以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明による濾過装置の第1の実施形態の全体構成を示す説明図で、(a)は濾過及び逆洗時の状態を示す縦断面図であり、(b)はスプレー洗浄時の状態を示す縦断面図である。この濾過装置は、例えば船舶のバラスト水を濾過するもので、流体を流体入口からフィルターエレメントを通過して流体出口から流出させて濾過を行うとともに、後述する逆洗ヘッド等を用いずに、外部の配管系により流体の流路を切替えて、流体を流体出口からフィルターエレメントを通過して流体入口へ流すことによりフィルターエレメントの逆洗を行なうものである。この濾過装置は、ケーシング1と、隔壁2と、フィルターエレメント3とを備えてなる。
前記ケーシング1は、濾過装置の外殻をなすもので、ケーシング本体1aとケーシング蓋1bとからなる。ケーシング本体1aは、有底の筒状(例えば円筒形状)、直方体形状などに形成され、例えば側壁上部に外部から流体が流入する流体入口6を有すると共に、側壁下部に内部で濾過された流体を外部へ流出する流体出口7を有している。ケーシング蓋1bは、ケーシング本体1aの上に載置されケーシング1内部を密封する蓋である。蓋1bには、後述するように、スプレー洗浄時にスプレー洗浄器具60を挿入するための洗浄用操作孔50が設けられ、これはスプレー洗浄時以外は蓋51で密閉されている。ケーシング1の材質は、金属又は合成樹脂などであり、その形状・大きさは、濾過装置の使用目的、通過させる流体の種類、量、設置場所などに応じて適宜決めればよい。
前記ケーシング1の内部の下部には、隔壁2が水平に設けられている。この隔壁2は、ケーシング1内部を流体入口6と連通し濾過前の流体が収容される原液室8(上側)と、前記流体出口7と連通し濾過後の流体が収容される濾液室9(下側)とに隔離する壁である。この隔壁2の中央部には貫通孔が設けられ、これに嵌合して筒状部分10が上側に突設されている。
前記ケーシング1の内部にて隔壁2の上側には、円筒状のフィルターエレメント3が、前記原液室8内に垂直方向に設けられ、その下端部が前記筒状部分10に貫通されて回動可能に保持され、その内部は筒状部分10の内部を介して濾液室9と連通している。このフィルターエレメント3は、流体を前記原液室8側から前記濾液室9側へ通過させて濾過するもので、円筒面を成す濾材31と、前記下端部を成す下側閉塞板32と、上端部を成す上側閉塞板33とを有し、対象となる流体を外側から内側に向けて濾材31を通過させ流体中に含まれる固形分やゲル状の塵埃等を捕捉して濾過するものである。
濾材31は、図5に示す従来の濾材と同様に、複数層に重ねられており最外層が最も細かい網目になっているものであればよく、例えば、複数積層した金網を焼結して保形性を高め円筒状に成形して焼結したものや、円筒状のノッチワイヤからなるもの、ウェッジワイヤからなるもの等がある。焼結したものの場合は、最外層の網目の大きさは10〜200μmのもの、それより内側の層の網目の大きさは200〜5000μmのものの中から適宜選定すればよい。この場合、最外層以外の補強メッシュや保護メッシュは、フィルターエレメント3の強度に係わるものであり、必要な強度が得られるようにその層数、網目の大きさ及び線材径を選択する。また、メッシュの織り方は、平織り、綾織り、朱子織り、畳織り、綾畳織り等が適用できる。なお、最内層を金網として、その外側に例えば角穴が無数に穿設された円筒状のパンチングプレートや、複数本の細いロッドを縦横方向に並べた補強部材を配設した状態で焼結してもよい。
前記下側閉塞板32は円板状を成し、外周が前記円筒状の濾材31に嵌合されてこれと固定されており、中央部には貫通孔34が設けられて、これに前記筒状部分10が回動可能に嵌合している。貫通孔34の内周には溝が設けられてOリング12が設けられ、筒状部分10の外周との間にシールを形成している。下側閉塞板32の下面と前記隔壁2の上面との間には、軸受11が設けられ、フィルターエレメント3の重量を支えるとともに回動可能に保持している。
一方、前記上側閉塞板33も円板状を成し、外周が前記筒状の濾材31に嵌合されてこれと固定されている。この上側閉塞板33の中央部は、前記ケーシング蓋1bの上側に設けられたギアードモータ13からケーシング蓋1bの貫通孔1dを通過して伸びる回転軸14と連結されている。これにより、フィルターエレメント3は、ギアードモータ13により、回転可能になっている。なお、上側閉塞板33の上面と、ケーシング蓋1bの下面との間にも軸受15が設けられ、また、前記貫通孔1dの内周にはOリング16が設けられ、回転軸14との間のシールを形成している。
尚、フィルターエレメント3を回転させる手段として、本実施形態ではギアードモータ13を用いているが、ギアードモータ13の代わりに例えば図示省略のハンドルを回転軸14に取付け、後述するスプレー洗浄の際に手動でフィルターエレメント3を回転できるようにしてもよい。
濾過装置に接続する濾過対象流体の外部の配管系としては、ケーシング1の流体入口6には、入口側分岐管21が接続され、その一方の枝21aは、途中に入口側バルブVIを有して1次圧(P1)を有する原液供給源と接続され、他方の枝21bは、途中にドレインバルブVBを有して例えば大気圧(P0)に開放されたドレイン側へ接続されている。一方、ケーシング1の流体出口7には、出口側配管22が接続され、この出口側配管22は、途中に出口側バルブVOを有して、2次圧(P2)を有する濾液貯留槽等に接続されている。これにより、入口側バルブVIと出口側バルブVOを開放し、ドレインバルブVBを閉塞して、流体を流体入口6から流体出口7へ流す濾過状態と、入口側バルブVIを閉塞し、出口側バルブVOとドレインバルブVBを開放して、流体を流体出口7から流体入口6へ逆流させる逆洗とを切替えることができる。
ここで、本発明においては、前記のように、ケーシング蓋1bに外部から原液室8内部へ通ずる開閉可能な洗浄用操作孔50が設けられている。本実施形態では、流体を外側から内側に通過させて濾過する円筒状のフィルターエレメント3を用いているので、この洗浄用操作孔50は、スプレー洗浄器具60をフィルターエレメント3の外周面の外側に挿入できるように、ケーシング蓋1bにてフィルターエレメント3の外周面より外側に対応する位置に設けられている。この洗浄用操作孔50は開閉可能で、本実施形態では蓋51の着脱により開閉できるようになっている。濾過装置のスプレー洗浄時以外は、ケーシング蓋1bにボルト等で固定された蓋51により密閉され、スプレー洗浄時には、この蓋51を外して、スプレー洗浄器具60をフィルターエレメント3の外周面の外側に挿入できるようになっている。但し、開閉手段は蓋51に限られず、例えば開閉扉など任意公知の開閉手段を用いても良い。
尚、スプレー洗浄器具60は、例えば、高圧洗浄器等に使用される、所謂「スプレーランス」と呼ばれる器具で、図1〜4に示すように、流体供給源Pから洗浄用の流体を供給する柔軟性を有する配管FPに接続され、前記ケーシング1の洗浄用操作孔50に挿入可能で、略ストレート又は先端が所定角度曲がったストレートの送液管部分60aと、この送液管部分60aの先端部に取付けられて前記流体を噴射するノズル60bと、からなり、作業者は送液管部分60aを握って手動で流体噴射位置をフィルターエレメント表面の各部に移動させて、流体を噴射できるようになっている。このスプレー洗浄器具60は、供給圧0.1〜20MPa(1〜200kg/cm2)の流体噴射できるものであり、市販のものを用いても良い。
前記ノズル60bは、送液管部分60aを通って供給される流体を噴射するもので、前記送液管部分60aの先端に設けられている。ここで、ノズル形状や配置は、洗浄するフィルターエレメントの形状等に応じて様々に調整することができる。本実施形態では、ノズルの先端を中心に扇状に広がる噴射形状を有するノズルを用いている。これにより、噴射密度を維持しつつ一方向に伸びた噴射範囲を形成できるため、スプレー洗浄器具60をその直交方向に移動させるだけで2次元的範囲をカバーできるからである。
尚、ノズル60bの噴射形状は、扇状に限らず、ノズルの先端を中心に円錐状に広がる噴射形状でもよい。また、後述する第3の実施形態のような円筒状フィルターエレメントの内面に対する噴射の場合は、ストレートの送液管部分60aを有するスプレー洗浄器具60の先端部にその軸を中心とする全周方向に円盤状に噴射範囲を有するノズル60bを設け、スプレー洗浄器具60の軸方向の移動によってその内面の全範囲をカバーできるようにしてもよい。
また、上記のように作業者は送液管部分60aを握って手動でスプレー洗浄器具60を操作して、流体噴射位置を移動させても良いが、何らかのガイド治具を設けて、その治具にガイドされてスプレー洗浄器具60を手動又は自動で動かすようにしても良い。
次に、以上のように構成された第1の実施形態の濾過装置の動作について、図1(a)を参照して説明する。濾過時、逆洗時とも、フィルターエレメント3の回転は停止している。
濾過時においては、濾過装置の入口側バルブVIと出口側バルブVOが開放され、ドレインバルブVBが閉塞される。この入口側の流体の圧力(1次圧P1)は、ポンプ(遠心ポンプ等)で加圧され、出口側の圧力(2次圧P2)より高いので、これにより、濾過すべき流体は、実線の矢印で示すように、流体入口6からケーシング1の原液室8に流入し、円筒状のフィルターエレメント3の濾材31を通過して、濾液室9に連通するフィルターエレメント3の内部へ流入することにより、濾過される。濾過された流体は、濾液室9から流体出口7を通って外部へ流出する。
逆洗時においては、濾過装置の入口側バルブVIは閉塞され、出口側バルブVOとドレインバルブVBが開放される。これにより、濾過装置の流体入口6は、ドレイン配管を通して大気圧P0に開放された低圧側に連通されて圧力が低下し、濾過装置の流体出口7の圧力(2次圧P2)より低くなるので、流体は、白抜きの矢印で示すように、流体出口7から濾液室9、フィルターエレメント3を通過し、原液室8を通って、流体入口6に逆流する。このフィルターエレメント3を通過する逆洗流により、濾材31の全面が逆洗される。逆洗は、濾過装置の使用条件(濾過速度や流体中の異物の量、圧損など)に応じて、所定の頻度で所定の時間行う。これにより、濾材31の原液室8側に付着した捕捉物が除去される。
次に、スプレー洗浄により行うフィルターエレメント洗浄方法について、図1(b)を参照して説明する。
スプレー洗浄は、逆洗を行ってフィルターエレメント3の原液室8側表面の捕捉物を除去してから行うと効果的である。スプレー洗浄時にフィルターエレメント3の原液室8側の表面の捕捉物を濾材31内部に押し込んで目詰まりを起こすという前記問題を、低減することができるからである。
スプレー洗浄の手順としては、その効果を高めるために、まず濾過装置内の流体を抜く。それには、入口側バルブVI及び出口側バルブVOを閉塞し、スプレー洗浄排出バルブVE(及び図示省略のエアべント弁)を開放して濾過装置の原液室8の流体を排出する。スプレー洗浄時のみ該バルブを開放する。本実施形態ではこのバルブVEは手動バルブとしているが、自動バルブとしてもよい。但し、流体入口6の位置が低い場合は、スプレー洗浄排出口17やスプレー洗浄排出バルブVEは必ずしも必要ない。
次に、ケーシング蓋1bに固定され洗浄用操作孔50を閉止している蓋51を取り外し、洗浄用操作孔50を開口させる。そして、スプレー洗浄器具60を原液室8内に挿入し、フィルターエレメント3を外側からスプレー洗浄する。
スプレー洗浄では、原液室8側(外側)から濾液室9側(内側)へフィルターエレメント3を通過するように洗浄流体を噴射し、フィルターエレメント3の濾材31内部や濾液室9側表面、すなわち濾液室9に連通するフィルターエレメント3の内周側表面、の付着物をスプレー洗浄流体により除去する。本実施形態では、高圧ポンプP等で加圧された流体(清浄水)を、原液室8側に挿入されたスプレー洗浄器具60のノズル60bから噴射するとともに、該ノズル60b位置を円筒状のフィルターエレメント3の軸と平行方向に手動で往復移動させて、濾材31の全長に対して流体を噴射する。フィルターエレメント3をギアードモータ13(又は手動)で回転させながら流体噴射を行うことにより、濾材31の全面をスプレー洗浄できるようになっている。
フィルターエレメント3の濾材31とノズル60bとの距離、スプレー洗浄流体の圧力や噴射形状は、洗浄すべき濾材31の性状等に合わせて適宜設定する。一般的に、スプレー洗浄流体の圧力を高く設定するほど捕捉物除去効果が高くなるが、高すぎると濾材31にダメージを与えたり、大型の加圧ポンプが必要になったりするので好ましくない。スプレー洗浄器具60に供給されるスプレー洗浄流体の圧力としては、本実施形態の濾過装置で複数積層した金網を焼結した濾材をスプレー洗浄する場合、0.1〜20MPa(1〜200kg/cm2)、好ましくは0.1〜10MPa(1〜100kg/cm2)の所定の圧力に設定する。
噴射角度としては、フィルターエレメント3の濾材31の原液室8側の表面に対して斜めに流体を噴射するのが望ましい場合もある。これは、垂直に流体を噴射すると、濾材31の原液室8側の表面に残留している付着物を濾材31内部に押し込んで目詰まりを起こす場合があるからである。その場合、流体を濾材31の原液室8側の表面に対して斜めに噴射して流体の一部が濾材31を通過せずに前記表面に沿った噴流となって、濾材31の原液室8側の表面の付着物をも除去するようにする。これにより、この付着物が流体噴射により濾材31内部に押し込まれて目詰まりを生ずるという問題を回避しつつ、濾材31を通過する噴射流体で濾材31内部や濾液室9側の表面の付着物を除去できる。本実施形態のようにフィルターエレメント3を回転させながら流体噴射を行う場合、流体の噴射方向は、回転による濾材31の表面の移動方向に対して「向かい風」になるように傾けるのが好ましい。噴射された流体はノズル60bから例えば扇状に広がるので、これにより、回転してきたフィルターエレメント3の濾材31部分の原液室8側の表面の付着物を、まず浅い角度(円筒面への接線よりやや内側方向)の噴射流体で除去し、次に、表面に付着物のない該濾材31部分に、より大きい角度の噴射流体を通過させて、フィルターエレメント3の濾材31内部や濾液室9側、すなわちフィルターエレメント3の内周側の表面の付着物を除去することができるからである。
但し、ノズル60bは、フィルターエレメント3の濾材31の表面に対して垂直に流体を噴射するように設けてもよく、特に、逆洗によって濾材31の原液室8側表面が十分に清浄になっている場合などは、濾材31の表面に対して垂直に流体を噴射した方が良い場合がある。
スプレー洗浄も、濾過装置の使用条件(濾過速度や流体中の異物の量や、逆洗の頻度、圧損など)に応じて、所定の頻度で所定の時間行う。但し、スプレー洗浄を実施する頻度は、逆洗の頻度よりも遥かに低くて良い。
また、スプレー洗浄用の流体として、本実施形態では上記のように清浄水を用いたが、これに限られず、例えば濾過済みの流体を用いてもよい。尚、スプレー洗浄で除去された微粒子等はスプレー洗浄流体とともに濾液室8側に流入するが、これらは一度フィルターエレメント3を通過してから逆洗時に付着したものや、流体噴射の助力があったにせよフィルターエレメント3を通過できたものなので、その後に濾液に混入しても通常は問題ない。
尚、本実施形態では濾過装置内の流体を抜いてスプレー洗浄を行ったが、濾過装置内の流体を抜かない状態でも、効果は落ちるものの、スプレー洗浄は可能である。その場合、入口側バルブVI及び出口側バルブVOを閉塞することにより、濾過装置内の圧力を略大気圧に下げてから、蓋51を取り外し、スプレー洗浄器具60を挿入してスプレー洗浄を行う。この方法では、スプレー洗浄効果が落ちる反面、流体排出作業が不要になるので、スプレー洗浄作業が容易になる。
第1の実施形態によると、流体出口7から流体入口6へ流体を逆流させて逆洗を行う逆洗機能を備えた濾過装置において、フィルターエレメント3に対し原液室8側から濾液室9側へフィルターエレメント3を通過するように流体を噴射するスプレー洗浄器具60をケーシング1の外部から挿入できるように、ケーシング蓋1bに外部から原液室8内へ通ずる開閉可能な洗浄用操作孔50を設けたので、逆洗等によって発生したフィルターエレメント3の濾材31内部や濾液室9側の表面の付着物を、フィルターエレメント3を取り外すことなく、またケーシング蓋1b全体を取り外すことなく、スプレー洗浄により除去できる。
一例として、バラスト水の濾過装置において、図5のように原液室8側に微細メッシュを配置した多層構造の濾材31を備えたフィルターエレメント3について、濾過と逆洗とを繰り返すと、濾材31の内部や濾液室9側の付着物が蓄積して、逆洗しても流体の通過抵抗が下がらなくなるが、そのフィルターエレメント3を、微細メッシュ側(原液室8側)からスプレー洗浄すると、供給圧1MPaのスプレー洗浄でこのような付着物が除去できた。
[第2の実施形態]
図2は、本発明による濾過装置の第2の実施形態の全体構成を示す説明図で、(a)は濾過及び逆洗時の状態を示す縦断面図であり、(b)はスプレー洗浄時の状態を示す縦断面図である。この濾過装置は、第1の実施形態において、フィルターエレメント3の一部分に接面するように配置されて濾液室9の流体をフィルターエレメント3を通過させて吸引するとともにフィルターエレメント3の面に摺接する除去ブラシを備えた逆洗ヘッド等を含む逆洗手段を備えたものである。この濾過装置は、逆洗手段を除いて第1の実施形態と同一なので、共通の要素には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この濾過装置は、ケーシング1と、隔壁2と、フィルターエレメント3と、逆洗機構(逆洗手段)104とを備えてなる。ここで、ケーシング1と、隔壁2と、フィルターエレメント3は、第1の実施形態と同一である。
前記逆洗機構104は、原液室8側からフィルターエレメント3の濾材31の一部分に接面するように配置されて濾液室9側の流体を濾材31を通過させて吸引し、吸引された流体をケーシング1の外部へ排出することにより、濾材31の逆洗を行うもので、逆洗ヘッド141と、逆洗流体排出管142とを含む。尚、本明細書で「吸引」とは、必ずしも大気圧より低い圧力で流体を引き込むことに限定されず、圧力差がある場合に相対的に圧力の低い側に流体を引き込むこと一般を意味する。この逆洗機構104と、接面位置移動手段として、前記ギアードモータ13等からなるフィルターエレメント3の回転機構とが、本実施形態の逆洗手段を構成する。逆洗ヘッド141は、原液室8側からフィルターエレメント3の濾材31の一部分に接面するように配置されて濾液室9側の流体を濾材31を通過させて吸引するとともに濾材31の面に摺接する除去ブラシ144を備えたものであり、両端が閉塞した略管状の部材で、濾材31の外周面に接面して、その軸と平行に設けられている。接面部分には、濾材31との略全長をカバーするスリット状の吸引孔143が設けられ、その周囲には除去ブラシ144が植毛されている。フィルターエレメント3を、ギアードモータ13で回転させながら逆洗を行うことにより、除去ブラシ144で捕捉物をかき取りながら、濾材31の全面を逆洗できるようになっている。
尚、第1の実施形態と同様、フィルターエレメント3を回転させる手段として、ギアードモータ13の代わりに例えば図示省略のハンドルを回転軸14に取付け、逆洗時及び後述するスプレー洗浄の際に手動でフィルターエレメント3を回転できるようにしてもよい。
尚、除去ブラシ144のブラシ毛の材質は、例えば天然若しくは合成の繊維、又は鋼、銅、真鍮などの金属線等であり、濾過装置の使用目的及び通過させる流体に応じて選択する。また、除去ブラシ144の代わりに刃状又はヘラ状に形成された金属製、樹脂製あるいはゴム製のスクレーパ等を前記吸引孔143の周りに設けて、円筒状の濾材31の面に摺接して捕捉物を除去するようにしてもよい。
一方、逆洗ヘッド141の下端部近傍には、フィルターエレメント3の濾材31との接面側と反対側に逆洗流体排出管142が分岐している。この逆洗流体排出管142は、逆洗ヘッド141に吸引された流体をケーシング1の外部へ排出するもので、ケーシング本体1aの側面に設けられた貫通孔を貫通して外部に延出し、フランジを介して外部の排出管145に接続されている。この排出管145には、開閉バルブVFが設けられている。この開閉バルブVFは、逆洗流体の流出・停止を制御するもので、濾過装置の逆洗時には開放され、それ以外のときには閉塞されるようになっている。この開閉バルブVFの排出側は、前記流体出口7の圧力より低圧、例えば大気圧P0に開放されたドレイン側へ接続されている。
濾過装置に接続する濾過対象流体の外部の配管系としては、ケーシング1の流体入口6には、入口側配管121が接続され、該入口側配管121は、途中に入口側バルブVIを有して1次圧(P1)を有する原液供給源と接続されている。一方、ケーシング1の流体出口7には、出口側配管122が接続され、この出口側配管122は、途中に出口側バルブVOを有して、2次圧(P2)を有する濾液貯留槽等に接続されている。第1の実施形態の他方の枝21bとドレインバルブVBはなく、その代わり上記のように、逆洗流体排出管142に外部の排出管145が接続され、該排出管145は途中に開閉バルブVFを有して、例えば大気圧(P0)に開放されたドレイン側へ接続されている。
ここで、本実施形態においても、ケーシング蓋1bに外部から原液室8内へ通ずる洗浄用操作孔50が設けられている。この洗浄用操作孔50は、スプレー洗浄器具60をフィルターエレメント3の外周面の外側に挿入できるように、ケーシング蓋1bにて円筒状のフィルターエレメント3の外周面より外側に対応する位置に設けられている。フィルターエレメント3のスプレー洗浄時以外には、ケーシング蓋1bにボルト等で固定された蓋51により密閉されている。
以上のように構成された第2の実施形態の濾過装置の動作は、逆洗時を除いて、基本的には第1の実施形態と同様である。
すなわち、濾過時においては、フィルターエレメント3の回転は停止し、入口側バルブVI及び出口側バルブVOが開放され、逆洗流体排出系の開閉バルブVFは閉塞されている。濾過すべき流体は、流体入口6から実線の矢印で示すようにケーシング1の原液室8に流入し、円筒状のフィルターエレメント3の濾材31の逆洗ヘッド141が接面していない部分を通過して、フィルターエレメント3の内部へ流入することにより、濾過される。濾過された流体は、濾液室9へ流入し、流体出口7を通って外部へ流出する。
逆洗時においては、入口側バルブVI及び出口側バルブVOは引き続き開放されるとともに、前記逆洗流体排出系の開閉バルブVFが開放され、逆洗流体排出管142を経由して連通する逆洗ヘッド141内部の圧力が下がり、フィルターエレメント3内部の流体が、白抜きの矢印で示すように、フィルターエレメント3の濾材31を通過して吸引孔143から流入する。これにより、吸引孔143に接面する濾材31の線状の部分が逆洗される。また、ギアードモータ13(又は手動)によるフィルターエレメント3の回転を行うことにより、前記除去ブラシ144で捕捉物をかき取りながら、濾材31の全面が逆洗される。但し、逆洗時においても、濾過すべき流体は、流体入口6から実線の矢印で示すように原液室8に流入するので、円筒状の濾材31のうち逆洗ヘッド141に接面していない部分では、濾過が継続される。逆洗は、濾過装置の使用条件(濾過速度や流体中の異物の量など)に応じて、所定の頻度で所定の時間行う。
次に、第2の実施形態の濾過装置においてスプレー洗浄により行うフィルターエレメント洗浄方法については、第1の実施形態の濾過装置の場合と同様である。スプレー洗浄は、その効果を高めるため、逆洗後に濾過装置の流体を抜いた状態で行う。このため、入口側バルブVI及び出口側バルブVOを閉塞し、スプレー洗浄排出バルブVE(及び図示省略のエアべント弁)を開放して濾過装置の原液室8の流体を排出する。次に、蓋51を取り外して洗浄用操作孔50を開口させ、スプレー洗浄器具60をフィルターエレメント3の外周面の外側に挿入する。スプレー洗浄器具60のノズル60bにより、フィルターエレメント3の濾材31に対し原液室8側(外側)から濾液室9側(内側)へ濾材31を通過するように流体を噴射し、フィルターエレメント3の濾材31内部や濾液室9側表面、すなわち濾液室9に連通するフィルターエレメント3の内周側表面、の付着物をスプレー洗浄流体により除去する。フィルターエレメント3を回転し、また、流体噴射位置をフィルターエレメント3の軸方向に移動させることにより、濾材31の全面をスプレー洗浄する。
尚、第1の実施形態と同様、濾過装置内の流体を抜かない状態でも、効果は落ちるものの、スプレー洗浄は可能である。その場合、第1の実施形態と同様に、入口側バルブVI及び出口側バルブVOを閉塞することにより、濾過装置内の圧力を略大気圧に下げてから、蓋51を取り外し、スプレー洗浄器具60を挿入してスプレー洗浄を行う。本実施形態では、除去ブラシ144(又はスクレーパ)を備えた逆洗ヘッド141の利用によって、濾材31表面の捕捉物は概略除去されているので、流体を抜かない状態でスプレー洗浄を行っても、濾材31内部や濾液室9側の表面の付着物の除去に一定の効果がある。
図3は、第2の実施形態の変形例の全体構成を示す説明図で、(a)は横断面図(B−B線断面図)であり、(b)は縦断面図(A−A線断面図)である。図3(b)では、簡略化のために、濾過時及び逆洗時の流体の流れを示す矢印とスプレー洗浄の流体噴射の両方を表示しているが、実際には濾過時又は逆洗時の流体の流れとスプレー洗浄の流体噴射とが同時に行われることはない。この濾過装置は、図2の装置において、1つのケーシング201内にフィルターエレメント203を4つ並列に配置して、処理速度を増加させた形態である。各フィルターエレメント203は、ギアードモータ213により、回転できるようになっている。逆洗機構204は、第2の実施形態の逆洗機構104と同様であるが、2つ設けられ、各逆洗ヘッド241はスリット状の吸引孔243と除去ブラシ244とを2組備え、2つのフィルターエレメント203に接面してそれらを逆洗するように構成されている。それ以外の濾過・逆洗の動作は、図2の装置と同様である。
この変形例の装置では、4つのフィルターエレメント203をスプレー洗浄するために、洗浄用操作孔250は図3(a)に示すようにケーシング蓋201bにて各フィルターエレメント203の外周面より外側に対応する2箇所の位置に設けられており、スプレー洗浄時には、各洗浄用操作孔250の蓋251を取り外してスプレー洗浄器具60を挿入し、その洗浄用操作孔250に近接する2つのフィルターエレメント203のそれぞれに対し、原液室208側から濾液室209側へ濾材231を通過するように流体を噴射できるようになっている。洗浄流体の噴射速度を維持するため、流体を一方のフィルターエレメント203のみに向けて噴射させて洗浄し、完了後、他方のフィルターエレメント203のみに向けて噴射させて洗浄するのが好ましい。
但し、図3(a)の符号aに示した中央1箇所に洗浄用操作孔250を設け、その周囲の4つのフィルターエレメント203を1つずつ洗浄するようにしても良い。
第2の実施形態(変形例を含む)によると、除去ブラシ144を備えた逆洗ヘッド141を含む逆洗機構104を備えた濾過装置において、フィルターエレメント3に対し原液室8側から濾液室9側へフィルターエレメント3を通過するように流体を噴射するスプレー洗浄器具60をケーシング1の外部から挿入できるように、ケーシング蓋1bに外部から原液室8内へ通ずる開閉可能な洗浄用操作孔50を設けたので、逆洗等によって発生したフィルターエレメント3の濾材31内部や濾液室9側の表面の付着物を、フィルターエレメント3を取り外すことなく、またケーシング蓋1b全体を取り外すことなく、スプレー洗浄により除去できる。
一例として、バラスト水の濾過装置において、除去ブラシ144を備えた逆洗ヘッド141を含む逆洗機構104による逆洗を行った後に、微細メッシュ側(原液室8側)からスプレー洗浄を行うと、0.2MPa程度の供給圧のスプレー洗浄でフィルターエレメントの内部や濾液室9側表面の目詰まりが除去でき、0.1MPaでも時間を掛ければ除去できた。これは、濾過対象の自然水の中に含まれる藻や地上の植物由来の繊維状の捕捉物が金網に絡まり、逆洗の度に織り込まれ、さらに泥や粘着質の捕捉物がそれらを固着していることが目詰まりの原因であるため、予めブラシによる摺動を併用する逆洗を行うことにより、それらの繊維の絡まりや粘着質の物質の固着が切断され、目詰まりが除去されやすくなったためと考えられる。
このように、フィルターエレメント3の面に摺接する除去ブラシ144を備えた逆洗ヘッド141を含む逆洗機構104による逆洗を予め行うと、スプレー洗浄に必要な供給圧が低くて済む場合がある。このため、スプレー洗浄のために例えば船舶にバラスト水フィルターエレメントの清水置換用に設けられている圧力0.1〜0.5MPa(1〜5kg/cm2)の清水ラインを使用でき、専用の高圧流体源が不要になって、洗浄作業が一層容易になる場合もある。
[第3の実施形態]
図4は、本発明による濾過装置の第3の実施形態の全体構成を示す説明図で、(a)は濾過及び逆洗時の状態を示す縦断面図であり、(b)はスプレー洗浄時の状態を示す縦断面図である。この濾過装置は、逆洗流体排出管の開閉弁を省略して小型化した濾過装置である。この濾過装置も、船舶のバラスト水等の濾過に適用されるもので、それらに含まれる微粒子や塵埃等を捕捉除去する一方、フィルターエレメントの内周面に付着した捕捉物をはく離する逆洗可能とされている。図4に示すように、ケーシング301と、フィルターエレメント302と、逆洗ヘッド303と、逆洗用パイプ304と、作動シリンダ(接面位置移動手段)305と、流体供給手段306とを備えてなる。
ケーシング301は、濾過装置の外殻をなすもので、筒状のケーシング本体301aとその両端部に取付けられた端板301b、301cとからなり、内部に、原液室308、濾液室310及びドレン室312が、濾液室310を中心に直列に配置されている。
具体的には、ケーシング301の内部は、その長手方向の中間の2箇所に配置された第1の隔壁板309及び第2の隔壁板311で3つの室に仕切られている。第1の隔壁板309と一端部の端板301bとの間には外部から流入した対象流体を収容する原液室308を有し、第1の隔壁板309と第2の隔壁板311との間には濾過後の対象流体を収容して外部へ流出させる濾液室310を有し、第2の隔壁板311と他端部の端板301cとの間には濾液室310の濾過による捕捉物を外部へ排出させるドレン室312を有している。原液室308の一部には流体入口313が設けられ、濾液室310の一部には、流体出口314が設けられ、ドレン室312の一部には逆洗流体排出管(逆洗流体排出管)315が設けられている。第1の隔壁板309の中心部には、原液室308と濾液室310とを連通する、例えば円形の貫通孔309aが形成されている。
フィルターエレメント302は濾液室310の内部に設けられ、原液室308側に位置する一端部302aが第1の隔壁板309の貫通孔309aに結合されて開口すると共にドレン室312側に位置する他端部302bが第2の隔壁板311に結合されて閉塞される。
このフィルターエレメント302は、対象流体を内側から外側に向けて通過させて流体中に含まれる固形分やゲル状の塵埃等を捕捉して濾過するもので、このため、このフィルターエレメント302の濾材は、複数層に重ねられており最内層が最も細かい網目になっている。
逆洗ヘッド303は、原液室308側(内側)からフィルターエレメント302の内周面の一部分に接面するように配置されて、外側の濾液室310の流体をフィルターエレメント302を通過させて吸引するとともにフィルターエレメント302の内周面に摺接する除去ブラシを備えたものである。逆洗ヘッド303は、フィルターエレメント302の内部にて軸方向に往復移動可能に設けられている。逆洗ヘッド303は、フィルターエレメント302の内周面に摺接する外周部320と、この外周部320から内方に延びる隙間(吸引孔)Gと、を有し、逆洗時にフィルターエレメント302の外側から内側の隙間Gに向けて流体を吸引し、この吸引される流れを逆洗流として、この逆洗流により、フィルターエレメント302の内周面に付着した捕捉物をはく離する。詳細な図示は省略するが、前記外周部320近傍には、全周にわたってフィルターエレメント302の内周面に摺接する除去ブラシ339が設けられている。この除去ブラシ339は、逆洗ヘッド303がフィルターエレメント302の内部でその軸方向に往復移動する際に一緒に移動してフィルターエレメント302の内周面に付着した捕捉物を掻き落すものである。
逆洗用パイプ304は、直線状に延びる管状部材であり、基端が逆洗ヘッド303の一側面に接続されて逆洗ヘッド303の隙間Gと連通し、他端にはピストン部材322が設けられている。この逆洗用パイプ304は、逆洗流をドレン室312に向けて導くものである。
作動シリンダ305は、図4に示すように、第2の隔壁板311に固定され、全体がドレン室312の内部に配置されている。作動シリンダ305は、一端部305aからピストン部材322を往復移動可能に内嵌し、ピストン部材322の移動に伴って、逆洗用パイプ304で相互に接続された逆洗ヘッド303をフィルターエレメント302の内部で往復移動させる。また、作動シリンダ305は、逆洗用パイプ304から流出した逆洗流を受けて、この逆洗流を他端部305bからドレン室312へ流出させる。
作動シリンダ305の他端部305bの閉塞部334aには、これを貫通して作動シリンダ305の内部とドレン室312とを連通するオリフィス334bが設けられている。オリフィス334bは、ピストン部材322が閉塞部334aに密着することで閉止される。このオリフィス334bは、作動シリンダ305からドレン室312側に流れる逆洗流の流量を制限している。
逆洗用パイプ304に取り付けられたピストン部材322は、前述のように作動シリンダ305の内周に嵌まってその内周面を摺接するため、作動シリンダ305の内部にてオリフィス部材334とピストン部材322との間には空間335が形成される。したがって、逆洗流は、ピストン部材322でオリフィス334bを閉止していない場合、すなわちオリフィス334bを開放した場合に、逆洗ヘッド303の隙間G、逆洗用パイプ304、作動シリンダ305の空間335、オリフィス部材334のオリフィス334bを経てドレン室312へ流出可能となる。また、逆洗流をオリフィス334bで流量制限することで空間335に圧力が付与され、ピストン部材322がオリフィス部材334から離れるように、ピストン部材322に上向きの力を加えるようにしている。
作動シリンダ305の閉塞部材332には、図4に示すように、流体供給手段306が接続されている。この流体供給手段306は、作動シリンダ305内に嵌合された逆洗用パイプ304のピストン部材322を作動シリンダ305内で往復移動可能とするもので、作動シリンダ305の空間333に作動流体を供給する図示省略のポンプ及び配管等からなる。
本実施形態においても、ケーシング301の端板301bに外部から原液室308内へ通ずる洗浄用操作孔350が設けられている。本実施形態のフィルターエレメント302は、流体を内側から外側に通過させて濾過する円筒状フィルターエレメントであるため、洗浄用操作孔350は、スプレー洗浄器具60をフィルターエレメント302の内周面の内側に挿入できるように、ケーシング301の端板301bにてフィルターエレメント302の内周面より内側に対応する位置に設けられている。この洗浄用操作孔350は、濾過装置のスプレー洗浄時以外には、端板301bにボルト等で固定された蓋351により密閉されている。
次に本実施形態の濾過装置の動作について図4(a)を参照して説明する。尚、図4(a)は逆洗時(濾過と逆洗が同時に行われる)の状態を示しているが、通常の濾過時には逆洗ヘッド303は下端に下がっており、破線矢印D,C,Eで示す逆洗流はない。
通常の濾過時には、流体供給手段306から作動シリンダ305に作動流体が供給され、ピストン部材322は作動シリンダ305の下端部に当接され、それによりオリフィス334bは閉じられている。また、ピストン部材322と逆洗用パイプ304を介して接続された逆洗ヘッド303はフィルターエレメント302内部の下端に下がっている。
図4(a)の実線矢印Aで示すように、対象流体は、流体入口313から原液室308に流入した後、第1の隔壁板309に形成された貫通孔309aを通ってフィルターエレメント302内に流入し、その内側から外側に向けて対象流体が通過することで濾過が行われる。濾過された対象流体は、フィルターエレメント302の外側の濾液室310へ流れ出て、濾液室310から濾過済み流体として流体出口314を介して外部へ流出する。なお、ピストン部材322がオリフィス334bを閉止しているため、濾過済み流体が逆洗ヘッド303の隙間Gからオリフィス334bを介してドレン室312へ流出することはない。
このようにして濾過を続けると、対象流体中に含まれていた固形分やゲル状の塵埃等がフィルターエレメント302に捕捉され、フィルターエレメント302に蓄積して目詰まりを起こすことがある。目詰まりが生じてきたならば、フィルターエレメント302の濾過性能を回復させるために、フィルターエレメント302に付着した捕捉物をはく離させる逆洗を行う。
逆洗時においても、通常の濾過時と同様に、流体入口313から実線矢印Aのように対象流体を流入させ、流体出口314から実線矢印Bのように濾過済み流体を流出させ、フィルターエレメント302による濾過が行われている。
逆洗には、まず流体供給手段306は、作動シリンダ305の空間333へ供給する作動流体の圧力を通常の濾過時における圧力P1より低い圧力P2にし、弾性部材331の付勢力よりもピストン部材322に対する作動流体の押圧力が小さくなるようにすることで、ピストン部材322がオリフィス部材334(閉塞部334a)から離間し、両者の間に空間335が形成されオリフィス334bが開放される。すると、逆洗ヘッド103の隙間(吸引孔)G内の流体は、逆洗用パイプ304、空間335及びオリフィス334bを介してドレン室312へ吸引されることで、隙間Gとフィルターエレメント302の外側の濾液室310との間に圧力差が生じる。この圧力差により生じる濾過済み流体の内向きの流れ(破線矢印D)を逆洗流として、フィルターエレメント302の内周面に付着した捕捉物をはく離する。はく離した捕捉物は逆洗流とともに、破線矢印Cのようにドレン室312に流出し、その後、破線矢印Eのように逆洗流体排出管315を介して外部へ排出される。
また、空間333における作動流体の圧力と空間335における逆洗流体の圧力との圧力差により、ピストン部材322が作動シリンダ305の一端部(上端部)305aに向けて移動するので、逆洗ヘッド303もフィルターエレメント302の内部を一端部(上端部)302aに向けて移動する。
逆洗ヘッド303が、フィルターエレメント302内部の一端部(上端部)302aに達した後、流体供給手段306から供給する作動流体の圧力を圧力P2から通常の濾過時における圧力P1に戻すことで、ピストン部材322を作動シリンダ305の他端部(下端部)305bまで移動させ、これによって逆洗ヘッド303をフィルターエレメント302の他端部(下端部)302bまで移動させて、濾過装置を初期状態に戻す。この逆洗ヘッド303の往復運動を所定回数繰り返すことにより、フィルターエレメント302を逆洗する。
次に、第3の実施形態の濾過装置においてスプレー洗浄により行うフィルターエレメント洗浄方法について、図4(b)を参照して説明する。本実施形態では、内側から外側へ流体を通過させて濾過する円筒状のフィルターエレメント302を用いたので、スプレー洗浄もこのフィルターエレメント302の原液室308側である内側から濾液室310側である外側へ流体を通過させて行う。第1及び第2の実施形態同様、スプレー洗浄は、その効果を高めるために、逆洗を行った後に、濾過装置の流体を抜いた状態で行う。尚、逆洗ヘッド303は、流体供給手段306から作動流体をシリンダへ305へ供給するなどして略下限位置まで下げておく。
そして、ケーシング蓋301bに固定され洗浄用操作孔350を密閉している蓋351(図4(a)参照)を取り外し、洗浄用操作孔350から原液室308内を通過して、円筒状のフィルターエレメント302の内側にスプレー洗浄器具60を挿入し、フィルターエレメント302の原液室308側(内側)から濾液室310側(外側)へ該フィルターエレメント302を通過するように流体を噴射し、フィルターエレメント302の濾材内部や濾液室310側の表面の付着物を除去する。
スプレー洗浄器具60は、ストレートの送液管部分60aを有し、ノズル60bとして、スプレー洗浄器具60の軸を中心とする全周方向に円盤状に噴射範囲を有するノズルや、噴流により自転して全周方向に噴射範囲を有するノズルを設けたものを用いるのが好ましい。スプレー洗浄器具60を軸方向にのみ動かせば、その内面の全範囲をカバーできるからである。このノズルは市販品でもよい。ノズル60b位置を円筒状のフィルターエレメント302の軸方向に移動させて、濾材の全長に対して、流体噴射を行う。
ここで、スプレー洗浄で噴射された流体は、フィルターエレメント302を通過して濾液室310に溜まる。このとき、流体供給手段306からの作動流体による加圧を停止すると、逆洗ヘッド303は弾性部材331により最下限位置から僅かに押し上げられるので、これに逆洗用パイプ304を介して連結されたピストン部材322もオリフィス部材334から離間し、オリフィス334bは開口する。したがって、濾液室310に溜まった流体は、逆洗流体の経路、すなわち、逆洗ヘッド103の隙間G、逆洗用パイプ304、空間335及びオリフィス334bを通って、ドレン室312へ流出する。
尚、第1及び第2の実施形態と同様、濾過装置内の流体を抜かない状態でも、効果は落ちるものの、スプレー洗浄は可能である。その場合、図示省略の入口側バルブ及び出口側バルブを閉塞することにより、濾過装置内の圧力を略大気圧に下げてから、蓋351を取り外し、スプレー洗浄器具60を挿入してスプレー洗浄を行う。
尚、本実施形態において、1つのケーシング301の内部にて、第1の隔壁板309及び第2の隔壁板311にそれぞれ複数の貫通孔を設け、フィルターエレメント302と、逆洗ヘッド303と、逆洗用パイプ304と、作動シリンダ305と、流体供給手段306と、を複数セット配置して、処理能力を向上させた濾過装置においても、本発明の洗浄用操作孔350は適用可能である。その場合、スプレー洗浄器具60を各フィルターエレメント302の内周面の内側に挿入できるように、ケーシング301の端板301bにて各円筒状のフィルターエレメント302の内周面より内側に対応する位置にそれぞれ洗浄用操作孔350を設けて、この洗浄用操作孔350と原液室308を通して各フィルターエレメント302内部へスプレー洗浄器具60を挿入し、各フィルターエレメント302の内周側からスプレー洗浄する。
第3の実施形態によると、内側から外側へ流体を通過させて濾過する円筒状のフィルターエレメント302を用いた場合でも、フィルターエレメント302に対し原液室308側から濾液室310側へフィルターエレメント302を通過するように流体を噴射するスプレー洗浄器具60をケーシング301の外部から挿入できるように、ケーシング301の端板301bに外部から原液室308内へ通ずる開閉可能な洗浄用操作孔350を設けたので、逆洗等によって発生したフィルターエレメント302の濾材内部や濾液室310側の表面の付着物を、フィルターエレメント302を取り外すことなく、またケーシング301の端板301b全体を取り外すことなく、スプレー洗浄により除去できる。
本実施形態の濾過装置は、フィルターエレメント302の面に摺接する除去ブラシ339を備えた逆洗ヘッド303を含む逆洗機構を備えているので、これを用いて逆洗を行った後にスプレー洗浄器具60によるスプレー洗浄を行うと、第2の実施形態で述べたように、スプレー洗浄器具60によるスプレー洗浄に必要な供給圧が低くて済む場合がある。このため、スプレー洗浄のための高圧流体源が不要になって、洗浄作業が一層容易になる場合もある。