JP6723704B2 - イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤および生成抑制方法 - Google Patents
イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤および生成抑制方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6723704B2 JP6723704B2 JP2015167895A JP2015167895A JP6723704B2 JP 6723704 B2 JP6723704 B2 JP 6723704B2 JP 2015167895 A JP2015167895 A JP 2015167895A JP 2015167895 A JP2015167895 A JP 2015167895A JP 6723704 B2 JP6723704 B2 JP 6723704B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- isovaleric acid
- acid aldehyde
- production
- skin
- foot
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Description
特許文献1および2には、その足臭の主たる原因物質がイソ吉草酸であると考えられていること、およびイソ吉草酸はL−ロイシンの酵素的変換により主に生成されることが記載されている。
特許文献3には、プロピレングリコールを消臭成分として0.1〜15重量%、並びにセージ油、バジル油、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブ油、オリバナム油、ローズマリー油、タイム油、ラベンダー油、ラバンディン油、カルボン、ユーカリプトール、チモール、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、カンファーより選ばれる一つ以上の香料成分を0.01〜1.0重量%含み、靴下着用の足に直接、または靴の中へ、噴霧するものである足臭用消臭剤が開示されている。実施例には、上記の各成分によるイソ吉草酸の臭いの消臭作用が記載されている。しかし、特許文献3には、イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制作用については一切記載されていない。
特許文献4には、メタンチオール、プロパンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、トリメチルアミン、ジアセチル、アセトインおよび3−メチルブタナール(イソ吉草酸アルデヒド)が、経血臭または生理臭への寄与度の高い成分であると記載されている。
特許文献5には、非水系皮膚外用製品が微生物に汚染して発生する臭いの成分を分析した結果、イソ吉草酸、イソバレルアルデヒド(イソ吉草酸アルデヒド)、アセトイン、酢酸、酪酸等が大幅に増加していたことが記載されている。
イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤または生成抑制方法については、特許文献4および5には記載されておらず、また今まで報告されてもいない。
本発明者らは、上記のスクリーニング方法等を用いて、多数の植物抽出物について、イソ吉草酸アルデヒドの生成を抑制するかの試験を行ったところ、多くの植物抽出物はイソ吉草酸アルデヒドの生成を抑制しないが、意外にもノイバラ、ノバラ、アイセニア、セイヨウノコギリソウ、エンメイソウ、アカブドウ、オトギリソウ、クワ、マンダリンオレンジ、セージ、ペパーミント、チャノキ、シソ、クララ、ニームおよびビルベリーの植物の抽出物がイソ吉草酸アルデヒドの生成を抑制することを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものであり、具体的には、本発明は以下の通りである。
[2] 有機吸着パウダーと組み合わせて用いられる、[1]に記載のイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤。
[3] 有機吸着パウダーがナイロン末からなる群から選択される1種以上である、[2]に記載のイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤。
[4] ノイバラ、ノバラ、アイセニア、セイヨウノコギリソウ、エンメイソウ、アカブドウ、オトギリソウ、クワ、マンダリンオレンジ、セージ、ペパーミント、チャノキ、シソ、クララ、ニームおよびビルベリーの植物の抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する製剤を皮膚に塗布することによる、イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制方法。
イソ吉草酸アルデヒドに起因する足臭の発生を抑制するための足臭抑制剤のスクリーニング方法は、
(1)イソ吉草酸アルデヒドの産生能を有する微生物を、被験物質およびL−ロイシンを含有する培地で培養するステップ、
(2)前記ステップ(1)で得られた培養物における前記微生物の生菌数および/または前記イソ吉草酸アルデヒドの量を測定することにより、被験物質がイソ吉草酸アルデヒドの生成を抑制するかどうかを判定するステップ、および
(3)前記ステップ(2)において、イソ吉草酸アルデヒドの生成を抑制する被験物質を、足臭抑制剤として選択するステップ
を含む工程によって実施される。
実施例2に記載の通り、足の皮膚に存在しうる皮膚常在微生物を、L−ロイシンを含有する培地で培養することで、イソ吉草酸アルデヒドが生成することを、本発明者らは見出した。すなわち、イソ吉草酸アルデヒドは、皮膚の角質に存在する蛋白質が微生物によって加水分解されて生成されるL−ロイシンから、皮膚常在微生物の作用によって生成されることが明らかとなった。従って、ステップ(1)は、足臭が発生する状況を完全に反映したものであって、ステップ(1)において、被験物質が存在することでイソ吉草酸アルデヒドの量が減少すれば、当該被験物質は足臭抑制剤としての効果を有すると判断することができる。
被験物質の適用量としては、足臭抑制剤としての効果を奏するであろうと思われる量を中心に複数の適応量を試験することが好ましい。
前記培地におけるL−ロイシンの含有率としては、実際の足臭が発生する際の条件を再現する観点から、例えば、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%が挙げられる。
前記微生物の培養時間は、微生物の種類、培地の種類などによって異なるが、微生物によるL−ロイシンからイソ吉草酸アルデヒドが生成するのに要する時間を十分に確保する観点から、例えば、1〜72時間、好ましくは3〜24時間が挙げられる。
前記微生物の培養温度は、微生物の種類などによって異なるが、微生物を良好に生育させる観点から、例えば、20〜50℃、好ましくは30〜40℃が挙げられる。
前記培養物における前記微生物の生菌数の測定方法は、特に限定されないが、例えば、前記培養物を寒天培地に塗布し、一定時間培養後に生成したコロニーの数を計測するコロニーカウント法、顕微鏡観察によって培養物Aにおける前記微生物の数を測定する方法などが挙げられる。
イソ吉草酸アルデヒドの量の測定方法としては、例えば、ガスクロマトグラフ−質量分析法、ガスクロマトグラフ−水素炎イオン検出法、ガスクロマトグラフ−電子捕獲式検出法、高速液体クロマトグラフ−紫外可視分光法、高速液体クロマトグラフ−質量分析法、半導体センサを用いた検出法等が挙げられ、好ましくは、ガスクロマトグラフ−質量分析法が挙げられる。例えば、ガスクロマトグラフ−質量分析法では、クロマトグラムにおけるイソ吉草酸アルデヒドのピーク高さまたはピーク面積の数値を用いてイソ吉草酸アルデヒドの量を算出することができる。
(a)培養物Bにおける微生物の生菌数を、前記培養物Aにおける微生物の生菌数と比較すること、および/または
(b)培養物Bに含まれるイソ吉草酸アルデヒドの量と、培養物Aに含まれるイソ吉草酸アルデヒドの量とを比較すること、
などにより行うことができる。
この場合、
(a1)培養物Aにおける微生物の生菌数が培養物Bにおける微生物の生菌数よりも少ないこと、および/または
(b1)培養物Aに含まれるイソ吉草酸アルデヒドの量が培養物Bに含まれるイソ吉草酸アルデヒドの量よりも少ないこと
を満たす場合、被験物質がイソ吉草酸アルデヒドの生成を抑制する物質であると判定することができる。
上記の足臭抑制剤のスクリーニング方法では、前記微生物の生菌数および/または前記微生物により産生されるイソ吉草酸アルデヒドの量によって、イソ吉草酸アルデヒドの生成を抑制する被験物質を足臭抑制剤として選択する。したがって、上記の足臭抑制剤のスクリーニング方法は、官能評価によって足臭抑制剤を選択する場合と比べ、簡便な操作で客観的かつ的確に、足臭抑制剤を評価することができる。
本発明によって、バラ科、褐藻、キク科、シソ科、ブドウ科、オトギリソウ科、クワ科、オレンジ科、ツバキ科、マメ科、センダン科およびツツジ科の植物の抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する、イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤、ならびに前記抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する製剤を皮膚に塗布することによる、イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制方法が提供される。
好ましくは、ノイバラ(バラ科)、ノバラ(バラ科)、アイセニア(褐藻)、セイヨウノコギリソウ(キク科)、エンメイソウ(シソ科)、アカブドウ(ブドウ科)、オトギリソウ(オトギリソウ科)、クワ(クワ科)、マンダリンオレンジ(オレンジ科)、セージ(シソ科)、ペパーミント(シソ科)、チャノキ(ツバキ科)、シソ(シソ科)、クララ(マメ科)、ニーム(センダン科)およびビルベリー(ツツジ科)の植物の抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する、イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤、ならびに前記抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する製剤を皮膚に塗布することによる、イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制方法が提供される。
上記植物の抽出する部位としては、例えば葉、花、実、樹皮、根、茎、芽等が挙げられる。抽出に際しては、植物原料をそのまま用いてもよく、乾燥させて用いてもよい。植物原料は、粉砕して用いることができる。
また、必要に応じて攪拌して常圧で抽出することができる。但し、抽出方法及び抽出条件等を特に限定するものではなく、例えば加圧抽出を行うこともできる。
アイセニアとは、サガラメとも呼ばれる褐藻である。アイセニアの抽出物としては、例えばアイセニアの全藻を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
エンメイソウ(延命草)は、シソ科の多年草であり、学名はヒキオコシまたはクロバナヒキオコシと呼ばれる。エンメイソウの抽出物としては、例えばエンメイソウの葉または柔らかい茎の部分を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
シソの抽出物としては、例えばシソ科のシソの葉、枝先または実を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
オトギリソウ(弟切草)の抽出物としては、例えばオトギリソウの花、葉および/または茎を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
クワの抽出物としては、例えばクワの葉、実または根の皮(桑白皮:ソウハクヒ)等を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
マンダリンオレンジの抽出物としては、例えば果皮(陳皮:チンピ)等を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
ペパーミントとは、シソ科ハッカ属の多年草植物であり、日本ではセイヨウハッカとも呼ばれている。ペパーミントの抽出物としては、例えばペパーミントの葉を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
チャノキの抽出物としては、例えばチャノキの葉から、室温時、温時または熱時、水、酸性水溶液、含水エタノール、エタノール、含水メタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチルまたはグリセリン水溶液等で抽出した抽出物等が挙げられる。この抽出物には緑茶抽出物、紅茶抽出物、中国茶抽出物等が含まれ、好ましくは緑茶抽出物が挙げられる。
クララの抽出物としては、例えばクララの根を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
ニームの抽出物としては、例えばニームの葉を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
ビルベリーの抽出物としては、例えばビルベリーの葉を水、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等で抽出した抽出物等が挙げられる。
本発明のイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤は、乾燥状態の抽出物からなる製剤であっても、前記乾燥状態の抽出物を溶媒に混合した液剤の製剤であってもよい。前記溶媒として、前記抽出溶媒として挙げられた溶媒等が挙げられる。
これらのパウダーは、市販品を使用してもよく、例えば、KSP-100、KSP-101、KSP-300、KSP-105、KSP-411、KSP-441、KMP-590、KMP-591、トスパール1110A(登録商標)、トスパール150KA(登録商標)、トスパール2000B(登録商標)、ガンツパール SI-020(登録商標)、ガンツパールGMP-0820(登録商標)、ガンツパールGS-1105(登録商標)、ガンツパールGS-2006(登録商標)、ミペロンPM-200(登録商標)、ORGASOL 2002 UD NAT COS(登録商標)、ORGASOL 2002 EXD NAT COS(登録商標)、ORGASOL 2002 EXD NAT COS TypeS(登録商標)、ORGASOL 4000 EXD NAT COS(登録商標)、ナイロンパウダー SP-10、ナイロンパウダー SP-500等の市販品を使用することができる。
植物抽出物と有機吸着パウダーを組み合わせることで、相加的または相乗的にイソ吉草酸アルデヒドの臭いをより抑えることができる。
本発明のイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤は、例えば化粧料、医薬部外品、医薬品等として製剤化することができる。その製剤の剤型としては、例えばエアゾール剤、ロールオン、スティック、洗浄料、クリーム、シート剤、ローション、乳液、ジェル、粉剤等が挙げられ、具体的には、デオドラント剤(例えば、デオドラントローション、デオドラントジェル、デオドラントスプレー、デオドラントロールオン、デオドラントペーパー、デオドラントスティックなど)、乳液、スキンケアクリーム、シート化粧料(例えば、拭き取り用シート、シートパック剤など)等が挙げられる。
本発明のイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤の含有量としては、抽出物の種類、イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤の用途等に応じて適宜調整することができる。上記製剤中の乾燥状態の抽出物の含有量としては、例えば0.000001〜1重量%が挙げられ、好ましくは0.00001〜0.5重量%が挙げられ、より好ましくは0.0001〜0.1重量%が挙げられる。吸着パウダーを本発明のイソ吉草酸アルデヒドの消臭剤に添加する場合は、上記製剤中の吸着パウダーの含有量としては、例えば0.01〜50重量%が挙げられ、好ましくは0.05〜30重量%が挙げられ、より好ましくは0.1〜20重量%が挙げられる。
本発明のイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤が配合された化粧料、医薬部外品、医薬品等には、化粧料、医薬部外品、医薬品に通常用いられる原料、例えば油、界面活性剤、アルコール、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、増粘剤、香料、殺菌剤等の成分を前記化粧料、医薬部外品、医薬品などに添加することができる。
足臭の強度の評価、足からのサンプリング、ならびにイソ吉草酸およびイソ吉草酸アルデヒドの量の分析は以下のようにして行った。
パネラー3人によって、以下の評価基準を用いて足の裏および指(靴下および試験片)における足臭の強度の評価を行った。得られた評価結果の数値から平均値を算出して、足臭の強度とした。
〔評価基準〕
0点:におわない
1点:かすかににおう
2点:弱くにおう
3点:はっきりにおう
4点:やや強くにおう
5点:かなり強くにおう
被験者は指定の靴下(洗浄済、綿100%)および靴を履き、一定時間(6時間)放置する。放置後、足の親指と人差し指の間、人差し指と中指の間、中指と薬指の間に各々2cm×8cmの試験片(綿100%)を2つ折りにして挟んだ後、外れないようにテープを巻き、靴下および靴を履く。更に2時間経過後、靴下および試験片を回収し、官能評価(嗅覚)を行う。
足から得たサンプル(試験片)を、ヘッドスペースバイアルに挿入し、気化させた成分をヘッドスペース−ガスクロマトグラフ−質量分析法(HSS−GC−MS)を用いて下記条件で分析して、イソ吉草酸およびイソ吉草酸アルデヒドのピーク高さ(またはピーク面積)を得た。
〔GC−MSの分析条件〕
機種:アジレント・テクノロジー社製 ヘッドスペース−ガスクロマトグラフ−質量分析装置(HSS−GC−MS)
HSS:7697A
GC :7890B
MS :5977A
カラム :GLサイエンス社製 InertCap Pure Wax 60m,0.25mmI.D.,0.25μm
キャリヤーガス:He
<ヘッドスペース条件>
ループサイズ:3mL
オーブン温度:45℃
ループ温度 :75℃
トランスファーライン温度:100℃
バイアル平衡化:10分
注入時間:1分
<GC条件>
温度:40℃(2分)⇒昇温(3℃/分)⇒180℃⇒昇温(10℃/分)⇒220℃
注入口:200℃
スプリット比 10:1
平均線速度:28cm/秒
ただし、実施例3及び実施例4では、GC条件において温度およびスプリット比は以下のように変更して実施した。
温度:40℃(8分)⇒昇温(3℃/分)⇒180℃⇒昇温(10℃/分)⇒220℃
スプリット比 20:1
<MS条件>
イオン化法:電子イオン化法(EI)
上記の分析結果で得られたイソ吉草酸アルデヒドのピーク高さ(またはピーク面積)に基づいて、下記のとおり、イソ吉草酸アルデヒドの定量値(ppm)を求めた。
既知濃度のイソ吉草酸アルデヒドのプロピレングリコール溶液を調製し、ヘッドスペースバイアルに添加したものを標準試料とした。試料及び標準試料につき、上記条件でHSS−GC−MSにより試験を行い、試料および標準試料のピーク高さ(またはピーク面積)を求めた。
イソ吉草酸アルデヒドの量(ppm)
=標準試料の濃度(ppm)×試料のピーク高さ(またはピーク面積)÷標準試料のピーク高さ(またはピーク面積)
実施例1および2では、イソ吉草酸およびイソ吉草酸アルデヒドのピーク高さで評価した。実施例3および4では、イソ吉草酸アルデヒドのピーク面積に基づいて定量値を求めた。
足臭の強度とイソ吉草酸アルデヒドおよびイソ吉草酸の量の関係
前記の足臭の強度の評価方法、足からのサンプリング、ならびにイソ吉草酸およびイソ吉草酸アルデヒドの量の分析方法に従って、被験者10名の足臭について評価および分析を行った。その評価および分析の結果を図1および図2にまとめる。図1では、横軸に10名の被験者を並べて、縦軸に各被験者の「足臭の強度」を●でプロットし、各被験者の「イソ吉草酸アルデヒドのピーク高さ」を■でプロットしている。図2では、横軸に10名の被験者を並べて、縦軸に各被験者の「足臭の強度」を●でプロットし、各被験者の「イソ吉草酸のピーク高さ」を■でプロットしている。
図2から分かる通り、特に足臭の強度が低いところで、イソ吉草酸は観測されず、足臭の強度を示す指標にはなり得ない。他方、図1から分かる通り、イソ吉草酸アルデヒドの量は、足臭の強度が弱いところから強いところまで広い範囲で、足臭の強度と強い相関を示している。
以上より、イソ吉草酸アルデヒドは、足臭の強度を示す優れた足臭判定用指標として用いることができることが分かる。
各種微生物によるイソ吉草酸アルデヒドの生成
足の皮膚に存在しうる皮膚常在微生物を用いて、L−ロイシンの存在下または非存在下、イソ吉草酸アルデヒドが生成されるかを実験した。用いた微生物は、Staphylococcus.aureus、Staphylococcus.epidermidisおよびCorynebacterium.minutissimumである。
菌濃度が1×108(CFU/mL)になるように1重量%ロイシン入り生理食塩水を用いて調製する。被験物質を1重量%になるように添加した。培養液をヘッドスペースバイアルに入れて封入し、よく混和後、36℃で6時間静置培養した。
この試験結果から、足臭判定用指標剤であるイソ吉草酸アルデヒドは、足の皮膚表面に繁殖する微生物、例えばStaphylococcus.aureus、Staphylococcus.epidermidisおよびCorynebacterium.minutissimumによって、L−ロイシンから生成されることが分かる。L−ロイシンは、皮膚の角質に存在する蛋白質が微生物によって加水分解されて生成される。
この試験結果から、足の皮膚表面に繁殖する微生物、例えばStaphylococcus.aureus、Staphylococcus.epidermidisおよびCorynebacterium.minutissimumを用いることで、足臭判定用指標剤であるイソ吉草酸アルデヒドの生成を抑制する足臭抑制剤をスクリーニングすることが可能であることが理解される。
植物抽出物によるイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制の試験
表2に記載の植物抽出物を用いて、イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制を試験した。
20mLヘッドスペースGCバイアルに1%ロイシンおよび108個のStaphylococcus.epidenmidis 12228を含有する生理食塩水を調製した。この液5mLに植物抽出物50μLを添加して密栓し、36℃で6時間培養したものを試料とした。別に、1%ロイシンおよび108個のStaphylococcus.epidenmidis 12228を含有する生理食塩水5mLを標準試料とし、試料および標準試料について、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計でイソ吉草酸アルデヒドのピーク面積を測定した。試料に対する標準試料のイソ吉草酸アルデヒドのピーク面積より、各試料におけるイソ吉草酸アルデヒドの減少率を算出した。その結果を表2に示す。
a2)ローズヒップ抽出液BG100(丸善製薬株式会社)
a3)アイセニアヴェール B (登録商標)(一丸ファルコス株式会社)
a4)ファルコレックス セイヨウノコギリソウ B (登録商標)(一丸ファルコス株式会社)
a5)ファルコレックス エンメイソウ (登録商標)(一丸ファルコス株式会社)
a6)アカブドウ抽出液BG(丸善製薬株式会社)
a7)オトギリソウ抽出液BG(丸善製薬株式会社)
a8)ソウハクヒ抽出液BG(丸善製薬株式会社)
a9)チンピ抽出液BG(丸善製薬株式会社)
a10)ファルコレックス セージ(サルビア)(登録商標)(一丸ファルコス株式会社)
a11)ファルコレックス ペパーミント B (登録商標)(一丸ファルコス株式会社)
a12)緑茶リキッド(一丸ファルコス株式会社)
a13)ファルコレックス シソ HB (登録商標)(一丸ファルコス株式会社)
a14)ファルコレックス クララ B(一丸ファルコス株式会社)
a15)ニームリーフリキッド B(一丸ファルコス株式会社)
a16)キュアベリー(一丸ファルコス株式会社)
a17)カミツレリキッド(一丸ファルコス株式会社)
a18)ヨモギリキッド(一丸ファルコス株式会社)
吸着パウダーによるイソ吉草酸アルデヒドの減少率の試験
表3に記載の吸着パウダーを用いて、イソ吉草酸アルデヒドの減少率を試験した。
20mLヘッドスペースGCバイアルに2ppmイソ吉草酸アルデヒド/ポリエチレングリコール溶液0.25mLおよび表3に記載の吸着パウダー0.2gを添加し、密栓したものを試料とした。別に、2ppmイソ吉草酸アルデヒドのポリエチレングリコール溶液0.25mLにポリエチレングリコール1mLを添加したものを標準試料とし、試料および標準試料について、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計でイソ吉草酸アルデヒドのピーク面積を測定した。試料に対する標準試料のイソ吉草酸アルデヒドのピーク面積より、各試料におけるイソ吉草酸アルデヒドの減少率を算出した。その結果を表3に示す。
b2)ORGASOL 2002 EXD NAT COS Type S (登録商標)(アルケマ株式会社)
b3)ORGASOL 4000 EXD NAT COS (登録商標)(アルケマ株式会社)
b4)トスパール 2000B (登録商標)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
b5)KMP-590(信越化学工業株式会社)
b6)KSP-300(信越化学工業株式会社)
b7)マツモトマイクロスフェアー M-305 QD7 (登録商標)(松本油脂製薬株式会社)
b8)マツモトマイクロスフェアー M-305 QD7N (登録商標)(松本油脂製薬株式会社)
b9)ガンツパール SI-020 (登録商標)(アイカ工業株式会社)
b10)ガンツパール GMP-0820 (登録商標)(アイカ工業株式会社)
b11)ガンツパール GS-1105 (登録商標)(アイカ工業株式会社)
b12)サンスフェア H-51 (登録商標)(AGCエスアイテック株式会社)
b13)サンスフェア H-121 (登録商標)(AGCエスアイテック株式会社)
b14)ゴッドボール N-15C (登録商標)(AGCエスアイテック株式会社)
植物抽出物に、吸着パウダーを組み合わせることで、イソ吉草酸アルデヒドの臭いをより抑えることができる。
Claims (8)
- ノイバラ、ノバラ、アイセニア、セイヨウノコギリソウ、エンメイソウ、アカブドウ、オトギリソウ、クワ、マンダリンオレンジ、セージ、ペパーミント、チャノキ、シソ、クララ、ニームおよびビルベリーの植物の抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する、足の皮膚に存在しうる皮膚常在微生物によるイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤。
- 有機吸着パウダーと組み合わせて用いられる、請求項1に記載のイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤。
- 有機吸着パウダーがナイロン末からなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載のイソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤。
- ノイバラ、ノバラ、アイセニア、セイヨウノコギリソウ、エンメイソウ、アカブドウ、オトギリソウ、クワ、マンダリンオレンジ、セージ、ペパーミント、チャノキ、シソ、クララ、ニームおよびビルベリーの植物の抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する製剤を足の皮膚に塗布することによる、イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制方法。
- ノイバラ、ノバラ、アイセニア、セイヨウノコギリソウ、エンメイソウ、アカブドウ、オトギリソウ、クワ、マンダリンオレンジ、セージ、ペパーミント、チャノキ、シソ、クララ、ニームおよびビルベリーの植物の抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する製剤を用いる、皮膚常在微生物に起因するイソ吉草酸アルデヒドによる足臭の抑制方法。
- ノイバラ、ノバラ、アイセニア、セイヨウノコギリソウ、エンメイソウ、アカブドウ、オトギリソウ、クワ、マンダリンオレンジ、セージ、ペパーミント、チャノキ、シソ、クララ、ニームおよびビルベリーの植物の抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する製剤を皮膚に塗布する工程を含む、足臭原因成分の生成抑制方法。
- ノイバラ、ノバラ、アイセニア、セイヨウノコギリソウ、エンメイソウ、アカブドウ、オトギリソウ、クワ、マンダリンオレンジ、セージ、ペパーミント、チャノキ、シソ、クララ、ニームおよびビルベリーの植物の抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する、イソ吉草酸アルデヒド生成抑制剤を、皮膚に塗布する工程を含む、足臭の予防方法。
- ノイバラ、ノバラ、アイセニア、セイヨウノコギリソウ、エンメイソウ、アカブドウ、オトギリソウ、クワ、マンダリンオレンジ、セージ、ペパーミント、チャノキ、シソ、クララ、ニームおよびビルベリーの植物の抽出物からなる群から選択される1種以上を含有する、イソ吉草酸アルデヒド生成抑制剤を、皮膚に塗布する工程を含む、足蒸れ臭の予防方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015167895A JP6723704B2 (ja) | 2015-08-27 | 2015-08-27 | イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤および生成抑制方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015167895A JP6723704B2 (ja) | 2015-08-27 | 2015-08-27 | イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤および生成抑制方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017043568A JP2017043568A (ja) | 2017-03-02 |
JP6723704B2 true JP6723704B2 (ja) | 2020-07-15 |
Family
ID=58210060
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015167895A Active JP6723704B2 (ja) | 2015-08-27 | 2015-08-27 | イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤および生成抑制方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6723704B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109239966A (zh) * | 2018-10-12 | 2019-01-18 | 京东方科技集团股份有限公司 | 显示基板、显示面板、显示装置及显示基板的制造方法 |
Family Cites Families (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH08266600A (ja) * | 1995-03-31 | 1996-10-15 | Sekisui Plastics Co Ltd | 消臭剤 |
JP4794024B2 (ja) * | 2000-01-19 | 2011-10-12 | 小林製薬株式会社 | 生理臭消臭用組成物 |
JP4532706B2 (ja) * | 2000-09-08 | 2010-08-25 | 花王株式会社 | 化粧料 |
JP4546790B2 (ja) * | 2003-10-06 | 2010-09-15 | ライオン株式会社 | 皮膚常在菌を殺菌しない低級脂肪酸生成抑制剤 |
JP2006249599A (ja) * | 2005-03-09 | 2006-09-21 | Lion Corp | 繊維防臭剤、繊維防臭組成物、および繊維防臭方法 |
JP5254527B2 (ja) * | 2005-08-31 | 2013-08-07 | ライオン株式会社 | 男性臭抑制剤 |
JP2007290968A (ja) * | 2006-04-20 | 2007-11-08 | Lion Corp | 防臭組成物、デオドラント剤、および繊維防臭剤 |
CN103656425B (zh) * | 2013-12-06 | 2016-08-17 | 山东大学齐鲁医院 | 治疗脚臭的中药组合物及制备方法 |
-
2015
- 2015-08-27 JP JP2015167895A patent/JP6723704B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2017043568A (ja) | 2017-03-02 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2007290968A (ja) | 防臭組成物、デオドラント剤、および繊維防臭剤 | |
JP4532706B2 (ja) | 化粧料 | |
JP4918225B2 (ja) | 揮発性ステロイド生成抑制用デオドラント剤、揮発性ステロイド生成抑制用デオドラント製剤、繊維防臭剤、および繊維デオドラント処理方法 | |
JP2021035997A (ja) | 臭気ガス低減剤 | |
KR20160114801A (ko) | 미선나무 추출물을 함유한 데오도란트 조성물 | |
Muchtaridi et al. | Chemical composition and locomotors activity of essential oils from the rhizome, stem, and leaf of Alpinia malaccencis (Burm F.) of Indonesian Spices | |
JP2006052198A5 (ja) | ||
Tritanti et al. | The making of red ginger (zingiber officinale rovb. var. rubra) natural essential oil | |
KR20190102000A (ko) | 테르미날리아 페르디난디아나 잎 추출물 및 테르미날리아 페르디난디아나 잎 추출물을 함유하는 제품 | |
JP6723704B2 (ja) | イソ吉草酸アルデヒドの生成抑制剤および生成抑制方法 | |
KR101519234B1 (ko) | 울금 및 동백 잎 추출물을 유효성분으로 함유하는 화장료 조성물 | |
JPWO2012108494A1 (ja) | 多価アルコールを含有する消臭剤 | |
JP2013203701A (ja) | ジケトン作用抑制剤 | |
JP6025442B2 (ja) | ジケトン作用抑制剤 | |
KR101729920B1 (ko) | 천연 정유 및 천연 하이드로졸을 포함하는 아로마테라피 세럼 조성물 | |
JP6678411B2 (ja) | イソ吉草酸アルデヒドの消臭剤および消臭方法 | |
JP2003026527A (ja) | 菌代謝阻害剤及び臭気発生抑制組成物 | |
JP2005132825A (ja) | デオドラント剤および該デオドラント剤を含む製剤 | |
CN103735466A (zh) | 一种高良姜纯露保健漱口剂及其制备方法 | |
KR20160034709A (ko) | 천연 정유 및 천연 하이드로졸을 포함하는 아로마테라피 미스트 조성물 | |
WO2011152006A1 (ja) | 皮膚温度上昇剤、並びにそれを含有する化粧料、食品、及び雑貨 | |
JP2005126423A (ja) | デオドラント組成物 | |
JP3923971B2 (ja) | デオドラント組成物 | |
JP2006298824A (ja) | 口腔内のスカトール産生抑制剤 | |
JPWO2019130758A1 (ja) | 揮発性ステロイド吸着剤及び消臭用組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20180727 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20190521 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20190522 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20190719 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20191112 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200114 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200602 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20200624 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6723704 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |