜A−10とした。
第一の層形成用組成物A−1
U−15HA 0.9質量部
化合物C3 0.9質量部
クエン酸アセチルトリエチル 5.8質量部
イルガキュア127 0.1質量部
化合物P 0.03質量部
シリカ粒子分散液PA−1 18.4質量部
化合物A 0.6質量部
エタノール 16.0質量部
メチルエチルケトン 41.5質量部
アセトン 16.0質量部
U−15HA及び化合物C3が硬化性化合物(a1)であり、クエン酸アセチルトリエチルがバインダー用化合物である。クエン酸アセチルトリエチルは、重合性官能基を持たない化合物である。
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
U−15HA(新中村化学工業(株)製):ウレタンアクリレート
イルガキュア127:光重合開始剤(BASFジャパン(株)製)
化合物P:2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン(光酸発生剤、東京化成工業(株)製)
化合物A:F−784−F(DIC(株)製)
クエン酸アセチルトリエチル:東京化成工業(株)製
第一の層形成用組成物A−2
U−15HA 0.3質量部
化合物C3 0.3質量部
クエン酸アセチルトリエチル 8.4質量部
イルガキュア127 0.04質量部
化合物P 0.02質量部
シリカ粒子分散液PA−1 5.8質量部
化合物A 0.2質量部
エタノール 16.2質量部
メチルエチルケトン 52.7質量部
アセトン 16.2質量部
第一の層形成用組成物A−3
U−15HA 0.4質量部
化合物C3 0.4質量部
クエン酸アセチルトリエチル 7.9質量部
イルガキュア127 0.05質量部
化合物P 0.01質量部
シリカ粒子分散液PA−1 8.1質量部
化合物A 0.2質量部
エタノール 16.1質量部
メチルエチルケトン 50.6質量部
アセトン 16.1質量部
第一の層形成用組成物A−4
U−15HA 1.0質量部
化合物C3 1.1質量部
クエン酸アセチルトリエチル 5.1質量部
イルガキュア127 0.1質量部
化合物P 0.03質量部
シリカ粒子分散液PA−1 21.7質量部
化合物A 0.7質量部
エタノール 15.9質量部
メチルエチルケトン 38.5質量部
アセトン 15.9質量部
第一の層形成用組成物A−5
U−15HA 1.2質量部
化合物C3 1.2質量部
クエン酸アセチルトリエチル 4.4質量部
イルガキュア127 0.2質量部
化合物P 0.03質量部
シリカ粒子分散液PA−1 25.0質量部
化合物A 0.8質量部
エタノール 15.8質量部
メチルエチルケトン 35.6質量部
アセトン 15.8質量部
第一の層形成用組成物A−6
U−15HA 2.6質量部
化合物C3 0.9質量部
クエン酸アセチルトリエチル 4.0質量部
イルガキュア127 0.1質量部
化合物P 0.03質量部
シリカ粒子分散液PA−1 18.4質量部
化合物A 0.6質量部
エタノール 16.0質量部
メチルエチルケトン 41.5質量部
アセトン 16.0質量部
第一の層形成用組成物A−7
U−15HA 1.7質量部
化合物C3 0.9質量部
クエン酸アセチルトリエチル 4.9質量部
イルガキュア127 0.1質量部
化合物P 0.03質量部
シリカ粒子分散液PA−1 18.4質量部
化合物A 0.6質量部
エタノール 16.0質量部
メチルエチルケトン 41.5質量部
アセトン 16.0質量部
第一の層形成用組成物A−8
U−15HA 1.3質量部
化合物C3 0.9質量部
クエン酸アセチルトリエチル 5.3質量部
イルガキュア127 0.1質量部
化合物P 0.03質量部
シリカ粒子分散液PA−1 18.4質量部
化合物A 0.6質量部
エタノール 16.0質量部
メチルエチルケトン 41.5質量部
アセトン 16.0質量部
第一の層形成用組成物A−9
U−15HA 0.6質量部
化合物C3 0.9質量部
クエン酸アセチルトリエチル 6.1質量部
イルガキュア127 0.1質量部
化合物P 0.03質量部
シリカ粒子分散液PA−1 18.4質量部
化合物A 0.6質量部
エタノール 16.0質量部
メチルエチルケトン 41.5質量部
アセトン 16.0質量部
第一の層形成用組成物A−10
U−15HA 0.6質量部
化合物C3 0.6質量部
クエン酸アセチルトリエチル 6.5質量部
イルガキュア127 0.08質量部
化合物P 0.02質量部
樹脂粒子分散液PA−2 12.7質量部
化合物A 0.4質量部
エタノール 16.1質量部
メチルエチルケトン 46.9質量部
アセトン 16.1質量部
<積層体の作製>
(第一の工程:第一の層の塗工)
基材上に、第一の層形成用組成物をダイコーターを用いて2.8ml/m塗布し、30℃で90秒乾燥させた。このようにして第一の層を塗工した。
(第二の工程:粘着フィルムの貼り合わせ)
次いで、乾燥後の第一の層上に、藤森工業(株)製の保護フィルム(マスタックTFB
AS3−304)から剥離フィルムを剥離して得られる粘着フィルムを、粘着剤層が第一の層側になるように貼り合わせた。貼り合わせには、業務用ラミネーターBio330(DAE−EL Co.製)を使用し、速度1で実施した。
なお、ここでの保護フィルムとは、支持体/粘着剤層/剥離フィルムから構成される積層体を指し、保護フィルムから剥離フィルムを剥がした、支持体/粘着剤層から構成される積層体が粘着フィルムである。
使用した保護フィルムの詳細を以下に示す。
・マスタックTFB AS3−304(藤森工業(株)製 帯電防止機能付き光学用保護フィルム)(以下、「AS3−304」ともいう)
支持体:ポリエステルフィルム(厚み38μm)
粘着剤層厚み:20μm
剥離フィルムを剥がした状態での波長250nm〜300nmにおける最大透過率:0.1%未満
透過率の測定は、島津製作所(株)製の紫外可視近赤外分光光度計UV3150を用いて行った。
(第三の工程:硬化性化合物の浸透)
粘着フィルムを貼り合わせたまま、120℃で15分間加熱し、硬化性化合物の一部を基材又はハードコート層へ浸透させた。
(第四の工程:第一の層の硬化)
上記の加熱に続いて、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、第一の層が塗布された面側から照度200mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して第一の層を硬化させ、層(a)を形成した。
(第五の工程:粘着フィルムの剥離)
上記作製した積層体から粘着フィルムを剥離した。粘着フィルム(マスタックTFB AS3−304から剥離フィルムを剥がしたもの)を剥離した後、粘着フィルムが貼り合わせてあった面にメチルイソブチルケトンを掛け流して粘着剤層の残渣を洗い流した。その後、25℃で10分乾燥して積層体を得た。
[実施例1−1]
基材に基材1を用い、第一の層形成用組成物A−1を用いて、上記の製造方法により反射防止フィルムを作製した。
[実施例1−2、1−3、1−9、1−10]
基材をそれぞれ基材3、4、6、7にした以外は、実施例1−1と同様に作製した。
[実施例1−4〜1−8、1−13]
第一の層形成用組成物をそれぞれA−3、A−4、A−7、A−8、A−9、A−10にした以外は実施例1−2と同様に作製した。
[実施例1−11]
基材上にハードコート層用塗布液HC−1を用いて、ハードコート層を形成した以外は実施例1−2と同様に作製した。
[実施例1−12]
ハードコート層用塗布液としてHC−2を用いた以外は実施例1−11と同様に作製した。
[比較例1−1、1−6、1−7]
基材をそれぞれ基材2、5、8にした以外は、実施例1−1と同様に作製した。
[比較例1―2]
(低屈折率層の形成)
基材1を用い、その上に、以下に示す低屈折率層用塗布液を特開2003−211052号公報の図1に記載されたスロットダイコーターを用いて塗布し、厚さ92nmの低屈折率層を形成した。低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm 、照射量300mJ/cmの照射量とした。
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm)であった。上記温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に上記ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は50000であった。
(中空シリカ粒子分散液Aの調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、日揮触媒化成(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。1Torrは約133.322Paである。
(低屈折率層用塗布液の調製)
パーフルオロオレフィン共重合体(1)の18.0質量部、トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール(下記構造式)3.0質量部(LINC3A、共栄社化学製(ペンタエリスリトールテトラアクリレートを35質量%含む))、反応性シリコーン(X22−164C、信越化学(株)製)2.5質量部、イルガキュア127(BASF・ジャパン(株)製)1.5質量部、中空シリカ粒子分散液A137.4質量部をメチルエチルケトンに添加して1000質量部とし、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
[比較例1―3、1−4]
第一の層形成用組成物をそれぞれA−2、A−5にした以外は実施例1−2と同様に作製した。
[比較例1−5]
第一の層形成用組成物をA−6とした以外は実施例1−2と同様に作製した。
上記実施例及び比較例により得た積層体について、層(a)の基材側とは反対側の表面の1μm当たりの粒子の粒子個数、及び、粒子により形成された凹凸形状における、隣り合う凸部の頂点間の距離A、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bについては、以下に、より具体的に説明する。
距離A、距離Bは、積層体の断面SEM観察により測定することができる。積層体試料をミクロトームで切削して断面を出し、適切な倍率(5000倍程度)でSEM観察する。観察し易いように、試料にはカーボン蒸着、エッチング等適切な処理を施してもよい。距離Aは隣り合う凸部の頂点間の距離Aを100点測長したときの平均値として算出する。距離Bは、空気と試料が作る界面において、隣り合う凸部の頂点を含み基材面と垂直な面内にて、隣り合う凸部の頂点を結ぶ直線とその垂直二等分線が粒子またはバインダー樹脂に到達する点である凹部との距離を示す。距離Bも距離Aと同様に100点測長したときの平均値として算出する。
粒子個数は、積層体の表面からのSEM観察により測定することができる。観察し易いように、試料にはカーボン蒸着、エッチング等適切な処理を施してもよい。適切な倍率(1000倍程度)を選択し、10μm×10μm四方の範囲をSEM観察する。SEMによって観察された最も表面側に位置する全金属酸化物粒子の位置座標を検出することで、単位面積当たりの粒子個数を得ることが出来る。
<積層体の熱収縮率の測定法>
作製した各積層体について、120mm×35mmに切り出した試料片に対し、100mmの間隔となるように2本の基準線を入れ、無張力下でTg+10℃の加熱オーブン中に1時間放置した。この放置の後、試料片を室温まで冷却して、2本の基準線の間隔を測定し、この値をA(単位;mm)とした。測定されたAを用いて、「100×(100−A)/100」の式から算出された数値を熱収縮率とした。
[積層体の評価方法]
積層体の評価は以下のとおり行った。
<三次元曲面成形性>
ステンレス製の球3種(曲率半径100mm、500mm、1000mm)を用意し、それぞれの球の表面に80mm×150mmの大きさに切り出した積層体を貼り合わせ、ガラス転移温度+10℃で5分間加熱処理を行う。積層体を貼り合わせる方法は、積層体の基材側の表面がステンレス球の表面側を向く配置とし、切り出した積層体の短辺の中央二か所を耐熱性のカプトンテープを用いて球の表面に貼り合わせる。このとき、短辺の中央を結ぶ直線が球面状の円弧に接するようにして、フィルムがたわまない様に貼り合わせる。5分間加熱後、下記A〜Dの評価基準と照らして曲面への追随可否を判断する。曲率半径が小さいモールドに追随できるほど三次元曲面成型性が高い。
A:曲率半径100mmのモールドに追随可能
B:曲率半径500mmのモールドに追随可能
C:曲率半径1000mmのモールドに追随可能
D:曲率半径1000mmのモールドに追随できない
<三次元曲面を有する反射防止物品の製造>
作製した各積層体について、曲率半径75mmのステンレス球を用いて三次元曲面を有する物品の作製を行った。球の表面に80mm×150mmの大きさに切り出した積層体を貼り合わせ、ガラス転移温度+10℃で5分間加熱処理を行った。積層体を貼り合わせる方法は、積層体の基材側の表面がステンレス球の表面側を向く配置とし、切り出した積層体の短辺の中央二か所を耐熱性のカプトンテープを用いて球の表面に貼り合わせる。このとき、短辺の中央を結ぶ直線が球面状の円弧に接するようにして、フィルムがたわまない様に貼り合わせる。これにより三次元曲面を有する反射防止物品を作製した。
<平均反射率、反射率の面内分布(反射率の最大値−最小値)>
得られた三次元曲面を有する反射防止物品に対して、平均反射率、反射率の面内分布につき、上述の測定方法にて測定を行った。
<耐擦傷性>
得られた三次元曲面を有する反射防止物品の反射防止層側の表面を、ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦りテストを行うことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、ゲレードNo.0000)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定した。
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:50g/cm
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:10往復
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射率を測定し、こすり部分の傷を評価した。
(評価基準)
A:スチールウール擦り部と正常部(擦っていない部分)の反射率差がΔ0.1%以内
B:スチールウール擦り部と正常部(擦っていない部分)の反射率差がΔ0.1%を超え、Δ0.2%以内
C:スチールウール擦り部と正常部(擦っていない部分)の反射率差がΔ0.2%を超え、Δ0.5%以内
積層体の構成および評価結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明の積層体は、三次元曲面成形性に優れ、三次元曲面を有する物品へ適用した際に、反射率が低く、反射率のムラが小さく、耐擦傷性が優れたものとなる。
また、ハードコート層を形成した実施例1−11、1−12は、より耐擦傷性に優れる。
[実施例2−1]
積層体に実施例1−1にて作製した積層体を用い、曲率半径が75mmのステンレス球を用い、球の表面に80mm×150mmの大きさに切り出した実施例1−1の積層体を貼り合わせて、ガラス転移温度+10℃で5分間加熱処理を行った。積層体を貼り合わせる方法は、積層体の基材側の表面がステンレス球の表面側を向く配置とし、切り出した積層体の短辺の中央二か所を耐熱性のカプトンテープを用いて球の表面に貼り合わせる。このとき、短辺の中央を結ぶ直線が球面状の円弧に接するようにして、フィルムがたわまない様に貼り合わせる。これにより三次元曲面を有する反射防止物品を作製した。
[実施例2−2、2−3]
積層体をそれぞれ実施例1−4、1−5で作製した積層体にした以外は、実施例2−1と同様に作製した。
[実施例2−4〜2−7]
曲率半径がそれぞれ2mm、20mm、100mm、900mmのステンレス球を用いた以外は、実施例2−1と同様に作製した。
[比較例2−1、2−2]
積層体をそれぞれ比較例1−3、1−4で作製した積層体にした以外は、実施例2−1と同様に作製した。
[実施例3−1、3−2]
また、曲率半径75mmのステンレス球に80mm×150mmの大きさに切り出した実施例1−1の積層体を、積層体の基材と反対側の表面がステンレス球の表面側を向く配置とした以外は、実施例2−1同様に貼り合せ、ガラス転移温度+10℃で5分間過熱処理を行った。これにより凹型の三次元曲面を有する反射防止物品を作製した。
実施例3−2は、実施例1−5の積層体を用いた以外は実施例3−1と同様に作製した。
[比較例3−1、3−2]
積層体をそれぞれ比較例1−3、1−4で作製した積層体にした以外は、実施例3−1と同様に作製した。
上記実施例及び比較例により得た三次元曲面を有する反射防止物品について、三次元曲面の表面の1μm当たりの粒子の粒子個数、及び、粒子により形成された凹凸形状における、隣り合う凸部の頂点間の距離A、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離B については、積層体における粒子個数、A、Bと同様にSEM観察により求めた。
[三次元曲面物品の評価方法]
三次元曲面物品は、本発明の積層体の評価方法において、評価用三次元曲面物品に対して行った評価方法と同様の評価方法にて、平均反射率、反射率の面内分布、及び耐擦傷性について評価した。
三次元曲面物品の構成および評価結果を表2に示す。
表2の結果より、本発明の三次元曲面を有する反射防止物品は、平均反射率が低く、反射率のムラが小さく、耐擦傷性に優れていることが分かる。
10 積層体
11 基材
12 層(a)
13 粒子
14 バインダー樹脂
15 第一の層
16 界面
17 第一の層および粘着剤層を合わせた層
31 支持体
32 粘着剤層
33 粘着フィルム

Claims (10)

  1. 基材と、バインダー樹脂及び粒子を含有する層(a)とを有する積層体であって、
    前記層(a)は、前記基材側とは反対側の表面に前記粒子により形成された凹凸形状を有し、
    前記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとの比であるB/Aが0.35以上であり、
    前記層(a)の前記基材側とは反対側の表面に存在する粒子の数は、1μm当たり6.3個以上20個以下であり、
    前記基材のガラス転移温度+10℃で1時間加熱した時の、前記積層体の熱収縮率が20%以上70%未満である、積層体。
  2. 前記基材のガラス転移温度+10℃で1時間加熱した時の、前記基材の熱収縮率が20%以上70%未満である、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記バインダー樹脂の伸び率が10%以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記基材と前記層(a)の間にハードコート層を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記ハードコート層の伸び率が10%以上である、請求項4に記載の積層体。
  6. 前記粒子の平均一次粒径が250nm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記層(a)の前記基材側とは反対側の表面に存在する粒子の数が、1μm当たり7個以上16個以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 三次元曲面を有する反射防止物品であって、
    前記三次元曲面の最小曲率半径は1〜1000mmであり、
    前記三次元曲面上に、粒子により形成された凹凸形状を有し、
    前記凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとの比であるB/Aが0.4以上であり、
    前記三次元曲面上に存在する前記粒子の数は、1μm当たり9個以上40個以下であり、
    前記三次元曲面における反射率の最大値と最小値の差が1.2%より小さい、三次元曲面を有する反射防止物品。
    なお、前記反射率は波長450nmから波長650nmの範囲を5nm間隔で測定した値の平均値とする。
  9. 前記粒子の平均一次粒径が250nm以下である、請求項8に記載の三次元曲面を有する反射防止物品。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体を、三次元曲面を有する物品の前記三次元曲面の少なくとも一部の領域を覆うように貼合する工程と、
    前記積層体を貼合した物品を、前記積層体の基材のガラス転移温度以上の温度で加熱する工程と、
    を含む、三次元曲面を有する反射防止物品の製造方法。
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