JP6724952B2 - 含フッ素エーテル化合物の製造方法、物品の製造方法 - Google Patents

含フッ素エーテル化合物の製造方法、物品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、含フッ素エーテル化合物の製造方法および物品の製造方法に関する。
含フッ素化合物は、高い潤滑性、撥水撥油性等を示すため、表面処理剤に好適に用いられる。表面処理剤によって基材の表面に撥水撥油性を付与すると、基材の表面の汚れを拭き取りやすくなり、汚れの除去性が向上する。上記含フッ素化合物の中でも、ペルフルオロアルキレン鎖の途中にエーテル結合(−O−)が存在するポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有する含フッ素エーテル化合物は、柔軟性に優れる化合物であり、特に油脂等の汚れの除去性に優れる。
上記含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤は、指で繰り返し摩擦されても撥水撥油性が低下しにくい性能(耐摩擦性)および拭き取りによって表面に付着した指紋を容易に除去できる性能(指紋汚れ除去性)が長時間維持されるのが求められる用途、たとえば、タッチパネルの指で触れる面を構成する部材の表面処理剤として用いられる。
上記含フッ素エーテル化合物の製造方法としては、ヒドロシリル化触媒としての白金錯体の存在下、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有する化合物およびアセトキシシラン等を反応させる方法が知られている(特許文献1)。
国際公開第2017/022437号公報
近年、含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤を用いて形成されてなる表面層に求められる物性はさらに向上しており、具体的には、初期の撥水性に優れた表面層が求められている。
本発明者らが、特許文献1に記載の製造方法により得られた含フッ素エーテル化合物を用いて基材の表面に表面層を形成したところ、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれかの製造条件で表面層の初期の撥水性が不充分になる場合があるのを知見した。
本発明は、上記課題に鑑みて、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれの製造条件でも初期の撥水性に優れた表面層を形成できる含フッ素エーテル化合物の製造方法および物品の製造方法の提供を目的とする。
本発明は、下記[1]〜[8]の構成を有する含フッ素エーテル化合物の製造方法および物品の製造方法を提供する。
[1] ヒドロシリル化触媒の存在下、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖およびω−アルケニル基を有する化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子ならびにケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基のいずれか一方または両方を有する化合物とを反応させて、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖ならびにケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基のいずれか一方または両方を有する含フッ素エーテル化合物を得た後、含水量2.5g/m以下のフィルタを用いて上記含フッ素エーテル化合物を濾過することを特徴とする含フッ素エーテル化合物の製造方法。
[2] 上記フィルタを構成する材料が、ポリテトラフルオロエチレンである、[1]の製造方法。
[3] 上記フィルタは乾燥処理が施されたフィルタである、[1]または[2]の製造方法。
[4] 上記乾燥処理が、窒素ガスを通過させる処理を含む、[1]〜[3]のいずれかの製造方法。
[5] 上記乾燥処理が、加熱する処理を含む、[1]〜[4]のいずれかの製造方法。
[6] 上記フィルタの含水量が、1.5g/m以下である、[1]〜[5]のいずれかの製造方法。
[7] 上記フィルタの含水量が、1.0g/m以下である、[1]〜[6]のいずれかの製造方法。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれかの含フッ素エーテル化合物の製造方法によって得られた含フッ素エーテル化合物を用いて、基材の表面に表面層を形成することを特徴とする物品の製造方法。
本発明によれば、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれの製造条件でも初期の撥水性に優れた表面層を形成できる含フッ素エーテル化合物の製造方法および物品の製造方法を提供できる。
本明細書において、式(1)で表される化合物を化合物1と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。式(1)で表される基を基1と記す。他の式で表される基も同様に記す。
本明細書において、「アルキレン基がA基を有していてもよい」、「A基を有していてもよいアルキレン基」とは、アルキレン基中の炭素原子−炭素原子間にA基を有していてもよいし、アルキレン基−A基−のように末端にA基を有していてもよいことを意味する。
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素原子−炭素原子間においてエーテル結合(−O−)を形成する酸素原子を意味する。
「2価のオルガノポリシロキサン残基」とは、下式で表される基である。下式におけるRは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、または、フェニル基である。また、g1は、1以上の整数であり、1〜9の整数が好ましく、1〜4の整数が特に好ましい。
「シルフェニレン骨格基」とは、−Si(RPhSi(R−(ただし、Phはフェニレン基であり、Rは1価の有機基である。)で表される基である。Rとしては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)が好ましい。
「ジアルキルシリレン基」は、−Si(R−(ただし、Rはアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)である。)で表される基である。
「表面層」とは、基材の表面に形成される層を意味する。
含フッ素エーテル化合物の「数平均分子量」は、NMR分析法を用い、下記の方法で算出される。
H−NMRおよび19F−NMRによって、末端基を基準にしてオキシペルフルオロアルキレン基の数(平均値)を求めることによって算出される。
本発明の含フッ素エーテル化合物の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう。)は、ヒドロシリル化触媒の存在下、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖およびω−アルケニル基を有する化合物(以下、「化合物A」ともいう。)と、ケイ素原子に結合した水素原子ならびにケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基のいずれか一方または両方を有する化合物(以下、「化合物B」ともいう。)とを反応させて、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖ならびにケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基のいずれか一方または両方を有する含フッ素エーテル化合物(以下、「化合物C」ともいう。)を得た後、含水量2.5g/m以下のフィルタを用いて化合物Cを濾過する。
本明細書において、ヒドロシリル化触媒の存在下、化合物Aと化合物Bとを反応させて、化合物Cを得る工程を「合成工程」という。また、含水量2.5g/m以下の上記フィルタを用いて化合物Cを濾過する工程を「濾過工程」という。
本製造方法によって得られる濾過後の化合物Cによれば、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれの製造条件でも初期の撥水性に優れた表面層を形成できる。この理由の詳細は、未だ明らかになっていないが概ね以下の理由によると推測される。
化合物Cの製造において、不純物を目的生成物(含フッ素エーテル化合物)から除去するために活性炭等の吸着材が用いられる場合がある。また、塵や埃等のゴミが化合物Cの製造時に混入する場合がある。このような吸着材やゴミを除去するために、フィルタを用いた目的生成物の濾過が行われる。
ここで、フィルタから持ち込まれる水分によって化合物Cの加水分解反応が進行して、化合物Cから生じたケイ素原子に結合した水酸基が、分子間で脱水縮合してSi−O−Si結合を形成する場合がある。そうすると、化合物Cの加水分解によって生じるケイ素原子に結合した水酸基が基材の表面処理を実施する前に消費されているので、化合物Cと基材との反応点が減少して、表面層と基材との密着性が低下すると推測される。これにより、表面層が基材の表面を充分に被覆できなくなった結果、初期の撥水性が低下したと推測される。
この問題に対して、本製造方法によれば、含水量が所定値以下のフィルタを用いるので、化合物Cの加水分解を抑制できる。その結果、本製造方法によって得られる濾過後の化合物Cを用いて、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれの製造条件でも初期の撥水性に優れる表面層が形成できたと考えられる。
〔合成工程〕
(化合物A)
化合物Aが有するポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、(RO)(ただし、Rはペルフルオロアルキレン基であり、mは2〜200の整数であり、炭素数の異なる2種以上のROからなるものであってもよい。)が好ましい。
(RO)の定義は、後段で詳述する。
化合物Aはω−アルケニル基を複数有していてもよい。化合物A中のω−アルケニル基の数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
ω−アルケニル基としては、アリル基、ビニル基、3−ブテニル基が挙げられる。
化合物Aとしては、表面層の撥水撥油性がより優れる点で、化合物1が好ましい。
[A−O−Z−(RO)−][−CH=CH (1)
は、ペルフルオロアルキル基または−Q[−CH=CHである。
ペルフルオロアルキル基中の炭素数は、表面層の耐摩擦性がより優れる点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい。
ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
ただし、Aが−Q[−CH=CHである場合、jは1である。
ペルフルオロアルキル基としては、CF−、CFCF−、CFCFCF−、CFCFCFCF−、CFCFCFCFCF−、CFCFCFCFCFCF−、CFCF(CF)−等が挙げられる。
ペルフルオロアルキル基としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、CF−、CFCF−、CFCFCF−が好ましい。
Qは、(k+1)価の連結基である。後述するように、kは1〜10の整数である。よって、Qとしては、2〜11価の連結基が挙げられる。
Qとしては、たとえば、エーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、2〜8価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述する式(2−1)、式(2−2)、式(2−1−1)〜(2−1−6)から−CH=CHを除いた基が挙げられる。
は、単結合、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜20のオキシフルオロアルキレン基(ただし、オキシペルフルオロアルキレン基を除く。上記オキシフルオロアルキレン基中の酸素原子は、(RO)に結合する。)、または、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜20のポリ(オキシフルオロアルキレン)基((RO)に結合するオキシフルオロアルキレン基中の酸素原子は、(RO)に結合する。(RO)に結合するオキシフルオロアルキレン基は、1個以上の水素原子を含む。ポリ(オキシフルオロアルキレン)基には、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたオキシペルフルオロアルキレン基と、1個以上の水素原子を含むオキシフルオロアルキレン基との両方が含まれていてもよい。)である。オキシフルオロアルキレン基またはポリ(オキシフルオロアルキレン)基の炭素数は1〜10が好ましい。
としては、化合物を製造しやすい点から、単結合、−CHFCFOCHCFO−、−CFCHFCFOCHCFCFO−、−CFCFCHFCFOCHCFO−、−CFCFOCHFCFOCHCFO−、−CFCFOCFCFOCHFCFOCHCFO−、−CFCHOCHCFO−、−CFCFOCFCHOCHCFO−が好ましい(なお、上記式中、左側がA−Oに結合する。)。Zとしては、単結合、−CHFCFOCHCFO−が特に好ましい。
は、ペルフルオロアルキレン基である。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、1〜6が好ましい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、表面層の撥水撥油性により優れる点から、直鎖状が好ましい。
なお、複数のRは、同一であっても異なっていてもよい。つまり、(RO)は、炭素数の異なる2種以上のROから構成されていてもよい。
mは、2〜200の整数であり、5〜150の整数が好ましく、10〜100の整数が特に好ましい。mが上記範囲の下限値以上であれば、表面層の撥水撥油性がより優れる。mが上記範囲の上限値以下であれば、表面層の耐摩擦性がより優れる。
(RO)において、炭素数の異なる2種以上のROが存在する場合、各ROの結合順序は限定されない。たとえば、2種のROが存在する場合、2種のROがランダム、交互、ブロックに配置されてもよい。
(RO)としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、{(CFO)m11(CFCFO)m12(CFCFCFO)m13(CFCFCFCFO)m14}、(CFCFO)m16、(CFCFCFO)m17、(CFCFO−CFCFCFCFO)m15(CFCFO)、(CFO−CFCFCFCFCFO)m18(CFO)または(CFCFO−CFCFCFCFCFCFO)m19(CFCFO)が好ましく、{(CFO)m11(CFCFO)m12(CFCFCFO)m13(CFCFCFCFO)m14}、(CFCFO−CFCFCFCFO)m15(CFCFO)、(CFO−CFCFCFCFCFO)m18(CFO)、(CFCFO−CFCFCFCFCFCFO)m19(CFCFO)特に好ましい。
ただし、m11およびm12は、それぞれ1以上の整数であり、m13およびm14は、それぞれ0または1以上の整数であり、m11+m12+m13+m14は2〜200の整数であり、m11個のCFO、m12個のCFCFO、m13個のCFCFCFO、m14個のCFCFCFCFOの結合順序は限定されない。m16およびm17は、それぞれ2〜200の整数であり、m15、m18およびm19は、1〜99の整数である。
は、(j+q)価の連結基である。
は、たとえば、エーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、2〜8価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述する式(2−1)、式(2−2)、式(2−1−1)〜(2−1−6)から−CH=CHを除いた基が挙げられる。
jは、1以上の整数であり、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、1〜5の整数が好ましく、化合物を製造しやすい点から、1が特に好ましい。
qは、1以上の整数であり、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、2〜4の整数が好ましく、2または3がより好ましく、3が特に好ましい。
化合物1としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、化合物1−1が好ましい。
−O−Z−(RO)−Z (1−1)
式(1−1)中、A、Z、Rおよびmの定義は、式(1)中の各基の定義と同義である。
は、基2−1または基2−2である。
−Rf7−Q−X(−Q−CH=CH(−R (2−1)
−Rf7−Q71−[CHC(R71)(−Q72−CH=CH)]−R72 (2−2)
f7は、ペルフルオロアルキレン基である。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜6が特に好ましい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
f7としては、化合物を製造しやすい点から、−CFCFCFCF−または−CFCFCFCFCF−が好ましい。
は、単結合または2価の連結基である。
2価の連結基としては、たとえば、2価の炭化水素基(2価の飽和炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、たとえば、アルキレン基が挙げられる。炭素数は1〜20が好ましい。また、2価の芳香族炭化水素基は、炭素数5〜20が好ましく、たとえば、フェニレン基が挙げられる。それ以外にも、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基であってもよい。)、2価の複素環基、−O−、−S−、−SO−、−N(R)−、−C(O)−、−Si(R−および、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、Rは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、または、フェニル基である。Rは、水素原子またはアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)である。
なお、上記これらを2種以上組み合わせた基としては、たとえば、−OC(O)−、−C(O)N(R)−、エーテル性酸素原子を有するアルキレン基、−OC(O)−を有するアルキレン基、アルキレン基−Si(R−フェニレン基−Si(Rが挙げられる。
Xは、単結合、アルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子または2〜8価のオルガノポリシロキサン残基である。
なお、上記アルキレン基は、−O−、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。アルキレン基は、−O−、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基およびジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を複数有していてもよい。
Xで表されるアルキレン基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10が特に好ましい。
2〜8価のオルガノポリシロキサン残基としては、2価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述する(w+1)価のオルガノポリシロキサン残基が挙げられる。
は、単結合または2価の連結基である。
2価の連結基の定義は、上述したQで説明した定義と同義である。
は、水酸基またはアルキル基である。
アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1が特に好ましい。
Xが単結合またはアルキレン基の場合、hは1、iは0であり、
Xが窒素原子の場合、hは1〜2の整数であり、iは0〜1の整数であり、h+i=2を満たし、
Xが炭素原子またはケイ素原子の場合、hは1〜3の整数であり、iは0〜2の整数であり、h+i=3を満たし、
Xが2〜8価のオルガノポリシロキサン残基の場合、hは1〜7の整数であり、iは0〜6の整数であり、h+i=1〜7を満たす。
(−Q−CH=CH)が2個以上ある場合は、2個以上の(−Q−CH=CH)は、同一であっても異なっていてもよい。Rが2個以上ある場合は、2個以上の(−R)は、同一であっても異なっていてもよい。
71は、単結合、または、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基であり、化合物を製造しやすい点から、単結合が好ましい。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、2〜6が特に好ましい。
71は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
アルキル基としては、メチル基が好ましい。
72は、単結合またはアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6が特に好ましい。化合物を製造しやすい点から、Q72は、単結合または−CH−が好ましい。
72は、水素原子またはハロゲン原子であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
yは、1〜10の整数であり、1〜6の整数が好ましい。
2個以上の[CHC(R71)(−Q72−CH=CH)]は、同一であっても異なっていてもよい。
基2−1としては、基2−1−1〜2−1−6が好ましい。
−Rf7−(X−Q−CH=CH (2−1−1)
−Rf7−(Xr1−Q21−N[−(Q22r2−CH=CH (2−1−2)
−Rf7−Q31−G(R)[−(Q32−CH=CH (2−1−3)
−Rf7−[C(O)N(R)]−Q41−(O)−C[−(O)u1−(Q42u2−CH=CH (2−1−4)
−Rf7−Q51−Si[−(Q52−CH=CH (2−1−5)
−Rf7−[C(O)N(R)]v1−Q61−Z[−(Q62v2−CH=CH (2−1−6)
なお、式(2−1−1)〜(2−1−6)中のRf7の定義は、上述した通りである。
は、−O−、または、−C(O)N(R)−である(ただし、式中のNはQに結合する)。
の定義は、上述した通りである。
pは、0または1である。
は、単結合、または、アルキレン基である。なお、アルキレン基は、−O−、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。アルキレン基は、−O−、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基およびジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を複数有していてもよい。
なお、アルキレン基が−O−を有する場合、炭素原子−炭素原子間に−O−を有することが好ましい。また、アルキレン基が、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有する場合、炭素原子−炭素原子間または(Xと結合する側とは反対側の末端にこれらの基を有することが好ましい。
で表されるアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6が特に好ましい。
としては、pが0の場合は、単結合、−CHOCH−、−CHOCHCHOCH−、−CHCH−、−CH−、−CHOCHCHCHSi(CHOSi(CH−が好ましい。(Xp1がエーテル性酸素原子の場合は、−CH−、−CHCHOCH−が好ましい。(Xp1が−C(O)N(R)−の場合は、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい(ただし、式中のNはQに結合する)。Qがこれらの基であると化合物が製造しやすい。
基2−1−1の具体例としては、以下の基が挙げられる。
は、−O−、−NH−、または、−C(O)N(R)−である。
の定義は、上述した通りである。
21は、単結合、または、エーテル性酸素原子、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、もしくは−NH−を有していてもよいアルキレン基である。
21で表されるエーテル性酸素原子、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、または−NH−を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6が特に好ましい。
21としては、化合物を製造しやすい点から、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHOCHCH−、−CHNHCHCH−、−CHCHOC(O)CHCH−が好ましい(ただし、右側がNに結合する。)。
r1は、0または1(ただし、Q21が単結合の場合は0である。)である。化合物を製造しやすい点から、0が好ましい。
r2は、0または1である。
22は、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子または−NH−を有していてもよいアルキレン基である。
なお、アルキレン基が2価のオルガノポリシロキサン残基を有する場合、炭素原子−炭素原子間またはNと結合する側とは反対側の末端にこの基を有することが好ましい。
22で表される2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子または−NH−を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6が特に好ましい。
22としては、化合物を製造しやすい点から、−CH−、−CHCHOCH−が好ましい(ただし、右側が−CH=CHに結合する。)。
2個の[−(Q22r2−CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
基2−1−2の具体例としては、以下の基が挙げられる。
31は、単結合、または、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基であり、化合物を製造しやすい点から、単結合が好ましい。
31で表されるエーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、2〜6が特に好ましい。
Gは、炭素原子またはケイ素原子である。
は、水酸基またはアルキル基である。Rで表されるアルキル基の炭素数は、1〜4が好ましい。
cは、0または1である。
G(R)としては、化合物を製造しやすい点から、C(OH)またはSi(R3a)(ただし、R3aはアルキル基である。アルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、メチル基が特に好ましい。)が好ましい。
32は、2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
なお、アルキレン基が2価のオルガノポリシロキサン残基を有する場合、炭素原子−炭素原子間またはGと結合する側とは反対側の末端にこの基を有することが好ましい。
32で表される2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6が特に好ましい。
32で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜6が特に好ましい。
32としては、化合物を製造しやすい点から、−CH−、−CHCHCHCHCHCH−が好ましい。
2個の[−(Q32−CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
基2−1−3の具体例としては、以下の基が挙げられる。
式(2−1−4)中のRの定義は、上述した通りである。
sは、0または1である。
41は、単結合、または、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
41で表されるエーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、2〜6が特に好ましい。
tは、0または1(ただし、Q41が単結合の場合は0である。)である。
−Q41−(O)−としては、化合物を製造しやすい点から、sが0の場合は、単結合、−CHO−、−CHOCH−、−CHOCHCHO−、−CHOCHCHOCH−、−CHOCHCHCHCHOCH−が好ましく(ただし、左側がRf7に結合する。)、sが1の場合は、単結合、−CH−、−CHCH−が好ましい。
42は、アルキレン基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基であり、上記アルキレン基は−O−、−C(O)N(R)−〔Rの定義は、上述した通りである。〕、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。
なお、アルキレン基が−O−を有する場合、炭素原子−炭素原子間に−O−を有することが好ましい。また、アルキレン基が−C(O)N(R)−、ジアルキルシリレン基または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する場合、炭素原子−炭素原子間または(O)u1と結合する側の末端にこれらの基を有することが好ましい。また、アルキレン基がシルフェニレン骨格基を有する場合、炭素原子−炭素原子間または(O)u1と結合する側とは反対側の末端にこれらの基を有することが好ましい。
42で表されるアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6が特に好ましい。
u1は、0または1である。
u2は、0または1である。
−(O)u1−(Q42u2−としては、化合物を製造しやすい点から、単結合、−CH−、−CHOCH−、−CHOCHCHCH−、−OCH−、−OSi(CHCH−、−OSi(CHOSi(CHCH−、−CHCHCHSi(CHPhSi(CH−が好ましい(ただし、右側が−CH=CHに結合する。)
3個の[−(O)u1−(Q42u2−CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
基2−1−4の具体例としては、以下の基が挙げられる。
51は、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
51で表されるエーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6が特に好ましい。
51としては、化合物を製造しやすい点から、−CHOCHCHCH−、−CHOCHCHOCHCHCH−、−CHCH−、−CHCHCH−が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
eは、0または1である。
52は、2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
なお、アルキレン基が2価のオルガノポリシロキサン残基を有する場合、炭素原子−炭素原子間またはSiと結合する側とは反対側の末端にこの基を有することが好ましい。
52で表されるアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6が特に好ましい。
52で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜6が特に好ましい。
52としては、化合物を製造しやすい点から、−CH−、−CHCHOCH−が好ましい(ただし、右側が−CH=CHに結合する。)。
3個の[−(Q52−CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
基2−1−5の具体例としては、以下の基が挙げられる。
式(2−1−6)中のRの定義は、上述の通りである。
v1は、0または1である。
61は、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
61で表されるエーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、2〜6が特に好ましい。
61としては、化合物を製造しやすい点から、−CHOCHCHCH−、−CHOCHCHOCHCHCH−、−CHCH−、−CHCHCH−が好ましい(ただし、右側がZに結合する。)。
は、(w+1)価のオルガノポリシロキサン残基である。
wは、2〜7の整数である。
(w+1)価のオルガノポリシロキサン残基としては、下記の基が挙げられる。ただし、下式におけるRは、上述の通りである。
v2は、0または1である。
62は、2価のオルガノポリシロキサン残基、または、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
なお、アルキレン基が2価のオルガノポリシロキサン残基を有する場合、炭素原子−炭素原子間またはZと結合する側とは反対側の末端にこの基を有することが好ましい。
62で表されるアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6が特に好ましい。
62としては、化合物を製造しやすい点から、−CH−が好ましい。
w個の[−(Q62v2−CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
(化合物B)
化合物B中におけるケイ素原子に結合した水素原子の数は、1〜3が好ましく、1が特に好ましい。
化合物Bとしては、化合物3が好ましい。
H−SiR3−n (3)
Rは、1価の炭化水素基であり、1価の飽和炭化水素基が好ましい。炭素数は、1〜6が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
Lは、加水分解性基または水酸基である。
Lの加水分解性基は、加水分解反応により水酸基となる基である。すなわち、加水分解性基は、加水分解反応により水酸基となる。ケイ素原子に結合した水酸基は、さらにケイ素原子に結合した水酸基間で反応してSi−O−Si結合を形成する。また、ケイ素原子に結合した水酸基は、基材の表面の水酸基(基材−OH)と脱水縮合反応して、化学結合(基材−O−Si)を形成できる。
Lとしては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、イソシアナート基(−NCO)等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
Lとしては、工業的な製造が容易な点から、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子が好ましい。Lとしては、塗布時のアウトガスが少なく、化合物3の保存安定性がより優れる点から、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、化合物3の長期の保存安定性が必要な場合にはエトキシ基が特に好ましく、塗布後の反応時間を短時間とする場合にはメトキシ基が特に好ましい。
nは、0〜2の整数である。
nは、0または1が好ましく、0が特に好ましい。Lが複数存在することによって、表面層の基材への密着性がより強固になる。
nが1以下である場合、1分子中に存在する複数のLは互いに同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。
化合物3としては、H−Si(OCH、H−SiCH(OCH、H−Si(OCHCH、H−SiCl、H−Si(OC(O)CH、H−Si(NCO)が好ましい。
(化合物C)
化合物Cは、化合物の保存安定性がより優れる点から、ケイ素原子に結合した加水分解性基を有することが好ましい。
化合物Cの数平均分子量は、500〜20,000が好ましく、800〜10,000がより好ましく、1,000〜8,000が特に好ましい。数平均分子量が該範囲内であれば、表面層の耐摩擦性に優れる。
化合物Cとしては、化合物4が好ましい。
[A−O−Z−(RO)−][−C−SiR3−n (4)
式(4)中、Aは、ペルフルオロアルキル基または−Q[−C−SiR3−nである。
ただし、Aが−Q[−C−SiR3−nである場合、jは1である。
他の各基の定義は、上述した通りである。
化合物4としては、化合物4−1が好ましい。
−O−Z−(RO)−Z (4−1)
式(4−1)中、A、Z、R、および、mの定義は、上述した通りである。
は、基5−1または基5−2である。
−Rf7−Q−X(−Q−C−SiR3−n(−R (5−1)
−Rf7−Q71−[CHC(R71)(−Q72−C−SiR3−n)]−R72 (5−2)
なお、式(5−1)および(5−2)中の各基の定義は、上述した通りである。
さらに、基5−1としては、基5−1−1〜5−1−6が好ましい。
−Rf7−(X−Q−C−SiR3−n (5−1−1)
−Rf7−(Xr1−Q21−N[−(Q22r2−C−SiR3−n (5−1−2)
−Rf7−Q31−G(R)[−(Q32−C−SiR3−n (5−1−3)
−Rf7−[C(O)N(R)]−Q41−(O)−C[−(O)u1−(Q42u2−C−SiR3−n (5−1−4)
−Rf7−Q51−Si[−(Q52−C−SiR3−n (5−1−5)
−Rf7−[C(O)N(R)]v1−Q61−Z[−(Q62v2−C−SiR3−n (5−1−6)
なお、式(5−1−1)および(5−1−6)中の各基の定義は、上述した通りである。
(ヒドロシリル化触媒)
ヒドロシリル化触媒は、遷移金属触媒が好ましく、第8族〜第10族遷移金属触媒がより好ましく、白金(Pt)触媒、ルテニウム(Ru)触媒、ロジウム(Rh)触媒、鉄(Fe)触媒がさらに好ましく、ヒドロシリル化反応がより進行する点から、白金触媒および鉄触媒が特に好ましい。なお、第8族〜第10族とは、IUPAC無機化学命名法改訂版(1989年)による族番号である。
白金触媒の具体例としては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのPt錯体、ジビニルテトラメチルジシロキサンのPt錯体、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンのPt錯体、塩化白金酸、酸化白金が挙げられる。
鉄触媒の具体例としては、国際公開第2016/027819号公報に記載のヒドロシリル化鉄触媒が挙げられる。
ヒドロシリル化触媒の使用量としては、化合物Aおよび化合物Bの合計量に対して、0.00001〜0.1質量%が好ましく、0.001〜0.02質量%が特に好ましい。
(その他の成分)
合成工程においては、上述した成分以外の成分を用いてもよい。
たとえば、合成工程においては、液状媒体を用いてもよい。つまり、液状媒体の存在下にて、化合物Aと化合物Bとの反応を実施してもよい。
液状媒体としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、フッ素系有機溶媒および非フッ素系有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系有機溶媒の具体例としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコールが挙げられる。
フッ素化アルカンは、炭素数4〜8の化合物が好ましく、たとえば、C13H(AC−2000:製品名、旭硝子社製)、C13(AC−6000:製品名、旭硝子社製)、CCHFCHFCF(バートレル:製品名、デュポン社製)が挙げられる。
フッ素化芳香族化合物の具体例としては、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
フルオロアルキルエーテルは、炭素数4〜12の化合物が好ましく、たとえば、CFCHOCFCFH(AE−3000:製品名、旭硝子社製)、COCH(ノベック−7100:製品名、3M社製)、COC(ノベック−7200:製品名、3M社製)、CCF(OCH)C(ノベック−7300:製品名、3M社製)が挙げられる。
フッ素化アルキルアミンの具体例としては、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミンが挙げられる。
フルオロアルコールの具体例としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられる。
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子および炭素原子のみからなる化合物、および、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物が好ましく、具体的には、炭化水素系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒が挙げられる。
炭化水素系有機溶媒としては、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサン等が好ましい。
ケトン系有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が好ましい。
エーテル系有機溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が好ましい。
エステル系有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等が好ましい。
また、合成工程においては、転位防止剤を用いてもよい。つまり、転位防止剤の存在下にて、化合物Aと化合物Bとの反応を実施してもよい。転位防止剤としては、WO2014/069592号の段落0115に記載の化合物が挙げられる。
〔濾過工程〕
(フィルタ)
フィルタの含水量は、2.5g/m以下であり、表面層の初期の撥水性がより向上する観点から、1.5g/m以下が好ましく、1.0g/m以下がより好ましく、0.5g/m以下がさらに好ましく、0g/mが特に好ましい。
本発明におけるフィルタの含水量(g/m)は、以下の含水量測定処理を実施する前後のフィルタ質量に基づいて算出される。
まず、本製造方法における濾過に用いるフィルタ(以下、「フィルタA」ともいう。)を準備する。次に、フィルタAに窒素ガスを通過させて、フィルタAに保持されていた気体を窒素ガスに置き換えた後、気体検知管(ガステック社製、製品名「No.6L」)から水蒸気が検知されなくなるまで、フィルタAを100℃で加熱して(含水量測定処理)、フィルタBを得る。
そして、フィルタAおよびフィルタBの質量に基づいて、以下の式によってフィルタの含水量を算出する。なお、以下の式において、「濾過面積」とは、濾過時において、濾過対象物がフィルタに接触する部分のフィルタの表面積を意味する。また、フィルタAおよびフィルタBの質量は、各フィルタを3回ずつ秤量した値の算術平均値である。
フィルタの含水量(g/m)=[{フィルタAの質量(g)}−{フィルタBの質量(g)}]/濾過面積(m
なお、乾燥途中のフィルタの含水量は、フィルタAの質量および含水量、ならびに、フィルタBの質量に基づいて算出できる。
フィルタを構成する材料の具体例としては、金属、カーボン、ガラス、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン(たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)が挙げられる。後述する加熱処理および窒素置換処理等の処理を実施しなくても含水量が低い点から、PTFE、PVDFが好ましく、化合物Cや液状媒体に接触しても劣化しにくく、不純物の除去性能にも優れる点から、PTFEが特に好ましい。
フィルタの具体例としては、紙、布(たとえば、不織布、織物、編物)、金属フィルタ、焼結フィルタ、メンブレン(膜)、中空糸膜が挙げられ、不純物の除去性能に優れる点から、紙、メンブレン、中空糸膜が好ましい。
フィルタの孔径(開口径)は、不純物の除去性能と濾過効率とのバランスに優れる点から、0.01〜1,000μmが好ましく、0.05〜100μmがより好ましく、0.1〜10μmが特に好ましい。
濾過圧力は、生産性やハンドリングに優れる点から、0〜2.0MPaが好ましく、0.05〜0.5MPaが特に好ましい。
フィルタは、本製造方法の使用時に上記含水量の範囲を満たしていればよく、保管時等の使用前においては、フィルタの含水量が上記範囲外であってもよい。
フィルタの含水量を上記範囲内に調整する方法としては、たとえば、フィルタに乾燥処理を施す方法が挙げられる。フィルタの乾燥処理は、フィルタの含水量が上記範囲外である場合に実施されるのが好ましいが、フィルタの含水量をさらに低減させる目的で、フィルタの含水量が上記範囲内にある場合でも実施されてもよい。
乾燥処理は、濾過工程前に実施されればよく、具体的には、上記合成工程前、上記合成工程時、上記合成工程後のいずれのタイミングで実施されてもよい。
乾燥処理の具体例としては、フィルタに窒素ガスを通過させる窒素置換処理、および、フィルタを加熱する加熱処理が挙げられる。これにより、フィルタの含水量を低減できるので、表面層の初期の撥水性がより向上する。
具体的には、フィルタの窒素置換処理を実施すれば、フィルタに保持されていた気体(たとえば、水蒸気を含む空気)が窒素ガスに置換されるので、フィルタの含水量を低減できる。また、窒素置換処理によって、フィルタ中に保持されていたゴミを除去できるので、フィルタの濾過効率が向上する。
また、フィルタの加熱処理を実施すれば、フィルタに保持されていた水分が蒸発するので、フィルタの含水量を低減できる。
本発明の効果がより発揮される点から、乾燥処理後のフィルタは、直ちに(たとえば、窒素置換処理前後のフィルタの含水量の差が、1.5g/mになるまでの間に)、化合物Cの濾過に用いるのが好ましい。
窒素置換処理および加熱処理は、いずれか一方を実施してもよいし、両方を実施してもよいが、本発明の効果がより発揮される点から、両方を実施するのが好ましい。
両方の処理を実施する場合、窒素置換処理および加熱処理の実施順序は特に限定されず、窒素置換処理後に加熱処理を実施してもよいし、加熱処理後に窒素置換処理を実施してもよいし、両処理を同時に実施してもよい。
濾過工程で使用する化合物Cは、化合物Cを含む濾過用溶液として使用してもよい。
濾過用溶液は、化合物Cの合成工程において、液状媒体を用いる場合には、合成あがりの化合物Cと液状媒体を含む混合液をそのまま使用してもよい。該混合液にさらに液状媒体を加えて使用してもよい。化合物Cの合成工程において、液状媒体を用いない場合には、合成あがりの化合物Cを含む混合物に液状媒体を加えて使用してもよい。
液状媒体の具体例としては、上記合成工程における液状媒体と同様であるので、その説明を省略する。液状媒体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
液状媒体の含有量は、濾過用溶液の全質量に対して、30〜99質量%が好ましく、40〜95質量%が特に好ましい。
化合物Cの含有量は、濾過用溶液の全質量に対して、1〜70質量%が好ましく、5〜60質量%が特に好ましい。
〔他の工程〕
本製造方法では、化合物Cの合成工程後、濾過工程前に、化合物Cと吸着材とを接触させてもよい。吸着によって、化合物Cとともに存在する触媒等を除去できる。
吸着材の具体例としては、活性炭、モレキュラーシーブ、ゼオライトが挙げられる。
〔物品の製造方法〕
本製造方法によって得られた化合物C(すなわち、濾過後の化合物C)を用いて、基材の表面に表面層を形成できる。
より具体的には、上記化合物Cまたは化合物Cと液状媒体とを含む組成物(以下、「組成物」ともいう。)を用いることにより、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれの製造条件でも、基材の表面に初期の撥水性に優れる表面層を形成できる。つまり、基材と、基材の表面に配置された上記化合物Cまたは組成物から形成されてなる表面層と、を有する物品を製造できる。
なお、組成物中の化合物Cの含有量は、組成物の全質量に対して、0.01〜50.00質量%が好ましく、1.0〜30.00質量が特に好ましい。
組成物中の液状媒体の含有量は、組成物の全質量に対して、50.00〜99.99質量%が好ましく、70.00〜99.00質量%が特に好ましい。
基材は、撥水撥油性の付与が求められている基材であれば特に限定されない。基材の材料の具体例としては、金属、樹脂、ガラス、サファイア、セラミック、石、および、これらの複合材料が挙げられる。ガラスは化学強化されていてもよい。基材は、SiO等で表面処理されていてもよい。
基材としては、タッチパネル用基材およびディスプレイ基材が好ましく、タッチパネル用基材がより好ましい。タッチパネル用基材は、透光性を有するのが好ましい。「透光性を有する」とは、JIS R3106:1998(ISO 9050:1990)に準じた垂直入射型可視光透過率が25%以上であるのを意味する。タッチパネル用基材の材料としては、ガラスまたは透明樹脂が好ましい。
上記物品は、たとえば、下記の方法で製造できる。
・化合物Cまたは組成物を用いたドライコーティング法によって基材の表面を処理して、上記物品を得る方法。
・ウェットコーティング法によって組成物を基材の表面に塗布し、乾燥させて、上記物品を得る方法。
ドライコーティング法の具体例としては、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法が挙げられる。これらの中でも、化合物Cの分解を抑える点、および、装置の簡便さの点から、真空蒸着法が好適である。真空蒸着時には、鉄や鋼等の金属多孔体に化合物Cまたは組成物を含浸させたペレット状物質を使用してもよい。
ウェットコーティング法の具体例としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法が挙げられる。
上記手順によって形成される表面層には、化合物Cの加水分解反応および縮合反応を介して得られる化合物が含まれる。
表面層の膜厚は、1〜100nmが好ましく、1〜50nmが特に好ましい。表面層の膜厚は、薄膜解析用X線回折計(RIGAKU社製、ATX−G)を用いて、X線反射率法によって反射X線の干渉パターンを得て、この干渉パターンの振動周期から算出できる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、各成分の配合量は、質量基準を示す。例1〜8のうち、例3〜8が実施例、例1〜2が比較例である。また、例9A、9B、10A、10B、11A、11B、12Aおよび12Bのうち、例9B、10B、11Bおよび12Bが実施例、例9A、10A、11Aおよび12Aが比較例である。
〔評価方法〕
(接触角の測定方法)
表面層の表面に置いた約2μLの蒸留水またはn−ヘキサデカンの接触角を、接触角測定装置(協和界面科学社製、製品名「DM−500」)を用いて測定した。表面層の表面における異なる5箇所で測定し、その平均値を算出した。接触角の算出には2θ法を用いた。
<初期接触角>
表面層について、水およびn−ヘキサデカンの初期接触角を上記測定方法で測定した。評価基準は以下の通りである。
<<水の初期接触角>>
◎(優) :115度以上
○(良) :110度以上115度未満
△(可) :100度以上110度未満
×(不可):100度未満
<<n−ヘキサデカンの初期接触角>>
◎(優) :66度以上
○(良) :65度以上66度未満
△(可) :63度以上65度未満
×(不可):63度未満
(耐摩擦性)
表面層について、JIS L0849:2013(ISO 105−X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、スチールウールボンスター(#0000)を圧力:98.07kPa、速度:320cm/分で1万回往復させた後、水の接触角を測定した。摩擦後における水の接触角の低下が小さいほど、摩擦による性能の低下が小さく、耐摩擦性に優れる。
◎(優) :1万回往復後の水接触角度の変化が5度以下
○(良) :1万回往復後の水接触角度の変化が5度超10度以下
△(可) :1万回往復後の水接触角度の変化が10度超20度以下
×(不可):1万回往復後の水接触角度の変化が20度超
(耐薬品性)
<耐アルカリ性>
物品を、1規定NaOH水溶液(pH=14)に5時間浸漬した後、水洗、風乾し、上記方法により水接触角を測定した。試験後における水接触角の低下が小さいほどアルカリによる性能の低下が小さく、耐アルカリ性に優れる。評価基準は下記のとおりである。
◎(優) :耐アルカリ性試験後の水接触角の変化が5度以下
〇(良) :耐アルカリ性試験後の水接触角の変化が5度超10度以下
△(可) :耐アルカリ性試験後の水接触角の変化が10度超20度以下
×(不可):耐アルカリ性試験後の水接触角の変化が20度超
<耐塩水性>
JIS H 8502に準拠して塩水噴霧試験を行った。すなわち、物品を、塩水噴霧試験機(スガ試験機社製)内で300時間塩水雰囲気に暴露した後、上記方法により水接触角を測定した。試験後における水接触角の低下が小さいほど塩水による性能の低下が小さく、耐塩水性に優れる。評価基準は下記のとおりである。
◎(優) :塩水噴霧試験後の水接触角の変化が5度以下
○(良) :塩水噴霧試験後の水接触角の変化が5度超10度以下
△(可) :塩水噴霧試験後の水接触角の変化が10度超20度以下
×(不可):塩水噴霧試験後の水接触角の変化が20度超
(指紋汚れ除去性)
人工指紋液(オレイン酸とスクアレンとからなる液)を、シリコンゴム栓の平坦面に付着させた後、余分な油分を不織布(旭化成社製、ベンコット(登録商標)M−3)にて拭き取り、指紋のスタンプを準備した。該指紋スタンプを、表面層上に乗せ、荷重9.8Nにて10秒間押しつけた。指紋が付着した箇所のヘーズをヘーズメータにて測定し、初期値とした。次に、指紋が付着した箇所について、ティッシュペーパを取り付けた往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、荷重4.9Nにて拭き取りを行った。拭き取り一往復毎にヘーズの値を測定し、ヘーズが初期値から10%以下になる拭き取り回数を測定した。拭き取り回数が少ないほど指紋汚れを容易に除去でき、指紋汚れ拭き取り性能に優れる。評価基準は以下の通りである。
◎(優) :拭き取り回数が3回以下
○(良) :拭き取り回数が4〜5回
△(可) :拭き取り回数が6〜8回
×(不可):拭き取り回数が9回以上
〔例1〕
WO2017/022437号の合成例3に記載の方法に従って、化合物C−1を合成した。具体的には、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖およびω−アルケニル基を有する化合物(以下のパーフルオロポリエーテル基含有アリルオキシ体(B))と、ケイ素原子に結合した加水分解性基を有する化合物であるトリクロロシランとを、ヒドロシリル化触媒である1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのPt錯体存在下で反応させ、次いで得られた化合物の塩素原子をメトキシ基に置換させて化合物C−1を得た。得られた化合物C−1を、濃度10質量%になるように、ノベック−7200(スリーエム社製)に溶解させて、濾過用溶液の100gを調製した。
次に、未処理の濾紙(アドバンテック社製、製品名「No.5C」)を用いて濾過用溶液を濾過して、濾過後の化合物C−1とノベック−7200を含む濾液を得た。このようにして、例1に係る化合物C−1(濾過後)を得た。
なお、濾紙の濾過面積は13.84cmであり、未処理の濾紙の含水量を上述した方法に従って算出したところ、5.8g/mであった。
〔例2〜5〕
例1で使用した未処理の濾紙に窒素ガスを通過させて(窒素置換処理)、含水量がそれぞれ2.8g/m、1.5g/m、0.7g/m、0g/mの濾紙を準備した。このように含水量を調整した濾紙を用いた以外は、例1と同様の方法にて、化合物C−1(濾過後)をそれぞれ得た。
なお、例2〜5で使用した濾紙の濾過面積は例1と同様であり、窒素置換処理における窒素ガスの供給量は0.42m/時間であり、窒素ガスの露点は−55℃である。
ここで、例2〜5で使用した濾紙の含水量は、以下の式にしたがって算出した。以下の式中、フィルタAとは、未処理の濾紙を意味する。また、フィルタBとは、完全乾燥した濾紙を意味し、具体的には上述した気体検知管で水蒸気が検出されなくなるまで乾燥した濾紙を意味する。また、フィルタCとは、窒素置換処理を施して一部乾燥させた濾紙(すなわち、例2〜5で使用した濾紙)を意味する。
フィルタCの含水量(g/cm)={フィルタAの含水量(g/cm)}×[{フィルタCの質量(g)}−{フィルタBの質量(g)}]/[{フィルタAの質量(g)}−{フィルタBの質量(g)}]
〔例6〜8〕
まず、未処理のPTFEメンブレンフィルタ(アドバンテック社製、商品名「T050A」、孔径0.5μm)、未処理のPTFE濾紙(アドバンテック社製、商品名「PF050」、孔径0.5μm)、未処理のPP濾布(フィリス社製、商品名「フィルタクロス」)を準備した。
次に、各フィルタに窒素ガスを通過させて(窒素置換処理)、含水量がいずれも0g/mである各フィルタ(完全乾燥したフィルタを意味し、具体的には上述した気体検知管で水蒸気が検出されなくなるまで乾燥したフィルタ)を得た。
このように含水量を調整した各フィルタを用いた以外は、例1と同様の方法にて、化合物C−1(濾過後)をそれぞれ得た。
〔評価サンプルの作製〕
各例により得られた化合物C−1(濾過後)を用いて、以下のドライコーティング法またはウェットコーティング法にて基材の表面処理を行い、基材(化学強化ガラス)の表面に表面層が形成されてなる評価サンプルを得た。
得られた評価サンプルを用いて、下記の評価試験を実施し、結果を表1に示す。
(ドライコーティング法)
基材に対するドライコーティングは、真空蒸着装置(ULVAC社製、VTR−350M)を用いて行った。具体的には、まず、各例により得られた化合物C−1(濾過後)の0.5gを真空蒸着装置内のモリブデン性ボートに充填し、真空蒸着装置内を1×10−3Pa以下に排気した。化合物C−1を配置したボートを昇温速度10℃/分以下の速度で加熱し、水晶発振式膜厚計による蒸着速度が1nm/秒を超えた時点でシャッターを開けて基材の表面への成膜を開始した。膜厚が約50nmとなった時点でシャッターを閉じて基材表面への成膜を終了した。化合物C−1が堆積した基材を、200℃で30分間加熱処理した後、アサヒクリンAK−225(商品名、旭硝子社製)にて洗浄して、基材の表面に表面層を有する評価サンプル(物品)を得た。
(ウェットコーティング法)
実施例の濾液と、ノベック−7200とを混合して、化合物C−1の濃度が0.05質量%であるウェットコーティング用の組成物を得た。
各組成物に基材をディッピングし、30分間放置後、基材を引き上げた(ディップコート法)。塗膜を200℃で30分間乾燥させ、AK−225にて洗浄することによって、基材の表面に表面層を有する評価サンプル(物品)を得た。
表1の通り、含水量2.5g/m以下のフィルタを用いて濾過した含フッ素エーテル化合物を用いれば、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれの製造条件でも、初期の撥水性に優れた表面層を形成できるのが示された(例3〜8)。
一方、含水量2.5g/m超のフィルタを用いて濾過した含フッ素エーテル化合物を用いると、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれかの製造条件で得られる表面層の初期の撥水性が劣るのが示された(例1および2)。
〔例9〕
WO2017/038832の例3に記載の手法に従い、以下の化合物C−2を合成した。ただし単位数x3の平均値は13であり、化合物C−2の数平均分子量は4,780であった。
C−2 : CF−O−(CFCFO−CFCFCFCFO)x3(CFCFO)−CFCFCFCH−N[CHCHCH−Si(OCH
得られた化合物C−2を、濃度10質量%になるように、ノベック−7200(スリーエム社製)に溶解させて、濾過用溶液の100gを調製した。
例1と同様に、未処理の濾紙(アドバンテック社製、製品名「No.5C」)を用いて濾過用溶液を濾過して、濾過後の化合物C−2とノベック−7200を含む濾液を得た。このようにして、例9Aに係る化合物C−2(濾過後)を得た。なお濾紙の含水量は、8.2g/mであった。
また、未処理のPTFEメンブレンフィルタ(アドバンテック社製、商品名「T050A」、孔径0.5μm)に窒素ガスを通過させて、含水量が0g/mであるフィルタを得た。この含水量を調整したフィルタを用いた以外は、例9Aと同様の方法にて、例9Bに係る化合物C−2(濾過後)を得た。
〔例10〕
特許第5761305号公報の合成例2及び合成例4に記載の手法に従い、以下の化合物C−3を合成した。
C−3 : CFCFCF−O−(CFCFCFO)20−CFCFCHOCHCHCH−Si[CHCHCH−Si(OCH
得られた化合物C−3を、濃度10質量%になるように、ノベック−7200(スリーエム社製)に溶解させて、濾過用溶液の100gを調製した。
例1と同様に、未処理の濾紙(アドバンテック社製、製品名「No.5C」)を用いて濾過用溶液を濾過して、濾過後の化合物C−3とノベック−7200を含む濾液を得た。このようにして、例10Aに係る化合物C−3(濾過後)を得た。なお濾紙の含水量は、5.5g/mであった。
また、未処理のPTFEメンブレンフィルタ(アドバンテック社製、商品名「T050A」、孔径0.5μm)に窒素ガスを通過させて、含水量が0g/mであるフィルタを得た。この含水量を調整したフィルタを用いた以外は、例10Aと同様の方法にて、例10Bに係る化合物C−3(濾過後)を得た。
〔例11〕
特開2015−199906号公報の実施例1に記載の手法に従い、以下の化合物C−4を合成した。ただし、p1:q1=47:53であり、p1+q1は約43であった。
C−4 : CFO−(CFO)p1−(CFCFO)q1−CFC(OH)[CHCHCH−Si(OCH
得られた化合物C−4を、濃度10質量%になるように、ノベック−7200(スリーエム社製)に溶解させて、濾過用溶液の100gを調製した。
例1と同様に、未処理の濾紙(アドバンテック社製、製品名「No.5C」)を用いて濾過用溶液を濾過して、濾過後の化合物C−4とノベック−7200を含む濾液を得た。このようにして、例11Aに係る化合物C−4(濾過後)を得た。なお濾紙の含水量は、4.5g/mであった。
また、未処理のPTFEメンブレンフィルタ(アドバンテック社製、商品名「T050A」、孔径0.5μm)に窒素ガスを通過させて、含水量が0g/mであるフィルタを得た。この含水量を調整したフィルタを用いた以外は、例11Aと同様の方法にて、例11Bに係る化合物C−4(濾過後)を得た。
〔例12〕
WO2017/038832の例7に記載の手法に従い、以下の化合物C−5を合成した。ただし単位数x1の平均値は21であり、単位数x2の平均値は20であった。
C−5 : [(CHO)Si−CHCHCHN−CH−(CFO){(CFO)X1(CFCFO)X2}CF−CH−N[CHCHCH−Si(OCH
得られた化合物C−5を、濃度10質量%になるように、ノベック−7200(スリーエム社製)に溶解させて、濾過用溶液の100gを調製した。
例1と同様に、未処理の濾紙(アドバンテック社製、製品名「No.5C」)を用いて濾過用溶液を濾過して、濾過後の化合物C−5とノベック−7200を含む濾液を得た。このようにして、例12Aに係る化合物C−5(濾過後)を得た。なお濾紙の含水量は、6.0g/mであった。
また、未処理のPTFEメンブレンフィルタ(アドバンテック社製、商品名「T050A」、孔径0.5μm)に窒素ガスを通過させて、含水量が0g/mであるフィルタを得た。この含水量を調整したフィルタを用いた以外は、例12Aと同様の方法にて、例12Bに係る化合物C−5(濾過後)を得た。
〔評価サンプルの作製〕
各例により得られた化合物C−2〜5(濾過後)を用いて、実施例1と同様にドライコーティング法またはウェットコーティング法にて基材の表面処理を行い、基材(化学強化ガラス)の表面に表面層が形成されてなる評価サンプルを得た。得られた評価サンプルを用いて、評価試験を実施した。結果を表2に示す。
表2の通り、含水量2.5g/m以下のフィルタを用いて濾過した含フッ素エーテル化合物を用いれば、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれの製造条件でも、初期の撥水性に優れた表面層を形成できるのが示された(例9B、10B、11B、12B)。
一方、含水量2.5g/m超のフィルタを用いて濾過した含フッ素エーテル化合物を用いると、ドライコーティングおよびウェットコーティングのいずれかの製造条件で得られる表面層の初期の撥水性が劣るのが示された(例9A、10A、11A、12A)。
本製造方法で得られた含フッ素エーテル化合物は、潤滑性や撥水撥油性の付与が求められている各種の用途に用いることができる。たとえば、タッチパネル等の表示入力装置のコート;透明なガラス製または透明なプラスチック製部材の表面保護コート、キッチン用防汚コート;電子機器、熱交換器、電池等の撥水防湿コートや防汚コート;トイレタリー用防汚コート;導通しながら撥液が必要な部材へのコート;熱交換機の撥水・防水・滑水コート;振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート等に用いることができる。より具体的な使用例としては、ディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、あるいはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの、携帯電話、携帯情報端末等の機器のタッチパネルシートやタッチパネルディスプレイ等の人の指または手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器のコート、トイレ、風呂、洗面所、キッチン等の水周りの装飾建材のコート、配線板用防水コーティング、熱交換機の撥水・防水・滑水コート、太陽電池の撥水コート、プリント配線板の防水・撥水コート、電子機器筐体や電子部品用の防水・撥水コート、送電線の絶縁性向上コート、各種フィルタの防水・撥水コート、電波吸収材や吸音材の防水性コート、風呂、厨房機器、トイレタリー用防汚コート、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート、機械部品、真空機器部品、ベアリング部品、自動車部品、工具等の表面保護コート等が挙げられる。

Claims (8)

  1. ヒドロシリル化触媒の存在下、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖およびω−アルケニル基を有する化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子ならびにケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基のいずれか一方または両方を有する化合物とを反応させて、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖ならびにケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基のいずれか一方または両方を有する含フッ素エーテル化合物を得た後、液状媒体を加えて濾過用溶液とした後、含水量2.5g/m以下のフィルタを用いて前記含フッ素エーテル化合物を濾過することを特徴とする含フッ素エーテル化合物の製造方法。
  2. 前記フィルタを構成する材料が、ポリテトラフルオロエチレンである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記フィルタは乾燥処理が施されたフィルタである、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記乾燥処理が、窒素ガスを通過させる処理を含む、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記乾燥処理が、加熱する処理を含む、請求項3または4に記載の製造方法。
  6. 前記フィルタの含水量が、1.5g/m以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記フィルタの含水量が、1.0g/m以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法によって得られた含フッ素エーテル化合物を用いて、基材の表面に表面層を形成することを特徴とする物品の製造方法。
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