以下、本発明の実施の形態による減衰力調整式緩衝器を、車両用の減衰力調整式油圧緩衝器に適用した場合を例に挙げ、図1ないし図4に従って詳細に説明する。
減衰力調整式油圧緩衝器1(以下、緩衝器1という)の外殻をなす有底筒状の外筒2は、下端側が溶接手段等を用いて固着されたボトムキャップ3により閉塞され、上端側は、径方向内側に屈曲されたかしめ部2Aとなっている。かしめ部2Aと内筒4との間には、後述のロッドガイド9とシール部材10が設けられている。一方、外筒2の下部側には、後述する中間筒12の接続口12Cと同心円状に開口2Bが形成され、該開口2Bと対向して後述の電磁式減衰力調整装置17が取付けられている。また、ボトムキャップ3には、例えば車両の車輪側に取付けられる取付アイ3Aが設けられている。
外筒2内には、該外筒2と同軸に内筒4が設けられている。この内筒4は、外筒2と共にシリンダを構成している。内筒4は、下端側が後述のボトムバルブ13に嵌合して取付けられ、上端側はロッドガイド9に嵌合して取付けられている。内筒4内には、作動流体としての油液が封入されている。作動流体としては、油液に限らず、例えば添加剤を混在させた水等でもよい。
シリンダを構成する内筒4と外筒2との間には、環状のリザーバ室Aが形成され、このリザーバ室Aは、後述する減衰力調整バルブ18が設けられる流路の一部を構成するもので、その内部には、油液と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。また、内筒4の長さ方向(軸方向)の途中位置には、ロッド側室Bを環状室Dに常時連通させる油穴4Aが径方向に穿設されている。
ピストン5は、内筒4内に摺動可能に挿嵌されている。ピストン5は、内筒4内をロッド側室Bとボトム側室Cとに画成している。ピストン5には、ロッド側室Bとボトム側室Cとを連通可能とする油路5A,5Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
ここで、ピストン5の下端面には、伸長側のディスクバルブ6が設けられている。この伸長側のディスクバルブ6は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに、ロッド側室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を各油路5Aを介してボトム側室C側にリリーフする。このリリーフ設定圧は、後述の電磁式減衰力調整装置17がハードに設定されたときの開弁圧より高い値に設定される。
ピストン5の上端面には、縮み側の逆止弁7が設けられている。逆止弁7は、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときに閉弁している。逆止弁7は、ボトム側室C内の油液がロッド側室Bに向けて各油路5B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止するものである。この逆止弁7の開弁圧は、電磁式減衰力調整装置17がソフトに設定されたときの開弁圧より低い値に設定され、実質的に減衰力を発生しない。この実質的に減衰力を発生しないとは、ピストン5やシール部材10のフリクション以下の力であり、車両の走行動作に対し影響しないものである。
内筒4内を軸方向に延びるピストンロッド8は、下端側が内筒4内に挿入され、ナット8A等によりピストン5に固着されている。また、ピストンロッド8の上端側は、ロッドガイド9を介して外筒2および内筒4の外部に突出している。なお、ピストンロッド8の下端をさらに延ばしてボトム部(例えば、ボトムキャップ3)側から外向きに突出させることにより、所謂、両ロッドとして構成してもよい。
ロッドガイド9は、内筒4の上端側に配置された段付円筒体として構成されている。ロッドガイド9は、内筒4の上側部分を外筒2の軸中心位置に位置決めすると共に、その内周側でピストンロッド8を軸方向に摺動可能にガイドしている。また、ロッドガイド9と外筒2のかしめ部2Aとの間には、環状のシール部材10が設けられている。シール部材10は、内径側にピストンロッド8が挿通される金属性の環状板にゴム等の弾性材料を焼き付けることにより形成されている。シール部材10は、内周部位がピストンロッド8の外周面に摺接することにより、ピストンロッド8との間をシールするものである。
また、シール部材10は、下面側にロッドガイド9と接触するように延びるチェック弁としてのリップシール10Aが形成されている。リップシール10Aは、油溜め室11とリザーバ室Aとの間に配置され、油溜め室11内の油液等がロッドガイド9の戻し通路9Aを介してリザーバ室A側に向け流通するのを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
中間筒12は、外筒2と内筒4との間に配設されている。中間筒12は、例えば、内筒4の外周側に上,下の筒状シール12A,12Bを介して取付けられている。中間筒12は、その内部に内筒4の外周側を全周に亘って取囲む円筒状の環状室Dが形成され、環状室Dは、後述する減衰力調整バルブ18が設けられる流路の一部を構成するもので、リザーバ室Aと独立した室となっている。環状室Dは、内筒4に形成した径方向の油穴4Aによりロッド側室Bと常時連通している。また、中間筒12の下端側には、減衰力調整バルブ18の筒形ホルダ20が取付けられる接続口12Cが設けられている。
ボトムバルブ13は、内筒4の下端側に位置してボトムキャップ3と内筒4との間に設けられている。ボトムバルブ13は、リザーバ室Aとボトム側室Cとを画成するバルブボディ14と、該バルブボディ14の下面側に設けられた縮小側のディスクバルブ15と、バルブボディ14の上面側に設けられた伸び側の逆止弁16とにより構成されている。バルブボディ14には、リザーバ室Aとボトム側室Cとの間で油液を流通させるための油路14A,14Bがそれぞれ周方向に間隔をもって形成されている。
縮小側のディスクバルブ15は、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに、ボトム側室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を各油路14Aを介してリザーバ室A側にリリーフする。このリリーフ設定圧は、電磁式減衰力調整装置17がハードに設定されたときの開弁圧より高い値に設定される。
伸び側の逆止弁16は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。この逆止弁16は、リザーバ室A内の油液がボトム側室Cに向けて各油路14B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止するものである。この逆止弁16の開弁圧は、電磁式減衰力調整装置17がソフトに設定されたときの開弁圧より低い値に設定され、実質的に減衰力を発生しない。
次に、緩衝器1が発生する減衰力を可変に調整するための電磁式減衰力調整装置17について説明する。図2は、ソレノイド33のコイル37への非通電時に、油圧により弁体32がパイロットボディ26の弁座部26Eから離座(変位)した開弁状態を示している。一方、図3は、ソレノイド33のコイル37への通電に基づいて、弁体32がパイロットボディ26の弁座部26Eに着座した閉弁状態を示している。
図1に示すように、電磁式減衰力調整装置17は、その基端側(一端側、図1〜図3の左端側)がリザーバ室Aと環状室Dとの間に介在して配置され、先端側(他端側、図1〜図3の右端側)が外筒2の下部側から径方向外向きに突出している。この電磁式減衰力調整装置17は、減衰力を発生する減衰力調整バルブ18と、減衰力調整バルブ18で発生した減衰力を可変に調整するソレノイド33とにより構成されている。
具体的には、電磁式減衰力調整装置17は、環状室Dからリザーバ室Aへの油液の流通を、減衰力調整バルブ18により制御(制限)することで、減衰力を発生する。また、電磁式減衰力調整装置17は、減衰力調整バルブ18(例えば、メインディスクバルブ23)の開弁圧を、減衰力可変アクチュエータとして用いられるソレノイド33で調整することにより、発生する減衰力を可変に調整することができる。
ここで、図2、図3に示すように、減衰力調整バルブ18は、基端側が外筒2の開口2Bの周囲に固着され、先端側が外筒2から径方向外向に突出するように設けられた略円筒状のバルブケース19、基端側が中間筒12の接続口12Cに固定されると共に先端側が環状のフランジ部20Aとなってバルブケース19の内側に隙間をもって配設された筒形ホルダ20、該筒形ホルダ20のフランジ部20Aに当接するバルブ部材21、メインディスクバルブ23および弁体32を含んで構成されている。
バルブケース19の基端側は、径方向の内側に向けて突出する内側フランジ部19Aとなり、バルブケース19の先端側は、筒状ケース34にかしめ固定するための内周側係合部19Bとなっている。バルブケース19の内周面と後述するバルブ部材21、パイロットボディ26等の外周面との間は、リザーバ室Aに通じる環状の油室19Cとなっている。
筒形ホルダ20の内側は、一端側が環状室Dに連通し、他端側がバルブ部材21の位置まで延びる油路20Bとなっている。また、筒形ホルダ20のフランジ部20Aとバルブケース19の内側フランジ部19Aとの間には、円環状のスペーサ22が挟持されている。このスペーサ22は、油室19Cとリザーバ室Aとを連通させる部材である。
バルブ部材21には、径方向の中心に位置して軸方向に延びる中心孔21Aが設けられている。また、バルブ部材21には、中心孔21Aの周囲に周方向に離間して複数の油路21B(1個のみ図示)が設けられ、各油路21Bは、その一端側が筒形ホルダ20の油路20B側に常時連通している。一方、バルブ部材21の他端側の端面には、油路21Bの他側開口を取囲む環状凹部21Cと、該環状凹部21Cの径方向外側に位置して後述するメインディスクバルブ23が離着座する環状弁座21Dとが設けられている。ここで、バルブ部材21の油路21Bは、環状室D側(油路20B側)とリザーバ室A側(油室19C側)との間でメインディスクバルブ23を介して油液を流通させるものである。
メインディスクバルブ23は、内周側がバルブ部材21と後述するパイロットピン24の大径部24Aとの間に挟持され、外周側がバルブ部材21の環状弁座21Dに着座している。メインディスクバルブ23の背面側の外周部には、弾性シール部材23Aが固着されている。メインディスクバルブ23は、バルブ部材21の油路21B側(環状室D側)の圧力を受けて環状弁座21Dから離座することにより開弁し、バルブ部材21の油路21B(環状室D側)を油室19C(リザーバ室A側)に連通させる。この場合、メインディスクバルブ23の開弁圧は、後述するパイロット室27内の圧力に応じて可変に制御される。
パイロットピン24は、軸方向の中間部に大径部24Aを有している。また、パイロットピン24には、径方向の中央部に位置して軸方向に延びる段付円筒状の中心孔24Bが形成され、この中心孔24Bの一端部には、オリフィス24Cが形成されている。
パイロットピン24は、一端側がバルブ部材21の中心孔21Aに圧入され、大径部24Aとバルブ部材21との間でメインディスクバルブ23を挟持している。パイロットピン24の他端側は、後述するパイロットボディ26の中心孔26Cに嵌合している。この状態で、パイロットボディ26の中心孔26Cとパイロットピン24の他端側との間には、軸方向に延びる油路25が形成されている。これにより、中心孔26Cは、油路25を通じてメインディスクバルブ23とパイロットボディ26との間に形成されるパイロット室27に接続されている。
パイロットボディ26は、内側に段付き穴が形成された円筒部26Aと、該円筒部26Aを塞ぐ底部26Bと、を有する略有底筒状に形成されている。底部26Bの中央部には、パイロットピン24の他端側が嵌合される中心孔26Cが設けられている。パイロットボディ26の底部26Bの一端側(図2の左端側)には、外径側に位置して全周に亘ってバルブ部材21側に突出する突出筒部26Dが設けられている。この突出筒部26Dの内周面には、メインディスクバルブ23の弾性シール部材23Aが液密に嵌合し、メインディスクバルブ23とパイロットボディ26との間にパイロット室27を形成している。パイロット室27の内圧は、メインディスクバルブ23に対して閉弁方向、即ち、メインディスクバルブ23をバルブ部材21の環状弁座21Dに着座させる方向に作用する。
パイロットボディ26の底部26Bの他端側(図2の右端側)には、後述する弁体32が離着座する弁座部26Eが、中心孔26Cを囲むように設けられている。この弁座部26Eの外周側には、底部26Bを軸方向に貫通する油路26Fが設けられている。この油路26Fは、メインディスクバルブ23の開弁動作によりパイロット室27の内圧が過度に上昇した際に、油液を可撓性ディスク26Gを介して弁体32側に逃すものである。
また、パイロットボディ26の円筒部26Aの内側には、弁体32をパイロットボディ26の弁座部26Eから離れる方向に付勢するリターンばね28、後述のソレノイド33が非通電状態のとき(弁体32が弁座部26Eから最も離れたとき)のフェールセーフバルブを構成するディスクバルブ29および中心側に油路30Aが形成された保持プレート30等が配設されている。
パイロットボディ26の円筒部26Aの開口端には、この開口端側から順次、リターンばね28、ディスクバルブ29、保持プレート30等が配設され、これらは、円筒部26Aの開口端側に嵌合されたパイロットキャップ31によって固定される。このパイロットキャップ31には、保持プレート30の油路30Aを通じてソレノイド33側に流れた油液を油室19C(リザーバ室A側)に流通させるための切欠き31Aが、例えば周方向の4箇所に形成されている。
弁体32は、後述するソレノイド33の軸部43の一端側に設けられている。弁体32は、略円筒状に形成され、パイロットボディ26の弁座部26Eに離着座する先端部は、先細りのテーパ状となっている。弁体32の内側には、軸部43が嵌着され、ソレノイド33(コイル37)への通電(電流値)に応じて、弁体32の開度(開弁圧)が調節される構成となっている。弁体32の基端側(ソレノイド33側)には、ばね受となるフランジ部32Aが全周に亘って形成されている。フランジ部32Aは、ソレノイド33(コイル37)が非通電状態のとき、即ち、弁体32が弁座部26Eから最も離れたときに、ディスクバルブ29と当接することにより、フェールセーフバルブを構成するものである。
次に、減衰力調整バルブ18と共に電磁式減衰力調整装置17を構成するソレノイド33について説明する。
電磁式減衰力調整装置17の減衰力可変アクチュエータ(電磁アクチュエータ)として用いられるソレノイド33は、コイル37、可動鉄心38、固定鉄心39、オーバモールド41、軸部43、第1のブッシュ44、第2のブッシュ45、背圧室形成部材46、背圧室47、キャップ部材48等により構成されている。このソレノイド33は、例えば比例ソレノイドにより構成されている。
筒状ケース34は、ソレノイド33の外周側のカバーを構成するもので、例えば、後述する軸部43の軸線O−Oを軸中心とする円筒体として形成されている。筒状ケース34は、その内部にパイロットボディ26、コイル37、キャップ部材48等を収容している。この筒状ケース34は、減衰力調整バルブ18の外周側に位置するバルブ側筒部34Aと、後述するオーバモールド41の筒状部41Aの外周側に位置するコイル側筒部34Bと、バルブ側筒部34Aとコイル側筒部34Bとの境界位置を縮径して形成された円環状のフランジ部34Cとを含んで構成されている。筒状ケース34は、磁性体(磁性材料)により略円筒状のヨーク部材として形成され、通電時に磁路を形成するものである。
バルブ側筒部34Aの内径側には、減衰力調整バルブ18のパイロットキャップ31が嵌合(内嵌)され、バルブ側筒部34Aの外径側には、減衰力調整バルブ18のバルブケース19が嵌合(外嵌)されている。ここで、バルブ側筒部34Aの外周面には、シール溝34A1が全周に亘って設けられている。シール溝34A1には、シールリング34A2が装着され、該シールリング34A2により筒状ケース34と減衰力調整バルブ18のバルブケース19との間が液密に封止されている。
コイル側筒部34Bの内径側には、オーバモールド41の筒状部41Aが挿嵌されている。また、コイル側筒部34Bの先端側(他端側)の内周面とオーバモールド41の外周面との間には、筒状ケース34とオーバモールド41との間を液密に封止するシールリング34B1が設けられている。
フランジ部34Cの内径側は、一端側の角部を全周に亘って切欠くようにテーパ面34C1が形成される。そして、フランジ部34Cの内周側には、後述のキャップ部材48が嵌合されている。この場合、フランジ部34Cのテーパ面34C1とキャップ部材48との間には、シールリング34C2が設けられている。
結合リング35は、バルブケース19の他端側に位置して、略円筒状に形成されている。結合リング35は、円筒状に形成され、内周側の一部がバルブケース19の内周側係合部19Bに係合する外周側係合部35Aと、外周側係合部35Aの他端部から径方向の内向きに突出した鍔部35Bとにより構成されている。結合リング35は、バルブケース19の内周側係合部19Bと筒状ケース34とが重なる係合部位を覆うものであり、外周側係合部35Aが内周側係合部19Bに係合することで固定されている。
ボビン36は、後述するキャップ部材48の外周側に位置して設けられている。ボビン36は、熱硬化性樹脂等の樹脂部材により形成され、後述するコイル37の内周側をモールド成形を用いて覆っている。ボビン36は、筒状ケース34と同様に、軸線O−Oを軸中心とし、全体として段付円筒体として形成されている。
ボビン36は、コイル37の内周面および軸方向の両端面を覆ったボビン本体36Aと、該ボビン本体36Aから他側に延びた段付円筒部36Bとにより構成されている。段付円筒部36Bの内周面は、キャップ部材48の小径部48Cが挿入される挿入孔36B1となっている。ボビン36の内周側には、後述のインサートコア40が埋設されている。
ここで、ボビン36を構成する段付円筒部36Bの挿入孔36B1の内径寸法およびインサートコア40を構成する筒部40Aの内径寸法は、ほぼ同様となる寸法dとなっている。この内径寸法dは、キャップ部材48を構成する中径部48Bの外径寸法D2(図4参照)よりも僅かに大きな寸法に設定されている(d>D2)。
コイル37は、筒状ケース34のコイル側筒部34Bとボビン36のボビン本体36Aとの間に設けられている。コイル37は、ボビン36のボビン本体36Aの周囲に巻回して設けられている。コイル37は、ケーブル42を通じて電力が供給(通電)されることにより、磁力を発生するものである。
可動鉄心38は、キャップ部材48の内周側に配され、軸部43に一体的に固定されることにより、軸方向へ移動可能に設けられている。可動鉄心38は、アーマチャと呼ばれるもので、例えば鉄系の磁性体により有蓋円筒体として形成されている。そして、可動鉄心38は、コイル37により磁力を発生したときに、固定鉄心39に吸着されることにより推力を発生するものである。可動鉄心38には、該可動鉄心38の変位に対してソレノイド33内の油液が流路抵抗とならないように連通路43Aが形成されている。可動鉄心38の外径寸法は、キャップ部材48内で軸方向に変位できるように、キャップ部材48の中径部48Bの内径寸法よりも僅かに小さな値に設定されている。
固定鉄心39は、アンカと呼ばれるもので、キャップ部材48の内周側に配されている。具体的には、固定鉄心39は、筒状ケース34およびボビン36の内周側に位置して設けられている。固定鉄心39は、内側に軸部43が挿通される厚肉な筒部39Aと、該筒部39Aの基端部から径方向の外向きに突出したフランジ部39Bとを備えている。この固定鉄心39は、コイル37によって磁力を発生することにより、可動鉄心38を軸方向の一側に吸引するものである。この場合、フランジ部39Bの外周面は、筒状ケース34のバルブ側筒部34Aの内周面と当接することにより、フランジ部39Bとバルブ側筒部34Aとの間で、磁束の受け渡しを効率良く行うことができる構成となっている。
筒部39Aのうち、可動鉄心38と対向する他端面には、可動鉄心38が吸着されたときに該可動鉄心38が入り込む有底穴部39Cが設けられている。また、固定鉄心39の内周側には、後述の軸部43を支持する第1のブッシュ44が嵌着されるブッシュ嵌合穴39Dが設けられている。
ここで、固定鉄心39のうち可動鉄心38側となる他端側(図2の右端側)は、他端側に向けて縮径したテーパ面状のコニカル部39Eとなっている。コニカル部39Eは、有底穴部39Cの外周側に位置する大きな面取り部として形成されている。このコニカル部39Eは、固定鉄心39と可動鉄心38との間の磁気特性をリニア(直線的)にするためのものである。
インサートコア40は、ボビン36の内周側に位置して該ボビン36内に埋設されている。インサートコア40は、磁性材を用いたヨークからなり、内径側に可動鉄心38が挿通される筒部40Aと、コイル37の他端面に対面するように筒部40Aの他端から径方向の外向きに突出したフランジ部40Bとにより構成されている。この場合、可動鉄心38に対向する筒部40Aの内周側は、ボビン36に封止されていないので、筒部40Aは、可動鉄心38との間で磁束の受け渡しを行うことができる。即ち、インサートコア40は、磁気回路の一部を構成している。
フランジ部40Bの外周側には、例えば、コイル37にケーブル42を接続するための切欠き40Cが周方向に複数個(1個のみ図示)形成されている。切欠き40Cは、ケーブル42を通す他、オーバモールド41の成形時の樹脂回り(樹脂の流動性)を向上させる機能を有する。
ここで、インサートコア40は、可動鉄心38との間で磁束の受け渡しを効率よく行うことが望まれる。このために、筒部40Aの内径寸法は、キャップ部材48の中径部48Bの外径寸法D2よりも僅かに大きな寸法、即ち、筒部40Aは、中径部48Bと微小な隙間をもって径方向で対面している。
オーバモールド41は、ソレノイド33の先端側(他端側)に配されている。オーバモールド41は、例えば、熱硬化性樹脂等を用いて全体として有底筒状に形成され、コイル37の外周側を覆っている。このオーバモールド41は、コイル37の外周側を覆う円筒状の筒状部41Aと、該筒状部41Aの一端側(図2の右端側)を閉塞する蓋部41Bとを含んで構成されている。蓋部41Bの周方向の一部は、リード線からなるケーブル42が接続されたケーブル取出部41Cとなっている。
軸部43は、可動鉄心38、固定鉄心39および後述の背圧室形成部材46の内周側に位置し、軸線O−Oに沿って設けられている。軸部43の軸方向の一端部は、第1のブッシュ44を介して固定鉄心39の軸中心位置に軸方向に変位可能に支持されている。一方、軸部43の軸方向の他端部は、第2のブッシュ45を介して背圧室形成部材46の軸中心位置に軸方向に変位可能に支持されている。軸部43は、軸方向の中間部に可動鉄心38が圧入等の手段を用いて一体的に固定(サブアッセンブリ)され、可動鉄心38の推力を弁体32に伝達するものである。ここで、軸部43の内周側は、軸部43を軸方向に貫通して、弁体32と背圧室形成部材46との間を連通する連通路43Aとなっている。
軸部43の一端側(図2の左端側)は、固定鉄心39から突出すると共に、その突出端には、減衰力調整バルブ18の弁体32が固定されている。従って、弁体32は、可動鉄心38と軸部43と一体的に移動(変位)する。換言すれば、弁体32の弁開度または開弁圧は、コイル37への通電に基づく可動鉄心38の推力に対応したものとなる。これにより、可動鉄心38は、その軸方向の移動により、減衰力調整バルブ18のパイロットバルブ、即ち、パイロットボディ26の弁座部26Eに対する弁体32の開閉動作を行う構成となっている。
第1のブッシュ44は、固定鉄心39のブッシュ嵌合穴39Dに設けられ、軸受として軸部43の一端側を支持している。また、第2のブッシュ45は、後述する背圧室形成部材46のブッシュ嵌合穴46Cに設けられ、軸受として軸部43の他端側を支持している。これら第1,第2のブッシュ44,45により、軸部43は、軸線O−Oに沿って軸方向に摺動可能に案内される。
背圧室形成部材46は、キャップ部材48の他端側(底部48E側)内周に嵌合して設けられている。この背圧室形成部材46は、非磁性体(非磁性材料)からなり、底部46Aと筒部46Bとにより有底円筒体として形成されている。背圧室形成部材46の内周側には、軸部43を支持する第2のブッシュ45が嵌合されるブッシュ嵌合穴46Cが設けられている。
背圧室形成部材46は、その内部に油液が流入する背圧室47を形成し、油液が軸部43の連通路43Aを介して背圧室47内を満たした状態で弁体32に作用する圧力を相対的に小さくするものである。即ち、背圧室47は、軸部43の他端(固定鉄心39とは反対側の端部)と第2のブッシュ45(筒部46Bの内周面)と底部46Aとにより画成された空間として形成されている。この場合、背圧室47の受圧面積は、弁体32が弁座部26Eとの間で油圧力を受承する受圧面積よりも小さくなっている。
キャップ部材48は、コイル37(ボビン36)の内周側に配されている。キャップ部材48は、可動鉄心38、固定鉄心39、背圧室形成部材46等を囲むように設けられている。このキャップ部材48は、非磁性材の薄板により有底の段付円筒体として形成されている。即ち、キャップ部材48は、軸方向の一側に位置して固定鉄心39の筒部40Aと径方向で対向するように筒部40Aの外周側に配置された大径部48Aと、前記大径部48Aよりも軸方向の他側に位置して可動鉄心38と径方向で対向するように可動鉄心38の外周側に配置された中径部48Bと、前記中径部48Bよりも軸方向の他側に位置して背圧室形成部材46が圧入される小径部48Cと有している。
ここで、図4に示すように、大径部48Aは、中径部48B、小径部48Cよりも大きな外径寸法D1を有する円筒体として形成されている。また、中径部48Bは、大径部48Aよりも小さく、小径部48Cよりも大きな外径寸法D2を有する円筒体として形成されている。さらに、小径部48Cは、中径部48Bよりも小さな外径寸法D3を有する円筒体として形成されている。即ち、大径部48Aの外径寸法D1、中径部48Bの外径寸法D2および小径部48Cの外径寸法D3は、下記数1の関係となっている。
また、インサートコア40の筒部40A内に挿入される中径部48Bの外径寸法D2は、筒部40Aの内径寸法dよりも僅かに小さな寸法に設定されている。このように、インサートコア40と可動鉄心38とを近接して配置することにより、磁気抵抗を小さくして磁束の受け渡しをスムーズにすることができる。一方、小径部48Cの内径寸法は、背圧室形成部材46を圧入するための圧入代を確保した寸法に設定されている。
大径部48Aの一端部には、径方向に延びる円環状のフランジ部48Dが設けられている。また、オーバモールド41の蓋部41Bに対面する小径部48Cの他端部には、円板状の底部48Eが設けられている。
キャップ部材48は、例えば、1枚の金属板に深絞り加工を施すことにより、全体が板厚寸法tとなった段付円筒体として形成されている。
キャップ部材48の板厚寸法tは、小さく(薄く)なると共に、全体で均一な寸法に設定されている。これにより、可動鉄心38とインサートコア40との間の間隔寸法が小さくなるので、両者間での磁束の受け渡しをスムーズに行うことができる。
この場合、キャップ部材48は、大径部48A、中径部48Bおよび小径部48Cを設けることで、強度的に有利な複数の段部を備えた立体的な構造となっている。このために、板厚寸法tを小さく設定した場合でも、十分な強度を得ることができる。しかも、中径部48Bよりも小径な小径部48Cには、中径部48Bを干渉(損傷)させることなく、背圧室形成部材46を圧入することができる。
そこで、筒状ケース34、ボビン36、インサートコア40等の内周側に、可動鉄心38、固定鉄心39、軸部43、背圧室形成部材46、キャップ部材48等を組付ける場合の作業手順の一例について述べる。
まず、第2のブッシュ45が取付けられた背圧室形成部材46を、キャップ部材48内に挿入し、小径部48Cに圧入する。このときには、背圧室形成部材46は、小径部48Cだけに圧入すればよいから、軸方向の圧入距離を短くすることができ、簡単な作業で正確な位置に圧入することができる。しかも、小径部48Cに対して背圧室形成部材46を正確な位置に圧入したことにより、第2のブッシュ45を、傾くことなく、軸部43の軸線O−O位置に正確に配置することができる。
また、背圧室形成部材46を小径部48Cまで挿入するときに、途中に位置する大径部48Aと中径部48Bは、小径部48Cに比較して大径となっている。これにより、背圧室形成部材46は、大径部48Aと中径部48Bを傷付けることなく、小径部48Cまで挿入することができる。
背圧室形成部材46をキャップ部材48の小径部48Cに圧入したら、キャップ部材48を、筒状ケース34、ボビン36、インサートコア40の内周側に挿入する。このキャップ部材48の挿入時には、損傷した中径部48Bがインサートコア40等に干渉することがないから、スムーズに挿入することができる。
キャップ部材48を、筒状ケース34等の内周側に挿入したら、可動鉄心38が取付けられた軸部43を、キャップ部材48内に挿入し、軸部43の先端を第2のブッシュ45に挿入する。可動鉄心38をキャップ部材48の中径部48B内に挿入するときには、前述したように、中径部48Bの変形が抑制されているから、可動鉄心38をスムーズに挿入することができる。
さらに、第1のブッシュ44が取付けられた固定鉄心39を用意し、固定鉄心39および第1のブッシュ44に軸部43の一端側を挿入しつつ、固定鉄心39の筒部39Aをキャップ部材48の大径部48A内に挿入する。これにより、筒状ケース34、ボビン36、インサートコア40等の内周側に、可動鉄心38、固定鉄心39、軸部43、背圧室形成部材46、キャップ部材48等を組付けることができる。
本実施の形態による電磁式減衰力調整装置17および該電磁式減衰力調整装置17が組込まれた緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、緩衝器1を自動車等の車両に実装するときには、例えば、ピストンロッド8の上端側が車両の車体側に取付けられ、ボトムキャップ3に設けられた取付アイ3A側が車輪側に取付けられる。また、ソレノイド33のケーブル42は、車両のコントローラ(図示せず)等に接続される。
車両の走行時には、路面の凹凸等によって上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド8が外筒2から伸長、縮小(変位)することにより、電磁式減衰力調整装置17等によって減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。このときに、コントローラによりソレノイド33のコイル37に供給される電流値を制御し、弁体32の開度(開弁圧)を調整することにより、緩衝器1(減衰力調整バルブ18)による発生減衰力を可変に調整することができる。
例えば、ピストンロッド8の伸び行程では、内筒4内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側の逆止弁7が閉じる。ピストン5のディスクバルブ6の開弁前には、ロッド側室Bの油液が加圧され、内筒4の油穴4A、環状室D、中間筒12の接続口12Cを通じて減衰力調整バルブ18の筒形ホルダ20の油路20Bに流入する。このときに、ピストン5が移動した分の油液は、リザーバ室Aからボトムバルブ13の伸び側の逆止弁16を開いてボトム側室Cに流入する。なお、ロッド側室Bの圧力がディスクバルブ6の開弁圧に達すると、該ディスクバルブ6が開き、ロッド側室Bの圧力をボトム側室Cにリリーフする。
図3に示すように、電磁式減衰力調整装置17では、筒形ホルダ20の油路20Bに油液が流入する。この流入した油液は、メインディスクバルブ23の開弁前(ピストン速度低速域)において、矢印Xで示すように、バルブ部材21の中心孔21A、パイロットピン24の中心孔24B、パイロットボディ26の中心孔26Cを通り、弁体32を僅かに小さな開度で押し開き、パイロットボディ26の内側に流入する。パイロットボディ26の内側に流入した油液は、弁体32のフランジ部32Aとディスクバルブ29との間、保持プレート30の油路30A、パイロットキャップ31の切欠き31A、バルブケース19の油室19Cを通ってリザーバ室Aへ流れる。
そして、ピストン速度の上昇に伴って、筒形ホルダ20の油路20Bの圧力、即ち、ロッド側室Bの圧力がメインディスクバルブ23の開弁圧に達すると、筒形ホルダ20の油路20Bに流入した油液は、矢印Yで示すように、バルブ部材21の油路21Bを通り、メインディスクバルブ23を押し開き、バルブケース19の油室19Cを通ってリザーバ室Aへ流れる。
一方、ピストンロッド8の縮み行程では、内筒4内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側の逆止弁7が開き、ボトムバルブ13の伸び側の逆止弁16が閉じる。ボトムバルブ13(ディスクバルブ15)の開弁前には、ボトム側室Cの油液がロッド側室Bに流入する。これと共に、ピストンロッド8が内筒4内に進入した分に相当する油液が、ロッド側室Bから減衰力調整バルブ18を介してリザーバ室Aに、前述した伸び行程と同様の経路で流れる。なお、ボトム側室C内の圧力がボトムバルブ13(ディスクバルブ15)の開弁圧に達すると、ボトムバルブ13(ディスクバルブ15)が開き、ボトム側室Cの圧力をリザーバ室Aにリリーフする。
これにより、ピストンロッド8の伸び行程と縮み行程とで、減衰力調整バルブ18のメインディスクバルブ23の開弁前(ピストン速度低速域)は、弁体32の開度に応じた減衰力が発生し、メインディスクバルブ23の開弁後(ピストン速度高速域)は、メインディスクバルブ23の開度に応じて減衰力が発生する。この場合、弁体32の開度は、ソレノイド33のコイル37への通電によって可動鉄心38に発生させる磁力(推力)を調整することにより、下記のように可変に制御される。
即ち、コイル37への通電電流を小さくして可動鉄心38の推力を小さくすると、弁体32の開度は大きくなり、ソフト側の減衰力が発生する。このときには、パイロットピン24のオリフィス24Cにより減衰力を発生することも可能である。一方、コイル37への通電電流を大きくして可動鉄心38の推力を大きくすると、弁体32の開度は小さくなり、ハード側の減衰力が発生する。このときには、変化する弁体32の開度に応じて、その上流側の油路25を介して連通するパイロット室27の内圧が変化する。このように、弁体32の開度を可変に制御することにより、メインディスクバルブ23の開弁圧を同時に調整することができ、減衰力特性の調整範囲を広くすることができる。
なお、図2に示すように、コイル37の断線等により可動鉄心38の推力が失われた場合には、弁体32がリターンばね28により後退(弁座部26Eから離れる方向に変位)し、弁体32のフランジ部32Aとディスクバルブ29とが当接する。この状態では、ディスクバルブ29の開弁によって減衰力を発生することができ、コイルの断線等の不調時にも、必要な減衰力を得ることができる。
ここで、図3に示すように、ソレノイド33(コイル37)への通電によって弁体32が弁座部26Eに着座した状態(即ち、弁体32の閉弁時)において、弁体32の上流側に位置するパイロットピン24内の油液は、軸部43の連通路43Aを介して背圧室47に流入する。背圧室47内を満たした油液により、軸部43の他端面には、軸部43を他側から一側(図3の左側)に向けて押す方向の油圧力が発生する。これにより、弁体32が上流側(パイロットピン24側)で油圧力を受承する受圧面積は、弁座部26Eに対面する弁体32の面積から軸部43の断面積を差し引いた面積分となる。
また、コイル37により発生した磁力(磁束)は、図3に矢印Mで示すように、筒状ケース34のコイル側筒部34B、コイル側筒部34Bとインサートコア40のフランジ部40Bとの当接部、インサートコア40、可動鉄心38、可動鉄心38から固定鉄心39のコニカル部39E、固定鉄心39、固定鉄心39のフランジ部39Bと筒状ケース34のバルブ側筒部34Aとの当接部との順に周る。この場合、背圧室形成部材46は非磁性体で形成しているので、コイル37の通電時に発生した磁力は、背圧室形成部材46を周ることはなく、インサートコア40を介して可動鉄心38に伝わることができる。この場合、矢印Mで示す磁束の流れは、それぞれの部材間の隙間を小さくすることにより、磁束の受け渡しがスムーズに行えるようにしている。
しかし、可動鉄心38とインサートコア40との間には、キャップ部材48が介在している。このために、キャップ部材48の板厚寸法tと組付け時に必要なクリアランスの分だけ、可動鉄心38とインサートコア40とが離間してしまい、このギャップが磁気抵抗となってしまう。
然るに、本実施の形態によれば、ソレノイド33のコイル37の内周側に配される有底筒状のキャップ部材48は、固定鉄心39と径方向で対向する大径部48Aと、前記大径部48Aよりも底部48E側に位置して可動鉄心38と径方向で対向する中径部48Bと、前記中径部48Bよりも前記底部48E側に位置して背圧室形成部材46が圧入される小径部48Cとを有している。
従って、背圧室形成部材46は、中径部48Bよりも小径な小径部48Cだけに圧入することができる。これにより、背圧室形成部材46は、圧入するときの軸方向の圧入距離を短くすることができ、簡単な作業で正確な位置に、正確な姿勢で圧入することができる。しかも、背圧室形成部材46を正確な位置に圧入したことにより、背圧室形成部材46に取付けられた第2のブッシュ45も、軸線O−Oと同軸となる正確な位置に配置することができる。
この結果、第2のブッシュ45を第1のブッシュ44に対して同軸中心位置に配置できるから、各ブッシュ44,45に対する軸部43の摺動抵抗を小さくすることができ、弁体32の開閉弁動作を円滑に行うことができる。さらに、ソレノイド33の組立作業性を向上することができる。
また、背圧室形成部材46よりも大径な中径部48Bは、背圧室形成部材46の接触によって損傷することがないから、中径部48Bの寸法精度を高めることができる。即ち、中径部48Bは、可動鉄心38およびインサートコア40に対して近接して配置できる。この結果、可動鉄心38とインサートコア40との間の磁気抵抗を小さくして磁束の受け渡しをスムーズに行うことができ、開閉弁動作の性能を向上でき、緩衝器1(電磁式減衰力調整装置17)の動作性能を高めることができる。
さらに、キャップ部材48は、大径部48A、中径部48Bおよび小径部48Cによって3段筒状に形成している。従って、キャップ部材48は、筒状部分を変形等に対する剛性をもった段付立体構造体として形成することができ、この部分の強度(剛性)を向上することができる。また、強度を高めることでキャップ部材48の寸法精度を向上することができる。これにより、キャップ部材48は、強度を十分に確保した状態で、板厚寸法tを小さくできるから、可動鉄心38とインサートコア40とを近接して配置でき、両者間での磁気抵抗を小さくして磁束の受け渡しをスムーズに行うことができる。
なお、上述した実施の形態では、ソレノイド33を比例ソレノイドとして構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ON/OFFソレノイドとして構成してもよい。
また、実施の形態では、外筒2と内筒4とからなる複筒式の減衰力調整式油圧緩衝器1に電磁式減衰力調整装置17を装備した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、単筒式のシリンダを備えた油圧緩衝器に対して電磁式減衰力調整装置をシリンダ内に装備する構成としてもよい。
以上説明した実施形態に基づく減衰力調整式緩衝器として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
減衰力調整式緩衝器の第1の態様としては、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に挿入されて前記シリンダ内をロッド側室とボトム側室とに画成するピストンと、前記ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延びるピストンロッドと、前記ピストンロッドの伸縮によって前記作動流体の流れが生じる流路と、前記流路に設けられソレノイドによって開閉動作が調整される減衰力調整バルブと、を備えてなる減衰力調整式緩衝器であって、前記ソレノイドは、通電により磁力を発生するコイルと、前記コイルの内周側に配される有底筒状のキャップ部材と、前記キャップ部材の内周側に配され、軸方向へ移動可能に設けられる可動鉄心と、前記キャップ部材の内周側に配され、前記可動鉄心を吸引する固定鉄心と、前記コイルの外周を覆うオーバモールドと、前記可動鉄心の内周側に設けられ、内周側に連通路が形成される軸部と、前記軸部を支持するブッシュと、前記ブッシュを内周側に嵌合し、前記軸部の反固定鉄心側の端部と前記ブッシュとの間に背圧室を形成する有底筒状の背圧室形成部材と、を備え、前記軸部の固定鉄心側の端部には、前記減衰力調整バルブの弁体が設けられ、前記キャップ部材は、前記固定鉄心と径方向で対向する大径部と、前記大径部よりも前記底部側に位置して前記可動鉄心と径方向で対向する中径部と、前記中径部よりも前記底部側に位置して前記背圧室形成部材が圧入される小径部とを有している。
第2の態様としては、第1の態様において、前記ブッシュは2つ設けられ、第2のブッシュは前記固定鉄心の内周側に配されてなる。