JP6722901B2 - 巻線界磁型同期機制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、巻線界磁型同期機の制御装置に関する。
図16は、巻線界磁型同期機における従来の制御装置における磁束演算器のブロック図の一例である(特許文献1参照)。従来の制御装置の磁束演算器203においては、回転子巻線による界磁磁極方向であるd軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φ、回転子巻線による界磁磁極方向に垂直な方向であるq軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φを、Parkの等価回路に基づいた式を用いて推定している。
たとえば、d軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φは、次の式(1)により算出することができる。
Figure 0006722901
q軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φも同様に求めることができる。負荷角演算器201は、算出されたd軸磁束Φとq軸磁束Φとを用いて、負荷角δを推定する。また、界磁電流指令演算器202は、界磁電流の指令値を算出する。多くの場合、ここでも、Parkの等価回路に基づいた計算を行う。
この際、電力変換器の出力電圧が定格電圧に達した場合でも、出力電圧の位相を変化させることにより、安定な制御を確保する技術も知られている(特許文献2)。
特開平4−127893号公報 特許3764337号公報 特開平9−327200号公報 特開2011−50168号公報
ところが、近年の回転電機においては、高出力化、小型化が進んでおり、磁束密度を高めた設計をすることが多くなっている。このような回転電機においては磁気飽和のために各部のインダクタンスが運転状態によって大きく変化する。このため、過負荷運転時などには、前述の式(1)によって演算した鎖交磁束に大きな誤差が生じる可能性がある。
このような問題を解決するため、d軸とq軸間の干渉項を考慮した磁束演算器を用いることにより、q軸起磁力による磁気飽和がd軸磁束に及ぼす影響を考慮する技術が知られている(特許文献3)。また、電流に対するインダクタンスの変化を数式によって定式化し、例えば(1)式中のインダクタンスを可変とした磁束演算機を構築することにより、磁気飽和が考慮できるとする例もある(特許文献4)。
しかしながら、これらの方法では任意の運転状態におけるインダクタンスの詳細な変化を予測することは困難である。また、磁束演算器を定義する各定数を制御対象機ごとに正確に求める必要がある。
以上のような背景に鑑み、本発明は、磁気飽和の影響が大きい小型・高出力のものを含めて、簡素な構成で、インダクタンスの変化が大きな場合であっても、必要なトルクを発生できる状態に巻線界磁型同期機を維持することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る巻線界磁型同期機の制御装置は、負荷角と界磁電流指令を生成するシミュレータと、速度指令と回転子の回転位置から変換された速度フィードバックとの偏差、および前記負荷角、に基づいて電機子電圧を制御する速度制御部と、前記界磁電流指令に基づいて界磁電流を制御する界磁電流制御部と、を備え、前記シミュレータは、磁束指令とトルク電流指令に基づいて前記負荷角を特定する第1のテーブル、および前記磁束指令と前記トルク電流指令に基づいて前記界磁電流指令を特定する第2のテーブルから、前記負荷角と前記界磁電流指令をそれぞれ取得する。
また、本発明の実施形態に係る巻線界磁型同期機の制御装置は、負荷角と界磁電流指令を生成するシミュレータと、速度指令と回転子の回転位置から変換された速度フィードバックとの偏差、および前記負荷角、に基づいて電機子電圧を制御する速度制御部と、前記界磁電流指令に基づいて界磁電流を制御する界磁電流制御部と、を備え、前記シミュレータは、q軸方向の電機子巻線鎖交磁束とd軸方向の電機子巻線鎖交磁束を、相電流の電流値から求めたq軸電流値、界磁電流値、および前記相電流の電流値から求めたd軸電流値に前記界磁電流値を加算した合成d軸電流値の3変数に基づいて前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束と前記d軸方向の電機子巻線鎖交磁束を特定する第1のテーブルと、前記界磁電流指令を磁束指令と前記速度制御部により求められた指令の2変数に基づいて特定する第2のテーブルから、それぞれ取得する。
また、本発明の実施形態に係る巻線界磁型同期機の制御装置は、負荷角と界磁電流指令を生成するシミュレータと速度指令と回転子の回転位置から変換された速度フィードバックとの偏差、および前記負荷角、に基づいて電機子電圧を制御する速度制御部と、前記界磁電流指令に基づいて界磁電流を制御する界磁電流制御部と、を備え、前記シミュレータは、相電流の電流値から求めたq軸電流値、界磁電流値、および前記相電流の電流値から求めたd軸電流値に前記界磁電流値を加算した合成d軸電流値に基づいて、前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束と前記d軸方向の電機子巻線鎖交磁束を特定するテーブルから取得し、前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束と前記d軸方向の電機子巻線鎖交磁束を用いて前記負荷角を、前記d軸電流値、前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束および前記磁束指令を用いて前記界磁電流指令を、それぞれ求め
本発明によれば、磁気飽和の影響が大きい小型・高出力のものを含めて、インダクタンスの変化が大きな場合であっても、必要なトルクを発生できる状態に巻線界磁型同期機を維持することができる。
第1の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。 第1の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。 第1の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータにおいて用いられるd軸電機子鎖交磁束Φを算出するためのd軸磁束関数φの例を示す3次元グラフである。 界磁電流を増加させた場合のd軸磁束関数φの例を示す3次元グラフである。 d軸電機子鎖交磁束Φ、q軸電機子鎖交磁束Φと、負荷角δとの関係を示す図である。 第2の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。 第2の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータにおいて用いられる磁束演算器における制動電流の影響の考慮を説明する概念的なグラフである。 第3の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。 第3の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。 第3の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータにおいて用いられるトルク電流と界磁電流との対応関係の例を示すグラフである。 第4の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。 第4の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。 第4の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータにおいて用いられるトルク電流と負荷角との対応関係の例を示すグラフである。 第5の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。 第6の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。 巻線界磁型同期機の制御装置の磁束演算器の従来の構成を示すブロック図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る巻線界磁型同期機および巻線界磁型同期機制御装置について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。本第1の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置300は、巻線界磁型同期機1が、電機子巻線2aおよび界磁巻線2bを有するが、制動(ダンパー)巻線を有さない場合を対象としている。
巻線界磁型同期機制御装置300は、角速度指令ω および磁束指令Φに対して、電機子電圧Vおよび界磁電流 を調節する。巻線界磁型同期機制御装置300は、速度制御部10および界磁制御部20、およびシミュレータ100を有する。
0075-0100、図1他
速度制御部10は、減算器11、速度演算器12、速度制御器13、dq軸電流演算器14、減算器15、16、3相−dq変換器17、dq軸電流制御器18、dq−3相変換器19を有する。速度制御部10は、角速度指令ω を得るための速度制御ループの下に、対応するトルク電流 を得るための電流制御ループを有するカスケード制御の構成となっている。
なお、以下、巻線界磁型同期機制御装置300の構成を示す各図の説明において、各要素の入出力信号は、たとえば、「角速度指令」ω のように表現している。入出力信号については、詳細には、信号の名称と信号のレベル値とは別のものであるので、これらを別個に表現することが正しい。しかしながら、表現上、煩雑となるため、たとえばω は、「角速度指令信号」を示すとともに「角速度指令信号のレベル値」も示すものとし、両者を「角速度指令」と総称して表現する。なお、フィードバック信号と称するものも、そのレベル値を併せて示すものとする。
速度制御部10の減算器11は、回転位置検出器7で検出され位置演算器8により算出された巻線界磁型同期機1の回転位置Θが速度演算器12により変換された角速度ωを、負のフィードバック信号とし、角速度指令ω から減じた角速度偏差を出力する。速度制御器13は、角速度偏差および磁束指令Φを入力として、トルク電流指令 を出力する。
d:0028-0037,0046-0127、q:0027-0072,0083-0085、図1他
dq軸電流演算器14は、トルク電流指令 を入力として、d軸電流指令 およびq軸電流指令 を算出する。この際、dq軸電流演算器14は、シミュレータ100で算出された負荷角δを用いる。
電流制御ループについては、電流変換器5で検出された電機子の各相電流Iu、Iv、およびIwを、3相−dq変換器17でq軸電機子電流iおよびd軸電流 に変換される。3相−dq変換器17は、この変換の際に、位置演算器8の出力である角度位置Θを用いる。3相−dq変換器17で得られたq軸電機子電流iおよびd軸電流 は、減算器15および減算器16へのフィードバック信号として入力される。
減算器15は、d軸電流指令 およびフィードック信号であるd軸電流 を入力として受け入れ、d軸電流指令 からd軸電流 を減じたd軸電流偏差を出力する。減算器16は、q軸電流指令 およびフィードック信号であるq軸電機子電流iを入力として受け入れ、q軸電流指令 からq軸電機子電流iを減じたq軸電流偏差を出力する。
dq軸電流制御器18は、減算器15からのd軸電流偏差、および減算器16からのq軸電流偏差を入力として受け入れ、d軸電圧指令V およびq軸電圧指令V を算出し、出力する。
dq−3相変換器19は、dq軸電流制御器18により算出されたd軸電圧指令V およびq軸電圧指令V を、3相各相の電圧指令Vu、Vv、Vwに変換する。電力変換器3は、これら3相各相の電圧指令Vu、Vv、Vwに比例した三相電機子電圧Vu、Vv、Vwを発生し、巻線界磁型同期機1に供給する。これにより、巻線界磁型同期機1の電機子巻線2aに相電流Iu、Iv、Iwが流れる。この相電流Iu、Iv、Iwは、それぞれ電流変換器5により検出される。
Ifd:0028-0037, 0042-0051、図1他
界磁制御部20は、磁束指令Φ と、界磁電流 のフィードバック信号を受けて、界磁電流指令 fd を算出し、界磁電流制御器21が、界磁電流指令 fd から界磁電圧指令V を算出し、電力変換器4に出力する。電力変換器4は、界磁電圧指令V に比例した界磁電圧Vを発生し、巻線界磁型同期機1の界磁巻線2bに供給する。これにより、巻線界磁型同期機1の界磁巻線2bに界磁電流 が流れる。この界磁電流 は電流変換器6により検出される。
図2は、第1の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。
シミュレータ100は、負荷角演算器101、界磁電流指令演算器102、磁束演算器110、および加算器111を有する。シミュレータ100は、全体として、d軸電機子電流i、q軸電機子電流i、界磁電流ifdおよび磁束指令Φを入力として受け入れ、負荷角δおよび界磁電流指令ifd を出力する。ここで、ifdは、電機子側に換算した界磁電流である。
加算器111は、d軸電機子電流iと界磁電流ifdとを入力として受け入れ、両者を合計した結果を合成d軸電流i として出力する。
磁束演算器110は、合成d軸電流i 、q軸電機子電流i、および界磁電流ifdを入力として受け入れ、これらを変数とする2つの関数を有する。この2つの関数は、d軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φを算出するd軸磁束関数φ(i ,i,ifd)と、q軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φを算出するq軸磁束関数φ(i ,i,ifd)である。なお、便宜上、ギリシャ文字(大文字はΦ)の小文字の表記は、φまたは、次の表記のいずれかとするが両者は同じ文字を表すものとする。
Figure 0006722901
図3は、d軸電機子鎖交磁束Φを算出するためのd軸磁束関数φの例を示す3次元グラフである。平面における横軸は、q軸電機子電流i、縦軸は合成d軸電流i である。両者に垂直な第3の軸は、d軸電機子鎖交磁束Φである。
ここで、曲面Fd1は、界磁電流ifdがある値if1の場合のd軸電機子鎖交磁束Φである。すなわち、Fd1(i ,i)=φ(i ,i,if1)である。図3では、界磁電流ifdがif1の場合の曲面Fd1のみが示されているが、複数の界磁電流ifdの値についてのそれぞれに対応する複数の曲面Fを準備しておけば、与えられた界磁電流ifdの値については内挿することによって、(i ,i,ifd)についてのφ(i ,i,ifd)が算出できる。また、曲面自身も、関数テーブルに置き換えることができる。すなわち、i 軸とi軸のそれぞれの方向のメッシュに分けて、ifdの値ごとのd軸電機子鎖交磁束Φテーブルおよびq軸電機子鎖交磁束Φテーブルとして保存し、入力されたi およびiについて内挿により算出し、さらにiについても内挿することによりd軸電機子鎖交磁束Φを算出することができる。以下、d軸電機子鎖交磁束Φテーブルおよびq軸電機子鎖交磁束Φテーブルを、関数テーブルと総称する。
図4は、界磁電流を増加させた場合のd軸磁束関数φの例を示す3次元グラフである。界磁電流iを増加させると磁気飽和が進行するため、φ(i ,i,ifd)の分布形状である曲面Fd2は全体的に緩やかな曲面となる。
曲面Fd1、Fd2等は、たとえば、有限要素法による電磁界解析などにより算出することができる。以上は、d軸磁束関数φ(i ,i,ifd)について示したが、q軸磁束関数φ(i ,i,ifd)についても同様の方法で算出することができる。
次に、負荷角演算器101は、磁束演算器110からのd軸電機子鎖交磁束Φとq軸電機子鎖交磁束Φとを入力として受け入れて、負荷角δを算出する。図5は、d軸電機子鎖交磁束Φおよびq軸電機子鎖交磁束Φと、負荷角δとの関係を示す図である。ここで負荷角δとは、q軸から測った誘起電圧E(≒端子電圧V)の位相角である。また、負荷角δは、d軸から測った磁束Φの位相角でもある。図5は、同期機が電動機の場合を示している。図5に示すように、負荷角δは、次の式(2)により算出できる。
δ=tan−1(Φ/Φ) …(2)
また、界磁電流指令演算器102は、磁束指令Φ、フィードバック信号であるd軸電機子電流i、磁束演算器110からのd軸電機子鎖交磁束Φを入力として受け入れて、界磁電流指令ifd を次の式(3)により算出する。ただし、Lad、d軸の電機子反作用インダクタンス、Lldはd軸の電機子漏れインダクタンスである。
Figure 0006722901
なお、本実施形態においては、シミュレータによって負荷角や界磁電流を演算してフィードフォワード的に制御する方式として、トルク電流iの指令値としてトルク電流指令i を用いるような制御装置の場合を例に示した。このようにシミュレータを用いる方法は、これに限定されず、負荷角や界磁電流を演算してフィードフォワード的に制御する任意の方式に対しても用いることができる。
また、巻線界磁型同期機制御装置300の各部を、たとえば、速度制御器13、dq軸電流演算器14等のように、個々の機器としての名称を付している。しかしながら、巻線界磁型同期機制御装置300は、計算機システムの演算部であってもよい。この場合は、個々の機器としての名称を付することは適当ではなく、たとえば、速度制御部、dq軸電流演算部のように、計算機の一部の機能を示す名称とするのが適切である。本実施形態は、このような場合には適切に読み替えるものとして、便宜的に速度制御器13、dq軸電流演算器14等のように、個々の機器としての名称を付している。
シミュレータ100のd軸電機子鎖交磁束Φテーブルおよびq軸電機子鎖交磁束Φテーブルには、磁気飽和に関するすべての情報が含まれているため、定常状態や過渡状態など任意の運転モードにおいて鎖交磁束を正確に推定することができる。
このため、負荷角演算器101の出力である負荷角δや、界磁電流指令演算器102の出力である界磁電流指令ifd も精度よく演算されるため、従来の制御器が不得意とする過負荷においてもトルクを高精度に制御できる。また、負荷の急変や速度変動に対しても高速な応答が得られる。
以上のように、本実施形態によれば、簡素な構成で、インダクタンスの変化が大きな場合であっても、必要なトルクを発生できる状態に巻線界磁型同期機を維持することができる。
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係る巻線界磁型同期機の制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。本第2の実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態は、電機子巻線および界磁巻線に加えて制動巻線をさらに有する巻線界磁型同期機を対象としている。
本実施形態におけるシミュレータ120は、負荷角δの演算部分として、負荷角演算器101、加算器121、122、123、乗算器124、不完全微分要素125、乗算器126、不完全微分要素127、磁束演算器128、減算器130、131、界磁電流指令ifd の演算部分として、の界磁電流演算器132を有する。
まず、シミュレータ120について説明する。ここで、制動巻線に流れる電流をiとし、制動巻線電流iのd軸方向成分をikd、q軸方向成分をikqと表示する。図3、図4で示した特性は、iがゼロ、すなわち定常状態における合成d軸電流i およびq軸電機子電流iに対する依存性を示していることになる。
シミュレータ120は、第1の実施形態の場合と同様に、全体として、d軸電機子電流i、q軸電機子電流i、界磁電流 fd および磁束指令Φを入力として受け入れ、負荷角δおよび界磁電流指令ifd を出力する。
加算器121は、d軸電機子電流iおよび界磁電流iを入力として受け入れ、両者の合計値である合成d軸電流i を出力する。
磁束演算器128は、合成d軸電流i とd軸制動巻線電流ikdとの和、q軸電機子電流iとq軸制動巻線電流ikqとの和、および界磁電流iの関数として、d軸方向電機子巻線鎖交磁束Φおよびq軸方向電機子巻線鎖交磁束Φqをそれぞれ、後述する式(4)、(5)により導出する。
ここで、d軸制動巻線電流ikd、q軸制動巻線電流ikqもは、過渡状態に生ずる制動巻線電流のd軸方向およびq軸方向の成分である。
すなわち、過渡状態においては、合成d軸電流i 、q軸電機子電流i、および界磁電流iに加えてd軸制動巻線電流ikd、q軸制動巻線電流ikqも流れるため、これらの電流が作る起磁力によっても磁束が発生する。そこで、d軸制動巻線電流ikd、q軸制動巻線電流ikqが作る起磁力の影響を、次の式(4)、(5)のように考慮する。
d軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ=φ(i +ikd,i+ikq,ifd
…(4)
q軸方向電機子巻線鎖交磁束Φq=φ(i +ikd,i+ikq,ifd
…(5)
乗算器124は、加算器121の出力である合成d軸電流i を入力として受け入れ、これに、d軸の電機子漏れインダクタンスLldを乗じた値を出力する。
減算器130は、磁束演算器128の出力のうちd軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ
、乗算器124の出力を入力として受け入れて、両者の和を出力する。
不完全微分要素125は、減算器130の出力を入力とし、伝達関数が[s/(Rkd+sLkd)]の不完全微分要素の乗算を行う。
加算器122は、不完全微分要素125の出力と、加算器121の出力である合成d軸電流i とを入力とし、その和を磁束演算器128に出力する。
乗算器126は、q軸電機子電流iを入力として受け入れ、これに、q軸の電機子漏れインダクタンスLlqを乗じた値を出力する。
減算器131は、磁束演算器128の出力のうちq軸方向電機子巻線鎖交磁束Φと、乗算器126の出力を入力として受け入れて、両者の和を出力する。
不完全微分要素127は、減算器131の出力を入力とし、伝達関数が[s/(Rkq+sLkq)]の不完全微分要素の乗算を行う。
加算器123は、不完全微分要素127の出力と、q軸電機子電流iとを入力とし、その和を磁束演算器128に出力する。
負荷角演算器101は、d軸方向電機子巻線鎖交磁束Φおよびq軸方向電機子巻線鎖交磁束Φqを入力として受け入れて、その比から負荷角δを演算し、出力する。
界磁電流演算器132は、d軸電機子電流i、磁束指令Φ、および磁束演算器128の出力のうちq軸方向電機子巻線鎖交磁束Φを入力とし、第1の実施形態と同様に、前述の式(3)により界磁電流指令ifd を算出し、出力する。
図7は、磁束演算器における制動電流の影響の考慮を説明する概念的なグラフである。すなわち、制動巻線電流の作る起磁力が磁束に及ぼす影響と電機子電流の作る起磁力が磁束に及ぼす影響とが同等であると仮定して、関数テーブル参照の際の引数を、合成d軸電流i に代えてi +ikdとし、q軸電機子電流iに代えてi+ikqとすることにより、制動巻線電流を考慮した鎖交磁束を求める。図7では、d軸方向変化を示しているが、図7に示すように、磁束は電流増加に対して飽和的な変化を示す。
次に、d軸制動巻線電流ikdおよびq軸制動巻線電流ikqを計算する方法を示す。Parkの等価回路においては、各巻線に鎖交する磁束は、以下の式(6)ないし式(9)のように定義される。ただし、Ladはd軸の電機子反作用インダクタンス、Lldはd軸の電機子漏れインダクタンス、Lkdはd軸の制動巻線漏れインダクタンスである。
Φ=Lld+Lad(i+ifd+ikd) …(6)
Φ=Llq+Lad(i+ikq) …(7)
Φkd=Lkdkd+Lad(i+ifd+ikd) …(8)
Φkq=Lkqkq+Lad(i+ikq) …(9)
これらから次の関係式が得られる。
Φkd=Φ+Lld−Lkdkd …(10)
Φkq=Φ+Llq−Lkqkq …(11)
関数テーブルとして鎖交磁束テーブルを用いた磁束演算器においても式(10)、(11)が成立すると仮定すれば、制動巻線磁束は、4個の定数、Lld、Llq、Lkd、Lkqを用いることにより、次の式(12)、(13)のように求められる。
Φkd=φ(i +ikd,i+ikq,ifd)−Lld+Lkdkd
…(12)
Φkq=φ(i +ikd,i+ikq,ifd)−Llq+Lkqkq
…(13)
定数Lld、Llq、Lkd、Lkqには設計値などを用いることができる。また、電磁解析などで対象とする同期機のインピーダンス特性を算出し、それと磁束演算器128のインピーダンス特性が整合するように各定数を決定することで、より正確な値が得られる。式(12)、(13)と制動巻線の回路方程式から、d軸制動巻線電流ikdおよびq軸制動巻線電流ikqは次の式(14)、(15)のように求められる。
Figure 0006722901
Figure 0006722901
このようにd軸制動巻線電流ikdおよびq軸制動巻線電流ikqを算出することにより、磁束演算器128での演算が可能となる。
シミュレータ120内は、以下に示すように、式(14)、(15)により、磁束演算器128に入力されるd軸制動巻線電流ikdおよびq軸制動巻線電流ikqを演算するための構成となっている。
乗算器124は、具体的にはたとえば演算増幅器であり、合成d軸電流i にLldを乗じたLld を出力する。減算器130は、この結果からΦを減じた結果、すなわち、(Lld −Φ)を出力する。不完全微分要素125は、この結果に不完全微分要素を乗じて、式(14)の右辺に対応する結果を、d軸制動巻線電流ikdとして出力する。加算器122は、合成d軸電流i とd軸制動巻線電流ikdとを入力として受け入れてその和(i +ikd)を磁束演算器128に出力する。
同様に、乗算器126は、q軸電機子電流iにLlqを乗じたLlqを出力する。減算器131は、この結果からΦを減じた結果、すなわち、(Llq−Φ)を出力する。不完全微分要素127は、この結果に不完全微分要素を乗じて、式(15)の右辺に対応する結果を、q軸制動巻線電流ikqとして出力する。加算器123は、q軸電機子電流iとq軸制動巻線電流ikqとを入力として受け入れてその和(iq+ikq)を磁束演算器128に出力する。
以上のように、制動巻線を有する巻線界磁型同期機についても、良好な制御性を維持することができる。
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態に係る巻線界磁型同期機の制御装置の構成を示すブロック図である。また、図9は、第3の実施形態に係る巻線界磁型同期機の制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。
本実施形態は、第1および第2の実施形態の変形である。すなわち、図1に示す第1の実施形態の構成に比べて、図8に示すように、シミュレータ140に、速度制御器13からの出力信号であるトルク電流指令i が追加して入力されている。
また、本第3の実施形態においては、第2の実施形態と界磁制御部20の構成が異なる。すなわち、図9に示すように、速度制御の結果としてトルク電流を指令値として用いる制御器においては、シミュレータ140にはトルク電流指令i が入力される。シミュレータ140は、第2の実施形態の構成に、さらに界磁電流演算器141および一次遅れ要素142を有する。以下に、シミュレータ140の構成を説明する。
シミュレータ140は、負荷角δの演算部分として、負荷角演算器101、加算器121、122、123、乗算器124、不完全微分要素125、乗算器126、不完全微分要素127、磁束演算器128、減算器130、131を有し、界磁電流指令ifd の演算部分として、界磁電流演算器141、および乗算器142を有する。
ここで、負荷角δの演算部分の構成は、第2の実施形態におけるシミュレータ120の負荷角δの演算部分と同様の構成である。
一方、界磁電流指令ifd の演算部分は、第2の実施形態と異なる。すなわち、界磁電流演算器141は、磁束指令Φとトルク電流指令i とを入力とし、次の式(16)により、界磁電流指令用関数値ifdを算出する。
f(i ,Φ) …(16)
次に、一次遅れ要素142は、界磁電流演算器141の出力である界磁電流指令用関数値ifdを入力とし、これに、伝達関数が[1/(Ts+1)]の一次遅れ要素の乗算を行い、界磁電流指令ifd を出力する。
磁気飽和を考慮した界磁電流演算器141には、磁束指令Φとトルク電流指令i とを引数とする界磁電流テーブルf(i ,Φ)が組み込まれている。この関数テーブルについても、有効電流指令iP を使った制御器においてはf(iP ,Φ)のようになる。
一般に、巻線界磁型同期機は、駆動するインバータの電流容量をできるだけ小さくするために、力率1.0での一定運転を行うことが多い。場合によっては、力率0.9など1.0以外で運転される場合もあるが、この場合でもほとんどの場合、力率は一定に制御して運転される。
任意の力率で定常運転を行っている場合の同期機の状態は、例えば、図3または図4で示したように、d軸電機子電流i、q軸電機子電流i、界磁電流iの3変数によって、曲面上の運転点が一意的に決定される。
同期機の場合は、力率を運転指標として力率一定運転を行う場合が多い。いま、たとえば、ある一定の力率で運転するという条件を付加すると、曲面上でこの条件を満たす点の集合として1つの曲線が得られる。この曲線上の各点は、力率一定という条件を付加する代わりに状態変数の次元が1つ減少し、2つの状態変数で一意的に決定することができる。
状態変数とは、状態を規定する電気的な物理量であり、たとえば、d軸電機子電流i、q軸電機子電流i、界磁電流iの他に、トルク電流i、磁束電流 、有効電流I、無効電流I、q軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ、d軸方向電機子巻線鎖交磁束Φ等である。
ここで、ある一定の力率という条件により決定された曲線上のある点を選定すれば、その点に対応する前述の全ての状態変数が決まる。また、逆に、2つの状態変数を決めれば、その曲線上の点が決まることになる。
図10は、第3の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータにおいて用いられるトルク電流と界磁電流との対応関係の例を示すグラフである。この場合、ある一定の力率で同期機を運転した時のトルク電流iと磁束Φに対する界磁電流iの対応関係を、テーブル化したものが界磁電流テーブルである。すなわち、状態変数として、トルク電流iと界磁電流iの2つの状態変数を選んだ場合に相当する。
曲線群CCは、同期機の力率を1に保ちながら、トルク電流を変えた場合の界磁電流の値を示している。磁束を100%から30%まで5段階に変化させた各状態において、曲線が得られている。磁束の値を小さくするにつれて必要な界磁電流も小さくなっている。これらを考慮することにより、実際に運転される力率においては界磁電流演算器141によって正確な界磁電流指令値を計算することができ、過負荷における制御性を大幅に改善することができる。
なお、界磁電流テーブルの引数はトルク電流や磁束に限る必要はなく、独立な2変数を任意に選ぶことができる。すなわち、回転数や有効電力などを引数とした界磁電流テーブルを用いてもよい。
制動巻線を持たない同期機においては、磁気飽和を考慮した界磁電流演算器141の出力を界磁電流指令ifd として用いることで高精度な制御が可能である。一方で、制動巻線を有する同期機においては、過渡状態において制動巻線電流の効果によって磁束の急変が抑えられる。
界磁電流演算器141の出力をそのまま指令値として用いた場合、過渡時に指令値が急変し、応答を悪化させる可能性がある。そこで界磁電流演算器141の出力には一次遅れ要素142を挿入する。一次遅れ要素142の時定数Tは、d軸の過渡時定数程度とすればよい。これにより、過渡時においても滑らかな応答が得られ、従来の制御装置では実現できないようなごく短時間で指令値に追従することができる。
[第4の実施形態]
図11は、第4の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。図11に示すように、第1ないし第3の実施形態と異なり、3相−dq変換器18から、シミュレータ150への出力がない。
図12は、第4の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置のシミュレータの構成を示すブロック図である。シミュレータ150は、磁気飽和を考慮した負荷角演算器151、一次遅れ要素152、磁気飽和を考慮した界磁電流演算器153、および一次遅れ要素154を有する。
負荷角演算器151は、トルク電流指令i と磁束指令Φとを入力とし、次の式(17)によって、負荷角用関数値を出力する。
δ=g(i ,Φ) …(17)
一次遅れ要素152は、負荷角演算器151の出力である負荷角用関数値を入力として受け入れ、これに、伝達関数が[1/(Tδs+1)]の一次遅れ要素の乗算を行い、負荷角δを出力する。ここで、一次遅れの時定数Tδは、特性試験結果、あるいは、回路の要素の分析結果等により設定できる。
界磁電流演算器153は、トルク電流指令i と磁束指令Φとを入力とし、次の式(18)によって、界磁電流用関数値を出力する。
fd=f(i ,Φ) …(18)
一次遅れ要素154は、界磁電流演算器153の出力である界磁電流用関数値を入力として受け入れ、これに、伝達関数が[1/(Ts+1)]の一次遅れ要素の乗算を行い、界磁電流指令ifd を出力する。ここで、一次遅れの時定数Tは、特性試験結果、あるいは、回路の要素の分析結果等により設定できる。
磁気飽和を考慮した負荷角演算器151には、トルク電流指令i と磁束指令Φとを引数とする負荷角テーブルg(i ,Φ)が組み込まれている。また、磁気飽和を考慮した界磁電流演算器153には、界磁電流テーブルf(i ,Φ)が組み込まれている。界磁電流テーブルf(i ,Φ)は、第3の実施形態の場合と同様のテーブルの内容のものである。
また、本実施形態における負荷角テーブルg(i ,Φ)および界磁電流テーブルf(i ,Φ)も、ある力率で力率一定運転を行っている場合の関数テーブルである。
本実施形態におけるシミュレータ150は、巻線界磁型同期機1からのフィードバック信号を用いず、トルク電流指令i および磁束指令Φのみを用いて、負荷角δおよび界磁電流指令ifd を算出する。本実施例においてもトルク電流指令i を使った制御器を例として説明するが、速度制御の出力として任意の変数を用いた制御器で同様の説明が可能である。
図13は、トルク電流と負荷角との対応関係の例を示すグラフである。曲線群CDは、同期機の力率を1に保ちながら、トルク電流を変えた場合の負荷角の値を示している。磁束を100%から30%まで5段階に変化させた各状態において、曲線が得られている。
磁束の値を小さくするにつれて負荷角の値は大きくなることが分かる。これらを考慮することにより、実際に運転される力率においては、負荷角演算器151によって正確な負荷角を、界磁電流演算器153によって正確な界磁電流指令ifd を算出することができる。この結果、過負荷運転を行っている場合の制御性を大幅に改善することができる。
なお、界磁電流テーブルと負荷角テーブルの引数はトルク電流や磁束に限る必要はなく、力率一定運転のもとに運転状態を規定できるものであれば、独立な2変数を任意に選ぶことができる。すなわち、回転数や有効電力などを引数とした界磁電流テーブルや負荷角テーブルを用いてもよい。
[第5の実施形態]
図14は、第5の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。第1の実施形態においては、電力変換器の最大出力電圧は制限値以内で制御可能な場合であった。このため、電力変換器の出力電圧が最大出力電圧となり、出力電圧が飽和した状態では、電流制御の応答速度が低下したり、不安定になったりする可能性がある。
一方、本第5の実施形態においては、電力変換器の最大出力電圧を同期電動機の定格電圧に等しくした場合でも、同期電動機を安定に制御可能とするために、第1の実施形態とは一部異なる制御方式を用いている。
巻線界磁型同期機制御装置310は、速度制御部10および界磁制御部20、およびシミュレータ160を有する。
速度制御部10は、減算器11、速度制御器13、減算器34、有効電流制御器31、電圧位相演算器32、3相−PQ変換器33、PQ−3相変換器35、3相−dq変換器17を有する。また、界磁電流制御部20は、界磁電流制御器21を有する。
速度制御部10は、角速度指令ω に対応する角速度ω を得るための速度制御ループの下に、対応する有効電流Iを得るための有効電流制御ループを有するカスケード制御の構成となっている。
速度制御ループの減算器11は、回転位置検出器7で検出され位置演算器8により算出された巻線界磁型同期機1の回転位置θが速度演算器12により変換された角速度ωを、負のフィードバック信号とし、角速度指令ω から減じた角速度偏差を出力する。速度制御器13は、角速度偏差および磁束指令Φを入力として、有効電流指令I を出力する。
減算器34は、3相電流を有効電流iおよび無効電流iに変換する3相−PQ変換器33からの出力のうちの有効電流iを負のフィードバック信号とし、速度制御器13の出力である有効電流指令I から、減じた有効電流偏差を出力する。
有効電流制御器31は、減算器34の出力である有効電流偏差を入力とし、電圧位相変更分指令ΔΘを出力する。
電圧位相演算器32は、有効電流制御器31からの位相変更分指令ΔΘ、位置演算器8からのフィードバック信号であり現在の位相に対応する回転位置Θ、および、シミュレータ160から出力される負荷角δを入力として、次の式(19)により、電圧位置指令Θを算出する。
Θ=Θ+δ+ΔΘ …(19)
PQ−3相変換器35は、電圧位相演算器32により算出された電圧位相指令Θと、電圧の振幅基準値V1とに基づいて、電力変換器3への3相各相の電圧指令Vu、Vv、およびVwを出力する。
シミュレータ160は、負荷角δの演算部分として、界磁電流i、d軸電機子電流i、およびq軸電機子電流iを入力として受けて、負荷角δを算出し、フィードフォワード信号として、電圧位相演算器32に出力する。
この際、第1の実施形態と同様に、あらかじめ詳細解析等で算出した結果に基づいて、d軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φを求めるd軸磁束関数φ(i ,i,ifd)とq軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φを算出するq軸磁束関数φ(i ,i,ifd)とを、それぞれ、たとえばテーブル形式で保有しておく。この算出結果に基づいて、負荷角δを算出し、電圧位相演算器32に、出力する。
また、シミュレータ160は、界磁電流指令ifd の演算部分として、界磁磁束指令Φ*を入力とし、界磁電流指令ifd を算出し、界磁電流制御器21にフィードフォワード信号として出力する。
また、シミュレータ160は、たとえば、力率をパラメータとし、それぞれの力率について、2つの状態変数の関係曲線を保有しておく。本実施形態においては、速度制御部10は、有効電流Iを変数として使用していることから、たとえば、有効電流指令I および磁束指令Φのみを用いて、負荷角δおよび界磁電流指令ifd を算出することができる。
このような構成をとることによって、巻線界磁型同期機制御装置310は、速度制御において、所期のトルク電流確保のために電圧の制御を行うのではなく、有効電流を確保するために電圧の位相を制御する。
以上のように、本実施形態においても、正確な負荷角δおよび界磁電流指令ifd を用いることによって、安定した制御を行うことができる。
[第6の実施形態]
図15は、第6の実施形態に係る巻線界磁型同期機制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態は、第5の実施形態の変形であり、電力変換器の出力電圧が最大出力電圧となり、出力電圧が飽和した状態で、同期電動機を安定に制御可能とするために、有効電流を確保するために電圧の位相を制御する。
本第6の実施形態における巻線界磁型同期機制御装置320では、第5の実施形態における巻線界磁型同期機制御装置310と比較すると、3相−PQ変換器33に代えて3相−MT変換器41、PQ−3相変換器35に代えてMT−3相変換器43を有する。さらに、減算器44および磁束電流制御器45を有する。また、巻線界磁型同期機制御装置320は、入力として、磁束電流指令i をさらに受け入れる。
3相−MT変換器41は、3相電機子電流検出値Iu、Iv、Iwと、負荷角δ、および磁極位置の検出値すなわち回転位置Θとから、トルク電流値Iおよび磁束電流値Iを求め、出力する。
MT−3相変換器43は、電圧位相演算器32からの出力である電圧位相指令Θと、電圧の振幅基準値V1とに基づいて、電力変換器3への3相各相の電圧指令Vu、Vv、およびVwを出力する。
減算器44は、巻線界磁型同期機制御装置320が入力として受け入れた磁束電流指令i と、3相−MT変換器41の出力のうちの磁束電流iとを受け入れ、磁束電流指令i からフィードバック信号である磁束電流iを減じて、磁束電流偏差をシミュレータ170に出力する。
シミュレータ170は、負荷角δの演算部分として、3相−dq変換器17の出力であるd軸電機子電流iおよびq軸電機子電流iを入力として受けて、負荷角δをフィードフォワード信号として、3相MT変換器41に出力する。
また、シミュレータ170は、界磁電流指令ifd の演算部分として、磁束電流制御器45の出力である磁束電流偏差と、フィードバック信号である界磁電流 fd とを入力として、界磁電流指令ifd を算出し、界磁電流制御器21にフィードフォワード信号として出力する。
この際、あらかじめ詳細解析等で算出した結果に基づいて、d軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φを求めるd軸磁束関数φ(i ,i,ifd)とq軸方向の電機子巻線鎖交磁束Φを算出するq軸磁束関数φ(i ,i,ifd)とを、それぞれ、たとえばテーブル形式で保有しておく。この算出結果に基づいて、負荷角δを算出し、3相−MT変換器41に、出力する。
また、シミュレータ170は、界磁電流指令ifd の演算部分として、界磁磁束指令Φ*を入力とし、界磁電流指令ifd を算出し、界磁電流制御器21にフィードフォワード信号として出力する。
また、シミュレータ170は、たとえば、力率をパラメータとし、それぞれの力率について、2つの状態変数の関係曲線を保有しておく。本実施形態においては、速度制御部10は、トルク電流Iを変数として使用していることから、たとえば、トルク電流指令I および磁束指令Φのみを用いて、負荷角δおよび界磁電流指令ifd を算出することができる。
以上のように、本実施形態においても、正確な負荷角δおよび界磁電流指令ifd を用いることによって、安定した制御を行うことができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、第1の実施形態、第5の実施形態、および第6の実施形態で、それぞれ方式の異なる制御回路にシミュレータを適用した場合の例を示した。
すなわち、第1ないし第4の実施形態では、電機子の電圧を制御する方式の場合を示している。また、第5および第6の実施形態では、電圧位相を制御する方式として、有効電流指令iP がシミュレータに入力されている場合を示している。ただし、有効電流指令iP に限らず、速度制御の出力として任意の変数を用いた制御器で採用することができる。
さらに、本発明は、これらの制御方式に限定されない。すなわち、本発明によるシミュレータは、同期機の状態をシミュレータによって予測し、その結果を関数テーブルとして保存し、この関数テーブルを使ってフィードフォワード的に制御する任意の方式に適用することが可能であり、制御性を大幅に改善することができる。
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。たとえば、第5の実施形態あるいは第6の実施形態に、第2ないし第4の実施形態のそれぞれの特徴と、を組み合わせてもよい。
さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…巻線界磁型同期機、2a…電機子巻線、2b…界磁巻線、3、4…電力変換器、5、6…電流変換器、7…回転位置検出器、8…位置演算器、10…速度制御部、11…減算器、12…速度演算器、13…速度制御器、14…dq軸電流演算器、15、16…減算器、17…3相−dq変換器、18…dq軸電流制御器、19…dq−3相変換器、20…界磁制御部、21…界磁電流制御器、31…有効電流制御器、32…電圧位相演算器、33…3相−PQ変換器、34…減算器、35…PQ−3相変換器、41…3相−MT変換器、42…減算器、43…MT−3相変換器、44…減算器、45…磁束電流制御器、100…シミュレータ、101…負荷角演算器、102…界磁電流指令演算器、110…磁束演算器、111…加算器、120…シミュレータ、121、122、123…加算器、124…乗算器、125…不完全微分要素、126…乗算器、127…不完全微分要素、128…磁束演算器、130、131…減算器、132…界磁電流演算器、140…シミュレータ、141…界磁電流演算器、142…一次遅れ要素、150…シミュレータ、151…負荷角演算器、152…一次遅れ要素、153…界磁電流演算器、154…一次遅れ要素、160、170…シミュレータ、201…負荷角演算器、202…界磁電流指令演算器、203…磁束演算器、300、310、320…巻線界磁型同期機制御装置

Claims (7)

  1. 負荷角と界磁電流指令を生成するシミュレータと、
    度指令と回転子の回転位置から変換された速度フィードバックとの偏差、および前記負荷角、に基づいて電機子電圧を制御する速度制御部と、
    前記界磁電流指令に基づいて界磁電流を制御する界磁電流制御部と、
    を備え、
    前記シミュレータは、磁束指令とトルク電流指令に基づいて前記負荷角を特定する第1のテーブル、および前記磁束指令と前記トルク電流指令に基づいて前記界磁電流指令を特定する第2のテーブルから、前記負荷角と前記界磁電流指令をそれぞれ取得する、
    巻線界磁型同期機の制御装置。
  2. 前記巻線界磁型同期機は、さらに制動巻線を有し、
    前記シミュレータは、前記負荷角と前記界磁電流指令のそれぞれに対し、制動巻線電流によって磁束変動に遅れが生じる効果を前記負荷角と前記界磁電流指令に反映させるための一次遅れフィルタをかける請求項1に記載の巻線界磁型同期機の制御装置。
  3. 負荷角と界磁電流指令を生成するシミュレータと、
    速度指令と回転子の回転位置から変換された速度フィードバックとの偏差、および前記負荷角、に基づいて電機子電圧を制御する速度制御部と、
    前記界磁電流指令に基づいて界磁電流を制御する界磁電流制御部と、
    を備え、
    前記シミュレータは、q軸方向の電機子巻線鎖交磁束とd軸方向の電機子巻線鎖交磁束を、相電流の電流値から求めたq軸電流値、界磁電流値、および前記相電流の電流値から求めたd軸電流値に前記界磁電流値を加算した合成d軸電流値の3変数に基づいて前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束と前記d軸方向の電機子巻線鎖交磁束を特定する第1のテーブルと、前記界磁電流指令を磁束指令と前記速度制御部により求められた指令の2変数に基づいて特定する第2のテーブルから、それぞれ取得する、
    巻線界磁型同期機の制御装置。
  4. 前記巻線界磁型同期機は、さらに制動巻線を有し、
    前記シミュレータは、前記界磁電流指令に対し、制動巻線電流によって磁束変動に遅れが生じる効果を前記界磁電流指令に反映させるための一次遅れフィルタをかける請求項3に記載の巻線界磁型同期機の制御装置。
  5. 負荷角と界磁電流指令を生成するシミュレータと、
    速度指令と回転子の回転位置から変換された速度フィードバックとの偏差、および前記負荷角、に基づいて電機子電圧を制御する速度制御部と、
    前記界磁電流指令に基づいて界磁電流を制御する界磁電流制御部と、
    を備え、
    前記シミュレータは、相電流の電流値から求めたq軸電流値、界磁電流値、および前記相電流の電流値から求めたd軸電流値に前記界磁電流値を加算した合成d軸電流値に基づいて、前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束と前記d軸方向の電機子巻線鎖交磁束を特定するテーブルから取得し、前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束と前記d軸方向の電機子巻線鎖交磁束を用いて前記負荷角を、前記d軸電流値、前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束および前記磁束指令を用いて前記界磁電流指令を、それぞれ求める、
    巻線界磁型同期機の制御装置。
  6. 前記巻線界磁型同期機は、さらに制動巻線を有し、
    前記シミュレータは、前記d軸方向の電機子巻線鎖交磁束と前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束とを用いて制動巻線電流のd軸成分と前記制動巻線電流のq軸成分とを求め、前記制動巻線を流れる電流による起磁力の影響を反映するため前記求めた制動巻線電流のd軸成分を前記合成d軸電流値に加算し、前記求めた制動巻線電流のq軸成分を前記q軸電流値に加算する請求項5に記載の巻線界磁型同期機の制御装置。
  7. 記シミュレータは、前記制動巻線電流のd軸成分およびq軸成分を、次の式を用いて求める請求項6に記載の巻線界磁型同期機制御装置。
    Figure 0006722901
    Figure 0006722901
    ただし、i kd およびi kq はそれぞれ前記制動巻線電流のd軸成分およびq軸成分、φ およびφ はそれぞれ前記q軸電流値、前記界磁電流値および前記合成d軸電流値を3変数とする前記テーブルにより取得した前記d軸方向の電機子巻線鎖交磁束および前記q軸方向の電機子巻線鎖交磁束である。
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