JP6722005B2 - 溶射用材料、溶射皮膜および溶射皮膜付部材 - Google Patents

溶射用材料、溶射皮膜および溶射皮膜付部材 Download PDF

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本発明は、溶射用材料、その溶射用材料を用いて形成される溶射皮膜および溶射皮膜付部材に関する。
基材の表面を各種の材料で被覆することにより新たな機能性を付与する技術は、従来より様々な分野において利用されている。この表面被覆技術の一つとして、例えば、基材の表面に、セラミックス等の材料からなる溶射粒子を、燃焼または電気エネルギーにより軟化または溶融状態として吹き付けることで、かかる材料からなる溶射皮膜を形成する溶射法が知られている。
そして半導体デバイス等の製造分野においては、一般に、フッ素,塩素,臭素等のハロゲン系ガスのプラズマを用いたドライエッチングにより半導体基板の表面に微細加工を施すことが行われている。また、ドライエッチング後は、半導体基板を取り出したチャンバー(真空容器)の内部を、酸素ガスプラズマを用いてクリーニングしている。このとき、チャンバー内においては、反応性の高い酸素ガスプラズマやハロゲンガスプラズマに晒される部材が腐食される可能性がある。そして当該部材から腐食(エロージョン)部分が粒子状に脱落すると、かかる粒子は半導体基板に付着して回路に欠陥をもたらす異物(以下、当該異物をパーティクルという)となり得る。
したがって、従来より、半導体デバイス製造装置においては、パーティクルの発生を低減させる目的で、酸素ガスやハロゲンガス等のプラズマに晒される部材に、耐プラズマエロージョン性を備えるセラミックの溶射皮膜を設けることが行われている。例えば、特許文献1には、少なくとも一部にイットリウムのオキシフッ化物を含む顆粒を溶射用材料として用いることで、プラズマに対する耐食性の高い溶射皮膜を形成できることが開示されている。
国際公開2014/002580号公報
しかしながら、半導体デバイスの集積度の向上に伴い、パーティクルによる汚染に対してはより精密な管理が要求されてきている。そして、半導体デバイス製造装置に設けられるセラミックの溶射皮膜についても、更なる耐プラズマエロージョン性の向上が求められている。また、溶射皮膜の気孔率や硬度などの特性が良好であることが、例えば耐久性等に優れた溶射皮膜が得られる点で好ましい。
このような状況を鑑み、本発明は、耐プラズマエロージョン性がさらに向上されるとともに、気孔率が低く硬度などの特性に優れた溶射皮膜を形成し得る溶射用材料を提供することを目的とする。また、この溶射用材料を用いて形成される溶射皮膜および溶射皮膜付部材を提供することを他の目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下の特徴を有する溶射用材料を提供する。すなわち、ここに開示される溶射用材料は、構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を含む溶射用材料であって、当該溶射用材料のX線回折パターンにおける、上記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度Iに対する、希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度Iと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度Iとの合計、の強度比[(I+I)/I]が0.02未満であることを特徴としている。
本発明者らの検討によると、希土類元素オキシハロゲン化物を含む溶射用材料については、希土類元素酸化物や希土類元素ハロゲン化物等を含む溶射用材料と比較して、ハロゲン系プラズマに対する耐プラズマエロージョン性に優れた溶射皮膜を形成することができる。希土類元素酸化物および希土類元素ハロゲン化物は、かかる希土類元素オキシハロゲン化物の作製のための原料として一般的に用いられる材料であり、例えば未反応物等として溶射用材料中に残存することがあり得る。例えば、溶射用材料中にかかる希土類元素酸化物および希土類元素ハロゲン化物が含まれる場合、その合計量を上記の強度比の条件を満たす割合に抑えることで、耐プラズマエロージョン性に優れ、かつ溶射皮膜の気孔率や硬度などの特性に優れた溶射皮膜を形成することができる。
ここで「メインピーク」とは、X線回折パターンにおいて検出された任意の化合物に由来する回折ピーク群のうち、ピーク高さの最も高い(すなわち、回折強度の最も高い)ピークを意味する。
なお、特許文献1には、イットリウムオキシフッ化物(YOF)を比較的高い割合で含む溶射用材料が開示されている(実施例9〜11参照)。しかしながら、それらの溶射材料のX線回折分析結果と、酸素含有量とから算出されるYOFの含有割合が全体の77質量%以上であって、かつ、酸化イットリウム(Y)を含まない材料については、開示されていない。すなわち、ここに開示される溶射用材料は、耐プラズマエロージョン性に優れ、かつ溶射皮膜の気孔率や硬度などの特性に優れた溶射皮膜を形成し得る、新規な溶射用材料であると言える。
ここに開示される溶射用材料の好ましい一態様では、上記希土類元素ハロゲン化物を実質的に含まない形態であり得る。また、前記希土類元素酸化物を実質的に含まない形態であり得る。
かかる構成によると、より確実に、上記のとおり、形成される溶射皮膜の耐プラズマエロージョン性を高め、溶射皮膜の気孔率を低く、硬度を高く向上させることができる。
ここに開示される溶射用材料の好ましい一態様では、上記希土類元素オキシハロゲン化物について、上記希土類元素に対する上記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上であることを特徴としている。かかるモル比(X/RE)は、1.3以上1.38以下であるのがより好ましい。また、上記希土類元素に対する上記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下であるのが好ましい。
溶射用材料中の希土類元素オキシハロゲン化物におけるハロゲン元素の割合を増大させることで、ハロゲン系プラズマに対する耐性がより一層高められるために好適である。また、溶射用材料中の希土類元素オキシハロゲン化物における酸素の割合を減少させることで、溶射皮膜中に希土類元素酸化物が形成され難くなるために好適である。そしてこれらがバランスよく調整されることで、気孔率が低くかつビッカース硬度の高い溶射皮膜が得られるために好ましい。
ここに開示される溶射用材料の好ましい一態様では、前記希土類元素がイットリウムであり、上記ハロゲン元素がフッ素であり、上記希土類元素オキシハロゲン化物がイットリウムオキシフッ化物であることを特徴としている。かかる構成により、例えば、特にフッ素プラズマに対する耐エロージョン特性に優れた溶射皮膜を形成し得る溶射用材料が提供される。
他の側面において、本発明は、上記のいずれかに記載の溶射用材料の溶射物である、溶射皮膜を提供する。溶射皮膜中の希土類元素の酸化物成分は、該溶射皮膜を脆化させ、プラズマ耐性を劣化させ得る。ここに開示される溶射皮膜は、上記のいずれかに記載の溶射用材料を溶射することで形成されるものであり、希土類元素の酸化物の含有割合が低減されることから、耐プラズマエロージョン性が確実に向上されたものとして提供される。
また、本発明が提供する溶射皮膜は、構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、上記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.45以下であることにより特徴づけられる。
かかる構成によると、溶射皮膜中の希土類元素酸化物および希土類元素ハロゲン化物の含有割合が低減されることから、耐プラズマエロージョン性が確実に向上されるとともに、溶射皮膜の気孔率を低く、硬度を高く向上させたものとして提供される。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様では、上記希土類元素の酸化物を実質的に含まないことを特徴としている。希土類元素酸化物は、溶射皮膜に実質的に含まれない場合に耐プラズマエロージョン性がより一層向上されて好ましい。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様では、上記希土類元素がイットリウムであり、上記ハロゲン元素がフッ素であり、上記希土類元素オキシハロゲン化物がイットリウムオキシフッ化物であることを特徴としている。かかる構成により、例えば、フッ素プラズマに対する耐エロージョン特性に優れ、溶射皮膜の気孔率や硬度等が向上された溶射皮膜を確実に構成することができる。
また、ここに開示する技術が提供する溶射皮膜付部材は、基材の表面に、上記のいずれかに記載の溶射皮膜が備えられていることを特徴としている。かかる構成により、耐プラズマエロージョン性に優れた皮膜付部材が提供される。
実施形態2における(a)No.5および(b)No.8の溶射用材料について得られたX線回折スペクトルを示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
[溶射用材料]
ここに開示される溶射用材料は、構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を含んでいる。そして、この溶射用材料のX線回折パターンにおける、希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度Iに対する、希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度Iと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度Iとの合計、の強度比[(I+I)/I]が0.02未満であることにより特徴づけられている。
ここに開示される技術において、希土類元素(RE)としては特に制限されず、スカンジウム,イットリウムおよびランタノイドの元素のうちから適宜に選択することができる。具体的には、スカンジウム(Sc),イットリウム(Y),ランタン(La),セリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),プロメチウム(Pm),サマリウム(Sm),ユウロピウム(Eu),ガドリニウム(Gd),テルビウム(Tb),ジスプロシウム(Dy),ホルミウム(Ho),エルビウム(Er),ツリウム(Tm),イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)のいずれか1種、または2種以上の組み合わせを考慮することができる。耐プラズマエロージョン性を改善させたり、価格等の観点から、Y,La,Gd,Tb,Eu,Yb,Dy,Ce等が好ましいものとして挙げられる。この希土類元素は、これらのうちのいずれか1種を単独で、または2種以上を組み合わせて含んでいても良い。
また、ハロゲン元素(X)についても特に制限されず、元素周期律表の第17族に属する元素のいずれであっても良い。具体的には、フッ素(F),塩素(Cl),臭素(Br),ヨウ素(I)およびアスタチン(At)等のハロゲン元素のいずれか1種の単独、または2種以上の組み合わせとすることができる。好ましくは、F,Cl,Brとすることができる。ハロゲン元素は、これらのうちのいずれか1種を単独で、または2種以上を組み合わせて含んでいても良い。このような希土類元素オキシハロゲン化物としては、各種の希土類元素のオキシフッ化物、オキシ塩化物およびオキシ臭化物が、代表的なものとして挙げられる。
ここで、希土類元素オキシハロゲン化物は、耐プラズマエロージョン性が高い材料として知られているイットリア(Y)よりも、さらに耐プラズマエロージョン性に優れる。このような希土類元素オキシハロゲン化物は、より多量に含まれることで、極めて良好なプラズマ耐性を示し得るために好ましい。
溶射用材料に含まれる希土類元素酸化物は、溶射によって溶射皮膜中にそのまま希土類元素酸化物として存在し得る。例えば、溶射用材料に含まれる酸化イットリウムは、溶射によって溶射皮膜中にそのまま酸化イットリウムとして存在し得る。この希土類元素酸化物(例えば酸化イットリウム)は、希土類元素オキシハロゲン化物に比べてプラズマ耐性が低い。そのため、この希土類元素酸化物が含まれた部分はプラズマ環境に晒されたときに脆い変質層を生じやすく、変質層は微細な粒子となって脱離しやすい。また、この微細な粒子がパーティクルとして半導体基盤上に堆積する虞がある。したがって、パーティクル源となり得る希土類元素酸化物の含有量は少ないことが好ましい。
また、溶射用材料に含まれる希土類元素のフッ化物は、溶射によって酸化されて、溶射皮膜中に希土類元素酸化物を形成し得る。例えば、溶射用材料に含まれるフッ化イットリウムは、溶射によって酸化されて、溶射皮膜中に酸化イットリウムを形成し得る。このような希土類元素の酸化物は上記のとおりパーティクル源となり得ることから、含有量が少ないことが好ましい。
以上の観点から、ここに開示される技術において、希土類元素オキシハロゲン化物は、溶射用材料のX線回折パターンにおいて、上記の強度比[(I+I)/I]が0.02未満となるように規定される。なお、溶射用材料中に複数の組成の希土類元素オキシハロゲン化物が含まれる場合は、各々の組成物のメインピークのピーク強度の合計をIとすることができる。また、溶射用材料中に複数の組成の希土類元素酸化物が含まれる場合は、各々の組成物のメインピークのピーク強度の合計をIとすることができる。そして、溶射用材料中に複数の組成の希土類元素ハロゲン化物が含まれる場合は、各々の組成物のメインピークのピーク強度の合計をIとすることができる。
上記の強度比[(I+I)/I]は、0.01以下であることが好ましく、0.005以下であるのがより好ましい。このような構成は、例えば、溶射用材料が希土類元素ハロゲン化物を実質的に含まない形態により好ましく実現することができる。またあるいは、溶射用材料が希土類元素酸化物を実質的に含まない形態により好ましく実現することができる。さらには、上記強度比[(I+I)/I]が実質的に0(ゼロ)であるのが特に望ましい。換言すると、溶射用材料は、実質的に希土類元素オキシハロゲン化物のみからなるのが特に望ましい。
なお、希土類元素オキシハロゲン化物、希土類元素酸化物および希土類元素ハロゲン化物のX線回折分析は、例えば、以下の条件に基づき好適に実施することができる。すなわち、具体的には、例えばX線回折分析装置(RIGAKU社製,Ultima IV)を用い、X線源としてCuKα線(電圧20kV、電流10mA)を使用して、走査範囲2θ=10°〜70°、スキャンスピード10°/min、サンプリング幅0.01°で測定を行うことがあげられる。なお、このとき、発散スリットは1°、発散縦制限スリットは10mm、散乱スリットは1/6°、受光スリットは0.15mm、オフセット角度は0°に調整するのが好適である。かかる分析によると、例えば、代表的な希土類元素オキシハロゲン化物、希土類元素酸化物および希土類元素ハロゲン化物のメインピークは、おおよそ下記に示す位置に検出される。これにより、各々の化合物のメインピークのピーク強度をより正確に求めることができる。
<組成: メインピーク検出角度(θ/2θ)>
29.157°
YF 27.881°
YOF 28.064°
28.114°
28.139°
28.137°
また、本明細書において所定の成分を「実質的に含まない」とは、当該成分(ここでは希土類元素の酸化物や希土類元素ハロゲン化物)の含有割合が5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、例えば1質量%以下であること意味する。かかる構成は、例えば、この溶射用材料をX線回折分析したときに、当該成分に基づく回折ピークが検出されないことにより把握することもできる。また、本明細書において、実質的に希土類元素オキシハロゲン化物のみからなるとは、例えば、この溶射用材料をX線回折分析したときに、希土類元素オキシハロゲン化物以外の化合物に基づく回折ピークが検出されないことにより把握することもできる。
また、ここに開示される技術において、ハロゲン系プラズマとは、典型的には、ハロゲン系ガス(ハロゲン化合物ガス)を含むプラズマ発生ガスを用いて発生されるプラズマである。例えば、具体的には、半導体基板の製造に際しドライエッチング工程などで用いられる、SF、CF、CHF、ClF、HF等のフッ素系ガスや、Cl、BCl、HCl等の塩素系ガス、HBr等の臭素系ガスの1種を単独で、または2種以上を混合して用いて発生されるプラズマが典型的なものとして例示される。これらのガスは、アルゴン(Ar)等の不活性ガスとの混合ガスとして用いても良い。
希土類元素オキシハロゲン化物を構成する希土類元素(RE)と酸素(O)とハロゲン元素(X)との割合は特に制限されない。
例えば、希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)は特に制限されない。好適な一例として、モル比(X/RE)は、例えば1であっても良く、1より大きいことが好ましい。具体的には、例えば、1.1以上であるのがより好ましく、例えば1.2以上、さらには1.3以上であることが望ましい。モル比(X/RE)の上限については特に制限されず、例えば、3以下とすることができる。なかでも、希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)は、より好ましくは2以下であり、さらには1.4以下(1.4未満)であるのがより一層好ましい。モル比(X/RE)のより好適な一例として、1.3以上1.39以下(例えば1.32以上1.36以下)とすることが例示される。このように、希土類元素に対するハロゲン元素の割合が高いことで、ハロゲン系プラズマに対する耐性が高くなるために好ましい。
また、希土類元素に対する酸素元素のモル比(O/RE)は特に制限されない。好適な一例として、モル比(O/RE)は1であってもよく、1より小さいことが好ましい。具体的には、例えば、0.9以下であるのがより好ましく、例えば0.88以下、さらには0.86以下であることが望ましい。モル比(O/RE)の下限についても特に制限されず、例えば、0.1以上とすることができる。なかでも、希土類元素に対する酸素元素のモル比(O/RE)のより好適な一例として、0.8を超えて0.85未満(好ましくは0.81以上0.84以下)であるのが好ましい。このように、希土類元素に対する酸素元素の割合が小さいことで、溶射中の酸化による溶射皮膜中での希土類元素の酸化物(例えばY)の形成が抑制されるために好ましい。
すなわち、希土類元素オキシハロゲン化物は、例えば、一般式;REm1m2(例えば、0.1≦m1≦1.2,0.1≦m2≦3)等で表される、REとOとXとの割合が任意の化合物であってよい。好適な一形態として、希土類元素がイットリウム(Y)であり、ハロゲン元素がフッ素(F)であり、希土類元素オキシハロゲン化物がイットリウムオキシフッ化物(Y−O−F)である場合について説明する。かかるイットリウムオキシフッ化物としては、例えば、熱力学的に安定で、イットリウムと酸素とハロゲン元素との比が1:1:1の化学組成がYOFとして表される化合物であって良い。また、熱力学的に比較的安定で、一般式;Y1−n1+2n(式中、nは、例えば、0.12≦n≦0.22を満たす。)で表されるY,Y,Y9,171423等であってよい。とくに、モル比(O/RE)および(X/RE)が上記のより好適な範囲にあるY,Y171423等は、耐プラズマエロージョン特性に優れ、より緻密で高硬度な溶射皮膜を形成し得るために好ましい。
なお、上記のイットリウムオキシフッ化物の例示においては、同一あるいは類似の結晶構造をとり得ることから、イットリウム(Y)の一部または全部を任意の希土類元素に、フッ素(F)の一部または全部を任意のハロゲン元素に置き換えることができる。
このような希土類元素オキシハロゲン化物は、上記のいずれか1種の単一相から構成されていても良いし、いずれか2種以上の相が組み合わされた混相,固溶体,化合物のいずれか又はこれらの混合等により構成されていてもよい。
また、溶射用材料中に複数(例えばa;自然数としたとき、a≧2)の組成の希土類元素オキシハロゲン化物が含まれる場合は、上記のモル比(X/RE)およびモル比(O/RE)については、組成物ごとにモル比(Xa/REa)およびモル比(Oa/REa)を算出するとともに、そのモル比(Xa/REa)およびモル比(Oa/REa)に当該組成物の存在比をそれぞれ乗じて合計することで、希土類元素オキシハロゲン化物全体としてのモル比(X/RE)およびモル比(O/RE)を得ることができる。
以上の希土類元素オキシハロゲン化物についてのモル比(X/RE)およびモル比(O/RE)は、例えば、X線回折分析により同定された希土類元素オキシハロゲン化物の組成に基づいて、算出することができる。
溶射用材料中に含まれる希土類元素オキシハロゲン化物の含有割合は、具体的には、以下の方法で測定し算出することができる。まず、X線回折分析により、溶射用材料中に含まれる物質の結晶構造を特定する。このとき、希土類元素オキシハロゲン化物は、その価数(元素比)まで特定する。
そして、例えば、溶射用材料中に希土類元素オキシハロゲン化物が1種類存在し、かつ残りがYFの場合は、溶射用材料の酸素含有量を例えば酸素・窒素・水素分析装置(例えば、LECO社製,ONH836)によって測定し、得られた酸素濃度から希土類元素オキシハロゲン化物の含有量を定量することができる。
希土類元素オキシハロゲン化物が2種類以上存在したり、又は酸化イットリウム等の酸素を含む化合物が混在したりする場合は、例えば各化合物の割合を検量線法により定量することができる。具体的には、それぞれの化合物の含有割合を変化させたサンプルを数種類準備し、それぞれのサンプルについてX線回折分析を行い、メインピーク強度と各化合物の含有量との関係を示す検量線を作成する。そしてこの検量線を元に、測定したい溶射用材料のXRDの希土類元素オキシハロゲン化物のメインピーク強度から含有量を定量する。
上記の溶射用材料は、典型的には粉末の形態にて提供される。かかる粉末は、より微細な一次粒子が造粒されてなる造粒粒子で構成されていても良いし、主として一次粒子の集合(凝集の形態が含まれても良い。)から構成される粉末であっても良い。溶射効率の観点から、例えば、平均粒子径が30μm程度以下であれば特に制限されず、平均粒子径の下限についても特に制限はない。溶射用材料の平均粒子径は、例えば、50μm以下とすることができ、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下程度とすることができる。平均粒子径の下限についても特に制限はなく、かかる溶射用材料の流動性を考慮した場合に、例えば、5μm以上とすることができ、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、例えば20μm以上とすることができる。
[溶射皮膜]
以上の溶射用材料を溶射することで、溶射皮膜を形成することができる。この溶射皮膜は、基材の表面に備えられていることで、溶射皮膜付部材等として提供される。以下、かかる溶射皮膜付部材と、溶射皮膜とについて説明する。
(基材)
ここに開示される溶射皮膜付部材において、溶射皮膜が形成される基材については特に限定されない。例えば、かかる溶射用材料の溶射に供して所望の耐性を備え得る材料からなる基材であれば、その材質や形状等は特に制限されない。かかる基材を構成する材料としては、例えば、各種の金属,半金属およびそれらの合金を含む金属材料や、各種の無機材料等が挙げられる。具体的には、金属材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄鋼、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、金、銀、ビスマス、マンガン、亜鉛、亜鉛合金等の金属材料;シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge)等のIV族半導体、セレン化亜鉛(ZnSe),硫化カドミウム(CdS),酸化亜鉛(ZnO)等のII-VI族化合物半導体、ガリウムヒ素(GaAs),リン化インジウム(InP),窒化ガリウム(GaN)等のIII-V族化合物半導体、炭化ケイ素(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)等のIV族化合物半導体、銅・インジウム・セレン(CuInSe)などカルコパイライト系半導体等の半金属材料;などが例示される。無機材料としては、フッ化カルシウム(CaF),石英(SiO)の基板材料,アルミナ(Al),ジルコニア(ZrO)等の酸化物セラミックス、窒化ケイ素(Si),窒化ホウ素(BN),窒化チタン(TiN)等の窒化物セラミックス、炭化ケイ素(SiC),タングステンカーバイド(WC)等の炭化物系セラミックス等が例示される。これらの材料は、いずれか1種が基材を構成していてもよく、2種以上が複合化されて基材を構成していてもよい。なかでも、汎用されている金属材料のうち比較的熱膨張係数の大きい、各種SUS材(いわゆるステンレス鋼であり得る。)等に代表される鉄鋼、インコネル等に代表される耐熱合金、インバー,コバール等に代表される低膨張合金、ハステロイ等に代表される耐食合金、軽量構造材等として有用な1000シリーズ〜7000シリーズアルミニウム合金等に代表されるアルミニウム合金等からなる基材が好適例として挙げられる。かかる基材は、例えば、半導体デバイス製造装置を構成する部材であって、反応性の高い酸素ガスプラズマやハロゲンガスプラズマに晒される部材であってよい。なお、例えば、上述の炭化ケイ素(SiC)等は、便宜上、化合物半導体や無機材料等として異なるカテゴリーに分類され得るが、同一の材料である。
(溶射皮膜)
ここに開示される溶射皮膜は、上記の溶射用材料が、例えば任意の基材の表面に溶射されることにより形成される。したがって、かかる溶射皮膜は、例えば、構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とする皮膜として構成される。
ここで「主成分」とは、溶射皮膜を構成する構成成分のうち、最も含有量が多い成分であることを意味している。具体的には、例えば、当該成分が溶射皮膜全体の50質量%以上を占めることを意味し、好ましくは75質量%以上、例えば80質量%以上を占めるものであってよい。かかる希土類元素オキシハロゲン化物については、上記の溶射用材料におけるのと同様であるため詳細な説明は省略する。
詳細な機構は明らかではないが、希土類元素オキシハロゲン化物は、耐プラズマエロージョン性、特にハロゲン系プラズマに対する耐エロージョン特性に優れる。したがって、希土類元素オキシハロゲン化物を主成分とする溶射皮膜は、極めて耐プラズマエロージョン性に優れたものであり得る。
そしてこの溶射皮膜は、必ずしもこれに限定されるものではないが、X線回折パターンにおける、希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.45以下であることにより特徴づけられる。かかるピーク強度ICA,ICBおよびICCについては、溶射用材料についてのピーク強度I,IおよびIと同様に考慮することができる。この溶射皮膜についてのX線回折強度比[(ICB+ICC)/ICA]は、0.3以下であるのが好ましく、0.1以下であるのがより好ましく、0.05以下であるのがさらに好ましく、例えば実質的に0(ゼロ)であるのが特に望ましい。換言すると、溶射皮膜は、実質的に希土類元素オキシハロゲン化物のみからなるのが特に望ましい。
また、この溶射皮膜は、より好ましい態様として、上記の希土類元素酸化物を実質的に含まないものとしても提供される。溶射皮膜に含まれる希土類元素酸化物は、典型的には、溶射用材料に含まれる希土類元素酸化物が溶射皮膜中にそのまま含まれているものと、溶射用材料に含まれる希土類元素ハロゲン化物が溶射により酸化されて希土類元素酸化物となったものとが考えられる。この希土類元素酸化物が溶射皮膜に実質的に含まれないことで、かかる溶射皮膜を形成するのに用いた溶射用材料についても、希土類元素酸化物および希土類元素ハロゲン化物が実質的に含まれていなかったと考えることができる。そして、希土類元素酸化物は比較的硬質であるものの脆いため、プラズマ環境に晒された場合にパーティクルを発生し得る。したがって、ここに開示される溶射皮膜は、この希土類元素酸化物も実質的に含まないことから、さらに耐プラズマエロージョン性に優れたものとなり得る。
なお、半導体デバイスの製造のためのドライエッチング装置においては、低パーティクル化が要求されている。このパーティクル発生要因としては、真空チャンバー内に付着した反応生成物の剥がれのほか、ハロゲンガスプラズマや酸素ガスプラズマを用いることによるチャンバーの劣化が挙げられる。パーティクルは粒径が大きいほど問題であり、加工精度が精密化した近年では、粒径が0.2μm以下(0.2μm未満、例えば0.1μm以下)のパーティクル発生も厳しく制限する必要が生じている。本発明者らの検討によると、ドライエッチング環境下で溶射皮膜から発生するパーティクルの数や大きさは、溶射皮膜の組成に大きく影響されることが確認されている。例えば、これまでの溶射皮膜によると、0.2μm以上のパーティクルが発生し得たが、ここに開示される溶射用材料を用い、適切な溶射を行うことで、耐プラズマエロージョン性に優れた溶射皮膜を得ることができる。典型的には、例えば、ここに開示される溶射皮膜によると、現在のドライエッチング環境下で、約0.2μm以上の粗大なパーティクルは発生要因となる変質層は形成されない。ここに開示される溶射皮膜がドライエッチング環境下で腐食される場合、発生するパーティクルは、約0.2μm以下(典型的には0.1μm以下)の大きさの粒子状の変質層により構成されるからである。したがって、ここに開示される溶射皮膜は、例えば、約0.2μm以下(例えば0.1μm以下、典型的には0.06μm以下、好ましくは19nm以下、さらに好ましくは5nm以下、最も好ましくは1nm以下)のパーティクルの発生が抑制されている。例えば、これらのパーティクルの発生数が実質的にゼロに抑えられている。
かかる溶射皮膜の耐プラズマエロージョン性については、例えば、この溶射皮膜を所定のプラズマ環境に晒した場合に発生するパーティクルの数により評価することができる。ドライエッチングにおいては、真空容器(チャンバー)内にエッチングガスを導入し、このエッチングガスを高周波やマイクロ波等により励起してプラズマを発生させ、ラジカルおよびイオンを生成する。このプラズマにより生成されたラジカル、イオンと、被エッチング物(ウェハ)とを反応させ、反応生成物を揮発性ガスとして真空排気系により外部に排気することにより、被エッチング物に対して微細加工を行うことができる。例えば、実際の平行平板型RIE(反応性イオンエッチング)装置においては、エッチング室(チャンバー)に一対の平行平板な電極を設置する。そして一方の電極に高周波を印加してプラズマを発生させ、この電極上にウェハを置いてエッチングを行う。プラズマは、10mTorr以上200mTorr以下程度の圧力帯域で発生される。エッチングガスとしては、上記のとおり、各種のハロゲンガスや酸素ガス、不活性ガスを考慮することができる。溶射皮膜の耐プラズマエロージョン性を評価する場合は、ハロゲンガスと酸素ガスとを含む混合ガス(例えば、アルゴンと四フッ化炭素と酸素とを所定の体積比で含む混合ガス)をエッチングガスとすることが好適である。エッチングガスの流量は、例えば、0.1L/分以上2L/分以下程度とすることが好ましい。
そしてこのようなプラズマ環境下に溶射皮膜を所定時間(例えば、半導体基板(シリコンウェハ等)を2000枚処理する時間)置いたのちに発生するパーティクルの数を計測することで、溶射皮膜の耐プラズマエロージョン性を好適に評価することができる。ここでパーティクルは、高度な品質管理を実現するために、例えば、直径0.06μm以上のものを計測の対象とすることができるが、要求される品質に応じて適宜変更することも可能である。そして例えば、このような大きさのパーティクルが、半導体基板の単位面積当たりにいくつ堆積したかを算出し、パーティクル発生数(個/cm)を求めること等で、耐プラズマエロージョン性を評価することができる。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様では、かかるパーティクル発生数が、4個/cm以下程度に抑えられるものとして認識することができる。
例えば、下記で規定される条件により発生されるパーティクル発生数を4個/cm以下とすることができる。このような構成により、耐プラズマエロージョン性が確実に向上された溶射皮膜が実現されるために好ましい。
[パーティクル発生数カウント条件]
平行平板型プラズマエッチング装置の、上部電極に70mm×50mmの溶射皮膜を設置する。また、ステージに直径300mmのプラズマ処理対象の基板を設置する。そして、まず、溶射皮膜の長期使用後の状態を模すために、2000枚の基板(シリコンウェハ)に対してプラズマドライエッチング処理を施す、延べ100時間のダミーランを行う。プラズマ発生条件は、圧力:13.3Pa(100mTorr),エッチングガス:アルゴン,四フッ化炭素および酸素の混合ガス、印加電圧:13.56MHz,4000Wとする。その後、ステージに計測モニター用の基板(シリコンウェハ)を設置し、上記と同じ条件で30秒間プラズマを発生させる。そして、上記のプラズマ処理前後で、計測モニター用の基板の上に堆積した直径0.06μm以上のパーティクルの数をカウントする。このとき、カウントしたパーティクルの数を基板の面積で除した値をパーティクル発生数(個/cm)として評価に用いてもよい。なお、このとき、エッチングガスはアルゴンと四フッ化炭素と酸素とを含む混合ガスとする。また、エッチングガスの流量は、例えば、1L/分とする。
(皮膜形成方法)
なお、上記の溶射皮膜は、ここに開示される溶射用材料を公知の溶射方法に基づく溶射装置に供することで形成することができる。この溶射用材料を好適に溶射する溶射方法は特に制限されない。例えば、好適には、プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、フレーム溶射法、爆発溶射法、エアロゾルデポジション法等の溶射方法を採用することが例示される。溶射皮膜の特性は、溶射方法およびその溶射条件にある程度依存することがあり得る。しかしながら、いずれの溶射方法および溶射条件を採用した場合であっても、ここに開示される溶射用材料を用いることで、その他の溶射材料を用いた場合と比較して、耐プラズマエロージョン性に優れた溶射皮膜を形成することが可能となる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[実施形態1]
No.1の溶射用材料として、半導体デバイス製造装置内の部材の保護皮膜として一般に用いられている酸化イットリウムの粉末を用意した。また、No.2の溶射用材料として、希土類元素ハロゲン化物であるフッ化イットリウムの粉末を用意した。そして、粉末状のイットリウム含有化合物およびフッ素含有化合物を適宜混合して焼成することで、No.3〜8の粉末状の溶射用材料を得た。これらの溶射用材料の物性を調べ、下記の表1に示した。なお、表1には、参考のために、特許文献1に開示された溶射用材料のうち、YOFの含有割合が比較的多い溶射用材料(特許文献1の実施例10および11)についての情報を参考例AおよびBとして併せて示した。
Figure 0006722005
表1中の「溶射材料のXRD検出相」の欄は、各溶射用材料についてX線回折分析をした結果、検出された結晶相を示している。同欄中、“Y2O3”は酸化イットリウムからなる相が、“YF3”はフッ化イットリウムからなる相が、“Y5O4F7”は化学組成がYで表されるイットリウムオキシフッ化物からなる相が、“Y6O5F8”は化学組成がYで表されるイットリウムオキシフッ化物からなる相が、“Y7O6F9”は化学組成がYで表されるイットリウムオキシフッ化物からなる相が、“YOF”は化学組成がYOF(Y)で表されるイットリウムオキシフッ化物からなる相が、それぞれ検出されたことを示している。
なお、かかる分析には、X線回折分析装置(RIGAKU社製,Ultima IV)を用い、X線源としてCuKα線(電圧20kV、電流10mA)を用い、走査範囲を2θ=10°〜70°とし、スキャンスピード10°/min、サンプリング幅0.01°の条件にて測定を行った。なお、発散スリットは1°、発散縦制限スリットは10mm、散乱スリットは1/6°、受光スリットは0.15mm、オフセット角度は0°に調整した。参考のために、No.5およびNo.8の溶射用材料について得られたX線回折スペクトルを図1(a)および(b)に順に示した。
表1中の「X線回折メインピーク相対強度」の欄は、各溶射用材料について上記粉末X線回折分析の結果得られた回折パターンにおいて、検出された各結晶相のメインピークの強度を、最も高いメインピーク強度を100とした相対値として示した結果である。
表1中の「強度比(I+I)/I」の欄は、上記で検出された各結晶相のメインピークの相対強度に基づき、希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度Iの合計に対する、希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度Iと希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度Iとの合計、との比を算出した結果を示している。
表1中の「酸素」および「フッ素」の欄は、それぞれ、各溶射用材料に含まれる酸素量およびフッ素量を測定した結果を示している。これらの酸素量は、酸素・窒素・水素分析装置(LECO社製,ONH836)を、フッ素量は、自動フッ素イオン測定装置(HORIBA製,FLIA−101形)を用いて測定された値である。
表1中の「各結晶相の割合」の欄は、各溶射用材料について検出された4種の結晶相の総量を100質量%としたときの、各結晶相の割合を、X線回折メインピーク相対強度と、酸素量および窒素量とから算出した結果を示している。
表1中の「平均粒子径」の欄は、各溶射用材料の平均粒子径を示している。平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製,LA−300)を用いて測定される、体積基準のD50%の値である。
(評価)
XRD分析の結果から明らかなように、No.5〜8の溶射用材料として、イットリウムオキシフッ化物の単相が得られたことがわかった。また、表1の強度比の結果から、No.5〜8の溶射用材料として、ここに開示される溶射用材料が得られたことが確認された。
なお、表1の各結晶相の割合に示されるように、上記強度比が0.02未満となるような溶射材料は、実質的に、XRDパターンにおいて、希土類元素オキシハロゲン化物のみが検出されている材料であることがわかる。
[実施形態2]
これらNo.1〜8の溶射用材料をプラズマ溶射法により溶射することで、No.1〜8の溶射皮膜を備える溶射皮膜付部材を作製した。溶射条件は、以下の通りとした。
すなわち、まず、被溶射材である基材としては、アルミニウム合金(Al6061)からなる板材(70mm×50mm×2.3mm)を用意し、褐色アルミナ研削材(A#40)によるブラスト処理を施して用いた。プラズマ溶射には、市販のプラズマ溶射装置(Praxair Surface Technologies社製,SG−100)を用いて行った。プラズマ発生条件は、プラズマ作動ガスとしてアルゴンガス50psi(0.34MPa)とヘリウムガス50psi(0.34MPa)とを用い、電圧37.0V,電流900Aの条件でプラズマを発生させた。なお、溶射装置への溶射用材料の供給には、粉末供給機(Praxair Surface Technologies社製,Model1264型)を用い、溶射用材料を溶射装置に20g/minの速度で供給し、厚さ200μmの溶射皮膜を形成した。なお、溶射ガンの移動速度は24m/min、溶射距離は90mmとした。
得られた溶射皮膜の物性を調べ、下記の表2に示した。なお、溶射皮膜をハロゲン系プラズマに晒したときのパーティクルの発生数は、以下の異なる3とおりの手法で調べ、それらの結果を表2に示した。また、表2に示されたデータの項目欄のうち、表1と共通のものは、表1と同じ内容を溶射皮膜について調べた結果を示している。
Figure 0006722005
なお、表2中の「溶射材料の結晶相」の欄は、実施形態1で算出した各結晶相の割合およびXRD分析結果をもとに、各溶射用材料を構成する結晶相とその凡その割合について示している。
表2中の「溶射皮膜のXRD検出相」の欄は、各溶射皮膜についてX線回折分析をした結果、検出された結晶相を示している。
表2中の「強度比(ICB+ICC)/ICA」の欄は、上記で検出された各結晶相のメインピークの相対強度に基づき、希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAの合計に対する、希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、との比を算出した結果を示している。
また表2中の「気孔率」の欄は、各溶射皮膜の気孔率の測定結果を示している。気孔率の測定は以下のようにして行った。すなわち、溶射皮膜を基材の表面に直交する面で切断し、得られた断面を樹脂埋め研磨した後、デジタルマイクロスコープ(オムロン株式会社製、VC−7700)を用いてその断面画像を撮影した。そして、この画像を、画像解析ソフト(株式会社日本ローパー製、Image Pro)を用いて解析することにより、断面画像中の気孔部分の面積を特定し、かかる気孔部分の面積が全断面に占める割合を算出することにより求めた。
表2中の「ビッカース硬度」の欄は、各溶射皮膜のビッカース硬度の測定結果を示している。ビッカース硬度の測定は、JIS R1610:2003に準拠して、硬微小硬度測定器(株式会社島津製作所製、HMV−1)を用い、対面角136°のダイヤモンド圧子により試験力1.96Nを負荷したときに求められるビッカース硬さ(Hv0.2)である。
表2中の「パーティクル数〔1〕」の欄は、以下の条件で各溶射皮膜をプラズマに曝したときに発生したパーティクル数を評価した結果を示している。すなわち、まず、上記で作製した溶射皮膜付部材の溶射皮膜の表面を平均粒子径0.06μmのコロイダルシリカを用いて鏡面研磨した。そしてこの溶射皮膜付部材を、平行平板型の半導体デバイス製造装置のチャンバー内の上部電極にあたる部材に、研磨面が露出するように設置した。そして、チャンバー内のステージに直径300mmのシリコンウェハを設置し、2000枚のシリコンウェハに対してプラズマドライエッチングを施すダミーランを100時間実施した。エッチング処理におけるプラズマは、チャンバー内の圧力を13.3Paに保ち、アルゴンと四フッ化炭素と酸素を所定の割合で含むエッチングガスを1L/分の流量で供給しながら、13.56MHzで4000Wの高周波電力を印加することで発生させた。その後、チャンバー内のステージに、パーティクルカウント用の直径300mmのシリコンウェハを設置し、上記と同様の条件でプラズマを30秒間発生させたときに、溶射皮膜からパーティクルカウント用のシリコンウェハ上に堆積したパーティクルの数をカウントした。パーティクル数は、ケーエルエー・テンコール(KLA−Tencor)社製のパーティクルカウンター(ウェーハ表面検査装置、SurfscanSP2)を用い、直径0.06μm(60nm)以上のパーティクルの総数を測定した。パーティクル総数のカウントに際しては、30秒間のプラズマエッチングの前後でシリコンウェハ上のパーティクル数をカウントし、その差を、耐久後(ダミーラン後)の溶射皮膜から発生してシリコンウェハ上に堆積したパーティクル数(総数)とした。また、パーティクル発生数の評価は、100%イットリアからなるNo.1の溶射皮膜についてのパーティクル数を100(基準)としたときの相対値として算出することで評価した。
パーティクル数〔1〕の欄内に記載された「A」は、パーティクル数(相対値)が1未満の場合を示し、「B」は、該パーティクル数が1以上5未満の場合を示し、「C」は該パーティクル数が5以上15未満の場合を示し、「D」は該パーティクル数が15以上100未満の場合を示し、「E」は該パーティクル数が100以上の場合を示している。
なお、参考AおよびBの材料から得られた溶射皮膜についてのパーティクル数は、特許文献1に記載のプラズマエッチング条件でシリコンウェハの表面に付着した、粒径が約0.2μm以上のパーティクルを計測した値を引用したものである。
表2中の「パーティクル数〔2〕」の欄は、各溶射皮膜に対し、上記と同じ条件でプラズマエッチングを行ったときのパーティクル発生数を、KLA−Tencor製のウェーハ表面検査装置、Surfscan SP2に換えて、Surfscan SP5を用いて測定したときの評価結果を示している。Surfscan SP5は、直径19nm以上のパーティクルの検出が可能であり、パーティクル数〔2〕は、シリコンウェハ上に堆積しているより微細なパーティクルまでを計測対象としたときの結果を示している。パーティクル総数のカウントに際しては、30秒間のプラズマエッチングの前後でシリコンウェハ上のパーティクル数をカウントし、その差を、耐久後の溶射皮膜から発生してシリコンウェハ上に堆積したパーティクル数(総数)とした。また、パーティクル数の評価は、100%イットリアからなるNo.1の溶射皮膜についての単位面積当たりのパーティクル発生数を100(基準)としたときの相対値として算出することで評価した。
パーティクル数〔2〕の欄内に記載された「A」は、パーティクル数(相対値)が1未満の場合を示し、「B」は、該パーティクル数が1以上5未満の場合を示し、「C」は該パーティクル数が5以上15未満の場合を示し、「D」は該パーティクルの数が15以上100未満の場合を示し、「E」は該パーティクルの数が100以上の場合を示している。
表2中の「パーティクル数〔3〕」の欄は、各溶射皮膜に対し以下の条件でプラズマを照射したのち、さらに超音波を印加して、溶射皮膜からパーティクルを積極的に遊離させたときのパーティクル数を計測した結果を示している。
具体的には、本例では、用意した溶射皮膜付部材の皮膜表面を鏡面研磨したのち、溶射皮膜の四隅をマスキングテープでマスクすることで、10mm×10mmの溶射皮膜が露出した試験片を用意した。そしてこの試験片を半導体デバイス製造装置の上部電極に設置し、チャンバー内の圧力を13.3Paに保ちながら、四フッ化炭素と酸素とを所定の割合で含むエッチングガスを1L/分の流量で供給し、13.56MHzで700Wの高周波電力をトータルで1時間印加することで、試験片をプラズマに暴露させた。その後、チャンバー内にAirを供給し、プラズマ暴露後の試験片の溶射皮膜に対して、周波数
22Hz、出力400Wの超音波を30秒間印加することで溶射皮膜からパーティクルをたたき出し、Air中のパーティクルをカウンターにて計測した。パーティクルの測定には、パーティクルカウンター(PMS社製、LASAIR)を用い、直径100nm以上のパーティクルの総数を測定した。その結果を、100%イットリアからなるNo.1の溶射皮膜についてのパーティクル発生数を100(基準)としたときの相対値として算出することで評価した。
パーティクル数〔3〕の欄内に記載された「A」は、パーティクル数(相対値)が10未満の場合を示し、「B」は、該パーティクル数が10以上25未満の場合を示し、「C」は該パーティクル数が25以上50未満の場合を示し、「D」は該パーティクルの数が50以上90未満の場合を示し、「E」は該パーティクルの数が90以上の場合を示している。
(評価)
表2のNo.1の結果から明らかなように、Yのみからなる溶射用材料を溶射して形成される溶射膜は、本質的にYのみから構成され、溶射においてYの更なる酸化分解等は見られないことがわかった。
また、No.2〜5の結果から、YFのみ、またはYOFのみ、あるいはこれらの混合相を含む溶射用材料を溶射して形成される溶射膜は、YFやYOFの一部がYに酸化されて、Yを含むことがわかった。特に、No.3および4の結果では、溶射材料に含まれていた10質量%のYFが全てYに酸化されており、溶射用材料にYFとYOFが混在する場合は、YOFの方が酸化安定性が高くYFの酸化が優先される傾向にあることがわかった。
そして、No.5〜8の結果によると、溶射用材料中のイットリウムオキシフッ化物のうちでも、YOFよりも酸素含有割合の少ないY,YおよびY等は、溶射による酸化で、まずはより安定なYOF相へと変化し、Yが直接形成されることはないことがわかった。また、このようなNo.6〜8の溶射用材料によると、本実施形態のような一般的な大気圧プラズマ溶射方法において溶射皮膜中にYは形成されないことがわかった。すなわち、YOFよりも酸素含有割合の少ないイットリウムオキシフッ化物を溶射用材料として用いることで、溶射皮膜中のYの形成を抑制できることが確認できた。
パーティクル数〔1〕について
溶射皮膜の特性については、No.1のYのみから構成される溶射皮膜の場合、プラズマ環境下でのパーティクル発生数が(E)100(基準)であり、シリコンウェハの単位面積当たりのパーティクル数は凡そ500〜1000個/枚程度にまで達した。一般に、イットリア系の溶射皮膜は、アルミナ系の溶射皮膜等と比べて耐プラズマエロージョン性に優れることが知られているが、この実施形態においては、Yのみからなる溶射皮膜について最もパーティクル数が多く、全ての溶射皮膜中で最もプラズマ耐性に劣る結果であった。
また、No.2の溶射皮膜の場合、プラズマ環境下でのパーティクル発生数が(D)15以上100未満となった。No.2の溶射皮膜は、溶射材料中のYFが酸化されたYの割合が比較的多い。そのため、フッ素プラズマに晒されたときに変質が起こりやすく、脆い変質層を生成するため、次のドライエッチングによりプラズマ環境に晒されると剥がれ落ちてパーティクルとなり半導体基盤上に堆積しやすい。したがって、溶射皮膜中にYが含まれることで、耐プラズマエロージョン性が低くなることが確認できた。
なお、計測されたパーティクルのうち、凡そ90%以上が直径0.06μm以上0.2μm未満の範囲のこれまで管理されていなかった極微小なパーティクルであった。
一方で、No.3〜5の溶射皮膜はいずれもYFを含んでおらず、YOFとYとから構成されている。これらの溶射皮膜のプラズマ環境下でのパーティクル発生数は、No.3についてはNo.2と同程度であったが、No.4および5についてはY量の減少と共に(C)15未満へと低減されることがわかった。このことから、溶射皮膜に存在するYOFはプラズマに対して極めて安定であり、YOFがY変質層のプラズマによる剥離を抑制する効果を発揮しているものと考えられる。
なお、参考例AおよびBの溶射用材料を溶射して得られる溶射皮膜には、YOFと共にYが含まれると推察される。そして参考例AおよびBのパーティクル数の比較から、溶射皮膜中のYは、たとえ微量に増加するだけでも耐プラズマエロージョン性を大きく損ねることが理解される。
そして、No.6〜8に示されるように、YFもYも含まず、実質的にイットリウムオキシフッ化物のみからなる溶射皮膜については、パーティクル数が(A)〜(B)5未満と、極めて少量に抑えられることが確認できた。これらの溶射皮膜は、気孔率とビッカース硬度とがバランス良く良好な値を示し、良質な溶射皮膜が形成されているといえる。これらのパーティクルについても、ほとんど全てが直径0.06μm以上0.2μm未満の極微小なものであることが確認できた。
なお、溶射用材料としてYおよびYを用いて形成されたNo.9および10の溶射皮膜は、パーティクル数が(A)1未満と、溶射用材料としてYを用いて形成されたNo.11の溶射用被膜よりも、さらに耐プラズマエロージョン特性に優れていることがわかった。気孔率の観点からは、No.11の溶射用被膜がさらに好ましいといえる。
なお、No.1、3〜5の溶射皮膜について、Yのメインピーク強度を確認すると、Yの割合が減少することで、気孔率は高くなりビッカース硬度が低下する傾向が見られる。しかしながら、No.5の溶射皮膜については、気孔率およびビッカース硬度の値が著しく改善されている。これは、溶射皮膜を構成する結晶相の構成のみならず、溶射用材料を構成する結晶相の影響を受けているものと考えられる。
そこで、溶射用材料を構成する結晶相について検討したところ、以下のことを知見した。すなわち、溶射用材料に含まれる酸化イットリウムは溶射皮膜にそのまま含まれるため、溶射用材料に酸化イットリウムが含まれるのは好ましくない(No.1参照)。また、溶射用材料にフッ化イットリウムが含まれると、イットリウムオキシフッ化物よりもプラズマ環境下でのパーティクルの発生数が多くなるために好ましくない(No.2〜4参照)。酸化イットリウムとフッ化イットリウムとでは、酸化イットリウムの方が溶射用材料に適していない(上記No.1〜2、参考例AおよびB参照)。一方、溶射用材料にイットリウムオキシフッ化物が含まれると、溶射皮膜の気孔率およびビッカース硬度等の物理特性に加え、耐プラズマエロージョン特性が良好になるために好ましい(No.3〜8参照)。
以上のことから、溶射用材料においては、希土類元素オキシハロゲン化物(この場合、イットリウムオキシフッ化物)に対する、希土類元素酸化物(この場合、酸化イットリウム)及び希土類元素フッ化物(この場合、フッ化イットリウム)の割合が少ない方が、耐プラズマエロージョン特性に加えて、気孔率およびビッカース硬度ともに良好な溶射皮膜が形成できるといえる。これらの結晶相の相対強度比、すなわち強度比(I+I)/Iは、例えば、0.02未満に抑えることが好ましいといえる。また、このような溶射用材料を用いて形成される溶射皮膜についての強度比(ICB+ICC)/ICAは、例えば0.45以下であることが好ましいといえる。
パーティクル数〔2〕について
表2に示されるように、パーティクル数〔2〕の評価結果は、パーティクル数〔1〕の評価結果とよく一致することがわかった。このように、ここに開示される溶射用材料を溶射することで形成される溶射皮膜については、YのみからなるNo.1の溶射皮膜と比較して、相対的にパーティクルが大幅に減少し、特に、19〜60nmの微細なパーティクルの発生も少量に抑制されていることがわかった。19nm以上のパーティクルとは、現段階で計測可能な最も小さいパーティクルの大きさであり、このような微細なパーティクルがほぼゼロに近いという結果であった。これにより、ここに開示される溶射用材料の溶射物である溶射皮膜は、パーティクルの検出下限の精度を高めても、依然として高い耐プラズマエロージョン性を示すことが確認された。
パーティクル数〔3〕について
表2に示されるように、パーティクル数〔3〕の評価結果は、パーティクル数〔1〕〔2〕の評価結果とよく一致することがわかった。しかしながら、パーティクル数〔3〕で検出するパーティクルは100nm以上の比較的粗大な粒子であり、A〜Dの臨界値もEに近い評価となるように区分けされている。つまり、パーティクル数〔3〕によると、超音波の衝撃によってより粗大なパーティクルをより多く発生させ、検出することができる。このことから、パーティクル数〔3〕によると、ハロゲン系プラズマの照射により直接発生されたパーティクルに加えて、実際には発生していないがその後にパーティクルとなり得るパーティクル発生源をも、評価できるといえる。このパーティクル発生源とは、ハロゲン系プラズマの照射により変質した溶射皮膜(変質層)であって、その後のプラズマエッチングによりパーティクルとなり得る部分であると考えられる。このことから、ハロゲン系プラズマに晒された溶射皮膜に超音波を照射することで、溶射皮膜の耐プラズマエロージョン性をより精度よく評価することができるといえる。また、パーティクル数〔3〕によると、例えば、シリコンウェハを2000枚よりも大量に処理したときの、溶射皮膜に由来するパーティクル発生状況を予測することができるといえる。そして、表2の結果から、例えば、No.6〜8の溶射皮膜については、ハロゲン系プラズマに晒されたときのパーティクルの発生がより高度に抑制されていることが確認できた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (10)

  1. 構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を含む溶射用材料であって、
    当該溶射用材料のX線回折パターンにおける、
    前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度Iに対する、
    希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度Iと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度Iとの合計、の強度比[(I+I)/I]が0.02未満であ
    前記希土類元素オキシハロゲン化物において、
    前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上であり、
    前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である、
    溶射用材料。
  2. 前記希土類元素ハロゲン化物を実質的に含まない、請求項1に記載の溶射用材料。
  3. 前記希土類元素酸化物を実質的に含まない、請求項1または2に記載の溶射用材料。
  4. 前記希土類元素オキシハロゲン化物において、
    前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.3以上1.39以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶射用材料。
  5. 前記希土類元素がイットリウムであり、前記ハロゲン元素がフッ素であり、前記希土類元素オキシハロゲン化物がイットリウムオキシフッ化物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の溶射用材料。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の溶射用材料を基材の表面に溶射して、溶射皮膜を形成する方法
  7. 構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
    X線回折パターンにおける、
    前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、
    希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.45以下であ
    前記希土類元素オキシハロゲン化物として、
    前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上である希土類元素オキシハロゲン化物を含む、溶射皮膜。
  8. 前記強度比[(I CB +I CC )/I CA ]が0.05以下である、請求項7に記載の溶射皮膜。
  9. 前記希土類元素酸化物を実質的に含まない、請求項またはに記載の溶射皮膜。
  10. 基材の表面に、請求項のいずれか1項に記載の溶射皮膜が備えられている、溶射皮膜付部材。
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