以下において、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置100の主回路構成を示す概略ブロック図である。電力変換装置100は、代表的には無停電電源装置に適用される。
図1を参照して、電力変換装置100は、入力フィルタ6と、コンバータ2R,2S,2Tと、インバータ3U,3V,3Wと、出力フィルタ7と、制御装置5と、直流母線13〜16と、コンデンサC1〜C3と、電流センサ22R,22S,22Tと、電圧センサ21,23と、R相ラインRLと、S相ラインSLと、T相ラインTLと、U相ラインULと、V相ラインVLと、W相ラインWLとを備える。
入力フィルタ6は、商用交流電源1への高調波の流出を防止する。商用交流電源1は三相交流電源である。入力フィルタ6は、コンデンサ11R,11S,11Tおよびリアクトル12R,12S,12Tにより構成された三相のLCフィルタ回路である。
コンバータ2R,2S,2Tは、商用交流電源1から入力フィルタ6を介して供給される三相交流電力を直流電力に変換する。コンバータ2R,2S,2Tは、その直流電力を直流母線13〜16を介してインバータ3U,3V,3Wにそれぞれ供給する。具体的には、コンバータ2Rは、R相ラインRLから入力フィルタ6(コンデンサ11Rおよびリアクトル12R)を介して供給されるR相電力を直流電力に変換する。コンバータ2Rは、その直流電力を直流母線13〜16を介してインバータ3Uに供給する。コンバータ2Sは、S相ラインSLから入力フィルタ6(コンデンサ11Sおよびリアクトル12S)を介して供給されるS相電力を直流電力に変換する。コンバータ2Sは、その直流電力を直流母線13〜16を介してインバータ3Vに供給する。コンバータ2Tは、T相ラインTLから入力フィルタ6(コンデンサ11Tおよびリアクトル12T)を介して供給されるT相電力を直流電力に変換する。コンバータ2Tは、その直流電力を直流母線13〜16を介してインバータ3Wに供給する。
コンデンサC1〜C3は、直流母線13および直流母線16の間に直列に接続されて、直流母線13および直流母線16の間の電圧を平滑化する。コンデンサC1およびC2の接続点には直流母線14が接続される。コンデンサC2およびC3の接続点には直流母線15が接続される。
インバータ3U,3V,3Wは,コンバータ2R,2S,2Tから供給される直流電力を三相交流電力に変換する。インバータ3U,3V,3Wからの交流電力は出力フィルタ7を介して負荷4に供給される。出力フィルタ7は、リアクトル17U,17V、7Wおよびコンデンサ18U,18V,18Wにより構成された三相のLCフィルタ回路である。具体的には、インバータ3Uは、コンバータ2Rから供給される直流電力をU相電力に変換する。U相電力は、出力フィルタ7(リアクトル17Uおよびコンデンサ18U)およびU相ラインULを介して負荷4に供給される。インバータ3Vは、コンバータ2Sから供給される直流電力をV相電力に変換する。V相電力は、出力フィルタ7(リアクトル17Vおよびコンデンサ18V)およびV相ラインVLを介して負荷4に供給される。インバータ3Wは、コンバータ2Tから供給される直流電力をW相電力に変換する。W相電力は、出力フィルタ7(リアクトル17Wおよびコンデンサ18W)およびW相ラインWLを介して負荷4に供給される。
電圧センサ21は、R相ラインRLの電圧VR、S相ラインSLの電圧VS、T相ラインTLの電圧VTを検出し、電圧VR,VS,VTを示す信号を制御装置5に出力する。電圧センサ23は、U相ラインULの電圧VU、V相ラインVLの電圧VV、W相ラインWLの電圧VWを検出し、電圧VU,VV,VWを示す信号を制御装置5に出力する。電圧センサ24は、コンデンサC1の両端の電圧E1、コンデンサC2の両端の電圧E2、コンデンサC3の両端の電圧E3を示す信号を制御装置5に出力する。
電流センサ22Rは、R相ラインRLの電流IRを検出し、電流IRを示す信号を制御装置5に出力する。電流センサ22Sは、S相ラインSLの電流ISを検出し、電流ISを示す信号を制御装置5に出力する。電流センサ22Tは、T相ラインTLの電流ITを検出し、電流ITを示す信号を制御装置5に出力する。
制御装置5は、コンバータ2R,2S,2Tおよびインバータ3U,3V,3Wの動作を制御する。具体的には、制御装置5は、電圧VR、VS,VTの位相に同期してコンバータ2R,2S,2Tおよびインバータ3U,3V,3Wを制御する。
後に詳細に説明するが、コンバータ2R,2S,2Tおよびインバータ3U,3V,3Wは、半導体スイッチング素子を含む半導体スイッチにより構成される。なお、本実施の形態では、半導体スイッチング素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。
また、本実施の形態では、半導体スイッチング素子の制御方式としてPWM(Pulse Width Modulator)制御を適用することができる。制御装置5は、電圧センサ21からの三相電圧信号、電流センサ22R,22S,22Tからの三相電流信号、電圧センサ24が検出したE1〜E3を示す信号、電圧センサ23からの三相電圧信号等を受けてPWM制御を実行する。
図2は、図1に示したコンバータ2R,2S,2Tおよびインバータ3U,3V,3Wの構成を詳細に説明する回路図である。コンバータ2R,2S,2Tは構成が互いに同じであり、インバータ3U,3V,3Wは構成が互いに同じであるため、代表的にコンバータ2Rおよびインバータ3Uの構成を説明する。
コンバータ2Rおよびインバータ3Uは、いずれも4レベル回路として構成され、6つのIGBT素子と6つのダイオードとを含む。詳細には、コンバータ2Rは、IGBT素子Q1R〜Q6RとダイオードD1R〜D6Rとを含む。インバータ3Uは、IGBT素子Q1U〜Q6UとダイオードD1U〜D6Uとを含む。
以下ではコンバータ2Rおよびインバータ3Uを総括的に説明するため、符号R,Uをまとめて符号「x」と示す。
IGBT素子Q1x,Q3xは、直流母線13および交流端子Txの間に直列に接続される。IGBT素子Q2xは、IGBT素子Q1x,Q3xの接続点と直流母線14の間に接続される。IGBT素子Q4x,Q6xは、交流端子Txおよび直流母線16の間に直列に接続される。IGBT素子5xは、IGBT素子Q4x,Q6xの接続点と直流母線15の間に接続される。ダイオードD1x〜D6xは、IGBT素子Q1x〜Q6xにそれぞれ逆並列接続される。ダイオードD1x〜D6xは還流ダイオードとして機能する。
コンバータ2x(2R,2S,2T)においては、IGBTQ3x,Q4xの接続点が交流入力端子Tx(TR,TS,TT)に対応する。コンバータ2xの交流入力端子Txは、リアクトル12x(12R,12S,12T)を介して、対応する交流ラインxL(R相ラインRL、S相ラインSL、T相ラインTL)に接続される。IGBT素子Q1xと直流母線13との接続点T1が「第1の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q2xと直流母線14との接続点T2が「第2の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q5xと直流母線15との接続点T3が「第3の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q6xと直流母線16との接続点T4が「第4の直流出力端子」に対応する。
コンバータ2xは、交流入力端子Txに単相の交流電圧を受け、第1から第4の直流出力端子T1〜T4に4レベルの直流電圧を出力するように構成されている。例えば、交流入力端子Txが、ピークが±Vの商用交流電源1に接続されている場合、コンバータ2xは、第1の直流出力端子T1と中性点(商用交流電源1の中性点または接地点)との間に約+Vの直流電圧を出力し、第2の直流出力端子T2と中性点との間に約+V/3の直流電圧を出力し、第3の直流出力端子T3と中性点との間に約−V/3の直流電圧を出力し、第4の直流出力端子T4と中性点との間に約−Vの直流電圧を出力する。すなわち、コンバータ2xは、直流出力端子T1およびT2間(電圧V1)、直流出力端子T2およびT3間(電圧V2)、および直流出力端子T3およびT4間(電圧V3)の各々に約2V/3の電圧を出力するように構成されている(V1=V2=V3=2V/3)。
コンバータ2xは、コンデンサ11xおよびリアクトル12xとともに昇圧コンバータとして作用し、交流ラインxLに与えられた交流電圧を、交流入力端子Txにおいて4レベルの準方形波に変換する。交流入力端子Txにおける電圧は、IGBT素子Q1x〜Q6xのオンオフ状態によって変化する。図3に示すように、交流ラインxLの交流電圧の瞬時値が、第1の直流出力端子T1の直流電圧(+V)と第2の直流出力端子T2の直流電圧(+V/3)との間であれば、交流入力端子Txにおける方形波はこれらの値(+V,+V/3)の間で切替わる。交流ラインxLの交流電圧の瞬時値が、第2の直流出力端子T2の直流電圧(+V/3)と第3の直流出力端子T3の直流電圧(−V/3)との間であれば、交流入力端子Txにおける方形波はこれらの値(+V/3,−V/3)の間で切替わる。交流ラインxLの交流電圧の瞬時値が、第3の直流出力端子T3の直流電圧(−V/3)と第4の直流出力端子T4の直流電圧(−V)との間であれば、交流入力端子Txにおける方形波はこれらの値(−V/3,−V)の間で切替わる。
コンバータ2xにおけるIGBT素子Q1x〜Q6xのスイッチングは、制御装置5に含まれるコンバータ制御部により制御される。コンバータ制御部は、コンバータ2xにおける3つの動作状態のうち現在の動作状態に従って、IGBT素子Q1x〜Q6xのスイッチングを制御するように構成されている。
以下では、まず、図4から図6を用いて、従来の電力変換装置の制御装置によるコンバータおよびインバータの制御とその課題について説明する。次に、本実施の形態1に係る電力変換装置の制御装置によるコンバータおよびインバータの制御について説明する。
図4は、従来の電力変換装置の制御装置による、コンバータ2xのPWM制御を説明するための信号波形図である。IGBT素子Q1x〜Q6xのゲートには、それぞれゲート信号が与えられる。図4には、電圧指令値Vx*、搬送波CW1〜CW3および、IGBT素子Q1x〜Q6xのゲート信号の波形が示されている。
図4を参照して、コンバータ2xは、3つの状態で動作する。第1の状態(以下、状態1とも称する。)は、交流ラインxLに与えられる電圧が、第1の直流出力端子T1の電圧+Vの1/3より大きい場合に対応する。第2の状態(以下、状態2とも称する。)は、交流ラインxLに与えられる電圧が、第1の直流出力端子T1の電圧+Vの1/3以下、かつ、第4の直流出力端子T4の電圧−Vの1/3以上である場合に対応する。第3の状態(以下、状態3とも称する。)は、交流ラインxLに与えられる電圧が、第4の直流出力端子T4の電圧−Vの1/3より小さい場合に対応する。
図5は、従来の電力変換装置の制御装置に含まれる、コンバータ2x(2R,2S,2T)の制御部を説明するブロック図である。図5を参照して、コンバータ制御部は、電圧指令発生器30と、搬送波発生器32〜34と、比較器COM1〜COM3と、反転器I1〜I3と、増幅器A1〜A6とを含む。
電圧指令発生器30は、電圧センサ21が検出した電圧Vx(VR,VS,VT)、電流センサ22xが検出した電流Ix(IR,IS,IT)、電圧センサ24が検出した電圧V1〜V3を受けて、R相、T相、S相にそれぞれ対応する電圧指令値Vx*(VR*,VS*,VT*)を生成する。電圧指令値Vx*は、商用交流電源1から供給される交流電圧と等しい周波数および位相を有する正弦波信号である。図4の例では、電圧指令値Vxは+Vとほぼ等しい振幅を有する。
搬送波発生器32は、搬送波CW1として三角波信号を生成する。搬送波CW1は、図4に示されるように、最大値が+Vであり、最小値が+V/3である。搬送波発生器33は、搬送波CW2として三角波信号を生成する。搬送波CW2は、最大値が+V/3であり、最小値が−V/3である。搬送波発生器34は、搬送波CW3として三角波信号を生成する。搬送波CW3は、最大値が−V/3であり、最小値が−Vである。搬送波CW1,CW2,CW3の周波数および位相は同じである。搬送波CW1,CW2,CW3は、電圧指令値Vx*の整数倍(例えば16倍)の周波数を有しており、電圧指令値Vx*に同期した信号である。
比較器COM1は、非反転入力端子(+端子)に電圧指令値Vx*を受け、反転入力端子(−端子)に搬送波CW1を受ける。比較器COM1は、電圧指令値Vx*および搬送波CW1の高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する。具体的には、比較器COM1は、電圧指令値Vx*が搬送波CW1より大きい場合、H(論理ハイ)レベルの信号を出力し、電圧指令値Vx*が搬送波CW1より小さい場合、L(論理ロー)レベルの信号を出力する。
増幅器A1は、比較器COM1の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q1xを駆動するためのゲート信号を生成する。IGBT素子Q1x〜Q6xの各々は、Hレベルのゲート信号によりオン(導通)され、Lレベルのゲート信号によりオフ(非導通)される。
反転器I1は、比較器COM1の出力信号を反転して増幅器A2に出力する。増幅器A2は、反転器I1の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q2xのゲート信号を生成する。すなわち、IGBT素子Q1xとIGBT素子Q2xとは相補的にオンオフが制御される。なお、本願明細書において、「相補的」とは、IGBT素子Q1xおよびQ2xのオンオフ状態が完全に逆転している場合のほか、貫通電流防止の観点からIGBT素子Q1xおよびQ2xのオンオフ状態の遷移タイミングに所定の遅延(いわゆるデッドタイム)が与えられている場合を含むこととする。
比較器COM2は、非反転入力端子に電圧指令値Vx*を受け、反転入力端子に搬送波CW2を受ける。比較器COM2は、電圧指令値Vx*および搬送波CW2の高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する。増幅器A3は、比較器COM2の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q3xのゲート信号を生成する。
反転器I2は、比較器COM2の出力信号を反転して増幅器A4に出力する。増幅器A4は、反転器I2の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q4xのゲート信号を生成する。すなわち、IGBT素子Q3xとIGBT素子Q4xとは相補的にオンオフが制御される。
比較器COM3は、非反転入力端子に電圧指令値Vx*を受け、反転入力端子に搬送波CW3を受ける。比較器COM3は、電圧指令値Vx*および搬送波CW3の高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する。増幅器A5は、比較器COM3の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q5xのゲート信号を生成する。
反転器I3は、比較器COM3の出力信号を反転して増幅器A6に出力する。増幅器A6は、反転器I3の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q6xのゲート信号を生成する。すなわち、IGBT素子Q5xとIGBT素子Q6xとは相補的にオンオフが制御される。
上記構成を有するコンバータ制御部によってコンバータ2が制御されることにより、図4に示されるように、状態1では、IGBT素子Q3xおよびQ5xがオン状態に固定され、IGBT素子Q4xおよびQ6xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q1xおよびQ2xがオンとオフとの間を切替わる。状態2では、IGBT素子Q2xおよびQ5xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1xおよびQ6xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q3xおよびQ4xがオンとオフとの間を切替わる。状態3では、IGBT素子Q2xおよびQ4xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1xおよびQ3xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q5xおよびQ6xがオンとオフとの間を切替わる。従来の電力変換装置におけるコンバータ制御部により実現される、IGBT素子Q1x〜Q6xのスイッチング制御を、表1に示す。なお、表1において、「SW」はIGBT素子がスイッチングすることを表し、「ON」はIGBT素子がオン状態に固定されていることを表し、「OFF」はIGBT素子がオフ状態に固定されていることを表す。
次に、従来の電力変換装置の制御装置にて実行されるインバータの制御について説明する。
図2に戻って、インバータ3x(3U,3V,3W)においては、IGBTQ3x,Q4xの接続点が交流出力端子Tx(TU,TV,TW)に対応する。インバータ3xの交流出力端子Txは対応する交流ラインxL(U相ラインUL、V相ラインVL、W相ラインWL)に接続される。IGBT素子Q1xと直流母線13との接続点T1が「第1の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q2xと直流母線14との接続点T2が「第2の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q5xと直流母線15との接続点T3が「第3の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q6xと直流母線16との接続点T4が「第4の直流入力端子」に対応する。
インバータ3xは、第1から第4の直流入力端子T1〜T4に4レベルの直流電圧を受け、交流出力端子Txに単相の交流電圧を出力するように構成される。インバータ3xにおけるIGBT素子Q1x〜Q6xのスイッチングは、制御装置に含まれるインバータ制御部により制御される。
制御装置に含まれるインバータ制御部は、図5に示したコンバータ制御部と同様の構成とすることができる。ただし、インバータ制御部において、電圧指令発生器は、電圧センサ23が検出した電圧Vx(VU,VV,VW)、および電圧センサ24が検出した電圧V1〜V3を受けて、U相、V相、W相にそれぞれ対応する電圧指令値Vx*(VU*,VV*,VW*)を生成する。電圧指令発生器は、負荷4に所望の周波数および振幅を有する交流電圧が供給されるように、電圧指令値Vx*を生成する。
インバータ制御部は、インバータ3xを3つの動作状態で動作させることができる。図4に示すように、第1の状態(状態1)は、交流ラインxL(UL,VL,WL)に与えられる電圧が第1の直流入力端子T1の電圧+Vの1/3より大きい場合に対応する。第2の状態(状態2)は、交流ラインxLに与えられる電圧が第1の直流入力端子T1の電圧+Vの1/3以下、かつ、第4の直流出力端子T4の電圧−Vの1/3以上である場合に対応する。第3の状態(状態3)は、交流ラインxLに与えられる電圧が、第4の直流入力端子T4の電圧−Vの1/3より小さい場合に対応する。
図3および図4に示すように、状態1では、IGBT素子Q3xおよびQ5xがオン状態に固定され、IGBT素子Q4xおよびQ6xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q1xおよびQ2xがオンとオフとの間を切替わる。これにより、状態1では、交流出力端子Txに、+Vと+V/3との間で切替わる方形波が出力される。
状態2では、IGBT素子Q2xおよびQ5xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1xおよびQ6xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q3xおよびQ4xがオンとオフとの間を切替わる。これにより、状態2では、交流出力端子Txに、+V/3と−V/3との間で切替わる方形波が出力される。
状態3では、IGBT素子Q2xおよびQ4xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1xおよびQ3xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q5xおよびQ6xがオンとオフとの間を切替わる。これにより、状態3では、交流出力端子Txに、−V/3と−Vとの間で切替わる方形波が出力される。すなわち、従来の電力変換装置において、インバータ制御部は、表1に示されるスイッチング制御を実行する。
以上説明したように、従来の電力変換装置において、コンバータ制御部およびインバータ制御部の各々は、交流ラインxLの電圧に基づいた3つの状態(状態1、状態2、状態3)の各々において、6つのIGBT素子Q1x〜Q6xのうち2つのIGBT素子を相補的にスイッチングするとともに、残り4つのIGBT素子をオン状態およびオフ状態のいずれかに固定するように構成されている。
しかしながら、上述した3つの状態の各々においては、2つのIGBT素子を相補的にスイッチングするときに、高調波電流が発生する。高調波電流は、基準周波数の整数倍の周波数を有しており、基準周波数の正弦波電流(基本波電流)に重畳されて交流端子Txに流出される。
図6には、状態1におけるインバータ3xの動作が模式的に示されている。表1で示したように、状態1では、IGBT素子Q1x,Q2xを相補的にスイッチングすることにより、交流出力端子Txに+Vと+V/3との間で切替わる方形波を出力することができる。具体的には、IGBT素子Q1xがオンであり、IGBT素子Q2xがオフであるときに、交流出力端子Txに+Vの電圧が出力される。IGBT素子Q1xがオフであり、IGBT素子Q2xがオンであるときに、交流出力端子Txに+V/3の電圧が出力される。
ここで、IGBT素子Q1xをオンすると、直流入力端子T1と交流出力端子Txとの間に電流が流れる。この電流は、基本波電流に高調波電流が重畳された電流となる。IGBT素子Q3はオン状態に固定されているため、図中に矢印A1,A2で示すように、基本波電流および高調波電流は、IGBT素子Q3xを経由して交流出力端子Txに流れる。高調波電流は、交流出力端子Txに電気的に接続される負荷4を振動させる、負荷4における損失を増大させるなどの悪影響を及ぼす可能性がある。なお、コンバータ2xにおいて、高調波電流は、交流入力端子Txに電気的に接続される商用交流電源1を擾乱させる可能性がある。
そこで、本実施の形態1に係る電力変換装置において、制御装置5は、IGBT素子Q6xを、IGBT素子Q1xと同時にオンし、かつ、IGBT素子Q1xと同時にオフする。また、IGBT素子Q5xを、IGBT素子Q2xと同時にオンし、IGBT素子Q2xと同時にオフする。すなわち、制御装置5は、IGBT素子Q1xおよびQ2xを相補的にスイッチングするとともに、IGBT素子Q6xをIGBT素子Q1xと同時かつ同様にスイッチングし、IGBT素子Q5xをIGBT素子Q2xと同時かつ同様にスイッチングする。本願明細書において「同時かつ同様」とは、2つのIGBT素子を同じタイミングでオンし、同じタイミングでオフすることを意味する。
図6の例では、状態1において、IGBT素子Q1xをオンするときにIGBT素子Q6xをオンし、IGBT素子Q2xをオンするときにIGBT素子Q5xをオンする。
ここで、IGBT素子Q1xとIGBT素子Q6xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさ(絶対値)が等しい直流端子T1,T4にそれぞれ接続されている。IGBT素子Q2xとIGBT素子Q5xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい直流端子T2,T3にそれぞれ接続されている。したがって、IGBT素子Q5x,Q6xを相補的にスイッチングしたときの電圧および電流の変化は、IGBT素子Q1x,Q2xを相補的にスイッチングしたときの電圧および電流の変化に対して逆位相となる。
IGBT素子Q1xがオンであり、IGBT素子Q2xがオフであるとき、交流出力端子Txに+Vの電圧を出力するように電流が流れる。このとき、IGBT素子Q6xをオンし、かつ、IGBT素子Q5xをオフすると、直流入力端子T4と交流出力端子TXとの間には、交流出力端子Txに−Vの電圧を出力するように電流が流れることとなる。この電流は基本波電流に高調波電流が重畳された電流となる。
ただし、IGBT素子Q4xはオフ状態に固定されているため、図中に矢印B1,B2で示すように、基本波電流は、IGBT素子Q4xが有する寄生容量Cpによって遮断され、交流出力端子Txには流れない。一方、高調波電流は、IGBT素子Q4xの寄生容量Cpを通って交流出力端子Txに流れる。
IGBT素子Q5x,Q6xのスイッチングにより発生する高調波電流は、IGBT素子Q1x,Q2xのスイッチングにより発生する高調波電流と同じ大きさであって、逆位相の電流となる。したがって、交流出力端子Txに流出されるIGBT素子Q1x,Q2xのスイッチングにより発生する高調波電流を、IGBT素子Q5x,Q6xのスイッチングにより発生する高調波電流によって相殺することができる。この結果、基本波電流に干渉することなく、高調波電流を抑制することができる。
なお、図示は省略するが、状態3においては、IGBT素子Q5x,Q6xを相補的にスイッチングすることにより、交流出力端子Txに−V/3と−Vとの間で切替わる方形波を出力することができる。状態3では、IGBT素子Q5xをオンするときに、IGBT素子Q2xをオンし、IGBT素子Q6xをオンするときに、IGBT素子Q1xをオンする。このようにすると、IGBT素子Q5x,Q6xのスイッチングにより発生する高調波電流を、IGBT素子Q1x,Q2xのスイッチングにより発生する高調波電流によって相殺することができる。この結果、基本波電流に干渉することなく、高調波電流を抑制することができる。
上述したIGBT素子Q1x〜Q6xのスイッチング制御は、コンバータ2xにおける制御にも適用することができる。これによると、コンバータ2xの交流入力端子Txに流れる高調波電流を低減できるため、商用交流電源1の擾乱を抑制することができる。
次に、図7から図9を参照して、本実施の形態1に係る電力変換装置100の制御装置5に含まれる、コンバータ制御部について説明する。
図7は、本実施の形態1に係る電力変換装置100の制御装置5に含まれる、コンバータ制御部を説明するブロック図である。図7を参照して、コンバータ制御部は、電圧指令発生器30と、搬送波発生器32,33と、絶対値回路35と、比較器COM4,COM5と、反転器I4〜I6と、増幅器A1〜A6とを含む。
電圧指令発生器30は、電圧センサ21が検出した電圧Vx(VR,VS,VT)、電流センサ22xが検出した電流Ix(IR,IS,IT)、電圧センサ24が検出した電圧V1〜V3を受けて、R相、T相、S相にそれぞれ対応する電圧指令値Vx*(VR*,VS*,VT*)を生成する。電圧指令値Vx*は、商用交流電源1から供給される交流電圧と等しい周波数および位相を有する正弦波信号である。図8および図9の例では、電圧指令値Vx*は+Vとほぼ等しい振幅を有する。
絶対値回路35は、電圧指令値Vx*の絶対値(|Vx*|)を出力する。絶対値回路35は、例えば全波整流回路により構成される。
搬送波発生器32は、搬送波CW1として三角波信号を生成する。搬送波CW1は、図8に示されるように、最大値が+Vであり、最小値が+V/3である。搬送波発生器33は、搬送波CW2として三角波信号を生成する。搬送波CW2は、図9に示されるように、最大値が+V/3であり、最小値が−V/3である。搬送波CW1,CW2の周波数および位相は同じである。
比較器COM4は、非反転入力端子(+端子)に電圧指令値Vx*の絶対値を受け、反転入力端子(−端子)に搬送波CW1を受ける。比較器COM4は、電圧指令値Vx*の絶対値および搬送波CW1の高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する。具体的には、比較器COM4は、電圧指令値Vx*の絶対値が搬送波CW1より大きい場合、Hレベルの信号を出力し、電圧指令値Vx*の絶対値が搬送波CW1より小さい場合、Lレベルの信号を出力する。
増幅器A1は、比較器COM4の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q1xのゲート信号を生成する。
反転器I5は、比較器COM4の出力信号を反転して増幅器A2に出力する。増幅器A2は、反転器I5の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q2xのゲート信号を生成する。IGBT素子Q1xとIGBT素子Q2xとは相補的にオンオフが制御されることになる。
増幅器A6は、比較器COM4の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q6xのゲート信号を生成する。
反転器I4は、比較器COM4の出力信号を反転して増幅器A5に出力する。増幅器A5は、反転器I4の出力信号を増幅することにより、IGBTQ5xのゲート信号を生成する。IGBT素子Q5xとIGBT素子Q6xとは相補的にオンオフが制御されることになる。
図7に示されるように、IGBT素子Q1xのゲート信号と、IGBT素子Q6xのゲート信号とは同一の信号であり、IGBT素子Q2xを駆動するための信号と、IGBT素子Q5xを駆動するための信号とは同一の信号である。これにより、IGBT素子Q1x,Q6xを同時かつ同様にスイッチングすることができる。また、IGBT素子Q2x,Q5xを同時かつ同様にスイッチングすることができる。
比較器COM5は、非反転入力端子に電圧指令値Vx*を受け、反転入力端子に搬送波CW2を受ける。比較器COM5は、電圧指令値Vx*および搬送波CW1の高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する。増幅器A3は、比較器COM5の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q3xのゲート信号を生成する。
反転器I6は、比較器COM5の出力信号を反転して増幅器A4に出力する。増幅器A4は、反転器I6の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q4xのゲート信号を生成する。IGBT素子Q3xとIGBT素子Q4xとは相補的にオンオフが制御される。
図8および図9は、本実施の形態1に係る電力変換装置100の制御装置5による、コンバータ2xのPWM制御を説明するための信号波形図である。IGBT素子Q1x〜Q6xのゲートには、それぞれゲート信号が与えられる。図8には、電圧指令値Vx*の絶対値|Vx*|、搬送波CW1および、IGBT素子Q1x,Q2x,Q5x,Q6xのゲート信号の波形が示されている。図9には、電圧指令値Vx*、搬送波CW2および、IGBT素子Q3x,Q4xのゲート信号の波形が示されている。
図7に示したコンバータ制御部によってコンバータ2xが制御されることにより、図8および図9に示されるように、状態1では、IGBT素子Q3xがオン状態に固定され、IGBT素子Q4xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q2x,Q5x,Q6xがオンとオフとの間を切替わる。なお、IGBT素子Q1xおよびQ6xは同時かつ同様にスイッチングされ、IGBT素子Q2xおよびQ5xが同時かつ同様にスイッチングされる。
状態2では、IGBT素子Q2xおよびQ5xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1xおよびQ6xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q3xおよびQ4xがオンとオフとの間を切替わる。
状態3では、IGBT素子Q4xがオン状態に固定され、IGBT素子Q3xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q2x,Q5x,Q6xがオンとオフとの間を切替わる。なお、IGBT素子Q1xおよびQ6xは同時かつ同様にスイッチングされ、IGBT素子Q2xおよびQ5xが同時かつ同様にスイッチングされる。図7のコンバータ制御部により実現される、IGBT素子Q1x〜Q6xのスイッチング制御を、表2に示す。
なお、図示は省略するが、インバータ制御部も図7に示したコンバータ制御部と同様の構成とすることができる。すなわち、表2に従ってインバータ3xにおけるIGBT素子Q1x〜Q6xをスイッチング制御することにより、交流出力端子Txに流出する高調波電流を低減することができる。
以上説明したように、本実施の形態1に係る電力変換装置によれば、4レベル回路で構成された電力変換器(コンバータおよびインバータ)において、6つのIGBT素子のうち2つのIGBT素子を相補的にスイッチングするときに、該2つのIGBT素子がそれぞれ電気的に接続される2つの直流端子とは、電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさ(絶対値)が等しい2つの直流端子にそれぞれ電気的に接続されている別の2つのIGBT素子を同時かつ同様にスイッチングする。これにより、該2つのIGBT素子が発生する高調波電流を、別の2つのIGBT素子が発生する逆位相の高調波電流で相殺することができる。よって、高調波電流を抑制することができる。
これによると、高調波抑制のために設けられているフィルタを、インダクタンス値の小さいリアクトルおよび容量の小さいコンデンサで構成することができるため、フィルタを小型化することができる。
また、図5に示す従来のコンバータ制御部と、図7に示す本実施の形態1のコンバータ制御部とを比較すると、本実施の形態1のコンバータ制御部では、IGBT素子Q1x,Q2xのゲート信号と、IGBT素子Q5x,Q6xのゲート信号を共通の搬送波を用いて生成することができるため、制御部に内蔵される搬送波発生器の数を減らすことができる。このように、フィルタおよび制御装置を小型化できるため、電力変換装置全体を小型化することができる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、4レベル回路で構成された電力変換器の制御について説明したが、本発明のスイッチング制御は、4レベル回路に限らず、2Nレベル(Nは2以上の整数)回路で構成された電力変換器の制御に対して適用することが可能である。
実施の形態2では、6レベル回路で構成された電力変換器の制御について説明する。なお、実施の形態2に係る電力変換装置の全体構成は、図1に示した電力変換装置100の全体構成と同じであるため、詳細な説明は繰返さない。
図10は、本発明の実施の形態2に係る電力変換装置におけるコンバータ2R,2S,2Tおよびインバータ3U,3V,3Wの構成を詳細に説明する回路図である。なお、コンバータ2R,2S,2Tは構成が互いに同じであり、インバータ3U,3V,3Wは構成が互いに同じであるため、代表的にコンバータ2Rおよびインバータ3Uの構成を説明する。
コンバータ2Rおよびインバータ3Uは、いずれも6レベル回路として構成され、10個のIGBT素子と10個のダイオードとを含む。詳細には、コンバータ2Rは、IGBT素子Q1R〜Q10RとダイオードD1R〜D10Rとを含む。インバータ3Uは、IGBT素子Q1U〜Q10UとダイオードD1U〜D10Uとを含む。以下ではコンバータ2Rおよびインバータ3Uを総括的に説明するため、符号R,Uをまとめて符号「x」と示す。
IGBT素子Q1x,Q3x,Q5xは、直流母線13および交流端子Txの間に直列に接続される。IGBT素子Q2xは、IGBT素子Q1x,Q3xの接続点と直流母線14の間に接続される。IGBT素子Q4xは、IGBT素子Q3x,Q5xの接続点と直流母線15との間に接続される。
IGBT素子Q6x,Q8x,Q10xは、交流端子Txおよび直流母線18の間に直列に接続される。IGBT素子Q7xは、IGBT素子Q6x,Q8xの接続点と直流母線16との間に接続される。IGBT素子Q9xは、IGBT素子Q8x,Q10xの接続点と直流母線17との間に接続される。
ダイオードD1x〜D10xは、IGBT素子Q1x〜Q10xにそれぞれ逆並列接続される。ダイオードD1x〜D10xは還流ダイオードとして機能する。
コンバータ2x(2R,2S,2T)においては、IGBTQ5x,Q6xの接続点が交流入力端子Tx(TR,TS,TT)に対応する。コンバータ2xの交流入力端子Txは、リアクトル12x(12R,12S,12T)を介して、対応する交流ライン(R相ラインRL、S相ラインSL、T相ラインTL)に接続される。IGBT素子Q1xと直流母線13との接続点T1が「第1の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q2xと直流母線14との接続点T2が「第2の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q4xと直流母線15との接続点T3が「第3の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q7xと直流母線16との接続点T4が「第4の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q9xと直流母線17との接続点T5が「第5の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q10xと直流母線18との接続点T6が「第6の直流出力端子」に対応する。
コンバータ2xは、交流入力端子Txに単相の交流電圧を受け、第1から第6の直流出力端子T1〜T6に6レベルの直流電圧を出力するように構成されている。例えば、交流入力端子Txが、ピークが±Vの商用交流電源1に接続されている場合、コンバータ2xは、第1の直流出力端子T1と中性点との間に約+Vの直流電圧を出力し、第2の直流出力端子T2と中性点との間に約+3V/5の直流電圧を出力し、第3の直流出力端子T3と中性点との間に約+V/5の直流電圧を出力し、第4の直流出力端子T4と中性点との間に約−V/5の直流電圧を出力し、第5の直流出力端子T5と中性点との間に約−3V/5の直流電圧を出力し、第6の直流出力端子T6と中性点との間に約−Vの直流電圧を出力する。すなわち、コンバータ2xは、直流出力端子T1およびT2間(電圧V1)、直流出力端子T2およびT3間(電圧V2)、直流出力端子T3およびT4間(電圧V3)、直流出力端子T4およびT5間(電圧V4)、および直流出力端子T5およびT6間(電圧V5)の各々に約2V/5の電圧を出力するように構成されている(V1=V2=V3=V4=V5=2V/5)。
コンバータ2xは、コンデンサ11xおよびリアクトル12xとともに昇圧コンバータとして作用し、交流ラインxLに与えられた交流電圧を、交流入力端子Txにおいて6レベルの準方形波に変換する。交流入力端子Txにおける電圧は、IGBT素子Q1x〜Q10xのオンオフ状態によって変化する。交流ラインxLの交流電圧の瞬時値が、第1の直流出力端子T1の直流電圧(+V)と第2の直流出力端子T2の直流電圧(+3V/5)との間であれば、交流入力端子Txにおける方形波はこれらの値(+V,+3V/5)の間で切替わる。交流ラインxLの交流電圧の瞬時値が、第2の直流出力端子T2の直流電圧(+3V/5)と第3の直流出力端子T3の直流電圧(+V/5)との間であれば、交流入力端子Txにおける方形波はこれらの値(+3V/5,+V/5)の間で切替わる。交流ラインxLの交流電圧の瞬時値が、第3の直流出力端子T3の直流電圧(+V/5)と第4の直流出力端子T4の直流電圧(−V/5)との間であれば、交流入力端子Txにおける方形波はこれらの値(+V/5,−V/5)の間で切替わる。交流ラインxLの交流電圧の瞬時値が、第4の直流出力端子T4の直流電圧(−V/5)と第5の直流出力端子T4の直流電圧(−3V/5)との間であれば、交流入力端子Txにおける方形波はこれらの値(−V/5,−3V/5)の間で切替わる。交流ラインxLの交流電圧の瞬時値が、第5の直流出力端子T5の直流電圧(−3V/5)と第6の直流出力端子T6の直流電圧(−V)との間であれば、交流入力端子Txにおける方形波はこれらの値(−3V/5,−V)の間で切替わる。
コンバータ2xにおけるIGBT素子Q1x〜Q10xのオンオフは、制御装置5に含まれるコンバータ制御部によって制御される。コンバータ制御部は、コンバータ2xにおける5つの動作状態のうち現在の動作状態に従って、IGBT素子Q1x〜Q6xのオンオフを制御するように構成される。
次に、図11を参照して、従来の電力変換装置の制御装置によるコンバータの制御について説明する。
図11は、従来の電力変換装置の制御装置による、コンバータ2xのPWM制御を説明するための信号波形図である。IGBT素子Q1x〜Q10xのゲートには、それぞれゲート信号が与えられる。図11には、電圧指令値Vx*、搬送波CW1〜CW5および、IGBT素子Q1x〜Q10xのゲート信号の波形が示されている。
図11を参照して、第1の状態(状態1)は、交流ラインxLに与えられる交流電圧が、第1の直流出力端子T1の電圧+Vの3/5より大きい場合に対応する。第2の状態(状態2)は、交流ラインxLに与えられる交流電圧が、第1の直流出力端子T1の電圧+Vの3/5以下、かつ、電圧+Vの1/5以上である場合に対応する。第3の状態(状態3)は、交流ラインxLに与えられる交流電圧が、第1の直流出力端子T1の電圧+Vの1/5以下、かつ、第6の直流出力端子T6の電圧−Vの1/5以上である場合に対応する。第4の状態(状態4)は、交流ラインxLに与えられる交流電圧が、第6の直流出力端子T6の電圧−Vの1/5以下、かつ、電圧−Vの3/5以上である場合に対応する。第5の状態(状態5)は、交流ラインxLに与えられる交流電圧が、第6の直流出力端子T6の電圧−Vの3/5より小さい場合に対応する。
搬送波CW1は、最大値が+Vであり、最小値が+3V/5である。搬送波CW2は、最大値が+3V/5であり、最小値が+V/5である。搬送波CW3は、最大値が+V/5であり、最小値が−V/5である。搬送波CW4は、最大値が−V/5であり、最小値が−3V/5である。搬送波CW5は、最大値が−3V/5であり、最小値が−Vである。搬送波CW1〜CW5は周波数および位相が同じである。搬送波CW1〜CW5は、電圧指令値Vx*の整数倍(例えば16倍)の周波数を有しており、電圧指令値Vx*に同期した信号である。
状態1では、IGBT素子Q3x,Q5x,Q7x,Q9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q4x,Q6x,Q8x,Q10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q1xおよびQ2xがオンとオフとの間を切替わる。
状態2では、IGBT素子Q2x,Q5x,Q7x,Q9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q6x,Q8x,Q10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q3xおよびQ4xがオンとオフとの間を切替わる。
状態3では、IGBT素子Q2x,Q4x,Q7x,Q9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q3x,Q5x,Q10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q5xおよびQ6xがオンとオフとの間を切替わる。
状態4では、IGBT素子Q2x,Q4x,Q6x,Q9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q3x,Q5x,Q10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q7xおよびQ8xがオンとオフとの間を切替わる。
状態5では、IGBT素子Q2x,Q7x,Q9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q3x,Q5x,Q10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q9xおよびQ10xがオンとオフとの間を切替わる。従来の電力変換装置におけるコンバータ制御部により実現される、IGBT素子Q1x〜Q10xのスイッチング制御を、表3に示す。
次に、従来の電力変換装置の制御装置に含まれる、インバータ制御部について説明する。
図10に戻って、インバータ3x(3U,3V,3W)においては、IGBTQ5x,Q6xの接続点が交流出力端子Tx(TU,TV,TW)に対応する。インバータ3xの交流出力端子Txは対応する交流ライン(U相ラインUL、V相ラインVL、W相ラインWL)に接続される。IGBT素子Q1xと直流母線13との接続点T1が「第1の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q2xと直流母線14との接続点T2が「第2の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q4xと直流母線15との接続点T3が「第3の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q7xと直流母線16との接続点T4が「第4の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q9xと直流母線17との接続点T5が「第5の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q10xと直流母線18との接続点T6が「第6の直流入力端子」に対応する。
インバータ3xは、第1から第6の直流入力端子T1〜T6に6レベルの直流電圧を受け、交流出力端子Txに単相の交流電圧を出力するように構成される。インバータ3xにおけるIGBT素子Q1x〜Q10xのオンオフは、制御装置に含まれるインバータ制御部によって制御される。
インバータ制御部は、インバータ3xを5つの動作状態で動作させることができる。第1の状態(状態1)は、交流ラインxL(UL,VL,WL)に与えられる交流電圧が、第1の直流入力端子T1の電圧+Vの3/5より大きい場合に対応する。第2の状態(状態2)は、交流ラインxLに与えられる交流電圧が、第1の直流入力端子T1の電圧+Vの3/5以下、かつ、電圧+Vの1/5以上である場合に対応する。第3の状態(状態3)は、交流ラインxLに与えられる交流電圧が、第1の直流入力端子T1の電圧+Vの1/5以下、かつ、第6の直流入力端子T6の電圧−Vの1/5以上である場合に対応する。第4の状態(状態4)は、交流ラインxLに与えられる交流電圧が、第6の直流入力端子T6の電圧−Vの1/5以下、かつ、電圧−Vの3/5以上である場合に対応する。第5の状態(状態5)は、交流ラインxLに与えられる交流電圧が、第6の直流入力端子T6の電圧−Vの3/5より小さい場合に対応する。
インバータ制御部は、状態1から状態5の各々において、表3に従って、IGBT素子Q1x〜Q10xのスイッチングを制御する。これにより、状態1では、IGBT素子Q3x,Q5x,Q7xおよびQ9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q4x,Q6x,Q8xおよびQ10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q1xおよびQ2xがオンとオフとの間を切替わる。状態1では、交流出力端子Txに、+Vと+3V/5との間で切替わる方形波が出力される。
状態2では、IGBT素子Q2x,Q5x,Q7xおよびQ9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q6x,Q8xおよびQ10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q3xおよびQ4xがオンとオフとの間を切替わる。状態2では、交流出力端子Txに、+3V/5と+V/5との間で切替わる方形波が出力される。
状態3では、IGBT素子Q2x,Q4x,Q7xおよびQ9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q3x,Q8xおよびQ10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q5xおよびQ6xがオンとオフとの間を切替わる。状態3では、交流出力端子Txに、+V/5と−V/5との間で切替わる方形波が出力される。
状態4では、IGBT素子Q2x,Q4x,Q6xおよびQ9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q3x,Q5xおよびQ10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q7xおよびQ8xがオンとオフとの間を切替わる。状態4では、交流出力端子Txに、−V/5と−3V/5との間で切替わる方形波が出力される。
状態5では、IGBT素子Q2x,Q4x,Q6xおよびQ8xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q3x,Q5xおよびQ7xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q9xおよびQ10xがオンとオフとの間を切替わる。状態5では、交流出力端子Txに、−3V/5と−Vとの間で切替わる方形波が出力される。
以上説明したように、従来の電力変換装置において、コンバータ制御部およびインバータ制御部の各々は、交流ラインxLの電圧に基づいた5つの状態(状態1から状態5)の各々において、10個のIGBT素子Q1x〜Q10xのうち2つのIGBT素子を相補的にスイッチングするとともに、残り8つのIGBT素子をオン状態およびオフ状態のいずれかに固定するように構成されている。そのため、各状態において、2つのIGBT素子を相補的にスイッチングすることにより、高調波電流が発生する。
本実施の形態2では、以下に説明するように、10個のIGBT素子のうち2つのIGBT素子を相補的にスイッチングするときに、該2つのIGBT素子がそれぞれ電気的に接続される2つの直流端子とは、電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさ(絶対値)が等しい2つの直流端子にそれぞれ電気的に接続されている別の2つのIGBT素子を同時かつ同様にスイッチングすることにより、高調波電流を抑制する。
次に、図12から図14を参照して、本実施の形態2に係る電力変換装置100の制御装置5に含まれる、コンバータ制御部について説明する。
図12は、本実施の形態2に係る電力変換装置の制御装置に含まれる、コンバータ制御部を説明するブロック図である。図12を参照して、コンバータ制御部は、電圧指令発生器30と、搬送波発生器32,33,34と、絶対値回路35と、比較器COM6〜COM8と、反転器I7〜I11と、増幅器A1〜A10とを含む。
電圧指令発生器30は、電圧センサ21が検出した電圧Vx(VR,VS,VT)、電流センサ22xが検出した電流Ix(IR,IS,IT)、電圧センサ24が検出した電圧V1〜V3を受けて、R相、T相、S相にそれぞれ対応する電圧指令値Vx*(VR*,VS*,VT*)を生成する。電圧指令値Vx*は、商用交流電源1から供給される交流電圧と等しい周波数および位相を有する正弦波信号である。図13および図14の例では、電圧指令値Vx*は+Vとほぼ等しい振幅を有する。
絶対値回路35は、電圧指令値Vx*の絶対値(|Vx*|)を出力する。絶対値回路35は、例えば全波整流回路により構成される。
搬送波発生器32は、搬送波CW1として三角波信号を生成する。搬送波CW1は、図13に示されるように、最大値が+Vであり、最小値が+3V/5である。搬送波発生器33は、搬送波CW2として三角波信号を生成する。搬送波CW2は、図13に示されるように、最大値が+3V/5であり、最小値が+V/5である。搬送波発生器34は、搬送波CW3として三角波信号を生成する。搬送波CW3は、図14に示されるように、最大値が+V/5であり、最小値が−V/5である。搬送波CW1,CW2,CW3の周波数および位相は同じである。搬送波CW1,CW2,CW3は、電圧指令値Vx*の整数倍(例えば16倍)の周波数を有し、電圧指令値Vx*に同期した信号である。
比較器COM6は、非反転入力端子(+端子)に電圧指令値Vx*の絶対値(|Vx*|)を受け、反転入力端子(−端子)に搬送波CW1を受ける。比較器COM6は、電圧指令値Vx*の絶対値および搬送波CW1の高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する。具体的には、比較器COM6は、電圧指令値Vx*の絶対値が搬送波CW1より大きい場合、Hレベルの信号を出力し、電圧指令値Vx*の絶対値が搬送波CW1より小さい場合、Lレベルの信号を出力する。
増幅器A1は、比較器COM6の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q1xのゲート信号を生成する。
反転器I8は、比較器COM6の出力信号を反転して増幅器A2に出力する。増幅器A2は、反転器I8の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q2xのゲート信号を生成する。IGBT素子Q1xとIGBT素子Q2xとは相補的にオンオフが制御されることになる。
増幅器A10は、比較器COM6の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q10xのゲート信号を生成する。
反転器I7は、比較器COM6の出力信号を反転して増幅器A9に出力する。増幅器A9は、反転器I7の出力信号を増幅することにより、IGBTQ9xのゲート信号を生成する。IGBT素子Q9xとIGBT素子Q10xとは相補的にオンオフが制御されることになる。
図12に示されるように、IGBT素子Q1xのゲート信号と、IGBT素子Q10xのゲート信号とは同一の信号であり、IGBT素子Q2xのゲート信号と、IGBT素子Q9xのゲート信号とは同一の信号である。これにより、IGBT素子Q1x,Q10xを同時かつ同様にスイッチングすることができる。また、IGBT素子Q2x,Q9xを同時かつ同様にスイッチングすることができる。
比較器COM7は、非反転入力端子に電圧指令値Vx*の絶対値を受け、反転入力端子に搬送波CW2を受ける。比較器COM7は、電圧指令値Vx*の絶対値および搬送波CW2の高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する。増幅器A3は、比較器COM7の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q3xのゲート信号を生成する。
反転器I10は、比較器COM7の出力信号を反転して増幅器A4に出力する。増幅器A4は、反転器I10の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q4xのゲート信号を生成する。IGBT素子Q3xとIGBT素子Q4xとは相補的にオンオフが制御される。
増幅器A8は、比較器COM7の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q8xのゲート信号を生成する。
反転器I9は、比較器COM7の出力信号を反転して増幅器A7に出力する。増幅器A7は、反転器I9の出力信号を増幅することにより、IGBTQ7xのゲート信号を生成する。IGBT素子Q7xとIGBT素子Q8xとは相補的にオンオフが制御されることになる。
IGBT素子Q3xのゲート信号と、IGBT素子Q8xのゲート信号とは同一の信号であり、IGBT素子Q4xのゲート信号と、IGBT素子Q7xのゲート信号とは同一の信号である。よって、IGBT素子Q3x,Q8xを同時かつ同様にスイッチングし、IGBT素子Q4x,Q7xを同時かつ同様にスイッチングすることができる。
比較器COM8は、非反転入力端子に電圧指令値Vx*を受け、反転入力端子に搬送波CW3を受ける。比較器COM8は、電圧指令値Vx*および搬送波CW3の高低を比較し、比較結果を示す信号を出力する。増幅器A5は、比較器COM8の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q5xのゲート信号を生成する。
反転器I11は、比較器COM8の出力信号を反転して増幅器A6に出力する。増幅器A6は、反転器I11の出力信号を増幅することにより、IGBT素子Q6xのゲート信号を生成する。IGBT素子Q5xとIGBT素子Q6xとは相補的にオンオフが制御される。
図13および図14は、本実施の形態2に係る電力変換装置の制御装置5による、コンバータ2xのPWM制御を説明するための信号波形図である。IGBT素子Q1x〜Q10xのゲートには、それぞれゲート信号が与えられる。図13には、電圧指令値Vx*の絶対値|Vx*|、搬送波CW1,CW2および、IGBT素子Q1x〜Q4x,Q7x〜Q10xのゲート信号の波形が示されている。図14には、電圧指令値Vx*、搬送波CW3および、IGBT素子Q5x,Q6xのゲート信号の波形が示されている。
図12に示したコンバータ制御部によってコンバータ2xが制御されることにより、状態1および状態5では、IGBT素子Q3x,Q5x,Q8xがオン状態に固定され、IGBT素子Q4x,Q6x,Q7xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q2x,Q9x,Q10xがオンとオフとの間を切替わる。なお、IGBT素子Q1x,Q10xは同時かつ同様にスイッチングされ、IGBT素子Q2x,Q9xは同時かつ同様にスイッチングされる。
状態2および状態4では、IGBT素子Q2x,Q5x,Q9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q6x,Q10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q3x,Q4x,Q7x,Q8xがオンとオフとの間を切替わる。なお、IGBT素子Q3x,Q8xは同時かつ同様にスイッチングされ、IGBT素子Q4x,Q7xは同時かつ同様にスイッチングされる。
状態3では、IGBT素子Q2x,Q4x,Q7x,Q9xがオン状態に固定され、IGBT素子Q1x,Q3x,Q8x,Q10xがオフ状態に固定され、IGBT素子Q5x,Q6xがオンとオフとの間を切替わる。本実施の形態2に係る電力変換装置におけるコンバータ制御部により実現される、IGBT素子Q1x〜Q6xのスイッチング制御を、表4に示す。
なお、図示は省略するが、インバータ制御部も図12に示したコンバータ制御部と同様の構成とすることができる。すなわち、表4に従ってインバータ3xにおけるIGBT素子Q1x〜Q10xのスイッチングを制御することができる。
図10に示すように、コンバータ2xおよびインバータ3xの各々において、IGBT素子Q1xとIGBT素子Q10xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさ(絶対値)が等しい直流端子T1,T6にそれぞれ接続されている。IGBT素子Q2xとIGBT素子Q9xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい直流端子T2,T5にそれぞれ接続されている。したがって、IGBT素子Q1x,Q2xを相補的にスイッチングしたときの電圧および電流の変化は、IGBT素子Q9x,Q10xを相補的にスイッチングしたときの電圧および電流の変化に対して逆位相となる。上述したように、IGBT素子Q1x,Q10xを同時かつ同様にスイッチングし、かつ、IGBT素子Q2x,Q9xを同時かつ同様にスイッチングすることにより、スイッチングにより発生する高調波電流を互いに相殺し合うことができる。
IGBT素子Q3xとIGBT素子Q8xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい直流端子(T1またはT2),(T5またはT6)にそれぞれ電気的に接続されている。IGBT素子Q4xとIGBT素子Q7xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい直流端子T3,T4にそれぞれ接続されている。したがって、IGBT素子Q3x,Q4xを相補的にスイッチングしたときの電圧および電流の変化は、IGBT素子Q7x,Q8xを相補的にスイッチングしたときの電圧および電流の変化に対して逆位相となる。上述したように、IGBT素子Q3x,Q8xを同時かつ同様にスイッチングし、かつ、IGBT素子Q4x,Q7xを同時かつ同様にスイッチングすることにより、スイッチングにより発生する高調波電流を互いに相殺し合うことができる。
(変形例)
本実施の形態2に係る電力変換装置の制御装置によるコンバータおよびインバータの制御は、図15に示される6レベル回路を有するコンバータおよびインバータに対しても適用することができる。
図15は、本発明の実施の形態2の変形例に係る電力変換装置におけるコンバータ2R,2S,2Tおよびインバータ3U,3V,3Wの構成を詳細に説明する回路図である。なお、コンバータ2R,2S,2Tは構成が互いに同じであり、インバータ3U,3V,3Wは構成が互いに同じであるため、代表的にコンバータ2Rおよびインバータ3Uの構成を説明する。
コンバータ2Rおよびインバータ3Uは、いずれも6レベル回路として構成される。コンバータ2Rは、IGBT素子Q1R〜Q10RとダイオードD1R〜D10Rとを含む。インバータ3Uは、IGBT素子Q1U〜Q10UとダイオードD1U〜D10Uとを含む。以下ではコンバータ2Rおよびインバータ3Uを総括的に説明するため、符号R,Uをまとめて符号「x」と示す。
IGBT素子Q1x,Q5xは、直流母線13および交流端子Txの間に直列に接続される。IGBT素子Q4xは、IGBT素子Q1x,Q5xの接続点と直流母線15の間に接続される。IGBT素子Q2x,Q3xは、IGBT素子Q1x,Q5xの接続点と直流母線14との間に直列に接続される。なお、IGBT素子2xのエミッタはIGBT素子Q1x,Q5xの接続点に接続され、そのコレクタはIGBT素子Q2xのコレクタに接続される。IGBT素子Q2xのエミッタは直流母線14に接続される。
IGBT素子Q6x,Q10xは、交流端子Txおよび直流母線18の間に直列に接続される。IGBT素子Q7xは、IGBT素子Q6x,Q10xの接続点と直流母線16との間に接続される。IGBT素子Q8x,Q9xは、IGBT素子Q6x,Q10xの接続点と直流母線17との間に直列に接続される。なお、IGBT素子8xのエミッタはIGBT素子Q6x,Q10xの接続点に接続され、そのコレクタはIGBT素子Q9xのコレクタに接続される。IGBT素子Q9xのエミッタは直流母線17に接続される。
ダイオードD1x〜D10xは、IGBT素子Q1x〜Q10xにそれぞれ逆並列接続される。ダイオードD1x〜D10xは還流ダイオードとして機能する。
コンバータ2x(2R,2S,2T)においては、IGBTQ5x,Q6xの接続点が交流入力端子Tx(TR,TS,TT)に対応する。コンバータ2xの交流入力端子Txは、リアクトル12x(12R,12S,12T)を介して、対応する交流ラインxL(R相ラインRL、S相ラインSL、T相ラインTL)に接続される。IGBT素子Q1xと直流母線13との接続点T1が「第1の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q2xと直流母線14との接続点T2が「第2の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q4xと直流母線15との接続点T3が「第3の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q7xと直流母線16との接続点T4が「第4の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q9xと直流母線17との接続点T5が「第5の直流出力端子」に対応し、IGBT素子Q10xと直流母線18との接続点T6が「第6の直流出力端子」に対応する。
インバータ3x(3U,3V,3W)においては、IGBTQ5x,Q6xの接続点が交流出力端子Tx(TU,TV,TW)に対応する。インバータ3xの交流出力端子Txは、リアクトル17x(17U,17V,17W)を介して、対応する交流ラインxL(U相ラインUL、V相ラインVL、W相ラインWL)に接続される。IGBT素子Q1xと直流母線13との接続点T1が「第1の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q2xと直流母線14との接続点T2が「第2の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q4xと直流母線15との接続点T3が「第3の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q7xと直流母線16との接続点T4が「第4の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q9xと直流母線17との接続点T5が「第5の直流入力端子」に対応し、IGBT素子Q10xと直流母線18との接続点T6が「第6の直流入力端子」に対応する。
コンバータ2xおよびインバータ3xにおけるIGBT素子Q1x〜Q10xのスイッチングは、制御装置5に含まれるコンバータ制御部およびインバータ制御によりそれぞれ制御される。各制御部は、図11に示した5つの動作状態(状態1から状態5)のうち現在の動作状態に従って、IGBT素子Q1x〜Q10xのスイッチングを制御するように構成されている。IGBT素子Q1x〜Q10xのスイッチング制御は、表4に従って実行することができる。
本変形例においても、コンバータ2xおよびインバータ3xの各々において、IGBT素子Q1xとIGBT素子Q10xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい直流端子T1,T6にそれぞれ接続されている。IGBT素子Q2xとIGBT素子Q9xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい直流端子T2,T5にそれぞれ接続されている。したがって、IGBT素子Q1x,Q10xを同時かつ同様にスイッチングし、かつ、IGBT素子Q2x,Q9xを同時かつ同様にスイッチングすることにより、スイッチングにより発生する高調波電流を互いに相殺し合うことができる。
また、IGBT素子Q3xとIGBT素子Q8xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい直流端子T2,T5にそれぞれ電気的に接続されている。IGBT素子Q4xとIGBT素子Q7xとは、中性点に対する電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい直流端子T3,T4にそれぞれ接続されている。したがって、IGBT素子Q3x,Q8xを同時かつ同様にスイッチングし、かつ、IGBT素子Q4x,Q7xを同時かつ同様にスイッチングすることにより、スイッチングにより発生する高調波電流を互いに相殺し合うことができる。
以上説明した本発明の実施の形態1および2に係る電力変換装置におけるコンバータおよびインバータの制御は、2N(Nは2以上の整数)レベル回路を有する電力変換器の制御に一般化することができる。
すなわち、第1から第2Nの直流端子T1〜T2Nと、交流端子Txとの間で電力変換を行なう電力変換器は、第1から第4のスイッチング素子を含んでいる。第1のスイッチング素子は、第I(1≦I≦N−1)の直流端子TIに電気的に接続される。第2のスイッチング素子は、第1のスイッチング素子と第(I+1)の直流端子T(I+1)との間に電気的に接続される。第3のスイッチング素子は、第K(N+1≦K≦2N−1)の直流端子TKに電気的に接続される。第4のスイッチング素子は、第3のスイッチング素子と第(K+1)の直流端子T(K+1)との間に電気的に接続される。
ここで、第Iの直流端子TIの電圧(第Iの電圧)と、第(K+1)の直流端子の電圧(第(K+1)の電圧)とは、絶対値が等しく、互いに逆極性である。第(I+1)の直流端子T(I+1)の電圧(第(I+1)の電圧)と、第Kの直流端子の電圧(第Kの電圧)とは、絶対値が等しく、互いに逆極性である。
すなわち、第1および第4のスイッチング素子は、電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい、直流端子TI,T(K+1)にそれぞれ電気的に接続されている。第2および第3のスイッチング素子は、電圧の極性が反対であり、かつ、電圧の大きさが等しい直流端子T(I+1),TKにそれぞれ電気的に接続されている。
制御装置は、第Iの電圧および第(I+1)の電圧の間で切替わる方形波を交流端子Txに発生させる場合には、第1および第2のスイッチング素子を相補的にスイッチングする。このとき、制御装置は、第4のスイッチング素子を第1のスイッチング素子と同時かつ同様にスイッチングし、かつ、第3のスイッチング素子を第2のスイッチング素子と同時かつ同様にスイッチングする。
また制御装置は、第Kの電圧および第(K+1)の電圧の間で切替わる方形波を交流端子Txに発生させる場合には、第3および第4のスイッチング素子を相補的にスイッチングする。このとき、制御装置は、第1のスイッチング素子を第4のスイッチング素子と同時かつ同様にスイッチングし、かつ、第2のスイッチング素子を第3のスイッチング素子と同時かつ同様にスイッチングする。
このような構成とすることにより、第1および第2のスイッチング素子のスイッチングにより発生する高調波電流と、第3および第4のスイッチング素子のスイッチングにより発生する高調波電流とを互いに相殺することができるため、高調波電流を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、商用交流電源1として三相交流電源を示したが、商用交流電源1は単相交流電源であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。