以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1、図2は、パークモジュール1Aの概略構成図である。図1では、パークロック状態でパークモジュール1Aを示す。図2では、パークロック解除状態でパークモジュール1Aを示す。
パークモジュール1Aは、パークロックデバイスであり、変速機とともに車両に設けられ変速機の出力軸を機械的にロックする。パークモジュール1Aは、パーキングギヤ2と、パーキングポール3と、パークロッド4と、カム5と、スリーブ6と、リンクレバー7と、パークアクチュエータ8と、ロック機構9と、油圧回路10Aとを備える。
パーキングギヤ2は、変速機の出力軸に固定され、出力軸と共に回転または停止する。パーキングギヤ2には、パーキングポール3が係合する。
パーキングポール3は、パークロッド4の動きに応じて揺動する。パーキングポール3が揺動すると、パーキングギヤ2とパーキングポール3との係合状態が変更される。
図1に示すように、パーキングギヤ2とパーキングポール3とが係合した状態では、パーキングギヤ2が機械的にロックされ、出力軸もロックされる。これにより、パークモジュール1Aがパークロック状態になり、車両の移動が規制される。
図2に示すように、パーキングギヤ2とパーキングポール3との係合が解除された状態では、パーキングギヤ2及び出力軸のロックが解除され、パーキングギヤ2及び出力軸が回転可能となる。これにより、パークモジュール1Aがパークロック解除状態になり、車両の移動規制が解除される。
パークロッド4は、パークアクチュエータ8によって、図1に示されるパークロックポジションと、図2に示される非パークロックポジションとに移動される。
パークロッド4の一端側には、カム5が取り付けられる。カム5は、パーキングポール3に接触し、パークロッド4の動きに応じてパーキングポール3を揺動させる。カム5は、パークロッド4が図1に示されるパークロックポジションにある場合に、パーキングギヤ2とパーキングポール3とを係合させる。カム5は、パークロッド4が図2に示される非パークロックポジションにある場合に、パーキングギヤ2とパーキングポール3との係合を解除する。
カム5は、第1テーパ部5aと第2テーパ部5bとを有する。第1テーパ部5aは、パークロッド4が図1に示されるパークロックポジションにある場合に、パーキングポール3と接触する。第2テーパ部5bは、パークロッド4の一端側から第1テーパ部5aに連なる。第1テーパ部5a及び第2テーパ部5bはともに、パークロッド4の他端側から一端側に向かって次第に縮径される。第2テーパ部5bのテーパ角は、第1テーパ部5aのテーパ角よりも小さく設定される。
スリーブ6は、パークロッド4に対しパーキングポール3とは反対側に設けられる。スリーブ6は、パーキングポール3とは反対側からカム5又はパークロッド4に当接することで、パーキングポール3とカム5又はパークロッド4との接触状態を保持する当接部材として不動に設けられる。
パークロッド4の他端側には、リンクレバー7の一端部が接続される。リンクレバー7は、パークアクチュエータ8の力をパークロッド4に伝達する。リンクレバー7の中間部には、回転軸が設けられる。リンクレバー7は、回転軸周りに回転することで、パークアクチュエータ8の伸長動作時にパークロッド4をパークロック解除方向に移動させ、パークアクチュエータ8の短縮動作時にパークロッド4をパークロック方向に移動させる。
パークアクチュエータ8は、パークロッド4を駆動する。パークアクチュエータ8は、パーキングレンジが選択された場合に、パークロッド4を図1に示されるパークロックポジションに駆動し、パーキングレンジ以外のレンジが選択された場合に、パークロッド4を図2に示される非パークロックポジションに駆動する。以下では、パーキングレンジをPレンジと称し、パーキングレンジ以外のレンジをnotPレンジと称す。
パークアクチュエータ8は具体的には、油圧シリンダで構成され、シリンダ81と、ピストン82と、第1受圧室83と、第2受圧室84と、スプリング85とを有する。
シリンダ81は、ピストン82を収容する。シリンダ81は、段付きシリンダであり、段差部81aと、縮径部81bと、拡径部81cとを有する。段差部81aは、第1受圧室83が設けられる側でその反対側よりもシリンダ81を縮径する。縮径部81bは、段差部81aに連なる2つのシリンダ部分のうち径が小さいほうの部分であり、拡径部81cは、段差部81aに連なる2つのシリンダ部分のうち径が大きいほうの部分である。縮径部81bには、段差部81aの反対側からシリンダ81の底部が連なる。
ピストン82は、シリンダ81に摺動可能に設けられる。ピストン82は、第1ピストン部821と、第2ピストン部822と、ロッド部823とを有する。ピストン82は単一の部材で構成される。ピストン82は、複数の部材の組み合わせで構成されてもよい。
第1ピストン部821は、縮径部81bに収容され、縮径部81bに対して摺動可能に設けられる。第1ピストン部821の軸方向の長さは、縮径部81bの軸方向の長さよりも長く設定される。
第1ピストン部821は、第1受圧室83に面する第1受圧面82aを有する。ピストン82はこのような態様で、第1受圧室83内に第1受圧面82aを有した構成とされる。第1ピストン部821には、縮径部81bとの間のクリアランスをシールするシール部材を設けることができる。
第2ピストン部822は、第1受圧室83の反対側から第1ピストン部821に連なる。第2ピストン部822は、拡径部81cに収容され、拡径部81cに対して摺動可能に設けられる。第2ピストン部822の外径は、第1ピストン部821部の外径よりも大きく設定される。第2ピストン部822には、拡径部81cとの間のクリアランスをシールするシールリングを設けることができる。
第2ピストン部822は、第2受圧室84に面する第2受圧面82bを有する。ピストン82はこのような態様で、第2受圧室84内に第2受圧面82bを有した構成とされる。
ロッド部823は、第1受圧室83の反対側から第2ピストン部822に連なる。ロッド部823の外径は、第2ピストン部822の外径よりも小さく設定される。ロッド部823は、シリンダ81から外部に突出するように設けられる。ロッド部823のうち図1に示すパークロック状態でシリンダ81から外部に突出する部分には、リンクレバー7の他端部が接続される。
ロッド部823には、係合部82cが設けられる。係合部82cは、ロッド部823のうち図2に示すパークロック解除状態でシリンダ81から外部に突出する部分に設けられる。係合部82cには、図2に示すパークロック解除状態でロック機構9が係合する。換言すれば、係合部82cには、パークロッド4が図2に示される非パーキングポジションに位置するときに、ロック機構9が係合する。
第1受圧室83及び第2受圧室84は、シリンダ81及びピストン82で形成される。第1受圧室83は縮径部81bに形成され、第2受圧室84は拡径部81cに形成される。第2受圧室84は、図1に示すパークロック状態でも、第1ピストン部821の軸方向の長さを縮径部81bの軸方向の長さよりも長く設定することで形成される。
スプリング85は、ピストン82のリターンスプリングであり、ピストン82を第1受圧室83側に向けて付勢する。
ロック機構9は、図2に示すパークロック解除状態で係合部82cに係合する。これにより、ピストン82がパークロック解除位置でロックされ、パークロッド4の移動が制止される。結果、パークモジュール1Aがパークロック解除状態でロックされる。ロック機構9は、電子制御可能なアクチュエータを有して構成される。
油圧回路10Aは、油圧供給部11と、制御油路12と、連通油路13と、補填油路14と、排出油路15と、ソレノイドバルブ16と、リリーフ弁17と、第1チェック弁18と、第2チェック弁19と、油貯留部20とを有する。
油圧供給部11は、第1受圧室83へ油圧を供給する。油圧供給部11は具体的には、オイルポンプと、オイルポンプが供給する油を元にライン圧PLを生成及び調整するライン圧調整弁とを含む構成とされ、第1受圧室83へライン圧PLを供給する。ライン圧PLは、パークアクチュエータ8の制御油圧を構成する。
制御油路12は、油圧供給部11と第1受圧室83と接続を接続する。制御油路12は、シリンダ81の底部を貫通してシリンダ81内に開口する。制御油路12には、ソレノイドバルブ16が設けられる。ソレノイドバルブ16は、制御油路12を連通する連通状態と、制御油路12を遮断する遮断状態との間で油の流通経路を切り替える。図2に示すように、ソレノイドバルブ16は連通状態で、制御油路12を介して第1受圧室83に油を供給可能な供給状態とされる。
図1に示すように、ソレノイドバルブ16が遮断状態とされると、制御油路12が分断される。この場合、ソレノイドバルブ16はさらに、第1受圧室83と油貯留部20とを連通する。このため、ソレノイドバルブ16は遮断状態で、第1受圧室83から油をドレン可能なドレン状態とされる。油貯留部20は、パークアクチュエータ8等からドレンされた油を貯留する。
連通油路13は、第1受圧室83と第2受圧室84とを連通する。連通油路13は具体的には、制御油路12のうちソレノイドバルブ16よりも第1受圧室83側の部分と第2受圧室84とを接続するように設けられる。
連通油路13には、リリーフ弁17が設けられる。リリーフ弁17は、第1受圧室83内の油圧P1が所定圧PA以上のときに開く。所定圧PAは、パークロック解除の際にパークアクチュエータ8にかかる負荷の急減により油圧P1が低下したか否かを規定するための値である。所定圧PAは、実験等により予め設定することができる。
補填油路14は、第2受圧室84と油貯留部20とを連通する。補填油路14は具体的には、第2受圧室84と油貯留部20とを接続するように設けられる。補填油路14は、油貯留部20において開口部が油没するように設けられる。補填油路14には第1チェック弁18が設けられる。第1チェック弁18は、油貯留部20から第2受圧室84へ向かう方向の油の流通を許容し、その反対方向の油の流通を阻止する。
排出油路15は、ソレノイドバルブ16が遮断状態の場合に、ソレノイドバルブ16を介して第2受圧室84と油貯留部20とを連通する。排出油路15は具体的には、補填油路14のうち第1チェック弁18よりも第2受圧室84側の部分と、連通油路13のうちリリーフ弁17よりも第1受圧室83側の部分とを接続するように設けられる。
排出油路15には、第2チェック弁19が設けられる。第2チェック弁19は、第2受圧室84から油貯留部20へ向かう方向の油の流通を許容し、その反対方向の油の流通を阻止する。
パークモジュール1Aは、コントローラによって制御される。コントローラは例えば、変速機を制御する変速機コントローラであり、選択レンジがPレンジとnotPレンジとの間で変更された場合に、パークモジュール1Aを制御することで、パークロック、パークロック解除を行う。
この際、ロック機構9は、コントローラの制御のもと、ピストン82のロック・ロック解除を行う。また、ソレノイドバルブ16は、コントローラの制御のもと、油の流通経路を切り替える。
図3は、パークモジュール1Aのパークロック動作の説明図である。図3では、パークロック動作開始時の状態を示す。パークロック動作開始時には、ロック機構9がロック解除状態とされるとともに、ソレノイドバルブ16が遮断状態とされドレン状態とされる。これにより、第1受圧室83の油がソレノイドバルブ16を介して油貯留部20にドレンされる。また、ソレノイドバルブ16がドレン状態とされると第2チェック弁19が開き、第2受圧室84の油が、排出油路15及びソレノイドバルブ16を介してドレンされる。
次に、パークモジュール1Aのパークロック解除動作について説明する。
図4から図6は、パークモジュール1Aのパークロック解除動作の第1の例の説明図である。図4から図6では、パークモジュール1Aの状態を状態S1から状態S6で示す。図4から図6では、比較例としてパークモジュール1´を併せて示す。比較例は、シリンダ81´及びピストン82´によって単一の受圧室83´が形成される一般的なパークアクチュエータ8´を備える場合を示す。比較例では、パークアクチュエータ8´に対応させて油圧回路10´が設けられる。油圧回路10´は、制御油路12、ソレノイドバルブ16及び油貯留部20を備える構成とされる。
また、図7A、図7Bは、第1の例に応じた各種パラメータの変化の一例を示す図である。図7Aでは本実施形態の場合を示し、図7Bでは比較例の場合を示す。
状態S1は、パークロック状態であり、ピストン82はパークロック位置に位置する。ピストン82´も同様である。ソレノイドバルブ16はドレン状態とされ、第1受圧面82a及び第2受圧面82bには、大気圧の油圧が作用する。ロック機構9はロック解除状態とされる。
状態S1では、パークロックが坂道で行われている。このため、パーキングギヤ2には、駆動輪からトルクが付加される。パーキングギヤ2に付加されたトルクは、パーキングポール3を介してカム5に負荷を作用させる。
状態S1で選択レンジがPレンジからNotPレンジに変更されると、ソレノイドバルブ16は連通状態となり供給状態となって、状態S2に移行する。状態S2は、負荷最大時であり、図4ではピストン作動開始時の状態を示す。状態S1から状態S2には具体的には、次のように移行する。
図7Aに示すように、ソレノイドバルブ16が供給状態になると、まずタイミングT1で第1受圧室83内の油圧P1が上昇する。そして、油圧P1がタイミングT2で所定圧PAになるとリリーフ弁17が開くので、第1受圧室83と第2受圧室84とが連通する。結果、第2受圧室84内の油圧P2が上昇する。油圧P2が所定圧PAになるまでは、油圧P1は所定圧PAに維持される。
油圧P2がタイミングT3で所定圧PAになると、油圧P1及び油圧P2がともに上昇し始める。そして、ピストン82の推力がパークアクチュエータ8にかかる負荷に打ち勝つと、タイミングT4でピストン82が動き始める。
状態S2では、カム5が第1テーパ部5aでパーキングポール3と接触しているので、カム5及びパーキングポール3間で大きな摩擦力が発生し、パークアクチュエータ8にかかる負荷が最大となる。
さらにこの例では、パーキングギヤ2に付加されたトルクに応じた分だけ大きな摩擦力が発生する。このため、パークロッド4を移動させるパークアクチュエータ8は、その摩擦力を上回る推力を発生させることで、ピストン82を作動させる。
比較例の場合、図7Bに示すように、受圧室83´内の油圧P1´がタイミングT1´から上昇し始め、タイミングT2´でピストン82´の推力がパークアクチュエータ8´にかかる負荷に打ち勝つと、ピストン82´が動き始める。状態S2は、タイミングT3´まで継続する。
状態S3は、負荷最小時であり、状態S3では、カム5が第1テーパ部5aでパーキングポール3と接触しなくなった状態で、パークロック解除が進行する。カム5が第1テーパ部5aでパーキングポール3と接触しなくなると、パーキングギヤ2のロックが解除されるので、パークアクチュエータ8にかかる負荷が急減し最小となる。結果、図7Aに示すように、タイミングT5で油圧P1及び油圧P2が低下する。
油圧P1が所定圧PAよりも低下すると、リリーフ弁17が閉じ、第1受圧室83と第2受圧室84とが分離される。結果、油圧P2は大気圧まで低下する。油圧P2が大気圧まで低下すると、図5の状態S3に示すように、補填油路14から第2受圧室84に油が補充される。補填油路14は、第2受圧室84の容積増加分の油量を補填する。
パークモジュール1´の場合、パークアクチュエータ8´に供給が必要な総油量は、受圧室83´の容量分のままである。パークモジュール1Aの場合、リリーフ弁17が閉じると、パークアクチュエータ8に供給が必要な総油量は、第1受圧室83の容量分で済む。
このため、図7A、図7Bに示すように、油圧P1´はタイミングT3´で大幅に低下する一方で、油圧P1は、油圧P1´のように大幅に低下することはない。結果、ライン圧PLの大幅な低下も回避される。油圧P1´は低下直後からほとんど上昇しないのに対して、油圧P1及びライン圧PLは、低下直後のタイミングT6から大きく上昇する。
状態S4は、ピストン82がパークロック解除位置に位置するパークロック解除状態である。図7Aに示すように、油圧P1は、タイミングT7でパークロック解除状態になると、より大きな度合いで上昇する。そして、タイミングT8で油圧P1が所定圧PAまで上昇すると、状態S4から状態S5に移行する。比較例の場合、図7Bに示すように、タイミングT4´から受圧室83´の油圧P1´が急上昇し始める。
状態S5では、リリーフ弁17が開く。図7Aに示すように、リリーフ弁17が開くと第2受圧室84内の油圧P2が上昇し、タイミングT9で所定圧PAとなる。この状態から、ライン圧PLが目標油圧PTに向かって上昇し回復しようとすると、油圧P1及び油圧P2も上昇する。比較例の場合、状態S4、状態S5で油圧P1´は上昇中である。
状態S6では、ライン圧PLが目標油圧PTになる。状態S6では、ロック機構9がピストン82をロックする。これにより、油圧P1及び油圧P2に関わらず、パークロック解除状態が保持される。
図7Bに示すように、比較例の場合、状態S3で油圧P1´が大幅に低下し、状態S4から急上昇し始める。このため、タイミングT5´及び状態S6の直前にライン圧PLが回復し始めるタイミングT4´間で、ライン圧PLの油圧差ΔPが大きくなる。結果、タイミングT5´でライン圧PLが目標油圧PTになっても、ライン圧PLが上昇を続けて目標油圧PTをオーバーシュートしてしまい、その後目標油圧PTに収束するまでに時間を要することになる。
図7Aに示すように、パークモジュール1Aでは、状態S3でライン圧PLの低下が抑制され、ライン圧PLは低下直後のタイミングT6から上昇し始める。このため、状態S6及び状態S6の直前にライン圧PLが回復し始めるタイミングT9間で、油圧差ΔPが小さくなる。結果、状態S6でライン圧PLが目標油圧PTになると、ライン圧PLはそのまま一定となり、油圧P1及び油圧P2も一定になる。
パークモジュール1Aはパークアクチュエータ8にかかる負荷によっては、パークロック解除時に次に説明するように動作する。
図8は、パークモジュール1Aのパークロック解除動作の第2の例の説明図である。図9A、図9Bは、第2の例に応じた各種パラメータの変化の一例を示す図である。図9Aでは本実施形態の場合を示し、図9Bでは比較例の場合を示す。以下では、主に上述した第1の例と異なる部分について説明する。
第2の例では、パークロックが平坦路で行われている。このため、図8の状態S1に示すように、パーキングギヤ2には駆動輪からトルクが付加されず、パークロック解除に要する推力は、第1の例の場合よりも小さくなる。結果、図9Aに示すように、油圧P1が所定圧PAになる前に、状態S1から状態S2に移行する。
但しこの場合も、パークアクチュエータ8に供給が必要な総油量は第1受圧室83の容量分で済む。このため、油圧P1は、図9Bに示す油圧P1´のように、大幅に低下することはない。したがって、ライン圧PLの大幅な低下が回避される。
状態S3から状態S6は、本実施形態及び比較例の場合ともに、前述した第1の例と同様、図5、図6に示す状態になる。但し、第2の例では、状態S4までリリーフ弁17は開いておらず、図9Aに示すように、状態S4で油圧P1がより大きな度合いで上昇する結果、リリーフ弁17が開いて状態S5、さらには状態S6に移行する。
図9Bに示すように、比較例の場合、状態S4で油圧P1´が急上昇し始める。このため、第2の例でも第1の例と同様、油圧差ΔPは大きくなる。結果、状態S6でライン圧PLが目標油圧PTになっても、ライン圧PLが上昇を続けて目標油圧PTをオーバーシュートしてしまい、その後目標油圧PTに収束するまでに時間を要することになる。
次に本実施形態の主な作用効果について説明する。
パークモジュール1Aは、第1受圧室83と、第2受圧室84と、第1受圧室83内の第1受圧面82aと第2受圧室84内の第2受圧面82bとを有するピストン82と、第1受圧室83へライン圧PLを供給する油圧供給部11と、を有する。パークモジュール1Aでは、第1受圧室83内の油圧P1が所定圧PA以上のとき、第1受圧室83と第2受圧室84とが連通し、油圧P1が所定圧PA未満になると、第1受圧室83と第2受圧室84とが分離される。
このような構成によれば、油圧P1が高いときには、第1受圧室83及び第2受圧室84が油で満たされるので、パークロッド4に強い力を与えることができる。したがって、パークロック解除に必要な力を発揮することができる(請求項1に対応する効果)。
また、第1受圧室83内の油圧P1が低下すると第2受圧室84が分離され、供給が必要な総油量が第1受圧室83の容量分とされる。これによりの油圧P1が上昇するので、パークロック解除の際に発生する油圧低下を抑制できる。したがって、ライン圧PLが急減することも抑制できる。これにより、例えばライン圧PLをクラッチ締結に使用する場合に、締結に時間がかかることを抑制できる(請求項1に対応する効果)。
パークモジュール1Aは、第1受圧室83と第2受圧室84とが分離されているときに、第2受圧室84の容積増加分の油量を補填する補填油路14を有する。
このような構成によれば、第1受圧室83と第2受圧室84とを分離した後に第2受圧室84の容積が増加しても、容積増加分の油量を補填できるので、ピストン82が移動する際の負荷が増大しないようにすることができる(請求項2に対応する効果)。
(第2実施形態)
図10A、図10Bは、パークモジュール1Bのパークロック解除動作を説明する図である。図10Aでは負荷最大時の状態を示し、図10Bでは負荷最小時の状態を示す。本実施形態にかかるパークモジュール1Bは、油圧回路10Aの代わりに油圧回路10Bを備える点で、パークモジュール1Aと異なる。
油圧回路10Bは、油圧供給部11と、制御油路12と、連通油路13と、油貯留部20と、第1ソレノイドバルブ21と、第2ソレノイドバルブ22とを有する。第1ソレノイドバルブ21は、第1実施形態で説明したソレノイドバルブ16と同じである。第2ソレノイドバルブ22は、連通油路13に設けられる。第2ソレノイドバルブ22は、連通油路13を連通する連通状態と連通油路13を遮断する遮断状態とで油の流通経路を切り替える。
図10Aに示すように、負荷最大時には第2ソレノイドバルブ22は連通状態とされる。第2ソレノイドバルブ22が連通状態とされると、第1受圧室83と第2受圧室84とが連通され、第2受圧室84に油を供給可能な供給状態とされる。このため、ライン圧PLは第1受圧室83及び第2受圧室84に供給される。
図10Bに示すように、負荷最小時には第1ソレノイドバルブ21が連通状態とされ、第2ソレノイドバルブ22が遮断状態とされる。第2ソレノイドバルブ22は例えば、ライン圧PLが所定圧PAよりも低下した場合に、コントローラによって遮断状態とすることができる。ライン圧PLは、ライン圧PLを検出する油圧センサからの出力に基づき検出することができる。
第2ソレノイドバルブ22が遮断状態とされると、連通油路13が分断される。この場合、第2ソレノイドバルブ22はさらに、第2受圧室84と油貯留部20とを連通する。これにより、第2ソレノイドバルブ22は、第2受圧室84に油を補填可能な補填状態、或いは第2受圧室84から油をドレン可能なドレン状態とされる。
負荷最小時には、パークロック解除動作で第2受圧室84の容積が増加するので、遮断状態とされた第2ソレノイドバルブ22は補充状態となる。結果、油貯留部20から第2受圧室84に油が補填される。連通油路13のうち第2ソレノイドバルブ22よりも第2受圧室84側の部分油路13aは、補填油路を構成する。
図11は、パークモジュール1Bのパークロック動作を説明する図である。図11では、パークロック動作開始時のパークモジュール1Bを示す。
図11に示すように、パークロック動作開始時には、第1ソレノイドバルブ21及び第2ソレノイドバルブ22が遮断状態とされる。したがって、第1受圧室83と第2受圧室84とが分離された状態で、第2受圧室84の容積が減少する。
結果、遮断状態とされた第2ソレノイドバルブ22はドレン状態となり、第2受圧室84から油貯留部20に油がドレンされる。このため、部分油路13aは、第1受圧室83と第2受圧室84とが分離されているときに、第2受圧室84の容積減少分の油量を排出する排出油路を兼ねる。
次に本実施形態の主な作用効果について説明する。
パークモジュール1Bは、第1受圧室83と第2受圧室84とが分離されているときに、第2受圧室84の容積減少分の油量を排出する部分油路13aを排出油路として有する。
このような構成によれば、第1受圧室83と第2受圧室84とを分離した後に第2受圧室84の容積が減少する場合でも、容積減少分の油量を排出できるので、ピストン82が移動する際の負荷が増大しないようにすることができる(請求項3に対応する効果)。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。