JP6281229B2 - X線源、x線装置、構造物の製造方法、及び構造物製造システム - Google Patents

X線源、x線装置、構造物の製造方法、及び構造物製造システム Download PDF

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Description

本発明は、X線源、X線装置、構造物の製造方法、及び構造物製造システムに関する。
物体の内部の情報を非破壊で取得する装置として、例えば、物体にX線を照射して、その物体を通過するX線を検出するX線装置が知られている。このX線装置は、X線を照射するX線源を有し、物体を通過するX線を検出して内部を観察可能としたものである(特許文献1参照)。これにより物体の内部の情報を取得する。
米国特許出願公開第2010/0098209号
ターゲットから発生するX線の線質によっては、例えば、得られる検出結果に偽像が発生する可能性がある。その結果、検査精度が低下する可能性がある。
本発明の態様は、検査精度の低下を抑制できるターゲット、X線源、X線装置、構造物の製造方法、及び構造物製造システムを提供することを目的とする。
本発明の第1の態様によれば、X線を発生するターゲットであって、ターゲットの内部で発生するX線が射出する射出面を備え、射出面の表面形状は曲面の一部である、ターゲットが提供される。
本発明の第2の態様によれば、電子を発生するフィラメントと、フィラメントからの電子を集光する電子光学系と、電子光学系により集光された電子が入射する入射面と、入射面から入射した電子により発生したX線を射出する射出面とを有するターゲットと、を備え、X線を発生する発生領域は、射面から距離をおいてターゲットの内部に位置しており、発生領域から射出面までの距離が測定物の測定領域に対する放射方向で一定である、X線源が提供される。
本発明の第3の態様によれば、第2の態様に記載のX線源と、X線源から射出され、測定物を通過したX線の少なくとも一部を検出する検出装置とを備えた、X線装置が提供される。
本発明の第4の態様によれば、X線を発生するターゲットを有するX線源と、X線源から射出され、測定物を通過したX線の少なくとも一部を検出するX線装置であって、 ターゲット内のX線の発生領域から、ターゲットの表面までの距離が、測定物の測定領域に対する放射方向で一定となる部分を有する、X線装置が提供される。
本発明の第5の態様によれば、構造物の形状に関する設計情報を作製する設計工程と、設計情報に基づいて前記構造物を作成する成形工程と、作製された前記構造物の形状を第3の態様もしくは第4の態様に記載のX線装置を用いて計測する工程と、計測工程で得られた形状情報と、設計情報とを比較する検査工程と、を有する構造物の製造方法が提供される。
本発明の第6の態様によれば、構造物の形状に関する設計情報を作製する設計装置と、設計情報に基づいて構造物を作製する成形装置と、作製された構造物の形状を測定する第3の態様もしくは第4の態様に記載のX線装置と、X線装置によって得られた構造物の形状に関する形状情報と設計情報とを比較する検査装置と、を含む構造物製造システムが提供される。
本発明の態様によれば、検査精度の低下を抑制することができる。
本実施形態に係るX線源の一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 図2に示すターゲットの一部を拡大した図である。 比較例に係るターゲットを示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るX線源の一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るターゲットの一例を示す図である。 本実施形態に係るX線装置の一例を示す図である。 X線装置の動作の一例を説明するフローチャートである。 構造物製造システムSYSのブロック構成図である。 構造物製造システムSYSによる処理の流れを示したフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。また、図面においては、実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をZ軸方向、水平面内においてZ軸方向と直交する方向をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るX線源100の一例を示す断面図である。図1に示すように、X線源100は、フィラメント39と、ターゲット40と、電子光学系41と、ハウジング42と、偏向装置43と、アノード44と、を備える。フィラメント39は、例えばタングステン(W)を含む。フィラメント39に電流が流れ、その電流によってフィラメント39が加熱されると、フィラメント39から電子(熱電子)が放出される。
ターゲット40は、アノード44によって加速された電子の衝突または電子の透過によりX線を発生する。ターゲット40は、電子光学系41からの電子の射出方向に配置される。X線は、例えば波長1pm〜30nm程度の電磁波である。X線は、約数10eVの超軟X線、約0.1〜2keVの軟X線、約2〜20keVのX線、及び約20〜50KeVの硬X線を含む。ターゲット40は、例えばタングステン(W)又はモリブデン(Mo)等の重金属を含み、電子の衝突または電子の透過によりX線を発生する。本実施形態において、ターゲット40は、発生したX線を透過させて出射する透過型ターゲットである。
電子光学系41は、フィラメント39とターゲット40との間において、フィラメント39からの電子の通路の周囲の少なくとも一部に配置される。電子光学系41は、コイルや集束レンズを含み、フィラメント39からの電子をターゲット40に導く。電子光学系41は、ターゲット40の一部の領域(X線の発生領域)に電子を衝突させる。ターゲット41において電子が衝突する領域の寸法(スポットサイズ)は、十分に小さい。これにより、実質的に点X線源が形成される。なお、本実施形態において、ターゲットの表面での電子が衝突する領域の寸法は、例えばμm単位の大きさである。例えば、本実施形態においては、0.1μmの円である。図1を参照すると、ターゲット40の電子光学系が配置されている側の、XY平面において、0.1μmの円である。勿論、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μmの円でも構わないし、1μm、2μmの円でも構わない。例えば、電子が衝突する領域の寸法は、0.1μm〜1cmの円のいずれも大きさでも構わない。勿論、電子が衝突する領域の寸法はこれに限られない。また、電子が衝突する領域のXY平面の形状は、円に限られない。例えば、矩形でも構わない。
ハウジング42は、X線源100を構成する部材の少なくとも一部を収容する。ハウジング42は、フィラメント39、ターゲット40、電子光学系41、偏向装置43、及びアノード44のそれぞれを収容する。ハウジング42には、X線を出射するための出射部100Aを備える。なお、ハウジング42は、不図示の排気系が接続され、同じく不図示のターボ分子ポンプ等の真空ポンプを備える。この真空ポンプによって、ハウジング42内は高真空状態に設定される。
偏向装置43は、フィラメント39から射出した電子の進行方向を変えるものである。偏向装置43は、例えばコイル及び電子レンズを含む。偏向装置43は、電子光学系41に対して前側(フィラメント39側)及び後ろ側(ターゲット40側)の双方に配置される。偏向装置43は、アライナーまたは偏向器とも称される。なお、複数の偏向装置43が配置されることに限定されず、例えば、電子光学系41の後ろ側に1つ配置させてもよい。
アノード44は、フィラメント39から出射した電子をターゲット40に向けて加速する。ただし、アノード44が用いられることに限定されない。例えば、ターゲット40を陽極とし、フィラメント39を陰極として、ターゲット40とフィラメント39との間に電圧を印加することにより、フィラメント39から出射した熱電子をターゲット(陽極)40に向けて加速させ、ターゲット40に照射させるようにしてもよい。
フィラメント39から出射した電子は、アノード44によって加速されるとともに、電子光学系41によって収束(集光)されて進行する。電子光学系41から射出された電子の少なくとも一部は、+Z軸方向に進行する。電子の照射方向(進行方向)は、Z軸方向である。電子の進行方向は、偏向装置43によって調整される。
図2は、本実施形態に係るターゲット40の一例を示す図である。ターゲット40は、電子が入射する入射面44と、ターゲット40内に位置し、X線を発生する発生領域45と、X線が射出される表面(射出面)46とを有する。ターゲット40は、図2に示すように、ターゲット40内のX線の発生領域45から、ターゲット40の表面46までの距離が、所定の放射方向で一定となる部分を有する。所定の放射方向とは、例えば、図17に示す測定物Sの測定領域に対する放射方向である、測定物Sの測定領域は、後述する発生領域45の中心と、X線の検出器4のX線検出可能な検出領域の境界部分とを結ぶ領域の内部のことである。ここで、検出器4のX線検出可能な検出領域の境界部分とは、XY平面において、検出器4のX線の検出可能な検出領域と、その周囲のX線を検出できない領域との境界である。また、本実施形態においては、測定物Sの測定領域とは、その領域内に測定物が配置されれば、発生領域45から発生するX線に照射される。また、その領域内の測定物で吸収されなかったX線が検出器4で検出される。
本実施形態において、ターゲット40は、X線を透過する材料で形成されるベース基板50に保持される。ターゲット部40は、ベース基板50に形成された凹部51に保持される。ターゲット部40と凹部51との境界は曲面である。ベース基板50は、ベリリウム(Be)やCVDダイヤモンド等の材料によって形成される。ベース基板はX線を透過する材料であることが望ましい。さらに、ベース基板は、X線の検出に用いる波長のX線を吸収しないことが望ましい。
図3は、図2に示すターゲット40の一部を拡大した図である。図3に示すように、発生領域45はX線を発生する重心Gを含む。重心Gは、発生領域45のうちX線の発生が最も多い部分である。本実施形態において、重心Gからターゲット40の表面46までの距離が、X線の放射方向で一定となる。図2及び図3に示すように、本実施形態において、ターゲット40の表面46の形状は曲面または曲面の一部である。表面46は、例えば発生領域45の重心Gを中心とした球面でもよい。ターゲット40の電子の入射面44の表面形状は平面である。ただし、入射面44は平面に代えて曲面であってもよい。
図2及び図3に示すように、発生領域45(重心G)から表面46の第1部分46Aまでの距離L1と、発生領域45から表面46の第2部分46Bまでの距離L1と、発生領域45から表面46の第3部分46Cまでの距離L1はほぼ等しくなっている。従って、X線X1がターゲット40内を進行する距離L1と、X線X2がターゲット40内を進行する距離L1と、X線X3がターゲット40内を進行する距離L1とはほぼ等しくなっている。なお、表面46が発生領域45の重心Gを中心とした球面である場合、発生領域45からの距離が等しい表面46の部分は、多数存在する。
図4は、比較例に係るターゲット40Jを示す。ターゲット40Jは、タングステン等の重金属から形成された平行平板である。ターゲット40Jの表面46Jは、平面である。図4において、X線X11が発生領域45Jからターゲット40J内を進行する距離L11と、X線X3が発生領域45Jからターゲット40J内を進行する距離L13とはほぼ等しい。ただし、X線X2が発生領域45Jからターゲット40J内を進行する距離L12は、距離L11、L13とは異なる。なお、図4ではY軸方向を例にとって説明しているが、X軸方向においても同様に現象が生じている。
X線は、ターゲット40J内を進行することによりターゲット40Jに吸収されて強度が低下する。比較例に係るターゲット40Jは、図4に示すように、距離L2だけ進行して表面46Jから射出されるX線X12の強度と、距離L11またはL13だけ進行して表面46Jから射出されるX線X11、X13の強度とは、ターゲット40J内を進行する距離が異なる。すなわち、X線X11、X13は、X線X12に対してターゲット40Jにより吸収された量が多くなり、強度が弱くなっている。従って、出射したX線の強度の分布が不均一となる。図4においては、電子の入射方向と平行のX線X2が発生する方向の距離L12と、例えば電子の入射方向と平行ではない方向のX線X11が発生する方向のL11とが異なる。一方、図3においては、電子の入射方向と平行のX線X2が発生する方向の距離L12と、例えば電子の入射方向と平行ではない方向のX線X11が発生する方向のL11とは同じである。なお、本実施形態においては、図4における距離L12と距離L11との差よりも、図3における距離L11と距離L12との差の方が小さい。なお、本実施形態においては、図3における距離L11と距離L12との差が例えば20%〜0%異なっていても一定とみなすことができる。なお、本実施形態においては、図3における距離L11と距離L12との差は、後述するX線装置1において、得られる3次元画像が検査の精度を満たす程度の範囲内においては、一定とみなすことができる。
このように本実施形態によれば、ターゲット40の表面46の形状は曲面であり、発生領域45(または重心G)からターゲット40の表面46までの距離L1が放射方向で一定となるので、図4に示すターゲット40Jと比較して、表面46から射出されるX線の強度の分布が均一になる。従って、X線の放射方向によらず、X線の強度の分布が一定となり、そのためX線源100から発生するX線を用いて測定物を観察することにより、測定物の検査精度の低下を抑制することができる。
また、一般に発生領域45から発生するX線は単一波長ではなく、複数の連続する波長を有するX線からなる。すなわち、発生するX線は所定の範囲の波長を持つスペクトル分布を有する。また、一般に、物質の吸収係数は波長によって異なる。そのため、発生領域45から発生するX線は、X線の放射方向に応じて、X線のスペクトルが不均一となる。従って、X線の放射方向に応じて、X線が測定物を通過する際に生じる線質の変化に伴う、偽の像であるアーティファクトの発生を抑制することができる。線質の変化は例えば、低いエネルギーをもつX線のほうが、より多く吸収されるために線質が硬化される。アーティファクトの抑制された像を用いて、測定物を検査することができるので、測定物の検査精度の低減を抑制することができる。
なお、本実施形態においては、図2において、XY平面におけるターゲット40の表面での電子が衝突する領域の寸法に対して、ターゲット40内でX線が発生する領域のXY平面での寸法は小さい。例えば、本実施形態において、ターゲット表面での電子が衝突する領域が0.1μmの場合には、ターゲットの内でX線が発生する領域は0.1μmとほぼ同じである。なお、XY平面での電子が衝突する領域の寸法に対して、ターゲット40内でのX線が発生する領域が異なっていても構わない。例えば、大きくても構わない。
また、図2において、電子が入射する入射面44からX線が発生する発生領域45までの距離は、10μm程度である。
また、図2においてL1の距離は、発生するX線の強度が極端に低下することを抑制する程度の長さが望ましい。例えば、本実施形態には、10μmである。すなわち、10μmよりも長い場合には、発生するX線の強度が低下してしまい、測定物を通過するための十分なX線の強度が得られる場合がある。この場合には、発生領域45で発生するX線が、ターゲット40内部での伝搬距離が長くなるため、伝搬に伴いX線の強度が減少してしまう。また、10μmよりも短い場合には、発生するX線の強度が低下してしまい、測定物を通過するための十分なX線の強度が得られる場合がある。ターゲットに入射される電子と、ターゲットとが相互作用することによりX線が発生する。また、ターゲットと電子との衝突によるX線の発生は確率に起因するため、X線の発生領域45は、放射方向に所定の広がりを有する。この場合には、所定方向に広がりを有するために、その所定の広がりよりもターゲットが小さい場合には、入射する電子とターゲットとが十分な確率で相互作用することができないために、発生するX線の強度十分でない場合がある。なお、本実施形態では、L1の距離は10μmであるが、L1の距離はこれに限られない。10μmよりも長くても構わないし、10μmよりも短くても構わない。なお、本実施形態においては、ターゲット40の表面での電子が衝突する領域が0.1μmであり、ターゲットの表面でのX線の発生領域はほぼ同じなので、L1の距離は0.1μmよりも長いほうが望ましい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図5は、本実施形態に係るターゲット40Aの一例を示す図である。図5に示すように、ターゲット40Aは、表面46のうち、球面部分46Eと、非球面部分46Dとを有している。本実施形態のターゲット40Aは、発生したX線を透過させて出射する透過型ターゲットである。また、本実施形態は、図1に示すX線源100に搭載可能である。
ターゲット40Aは、ベース基板50に形成された凹部51A内に保持される。ターゲット40Aは、球面部分46Eに対応した球状体の一部分と、非球面部分46Dに対応して円錐台状の部分とが組み合わされた形態を持つ。なお、非球面部分46Dは、複数の平面が接続されたものでもよい。このターゲット40Aは、所定の放射方向(例えば、図17に示す測定物Sの測定領域に対する放射方向)でX線の発生領域45から表面46までの距離がほぼ一定であり、他の方向では発生領域45から表面46までの距離が一定ではない。
このように、本実施形態によれば、所定の放射方向でX線の発生領域45から表面46までの距離がほぼ一定であるので、図2に示すターゲット40と同様に、表面46から射出されるX線の強度の分布を均一にできる。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図6は、本実施形態に係るターゲット40Bの一例を示す図である。本実施形態のターゲット40Bは、発生したX線を透過させて出射する透過型ターゲットである。また、本実施形態は、図1に示すX線源100に搭載可能である。
図6に示すように、ターゲット40Bは、表面46が複数の平面を接続して形成される。このターゲット40Bは、多面体の構成を有し、ベース基板50に形成された凹部51Bに保持される。なお、正多面体とするか否かは任意である。また、使用する平面の数も任意である。ただし、平面数を多くすると、球体に近似するといった利点がある。
この、ターゲット40Bは、表面46が複数の平面なので、発生領域45から表面46までの距離がX線の放射方向によってばらついている。ただし、図4に示すターゲット40Jと比較して、X線X1〜X3においてターゲット40Bを通過する距離は近似した状態となっている。従って、本実施形態においても、図2に示すターゲット40と同様に、表面46から射出されるX線の強度の分布がほぼ均一になる。また、複数の平面を組み合わせているので、ベース基板50における凹部51Bの加工が容易である。
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図7は、本実施形態に係るターゲット40、40C、40Dの一例を示す図である。本実施形態のターゲット40C、40Dは、発生したX線を透過させて出射する透過型ターゲットである。図7に示すように、本実施形態は、複数のターゲット40、40C、40Dが1つのベース基板50Cに形成されている。ベース基板50Cは、図2に示すベース基板50と同様の材質が用いられる。また、本実施形態は、図1に示すX線源100に搭載可能である。
ターゲット40、40C、40Dは、ベース基板50Cに形成された凹部51、51C、51Dにそれぞれ保持される。ターゲット40、40C、40Dの表面46はそれぞれ球面である。ターゲット40、40C、40Dは、それぞれ入射面44と表面46との距離が異なる。これらターゲット40、40C、40Dの入射面44はベース基板50Cの表面と同一面となっている。ターゲット40、40C、40Dは、同一方向に一定間隔で配置される。
複数のターゲット40等のうち、少なくとも1つのターゲットは、他のターゲットと異なる。図7では、ターゲット40、40C、40Dは、それぞれ異なるものが用いられる。ターゲット40Cは、ターゲット40の半球部分に円柱部分を加えた形態を有し、ターゲット40より深い位置に発生領域45を設定する。ターゲット40Dは、ターゲット40の半球部分にターゲット40Cより長い円柱部分を加えた形態を有し、ターゲット40Cよりさらに深い位置に発生領域45を設定する。ターゲット40、40C、40Dの入射面44は、それぞれ同一の径を有している。
本実施形態において、1つのベース基板50Cに保持するターゲット40等の数は任意であり、2つまたは4つ以上であってもよい。また、保持するターゲット40等は、同一のもの、または異なるもののいずれであってもよい。ターゲット40等を複数保持させる場合、入射面44が同一であることに限定されず、異なる径であってもよい。また、複数のターゲット40等を同一方向に配置させることに限定されず、また、一定間隔で配置させることに限定されない。また、ターゲット40等は、同一の材質で形成されることに限定されず、それぞれ異なる材質で形成されてもよい。
ターゲット40等は、X線の発生領域45に応じて選択される。発生領域45は、アノード44や電子光学系41等による電子の加速電圧により定まる。例えば、電子光学系41の電子の加速電圧がV1である場合、ターゲット40Aが選択される。ターゲット40Aが選択されると、発生領域45が表面(球面)46の中心となる。これにより、表面46から出射したX線の強度の分布が均一になる。
電子の加速電圧がV1よりも高いV2である場合、ターゲット40Bが選択される。加速電圧が高いと、電子はターゲットの深い位置まで到達し、その位置がX線の発生領域45となる。ターゲット40Bが選択された場合でも発生領域45は表面(球面)46の中心となる。これにより、表面46から出射したX線の強度の分布が均一になる。さらに、電子の加速電圧がV2よりも高いV3である場合、ターゲット40Cが選択される。加速電圧がさらに高いと、電子はターゲットのさらに深い位置まで到達し、その位置がX線の発生領域45となる。ターゲット40Cが選択された場合でも発生領域45は表面(球面)46の中心となる。これにより、表面46から出射したX線の強度の分布が均一になる。
また、ベース基板50Cは、X線源100に設けられたモータ等の駆動装置60によってY軸方向に移動可能に形成されてもよい。駆動装置60によってベース基板50Cを移動させることにより、ターゲット40等は移動する。駆動装置60によって、ベース基板50Cに保持された複数のターゲット40、40C、40Dのうち、1つを電子の照射位置に配置させることができる。すわなち、ターゲット40等は選択可能となっており、駆動装置60によるベース基板50Cの移動によってターゲット40等を交換できる。
なお、複数のターゲット40等の選択を上記した駆動装置60を用いることに限定されない。例えば、ターゲット40等に電子を照射する場合、選択したターゲット40に電子が照射されるように、偏向装置43によって電子の進行方向を変え、電子の照射位置を調整させてもよい。この場合、ベース基板50Cは固定されてもよく、また、駆動装置60を用いてベース基板50Cを移動させるとともに、偏向装置43を用いて電子の照射位置を調整させてもよい。
なお、発生領域45は、ターゲット40等の材質により定まる。同一の加速電圧で電子を加速してターゲット40等に照射した場合、ターゲット40等の材質により、そのターゲット40等の内部におけるX線の発生領域45(重心G)の位置が変化する。この場合、ターゲット40等の発生領域45からターゲット40等の表面46までの距離が、測定物の測定領域に対する放射方向で一定となるように、複数のターゲット40等から1つのターゲット40等を選択して、そのターゲット40等に電子を照射してもよい。
このように、本実施形態によれば、複数のターゲット40等を有しているので、複数のターゲット40等が異なる場合は、電子の加速電圧等に応じてターゲット40等を容易に交換できる。なお、ターゲット40C、40Dにおいてもそれぞれ発生領域45から表面46までの距離が同一であることから、図2に示すターゲット40と同様に、表面46から射出されるX線の強度の分布を均一にできる。
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図8は、本実施形態に係るターゲット40の一例を示す図である。図8に示すように、本実施形態は、複数のターゲット40が1つのベース基板50Dに形成されている。ベース基板50Dは、図2に示すベース基板50と同様の材質が用いられる。また、本実施形態は、図1に示すX線源100に搭載可能である。
本実施形態は、図8に示すように、XY平面内において、複数のターゲット40がマトリクス状に配置されている。図8では、同一のターゲット40が配置されているが、例えば、図7に示すように、ターゲット40C、40Dがいずれかに用いられてもよい。また、ベース基板50Dに保持させるターゲット40の個数は任意である。また、複数のターゲット40のうち、いずれかは材質が異なってもよい。なお、本実施形態では、複数のターゲット40がマトリクス状に規則的に配置されているが、これに限定されず、複数のターゲット40を散点状に不規則に配置させてもよい。ターゲット40のいずれかは入射面44の径が異なってもよい。
また、上記と同様に、X線源100に設けられた駆動装置60によってX軸方向及びY軸方向に移動可能に形成されてもよい。駆動装置60によってベース基板50DをXY面内で移動させることにより、ターゲット40は移動し、複数のターゲット40のうち、1つを電子の照射位置に配置させることができる。すわなち、ターゲット40は選択可能となっており、駆動装置60によるベース基板50Dの移動によってターゲット40を交換できる。
また、上記と同様に、選択したターゲット40に電子が照射されるように、偏向装置43によって電子の進行方向を変え、電子の照射位置を調整させてもよい。この場合、ベース基板50Dは固定されてもよく、また、駆動装置60を用いてベース基板50Dを移動させるとともに、偏向装置43を用いて電子の照射位置を調整させてもよい。また、上記と同様に、加速電圧に応じて、複数のターゲット40から1つのターゲット40を選択してもよい。また、材質に応じて、複数のターゲット40から1つのターゲット40を選択してもよい。
このように、本実施形態によれば、図7に示す実施形態と同様に、複数のターゲット40を容易に交換できる。また、同一のターゲット40を適宜交換することにより、電子の照射によって加熱したターゲット40を他のターゲット40と交換することで、加熱したターゲット40を冷却でき、X線の連続した照射を行うことができる。なお、本実施形態においては、ターゲット40のXY平面の大きさよりも、大きい面積の電子線が照射されても構わない。これによれば、電子線の照射領域により形成されるX線の発生領域よりも小さい領域を形成することが可能である。すなわち、電子線の照射領域がターゲット40のXY平面の大きさより大きければその面積によらず、ターゲット40の面積に基づくX線の発生領域となる。
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図9は、本実施形態に係るターゲット40、40E、40Fの一例を示す図である。本実施形態のターゲット40E、40Fは、発生したX線を透過させて出射する透過型ターゲットである。図9に示すように、本実施形態は、複数のターゲット40、40E、40Fが1つのベース基板50Eに形成されている。ベース基板50Eは、図2に示すベース基板50と同様の材質が用いられる。また、本実施形態は、図1に示すX線源100に搭載可能である。
図9に示すように、ベース基板50Eは、円盤状に形成される。ベース基板50Eは、ほぼ中心部分にZ軸方向の回転軸52を有し、回転可能に形成される。複数のターゲット40、40E、40Fは、ベース基板50Eにおいて、回転軸52を中心とする周回方向に一定間隔で配置される。複数のターゲット40等のうち、少なくとも1つのターゲットは、他のターゲットと異なる。図9では、ターゲット40、40E、40Fは、それぞれ異なるものが用いられる。ターゲット40Eは、ターゲット40に対して大きな径を持つ半球体である。ターゲット40Fは、ターゲット40Eに対して大きな径を持つ半球体である。
本実施形態において、1つのベース基板50Eに保持するターゲット40等の数は任意であり、2つまたは4つ以上であってもよい。また、ターゲット40等は、同一の材質で形成されることに限定されず、それぞれ異なる材質で形成されてもよい。
ベース基板50Eは、X線源100に設けられたモータ等の駆動装置61により回転可能に形成される。駆動装置61によってベース基板50Eを回転させることにより、複数のターゲット40、40E、40Fのうちいずれかを電子の照射位置に配置させることができる。なお、ベース基板50Eを回転位置とともに、偏向装置43によって電子の照射位置を調整させてもよい。
このように、本実施形態によれば、図7に示す実施形態と同様に、駆動装置61によってベース基板50Eを回転させることにより、複数のターゲット40等のうち、選択した1つのターゲット40等に電子を照射できる。また、ベース基板50Eを回転させることにより、ターゲット40等を容易に交換できる。
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図10は、本実施形態に係るターゲット40の一例を示す図である。図10に示すように、本実施形態は、複数のターゲット40が1つのベース基板50Eに形成されている。また、本実施形態は、図1に示すX線源100に搭載可能である。
図10に示すように、複数のターゲット40は、ベース基板50Eにおいて、回転軸52を中心とする周回方向に一定間隔で配置される。図10では、同一のターゲット40が配置されているが、例えば、図9に示すように、ターゲット40E、40Fがいずれかに用いられてもよい。また、ベース基板50Eに保持させるターゲット40の個数は任意である。また、複数のターゲット40のうち、いずれかは材質が異なってもよい。なお、本実施形態では、複数のターゲット40を一定間隔で規則的に配置させているが、これに限定されず、複数のターゲット40の間隔を変えて配置させてもよい。ターゲット40のいずれかは入射面44の径が異なってもよい。
本実施形態では、駆動装置61によってベース基板50Eを回転させることにより、複数のターゲット40のうちいずれかを電子の照射位置に配置させることができる。なお、ベース基板50Eを回転位置とともに、偏向装置43によって電子の照射位置を調整させてもよい。
このように、本実施形態によれば、図9に示す実施形態と同様に、駆動装置61によってベース基板50Eを回転させることにより、複数のターゲット40のうち、選択した1つのターゲット40に電子を照射できる。また、同一のターゲット40を適宜交換することにより、電子の照射によって加熱したターゲット40を他のターゲット40と交換することで、加熱したターゲット40を冷却でき、X線の連続照射を行うことができる。
なお、本実施形態では、例えば、ベース基板50Eを一定速度で回転させながら電子を照射させてもよい。この場合、ターゲット40がない部分に電子が照射されてもX線は出射しない。すなわち、X線は、ベース基板50Eの回転に応じて間欠的に出射する。このように測定物に対して間欠的にX線を照射する場合、検出器4(図17参照)による検出結果は、ベース基板50Eの回転に同期する。
<第8実施形態>
次に、第8実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図11は、本実施形態に係るターゲット40Gの一例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。本実施形態のターゲット40Gは、発生したX線を透過させて出射する透過型ターゲットである。図11(a)に示すように、本実施形態は、ターゲット40Gがベース基板50Eに形成されている。また、本実施形態は、図1に示すX線源100に搭載可能である。
ターゲット40Gは、図11に示すように、ベース基板50Eに形成された円環状の凹部51Eに保持される。ターゲット40Gは、円環状に形成される。ターゲット40Gの入射面44は、ベース基板50Eの表面と同一面に形成される。ターゲット40Gの断面は、図11(b)に示すように、半球状となっている。ターゲット40Gは、一周にわたって同一の材料かつ同一の断面に形成されるが、これに限定されず、一部で材質を変えることや、断面積を変えてもよい。
本実施形態では、発生領域45で生じたX線は、表面46までの距離がY軸方向において同一となっている。ただし、Y軸方向から外れるにつれて、発生領域45から表面46までの距離がばらついており、X線の強度が不均一となる。特に、X軸方向において、発生領域45から表面46までの距離に最も大きなばらつきが生じている。このように、Y軸方向から外れた方向では、X線の強度が不均一となるが、Y軸方向及びY軸方向近傍では発生領域45から表面46までの距離が同一または同一に近い距離となるので、X線の強度が均一またはほぼ均一となる。従って、図4に示す板状のターゲット40Jと比較して、X線の強度の不均一が改善されている。
また、本実施形態では、駆動装置61によってベース基板50Eを回転させることにより、X線を連続して出射させることができるとともに、電子を照射する位置がターゲット40Gの内部において移動するので、電子の照射よって加熱されたターゲット40Gの一部を冷却することができ、X線の連続照射を長時間にわたって行うことができる。
<第9実施形態>
次に、第9実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図12は、本実施形態に係るX線源200の一例を示す図である。図12に示すように、X線源200は、フィラメント39と、ターゲット400と、電子光学系41と、ハウジング42と、偏向装置43と、アノード44と、を備える。
X線源200は、ターゲット400を除き、図1に示すX線源100とほぼ同様の構成が採用される。このX線源200に用いられるターゲット400は、反射型ターゲットである。ハウジング42は、ターゲット400からのX線を出射するための出射部200Aを備える。なお、フィラメント39、電子光学系41、偏向装置43、及びアノード44は、Y軸方向に沿って配置される。X線XLは、Z軸方向に出射する。
図13は、本実施形態に係るターゲット400の一例を示す図である。図13に示すように、ターゲット400は、ベース基板500から突出した状態で保持される。ターゲット400は、半球状に形成される。ベース基板500は、例えば、導電性の材料を含んで形成される。ベース基板500は、アルミニウム(Al)等の導電性の軽金属により形成されてもよい。なお、ベース基板500は、導電性の軽金属により形成されることに限定されず、カーボン等の非金属によって形成されてもよい。また、ベース基板500は、例えば、グランドGND等に電気的に接続されてもよい。
ターゲット400は、発生領域45と、X線を射出する表面46とを有する。図2に示すターゲット40と同様に、発生領域45から表面46の第1部分46Aまでの距離と、発生領域45から表面46の第2部分46Bまでの距離と、発生領域45から表面46の第3部分46Cまでの距離は、等しくなっている。なお、発生領域45内に重心Gを有している点は、図2に示すターゲット40と同様である。
このように、本実施形態によれば、図1に示すX線源100と同様に、ターゲット400の表面46の形状は曲面であり、発生領域45(または重心G)からターゲット400の表面46までの距離が放射方向で一定となるので、表面46から射出されるX線の強度の分布が均一になる。従って、X線源のスペクトラムの空間分布を抑制し、このX線源100から出射したX線を用いて測定物を観察することによりSN比を向上させることで、小さな測定物を高倍率で観察できる。
また、ベース基板500は、グランドGNDに接続されているので、ターゲット400に入射した電子の一部がベース基板500に入り込んだ場合でも、電子はグランドGNDに移動してベース基板500に残らない。これにより、ベース基板500が帯電して、ターゲット400に向かう電子の障害となることを抑制できる。
<第10実施形態>
次に、第10実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図14は、本実施形態に係るターゲット400Aの一例を示す図である。本実施形態のターゲット400Aは、反射型ターゲットである。また、本実施形態は、図12に示すX線源200に搭載可能である。
図14に示すように、ターゲット400Aは、発生領域45を含む第1部分401Aと、第1部分401Aとベース基板500との間に配置される第2部分402Aとを有する。第1部分401Aは半球状に形成される。第2部分402Aは、第1部分401Aと同一の径を有する円柱状に形成される。第2部分402Aは、ベース基板500の支持面500Sに支持される。なお、第2部分402Aは、一部がベース基板500の内部に入り込んだ状態で支持されてもよい。第2部分402Aは、円柱状に代えて角柱状であってもよい。
ターゲット400Aの第1部分401Aは、図2に示すターゲット40と同様に、例えばタングステン又はモリブデン等の重金属を含み、電子の衝突または電子の透過によりX線を発生する。なお、第1部分401Aと第2部分402Aとは、同一の材質で形成されるが、これに限定されず、例えば、第1部分401Aをタングステンで形成させ、かつ第2部分402Aをアルミニウム等の導電性の軽金属により形成させてもよい。
このように、本実施形態によれば、ターゲット400Aの第1部分401Aにおいて、X線の発生領域45から表面46までの距離がほぼ一定であるので、図13に示すターゲット400と同様に、表面46から射出されるX線の強度の分布を均一にできる。
<第11実施形態>
次に、第11実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図15は、本実施形態に係るターゲット400Bの一例を示す図である。本実施形態のターゲット400Bは、反射型ターゲットである。また、本実施形態は、図12に示すX線源200に搭載可能である。
図15に示すように、ターゲット400Bは、発生領域45を含む第1部分401Bと、第1部分401Bとベース基板500との間に配置される第2部分402Bとを有する。第1部分401Bは球状に形成される。第2部分402Bは、第1部分401Bの径より小さな径を有する円柱状に形成される。第2部分402Bは、棒状である。第2部分402Bは、ベース基板500の支持面500Sに支持される。なお、第2部分402Bは、一部がベース基板500の内部に入り込んだ状態で支持されてもよい。第2部分402Bは、円柱状に代えて角柱状であってもよい。
ターゲット400Bの第1部分401Bは、図2に示すターゲット40と同様に、例えばタングステン又はモリブデン等の重金属を含み、電子の衝突または電子の透過によりX線を発生する。なお、第1部分401Bと第2部分402Bとは、同一の材質で形成されるが、これに限定されず、例えば、第1部分401Bをタングステンで形成させ、かつ第2部分402Bをアルミニウム等の導電性の軽金属により形成させてもよい。
このように、本実施形態によれば、ターゲット400Bの第1部分401Bにおいて、X線の発生領域45から表面46までの距離がほぼ一定であるので、図13に示すターゲット400と同様に、表面46から射出されるX線の強度の分布を均一にできる。
<第12実施形態>
次に、第12実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。図16は、本実施形態に係るターゲット400Cの一例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図である。本実施形態のターゲット400Cは、反射型ターゲットである。また、本実施形態は、図12に示すX線源200に搭載可能である。図16(a)に示すように、本実施形態は、ターゲット400Cがベース基板500Aの表面から突出して形成される。ベース基板500Aは、図13に示すベース基板500と同様の材質が用いられる。また、本実施形態は、図12に示すX線源200に搭載可能である。
ベース基板500Aは、図16に示すように、円盤状に形成される。ベース基板500Aは、ほぼ中心部分に回転軸52を有し、回転可能に形成される。ターゲット400Cは、ベース基板500Aの表面に円環状に形成される。ターゲット400Cの断面は、図16(b)に示すように、半球状となっている。ターゲット400Cは、一周にわたって同一の材料かつ同一の断面に形成されるが、これに限定されず、一部で材質を変えることや、断面積を変えてもよい。
ベース基板500Aは、X線源200に設けられたモータ等の駆動装置610により回転可能に形成される。駆動装置610によってベース基板500Aを回転させることにより、ターゲット400Cのうち、電子の照射位置を変更できる。ベース基板500Aは、図13に示すベース基板500と同様に、グランドGNDに電気的に接続される。
本実施形態では、発生領域45で生じたX線は、表面46までの距離がY1方向において同一となっている。ただし、Y1方向から外れるにつれて、発生領域45から表面46までの距離がばらついており、X線の強度が不均一となる。特に、X1方向において、発生領域45から表面46までの距離に最も大きなばらつきが生じている。このように、Y1方向から外れた方向では、X線の強度が不均一となるが、Y1方向及びY1方向近傍では発生領域45から表面46までの距離が同一または同一に近い距離となるので、X線の強度が均一またはほぼ均一となる。従って、図4に示す板状のターゲット40Jと比較して、X線の強度の不均一が改善されている。
また、本実施形態では、駆動装置610によってベース基板500Aを回転させることにより、X線を連続して出射させることができるとともに、電子を照射する位置がターゲット400Cにおいて移動するので、電子の照射よって加熱されたターゲット400Cの一部を冷却することができ、X線の連続照射を長時間にわたって行うことができる。また、ベース基板500Aに入り込んだ電子がグランドGNDに抜けて滞留しない点は、図13に示すベース基板500と同様である。
なお、上述の実施形態においては、ハウジング42内にターゲット400を収容していたが、ハウジング42の外側にターゲット400が配置されていても構わない。例えば、ハウジング42とターゲット400とが別部材に支持されていても構わない。また、例えば、ハウジング42の内部は実質的に真空に保っている。また、ハウジング42は、真空に保たれている空間から電子線を大気中に照射することが可能である。したがって、ハウジング42と離れた位置にあるターゲット400に向けて、ハウジン42からの電子線を照射することでX線を発生することができる。
<第13実施形態>
次に、第13実施形態について説明する。図17は、実施形態に係るX線装置1の一例を示す図である。X線装置1は、図17に示すように、測定物SにX線XLを照射して、その測定物Sを透過した透過X線を検出する。X線装置1は、測定物SにX線を照射して、その測定物Sを通過したX線を検出して、その測定物Sの内部の情報(例えば、内部構造)を非破壊で取得するX線CT検査装置を含む。本実施形態において、測定物Sは、例えば機械部品、電子部品等の産業用部品を含む。X線CT検査装置は、産業用部品にX線を照射して、その産業用部品を検査する産業用X線CT検査装置を含む。
図17に示すように、X線装置1は、X線XLを射出するX線源100と、測定物Sを保持して移動可能なステージ装置3と、X線源100から射出され、ステージ装置3に保持された測定物Sを通過したX線の少なくとも一部を検出する検出器4と、X線装置1全体の動作を制御する制御装置5と、を備える。X線装置1は、X線源100から射出されるX線XLが進行する内部空間SPを形成するチャンバ部材6を備えている。X線源100、ステージ装置3、及び検出器4は、内部空間SPに配置される。
内部空間SPは、X線源100が配置される第1空間SP1と、検出器4及びステージ装置3の少なくとも一部が配置される第2空間SP2とに仕切られる。仕切った部分には、X線源100からのX線XLが通過可能な開口を有する通過部8が形成される。X線源100から射出されたX線XLは、通過部8を介して、第2空間SP2に供給される。通過部8は、X線XLが透過可能な透過部材が用いられてもよい。透過部材としては、例えば、ベリリウム薄膜、炭素薄膜などが用いられてもよい。
X線装置1は、第1空間SP1の温度を調整する調整システム360を備える。調整システム360は、制御装置5に制御される。調整システム360は、第1空間SP1に面した供給口7から、温度調整された気体GAを第1空間SP1に供給する。供給口7は、X線源100の少なくとも一部に、温度調整された気体GAを供給する。
チャンバ部材6は、支持面FR上に配置される。支持面FRは、工場等の床面を含む。チャンバ部材6は、複数の支持部材6Sに支持される。チャンバ部材6は、支持部材6Sを介して、支持面FR上に配置される。支持部材6Sにより、チャンバ部材6の下面と、支持面FRとは離間している。すなわち、チャンバ部材6の下面と支持面FRとの間には空間が形成される。ただし、チャンバ部材6の下面の少なくとも一部と支持面FRとが接触してもよい。チャンバ部材6は、鉛を含む材質で形成される。チャンバ部材6は、内部空間SPのX線XLが、チャンバ部材6の外部に漏出することを抑制する。なお、支持部材6Sには、チャンバ部材6の傾きの補正や振動の除去を行うための駆動装置が含まれてもよい。
チャンバ部材6の内面及び外面の一方または双方には、チャンバ部材6よりも熱伝導率が小さい断熱材が設けられてもよい。これにより、内部空間SPの温度が外部の温度(温度変化)の影響を受けることを抑制し、外部の熱が内部空間SPに伝わることを抑制する。断熱材として、例えば、プラスチックや発泡スチロールが用いられる。
X線源100は、測定物SにX線XLを照射する。X線源100は、測定物SのX線吸収特性に基づいて、測定物Sに照射するX線の強度を調整可能である。X線源100は、点X線源を含み、測定物Sに円錐状のX線(いわゆるコーンビーム)を照射する。X線源100は、測定物Sに向けて、+Z軸方向に向けて設置される。X線源100から射出されたX線XLの少なくとも一部は、内部空間SPにおいて、+Z軸方向に進行する。
ステージ装置3は、測定物Sを保持して移動可能なステージ9と、ステージ9を移動する駆動システム10とを備えている。ステージ9は、測定物Sを保持する保持部11を有するテーブル12と、テーブル12を移動可能に支持する第1可動部材13と、第1可動部材13を移動可能に支持する第2可動部材14と、第2可動部材14を移動可能に支持する第3可動部材15とを有する。
テーブル12は、保持部11に測定物Sを保持した状態で回転可能である。テーブル12は、θY方向に移動(回転)可能である。第1可動部材13は、X軸方向に移動可能である。第1可動部材13がX軸方向に移動すると、第1可動部材13とともに、テーブル12がX軸方向に移動する。第2可動部材14は、Y軸方向に移動可能である。第2可動部材14がY軸方向に移動すると、第2可動部材14とともに、第1可動部材13及びテーブル12がY軸方向に移動する。第3可動部材15は、Z軸方向に移動可能である。第3可動部材15がZ軸方向に移動すると、第3可動部材15とともに、第2可動部材14、第1可動部材13、及びテーブル12がZ軸方向に移動する。
駆動システム10は、第1可動部材13上においてテーブル12を回転させる回転駆動装置16と、第2可動部材14上において第1可動部材13をX軸方向に移動する第1駆動装置17と、第2可動部材14をY軸方向に移動する第2駆動装置18と、第3可動部材15をZ軸方向に移動する第3駆動装置19とを含む。
第2駆動装置18は、第2可動部材14が有するナットに配置されるねじ軸20Bと、ねじ軸20Bを回転させるアクチュエータ20とを備える。ねじ軸20Bは、ベアリング21A、21Bによって回転可能に支持される。ねじ軸20Bは、そのねじ軸20Bの軸線とY軸とが実質的に平行となるように、ベアリング21A、21Bに支持される。第2駆動装置18は、いわゆる、ボールねじ駆動機構を含む。
第3駆動装置19は、第3可動部材15が有するナットに配置されるねじ軸23Bと、ねじ軸23Bを回転させるアクチュエータ23とを備える。ねじ軸23Bは、ベアリング24A、24Bによって回転可能に支持される。本実施形態において、ねじ軸23Bは、そのねじ軸23Bの軸線とZ軸とが実質的に平行となるように、ベアリング24A、24Bに支持される。第3駆動装置19は、いわゆる、ボールねじ駆動機構を含む。
第3可動部材15は、第2可動部材14をY軸方向にガイドするガイド機構25を有する。ガイド機構25は、Y軸方向に長いガイド部材25A、25Bを含む。アクチュエータ20、及びねじ軸20Bを支持するベアリング21A、21Bを含む第2駆動装置18の少なくとも一部は、第3可動部材15に支持される。アクチュエータ20がねじ軸20Bを回転することによって、第2可動部材14は、ガイド機構25にガイドされながら、Y軸方向に移動する。
X線装置1は、チャンバ部材6の内壁(内面)に固定されたベース部材26を有する。ベース部材26は、第3可動部材15をZ軸方向にガイドするガイド機構27を有する。ガイド機構27は、Z軸方向に長いガイド部材27A、27Bを含む。アクチュエータ23、及びねじ軸23Bを支持するベアリング24A、24Bを含む第3駆動装置19の少なくとも一部は、ベース部材26に支持される。アクチュエータ23がねじ軸23Bを回転することによって、第3可動部材15は、ガイド機構27にガイドされながら、Z軸方向に移動する。
なお、図示は省略するが、本実施形態において、第2可動部材14は、第1可動部材13をX軸方向にガイドするガイド機構を有する。第1駆動装置17は、第1可動部材13をX軸方向に移動可能なボールねじ機構を含む。回転駆動装置16は、テーブル12をθY軸方向に移動(回転)可能なモータを含む。
本実施形態において、テーブル12に保持された測定物Sは、駆動システム10によって、X軸、Y軸、Z軸、及びθY方向の4つの方向に移動可能である。なお、駆動システム10は、テーブル12に保持された測定物Sを、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動させてもよい。また、駆動システム10は、ボールねじ駆動機構を含むこととしたが、例えば、ボイスコイルモータ、リニアモータ、または平面モータを含むものでもよい。
ステージ9は、第2空間SP2(内部空間SP)において、X線源100と検出器4との間の空間を移動可能である。ステージ9は、X線源100の+Z側に配置される。ステージ9の少なくとも一部は、通過部8を介して、X線源100と対向可能である。ステージ9は、保持した測定物Sを、X線源100と対向する位置に配置可能である。ステージ9は、X線源100から射出されたX線XLのX線路上に、測定物Sを配置可能である。
X線装置1は、ステージ9の位置を計測する計測システム28を備えている。計測システム28は、エンコーダシステムを含む。計測システム28は、テーブル12の回転量(θY方向に関する位置)を計測するロータリーエンコーダ29と、X軸方向に関する第1可動部材13の位置を計測するリニアエンコーダ30と、Y軸方向に関する第2可動部材14の位置を計測するリニアエンコーダ31と、Z軸方向に関する第3可動部材15の位置を計測するリニアエンコーダ32とを有する。
ロータリーエンコーダ29は、第1可動部材13に対するテーブル12の回転量を計測する。リニアエンコーダ30は、第2可動部材14に対する第1可動部材13の位置(X軸方向に関する位置)を計測する。リニアエンコーダ31は、第3可動部材15に対する第2可動部材14の位置(Y軸方向に関する位置)を計測する。リニアエンコーダ32は、ベース部材26に対する第3可動部材15の位置(Z軸方向に関する位置)を計測する。
ロータリーエンコーダ29は、例えば第1可動部材13に配置されたスケール部材29Aと、テーブル12に配置され、スケール部材29Aの目盛を検出するエンコーダヘッド29Bとを含む。スケール部材29Aは、第1可動部材13に固定されている。エンコーダヘッド29Bは、テーブル12に固定されている。エンコーダヘッド29Bは、スケール部材29A(第1可動部材13)に対するテーブル12の回転量を計測可能である。
リニアエンコーダ30は、例えば第2可動部材14に配置されたスケール部材30Aと、第1可動部材13に配置され、スケール部材30Aの目盛を検出するエンコーダヘッド30Bとを含む。スケール部材30Aは、第2可動部材14に固定されている。エンコーダヘッド30Bは、第1可動部材13に固定されている。エンコーダヘッド30Bは、スケール部材30A(第2可動部材14)に対する第1可動部材13の位置を計測可能である。
リニアエンコーダ31は、第3可動部材15に配置されたスケール部材31Aと、第2可動部材14に配置され、スケール部材31Aの目盛を検出するエンコーダヘッド31Bとを含む。スケール部材31Aは、第3可動部材15に固定されている。エンコーダヘッド31Bは、第2可動部材14に固定されている。エンコーダヘッド31Bは、スケール部材31A(第3可動部材15)に対する第2可動部材14の位置を計測可能である。
リニアエンコーダ32は、ベース部材26に配置されたスケール部材32Aと、第3可動部材15に配置され、スケール部材32Aの目盛を検出するエンコーダヘッド32Bとを含む。スケール部材32Aは、ベース部材26に固定されている。エンコーダヘッド32Bは、第3可動部材15に固定されている。エンコーダヘッド32Bは、スケール部材32A(ベース部材26)に対する第3可動部材15の位置を計測可能である。
検出器4は、第2空間SP2(内部空間SP)において、X線源100及びステージ9よりも+Z側に配置される。検出器4は、チャンバ部材6内の所定の位置に保持されるが、移動可能でもよい。検出器4は、測定物Sを透過した透過X線を含むX線源100からのX線XLが入射する入射面33を有するシンチレータ部34と、シンチレータ部34において発生した光を受光する受光部35とを有する。検出器4の入射面33は、ステージ9に保持された測定物Sと対向して配置される。
シンチレータ部34は、X線が当たることによって、光を発生させるシンチレーション物質を含む。受光部35は、光電子倍増管を含む。光電子倍増管は、光電効果により光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電管を含む。受光部35は、シンチレーション部34において発生した光を増幅し、電気信号に変換して出力する。検出器4は、複数のシンチレータ部34を有する。シンチレータ部34は、XY平面内においてアレイ状に複数配置される。検出器4は、複数のシンチレータ部34のそれぞれと接続するように、複数の受光部35を有する。
供給口7は、X線源100の少なくとも一部に、温度調整された気体GAを供給する。調整システム360は、気体GAの温度を調整する調整装置36を備える。調整装置36は、例えば電力によって作動する。供給口7は、調整装置36からの気体GAを内部空間SP(第1空間SP1)に供給する。調整装置36は、チャンバ部材6の外部において、支持面FRに配置される。調整装置36とチャンバ部材6とは、チャンバ部材6の外部に配置された導管37によって接続される。調整装置36とチャンバ部材6とは、離れて配置される。また、導管37の少なくとも一部とチャンバ部材6とは、離れて配置される。
チャンバ部材6は、導管38を有する。導管38は、内部空間SPと外部とを結ぶように形成される。導管38の一端の開口は、外部に面するように配置される。導管38の他端の開口は、内部空間SPに面するように配置される。導管37の流路は、導管38の一端の開口と接続される。導管38の他端の開口が、供給口7として機能する。
調整装置36は、例えば外部の気体を取り入れて、その気体の温度を調整する。調整装置36によって温度調整された気体GAは、導管37の流路、及びチャンバ部材6の導管38を介して、供給口7に送られる。供給口7を介して、調整装置36からの気体GAを内部空間SP(第1空間SP1)に供給する。調整装置36は、導管37と導管38を一体に備えていても構わないし、導管37と導管38との少なくとも一部が別々の部材でも構わない。
次に、本実施形態に係るX線装置の動作の一例について説明する。図18は、X線装置1の動作の一例を説明するフローチャートである。図18に示すように、X線装置1のキャリブレーション(ステップSA1)と、測定物Sに対するX線XLの照射及び測定物Sを通過した透過X線の検出(ステップSA2)と、測定物Sの内部構造の算出(ステップSA3)とが実行される。
キャリブレーション(ステップSA1)の一例について説明する。キャリブレーションは、テーブル12に測定物Sとは異なる例えば球体が保持され、供給口7から温度調整された気体GAが供給されて、X線源100を含む第1空間SP1の温度が調整された状態で行う。球体の外形(寸法)は既知であり、少なくとも測定物Sよりも熱変形が抑制された物体である。内部空間SPにおいて温度が変化しても、球体の外形(寸法)は、実質的に変化しない。
キャリブレーションが終了した後、測定物Sの検出が行われる(ステップSA2)。測定物Sの検出では、制御装置5が、ステージ装置3を制御して、テーブル12に保持された測定物SをX線源100と検出器4との間に配置して行う。
また、測定物Sの検出において、供給口7から温度調整された気体GAが第1空間SP1に供給される。温度調整された気体GAが供給口7から第1空間SP1に供給されることによって、X線源100を含む第1空間SP1の温度が調整される。制御装置5は、内部空間SPが所定温度となるように、供給口7から温度調整された気体GAを、X線源100を含む第1空間SP1に供給する。
制御装置5は、計測システム28でステージ9の位置を計測しつつ、駆動システム10を制御して、測定物Sを保持したステージ9の位置を調整する。制御装置5は、供給口7からの気体GAの供給の少なくとも一部と並行して、X線源100からX線を射出するために、フィラメント39に電流を流す。これにより、フィラメント39が加熱され、フィラメント39から電子が放出される。フィラメント39から放出された電子は、ターゲット40に照射される。これにより、ターゲット40からX線が発生する。
X線源100から発生したX線XLの少なくとも一部は、測定物Sに照射される。測定物SにX線XLが照射されると、その測定物Sに照射されたX線XLの少なくとも一部は、測定物Sを透過する。測定物Sを透過した透過X線は、検出器4の入射面33に入射する。検出器4は、測定物Sを透過した透過X線を検出する。検出器4は、測定物Sを透過した透過X線に基づいて得られた測定物Sの像を検出する。検出器4の検出結果は、制御装置5に出力される。
制御装置5は、測定時の温度に基づいて、検出器4からの検出結果を、上述したキャリブレーションの結果を用いて補正する。例えば、制御装置5は、所定温度において得られた測定物Sの像が、基準温度において得られる像となるように、その所定温度において得られた測定物Sの像を補正する。例えば、制御装置5は、所定温度において得られた測定物Sの像の寸法に、補正値を乗じた演算を行う。これにより、制御装置5は、内部空間SPの温度が変化しても、基準温度における測定物Sの像(像の寸法)を算出することができる。
制御装置5は、測定物SにおけるX線XLの照射領域を変えるために、測定物Sの位置を変えながら、その測定物SにX線源100からのX線XLを照射する。すなわち、制御装置5は、測定物Sの位置ごとに、測定物SにX線源100からのX線XLを照射し、その測定物Sを透過した透過X線を、検出器4で検出する。制御装置5は、測定物Sを保持したテーブル12を回転させて、X線源100に対する測定物Sの位置を変えることによって、測定物SにおけるX線源100からのX線XLの照射領域を変える。
制御装置5は、測定物Sを保持したテーブル12を回転させながら、その測定物SにX線XLを照射する。テーブル12の各位置(各回転角度)において測定物Sを通過した透過X線(X線透過データ)は、検出器4に検出される。検出器4は、各位置における測定物Sの像を取得する。制御装置5は、検出器4の検出結果から、測定物の内部構造を算出する(ステップSA3)。制御装置5は、測定物Sの各位置(各回転角度)のそれぞれにおいて測定物Sを通過した透過X線(X線透過データ)に基づく測定物Sの像を取得する。すなわち、制御装置5は、測定物Sの像を複数取得する。
制御装置5は、測定物Sを回転させつつその測定物SにX線XLを照射することにより得られた複数のX線透過データ(像)に基づいて演算を行い、測定物Sの断層画像を再構成して、測定物Sの内部構造の三次元データ(三次元構造)を生成する。これにより、測定物Sの内部構造が算出される。測定物の断層画像の再構成方法としては、例えば、逆投影法、フィルタ補正逆投影法、逐次近似法が挙げられる。逆投影法及びフィルタ補正逆投影法に関しては、例えば、米国特許出願公開第2002/0154728号明細書に記載されている。また、逐次近似法に関しては、例えば、米国特許出願公開第2010/0220908号明細書に記載されている。
以上説明したように、ターゲット40内のX線の発生領域46からターゲット40の表面46までの距離が測定物Sの測定領域に対する放射方向で一定となる部分を有するターゲット40を用いることにより、表面46から射出されるX線の強度の分布が均一になる。従って、本実施形態によれば、そのX線を用いて測定物Sを検出することによってX線装置1の検出精度の低下を抑制できる。これにより、X線装置1は、測定物Sの内部構造に関する情報を精確に取得できる。
なお、上記したX線装置1において、X線源100からX線XLが射出されるときに、温度調整された気体GAが供給されることとしたが、例えば、測定物Sを保持したステージ9の位置に基づいて、温度調整された気体GAの供給と供給停止とが行われてもよい。例えば、ステージ9がX線源100に近い位置に配置される場合には、温度調整された気体GAをX線源100に供給し、ステージ9がX線源100から遠い位置に配置される場合には、X線源100に対する気体GAの供給を停止してもよい。あるいは、Z軸方向に関するステージ9とX線源100との距離が閾値より短い場合には、温度調整された気体GAをX線源100に供給し、閾値より長い場合には、X線源100に対する気体GAの供給を停止してもよい。すなわち、測定物Sを高倍率で検出(測定)する場合には、温度調整された気体GAをX線源100に供給し、低倍率で検出(測定)する場合には、X線源100に対する気体GAの供給を停止してもよい。
なお、上述のX線装置1においては、X線源100から射出されるX線XLを用いたX線CT検査装置であるが、X線源100から射出されるX線が、X線の波長とは異なる波長の光線であってもよい。上述のX線装置1で説明した各要素は、測定物Sを通過した透過光を検出する装置であれば、X線の波長とは異なる波長の光線を用いる装置にも適用可能である。
なお、上記したX線装置1ではX線源100を有することとしたが、X線源100がX線装置1に対する外部装置でもよい。すなわち、X線源100がX線装置1の少なくとも一部を構成しなくてもよい。また、上記したX線装置1ではX線源100を用いるが、これに代えて図12に示すX線源200や、図17に示すX線源300が用いられてもよい。
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態に記載の範囲には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、上記の実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。そのような変更または改良、省略した形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記した実施形態や変形例の構成を適宜組み合わせて適用することも可能である。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用したX線装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
また、上記した各実施形態において、ターゲット40等に冷却装置が設けられてもよい。冷却装置としては、例えばペルチェ素子等が用いられてもよい。
また、上述のX線装置1においては、測定物Sとして産業用部品に限られず、人体等の一部または全部を測定対象とする医療用のX線装置として用いられてもよい。
また、上述のX線装置1においては、X線源100等及び検出器4を所定の位置に固定し、ステージを回転させることにより測定物Sの像を取得しているが、走査方法はこれに限られない。X線源100等及び検出器4の一方が所定の位置に固定され、他方が移動可能でもよい。また、X線源100等及び検出器4の両方が移動可能でもよい。
次に、上述したX線装置1を備えた構造物製造システムについて説明する。
図19は、構造物製造システムSYSのブロック構成図である。構造物製造システムSYSは、検出装置としてのX線装置1と、成形装置120と、制御装置(検査装置)130と、リペア装置140とを備える。本実施形態においては、構造物製造システムSYSは、自動車のドア部分、エンジン部品、ギア部品、回路基板を備える電子部品などの成形品を作成する。
設計装置110は、構造物の形状に関する設計情報を作成し、作成した設計情報を成形装置120に送信する。また、設計装置110は、作成した設計情報を制御装置130の後述する座標記憶部131に記憶させる。ここで、設計情報とは、構造物の各位置の座標を示す情報である。成形装置120は、設計装置110から入力された設計情報に基づいて上記構造物を作製する。成形装置120の成形工程には、鋳造、鍛造、または切削等が含まれる。
X線装置(検出装置)1は、測定した座標を示す情報を制御装置130へ送信する。制御装置130は、座標記憶部131と、検査部132とを備える。座標記憶部131には、前述の通り、設計装置110により設計情報が記憶される。検査部132は、座標記憶部131から設計情報を読み出す。検査部132は、X線装置(検出装置)1から受信した座標を示す情報から、作成された構造物を示す情報(形状情報)を作成する。検査部132は、X線装置(検出装置)1から受信した座標を示す情報(形状情報)と座標記憶部131から読み出した設計情報とを比較する。検査部132は、比較結果に基づき、構造物が設計情報通りに成形されたか否かを判定する。換言すれば、検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する。検査部132は、構造物が設計情報通りに成形されていない場合、修復可能であるか否か判定する。修復できる場合、検査部132は、比較結果に基づき、不良部位と修復量を算出し、リペア装置140に不良部位を示す情報と修復量を示す情報とを送信する。
リペア装置140は、制御装置130から受信した不良部位を示す情報と修復量を示す情報とに基づき、構造物の不良部位を加工する。
図20は、構造物製造システムSYSによる処理の流れを示したフローチャートである。まず、設計装置110が、構造物の形状に関する設計情報を作製する(ステップS101)。次に、成形装置120は、設計情報に基づいて上記構造物を作製する(ステップS102)。次に、X線装置(検出装置)1は構造物の形状に関する座標を測定する(ステップS103))。次に制御装置130の検査部132は、X線装置(検出装置)1から作成された構造物の形状情報と、上記設計情報とを比較することにより、構造物が設計情報通りに作成された否かを検査する(ステップS104)。
次に、制御装置130の検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する(ステップS105)。作成された構造物が良品である場合(ステップS106:YES)、構造物製造システムSYSはその処理を終了する。一方、作成された構造物が良品でない場合(ステップS106:NO)、制御装置130の検査部132は、作成された構造物が修復できるか否か判定する(ステップS107)。
作成された構造物が修復できる場合(ステップS107:YES)、リペア装置140は、構造物の再加工を実施し(ステップS108)、ステップS103の処理に戻る。一方、作成された構造物が修復できない場合(ステップS107 YES)、構造物製造システムSYSはその処理を終了する。以上で、本フローチャートの処理を終了する。
以上により、上記の実施形態におけるX線装置(検出装置)1が構造物の座標を正確に測定することができるので、構造物製造システムSYSは、作成された構造物が良品であるか否か判定することができる。また、構造物製造システムSYSは、構造物が良品でない場合、構造物の再加工を実施し、修復することができる。
1…X線装置、4…検出器、40、40A〜G、400、400A〜400C…ターゲット、41…電子光学系、43…偏向装置、44…入射面、45…発光領域、46…表面(射出面)、50、50A〜50E、500、500A…ベース基板、60、61…駆動装置、100、200、300…X線源、G…重心、L1…距離、S…測定物、XL…X線、SYS…構造物製造システム

Claims (21)

  1. 電子を発生するフィラメントと、
    前記フィラメントからの電子を集光する電子光学系と、
    前記電子光学系により集光された前記電子が入射する入射面と、前記入射面から入射した前記電子により発生したX線を射出する射出面とを有するターゲットと、
    を備え、
    X線を発生する発生領域は、前記入射面から距離をおいて前記ターゲットの内部に位置しており、
    前記発生領域から前記射出面までの距離が測定物の測定領域に対する放射方向で一定である、X線源。
  2. 前記ターゲットの材質、および前記電子光学系の加速電圧に基づいて、前記ターゲット内部でのX線発生領域の位置が定まり、前記定まるX線の発生領域の位置に基づいて前記ターゲットの形状が定まる請求項1に記載のX線源。
  3. 前記ターゲット内部でのX線発生領域の大きさに基づいて、前記ターゲットの形状が定まる、請求項1又は2に記載のX線源。
  4. 前記発生領域はX線を発生する重心を含み、
    前記重心から前記ターゲットの表面までの距離が、前記放射方向で一定となる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のX線源。
  5. 前記重心は、前記発生領域のうちX線の発生が最も多い部分である、請求項4に記載のX線源。
  6. 前記射出面の表面形状は球面である、請求項1〜5の何れか1項に記載のX線源。
  7. 前記球面の半径は、0.1μm〜10μmである、請求項6に記載のX線源。
  8. 前記ターゲットへの電子の入射面の表面形状は平面である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のX線源。
  9. 前記ターゲットを保持するベース基板を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のX線源。
  10. 前記ベース基板は、X線を透過する材料で形成される、請求項9に記載のX線源。
  11. 前記ターゲットは、前記ベース基板に形成された凹部に保持される、請求項9又は10に記載のX線源。
  12. 前記ターゲットと前記凹部との境界は曲面である、請求項11に記載のX線源。
  13. 前記ベース基板は、複数の前記ターゲットを保持する、請求項9〜12のいずれか1項に記載のX線源。
  14. 前記ベース基板は、平面方向と交差する方向の回転軸を有し、
    前記ターゲットは、前記回転軸を中心とする周回方向に配置される請求項9〜13のいずれか1項に記載のX線源。
  15. 前記ターゲットの射出面から電子が入射し、前記ターゲット内部のX線の発生領域から発生するX線が前記射出面から射出する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のX線源。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載のX線源と、
    前記X線源から射出され、測定物を通過したX線の少なくとも一部を検出する検出装置と、を備えた、X線装置。
  17. 前記測定領域は、前記X線の発生領域と、測定物を通過するX線を検出領域とにより規定される、請求項16に記載のX線装置。
  18. 構造物の形状に関する設計情報を作製する設計工程と、
    前記設計情報に基づいて前記構造物を作成する成形工程と、
    作製された前記構造物の形状を請求項16又は17に記載のX線装置を用いて計測する工程と、
    前記計測工程で得られた形状情報と、前記設計情報とを比較する検査工程と、を有する、構造物の製造方法。
  19. 前記検査工程の比較結果に基づいて実行され、前記構造物の再加工を実施するリペア工程を有する、請求項18に記載の構造物の製造方法。
  20. 前記リペア工程は、前記成形工程を再実行する工程である、請求項19に記載の構造物の製造方法。
  21. 構造物の形状に関する設計情報を作製する設計装置と、
    前記設計情報に基づいて前記構造物を作製する成形装置と、
    作製された前記構造物の形状を測定する請求項16又は17に記載のX線装置と、
    前記X線装置によって得られた前記構造物の形状に関する形状情報と前記設計情報とを比較する検査装置と、を含む、構造物製造システム。
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