以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系において、鉛直方向をZ方向とし、水平方向をX方向、Y方向とする。X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るパンチ金型1の一例を示す断面図である。パンチ金型1は、例えば、パンチプレスの上タレット(不図示)に保持され、ラムR等に押圧されることにより、後述するパンチ2を下方(−Z方向)に移動させ、板状のワークWを加工する。なお、パンチ金型1の使用状態については後述する。図1に示すように、パンチ金型1は、パンチ2と、パンチヘッド3と、パンチガイド4と、ロック機構6と、を備える。
パンチ2は、円柱形状に形成され、パンチガイド4内に配置される。また、パンチ2は、パンチガイド4に対して上下方向(Z方向)へ移動可能である。パンチ2は、下側のパンチ刃部9と、上側のパンチ上部10と、を備える。パンチ刃部9は、下端に刃先11を有する。刃先11の形状は、ワークWに対して孔あけ、切断または成形する形状に形成され、例えばXY面に沿った断面が、例えば、円形状、楕円形状、長円形状、四角形などの多角形状などに形成されている。
パンチ上部10は、下部材12と上部材13とがボルト等の締結部材14により締結されて一体化される。パンチ上部10の下部材12は、外周面において上下方向に沿ったキー溝15を備えている。パンチ上部10の上部材13には、上部の外周面に雄ネジ部16を備えている。雄ネジ部16は、後述するパンチヘッド3の雌ネジ部21とネジ結合可能である。
パンチヘッド3は、上端にフランジ状のヘッド上部20を備える。ヘッド上部20は、ラムRと接触してラムRから押圧される部分である。また、パンチヘッド3は、上記したパンチ2の雄ネジ部16とネジ結合する雌ネジ部21を備える。また、パンチヘッド3は、外周面において上下方向に沿った複数の溝状の凹部25を有する。凹部25は、後述するロックピン36の先端が進入可能な幅に設けられる。なお、複数の凹部25は、パンチヘッド3の外周面において一周にわたって複数設けられ、例えば、パンチヘッド3の外周面において等間隔(90度間隔)で4か所に形成される。ただし、凹部25の数は任意であり、例えば、1つ〜3つでもよく、また5つ以上でもよい。また、複数の凹部25は、等間隔で配置されることに限定されず、間隔が異なる配置であってもよい。
雄ネジ部16と雌ネジ部21とがネジ結合していることにより、パンチヘッド3をパンチ2に対して回転(パンチ2とパンチヘッド3とを相対的に回転)させることにより、パンチヘッド3に対するパンチ2下端の刃先11の位置(刃先11の高さ)を調整することができる。例えば、雄ネジ部16及び雌ネジ部21のネジピッチが1.5mmの場合、パンチ2をパンチヘッド3に対して1回転させることにより刃先11を下方に1.5mm移動させることができる。ただし、雄ネジ部16及び雌ネジ部21のネジピッチは任意に設定可能である。
4つの凹部25が90度間隔で形成されている場合(図2参照)、凹部25の位置を基準とすることにより、パンチ2を1/4回転させることができる。この場合、刃先11は、1.5mm/4=0.375mmで、約0.4mmずつ下方に移動させることができ、刃先11の位置の微調整が可能となっている。また、パンチヘッド3は、外周面の下部に外側に向けて環状に突出する突出部26が形成される。突出部26は、上記した凹部25の下方に形成されている。
パンチガイド4は、筒状に形成されて内側にパンチ2及びストリッパスプリング5を収容し、かつ、パンチ2を上下方向に案内する。また、パンチガイド4は、下端にストリッパプレート27がボルト等の締結部材28により取り付けられる。ストリッパプレート27は、パンチ2のパンチ刃部9が進入可能な貫通孔29を備えている。パンチ刃部9は、この貫通孔29を介してストリッパプレート27から下方に突出可能となっている。なお、非使用時においては、パンチ刃部9の刃先11は、ストリッパプレート27より上方に収容された状態となっている。なお、非使用時において、ストリッパスプリング5は、自由長に対して収縮させて取り付けられている。
パンチガイド4は、キー30を備え、キー30の先端がパンチ2のキー溝15に突出した状態となっている。キー30がキー溝15に入っていることにより、パンチ2は、パンチガイド4に対して相対的な回転が規制されつつ、上下方向に相対的に移動が可能となっている。従って、パンチヘッド3をパンチガイド4に対して回転させることにより、キー30及びキー溝15によってパンチヘッド3がパンチガイド4及びパンチ2に対して回転し、上記した雄ネジ部16及び雌ネジ部21によって刃先11の高さを調整することできる。なお、刃先11の高さ調整に際して、パンチガイド4をパンチヘッド3に対して回転させてもよい。
パンチガイド4は、内周面にストリッパスプリング5の下端を受けるための環状の段部31が形成される。また、パンチガイド4の上部には、パンチヘッド3を貫通した状態で環状のプレート32がボルト等の締結部材33により取り付けられる。プレート32の内径は、上記したパンチヘッド3の突出部26の外径よりも小さく形成されている。これにより、パンチガイド4は、プレート32がパンチヘッド3の突出部26に係止されてパンチヘッド3に対する下方への移動が規制される。なお、パンチガイド4は、パンチヘッド3に対して上方への移動は可能である。
プレート32には、ロック機構6が形成される。また、プレート32は、内周側に一部が突出した状態でボール部34が配置される。なお、ロック機構6及びボール部34については別図を用いて後に詳述する。
ストリッパスプリング5は、例えば、角バネが用いられる。ストリッパスプリング5は、パンチガイド4の段部31と、パンチヘッド3の突出部26の下側に配置された環状の受け部材35と、の間に配置される。受け部材35は、パンチガイド4の内周面に沿って上下方向に移動可能である。パンチ2は、ストリッパスプリング5の弾性力に抗して、パンチガイド4に対して下方に移動可能である。この場合、ストリッパスプリング5は、段部31と受け部材35との間で収縮された状態となり、パンチ刃部9の刃先11をストリッパプレート27から下方に突出させることができる。なお、パンチ2がパンチガイド4に対して下方に移動する際、キー30及びキー溝15によって両者の相対的な回転が規制されていることは上記のとおりである。
図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。ロック機構6は、パンチヘッド3とパンチガイド4(すなわちパンチヘッド3とパンチ2)との相対的な回転を規制したロック状態を保持し、また、パンチヘッド3とパンチガイド4(すなわちパンチヘッド3とパンチ2)との相対的な回転を許容したアンロック状態を保持する。ロック機構6は、パンチヘッド3の外周側に配置される。
ロック機構6は、図2に示すように、ロックピン36と、軸部37と、カム部材38と、を備える。ロックピン36は、プレート32においてX方向に貫通する貫通孔39に配置され、先端側(−X側)がパンチヘッド3の凹部25に入り込んだ進出位置と、先端側が凹部25から離れた退避位置との間を移動可能である。また、ロックピン36は、後端側(+X側)に鍔部40を備えている。また、貫通孔39に設けられた段部42と、鍔部40との間に、コイルスプリング等の弾性部材41が配置される。ロックピン36は、この弾性部材41によって退避方向に向けて弾性力を受けている。
軸部37は、ロックピン36の進退方向と交差する上下方向に配置され、カム部材38を回転可能に支持する。カム部材38は、軸部37を中心として回転可能であり、軸部37を挟んで−Y側に第1操作部43を備え、+Y側に第2操作部44を備えている。このように、第1操作部43及び第2操作部44は、カム部材38の異なる場所にそれぞれ配置される。
また、カム部材38は、軸部37の−X側かつ−Y側に押圧部45を備えている。押圧部45は、カム部材38の第1操作部43を押し込んだ際に、ロックピン36の後端面を押してロックピン36を−X方向に押し出す。これにより、ロックピン36が進出して凹部25に入り込み、ロック状態が保持される。また、カム部材38の第2操作部44を押し込んだ際には、ロックピン36の後端面が押圧部45から外れる。これにより、ロックピン36が弾性部材41の弾性力によって+X方向に退避し、ロックピン36が凹部25から離れたアンロック状態が保持される。
図3は、上記したロック機構6の動作の一例を示し、(A)はロックピン36を進出したロック状態、(B)はロックピン36を退避したアンロック状態を示す図である。図3(A)に示すように、作業者等によって第1操作部43をパンチヘッド3側に向けて押すことにより、カム部材38が回転して、押圧部45がロックピン36の+X側に配置される。これにより、ロックピン36は、押圧部45によって退避位置から−X方向に移動し、凹部25に向けて進出する。
進出位置に移動したロックピン36は、先端が凹部25に入り込むことにより、上記したロック状態となる。なお、ロックピン36の進退方向に軸部37が配置され、かつ、押圧部45がロックピン36と軸部37との間に位置するため、弾性部材41の弾性力によりロックピン36が退避方向(+X方向)に力を受けてもカム部材38は回転せず、ロック状態が保持される。従って、作業者等が第1操作部43から手を放した場合でもロック状態が維持される。
次に、図3(B)に示すように、作業者等によって第2操作部44をパンチヘッド3側に向けて押すことにより、カム部材38が回転して、押圧部45がロックピン36の+X側から外れた状態となる。これにより、ロックピン36は、弾性部材41の弾性力により+X方向に移動し、凹部25から離れて退避する。
退避位置に移動したロックピン36は、先端が凹部25から外れることにより、上記したアンロック状態となる。なお、ロックピン36は、弾性部材41の弾性力により退避方向(+X方向)に力を受けているため、先端が凹部25に入り込むことはなく、アンロック状態が保持される。従って、作業者等が第2操作部44から手を放した場合でもアンロック状態が維持される。
図2に戻り、ボール部34は、パンチヘッド3を挟んで、ロックピン36の反対側に配置される。図2に示すように、ボール部34は、プレート32に設けられた収容部46に設置され、+X側(パンチヘッド3側)の球面がプレート32の内周から突出可能な状態となっている。収容部46には、ボール部34と、コイルスプリング等の弾性部材48とを備える筒状のハウジング47が取り付けられている。弾性部材48は、ボール部34とハウジング47の底面との間に設置され、ボール部34に対してパンチヘッド3に向けて弾性力を付与している。従って、ボール部34は、パンチヘッド3側の球面がプレート32の内周から突出した状態が保持される。
ボール部34は、ロックピン36(ロック機構6)が複数の凹部25のいずれかと位置合わせされた際に、他の凹部25に球面が入り込むように配置される。従って、図2に示すように、凹部25が90度間隔で形成されている場合、ボール部34は、ロックピン36に対して反対側に形成されることに限定されず、例えば、プレート32の+Y側または−Y側(すなわちパンチヘッド3の中心を軸としてロックピン36から反時計回りまたは時計回りに90度の位置)にボール部34が配置されてもよい。
図4は、ボール部34の動作の一例を示し、(A)は凹部25から外れた状態、(B)は凹部25に入った状態を示す図である。図4(A)に示すように、ボール部34が凹部25から外れている場合は、パンチヘッド3の外周面によってボール部34が押されて、−X方向(外方)に移動している。この状態でパンチヘッド3をパンチガイド4(パンチ2)に対して回転させ、凹部25がボール部34と対向した際、図4(B)に示すように、ボール部34は、弾性部材48の弾性力により押されて、球面の一部が凹部25に入り込んだ状態となる。
これにより、パンチガイド4とパンチヘッド3とは弱く保持された状態となる。この状態では、別の凹部25がロックピン36と位置合わせされた状態である。なお、凹部25にはボール部34の球面の一部が入り込んでいるだけなので、パンチヘッド3とパンチガイド4とを強く回転させるとボール部34が凹部25から外れて、両者の回転が許容される。また、ボール部34が凹部25に入り込む際に発音及び軽度のひっかかり感が発生するため、作業者は、凹部25とロックピン36とが置合わせされたことを容易に確認することができる。また、作業者は、ボール部34により発音した回数をカウントすることにより、パンチヘッド3とパンチガイド4との相対的な回転量を容易に確認できる。ただし、ボール部34を配置するか否かは任意であり、ボール部34がなくてもよい。
次に、上記したパンチ金型1の使用状態について説明する。パンチ金型1は、例えば、タレットパンチプレスの上タレットなどに保持される。タレットパンチプレスのラムR(図1参照)にパンチヘッド3が押圧されることにより、パンチ金型1はワークW(図1参照)に向けて降下する。なお、ワークWの下方にはパンチ2に対応するダイが予め配置されている。続いて、ストリッパプレート27がワークWに当接した後、さらにラムRにより下方に押されることでパンチ2がストリッパスプリング5の弾性力に抗してかつパンチガイド4にガイドされて降下し、ダイとの間にワークWを挟み込んでワークWの孔あけ、切断または成形を行う。このとき、ロックピン36の先端は凹部25に入っているが、凹部25が上下方向の溝状であるため、凹部25に沿って移動する。同様に、ボール部34の球面の一部も別の凹部25に入っているが、凹部25に沿って移動する。
ワークWの加工終了後は、ラムRが上昇することにより、パンチ2がストリッパスプリング5の弾性力により上昇する。このとき、ストリッパプレート27はワークWに当接したままである。さらにラムRが上昇することにより、例えば上タレットに備える復帰用スプリングによりパンチ金型1が上昇し、元の状態に戻る。
このような動作を繰り返すことにより、ワークWに対して複数の加工を行うが、パンチ2の刃先11が摩耗して所望の品質に孔あけ、切断または成形できなくなる場合がある。この場合、先ず、上タレットからパンチ金型1を取り外し、パンチ2のパンチ刃部9の下端を研磨機等により研磨することにより改めて刃先11を形成する。この研磨により、刃先11の位置が以前より高くなっているので、刃先11の高さ調整が必要となる。作業者は、ロック機構6のカム部材38の第2操作部44を押してアンロック状態とする。上述のように、ロック機構6は、アンロック状態を保持するため、作業者は、ロック機構6から手を放してパンチヘッド3をパンチガイド4(パンチ2)に対して回転させることにより、容易に刃先11の高さ調整を行うことができる。刃先11の高さ調整を行った後、作業者は、カム部材38の第1操作部43を押すことによりロック状態となり、このパンチ金型1を再度上タレットに装着が可能となる。
図5は、カム部材の変形例を示し、(A)はロックピン36を退避した状態、(B)はロックピン36を進出した状態を示す図である。図5(A)に示すように、カム部材38は、第1操作部43側の上面であってこの第1操作部43を押したときにプレート32に入り込む位置に着色部50を備える。着色部50は、例えば、作業者に目視しやすい赤色や黄色等の色彩が用いられる。また、着色部50は塗料を塗ることで形成されてもよいし、着色したシール等を貼ることで形成されてもよい。また、着色部50は、小型のLEDなどを配置して発光するものでもよい。
作業者は、第1操作部43を押すことにより、図5(B)に示すように、着色部50がプレート32に隠れた状態となる。これにより、作業者は、パンチ金型1の外観から着色部50の有無を確認することによってロック状態が確保されていることを容易に確認することができる。なお、着色部50の形状は図示のものに限定されず、例えば円形状や多角形状など、任意の形状を適用可能である。
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態のロック機構6に代えてロック機構6Aが設けられている点で第1実施形態と異なっている。なお、第2実施形態において、上述の第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図6は、第2実施形態に係るパンチ金型1Aの一例を示す図である。パンチ金型1Aは、図6に示すように、パンチヘッド3の外周側において、パンチヘッド3を挟んでボール部34の反対側にロック機構6Aを備える。ロック機構6Aは、図1に示すロック機構6と同様に、パンチヘッド3とパンチガイド4との相対的な回転を規制したロック状態を保持し、また、パンチヘッド3とパンチガイド4との相対的な回転を許容したアンロック状態を保持することができる。なお、図6に示すパンチ金型1Aは、ロック機構6Aを除いて、図1に示すパンチ金型1とほぼ同様の構成が適用されている。
図7(A)は、ロック機構6Aの一例を示す図、(B)は第2部材52の一例を示す図である。図7(A)に示すように、ロック機構6Aは、第1部材51と第2部材52とを有する。第1部材51及び第2部材52は、プレート32に形成された収容部53に配置される。収容部53の−X側(パンチヘッド3側)には段部54を備える。また、第1部材51は、略中央部分の上下に段部55を備える。これら段部54と段部55との間にはコイルスプリング等の弾性部材56が配置され、第1部材51に対して退避方向に向けて弾性力を付与している。
また、第1部材51は、先端側(−X側)に段部57を備えており、この段部57から−X方向(パンチヘッド3)に向けて突出する先端部58を備えている。第1部材51は、段部57が収容部53の段部54に当接することにより、−X方向への移動が規制される。このとき、先端部58は、収容部53から−X方向に突出した状態となる。この位置が先端部58の進出位置である。なお、第1部材51は、先端部58と反対側の後端側(+X側)に第1操作部59を有する。
先端部58は、パンチヘッド3の凹部25に入り込むことが可能な形状に形成される。先端部58は、第1部材51と一体に形成されており、上記した弾性部材56の弾性力によって第1部材51とともに退避方向に移動可能である。なお、先端部58は、第1部材51と一体であることに限定されず、第1部材51と先端部58とは別部材であってもよい。この場合、先端部58を、例えば図2に示すような弾性部材41により退避方向に向けて弾性力を付与してもよい。
また、第1部材51は、中央部分において下端から上方に向けて切り欠かれた切り欠き部60を備える。切り欠き部60は、X方向の長さが、後述する第2部材52の梁部67が入り込むことが可能な大きさに形成される。切り欠き部60は、−X側(パンチヘッド3側)に凹部61が形成され、凹部61の上下にそれぞれ肩部62が形成される。凹部61の上下方向の高さは、第2部材52の梁部67が入り込むことが可能な大きさに形成される。
第2部材52は、プレート32に形成された収容部63により上下方向に移動可能に配置され、底部64との間に配置されたコイルスプリング等の弾性部材65によって上方に向けて弾性力が付与されている。また、第2部材52は、図7(B)に示すように、2つの上下方向の棒状体を2つの梁部67で接続した構造を有している。2つの梁部67の間隔は、上記した第1部材51において下側の肩部62が入り込むことが可能な間隔に設定されている。第2部材52は、図7(A)に示すように、第1部材51の切り欠き部60に梁部67を入れた状態で配置され、上側の梁部67が第1部材51の切り欠き部60の上面に当たることで上方への移動が規制される。
図8は、上記したロック機構6Aの動作の一例を示し、(A)は先端部58(第1部材51)を進出したロック状態、(B)は先端部58(第1部材51)を退避したアンロック状態を示す図である。図8(A)に示すように、作業者等によって第1部材51の第1操作部59を−X方向にパンチヘッド3側に向けて押すことにより、第1部材51が−X方向に移動させる。これにより、先端部58は、収容部53から−X方向に突出し、凹部25に向けて進出する。
進出位置に移動した先端部58は、凹部25に入り込むことにより、上記したロック状態となる。この状態では、弾性部材65の弾性力により第2部材52が上昇して、2つの梁部67が第1部材51の2つの肩部62の+X側に位置してそれぞれ肩部62を係止するため、第2部材52によって第1部材51(先端部58)が退避方向に移動するのを規制し、ロック状態が保持される。従って、作業者等が第1部材51の第1操作部59から手を放した場合でもロック状態が維持される。
次に、図8(B)に示すように、作業者等によって第2部材52の第2操作部66を、弾性部材65の弾性力に抗して下方(−Z方向)に向けて押すことにより、第2部材52が下方に移動する。第2部材52の梁部67が第1部材51の肩部62から外れると、第1部材51は弾性部材56の弾性力によって退避方向に移動する。このとき、第2部材52の上側の梁部67は、第1部材51の凹部61に入り込んだ状態となる。これにより、先端部58は、第1部材51とともに+X方向に移動し、凹部25から離れて退避する。
退避位置に移動した先端部58は、先端が凹部25から外れることにより、上記したアンロック状態となる。なお、第1部材51は、弾性部材56の弾性力により退避方向(+X方向)に力を受けているため、先端部58の先端が凹部25に入り込むことはなく、アンロック状態が保持される。従って、作業者等が第2部材52の第2操作部66から手を放した場合でもアンロック状態が維持される。
図6に示すパンチ金型1Aの使用状態については、上記した第1実施形態のパンチ金型1と同様である。刃先11の高さ調整を行う際、作業者は、ロック機構6Aの第2部材52の第2操作部66を押してアンロック状態とする。上述のように、ロック機構6Aは、アンロック状態を保持するため、作業者は、ロック機構6Aから手を放してパンチヘッド3をパンチガイド4に対して回転させることにより、容易に刃先11の高さ調整を行うことができる。刃先11の高さ調整を行った後、作業者は、第1部材51の第1操作部59を押すことによりロック状態となり、再度パンチ金型1Aを使用可能となる。
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1及び第2実施形態のロック機構6、6Aに代えてロック機構6Bが設けられている点で第1及び第2実施形態と異なっている。なお、第3実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図9は、第3実施形態に係るパンチ金型1Bの一例を示す図である。パンチ金型1Bは、図9に示すように、パンチヘッド3の外周側において、パンチヘッド3を挟んでボール部34の反対側にロック機構6Bを備える。ロック機構6Bは、図1に示すロック機構6と同様に、パンチヘッド3とパンチガイド4との相対的な回転を規制したロック状態を保持し、また、パンチヘッド3とパンチガイド4との相対的な回転を許容したアンロック状態を保持することができる。なお、図9に示すパンチ金型1Bは、ロック機構6Bを除いて、図1に示すパンチ金型1とほぼ同様の構成が適用されている。
図10は、ロック機構6Bの一例を示しており、(A)はロックピン36を進出した状態を示す図、(B)はロックピン36を退避した状態を示す図、(C)はスライド部材72の一例を示す図である。図10(A)及び(B)に示すように、ロック機構6Bは、ロックピン36と、スライド部材72と、を備える。ロックピン36は、弾性部材41によって退避方向に向けて弾性力を受けている。ロックピン36の後端側には凹部70が設けられ、凹部70によって球状体71を支持している。
スライド部材72は、図10(C)に示すように、カム部73と、開口部76と、操作部77と、を備えている。カム部73は、球状体71の球面の一部が入り込むように、V字状の小切り欠き部74と大切り欠き部75とを有している。これら小切り欠き部74と大切り欠き部75とはスライド部材72がスライドする方向に並んで形成される。開口部76は、後述する2本のガイドピン78が貫通する長円状に形成され、ガイドピン78によってスライドする範囲が決められている。操作部77は、作業者による操作性を考慮して、上下方向の複数の突起を備えている。
図10(A)に示すように、パンチガイド4のプレート32には、スライド部材72のスライド範囲を切り欠いた状態で収容部79が形成されており、この収容部79に2本のガイドピン78が設けられている。2本のガイドピン78は、間隔をあけた状態でそれぞれ上下方向に配置される。この2本のガイドピン78によって、スライド部材72は、スライド範囲が決定される。なお、スライド部材72を2本のガイドピン78で案内することに限定されず、他の構成によってスライド部材72を案内してもよい。
スライド部材72を、図10(A)に示すように、矢印方向にスライドさせることにより、カム部73の小切り欠き部74に球状体71を位置させる。これにより、ロックピン36は、カム部73により球状体71を介して押されることで凹部25に向けて進出し、ロック状態となる。なお、球状体71が小切り欠き部74に保持されるので、作業者等がスライド部材72から手を放してもスライド部材72が戻ることはなく、ロック状態が維持される。
なお、図10(A)に示すように、プレート32の外周面には上下方向の溝80が形成されている。この溝80は、赤色や黄色など、作業者等の視認性が良い色で着色されている。一方、スライド部材72がロック状態にある場合、操作部77の表面には、溝80と連続するように、上記と同一の色で上下方向に着色が形成されている。これにより、スライド部材72がロック状態にある場合、パンチ金型1Bの側面を見ると、着色した部分が上下方向に1本のライン状となるので、作業者等は、ロック状態であることを容易に確認することができる。
次に、スライド部材72を、図10(B)に示すように、矢印方向にスライドさせることにより、カム部73の大切り欠き部75に球状体71を位置させる。これにより、ロックピン36は、弾性部材41の弾性力によって凹部25から退避し、アンロック状態となる。なお、球状体71が大切り欠き部75に保持されるので、作業者等がスライド部材72から手を放してもスライド部材72が戻ることはなく、アンロック状態が維持される。また、このアンロック状態では、操作部77の着色した部分が溝80からずれているため、作業者等は、パンチ金型1Bの側面を見て1本のライン状となっていないことから、容易にアンロック状態であることを確認できる。
図9に示すパンチ金型1Bの使用状態については、上記した第1及び第2実施形態のパンチ金型1、1Aと同様である。刃先11の高さ調整を行う際、作業者は、ロック機構6Bのスライド部材72をスライドさせてアンロック状態とする。上述のように、ロック機構6Bは、アンロック状態を保持するため、作業者は、ロック機構6Bから手を放してパンチヘッド3をパンチガイド4に対して回転させることにより、容易に刃先11の高さ調整を行うことができる。刃先11の高さ調整を行った後、作業者は、スライド部材72を逆方向にスライドさせることによりロック状態となり、再度パンチ金型1Bを使用可能となる。
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。上記した第1及び第2実施形態では2つのロック機構6、6Aを示しているが、これに限定されず、ロック状態あるいはアンロック状態を保持するために操作される第1操作部及び第2操作部を備えるロック機構であれば、任意の構成を適用することができる。
また、上記の実施形態あるいは変形例で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。上記した3つのロック機構6、6A、6Bを組み合わせてもよい。例えば、これら3つのロック機構6、6A、6Bのいずれか2つまたは3つ1つのパンチ金型に設けてもよい。
また、上記した実施形態及び変形例では、1つのパンチ金型1、1A、1Bに1つのロック機構6、6A、6B及びボール部34が設けられているがこれに限定されない。例えば、1つのパンチ金型1、1A、1Bに複数のロック機構6、6A、6Bまたはボール部34が設けられてもよい。
また、上記した第1及び第2実施形態では、作業者が第1操作部43、59または第2操作部44、66を手で押して操作しているが、これに限定されない。例えば、第1操作部43、59または第2操作部44、66に対する操作を電動モータ等の駆動により行うようにしてもよい。同様に、第3実施形態において、作業者がスライド部材72を手で操作することに限定されず、電動モータ等の駆動により行ってもよい。