図1は、実施例に係る通報処理システムについての説明図である。図1に示す通報処理システムは、所定の事象の発生に伴う通報を受け付けた場合に、通報の種別や通報者の位置情報から事象に対処する対処員を特定し、特定した対処員を担当対処員として現地に派遣することで対処員による対処を行う。
図1では、通報者P1〜P3が警備システムのコントロールセンタ50に通報を行っている(S11)。ここで、通報者P1と通報者P2は種別を火災として通報を行い、通報者P3は種別を負傷者として通報を行っている。コントロールセンタ50は、これらの通報を受けて現地で対処を行う対処員を特定するのであるが、通報者P1〜P3からの通報の全てについて担当対処員を割り当てると、通報の数だけ対処員が必要となる。
例えば、通報者P1と通報者P2は、同一の火災について重複して通報しているにも関わらず、通報毎に対処員を特定して対処通知を行うと、過剰な対処員が同一事象の対処に割り当てられる事態となる。
また、通報者P3は、種別を負傷者として通報を行っているが、この負傷者は、火災に起因する副次的事象である可能性がある。すなわち、通報者P1と通報者P2が通報した火災を主事象とし、この火災に起因した副次的事象である負傷者について通報者P3が通報を行っているならば、通報者P1〜3は同一の事象に起因する通報を行っていることになる。
そこで、コントロールセンタ50は、複数の通報を受け付けたならば(S12)、インシデントの同一判定を行うことで、通報の重複を識別する(S13)。インシデントとは、対処員による対処が必要な事象であり、火災、事故、負傷者、急病人、忘れ物、客同士のトラブルなどが含まれる。
インシデント同一判定の詳細については後述するが、新たに受け付けた通報が受付済みの通報と同一のインシデントに起因する通報であるか否かを通報者の位置、通報の時間、通報の種別の相関関係から判定する。
コントロールセンタ50は、この同一判定の結果に基づいてインシデントの対処にあたる対処員を特定し(S14)、特定した対処員に対処通知を行う(S15)。図1の例では、通報者P1〜P3が同一のインシデントに起因して重複して通報したと判定し、1名の対処員を派遣している。
このように、コントロールセンタ50は、所定の事象の発生に伴って複数の通報を受け付けた場合に、該複数の通報が同一の事象に起因する通報であるか否かを判定し、判定結果に基づいて事象に対処する対処員を特定し、特定した対処員に対して事象への対処通知を行う。かかる構成により、事象の発生に伴う複数の通報に応答して対処員を派遣する場合に、該複数の通報に効率良く対応して対処員を派遣することができる。
次に、図1に示した通報処理システムのシステム構成について説明する。図2は、図1に示した通報処理システムのシステム構成図である。図2に示すように、通報処理システムは、固定装置10、拠点サーバ20、可搬カメラユニット21、可搬センサユニット22、対処員装備30、コントロールセンタ50、サービスサーバ80及び図示しない携帯端末を有する。
固定装置10は、予め警備対象領域に設置された装置である。この固定装置10には、警備対象領域の警備に用いる情報を取得するために予め設置された情報取得手段、広告の表示等に用いられる大型固定ディスプレイ14、固定スピーカ15等が含まれる。また、予め設置された情報取得手段としては、監視カメラ11、侵入センサ12、火災センサ13等が含まれる。また、空調装置など任意の装置から動作状態を示す設備情報を取得することもできる。
拠点サーバ20は、固定装置10と、コントロールセンタ50との通信を中継するサーバである。拠点サーバ20は、警備対象領域の内部、若しくは近傍に設置する。また、複数の警備対象領域が存在する場合などには、拠点サーバ20を複数設けることができる。
可搬カメラユニット21は、設置された地点の周辺を撮像し、画像データをコントロールセンタ50に送信する。この可搬カメラユニット21とコントロールセンタ50との間の通信も、拠点サーバ20により中継される。
可搬センサユニット22は、火災センサや侵入センサなど、任意のセンサに通信機能を持たせ、設置された地点の周辺の情報を取得し、取得した情報をコントロールセンタ50に送信する。この可搬センサユニット22とコントロールセンタ50との間の通信も、拠点サーバ20により中継される。
対処員装備30は、対処員が装備する装置である。対処員装備30には、ウェアラブルカメラであるカメラ31と、マイク32と、GPS(Global Positioning System)ユニット33と、イヤホン34と、スピーカ35と、無線中継装置36と、対処員端末装置40とが含まれる。
カメラ31は、周囲を撮像し、画像データを対処員端末装置40に出力する。マイク32は、周囲の音を取得し、音データを対処員端末装置40に出力する。GPSユニット33は、GPS人工衛星の信号を受信して位置を算出し、位置データを対処員端末装置40に出力する。イヤホン34及びスピーカ35は、対処員端末装置40からの制御を受けて音の出力を行なう。
対処員端末装置40は、携帯電話通信網を用いた無線通信を行なう機能と、Wi−Fi(Wireless Fidelity)等の規格に準じた無線通信を行なう機能とを有する。対処員端末装置40は、これらの通信機能を用いてコントロールセンタ50と通信することができる。なお、Wi−Fi等の規格に準じた無線通信は、無線中継装置36及び拠点サーバ20を経由して行なう。
無線中継装置36は、Wi−Fi等の規格に準じた無線通信を中継する装置であり、対処員端末装置40と拠点サーバ20との間の通信のみならず、他の装置の無線通信を中継することができる。例えば、他の無線中継装置36の通信の中継や、歩行者の携帯端末からインターネットへの接続の中継を行なうことも可能である。
対処員端末装置40は、カメラ31、マイク32及びGPSユニット33が出力したデータをコントロールセンタ50に送信し、コントロールセンタ50から受信したデータに基づいてイヤホン34及びスピーカ35への出力を行なう。
また、対処員端末装置40は、カメラ31、マイク32及びGPSユニット33から取得したデータを使用する処理を自装置で実行し、処理結果に応じた出力をイヤホン34及びスピーカ35を用いて行なうことができる。
携帯端末(図示しない)は、ボランティアスタッフや一般人が所持する携帯電話機等である。携帯端末には一般にカメラやマイク、スピーカ、GPSユニットが備えられており、サービスサーバ80より通報用アプリケーションプログラムをインストールすることで、対処員端末装置40と同様にコントロールセンタ50への通報を可能としている。
コントロールセンタ50は、固定装置10、可搬カメラユニット21、可搬センサユニット22及び対処員装備30から受信したデータを用い、警備対象領域の警備を行なう。また、コントロールセンタ50は、サービスサーバ80と通信し、サービスサーバ80が提供するサービスを対処員端末装置40で利用可能とする。
サービスサーバ80は、通報用アプリケーションや通訳サービスなど、対処員装備30を装備した対処員や携帯電話を所持するボランティアスタッフ等を補助する各種サービスを提供するサーバである。サービスサーバ80は、サービスごとに個別に設けてもよい。
次に、図1に示したコントロールセンタ50の内部構成について説明する。図3は、図1に示したコントロールセンタ50の内部構成を示す内部構成図である。図3に示すように、コントロールセンタ50は、警備対象領域情報取得部51、装置制御指示送信部52、通知送信部53、記憶部54及び制御部55を有する。
警備対象領域情報取得部51は、固定装置10、可搬カメラユニット21、可搬センサユニット22及び対処員装備30から情報を取得し、制御部55に出力する処理部である。
装置制御指示送信部52は、制御部55が出力する制御指示を対象の装置に送信する処理部である。制御指示の送信対象となる装置は、固定装置10、可搬カメラユニット21及び可搬センサユニット22などである。通知送信部53は、制御部55が出力する対処通知を対処員端末装置40に送信する処理部である。
記憶部54は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶デバイスであり、対処員状態データ54a、通報履歴データ54b、事象履歴データ54c及び通報種別クラスタ分析データ54dを記憶する。
対処員状態データ54aは、対処員の状態を示すデータである。通報履歴データ54bは、コントロールセンタ50が受け付けた通報の履歴を示すデータである。事象履歴データ54cは、通報などにより検知したインシデントの履歴を示すデータである。通報種別クラスタ分析データ54dは、通報の種別の相関関係を示すデータである。
制御部55は、コントロールセンタ50を全体制御する制御部であり、対処員状態管理部55a、事象検知部55b、同一判定部55c、装置制御部55d、対処員特定部55e、対処通知部55f及び重大度推定部55gを有する。制御部55は、CPU(Central Processing Unit)などで実現できる。制御部55をCPUにより実現する場合には、対処員状態管理部55a、事象検知部55b、同一判定部55c、装置制御部55d、対処員特定部55e、対処通知部55f及び重大度推定部55gは、CPUが実行するプロセスとして実現される。
対処員状態管理部55aは、警備対象領域情報取得部51が対処員装備30から取得した情報を対処員状態データ54aに登録することで、対処員の状態を管理する処理部である。具体的には、対処員状態管理部55aは、各対処員の装備、状態、位置などを対処員状態データ54aに適宜登録する。
事象検知部55bは、対処員による対処が必要な事象であるインシデントの発生を検知する処理部である。事象検知部55bは、警備対象領域情報取得部51が固定装置10、可搬カメラユニット21、可搬センサユニット22などから取得した情報を用いてインシデントの発生を検知する。また、対処員装備30からの通報、ボランティアスタッフや一般人からの通報などに基づいてインシデントの検知を行う。
また、事象検知部55bは、対処員やボランティアスタッフ、一般人等から通報を受けた場合には、受け付けた通報に関する情報を通報履歴データ54bに登録する。
同一判定部55cは、新たに受け付けた通報が受付済みの通報と同一のインシデントに起因する通報であるか否かを通報者の位置、通報の時間、通報の種別の相関関係から判定する処理部である。同一判定部55cは、通報者の位置、通報の時間、通報の種別の相関関係についてそれぞれ評価値を算定し、これらの評価値から総合評価値を求め、総合評価値を用いて同一のインシデントに起因する通報であるか否かを判定する。
通報者の位置の評価値は、発信元である通報者の間の距離が小さいほど同一の事象に起因する通報である可能性が高いことを示し、同一の事象に起因する可能性が高いほど大きい値となる位置スコアとして算定する。
通報の時間の評価値は、所定の事象に起因する最初の通報から対処員の到着までに受け付けた他の通報について、同一の事象に起因する通報である可能性があることを示し、同一の事象に起因する可能性が高いほど大きい値となる時間スコアとして算定する。
通報の種別の評価値は、通報種別クラスタ分析データ54dを参照して種別の相関度合を求めたものであり、種別の相関度合が高く、同一の事象に起因する可能性が高いほど大きい値となる種別スコアとして算定する。
総合評価値は、位置スコア、時間スコア及び種別スコアの積などを用いればよい。同一判定部55cは、総合評価値が閾値以上である場合に、同一の事象に起因する通報であると判定する。位置スコア、時間スコア、種別スコア総合評価値の詳細については後述する。
同一判定部55cは、新たに受け付けた通報が受付済みの通報と同一のインシデントに起因する通報でないと判定した場合には、新たに受け付けた通報を新規のインシデントとして事象履歴データ54cに登録する。一方、新たに受け付けた通報が受付済みの通報と同一のインシデントに起因する通報である判定した場合には、受付済みの通報に新たに受け付けた通報に関する情報を追加して事象履歴データ54cを更新する。
装置制御部55dは、事象検知部55bによる検知結果と同一判定部55cによる判定結果に基づいて、固定装置10、可搬カメラユニット21及び可搬センサユニット22に対する制御指示を決定し、装置制御指示送信部52に出力する処理部である。例えば、火災の発生を検知した場合には、大型固定ディスプレイ14の表示出力や固定スピーカ15からの音声出力の内容を指定する制御指示を出力することで、避難誘導を行うことができる。
対処員特定部55eは、事象検知部55bによる検知結果と同一判定部55cによる判定結果に基づいて、事象に対処する対処員を担当対処員として特定する処理部である。具体的には、対処員特定部55eは、事象検知部55bがインシデントを検知したならば、インシデントの種別と、インシデントの位置と、対処員状態データ54aに格納された対処員の状態とを用い、インシデントに対処する対処員を特定する。
また、対処員特定部55eは、事象履歴データ54cに受付済みの通報と同一のインシデントに起因する通報を受け付けた場合には、担当対処員の追加が必要であるか否かを判定し、担当対処員の追加が必要であるならば、追加要員としての担当対処員を特定する。
対処通知部55fは、対処員特定部55eにより対処員が特定されたならば、対処通知を生成し、通知送信部53に出力することで、特定された対処員への対処通知の送信を行わせる。ここで、対処通知には、インシデントの種別、位置、詳細情報、必要な装備など、対処に必要な各種情報が含まれる。
重大度推定部55gは、インシデントの重大度を推定する処理部である。詳細については後述するが、重大度推定部55gは、インシデントの重大さの度合と通報の件数とは正の相関を示すことを利用し、同一のインシデントに起因する通報の件数を計数することでインシデントの重大度を推定する。推定した重大度は、担当対処員への通知、担当対処員の追加の判定、消防や警察などの関係機関への連絡の要否の判定などに用いることができる。
次に、図2に示した対処員端末装置40の内部構成について説明する。図4は、図2に示した対処員端末装置40の内部構成を示す内部構成図である。図4に示すように、対処員端末装置40は、装備インタフェース41、表示操作部42、携帯通信網接続部43、無線中継装置インタフェース44、記憶部45及び制御部46を有する。
装備インタフェース41は、カメラ31、マイク32及びGPSユニット33の出力を受け付け、イヤホン34及びスピーカ35への音の出力を行なうインタフェースである。表示操作部42は、表示出力と操作入力の受付とを行なうタッチパネルディスプレイなどのデバイスである。
携帯通信網接続部43は、携帯電話通信網に接続して通信を行なう通信インタフェースである。無線中継装置インタフェース44は、無線中継装置36とWi−Fi(Wireless Fidelity)等の規格に準じた無線通信を行なう通信インタフェースである。
記憶部45は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶デバイスであり、地図データ45a等を格納する。地図データは、警備対象領域やその周辺などの地図を示すデータである。
制御部46は、対処員端末装置40を全体制御する制御部であり、情報収集部46a、情報送信部46b及び通知処理部46cを有する。制御部46は、CPU(Central Processing Unit)などで実現できる。制御部46をCPUにより実現する場合には、情報収集部46a、情報送信部46b及び通知処理部46cは、CPUが実行するプロセスとして実現される。
情報収集部46aは、カメラ31、マイク32及びGPSユニットの出力を取得することで、情報収集を行なう処理部である。情報送信部46bは、コントロールセンタ50への情報の送信を行なう処理部であり、情報収集部46aが収集した情報をコントロールセンタ50に送信する。このとき、情報収集部46aが収集した情報をそのまま送信してもよいし、加工や解析を行った上で送信してもよい。さらに、情報送信部46bは、表示操作部42に対する対処員の操作に基づいて、インシデントの発生を示す通報をコントロールセンタ50に送信することができる。
通知処理部46cは、コントロールセンタ50からの通知に係る処理を行う。具体的には、通知処理部46cは、コントロールセンタ50から対処通知を受信した場合には、表示操作部42やイヤホン34による出力を用い、対処員に対して対処通知の内容を報知する。
次に、コントロールセンタ50が格納する対処員状態データ54a及び通報履歴データ54bの具体例について説明する。図5は、対処員状態データ54a及び通報履歴データ54bの具体例についての説明図である。
図5(a)に示すように、対処員状態データ54aは、対処員を一意に識別する対処員IDに、装備、状態、位置などを対応付けたデータである。図5(a)では、対処員ID「G001」に対し、装備「基本装備」、状態「警備中(巡回)」、位置「(X1,Y1)」などを対応付けている。また、対処員ID「G002」に対し、装備「基本装備、AED」、状態「警備中(対処)」、位置「(X2,Y2)」などを対応付けている。対処員ID「G003」に対し、装備「なし」、状態「待機中」、位置「(X3,Y3)」などを対応付けている。
図5(b)に示すように、通報履歴データ54bは、通報を一意に識別する通報IDに、日時、種別、位置などを対応付けたデータである。図5(b)では、通報ID「H001」に対し、日時「2018/03/10 14:30」、種別「落とし物」、位置「(X11,Y11)」などを対応付けている。また、通報ID「H002」に対し、日時「2018/03/10 15:01」、種別「火災」、位置「(X12,Y12)」などを対応付けている。また、通報ID「H003」に対し、日時「2018/03/10 15:02」、種別「火災」、位置「(X13,Y13)」などを対応付けている。また、通報ID「H004」に対し、日時「2018/03/10 15:10」、種別「救急」、位置「(X14,Y14)」などを対応付けている。
次に、コントロールセンタ50が格納する事象履歴データ54cの具体例について説明する。図6は、事象履歴データ54cの具体例についての説明図である。図6に示すように、事象履歴データ54cは、事象を一意に識別する事象IDに、日時、種別、位置、通報ID、担当対処員ID、担当対処員状態などを対応付けたデータである。
図6では、事象ID「B001」に対し、日時「2018/03/10 14:30」、種別「落とし物」、位置「(X11,Y11)」、通報ID「H001」、担当対処員ID「G002」、担当対処員状態「対処中」などを対応付けている。
また、事象ID「B002」に対し、日時「2018/03/10 15:01」、種別「火災、救急」、位置「(X12,Y12)」、通報ID「H002、H003、H004」、担当対処員ID「G005」、担当対処員状態「未到着」などを対応付けている。このように、登録された事象について新たな通報を受け付けた場合には通報IDの追加が行われ、また、種別が異なる場合には種別の追加も行われる。
次に、同一判定に係るスコアの算出について説明する。まず、位置スコアは、複数発生した通報について、発生位置毎の距離を求め、距離に反比例する値として算定する。
時間スコアは、複数発生した通報の通報時間の差から算定する。図7は、同一のインシデントに起因して行われる通報の数についての説明図である。図7に示す様に、同一のインシデントに起因して複数の通報が発生する確率は、事象の発生時点から上昇し、対処員が到着して対処を開始すると減少する。このため、第1回目の通報から対処員到着までの時間内であれば、同一のインシデントに起因する可能性が高いとして時間スコアを算出する。
なお、図7に示した通報数の変化は、事象発生からの時間経過に応じて被害が拡大するケース、例えば火災などのケースについて示したものであり、事象の種類によって通報数の変化は異なる。具体的には、落とし物であれば、被害の拡大が生じないため、通報数は急上昇することはなく、単位時間あたりの通報数は図7に比して安定した値となる。このため、時間スコアについては、通報の種別による通報数の変化に合わせて算出することとしてもよい。
図8は、種別スコアに係るクラスタ分析についての説明図である。同一のインシデントに起因する通報であっても、通報者によって通報の内容や種別が異なる場合があるが、通報の種別の相関度合は種別の関係として分析可能である。図8に示す様に、「火災」のクラスタは、「煙」、「爆発」、「事故」、「救急」などに近く、「落とし物」などからは遠い。このように、通報の履歴を蓄積してクラスタ分析し、種別の相関度合の高さを距離の近さに置きかえた通報種別クラスタ分析データ54dとして記憶部54に格納する。そして、複数発生した通報の種別に基づいて通報種別クラスタ分析データ54dを参照し、クラスタ間の距離に反比例する値として種別スコアを算定することで、同一のインシデントに起因する可能性の高さを示すことができる。
図9は、総合評価値の変形例についての説明図である。既に説明したように、位置スコア、時間スコア、種別スコアの積を総合評価値として用いることができる他、図9に示すようにスコアの面積を総合評価値としてもよい。すなわち、位置スコア、時間スコア、種別スコアを軸とするレーダチャートに各スコアをプロットし、その面積を閾値と比較することで、同一のインシデントに起因する通報であるか否かを判定するのである。
次に、重大度の推定について説明する。図10は、重大度の推定についての説明図である。図10(a)に示すように、インシデントの重大度と通報数には正の相関がある。このため、同一のインシデントに起因する通報数から重大度を推定することができる。
推定した重大度は、担当対処員への通知、担当対処員の追加の判定、消防や警察などの関係機関への連絡の要否の判定などに用いることができる。ここで、重大度が大きい場合にどのような対処が必要となるかは、インシデントの種別によって異なる。
例えば、火災などのインシデントであれば、重大度は火災の規模に対応するため、重大度が大きければ消防署への通報に加えて図10(b)に示す様に担当対処員を追加することが望ましい。
一方、救急の重大度は、人数とは限らず負傷の軽重であることも考えられるので、重大度が高くとも担当対処員の追加が不要で救急車の早期手配が求められる場合もある。このため、重要度により担当対処員の追加を判定する場合には、通報の種別を合わせて用いる。
次に、コントロールセンタ50の処理手順について説明する。図11は、コントロールセンタ50の処理手順を示すフローチャートである。まず、事象検知部55bが対処員やボランティアスタッフ、一般人等から通報を受け付けると(ステップS101)、同一判定部55cは、新たに受け付けた通報が受付済みの通報(既存の通報)と同一のインシデントに起因する通報であるか否かを判定する(ステップS102)。
判定の結果、既存の通報と同一のインシデントに起因する通報では無い場合(ステップS103;No)、事象検知部55bは、新たな通報の内容を新規の事象として事象履歴データ54cに登録する(ステップS104)。
一方、既存の通報と同一のインシデントに起因する通報である場合(ステップS103;Yes)、既存の通報に対応する既存の事象に新たな通報の内容を追加して事象履歴データ54cを更新する(ステップS107)。その後、対処員特定部55eは、対処員の追加が必要であるか否かを判定し(ステップS108)、対処員の追加が必要でなければ(ステップS108;No)、そのまま処理を終了する。
ステップS104の後、若しくは対処員の追加が必要であると判定した場合(ステップS108;Yes)、対処員特定部55eは、インシデントに対処する対処員を担当対処員として特定する(ステップS105)。
対処通知部55fは、インシデントの種別や位置、必要な装備など、対処に必要な各種情報を含む対処通知を生成し、通知送信部53に出力することで、特定された対処員への対処通知の送信を行わせ(ステップS106)、処理を終了する。
上述してきたように、本実施例に係る通報処理システムは、所定の事象の発生に伴う複数の通報を受け付けた場合に、該複数の通報が同一の事象に起因する通報であるか否かを判定し、判定結果に基づいて事象に対処する対処員を特定し、特定した対処員に対して事象への対処通知を行うよう構成した。かかる構成により、事象の発生に伴う複数の通報に応答して対処員を派遣する場合に、該複数の通報に効率良く対応して対処員を派遣することができる。
また、通報の種別と、通報の位置と、通報の時間とのうち少なくともいずれかを用いて複数の通報が同一の事象に起因する通報であるか否かを判定することで、判定を精度良くおこなうことができる。
通報の種別を判定に用いる場合には、複数の通報について種別の相関度合を示す評価値を算定する。通報の時間を判定に用いる場合には、所定の事象に起因する最初の通報から対処員の到着までに受け付けた他の通報について、同一の事象に起因する通報である可能性があることを示す評価値を算定する。通報の位置を判定に用いる場合には、複数の通報について発信元の間の距離が小さいほど同一の事象に起因する通報である可能性が高いことを示す評価値を算定する。そして、複数の評価値から総合評価値を算定し、算定した総合評価値に基づいて同一の事象に起因する通報であるか否かを判定する。
また、同一の事象に起因する通報の件数に基づいて該事象の重大度を推定することも可能である。
なお、本実施例では1つの警備対象領域を例に説明を行ったが、コントロールセンタ50が複数の警備対象領域を管理するよう構成することも可能である。
また、コントロールセンタ50に複数の監視担当者用端末を接続し、複数の監視担当者がコントロールセンタ50にて監視を行うことができるよう構成してもよい。このような構成では、例えば対処員が監視担当者と通話接続する場合には、対処員の発呼により全ての監視担当者端末を着信状態とし、最先に応答した監視担当者用端末と対処員との間で通話接続すればよい。
また、対処員端末装置40のカメラ31により操作者や周囲の人物の顔画像を取得し、表情を分析して通話の緊急度を決定し、緊急度が高い場合(表情に緊張や苦痛、困惑が多い場合など)に優先的に通話接続することもできる。
また、対処員以外のボランティアスタッフ等が携行する携帯端末は対処員端末装置40とは異ならせ、機能の制限を可能とする。また、異なるアプリケーションプログラムとして、それぞれの端末上で実行してもよい。
また、本実施例では、対処員の位置情報の取得について詳細な説明を省略したが、対処員の位置情報は、GPSユニット33による取得の他、任意の方法で取得することができる。例えば、BLEタグや地磁気を利用して屋内での位置測位を行なう構成であってもよい。地磁気により位置測位を行う場合には、磁気センサを内蔵した端末を持って屋内を移動することで、磁化した鉄骨等による環境磁場の特徴量から屋内位置を推定する。なお、磁気による屋内位置測位では、周辺環境の磁気の特徴量から位置推定することから、階層の違いを認識するのが困難となるので、各所に設置したWi−FiのSSID情報と組み合わせることで、階層やエリアを特定したうえで磁気の特徴を検出してもよい。
また、コントロールセンタ50や対処員端末装置40は、事象が発生している階層(警備対象領域)に事象発生を示す記号を付して地図表示を可能としてもよい。また、複数階層を有する場合に、階層一覧における該当層にも事象発生を示す記号を付すことができる。
また、コントロールセンタ50は、警備計画の登録を受け付けて管理し、警備計画に基づいて対処員の特定や、対処員に対する情報提供を行うことができる。
また、対処員端末装置40から通話によりコントロールセンタ50に連絡されたインシデントについて、通話発信者の情報や位置情報を利用してインシデントの履歴に登録することも可能である。
また、コントロールセンタ50に警察、消防等の関係機関への連絡先を登録し、コントロールセンタ50や対処員端末装置40から関係機関の連絡先を参照し、連絡することができるようにしてもよい。このとき、対処員端末装置40の位置情報を利用して最寄りの関係機関の連絡先を選択可能としてもよい。
また、通報者の位置情報を事象の位置情報として登録可能とし、さらに通報者の位置と事象の位置が異なる場合には修正可能としてもよい。
また、対処員が通報を行う場合に、煩雑な操作が難しいことが考えられるため、イヤホン34などに緊急通報用のボタンを設けてもよい。また、音声によるキーワードで通報可能としてもよい。
また、対処員端末装置40にタイマー機能を持たせ、対処員の行動の進捗を管理するとともに、行動の進捗が滞っていることを検知した場合に、対処員の安否確認や応援の対処員の派遣を行ってもよい。
また、発生したインシデントの内容に応じて、予め複数名の対処員を特定してインシデントに対処させてもよい。例えば、初期消火、人払い、連絡係、関係機関の誘導などでは、複数の対処員が必要となるので、通報種別、通報エリア、時間、進捗更新等の条件により適切な人数の対処員に対処通知を送信する。
また、対処通知を受信した対処員が対処不可である場合、例えば対処員が対処不可である旨の通知をコントロールセンタ50に送信した場合や、対処通知を送信したにも関わらず一定時間応答が無い場合には、コントロールセンタ50が他の対処員を特定して対処通知を送信するよう構成してもよい。また、対処不可の対処員については、一定時間(例えば5分程度)対処通知を送信しないよう制御してもよい。
また、対処通知の送信に対処が不要と判定した場合には、対処通知を送信した対処員に対してキャンセル通知を送信するよう構成してもよい。また、対処通知を受けて対処を開始した対処員が応援が必要と判断した場合には、コントロールセンタ50に応援要請を行い、応援の対処員に対処通知を追加で送信するよう構成してもよい。
また、対処員端末装置40は、対処通知を受け場合に、事案の位置を示す地図を自動で表示し、対処員の操作を削減するよう構成してもよい。
また、対処員端末装置40から、対処の結果をコントロールセンタ50に通知し、コントロールセンタ50で管理してもよい。コントロールセンタ50では、発生中のインシデントや対処が終了したインシデントを管理し、エリアやキーワードによる絞込み、一覧出力を可能とする。
また、イベント会場での警備などでは、イベントのスケジュールと連動し、時間を指定して対処員の対処予定を登録し、その実施を管理することができる。例えば、有名人等の来訪により、一時的に車の乗り入れ場や入場通路が混雑する可能性があるならば、来訪によるスケジュールにより、入場通路等の警戒強度設定をシステム上で増加し、対処員の配置を促す
また、監視カメラで区画あたりの人員数をカウントし、予め設定した人の密度を大きく超えた場合、応援対処員を特定し、対処通知を送信してもよい。
また、コントロールセンタ50は、インシデント毎の事案の詳細、全体の事案対処概要を記憶し、帳票としてファイル出力可能とすることが望ましい。
また、対処員端末装置40とコントロールセンタ50とがメッセージのやり取りを行う場合には、かかるメッセージのやり取りに位置情報を連携させることで、対処員端末装置40の位置を管理することができる。また、メッセージのやり取りの履歴はコントロールセンタ50が保持しておくことが望ましい。
また、対処員端末装置40は、警備の実施要領を記憶し、対処員が随時参照できるようにしてもよい。
また、対処員端末装置40や、ボランティアスタッフなどが用いる端末は、「AED」や「消火器」、「非常口」等を強調した施設地図を閲覧可能に構成してもよい。また、ボランティアスタッフなどが用いる端末から、虚偽の通報が繰り返し行われた場合には、当該端末の動作を規制してもよい。
また、複数のボランティアスタッフにIDを配布する場合には、リーダーなどから各スタッフに対してQRコード(登録商標)等を利用してID、パスワード等の配布を行ってもよい。スタッフは日々入れ替わることが想定され、対処員であっても勤務日以外の場合があるため、このように適正に警備に当たっていない人物がコントロールセンタ50にアクセス可能となることは好ましくない。そこで、スタッフリーダー、対処員リーダーに、当日のみ有効なIDとパスワードを発行し、配布させる。このとき、スタッフ、ボタンティアに個別にID等を配布することは煩雑であるので、スタッフリーダーから各スタッフに対してQRコード等を利用しID、パスワード等の配布を行う。また、位置情報やSSIDから現地にいることを確認できた場合にのみコントロールセンタ50への通報を可能としてもよい。
また、例えばイベントの主催者など警備先の関係者が所持する携帯端末や警備先に設置した固定装置等の警備システムからインシデントに関する情報を受信した場合も、対処員端末装置からの通報と同様に通報処理システムが受信したインシデントについて重要性を判定し、警備先の関係者や警備先のシステムに通知することも可能である。
また、既設の監視カメラなどからデータを受信し、インシデントの検知やデータ閲覧に使用できるよう構成してもよい。また、通報者の端末からBLEやWi−fiの電波を発信し、監視カメラに備えられた指向性電波キャプチャで受信することで、通報者位置をカメラの中央部に映すようカメラの向きを変更できるよう構成してもよい。
また、重要エリアに立入する対処員について、生体認証等を確認することで正規の対処員であるか確認するよう構成してもよい。
また、対処員端末装置40に接続されたカメラ31は、常時撮像してもよいし、通信量および電力消費を抑制するため、対処員が現地に到着してから撮像を開始するよう構成してもよい。さらに、ウェアラブルカメラの解像度、フレームレートを制御して、監視の上で重要な映像を効率的に取得するよう構成してもよい。