JP6726788B2 - 荷電粒子装置、構造物の製造方法および構造物製造システム - Google Patents

荷電粒子装置、構造物の製造方法および構造物製造システム Download PDF

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Description

本発明は、荷電粒子装置、構造物の製造方法および構造物製造システムに関する。
電子線をターゲットに照射させる荷電粒子装置が知られている(特許文献1)。
米国特許公開番号2013/0083896
本発明の第1の態様によると、荷電粒子装置は、電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された電子が照射される電子被照射部と、内部を排気可能で、前記電子被照射部を内部に収容する収容部と、前記収容部に収容された前記電子被照射部に通電するための電線を収容するために、前記収容部の外部から前記収容部に設けられた挿入部を介して挿入された電線収容部と、前記収容部の内壁であって前記挿入部の近傍から前記収容部の内部に向かって広がるように、前記電線収容部を囲み突出する挿入部側突出部と、を備える
本発明の第2の態様によると、構造物の製造方法は、構造物の形状に関する設計情報を作製する設計工程と、前記設計情報に基づいて前記構造物を作製する成形工程と、作製された前記構造物の形状を第1の態様の荷電粒子装置を用いて計測する計測工程と、前記計測工程で得られた形状情報と、前記設計情報とを比較する検査工程と、を有する。
本発明の第3の態様によると、構造物製造システムは、構造物の形状に関する設計情報を作製する設計装置と、前記設計情報に基づいて前記構造物を作製する成形装置と、作製された前記構造物の形状を測定する請求項13に記載の荷電粒子装置と、前記X線発生装置を用いたX線装置によって得られた前記構造物の形状に関する形状情報と前記設計情報とを比較する検査装置と、を含む。
第1の実施の形態による荷電粒子装置の概略構成図である。 (a)は挿入部側突出部がない場合における収容部内の空間の電位分布のシミュレーション結果を示す説明図であり、(b)は挿入部側突出部がある場合における収容部内の空間の電位分布のシミュレーション結果を示す説明図である。 (a)は図2(a)において破線で囲んだ領域Aの拡大図であり、(b)は図2(b)において破線で囲んだ領域Bの拡大図である。 第2の実施の形態による荷電粒子装置の概略構成図である。 (a)は電子被照射部側突出部がない場合における収容部内の空間の電位分布のシミュレーション結果を示す説明図であり、(b)は電子被照射部側突出部がある場合における収容部内の空間の電位分布のシミュレーション結果を示す説明図である。 (a)は図5(a)において破線で囲んだ領域Cの拡大図であり、(b)は図5(b)において破線で囲んだ領域Dの拡大図である。 変形例による荷電粒子装置の概略構成図である。 第3の実施の形態によるX線装置の全体構成の一例を示す図である。 第3の実施の形態による構造物製造システムのブロック構成の一例を示す図である。 第3の実施の形態による構造物製造システムによる処理の流れを示したフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。また、図面においては、実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をZ軸方向、水平面内においてZ軸方向と直交する方向をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
−第1の実施の形態−
図面を参照しながら、第1の実施の形態による荷電粒子装置について、X線発生装置を例に挙げて説明する。なお、第1の実施の形態は、発明の趣旨の理解のために具体的に説明するためのものであり、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
図1は、第1の実施の形態によるX線発生装置10Aの概略構成図である。X線発生装置10Aは、電子放出部20、電子被照射部30、電子被照射部30を載置する載置台31、収容部40、電線50を収容するための電線収容部51、電線収容部51を挿入するための挿入部60、および挿入部側突出部70を備える。X線発生装置10Aにおいては、電子放出部20から放出された電子線が電子被照射部30に到達することにより、電子被照射部30からX線が放出される。
電子放出部20は、フィラメント21および中間電極22を含んで構成される。電子放出部20は、内部を真空排気可能であり、真空ポンプ等の真空排気系により真空状態とすることができる。フィラメント21は、たとえばタングステンを含む材料により構成され、電子被照射部30へ向けて鋭く尖った先端を有するように構成されている。中間電極22は、フィラメント21から放出される電子を通すための開口部を有する。
X線発生装置10Aは、高電圧電源部110Aおよび高電圧電源部110Bを備える。高電圧電源部110Aは、高電圧を供給可能な電線を介して、フィラメント21に接続され、フィラメント21にグラウンド電位である中間電極22に対して負の電圧(たとえば−225kV)を印加する。また、高電圧電源部110Bは、電線50を介して電子被照射部30に接続され、電子被照射部30に中間電極22に対して正の電圧(たとえば+225kV)を印加する。すなわち、フィラメント21は、電子被照射部30に対して大きな負の電圧(たとえば−450kV)を有する。中間電極22は接地電位(グランド電位)となるようにする。
上記説明の負の電圧をフィラメント21に印加し、フィラメント21に別途加熱電流を流すことによって、フィラメント21は加熱され、フィラメント21の先端から電子線(熱電子)が電子被照射部30に向けて放出される。すなわち、フィラメント21は、高電圧電源部110Aにより高電圧が印加されると、電子線を放出するカソードとして機能する。なお、上記説明の通り、本実施の形態では、フィラメント加熱による熱電子を使用したカソードであるが、カソードを加熱することなく、カソードの周囲に強い電界を形成させることにより電子線を放出させるものやショットキー効果を利用したカソードであっても良い。
フィラメント21から放出された電子線は、フィラメント21と電子被照射部30との間の電位差(たとえば450kV)により加速されながら電子被照射部30へ向かう。たとえば、450kVの加速電圧により加速されながら電子被照射部30へ向かう。電子線は、電子放出部20に備えられた不図示の電子光学部材により集束され、電子光学部材の収束位置(フォーカルスポット)に配置された電子被照射部30に衝突する。
電子被照射部30は一般にターゲットとも呼ばれ、たとえばタングステンを含む材料により構成され、フィラメント21から放出された電子線が衝突することによりX線を発生する。図1に示すように、本実施の形態によるX線発生装置10Aは、電子被照射部30に衝突する電子線の反射方向にX線が出射する反射型X線発生装置として構成される例を示している。したがって、本実施形態では、電子被照射部30に入射する電子線の方向と、電子被照射部30から出射されるX線の照射方向が異なる。なお、X線発生装置は、反射型に限られず、電子被照射部30に衝突する電子線の透過方向にX線が出射する透過型X線発生装置でも構わない。この場合に、電子被照射部30に入射する電子線の方向と、電子被照射部30から出射するX線の出射する方向とが同じである。
上記の通り、電子被照射部30に電子線が照射されることにより、電子被照射部30からは円錐状のX線(いわゆるコーンビーム)が出射し、このX線は、X線透過部41を介して収容部40の外部に出射する。X線透過部41は、X線を透過する材料により構成される。なお、X線発生装置10Aは円錐状のX線(コーンビーム)を放射するもののみならず、扁平な扇状のX線(いわゆるファンビーム)や線状のX線(いわゆるペンシルビーム)を放射するものについても本発明の一態様に含まれる。X線発生装置10Aは、たとえば約50eVの超軟X線、約0.1〜2keVの軟X線、約2〜20keVのX線および約20〜100keVの硬X線の少なくとも1つを照射する。1〜10MeVのX線を放射しても構わない。もちろん1MeVよりもエネルギーの高いX線でも構わない。また、その複数の波長は、上記範囲内から適宜選択しても構わない。もちろん、すべての波長領域を含むX線であっても構わない。また、単一の波長を有するX線でも構わない。勿論、上記範囲内のX線に限られず、上記範囲以外の電磁波であっても構わない。
収容部40は、電子被照射部30、載置台31を内部に収容する。収容部40は、ステンレス鋼などの導電性材料により構成される。収容部40は、アース線等によって電気的に接地され接地電位にされる。収容部40は、内部を真空排気可能であり、真空排気系により真空状態とされる。電子放出部20の外壁は、導電性材料を含んで構成され、収容部40と同じ接地電位にされる。収容部40は、接地電位(グランド電位)となるようにされている。
収容部40には挿入部60が設けられ、この挿入部60には、収容部40の外部から電線収容部51が挿入される。電線収容部51は、電子被照射部30に通電するための電線50を収容するためのものである。電線収容部51は、セラミック等の誘電体材料により構成され、電線50と電線収容部51の周囲の部材等とを電気的に絶縁する。
載置台31には、電子被照射部30が載置される。電子被照射部30は、電子線が照射されるターゲットとも呼ばれる。電子被照射部30および載置台31には、高電圧電源部110Bにより、中間電極22に対して正の電圧が印加される。上記の通り、中間電極22は接地電位となるように構成されているので、電子被照射部30および載置台31は、収容部40に対して正の電位となる。X線発生装置10Aの内部には、電子被照射部30を冷却するための冷却水等の冷媒が供給されている。
収容部40においては、導電性材料による領域、誘電体材料による領域、および真空領域の3領域が接する部分が存在する。このような部分を本明細書ではトリプルジャンクション部と呼ぶ。このトリプルジャンクション部は、図1においてトリプルジャンクション部80およびトリプルジャンクション部81として示されている。トリプルジャンクション部80は、導電性材料による収容部40と、誘電体材料による電線収容部51と、収容部40内部の真空領域とが接する部分である。トリプルジャンクション部81は、導電性材料による載置台31と、誘電体材料による電線収容部51と、収容部40内部の真空領域とが接する部分である。収容部40の電位は接地電位であり、載置台31の電位は正電位なので、載置台31から遠い側のトリプルジャンクション部80は低電位側のトリプルジャンクションであり、載置台31に近い側のトリプルジャンクション部81は高電位側のトリプルジャンクションである。本実施の形態では、収容部40の内壁における低電位側のトリプルジャンクション部80を囲んで挿入部側突出部70を設ける。これにより、トリプルジャンクション部80近傍における電位分布を緩やかにすることができ、その結果、トリプルジャンクション部80近傍における放電の発生を抑制できる。
挿入部側突出部70は、電線収容部51を囲み、収容部40の内壁から収容部40の内部に向かってコーン状に突出する。挿入部側突出部70は、導電性材料により構成され、収容部40の内壁に固定される。従って、挿入部側突出部70の電位は収容部40と同じ接地電位となる。挿入部側突出部70の先端部70aは、エッジの無い滑らかな形状に形成されている。たとえば、先端部70aの断面は凸状の曲線(たとえば、円弧状)や半球面状などに形成されている。これにより、挿入部側突出部70の先端部70a近傍に電界が集中することを抑制できる。なお、挿入部側突出部70は、コーン状ではなく、電線収容部51に沿って平行に伸びる円筒状に形成されていてもよく、特に形状は問わない。また、本実施形態においては、Z軸方向の周囲を囲むような面が形成されているが、その形成される面は、連続的でなくても構わない。挿入部側突出部70を形成する面は、すべてZ軸方向の周囲を囲むように形成されてなくても、一部途切れても構わない。また、Z軸方向において、挿入部側突出部70の先端部70aの位置は同じでなくても構わない。例えば、図1において、先端部70aの位置は異なっていても構わない。例えば、図1のY軸の電子放出部20が設けられている側の、Z軸方向における先端部70aの位置を、トリプルジャンクション部81に対して近付けても構わない。適宜、挿入部側突出部70の大きさを選択することができる。また、後述する電子被照射部側突出部71に対しても、同様に適宜、形状および大きさを選択することができる。また、図1においては、XY平面において、先端部70aより形成される円の中心位置と挿入部60の中心位置とが一致しているが、一致していなくても構わない。
図2は、収容部40内の空間の電位分布のシミュレーション結果を示す説明図である。図2(a)は挿入部側突出部70がない場合を示す説明図であり、図2(b)は挿入部側突出部70がある場合を示す説明図である。図2の収容部40内の空間に示された曲線は等電位線であり、10kV刻みで示されている。図2に示すX線発生装置10Aにおいては、載置台31に+225kVが印加され、収容部40は接地電位(0V)となっている。
次に、図3(a)および図3(b)を参照して、挿入部側突出部70がある場合とない場合とのシミュレーション結果の違いについて説明する。図3(a)は、図2(a)において破線で囲んだ領域Aの拡大図であり、図3(b)は、図2(b)において破線で囲んだ領域Bの拡大図である。
図3(a)に示すように、挿入部側突出部70を有しない場合、トリプルジャンクション部80の近辺では、等電位線の間隔が狭い。これは、この部分における電位勾配が急であることを示している。すなわち、トリプルジャンクション部80の近傍で電界が集中していることを示している。このような場合、トリプルジャンクション部80の近傍で放電が生じ易い。
一方、図3(b)に示すように、挿入部側突出部70を有する場合は、挿入部側突出部70を有しない場合(すなわち、図3(a)に示す場合)と比べて、トリプルジャンクション部80近傍における等電位線の間隔が広い。すなわち、図3(a)の場合に比べて、トリプルジャンクション部80近傍での放電は発生しにくい。これらの結果から、収容部40の内壁に挿入部側突出部70を設けることで、トリプルジャンクション部80近傍で放電が発生することを抑制できることがわかる。
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)荷電粒子装置は、電子を放出する電子放出部20と、電子放出部20から放出された電子が照射される電子被照射部30と、内部を排気可能で、電子被照射部30を内部に収容する収容部40と、収容部40に収容された電子被照射部30に通電するための電線50を収容するために、収容部40の外部から収容部40に設けられた挿入部60を介して挿入された電線収容部51と、収容部40の内壁であって挿入部60の近傍から収容部40の内部に向かって、電線収容部51を囲み突出する挿入部側突出部70と、を備える。第1の実施の形態では、挿入部側突出部70は、電線収容部51を囲み突出する。そのため、トリプルジャンクション部80近傍の電位勾配を緩やかにして、トリプルジャンクション部80近傍における放電の発生を抑制することができる。
(2)荷電粒子装置は、低電位側のトリプルジャンクション部80近傍に挿入部側突出部70が設けられている。低電位側のトリプルジャンクション部80近傍は電子の放出源となり得る。第1の実施の形態では、挿入部側突出部70が設けられることにより、トリプルジャンクション部80近傍の電位勾配を緩やかにしているので、トリプルジャンクション部80近傍における放電の発生を抑制することができる。
(3)上記の通り、荷電粒子装置は、挿入部側突出部70を有することで、トリプルジャンクション部80近傍での放電の発生を抑制することができるため、放電による収容部40内の真空度の低下を回避できる。これにより、X線発生装置10Aを安定して動作させることができる。また、激しい放電の発生によるX線発生装置10Aの損傷を防止することができる。
(4)荷電粒子装置では、挿入部側突出部70の先端部70aは滑らかな形状に形成されている。そのため、挿入部側突出部70の先端部70aにおける電界集中を抑制することができる。
(5)荷電粒子装置において、電子被照射部30に電子が照射されると、電子被照射部30はX線を出射する。このような構成により、荷電粒子装置は種々のX線発生装置に適用することができる。
−第2の実施の形態−
図4を参照して、第2の実施の形態によるX線発生装置10Bについて説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、X線発生装置10Bが電子被照射部側突出部71をさらに備える点で、第1の実施の形態と異なる。
図4は、第2の実施の形態によるX線発生装置10Bの概略構成図である。上記の通り、本実施の形態によるX線発生装置10Bは、第1の実施の形態のX線発生装置10Aと比べて、電子被照射部側突出部71をさらに備える点で異なる。なお、図4では、高電圧電源部110の図示は省略している。電子被照射部側突出部71は、高電位側のトリプルジャンクション部81を囲んで設けられる。すなわち、電線収容部51を囲み、電子被照射部30の近傍から収容部40の内壁に向かってコーン状に突出する。電子被照射部側突出部71は、導電性材料により構成され、載置台31に固定される。従って、電子被照射部側突出部71の電位は、載置台31と同じ正の電圧となる。
電子被照射部側突出部71の先端部71aは、エッジの無い滑らかな形状に形成されている。たとえば、先端部71aの断面形状は、凸状の曲線(たとえば、円弧状)や半球面状などに形成されている。これにより、電子被照射部側突出部71の先端部71a近傍における電界の集中を抑制できる。なお、電子被照射部側突出部71は、コーン状ではなく、電線収容部51に沿って平行に伸びる円筒状に形成されていてもよく、特に形状は問わない。
図5は、収容部40内の空間の電位分布のシミュレーション結果を示す説明図である。図5(a)は電子被照射部側突出部71がない場合を示す説明図であり、図5(b)は電子被照射部側突出部71がある場合を示す説明図である。図5の収容部40内の空間に示された曲線は等電位線であり、10kV刻みで示されている。図5に示すX線発生装置10Bにおいては、載置台31には+225kVが印加され、収容部40は接地電位(0V)となっている。
次に、図6(a)および図6(b)を参照して、電子被照射部側突出部71がある場合とない場合とのシミュレーション結果の違いについて説明する。図6(a)は、図5(a)において破線で囲んだ領域Cの拡大図であり、図6(b)は、図5(b)において破線で囲んだ領域Dの拡大図である。
図6(a)に示すように、電子被照射部側突出部71を有しない場合、トリプルジャンクション部81の近辺で等電位線の間隔が狭い。これは、この部分における電位勾配が急であることを示している。すなわち、トリプルジャンクション部81近傍で電界が集中していることを示している。このような場合、トリプルジャンクション部81近傍で放電が生じ易い。
一方、図6(b)に示すように、電子被照射部側突出部71を有する場合は、電子被照射部側突出部71を有しない場合(すなわち、図6(a)に示す場合)と比べて、トリプルジャンクション部81の近傍の等電位線の間隔が広い。すなわち、図6(a)の場合に比べて、トリプルジャンクション部81近傍での放電は発生しにくい。これらの結果から、載置台31に電子被照射部側突出部71を設けることで、トリプルジャンクション部81近傍で放電が発生することを抑制できることがわかる。
上述した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
(6)荷電粒子装置は、電子被照射部30の近傍から収容部40の内壁に向かって、電線収容部51を囲み突出する電子被照射部側突出部71をさらに備える。このようにしたので、高電位側のトリプルジャンクション部81近傍の電位勾配を緩やかにして、トリプルジャンクション部81近傍における放電の発生を抑制することができる。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形
態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
図7は、変形例1によるX線発生装置10Cの構成を示す図である。X線発生装置10Cは、電子被照射部30(ターゲット)を回転させる回転部材90を備える。回転部材90により電子被照射部30を回転させることで、電子被照射部30における電子線の衝突位置を変化させる。電子線の衝突位置を変えることで、電子被照射部30の電子線の照射状態を一定に保ち、電子被照射部30から出射するX線の状態を一定に保つことができる。回転部材90は、少なくとも外周部がセラミック等の誘電体材料により構成される。
回転部材90の少なくとも外周部は誘電体材料により形成されるため、電線収容部51の近傍にトリプルジャンクション部80が形成されたのと同様の理由により、収容部40内部の回転部材90の近傍にはトリプルジャンクション部82が形成される。すなわち、導電体材料による収容部40と、誘電体材料による回転部材90の外周部と、収容部40内部の真空領域とが接する部分にトリプルジャンクション部82が形成される。X線発生装置10Cでは、図7に示すように、挿入部側突出部70が電線収容部51と共に回転部材90とを囲むように設けられる。これにより、トリプルジャンクション部82近傍の電位勾配を緩やかにすることができ、その結果、トリプルジャンクション部82における放電の発生を抑制できる。
(変形例2)
上述した実施の形態および変形例では、本発明を荷電粒子装置としてX線発生装置10に適用した例について説明したが、本発明は、電子顕微鏡、走査電子顕微鏡、集束イオンビーム装置などの種々の荷電粒子装置に適用することができる。電子顕微鏡としては、例えば米国特許5936244号に開示してある。
−第3の実施の形態−
図面を参照して、上述したX線発生装置10を用いたX線装置1およびX線装置1を備えた構造物製造システムSYSについて説明する。図8は、上述したX線発生装置10を用いたX線装置1の全体構成の一例を示す図である。
図8に示すように、X線装置1は、測定物SにX線XLを照射して、その測定物Sを透過した透過X線を検出する。X線装置1は、測定物SにX線を照射して、その測定物Sを通過したX線を検出して、その測定物Sの内部の情報(例えば、内部構造)を非破壊で取得するX線CT検査装置を含む。本実施形態において、測定物Sは、例えば機械部品、電子部品等の産業用部品を含む。X線CT検査装置は、産業用部品にX線を照射して、その産業用部品を検査する産業用X線CT検査装置を含む。
X線装置1は、X線XLを射出するX線源100と、測定物Sを保持して移動可能なステージ装置3と、X線源100から射出され、ステージ装置3に保持された測定物Sを通過したX線の少なくとも一部を検出する検出器4と、X線装置1全体の動作を制御する制御装置5と、を備える。X線装置1は、X線源100の射出口100aから射出されるX線XLが進行する内部空間SPを形成するチャンバ部材6を備えている。X線源100、ステージ装置3、及び検出器4は、内部空間SPに配置される。なお、チャンバ部材6は、支持面FR上に配置される。チャンバ部材6は、複数の支持部材6Sに支持される。
X線源100は、測定物Sに向けてX線XLを照射する。X線源100は、測定物SのX線吸収特性に基づいて、測定物Sに照射するX線の強度を調整可能である。X線源100は、点X線源を含み、測定物Sに円錐状のX線(いわゆるコーンビーム)を照射する。X線源100は、Z方向に長手となるように設置されている。
ステージ装置3は、ステージ9と、不図示のステージ駆動機構とを備えている。ステージ9は、測定物Sを保持して移動可能に設けられている。ステージ9は、測定物Sを保持する保持部を有している。ステージ9は、不図示のステージ駆動機構により、例えばX方向、Y方向及びZ方向に平行移動可能であり、θY方向に回転可能である。なお、ステージ駆動機構によるステージ9の位置(測定物Sの位置)は、制御装置5によって制御される。なお、ステージ装置3の機構はこれに限られない。例えば、ステージ装置3の回転機構の代わりに、X線源100と検出器4とを回転させる構成としても構わない。
検出器4は、ステージ9(測定物S)を挟んでX線源100の反対側に配置される。検出器4は、ステージ9よりも+Z側に配置される。検出器4は、例えば、X線装置1の所定の位置に固定されるが、移動可能でもよい。検出器4は、入射面33と、シンチレータ部34と、受光部35とを有している。入射面33は、XY平面に平行に形成された平面であり、−Z方向に向けられている。入射面33は、ステージ9に保持された測定物Sと対向して配置される。入射面33には、測定物Sを透過した透過X線を含むX線源100からのX線XLが入射する。
シンチレータ部34は、X線が当たることによって、光を発生させるシンチレーション物質を含む。受光部35は、光電子倍増管を含む。光電子倍増管は、光電効果により光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電管を含む。受光部35は、シンチレータ部34において発生した光を受光して増幅し、電気信号に変換して出力する。検出器4は、複数のシンチレータ部34を有する。シンチレータ部34は、XY平面内においてアレイ状に複数配置される。検出器4は、複数のシンチレータ部34のそれぞれと接続するように、複数の受光部35を有している。受光部35における出力結果は、制御装置5に送信される。
なお、本実施形態において、検出器4は複数の入射面33と、それに対応する複数のシンチレータ部34と、それに対応する複数の受光部35を設けているが、これに限られない。本実施形態においては、XY平面に複数設けられているが、少なくとも一方の軸方向(例えば、X軸方向)にのみ、複数設けられていても構わない。また、例えば、複数ではなく、1個でも構わない。例えば、検出器4は1個の入射面33と、それに対応する1個のシンチレータ部34と、それに対応する1個の受光部35としても構わない。
制御装置5は、X線源100、ステージ装置3(ステージ9)及び検出部4の動作を統括的に制御する。また、制御装置5は、画像構成部52を有している。画像構成部52は、検出器4における検出結果に基づいて、測定物Sの画像を形成する。画像構成部52は、検出器4からの1つ又は複数の検出結果を用いて、測定物Sの画像を形成する。画像構成部52は、2次元画像及び3次元画像のいずれも形成することが可能である。
制御装置5は、自動計算機能を有するコンピュータである。なお、制御装置5は、一箇所ではなく、複数の場所であっても構わない。例えば、画像構成部52は、検出器4における検出結果に基づいて、測定物Sの画像を形成するが、検出器4における検出結果を複数のコンピュータに送信し、それぞれのコンピュータでの検出結果を、さらに他のコンピュータで統合しても構わない。この場合に、X線装置に電線により接続されている制御装置5と、インターネットなどの無線により接続されている制御装置5との複数であっても、勿論構わない。したがって、例えば、制御装置5の画像構成部52は、画像構成部を実行するためのプログラムをコンピュータに導入すれば、制御装置5の画像構成部52を複数にすることができる。
また、本実施形態において、制御装置5は、X線源100、ステージ装置3(ステージ9)及び検出部4の動作を統括的に制御するために、有線により信号を送信しているが、無線であっても構わない。また、制御装置5を複数設けて、複数のそれぞれでX線源100、ステージ装置3(ステージ9)及び検出部4の動作を制御しても構わない。また、複数のX線装置を制御している場合には、制御している制御装置であって構わない。
次に、X線装置1の動作の一例について説明する。測定物Sの検出では、制御装置5が、ステージ装置3を制御して、ステージ9に保持された測定物SをX線源100と検出器4との間に配置して行う。
X線源100から発生したX線XLの少なくとも一部は、測定物Sに照射される。測定物SにX線XLが照射されると、その測定物Sに照射されたX線XLの少なくとも一部は、測定物Sを透過する。測定物Sを透過した透過X線は、検出器4の入射面33に入射する。検出器4は、測定物Sを透過した透過X線を検出する。検出器4は、測定物Sを透過した透過X線に基づいて得られた測定物Sの像を検出する。検出器4の検出結果は、制御装置5に出力される。
制御装置5は、測定物Sを保持したステージ9をθY方向に回転させながら、その測定物SにX線XLを照射する。制御装置5は、X線源100に対する測定物Sの位置を変えることによって、測定物SにおけるX線源100からのX線XLの照射領域を変える。ステージ9の各位置(各回転角度)において測定物Sを通過した透過X線は、検出器4に検出される。検出器4は、各位置における測定物Sの像を取得する。制御装置5は、検出器4の検出結果から、測定物Sの内部構造を算出する。
次に、上述したX線装置1を備えた構造物製造システムについて説明する。図9は、構造物製造システムSYSのブロック構成の一例を示す図である。構造物製造システムSYSは、測定装置としてのX線装置1と、成形装置120と、制御装置(検査装置)130と、リペア装置140と、設計装置150とを備える。本実施形態においては、構造物製造システムSYSは、自動車のドア部品、エンジン部品、ギア部品、回路基板を備える電子部品などの成形品を作成する。
設計装置150は、構造物の形状に関する設計情報を作成し、作成した設計情報を成形装置120に送信する。また、設計装置150は、作成した設計情報を制御装置130の後述する座標記憶部131に記憶させる。ここで、設計情報とは、構造物の各位置の座標を示す情報である。成形装置120は、設計装置150から入力された設計情報に基づいて上記構造物を作製する。成形装置120の成形工程には、鋳造、鍛造、または切削等が含まれる。
X線装置(測定装置)1は、測定した座標を示す情報を制御装置130へ送信する。制御装置130は、座標記憶部131と、検査部132とを備える。座標記憶部131には、前述の通り、設計装置150により設計情報が記憶される。検査部132は、座標記憶部131から設計情報を読み出す。検査部132は、X線装置1から受信した座標を示す情報から、作成された構造物を示す情報(形状情報)を作成する。検査部132は、X線装置1から受信した座標を示す情報(形状情報)と座標記憶部131から読み出した設計情報とを比較する。検査部132は、比較結果に基づき、構造物が設計情報通りに成形されたか否かを判定する。換言すれば、検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する。検査部132は、構造物が設計情報通りに成形されていない場合、修復可能であるか否か判定する。修復できる場合、検査部132は、比較結果に基づき、不良部位と修復量を算出し、リペア装置140に不良部位を示す情報と修復量を示す情報とを送信する。
リペア装置140は、制御装置130から受信した不良部位を示す情報と修復量を示す情報とに基づき、構造物の不良部位を加工する。
図10は、構造物製造システムSYSによる処理の流れを示したフローチャートである。まず、設計装置150が、構造物の形状に関する設計情報を作製する(ステップS101)。次に、成形装置120は、設計情報に基づいて上記構造物を作製する(ステップS102)。次に、X線装置1は構造物の形状に関する座標を測定する(ステップS103)。次に制御装置130の検査部132は、X線装置1から作成された構造物の形状情報と、上記設計情報とを比較することにより、構造物が設計情報通りに作成された否かを検査する(ステップS104)。
次に、制御装置130の検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する(ステップS105)。作成された構造物が良品である場合(ステップS105:YES)、構造物製造システムSYSはその処理を終了する。一方、作成された構造物が良品でない場合(ステップS105:NO)、制御装置130の検査部132は、作成された構造物が修復できるか否か判定する(ステップS106)。
作成された構造物が修復できる場合(ステップS106:YES)、リペア装置140は、構造物の再加工を実施し(ステップS107)、ステップS103の処理に戻る。一方、作成された構造物が修復できない場合(ステップS106:NO)、構造物製造システムSYSはその処理を終了する。以上で、本フローチャートの処理を終了する。
以上により、上記の実施形態におけるX線装置1が構造物の座標を正確に測定することができるので、構造物製造システムSYSは、作成された構造物が良品であるか否か判定することができる。また、構造物製造システムSYSは、構造物が良品でない場合、構造物の再加工を実施し、修復することができる。
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した検出装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
10…X線発生装置、20…電子放出部、30…電子被照射部、40…収容部、
51…電線収容部、60…挿入部、70…挿入部側突出部、
71…電子被照射部側突出部、90…回転部材

Claims (17)

  1. 電子を放出する電子放出部と、
    前記電子放出部から放出された電子が照射される電子被照射部と、
    内部を排気可能で、前記電子被照射部を内部に収容する収容部と、
    前記収容部に収容された前記電子被照射部に通電するための電線を収容するために、前記収容部の外部から前記収容部に設けられた挿入部を介して挿入された電線収容部と、
    前記収容部の内壁であって前記挿入部の近傍から前記収容部の内部に向かって広がるように、前記電線収容部を囲み突出する挿入部側突出部と、を備える荷電粒子装置。
  2. 請求項1に記載の荷電粒子装置において、
    前記挿入部側突出部は、前記挿入部の近傍から前記収容部の内部に向かって開口直径が大きくなる、荷電粒子装置。
  3. 請求項2に記載の荷電粒子装置において、
    前記挿入部側突出部は、前記挿入部の近傍から前記収容部の内部に向かって広がるコーン形状である、荷電粒子装置。
  4. 請求項3 に記載の荷電粒子装置において、
    前記挿入部側突出部の先端部により形成される円の中心と、前記電線収容部の中心とが一致している荷電粒子装置。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の荷電粒子装置において、
    前記挿入部側突出部の先端部の前記電線収容部の中心を通る面による断面は、円弧状である荷電粒子装置。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の荷電粒子装置において、
    前記電子放出部を回転させる回転部材をさらに備え、
    前記挿入部側突出部は、前記電線収容部と共に前記回転部材とを囲む荷電粒子装置。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載の荷電粒子装置において、
    前記電子被照射部の近傍から前記収容部の内壁に向かって、前記電線収容部を囲み突出する電子被照射部側突出部をさらに備える荷電粒子装置。
  8. 請求項7に記載の荷電粒子装置において、
    電子被照射部側突出部は、前記電子被照射部の近傍から前記収容部の内部に向かって広がるように、前記電線収容部を囲み突出する荷電粒子装置。
  9. 請求項8に記載の荷電粒子装置において、
    電子被照射部側突出部は、前記電子被照射部の近傍から前記収容部の内部に向かって開口直径が大きくなる、荷電粒子装置。
  10. 請求項9に記載の荷電粒子装置において、
    前記電子被照射部側突出部は、前記電子被照射部の近傍から前記収容部の内部に向かって広がるコーン形状である、荷電粒子装置。
  11. 請求項10に記載の荷電粒子装置において、
    前記電子被照射部側突出部の先端部により形成される円と中心と、前記電線収容部の中心とが一致している荷電粒子装置。
  12. 請求項7から11のいずれか一項に記載の荷電粒子装置において、
    前記電子被照射部側突出部の先端部の前記電線収容部の中心を通る面による断面は、円弧状である荷電粒子装置。
  13. 請求項1から12のいずれか一項に記載の荷電粒子装置において、
    前記荷電粒子装置は、X線発生装置であり、
    前記電子被照射部は、前記電子が照射されることにより、X線を出射する荷電粒子装置。
  14. 構造物の形状に関する設計情報を作製する設計工程と、
    前記設計情報に基づいて前記構造物を作製する成形工程と、
    作製された前記構造物の形状を請求項13に記載の荷電粒子装置を用いて計測する計測工程と、
    前記計測工程で得られた形状情報と、前記設計情報とを比較する検査工程と、を有する構造物の製造方法。
  15. 前記検査工程の比較結果に基づいて実行され、前記構造物の再加工を実施するリペア工程を有する請求項14に記載の構造物の製造方法。
  16. 前記リペア工程は、前記成形工程を再実行する工程である請求項15に記載の構造物の製造方法。
  17. 構造物の形状に関する設計情報を作製する設計装置と、
    前記設計情報に基づいて前記構造物を作製する成形装置と、
    作製された前記構造物の形状を測定する請求項13に記載の荷電粒子装置と、
    前記X線発生装置を用いたX線装置によって得られた前記構造物の形状に関する形状情報と前記設計情報とを比較する検査装置と、を含む構造物製造システム。
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